企業都市襲撃−カスハラには屈しない!−
● |企業都市《メガコーポ》・|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》
サイバーザナドゥの企業都市では血なまぐさい話題には事欠かない。しかし、その日の喧騒はいささか毛色が違った。
奴隷同然で使い潰せる安価で大量の労働者から、ウィザード級のハッカーや腕利きの暗殺者、違法改造を請け負う闇医者まで、あらゆる人材を抱える派遣会社。悪辣極まる契約で登録者を縛り合法、非合法を問わず無数の顧客を抱える悪徳企業の名は『|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》』。
「クズ人材掴ませやがって、違約金だ違約金!金払えボケがぁ!」
体に埋め込まれた拡声デバイスから、上擦った怒声を飛ばす青年。彼のうなじからはケーブルが伸び、電脳拡張ユニットに接続されている。ユニットによってシナプス制御された、腐りかけの生体兵器がロビーに殺到する。
「コーポのエージェントからバンクデータを失敬するだけの、ちょっとした小遣い稼ぎだったんだぞ!?それが蓋開けてみりゃ、知っただけで抹殺対象になるような機密データぶっこ抜いた挙句、エージェントの脳焼きやがった!おかげで俺はお尋ね者だチクショウ!」
その勢いに負けじと白い騎士が声を張り上げた。純白の甲冑に似つかわしくない『警備主任』と書かれた安っぽいネームプレートを胸に下げ、騎士は大喝する。
「バンクデータの窃取には成功したのだろう?確かに契約は履行されている!したがって、貴殿の被った損害は保証対象外であり、弊社の返金対応ガイドラインに該当する案件ではない!これ以上の敵対行動はカスタマーハラスメントと看做す!」
これ以上ない、毅然とした対応である。
「うるせえ、クソ企業がっ!お客様はカミサマだろうが!いいから黙って金払えや!」
「クレーマーは顧客ではない!カスタマーサポートチーム!クレーム対応業務に当たれ!」
クレーム対応──すなわち、殴って黙らせる──を実行すべく、武装したゴーレムの部隊が前進する。年端もいかない少女の素体に重々しい武装を装着し、大損した元顧客へ無慈悲に拳を向ける。青年の金切り声とともに生体兵器がカスタマーサポートチームに飛びかかり、本格的な戦端が開かれた。
腐臭を放つ体液と青みがかった人工血液が飛び散る中、警備主任は高らかに宣言した。
「我が社は、カスハラには決して屈しない!!!」
●グリモアベース
「店員さんと、お客さん、どっちもリスペクトを持って接するのが大事ですよね……お客様は神様、じゃないですし…店員さんは何でも屋さんじゃないですから……」
ふへへ、と控えめに笑うグリモア猟兵は心巳・さとり(ワンバン・コミュニケーション・f18327)。目線は常に己の足元に注がれ、発した言葉は地面に跳ね返される。何やら最もらしいことを言っているが、彼女のコミュニケーション能力を思えば、店員と客、どちらの側に立っても難儀しそうなことが容易に想像できる。
「あっ、さ、サイバーザナドゥのメガコーポ『伏魔御殿』に、襲撃をしかけた勢力がいるようです……」
話を進めろ、という周囲の無言の訴えに気づいたさとりは、慌てて軌道修正する。
「現地では、既に戦闘に突入しており…乱戦状態となっています。襲撃に便乗してメガコーポの勢力を削ることが目的です……ですが、伏魔御殿では主任クラスはかなりの実力者に相当します……それに、クレーマーさんも真っ当な方ではなそうなので、最後はどちらの勢力も相手にすることになりそうです……」
一文話すたびに一息ついてなんとか説明を終えたさとりは、彼女のか細い声を聞き逃すまいと耳をそばだてる猟兵たちに向け、精一杯の笑顔を作った。
「…皆さんの無事の帰還を、心から願っています……!」
群青いろは
お世話になっております、群青いろはです!
今回のシナリオは、サイバーザナドゥのメガコーポ、『|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》』への襲撃に乗じて、その勢力を削ぐことが任務になります。
第1章は集団戦です。乱戦状態の戦場に乗り込み、メガコーポ側の量産兵器オブリビオンの数を減らします。襲撃者との共闘も、両者を相手取ることも可能です。戦場で存在感を放ち、『警備主任』を呼び寄せましょう。
第2章はボス戦です。猟兵たちを脅威と認めた『警備主任』のオブリビオンが、直接排除に動きます。これに対処しメガコーポに打撃を与えましょう!
第3章は再び集団戦です。戦場に残る残党を排除して、この襲撃事件を解決しましょう!
基本的にプレイングは全て採用とさせていただきます。また、マスターの裁量で共闘、アドリブ等ございます。単独のリプレイを希望される場合、アドリブや特定行動NGの場合、あらかじめプレイングに明記をお願いいたします。
第1章 集団戦
『量産型蹂躙鉄腕機兵『ゴーレム・ガール』』
|
POW : ゴーレムインパクト
単純で重い【蹂躙鉄腕「ゴーレムアーム」】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ゴーレムスマッシュ
【ゴーレムアームに搭載されたロケットの噴射】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
WIZ : ゴーレムロケットパンチ
自身の【戦闘能力の減少】を代償に、【ロケットエンジンで飛翔するゴーレムアーム】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【質量を活かした攻撃や腕に装備したブレード】で戦う。
イラスト:もろ蔵
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ベルベナ・ラウンドディー
警備主任を呼び出すまで適度に暴れて目立ってこい、と言われてましてね
それならどちらも敵に回す形で介入しておきますよ
単純明快【バーサーク】…要は皆殺しです
直刀一本でユーベルコード発動、無差別攻撃で挨拶としましょう
【串刺し・衝撃波】近接間合外から衝撃波で無差別に貫き倒す
腹でも顔でも装甲が薄いあたりやはり量産型…と、馬鹿にするのはいけませんね
アレも犠牲者かもしれない以上、全力と多少の憐憫の念を以て始末するのみ
チンピラは知らん
【魔獣知識・化術・存在感】
ゆっくり、威圧的な魔獣の空気を放つように、戦場に歩みを進めてその一角を崩す
自然との合一を特徴とするのが黄龍拳(ジョブ説明)
獣の気配を宿すのも心得ていますよ
●報・連・相を徹底
戦場は異様な熱気で包まれていた。関節部が軋む駆動音、内骨格フレームが砕け人工血液が飛び散る。悲鳴や気迫の声すら聞こえない、作りものたちの戦場にベルベナ・ラウンドディー(berbenah・|∂《ラウンドディー》・f07708)は降り立った。
「…ったく、自分の命を投げ出すことに躊躇いがねえな。サイバーザナドゥの闘争は、無機質で気が滅入るぜ」
純白の鱗と翠緑の瞳をもつドラゴニアンのベルベナは、知性と野生の同居するその顔に心底うんざりしている表情を貼り付け、誰にともなくつぶやいた。
「まあ、哀れな被造物たちに同情が無いわけではないですが……どちらにしてもあなた方は倒すべき敵。花向けに多少の憐憫を以て、始末させてもらいます」
携えた直刀を抜き放ち、半身の体に目線の高さまで刀身を上げて構える。鋭い切っ先を乱闘するゴーレムと生体兵器に向ける、美しい霞の構え。剣先にエネルギーが凝集し、淡い光を放つ。
「痛みは一瞬です…『|夕立一輪《ユウダチイチリン》』」
突き出された刃はエネルギーを炸裂させ、衝撃波を伴い四方の敵を串刺しにした。メガコーポのゴーレムには、頭部や腹部など剥き出しの急所に正確に斬撃が突き刺さり、クレーマーが率いる腐った生体兵器は接合の弱い部分から衝撃波を受けてバラバラに弾け飛ぶ。互いの集団を殲滅するという任務の遂行に全力を尽くしていたゴーレムと生体兵器は、初めて戦場に異物が紛れ込んでいることを認識した。そして、その異物が眼前の殲滅目標より遥かに強い、排除すべき脅威であることも。
「フン、やっとこっちを見ましたね?手っ取り早く、纏めてかかってきてください」
先刻のうんざりした表情は消え、ベルベナは満足げに笑みを浮かべた。直刀を握り直し、構えを変える。先ほどの凛と美しい構えではなく、荒々しい闘争心を剥き出しにした構えだ。心無い創造物のはずの彼らが一瞬たじろいだように見えた。ベルベナの翠緑の瞳は赤みが差し、喉の奥から自然と低い唸り声が漏れる。
「不明な戦力を確認。主任に報告、及び警戒レベル引き上げを具申。報・連・相、大事」
量産された兵器に過ぎない彼女たちだが、組織人としての基本が教育されているようだ。報・連・相は確かに大事だ。
「現場レベルで脅威測定ができるとは……|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》は量産の下っ端でも、案外優秀なんですねっ」
言葉の端を置き去りに、ベルべナは敵の集団に飛び込んだ。平時の知性は影を潜め、歯を剥いて凶暴な笑顔を湛えた野生が前面化する。乱暴に直刀を振り回し、当たるを幸い人波を切り裂いていく。
「不明な戦力に告ぐっ!!!」
突如、大音声が戦場に響いた。ビリビリと空気が振動し武器を振るう手が一瞬止まる。
「…貴方の行動は弊社に対し敵対行為に該当する!何らか弊社に不満や意見がある場合はカスタマーフォームに問い合わせることを推奨する!」
「意外とちゃんとしてるんだなぁ。まずは客として接するなんて」
「また貴方が破壊した従業員に関しては賠償を請求する。支払いが不可能な際は人材登録を強制し、弁済に勤めてもらう!!!」
無論、サイバーザナドゥのメガコーポがちゃんとしているわけがなかった。
「……前言撤回。悪徳企業の看板に偽りなしだ」
自社の利益に貪欲なメガコーポの姿勢と、無意味に動かされた自身の感情に呆れと軽い苛立ちを覚え、ベルベナは小さく舌打ちをする。不意をついて、脇から飛び出してきたゴーレムが重々しい拳をベルベナに振り下ろす。
「っぶな!このやろ…!」
体捌きで鉄塊のような腕を回避し、剥き出しの胴を逆袈裟に切り裂く。直線的で単純だったゴーレムの動きは機敏になり、死角を攻めるように戦略的なものに変化した。
「排除優先度更新、高度戦術的カスタマーサービスを実行」
「戦術的カスタマーサービスぅ?お客様に対して、物騒なことしますね」
あまりにも不穏当な組み合わせの言葉に、思わず気の抜けた声が出る。字面の間抜けさに隠れているが、自分クラスの戦力を持った襲撃者をあらかじめ想定しているという事実に気づき、ベルベナは伏魔御殿の底知れなさに戦慄する。
カスタマーサポートチームのゴーレムたちは陣形を整え、戦場の乱入者を包囲する。ジリジリと包囲網を狭め逃げ道を封じてゆく。ベルベナは四方八方から注がれる冷徹な敵意を警戒し、低い姿勢で迎撃体制をとる。
張り詰めた緊張を先に破ったのはゴーレムたちだった。4体のゴーレムがベルベナの間合いに踊り出し、握り込んだ両手を振りかぶり思い切り叩きつけた。激しく砂埃が舞い、彼がいた地面はクレーターのように抉り取られていた。
「──いい|一撃《サービス》ですね」
ベルベナのマントがはためき、砂埃に大きな影を落とす。8つの拳が振り下ろされる刹那、彼は大きく跳躍し攻撃を回避した。並はずれた動体視力と運動能力がなければ、ひしゃげて潰れる憂き目にあっていただろう。
「なので、極上の術でお返しします」
『|夕立一輪《ユウダチイチリン》』。技の銘の通り、雨の如く降り注ぐ無数の突きに襲われ、ゴーレムは両腕を力なく下げ沈黙する。ベルナルが地面に降り立つと、直刀をレイピアのように構え即座に再びユーベルコードを放つ。軽やかな突きはいくつもの衝撃波に拡散し、命ならぬ命を刈り取ってゆく。
「君たちでは話にならない!上の者を呼びたまえ!!!」
大成功
🔵🔵🔵
メル・メドレイサ(サポート)
時計ウサギのマジックナイト×パーラーメイド、15歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、演技時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
戦闘スタイルは多種の属性を扱う魔法使い
武器に魔法をかけ戦うこともできます
依頼にちなんだ品を給仕することを好み、味方には有効なもの、敵には嫌がらせ用のものを渡します
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●客に奉仕するように、組織に奉仕せよ
戦場は異様な熱気で包まれていた。関節部が軋む駆動音、内骨格フレームが砕け人工血液が飛び散る。悲鳴や気迫の声すら聞こえない、作りものたちの戦場にメル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)は降り立った。
「紛争調停はメイドの仕事じゃないのだけれど……これもお仕事だもん。真面目にやらなくっちゃ」
ふう、とため息をつくメル。彼女の動きに合わせて大きな耳と豊満なバストが揺れる。メルに目もくれず暴れ回るゴーレムと生体兵器を見て不満そうに呟いた。それはメイドの本分から外れた仕事ゆえは、あるいは相対するのが感情を抑制されたゴーレムゆえか。
「無視してくれちゃって。今に釘付けにしてあげるわ」
メルは透き通る刀身の剣を抜き、構わず殴り合う両者に切っ先を向けた。
「偉大なる帝龍の力よ、この傀儡の戦場にてその威を示せ!」
ユーベルコードを発動した彼女の体が、淡い光に包まれていく。光はやがてガラスの刀身を持つ彼女の武器に収束し、刃に屈折した光はさまざまな色彩へと分化する。
「焼け焦げなさい!」
剣先から紫電が迸り、一直線に伸びた。その直線上にいた敵は雷に貫かれ半ば炭化した骸と化し、拡散した電撃に接触した周囲の敵は体の自由を失いひっくり返っている。
「よそ見しないで、まだまだいくわよ!」
メルは剣をタクトのように振るい、戦場に縦横無尽に雷を降らせた。無邪気に、無慈悲に敵を屠る閃光の後には、雷鳴と焦げた哀れなゴーレムが残った。
「不明な戦力に告ぐっ!!!」
突如、大音声が戦場に響いた。ビリビリと空気が振動し武器を振るう手が一瞬止まる。
「…貴方たちの行動は弊社に対し敵対行為に該当する!何らか弊社に不満や意見がある場合はカスタマーフォームに問い合わせることを推奨する!」
「あら、誠意を感じない対応ね。マニュアルでもあるのかしら?」
凶悪なオブリビオンが業務マニュアルを読み込む姿を想像し、そのミスマッチな光景にメルは吹き出す。しかし次の言葉で真顔に戻された。
「また貴方たちが破壊した従業員に関しては賠償を請求する。支払いが不可能な際は人材登録を強制し、弁済に勤めてもらう!!!」
弱みにつけ込み、元顧客や反対勢力を取り込んで組織を拡大させメガコーポまで上り詰めた|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》の本質を見た。
「…ヤだわぁ、あなたたちみたいな、醜く肥え太った汚らしいご主人様だなんて。お仕えするなら尊敬できるステキなご主人様じゃないと!」
堂々たる宣言と共に煌めく切っ先で空中に円を描いた。剣が一際まばゆく輝き視界がホワイトアウトするほどの閃光を発した。メルが放った閃光はあたり一帯に白い雷を降らせ、一瞬遅れて雷鳴が轟いた。
──しかし、ゴーレムは一体たりとも倒れてはいなかった。分厚い装甲を備えたゴーレムのアームで電撃を防いだのだ。とはいえ無傷という訳ではなく、メルの渾身の雷を受け止めたアームは焼け溶けボディから剥離した。満身創痍に見える身体で、ゴーレムはメルを包囲する。
「マスターコマンド、自己犠牲的奉仕。『文字通り粉骨砕身働きたまえ』。命令受諾」
片腕を失い、バランスを取ることすら危ういゴーレムたちは残った腕をメルに向ける。甲高いチャージ音が反響し、黒鉄の装甲に覆われたアームが赤熱する。退路を塞がれ無機質な敵意を浴びて、なおメルは不敵に笑った。
「ふふ、まったく…奉仕は|私《メイド》の本分よ?まーったくなってないわ。ご奉仕っていうのは、される方もする方も気持ち良いものなの!」
圧縮されたエネルギーが解放され、ゴーレムのアームが飛翔する。複雑な軌道を描き、大質量の鉄塊がメルを押し潰さんと殺到する。
「烈風よ、巻き上げろ!」
メルの言葉に呼応するように風が巻き上がり、ゴーレムのアームをその持ち主ごと上空に舞いあげた。互いにぶつかりあいながらくしゃくしゃにまとめられる。澱んだメガコーポの空に爆炎が上がる。
引き起こされた衝撃波が、メルの耳とバストを再び大きく揺らした。
成功
🔵🔵🔴
佐藤・和鏡子
騒ぎを起こすのが目的なので、見た目が派手になるように暴れます。
具体的にはガジェットショータイムで作った火炎放射器を救急車に組み込んで火炎放射救急車を作って火炎放射しながら敵めがけてフルスピードで突っ込みます。
さすがにこれぐらいやれば騒ぎになるはずですから。
より騒ぎを派手にできるように襲撃者とオブリビオン両方へ無差別に火炎放射で焼き払ったり轢きます。
救急車のエンジンのパワーで火炎放射器を作動させたり、ナパーム剤入の軍用の火炎放射器燃料を使用するなど、より強力な炎をより広範囲に飛ばせるようにします。
敵の攻撃は顔面めがけて火炎放射して目潰ししたり、逆に救急車で撥ね飛ばして対抗します。
●傷病者の療養期間には有給を充てる
戦場は異様な熱気で包まれていた。関節部が軋む駆動音、内骨格フレームが砕け人工血液が飛び散る。悲鳴や気迫の声すら聞こえない、作りものたちの戦場に──。
「わわわっ!どいてくださーい!」
けたたましいクラクションと共に|佐藤・和鏡子《さとう・わかこ》(リトルナース・f12005)が、白い救急車両を操り暴走する。後部のスライドドアからは物々しい火炎放射器の円筒が左右からのぞいており、和鏡子がアクセルを踏み込むのに合わせて黒煙と火炎を吐き出している。
エンジンが唸り車輪が加速する。タイヤが摩擦で溶ける匂いを撒き散らし、ゴーレムと生体兵器の群れに向かいフルスピードで突っ込んでいく。
「高速接近する物体を検知しまs──」
一瞬、ゴーレムの視界は救急車のフロントでいっぱいになる。回避も防御も間に合わず、撥ね飛ばされ無惨な形にひしゃげて落ちた。側面から取りつこうとした者は高温の炎で容赦なく焼かれのたうち回る。戦場を切り裂いた和鏡子の救急車は炎の軌跡を描きながらドリフトし、再び敵の集団へと向き合う。
「ええっと……このレバーが右の火炎放射器で、こっちのボタンは…ワイパー!?」
和鏡子のユーベルコード、ガジェットショータイムで火炎放射器と融合した救急車の運転席は、見慣れないレバーやボタンが所狭しと備え付けられ宇宙船のような有様だった。ガチャガチャと手当たり次第スイッチやボタンを操作したために、ワイパーやウィンカー、火炎放射器がでたらめに動き出す。
「…うん、だいたいわかりました!」
自信満々の和鏡子が押した赤いボタンによって再び耳をつんざくクラクションが響き、タイヤが空転しながらフルスロットルで爆走した。大きく車体を跳ね上げながら、ゴーレムも生体兵器も無作為にスクラップにしていく。しかし、当然ながら救急車は悪路の走行に向く車両ではない。ましてアンドロイドの残骸が散乱する戦場ではなおさらだ。
「や、やば…うわあっ!」
救急車が、空を飛んだ。
バランスを失い宙をまう救急車から和鏡子が命からがら脱出する。炎を撒き散らし回転する白い救命車両と、必死の形相で車から体を投げ出す和鏡子。伏魔御殿のオフィスフロアの社員と目があった。目の前の信じ難い光景を目に焼き付けているようだ。
燃料がエンジンに引火する直前でユーベルコードを解除し火炎放射器をパージする。頭上を飛翔する車両から投下された火炎放射器は、ゴウッと炎を吐き出しながら……。
「不明な戦力に告──」
突如、戦場に響いた大音声を、圧縮された燃料に引火した火炎放射器の爆発音がかき消す。そもそも、決死の大ジャンプを敢行した和鏡子の耳に周囲の声を聞く余裕などなかった。
「…また──破壊した従業員に関──賠償を請求する──支払いが不可能な──登録を強制し、弁済に勤め──う!!!」
「──っは!い、生きてますよね?私、大丈夫ですよね!?」
マニュアルに沿った警告は完全にスルーされ、想定よりも幾分か派手な騒ぎを起こした当人──和鏡子は乱れた服や顔についた煤を拭っている。いつの間にか、彼女の周囲を大惨事を免れたゴーレムたちが臨戦体制で取り囲んでいた。背中に取り付く生体兵器を歯牙にもかけず、車両一台でカスタマーチームを半壊させた猟兵を睨め付ける。
「被害甚大、警戒レベルを最大まで引き上げ、目標の即時殲滅を実行」
「一難去ってまた一難、というやつですね……もうひと暴れ、派手に目立つとしましょう!」
和鏡子は両手を伸ばし、ユーベルコードを発動する。手のひらに小さな光が灯り、周囲のガラクタを吸い込んでいく。吸い込んだ鉄屑の量に応じて光は明確なシルエットを形づくり、彼女の武器が召喚される。
ユーベルコード『ガジェットショータイム』。光が散り、和鏡子の手には古めかしい火炎放射器が握られていた。シュボッと点火し包囲を狭めるゴーレムに銃口を向け、燃料弁を全開にして火のついた液体を所構わず撒き散らす。
「ナントカは消毒でーーーすっ!!!」
戦場の片隅で煌々と上がる火柱と和鏡子の声は警備主任にも、生体兵器を率いる青年にもバッチリ届いていた。
成功
🔵🔵🔴
カーバンクル・スカルン
【クリスタライズ】を発動して誰にも気づかれることなく伏魔御殿の中に到着。
……こっそり話を聞いてる限り、クレーマー・カスハラっていうより、発注先と受付先が契約面やら何やらの認識違いで揉めてるって感じね。まあ、どっちも私達と敵対する企業であることに変わり無さそうなさそうだし、まとめて潰しちゃいましょうか。
今突っかかってる方を無力化しちゃうと警備員の上司が出てこないから……押さえてる方の女の子型アンドロイドを【クリスタライズ】の効果で不可視の鎖で拘束して、怪力で強引に物陰に引き摺り込む。そしてそのまま絞め落としてしまいましょう。異変に気づいた他アンドロイドも釣れたら言うこと無しね。
●休憩中は電源OFF
戦場は異様な熱気で包まれていた。関節部が軋む駆動音、内骨格フレームが砕け人工血液が飛び散る。悲鳴や気迫の声すら聞こえない、作りものたちの戦場を尻目に、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)は悠々と歩みを進める。
「目立つのは他のみんなに任せて、私は着実に数を減らしていくことにしようかな。突っかかってるチンピラさんを今叩くとすぐ潰されちゃいそうだし、優勢の方を弱体化して同士討ちを狙うのがセオリーよね」
目を引く見事な赤色の髪にもかかわらず、周囲の敵勢力はカーバンクルを見ていない。脅威ならざる存在として捨て置かれているわけではなく、彼女のことを認識できていないのだ。さらにいえば、装備も彼女すら不可視の状態に隠蔽されている。
カーバンクルのユーベルコード、『クリスタライズ』。彼女自身と身につけた装備を透明化させる、理外の技である。音が鳴らないよう右腕に巻きつけた鎖──彼女の得物である先端にフックが接続された鎖、ボディ・サスペンションを引き締め、足音を最小にとどめる歩法でスラスラと混乱する戦場を掻い潜る。
(とはいえ、意識外の攻撃?って言うのかな。自分に向けられてる訳じゃない攻撃って読めないし避けづらいなぁ)
腕を振りかぶる予備動作や敵を薙いだ広範囲攻撃、地形破壊の余波など絶え間なく降りかかる戦場の巻き添えを見事に躱す。それどころか、時には軸足を引っ掛けて転ばせるようなちょっかいをかけながら、敵の本陣ともいうべき|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》の受付ロビーにたどり着いた。
(敵の本丸だっていうのに、案外楽なものね。……敵の指揮官らしきオブリビオンは見当たらないけど、ずらっと並んだあの武装アンドロイドたちは後詰めかしら)
ロビーの状況を分析しつつカーバンクルは伏魔御殿へと足を踏み入れる。
(この数が出ていったら、いくら私たちでも少し手に余るかも。今のうちにお片付けしておこう)
巻きつけた不可視の鎖を解き、規則正しく整列したゴーレムの部隊に接近する。チリリ、と金属が擦れる微かな音と共にゴーレムの一体が消失した。カーバンクルがふれた個体は彼女と同様、透明となり視覚情報から消え失せた。
不可視の領域では、カーバンクルがゴーレムに音もなく飛びかかり手にした得物で首を締め上げる。身体の大部分を機械に代替しているとはいえ、ゴーレムの急所は人体のそれと大差はない。
(制御中枢に行く酸素と電力を遮断できれば、人間と同じように絞め落とせるはず!)
「っく、さっさと落ちてよっ…」
小声で毒づきながら両手に力を込め、人工的な白さをしたゴーレムの肌に鎖を食い込ませる。自らの首を締め付ける正体不明の敵に、抵抗もままならずもはやされるがままだ。
やがて、視覚デバイスを充血させたゴーレムは直立する動力すら失い、仰向けに倒れ──。
(ッと…危ない危ない。せっかく隠密で忍び込んだんだもの、バレないようにしなくっちゃ…)
「不明な戦力に告ぐっ!!!」
「──ッ!」
突如、大音声が戦場に響いた。潜入で張り詰めたカーバンクルの緊張は、唐突な大声と自身を名指しするような物言いに大いに動揺した。
「…貴方たちの行動は弊社に対し敵対行為に該当する!何らか弊社に不満や意見がある場合はカスタマーフォームに問い合わせることを推奨する!」
(……そもそも、この揉め事もカスハラだクレーマーだって言うより、契約内容の行き違いでしょ?無茶な会社と無茶な顧客だもの、問い合わせで済むなら襲撃なんてされないわよ)
「また、破壊された従業員に関しては賠償を請求する。支払いが不可能な際は人材登録を強制し、弁済に勤めてもらう!!!」
そして無茶な会社には、無茶な働き方だ。利益にひたすらに貪欲なメガコーポの姿勢に、カーバンクルは閉口する。
「バックアップチーム、スタンバイ。シグナルロスト機を確認、レベル4警戒体制」
戦場に響いた警告に呼応するように、微動だにしなかったロビーのゴーレムたちが一斉に起動した。姿の見えない襲撃者を見つけ出そうと、視覚デバイスの網膜フィルタをパラパラと切り替え索敵する。
「これは、一体ずつ処理してる場合じゃないわね」
今までの己の苦労を顧みて、カーバンクルはため息と共にその姿を表す。愛鎖を握りなおし、未だこちらを捕捉できないゴーレムの無防備な背中を思い切り殴り飛ばした。つんのめるように前向きに倒れた体躯は味方を巻き込み、整然と並んだ隊列を薙ぎ倒す。
「コソコソするのはここまでよ。こっちでも暴れてやろうじゃない!鉄屑に戻りたいやつからかかって来い、まとめてスクラップにしてやるわ!」
成功
🔵🔵🔴
マキナリ・ウドウ
タバコの煙をくゆらせつつ、ロビーに足を踏み入れよう。
あのキレて暴れてる兄ちゃんの方はこのままだとヤラレちまうだろうが、今は良い目眩ましになってくれている。
そっちに注意を向けている敵に銃弾を喰らわせてやろう。
敵が攻撃してきたら、UC【機巧銃拳道】。
自分の会社の中でこんな大技使うもんじゃないよ、お嬢さん。
バリアを展開した機械義肢の右腕で敵の拳を止め、ガラ空きになっている胴体に左手に握った銃を撃ち込む。
さらに銃撃で相手の動きを止めて、バリアで固めた拳を叩き込む。
大人数の相手をするのはオジサンにはしんどいからねえ、暴れてる生体兵器を囮や障害物のように利用して、囲まれないように立ち回りたいところだねえ。
●日々の仕事と不味いタバコ
戦場は異様な熱気で包まれていた。関節部が軋む駆動音、内骨格フレームが砕け人工血液が飛び散る。悲鳴や気迫の声すら聞こえない、作りものたちの戦場に、マキナリ・ウドウ(首輪付き・f45204)はゆったりとした足取りで現れた。
「フゥーっ、みーんな気合い入ってるねぇ。頑張って目立つのは若人に任せて、俺は地道にお仕事をこなしますよ」
ダルそうに紫煙を吐き出しながらマキナリは目を細める。くたびれた中年にしか見えない外見ながら、彼が纏う雰囲気は猛禽を思わせる鋭さがある。鷹揚な動作にもかかわらず、マキナリの一挙一動には安易に目を離せない緊張感が醸し出される。
「人材派遣ねぇ……おじさんの頃には聞かなかった企業だけど、要するに傭兵家業の斡旋だろ?組織に使われる不自由な傭兵なんて、今も昔も俺はごめんだね」
マキナリは自嘲気味に笑って袖をまくり、光沢を帯びた機械義肢が露わになった。右手の機構が作動し、バックラーのように半透明のバリアが展開する。そして左手には、無骨な機関拳銃──彼の武装であるマシン・チャカが握られている。マキナリの戦闘技術が昇華されたユーベルコード、『|機巧銃拳道《サイバー・ジュウケンドー》』。
臨戦体制を整え、まるで散歩でもするかのように躊躇いなく、死闘を繰り広げる両陣営の元に歩みを進める。
「じゃあ、ま……戦闘開始といこうか」
取っ組み合う生体兵器の背中に銃口を密着させ、引き金を引く。
ガガガンッと複数の銃弾がフルオートで撃ち出され、生体兵器越しにゴーレムの胴に風穴を空ける。不意に己を貫いた弾丸に、ゴーレムの思考回路に一瞬の逡巡が生じる。
「目眩しご苦労さんっと!」
肩越しに兵器を飛び越え、困惑の色が浮かぶゴーレムの頭部に蹴りを見舞う。跳躍の勢いのまま周囲の敵に無差別に弾丸をばら撒き、新たな脅威を認識した傀儡の兵士たちにニヤリと笑う。
「随分楽しそうなことしてんじゃないの。おじさんも少し混ぜてもらおうか」
咥えていたタバコを踏み消して、挑発的に手招きする。戦場の只中にあってなお、マキナリの余裕は崩れない。むしろ己に向けられる戦意にあてられ、気分が高揚しているようだ。
マキナリを制圧すべく踏み込んだゴーレムの拳をスウェーし、背後からの一撃を右腕のバリアで一瞥もすることなくいなす。絶え間なく降り注ぐ拳の雨を掻い潜り、わずかな隙を逃さず的確な射撃を差し込む。最小限の動作で攻撃を回避し手痛い反撃を返していく様子は、まるで示し合わせた殺陣、あるいは優美なダンスのようだ。
一体のゴーレムが高く跳躍し、質量に任せた一撃を頭上から繰り出す。振り下ろされた拳をマキナリは右腕のバリアで受け止める。内部駆動が唸りバリアの出力が上がる。膝を折って衝撃を逃しがら空きの剛体に銃撃を見舞う。押し潰されないよう威力を逃すため体制を崩した隙を後方から生体兵器が狙う。
「ッと危ない…」
口ではそう言いつつも余裕を崩さないまま手近なゴーレムを掴んで引っ張り、ぐるりと2者の立ち位置を入れ替える。半分ほどが抜け落ちた生体兵器のボロボロの歯が先程までマキナリがいたはずの位置に立つゴーレムの首筋に食い込む。
「へへっ、おじさん一人じゃ寂しいじゃないか。お前らも仲良く踊りな」
軽口を叩きマキナリは大袈裟におどけてみせた。薄い笑みは変わらず、汗や髪の乱れもない。
「不明な戦力に告ぐっ!!!」
突如、大音声が戦場に響いた。ビリビリと空気が振動し武器を振るう手が一瞬止まる。
「…貴方たちの行動は弊社に対し敵対行為に該当する!何らか弊社に不満や意見がある場合はカスタマーフォームに問い合わせることを推奨する!」
「…ったく、高みから偉そうに。あんなのの下は苦労するだろ?」
マキナリはそばにいたゴーレムの肩を叩き、同情混じりに笑ってみせた。残念ながら意志を持たないアンドロイドは、マキナリの実感がこもった哀れみの言葉を振り払うように鉄腕を振った。
「また貴方たちが破壊した従業員に関しては賠償を請求する。支払いが不可能な際は人材登録を強制し、弁済に勤めてもらう!!!」
サイバーザナドゥの裏家業に身を置いていたマキナリであっても、辟易する醜悪さだ。空になったマガジンを投げ捨て、彼は新しいタバコに火をつけた。
「いけねぇなぁ、どうせ弁済を口実に骨の髄まで搾取して、使い潰して捨てる気だろ?デカい組織、気にくわねぇ上司と来てこれか」
小さく吐き捨て、不味そうにタバコを吸う。紫煙がくゆり化学物質で澱んだサイバーザナドゥの空気に溶けていく。
「しゃーない、少しギア上げるか。悪いね、お嬢さん方」
弾を満載したマガジンを装填し、銃口をゴーレムに向ける。銃撃を警戒しゴーレムたちは重々しい両腕を脆い胴部を庇う。
マキナリは一歩で間合いを詰める。今までののんびりとした歩法ではなく、鋭い踏み込みでゴーレムへ肉薄し腰を落とした構えで溜めを作る。
「フッ──!」
突き出された右手は、ゴーレムの装甲を容易く打ち抜き武装を破壊する。右腕に展開された堅固なバリアは、振るえば最硬の武器となる。
「アンコールだ、最後まで付き合ってもらうぜ。」
軽やかに舞い鋭く刺す。余裕を演じていた片鱗か笑みだけは絶やすことなく、効率的に相手を壊していく。
「量産機じゃどうにもならんって、そろそろわかっただろ。上から物言ってないで直接やり合おうぜ」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『執行騎士』
|
POW : 強制執行
速度マッハ5.0以上の【超スピード】で攻撃する。軌跡にはしばらく【大剣の残像】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
SPD : 執行大剣
自身の装備武器を【メガコーポに逆らう悪を殲滅する執行形態】に変え、【防御無視】能力と【斬撃波放射】能力を追加する。ただし強すぎる追加能力は寿命を削る。
WIZ : 執行命令書
【浮遊ドローンが投影したメガコーポの命令書】を見せた対象全員に「【メガコーポに従え!】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【攻撃力】が半減する。
イラスト:nitaka
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「岩社・サラ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
なにやら戦場に紛れ込んだ輩がいるらしい。凄まじい戦力で我が社のカスタマーサポートチームを蹂躙し大立ち回りを演じている。由々しき事態だ。とんでもないことだ。全く嘆かわしい。
…え?後詰めの部隊も半壊?なぜそんなことに……。
物量で押しつぶしてやろうと考えていたが、それすら読まれていたと言うのか。敵は手練れであるだけではなく、策略家もいるようだな。…いや?焦ってはいない。打つ手はまだある。
実際問題、預けられたチームがほぼ壊滅状態というのは実にまずい。私の人事評価に響いてしまう。しかしどうだ、考え方を変えてみよう。私自ら連中を制圧し、人材として|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》に囲い込むことができれば……。
あれほどの実力者、我が手の内を見透かす知恵者となれば人材等級もAは下らんだろう。そうすれば本社に取り立てられるのも夢ではないはずだ…!
「…よし、私自ら襲撃者もろとも制圧してくれる!!!」
伏魔御殿の社屋、その屋上から白い甲冑が降ってくる。戦場に飛来した騎士は安っぽいネームプレートを首から下げ、ガシャガシャと音を立てて立ち上がる。
「私は伏魔御殿の『執行騎士』!貴様ら、私の出世のための糧となれ!!!」
ベルベナ・ラウンドディー
…ヘッドハントの前に誰かに相談しました?
他の部門の奴等は「それ出来れば苦労しない」って笑いながら退散準備してると思いますよ
さてあの超音速攻撃、攻防を考える瞬間は無さそうですね
ならば【バーサーク】で思考排除、
【直立不動・無防備を装う】で先手を誘い
私に攻撃を当てたと同時ユーベルコードの【カウンター】戦術で殴り地形ごと爆破します
…十字勁、一方向に力が流れれば反動が、つまり逆方向への力も同時に流れるものです
つまり私の体に当てた衝撃をそのまま流して返すのですよ
まぁそれが出来る【元気・回復力】など体の頑健さあってですが…
物理法則という自然に合一させた「黄龍拳」(※ジョブ説明)の特徴ですよ
カーバンクル・スカルン
ド派手に落ちてきたねー。まあ、こちとらあんたの出世したい会社潰しにきたんで。
鎖を騎士さんの体に巻き付けて拘束しつつ【心慌意乱】を発動。一番見たくない物が今騎士さんの目には移し出されたことでしょう。
崩れ行く社屋? 倒産の貼り紙? 解雇通知? 閑職への出向? どれにしても出世第一の人には堪える品になっているでしょうね。
助けてくれてありがとう? ああ、あなたがクレーム入れにきた請負先の方なのね。なら対象者も鎖で拘束して……ここの隊長さんと一緒に地獄へ行ってらっしゃい?
●閑職のブルース
「私は|伏魔御殿《パンデモニウム…ショーケース》警備部警備課カスタマーサービス対応第4班主任、執行騎士。所属と個人名を明かし弊社に降れ!さすれば人材登録面談をセッティングしてやろう」
白い甲冑が戦場に落ちてきた。20階はあろうビルの屋上から落下してきたにもかかわらず、膝も手も地に触れておらず直立して名乗りを上げる。所属と『執行騎士』という名前が書かれたネームプレートが、胸元で誇らしげに揺れている。
「ご丁寧にどうも。しかし、そのヘッドハントうまくいくと本気で思ってますか?」
愛刀にこびりついた人工血液を振り払い、ベルベナ・ラウンドディー(berbenah・|∂《ラウンドディー》・f07708)は執行騎士と対峙する。
「あなたはこの惨状では、お仲間は荷物をまとめて逃げ出しているんじゃありませんか?」
自信満々の口ぶりとは裏腹にベルベナの視線は眼前の敵を冷静に観察している。そこには驕りも侮りも感じられない。彼のいう通り、彼我の戦力差を分析し勝ちの目を見出そうと思考を加速させる。
「ふん、容易く屈服させられるとはこちらも考えていないとも。貴様らを強者と認めたからこそのヘッドハンティングだ。それにな、奴らが退散してくれれば手柄は私の総取りだろう?」
(あー……こっちを侮ってくれてたら、いくらか楽にケリがついたんだが……考えなしの間抜けってわけじゃないんだな)
互いに武器を構え、ベルベナは内心毒づいた。執行騎士の大剣の切っ先、踏み込む一歩目に全意識を集中しじりじりと間合いを詰めていく。そんな両者の立ち会いのど真ん中に、黒い塊が投げ込まれた。
──ドンッ。
塊の正体はちり紙のようにくしゃくしゃに丸められた、先ほどまで相手にしていたカスタマーサポートのゴーレム、その残骸だった。
「随分高く買われているのね?でも悪いけど、2対1でも卑怯なんて言わないでよね」
執行騎士の背後、受付ロビーから現れたのはカーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)。鎖を引きずり軽快な足取りでベルベナと執行騎士の睨み合いの均衡を崩す。
「カスタマーサポート、だっけ?なんだか数が減っちゃったみたいね」
「おかげさまでな。貴様か、後続戦力を壊滅せしめたというのは」
執行騎士は構えを解きカーバンクルに目を向ける。ヘルムの中の表情は読み取れないが、声色は喜色半分、忌々しさ半分といった様子だ。
「私は武人である以上に、組織人だ。あらゆる手を尽くして会社に貢献し、己の価値を高めるのが心情だとも。卑怯だなんだと了見の小さいことは言わん」
半透明の刀身を地面に叩きつけ、今度こそ臨戦体制をとる。
「さあ、かかってきたまえ。貴様らの価値を私に示してみろ!」
機先を制したのはカーバンクルだった。執行騎士の言葉とすれ違うように敵に肉薄し、手にした鎖を鞭のようにして打ち据える。金属同士がぶつかる甲高い音に執行騎士のうめき声がかき消された。振り払うような大ぶりの一撃を軽々と交わし、今度は執行騎士の左腕に鎖を絡ませる。ピンと張り詰めた鎖の両端で両者の視線がぶつかった。
「膂力で敵うと思うのか?」
体格で勝る執行騎士は鎖を自分の方へ引き寄せる。両足で大地を掴み踏ん張るも、カーバンクルは徐々に引きずられていく。
「このっ、馬鹿力め!これでも……くらえ!」
鎖を握りしめるカーバンクルの拳から、彼女の髪と同じ鮮やかな赤色の光が輝く。その光は鎖を伝い、慌てて振り払おうとする執行騎士に直撃した。ヘルムの奥の瞳が妖しく光る。
「──バカな……」
ギリギリと鎖を引き寄せていた剛力が弱まる。剣を握る手にも力が入っていない。執行騎士の視界にはカーバンクルもベルベナも映っていない。ユーベルコード『|心慌意乱《トルチュール・オードブル》』。執行騎士の精神は不本意な幻想に囚われ、心を苛まれている。
「パワータイプにはこういう搦手が効くって相場が決まってるのよ!」
虚空を見つめ茫然自失の執行騎士に、この隙を逃すまいとカーバンクルが飛びかかる。両足が浮いた瞬間に、遠心力で体が傾く。気がついた時にはカーバンクルは空を見上げていた。
「…私がカスタマーサポートだと!?閑職もいい所じゃないか。冗談じゃない!そもそも我が社に逆らう愚か者など久しく居ないぞ!!!」
逆上し早口で捲し立てる執行騎士。ところ構わず手当たり次第、デタラメに剣を振り回し見えない敵を切り裂く。動きに合わせて引きずられる鎖のせいで、カーバンクルの玉のような肌に細かな傷がついた。
「横暴だパワハラだ職権濫用だあああ!!!」
「──ったた……やば」
激情に駆られた騎士の踏み込みは音を超え、刃の軌跡は青白い残像を描いた。一瞬の間に倒れ込んだカーバンクルの眼前に迫り、伸びた軌跡が彼女の首筋に届──。
ギィぃぃ──ン。
届かなかった。ベルベナがカーバンクルと執行騎士の間に身を踊らせ超音速の一撃を跳ね上げた。ベルベナは超人じみた反射神経でもって渾身の剣に反応し、受けた衝撃を受け流し跳ね返す『頸』の技術によって執行騎士を押し返した。
彼の超反応と卓越した技術、そして思考を放棄してなお仲間の窮地を救う精神性は、ひとえに積み重ねた研鑽によるものだろう。全身を脱力した隙だらけの佇まいにもかかわらず、迂闊には仕掛けられないプレッシャーがある。
「なにが『警備主任』だ、部下は量産型のアンドロイドじゃないか。肩書きとは名ばかりの左遷じゃないか!」
ベルベナの頭をかち割らんと再び振り下ろされる超音速の刃。迫る切っ先にも彼は眉ひとつ動かさない。額の角に触れる刹那、ベルベナの両の拳が執行騎士に匹敵するスピードで剣を弾いた。
手の甲で剣の腹を捌き、斬撃を受け流す。その勢いのまま握り込んだ両手を同時に突き出す。相手の攻撃の威力を殺し、我がものとするベルベナのユーベルコード、『超十字頸』。騎士のメイルに拳がめり込み、カーバンクルの鎖を振り解きながら衝撃ごと地面に倒れ伏す。
「いやー、どこの誰か知んないけど、加勢してくれてありがとなぁ!こンのクソ企業一緒にぶっ潰ぶぶbbbbbbbb」
「…あんたは引っ込んでなよ」
腹部に拡声デバイスを埋め込んだチンピラが、カーバンクルの肩に手を回そうとして彼女の鎖に縛り上げられる。|心慌意乱《トルチュール・オードブル》の効果が残った鎖に触れ、神経回路への負荷によって離せなくなったようだ。
「……嫌な夢を見たな。私が一度死んだ時の夢だ。だが、気分がいい。久方ぶりの仕事だ。それに、貴様らという手土産があれば、もう一度本社に取り立てられるに違いない」
激しく咳込み、震える足で立つ執行騎士。純白の鎧は傷つき、凹み、手足は震えふらついている。それでも騎士の意志は折れない。
「さあ続けよう!私の栄転のため、愉楽のため!貴様らを私によこせ!!!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
マキナリ・ウドウ
ヒート・ノコギリを抜いて起動、赤熱させる。ついでにその焼けた刃にドーピングタバコを押しつけて火を付けよう。
相手が降って来てくれたお陰でビルの中を探す手間が省けたってもんだが、ちょっとは一服させてほしいねえ?
相手のアノの剣、まったく厄介だねえ。
サイバーアイで相手の攻撃の予備動作を捉え、電脳の思考補助を受けて斬撃の軌道を分析、後は経験と勘でがんばって避けたり武器で弾いたりしてダメージを最小限に留めるしかないな
UC【猟犬の牙】。腕や脚からだ。厄介な剣は扱えなくすれば良い。高熱のノコギリ刃で装甲ごと溶斬する
なんだい、伏魔殿の時代錯誤な騎士気取りが、ずいぶんと俗っぽくて欲深で、人間臭いヤツじゃないか。
●剣を振るうとは人生の潤い
執行騎士を一撃で弾き飛ばしたベルベナは、がっくりと膝をついた。超越した身体能力と卓越した技術を持ってしても、音を超える一刀の威力は受け流しきれなかった。一方、巻き上げた煙を裂いて甲冑の騎士は確かな足取りで彼らの元に戻ってきた。ベルベナの拳がくっきりと跡を刻んだ執行騎士のメイルは、一瞬の攻防のレベルの高さを物語っている。
「むぅ、なかなかやる。私の鎧にここまでの傷をつける者はいなかった。まあ私自ら制圧する必要のあるような敵が今までいなかったからだが」
「……っぐ、カウンターのタイミングは完璧だったのにな……」
動けないベルベナに迫る執行騎士、その視界を遮るようにマキナリ・ウドウ(首輪付き・f45204)は立ちはだかった。肩に担いだ無骨なノコギリを下ろし懐からタバコを取り出す。
「出遅れちまったな。そこの君、大丈夫かい?ここはいったんおじさんに任せて、回復しなよ」
マキナリの手にしたノコギリが赤熱し、熱せられた空気が膨張する。ノコギリの刃に押し付け、火をつけたタバコをゆっくりと口元に運ぶ。吐き出した紫煙が空気に散り、マキナリと執行騎士の視線がぶつかる。
「バトンタッチだ。こっからは俺と遊んで貰おうか、騎士気取り」
「新手か。手土産はいくつあっても構わんからな、かかってくるがいい。我が社に入社するならば、喫煙は所定の場所でしてもらうぞ」
執行騎士の声色は喜びを隠しきれていなかった。己が剣を振るう悦び、さらなる強者との邂逅、自身の出世のための功績。組織人として、そして武人として執行騎士は喜色を溢れさせた。
「健康志向なんだね、御社。でもあいにく俺はヘビースモーカーでさ、好きなこともできねえ息苦しい組織なんざお断りだ」
半分ほど吸ったタバコを踏み消し、ヒート・ノコギリを低く構える。執行騎士も剣を中段に構え、マキナリをまっすぐに捉える。
先手は執行騎士だった。大胆な踏み込みでマキナリに肉薄し、刀身を押し付けるように突進する。急激な接近に、マキナリの目には執行騎士の姿が突然巨大化したかのように映った。
サイバーアイと電脳の処理速度でも追いつけない神速の一撃を、マキナリは寸前で辛くも回避する。戦士としての勘を総動員し、咄嗟にのけぞったマキナリの鼻先を青白い刀身が掠めた。追撃の二の太刀はヒート・ノコギリで受けるが、無理な体勢の防御では威力を殺しきれず後退を余儀なくされる。
(…ってて、腕が痺れてやがる。関節部にダメージが入ってるなこりゃ。何度も打ち合う訳にはいかないか…)
しかし、執行騎士の刀身にも先程までなかった傷があることに、マキナリも執行騎士も気づいた。ノコギリで防がれた部位が溶けて歪んでいる。ヒート・ノコギリの高熱と裂創によって敵を装甲ごとズタズタに溶断する、マキナリのユーベルコード『|猟犬の牙《リョウケンノキバ》』。
「たった一合の打ち合いでこれとは……口惜しいが、腕比べを楽しんでいる暇はないようだな」
「おや、さっきまで出世だなんだと俗っぽいこと言っていたのに。オタク、闘争を楽しむタイプなんだ」
ヘルムに隠れて見えない口元が愉快そうに歪んだ、気がした。
「フン、剣を振るう機会も、ここまで渡り合える相手も久方ぶりなのだ。これで昂らない方がどうかしている。さあ、決着をつけよう」
「趣味と実益を兼ねてる、ってやつか?油断してると足元救われるぜ」
再び剣を中段に構え、執行騎士は先ほどより数段速度を上げてマキナリへと疾走する。猛進する白い騎士に対し、マキナリは一歩も動かなかった。ノコギリの柄を握りしめ、来たる必殺の一撃を待ち構える。
──ギィイイイイッ!!!
激しい剣戟と火花が散る。ヒート・ノコギリは熱暴走しながら眩く白熱し、高温が伝導した執行騎士の剣も赤みを帯びて融解する。しかし、全体重の乗った執行騎士の攻撃を受けたマキナリ自身は、その衝撃を真正面から受け止めたために無事では済まなかった。
「…グ、おらぁ!!!」
彼の両腕の義体がギリギリと嫌な音を立てながら駆動する。マキナリの気迫の咆哮と共に、互いの得物が振り抜かれる。執行騎士の剣は、刀身の半ばで荒々しく両断されていた。
「は、ははははは!見事だ、すごいな貴様!喫煙だの規則だのつまらんことは言わん。是非、ウチに来い!」
渾身の迎撃を受け五体を地に投げ出すように倒れた執行騎士は、刃渡りが半分になった愛刀をそれでも手放さずマキナリを見上げる。剣から伝わった空気を焦がす高熱によって、白く輝くガントレットは黒く煤けて変形していた。一方のマキナリも、右腕は咄嗟に展開したピンポイントバリアによって辛うじて無事だが、左腕はスパークを散らし力なく下がっていた。
「……それ、君の一存で決めていいの?閑職に、飛ばされたクセに…」
大成功
🔵🔵🔵
諏訪野・啓太郎(サポート)
『唯のろくでなしの旅烏ですよ。』
スペースノイドのスターライダー×電脳魔術士、34歳の男です。
普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、負傷した仲間には「元気に(俺、~くん、~さん、だね、だよ、~かい?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●働きすぎは身を滅ぼす
「ゲホッ…あ゛ぁ、ドンパチ始まると特に空気悪ぃんだよな。見てくればっか小綺麗なメガコーポはよ」
先んじて戦場に参じた猟兵に遅れて、|諏訪野・啓太郎《すわの・けいたろう》(さすらいのライダー・f20403)は咳払いをしながら現れた。瓦礫の粉塵と機械油の臭いが充満し死屍累々のアンドロイドたちを尻目に、戦闘音のする方へ駆けつけた。
──ギィイイイイ──ンッ……
金属同士が打ち合い削れる一際甲高い剣戟が響いた。
音の発生源には、地に倒れた騎士とノコギリを携えた一人の猟兵。騎士の鎧は煤けて所々溶けている。対する猟兵──マキナリの両腕はバチバチとスパークし左腕は力なく垂れ下がっている。二人は言葉を交わしているようだが、見るからにダメージの多そうな騎士は溌剌と勧誘の文句を述べ、それを見下ろすマキナリは息も絶え絶えに言葉を返す。
「んだよ、もう決着ついてるじゃねえか。完ッ全に出遅れたな」
残党狩りに移るか──ノコギリを振り上げるマキナリの姿を見てぼやきながら踵を返しかけたその時、マキナリの体が後方に吹き飛んだ。
「──!なんだ!?」
弾かれるように啓太郎は駆け出しマキナリを受け止めた。義体化された彼の体は見た目に反して重量があり、二人はもつれるように倒れ込む。
「オイ!無事…ではねえな。まだやれるか?」
「んんっ、体力的にも装備的にも、今すぐってのは無理そうだねぇ……おじさんは少し休憩させて貰うよ」
キリキリと空回りする左腕の駆動部を見遣り、マキナリは苦笑する。仲間の大事ない様子にほっと胸を撫で下ろし、啓太郎は敵へと視線を移す。執行騎士は折れた剣を杖代わりにぎこちなく立ち上がる。その周囲には、彼のヘルムの意匠をかたどったドローンが衛星のように飛び回っている。
「むぅ…鎧があちこち変形しているせいか、動きづらくて敵わんな。ここまで追い詰められるとは、嬉しい誤算だな」
「あんたが『警備主任』とやらか?満身創痍のところ悪いが、次は俺が相手だ」
肘を上げてガードを固めた啓太郎がジリジリと間合いを詰める。騎士はもはや喪失された剣の切っ先を対峙する新たな脅威に向ける。
「貴様らとの立ち会いは楽しいのだが……この様では全員を本社に持ち帰るのは無理だな」
残念そうに呟いた執行騎士は、間合いの変わった武器を己に馴染ませるように何度か素振りした。
「この溶け固まった手では剣を離すことができん。うっかり死んでくれるなよ」
「ハッ、舐めんな。あんたこそ大口叩いておいて、あっさりやられんなよ」
舌戦は終いとばかりに、啓太郎はステップからのフットワークで執行騎士の懐に飛び込む。サイキックエナジーで強化された拳と、彼の腕に装着された愛銃──スーパークラッシャーによって繰り出されるパンチは、執行騎士のメイルについた凹みをヒビに変えた。
「ガッ─は!」
内部に響く衝撃に執行騎士はうめき声を漏らす。しかし、間髪入れずに降り注ぐ啓太郎の拳が、膝をつくことを許さない。たまらずボディチャージで間合いを潰すも、的確に鎧の隙間を狙った蹴りによって後ずさる。
「やむを得ん、『執行大剣』ッ!私の生体リソースを使用しエネルギーを充填、眼前敵の殲滅を執行せよッ!」
──請願受理。|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》就業規則ニ則リ、支給装備ノ機能解放。
ドローンから発せられた合成音声とともに、折れた大剣に淡い光がまとわりついた。執行騎士は大剣を掲げ、大上段から振り下ろした。咄嗟に飛び退いた啓太郎の足元が不可視の斬撃によって大きく抉られた。
「これがお前の奥の手ってやつか?」
「使うと体にガタがくるんでな。それに、勢い余って殺してしまっては商品にならん。故にあまり使いたくはない手だ」
執行騎士は再び剣を構え、乱舞する。刃の折れた大剣から見えない斬撃が啓太郎へ向け飛来する。わずかな風の揺らぎで攻撃を察知しなんとか回避するが完全には避けきれない。
「…ッてぇ!ガードの上から!?」
啓太郎のオーラのガードを切り裂かれ拳から血が滴る。動き回ることでなんとか回避していた啓太郎が、痛みで足を止めた。
「フン、チェックメイトだ。死んでいなければ是非我が社に。心配するな、ウチには腕のいい闇医者が在籍している」
成功
🔵🔵🔴
佐藤・和鏡子
……救急車はちょっとダメみたいですね。
責任者もまとめて轢くつもりだったのですが、当てが外れてしまいましたね。
他に使える物を持ってきて良かったです。
向こうは剣が武器のようなので消防斧で対抗します。
具体的には斬刑で威力を上げた消防斧で斬りかかります。
ドローンは飛んで斧で斬ったり、荷電粒子砲(救急箱内蔵)で撃ち落とします。
斬刑で時速805kmまで加速して、更に私自身の腕力も載せての消防斧を喰らわせます。
安心してください。
社内の評価を気にする必要はもうじき無くなりますから。
●大いに励め、己が理想のため
執行騎士は足を止めた啓太郎のわずかな隙を見逃さず、致命の一撃を放とうと大剣を振りぬ──。
「させません!!!」
視界の外から戦場に不釣り合いな救急車が爆走し、執行騎士を思い切り撥ねる飛ばした。脇腹が折り畳まれるように一瞬体がひしゃげ、ただでさえ強固な上に熱によって溶け固まった鎧は、ボンネットとの衝突に耐えきれず目立つ亀裂が入った。ブスブスと煙を吐いて止まった救急車の運転席から、佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)が這い出すように出てきた。手には消防斧と救急箱を携え、煤と埃をはたき落とす。
「エンジンかからなくなっちゃいました、……救急車はもう限界みたいですね」
バタンとドアを閉め、今さっき轢いた敵に対し手にした消防斧を向ける。対する執行騎士は剣を手放せない右手で救急車に襲われた脇腹を抑え、うずくまってうめいている。
「……っこ、この思い切りの良さ、不意打ち上等の柔軟な思考、何より敵から目を離さない精神性…全く、ゲホッゲホ…逸材だな」
「何をブツブツと?この先、社内評価を気にする必要はなくなりますよ」
褒められているとはつゆ知らず、執行騎士に冷たく言い放つ和鏡子。細身の体躯とは不釣り合いな分厚い鉄の刃は、本来火災現場で家屋の扉を破壊する用途の斧は、甲冑のプレートすら貫きそうな迫力を持っていた。
「はっ!社内政治のしがらみも評価やノルマに追われる生活も、組織人として身を立てる張り合いのひとつだ。そうして時たま、貴様らのような強者と死合うのが私の喜びだとも」
話しているうちに大分回復したらしい執行騎士は元の鷹揚な話し方に戻り、大剣を和鏡子に向ける。今までの数々の攻防によって執行騎士のネームプレートはボロボロになっているが、それでも騎士の胸元でしぶとく揺れている。
「そんな生活を私が断ち切ります。もう休んでください!」
和鏡子が斧を振り手を胸に当てる。彼女のまとう衣服が戦闘で汚れたナース服から古風な看護師の白衣へと転じ、斧の刃が光を反射し鈍く光る。苦難を排し、苦痛を断ち切る和鏡子のユーベルコード。
「『|斬刑《エクセキューション》』!!!」
得体の知れない攻撃に、執行騎士は間髪入れずに不可視の斬撃を飛ばす。自身に殺到する切れ味を持った衝撃波を、和鏡子は消防斧を振り斬撃を切り裂いた。自らを斬られた斬撃はその場で霧散し消滅する。
予想外の展開に執行騎士は呆気に取られる。その隙に和鏡子は斧を振り上げ跳躍する。そして最高到達点から空気を蹴るように急降下する。『斬刑』によって彼女が得た飛翔能力によってさらに加速した。
──ッガン!!!
和鏡子の斧は執行騎士の煤けたガントレットに食い込み、そのまま切り飛ばした。甲冑ごと切り落とされる自分の腕に気を取られている執行騎士に対し、和鏡子は続け様に2度、返す刃で斧を振るう。体を捻って寸前で致命傷を避けるが、鎧に入った亀裂は大きく広がり欠片が剥離した。たまらず後ずさる際に自身の腕を回収する。
「『執行大剣』、自己診断レポート!パフォーマンス状況を報告しろ!」
ドローンからの返答はない。ダメージの蓄積故か、使用者から切り離された故か、執行騎士の大剣はもはや輝きを失いただの剣と化していた。執行騎士の眼前に和鏡子が飛び込んでくる。和鏡子の横薙ぎの一閃を、執行騎士は未だ柄から手を離さない己の腕ごと大剣で防いだ。
「…は、ははは!っくはははは!!!貴様ら、私の最後の敵にふさわしい強者だ。復帰も栄転も叶わぬなら、私はせめて武人として死ぬぞ!!!」
進退極まった執行騎士は自分の手をさらに握り込むように大剣を握りしめ、白衣の刺客に向き直る。裾をはためかせ、頭上を浮遊する和鏡子はさながら天使のようだった。
「私は武人じゃないですけど……あなたの最期の敵にふさわしく、全霊をもってお相手します!」
和鏡子は再び執行騎士へ向け降下する。迫るは白い天使、迎え撃つは白い騎士。両者が衝突し影が交差する。剣が落ち膝から崩れる。砕けたのは騎士の甲冑だった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『リアニメイト社の廃棄物『残骸』』
|
POW : 人間には、内臓が必要だ
【生物の口や腹を狙う、漏電するマシンアーム】が命中した部位に【コアから放たれる、高電圧の電流】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : 人間には、手足が必要だ
自身の【壊れかけたコアから漏れる電流】が輝く間、【生物の手足を捥ぎ取る、マシンアーム】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 人間には、頭脳が必要だ
【コアから繋がる人体の欠損に気がつくこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【首を狙って伸びるマシンアーム】で攻撃する。
イラスト:右ねじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「あははははは!警備主任、時間稼ぎご苦労!」
執行騎士が倒れた静寂を耳障りな笑い声が裂いた。人を馬鹿にした、嘲るような笑い声に、猟兵たちは顔を顰める。この手の人物に碌な奴がいないことを、各々の経験から知っているのだ。
「まあ、幹部も現場に出払っているし情報や資産は移送できたし、人的にも資源的にも損害は軽微だ。執行騎士くんを失ったのは…痛いと言えば痛いが」
声の主は執行騎士が従えていたドローンだった。しかし、戦闘中のような合成音声ではなく、かたどられたヘルムの意匠の目が赤い光を放っている。
「しかし…厄介な連中に目をつけられちゃったなぁ。めんどくさ。後を追って来られてもダルいし、元お客様にも働いてもらうか!」
「bbbbbbb──ガッくぁwせdrftgyふじこlp……」
生体兵器を従えていた青年の出力される音声にノイズが走った。顔色はまるでりんごのように紅潮し、目や耳からは出血している。瞳孔が拡大と縮小を繰り返し、口からは泡を吹いてぶるぶると痙攣しだした。同時に彼が接続した電脳拡張ユニットからも白煙が上がり火花が散る。
「脆弱な攻性防壁だな。命令の書き換えもニューロンネットの切り離しも、片手でできちゃったよ。ハハ」
先ほどまで所在なさげにウロウロしていた兵器たちが一斉に猟兵たちへ腐りかけの眼球を向ける。
「じゃ、そいつらと遊んでてよ。君らのことは|優先抹殺対象名簿《ブラックリスト》載せとくから、今度会うときは死体としてだろうね」
あの耳障りな笑い声とともにドローンは自爆し、発声器官を失った生体兵器の空気の抜けるような唸り声が殺到した。
マキナリ・ウドウ
やれやれ、標的を倒して後は帰るだけだったのに。さっきの戦いでこっちの損傷も大きい。あまり動ける状態じゃないねえ
仕方ない、出番だ。
UC『機巧の守護者』。不測の事態に備えて待機させていた電脳戦車をネットワークを介して呼び寄せる。『Pi!』AI制御の戦車が待てを解かれたペットのようにのように走行してくる。
戦車のガトリングで生体兵器どもをなぎ払わせる
弾はなるべく節約してくれよ。『Pi?』
機械義肢の修理費に、今景気よくバラまいている大量の弾代に……今回の仕事、赤字にはならないよねえ?
まったく、ツイてないよねえ……お互いに。
何とか動く片腕で銃を握り、青年に向ける。
利用させてもらった礼だ。始末を付けてやるよ
佐藤・和鏡子
あなたも私の最優先排除目標リストに入れておきますね。
この方たち(生体兵器)も犠牲者ですから、これから楽にしてあげますが、あなたも後日、送ってあげますね。
惨殺+限界突破+リミッター解除で出力を最大にして消防斧で斬り込みます。
惨殺ならマシンアームの動きに反応して切り落とせますから。
仮に命中したら超耐久力(惨殺の効果)と自己修復機能(回復力)で破損個所を修復させながら攻撃を続行します。
どのみち、私が機能停止するか動くものがいなくなるまで私自身にも止められませんが。
●生きるのは何は無くとも金がかかる
静寂を突き抜けるように切り裂いた、子供っぽい甲高い笑い声にマキナリ・ウドウ(首輪付き・f45204)は思わず顔を顰める。人に嫌がらせすることを至上とする悪趣味な人間特有の厭らしさを彼は感じ取った。
「残党狩りは元よりやるべきことではあったけど、余計な手間増やしてくれやがって……」
大きなため息と共に左腕のトルクを片腕で器用に締め直した。先の戦いでダメージを受け、動作がままならなかった左腕を曲げ伸ばし感触を確かめるように拳を閉じ、また開く。
「なんとか動くけど、防御がせいぜいだろう。照準補助も姿勢制御もイカれ血まった。やれやれ…」
憂鬱そうに再度ため息をつき、死体を継ぎ接いだ醜い生体兵器『残骸』の群れに向き直る。群れの向こうでは残骸を率いる青年が、拡声デバイスからノイズを撒き散らしながら白煙と血涙を流している。
「|優先抹殺対象名簿《ブラックリスト》ですか。なら、あなたのことも私の|最優先排除目標リスト《ブラックリスト》に入れておきますから。逃げられるなんて考えないでくださいね」
剣呑な目つきで自爆して落ちたドローンを睨むのは|佐藤・和鏡子《さとう・わかこ》(リトルナース・f12005)。たしたしと手のひらに消防斧の柄を打ちつける彼女は今にも敵に向け走りだしそうだ。
「おや、君は執行騎士にトドメを刺した1番の功労者じゃない。後始末はおじさんに任せて、座って休んでてもいいんだよ?」
「ありがとうございます、ですがそれには及びません。あの方たちもメガコーポの哀れな犠牲者ですから」
それより、と和鏡子はマキナリに忠告する。
「少し離れていないと、巻き添えになりますよ?」
この言葉の真意をマキナリが理解するより早く、和鏡子の口から抑揚のない警告音声が飛び出す。
『排除サブルーチン起動。目標の遂行まで、中枢思考モジュールの出力低下。緊急脅威排除モード』
「え?ちょ、ちょっと」
マキナリの困惑する声を置き去りに和鏡子は地を蹴った。踏み込みの推進力を乗せた渾身の消防斧を残骸の露出したコアに叩き込む。刃が食い込んだコアは激しくスパークを散らした。和鏡子は斧を引き抜き次なる獲物へと向け疾駆する。
己の理性と引き換えに超人的な運動性能と耐久性を獲得する和鏡子のユーベルコード、『|惨殺《キルムーブ》』。しかし側から見ていたマキナリは突然会話がままならなくなった和鏡子にただただ混乱し通しだった。
「…最近の子ってあんな感じなんだ。おじさんついていけないや」
自分を納得させるようにマキナリはつぶやくが、一般的に最近の子は排除モードになったりなど断じてしない。和鏡子の勢いに呆気に取られつつも我に帰ったマキナリも自身のユーベルコードを発動させる。
「出番だ、あの子に負けずにお前も暴れろ」
マキナリの言葉に呼応するように残骸たちの背後から重々しい車輪の音が響く。障害物も立ちはだかる敵もものともせず車輪に巻き込みながら、彼が呼び寄せた電脳戦車が駆けつける。彼と電脳ネットワークで繋がった『|機巧の守護者《ガーディアンシステム》』が戦場へ参じた。
『Pi!』
「いい子だ。景気よくばら撒いて…といきたいところだけど、いつもの調子じゃ弾代が痛いな。精度重視、ケチりながらで、薙ぎ払え!」
『Pi?PiPi!』
戦車は首を傾げるように砲身を傾け、マキナリの言葉を理解したのか、敵に向けて旋回した。ガトリングの砲身が回転し狙いをつけた射撃が断続的に繰り返される。
射撃を浴びた残骸は被弾箇所を吹き飛ばされるが、四肢がもげようと穴が空こうと構わずマキナリと彼の戦車へにじり寄る。
「…まじか。全身ハチの巣にしてやれば流石に止まるだろうが、本気で破産コースだな」
悩ましそうにしながら後ずさるマキナリに残骸のマシンアームが伸びる。ハッと顔を上げたときには眼前まで迫った攻撃に、反応が遅れる。しかし、その手はマキナリに触れる前に切り落とされ地面に落ちた。
「わ、和鏡子?」
縦横無尽に暴れ回っていた和鏡子がマキナリの前に躍り出て攻撃を防いだのだ。見れば、射撃を浴びた残骸は標的をマキナリの定めこちらへ殺到している。その動きに和鏡子の『惨殺』は反応しているようだ。彼女の眠った理性は結果としてマキナリを守るように立ち回っている。
「俺の戦車じゃ決定打には少し足りないが、和鏡子と生体兵器どもをうまく誘導すれば…いけそうだ」
四方八方に撃ち出されるマキナリと電脳戦車の銃弾、その後を追うように和鏡子の刃が飛び回る。注意を引きつけ、牽制し、敵の体を削ぐ機巧の戦士と、攻撃を弾き、敵を叩き斬り、破壊する白衣の戦士。鉛玉と白い残像が飛び交うその光景はある種の美しさすら帯びていた。
不意に、和鏡子の動きが止まる。目が追いついた彼女は残骸のマシンアームに足を掴まれ引き倒されていた。コアがバチバチと放電し電撃がマシンアームを介して打ち込まれる。
「──ッハ!…ぁ」
一瞬息が詰まり、和鏡子の顔が苦痛に歪む。彼女の耐久性を持ってしても、内側から焼かれるダメージは低減しきれなかった。
「っ!斉射しろ!」
マキナリの号令とともに戦車が轟音をあげ弾幕を張る。和鏡子を捉えた残骸は弾の雨を受け文字通りバラバラになった。地に倒れた和鏡子の元に駆け寄ろうとしたマキナリを、彼女は手をあげて静止する。
「心配は…無用です……」
彼女の言葉通り、肌についた痛々しい火傷の痕はすでに薄く消えかけていた。
「私の|惨殺《キルムーブ》は私の機能停止か、目標の完全排除まで止められないんです。だからすぐに元に戻るはず」
「お…おっかない技使うんだねぇ……じゃああいつら全部始末したら、俺と一緒にメンテ受けようか」
互いにボロボロの様子を見て、マキナリの提案に和鏡子はニヤリと笑った。
「ええ、ぜひ…!」
再び和鏡子の理性は脳の奥へ沈み、目標排除のプロトコルが彼女を突き動かす。敵へ飛びかかり、斧を突き立てる。骨格フレームにぶつかり刃が止まると、そのまま引きちぎるように力任せに振り抜いた。
矢のように飛び出した和鏡子を見送ったマキナリは左腕を支えに右手で銃を構え、狙いを定める。照準の先には水分の蒸発した眼球をせわしなく動かす襲撃者の青年。
「アンタ、良からぬ企てで襲撃なんかしたんだろうけど…末路がこれとは、ツイてないねえ。サイバーザナドゥじゃあ貧乏人より安物買いが先に死ぬのさ。もっといい電脳防壁入れとくんだったな」
撃ち出された弾丸は、残骸と暴れる和鏡子の脇をすり抜け、青年の眉間を貫き真っ黒に炭化した脳を撒き散らした。
「生き残るってのは高くつくんだぜ」
ふっ、と銃口の硝煙を吹き振り返る。
「…あ!ちょっと和鏡子、その戦車は味方だよ!待って、お願い蹴らないでぇ!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ベルベナ・ラウンドディー
もともと対話も怪しい手合がいよいよ発話困難になり下がっただけです
後始末して帰還しますよ
【ジャストガード】片腕くらいは差し上げられますよ
マシンアームの攻撃を敢えて腕で受けてユーベルコード使用
殺した自分の腕を竜の頭部状にして一掃を開始します
【集団戦術・衝撃波・ブレス攻撃】…衝撃波のブレス
狙いは敵ユーベルコード時に漏電丸見えなコアか
そこにブチ当てるのが正攻法ですね、ですが…
あいつらには手際よく逃げられ、追跡できる証拠も建物内には無さそうですね
なら、この支部の根元をバッキリ折って全員潰れてもらいましょう
【破壊工作・重量攻撃】
…猟兵を相手にしたらこうなるという意思表示です
ブラックリスト、上等ですよ
●看板は会社の顔
静寂を突き抜けるように切り裂いた、子供っぽい甲高い笑い声にベルベナ・ラウンドディー(berbenah・|∂《ラウンドディー》・f07708)は、苛立ちを隠そうともせず大きな舌打ちをした。心底人を馬鹿にした口調、神経を逆撫でする笑い声に自然と眉間にシワがよる。
「チッ……荷物をまとめて逃げ出してる、なんて煽ってみましたが…連中、手際よく逃げたものですね。あの無駄に大きいビルはもうもぬけの殻でしょう」
掠れた唸り声が周囲を取り囲む中、執行騎士が飛び降りてきた巨大な建物を一直線に見つめる。拳を握りしめたことで彼の鱗が隆起する。紳士的な口調は崩れないが、ベルベナは牙を剥き出しにして歯がみする。
「…っはぁ、私情はここまで。私はこの戦場の後始末をして帰ります。ハックされて利用されたのは気の毒に思いますが……元々己の主張ばかりで会話の成り立たない手合いではありましたし、やることは変わりません」
深く息を吐き感情をリセットする。その無防備な背中に向けて、残骸が何本ものマシンアームを差し向けた。ベースとなった人間の腕が内部の関節駆動によって無理やり引き伸ばされ、ミシミシと嫌な音を立ててベルベナをくびり殺さんと迫った。
「痛みは糧に、苦悶は熱に、怒りは嵐に……負傷は覚悟の上です!」
気合いの言葉を呟き振り返りざま、ベルベナは自分の片腕を残骸たちのマシンアームに思い切り叩きつけた。肉と肉がぶつかる鈍い音がして、骨が折れる嫌な音が体内を伝って耳に響く。攻撃を防いだ代償として、腕一本はあまりにも重い。
「……クッ、代償は高くつきますよ。今の私は危険です…!」
肉が裂け、腕から滴る血が炎のようにゆらめく。亀裂のように腕にまとわりつく血痕が、ゆらめきに合わせて脈打つように光り始めた。内側からの明かりが大きくなり、ベルベナの苦痛の声とともに竜の頭部が彼の腕の内側を食い破って現れた。
荒い息遣いと、喉の奥から響く低い唸り声がシンクロする。苦悶と傷を代償に二つの竜の頭が敵を睨め付ける。彼のユーベルコード『|双頭の姿《ツーヘッドドラゴン・ヒョウジュンシヨウ》』。
「あなたたちを残らず粉々のスクラップにしてあげましょう!被造物としての役目は今日で終わりです!」
腕の竜の喉の奥が明るく光る。空気が弾ける音とともにベルベナが数歩後ずさるほどの衝撃波のブレスを放った。直撃を受けた残骸は激しい力の奔流にもみくちゃにされ継ぎ接ぎの人体パーツを飛散させながら遥か後方に吹き飛んだ。そして余波を受けた周囲の残骸も接合の甘いパーツを剥離させて後ずさった。
数秒にも満たない逡巡ののち、残骸たちはそれでもベルベナを八つ裂きにせんと、乾いて窪んだ眼窩に殺意をみなぎらせた。対するベルベナも第2第3のブレスを放つ。
『ゔぉh ──』
衝撃波の波濤を掻い潜り、一体が唸るような囁くような声とともにベルベナに肉薄した。2本を1本に捻り合わせ肉の柱のようになった腕を接近の勢いのまま振り下ろす。
「──フウッ!」
全身に力を巡らせるように息を吐き、敵の大質量の攻撃を片腕で受け止める。ベルベナの腕は先ほどのようにひしゃげることなく衝撃を吸収し、受け流してみせた。
「お返しです。とくと味わってください」
残骸の腕を受け止めたまま一歩踏み込み、腰を入れて竜の頭を敵のコアに思い切り突き込んだ。竜の鋭い牙が防腐処理の劣化した残骸の表皮を切り裂き、半分剥き出しだったコアを抉り出す。中枢回路がショートした残骸は糸が切れたようにその場に崩れて動きを止めた。
竜が凶暴な咆哮をあげ、なおも迫る兵器たちを威嚇する。次なる攻撃に備える刹那、ベルベナは反対の腕の違和感に気づいた。
「ユーベルコードの|防御力強化《バフ》があっても、痛みが内部に響いている……先の戦いのダメージの蓄積でしょうか」
己のステータスを分析しながら、横なぎの乱暴な一撃を紙一重で見切る。
「多少の負傷は織り込み済みとはいえ、これ以上時間をかけるものでもないですね。一網打尽と行きましょうか」
ベルベナを捕らえようと殺到するマシンアームが掠める中、ジリジリと|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》の社屋へと後退させられる。ビルの壁面を背にして逃げ場がなくなった──かに思えたその時、ベルベナと竜の頭は口角を釣り上げて笑った。
「私情は挟まないつもりでしたが、こういう意趣返しもたまにはいいかもしれませんね」
竜の口を頭上に掲げ、空気を揺らす轟音とともに特大のブレスを放つ。敵のいない天空へ放たれた衝撃波は、伏魔御殿のゴテゴテとした悪趣味な看板を壁面から引き剥がし、自らを包囲する敵へと堕とした。無駄に大きく、無闇に華美な看板は残骸たちをなすすべなく押し潰し、完膚なきまでに破壊した。
「いずれ本社も、この看板のように潰してやります。|優先抹殺対象名簿《ブラックリスト》、上等ですよ」
成功
🔵🔵🔴
カーバンクル・スカルン
あーらま、壊す前に壊れちゃったか。所詮こいつもあいつも末端だろうからどこに上司がいるか〆て聞き出したかったんだけど……こんな使い捨てが当然の倫理観の前にはしゃーないね。
完全にイカレちゃった以上、精神の方で攻めるのは無理。なら物理で一気に叩き潰す方向で。
【魔導切替】からの【狩人強打】で伸びてきたマシンアームをぶっ壊しながら上昇し、降下からの重い一撃で完全に粉砕してしまいましょう!
物理でやるって言ったからって、ぜーんぶ力技ばっかだと思うなよ?
●スクラップ&スクラップ!
執行騎士のドローンが腹立たしい声を撒き散らしながら、目障りな飛び方で宙を旋回し始めたその時、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)が握っていた鎖がとんでもない力で引っ張られた。鎖の先では生体兵器『残骸』を率いていたチンピラが血涙を流しながらのたうち回っている。
「ちょっと!いきなりどうし…」
「脆弱な攻性防壁だな。命令の書き換えもニューロンネットの切り離しも、片手でできちゃったよ。ハハ」
鎖を解いて駆け寄ろうとしたカーバンクルの頭上から人をおちょくるような、ザラザラと神経をやするような不愉快な声で笑った。周囲の残骸は、元の主人を守るようにカーバンクルとの間に立ちはだかり、ドローンは脅し文句とも取れる捨て台詞を吐き爆散した。
「……あらま。大した情報持ってるようには見えなかったけど、後で締め上げて話を聞こうと思って捕まえてたのに。あの様子じゃもう手遅れね」
さほど残念とも思っていなさそうな声色で、憐れみの視線をチンピラに向けながらカーバンクルは独白する。愛鎖をしまい込み、びっしりと鋲が打たれた物々しい車輪──『カタリナの車輪』を背負うような形で構える。
「重要情報の持ち出しも、自分らにつながりそうな情報の隠滅も、いつでも手を下せる人間を使った足止めも……ムカつくぐらい手慣れてるのよね」
車輪を握る手に力がこもる。安全圏からニヤニヤと笑っているであろうドローンの向こうにいた人物に、フツフツと怒りが湧き上がるのを感じた。
「社員どころか人間全てを資源としか見てない、使い捨てが当たり前みたいな倫理観。この状況を高みの見物してる奴がいると思うと、ムカついてしょうがない……!」
ガンッ!と車輪を地面に叩きつけ目を吊り上げる。感情を持たない残骸たちが一瞬たじろいだ。
「脳が沸騰した相手に精神攻撃は効果がないだろうし、物理で殴って叩き潰すしかないね。悪いけど、今の私は優しくできないよ!」
敵の集団が障害に感じられないほど余裕を感じる歩みで、腐りかけの兵器の群れへ車輪を引き摺りながら侵入する。四方からカーバンクルを握り潰さんと迫る残骸のマシンアームを、回転する車輪の鋲が弾き返す。カーバンクルは片手で車輪を振り回し攻撃を弾き返すが、体の芯は一切揺らいでいない。あらゆる方向から伸びてきたマシンアームは彼女の髪の一本にさえ触れられなかった。
車輪に弾かれたマシンアームは無残にひしゃげ、原型をとどめなかった。それでもなお、回路が漏電し駆動部を空回りさせながらカーバンクルを歩みを阻もうとする。
「うッッッとおしいなあ!もう、一撃で潰してやる。物理でって言ったからって、ぜーんぶ力技ばっかだと思うなよ?」
車輪を持ち上げ鋲をつかんで回転を加速させる。鋭い棘が空気を切り甲高い音が規則正しく鳴り続ける。同時に、カーバンクルはユーベルコード『|魔導切替《スイッチング・ウィズ》』を発動し彼女の武器に真紅のオーラがまとわりつく。回転が最高潮に達した時、車輪を両手で構え地を蹴った。
車輪に引っ張られるようにカーバンクルの体は、数秒のうちにトップスピードに乗って飛翔する。その行手を阻もうとしたもの、あるいは反応できず避けられなかったもの、一緒くたにしてズタズタに引きちぎりながら通り過ぎた。発声器官のない残骸たちの代わりに、車輪の風切り音が怨嗟の悲鳴のように響く。魔導切替によって強化された『|狩人強打《カインハースト・インパクト》』によって戦場を一望できる高さまで舞い上がった。
「一網打尽だ、ぶちかます!」
舞い上がった体躯は下降へと反転し、重量と位置エネルギーが彼女を後押しする。上昇した時以上の速度で敵の群れの中心へと墜下した。
轟音とともに、落下の衝撃で押し出された空気が強風となって吹き荒れる。砂埃を舞い上げた中心には真紅の猟兵と、彼女を中心としたクレーターが生じていた。敵の痕跡は砕けたコアと正体不明のパーツの欠片しか残っていなかった。
「フウっ!スッキリした!」
成功
🔵🔵🔴
枯林・さらち
とても嫌な「イキり」を感じ取ったので来たが、その者は既に退いた後か。
残されたのはその者が残した「作られたモノ」。
……先天的に作られた私と、後天的に作られたであろうこのモノ達ではどれほど「違う」のだろうか?
……いや、詮索は後。
今私のすべきことは、このモノ達を倒すこと。
猟兵として、デッドエンドデッドとして、油断無く遅滞なく初仕事を完遂しよう。
……考え事はここまでね、舞台の幕を開けるわよ。
|何処からか舞踏剣を取り出し、【御仕舞】を発動させつつ踵を鳴らして即興の剣舞を開始《武器を隠す・剣舞》。
周囲に目を配って囲まれないよう立ち回りつつ、|見る者に自殺衝動を齎す(己の生命力を変換した)黒き力を纏い≪生命力変換・黒の力≫、小まめに舞踏剣の持ち手を左右変えつつ激しい回転を交えた静動が激しく変わる幻惑的な剣舞で敵を翻弄。
無防備に近付く敵は踊りつつ斬り、そうでない敵の攻撃は|踊りつつ舞踏剣で受け流す《受け流し》。
……ここに居たイキり輩のような存在とは、今後も多く遭遇しそう。
静穏を齎すのは、骨が折れそうね。
●就業時間
耳障りな笑い声とともに執行騎士のドローンがブンブンと飛び回る。ドローンや生体兵器『残骸』を掌握したハッカーの憎らしさと底意地の悪さがスピーカー越しに貫通するような物言いに、1人の猟兵── |枯林・さらち《かればやし・さらち》(|産まれざるモノ《ノンナートゥス》・f45685)は眉間に皺を寄せ渋面を作った。
「なんて心がざわつく『イキリ』……今すぐあなたの元に行って、顔を思いっきり引っ叩いてやりたいわ。その場合、首は胴とお別れしてもらうけれど」
隠しきれない怒りと嫌悪を声色に滲ませ、ドローンとその裏にいるハッカーを睨みつける。歯を剥き出しにして暴れまわる屍の兵器には目もくれず、さらちは捨て台詞とともに爆散するまでドローンから目を離さなかった。
「姿も晒せない小心者らしい引き際ね。後に残ったのはこの|被造物《作られたモノ》ども。生まれながらに作られた私と、死したのち作られたこのモノたちに、線を引くものとはなんなのだろうか……」
人体の構造を無視し乱雑に継ぎ接ぎされた歪んだ存在を目の当たりにして、さらちは思考の海に沈んでいく。方向性は違えど尋常の命の形から外れた存在は、さらちに己を問う鏡像のように映った。
「…いけない、考え事はここまでね」
かぶりを振り、思考の海から自身を引き揚げる。今度は鏡像としてではなく、倒すべき敵として残骸を見据える。
「哀れな被造物たち。猟兵として、デッドエンドデッドとして、あなたたちの歪んだ命に引導を渡してあげるわ」
真っ白なドレスを翻しくるりと一回転するさらちの手には、しなやかなカーブを描く舞踏剣が握られていた。剣には光を飲み込むような黒を湛えたエネルギーがまとわりついている。
「開演よ。最期に良いものを見せてあげる」
さらちは踵を鳴らし、舞踏剣で空気を撫でるようにゆっくりと廻り始めた。硬質な小気味の良い音が大気を振るわし、白い髪と黒い刃が緩やかな円の軌道を描いた。
息を忘れるほど美しいその舞踏は、さらちのユーベルコード『|御仕舞《ドット…ピリオド》』。その舞いに魅入られた者は刃の回転に引き込まれ、やがて彼女の舞いに紅い華を添えることになる。
周囲に集まる残骸を、さらちは大胆なステップですり抜けながらすれ違いざまに斬撃を浴びせる。黒と白が混ざり合う幻惑の舞踏は回転の速度を上げ、残骸の接合部を的確に狙い敵の戦力を文字通り削ぎ落としてゆく。
しかし、さらちの剣に踏み込んでくる残骸たちは、彼女の黒の力がもたらす自殺衝動に呑まれているというより、敵意と害意に突き動かされているように見える。四方から迫り来る残骸の割れた爪や欠けた歯の攻撃に、敵に与えたダメージに比例するようにさらちの手傷も増えていった。
「……あら、私の舞踏はお気に召さなかったのかしら。なら、ここからはテンポを上げるわよ」
さらちの右にもつ剣の黒いエネルギーが濃さを増した。覗き込めば吸い込まれるような深淵の色を纏い、舞踏は再び加速する。残骸たちの頭部がガタガタと震え、スパークを散らしながら彼女の間合いへ足を踏み入れる。絹のような白髪を振り乱しながらさらちは刃をコアに叩きつけ、あるいはボディごと両断する。今度こそ命なき兵器ですら抗えない、美しき死の舞踏。
忙しない刃の舞の前に次々と残骸たちは倒れていく。
その中で、他の残骸と同様にスパークしながらも、数体が足を止めていた。それらはガクガクと痙攣する頭部を自らのマシンアームで鷲掴みにすると、躊躇いなく引きちぎった。傷口から濁った液体を撒き散らしながら、死の誘いから逃れさらちの首元へ飛びかかった。
「──ッ!無粋なお客様ねッ!」
自殺衝動を克服した残骸の不意打ちに、さらちは咄嗟に上体を仰け反らせ敵の攻撃を回避する。残骸のひび割れた爪が喉を掠め、鮮血が宙に散る。さらちは真っ直ぐに伸びたマシンアームを蹴り上げ、つま先で飛ぶように懐に入り込んだ。
「そろそろ幕引きよ。さようなら、お客様」
舞踏は最高潮を迎え、剣の黒が無数の軌跡を描いた。さらちを取り囲む残骸たちは一瞬動きを止め、細切れになって崩れ落ちた。
一面の骸の中央で、もうすでにいない観客へ向け一礼して見せた。
「此度はここまで…フフッ」
苦戦
🔵🔴🔴
ケーカク・スレッド
廃棄物とはいえ、回収してオーバーホールすれば僕の【LMM】に使えるかもしれませんね。
蒸気端末【LMMガジェット】を取り出します。
「階差機関、暫定演算を開始」
音声を認識した蒸気ガジェットが起動すると、UC『|階差機関:仮説始動《ディファレンスエンジン》』が起動。LMMの演算によるとコアへのダメージが効果的とのこと。
LMMは僕の命令無しに、魔力を槍状に形成。自動的にそれを投射し、残骸たちを貫きます。
...あれ?これだと回収してもコアが破損してるから意味ないんじゃ...?
やば、LMM、機能停止!
『エラー、音声認識不可。』
うーん、やはり改善が必要そうですね...
●技術交流in|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》
「…廃棄物とはいえ、アレまだ使えそうじゃないですか?回収して中身の論理回路を解析すれば、僕の【LMM】に有用な技術が抽出できるかもしれません。それに、見た目は悪趣味そのものですけど、オーバーホールすればガワのほうも何かに活用が……」
開きっぱなしの口から涎を垂れ流し、頬のこけた顔に型落ちの視覚デバイスを載せた継ぎ接ぎの兵器『残骸』を見て、なおケーカク・スレッド(人間のガジェッティア・f45568)は目を輝かせた。瞳孔にマッドな光を浮かべた彼は『|大規模魔術言語モデル《Large Magic Model》』通称LMMの提唱者であり、己の理論の確立のため貪欲に知識を欲する研究者だ。ケーカクは早速、自らの武器であり研究の結晶でもある蒸気端末『LMMガジェット』を取り出す。
「兵器の鹵獲は戦争の常、技術は敵から盗むことで進化を遂げてきました。さあ、始めましょうか──階差機関、暫定演算を開始」
『マスターの音声を認識。階差機関を展開。対象補足、演算開始』
ケーカクの声にLMMガジェットが起動する。階段状に展開された計算テーブルが、凡人には及びもつかない速度で眼前の敵に最適な攻撃を弾きだす。彼の技術の結晶が成す、高速にして精密な演算機構──ユーベルコード『|階差機関:仮説始動《ディファレンスエンジン》』。
自身の内部構造を走査鋭い何者かに気がついたのか、残骸たちはケーカクを新たな脅威として捕捉した。
しかし、そんな周囲の敵には目もくれず、高速演算するLMMガジェットに合わせケーカクの瞳はガジェットの演算に追随する。
「正常起動を確認。処理速度、精度、共に安定。出力に時間がかかっているのは、全く未知の対象ゆえでしょうか…」
その言葉からまもなく、LMMガジェットは大きく蒸気を吐き演算により得られた最適な「解」を実行する。
『露出したコアに動力熱源、ネットワーク回路を検出。最適攻撃による破壊制圧を実行』
宙に浮いたガジェットによって、ケーカクの魔力が吸い上げられる。集められた魔力は光の束となり、槍状に形作られていく。
「──えっ?破壊制圧って言いましたよね。コアが破損したんじゃ意味ない……」
『射出』
慌てて攻撃の停止を命じようと喚くケーカクをよそに、LMMガジェットは己が導き出した結論を疑うことなく実行に移した。放たれた魔力の槍は、前方の空気を切り裂き目標へ一直線に飛来する。
「LMM、機能停止!機能停止ぃ!」
『エラー、音声認識不可。演算結果の効果測定を継続』
魔力の槍が敵のコアを捉える、その寸前でマシンアームが行く手を阻んだ。人工骨格と硬く練り上げられた魔力が衝突し金属が削れる甲高い音が響く。槍はマシンアームを裂くように進みコアに迫ったところで、空へむけ弾き上げられた。
『致命的損傷は確認されません。出力を上方修正。効果測定を継続』
「ああぁ、勿体無い……やっぱりまだまだ改善が必要そうですね…」
肩を落とし頭を抱えるケーカクをよそに、LMMは魔力の槍をさらに放った。放たれた第二・第三の槍は残骸の防御を無理矢理に引き剥がし、マシンアームを跳ね上げてコアを無防備にさせた。そしてついに、四発目の槍がコアを貫き動きを止めた時には、残骸はスクラップ同然のガラクタになっていた。
「んー……少し無駄が多いなあ。最短距離の解が最効率の解じゃない場合もありますからね」
演算効果の測定に対し、ケーカクが冷静に分析を加える。彼が思索の海に沈んでいる間も、LMMは景気良く槍をビュンビュンと飛ばし続ける。敵に防がれるたび高くなる出力は、もはやケーカクの魔力を吸い尽くす勢いだ。
「……?ま、魔力が欠乏してる…LMM、機能停止ぃ…」
『命令を受諾。演算状況を保存しますか?』
魔力欠乏により、ふらつにながら尻餅をつく己のマスターをよそに、LMMの自動音声は心なしか誇らしげだった。
苦戦
🔵🔴🔴
ゾンビーヌ・ロッテンローズ(サポート)
デッドマンのコミックマスター×自由農夫、18歳の女です
普段の口調は「女性的(わたくし、~様、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、心を許したら「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です
ゾンビとして蘇った文字通りの『腐』女子
男性が好きですが恋愛対象でなく、妄想のネタとして男同士でくっつけることを好みます
口調は作っているもので、本性は内気な陰キャです
ユーベルコードは所持する物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●人間に捨てるところはない
メガコーポ『|伏魔御殿《パンデモニウム・ショーケース》』の戦場は、もはや崩壊と言っても過言ではない様相だった。指揮系統を書き換えられた生体兵器『残骸』は汚らしい爪やを振り回し、メガコーポに仇なす存在を八つ裂きにしようと迫ってくる。
「防腐剤の香気で鼻が曲がりそうですわ!腐って朽ちて、いつか土に帰るのか死者の習いですのに、ここでは屍すら小綺麗にパッケージングしていますのね」
虚ろな眼窩に嵌め込まれた視覚デバイスを忙しなく動かす、半分機械化された死体に対しゾンビーヌ・ロッテンローズ(元カルト組織「リビング・デッド魔導会」の腐薔薇姫・f40316)は嫌悪感を示した。
血の気の失せた土気色の肌に戦場にそぐわぬ、薔薇をあしらったゴスロリ衣装をまとった彼女は手にした杖──というにはあまりに頼りない棒きれを一回転させた。
「老若男女、誰彼構わずめちゃくちゃに接合されていますわね……いくらわたくしが殿方同士の情愛に熱を上げていると言っても、こうした節操のないカップリングはいささか不快ですわ!」
身も心も『腐って』いる彼女にとって、命や身体を資源としてしか見ていないサイバーザナドゥの生体兵器はあらゆる意味で地雷だったようだ。手にした杖『薔薇の支柱』を地面に打ち鳴らす。すると彼女の衣服に飾られた薔薇からつたが伸び、鋭い棘を備えた茨が威嚇するように残骸と向き合った。
「いけ、茨たち。たとえその身に流れる血が濁っていようとも、華麗に咲かせてみせなさい!」
ゾンビーヌの号令に合わせ茨が残骸に殺到し、棘だらけのそのつたが剥き出しのコアを打ち据える。攻撃を受けた部位から袈裟がけに切断され残骸は崩れ落ちた。切断面はまるで刃によるもののように滑らかで鋭い。ゾンビーヌの操る茨によって彼女の敵を切り伏せる、ユーベルコード『|引き裂く薔薇棘《ローズスラッシュ》』。
同胞の犠牲により戦場に現れた新たな脅威を認めた残骸たちは、たった今一体を屠ったゾンビーヌを視界に捉えた。そして彼女を殲滅すべく口が開きっぱなしの頭部を揺らして押し寄せる。
それでもゾンビーヌの表情は最初と変わらない、哀れみと嫌悪がブレンドされたしかめっ面だ。あらゆる方向から伸びてくる防腐加工され萎びた屍肉で覆われたマシンアームを、切り落とし、あるいは弾き、絡め取っていく。
「──ッハ…ぁ」
不意に、ゾンビーヌの全身に痺れるような衝撃が走った。彼女を取り囲む残骸たちのコアは不規則に光り、防腐加工され萎びた屍肉で覆われたマシンアームに電撃をまとっている。茨越しに伝わった電撃が彼女の体を貫いたのだ。
「……ビッ──クリしたぁ…」
ゾンビーヌが電撃に打たれて出てきた言葉は、「ビックリ」であった。それもそのはず、すでに死した彼女の身体は脳からの電気信号では動いていない。何発浴びようとも致命傷たり得ない。
とはいえダメージが皆無と言うわけでもないようで、先ほどより動作がぎこちなくなっている。
「肉体の制御に支障が出ていますわね。あまり心地良いものでもありませんし、そろそろ片をつけてしまいましょう」
先の攻防よりも多くの茨がゾンビーヌのゴスロリ服から伸び、枝分かれしていく。見るみる間にゾンビーヌのゴスロリ服は茨で包まれたドレスの様相に変化する。ロングスカートのように伸びた茨を両手でつまみあげ、ふわりと一回転する。
ザシュッ────ドサドサッ……。
ゾンビーヌの回転に合わせて、茨のドレスは一瞬で膨らみ巨大な刃と化した。回転する茨は電撃を受けた端から燃え尽き、それでも続く第二の刃が敵を切り刻む。そうして、絶え間ない茨の刃の特攻を受けた残骸は細切れとなり、もはやゾンビーヌの周囲に原形をとどめているものはいなかった。
「あなた方も、しっかり腐って朽ち果てて、ステキな屍におなりなさい」
成功
🔵🔵🔴