輝くアイツは騎士道☆アイドル!?
紳士淑女の諸君、夏と言えばなんだろうか。海? 水着? 夏祭り?
いや違う、時代はフェスである。夏フェス。サマーがソニックしたりフジがロックするのが夏、これアイドル☆フロンティアでは常識。
その旋風は、人口一桁万人ぐらいの小都市にもこぢんまりと吹き荒れるのだった――!
そんな訳で地球に降臨したベルト・ラムバルドは、イケてるアーバングラスを颯爽と装着し――灼熱すぎる日ざしに慄いていた。
「なぬっ……今年の夏、暑すぎ……?」
しかし、今日は昨今高齢化が進む某県某市民の皆様が待ちに待っている音楽フェスの日だ。(自称)騎士道精神の権化として、熱中症警報などに屈するわけにはいかない。体調管理は万全、鎧とか着てこなくてよかった~、と思う。
なにより、駅前はベルト様を追って県外から遠征にやってきた熱いファンの皆様でごった返し……てまではいないものの、地元の方々がざわつく程度には注目を集めている。新人アイドルたるもの、その想いに応えずして武道館には立てぬ。
『続いて今注目のこの男ォ! 騎士道☆アイドル、ベルト・ラムバルドォォー!! Come on!』
MCのコールを受けたベルトは、眩い太陽光が降りそそぐ野外ステージに降り立つ。
観客の皆様も暑さでちょっとへばり気味だ、ハンディファンを手放すと死ぬ!
だが、そこをなんとかするのが騎士道☆アイドル!
「そう、私が騎士道☆アイドル、ベルト・ラムバルド……初めましての方は以後お見知りおきを、いつも来てくれる諸君は……今日もありがと~っ!!」
ブワァ……!
その時、ベルトの後光が圧倒的に目に優しい輝きで観客席を照らし、人体に優しくない熱波は彼の生まれ持つカリスマ性を前にしてすべて四散した。
身に纏う爽やかなマリンルックから、二十代半ばのフレッシュでフルーティかつ大人のほろ苦さも感じさせるエキゾチックなマリンノート系の以下略、とにかく超いい香りが心地いい微風に乗って押し寄せる!
何この演出!? と万民が刮目した瞬間、サラサラの長い金髪と、肩に羽織ったジャケットが微風でファサァ……と揺れるのだった。
そして目が合ったかと錯覚した瞬間に放たれるウインク! 見たら胸キュン不回避、これがメロつきってやつなのね……という感情で満たされ、崇めずにはいられない。
「ベルトー!」
「ベルト様ァァ!!」
「私が来たからにはもう安心、灼熱の太陽も清く正しく爽やかな騎士道には勝てんのだよ! 盛り上がってくぞ、『騎士道☆どアホウアイドル伝』!」
――ワァァァァ!!
まだ呆気に取られている初見の皆様をよそに、『ベルト様♡』『発光して♡』などと書かれた団扇や、カリブルヌスソード型ペンライトをシャッと掲げるディープなファンの方々。それに対してファンサ発光を返しながら、ベルトは持ち歌を唄いあげる。
「Everyday☆イケメンがウォンチュウ、だけど私って騎士だから~♪ (台詞)あれ?なんかピンチだ、どうしよう! あ、あれは……あの時助けた諸君!?」
ベルト様の威光(UC)で異世界からいらしたバックダンサー達が更にステージを盛り上げる。飛び交う神輿と飛空艇、空飛ぶ女の子、猫に悪魔に警察になんでもアリのハチャメチャパフォーマンスは中毒性抜群だ。
しかし、驚くべきはそれに全く負けないベルトの凄まじい存在感。
閃きのままに繰り出される高貴なステップからは育ちのよさが滲み出てしまうが、歌の内容は絶妙にトンチキ……その姿はまさに、古き良き昭和平成のアイドル。騎士というか王子であった。
『あの頃』を思い出した中高年男女達は、そのぶっ飛んだ輝きに感動し、謎の涙を流さずにはいられない――!
「おお、ありがたや……ベルト様、なんまんだぶ……」
「ナウすぎてチョベリグくなる……マンモス尊い……親衛隊入っちゃう……」
合掌してるおじいちゃんおばあちゃん、私つい後光出ちゃうけど仏様じゃないからな?
中高年のおば様達は何語しゃべってるのかな? 楽しそうで何よりだけど……。
というか騎士として名を馳せたいし、もっと若者にも人気あっていいと思うんだけどな!?
なぜか平均年齢が高すぎる客席を眺めて、内心そうも考えるベルトだったが……とにかくチヤホヤされているので、チョ~いい気分だ!!!
「みんな~! 熱中症には本当に気をつけるんだぞ、まぁ私が守るけど~♪」
「暗黒騎士!暗黒騎士!」
「むしろ黄金~!」
「輝いて!」
自分の活躍で街や人々が活気づいていると嬉しくなってしまうのだ。実は俺って……騎士よりアイドルに向いてるかも!?
「魅せろノブレス・オブリージュ~♪ アイドルって、たのし~~~~!!!」
騎士道の権化として本末転倒、でも一周回ってむしろ騎士かも!?
ベルトはステージ上で真夏の太陽よりも輝き続ける。その輝きを浴びた者は皆健康になり、じわじわと人気が高まっていくのだった――(中高年の間で)。
成功
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