シャングリラ☆クライシス⑦~砂を噛むように立ちなさい
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――どうして。
クオリア・シンフォナーは自問している。どうして、自分自身を止められないのか。どうして、従わなければならないのか。自分の故郷を滅ぼした"星壊神"に従って、流れ星を捕まえて。
手を伸ばしたって届かないから、星は美しいのに。
だというのに、掌の中に星はある。
"自分が其処にいる"事を自覚しながら、骸の海に呑まれていく。その気持ちはどのようなものだろう。
自我があるままに自分を作り替えられてしまう思いはいかほどのものだろう。
わたしは、わたしを忘れられない。
私は今、私でない。
このままでは、流れ星はわたしの故郷を滅ぼした"星壊神"の手に落ちる。そしてこのフロンティアは――
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「滅ぼされる、って訳だ」
ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は人差し指を立ててそう言った。
アイドル☆フロンティアに訪れた異変は、たった一つの流れ星から始まった。いや、そもそもとしてアイドル☆フロンティアのアイドルたちは、皆「流れ星に願い事をした事があるはず」なのだ。
誰かを救いたいという願いが、その人をアイドルにするという世界。誰もが抱える"|骸の海《こころのやみ》"、しかしそれを背負ってはならない人が今回背負ってしまった。
「それがクオリア。クオリア・シンフォナーだ。彼女の特性は"記憶を忘れない"――オブリビオンになっても、クオリア・シンフォナーは己を保ったままなんだ。全くもって良い事ではないんだけどね」
ヴィズは白磁の扉を作り出しながら、「本当ならいい事なんだけど」と付け足した。
「記憶は過去。つまり、人々を苛む"骸の海"。だから記憶を忘れられない彼女はものすごーく強いオブリビオンになってしまった。オブリビオンであるが故に、平和を望む心は破壊衝動に塗り替えられてしまう。皮肉なものだな、平和を強く思えば思う程――強いアイドルになればなるほど、反転すれば凄まじい脅威となる」
ゆっくりと白磁の扉が開く。
「この先はクオリア・シンフォナーの領域だ。彼女は"過去そのもの"でお前達に牙を剥くだろう。だけれど負けてはならない、負けないと示す事で、|観客《・・》もお前達の味方をしてくれるはずだよ」
空間を繋いだその奥には――暗闇が広がっていた。
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鳥籠だ。
――ここは、鳥籠を模したステージ。
観客たちは、ステージの上に立った歌姫に夢中。視線を剥がす事なんて出来やしない。
歌姫が歌うのは過去だ。
あの事があったから。
あの事さえなければ。
あの人と出会ったから。
あの時こうしていれば。
|観客《だれも》が過去に囚われている。
鳥籠の中の鳥は、詰まりに詰まってもうぎゅうぎゅう。そろそろ誰かが風穴を開けてやらないと。
key
お久しぶりです、keyです。
今回は戦争シナリオとなります。
●目的
「|過去《うた》を打ち破れ」
●場所
クオリア・シンフォナーが歌い続ける鳥籠を模したステージです。よく見れば薔薇のような飾りもついています。
彼女は哀歌を歌い続けています。それは観客を虜にする追憶の歌です。ステージに上がった猟兵は例外なく、"美しかった過去"や"見たくない過去"を目の当たりにする事になります。
対抗手段はただ一つ、『過去に抗う事』です。歌っても良いですし、高らかに宣言してもいい。過去に打ち克つ事で、クオリア・シンフォナーにダメージが入ります(通常攻撃では彼女に傷を付けられません)
念の為、観客席に落ちる事はなく、観客が被害を負う事もありません。大暴れして対抗しましょう。
●プレイングボーナス!
「アイドルパフォーマンスに『過去を乗り越える意志』を乗せ、応援を集める」
「憑装されたトワイライトの無念を弱める」
当シナリオでの憑装されたトワイライトは"猟兵自身"です。
●プレイング受付
受付、〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します。
●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
基本的にソロ行動ですが、アドリブが多くなる傾向にあります。
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此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『『クオリア・シンフォナー』』
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POW : ブラック・シンフォニア
【漆黒の最強アイドル】に変身する。隠密力・速度・【ユーベルコード】の攻撃力が上昇し、自身を目撃した全員に【崇拝】の感情を与える。
SPD : クオリア・カプリース
レベルm半径内を【高速回転する時計のオーラ】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【時間操作】で加速、もしくは【時間操作】で減速できる。
WIZ : クロノス・アリア
【懐中時計】に宿る【時間操作の歌】を解き放ち、レベルm半径内の敵には[時間操作の歌]で足止めを、味方には【治癒速度向上】で癒しを与える。
イラスト:hoi
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キール・グラナドロップ
ボクの見たくない過去……やっぱり、アレかな……今ではちょっとうっすらになってきたけど、ボクの魔力を目当てに、注射器やメスで実験を繰り返してきた人達……それが怖くて、怖くて、影くん以外、近づけなくて。
でも、だんだん怖くなくなってきたんだ。友達みたいな人も出来たし、旅団にだって入れるようになった。だから、もう、他の人は怖くないの。
あの女の子がボク自身になってるなら、心も、体も、【いたいのいたいのとんでけ】のおまじないをかけて、寄り添って、ゆっくり手を引いてあげる。もう怖くないよって、言ってあげるんだ。それで、無念を弱められないかな?
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小さな影が、磔にされている。
あれは間違いなく、キール・グラナドロップ(影に縋る者・f14289)の過去だ。
『怖くないよ』
『ほんの少し、ちくっとするだけだよ』
優しい言葉を飴玉みたいにキールの喉に詰め込んで、そっと彼の肌を裂いた"誰か"たち。妖精の魔力欲しさにメスや注射器を持った者たち。肌を、肉を割いても、血を吸いだしても、魔力なんてものは|そもそも目に見えやしないのに《・・・・・・・・・・・・・・》。
キールは怖かった。当然だ、傷付けられるのは誰だって怖い。頼れる者はただ一つ、"影くん"だけだった。
「――でも、」
そんな恐怖を眼前に上映されてなお、キールの心は潰れない。
あのね、と言葉を繋ぎながら、キールはクオリア・シンフォナーへと歩み寄る。
「段々怖くなくなって来たんだ。友達みたいな人が出来たよ、旅団にだって入れるようになった。だから、もう」
他の人は怖くないの。
大丈夫だよ。
――いたいの、いたいの、とんでけ。
昔習ったおまじないを、キールはそっと己の過去へとかける。
もう大丈夫だよって寄り添って、闇から連れ出したくてそっと手を引いた。いつの間にか、二人にスポットライトが落ちていた。
「もう怖くないよ」
それは、誰よりもあの時のキールが欲しかった言葉。
大丈夫。もう怖いものはいないの。
あの恐ろしい一時は、もう過ぎ去ったんだよ。
大成功
🔵🔵🔵
カンナハ・アスモダイ
※アドリブ連携等歓迎
過去:アイドルとして活動する前、獄炎の悪魔「アスモデウス」の娘であった頃の思い出。
幼い頃から私は、『誰かの助けになりたい』という思いがあった。
でも、そんな私の気持ちは、冷酷無比なお父様の気分を害するだけだったみたいで。
何度も何度も折檻された。そんな冷たい家が嫌になって、私は家を出た。
……私は悪魔法少女になった。
──ありがとう、私。
貴女が諦めないでいてくれたから。
私、こんなにも輝ける。
いくわよ!
プリンセスハート!メ~クアップ!みんなに笑顔を!
完全無敵★最強アイドル!悪魔法少女★あすも☆デウス!
<歌魔法>を詠唱し、乙女魔法を放つ。
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――幼い頃、カンナハ・アスモダイ(悪魔法少女★あすも☆デウス・f29830)の心には"誰かを傷付けたい"という思いではなく"誰かの助けになりたい"という希望だけがあった。
それは|悪魔《デイモン》には相応しくない願いだったのだろうか? 今ならばきっと『違う』と言える、しかし猟兵が現れる以前ならばどうか。人間の多くは、悪魔とは悪辣だと言う。ならば邪悪ではなく助力を願ったカンナハの想いは、悪魔らしからぬのだろう。
殊、カンナハの父はそれを厭った。その思いは相応しくないと思っていたのか、或いは――いや、カンナハには父の想いを理解など出来ないのだろう。
父は事あるごとにカンナハをぶった。痛め付けて、お前の思想はあり得ないのだと言った。
「だから、私は家を出た。悪魔法少女になったの」
そう呟いたのはカンナハだろうか。
それとも、彼女の前に立つもう一人のカンナハだろうか。
でも……その後に笑みを浮かべたのは、間違いなくカンナハ・アスモダイその人だ。
「|ありがとう《・・・・・》、私」
観客はじっと見ている。
笑みを浮かべて、過去の己に謝を述べる小さな悪魔を見ている。
「貴女が諦めないでいてくれたから、私、こんなにも輝けるの。――ねえ、だから見てて! 貴女が夢見た、"誰かを助けられる悪魔"に私はなったの!」
七色の輝きがカンナハを包む。
――眩しい。それは希望の輝きにも似ていた。"悪魔法少女★あすも☆デウス"へと変身したカンナハは、小さな赤い翼で宙を駆ける!
「プリンセスハート、メ~クアップ! みんなに……貴女にも笑顔を!」
メロディを乗せた魔術が舞台に炸裂する。
スポットライトは真っ直ぐに、カンナハを――悪魔法少女を照らしていた。
大成功
🔵🔵🔵
音駆螺・鬱詐偽
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
私に過去を問うの?
私にあるのは惨めな過去。
あなたのような主役を引き立たせる為の地味で惨めなキャラクターよ。
番組が終了と共に忘れ去られたモブキャラよ。
そのせいで本当に|過去《オブリビオン》になっちゃったけど、今の私がこうしてここに立っている。
過去の私にはもう打ち勝ってきているのよ。
私が過去に打ち勝った証を見せてあげる。
……みんな待たせたわね。
今からあの闇堕ちヒロインに私のサイコーのネガティブをぶつけてくるわ。
みんなもサイコーの応援よろしく♪
ありがとう、過去の私が持てなかった|もの《ファンのみんな》。
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「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル、音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)さん、ただいま参上……だけど」
私に過去を問うの、と鬱詐偽は舞台に並ぶ彼女を見た。
それは間違いなく鬱詐偽の過去。番組が終わって、過去になってしまって、故にオブリビオンとなってしまった過去が、そこに投影されている。
「私にあるのは惨めな過去。――|あなた《・・・》のような主役を引き立たせるための、地味で惨めなキャラクター。番組が終わると共に忘れられてしまったモブキャラよ」
でもね、と鬱詐偽は続ける。
頭に飾られたうさぎの耳が、反抗するように揺れた。
「でも、今の私が此処に立っているの。過去の私に打ち克った私が、此処にいるの」
観客が一人ずつ、鬱詐偽へと視線を移していく。
過去の鬱詐偽は確かにただのモブキャラだったかもしれない。敵役だったかもしれない。ともすれば消えてしまいそうな、エキストラの一人だったかもしれない。
でも、今、鬱詐偽は此処にいる。
キラキラしたアイドルのようにポジティブにはなれずとも――それでも。鬱詐偽にだって、アイドルでありたいという矜持があるんだ。
「――みんな、待たせたわね」
動画撮影ドローンは、観客を映している。
一人ずつ、ゆっくりと、だが確実に鬱詐偽へと視線を移しかえていく観客を……映している!
「今からあの闇堕ちヒロインに、私のサイコーのネガティブをぶつけてくるわ。……だから、みんなもサイコーの応援よろしく…!」
わあ、と観客が湧いた。
飛び出した鬱詐偽を邪魔するものなどいる訳がない。目の前の影が僅かにブレて……そうして、鬱詐偽の幻影がほどけて、驚いた顔のクオリア・シンフォナーに一撃を見舞う……!
――ありがとう。
過去の私が持てなかったもの。観客、ファンのみんな。
みんながいるから、私、それでも此処に立っていられるのよ。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
僕とクオリアさんは、少しだけ…
似ている部分もある気がする
物心つく前に攫われて
両親も故郷も滅ぼされた
故郷を奪った主に従って
間接的だとしても…多くの命を奪い
或いは絶望に突き落とす手助けをした
止められなかった
悪意に従い続けた
罪は罪、言い訳なんて出来ない
でも…僕は救われたから
貴方も救いたい
悲しみに寄り添う優しい歌唱に
祈りを込めた優雅なダンス
アイドルパフォーマンスだけど
静かな演出だってあったっていい
きっとそう…今くらいは
僕がこの罪を背負って生きる事が罰で
不幸にした数以上を幸せにする事が罪滅ぼし
貴方の分まで護ってあげる
その為にも今は、ごめんなさい
指定UCの破魔の光をスポットライトに
過去を浄化し乗り越えます
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「僕とクオリアさんは、少しだけ……似ている部分があるって思ったんだ」
今はまだ、スポットライトはクオリア・シンフォナーに当たっている。
それを眩しそうに見詰めながら栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は呟いた。
――物心つく前に攫われて、両親も故郷も滅ぼされた。
故郷を奪った主に従って……間接的だとしても……多くの命を奪った。或いは、その心を奪うように絶望に突き落とす助けをした。して、しまった。
「止められなかったんだ。悪意に従い続けた。その事実は変わらない、罪は罪なんだ、言い訳なんて出来ない。……でも、僕は救われた」
だから、あなたも救いたいんだ。
歌うように言いながら、ゆっくりと澪はクオリア・シンフォナーへと近付いていく。アイドルパフォーマンスって、常にキラキラしていればいい訳じゃない。静かな演出だったってあっていいし、心情に寄り添うように穏やかであったっていいんだ。
「僕がこの罪を背負って生きる事は、罰だよ。そして、不幸にした数以上を幸せにするのが罪滅ぼしだと思ってる。だから――貴方の分まで、護ってみせるよ。このフロンティアの誰もかも、僕が護ってみせるから」
いつしか、光は澪へと注がれていた。
観客の視線、スポットライト、そして――澪が降らせた破魔の輝き。
それはオブリビオンになってしまったクオリア・シンフォナーには酷く痛む眩さだった。
「そのためにも今は、……ごめんなさい――!」
輝きが降り注いで、クオリア・シンフォナーの影を消していく。
彼女はその輝きを驚いたように見つめ、……。
僅かに微笑んだような、気が、した。
大成功
🔵🔵🔵