シャングリラ☆クライシス⑤〜沈めた憧れをもう一度
アイドルになりたかった。でも、アイドルになれなかった──。
求められるのは薄っぺらい上っ面だけで、蓋を開ければ世界は欺瞞と嘘ばかり。
それなら、美しい『憧れ』は水底に沈めてしまいましょう。アイドルなんて憧れなんて、笑顔なんて…泡沫のまやかしなのだから。
「みんなに笑顔なんていらないの。私達だけが笑っていたらいい」
欲望を刺激して、欺いて、破滅させて。そうしてやっと、私達はようやく笑顔になれるのよ──。
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「大変よ!アイドル☆フロンティアで戦争なのですって!」
集まった猟兵たちに大慌てでそう告げるのは玻瑠璃子・セーラ。
オブリビオンに操られた謎の少女『クオリア』が|流れ星《シューティング・スター》を奪い、唐突に幕を上げたシャングリラ☆クライシス──今やアイドル☆フロンティアの世界中が「アイドルステージ」に塗り替えられて、人々はサイリウムやオブリビオンと化している。
「世界が元に戻らなければ、世界中の人たちもこのままになってしまうわ。原因を突き止めて元凶を倒さなくっちゃ!
でもまずは、原因よりも目の前のことから解決していきましょう!
皆に向かってもらいたいのはパレス☆オブ☆ドラゴン、『レッドライオン』さんが支配するアイドルステージよ。
青く透き通った水中にたゆたう神秘のステージなのですって!水の中なのだけれど、魔法の力が張り巡らされているから、呼吸は地上と同じようにできるわ。
けれどこの神秘的なステージには、この世界の人々が変身したオブリビオンさんが水底に蠢いてるわ…!」
それは深い嘆きと悲しみに囚われてオブリビオンと化した人々だ。猟兵たちは彼らがレッドライオンの虜になる前に浄化して、助け出さなければならない!
「オブリビオンさんたちは深い嘆きと悲しみに囚われているわ。きっと何か不幸を重ねた経験のせいね。
けれど心の奥底にはもっともっと大事な気持ち…アイドルへの憧れを感じるの」
自暴自棄になっても捨て切れなかったアイドルへの憧れ。それはきっと、嘆きと悲しみに囚われたオブリビオンの心を揺さぶる鍵となるもの。
「この世界のオブリビオンさんは何故かとっても強大よ。けれど素敵なパフォーマンスがあれば、歌声を水中いっぱいに響かせたら!
サイリウムになっている人々が応援で皆の力になってくれるし、オブリビオンさんたちの悲しい気持ちを振り払うことだってできると思うの!
それに、パレス☆オブ☆ドラゴンは水中のアイドルステージですものね。水着でステージに上がればとっても素敵に見えて、パフォーマンスもぐっと素敵に見えてくれるわ!」」
素晴らしいパフォーマンスで、観客席のサイリウムの心だけでなくオブリビオンの心さえも揺さぶれば、猟兵たちは応援の力で強化され、オブリビオンは弱体化して有利に戦えるだろう。
「さあ、水底に歌声を響かせましょう!
心を揺さぶるパフォーマンスなら、サイリウムの応援は皆に世界の危機を救える力をくれるわ!」
輝くグリモアから溢れ出る水泡が、アイドル☆フロンティアへの道を描く。神秘のアイドルステージの水底で待っているのは──オブリビオンの群れだ。
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
一章完結の戦争シナリオとなります。『インディセンシィ』との集団戦です。
オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
プレイングボーナス:水着を着てステージに上がる。/皆の心を揺さぶる歌を歌う。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『インディセンシィ』
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POW : どこまでも一緒に
【煽情的な視線】で射抜いた対象を【精神汚染】で攻撃し、着弾点からレベルm半径内の仲間を【倒錯的な悦楽】で回復する。
SPD : いつまでも一緒に
【人気アイドルから複製し編集した歌声】を披露する事で【完成された歌姫】に変身し、戦場内の敵全てを攻撃する【堕落の流星群】を降らせる能力を得る。
WIZ : 君と一緒に
【優しく穏やかな歌声】を披露しながら視界内の対象1体に【心を見透かすような視線】を向けている間、対象は本人と使用者以外を認識できない。
イラスト:望月らいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カンナハ・アスモダイ
WIZ
※アドリブ連携等歓迎
……悲しそうな顔。
この子たちの笑顔、取り戻してみせる。
だって私、悪魔法少女だもの!
プリンセスハート!メ~クアップ!
|契約者《ファン》予備軍が水底で待っているもの。
水着で行かせてもらうわ。
水底に沈みながら、<歌魔法>を紡ぐ。
悲しそうな、されど一筋の希望を抱かせるような表情。
……透き通るような歌声を水中に響かせる。
お願いだから、望みを捨てないで。
悲しみの底でも、光はまだ差し込むから。
そう訴えかけるような<パフォーマンス>で<存在感>をアピール
<アイドル力>が高まったところで行かせてもらうわ。
響け!乙女魔法!ピュアラブ☆エデュケーション!
神秘的なアイドルステージとは裏腹に、オブリビオンたちの嘆きと悲しみに沈む暗い水底。
夢に挫けて心に嘆きを満たすなら。貼り付けた笑顔で悲しみを見せるなら──その心に、本当の笑顔を取り戻してみせる。
「だって私、悪魔法少女だもの!」
キラリと輝く笑顔を見せて、カンナハ・アスモダイはパレス☆オブ☆ドラゴンへと飛び込む。
「プリンセスハート!メ~クアップ!」
水底に待つ|契約者《ファン》予備軍の為、に馳せ参じるそのアイドルは、悪魔法少女★あすも☆デウス!
黒と赤のゴスロリドレスをキラキラ輝く水面に解いて、シックなカラーの花柄総レースで大人っぽいパレオでサイドテールをふわりと揺らし、水着姿でオンステージ!
青く透き通った神秘のステージに似合いの水着での登場に観客席のサイリウムは喜び揺れ動く。
「君もアイドル?私達もよ。仲良く一緒に歌いましょう」
それでいてインディセンシィたちは軽薄に笑ってみせる。憧れを諦めて本当の気持ちを胸の奥底に沈めた、表層だけの笑顔はなんて悲しい顔なのか。彼女たちの本当の笑顔は──こんなに悲しいものじゃない!
「そうよ。私は悪魔法少女★あすも☆デウス!
とびっきりの歌で、アンタたちに本物のアイドルの歌と笑顔を見せてあげる」
「本物?…心を込めて歌うわ。君と一緒に」
彼女たちの唇から紡がれるのは優しく穏やかな歌声のハーモニー。心を見透かすようなその視線はカンナハの瞳を奪うけれど──カンナハの最初から、彼女たちから目を逸らす気なんてない。
カンナハはステージを飛び出して、カンナハは水底に沈みながら歌声を重ねるように歌魔法を響かせる。
それは透き通るように儚げで美しい歌声の魔法。柔らかく撫でるように響くのは、かつてアイドルに憧れた少女たちへ──アイドルへの憧れが曇ってしまった心へ訴えかける歌唱。
お願いだから、望みを捨てないで。
悲しみの底でも、光はまだ差し込むから。
暗く分厚い雲に星が翳っても、星の輝きは曇らない。
思い描いた夢も、希望も、憧れも、まだ何一つ失ってはいないから。
水中へ響き渡る歌声に、インディセンシィたちは貼り付けた笑顔を強張らせ喉を詰まらせる。揺れる瞳が映すのは一筋の希望と期待。捨て切れなかった、隠すしかできなかった憧れを──再び輝かせる為に、全力のパフォーマンスを魅せるアイドルの姿。
「私達、は──」
少女たちは憧れから目を離せない。カンナハのどこまでも輝く存在感とそのパフォーマンスに、かつて目指した憧れのアイドルの姿が重なる。そして胸を打たれるのはインディセンシィたちだけではない。
観客席のサイリウムが燃えるようなピンクに染まれば、応援の力で膨れ上がるのは爆発的な乙女のアイドル力!
「響け!乙女魔法!ピュアラブ☆エデュケーション!」
無数に分かれて溢れるのは瞬くハートのホーミング乙女光線は、インディセンシィたちの曇った心を撃ち抜いて、再びその胸にアイドルへの憧れを輝かせた。
大成功
🔵🔵🔵
ロイド・サングルガット
おや、水中。フィン、我が愛しの不死鳥よ。君は水程度では消えぬだろうが、水蒸気爆発を起こしてしまいそうだ。どうか結界で覆わせてくれたまえ。(結界術)
さて、水着は持っていないが……歌と演奏ならば一日の長がある。
人々にユメを見せるのは得意だし、昨今のアイドルは男でもなれるとY◯utubeで見た。ならばいけない理由はあるまい。
黒白刃鍵、展開。『希望』よ響き渡れ、我が歌よ届け。命を称える歌を。(命の歌+歌唱)
オブリビオンたる貴女方の魂の浄化を祈り、安らかな眠りへと。(浄化+催眠術)
|偶像《アイドル》として、皆様を導きましょう。
さあ、音楽を共に。歌いましょう、共に。
今こそ、皆でアイドルとなるのです。
「おや、水中」
ロイド・サングルガットはパレス☆オブ☆ドラゴンの水上に立つように優美に浮かび、共にこの世界へ降り立った不死鳥を優しく見上げる。
「フィン、我が愛しの不死鳥よ。君は水程度では消えぬだろうが、水蒸気爆発を起こしてしまいそうだ。どうか結界で覆わせてくれたまえ」
ロイドの言葉にフィンは炎の翼を揺らしてその腕に留まると、結界が炎の体を柔らかく包み込む。
攻撃的な相手にならば時に水蒸気爆発も有効であろうが──この水中で待っているのは観客席とアイドルステージ。魅せるものは、心に呼びかける|歌と演奏《パフォーマンス》なのだから。
「いらっしゃい。私達と一緒に沈みましょう?」
そうしてロイドがフィンと共に青く澄んだ水中へ身を沈めれば、迎えてくれるのは軽薄な笑顔のインディセンシィ。アイドルへの輝かしい憧れを水底へ沈めてしまった少女たち。
射抜こうとする扇情的な視線をすり抜けながら、柔らかな微笑みを浮かべるロイドが思い出すのは、天下大手の動画投稿・配信サイトだ。広いインターネットの海はアイドルに性差はないと教えてくれた。ならば歌と演奏に一日の長があるロイドのアイドルとしての強みは充分。そして何より──。
「人々にユメを見せるのは得意だ」
微笑みを零して水中に広げるのは黒と白の鍵盤。フィンが結界に包まれた炎の翼を明るく広げれば、それは昏い水底まで届くスポットライト。
「『希望』よ響き渡れ、我が歌よ届け。──命を称える歌を」
ロイドが両手を広げればピアノは軽やかな音色を響かせる。鮮やかな音色が描くのは色褪せない希望の輝き。どれほど深く沈めても、心を揺らす衝撃に隠した憧れは顔を出す。観客席のサイリウムもピアノに合わせて軽やかに踊りだせば、太陽のように暖かな|応援《ぬくもり》が力となってロイドの祈りを後押してくれる。
「|偶像《アイドル》として、皆様を導きましょう」
薄い唇から紡がれる歌声が水底に伸びゆき響いてゆく。それは傷ついた心を包む子守歌──オブリビオンたる少女たちの魂の浄化を祈り、安らかな眠りへと誘う。
眠りに落ちる少女たちが見るのは、諦めてしまった夢の続き。あの時掴めなかったチャンスをもう一度。
さあ、音楽を共に。歌いましょう、共に。
今こそ、皆でアイドルとなるのです。
「眩しい光…」
ロイドが両手を伸ばせば、少女たちの手が躊躇いがちに伸びてゆく。すべてを掬いとって浮かび上げるのは、フィンの炎が明るく照らす希望のステージ。
ピアノの音色と歌声を重ねて、皆が奏でるのは眩いほどに輝く希望と喜びのハーモニー。
──それは幻想の夢。少女たちの目が醒めた時、アイドルになれなかった現実が変わることはないだろう。
けれどこの夢が泡沫であろうとも、少女たちは忘れない。アイドルへの憧れも──皆でステージに立ったこの記憶も。
大成功
🔵🔵🔵
神臣・薙人
世界を救くために
まずは目の前の出来る事を
その通りですね
緊張しますが行きましょう
2024年の水着で参加
相手を認識した時点で桜花絶唱使用
水底にいる人の数によっては
一度しか歌えないかもしれません
だから最初から全てを出し切ります
視線の影響は
私にとっては好都合ですね
私の声が、歌が、聞こえますか
水底に囚われた貴方達を
私は救いたいのです
傷付いた心を少しでも癒したいのです
貴方達もそうだった筈でしょう?
アイドルは夢と希望を与えてくれる存在
自分だけが笑顔でいればいいなんて
それが本音の筈がない
叶わなかったのだとしても
貴方達はアイドルになる事を望んだのですから
だから
そこから出て来て下さい
私は貴方達の笑顔が見たいのです
黒白桜の水着で水中に飛び込んだ神臣・薙人は、その表情に硬い緊張を滲ませる。
唐突に幕を上げたシャングリラ☆クライシス。未だ分からない事だらけでも、この世界の危機は猟兵の助けを求めているのだ。まずはこの水中のパレス☆オブ☆ドラゴンに歌声を響かせることで、オブリビオンと化した人々を救わなければ。
「世界を救くために、まずは目の前の出来る事を」
薙人は水を強く蹴って、白い羽織を尾びれのように揺らしながら、青く澄んだステージの奥底へと進む。見通せないほどに暗い水底…そこに潜むオブリビオンの数によっては、そう何度も歌えるかはわからないだろう。
「だから、最初から全てを出し切ります」
覚悟に気持ちを引き締める薙人を迎えるのは、笑顔を貼り付けた無数のインディセンシィたち。大きく息を吸い込んで、全てを込めて歌うのは桜花絶唱。
「私の声が、歌が、聞こえますか──」
薙人が彼女たちに向けるのは敵意ではない。傷付いたその心、その全てを癒し救うという決意の歌声。癒しを祈り願い、歌声を響かせて──彼女たちの痛みを癒やす代償が、かつてアイドルを諦めた少女たちの無数の痛苦と苦悩が薙人の心に降り掛かる。
胸に突き刺さるような痛みを覚え、顔を顰める薙人にインディセンシィたちは意地の悪い笑みを浮かべた。
「ね?誰かを助けたいなんて、笑顔にするなんて。痛くて苦しいでしょう?」
受け止める痛みがひとつであれば小さな代償でも、全てを癒そうと幾つも積み重ねれば大きくなるもの。
絡みつくような彼女たちのその視線は心を見透かすように、優しく穏やかな歌声が重なり響く。
こんなに痛みを知って苦しみを受け止めて、それでもまだ、自分のことを犠牲にしたいの?
問いかけるような歌声から、その視線から──薙人は目を離すことなく喉を震わせる。
「水底に囚われた貴方達を、私は救いたいのです。傷付いた心を少しでも癒したいのです。
…貴方達もそうだった筈でしょう?」
──アイドルは夢と希望を与えてくれる存在なのだから。
自分だけが笑顔でいればいいなんて、それが本音の筈がない。叶わなかったのだとしても、少女たちはアイドルに憧れて、アイドルなる事を望んで、希望に向かって走り出した。
本当の気持ちは、憧れは──こんな水底に沈めて隠したい訳じゃない。
薙人は胸を刺す痛苦を堪え、真摯に歌声を響かせる。どれほどの痛みが苛もうと、薙人の決意は揺るがない。彼女たちを癒やし救いたい──その想いを込めた歌声は、観客席の|人々《サイリウム》の心を震わせ、インディセンシィたちの心を揺らす。
あたたかな応援が薙人の背中を押してくれる。サイリウムとなった人々の想いも薙人と同じ、たった一つ。
「そこから出て来て下さい。私は貴方達の笑顔が見たいのです」
痛くても、苦しくても──傷付いた心があるなら、何度だって癒やすから。アイドルを夢見て輝く笑顔を、もう一度。
心に響く歌声に少女たちは手を伸ばす。忘れかけていた憧れは──笑顔はそこに。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
今年の水着で参加
憧れは、叶わない
その気持ちは……わかる
僕はアイドルじゃない
ただ歌や踊りが好きなだけ
心臓が弱くて
無理な運動は本当は駄目で
自分のペースを維持出来る、ただそれだけ
今日は沢山踊れた
でも明日は駄目かもしれない
僕の心臓は気まぐれだから…
どんなに好きでも仕事には出来ない
だからこそ
寄り添える想いが
届けたい言葉がある
歌唱で
ダンスで
皆を救いたい
笑顔にしたい
だから
憧れを捨てないで
好きを否定しないで
穏やかで優しい歌唱を響かせながら
人魚のように優雅に舞うパフォーマンス
そして水底まで…迎えに行ってあげる
優しい笑顔の誘惑で手を伸ばして
もう一度こちらに引き上げるように
そして指定UCの破魔の光と花弁で心も浄化
ホイップクリームのような甘可愛い水着で、パレス☆オブ☆ドラゴンへと飛び込んだ栗花落・澪は、その水着に似合わない程の苦い表情を浮かべる。
「憧れは、叶わない」
あぶくに零れ落ちるのは、憧れに届かず諦めてしまった、インディセンシィたちのその想いに重なる気持ち。どうしようもなくわかってしまうその気持ちに、澪の胸は締め付けられるようだった。
栗花落・澪は──アイドルではない。
ただ歌や踊りが好きなだけ。好きだからこそ心から打ち込めるものだけれど、それでいてどんなに好きな事でも、澪の気まぐれな心臓は『好き』を仕事にすることを認めてはくれない。
澪の弱い心臓は、ふと気まぐれに激しい苦痛を訴える。踊るような激しい運動だって本当は止められている。けれどそんな気まぐれをなんとか察して、自分のペースを維持できる──ただそれだけしか、できない体。
今日は沢山踊れた。でも…明日は駄目かもしれない。
気まぐれに振り回されて気持ちが揺らぐこともあるけれど、だからこそ寄り添える想いが…届けたい言葉が澪にはある。
歌唱で、ダンスで。
皆を救いたい、笑顔にしたい。
現実はお砂糖みたいに、お菓子みたいに甘くはない。どうすることもできなくて心が挫けることは、彼女たちにも、澪にもあって…きっと誰にでもあるだろう。
だから──澪は諦めない。
澪はインディセンシィたちの歌声に重ねるように、穏やかで優しい歌唱を響かせる。シフォンのリボンを揺らして水中を優雅に舞うパフォーマンスはまるで人魚のよう。
観客席のサイリウムが優しげに揺れて、七色に揺れる幻想的な光となって水底まで射し込んでゆく。
アイドルになれなくたって、憧れを捨てないで。好きを否定しないで。好きな気持ちを、悲しいままに沈めないで。だってアイドルが好きな気持ちを応援してくれる人たちは、この観客席にだっているのだから。
「希望の輝きは灯るから。僕が灯してあげるから」
澪はインディセンシィたちから視線をそらさずに柔らかく歌い続け、優しい笑顔で両手を伸ばして彼女たちを水底まで迎えにゆく。溺れた王子を救った──人魚姫のように。
引き上げるように誘って、この世のものとは思えぬ美しい花々と破魔の光を降らせれば、パレス☆オブ☆ドラゴンは悪を浄化する天上世界へと変化する。美しい天上世界はただ美しく輝いて、悪に染まった心を浄化する。
希望を輝かせる澪の笑顔に少女たちは思い出す。昏い水底から浮かび上がった、忘れられなかったあの憧れを──もう一度。
大成功
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