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ティタニウム・マキアの残暑

#サイバーザナドゥ #ノベル #猟兵達の夏休み2025 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

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ステラ・タタリクス




●スニーキングとスィミング
 似てるよねっていうのならば、似てないよねっていう。
 事実似てないし、意味合いも全く違う。
 強いているなら語感が、という程度である。
「まったく、『メリサ』様は私がどういう行動をしたら満足するのですか……はっ、隠れ家じゃない一軒家を二人で持とうってことですか!?」
「何を言ってんの?」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、『メリサ』の同行を逐一センサーで捕捉している。センサーとは文字通りの意味だが、機械的なものではなくて、メイドセンサーなる奇怪なる謎の力によるものであった。
 このメイドセンサーは、通常の機械的なセンサーとは異なり、感知されにくい。
 ユーベルコードか?

 そんな彼女の背後を取れる『メリサ』も大概である。
「既成事実ですよね、これって!」
「何も成されてないし」
「ああん、『メリサ』様のいけずぅ。少し位ノってくださってもよろしいですのに」
「乗ったら最後、あんたは暴走超特急で地の果てまで行くだろ」
「それはそうです。チャンスの女神は前髪しいかないと言いますので! 掴みます!」
「前髪を?」
「前髪を」
 ぐ、とステラは振り返り『メリサ』に抱きつこうとしたが、当然のように肩を抱かれて引き離される。
「あん」
「変な声出さないでくれるぅ!? 誤解しかされないんですけどぉ!!」
「事実ですが?」
「捏造じゃん……」

 そんなやり取りのあと、ステラはにかやかな顔でラッピングされた箱を『メリサ』に差し出す。
「……なに」
 疑わしい視線である。
 手を伸ばしすらしていないのは、警戒に警戒を重ねているためであろう。普段の行いってやつである。
「私としたことがバレンタインを逃してしまいました。『メリサ』様も私が来なくて寂しかったのでは?」
「ん、え、うん……」
 視線をそらす『メリサ』。
 彼からすれば、それどころではなかったので、すっかりそうしたイベント事というものを失念していただけであった。
「何故、目を逸らします?」
「忘れていたっていったら、怒らない?」
「怒ります。なんですか、媚薬入れますよ?? 自白剤も入れますよ??」
「そういうとこなんだけど……」
「ふう……毎度のことですが、『メリサ』様は少々往生際が悪いように思えます」
「何事も諦めない強い心を持っている、粘り強い性格です」
「就活生みたいな物言いですね。私の夫に就職したいと?」
「違いまーす」
「お待ちなさい!」
 そんな風にいつものようにステラと『メリサ』の追いかけっこが始まる。

 サイバーザナドゥのネオンの光と影の中をメイドが疾駆する。
 いつものと言えばいつものやりとり。
「こんな事を質得る場合ではないですよ!『メリサ』様、『人間』の生活してますか?」
「してるけど?! え、なに、俺、人間に見てない!? 義体化しているけど、そこまで!?」
『メリサ』の背を追いかけながらステラは尋ねた。
 降ってくるような声にステラは頭を振った。
「いえ、『メリサ』様は、目的ができると全てを捨ててでも手に入れようと奮起する癖がありでしょう」
「そこまでじゃないけど?」
「どの口が」
「いやぁ」
 そんなつもりは、と降ってくる言葉にステラは地面を蹴って飛んで、彼の腰に抱きついた。

「多くを与えるのでしょう? 与える側が不養生ではいけませんよ?」
 細い腰だった。
 義体化しているとは言え、とステラは思ったかもしれない。
「……幸せな王子様と同じだ。与えるのなら、どこからか持ってくるわけにはいかないんだよ」
「それでも」
「それでも、だよ。身をこなしにてでも、与えなければ、贖罪にもなりやしない」
 ネオンの光が二人を照らしていた。
 しっとりとした空気。
 その雰囲気の中、ステラは『メリサ』の背中に頬を寄せる。
「健康を管理する妻、要りませんか? 三人とも娶るというのもありですよ?」

 台無しである。

「なしでーす! 三人って!? え、あと、誰!?」
「『ケートス』様に、『オルニーテス』様もいらっしゃるでしょう!」
「いやいや、ノーカン!」
「逃げるつもりですか!」
「逃げないでか!」
 振り切ってまた走り出す『メリサ』。
「早く子どもたちにおやつを持っていかねばならないでしょう! さあ、次のセーフハウスのポイントを教えてください!」
「切り替え早くない!?」
『メリサ』はステラをげんなりした目で見ている。

「いいですか? 私は『メリサ』様や『エイル』様が絡んでない時は本当に有能なのです」
「いや、その有能とこの有能は違うっていうかぁ」
「つまり! 私がヤベーのは『メリサ』様のせい!」
「どんな空中回転すれば、そんな結論にいたるのかなぁ!? びっくりなんですけどぉ!?」
「責任取って❤」
「はーと、じゃない!」
 冗談じゃない! の言い方で『メリサ』はビルとビルの合間を飛ぶ。
 しかし、有能メイドの底意地は、振り切れなかった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年08月29日


挿絵イラスト