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なないろみずうみ~游覧魚~

#ブルーアルカディア #ノベル #猟兵達の夏休み2025

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逆戟・イサナ




 果てのない空に浮かぶ冒険の島々、ブルーアルカディア。幻の召喚獣が住まうと言われる小島の湖へ訪れた逆戟・イサナは、その光景に瞬きする。
「へぇ、絶景じゃんか」
 届かぬ空の上、二重の虹がまばゆくかかっているのが湖面へと反射して、七色にゆらめいている。
 十分にリラックスできることが想像できて、東方妖怪はそっと薄手の和柄シャツを脱ぐ。短い丈のズボンは、濡れたとしても心地よい風ですぐに乾くだろう。ちゃぷりと湖面に足を浸せば、ひんやりとした感覚がその身に馴染む。
「ちょっとはしゃいでみるか」
 なんて呟いて、妖怪は湖に。借り物である人の身でも泳ぐことはできるから、静かにゆらめく虹色の水底へ。
 その潜水時間はとても長く、ただのヒトよりも圧倒的に深いところまで潜っていける。空に果てはなくとも、湖の底はイサナからすればすぐ傍だった。
 陸地には何かしらの植物が生えていたものの、生息している水棲生物は居ないらしい。それでも、水中でゆれる水草すらも七色に融けていて、陽が翳されたステンドグラスのように輝いてみえた。
 ゆぅらりゆらり、泳ぎ、浮かび、ぼんやりと漂う。普段よりも心地よいと思うのは、鯨の妖怪が本性であるからか。けれど、姿かたちを思い出せないままの彼自身は知らぬこと。
「案外召喚獣ってのも、オレと似たようなものなのかもなぁ」
 ふいに、ちゃぷりと音がする。先ほどまで共に游ぐ生き物は居なかったはずなのに、その気配は確かにすぐ傍で感じられた。
 聴覚よりも鋭い感覚が、ささやかな振動を察知する。
 ――そこに居るのか?
 言葉ではなく、思念で呼びかける。透明な見目に虹を編んだような長い尾鰭の魚が、軽やかに泳いでいる。
 こっちへおいでと誘うように、魚は静かに進んでいく。ついてきてほしいのだと言いたげな動きを認めて、イサナは広い湖中のなかでそれを追いかける。
 やがて、再び水底へとたどり着いた時、きらきらとかがやく石の欠片が目に留まる。これが噂の召喚石か、とそれを拾って、水面に顔を出した。
 ぷは、と久しぶりに息を吐いて、吸う。決して苦しくはないけれど、新鮮な空気が全身を巡る。
 手にした宝石に目を向ければ、掌が透けてしまうほどの透明度を誇っている。けれどわずかに頭上の虹と同じ彩りを宿していて、なるほどな、と頷く。
「お前がオレを気に入ったんなら、ついてきてくれよ」
 ちゃぷん。魚が、うれしそうに飛び跳ねた気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年08月11日


挿絵イラスト