ホリデー・コーデⅡ
●夏休み
管理職というものに休日はない。
正確に言えば、という行は昨年にやったので割愛させていただく。
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)はここ最近、忙しかった。
忙しさに殺されると書いて忙殺。
その熟語に正しい在り様でヌグエンはゴッドゲームオンランのトイツオック地方にて忙しない日々を送っていた
元より休みなんてない状態である。
そもそもAI、アーティフィシャル・インテリジェンスに休息は必要ない。
そこがAIの強みでもある。
がしかし、だ。
去年と同じように妻たちは結託していた。
「大丈夫。何も心配しなくっていいから」
「あなたでなくてはならないタスクは軒並み終わっているし、あなたでなくても私達が代役できる仕事ばかりだから」
「だから、ここ数日のタスク管理が妙だと思ったんだよ」
「そういうこと」
妻たちの言葉にヌグエンは一本取られた、と思っただろう。
去年は無理矢理に休まされたが、今年は根回しというものを済ませている。
年々巧妙になっていくような気がした。
来年はこの分ではどうなるのだろうかとヌグエンは末恐ろしい気持ちになった。
「そういうわけだから。おやすみ行ってらっしゃーい」
去年と同じようにヌグエンはゴッドゲームオンラインから追い出されるようにサクラミラージュへと送り出されていた。
「……一年ぶりの休み、か。つってもなぁ、ケツが落ち着かねぇったらありゃしない。仕方ない。次のイベントのアイテムのアイデアでも探しに行くか」
ヌグエンは幻朧桜の花弁が常に舞い散る世界の平和な在り様に、どうしたかと首を捻る。
何をすればいいのか。
相変わらず、休み方というものをヌグエンは知らなかった。
なにかしていないと落ち着かないのは、ワーカーホリック以外の何ものでもない。
暫く通りを歩いていると一つの和菓子店が目に入った。
ショーケースの中に並べられているのは、どれもが奥ゆかしい菓子の数々。
「ん……? 店主、これは?」
「お客さん、水羊羹、ご存知ない? ああ、異国の方か。これは失礼した」
店主と二、三言、言葉を交わす。
「なるほど。シンプルでも美味いんだな……」
「茶と合わせますと、さらに」
「じゃあ、12人前頼むわ」
そう、妻たちの分だ。
彼女たちの意見も聞きたいし、何より土産なのだ。
ヌグエンは、風呂敷に包まれた土産を抱えて、ヌグエンは今年もまた彼なりの休みを満喫したのだった――。
成功
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