シャングリラ☆クライシス⑦〜闇に咲く薔薇は仄暗く
「みんな! 大変なの!」
英・ありあ(マジカル☆カデンツァ・f45189)――|猟兵《アイドル》マジカル☆カデンツァとしてまだまだ駆け出しの少女が一同に言った。
「|流れ星《シューティング・スター》が、捕まっちゃったの!」
|偶像魔法世界《アイドル☆フロンティア》のアイドル達の力の源であるとされていた|流れ星《シューティング・スター》。ただの「流れ星」ではなかったのも驚きだが、一足飛びに捕まったとは、いったい。
「捕まえた犯人はわかったんだけど……」
その犯人の名は「クオリア・シンフォナー」。オブリビオン化しながらも、自我を維持するが故に強大な力を得てしまった、少女の姿の|過去の残滓《オブリビオン》。
彼女は|流れ星《シューティング・スター》の力を使って、|偶像魔法世界《アイドル☆フロンティア》の全てをアイドルステージへと変えていっている。
「でね。クオリア・シンフォナーが支配してるアイドルステージのひとつへ、行けそうなの。ただ……」
そのステージの名前は『ダークローズ☆ケイジ』。誰かの無念や悲しみから実体化した「薔薇の鳥籠」に覆われた暗闇のアイドルステージ。「薔薇の鳥籠」は、踏み入れた者を強烈な負のオーラで包み込み、圧し潰してくる。その重圧に抗いながら、「クオリア・シンフォナー」と対峙することになるのだ。
「でもね、皆が諦めないで、心を奮い立たせたら、きっと」
暗闇を切り裂く光になって、その向こうに居る観客席の|人々の無意識《サイリウム》に光を灯せる筈だ。
アイドルステージは、|人々の無意識《サイリウム》の輝きが力を与えてくれる場所。その力を借りれば、強大な力を持つ「クオリア・シンフォナー」を凌駕する事だって出来るはずだ。
「みんなが、この世界に来るようになるまでにも、いろんな世界のピンチを助けてきたっていうのは、教えてもらったよ。だからって、言い方はどうかなって思うんだけど」
もちろんありあだって|猟兵《アイドル》なのだから、全てを猟兵達に委ねる心算はないのだが、彼女が“視て”しまったダークローズ☆ケイジへの道を繋ぐためにありあは注力しなければならない。
「それにね、たぶん、|クオリア《あの子》も何かにそうさせられてるんじゃないかなって、思うの」
助けられるなら、助けたい。その為にも、先ずは一歩。
そのために、ありあは、『ダークローズ☆ケイジ』への道を開く。
●
「……来たんですね、この星の、アイドル」
暗闇に沈む『ダークローズ☆ケイジ』。漆黒の中で鳥籠に咲く薔薇もまた昏い。その中で少女が一人佇んでいた。暗闇でありながら、少女の姿はしっかりと見てとれた。彼女こそが「クオリア・シンフォナー」。|過去の残滓《オブリビオン》でありながら、自己を保ち記憶し続ける存在。猟兵達にとって未だ未知の存在に、その意志と思いを歪められた存在である。
「わたしはわたしを……わたしたちを、止められない」
祈りは呪いに、願いは呪詛に。少女が手を猟兵達へと差し伸べたと同時に、昏く咲く薔薇からやはり昏いオーラが漂う煙のように漂ってくる。それが、戦いの始まりだった。
白神 みや
初めましてのかたは初めまして。
そして、そうでない方はお世話になっております、または、ご無沙汰しております。歌って踊る系のアレソレ大好きな|白神《しらかみ》です。
シャングリラ☆クライシス……アイ☆フロ戦争? まってくださいよ。(真顔)
と、いうわけで1本目、戦線形式だと個人的に出せる数も限られているため、初手より趣味にて仕る で、行くことにしました。
●プレイングボーナス
あきらめない心で何度でも立ち上がり、戦う。
●お願い
MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
背後都合と戦線形式のため、プレイング受付期間が変則です。【9/2 8:31~9/3 8:29】でいったん受付を締め、🔵の状況(👑超えるかどうかと、執筆キャパシティ)で9/4 8:31以降に追加受付します。なるたけ全採用目指しますが、締め切りの関係等でお返しすることになる可能性もあります。
タグに都度状況を記載しますので、宜しくお願いします。
第1章 ボス戦
『『クオリア・シンフォナー』』
|
POW : ブラック・シンフォニア
【漆黒の最強アイドル】に変身する。隠密力・速度・【ユーベルコード】の攻撃力が上昇し、自身を目撃した全員に【崇拝】の感情を与える。
SPD : クオリア・カプリース
レベルm半径内を【高速回転する時計のオーラ】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【時間操作】で加速、もしくは【時間操作】で減速できる。
WIZ : クロノス・アリア
【懐中時計】に宿る【時間操作の歌】を解き放ち、レベルm半径内の敵には[時間操作の歌]で足止めを、味方には【治癒速度向上】で癒しを与える。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リリスフィア・スターライト
犯人である筈のクオリアも困っているようだしどうにか助けられればかな
薔薇の鳥籠での戦いは苦しいものになるだろうけど
この世界のアイドル達をピンチに比べれば耐えてみせないとだね
歌って踊るといったアイドルらしいことは上手くできないかもだけれど
気持ちでは負けられないかな
氷鏡反射でアイドルステージの効果にクオリアの
時間操作の力を跳ね返せればかな
氷の鏡に映ったクオリアの姿を見てもらえれば
止まるきっかけになればいいのだけれどね
それから魔剣を手に軽やかに舞うようにしてクオリアに挑みかかるね
最近のアイドルは戦ったりもするし、普段通りにいかせてもらうよ
「自分で止められないのなら私達が止めてあげるよ。その時間ごとね」
●
(確かに、犯人である筈のクオリアも困っているようだし……)
リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は考え込む。
そうなのだ。目の前に立つ少女のカタチをした|過去の残滓《オブリビオン》は、こちらへ向ける態度も、そのどこか虚ろな表情も、今まで対峙してきた「敵」のものとは異なっている気がする。しかし、それを理由に手心を加えられる状況ではないのだ。現に今も薔薇から漂う昏いオーラがその身に纏わりついて、少女に――否、彼女を従える存在に平伏せよとばかりに押さえつけてくる。
(この世界の人達のピンチに比べれば耐えてみせないとだね)
アイドルステージなのだから、少女の向こう、光すら拒絶している暗闇の中には、本来「観客席」があり、人々の無意識の化身たるサイリウムが居るはずなのだ。この世界がアイドルステージに浸食されたままでは、彼等は永遠にサイリウムとして揺れるだけである。
「……歌って踊るといったアイドルらしいことは上手くできないかもだけれど」
リリスフィアはそう言ってゴーグルで髪をかき上げる。
「気持ちでは負けられないかな……ッ!」
その声と共にリリスフィアの前方――その背の時計のオーラを展開しようとしたクオリアの眼前に、氷の鏡が現れる。それはリリスフィアが押さえつける昏いオーラに抗いながら発動した|ユーべルコード《ちから》。
「わたしは、この星を滅ぼさなければならな……」
氷の鏡がリリスフィアに向かわんとした時計のオーラを押し留めた後、弾けるように砕けて破片が散り舞う。
が、本来そのまま地に落ちるはずの破片の幾らかが、重力にも薔薇のオーラにも抗って、クオリアへと向かう。
「最近のアイドルは戦ったりもするし、普段通りにいかせてもらうよ!」
好機と判断したリリスフィアが、普段は|剣士《リリス》として振るう魔剣を手に駆ける。直線に駆けるのではなく、ステップを踏むように、踊るように駆けるのは撹乱するため。
「自分で止められないのなら私達が止めてあげるよ」
緋色に輝く魔剣が闇を切り裂き、その向こうで緋色のサイリウムがぽつりと輝いた。
大成功
🔵🔵🔵
音駆螺・鬱詐偽
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
「この星の」ではないけど、来たわよ。
いいじゃないの!羨ましいじゃないの!あなたはオブリビオンになる前から人気者で!!
私なんて、主人公を盛り立てるだけの脇役よ!
『記憶を忘れられない』からすごく強い?
私だってSNSでディスられてるの忘れたくても忘れられないわよ!!
そんな私だって、今ではステージに立っているのよ!
元はサブのバロックメイカーだったけど、今の私のメインジョブ、この世界なら意味は分かるわよね。
鬱歌『Necroem』歌います。
私一人だけを立ち上がらせるなんて許さない。
私のファンなら、責任もって私を応援し続けなさい!!
●
「「この星の」ではないけど、世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル|鬱詐偽《うさぎ》さん、ただいま参上」
アイドルというにはローテンションな声音で応じたのは、音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)。
「この星のではなくとも、この星を守ろうとするなら、同じこと……」
「――……の」
クオリアの言葉にかぶせるように鬱詐偽がぽつりと零すが、言葉が聞き取れなかったクオリアが首を傾げる。
「いいじゃないの! 羨ましいじゃないの! あなたは|過去の残滓《オブリビオン》になる前から人気者で!!」
戸惑いを見せるクオリアへ、鬱詐偽は早口でまくし立てるように続ける。
「私なんて、主人公を盛り立てるだけの脇役よ!」
確かにアイドルであるからには、人気者でありたいと思うのはある意味では当然のことではあるのだが。
「『記憶を忘れられない』からすごく強い? 私だってSNSでディスられてるの忘れたくても忘れられないわよ!!」
元は|過去の残滓《オブリビオン》だった鬱詐偽は、猟兵として還ってきた今も『鬱るな!鬱詐偽さん』という配信番組を持っているのだ。勿論、「良い感想」だってあるのだ、ゼロではないのだが……負の思い出の方が色濃く残ってしまうのは、よくある話なのかもしれない。
「そんな私は、今はインターネット☆アイドル。だから――|鬱歌《ネガソン》『|Necroem《マダシヌニハハヤイワ》』、歌います」
そうして歌い出すのは、アイドルなのにどこか物悲し気な、|鬱歌《ネガソン》という冠に納得がいく歌。
「わたしが……でも、それでもあなたは……ッ!」
”今の”クオリアは、自分の願いが塗り替えられていることを理解している。それでも、この身が羨ましいのかとは、明確に口に上らせず、手にした懐中時計の力を解き放つ。
時間操作と昏いオーラにその身を押さえつけられながらも、鬱詐偽は歌う。
「――私一人だけを立ち上がらせるなんて許さない。私のファンになったのなら、責任もって私を応援し続けなさい!!」
間奏の間に、観客席があるであろう暗闇に向けて、鬱詐偽は叫ぶように声をあげた。
それに呼応するように、見えない暗闇の向こうで、薄紫のサイリウムがぽつりぽつりと灯った。
大成功
🔵🔵🔵
蒋・飛燕
●SPD
|流れ星《シューティング・スター》がただの流れ星じゃないって感じてたけど、まさか生き物だったとはネ
まずはスレイヤーカードの解除コードを詠唱ネ!
天が呼ぶ、地が呼ぶ、ご当地が呼ぶ!
悪を倒せとワタシを呼ぶ!
武蔵坂駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』参上アルヨ!!
ご当地ヒーローの活動で歌ったり踊ったりしていたアルけど…圧倒的アイドル力の差で緊張しちゃうネ
けど、それでも|ご当地ヒーロー《アイドル》として臆せずアイドル勝負するだけアル!
薔薇の鳥籠の重い空気を『フリーダムブレイズ』で吹き飛ばして、いつも通りの平常心を取り戻して…炎を纏いながら飛んで歌う一曲「愛緋天」を披露するヨ!
チョイヤー!!
●
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、ご当地が呼ぶ! 悪を倒せとワタシを呼ぶ! 武蔵坂駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』参上アルヨ!!」
朗々と名乗りを上げながらポーズを決めたのは、蒋・飛燕(武蔵境駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』・f43981)。本人も言ってしまっているが、アイドルというよりもヒーローである。ポーズもサイリウムの光を受けるというよりも、どちらかというと採石場で爆発を背にしたほうがしっくりきそうなポーズなのは、徹底しているというべきか。とはいえ、名乗り口上は飛燕の持つスレイヤーカードの解除コードなのだ。つまり、飛燕にとっては、この場に臨むには不可欠なもの。
(ご当地ヒーローの活動で歌ったり踊ったりしていたアルけど……圧倒的アイドル力の差で緊張しちゃうネ)
暗闇に沈んでいたとしても此処はアイドルステージなのだ。
普段の|ご当地ヒーロー《アイドル》として商店街のステージでのパフォーマンスとはまた違った、本格的なステージでのパフォーマンスは、どうしても緊張してしまう。
「――それでも|ご当地ヒーロー《アイドル》として臆せずアイドル勝負するだけアル!」
飛燕は決意と共に顔を上げると、その身を縛るように取り巻いていた昏いオーラを、飛燕の身から生じた燃え盛る炎のオーラが打ち払う。
「「愛緋天」、いくアルよ! チョイヤー!」
炎を纏った飛燕は、商店街でのパフォーマンスでも歌うテーマソングを歌い始める。
周囲に立ち込める動きを縛る昏いオーラも、時間の体感をおかしくする時計のオーラも、すべて纏った炎で打ち払おうとするように舞い踊りながら飛燕は歌う。
その弾けるようなパフォーマンスが、暗闇の向こうでウルトラオレンジの光を灯していった。
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と
花を辛い事に使うのは頂けないね
終わらせよう
「さあ、往こう!」
武器を打ち合わせ躍り出て
激烈な絶望と慟哭になす術もなく頽れた
自分が経験した苦しみと哀しみと絶望が
物理の楔のように突き刺さる
身に残る傷痕の痛みも蘇って
這い蹲りただ呻く
勿論これは幻惑だ
分かっては、いるけれど
でも!
歯を食い縛り立ち上がる相棒が
その姿を見てさざめく声なき歓声が
俺も立ち上がらせた
こんなものに負けて良い筈がない
俺は、俺達は
「絶対に負けはしない!」
幾度繰り返しても幾度でも立ち上がり徐々に肉薄する
絶対に諦めない
「自分で止められないなら俺達が止めてあげるからね」
終焉光を放ち彼女の行いを終わらせ鳥籠を無に還そう
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と
この戦場も人々を護る為に
きっちり勝ちに行くよ
「あぁ、往こう!」
相棒と武器を打ち合わせ共に前へ
その場に踏み出すと同時に
強烈な負のオーラが体も心も蝕む
重く重く淀んだそれが
置いてきた過去の悲しみと
崩れ落ちそうになりそうな絶望を
ついさっき有った事のように引き出す
諦めてしまいたくなるような
忘れていたいそれが身を引き裂くようだ
それでも、だからといって
俺達は絶対に諦めない
強く強く歯を食いしばって立ち
俺達が光で在ると見せる為に
俺達が折れたら、誰が護る
「絶対に負けはしない!」
何度蝕まれても立ち上がって
相棒と共に前へ向かう
「後は俺達に、任せてくれ」
死龍葬弾で穿って
この場に終止符を打とう
●
「花を辛い事に使うのは頂けないね」
花園の名を持ち、その名の通りに花が溢れる寮を営む葛城・時人(光望護花・f35294)が、鳥籠を覆う薔薇たちを痛ましげに見つめていた。花は人の心を癒し、豊かにするはずのものなのだ。クオリア・シンフォナーを名乗る少女の意図だけでこのステージが形成された訳ではなく、彼女もまた被害者なのだろう。しかし、捕らえた|流れ星《シューティングスター》を使い、今この世界をアイドルステージへと変貌させ、人々をサイリウムへと変えているのは間違いなく彼女なのだ。
「人々を護る為にも退けないからね」
そんな時人と共に立つのは、相棒たる凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)。人々を、世界を危機から護る事こそ、彼等が此処に立つ理由。|銀の雨降る世界《シルバーレイン》で能力者として戦ってきた頃からの、揺るがぬ意思。
例え今まで経験してきた戦いと様相が異なっていようとも、それは揺るがない。
「さあ、往こう!」
「あぁ、往こう!」
いつも通り互いの武器を打ち合わせて、二人は暗闇に沈む戦場へと足を踏み入れる。そんな二人を待ち受けていたといわんばかりに、昏いオーラが襲いかかった。
「――ッ!」
「く……ッ」
鳥籠に絡む薔薇から零れ落ちるオーラは確固たる意思を宿して二人に絡みつく。そうして伝えてくるのは、絶望と嘆き。二人が戦う力を得るよりも過去の記憶が共鳴するように揺り起こされる。
ただ、“誰かの絶望”誰かの絶望というだけではない。自分たちが経験してきた記憶までもが、自分たちに牙を剥くような状況。身体ではなく|精神《こころ》を抉ってくる重さと鋭さに、二人は崩れ落ちるように膝を付く。
(――これは、もしかしたら)
クオリア自身の、記憶なのではないかと、どちらからともなく思い至る。忘れる事を許されないクオリアが、意図してその記憶を籠めたのかはわからない。
「――それでも」
抗う。諦める訳にはいかない。二人が、猟兵が、ここで倒れてしまえば、この世界はアイドルステージで覆われ、人々は無意識の化身であるサイリウムのままになってしまう。
「負けて良い筈がない」
四肢に意思を籠めて、立ち上がる。例え、昏いオーラがそれを阻もうとも、何度でも。
「自分で止められないなら俺達が止めてあげるからね」
時人はそう言うとユーべルコードを起動する。暗闇の檻を突き抜けて、一筋の光が貫き、少女に向けて落ちてくる。幾度となく繰り返し振る光に、少女の動きが止まった。
複雑な戦文字を綴ってその好機を待っていたのは、陸井。
「後は俺達に」
――任せてくれ。そう言いながら放たれた弾丸が、クオリアに襲い掛かる。その向こうの暗闇で、白と青のサイリウムが光って揺れたような気がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクシス・ミラ
アドリブ◎
まるで夜闇のような昏い悲しみ…
だけど…!
負のオーラが僕を叩きつけようとも
盾で受け止めるように
この舞台に立ち続ける覚悟で
何度だって真っ直ぐと前へ
守りたい想い達が
助けたい心が、目の前にあるんだ
この舞台の悲しみを
応援席の皆を
そして君を
…手を伸ばす事を諦めてしまったら
誰の笑顔も守れない
希望の夜明けは訪れない!
時計のオーラが僕を遅くさせようとも
【例え夜が明けずとも】
光を降り注がせて魅せよう
彼女だけでなく
応援席の皆にも届かせるように
はじめは小さな星灯でも
集い合わされば満天の星となる
それを“僕達”で証明してみせるよ
応援を得られれば
浄化の光を降り注ぐ光に合わせ
一曲、どうぞお手を
流星のように放とう…!
●
(まるで夜闇のような昏い悲しみ……)
暗闇の鳥籠へ足を踏み入れたアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は、そこに漂うオーラが宿すものに眉を寄せる。
このオーラが媒介にしているものが、誰のどんな記憶なのかは、アレクシスには解らない。だが、アレクシスは手にした盾を振ってオーラを受け止め、歩みを進める。纏わりつくオーラが押し留めるように歩みを阻もうとも、この|舞台《ステージ》から降りるつもりはないのだと示すように。
「わたしと。わたしたちと……なにが、ちがったのかしら」
クオリアは、この場に|猟兵《アイドル》たちが総てを阻む闇の向こうの観客席で、|無意識《サイリウム》が揺れ始めているのは気が付いている。そうならなかった嘗てと、今の違いが、クオリアにはわからない。もしかしたら別のステージに居る|神格者《アイドル》たちなら何か判るのかもしれないが、問う事は難しいだろう。
「守りたい想い達が。助けたい心が、目の前にあるんだ」
その呟きが己に向けられたと判断したアレクシスが応える。
このオーラの媒介となった誰か。|無意識《サイリウム》となって観客席で揺れる人々。アレクシスだけではなく、この世界を護る為に集う猟兵たちは、彼等を救い護る為に戦うのだ。
そして、願いと行動が乖離しているクオリア自身も、その対象として居る者が少なくないのだ。
「……手を伸ばす事を諦めてしまったら、誰の笑顔も守れない。――希望の夜明けは訪れない!」
暗闇の内側、アレクシスの背で、赤星が輝く。
星から放たれる光が、少女の背に揺れる時計のオーラを、少しづつ穿っていく。
「はじめは小さな星灯でも、集い合わされば満天の星となるんだ。それを“僕達”で証明してみせるよ」
盾を背に収めたアレクシスが、クオリアへと手を差し伸べる。
「一曲、どうぞお手を」
星が降らせる光の中、差し伸べられた手に、少女の感情を無くしたような|顔《かんばせ》が、揺れる。
「……わたしは」
手を伸ばしかけたクオリアの姿が消える。それは彼女自身の意思なのか、それとも。
彼女が引き起こしている全世界変異現象は未だ始まったばかり。全てはまだ謎に沈んだままではあるが、小さいながらも明確な一手を猟兵たちは刻んだのだ。
それを証明するように、緋色、薄紫、ウルトラオレンジ、白、青、そして水色の光が、『ダークローズ☆ケイジ』に僅かに生じた綻びの向こうで瞬いていた。
大成功
🔵🔵🔵