エクソダスは照らすか、エースの来歴
メルヴィナ・エルネイジェ
●温泉
メルヴィナはルウェインを連れて温泉に入る事にしました。
貸切風呂があればそれに、無ければ混浴に入ります。
●混浴だった場合
「他の人を見ちゃだめなのだわ」
ルウェインの目を手で塞ぎます。
「はっ! メルヴィナしか見ません! 見えません!」
●一時の安らぎ
「いいお湯なのだわ」
メルヴィナは久しぶりの温泉に思わず表情が緩んでしまいます。
「メルヴィナ殿下と湯浴み……! いかん! 煩悩よ消えろったら消えろ!」
リラックスしているメルヴィナと対照的に、ルウェインは緊張でガッチガチ(意味深)になっていました。
「なんで今更緊張しているのだわ? 一緒にお風呂に入ったのはこれが初めてじゃないのだわ」
理由を尋ねられたルウェインはしどろもどろに答えました。
「確かにそうではありますが……! 温泉の湯気に包まれているメルヴィナ殿下……メルヴィナはまた別格といいますか……美しくも神秘的で悩ましげといいますか……!」
ルウェインから緊張の理由を聞いたメルヴィナは少し照れました。
「そんなふうに言われると恥ずかしくなってくるのだわ……」
「恥じらうメルヴィナ! なんと可愛らしい! ンアーッ!」
ルウェインは煩悩が爆発しました。
「気持ち悪いのだわ」
でも内心悪い気はしないメルヴィナでした。
だいたいこんな感じでお願いします。
ルウェイン・グレーデ
●合わせ人数
ソフィア
メルヴィナ
ルウェイン
以上三名です。
メルヴィナとルウェイン組を別にして貰ってもOKです。
ソフィア・エルネイジェ
シナリオ【エクソダスは揺るがす、エースの来歴】の後のちょっとした小話のノベルをお願いします。
アドリブその他諸々お任せします。
海鶴マスターのPCやNPCにご登場頂いてもOKです。
●依頼が終わった後
ソフィア達はビバ・テルメの温泉に入ってから帰る事にしました。
騒がしいメサイアがいないので、ソフィアにとっては息抜きするのに丁度良い機会でした。
●心の洗濯
「静かですね……」
一時とは言え、ソフィアは久々に穏やかな時間を過ごしていました。
因みにメルヴィナはルウェインと一緒に入ってくると言っていました。
温泉に浸かっていて思い返すのは、先程の戦闘で出会った四人の少年達事です。
「クィンタブル様の前例もあります。沙汰は適切に下されるでしょう」
四人の姿を思い返せば思い返すほど、父のグレイグによく似ていたように思えるのです。
「仮にタイプGがグレイグの名を意味するのだとして、本当に我が父のクローンだとしたら、プラナスリーはどのような目的で……?」
父の戦士としての強さを欲したのでしょうか?
考えても答えは思い浮かびませんでした。
「母の耳にも入れるべきでしょうね」
帰還したら今回の件を女王の実母に報告しようと考えました。
だいたいこんな感じでお願いします。
●小国家『ビバ・テルメ』
温泉。
それは人の心身を癒やす魔法の如き湯。
立ち上る硫黄の僅かな香り。
とろみ付くような湯の感触。
白湯気が立ち込めるのは、岩に囲われた露点の浴場。
その浴場を取り囲むのは竹の囲い。
時折、心地よいほどに響き渡る鹿威しの音が耳朶を打つ。
戦乱の世界であるクロムキャバリアにおいて、観光を資源とした稀有であり移植なる小国家として『ビバ・テルメ』を象徴するかの如き光景であった。
「はぁ……」
疲労が溶け出したかのように息を漏らしたのは、ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は、体の真芯を温める温泉に感嘆さえしていた。
日々の激務。
それは第一皇女であり、次期女皇としての責務であった。
生まれながらにして背負った責任を彼女は重たいと思ったことはなかっただろう。
女性だてらに、と言う者もいるかもしれない。
しかし、それは口さがない者たちが言う言葉であって、重さはどこにもなかったし、投げかけられた言葉に心が傷つけられるほどソフィアという女性は弱くはなかった。
むしろ、そうした言葉を真っ向からねじ伏せるだけの力を持ち得る女性であるとも言えただろう。
だがしかし、溜まりに溜まった日々の疲労は、如何ともしがたい。
皇女としての執務に加えて、猟兵としての戦いにも挑まねばならない身。加えて言うのならば、末妹の不始末をつけるために各方面に奔走せねばならぬことのほうが余程彼女の心労を色濃いものにしていただろう。
彼女の日々がどれほど騒々しいものかは、想像に頑ない。
「静かですね……」
白い湯着をまとったソフィアは温泉に身を浸し、久方ぶりの平穏に僅かに気を緩めるようであった。
彼女の白肌は上気するようにほんのりと桜色に染まっていた。
血行が良くなっている証拠である。
彼女は小国家『ビバ・テルメ』を襲った四騎のオブリビオンマシンを打倒するために猟兵として訪れ、戦いの疲れを癒やすために湯に浸かっている。
寄り道であったし、公務とは言えない。
が、そんな僅かな暇をプライベートな時間にすることがどうして憚られようか。
同行していたメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は、むしろ当然というように彼女の騎士であるルウェイン・グレーデ(メルヴィナの騎士・f42374)の手を引いて家族湯へと、さっさと行ってしまった。
少しくらいは姉に付き合うということをしてくれてもよいのではないかと思う。
が、それまでの妹のことを思えば、むしろ良い兆候なのではないかとソフィアは思わないでもなかった。
何より、一人の時間は貴重なのだ。
今はつかの間の幸福を身に十分に味わうべきだろう。
「はぁ……戦いを一時であれど忘れてしまうほどに心地よいですね」
火照る体の熱。
体の真芯から温めていく温泉の効能はなんだったか。
肩こり腰痛……ああ、とソフィアは思考がまるで動かぬことに戸惑うも、しかし、湯に身を任せる。
散るように湯へと散らばる薄紅色の髪。
倦怠感とも違う。
心地よさだけが体を包みこんでいく。
すらりと伸びた足が湯着の裾から投げ出されていた。湯の熱に僅かに外気を求めた為だろう。
激務出会っても彼女の肌は白く美しい。
滴る湯は、その肌の上に珠のように浮かんでいる。
キャバリア戦闘において踏み込みとは即ち、コクピットのフットペダルやアームレバーの操作に起因している。
元より『インドラ・ナイトオブリージュ』は近接格闘戦闘に特化している。
高速機動に加え、身体にかかる加速度Gは相当なものであろう。
であればこそ、足の筋肉の張りが気になる。
柔らかな乙女の肌の内側に秘められた鍛えられし筋肉に指が沿い、軽くほぐす。
湯によって柔らかく放ってはいるが、まだ硬さを残しているように思えた。
「ふぅ……やはり戦闘の余波が残っていますね」
戦いの疲れ。
それが己が身に蓄積していることを自覚してソフィアはまた息を吐き出した。
幾分ほぐれたとは言え、まだ疲れは残っている。
それほどの相手だった、と言わざるを得ない。
先の戦闘で遭遇した四騎のオブリビオンマシンを駆る少年たち。
後天的アンサーヒューマンとなった少年たちがオブリビオンマシンによって狂わされたと聞いている。
彼らの姿は全てが同一だった。
捕縛された彼らの処遇に対して、ソフィアが口を挟むことは当事者であるから当然の権利である。
しかし、ソフィアは以前にも『ビバ・テルメ』を巡るオブリビオンマシン関連の事件において狂わされたエースパイロット『クィンタブル』の前例を思い出す。
彼は己に忠誠を誓ってくれているが、この小国家のために働いて欲しいと思っていた。
そして、彼は実際見事にこの小国家のために尽力してくれている。
であれば、四人の『神機の申し子』たちに沙汰を任せれば間違いはないだろうと判断していたのだ。
しかし、問題なのは四人の後天性アンサーヒューマンである少年たちの容姿である。
「父上……に、似ていました」
そう、思い返せば思い返すほどに父である皇王『グレイグ』に似ていた。
他人の空似とは思えない。
かといって、天涯孤独の身から皇王へと上り詰めた父に血縁関係がまったくない、とは言い切れない。
「『タイプG』……仮にこれが『グレイグ』の名を意味するのだとして、本当に我が父のクローンだとしたら、『プラナスリー』はどのような目的で……?」
思考がまとまらない。
湯の暖かさに緩んでいる。
考えられるのは、父のキャバリア操縦者としての圧倒的な強さの再現。
だが、それだけだろうか?
わからない。
いや、まとまらない。
ぼんやりとしながら、ソフィアは湯船から身を起こした。
肌に張り付いた湯着は、彼女の見事な女性的な体を湯気に隠しながらもシルエットとして映し出していた。
見惚れるような曲線美。
「母の耳にも入れるべきでしょうね」
『エルネイジェ王国』に戻ったのならば、母である女王に報告しなければならない。
それで何がわかるか。
わからないかもしれない。
だが、ソフィアは湯の暖かさに当てられ、上気した頬のまま脱衣所へと向かう。
湯着を取り払う。
外気が体温を冷ますように張り付こうとするが、温泉で籠もった熱が肌より薄い熱の膜を生み出して、体の熱を奪われるのを妨げていた。
雫を拭き取り、浴衣へと着替え終わったソフィアを待っていたのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「……ナイアルテ様? 如何なさいましたか?」
「ソフィア様におかれましては、此度の事件、ご活躍頂きまして。加えて公務共にお疲れかと思いまして」
「はあ……」
よくわからないな、とソフィアはホワホワとした頭で頷く。
「ですので、マッサージなど如何でしょうか」
「マッサージ?」
「はい、湯上がりのマッサージは最高です。指による指圧、叩打、軽擦。リンパを解きほぐし、デトックス!」
「それは、とても惹かれるものがありますが」
「えへん。こう見て、私、心得があります。ゴッドハンドは伊達ではないのです!」
それ関係あるのだろか、とソフィアは思った。
だが、こうして彼女が申し出てくれていることは、厚意からだろう。それを無碍にするのも悪い。
であれば。
「では、少しお願いしても?」
「はい!」
その言葉にナイアルテは微笑む。
そして、しばらくして休憩室の一角からソフィアのとんでもない声が漏れ出していたが、施術が終わる頃には、不思議と日々の激務による疲労は解きほぐされ、スッキリとした顔立ちでソフィアは『エルネイジェ王国』に帰還するのだった――。
●家族湯
温泉。
それは古来より人の営みに根ざしたものであった。
身を清潔に保つこと、心身を癒すこともそうであるが、何よりコミュニケーションの場として浴場が発展した側面も無視することはできなかっただろう。
とは言え、湯に浸かるということは、身を晒さねばならぬということである。
湯着などもあるが、しかし、それでも限界というものはある。
それはプライバシーとも言いかえる事ができただろう。
そうしたことに配慮して温泉施設も発展を遂げるものである。
ここ小国家『ビバ・テルメ』においても例外ではない。
湧き上がる温泉資源を活用し、様々な施設が建造され続けている。その中の一つが、家族湯であった。
通常、温泉は大勢で入るものである。
だが、前述した通りプライバシーの観点から見て家族湯は、一つの小屋のように周囲から隔絶された浴場を貸し切ることができるのだ。
多くの文化が芽吹いては散る戦乱の世界であっても、やはりプライバシーというものは大切なのだ。
故に、メルヴィナは家族湯を貸し切っていた。
姉であるソフィアに付き合ってもよかったのかもしれないし、そうするのが筋であった。
だが、メルヴィナは混浴というものを知っていた。
男女隔てることなく湯に浸かる形態である。
「そんなのだめなのだわ! 他の人を見ちゃだめなのだわ!!」
まだ温泉にはいっているわけでもないのにメルヴィナはルウェインの目を手で塞いでいた。
まるで見えない。
「はっ! メルヴィナしか見ません! 見えません!」
暗黒の視界の中で、ルウェインはむしろ一層メルヴィナの体温と香りを意識させられていた。大概である、この男も。
しかし、彼がメルヴィナの意思に背くことはない。
彼にとっての絶対はメルヴィナなのだ。
彼女の言葉に対してできる返事は『はい』か『イエス』しかない。
強要されているのではない。
むしろ、ルウィンが望んでそうしているのだから、本当に大概である。
器がデカイんだか、底が抜けているのか、さっぱりわからない。
そんな二人が家族湯を借り受けて湯船に身を浸す。
メルヴィナは息を吐き出していた。
心做しか色っぽいと思えるのは、ルウェインが緊張しているからかもしれない。
「いいお湯なのだわ……」
メルヴィナは久しぶりの温泉であった。
表情が緩み、眦が垂れ下がっている。
泉質も申し分ないことはルウェインも理解していた。
だが!
忘れてはならない。
ここは家族湯である。
小屋のように周囲からは隔絶されている。視線が通らない。
故にメルヴィナは非常にリラックスしていたし、それは喜ばしいことだ。
もう一度、だが!!
「メルヴィナ殿下と湯浴み……!」
それだけでも異常事態である。
加えてメルヴィナは湯着を身に着けていなかった。
湯気で視界良好とは言えない。
それでもうっすらと彼女の体のシルエットはわかってしまう。
ふくらみであるとか、なだらかさであるとか。
そういうのが視線を横にずらすだけで、ありありと見えてしまうのだ。
「いかん! 煩悩よ消えろったら消えろ!」
ルウェインは煩悩退散とばかりに念じる。
が、無理である。
逆に聞きたい。
意中の、それこそ慕う女性が裸身にて隣で湯に浸かっているのだ。
念じるだけで煩悩が消えるのならば、人類の歴史はこんなにねじれていないし、男女の関係というのは、もっと清いものであったことだろう。
清いことが良いことばかりであるとは言わない。
言わない、が。
しかしルウェインは己の体の一部がまるで制御できていない事態に、自身の修練の浅さを心底思い知らされていた。
もうガチのガッチガチで、ガチであった。
ああ、体が緊張でこわばっている、という意味である。
彼の名誉のためっていうかプライバシーのために、あえて言及させていただいた。あえて、である。言っておくが。
「なんで今さら緊張しているのだわ?」
そんなルウェインを見やり、メルヴィナは指先の湯を軽く払って、その頬に水滴を飛ばした。
水滴は彼の顔に掛かる。
緊張をほぐそうとメルヴィナなりに気を使っての行動であろうことはわかる。
「一緒にお風呂に入ったのは、これが初めてじゃないのだわ」
なにか言わねば、とルウェインはまごまごしていると、さらに追い打ちを掛けられた。
何故、そこで思い出させるようなことを言うのか。
ルウェインは、益々身を固くしてしまう。
思い出してしまうからだ。
あの夜のことだけではない。
わざとだろうか? わざとそんな言い方をされているのだろうか? そんな風にルウェインは思いながらも、答えねば不義を疑われるとばかりにしどろもどろになりながらメルヴィナを薄目で、さらに横目で見やる。
「確かにそうでありますが……!」
「じゃあ、何の遠慮もいらないのだわ。ここは、家族湯なのだわ。だったら、誰に見られるわけでもないのだわ……その」
メルヴィナは湯の暖かさによるものかどうかわからないが、頬を紅潮させてルウェインを見上げた。
「ふたりきり、なのだわ」
それは反則であった。
そんな風に言われたら、取り繕えなくなってしまうではないか。
「……~~~ッッ、その、温泉の湯気に包まれているメルヴィナ殿下……」
「殿下は、いらないのだわ」
「いえ、あのッ」
「……ルウェイン」
「~~~ッッ!! メルヴィナは、また別格といいますか……美しくも神秘的で悩ましげといいますか……!」
湯船の中で向き直るルウェイン。
包み隠さず、という態度の現れであろう。
思った以上に鍛え上げられたルウェインの胸板や腹筋の堀の深さにメルヴィナは、自然と指を這わせていた。
呻くような声がルウェインから漏れた。
薄目のままメルヴィナを見つめるルウェインの金色の瞳が揺れている。
湯気で包まれていても見えるほどに、そこにある感情を認めてメルヴィナは、少し照れた。
そう、照れは少しだけ。
けれど、身の内側にあるのは、愛おしさであったことだろう。
眼の前の男は自分から目を決して逸らさない。仮に視線を外したとて、それは他の女を見るためではなく、己を直視できぬからといういじらしさなのだ。
であれば、それに応えたいと思うのもまた女心であったかもしれない。
「そんなふうに言われると恥ずかしくなってくるのだわ」
悪い気はしないけれど。
そんな感情を込めてメルヴィナはなぞる指先を雫まとわせながらルウェインの頬までかけあがらせて、触れる。
なんとなく。
そう、なんとなくだけれど。
良い雰囲気だ。
そういう雰囲気だ、と思ったかも知れない。
だが、期待させて悪いが。
ここにいるのはルウェインという男である。
「恥じらうメルヴィナ! なんと可愛らしい! ンアーッ!!」
そう、ルウェインの煩悩が爆発した。
具体的には鼻から出る。
赤い液体。
そう、鼻血である。
湯船を汚した鼻血は、でてるし、出し過ぎだし、止まらないし。
それはそれは大変であった。
「気持ち悪いのだわ」
煩悩爆発したルウェインを膝に乗せて介抱しながら、メルヴィナはまんざらでもなさそうに笑み、その額に張り付いた髪を払うのだった――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴