Plamotion Talk BBQ
●君が作って、君が話す
積みとは、ある界隈においては罪のごとく語られるものである。
だが、本当にそうだろうか、と思わないでもない。
プラスチックホビー。
それは作って楽しむものである。
世間一般には、そう認識されているものだ。
即ち、購入したのならば作る。
それが趣味としてのプラスチックホビーの楽しみ方であるはずだ。
だがしかし、世の中には購入するだけ購入して、部屋の片隅であったりクローゼットであったり、押入れだったりに積み重ねていく者もいる。
批判的に捉えられがちであり、またプラスチックホビーを制作することを趣味にした者たちからすれば、起こり得る問題……即ち、あるあるであった。
無論、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の住まう屋敷、その一室――『陰海月』の部屋のクローゼットも、いわゆる『積み』プラなる箱が積み重ねられている。
「ぷいきゅー!」
「がんばって作っていましたからねー」
『疾き者』は小遣いの範囲で、それを如何様にするのかに関して干渉はしてこなかった。
だが、本来作る事を目的としたプラスチックホビーが作られず、積み上げられている様は、哀愁すら感じさせるものだった。
だが、積み上げることもまたプラスチックホビーの醍醐味であることは言わねばならない。
「ぷきゅ!」
『陰海月』は、今回造り上げたプラスチックホビーを示す。
これも積みプラの一つであった。
「なになに……? 幻想騎兵隊水辺ver. 仲良しウチワエビ&ミズクラゲ、と?」
示された説明書のイントロダクションを『疾き者』はしげしげと見つめる。
手にはトング。
眼の前にはバーベキューコンロ。
そう、今日は『プラモーション・アクト』、『プラクト』のプールサイドイベントにやってきていた。
眼の前にしたバーベキューコンロを見ればわかる通り、BBQコースでの参加である。
『陰海月』は、『五枚の花びらを持つ花』を赤みを増した塗装を施したウチワエビとクリアパーツを活かした塗装を施したミズクラゲを手にして掲げていた。
「ぷきゅ!」
「あ、焼けてますよ」
はい、とトングで焼き上がった肉を『陰海月』の皿に置く。
だが、『陰海月』は留まらなかった。
これは彼が試行錯誤の末にデザインを決定し、マスキングでもって再現したものなのだ。
その紆余曲折を知る『霹靂』は、彼がどんなにがんばったのかを知っている。
語りたくて仕方ない、という彼の様子にも理解を示していた。
「クエー」
「はい、『霹靂』も」
嘴で器用に受け止めて肉を頬張る『霹靂』。
『疾き者』も理解していた。
「『陰海月』のこだわりですよねー」
「きゅ!」
それだけじゃないよ! とウチワエビの可動域を見せ、さらにミズクラゲの軟質パーツの柔軟さを示していた。
「ぷきゅぷきゅぷきゅ!」
語るともう止まらない。
彼の中では、語りたいという欲求が食欲を上回っているのだ。
お肉もそっちのけである。
これまで食欲の方が勝っていた『陰海月』が、そこまでのめり込んだ模型趣味。
『疾き者』からすれば、夢中になれるものがあることは喜ばしいことだった。
「現実のウチワエビとクラゲの共生関係をうまく表現しているんですねー。でもほら、『陰海月』、友達と一緒にいるのですからー」
「クエ?」
「きゅ……」
『霹靂』を示す。
確かに語ることは楽しいことだ。
けれど、友達と一緒にきているのだ。一緒に楽しむのがよいのではないか、と『疾き者』は言う。
確かにその通りだ、と『陰海月』は頷く。
「ぷきゅー!」
じゃあ、いただきまーす! と元気よく声が響く。
もう積みプラの罪などまるで感じさせない、夏の思い出の一頁があった――。
成功
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