●永劫の旅の終わり
彼らはずっと、奪われるばかりだった。
働き盛りの男手を、うら若き乙女を、親を、子を、兄弟姉妹を、恋人を。
皆沢山を失った。皆数多の涙を流した。
『きっといつか』を願ったまま戻らなかった人々の、骸のない墓はいくつ築かれただろう。
それでも、次は大切な誰かの、それとも我が身の番かと怯える日々も、悪戯に下される略取の手が止まる日も、訪れはしなかった。
ある日、誰かが言った。もう限界だ、と。
誰かが続いた。逃げないか、と。
投げられたその一言は彼らの間に波紋を呼び、彼らは大地に差すことのない日が落ち、また昇る頃になっても話し続けた。
そして、その夜。彼らは旅に出た。彼らの全てがいなくなるまで続く、永い永い終わりのない旅に。
男も女も老人も子供も、残された者皆手を取り合って、彼らは歩き出した。
行くあてのない旅は、その代わりに奪われるばかりの日々に終わりを告げた。
涙で濡れていた人々の頬には、笑顔が戻った。
だから今日も彼らは、どこを目指すこともなく旅を続ける。奪われない日々を、少しでも永らえさせるために。
しかし、彼らはまだ知らない。
その行く先に、彼らの旅に終わりを告げる存在が、ひたりひたりと迫っていることを。
●終わらせない、そのために
「仕事よ。舞台はダークセイヴァー」
不思議と澄んでよく通り、端的に告げるその声に、付近にいた猟兵達が集まってくる。
シガレットケースから美しい装丁が施された一本を取りだした千代伽・ルル(縷縷・f13136)は集まってきた面々を見回すと、気怠げに自らが視た光景について語り始めた。
ルルが視たのは、ダークセイヴァーを旅する流浪の民達だった。
どうやら彼らは元々暮らしていた地の圧政から逃れるべく、住んでいた土地を捨て、幌馬車と共に各地を転々としながら旅を続けているらしい。
「その行先に、厄介なオブリビオンの集団が待ち受けているの」
『疫病楽団』。そう呼称されているその集団は、命を喰らい尽くすべく、流浪の民達を見つけ次第襲いかかるだろう。
「もし襲い来る集団から逃れられたとしても、『疫病楽団』を視た者に命はない。彼らは襲いかかるだけではなくて、病を振りまいていくようなの」
そこが厄介なところ。目頭を揉んだルルがため息を零す。
『疫病楽団』が振りまこうとしている病に罹患した者は、数日内に首を掻き切る運命にあるというのだ。
「防ぐ手立ては、ひとつ。流浪の民達の信頼を得て、進路を変えさせること」
元より、あてどない旅を続けている者達だ。当初彼らが向かおうとしていた場所は山の近くでもあるため、崖崩れが起きて危険だ、等の情報が入れば、行く先を変えること自体に抵抗はないだろう。
しかし圧政から逃れ続けている彼らは、追手に嗅ぎつけられることを酷く恐れている。見知らぬ者への警戒心は、それなりに強い。
「それでも同じ立場の相手には幾らか警戒心も和らぐでしょうし、彼らと打ち解けることができればそれは尚の事」
要は、圧政に耐えかねて旅に出た流浪の身の振りをしろ、ということらしい。
「貴方達を送るのは、丁度夕暮れ時。彼らに疑われなければ、『客人』をもてなそうとささやかな宴を開いてくれるようよ。それに混ざって信を得て、行く先を変えさせて頂戴」
猟兵達の役目は、その後襲い来る『疫病楽団』を迎え撃つこと。
けれど働き手に欠け、狩りや内職で暮らすに困らない分だけの糧を細々と得ている民達にもてなされるだけというのは心苦しいのであれば、彼らを手伝って来ると良い、とルルは付け足す。
干し肉を作るための狩りの手も、造花や染物、織物を作るための内職の手も足りていないようだから、きっと喜ばれるだろう。
「以上よ、準備が出来た方は此方へ」
告げると、ルルは手の中の煙草に口をつける。その先端から陽と宵の色が溶けた煙がゆうらりと立ち上ると、猟兵達を包み込むように渦を巻いた。
「そう、言い忘れていたわ。『疫病楽団』は、追い詰められるとその姿を変えるそうよ」
気をつけて頂戴。
徐々に煙にその姿が溶け込んでいく猟兵達に、果たしてその気遣いは届いたのだろうか。
どちらでも構わないと言わんばかりに煙を吐き出し、ルルは緩やかに笑みを浮かべた。
雨玉
はじめましての方も何度目ましての方もこんにちは。
お目に留めていただきありがとうございます。雨玉と申します。
●依頼の流れ
今回は『ダークセイヴァー』が舞台です。
第一章:日常『流浪の民と過ごす一時』
戦闘なしの日常パートです。POW・SPD・WIZは行動の一例と考えていただき、各々お好きなように流浪の民達との宴を楽しんでください。
第二章:集団戦『首無しの天馬』
無事に流浪の民達を逃がすことが出来た場合、周囲に遮る物等はありません。存分に力を振るい、打ち倒してください。
第三章:集団線『XXXX』
首無しの天馬を退けた猟兵達の前に現れるのは……?
●執筆ペースについて
今回は試験的に、執筆予定日を設けず都度執筆を進める予定です。その都合もあり、第一章を除き、成功数を達成次第次章に移らせていただく形になるかと思われます。
第一章につきましては日常パートで成功数が少なく設定されておりますので、他の章の想定人数と同程度までは描写できればと考えております。
第二章以降のプレイング受付につきましては雑記と(https://tw6.jp/club/thread?thread_id=6977)のスレッドで都度御案内いたします。お手数ですが御確認いただけましたら幸甚です。
それでは、みなさまのプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『流浪の民と過ごす一時』
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POW : 狩猟や採取、彼らの為に食料を調達してきます。
SPD : 吟遊や舞踊、彼らと囲んだ焚き火の前で一芸を披露します。
WIZ : 修繕や作成、彼らの馬車や持ち物に手を加え、知識を伝授します。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●羅針盤の示す先
「よし、今夜はここで休もう」
幌馬車の集団の先頭を歩いていた男が、後ろを振り返り大きく手を振って仲間達へと合図を送る。
手際よく荷を下ろし、野営の準備を始める仲間達を眺めながら、男はひっそりとため息をついた。
前に物々交換や商いを行った村を出て随分と経った。途中、すれ違った行商人からはこの先に寂れた村があると聞いていたが、それらしきものはまだ見つからない。
「そろそろ子供達だけでもゆっくり休ませてやりたいところだが……」
先頭の男の元へと歩み寄った老人が眉根を揉みながら、ゆっくりと地図を開く。
使わなくなったから、と行商人から譲り受けたものだ。村の位置まではわからなくても、こちらに行けば山、こちらに行けば平地と道の様子がわかるだけで随分とありがたいものだ。
「確かあの行商人は山沿いに村があると話していたな」
「あぁ、となるとこちらの道だなぁ」
老人が細い指で差した道は、現在地の先で二手に分かれる道の片方だ。ぐるりと山に沿って回り込んでいくように伸びている。
「明日はそちらに進んでみよう。そのまま村まで辿り着けるといいが」
「そう焦るな。……終わりなき旅だ、一歩一歩進めば、いつか辿り着く」
宵闇の中でもくっきりとその姿を見せる山へと視線を遣った男の肩を、老人が励ますように叩いた。
「おぉい、二人共、こっちを手伝ってくれ!」
老人へ小さく頷いた男は、呼び声に今行く、と返すと駆け足でそちらへと向かっていった。
壥・灰色
山に分け入り、狩猟をする
この痩せたダークセイヴァーの地にどんな動物が棲んでいるかはよく知らないけど……人を食ってるような魔獣じゃなかったら、多分何とか食えるだろう
猪に似たヤツとか、クマに似たヤツとか、探せばいそうだよね
影の追跡者を呼び出し、獲物を探して野山を駆ける
見つけたら、壊鍵を起動
四肢に衝撃を装填し、頭骨を粉砕して狩る
肉を打つと、血が回って味が悪くなっちゃうからね
倒した動物の臓物を抜き、沢の水で洗って引き摺っていく
大きなのが取れたよ、皆で鍋でも作って食べよう
調味料も一応、使い切りの味噌と醤油くらいのものは持ってきた
備蓄食に野菜でもあれば、それも交えて煮立てて
他の猟兵にも振る舞おう
チャド・アランデル
【心情】
手と手を取り合い、未来へと歩み出した彼らはとても尊敬に値する人達だよねー。
そんな彼らに訪れる悲惨な結末なんて、認める訳にはいかないよねー。
疫病楽団は、にゃんこやスケルトンは見かけたけど天馬は初めてだねー。
一体どんな音楽を奏でて、どんな姿に変身するんだろー。
他の疫病楽団との共通点何かも、出来れば探っていきたいなー。
【行動】
流浪の身の振りをし合流する
狩りを行い、食肉を提供する
狩りでは【レプリカクラフト】使用し、獣用の罠作製
罠を設置し、狩りに出かけ、帰りに罠を確認
活用技能
合流【変装 言いくるめ 礼儀作法】
狩り【忍び足 野生の勘 投擲 罠使い 聞き耳 ダッシュ 暗視 暗殺】
情報収集【情報収集】
●潜入~手土産を用意する者達~
ダークセイヴァーで虐げられる日々を送りながらも、手と手を取り合って未来を諦めること無く一歩踏み出した者達は、尊敬に値する。
(そんな人達に訪れる悲惨な結末なんて、認めるわけにはいかないよねー)
山中をがさり、がさりと草を分け入って進みながら、チャド・アランデル(キマイラのシーフ・f12935)は決意も新たに遠く灯りが揺れる辺りを見下ろす。
今頃、他の猟兵達はあの灯りの元に潜入を始めた頃だろうか。
後から合流する、と一旦他の猟兵達と別れていた彼は、先程自分が仕掛けた罠の元へと、山の中を進んでいた。
チャドがレプリカクラフトで作り出した獣用の仕掛け罠は、まるで熟練の猟師が作り出したような、極めて見事な出来映えであった。あとはそこに獲物さえかかっていれば、それを回収して、終わりなき旅を続ける流浪の民達の元へと向かうだけだ。
「……それにしても、また『疫病楽団』かー」
前に見たのはにゃんこ、そして骸骨。
次はどんな姿でどんな音楽を奏でるのだろうか、他の楽団との共通点はあるのだろうか、と明日には襲い来ることになる脅威に思いを馳せながら草をかき分けるチャドの耳に、自分が進む音とは異なる草が揺れる音が飛び込んで来る。
「お、かかったかなー?」
近づき、音が大きくなるにつれて、自然に進む足も早くなる。期待に胸を躍らせて大きく草を分ければ、少し大ぶりな兎が、チャドが仕掛けた罠に足を取られじたばたともがいていた。立派な成果に口の端を上げ、手早く手に馴染んだ対のダガー・紅刃と白刃でその命を仕留めたチャドは、用意していた袋に入れて肩から提げる。
「他のもこの調子でいけば、あの人達に肉を提供できそうだねー」
仕掛けた罠は、残り三つ。成果に期待しつつも、チャドは次の罠へとその足を向けた。
その頃、壥・灰色(ゴーストノート・f00067)は同じく流浪の民達の野営地が見える山中を駆けていた。
灰色は、UDCアースの出身だ。そのため陽が差さず夜闇に閉ざされたダークセイヴァーにどのような動物が住んでいるか、詳細には識らない。
(まあ、人を食ってるような魔獣じゃなかったら、多分何とか食えるだろう)
これまでダークセイヴァーで猟兵の仕事をこなす中で出会った魔獣は、記憶にある。それは除くとして、猪や熊に似たような動物はいるのではないかと当たりをつけると、喚び出した影の追跡者と共に、木々の間に目を凝らす。
そうして足を止めることなく獲物を探していた灰色の耳に、耳慣れぬ唸り声が響いた。
直ぐ様足を止め身を低くし周囲の気配を探るが、どうやら近くで聞こえたものではないらしい。
「――と、なると」
言うが早いか、衝撃を装填したその脚で、灰色は地を蹴る。景色が瞬く間に後方に流れ、彼と五感を共有し、彼とは分かれて獲物を探していた影の追跡者の姿をその視線の先に捉えると、速度を緩め滑り込むように着地。再び身を低くした灰色の耳に、今度は直に唸り声が届いた。
「壊鍵、起動」
どうやら、近くに潜んでいるらしいその獲物を仕留める準備は、一瞬。
唸り声以外は聞こえない、息が詰まるようなつかの間の一時。
息を殺し身を潜めてその瞬間を待つ灰色の耳に草を分ける音が届くと同時、衝撃を放って地を蹴った彼の拳が、飛び出してきた猪の頭部を一撃で粉砕する。
頭蓋を粉砕され、重い音を立てて草むらに倒れ込んだ猪は、確かめるまでもなく絶命していた。
四肢をロープで縛り、獲物を探す間に見つけていた沢へと引き摺っていった灰色は、沢の水で洗い清めながら、慣れた手つきで猪の臓物を抜き取り、満足げに残りの肉を眺める。
肉を狙わずに頭部を狙って仕留めたのは、肉に血が回り味が落ちるのを防ぐためだ。鍋にでもできればと、使い切りの味噌と醤油も持ってきている。もし、流浪の民達が備蓄食に野菜でも持っているなら、それも交えて煮立てるのもいいかもしれない。
「これだけあれば、皆で食べるにも十分だろう」
先に潜入しているであろう猟兵達の姿も思い浮かべながら、灰色は手土産を担ぎ上げ、山の下、灯りの揺れる野営地へと駆けだした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルフトゥ・カメリア
……ダークセイヴァーは好きじゃねぇ
首落とされたのも、此処だしな
【言いくるめ、祈り】でヴァンパイアに危うく殺されかけて、他の村から逃げて来てるってことにでもしとく
オラトリオなんて目立つしな
まあ、噛み痕だろうと古傷だろうと信用ならねぇってんなら見せても良いが、誰だってあんまり見苦しいもん見たくねぇだろ
狩りついでに火も熾しとくか
焚き火するにしたって旅の途中じゃ乾燥した薪や枝草は貴重品だ、使わなくて済むならそれに越したことねぇだろうし
炎は青くなるけど、その辺は些事だ。気にすんな
狩りも野営も慣れてる
あんたらも飯くらい栄養あるもん食おうぜ
その干し肉の作り方教えてくれよ、大物狩れたし代わりに肉提供するからさ
千草利・機斗
本当に、この世界は嫌気が差しますね
救われる命がひとつでもあるのであれば、助力は惜しみません
【POW】
とりあえず狩りで獲物を捕らえてきましょう
周囲の【情報収集】をしてなるべく離れないような場所で、
【戦闘知識】を用いて的確に獲物を見定めます
それを解体したものを手土産に、【コミュ力】で集団に話を持ちかけます
私達もまた、圧政から逃れてきた流浪の民である、と
良ければ食料を分けるので安全のため一晩共にしてくれないか、と
信頼が得られましたら、本題に切り出しましょう
此処から先の山道は崖崩れが起きて危険だ、進路を変えた方が良い、と
もしも他の猟兵さんと話が食い違いそうになった際には、
そちらの話に合わせます
ユア・アラマート
ルイ(f01038)と
ボロ布で衣服を誂え、ルイと夫婦で旅する流浪の民を装って接触
この先で起きたがけ崩れから避難してきたと説明する
お前達、この先を通るつもりだったのなら道を変えないと進めないよ。あれじゃあ当分使えない
馬車に積んでいた荷物も埋まってしまったし…。まあ、旦那と私が生きているだけもまだ幸運か
よければ、一晩だけでいい。世話になってもいいだろうか
受け入れてもらえたなら、宴の準備を手伝おう
私もダークセイヴァー出身、狩猟にならそれなりの自信がある
鹿や兎の獲物を見つけたら気配を殺して接近、ナイフで首を狩って捕獲
まあ、今は私達にできることをしよう
けれど、いつか彼らが安住の地に辿り着けることを祈るよ
ルイーネ・フェアドラク
ユア(f00261)と
夫婦を装い
それらしく見えるボロ布だけ調達して
この先へ行くのはやめた方がいい
崖崩れがありましてね、私たちも馬車を失ってしまいました
あれがなくて、この先どうすればいいか……
言葉巧みに進路を変えさせるよう言いくるめ
妻(ユア)を気遣いつつ、一晩だけでも厄介になれないかと頼み込む
もてなしを受けられれば、礼にと手伝いを申し出
ユアに同行して、薬草なり木の実なり採取してきましょう
同じ妖狐といえど、私に狩猟経験はありません
気配を潜ませる程度はできますので、物珍しく見物といきましょう
はは、鮮やかなお手並みですねえ
彼らの行く末は、祈るしかありませんが
せめて知らされた災禍は、取り除きましょう
●潜入~紛れる者達~
それは、まるで一陣の風のよう。けれども、音は無い。
銀の尾を揺らし、野で休む鹿へと悟られぬように迫ったユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)は、鹿の首筋に刃を這わせると一息に横へ引き、命を絶ち切った。
「はは、鮮やかなお手並みですねえ」
草むらへと気配を潜ませ、その一部始終を物珍しげに眺めるに徹していたルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)が緩やかな拍手を送ると、鹿を運びやすいように縛り上げたユアは肩を竦め笑う。
「私もこの世界の出身だからな、狩猟にならそれなりの自信がある。それはそうと、ルイ、そっちの首尾は?」
「まあ、こんなものかと」
問われたルイーネが提げていた袋を開くと、そこには様々な薬草や、干して食べることのできる木の実が詰められていた。
「これだけあれば、彼らの旅路の足しにもなるでしょう。その行く末は、祈るしかありませんが」
「そうだな……まあ、今は私達にできることをしよう。いつか彼らが安住の地に辿り着けることを祈って」
顔を上げたユアの視線の先では、灯りが闇夜に灯る星のように、ちかり、揺れている。
「ええ、そのためにもせめて、知らされた災禍は取り除かねば」
纏った襤褸を風に揺らしながら、ルイーネも顔を上げ、その灯りに目を細めた。災禍を取り除くそのために、まだ、成さねばならないことがある。
どちらからともなく頷き合った二人は、それぞれの成果を手に、来た道を野営地へと引き返していく。
時刻は、半刻ばかり遡り――。陽が差す世界であれば、丁度大地が橙色に染まる頃。
「すみません、そこのご婦人方」
「おやまぁ、ご婦人だなんて」
「生まれてこの方初めて言われたよ!」
軽やかな笑い声を上げながら野営の準備を進めていた手を止め、二人の女が振り返った。
そこに立っていた見慣れぬ二人――黒髪を風に揺らす千草利・機斗(Malice・f14680)と、その後ろで瑠璃唐草色の三つ編みを揺らし周囲を眺めているルフトゥ・カメリア(月哭カルヴァリー・f12649)の姿に、女達は顔を見合わせる。
「……行商人、じゃあなさそうだ。旅人さん? それとも吟遊詩人さんかい? 珍しいねえ、何か御用?」
にこにこと笑みを浮かべて一人の女が機斗へと歩み寄るその後ろで、もう一人の女は口元には笑みを浮かべながらも、猟兵二人へと訝しげな視線を向ける。
(……やはり、警戒はされますか)
旅人です、と朗らかに頷きながらも、機斗の視線は後方の女も含め、二人の様子をつぶさに観察していた。
この警戒を解いて彼女らに話を聞いてもらわねば、彼女ら自身が命を失うことになってしまう。けれど話を聞き入れてくれたならば、救うことのできる命だ。
(助力は惜しみませんよ、救われる命がひとつでもあるならば)
そのためにここへ来たのだ。その思いは胸の内にしまい、機斗は視線を寂しげに足元へと落とす。
「住んでいた村は、ヴァンパイアによる圧政と略取に常に晒されていまして。どうしてもそれに耐えきれなくて……逃げているんです、私だけ」
「……!」
機斗の言に女達が息を飲んだのは、自分達が長年置かれてきた環境を思い出したからだろうか。それとも、自分達と同じように逃げ出した存在がいたのだ、という驚きからだろうか。
二人の様子を観察しながら、ルフトゥは俺もそうだ、と歩み出る。
「俺もヴァンパイアに危うく殺されかけて逃げ出した身だ。コイツとは違う村だけどな。放浪の道中で会って、それから一緒に行動してる。俺達はそういう奴らの集まりだ」
「集まり?」
ルフトゥの伸びやかなアルトの声は耳に優しく、それが心を落ち着かせたのだろうか。後方にいた女も、こてりと首を傾げながら機斗とルフトゥの元へと歩み寄ってきた。
場合によっては噛み痕や古傷――この世界で首を落とされた、その時の傷だって残っている――を見せてでも信を得るか、と考えていたルフトゥは頷いて話を続ける。見せずに済むなら、それに越したことはない。
「ああ、同じような事情で逃げてきた奴らが何人か。今は食い物探して山の中に散ってるけど」
「私達も食料を探していたのですが、山からここの灯りが見えたので……村かもしれない、と思って先に降りてきたんです。食料と引き換えに寝床を借りられないか、と」
機斗が背負った袋を下ろし、女達に見せた。中にはすぐに調理しやすいよう解体を済ませた鳥の肉が丁寧にしまわれている。
袋を覗き込んだ女達は、再び顔を見合わせる。けれど、その表情に先程までの警戒の色はほぼ残っていない。
女達は、逃げることの大変さを、よく識っていた。
自分達は村皆で計画的に逃げ出したから、簡易なテントではあるが、風雨を凌ぐ寝床も持ち出すことができた。大勢だからこそ、協力し合ってここまで歩んでくることもできた。
これがもし、一人だったなら。その思いが、女達の警戒心を和らがせていく。
「……見ての通りだから判ってると思うけど、残念だがここは村じゃなくてさ。あたし達もあんた達と同じで逃げてきたんだよ。こっちは村の皆でだけど」
「まあ、皆さんで」
「そうさ、皆でこんな目に遭うのはもう沢山だって、計画してね。だから寝床にできるようなテントなんかも用意はある。……その分、大所帯だから食料はいつもかつかつだ」
「じゃあ」
じっと女達を見つめる二対の赤い瞳に、女達は頷く。
「皆に掛け合ってこよう。なに、同じ流浪の者同士だ。助け合うことを皆嫌とは言わないだろうさ」
「ありがとうございます、助かります」
深々と頭を下げる機斗に、女達は任せな、と胸を叩くと早速話してこようと去って行く。
「この分なら入り込めそうだな」
「ええ、あとは進路を変えさせることができれば――」
「それは私達から話しましょう」
突如背後から聞こえた声に機斗とルフトゥが振り返ると、襤褸を纏い、寄り添うように立つ二人の妖狐――ユアとルイーネの姿がそこにあった。
「こっちで一芝居打つよ。援護できそうなら話に乗ってくれればそれでいい」
「わかった、任せる」
互いに視線を合わせ頷き合うと、ユアとルイーネは一旦姿を隠した。直後に、先程の女達が大きく手招きながら戻ってくる。
「上手く話がついたようですね」
「だな、行こうぜ」
ユアとルイーネにひっそり目配せを送ると、機斗とルフトゥは野営地の中へと一歩踏み出した。
機斗とルフトゥが野営地に入り込み、狩りをしていた他の猟兵達も続々と仲間だ、と告げてそこに合流しだした頃。
「兄ちゃん助かるよ、火を熾すのも一苦労だからねえ。それにしても不思議な色の炎だこと」
瑠璃唐草色に灯る焚火に目を細める先程の女に、ルフトゥは肩を竦めた。
「些事だ、気にすんな。焚火用の薪や枝草をとっておけるに越したことねぇだろ。それよりその干し肉の作り方教えてくれよ、美味そうだ」
「これかい、これはねぇ――おや?」
褒められ、楽しげに説明しようとした女が、突如として耳に飛び込んできた喧噪に顔を上げる。
「なんだろう、なにかあったかねぇ」
「さぁ、なんだろうな」
小首を傾げたルフトゥの瞳が、野営地の入口を見つめる。動いたな、と音も無く唇が囁いた。
「どなたか――どなたか、すみません」
呼びかけるその声に近くにいた人々が続々と集まり、そして目を剥いた。
「んん、何だぁ? ……おい! どうしたあんたら」
「何だ何だ、って、おいおい泥塗れじゃねえか、一体どうしたってんだ」
それもその筈。声の主であるルイーネと彼に寄りかかるようにして立つユアは、二人共頬や纏った襤褸に泥を飛ばし、さらには細かな擦り傷までつけていた。驚き駆け寄ってくる人々へと、ルイーネが申し訳なさそうに頭を垂れる。
「突然すみません、山の中から灯りが見えたもので……。実はこの先で崖崩れがありましてね……」
「何だって、崖崩れ!? あんたら怪我は!?」
「かすり傷だけだ、大丈夫」
ユアが首を横に振るも、彼女を気遣わしげに見つめるルイーネと、彼に寄りかかるユアの様子に、人々は心配そうに眉根を寄せる。
「それより、馬車も積んでいた荷物も埋まってしまったことがな。あの道も当分使えそうにないし、掘り起こすのも難しいだろう……。まあ、旦那と私が生きているだけでも幸運か……」
「ええ、それだけでも幸運でした。しかしあれがなくて、この先どうすればいいか……」
ため息をつくユアに、ルイーネが沈痛な面持ちで頷く。
「なんとまあ、確かに命があったことは幸運だが、不運なことだなぁ……」
「しかし、崖崩れか。確かにここ数日雨は降っていたが……」
「――そうかあれは、崖崩れの音だったんですね」
口々に話していた人々がその言に振り返ると、騒ぎを聞きつけやって来た機斗が眉根を寄せていた。
「先程、狩りをしている最中に地鳴りを聞いたものですから……」
「本当か、姉ちゃん。姉ちゃんのお仲間は皆無事なのかい?」
「お陰様で、皆無事に合流しました。それにしても、そんなに大きな崖崩れだったとは……」
顔を青くした機斗を静かに見つめていた一人の老人が、ユアとルイーネに寄り添い、その肩をそっと叩く。
「……何か、儂らに助けてやれることはあるかい?」
崖崩れ、という衝撃的な状況と二人の演技を機斗の言ですっかり信じ込み、警戒心よりも同情心が勝ったようだ。周囲の人々も、次々に頷く。
「でしたら、一晩だけでもご厄介になることはできますでしょうか」
「勿論だ。今日は客人達が持ってきてくれた肉もたんとあるし、丁度宴の準備をしていたところなんだ」
「それなら、世話になる礼に私達にも手伝わせておくれ」
ユアの申し出に、いや、怪我人にそんなことは、困った時はお互い様だ、と人々が首を振るが、せめても、と願い出るユアとルイーネに、人々が押し切られる。
「それならありがたくいただこう。余った分は干し肉にできるから」
「あまり遅くならないうちに戻っておいで、宴が始まってしまうからね」
「ありがとう、そうさせてもらおう」
口々にそう言い、それぞれの作業へと戻っていく人々に頭を下げると、ユアとルイーネはそっと頷き合う。
これで、山沿いの道へと進むことを彼らが少しでも躊躇えば。
願いは、二人同じ。けれどまず受け入れられ、潜入できたことへ胸をなで下ろしながら、二人は野へと繰り出していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
他の猟兵との絡み・連携歓迎
ああ、先へ続くための一歩を踏み出した人達なんやね
安住の地にたどり着く手助けしたいなあ
旅汚れた、よれっとした格好に
旅人やしそういう態はお手のもの
警戒させたり怯えさせぬようこちらも恐る恐るといった風に接触
あっちの方行こ思てたんやけど…皆してこっち来てるいうことは、あっちも色々酷いん?
世界知識使用
それらしい圧政被害話もする
WIZ
ご飯貰うようお願い
こちらの提供は毒使い使用した殺虫剤・虫除け・獣避け
応用効くなら解毒剤とか薬草茶の作り方も
これ、お酒に入れるとええ風味出るで!
信を得たら大型の獣も多いし、崖崩れしそうな地形やったから…等と他の猟兵と口裏合わせ進路変更するように誘導
リーヴァルディ・カーライル
…ん。旅を続けているなら一定数の傷病者がいるはず…。
疫病楽団から護りきっても、彼らが助からなければ意味がない。
私は医者でも聖者でも無いけど…今回は彼らの真似事をこなそう。
事前に防具を改造して気合いを入れて旅人に変装し
礼儀作法に則り挨拶をした後、傷病者の治療を申し出る。
…具合の悪い人や怪我人がいれば教えて欲しい。
私なら治療できるかもしれないから…。
両目に魔力を溜め暗視を強化し傷病の痕跡を探り、
救助活動で得た知識と第六感を活用して、
治療する部位を見切り【限定解放・血の聖杯】を発動
吸血鬼化した自身の生命力を吸収した呪詛の血を一滴、患部に垂らす
…ん。これで良し。後は温かい物を食べて良く休みなさい。
●潜入~手を差し伸べる者達~
「まぁ……それはここまで大変な思いをしていらっしゃったのね」
ごりごりと薬草をすり潰す手を眺めていた女が眉尻を下げた。
その様子に、薬草をすり潰していた手を止めたクルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は、緩やかに肩を竦める。
「まあね。でもあなたのとこも今聞いた限りよっぽど色々酷いし、あっちの方行こ思てたんやけどやめといた方がよさそやなあ」
「ええ……近隣はどこも似たような村ばかりだったし、お勧めしないわ。本当に、どこか心安まる地があればいいのだけれど……」
深いため息をついた女は、拾い集めたらしい大きな葉っぱを手に小さな子供が駆け寄って来ると笑みを向け、楽しそうに話してはまた子供が駆けていくのを見守っていた。
それを微笑ましく眺めながら新たな薬草をすり潰し始めたクルルの視線に気づき、女が寂しそうに笑う。
「隣の家の子だったの。家族はあの子以外皆、いなくなってしまったのだけれど……。それでもああやって笑っているところを見ると、私もがんばらなくちゃ、って。あの子達の未来のためにも」
「……そうやね」
しっかりと前を向く女のその視線は、先に続くための一歩を踏み出した者の姿、そのもので。その姿に目を細めたクルルは、せっせと手を動かし続ける。
「――よし、出来た」
「まあ! こんなに沢山」
しばしの後、クルルがずらりと完成した薬包みを並べて見せると、女は目を丸くした。
「これは殺虫剤、水に溶かして使ってな。こっちは虫除けと獣除け。どっちも香みたいに少量焚いて使うとええよ。こっちはお腹の不調とかに効く薬草茶。んで最後のこれは、お酒に入れるとええ風味出るで! こっそり試してや!」
クルルが説明する一つ一つの効能を丁寧に書き取っていた女も、それには吹き出して楽しげに頷く。
「沢山ありがとう。次の村まで長い旅になりそうだから、助かるわ」
「ああ、山の方行こうとしてたんやっけ。崖崩れしたんやってな。近く通った時、なんや危ないなと思ったとこあったけど」
「ええ、そうみたいなの。あの先には村があるという話みたいだけれど、別の道を行った方が良さそうよね……」
「その方がええかも。命あっての、やからね」
やんわりと同意しながら、クルルは頷いて微笑んだ。それが、彼女達が安住の地にたどり着く道に繋がると信じて。
別のテントの中では、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が横たわる人々の間にしゃがみ込み、向き合っていた。
具合の悪い人や怪我人がいれば教えて欲しい、治療できるかもしれないから。
野営地へ到着し、先に着いている他の猟兵達の仲間だと挨拶してからそう告げたリーヴァルディは、直ぐ様手を引かれて一つのテントへと案内されていた。
彼女の読み通り、旅を続けている民達の間には、病や怪我で伏せっている者もいた。村に中々辿り着けず、医者に診てもらうこともままならない彼らは、持ち合わせの薬草でその場を凌いでいる状態だったのだ。
(疫病楽団から護りきっても、彼らが助からなければ意味がない)
リーヴァルディは医者でも聖者でも無い。けれど、真似事をこなすことなら、できる。
「この者は先日荷崩れを庇って膝に傷を負ってしまって……それ以来、高熱が続き、歩くことすらままならなくなってしまったんです」
症状を説明する老婆に頷き、怪我人の男の元へと膝をついたリーヴァルディは、お願いします、と半ばうなされるように囁いたその男の膝付近を、魔の力を集中させた瞳で見つめる。
これまでに得た知識も全て動員し、じっくりと男の様子を観察すれば、熱の原因は、膝の傷から雑菌が侵入したことによる炎症であることが推察できた。
「これなら……ちょっと、失礼」
ゆっくりと傷に巻かれていた布を外し、傷口を露わにする。様子を伺う老婆からは見えないように、そっと小指の先に針を突き立てると、じわりと血の滲んだ小指から一滴、傷口に血を落とした。
それは、リーヴァルディが分け与える血の聖杯。自身の半身を構成する力を解放することで一時的に吸血鬼化し、高まった生命力を凝縮した血を分け与えることで、傷ついた者に救いをもたらす、治癒の一滴。
「……ん、これで良し」
薬草を取り替える素振りで布を元通り巻き直したリーヴァルディが老婆へと向き直ると、老婆が安堵したようにほっと息をつく。
「後は、温かい物を食べて良く休みなさい。……次の人は?」
「ああ、ありがとうございます。では次は、こちらの娘を――」
案内する老婆に続いて、リーヴァルディは立ち上がる。
そう、医者でも聖者でも無くても、真似事でも――それでも救うことは、できるから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アウレリア・ウィスタリア
ダークセイヴァーはボクの故郷ですから
この地を放浪する苦しさは知ってるつもりです
……でもボクには彼らのために出来ることがない
あるのは歌うことだけ
せめて子供たちに一時の安らぎを
ボクの歌で贈りたい
【空想音盤:愛】
父に抱かれ眠りにつく穏やかな一時のような
母の奏でる子守唄で安らぐ一時のような
家族と共に過ごす幸福な一時のような
そんなささやかな安心を
子供たちだけじゃない
大人も老人も皆が安心できるような深い愛を
ボクの魂が覚えている愛を奏でよう
山には危険があると聞いたから
この一晩の出会いだけかもしれないけれど
この地に生きるものとして
いつか脅かされることのない幸福を掴んで欲しいから
アドリブ歓迎
朽守・カスカ
このまま無為に散らせるつもりはない
かといって取り立てて役立てる術もない
だから、私も同じように彷徨う旅人のふりをして
流浪の民と接触を図ろう
最初は、警戒心を抱かれないよう
か弱い少女のように
ささやかな宴に混じれば
安心した素ぶりで、実はと打ち明けるように語ろう
「私には、少し先の危険を見通せるんだ」
本当はそんな力もないし
そう言われても簡単には信じないだろうから
空にナイフを何本も投げ、芝居を打とう
【幽かな標】
幾本も降る刃を避け
方便を信じさせたなら
「この力のお陰で生き延びられた」
「どのような危険かはわからない。けれども貴方達に脅威が迫っている。このまま進んではいけない」
(私は灯台守。貴方達の行く先を示すよ)
リインルイン・ミュール
領主の襲撃から逃げ出し、一人彷徨い始めた設定ですが
一人旅というのも怪しいですカラ、何方かと出会って一緒に旅してきた設定も良いですね
口裏は合わせますヨ
ではワタシは唄を一つ
永遠とも思える夜に、今日を共に在れた喜びと、明日も共に在る事を願い
一人一人は弱くとも、寄り添い手を重ねれば、強く地を踏みしめ歩いて行けると信じ
明けぬ夜は無いのだと、いつかの果てに朝は来るのだと、幽かな希望を胸に生きる……そんな感じの内容の唄を
こんな世ですから、願いや希望は大事デス
例えささやかでも、この唄が心の支えになる事を願います
後は会話の中で、前に山の村から逃げてきた人と会ったとか、そういう話をして
其方には行かないよう言いマス
●潜入~灯火を与える者達~
流浪の身である彼らにとっても、客人を招いた宴は久しぶりのことだった。
潜入した猟兵達がそれぞれに狩った肉のおかげで、宴の食料どころか当面の糧を得たこともあり、たまの贅沢だ、と酒まで持ち出していた宴は、夜の中で煌々と輝く星のように賑わいをみせていた。
いくつか熾された瑠璃唐草色の焚火の元、肉入りの温かな鍋をよそった男が朽守・カスカ(灯台守・f00170)へと椀を差し出す。
「さあ、嬢ちゃんも旅の身なんだろう? いっぱい食べて力をつけてくれよ。あんたのお仲間のお陰で、俺達も今日は腹一杯まで食えるんだ」
「……ありがとう」
受け取った椀の温かさに安堵したようにカスカが笑みを浮かべれば、男もまたにかりと笑みを浮かべて山盛りにした椀を手に隣に腰掛け、がつがつと肉をかきこんでいく。
「貴方達は、これからどちらに?」
「あの先に村があるって聞いてな。山沿いに進もうって話してたんだが……ほら、崖崩れで道が塞がったらしいじゃないか。それで、ちょっと無理があるんじゃないかってね」
けど、と唸る男に、カスカが小首を傾げる。問うような視線に、男が頬を掻いた。
「迂回する道も探せばあると思うんだよ、俺は。もうしばらく村に立ち寄ってないし、怪我人や病人も、村にさえ着ければ医者に診せることだってできるかもしれない。だから元気な奴らで迂回路を探しに行けたらって思うんだが、危険だって、意見が割れてなあ」
苦い笑みを浮かべる男に、カスカはしばし思案してみせると、実は、と囁いた。内緒話でもするかのようなカスカの雰囲気に、男が耳を寄せる。
「私は、少し先の危険を見通せるんだ」
「へ? 嬢ちゃん、何言って……。ああ、今の話心配してくれたんだろ、それなら――」
気持ちだけで十分、と告げようとした男に、見ていて、と囁き一つ。
立ち上がり焚火から離れると、無造作に空へと幾本ものナイフを放る。
「っ、嬢ちゃん!」
(私は、灯台守)
血相を変えて立ち上がった男に、周りの人々もなんだなんだと視線を集めた。
彼らに笑みを一つ向けると、自らが投げ、ばらばらの軌道で自らの上に降り注ぐ刃を、カスカは次々と避けていく。
彼女を導くのは、形見のランタンが零す、幽かな灯――『標』。
(貴方達の行く先を、示すよ)
からりと音が鳴って最後のナイフが落ちると、人々から拍手が上がる。
「びっ……くりしたあ。よくわからんが芸の一つかい? すげえなあ、嬢ちゃん!」
安堵したようにへたり込んだ男の元に戻ると、カスカは静かに微笑んだ。
「驚かせてすまない。けれど、この力のお陰で私は生き延びられた」
このまま、無為に彼らを散らせるつもりはない。
カスカの強い眼差しに、男も気づけば笑みを消し、その瞳を見つめ返す。
「どのような危険かはわからない。けれども貴方達に脅威が迫っている」
このまま、山に進んではいけない――。
カスカの言諸共咀嚼するかのように、男は椀の残りを流し込むと、おかわりをよそって座り直す。
一方連なって張られたテントの一つでは、宴の楽しげな雰囲気にまだまだ遊び足りないと騒いでいた子供達が寝かしつけられている最中だった。
「ずるいやずるいや、大人達はまだ遊んでるって言うのにさ」
「そーだよー、私達だってもっと遊びたい!」
「そうは言っても、明日はまた移動しなければならないんだから……」
「そうだぞ、ちゃんと寝なくて途中で歩けなくなったら困るだろう?」
「――それなら、ボク達が歌を歌いましょうか」
困ったように話す大人達と不満を漏らす子供達の元に、鈴鳴るような声が振る。
テントの入口をみた彼らの目に映ったのは、静かに佇むアウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)と、フランクに手を振るリインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)だ。
「お歌? わあ聞きたい!」
「私も聞きたい! 聞かせて、お姉ちゃん達!」
「ええ、ワタシ達でよければ歌いまショウ!」
どん、と胸を叩いたリインルインに、子供達がきゃっきゃと喜び手を叩く。
「いいんですか、旅の方。折角の宴なのに……」
申し訳なさそうに眉を下げる大人達に、アウレリアは首肯を返す。
ダークセイヴァーは、アウレリアの故郷だ。だからこそ、この地を放浪する苦しさは知っている。
せめて、彼らに一時でも安らぎを贈ることができるなら。
「構いません。どうぞ、お二人ともよろしければ宴に」
しかしそう告げたアウレリアに、大人達は首を横に振った。
「いいえ、折角ですから私達にも聞かせてくれませんか、旅の方」
「ええ、是非」
子供達の寝床の隣に並んで座った大人達にリインルインが笑みを浮かべ、アウレリアもゆったりと頷いた。
テントでの小さな音楽会の始まりだ。
夜の空へと、清らかな声が響く。
この一晩の出会いだけかもしれない。
けれど今だけでも、父に抱かれ眠りにつく穏やかな一時のような。
母の奏でる子守唄で安らぐ一時のような。
家族と共に過ごす幸福な一時のような。
そんな、ささやかな安心を。
そう願うアウレリアの歌声は、深い愛情に満ち溢れている。子供達だけでなく誰しもが安心できる、包み込むようなその愛情は、アウレリアの魂の記憶。全てを愛する、赦しの歌声。
その歌には、いつか脅かされることのない幸福を掴んで欲しいという、この地に生きる者としての願いも込められて、どこまでも優しく、温かに響いていく。
アウレリアの最後の一音に続くように、リインルインの歌声もまた、朗らかに響いていく。
永遠とも思える程に続く夜に、今日を共に在れた喜びを。
そして、明日も共に在れる願いを。
一人一人は弱く虐げられようとも、寄り添い手を重ねれば、きっと強く地を踏みしめ歩いて行けると信じる心を。
明けぬ夜は無い。いつかの永遠の果てに、朝日は昇る。
だから、その日まで生きるためにその胸に幽かな希望を。
この歌が少しでも支えに、その希望になればと願いを込めて、リインルインもまた歌う。
二人の歌声に、大人達の瞳にはいつしか涙が溢れ、子供達も静かに聴き入っていた。
「ありがとうございます、旅の方。いつか……いつかきっと、その日は来るでしょうか?」
ぽたりと涙を零した女へと、リインルインがしゃがんで視線を合わせた。
「きっと。――ほら、こんな世ですから、願いや希望は大事デス!」
だから信じて。
リインルインがそう笑い、ね? とアウレリアを振り返れば、アウレリアも深く頷きを返して応える。
「どっちのお歌も、俺好きだなー。なあなあ姉ちゃん達、今のお歌教えて?」
「あっずるーい! 私も私も!」
「いいですよ、では、アナタ達が眠るまで付き合いましょう」
寝床の隣に座ったアウレリアの歌声に、万歳をして喜んだ子供達が続いていく。リインルインも大人達も共に歌うその声は、子供達の歌声が小さな寝息に変わるまで続いていった。
遠く、やわらかな歌声に目を細めていたカスカに、椀を置いた男がなあ、と尋ねる。
「……俺に危険を伝えるがために、自分が怪我するかもしれねえのにあんなことまでしてくれたのかい、嬢ちゃん」
カスカは、答えない。ただ静かに見つめ返したその視線に、男はふっと息を吐くと、ゆるやかに笑った。
「ありがとよ、嬢ちゃん。その心を、俺は信じるぜ。……山へ行くのは止めにしようって皆に言うよ。村はまた探せば見つかっても、命は一つだからな」
そうと決まればまた長旅だ、力をつけるぞ! と再び椀をかきこむ男にくすりと口端を上げると、カスカも椀に口をつける。
まだ温かなそれは、まるで灯火のように、身体の中に温もりを灯した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グレ・オルジャン
急拵えの一団だけど
なんとか信を勝ち取らないとね
ご同輩とは仲良くやろう
脅かすつもりじゃなかったんだ
警戒は尤もと両手を上げ
あたしらもこの通り、逃げて来た身の上さ
情報交換といかないかい?
身の安全は喉から手が出るほど欲しい
あんた方もだろう?
良かったら一緒に食おうよと
獲ったままの鳥を見せ
織物やなんかは苦手で悪いな
代わりに猟を手伝おう
生きるに要るだけ
あんた方には今まさに必要なもんだ
明るく在れるもんは自分くらいしかなくてさと
宴では賑わしに一役買おう
獣避けに笛でも披露しようか
せめて前途が明るくあるように
別れ際に携帯食の干した棗や葡萄、肉を分け
この先は迂回した方がいいと仲間に調子を合わせる
…さて、狩りの時間だね
霄・花雫
流れの踊り子、とかダメかなー。
うーんと、……あのね、確かに猟兵の仕事として来てるんだけど、それで以前にこんな一所懸命生きて来たヒトたちなんだもん。少しくらい、笑って欲しいじゃない?
あたし、踊ることしか出来ないけど、それでちょっとでも笑顔になってくれるヒトがいたら嬉しいな。
【パフォーマンス、誘惑】発揮して、いっぱい踊っちゃうよ!
子供たちと【手をつなぐ】して、一緒に踊っても良いかもね。
【コミュ力、情報収集】で話を聞いてみたりもしようかな。【野生の勘、第六感】が導く通りに!
音楽なくても踊れるけど、音源なんか欲しいなあ。
楽器弾けるヒトとかいたら即興で合わせて踊っちゃうんだけどなー。
●潜入~そして、羅針盤の示す先は~
夜は深まり、けれど、宴の火はまだ高々と燃え上がっている。
その一角では、グレ・オルジャン(赤金の獣・f13457)が奏でる軽快な笛の音に即興で乗って、人々の手拍子に合わせ、霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)が軽やかにステップを踏んで踊りを披露していた。
(確かに猟兵の仕事として来たんだけど、それで以前にこんな一所懸命生きて来たヒトたちなんだもん。少しくらい、楽しい時間を過ごして笑って欲しい)
くるくる跳んで、宙を蹴って跳ねて、ターンを決めてはウインクひとつ、と夜に浮かぶ瑠璃唐草の炎を背景に舞う花雫の姿は、まるで空を泳ぐよう。
その動きに合わせ、グレの笛の音が色を変え表情を変えれば、二人を囲んだ人々の拍手も、喝采の声も音高く。二人は即興で合わせているとは思えない程、息ぴったりに宴の場を盛り上げていた。
「お姉さんすごい、笛上手なんだね! 猟でも鳥を手際よく仕留めてたし、私もいつかそんな風になりたいな」
ようやく大人の仲間入りをしたのであろう年の頃の娘にきらきらと見つめられたグレが、そうかい? と、からり、笑う。
「そう思ってもらえたなら幸いだ。明るく在れるもんは自分くらいしかなくてさ。賑わしに一役買えたようで何よりだよ」
そんな風になりたい、と。そう願う娘の、この野営地の人々の前途が明るくあるように。一休みしていたグレの笛がまた明るく朗らかな曲を紡げば、目配せして笑った花雫も体力の尽きるまで元気に跳ねる、踊る。
一際大きな拍手の後、グレの元に駆け寄った花雫が片手を上げれば、グレも口端を上げて応じ、二人の手がぱちり、と合わさる。
「音楽なくても踊れるけど、即興で合わせて踊れてとっても楽しかった!」
「こちらこそ。獣避けにでも、と吹いた音にああも楽しそうに踊ってくれるもんだから、ついつい興が乗ったよ、ありがとう」
笑顔で語らう二人の元に飲み物が運ばれると、流浪の民達の音頭で再び乾杯の声が上がる。まだまだ、夜は終わりそうにない。
こうして、この場の流浪の民達を助けるため、それぞれが役を果たし、彼らに希望をもたらさんと、前途を照らそうとした夜は更けゆき、やがて、日の光差さぬダークセイヴァーの地にも、朝が来る。
「それじゃあ、道中気をつけて」
「ああ、それにしてもこんなに貰っちまっていいのかい、姉さん。あんた達にとっても貴重なもんだろう」
グレから受け取った包みを開き、男がおずおずと尋ねる。
包みの中身は、携帯食になる干し棗や干し葡萄、それに食べやすいよう小分けにした干し肉だ。
ゆるやかに首を振ったグレは、構わない、と後方でそれぞれ流浪の民達の出立を手伝う猟兵達を指す。
「確かにあたしらも、それぞれが逃げてきた身の上さ。でも、こっちは皆狩りにも慣れてるし、狩りさえできれば、肉はまたいつでも手に入るから大丈夫」
「うーん、そうかい?」
「いいんだよー、あたし達もテントを借りれてとってもありがたかったから」
グレの後ろからひょこりと顔を出した花雫がそう続けば、男も笑顔で包みをしまう。
「それじゃあ、ありがたく。持ちつ持たれつだな」
「そうそう! どうかこの先も気をつけてね」
「ああ、山側はまた崖崩れが起きると危ないから迂回していくんだよ」
心配そうに男を見るグレの視線に、男もどんと胸を叩いて笑う。
「大丈夫。山沿いの村は諦めて、別の村を探そうって話になってるからな。こんだけ立派な携帯食も貰ったし、またしばらく旅を続けるさ」
それじゃあ、と手を挙げて馬を引き始めた男に続いて、流浪の民達は新たな旅路へと進んでいく。その行く先の果ては、誰も知らない。けれど、彼らがその先に潜んでいた脅威から逃れられたことだけは確かだ。
彼らの背が遠ざかり、見えなくなるまで見守っていた猟兵達の耳に、一拍の静寂をおいて、流浪の民達が当初進む予定であった方角から、蹄の音が迫り来る。
不穏さを孕んだ風にさらわれた赤髪を手で押さえると、地鳴る方角を見据えながら、グレはその手に杖を握る。
その銘を、『号火』。
構えた杖の縁、銀が光る。彼女の瞳が、すう、と細められた。
「……さて、狩りの時間だね」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『首無しの天馬』
|
POW : 突進
【高速移動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突進】で攻撃する。
SPD : 幽鬼の馬車
自身の身長の2倍の【馬車】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
WIZ : 飛翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
イラスト:にこなす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●蹄は奏で、蹄は語る
その音は、地鳴りに似ていた。
一つ一つは地を蹴る軽やかな音の粒であるそれも、しとど降る雨の如く音粒が増えれば、轟く重低音となって猟兵達の鼓膜を打つ。
何処から来て何処へ行くのか、それは誰にもわからない。だがその地鳴らす蹄が通った後に、死呼ぶ病だけが残されることだけは確かだ。
彼らが標的とした者達は逃れたが、それでもその歩みが止まるとは限らない。止まらなければどうなるか。いつか次の標的が出るだけだ。
なれば、今成すべきは。
猟兵達の視界に、ついにその姿が現れた。
――誰が呼んだか、『疫病楽団』。
昏き世界に、鈍く光る刃が抜き放たれる。
今、幕は開かれた。
リインルイン・ミュール
疫病楽団……ナルホド。確かに音は小気味好いものですが、それは災いの音色
人々に届く前に、搔き消しまショウ
頭が無いなら耳も無さそうですが、空気を震わせる音の波、歌の障害にはなりまセン
カレら「楽団」全体を意識し、呪詛と祈りを込めた鎮魂歌を歌います
恐らく蘇ってから走り通しでしょう。高らかに奏でる蹄を止めて、もうお休みなさいナ
少しでも止まればきっと、他の皆さんも攻撃し易くなりマス
敵が接近してきたら、念動力で攻撃軌道を僅かに逸らし回避しつつ、剣や拳を振るって応戦
跳躍し歌から逃げようとするなら、鞭状に変形させた剣を巻き付けるように叩き付け
同時、剣に纏わせたサイキックエナジーを電流に変換し流し込む二回攻撃デス
●序曲~祈りの呪歌~
土煙を上げて猛然と向かい来るその蹄の音に、リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)は耳を澄ませる。
「『疫病楽団』……ナルホド。楽団と称するだけはありますネ。確かに小気味好い音デス」
一つ一つの蹄が地を打ち鳴らす襲歩の音は、確かにそうだ。だが集まり、轟く重低音となったそれに、リインルインは目を細めて地平の先に現れた姿を見やる。
その重低音は、災いの音色に他ならない。
深呼吸を一つ、それから大きく息を吸い込んだリインルインの口から、旋律が流れ出した。
祈りを込めた鎮魂歌――いや、込められたのは祈りだけではない。その名のとおり呪詛も込め、朗々と歌い紡がれるは『旧きものへの呪歌』。
向かい来る『疫病楽団』は頭部を失った天馬なのだと言う。頭が無いなら耳も無いだろうが、その程度、空気を震わせる音の波――歌の障害になどなりはしないと、その姿を真っ向見据えたリインルインの歌が、天馬達を出迎えた。
途端、轟音を上げて駆けていた天馬達の速度が目に見えて落ちていく。歌の射程圏内へと踏み入れたのだろうその変化に、周囲の猟兵達が迎え撃つべく駆け出し、その背を見送りながら尚も歌を紡ぎ続けるリインルインの口元に、小さな笑みが灯る。
(蘇ってから走り通しでしょう。高らかに奏でる蹄を止めて、もうお休みなさいナ)
狙い通り、呪詛に取り込まれその脚を止める天馬も現れる中、それでも脚を止めぬ強者もいる。あの者こそが元凶と気づいたか、一匹の天馬がリインルインへと脇目も振らずに駆けた。
「……歌だけとでも思いましたカ?」
あと数歩でリインルインの身体へと激突するかと思われたその時、天馬が突如その進路をぐにゃりと変え、リインルインの身体を紙一重で避けていく。
何が起こったかわからないようにたたらを踏んだ天馬の胴へと振り返ったリインルインの剣が風を切り迫るが、咄嗟に空へと逃げた天馬に、その切っ先は僅かに届かない。
しかし、彼女の剣は逃しはしなかった。滑らかに、流れるように鞭へと形態を変えたそれを天馬の脚に巻き付け捉えると同時、ばぢりと音を立てて剣の上を紫電が走る。瞬間、大きく震えて空に留まった天馬の身体を引きずり落とすように鞭剣を振り抜いたリインルインは、その巨体を大地へと強かに叩きつけた。
動きを止めた天馬を見下ろしながら、続く蹄の音に、再び形を変えた剣を構え直す。
「さあ、災いの狂想曲が人々に届く前に、搔き消しまショウ」
成功
🔵🔵🔴
朽守・カスカ
お前達に恨みはない
けれども、蹂躙を見過ごすつもりはない
過酷な旅の中でも
宴を開き、心配してくれた
心優しい彼等のためにも
私のなすべきことに、力を尽くそう
縦横無尽に天翔ける馬の群とは
…厄介極まりない
一体ずつ相手にするのも難しいな
そうして鎖のついた錨を打ち出すガジェットを呼び出せば
【花葩】で花咲くように複製
迫る天馬も充分に引きつけてから一斉に放とう
直撃で打ち倒せればそれでよし
鎖が絡んで動きを阻害できれば
仲間にトドメを任そう
お前達のあるべき骸の海は、此処ではない。
行く先は私が示すから
これ以上、悲しみを齎すことなく静かに還れ
(そして、彼等の旅路の果てに、平穏と安寧がありますように)
千草利・機斗
さて……彼らは逃しましたし、あとは思う存分、殲滅をしましょうか
――覚悟しやがれ、疫病楽団
お前たちに、未来はない
【戦闘知識】と【情報収集】を用いて戦況をよく見ておきます
何か些細なことでも気づいたことがあれば味方の猟兵に迅速に共有を
攻撃は至近距離まで詰め寄って行いましょう
【怪力】と【捨て身の一撃】を乗せた【狩り】で思い切りぶん殴ります
また、【2回攻撃】が発動可能であれば【バンカーの運命】も使用します
基本的に戦闘は前衛で行いますね
味方の猟兵、特に後衛の方が狙われた際には、
それを遮るように立ち位置を変えて庇いましょう
このくだらない身体でも、誰かの役に立てるならば幸いです
●第一幕第一曲~~
視線は瞬時、先程流浪の民達が進んでいった道へ。
無事、逃がすことができた。あとは思う存分殲滅をするのみ。視線を戻し、天馬を迎え撃つべく駆ける千草利・機斗(Malice・f14680)の声色が変わった。
「――覚悟しやがれ、『疫病楽団』。お前たちに、未来はない」
やってみろと言わんばかりに、口を失い嘶けぬ代わりに前脚を振り上げる天馬。その巨体が轟、と至近距離に迫るまで十分に引きつけた機斗は、身体を捻り天馬の突進を紙一重で躱しながら、その腹へと渾身の拳を向ける。
「黙って喰らえよ」
残像を残すかのような超速の拳が狙い通りに胴にめり込み、突進の勢いを横から打ち据えられた形になった天馬の身体が傾いだ。直後、機を逃さず繰り出されたもう一方の拳が先程打ち据えた部分と寸分違わず天馬の胴を力強く打ち抜く。
どう、と今度こそ土煙を上げて倒れ伏した天馬は、地にめり込み、二度と立ち上がることはない。
次、と狙いを定めるように別の天馬へと視線を遣った機斗の目前、接近戦は不利と見たか、天馬の蹄が一度空を掻くようにしてから空へと駆け上がっていく。
(! 今の仕草)
空へと駆け上がるその直前の仕草に、機斗はなにか戦闘のヒントになるのでは、と各々戦闘を繰り広げる猟兵達へと振り返る。しかしその視線が捉えたのは、先程空へと駆け上がった天馬だ。空から地へと、今度はほぼ直滑降に等しい角度で駆け下りてくる。その先にいるのは――。
「っ……!」
咄嗟にその間に滑り込み身体を抱えるようにして地へと転がる。
別の天馬へと注意を払っていた朽守・カスカ(灯台守・f00170)は、何が起こったかわからないままに機斗と共に地を転がるが、つい先程まで自分がいた場所へと猛然と突っ込んできた天馬を見て、すまない、と自分を庇った機斗を見上げる。
「誰かの役に立てたならば幸いです。怪我は?」
「大丈夫。それにしても縦横無尽に天翔ける馬の群とは……厄介極まりない。こうも数が多いと一体ずつ相手にするのも難しいな」
眉根を寄せ天馬を見遣るカスカへと頷いた機斗は、注意深く周囲の天馬達の脚を見つめる。
「けれど、隙はあります。あれを」
一体の天馬が、蹄で一度空を掻き、直後に空へと飛び立っていく。
「空へ立つには前動作が必要なのか」
「そのようです」
視線を合わせ頷き合った二人の間に、それ以上の会話は不要だった。
また終わらぬ旅路へ歩み出した流浪の民達。自らが過酷な旅の渦中にあってももてなすためにと宴を開き、同じ流浪の民と思い込んだ猟兵達の行く末を心配してくれた心優しい彼等のためにも。
「恨みはない。けれども、蹂躙を見過ごすつもりはない」
(私は、私のなすべきことに力を尽くそう)
瞳を開いたカスカの手の中に、魔導蒸気機械が次々と増えていく。
それはまるで、芽吹いた種が次々と蕾を作り、綻んでは花開くようで。
そうしてカスカが咲き誇る花を束ねて手にしたのを見て、機斗は手近な天馬へと拳を固め奇襲をかける。
その天馬も先程の機斗の一撃は見ていたのだろう。即座に距離を取ると、機斗を跨ぐようにしてその蹄が空を掻いた。そして同時に機斗を突き飛ばそうと、別の天馬二頭が彼女へと迫る。
(今)
カスカは、その全てに、そして周囲の天馬にも向けて手にした花を振り抜いた。
「お前達のあるべき骸の海は、此処ではない」
次の瞬間には咲き誇る花から鎖が伸び、その先に下がる錨が天馬へ向かい襲いかかる。
「行く先は私が示すから――」
これ以上、悲しみを齎すことなく静かに還れ。
昏い世界の中、灯るようなその声に連なって、錨の激突する鈍い音が続く。
当たり所が悪かった天馬がその一撃でばたばたと崩れ落ちていく中、崩れず、鎖にその歩を阻まれ身動きが取れなくなった天馬へは、機斗が素早く迫り、その拳で次々と地へ沈めた。
そうして辺り一面の天馬を屠った二人の周囲で倒れ伏していた天馬達の身体が、さらさらと砂のように風に攫われ、骸の海へと還っていく。
(彼等の旅路の果てに、平穏と安寧がありますように)
祈りは、誰がためか。
静かに舞う砂へと向いたカスカの視線は、蹄の音で現実へと返る。
駆けていく機斗を追うように、蒸気機械の花を手にした少女は、地を蹴った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
壥・灰色
壊鍵、『貫殺式』
ロード、マーシレス・マグナム
四肢の魔術回路が輝き、無慈悲なる衝撃を装填する
遠距離より敵を猛撃
空をお前らが駆けるのなら、おれはそれを落とす速射砲になる
拳脚を繰り出す度、破裂音と同時に、空気を歪めて飛ぶ『衝撃』の弾丸
その初速は小口径ライフル弾――996m/s――とほぼ同様、籠もる運動エネルギーは砲弾に匹敵する
これぞ『貫殺式』、侵徹撃杭
拳脚に乗せた『衝撃』を弾丸とし、敵を貫く連立魔術式
無論相手はオブリビオンだ
一撃で落とせるとは思っていない
だから、死ぬまで、何発でも、その鼻っ面に叩き込んでやる
虚空へ繰り出す拳の連打、その一打一打が撃杭となる
この対空砲火、抜けられるなら抜けて見せろ
●第一幕第二曲~衝弾の追唱~
壊鍵、『貫殺式』。
ロード、マーシレス・マグナム。
壥・灰色(ゴーストノート・f00067)の四肢が彼の令に応えて輝き、無慈悲なる『衝撃』が装填されたことを識らせる。
空を舞い、時に巨大な馬車を引き連れ突撃の時を伺う天馬達を、灰色は静かに見上げた。
装填した衝撃を放てば、一時的に空を駆ること自体、不可能では無い。だが今回灰色が選んだのは、地において速射砲となることだった。
相手が空を駆るのなら、落とせばいい。
シンプルなその理論が成立するのは、彼がそれを成立させるだけの力を有しているからに他ならない。
距離を保ち空から様子を伺う天馬へ、まるで手の届く距離にその身体があるかのように、灰色は力強く拳を繰り出す。
瞬間、破裂音。
地を揺らすかのようなその轟音が鳴り響いたことを、耳があったとて、天馬は認識できなかっただろう。
なぜならその身体は音と同時に、いや、音を超える速度で不可視の弾丸に撃ち抜かれ、放物線を描いて彼方の地へと叩きつけられたからだ。
『貫殺式』、侵徹撃杭(マーシレス・マグナム)。
四肢に装填した『衝撃』を拳脚に乗せ弾丸として放ち、敵を貫く連立魔術式。
弾丸と一口に言っても、その初速は小口径ライフル弾――996m/sとほぼ同様。籠もる運動エネルギーは砲弾に匹敵する。
空気を歪め飛んだその弾丸の威力を目の当たりにした天馬達は、灰色をこの場より最速で排除すべき対象と定めたらしい。灰色は次々突進してくる天馬達へと、右の拳を、左の拳を、右の脚を、左の脚を、間を空けることなく繰り出し、惜しみなく弾丸を放つ砲となる。
無論、どの天馬も最初に灰色が撃ち落とした天馬程、無防備に突進を繰り出しているわけではない。だからこそ一撃で落ちない個体も多くいたが――それは当然、想定済みだ。
一撃で落ちないのなら、死ぬまで何発でも叩き込み、地へと墜とすだけ。
虚空へと繰り出した拳が、轟音の後、また一体、灰色へと向かっていた天馬を引き連れた巨大な馬車ごと地へと墜とし、砂塵に還す。
一打一打の撃杭の雨の中、しかし天馬も退きはせず、それどころか数を増して灰色へと襲いかかる。退いたところで逃げられないことを悟っているのだろう。
それすらも、灰色にとっては些細なことだ。どちらにせよ、目の前の天馬を葬り去る、それが今成すべき仕事なのだから。
「この対空砲火、抜けられるなら抜けて見せろ」
顔色を変えず振り抜いた拳が、また一体、空を駆ける天馬を地へと貫き墜とした。
成功
🔵🔵🔴
クルル・ハンドゥーレ
他の猟兵との連携・アドリブ歓迎
あの人達の行く末に、幸と安らぎがありますように
さてさて
楽団だか何だか知らへんけど
不吉不快な調べをこれ以上奏でるんはやめてもらおか
WIZ
敵ジャンプには空中戦で対抗し追いかけ
敵が上空にいるアドバンテージを可能な限り相殺
敵攻撃には見切り、避けきれぬものは武器受けとカウンターで対応
少しでも敵体力削るべく、破魔・範囲攻撃・マヒ攻撃・毒使いフェイントのせたUC幻月夜行使用
敵ジャンプ進路を見切り、強化した炎をぶつける
はん、高みで安穏とできる思てた?
残念やったね!
骸は土に還り次の営みの礎にならんことを
霄・花雫
よっし、あとは敵を倒すだけ!
あたしは確かに踊ることしか出来ないけど、舞台の上なら何だって出来るよ
敵が飛ぶなら好都合っ、この空ならあたしは誰より自由なんだから!負けないよ!
レガリアスシューズで地を蹴ってUC発動
【空中戦、パフォーマンス】で空を翔けるよ
大気を集めて【全力魔法、毒使い、属性攻撃】込みで蹴り抜いてやるんだから
あたしみたいなちびの蹴りでも、大気の爆発とあたし自身の毒を応用すれば結構良いダメージ出るんだよ。甘く見ないでよね!
【パフォーマンス、誘惑】で自分に敵の攻撃を集めて、【野生の勘、第六感、見切り】も使って空中を翔け回って避けて翻弄するよ
あたしに引っ掻き回されれば誰かへの隙になるでしょ?
●第一幕第三曲~階を駆けろ~
「よっし、あとは敵を倒すだけ!」
小さな身体に猛然と迫る天馬の前で、霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)は不敵に笑ってみせた。
(あたしは確かに踊ることしか出来ない、けど)
――舞台の上なら、何だって出来る。
迫る天馬を跳び越えるように、花雫の脚が地を蹴り、二歩目には空を蹴る。その足首にはさながら鰭のような薄翅が揺れた。
花雫にとっての舞台は、この空だ。
この空なら、誰より自由になれる。誰より自由に泳いでみせる。
自身を追い、速度を上げて空を駆け上る天馬を視界の端に捉えると、くるり、宙を一回転。
その脚へと周囲の大気を束ね集めると、迫る天馬を迎え撃つように鋭い蹴撃を放った。
同時に集められた大気は天馬に激突した瞬間、爆ぜて細かな刃となり、天馬の身体に傷をつける。
だが、それだけではない。その巨体がぶるりと震え、がくがくと痙攣を始めたのを見て、花雫は口許に笑みを浮かべた。天馬の反応は、集めた大気に混ぜ合わせた彼女の毒が回り始めた証左だ。
「あたしみたいなちびの蹴りでも、大気の爆発とあたし自身の毒を応用すれば結構良いダメージ出るんだよ。甘く見ないでよね!」
同時に繰り出された花雫の追撃に襲われ、痙攣し、身動きを取ることの出来ない天馬の身体は地に叩きつけられた。その命尽きるまでそう時間はかからないと見て次の標的を探す花雫の上空に、最早耳慣れた蹄の音とは異なる、車輪の音が迫る。
振り仰いだその視界には、見慣れた天馬と、その倍はあろうかという巨大な馬車。
「ちょっと、馬車のお迎えなんて頼んでないよ!」
その大きさに目を見開きながらも咄嗟に身を捻り、花雫は天馬と馬車の突進を間一髪で回避する。上空から滑り降りるように地へと駆けた天馬は方向を変え、再び空中の花雫を馬車で轢き潰すべく、蹄で空を掻いた。
それは、先に他の猟兵から共有された、天馬が空へと駆け上がる合図そのもの。
その合図を、クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は見逃さない。
「楽団だか何だか知らへんけど、不吉不快な調べをこれ以上奏でるんはやめてもらおか」
疾駆して勢いよく地を蹴ったクルルが、空へ駆け上がろうとする天馬が牽引する馬車へと飛び乗った。すかさずその手に生み出されたのは、歪な、『ぎんいろ』の焔。
焔は揺れる馬車に狼狽えた天馬へ次々と襲いかかり、瞬く間にその身体をぎんいろに燃え上がらせる。
「はん、空飛べるからって、高みで安穏とできる思てた? 残念やったね!」
焔を振り払うべく天馬が暴れるが、その動きは意思に反して徐々に硬直し始める。焔が生み出す煙に込められているのは、神経を脅かす麻痺の力だ。暴れ、天馬が煙に塗れるほどに、それは強く、天馬の動きを縛り付けた。
好機と見た花雫が、馬車のクルルへと声を張り上げる。
「着地は自分でよろしくね、おねぇさん!」
「大丈夫や、任しとき。後は頼むで!」
「うん!」
頷いた花雫へにかりと笑って見せたクルルが、自らの足場としていた馬車へ焔を放った。
全て、その焔に呑み込むかのように。天馬同様、馬車も瞬く間にぎんいろに包まれていくのを見て、クルルは馬車を蹴り、軽やかに地へと転がって身を起こす。
クルルが馬車から飛び出したのを見遣った花雫は、今やクルルの焔によって空に縫い止められ、ぎちぎちと身を震わせて嘶くこともできない天馬を前に、深呼吸を一つ。
ぐん、と身体を捻ると、捻りの勢いも加えた大気纏う右脚の一撃を天馬の背に叩き込み、爆ぜる大気の勢いも借りて、馬車諸共地へと叩き伏せた。
目前にどう、と墜ちて動きを止め、少しずつ砂塵と化しながら尚も燃え盛る天馬の身体を、クルルは静かに見つめる。
砂も塵も風に運ばれ、いつかは土に還っていく。
そうして育まれた土が、次の営みの礎にならんことを。
幸と安らぎへの願いは、道の先に消えていった、流浪の人々のためにも。
祈るように願うクルルの耳を蹄の音が打ち、彼女の手の中でぎんの焔が揺らめいた。
燃え尽きることのない焔を手に、クルルは駆ける。蹄が奏でる調べを全て止めるまで。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルフトゥ・カメリア
何だか、ひどく懐かしいような歌声が聴こえた気がした。
……こんな所に知り合いなんざいねぇし、歌に思い入れなんてもんもねぇから気のせい、だな。きっと。
それより、首無し馬のお出ましか。
さっさと出て来てくれて助かったぜ、あのまんま干し肉の作り方とか習っても肉なんざ食えねぇしな、俺。
……習っといて食えねぇのはちょっとあれだろ。
手首の古傷掻っ捌いて地獄を溢れさせ、バスターソードに炎を纏わせて【怪力、破魔、鎧砕き、2回攻撃】。
突っ込んでくるなら【怪力、武器受け】で地を踏み締めて真っ向からぶつかって、【カウンター】で逆に仕留めてやるよ。
他の猟兵が狙われる場合は【かばう、オーラ防御、武器受け】で割って入る。
アウレリア・ウィスタリア
天馬、楽団の尖兵といったところでしょうか?
それとも楽団の移動手段?
空を飛ぶ相手に地で戦うのも骨が折れるでしょうし
ボクは空から迎撃しましょう
さあ、災厄を切り裂く光の橋を架けよう
【今は届かぬ希望の光】を発動
破魔の魔銃で牽制し
鞭剣の切っ先を向け光剣を放つ
翼を奪えば空中での動作も鈍るでしょう
鈍ったところに鞭剣を叩き込み地に落としましょう
そうすれば空と地から挟み撃ちができます
そういえば、ボクと似たような髪色のオラトリオがいましたね
真っ赤な瞳の彼(f12649)
翼も真っ黒ですし何か似たものを感じますね…
まあ、この場では関係ないのですけど
さあ、災いなす楽団にはこの世界から去ってもらいましょう
アドリブ連携歓迎
●第一幕第四曲~空と地の挟撃~
ひどく、懐かしい歌声が聞こえた気がした。
流浪の民達が開いてくれた宴の一夜の中、慈愛に満ちて響いていたあの歌声。
瞬時、その声へと思いを馳せていたルフトゥ・カメリア(月哭カルヴァリー・f12649)は、迫る蹄の音にゆるやかに首を横に振る。
(……こんな所に知り合いなんざいねぇし、歌に思い入れなんてもんもねぇ)
きっと、気のせい。そう結論づければ、手首の古傷へと爪を立てた。
天馬が出てきてくれて助かった。内心息をつきながら、ルフトゥはその姿を赤椿の瞳で捉える。
何せ流浪の民達とあれ以上の時間を過ごそうにも、作り方を教えて貰った干し肉は食べられないし、味見を、なんて言われた日には困り果てていただろうから。
そのまま爪を勢いよく横に引いて手首を掻き切れば、溢れ出るは髪に咲く花と同じ、瑠璃唐草色に揺れる焔。手にした十字架を模す剣へとそれが零れるように流れ落ち、刃が同じ色に灯り燃え上がる。
勢いよく地を蹴り向かい来る天馬の前に仁王立ちになると、ルフトゥはその刃を高々と振り上げた。
(楽団の先兵といったところでしょうか、それとも移動手段?)
『疫病楽団』というその名に結びつきにくい天馬の姿を空から眺め、アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)は密やかに首を傾げる。
けれど、成すこと自体は変わらない。災いを成す楽団にはこの世界から去ってもらう。それだけだ。
天馬達が飛び立つには準備動作が必要と共有されたことにより、飛び立つ瞬間を阻み地上戦へと持ち込めるようにはなったものの、天馬達は依然として、全てを飛び立つ前に捉えるには余りある程の数で、猟兵達へと襲いかかっていた。
「ボクは空から迎撃しましょう」
地と空を自由に駆ける天馬に、同じように翼を持ち空を駆けることのできるアウレリアが飛び立つ。
即座にその身体目がけ突き進んできた天馬の一撃をすんでのところで避けながら、アウレリアはその手に破魔の力宿す魔銃を握りしめ迎撃。突撃した勢いを殺しきれないのを見越し、牽制の魔弾を撃ち込むことで天馬の進行方向を無理に捩じ曲げさせると、その行く手を刺し貫くかのように鞭剣を掲げた。
「さあ、災厄を切り裂く光の橋を架けよう」
なにものにも染まり、なにものにも染まらぬ七色。『今は届かぬ希望の光』――虹に輝く七の光剣が、鞭剣の指し示す先、天馬の片翼を今切り裂かんと空を駆け、光の橋を築き上げる。
光剣に次々とその翼を貫かれれば、天馬もたまったものではない。
大きく嘶いて空でのバランスを崩し、立て直そうとしたその一瞬の隙を捉えると、アウレリアは天馬の翼を絡め取るように鞭剣を振るい、渾身の力で振り抜いた。
鞭剣に翼を捕らわれ、身動きの取れない天馬が目指すは、昏き大地。
そして、その先には。
(そう、あの真っ赤な瞳)
空での動きに気づき、待ち構えるように剣を構えていたルフトゥの赤椿と、見下ろすアウレリアの琥珀の視線が交錯する。
藻掻く天馬の羽ばたきで二人の薄藤の髪が風に舞い、黒の羽根が一片、空に舞う中、最後の足掻きと言わんばかりに、天馬がルフトゥの頭蓋目がけて前脚の蹄を振り上げた。
絡め取り、地へと全力で振り抜いた鞭剣の勢い、それに重量のある天馬が落ちる勢いが乗れば、その威力はいか程か。咄嗟に蹄の威力を削ぐべくアウレリアが鞭剣を引くが、勢いは殺しきれない。
僅かに揺れたアウレリアの視線を視界の端に捉えながらも、ルフトゥはその場から動かない。
振り上げられた蹄から目を離さず、地を踏みしめて焔纏う剣を構え直し。
その蹄を、真っ向受けた。
堅い激突音と共に、勢いに押されたルフトゥの脚が地を削り、蹄と激突した剣が眼前まで押し込まれていく。しかし、それでも唇は弧を描いて。
「逆に仕留めてやるよ」
囁くようなその声と同時、ぴたり、と薄藤の前髪を焦がす直前で留まった剣は、その細腕からは想像もつかぬ力を込めたルフトゥの手により蹄を撥ね除け、返す一撃で胴へと墓標のように鋭く突き立てられた。
追うように地へと降り立ったアウレリアの目前で、天馬の身体が砂塵となって散る。
それを黙って眺めていた二つの視線が今一度交錯し、別れると、二人はそれぞれに地を駆け、空へと飛び立つ。
楽団の演奏は、未だ終わらない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グレ・オルジャン
折角うまいこと逃がせたんだ
追わせないよ
お仲間とは連携
死角を補い合うように立ち回る
突っ込んでくる足許を狙いグラウンドクラッシャー
突き崩した地面に足を取られりゃ重畳だけど
翼を持つ相手だ、そう何度も通りゃしないよね
…それでこそやり甲斐があるってもんさ
奴さんには目がない、なら目配りは脚と翼に
飛翔の動作を読み取ったら体の下に滑り込み
仕込み棍の一撃で銀色狼たちを呼ぶ
でかい獲物だ、逃がすんじゃないよ、兄弟たち
翼の付け根や脚に喰らいつかせ、あわよくば引き倒す
初撃を外したらクラッシャーに切り替え
再び突きを見舞う好機を狙う
勿体ぶった前奏はもう充分だ
雑音でも不協和音でも持っておいで
さっさと退場させてやるからさ
リーヴァルディ・カーライル
…ん。馬の姿で楽団なんて冗談みたいな存在だけど。
あの機動力で疫病をまき散らすと考えると脅威…ね。
…彼らの自由と尊厳を冒させたりしない。
これ以上、被害が広がる前に討伐してみせる…。
第六感に訴え存在感を消す“忍び足の呪詛”を維持し
気配を遮断する形態に防具を改造(変装)
暗視を頼りに敵の行動を見切り【限定解放・血の波濤】を発動
…逃しはしない。一匹残らず蹴散らしてあげる。
吸血鬼化した怪力の踏み込みで敵に接近
生命力を吸収する血色の魔力を溜めた大鎌を振るい
傷口を抉る波動の2回攻撃で敵陣をなぎ払う
殺気を感じたら武器で受け流し大鎌のカウンターで迎撃する
…その突進力は大したものだけど。勢いだけで私は倒せない。
●第一幕第五曲~sfz~
猟兵達の手により、天馬達は目に見えてその勢いを削がれつつあった。けれど、未だその蹄が奏でる音は鳴り止んではいない。
「折角うまいこと逃がせたんだ、追わせないよ」
蹄の追唱を響かせながら向かい来る天馬の群れの前に、グレ・オルジャン(赤金の獣・f13457)が立ち塞がった。天馬達の蹄がその身体を弾き飛ばす直前、燃え盛るような赤髪を揺らし、グレは手にした仕込み棍を天馬達の足許目がけ叩きつける。
グレの体躯からは想像もつかない程の威力で天馬達を出迎えたその一撃は、ぐらり、地を震わせて、天馬達が踏み鳴らそうとした大地を陥没させた。
速度を持って真っ直ぐに突き進んできただけにそれを避け損ねた天馬達は、脚を取られ、巨体をぐらつかせながら蹈鞴を踏む。
そこへ足音も立てず気配も見せず、密やかに迫る影、一つ。リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だ。
馬の姿で楽団などと冗談か何かかと思いはすれど、蹄をかき鳴らし進む機動力で疫病を撒き散らされることは脅威に他ならない。
(……彼らの自由と尊厳を冒させたりしない。被害が広がる前に討伐してみせる……)
血色の魔を纏い、リーヴァルディが手にする大鎌の刃がゆらり、陽炎のように揺らめく。それを握る手にぐっと力を込めたリーヴァルディは、蹈鞴を踏んでいた天馬達の前に、これまで密やかに地を蹴り駆けていた脚で一歩、力強く踏み込んだ。
「……限定解放。薙ぎ払え、血の波濤……!」
疾駆した勢いも乗せて振り抜かれた大鎌から、辺り一面を薙ぐように血色の波が放たれる。一波が目の前で足止めされていた天馬の半数の未来を閉ざし、返す刃でもう一振り放たれた一波が残り半数の命も啜り薙ぎ払った。
「……逃しはしない。一匹残らず蹴散らしてあげる」
鮮やかに狩り取ってなお、直ぐ様紫の瞳に次の標的を移すリーヴァルディの姿に、グレが口端を上げ、ひゅうと口笛を鳴らす。
「こっちも負けてらんないね!」
迫る多数の蹄の音をぎりぎりまで引きつけ、グレが再び大地を強かに打ち鳴らす。しかし、先の集団がその一撃に脚を取られたのを見逃さなかったか、天馬達はグレが棍を振り上げた瞬間に突撃の勢いを緩めると、蹄で一度空を掻き、空へと散り散りに舞い上がった。
「……それでこそやり甲斐があるってもんさ」
翼を持つ相手に、地を揺らし脚を取る手が何度も通用しないことは、当然織り込み済みだ。蹄が空を掻く飛翔の動作を視界に捉えた瞬間に、グレは思考を切り替える。
今し方叩き、陥没させた地面へと身体を低くし滑り込む。その上には、飛び立ったばかりの天馬の腹がある。
(奴さんには目がない。それなら)
目配りは、脚と翼に。
す、と瞬時にその二点を観察した視線が、次いで天馬の腹に定められる。
低くした体勢から、鋭く突き上げるように仕込み棍を繰り出せば、それは見事、無防備な天馬の腹へと叩き込まれた。
高く啼く天馬の下から素早く転がり立ち上がったグレの声が、呼ぶ。
「でかい獲物だ、逃がすんじゃないよ、兄弟たち!」
それは呼び声に応え、昏い世界を裂く流星群のように、銀毛の尾を引いて駆け来る。
跳び上がり、その牙で喰らいついたら離さない。グレが呼んだ銀の毛並み持つ狼達は、グレの指示通り、天馬の翼の付け根や脚に次々喰らいつくと、遂にはその巨体を引き倒し、砂塵へと変えてみせた。
仲間を失った腹いせか、天馬が狼達を狙い突進していく。しかしその間には、再び気配を殺して潜んでいたリーヴァルディが滑り込んだ。速度を乗せた天馬の一撃を、大鎌の刃を巧みに操り、天馬の翼を絡め取りながら捌くことで軌道をそらし、受け流す。
「……その突進力は大したものだけど。勢いだけで私は倒せない」
天馬が巨体を翻し再び狼達へ向かう間を、リーヴァルディは与えない。振り返ったところを刃で両断し砂塵に還したリーヴァルディの隣に、グレが並んだ。
「助かったよ、ありがとう」
「構わない。さっきはあなたの足止めで、まとめて蹴散らせたし」
言い置いて再び狩り取るべく疾駆するリーヴァルディの背を笑みで見送り、グレは彼女の死角を補うように立つと、目の前の天馬達を睨み据える。
「さ、勿体ぶった前奏はもう充分だ。雑音でも不協和音でも持っておいで! さっさと退場させてやるからさ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルイーネ・フェアドラク
彼らの出立が間に合ってよかった
彼らならば、この先の幸運は自分たちで掴み取るでしょう
こちらの始末は、私たちの役割ですね
背の刻印を開放
悍ましき漆黒の触手を振い、ユアの支援を
UCで敵の足止めをして、彼女の狩りの舞台を整える手伝いをしましょう
敵の動きを【見切り】、
先回りするかのように毒持つ触手で絡めとります
天高く逃れようと、逃がしませんよ
ユア、今です!
彼女が狙われることあれば庇う
お見事、戦場の君もまた美しい
君の技量あってのことですよ
ここで手間取るわけにはいきませんからね
この調子で一掃しましょう
ユア・アラマート
直近の危機は去ったが、無法者を野放しにはしておけないな
彼らが自分達の未来を少しでもより良くしようと戦うなら、私達も私達の戦いをしないと申し訳が立たないしね
向こうが空を往くというのなら、こっちは空を裂いてしまえばいい
【属性魔法】で風の魔力を高め、ルイが足止めをしてくれたのを見計らい【全力魔法】で風杭を生成
ここならそう手は届かないだろうと思いこんでいる天馬の腹に、これをお見舞いしてやろう
万が一避けられた際の対策に【2回攻撃】で杭のいくつかに少し時間差を付けて射出
的が狙いやすくて助かるよルイ。さて、残りの連中もこの調子で全て片付けていかないとね
本番はまだこの先だ。前座にはさっさとご退場願おう
●第一幕第六曲~第一の終演~
「彼らの出立が間に合って良かった」
ルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)の瞳が、遠くへと旅立っていった者達のその先を見つめるように細められた。
彼らならば、この先の幸運は自分達で掴み取るだろう。それなら、自分達の役割は一つ。
「そうだな。直近の危機は去ったし、彼らが自分達の未来を少しでもより良くしようと戦うなら、私達も私達の戦いをしよう。そうでないと申し訳が立たない」
ルイーネの隣で彼の視線を追うように、ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)も今はもう姿が見えなくなった流浪の民達が進んでいった道を見つめる。
無法者を野放しにはしない。二人が今果たすべきと定めた役は、互いに確認するまでもなく当然のように同じだ。
無法者――天馬達を見据えたルイーネの背から悍ましき漆黒の触手が暴れ出でる。
開放した刻印から溢れたそれは、一本一本が意思を持つかのように天馬を捕えんと、時に一直線に、時に死角に潜り込み、時に上から、時に下から、天馬に襲いかかる。
逃れようと考えたのか。襲い来る触手を藻掻くように蹴散らし嘶いた天馬の蹄が空を掻いた。飛び立つ前触れ。その瞬間を、ルイーネは見逃さない。
翼を広げ、天馬の蹄が空を蹴る。身体が浮かび上がり、地からは手の届かぬ高さに到達した天馬は、そのまま逃げ果せられると、そう思っていたのかもしれない。だが無慈悲にもその頭上に網を投げるかのように、格子状になったルイーネの触手が降り落ちる。
予備動作さえわかれば、直線的な動きの多い天馬の動きを予測することは容易い。だからこそ、飛び立ち優位に立つことで隙が大きくなるであろうその瞬間をルイーネは狙い澄ましていた。
絡まりつく触手に、再び天馬が悲鳴を上げるように嘶く。
それもその筈。天馬の身体には今や触手により多数の噛み痕が刻まれており、その一つ一つの噛み痕から、神経に作用する高濃度の呪詛毒が流し込まれたとあれば、いくら逃れようとも逃れようがない。
内から幻にも痺れにも浸食され、天馬の身体がその場に磔にされたかのように、宙でびくりと揺れた。
「天高く逃れようと、逃がしませんよ。――ユア、今です!」
「承った。向こうが空を往くというのなら、こっちはそうだな」
悩ましげなユアの声をかき消す程の勢いで、彼女の周囲に風が吹き荒れる。
それがやがて一つの杭を形作ると、ユアの唇がつい、と弧を描いた。
「――空を裂いてしまえばいい」
ユアの令により、杭は空を裂いて飛び、瞬きの間に避けようもなく宙に縫い止められたままの天馬の腹へと突き立つ。途端、ぶわりと中心から吹き荒れた爆風で巨体を切り刻まれ、宙に縛られていた天馬の身体が肉片に成り果てる。
それを更に時間差で追った杭が爆風に巻き込んで散らし、更にその次の杭がそれに続けば、天馬の身体は最早砂塵と変わりないほどに刻まれ、跡形も残らず全て風に攫われる。
「お見事、ユア。戦場の君もまた美しい」
「ありがとう。的が狙いやすくて助かったよ、ルイ」
爆風の余韻に靡く銀の髪を押さえながら涼しげに流し目をくれるユアに、君の技量あってのことですよ、と眼鏡の位置を直したルイーネは口端を上げる。
「……さて、残りの連中もこの調子で全て片付けていかないとね」
「ええ、ここで手間取るわけにはいきませんからね。この調子で一掃しましょう」
二人の目前には、蹄を鳴らし機を伺う新たな天馬達が立ち並んでいる。
「本番はまだこの先だ。前座にはさっさとご退場願おう」
最初の幕を下ろすため、二狐は再び地を蹴った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『喰われた神々』
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POW : この世のものでない植物
見えない【無数の蔦】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 名称不明の毒花
自身の装備武器を無数の【金属を錆びつかせる異形】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 異端の一柱
【一瞬だけ能力が全盛期のもの】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:夏屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Entr'acte
一撃、また、一撃。
疫を振りまくべく放たれた集団は、猟兵達の手により打ち倒され、引き摺り下ろされ、切り刻まれ。勇ましく打ち鳴らされていた蹄の音も、今や翳りを帯びていた。
けれど、それでもまだ楽団の演奏は終わらない。その翳りは、次なる幕開けまでの間奏曲に過ぎない。
地が、再び踏み鳴らされる。
ばらばらに地を打ち鳴らしていた天馬達の蹄の音が徐々に収束を始めたことに気づいた猟兵達は、攻撃の手を止める。注意深く様子を伺ったその先で、蹄の音はついにぴたりと重なり、一つの音と成った。
まるで軍隊の行進のようなそれが打ち鳴らされる度、残された天馬達の身体に、ごくごく小さな音を立て、罅が走る。
その音すらも行進曲に加え、天馬達は地を打ち鳴らし続けた。
蹄の音は、徐々に大きく、速く。そして遂に、天馬達の身体を罅が覆い尽くした、その時。
びしり。
地踏み鳴らす蹄の音が唐突に止んだ静寂の中、その音は静かに響いた。
音と共に現れたのは、白い指先。
一体の天馬の背を内から裂いたそれに続き、他の天馬の身体からも、指先が生え、手首が生え、腕が生え。まるで殻を破り生まれ出でる雛のように、天馬達の身体を突き破って、その者達は現れた。
全ての天馬が内から裂かれ、風に散って逝く中、首を失った姿で生まれ出でた者達の産声――いや、嗤い声が響き渡る。
それは、新たなる災厄の到来を告げるファンファーレのように。
再びの迎撃戦の幕開けに、高らかに響き渡った。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。これが本当に最後の最後。
神になろうが一柱たりとも通しはしない。
疫病諸共、骸の海に送り届けてあげる、疫病楽団…。
吸血鬼化して【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)
神殺しの呪詛を宿した“闇”属性の“炎”を大鎌の刃に宿し
生命力を吸収する巨大な“闇の結晶”刃にして維持
…ダンピールの神殺しの力、その身で味わいなさい。
他の猟兵の援護をすべく“血の翼”を広げ空中戦を行う
両目に魔力を溜め、殺気の存在感を残像として暗視し、
敵の攻撃を先読みして見切り、大鎌のカウンターで迎撃
敵が密集していたら怪力任せに大鎌を振るい
結晶刃を飛ばした後、黒炎を解放して敵陣をなぎ払う
…攻撃呪法解放。駆け抜けろ、黒炎の刃…!
●第二幕第一曲~神殺し~
「……ん。これが本当に最後の最後」
目の前で先程まで相手にしていた天馬達の身体を突き破り現れた異形――かつては『神』と呼ばれていた者達の姿を睥睨し、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は大鎌を握り直した。
「……限定解放。テンカウント」
喚び起こすのは、彼女の半身に宿る力。そして、炎の精霊のマナ。
呪詛を宿し、闇纏った炎が滴るように大鎌の刃を伝うと、ぴしりと音を立て刃を覆い尽くし、より鋭く相手を斬り刻むための結晶を成した。
神になろうが、一柱たりともこの地より先へ通しはしない。
「……ダンピールの神殺しの力、その身で味わいなさい」
囁く声、地を蹴る音。同時にぶわりとリーヴァルディの背に広がった『血の翼』が、戦いの幕開けを告げる。
翼をはためかせて飛ぶリーヴァルディを迎え撃つべく空へと飛び上がった異形の神が、その掌から振りまくように花弁を放った。
それが祝福のフラワーシャワーなどではないことはわかっている。両の瞳に力を溜め、毒々しく空を舞う花弁、そしてそれを囮に自分へと襲いかかろうとする異形の神の殺気を感じ取ったリーヴァルディは、一度がくりと墜落するように高度を落として呪いの花弁の雨を掻い潜ると、異形の神の真下から駆け上がるように飛び上がって迫り、力任せに振るった大鎌の先で神の身体を捉えると、そのまま大地へと叩き落とした。
土煙を上げて地に叩きつけられた異形の神の姿に、猟兵達の力を推し量ろうとでもしたのか、様子を伺っていた周囲の神達がどよめくように空を仰ぐ。
全盛期には人の子の力など到底及ばぬ力を有していた神々にしてみれば、力でねじ伏せられることはどれ程の屈辱であっただろう。
空から見下ろすリーヴァルディへと襲いかかる異形の神達に、生まれながらにそれらを殺す力を持って生まれた少女は、大鎌を力強く振り下ろした。
空へと殺到する神達の頭上に、闇を宿した結晶の刃が豪雨の如く降り注ぐ。
だが、異形の神々は止まらない。今はない頭部を庇うように腕を上げ、刃を弾いて払いながらも迫る神達の姿に、しかし、リーヴァルディもその場を退くことはない。
退く必要は、ない。
「……攻撃呪法解放。駆け抜けろ、黒炎の刃……!」
集団になり襲いかかる神達を十分に引きつけたリーヴァルディが、三度その大鎌を振るう。
宿した呪詛は、神殺し。
黒き炎が膨れあがり集団を飲み込むと、あとには燃え尽くされた灰だけが風に散って漂った。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
他の猟兵との連携やアドリブ歓迎
さてさて
グランドフィナーレ…最終楽章といこか
死せる魂、塵へ還るものに鎮魂歌を、
今を生きるものに言祝ぎの祝詞を!
WIZ
UC幻月夜行使用
炎の3分の1を高速展開し気を引く
残りは合体、ゆっくりと動かし背後よりフェイント攻撃
毒使い・マヒ攻撃・鎧無視・目潰しとあらゆるBS付加
敵攻撃がこちらに向いたら高速の炎を敵眼前に展開、それでも無理なら見切りとカウンターで対応
上空に停滞するなら空中戦で
…喉枯らして嘆きのうた吟わんでも、もうええんやで
グレ・オルジャン
病は気から、ってね
あの人らにはそういう訳にもいかなかっただろうけど
あたしらなら笑い飛ばせるさ
生まれ落ちたとこ悪いけど、さよならだ
仲間が右に踏み込めば左に、上にあれば下に
背が空けば背にと、互いの穴埋める立ち回り
楽団連中の隙が多いならなぎ払いで複数に狙い向け
さすがの守りなら焦らず対象を絞り各個撃破
忌々しい蔦を棍で受けたら、隠した刃を抜き自重で斬られて貰おう
お生憎様、あたしの相方は見た目より鋭いよ
攻め続く狼たちに標的を示すように、止めることなく得物を振るおう
ただでさえ薄暗い世界なんだ、あんたたちの耳障りな音色なんざお呼びじゃない
いい加減お黙りよ
この世界を晴らす歌でも引っさげて、出直しといで
●第二幕第二曲~求むは言祝ぎの歌のみ~
風に舞い散る灰を見て、自らが一方的に屠る側ではなかったことを認識した異形の神達が、嗤い声を上げる。
顔の無い神達だ。どこから上がっているのかすらわからない声のみで感情は読み取れない。だが、様子を伺っていた先程までとは異なり、一様に猟兵へと襲いかかってきた。
「さてさて。グランドフィナーレ……最終楽章といこか」
迫り来る異形の群れに立ち塞がったクルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)の手に、歪に揺れるぎんいろが再び灯る。
「ああ、これで最後だ。病は気から、ってね。あの人らにはそういう訳にもいかなかっただろうけど、あたしらなら笑い飛ばせるさ」
その背、視界の届かぬ場所を塞ぐように、グレ・オルジャン(赤金の獣・f13457)が笑みを浮かべ並び立った。
『疫病楽団』。その戦闘と災厄の音色に終わりを告げるべく、二人は同時に動き出す。
クルルの掌に揺れていたぎんの炎がぶわりと広がると、風に千切られるように細かに分かれた。周囲に漂ういくつかを、自らに向かっていた異形の神の視界に入るように素早く放つと、歪なぎんいろに誘われるように、異形の神の視線が炎に縫い止められる。
神が炎を消さんと花弁を放ったのを確認したクルルは、散っていた残りの炎をゆうらり漂わせながら、少しずつ収束させていく。
神々はそれを隙と見たか。音も無くクルルへと襲いかかる目に見えぬ蔦の気配に気づいたグレが、彼女と蔦の間に身体を滑り込ませると、手にした棍で巻き取るようにして蔦の進行を食い止める。
そのまま力強く後方に振り抜くようにして棍を引いたグレの手により、見えぬ糸で繋がれたように、一人の異形の神がグレの目前へと引き寄せられた。
大きく一歩、そこに踏み込み。
蔦を絡め取ったままの棍の一端を握り引き抜けば、その手に鈍く輝くは銀の刃。
それを躊躇無く引き寄せた異形の神の腹の前に突き出せば、引き寄せた勢いと神本人の自重により、銀の刃が異形の神の腹を裂いて突き立った。
「お生憎様、あたしの相方は見た目より鋭いよ」
途端に耳をつんざくような悲鳴を上げた神へと涼やかに笑ってみせたグレの唇が、更なる一撃を加えるべく、神をも屠る『兄弟』達を喚ぶ。
喚び声に応えて昏き地に吹くは、一陣の銀の風。否、風のように地を駆け来る銀の毛並みの狼達だ。
「そら、生き繋ぐよ兄弟たち!」
グレが付けた傷を標的の印に、駆け来る狼達が一斉に異形の神へと喰らいつく。その隙に棍に絡んだ蔦を切り離したグレが、絶え間なく上がる神の悲鳴に目を細めた。
「ただでさえ薄暗い世界なんだ、あんたたちの耳障りな音色なんざお呼びじゃない」
生まれ落ちたとこ悪いけど、さよならだ。
言葉と共に突き出された一撃が、神の身体を塵へと変え、骸の海へと送り出す。
だが、それでグレが手を止めることはない。再びクルルの背側の異形の神へと刃納めた棍を振るい、彼女を追う狼達が示された獲物へと牙を立てていく。
「こっちもがんばらんとね」
自身の視界が届かぬ場所をカバーするように戦うグレの姿に安心したように目を細めたクルルは、ぎんの炎で素早く視界を奪って翻弄していた異形の神の背へと、神の目の届かぬ場所で収束させ、大きく膨らませた炎をじりじりと寄せていく。
彼女の周りを漂っていた小さき炎が全てその歪にゆれるぎんいろに収束したのを確認すると、クルルは引き金を引くかのように、忍ばせた大きな炎を異形の神へと撃ち出した。
突如としてその背に勢いよく迫る炎の気配を感じたか、異形の神が小さな炎から目を離して振り向くが、手遅れだ。
「死せる魂、塵へ還るものに鎮魂歌を、今を生きるものに言祝ぎの祝詞を!」
正面からぎんの炎を受けた異形の神の身体が、高々と燃え上がる。
悲鳴を上げながら、どうにか逃れようと異形の神はその手を振り回すが、一度びくりと痙攣すると、そのままわなわなと震えて抵抗を許してはくれなかった。
それもその筈。クルルが生み出したぎんの炎には、燃え上がるその煙に、神経に作用し、動きを阻害させる神経毒が含まれている。逃げようと暴れれば暴れる程、煙に呑まれ炎に呑まれるように。
燃え尽くし、その身体を少しずつ塵へと変えながらも止まない異形の神の悲鳴に、クルルは静かに瞳を伏せる。
「……喉枯らして嘆きのうた吟わんでも、もうええんやで」
「ああ、いい加減お黙りよ」
新たに一体の神を屠ったグレが、クルルの隣に並んだ。灰黒の瞳が、徐々に風に攫われ舞い散る、神だったものを見遣った。
「この世界を晴らす歌でも引っさげて、出直しといで」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霄・花雫
元は神様だかなんだか知らないけど、お呼びじゃないのでお帰りくださいっ!
ていうか登場がグロい!キモい!もーっ!
文句を言いつつ、レガリアスシューズに大気を集めて空へ飛び出す。
地を蹴って、敵を蹴って、木々を蹴って、【空中戦、全力魔法、毒使い】を使用しながら合間合間にUCを再発動
空を舞台に飛び回ろう!
お生憎さま!そんな折れた翼であたしに追い付けると思わないでよね!
【誘惑、パフォーマンス、挑発】で敵を引き付けて、【野生の勘、第六感、見切り】で躱すよ
あたしに夢中になっちゃえば、他の人が攻撃しやすくなるよね!
さぁさ、これにて終幕!
趣味の悪い劇なんて誰も望んでないもの!
みんな揃っておやすみなさーい!
リインルイン・ミュール
神サマとて、過去から蘇った歪な存在
あと一息。今を生きるものの為に、歪んだ命へ滅びの祝福を
ユーベルコード使用には力場を拡げないとなので、念動力と高速詠唱での拡大を優先
まあ敵は待ってくれないので、近くに来た敵とは普通に戦いマス
斬りつけると見せかけ殴るフェイント、殴った後に剣を延ばしての二回攻撃、見切りなどで凌ぎまショウ
無差別攻撃中の敵がいたら、他の敵より速く動かないよう気を付けます
準備が出来たら、歪みを正す祈り=神を滅ぼす呪詛を乗せて顕れ舞う赤雷を発動
仲間に当てないよう念動力で操作し、異形の花弁も出来るだけ焼き払いつつ、視界内の敵を雷で撃ちます
視力と念の組み合わせデス、空を飛ぼうが撃ち落としますヨ
●第二幕第三曲~天の機嫌を統べる者達~
「登場がグロい! キモい! もーっ!」
きい、と霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)が文句を吠え立てるのも無理は無い。異形の神達の顕現の仕方は、年頃の少女にしてみればそう表すより他にないものだったのだから。
頬を膨れさせながらも、鰭のような薄翅に大気を集めた花雫が地を蹴り空へと飛び出す。
春風に乗るように軽やかに空を駆け翻弄する彼女の後を異形の神達が追いかけるが、神達の肩を、背を踏み台にして跳ぶ花雫の蹴撃を食らい、地へと押し返される。
花雫の繰り出す蹴撃は、ただの一撃ではない。毒を溶け込ませた魔を、蹴り飛ばすと共に叩き込んでいる。地へと墜ちた神々は、彼女を追って空へと飛び立った時に比べ、あからさまにその動きを鈍らせていた。
「まだまだだよ、お生憎さま! そんな折れた翼であたしに追いつけると思わないでよね!」
べ、と舌を出す花雫の挑発を無い瞳で見たのだろうか。苛立ったように動きを鈍らせた異形の神達が、動けぬならと言わんばかりに、次々花吹雪を吹かせていく。
風に舞う花弁の軌道を瞬時に目で追い時に予測しながら、足首に花弁が当たらないよう器用に掻い潜って舞う花雫の口端が、にい、とつり上げられた。
その視線の先には、花雫に夢中になる異形の神達の背後に隠れるようにしたリインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)の姿がある。リインルインは周囲に視線を走らせながらも、虎視眈々とその時に備え、力を練り上げていた。
空を華麗に舞う花雫へ向かわず自らに襲い来る異形の神は、黒銀の刃を振るって迎撃、と見せかけ強かに殴り飛ばし。驚きよろめいた神へと、一度見せかけに振るった刃を伸ばして斬りかかり距離を取る。
その間に二者に割り込むように空から降り立った花雫が、傷を負った異形の神へ鮮やかに振り抜いた右脚の一撃を叩き込むと、異形の神の意識を引きつけてまた空へと駆け上がった。
跳び上がった花雫をそれまでとは打って変わった速度で追う異形の神の姿を見て、リインルインはそろりと静かに気配を潜ませる。
(神サマとて、過去から蘇った歪な存在。……あと一息、これで最後デス)
一つ、深呼吸。そして一つ、ゆるりと瞬き。リインルインは空駆け、異形の神達の拳を、脚をひらりと躱しながら反撃の一撃を繰り出す少女を見上げる。
「こちらに!」
気配を殺すようにしていたリインルインが何かに備えていることに、花雫は当然のように気がついていた。彼女の準備が整うまでの時間稼ぎと考えて、異形の神達を引きつけ空を舞っていたのだ。だから、その一言で十分、花雫には伝わった。
「任せて!」
腹を打ち据えるように繰り出された異形の神の掌底を身を捩り避け、膝を緩やかに折ってその腕を掴む。
頬を掠めた掌底の勢いに膝を跳ね上げる勢いを乗せて掴んだ腕を大きく振り回すと、花雫はリインルインの頭上へと、異形の神を投げ飛ばした。
「さぁさ、これにて終幕! 趣味の悪い劇なんて誰も望んでないもの! みんな揃っておやすみなさーい!」
「ええ、その通りデス。今を生きるものの為に、歪んだ命へ滅びの祝福を!」
それは、歪みを正す祈り。即ち、過去から蘇りし歪な神を滅ぼす呪詛。
花雫が敵を引きつけている間に練り上げ広範囲に展開した力場に、赤き雷が轟音立てて落ちる、落ちる。
その一つ一つが、花雫を追いかけ空を駆けていた異形の神も、花雫が地へと叩き落とした異形の神も、神々が作り出した花吹雪も、一つ残らず撃ち墜とし、熱で以て焦がし焼き払い、塵へと還していく。
空へ逃げようとも地へ逃げようとも、リインルインには関係のないことだ。力場の内でその視線に捉えた姿を、雷は逃しはしないのだから。
花雫に害が及ばぬよう時に軌道をねじ曲げながらも轟音は続き、やがて、リインルインの視界から異形の神達は姿を消す。
後に残るはただ、大地が焼け焦げる香のみだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朽守・カスカ
首もない君達ではランタンの灯りも
骸の海へ還す標も届かない、か
……ならば、是非も無い
間合いも広く、錆びるのも厄介だが
問題のないものであればいい
【花葩】
多くの魔導蒸気を吐き出して動く、杭打ち機を呼び出し複製
間合いを詰めず、囲うように操って追い込み仕留めていこう
見えぬ無数の蔦は脅威だが
蒸気の揺らめきに気を付け足元を掬われぬよう気をつけよう
錆びて動かなくなれば、ガジェットをぶつけ
素早く動くものに反応するなら、わざと囮にすればいい
多少壊れても構わないさ、その役目を果たせるなら
あの、優しい人達の旅路が
災い少なく、穏やかなものであるためにも
煩く益体もない楽団は、此処でお開きとなってもらうよ
●第二幕第四曲~attacca~
昏き大地に、蒸気の煙がたなびく。
「間合いも広い、錆びるのも厄介だ。が、問題のないものであればいい」
灯がぽつりと灯るように言の葉が落ちる中、歪な形の花が咲き乱れる杭打ち機が、多量の蒸気を吐き出しながらその数を増やしていく。
その蒸気に紛れるように伸ばされた蔦を踏みつけ引き千切りながら、朽守・カスカ(灯台守・f00170)は遠くからその蔦を操っていたらしい異形の神を見遣った。
「首もない君たちではランタンの灯りも骸の海へ還す標も届かない、か」
ならば、是非も無い。
ふわり、カスカが念じた力により蒸気の尾を引きながら浮かび上がった杭打ち機が、視線の先、異形の神へと襲いかかる。遠方から攻め込まれるのは、距離を詰める気はないカスカにとって好都合だった。
一つの杭の先が異形の神の腹を突き抜かんと迫り、神がそれを避ける。避けられた先には次の杭、それを避ければまた次の杭、と、数を活かし一人を囲い込むようにしたカスカの手により、徐々に杭の包囲網は異形の神を追い詰めていく。
しかし、異形の神も黙ってはいない。全て錆びさせ使い物にならないようにすればいいと考えたか、神を包み込むように花弁が吹き荒れた。気づいたカスカが手元まで杭打ち機を引くが、花弁の嵐に巻き込まれた幾つかは錆び、杭は撃ち出されることなく錆の中で眠る。
花弁の嵐も、永劫吹き続けるわけではない。ならば嵐が止んだその瞬間が勝負と見て、カスカは錆びついた杭打ち機をしっかりと両腕に抱えた。
「多生壊れても構わないさ、その役目を果たせるなら」
錆から逃れた杭打ち機を再度大きな円になるように異形の神の周囲へと展開すると、カスカはその細腕で、杭打ち機を力強く異形の神へと投げつけた。
それそのものが飛んでくるのは想定外だったのだろう。不意を打たれた異形の神の周囲に吹き荒れていた花の嵐が、その勢いを弱める。
カスカの瞳は、その隙を見逃さなかった。
素早く再度展開した杭打ち機の円を狭めると、一息に異形の神の身体目がけて、その杭全てを撃ち出し、突き立てる。
悲鳴を上げる間もなくその腹に四方八方から杭を撃ち込まれた異形の神の身体が、ずるり、地へと落ち、やがて風に攫われた。
(あの、優しい人達の旅路が、災い少なく、穏やかなものであるためにも)
「煩く益体もない楽団は、此処でお開きとなってもらうよ」
舞い散る骸へと、カスカは静かに告げる。
その視線の先には、未だ数多の異形の神達が、災いと共に立ち塞がっていた。
大成功
🔵🔵🔵
アウレリア・ウィスタリア
天馬の中に?
不思議な登場の仕方ですね
天馬の主なのかどうかその姿では判りかねますが、
どうでも良いですね
ボクは敵を滅ぼすだけだから
【蒼く凍てつく復讐の火焔】を鞭剣に纏い
空を駆け抜けて敵を凍えさせ焼き払っていきます
狙えそうなら敵の脚を凍らせ、地に縫い付けたり
翼を冷気で砕くと移動能力を奪っていけるので
戦いやすくなるかもしれません
この世界で安心して暮らすことの出来る場所は、
恐らく無いのでしょう
でもその中に小さな幸せを持った人たちもいる
そうした人たちから、その小さな幸せさえ奪おうとする
そんな敵にボクが復讐を向けないなんてことはあり得ない
さあ、滅びろ『疫病楽団』
アドリブ歓迎
●第二幕第五曲~復讐の焔は我が心に燃え~
「……不思議な登場の仕方ですね」
天馬達を突き破って現れた異形の神達を前にして、アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)は思わず呟いた。
天馬の主かどうかは判らない。だがどんな登場だろうと、現れた異形の神達が天馬の主であろうとなかろうと、彼女にとってはどうでも良いことだ。
敵は、滅ぼす。それだけなのだから。
『貪り食う者』の名を冠する鞭剣に、蒼が灯る。
それは、冷えきった絶対零度の焔。闇夜より深く暗い、深淵の感情。蒼く燃え上がる、復讐の焔。
(この世界で安心して暮らすことの出来る場所は、恐らく無いのでしょう)
アウレリアの脚が、地を蹴る。速度を上げて駆けるその姿を見つけたか、同じように豪速で近づいてきた異形の神達の間を駆け抜けながら、アウレリアは身を低くして鞭剣を振るった。
剣は異形の神達の脛を抉り取るように斬り裂くと、その傷に絶対零度の焔を燃え移らせ、神達の脚を氷漬けにしていく。その速度たるや凄まじく、気づいた異形の神が一歩脚を引こうとしたその時には、最早大地に脚が縫い止められている。
その隙に空へと跳び上がったアウレリアは、脚を動かそうと藻掻く異形の神達へと上空から鞭剣を振り下ろした。無い首を刎ねることはできない代わりにか、鞭剣は腹を裂き、そこからみしりと蒼き焔と氷を広げると、神達の命を蝕んでいく。
(でも、こんな世界の中にも、小さな幸せを持った人達もいる)
更なる一撃を刻まんと鞭剣を振り上げたアウレリアは、自身の背に羽音が迫ったことに気づくと、反転しながら鞭剣を放った。剣を掻い潜り、脚の一部を凍り付かせながらも放たれた異形の神の豪速の蹴撃を、空から落ちるようにして辛くも躱すと、神の真下からその翼へと鞭剣を伸ばす。
(そうした人達から、その小さな幸せさえ奪おうとする。そんな敵に、ボクが復讐を向けないなんてことはあり得ない)
切っ先が翼の根元に絡みつき、アウレリアは鞭剣を力強く引いた。
絡め取られる形になった異形の神は逃れようと即座に藻掻くが、それこそがアウレリアの狙いだ。
切っ先で斬りつけた翼の根元の傷は、既に凍りついている。そこに異形の神が往時の力で藻掻けばどうなるか。答えは、事象となって現れた。
ぼきりと音を立て、異形の神の翼が凍り付いた根元から折れ、地へと墜ちていく。片翼では咄嗟にバランスを保てずぐらつく神の身体に、鞭剣はしかと巻きついた。
「さあ、滅びろ『疫病楽団』」
アウレリアが鞭剣を解けば、全身を氷像に変え、身動きを取ることもできない異形の神の身体は、あっけなく地へと墜ち、粉々に砕け散る。
それでもまだ、終わらない。
凍てつく復讐の焔は地獄のように燃え盛り、アウレリアは次なる標的へと、鞭剣を振り下ろした。
大成功
🔵🔵🔵
ルフトゥ・カメリア
この首無し共はこの間も見たな。……ちッ、胸クソ悪ぃこと思い出しちまった。
別個体なのは分かっちゃいるが、精々憂さ晴らしに付き合って貰うとするか。なぁ。
古傷を掻っ切ってバスターソードに炎を纏わせ、【怪力、破魔、2回攻撃、鎧砕き】で斬り捨ててやる。
数だけは無駄に多いみてぇだからな、纏めて始末してやるよ。
神なんざ紛い物だ、死した時点で過去の残像でしかねぇ。
その割に、テメェらは死を知らなすぎるみてぇだからな。テメェらこそ、終わりを知れよ。
どうにもならない、足掻いても無意味な終焉の夢をくれてやる。何度でも果てるまで死にやがれ。
UCを発動し、終わりの夢を。
まぁ、さっきも言ったが憂さ晴らしだ。さっさと死ね。
●第二幕第六曲~復讐狂想曲~
「……ちッ、胸クソ悪ぃこと思い出しちまった」
首を無くした異形の神達の姿に、ルフトゥ・カメリア(月哭カルヴァリー・f12649)は鋭く吐き捨てた。
その姿は以前も見たもので。以前に見た個体とは当然別であるとは分かっているものの、気分が悪いことには変わりない。
「精々憂さ晴らしに付き合って貰うとするか。なぁ」
片手の爪が手首をぐるりと回る傷痕へと伸ばされると、一息にその傷を掻き切り開き、獄の焔を滴らせる。
瑠璃唐草の焔が手首から掌を、指先を伝い、十字架を模したバスターソードへと滴り落ちると、ルフトゥは緩やかに剣を構え、赤椿の瞳で周囲の敵を睥睨した。
彼を囲むようにやって来た異形の神達の数は、六。
だが、ルフトゥはそれすらも鼻で笑い飛ばす。
「数だけは無駄に多いみてぇじゃねえか。纏めて始末してやるよ」
瞬間、ルフトゥの足元に地を突き破り、蔦が這い上る。それをバスターソードの切っ先で切り、刃を伝う焔で燃やし尽くすと、その刃の動きにつられたように、二人の異形の神達がルフトゥへと襲いかかった。
一人の拳を上半身を捻り捌き、上体へと繰り出された蹴撃は、背を逸らしながらも燃え盛る刃で受け止め、神の脚を燃やしながら力強く刃を払い距離を取る。
その隙を突くように、花弁の嵐が吹き乱れた。舌打ちを一つ落としたルフトゥは、花弁の色を見る間も無く降りかかるそれを焔を灯した刃で焼き斬ると、六人の神達の中心に位置するように、地を疾駆して躍り出る。
「神なんざ、紛い物だ。死した時点で過去の残像でしかねぇ」
迫る者は刃で捌き、向かい来る蔦は再び焼き払い。視線を常に六人の神達に向けながら、ルフトゥは神達と自分との間に、一定の距離を保ち続ける。
「その割に、テメェらは死を知らなすぎるみてぇだからな。テメェらこそ、終わりを知れよ」
それは、突如として陽炎の如く空気を揺るがせ、異形の神達へと襲いかかった。
「どうにもならない、足掻いても無意味な終焉の夢をくれてやる」
何度も果てるまで死にやがれ。
ルフトゥの視線の先で、異形の神達がそれぞれ藻掻き、のたうちまわる。
追想終焉――世界が、自らが無残に滅びる瞬間の悪夢を繰り返すその領域で六人の神達を飲み込んだルフトゥは、徐々に命を潰えさせ、動きを止めていく神達を瞳に焼き付けるように見下ろした。
「……まぁ、さっきも言ったが憂さ晴らしだ。さっさと死ね」
最後に残された異形の神が、助けを乞うように手を伸ばす。それが焔を灯した刃に慈悲もなく斬り飛ばされ地に転がると、異形の神は、遂にその命に終止符を打った。
大成功
🔵🔵🔵
ユア・アラマート
ルイーネ(f01038)と
欠けた馬から欠けた神か。なるほど、意外と道理に叶ってる気はするな
口もないのに喧しい
ルイ、もう少し背中を任せても構わないか? 災厄をばらまくことしか能がないのなら、出てきた所へ速やかに戻ってもらわないとな
ルイに足止めを任せておいて、敵の動きが鈍った所で【高速詠唱】【全力魔法】を使い花片を発動
花弁のように薄い刃の形を模した魔力をぶつけ、敵の体を引き裂いていく
狙いが外れるとまずいし、あまり距離は離したくないな。敵の攻撃は【見切り】と【ダッシュ】でなんとか回避することにするよ
そんな無粋な花びらより、こっちのほうが断然綺麗だろう?
手向けに送ってやる。だから大人しく果へと還れ
ルイーネ・フェアドラク
ユア(f00261)と
さて、どうでしょう
そもそもの存在からして道理からは程遠いですよ
呼ばれぬ楽団には、ご退場願いましょうか
神など、何度でも殺してみせましょう
お任せを
敵の動きを見切り、フェイントを織り交ぜ複数の触手を操っていく
決定打には欠けていい
ただその身をマヒさせ毒で縛ることと、彼女の露払いに専念します
阻害さえ叶えば、ユアが必ず屠ってくれると知っていますからね
ユアを狙う花弁あれば触手を薙いで打ち払う
邪魔はさせませんよ
嫣然と張り合う言葉には微かに笑い
大人びた彼女が覗かせる年若さか…
或いは、女性は美を競い合うものというべきか
確かに、君の創り出す花の方が美しく、鋭かったようだ
●第二幕第七曲~花毒舞い散る円舞曲~
頭部を失った異形の神達を前にして、ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)はへぇ、と鮮やかな碧の瞳を細めた。
「欠けた馬から欠けた神か。なるほど、意外と道理に叶ってる気はするな」
「さて、それはどうでしょう。そもそもの存在からして道理からは程遠いですよ」
傍らに立つルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)が冷静に分析すれば、異形の神達がけたけたと嗤い声を上げる。口もないのに喧しい、と独り言ちながらも異形の神達を見据えるその視線の色は、先程よりも剣呑で。
「ルイ、もう少し背中を任せても構わないか? 災厄をばらまくことしか能がないのなら、出てきた所へ速やかに戻ってもらわないとな」
「お任せを。呼ばれぬ楽団にはご退場願うとしましょう。――神など、何度でも殺してみせます」
異形の神達から視線を逸らさずに言を交わす二人へと、地を抉るように踏み込んだ異形の神が疾駆し迫る。瞬きの間に彼我の距離を詰めるその速度は目を見張るものがあるが、振りかぶられた拳がユアへと命中する前に、ルイーネが操る漆黒の触手が神の腕に喰らいつき絡め取った。
そのまま腕をへし折るように捻れば、異形の神から悲鳴が上がる。力の限り振り回されれば触手は解かれるが、ルイーネは逃れた神を深追いすることはない。神の腕に刻まれた触手の牙の痕が、その必要はないと雄弁に語っているからだ。
ルイーネが迫る別の個体へと素早く触手を伸ばせば、先の異形の神がその速度に反応してか触手へと襲いかかる。しかし踏み出したその脚はがくりと崩れ、身体をわなわなと震わせると、異形の神は甲高い悲鳴を上げた。触手の牙を通じて神の身体へと染み渡った高濃度の呪詛神経毒が、その聴覚を、視覚を、そして神経を侵略し身の自由を奪ったのだ。
動くことも藻掻くことも許されず、為す術もなく幻に脅かされるしかない闇の中へと一人突き落とせばまた次の一人と、ルイーネは背の刻印から放たれた触手を四方八方へ伸ばし、異形の神達の身をその毒で縛っていく。
その毒のみでは、確かに屠ることは叶わない。けれど決定打を与える必要はないのだ。
阻害さえ叶えば、傍らに立つ彼女が必ず屠る。ルイーネは、それを知っている。
近距離での戦闘は不利と悟ったか、異形の神達は距離を取ると、血のように朱い花弁の嵐を巻き起こす。
その花弁が向かう先を見るや否や、ルイーネは展開していた触手を束にし、花弁の嵐を粉砕するかのように勢いよく薙ぎ払った。
「邪魔はさせませんよ」
赤毛の狐のその言に、銀の狐は艶やかに笑む。
嵐の残滓をくぐり抜けるように瞬時に地を駆けたユアは、周囲へと視線を走らせた。
周辺全ての異形の神達へと、届けるには。その解を直ぐ様導き出すと、音も無くその脚を止める。
「そんな無粋な花弁より、こっちの方が断然綺麗だろう?」
脚を止めたユアの身体に今が好機と襲いかかった朱き花の嵐が、舞い上がる煌めきにかき消された。
「手向けに送ってやる――だから、大人しく果てへと還れ」
淡い光を浴びては煌めきを零すそれは、風に舞い踊る花弁のようでいて――触れた者全てを切り刻むべく、ユアの手により薄刃状に練り上げられた魔の力だ。
手向けの花はユアの計算通り周囲全ての異形の神達へと届けられ、次々とその身を刻み、血の赤に染め上げていく。
ユアの手向けから逃れようとする異形の神を触手で捕え、ユアの方へと投げ飛ばしながら、ルイーネはユアの横顔を眺め、小さく笑みを零した。
嫣然と張り合う様は、常日頃大人びた空気を纏う彼女が覗かせた、年若さそのもののようで。
いや、或いは幾つになっても、女性は美を競い合うものと言うべきなのだろうか。
「確かに、君の創り出す花の方が美しく、鋭かったようだ」
辺り一帯を朱に染め、尚も舞い踊る薄花弁の中で、ルイーネを見遣ったユアはその瞳を細め、口の端を上げた。
大成功
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壥・灰色
壊鍵、再起動
四肢に衝撃を装填
足下に爆ぜさせ、高速で襲いかかる
今までのガワが消えて、中から本命が出てきたって話だろう
臆することも、躊躇することもない
空を飛んでいるなら、地面を蹴り
連続で空を踏みしめ、壊鍵の衝撃を炸裂、駆け上って敵へ至る
地を這うならばもっと簡単だ。地面を走って突撃し、近接
その速度、音速を超える
速く動くものを無差別攻撃するんだろう
遠慮なく集ってこい
全員、おれの拳で粉砕してやる
近接する敵を拳で殴り、脚を振り上げて頸を鋭断
如何に耐久力を全盛期に戻そうが――
魔術回路『壊鍵』の破壊力の前に、無傷でいられると思うな
……おれのこの拳が届くのならば、そうとも。
神霊だろうと砕いてみせる。
●終曲~音をも超える~
地面が、衝撃に抉られ飛び散った。
今までのガワが消えて、中から本命が出てきただけの話。それだけのこと。
壥・灰色(ゴーストノート・f00067)は、目前の状況を冷静にそう分析した。新たに姿を現した異形の神達に臆することも、躊躇することもないと胸中で断じると、四肢に青くスパークが走る。
「――壊鍵、再起動」
灰色が立っていた足元が爆ぜて地面が抉られ飛び散り、灰色がその姿を消す。彼が唇から放ったその声が追って聞こえるその前に、突如として消えた灰の少年の姿を探すように狼狽えていた異形の神が一人、彼方へと吹き飛んだ。
遅れて辺りに響き渡る衝撃音。どよめいた異形の神達はそれが灰色の仕業だと理解すると、一瞬地へと制止した彼に殺到し、襲いかかる。
「速く動くものを無差別攻撃するんだろう、遠慮なく集ってこい」
準備体操は終わったとばかりにぐるりと肩を回した灰色は、襲いかかる神達を睨み据えた。
「全員、おれの拳で粉砕してやる」
直後、灰の青年の姿はかき消え、異形の神が大地に蜘蛛の巣状の罅を入れながら悲鳴を上げる暇もなく地へと深くめり込んだ。再び姿を消したかと思えば、空に浮いていたはずの異形の神が土煙を上げて地を転がっていく。
異形の神達にとっては、灰色が瞬間移動の魔術でも使用しているかのように見えただろうが、実態はもっとシンプルだ。
両の脚に装填した衝撃を爆ぜさせ地を駆け、空を踏みしめ空をも駆けて異形の神へ至る。しかしその全ては、音を置き去りにする程の速度で行われていた。
文字どおり風を斬り裂き振り上げられた脚が、空から灰色に迫った異形の神の翼を根元から寸断し、間を空けずに繰り出された拳が、神の身体の中心に風穴を開け、地へと墜としていく。
異形の神達が全盛期の能力を一時的に取り戻し、すさまじいまでの攻撃力を手に入れようとも、その手が、脚が、灰色へと届かなければそれに意味はない。
そして、如何にすさまじいまでの耐久力を手に入れようとも――。耐久力を上から打ち砕いた結果できあがった骸の数々を、灰色は睥睨する。
「魔術回路『壊鍵』の破壊力の前に、無傷でいられると思うな」
一方的に蹂躙され尽くし、一人残った異形の神が、その一瞬の隙に灰色へと全身全霊を注いだ拳を振りかぶった。
(……おれのこの拳が届くのならば、そうとも)
「神霊だろうと砕いてみせる」
その言は、そして衝撃音を異形の神が聞くことはなかっただろう。なぜならその身体が灰色の連撃により粉砕され、塵となった後に届いたのだから。
最早『疫病楽団』の姿は、一人たりとも残されていない。
異形の神達の骸が塵となり舞う中、こうして、訪れるはずであった全ての災禍は幕を下ろした。
災禍を免れた人々が、終わりなき旅の先に平穏を得られるかどうかは、また別の話。
けれど、力強く先へと歩む脚はきっといつか望んだ未来を手に入れるのだ、と。
誰かのその声は願いとなって、昏き世界に静かに響いた。
大成功
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