不世出ノ英雄譚『|凍風の唄《カゼノウタ》』
「えぇ、と。今回の予知について、話します。」
集まった猟兵たちの前で、黒いローブの天使、白霧希雪(呪いの克服者・f41587)は真剣な面持ちで言う。
メモを手に目線を正面に向け、発するは良く通る鈴の音のような声。
「今回の予知は───英雄譚。その具現か、それとも追憶か……一つの英雄譚に語られた“竜”の討伐をお願いします。」
英雄譚。それはかつての英雄の足跡とでも言うべきか。
希雪はメモをちらと見つつ、先を語る。
「場所はアックス&ウィザーズ。敵の姿は、強い吹雪に阻まれ直接見ることができませんでしたが、予知にあった英雄譚から察するに、銀色の竜……だと思います。」
希雪の予知は夢の中でその場の出来事を実際に体験するという形で予知をする。
それでもその姿すら見ることができなかったというと───かなり危険な相手であることは間違い無いだろう。
「予知の英雄譚。その題を『凍風の唄』といいます。」
希雪は軽く息を整え、英雄譚を語る。その語りは心の込められた臨場感のあるモノで。
静かな空気感の中、そんな英雄譚だけが響く。
かつて、ひとりの英雄がいた。
その英雄は数人の仲間を引き連れて、恐るべき戦場へと向かう。
氷に閉ざされた人の住まわぬ地。英雄が足を踏み入れた瞬間、凍てつく風が嵐となりて英雄たちを襲う。
吹き荒ぶ風は唄なのだろう。人を嫌い人を排除する呪い唄。
その音は低く、深く、そして理外の冷気を以て英雄を迎える。
辛く苦しい行軍を超えた空の果て。大地を見下すは風の竜。
風。それなるは万物を揺るがす大気の腕に他ならぬ。
此処は全てが凍る極寒の大地なれば、大気の腕はより強大に、より悪辣に、より圧倒的に。
空の轟きはついに英雄を捉えた!
大気の腕は英雄を掴み、引き裂き、吹き飛ばす。
もはや人にはなす術のない自然の暴力。
英雄たちは圧倒的な自然の前にその場に倒れ込んだ。
吹き荒ぶ凍風の中、風の竜はその大翼を広げる。
我こそがこの空の王者なのだと、その覇を示すように。
しかして英雄たちもまた、傷付き倒れたとしても屈することはない!
たとえその身が凍りつこうとも、切り裂かれようとも!!
握り締められたその拳は戦意に満ち震えている!
空を睨むその瞳は氷すら溶かす心の炎を灯している!
傍の剣は英雄の前の須くを切り裂かんと鈍い輝きを灯している!
此処で立たぬなら英雄などやめてしまえ! そう心に念じ両の足で凍った大地を踏み締めたのならば!
その獰猛なる爪を砕き、その凶悪なる眼を潰し、その堂々たる翼を落とし。
終に英雄は、風を宿す空の覇者たる銀竜の、首元にただひとつ光る逆鱗を穿つ。
その時、大いなる空は静まり、空の覇者は地に斃れる。
風の唄はもう響くことは無く、空を仰げば果てしなく青く。
これはそう。偉大なる空に打ち勝った、昔の昔の英雄の、たった一つの英雄譚。
「……ふぅ。これで、英雄譚は以上です。」
此処まで臨場感のある語り口で詠う必要は無いのだが、だからこそその脅威もわかる。
英雄譚の内容の通りなら、人の住めない程の冷気の中で、風を司る竜相手に戦わなくてはならないと。
「送り届ける場所は、凍土に包まれた極寒の大地となります。対策を怠ることのないように───ふふ、皆様ならば心配する必要も無いでしょうね。」
「それと……敵オブリビオンの反応があるのは比較的大地に近い場所ですが………対空での戦いか、凍てつく風に負けぬ飛行手段を用意すると良いかと。……単なる飛行手段だけでは、恐らく不足しますので………。」
少し声のトーンを下げながら、自らの翼を展開してみせる。
表情はあまり変わっていないが、恐らく予知の中、希雪の翼では突破できなかったのだろう。
「一応ですが、強風や凍結で身動きが取れなくなってしまったり、敵オブリビオンの攻撃で戦闘不能になってしまったら……私が責任を持って救出しますから、大丈夫です。そんなことにならないことを祈るばかりですが………」
もう一度息を整えて、もう少しだけ真剣に、続きを語る。
「今回予知したこの事件は、わからないところがとても多い、です。具体的には、敵オブリビオンの戦闘能力はおろか、姿すらもわからない。英雄譚も、あくまで人が語るものなのでどこまでが真実なのかはわかりません。おそらくは英雄譚の再現ではなく、“英雄譚に語られた現実の再現”であると思われますので……」
希雪は持っていたメモをローブに仕舞い込み、くるりと回って皆に背を向ける。
そして大きく両腕、両翼を広げ───たちまちそこには白い霧が立ち込めた。
そして霧の中、かすかに見えるのは、吹雪に包まれた白銀の世界。
「門を開きました。行き先はアックス&ウィザーズ。どうか、ご武運を……!」
カスミ
みなさんお久しぶりです。カスミです。
少し期間が空いてしまい申し訳ございません。
ようやく少し時間が作れそうになったので、こちらのシナリオを出させていただきました。
前も同じようなシナリオを出したんですよね。英雄譚。やっぱりこのコンセプトとてもしゅき……かっこいい……
と言うことで全力でかっこよく書かせていただきます! がんばります!
章ごとの説明としましては
⚫️第一章:極寒の大地を進め!
オブリビオンの竜の元に辿り着くために、極寒、強風、吹雪の中頑張って進んでください!
もちろんそれだけではなく、オブリビオンの竜に近づけばそれだけ嵐は苛烈になり、切れる風やブレスなども飛んでくることでしょう。
プレイングボーナス;強風や気温に対する対策や対応をする。
⚫️第二章:風を司る竜を討伐せよ!
苦難を超えオブリビオンの元へ辿り着けば、そこには威厳たっぷりの銀竜がいました。倒しましょう。
この『テンペスト』君ですが知性ある感じに喋れるので喋ってみると楽しいかもしれませんね。
かつての英雄に討たれた復讐心とか、純粋な戦闘への興味とか、オブリビオンとしての猟兵への殺意だとかが一緒くたになって襲ってくるみたいですので。
プレイングボーナス:英雄譚から攻略のヒントを得て、実行する。
第1章 冒険
『凍雨の氷河横断作戦』
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POW : 凍る雨もなんのその!ずんずんと進む
SPD : 全身が氷に覆われる前に横断だ!
WIZ : 氷を溶かしたり、雨を魔法で避けながら歩く
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ビッグ・サン
ドラゴンですか
良いですね
死体は色々と使えるのですよ
ドラゴンは圧倒的な戦闘能力を持つ種族だ
竜殺しは英雄としてたたえられる
今回の竜は伝説があるほどの大物だ
恐らくエンシェントドラゴン
普通に戦ってはまず勝てない相手だ
ですが他の猟兵もいるなら何とかなるでしょう
パーティーを組むのはA&Wの冒険者なら当然だ
氷の大地
なるほど、吹雪でとても進めそうではない
いつものフレッシュゴーレムでは無理そうだ
防寒のぬいぐるみの中で、ビッグは呪文を唱える
途端に当たりの氷や雪が集まり、大きな人の形となる
氷のゴーレムだ
巨大なゴーレムに空間を作り中に乗り込めば吹雪も何のそのだ
さて、ガンガン進むとしますかね
眼前に広がる一面の銀世界。
ビッグ・サン(|永遠を求める研究者《ナイスガイ》・f06449)がグリモアの扉を通じてまず見えたのはそれだった。
といっても美しい光景が広がっているわけではない。ただ、視界を埋め尽くす猛吹雪があるだけだ。
ビュウと吹き付ける吹雪に、気配察知も遮断もあったものじゃない。
それでもどこか立ち入る者を拒むかのように一方的に吹き付けるそれを前に、ビッグは納得する。
「ドラゴン、ですか。恐らくは───ある種のエンシェントドラゴン。」
人形の肉体に打ち付ける雪は、どこか魔力を帯びていた。
それは、ドラゴンの魔力。
ドラゴンは圧倒的な戦闘能力を持つ種族。
それが如何な等級のものでさえ、鱗を貫き、飛翔する体躯を穿つのは容易ではない。
そして、年数と共に魔力と叡智を蓄え続けた個体は、まさに理外の存在となるだろう。
だからこそ、竜殺しは英雄として讃えられる。
今回の竜もまた、その偉業を語り継ぐ英雄譚として伝説がある程には大物だ。
そんな存在と、まともに戦っては勝てない。それが、A&Wの冒険者としての常識だ。
だが、それはこの男にとっては少し違ったようだ。
「良いですね。ドラゴンの死体は色々と使えるのですよ。」
ビッグには共に戦う他の猟兵が居る。
それに何より、猟兵というものはそもそも理外の存在だ。
余程のことが無い限りはなんとかなる、ビッグはそう考えていた。
そんなことより、考えるべきは今だろう。
氷の大地。収まる気配のない吹雪。
視界は悪く、ドラゴンの魔力を帯びているせいか魔力探知もそこまで遠くは届かない。
「……なるほど。生身ではとても進めそうにないですね。」
正確にはビッグの肉体は生身ではないのだが、今はそれは問題ではないだろう。
そのままの肉体では抜けることは不可能で、そしていつも魔術で操っているフレッシュゴーレムも使い物にならないだろう。
ならば、どうするか。
ビッグは呪文を唱え、氷の大地を隆起させる。
そしてそれは辺りの氷や雪も巻き込み、ゴゴゴと軋みながらその形を変じていき───氷の騎士の姿へと。
解決策は簡単だ。既に凍っているものをゴーレムにすればいい。
形成された空気の層で断熱効果もバッチリ、内側の空間から出さえしなければ猛吹雪もなんのその。
完全に自然の素材なので姿も風景に溶け込んでいる。これからの行動に全くの支障も無いだろう。
「さて、ガンガン進むとしますかね。」
氷の騎士が付けた足跡すらも吹雪が消し去って、その跡すら残らない。
目指すは吹雪の先。偉大なる英雄譚の竜そのものだ。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドロ・ロッソ
門を抜け、アックス&ウィザーズの地に降り立つ。
突き刺すような低温の暴風に巻き上げられた雪と氷の欠片がたちまち視界を覆い、白銀の帳を下ろす。
人間ならば数時間すら持たないだろうが…
指を一度鳴らし、自らの権能の一端を解放
暴風が収まり、雲間から太陽が僅かに顔を出す
「さて、進むか」
狂風を一動作で沈めた後、歩き出す
英雄譚の通りならば敵は竜
つまり、世界は違えど同胞でもある
多少なりとも言葉を交わす価値はあるかもしれない
それに、まがりなりにも竜の血をその身の内に流し、誇りを持つはずの者が復讐などという無意味な妄執に囚われ、オブリビオンに堕ちる理由を聞くのも、また一興だろう
吹き荒ぶ風と、凍てつく絶対零度の土地に。
見渡す限りに、と形容するには些か視界の悪く、部外者の侵入のひとつすら許す気はないと言わんばかりに強い吹雪。
雪混じりの風が放つ轟音の中で、ひとつの門がまた開く。
アレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)はこの極寒の大地に降り立ち、ゆっくりと状況を確認する。
───この冷気、ただの人間ならば数時間と持たないだろう。
手で吹雪いてくる雪を掬い、悠長にも。
実際、アレクサンドロの感覚は正しい。気温は既に氷点を優に下回っている。
それでもアレクサンドロの表情に変化はなく、寧ろ涼しげな理由は───否、理由を語るほどでもないのだろうが。
吹雪で見えぬ空を軽く見上げ、パチン、と指を鳴らす。
一瞬だけ、紅の魔力が弾けたような、気がした。
───空が割れる。
雲と雲とが裂けるように二つに分かれ、その間からは今まで見えなかった弱々しい太陽が顔を覗かせる。
アレクサンドロの出来ることはいくつかあれど、権能とまでに呼べるものは少ない。
そして今行使したのはそのひとつ。天候を司る神の力。
だが、しかし。
本来ならば一帯の空を全て晴れ渡らせるはずのその力をもってして、未だひとつの線を描くばかり。
そして、あまりに広域に、薄く引き延ばされて展開された───竜の魔力に、アレクサンドロは気付く。
「……よもや、この雪粒のひとつに至るまで───彼の竜の支配下というわけか。」
英雄譚の通りならば、敵は竜。
それも、永く生きた存在であることは間違いないのだろう。
であるのならば、この程度の権能解放では、その全てを操れるはずもなし。
そして天候を奪うことに躍起になるのもまた、悪手であろう。
「………さて、進むか。」
竜、それは、世界は違えどアレクサンドロの同胞に他ならない。
立場や思想。その全てを超越した神としての目線で語れば、の話にはなるのだが。
だからこそ───多少なりとも、言葉を交わす価値はある。
そこに猟兵とオブリビオンの関係があったとしても。
それに、曲がりなりにも竜の血をその身に宿し、誇りを持つはずの者が過去───復讐などという無意味な妄執に囚われ、オブリビオンに堕ちる。その理由を聞くのも、また一興だろう、と。
アレクサンドロは凍土の大地を踏み締め歩む。
純白の道に足跡を刻みつけながら。
そして、その足跡は唯一条とはいえ晴れた空の下、雪に埋もれること無く残る。
その足跡は、新たなる英雄譚の幕開けを知らせる───
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
なるほど、これは対策なしでは進む事もままならないな
UCを発動、盾受け用の太刀を複数召喚
念動力にてオーラを纏わせた太刀を自身の周囲に浮遊・展開
太刀を支点とし自身の周囲を覆うような結界を生成
氷結耐性を付与した結界内ならば極寒の環境下でも耐え凌げる
風やブレスの曝される可能性も考慮し何重かの結界を生成しておく
太刀を召喚した際に、結界が万一破られてもすぐに次の結界が生成出来るよう予備の太刀も準備
英雄譚の通りだとするなら、その謡われる英雄達は俺よりもっと過酷な状況の中を進んでいたんだろうな…
結界内の気温もある程度調整出来るように細工はしておくけれど、目的地まで辿り着くには最後は気力勝負になるだろうな
果てしなく広がる凍土の大地、冷気の深く沈む極低温の平原。
吹き付ける風は瞬く間に温度を奪っていくだろう。
そんな中、雪原のどこか。吹雪を掻き消す白霧の中に、ひとつの“門”が現れる。
そしてその奥から、幾層にも積み重ねられた土混じりの氷を踏みしめ進む足音が聞こえてくる。
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は、あらゆる存在を拒むかの如きこの冷気を感じて唾を飲む。
「…なるほど、これは対策なしでは進む事もままならないな。」
油断すれば冷や汗すら凍りそうだ、と早速手数のひとつを切る。
此処はただ居るだけで命に関わる、そんな場所なのだと正しく理解して。
手をゆるりと伸べ、発動するは|理外の力《ユーベルコード》。
携える破魔刀よりひりょの手元に召喚されるは4本の太刀。
念動力をもってして自身の体を囲うように配置したそれはひりょを守る結界となりて、冷気や外部からの攻撃などを防ぐ絶対の盾となる。
この結界があれば、この冷気の中でも問題なく進むことができるだろう。
息すら凍る冷気を感じることもなく、先へと足を進める。
平坦な道だ。
吹雪によって視界が遮られてはいるものの、大してひりょの歩みを妨げるものはなく、実際ひりょは順調に進んでいた。
「この依頼が英雄譚の通りだとするなら、その謡われる英雄達は俺よりもっと過酷な状況の中を進んでいたんだろうな……」
そんな声すらも漏れるほどに。
だが、全てが順調な物語などありはしない、と。そう告げるかの如くに───遠くで、英雄譚の竜の|声《咆哮》。
姿こそ見えぬものの、結界を通じてわかる空気の振動と、明らかに変化した張り詰めた空気感を肌で感じる。
コレは、この声の主こそが───かつての英雄が斃した竜そのものなのだ、と。
そう思い、気を引き締めなおした途端───結界に強く打ち付けられるは、刃物の斬撃にすら思える鋭い風だった。
こちらが視認すらできない距離で。既に、捕捉されている。
「人を嫌い排除する呪い唄、万物を揺るがす大気の腕………英雄譚で誇張されていたわけでもなさそうだな、これはっ!」
次々と打ち付けられる風の斬撃。結界は未だ健在ではあるか、いつ打ち破られるかわかったものではない。
もし破られた時、瞬時に結界を再展開できるように予備の太刀も携えて。
先に進めば、それだけ風は苛烈になってゆく。
それでも、少しずつだろうが進んでいることは事実。
目的地まで辿り着くには、文字通りの気力勝負になるだろう。
でもそれは、かつての英雄達が超えた道。
つまりは、不可能なことではないのだから。
なら、大丈夫。
少しの時間が過ぎた後。
ふたつ目の予備の太刀を浮かべたひりょが、雪原の最奥へと辿り着く。
大成功
🔵🔵🔵
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「極寒、強風、吹雪か、先ずは空気と桐生遮断しながら進むとしよう」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながらファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを展開し気温と風量を対処して宇宙空間よりも冷えていないのならファンネルでバリアを展開して注意深く周囲を警戒しながら後方にシールドビットをアンカーとしながら着実に進みます。
「生物には適さないながらも、これも惑星の“意思”なのだろう…」
道標にアンカーを残しながら進み障害物に対してはレーザーカッターで対処しながら着実に進み後方の猟兵への『道標』として残します。
吹雪荒れる凍土の大地、生身では生存すら許さぬ極地とも呼べる場所。
微かに、雲隠れした太陽のそれとは異なる、無機質な金の光が迸る。
ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)はこの大地へと降り立って直ぐ、この土地の危険性を理解する。
「極寒、強風、吹雪か。先ずは空気と気流を遮断しながら進むとしよう。」
この場所を死の大地たらしめている理由はたったこれだけなのだ。尤も、そのひとつの対処に失敗した時点で人間という生命体は死に至る可能性が高いのだが。
そして、その2つ。強風と吹雪に関しては空気の連続性を絶って仕舞えばその時点で無力化に成功するのだ。
これもまた、ただの自然現象であればの話ではあるのだが───少なくともこの場では、非常に有用な解決手段となり得る。
吹雪の轟音に掻き消されながらも駆動音を発して起動した幾つものビットがティティスを囲う。
人ならざるものであるティティスとしても、気温、風量ともに無視できない問題である。
気温の方は未だ許容できる範囲内ではあるが、元凶と思われる英雄譚の竜に近付けばそれもどうなるかはわからない。
だから、警戒に警戒を重ね───淡い光とともに展開されたバリアで自らに繋がる空間の全てを断絶する。
「生物には適さないながらも、これも惑星の“意思”なのだろう……」
英雄譚にあった“風の竜”は。
大気の腕、と謡われたそれが文字通り気流を操るものであるとするならば、この冷気は土地本来のもの。
過酷な環境を齎す惑星の意思とは、何か。
ティティスは思いを馳せつつ、しかしてその頭脳は警戒を一瞬たりとも緩めることはなく、先へ進む。
歩む道には一定間隔でアンカーを残す。それは万一に現在位置を見失った時への導と、後続の猟兵への道標。
そんな中、ティティスの視る一分先の未来が攻撃を感知する。
方角は正面。圧縮された風の奔流とでも言うべき自然の暴力だった。
それも、尋常ではない。凍土を抉りながらティティスを正面に捉えた指向性のある範囲攻撃。そんな印象を受けた。
これに類似するものを、ティティスは知っている。
竜種の持つ代表的な攻撃手段であり、その象徴とも言える技───竜の息吹。
英雄譚に語られたのは風の竜。ならばこの現象を発生させようと不思議ではないだろう。
そして、未来ではないティティスの耳にも、その咆哮が聞こえてくる。
まだ視認すらできぬ吹雪の先、空の覇者の咆哮が。
ティティスは瞬時に真横へ機動する。
すると、元いた場所を包むは未来で見た風の奔流そのものだった。これに巻き込まれれば、バリアを貼っていても無傷とはいかないだろう。
何せ、未来で見えた光景では───
そして、遂に凍土の大地、その最奥へと辿り着く。
まるで台風の目だとでも言うかのようにその一帯だけが晴れ渡り、しかして頭上を見上げても太陽は映らない。
映るのはただひとつ。凄まじい威圧感を誇る、空の覇者の姿だけだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『テンペスト』
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POW : ストームブリンガー
【無尽の射程を持つ鎖に繋がれた三振りの黒刃】で攻撃する。[無尽の射程を持つ鎖に繋がれた三振りの黒刃]に施された【行動を阻害する暴風領域:騒嵐襲風を生む力】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD : ブラストノッカー
【騒嵐襲風の要である角と黒刃から強烈な迅風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ブレススターラー
攻撃が命中した対象に【暴風領域:騒嵐襲風を局所的に作り出す結界】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【あらゆる行動の制御を乱し狂わせる暴風】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:shirounagi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ルーダス・アルゲナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
凍土の大地、その最奥。
其処は、不自然なまでに晴れ渡っていた。
まるで、台風の目のように。その一帯だけが吹雪が存在せず、青白い空を見上げることができる。
ただ、そこに太陽はない。
あるのはただ、空の覇者たる竜の姿だけだった。
白銀の体躯、そして天使をも思わせる羽翼。
鋭い爪や牙、そして、銀の体にただひとつ黒く輝く双角が。
覇者の名は、テンペスト。
嵐をその名に持つ誇り高き支配者の姿が、太陽のない空にひとつ。
狂える竜は、咆哮をあげて矮小たる侵入者を見下して。
「我を討つは、貴様等か。またしても矮小なニンゲン如きが、我を地に堕とそうと言うのか。
いいだろう。思い上がりの代償は、無為に死ぬことのみ。」
傲岸不遜な態度。それは覇者にのみ許されたもの。
比べるもののいない、唯一の存在にのみ、許されたもの。
「来るがいい、ニンゲン共よ!!」
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「白銀のテンペスト…残念ながら私は“人間を支援し使役される『召喚獣』だ”、人類の敵は看過できず討破し撃滅する」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながらファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを展開し敵の攻撃を空間飛翔し回避しつつテレポートで防ぎ同時にアルテミス・レーザーとリニアロングボウで的確な各個撃破を試み、リライズ能力で敵の攻撃をそのまま返し状況を注視しながら透明化と視聴嗅覚を阻害しながらフルバーストとヘラ・エウピションで容赦の無い無慈悲なビーム総攻撃を仕掛け「驕るな竜よ、常に強者は存在するものと知るが良い」
アレクサンドロ・ロッソ
アレクサンドロは凍土の氷混じりの大地を踏み締めながら進む
先程までは僅かに輝いていた太陽も今は隠れている
竜の住処、その最奥とあっては神の権能も容易には届かし得ないという事だろう
そう結論づけ、空を舞う竜の元に黒い翼腕を広げて飛行し、天に並び立つ
「問おう、同胞よ。なにゆえ貴様はオブリビオンとなったのだ?仮にも誉れある竜の血を体内に流し、竜としての誇りを持つならば、討たれたその時は勇者の偉業を讃え、潔く消えるべきだ。醜くも現世に舞い戻り、貴様の言う矮小なニンゲンを殺すことになぜそうも拘る?」
そう問いかけながら、体内で魔力を圧縮、口腔より解放
テンペストの振るった黒刃を弾き飛ばしながら迫る
ビッグ・サン
おお、さすがはドラゴン
迫力がありますね
ソロだと逆立ちしたって勝てませんが、さっきスイフル君の旦那のアレクさんを見かけましたし何とかなるでしょう
スィフルというのは何かにとりつかれた少女だ
取りついてる何かがスィフルなのかもしれないが、まあ仮面に魂を宿して妖精の体にとりついてる私と似たようなものだろう
とりあえず、ゴーレムで殴ったりしておきますか
幸いアイスゴーレムの素材はたくさんありますからね
今のアイスゴーレムを山のように巨大にして踏みつぶすのもありですね
最終的に私がやられていても、猟兵が勝てば良し
私はマスクだけになっても動けますからね、竜の死体にとりついて死体を持って帰りましょう♪
鳳凰院・ひりょ
UDCアース育ちの俺にとって、この世界はファンタジーの世界みたいなものだ
だからかな…、こんなにも心が躍るのは!
英雄なんてのはガラじゃないとは思うけれどね!
黒刃を残像で回避しながら直撃しそうな一撃は護符で相殺試みる
流石に射程無限の黒刃相手では分が悪いか
攻撃の威力も相手の方が圧倒的に上だ
それなら!
UCを発動させ反撃に出る
予知では飛行能力もある程度制限されそうな可能性が示唆されていたが
全てを切り裂く次元斬なら、事象だって切り裂ける!
暴風領域や黒刃を切り裂き、自身が傷つきながらも徐々に敵へと肉薄
喰らえっ、俺の破魔の一撃を!
残る全ての力を破魔の力へと変換し、次元斬に纏わせて敵へと渾身の一撃を叩き込む!
凍空、台風の目。
天を見上げてもそこに太陽は無く、あるのは一つ、覇者の姿だけ。
此処は、驚くほどに静かな───決戦の場だ。
風ひとつ吹かぬ凪いだ空間に、人影が四つ現れる。
ひとつ。
淡い金色。機械のようでありながら逸脱した神秘性をも併せ持つ女性─── ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は覇者を仰ぎ見る。
しかし、その瞳は恐怖や畏怖などという感情に染まることはなく。ただ冷徹な瞳を天へと向ける。
「白銀のテンペスト……残念ながら私は“人間を支援し使役される『召喚獣』”だ。人間の敵は看過できず討破し撃滅する。」
竜がニンゲンの敵と宣うのなら、それ即ちティティスの敵である。
風も無しに髪がふわりと舞い、そして無数のビットが機械音を発しながら展開されてゆく。
慈悲も容赦も存在しない。敵はただ滅するのみと言わんばかりにビットから発された無機質な光がこの空間を彩っていく。
ふたつ。
黒、そして紅。この異常な場所にありながらただ一点を見つめ、悠然と佇む男性─── アレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)は自らの黒き翼腕を大きく広げ、殺意なしに、無防備に、空を駆けテンペストのもとへ。
そして、ひとつ、問いを投げかける。
「問おう、同胞よ。なにゆえ貴様はオブリビオンとなったのだ?」
同胞。竜の血を持つものは須くが龍神のアレクサンドロの同胞と言える。
たとえ世界も思想も異なるものであったとしても、アレクサンドロが興味を持つに足る理由だった。
『貴様は───そうか。』
「仮にも誉れある竜の血を体内に流し、竜としての誇りを持つならば。───討たれたその時は勇者の偉業を讃え、潔く消えるべきだ。醜くも現世に舞い戻り、貴様の言う矮小なニンゲンを殺すことになぜそうも拘る?」
アレクサンドロは問いかけつつも、体内で魔力の圧縮を繰り返す。
純粋な疑問だった。だが、その答えがどのようなものであったとしても、テンペストは禁忌を犯したのだから。
みっつ。
白。それは雪と氷で固められた騎士のようなゴーレム。そして、その中でゴーレムを操る男性───ビッグ・サン(|永遠を求める研究者《ナイスガイ》・f06449)
姿を見れば誰も信用などできない胡散臭さを絵に描いたような笑みを浮かべ、竜を見上げる。この男にもまた恐怖などの感情はないらしい。
「おお、さすがはドラゴン。迫力がありますね。」
緊張感なくそう呟いて、一歩、後ろに下がる。
その言葉の終わりに「まあ、ソロだと逆立ちしたって勝てませんが」と付け加えて。
今回は1人で戦うわけではない。故にその発言も当然のものなのだが───どこか他人事に聞こえるのは気のせいだろうか。
「さっき知り合いのアレクさんを見かけましたし何とかなるでしょう。」
気のせいではなかったようだ。
竜を倒した時得られる素材を夢想しつつ、ビッグも魔術を編み込んでいく───
よっつ。
黒と白。太刀を携えた、優しげな顔つきの男性─── 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)が天を見上げる。
ひりょはUDCアース世界の住民だ。あの世界には魔法は無いし、モンスターも居ない。心踊る英雄譚もフィクションで、ドラゴンなんているはずも無い。その全てがファンタジーとして扱われてきた。
「だからかな……、こんなにも心が踊るのは!
英雄なんてのはガラじゃないとは思うけれどね!」
ただ高揚した心のままに、純粋に、竜を見上げる。
今までそんな敵とだって幾度となく戦ってきた。ファンタジーなんて自分が全身どっぷり浸かり込んでいるようなものだ。
でも、そうだとしても。“英雄譚”、その響きは気分を高揚させるのに十分過ぎる。これは理屈では無いのだから。
そして。
『グルアアアアアアアアアァァァ!!!!!!』
テンペストの咆哮。
風の竜らしく空気を引き裂くように轟くそれは、戦闘の火蓋を切り落とすには十分だった。
そしてその声は、振動は、それだけに留まらない。
キュリリリリリィィィン!!!
高速で回転し風斬り音を奏でるは、無尽の射程を持つ鎖に繋がれた三振りの黒刃。
そのひとつひとつが、地上付近に居るティティス、ビッグ、ひりょを薙ぎ払わんと迫る!
だが、それは届かない。
ティティスはその行動を全て知っていた。
一分先を見通せる未来視の力。そして、音速すら超えて迫ってくる黒刃を回避できる身体能力をもって、その一撃をひらりとかわす。
ビッグはその一撃を受け切った。
騎士のような姿をしたゴーレムは、飾りなどではないその大楯と自身の存在全てをもって、主たるビッグを守り抜いたのだ。
黒刃との衝突によって盾どころではなく首まで真っ二つとなったが、肝心のビッグには傷ひとつ無い。
ひりょはその刃を僅かに逸らした。
明らかに直撃する軌道、自らの符に破魔と衝撃の力を込めて、迎撃を試みる。衝突の結果は両者ともに不本意に終わってしまったが。
迎撃は失敗した。結果は多少刃の向きがズレただけ。ひりょに当たりこそしなかったものの、やはり射程無限の黒刃を押し留めるのは分が悪い。
そして、たったひとり天空で。
アレクサンドロとテンペストはお互いの凶悪なる攻撃手段をぶつけ合っていた。
『貴様に何がわかると言うのだ、龍よ!』
苛烈なのは白銀だった。
『英雄を讃えるのはいい。ニンゲンの癖に我を殺したのだ、彼奴は強かった。文句はあるが認めざるを得ない。』
白黒互いに空を駆ける。爪で引き裂き、翼腕で薙ぎ払い、黒刃を突きつけ、大鎌を振るう。
アレクサンドロは神であり、そしてテンペストはただの竜。それでも此処に拮抗するだけの何かがあった。
『覇から引き摺り落とされようと、再び返り咲けばいいだけの話。我にはそうするだけの力があった。時間があった。』
何か───それは、オブリビオン由来の力もあるだろう。運命だのという不定形なものもあるだろう。
『だが、死は許せぬ!何も成せずして消滅することを許せてなるものか! この空を、覇することこそが───!!』
それを形容するなら、テンペストを死から現世に繋ぎ止め、今なお激しく燃え盛る“執念”というものなのだろう。
「───だが、それは許されることではない。貴様に齎された死は、受け入れるべきものだ。」
キィン、と黒き刃がアレクサンドロの大鎌によって弾かれる。
そこに生まれた致命的な隙。だが、アレクサンドロは動かない。
「本来なら神罰を下すところだが───消滅も出来ぬ貴様には赦しすら下せぬ。」
神の名の下に神罰を下すのは、罪を裁き赦す為。
差し伸べた手すら取れぬオブリビオンには、その価値すらも存在しない。
「貴様を屠るのは、今の時代の英雄たちに任せるとしよう。」
アレクサンドロは眼下に見える3人の猟兵を見やる。
攻撃を一身に引き受けていた、あまりにも貴重な準備時間。
これだけあれば、各々が持つ最大をぶつけられる───!
「さて、こういうのもアリですね。どこかの幼女にもしてやりたかったですが。」
ビッグが準備時間に作り上げていたのは、超、超、超巨大な氷の騎士のゴーレムだった。
それも、直前までバレないように魔術でその姿を隠していた。テンペストからすれば、自分の何倍では収まらないような大きさのゴーレムが唐突に現れたのだ。
そして、その巨大な足で上から踏み潰さんと───
『この俺を、舐メるナァァ!!!!!!』
咆哮ひとつ、渾身の力をもって振り回された黒刃。
無数の蓮撃にて巨大な氷の足といえどガリガリと削り落とされてテンペストには届かない。
だが、確かにその瞬間、全力を放ったテンペストはそれ以外のどの瞬間よりも無防備だった。
「驕るな竜よ、常に強者は存在するものと知るが良い。」
ティティスは、ひたすらにエネルギーを充填していた。
もはや圧縮されたエネルギーは触れるだけで雪どころか岩すら素粒子レベルで融解してしまう程に。
そしてそれは、放たれる。容赦のない無慈悲なビームが、まるで下から上に向かって降る雨のように、テンペストを襲う。
風の防壁も、竜の鱗も、何ひとつ通用しない純粋なエネルギー。身を捩って回避できるほど甘くはない。
『ガ、アアァァァ……!!! ク、ソ───』
爪は溶かされ、翼は穿たれ、その角すら砕け散った。
翼を失った竜は大地に墜落するのみ。
『まだ、だ、まだ───全て、すべて、殺してやる──!!!』
窮鼠猫を噛む、だったか。
追い詰められた存在は、もともとの存在からは想像出来ぬ程に恐ろしいという言葉。
まさに、今。この状態を表すのに相応しい言葉だろう。
黒い刃は再び空気を切り裂いて回転を始め、翼は風をつかめなくとも権能によって風を操る。
そしてその狙いは、ひりょたったひとり。
黒き刃が、凶悪たる風が、襲いかかる───
キィン、と、澄んだ音が聞こえた。
手には、たった一振りの太刀。
背には、白黒一対の対極の翼。
ひりょの持つ全力をもって振り下ろされた太刀は、黒刃を超えて次元すらも切断する。
だが、黒刃は三振り。残りが次々に襲いかかる。暴風もまたそうだ。
そしてテンペストは未だ生きている。ならば───!
黒刃が降る。
身を捩って回避する。左腕が裂けたが呻き声すら上げずに、無事な右腕だけで刀を持ち直す。
暴風が吹き荒れる。
どれだけ強く荒れようと、ひりょが先を見失うことはない。
そして、その両翼はこんな微風に負けることなど有り得ない!
徐々に、徐々に、竜へと迫る。
嗚呼、かつての英雄も、このように───
肉薄。
それは、長く苦しい戦いの終着点。
「残る力の全てを───! 喰らえっ、俺の破魔の一撃をッ!!!!!!」
力を振り絞れ。一滴たりとも残す必要はない!
いつもそうだ。最後はいつも、気力勝負。
そして、気力勝負でなら、鳳凰院ひりょは、誰よりも───
『────────』
精霊破断斬。
それは、荒れ狂う竜の首を切り落とした、この場の英雄の放った技だった。
空は晴れる。風は爽やかに靡く。
竜は大地に斃れ、天には陽の光が戻る。
さあ、竜狩りの英雄の───凱旋だ!
大成功
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