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開拓物語〜はじまりの整地

#ゴッドゲームオンライン #開拓地 #ヴァレフィルド

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「皆はGGOの『開拓地』って行ったことある?」
 布都御魂・アヤメが集まった猟兵たちに向かってさっそく語りだすのは、最近話題に上がった『開拓地』についてだ。

 ゴッドゲームオンラインは割とリアルを追求するゲームだが、カジュアルにクラフトを楽しめる『開拓地』と呼ばれる特殊なクエストエリアも存在しているという。
 カラフルなブロックのような『素材』を集めて合成し、建物でも何でもぽいぽい作れる自由度の高さは想像次第。どっぷりハマるプレイヤーも少なくないというのだが──。

「その開拓地にも、バグプロトコルの魔の手は伸びてきてるみたいなんだ」
 プレイヤーの居るところにバグプロコトルあり。どれほど魅力的な|娯楽《ゲーム》の中にあろうとも、この世界のゲームプレイヤーたちは常に、人権剥奪事件という危機に晒されていた。

「絶対に阻止して、プレイヤーさんたちを守ってあげなきゃね!」
 アヤメは意気込み胸の前で拳を作る。伸びる魔の手があるならば、それを払い除けるのが猟兵たちの仕事だ。

「皆に向かってもらうのはヴァレフィルドっていう渓谷の開拓地だよ!
 渓谷だから山の中にあって森もあれば滝も川もある、自然がいっぱいの場所なんだけど、やっぱりそういうところの開拓って大変みたいなんだよね。
 今はまだ拠点どころか集落にもなってないけど、生産職系クランが『整地』からやるぞー!って頑張って開拓してるんだって!
 ただ戦闘はからっきしみたいで…皆にはバグプロコトルを含めたモンスターの討伐をお願いしたいんだ」
 開拓の基本は聖地から!そんな言葉を掲げて開拓を楽しもうとしているが、何せメンバーの殆どが非戦闘員ばかり。バグプロコトルどころか普通のモンスターを相手にするのも一苦労。
 今回の猟兵の仕事はそんな彼らの護衛はもちろん、彼らに代わってモンスターを倒しまくって開拓素材を集めることだ。

「開拓地のモンスターに紛れて襲ってくるバグプロコトルは『とおせんぼのアオクマくん』だよ。
 普通のアオクマくんは足止め特化のモンスターだけど、バグってるのは攻撃力が上がってるから注意してね!
 アオクマくんを倒していったらプレイヤーさんたちを狙ってる親玉も出てくるけど…皆なら絶対負けないよね!」
 アヤメはそう言って猟兵たちへ笑顔と信頼を向ける。どんな敵が相手が待っていようとも、猟兵たちの力があれば越えられない壁などないのだから。

「いつでも建築はできるけど、しっかり腰を据えて建築できるのは戦いが終わってからになると思うよ。
 バグプロコトルはプレイヤーさんと建築物を狙ってくるからね!」
 敵の狙いを建築物で誘導することももちろん、戦いやすい場所を建築する──という事も、猟兵たちの想像次第では可能となるだろう。
 しかしどんな建築も自由自在!といっても素材は必要だし、街を大きくするには素材はどれだけあっても足りなくなるもの。猟兵の実力だけで立ち回って素材集めに注力するのも自由だ。

「あ、あと…開拓地に出現するバグプロトコルは『巨大なプレイヤー拠点を新規建造されること』を何故か警戒してるみたいなんだ。
 大きな街を作るのは、何かの力になるのかな…。先の事はわからなくても、頑張らないとね!」
 猟兵たちの協力があればきっと、開拓地に大きな街を作る一助ができるだろう。アヤメの突き出す拳を合わせ、猟兵たちはグリモアの輝きの中へと飛び込んでいった。


後ノ塵
 後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。開拓といったらまずは整地だ!三章構成のシナリオとなります。

 尚、予告なくプレイングの再送信のお手間をいただくことがございます。再送信をお願いする場合、個別の連絡は行いません。ご了承下さい。

 全章を通して整地、そして建築を行うことができます。
 一章、二章では、バグプロコトルが優先しようとする行動は『ゲームプレイヤーの殺害>建築物の破壊>その他』となります。周囲に気をつけて戦いましょう。

 一章は『とおせんぼのアオクマくん』との集団戦です。
 バグプロコトルと共にその他の通常モンスターも出現します。
 開拓地に出現するモンスターは様々な建築素材をドロップします。建築に素材はいくらでも必要になる為、片っ端からどんどん倒して下さい。
 アオクマくんからは足止め用の建築素材がドロップするようです。

 二章は『バグゲイザー』とのボス戦です。
 開拓を進めるプレイヤーの遺伝子番号剥奪を狙い、開拓を妨害してくる強力なバグプロトコルとの対決になります。

 三章は渓谷エリアの冒険です。
 渓谷エリアを探索して素材を集めながら、開拓に協力しましょう。まずは整地を終わらせて、建築です!建築の構想だけでもきっと喜ばれます。

 皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『とおせんぼのアオクマくん』

POW   :    くまっ!!
【抱き着き】で近接攻撃し、命中した部位ひとつをレベル秒間使用不能にする。
SPD   :    くまくま!!
【エモーショナルバルーン】に宿る【『×』の移動制限】を解き放ち、レベルm半径内の敵には[『×』の移動制限]で足止めを、味方には【くまくまエリアの癒し】で癒しを与える。
WIZ   :    がおー!!
全身に【愛くるしさ】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【「がおー!!」と叫ぶこと】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 渓谷の開拓地、ヴァレフィルド。未だ未開拓地であるそこにいち早く踏み出すのは、非戦闘生産系クラン…その名も『パンの国』。

「俺こそパンを愛しパンに愛されし男…パンパカ・パーンだ!パーン店長と呼んでくれ!」
「その挨拶やめません?」
 猟兵たちを迎えてくれるのは、心地よい風が吹き抜ける自然豊かな渓谷の開拓地と、何やら愉快なゲームプレイヤーたちの姿だ。

「やあやあ!君たちが新しい『パンの国』への入団希望者だな!」
「違う違う絶対違う。すいませんうちのリーダーバカで…私はトレミーです。あんたらもこの開拓地に?
 人のこと言えないけど…物好きだね。見ての通り素材はあるけど平らなところが少ないから、まだ開拓は全然なんですよ、ココ」
 そう言ってトレミーの視線が向かう先は、松明を並べた少しばかりの開けた土地に、飾り気のない豆腐建築が並ぶだけの開拓地だ。
 そのまま辺りを見渡せば、何か作りかけているらしき建築や、地形に沿って仮置きされた柱など、露骨に半端な建築ばかりが並んでいる。

「見ての通りうちは整地から…ってことでまだ仮拠点しか作れてないんだけど、良ければ仲良くやりましょう」
「クラフトは皆で作るほうが楽しいからな!
 何か協力する事があれば、なんでも言ってくれ!入団希望者も大歓迎だ!」
「そういうのいらんから!他のメンバーもそこらで自由に遊んでるから、何か手伝うことがあれば声かけてください。
 今の状態で言うのもあれだけど…全員生産職だからクラフトも得意だし。良かったら素材の取引もしましょう」
 どこか気まずそうなトレミーの顔からは、彼らの開拓がまだまだスタートラインに立っているだけであることが伺えようか。
 バグプロコトルの魔の手から彼らを守りつつ──積極的に交流し開拓に協力するのも、或いは自由に開拓を進めるのも猟兵次第だ。
カトリーヌ・クレマン
わたしも開拓に協力するわ。
この世界はわたしの故郷だし、わたしは元々農業担当のNPCだから開拓は得意分野だから。
敵は引き寄せてから驟雨で一網打尽にするわ。
仮に足止めを受けても驟雨なら動かなくても使えるし点ではなく面で対応できるから。
バグプロトコルと戦えるのはわたしたち猟兵だけだからバグプロトコルの駆除に専念して素材集めは他のNPCに任せるようにするわ。
得意分野に合わせて分業した方が効率よく素材も集まりそうだから。



「こんにちは。わたしも開拓に協力するわ。元々農業担当のNPCだから、開拓は得意分野よ」
 軽快な足取りで開拓地へ足を踏み入れたカトリーヌに、クラン『パンの国』の二人は笑顔を向ける。

「この世界に住む人も来てくれるのか!ようこそ、大歓迎だ!」
 握手を交してカトリーヌは早速周囲を見渡す。半端な開拓地をちらほら行き来しているのは、楽しく開拓を進めているゲームプレイヤーばかりのようだった。

「ところで…他のNPCはいないの?」
 大量に素材が必要な時は、得意分野に合わせて分業が効率のコツ。特にNPCともなれば大体がプレイヤーを手助けする事に長けているものだ、協力できる『手』が他にもあるならばと思ったカトリーヌに、トレミーは気まずそうに頬を掻いた。

「まだまだ街じゃないんで、NPCを呼ぶなら追々〜って感じですね」
「あら、そうなの」
「俺たちはこの世界に住む人も大歓迎だが、近くの村もちょっと遠いからな!」
「無理に連れてくる訳にもね。なんかモンスターもかなり湧くのが厄介ですし」
 この世界のNPCは単なる人形ではなく、ゲーム世界に生きる『AI人間』だ。自我も思考能力も──心も人生もあるのだから、ゲームプレイヤーの助けにはなっても都合の良いばかりではない。街として機能できる程の建築か、或いは行き来のしやすい街道が出来上がればNPCの往来も増えてくれるだろう。

「わかったわ。それならモンスターは任せて。わたしは戦闘もけっこう得意だから」
「ありがとう!」
 それなら今回の分業は『猟兵』としてするまで。さっそく現れた|モンスター《バグプロコトル》にカトリーヌは竹槍を向ける。

「さて…バグプロコトルの駆除に専念しましょう」
 通常のモンスターに混ざって存在感を放っているのはとおせんぼのアオクマくん。バグったアオクマくんだけはその視線を遠ざかるプレイヤーの二人に向けている。襲い掛かってくる通常モンスターを引き寄せながら、カトリーヌはアオクマくんのターゲットを遮るように立ち塞がる。

「一雨降らせるわ」
 カトリーヌの手から竹槍が放たれると、細かく分裂した槍が一帯のモンスターへと降り注ぐ。

「くまっ!くまくまー!」
 驚いたアオクマくんはすぐさまエモーショナルバルーンを広げ、弾けるバルーンから飛び出した✕マークがカトリーヌの足元に貼り付き移動を制限する。だが面で対応するカトリーヌの驟雨には、その足止めも脅威にはまだ遠い。

「もう一雨よ」
 激しい雨にモンスターの頼みの綱はくまくまエリアの癒しとなるが、屋根もなければ雨宿りにすらならないものだ。
 一帯に降り注ぐ竹槍の中で、モンスターたちは足止めされてジワジワとHPを削りゆき──。

「く、くま〜ぁ」
 最後にパタリと倒れたアオクマくんからは、✕印の建築素材がポトリと転がった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神臣・薙人
葛城さん(f35294)と

開拓地、ですか
お話を伺うだけでもわくわくしますね
バクプロトコルが警戒している事は気になりますが
お手伝いをしましょう

パンの国の皆さんへご挨拶を
敵への対処はお任せ下さい

相手はくまですね
可愛らしいですが騙されませんよ

初手で白燐桜花合奏を使用
以降
葛城さんが回復範囲から外れないよう
位置を調整しつつ演奏を続けます

こちらの行動を妨害する兆候がないか
演奏中も敵の様子に注意を払います
おかしな動きがあれば
演奏を中断して注意喚起すると共に
白燐蟲を飛ばして噛み付かせるか
可能であればバルーンを割って
攻撃を阻害します
移動を阻止された場合は治癒に注力

素材がドロップすれば確保を
まだまだここからですね


葛城・時人
ダチの神臣(f35429)と

色んなので見る荒地開拓だね
庭とかはした事あるけど
ここまで本格的なのは見た事ないし
神臣と一緒に俺も目、キラキラしちゃう

「こんにちはだよ。精が出るね」
二人で挨拶
「危ないのとかは俺達に任せてだよ」

くまがすっごく可愛いのは認めるけど
寧ろ可愛さで油断を誘うタイプだよね
「首チョンパ兎もいるしさ」
油断はしないよ

「よーし、こっちは鳥で」
光鳥剣舞を詠唱して攻撃指示!

花吹雪に光鳥が乱舞する光景はとても綺麗だ
神臣の楽奏に導かれる桜色の花弁の帳が
俺も光鳥も助けてくれる
「サンキュ、助かるよ!」
自分でも攻撃して綺麗さっぱり排除しよう

「あ、俺も素材みっけ!」
取れるのはしっかり取って彼等に渡そうね



「開拓地、ですか」
 キラキラとした瞳で呟き周囲を見渡す神臣・薙人の楽しそうな姿に、葛城・時人もまた思わず頬を緩ませる。

「色んなので見る荒地開拓だね」
「お話を伺うだけでもわくわくしますね」
「うん。ここまで本格的なのは見るのも始めてだよ」
 創意工夫を凝らすことのできる開拓地に心躍らせるのは、ゲームプレイヤーだけではなく猟兵たちも同じ。
 開拓地へ足を踏み入れる前から、二人はこの場に思いを馳せていたが、実際に訪れてみれば想像以上。庭の規模なら時人も経験のうちにもあるが、この広さは初体験だ。時人もまた薙人と同じく瞳をキラキラと輝かせる。
 とはいえバグプロコトルの警戒の目に睨まれているというこの場所で、浮かれてばかりではいられないのがプレイヤーたちにとっては悩ましい事だろう。

「こんにちはだよ。精が出るね」
「こんにちは。人手が足りないと聞いて、開拓のお手伝いに参りました」
「おおっ、ようこそ!助かるよ!」
「ありがとう〜!さっきからずっとモンスターが出てきて、作業もなかなか進まなかったんですよ」
 二人がクラン『パンの国』へ笑顔を向ければ、彼らの表情には安堵が浮かぶ。何せパンの国のメンバーは生産職ばかり…バグプロコトル混じりのモンスター集団には手も足も出ないのが現状だった。けれどその手の荒事ならば猟兵たちの得意分野だ。

「危ないのとかは俺達に任せてだよ」
「敵への対処はお任せ下さい」
「ありがとう!任せるよ!」
 そうしてさっそく現れたのは、とおせんぼのアオクマくんを筆頭にしたモンスターの集団だ。ぬいぐるみのような見た目のアオクマくんやモコモコの動物型モンスターは、一見可愛らしくも侮れないもの。

「く〜まっ!がうぅ〜!!」
 勇ましげに威嚇するアオクマくんは全身にありったけの愛くるしさを帯びているが、それは敵対者の油断を誘い行動を阻害する姿そのもの。

「可愛らしいですが騙されませんよ」
「なんか可愛さで油断を誘うタイプのモンスター集団だね。首チョンパ兎もいるしさ」
 時人が視線を向ける先にいる兎は、通常のモンスターながらその素早さと攻撃力で殺人兎の別名で有名な兎。どんなに見た目の可愛いモンスターが並ぼうとも薙人も時人も油断はしない。

「私は残花と一緒に葛城さんをサポートします」
「ありがとう神臣。よーし、こっちは鳥でいくよ。光鳥よ、剣翼で舞え!」
 薙人が蟲笛で白燐桜花合奏を奏でれば、柔らかな春の音色の中で桜の花吹雪と共に白燐蟲が踊り出し、時人の呼び声に創世光を汲み上げ象った剣翼鳥の群れが羽ばたき舞う。
 花吹雪と光鳥の幻想的な乱舞はモンスターを次々に倒しゆく。けれど見惚れるほどに美しいこの光景にもバグプロコトルは反抗の雄叫びを上げる。

「がおー!!」
「く…っ光鳥よ、列を成せ!剣翼を広げて突撃だ!」
 アオクマくんたちが一斉に叫び声をあげれば、引き攣るような痛みが襲い二人の足を留まらせる。だが時人はその痛みにも怯むことなく光鳥に攻撃を指示する。時人は一人ではない──薙人の途切れることのない楽奏に導かれる桜色の花弁の帳が、薙人の白燐蟲の残花が、時人と光鳥の助けとなってくれるのだから。
 残花がころりと転がるように時人の受けたダメージを回復をしてくれる中で、光鳥は再び花吹雪を纏うように翼を広げて目にも止まらぬ速度でモンスターへと向かってゆく。

 アオクマくんたちの叫びは光鳥の動きすらも留めるが、膨大な光鳥の群れを順に放てば、息切れの隙間はあるもの。さらに薙人は離れぬように注意深く位置を見極め、味方の回復と共に近付いてくるモンスターへのダメージを稼いでゆく。
 徐々に倒れるモンスターが増えて状況は猟兵たちの優勢に傾けば──すかさずアオクマくんはキラリと怪しく目を光らせた。

「くまくま!!」
「…っ葛城さん!」
 アオクマくんが解き放つのは足止めと回復を狙うエモーショナルバルーン。演奏を中断した薙人が鋭い警告の声と共に残花を飛ばしバルーンに噛みつかせれば、弾けるバルーンから飛び出すのは二つのマーク。✕マークは二人に移動制限の足止めを、アオクマくんの顔マークはくまくまエリアの癒しを与えるも、想定外の位置で割れたせいで効果範囲は大きく狭まった。

「サンキュ、助かるよ!」
 薙人の素早い対応にバルーンの範囲から素早く退けた時人は笑顔を返すと、大鎌を振り抜きモンスターのHPを刈り取っていく。
 再び奏でられる白燐桜花合奏の花吹雪の中で、時人は光鳥と共に舞い踊る。回復も追いつかない嵐を過ぎれば綺麗さっぱり。いよいよ最後のアオクマくんもフラフラ、パタリ。
 モンスターの代わりに、転がるのはアオクマくんからドロップした✕マークの建築素材を筆頭に、ウサギ肉やウサギの毛皮などなど。

「ありましたよ、葛城さん」
「あ、俺も素材みっけ!」
 二人は片っ端から回収して取りこぼしのないように素材をしっかり集めていく。なにせ開拓地は広く、開拓はまだまだ始まったばかり。

「まだまだここからですね」
「うん。取れるのはしっかり取って彼等に渡そうね!」
「がんばりましょう!」
 モンスターのひと波を倒しきった後でも、まだまだここから。どんな素材でも使えるし、思わぬ使い道もきっとある…素材はいくらあっても困らないのだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
豆腐建築は、うん、気持ちはわかる
楽だし簡単だし

開拓地の周囲の林や下生えにいる敵を倒して
開拓の準備をしていこうか
余裕があれば木を格闘で折って素材にするよ

UCで攻撃力を強化
手甲でくまを倒していこう
くまに抱き着かれたら下敷きにするように倒れて
石の重量で押し潰すよ
数が増えたら石化しよう
自分から触れてくれるから話が早いね

他には植物系の敵から苗や種のドロップを狙ってみようか
拠点に植えるのも楽しそうだし
もし苗や種から育てたら仲間になるのがいれば
拠点の防衛に良さそうだし

トレントは手甲でカチ割ったら木材になるかな
アルラウネは巻きつかれた蔦から石化しよう
彫像は装飾素材として使えるかもしれないし
最悪石材にはなるかな



「ああ…豆腐建築…」
 まだまだスタートラインに立つばかりの開拓地で──仮拠点として並ぶ四角い建築物を見咎めた佐伯・晶は、なんとも言えない呟きをこぼした。
 俗に豆腐建築とも呼ばれるそれらは晶にも見覚えがあるものだ。気楽に簡単に作れるからこそ量産しがちで、素材が足りていないからこそ装飾に手が回らない世知辛さ。クラフト系のゲーム経験者にはわかる気持ちが色々あるものだ。

「それじゃ開拓の準備をしていこうか」
 だがわかるのであれば気も手も回るもの。さっそく木々の立ち並ぶ林へ向かえば、林や下生えに潜むのは複数種のモンスター集団だ。晶は素早くユーベルコードを発動すると、石身加護による攻撃力強化のバフと、以前入手した『ネフィリムの手甲』の攻撃力で、容赦ない格闘攻撃を繰り出してゆく。
 巨大な拳がモンスターごと周囲の木々を薙ぎ倒し、木に化けたトレントたちをもかち割れば、ブロック型の木材がポロポロとドロップする。晶の強襲に殺気立つのはもちろん、とおせんぼのアオクマくんたちだ。

「くまっ!!」
 手甲の攻撃から逃れたアオクマくんは見た目に似合わぬ力で晶の腕を狙って抱き着くと、次々に重なり抱き着き晶の動きを封じてしまう。晶の体はそのまま石のように動けなくなり、アオクマくんの塊がドンドン積み重なっていくが──それこそ晶の狙い通りだ。

「自分から触れてくれるから話が早いね」
「く、くま…!?」
 アオクマくんを下敷きにするように倒れると、そのまま石の重量で押し潰し石化させてゆく。高密度の重量に削れゆくHPに焦ろうとも、触れたものを石化する祝福の力はアオクマくんの体を蝕んでいる。慌ててアルラウネたちの蔦が晶から引き剥がそうと絡みつこうとも、それもまた石化の餌食となるだけだ──。

「さてと」
 ひと通りのモンスターを一掃した晶は手を払ってドロップした素材を改める。アオクマくんの✕印の建築素材に、スタンダードな木材と装飾素材にも転用できそうな彫像めいた石材。アオクマくんの他には植物系のモンスターが多かったからか、苗や種のドロップも上々だ。晶は足早に『パンの国』が作業する仮拠点へ戻ると、周囲を見渡し手頃な空き地に目星をつける。

「ここの辺り、空いてる?何か植えるのに使ってもいいかな」
「おおっ、もちろん使ってくれ!畑にするなら俺が耕すぞ!」
「畑…かな?植えたいのはモンスターからドロップした苗と種なんだ。
 もし育てたら仲間になるのがいれば、拠点の防衛に良さそうだし」
「防衛かぁ。まだ仮だけど…この拠点を広めにぐるっと囲えるレイアウトにします?」
「うん、いいと思うよ。華やかにもなりそうだね」
「よし!なら急いで他のメンバーも呼んでこよう!」
 そうして人手が揃えば作業はあっという間に進んでいくもので。あっという間に仮拠点をぐるりと囲う畑と、拠点と畑を繋げる道が完成する。

 畑に花咲くのはまだ小さなアルラウネたちに、街路樹に混ざって枝葉を揺らす若木のトレントたち。芽吹いたばかりの友好的なモンスターたちは、開拓の始まりを祝うようにこの開拓地を彩っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『バグゲイザー』

POW   :    そして8ビットへ
戦場の【データ】属性を吸収して【ターン制コマンドバトル】状態に変えると共に、[データ]属性の【連続全体攻撃】を放ち視界内全てにダメージ。
SPD   :    8ビットの戦士たち
【メッセージウィンドウ】に映し出された【文字化け】を見た対象全てに【64ドット×64ドットの2Dの身体】を与え、行動を阻害する。
WIZ   :    8ビットの試練場
【戦場】に自身の血液を1〜100%捧げ、戦場を怪物蠢く【コマンド選択型のワイヤーフレーム】の迷宮に変える。迷宮難度は捧げた%に比例。

イラスト:良之助

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はベア・ボールダーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 自然豊かな渓谷の開拓地ヴァレフィルド──始まったばかりの開拓作業は、猟兵たちの後押しにより着実に歩を進めていた。

「やっぱりこういうゲームは人と遊ぶのが楽しいな!」
「モンスターに悩まされないだけでめっちゃ楽ですからね」
 猟兵たちの活躍によってモンスターという憂いが無くなれば、クラン『パンの国』の描いていた整地作業はサクサク進むもの。早めに整地が一段落した上に、モンスターを倒して猟兵たちが集めてくれた建築素材も、開拓の足掛かりには充分な量があるだろうか。

 ここからは、先に手を付けて作り上げた『アルラウネの畑』と『トレントの街路』だけでなく、豆腐建築のままの仮拠点や、作りかけの建物に柱だけの骨組みにも手が伸びよう。

「それじゃ皆!はりきって建築だ!」
「おー!」
 いよいよスローライフのような|開拓作業《クラフト》に没頭しよう!

 デロデロデロデロ〜。
 けれど、ゲームプレイヤーたちの浮かれた気持ちに待ったをかけるのは、|警告音《アラート》がノイズに混ざるどこかレトロなBGMだ。
 光を飲み込みそうなベンタブラックの雲が開拓地の空を覆えば、カラフルなシルエットが幾つにも別れて影を差す。

──縺輔○繧薙?√&縺帙s縺槭♂…。
 おどろおどろしいノイズを声に、姿を現したのはプレイヤーの遺伝子番号剥奪と大拠点建造の阻止を目論む『バグゲイザー』…レトロゲームのような戦法を強いてくる上に、枯れ枝のような触手で単純で強いチートな数値で殴ってくる、強力なバグプロコトルだ!
 バグゲイザーの目玉から怪しい魔力が放たれれば、開拓地のグラフィックは3Dから2Dへと変貌してゆく。

「おお、こういうのがレトロゲームか…!」
「え、いや…ゲーム変わってるんですけど…?あるけど、2Dクラフトも…」
「なんかのイベントフラグ踏んだんスかね」
「え〜目玉とか弱点ぽ〜い」
 物珍しい|演出《・・》だと『パンの国』の面々が呑気に見上げ眺めている中で、この開拓地で芽吹いたアルラウネやトレントたちは警戒をあらわに蔓や枝葉を逆立てる。
 バグゲイザーの標的は拠点建造するゲームプレイヤーと、開拓地に存在する建築物なのだ──猟兵たちは無力な『パンの国』のクランメンバーとこの地を、どうにか守り抜きバグゲイザーを撃退しなければならない!

 バグゲイザーは空に浮いているが、足止め用の建築素材である✕印のブロックを使えば、足止めができるだろう。そしてアルラウネやトレントたちは友好的なモンスターだ。指示があれば猟兵にも協力してくれるだろう。どう戦うのかは猟兵次第だ。

 開拓地ヴァレフィルドに──バグゲイザーの魔の手が襲いかかる!
木元・祭莉(サポート)
「よっし、おいらに任せといてー♪」

グラップラー×サウンドソルジャー、17歳の人狼少年です。
前衛肉弾派で、積極的に行動します。
まだまだ未熟なアホの子ですが、やる気だけは人一倍!

あまり悩まずさっと決断して、臨機応変に切り替えて、いつも楽しそうにテンション高く行動します。
本人マジメでも、結果コミカルになりがちです。

ユーベルコードは、地味に戦闘力底上げに使うことが多いです。
最後は、グラップルの正拳一撃で締めるのが理想形。

多少の怪我は耐性のおかげで気付かず、肉を切らせて骨を断つ、がモットー。
いつも笑顔で、後先考えず。でもちょっとビビリ。

あとはおまかせで。よろしくおねがいします!



「よっし、おいらに任せといてー♪」
 3Dから2Dレトロゲームに変貌する光景にも木元・祭莉はなんのその。明確な狙いがあると言うならば、悪さをする前に倒すまで。どんな状況にだって、持ち前の元気の良さで悩むよりも即決即断!
 バグゲイザーを銀の瞳で見上げるや否や祭莉はダッシュで突入する。無手にも見えるその拳に握り込むのは琥珀製のナックルリング。

「先手必勝ー♪」
 ハイテンションで楽しげに初撃を当てれば、勢い付いた拳の衝撃にバグゲイザーは僅かにその体をグラリと揺らがせるも──次の瞬間、魔力を秘めた目玉が怪しく輝く。

 ──縺昴@縺ヲ8繝薙ャ繝医∈…。
 ドット調のエフェクトが渦を巻き、周囲のデータを吸収すると、戦場は8ビットでレトロな2Dコマンドバトルへと変化してゆく!

「あっヤバイかも!みんな隠れてー!」
 祭莉が大慌てで『パンの国』のゲームプレイヤーたちに大声で呼びかけ、再びボスへと攻撃を食らわせれば間一髪。トレントの木の影や建造物の影に隠れてプレイヤーたちはバグゲイザーの視界から逃れるも、バグゲイザーと対峙していた祭莉は不自然に動きを止めた。そのユーベルコードはターン制コマンドバトルの|状態《ルール》を強いるもの──今はバグゲイザーのターンだ!
 枯れ枝のような触手で視界内全てにデータ属性の連続全体攻撃を放てば、無防備な祭莉の体にチート級の数値による攻撃が襲いかかる!
 鋭い連打に祭莉は傷を負うも、その身に宿す耐性があればチート級の攻撃力であろうとも、たった一ターンで挫かれる事はない。

「くうーっやったなー!次はおいらの番だよっ!」
 そして逆境もまた力。祭莉はテンションのギアをあげると腰に巻いた天地の綾帯を握って発動準備。風輪の疾走──全身を燃え上がる白炎で覆えば、そのテンションに比例する戦闘力増強の|強化《バフ》を得る。
 ターンは切り替わり、容赦のない連続攻撃が再び祭莉の無防備な体に襲いかかるが、ハイテンションに増強された戦闘力の前では掠り傷しか与えぬものだ。

「思いっきりいっくよー♪」
 ターンは再び祭莉の元へ。選ぶコマンドは正拳一撃!
 目にも止まらぬ飛翔で突き出す拳は目玉に直撃し、チート級のクリティカルダメージを叩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

神臣・薙人
葛城さん(f35294)と

これは何、なのでしょう…?
ゲームでは割とよくある感じなのですね
確かに虫やウイルスっぽいです

戸惑っている場合ではありませんね
皆さんをお護りしないと

葛城さんから奏甲を受けた後
近くにある✕印のブロックを投げて
可能な限り足止めします
敵が動けないでいる間に
パンの国の方々を巻き込まない位置まで移動
アルラウネさん達には
皆さんを護って下さるようお願い

接近後
白燐追駆咬傷使用
周囲が迷宮化した時に備え視覚を共有
その後は白燐蟲に敵を咬み付かせ移動を阻害

UC使用後は白燐蟲を呼び出し攻撃
周囲が迷宮化した際は
視覚共有を利用して可能な限り早く脱出

パンの国の皆さんも
この開拓地も
絶対に壊させませんからね


葛城・時人
ダチの神臣(f35429)と

俺はゲーム好きで割と良く見た事ある系だけど
神臣は戸惑ってる感じだね

「元々バグってこういう見た目になるの多い感じだよ」
相当昔からのお約束的なね
「多分虫とかウイルスからの想起だと思う」
これは目以外は割とコミカルだけど侮りは禁物

生産職はほぼ一般人
これに限らずやられたらひとたまりもない
「よし!粉砕だ!」

神臣にまず白燐奏甲
高速・多重詠唱で自分にも

視覚阻害を得て攻撃力も上がる
神臣があの人達を護ってくれてる分迷宮化しても安心
俺は只管大鎌でぶった切ってくよ

命あるものに準えて出現し技を使ってる以上
使える血液には限りがある
「無限じゃないなら俺達に敗北はないよ!」
ただ全力で破砕して完勝を



「これは何、なのでしょう…?」
 バグプロコトル『バグゲイザー』が齎すその|侵食《バグ》に──神臣・薙人が露わにするのは、ゲームプレイヤーたちよりも顕著な驚きと動揺の戸惑いだ。
 異世界の猟兵から見れば『現実の景色』がみるみるうちに|平面《2D》化する様子は衝撃的に映るし、バグゲイザーのこの一つ目の球体に触手が生えた見た目だって見慣れないもの。けれど一方で、これらはゲームに趣向を置いて見れば案外ポピュラーなものでもあった。

「元々バグってこういう見た目になるの多い感じだよ」
 戸惑う薙人とは対照的に、割とゲームプレイ経験のある葛城・時人はケロリとした様子を見せる。
 視点が変わったりシステムが変わったり、色んな要素を取り入れる事はゲームにあるものだ。バグもまた継続的にアプデできる今では致命的なものは珍しくなりつつも、ゲームが好きならブラックアウトも絵がブレるノイズも謎のカラーエフェクトだって一度は見覚えもあるだろう。その上バグゲイザーの見た目もいっそ親しみがあるデザイン、となれば──時人にとっては『お約束』のようなコミカルさを感じるのだった。

「そ、そうなんですか…ゲームでは割とよくある感じなのですね」
「うん。あの見た目も多分虫とかウイルスからの想起だと思う」
「確かに虫やウイルスっぽいです…」
 時人の言葉に薙人はバグゲイザーのその姿をもう一度見上げ、戸惑いを飲み込むように頷いた。
 実のところは大人の事情で開発中止となったデータだなんだと噂される見た目だけあって、明確な|元ネタ《モチーフ》が見えるのだが──そこまで明らかにする必要はないだろう。
 あれこれツッコミ所が満載なボスでも、侮りは禁物だと二人は改めて気持ちを引き締める。この地に迫る脅威から護る為に、立ち止まっているつもりはない。

「ククルカン、俺達に力を!」
 時人が白燐蟲を呼び寄せれば、クルルカンはとぐろを巻いて二人に|強化《バフ》を与えてくれる。

「パンの国の皆さんには近付かせません」
 さらに薙人はバツ印のブロックを投げてバグゲイザーの移動を制限する。あとはこのままプレイヤーに近付かせる事なく叩くだけ──だがその時、バグゲイザーもまた力を解放しバグを広げてゆく!

──8繝薙ャ繝医?菫ョ邱エ蝣エ…。
 目玉からドロリと血液が流れ落ちれば、HPの半分近くも消費してワイヤーフレームの迷宮が周囲を取り込む。
 そこかしこから蠢き湧き出す怪物は、吸血鬼に狼男、魔女やフランケンシュタイン。パンの国のゲームプレイヤーは生産職ばかりのほぼ一般人、これらの怪物にもやられれば一溜まりもないだろう。
 ならば二人のすべき事は決まっている。目の前から躍り出た怪物たちに、ククルカンの光の乱舞が目を眩ませ強襲を阻止すると、時人は大鎌を振り薙ぎ怪物を一掃する。

「それじゃ、そっちは任せるよ神臣!」
「はい。パンの国の皆さんも、この開拓地も、絶対に壊させません」
 時人はボスの待ち受ける迷宮の最奥へ。薙人は迷宮にプレイヤーの救助へ。信頼を置く友がいるからこそ二人の動きに迷いはない。

「行って下さい、残花」
 薙人は残花を呼び寄せて、白燐追駆咬傷で五感を共有しながら迷宮を進みゆく。先行してくれる残花がいち早く怪物の動きを察知し捕縛してくれるお陰で、難易度にも関わらず駆け抜けられる。ようやく見えた皆の姿、その目前に怪物が迫る──けれど残花の白燐咬傷は何よりも早く怪物を捕縛する。

「皆さん、ご無事ですか!」
「な、なんとか…!」
 最速で駆けつけた薙人と残花。そしてアルラウネとトレントたちが時間稼ぎをしていたお陰で、迷宮に放り込まれたパンの国のメンバーはまだ誰一人として欠けてはいない。一難が過ぎ去ってもまだまだ気を緩めることはできない。薙人は彼らと共に再び迷宮を走り出す。
 残花の先導で最短の道を選び進みながら、避けられない戦闘も仲間モンスターたちとの連携コマンドで難なく切り抜けていけば、迷宮の出口はもうすぐそこに──。

「や、やった!出口だ!」
 安堵に気持ちを緩めるプレイヤーたちの姿に、薙人もようやく胸を撫で下ろす。あとは迷宮から出てくる怪物が気になるものだが…薙人はここまで共に駆け抜けた仲間たちを振り返る。避けきれなかった経験は生まれたばかりの彼らをすっかり|成長《レベルアップ》させていた。

「アルラウネさん、トレントさん。皆さんを護って下さいね」
 頼もしい仲間たちは返事かわりに勇ましく草木を揺らす。薙人は頬を綻ばせ、再び迷宮へ踏み込んでいった。


「よし!粉砕だ!」
 湧いては蠢く怪物たちに時人はひたすらに大鎌を振るってゆく。ブロックの足止めでバグゲイザーは動けず、多様な怪物たちは常に同じ方向から出現している。ならば敵が出現する先こそボスの居場所だ。
 薙人がプレイヤーたちを護ってくれている今、その安心は時人の力となる。時人とククルカンは視覚阻害でどんな不意打ちも回避して、怪物に|遭遇《エンカウント》する端から上昇した攻撃力で難なく倒して迷宮を駆ける。

 ──縺吶∋縺ヲ繧貞」翫@縺ヲ繧?k…。
 程なく辿り着いた行き止まりに、響き渡るのはノイズまみれのボイステキスト。おどろおどろしいBGMと共にバグゲイザーの姿が迷宮の中から出現すると、いよいよボスとの戦闘開始だ。
 時人に向かって枯れ木の触手が大きくしなるも、そのチート級の数値による攻撃もククルカンの装甲を破り切るには至れない。すかさず光の乱舞で目を眩ませ、怯んだ隙に大鎌の一撃を食らわせれば膨大なHPも着実に削り取っていける。
 バグゲイザーのHP表示がいよいよ半分を下回り、時人がその手に実感するのは確かな手応え。けれど次の瞬間、流れる血液から溢れ出る怪物の群れが時人を取り囲む。
 大鎌の一閃で薙ぎ払っても再び出現する怪物たちのせいで、大鎌の攻撃はバグゲイザーに届かない。ボスのHP減少による行動の変化もまた『お約束』として馴染みがあるものだ。だが血液を消費して命あるものに準えて出現し技を使ってる以上、使える上限には限りがある筈だ。

「無限じゃないなら『俺達』に敗北はないよ!」
 猟兵たちはたった一人ではなく──そして時人は今この時、友と共にバグゲイザーに挑んでいるのだから。

 果敢に攻め続ける時人の頬のすぐ側を、何かが目にも止まらぬ速度で飛翔した。バグゲイザーの黒い体に噛み付いたその白は、ころりと丸い白燐蟲──残花の姿。
 見慣れた白燐蟲の姿にも、背後から駆け付ける足音にも時人は驚く事はない。ただ僅かに緩んだ口角を引き締めて怪物たちを一閃で薙ぎ払い、捕縛され行動を阻害されたバグゲイザーへ大鎌を振り上げる。

「ただ全力で──ぶった切る!」
 目玉に喰らわせ派手に弾けるエフェクトはクリティカルダメージの証。どんな敵にも猟兵たちの心は砕けない──バグプロコトルの企みを破砕して完勝を!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カトリーヌ・クレマン
ターン制コマンドバトルになってもやり方が少し変わるだけで攻撃はできるしダメージも通るはず。
幸い、今回は一緒に戦ってる人も多いし、彼らが全力を出せるように援護するわ。
最大の脅威は全体連続攻撃だからウォー・アイ・満漢全席で負傷者の回復に回るわ。
通常のリアルタイムバトルなら戦闘中に料理を食べるのは難しいけど、コマンドバトルなら食事の時間を取るのも簡単だから。
わたしたちはこの世界で産まれた身、この世界の事は他の誰よりも詳しいのよ。
コマンドバトルにした事を後悔させてあげる。



 ワイヤーフレームの迷宮は崩れ落ちて、バグゲイザーの姿にノイズが走る。ずるりと持ち上がる体には負傷が見て取れる。猟兵たちが稼いだダメージによって、表示されているHPはもう三割を残すばかりといったところだろうか。
 終盤に近付くボス戦に、カトリーヌ・クレマンは急いで手持ちの食材を広げてウォー・アイ・満漢全席!10秒で153品もの料理を作ってしまう。
 いつもと違うやり方を求められるこの戦場ならば──カトリーヌの役割は、皆が全力を出せるように援護することだ。

 ──縺昴@縺ヲ8繝薙ャ繝医∈…。
 一方で追い詰められたバグゲイザーは再び大技に打って出る。目玉が怪しく輝けばドット調のエフェクトが渦を巻き、周囲のデータを吸収しターン制コマンドバトルへと変化する!

「ヤバッみんな隠れて!」
 生産職ばかりの『パンの国』のメンバーとてゲームプレイヤー。一度見たボスの行動をただ無防備に受けることはない。トレミーの呼びかけもあり大慌てで攻撃に備えた途端、バグゲイザーは枯れ枝のような触手で視界内全てにデータ属性の連続全体攻撃を放っていく。
 殆どのプレイヤーは隠れて連続攻撃を回避するも、うっかり防御を選んでしまったり、運悪く攻撃をかすってしまったプレイヤーにはどうしても負傷者が出てしまう。

「う、うわあ…!HPがもう…」
 たった一ターンで瀕死に陥ったHPにプレイヤーは青褪めるが──今こそカトリーヌの出番だ。

「大丈夫よ。このターンにこれを食べて」
「え、今?アッチチ…もぐもぐ…美味…」
 ボスを目の前にしている今、食事なんて隙だらけの行動はもってのほか!…なのは、いつもの話だ。
 カトリーヌが負傷者に料理を配る時間とホカホカの料理を食べる時間は、バグゲイザーのターンでもプレイヤーのターンでもなく、カトリーヌのターン中。リアルタイムバトルなら戦闘中の食事は|時間《CT》がかかり隙だらけになるものでも、ターン制ならば|行動《ターン》が切り替わるまで攻撃を受けることはなく、回復したプレイヤーたちは改めて自分のターンを消費して安全に回避ができる。一見不自由を強いられる状況でも理解していれば有利に立ち回れるのだ。

「安心して。|誰も《・・》倒させないから」
 そしてカトリーヌにとってこのターン制のメリットはプレイヤーに対してだけではない。迷宮での戦闘でレベルアップしたお陰で、連続攻撃にも倒される事のなかったアルラウネやトレントたちも戦力となってくれるのだから。
 一見人間の料理など食べられなさそうな植物系モンスターのアルラウネやトレントたちの負傷であっても、コマンドバトルのルールならば「料理を食べたことになって」一発回復だ。

「わたしたちはこの世界で産まれた身、この世界の事は他の誰よりも詳しいのよ」
 頼もしい仲間モンスターたちと並び立ち、カトリーヌは誇らしげに微笑みありったけの料理を抱える。援護にターンを費やせばカトリーヌの手で攻撃は通せないけれど──チームメンバーに攻撃の手があり、その手が足りるなら。ヒーラーやサポーターの貢献度は計り知れないものとなるのがゲームなのだ。

「コマンドバトルにした事を後悔させてあげる」
 ノイズまみれの文字化けボイスは何も答えず、通しきれない攻撃で無為にターンを消費して、膨大なHPを着実に削られてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
グラフィックを変えるとか厄介な敵だね
友好的なモンスター達は他のプレイヤー達の護衛に回って貰おう

メッセージウィンドウを見ないように
造像石霧で視界を覆って接近しよう
周りのプレイヤーやモンスター達がみるのも防げるしね

周りが見てないならアイギスの装備セットを使えるかな
これ、何度見ても酷い肌面積なんだよね
ゲーム的な数値は強いんだけど
装備に加えて神気の防御と硬化させた石の体で防御するよ
接近したら格闘で攻撃

文字化けを見て2Dの石像の姿にされたら
邪神の扶翼で動きを停めて造像石霧で石化させよう
うまく動けなくなっても範囲攻撃なら
相手を攻撃ができるからね
それはそれとしてデフォルメされたせいで
装備が誇張されてるような



「護衛は任せて動こうか」
 バグゲイザーのHPももうあとひと息。ボスの攻撃は苛烈を極めようとも、友好的なモンスターたちはすっかり頼もしくなっている。ならば佐伯・晶はプレイヤーたちの護衛はモンスターたちに任せて、残りのHPを削り落とすまでだ。
 晶は邪神の扶翼を広げると、さらに造像石霧の視界を遮る石化の霧を自身の周囲へと展開する。

──8繝薙ャ繝医?謌ヲ螢ォ縺溘■…。
 そして追い詰められたバグゲイザーもまた、その身に宿すバグを解放する。それはメッセージウィンドウに映し出された文字化けを見た対象全てに64ドット×64ドットの2Dの身体を与え、行動を阻害する|力《バグ》だ。

「させないよ」
 だがメッセージウィンドウの『枠』が出現したその瞬間、晶はウィンドウへ万物に停滞を齎す神気を解き放ち、テキスト表示を著しく遅らせる。視界を遮る石化の霧を広げたまま接近すれば、晶だけではなく他のプレイヤーやモンスターが文字化けを目にすることも防いでくれる。

「周りが見えてない今なら…アイギスの装備セットを使えるかな」
 さらに晶が着用するのは『アイギス』の名を関する防具セット…何度見てもウンザリする程酷い肌面積のビキニアーマーだ。覆い隠す部分が少ない割に防御性能の数値はカッチカチ!
 バグゲイザーへ接近する晶に向かって、枯れ枝のような触手が唸りをあげるも──神気の防御、硬化させた石の体、アイギスの装備によって、飛躍的に向上した晶の高防御力はいかなバグプロコトルとて簡単には砕けない。チート級の攻撃数値にも被ダメージはわずかに一桁。苛烈な攻撃にHPを削られる事もなく難なく格闘攻撃を繰り出せば、巨大な手甲はごっそりとHPを削るダメージを与えてゆく。
 しかし接近すればその分テキストの読み込みは早くなる。枯れ木の触手の連撃の勢いで払い除けられた霧から、ウィンドウに表示される文字化けを僅かに目視してしまえば、晶の見た目は一瞬で2Dの石像へと変貌した。描画数が少なくなれば動きは硬くなり、表示サイズが小さくなって当たり判定もズレるもの。しなやかな動きを失った格闘攻撃は次々に空振りDPSは急落。しかも晶を襲うのは何も行動の阻害というデバフだけではない。

「デフォルメされたせいで、装備が誇張されてるような…」
 そう…どうしたって64×64の表示では──ビキニアーマーの描画は省略に省略を重ねて酷いドット数になってしまうのだから!
 SDで2Dな石像の攻撃が届かぬその間にバグゲイザーはゆるやかな動きで移動を目論む。バグプロコトルの標的はゲームプレイヤーとこの開拓地…だが晶はむざむざ先に進ませはしないし、バグゲイザーとてもはや進むことすら適わないだろう。晶は再び邪神の扶翼を広げ神気を放ち、バグゲイザーに停滞を齎し動きを停めて時間を稼ぐ。周囲を取り巻く造像石霧の霧は範囲内へ徐々に石化を与える霧──攻撃が当たらなくても、石化は今もバグゲイザーを蝕んでいるのだから。
 程なくバグゲイザーの動きは機敏さを失って、ベンタブラックの体は石の灰色に覆われる。石化に覆われきれぬ目玉が苦し気に瞬き、灰色の体が地に落ちた。

「これで終わりだよ」
 目玉を穿く晶の拳がクリティカルダメージを叩き出せば、いくつもの虹色のシルエットがブレ重なって、バグゲイザーの姿が白く塗りつぶされる──1ドットも残さずに削り落ちたHPは砕け散り、最後に表示されたのはオーバーキルのテキストだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『渓谷エリアの大冒険!』

POW   :    大自然に己の力で挑む!

SPD   :    釣りや山菜採りで食糧ゲット!

WIZ   :    トレッキンググッズで対策は万全!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──縺翫?繧檎検蜈オ縺ゥ繧ゅa…。
 おどろおどろしいノイズの声は悔しげな色を響かせて、バグゲイザーの姿は沈むように跡形もなく消えていく。
 ベンタブラックの雲が霞のように消えてゆけば開拓地の空は晴れ渡り、周囲を侵食していたバグも綺麗さっぱり消えてゆく。2Dグラフィックは元の美麗3Dグラフィックへ!
 バグプロコトルは無事に撃破された!
 周囲を見渡す猟兵たちの目に入るのは、誰一人として欠けることのなかった『パンの国』のクランメンバーに──なんの変わりもない仮拠点の景色だ。

「おっみんな揃ってる?死亡なし?」
「損害ナシ!ぜーんぶそのまま、拠点も豆腐のままッスよ」
「こういうゲリライベントってちょっとビックリするんですよね…何もなくて良かった〜」
「これも皆のお陰だな!本当に助かったよ、ありがとう!」
 元の景色へ戻ったゲームプレイヤーたちは口々に安堵を吐き出して、猟兵たちへ笑顔で感謝を告げる。何一つ欠けることなく乗り切れた幸運を喜びながら、しかしこの開拓地での本番はここからだ!

「それじゃ皆!今度こそ、はりきって建築だ!」
「おー!」
 パンの国のメンバーは意気込みを改め笑顔で拳を振り上げて、それぞれの|開拓作業《クラフト》に向かっていく。大きな街を、建築物を作るならば素材はなんでも、そしていくらでも欲しいもの。けれどこれまでのバグプロコトルとの戦闘によって、いつの間にか集まった素材も豊富にあるだろう。
 猟兵たちはすっかり安全になったこの開拓地で、手持ちの素材を渡して何かクラフトの手伝いをするも、整地した一画で何か独自にクラフトしてみるのも良いだろう。或いはさらなる素材を求めて渓谷の大冒険に挑むのも、はたまた一休みがてらこの自然豊かな渓谷でアウトドアなレジャーを過ごす事も自由だ。
神臣・薙人
葛城さん(f35294)と

パンの国の皆さんも
拠点も無事で良かったです
はい
後はお手伝いですね

まずは素材を吟味
この石のブロックは土台に使えそうですし
こちらの木の素材は柱に使えそうです
葛城さんはどんなものが見付かりましたか?
種を植えるのは良いですね
ゲーム中の素材には詳しくないので
鑑定して頂きましょう

鑑定中に素材を
パンの国の皆さんの所へ持って行きます
お疲れ様です
私達にもお手伝いさせて下さい

クラフトというのは初めてなので
教えて頂きつつ作業を
こっちをこうして
これはしっかり杭打ちを…
ふふ
ありがとうございます
葛城さんが持っていて下さる間に
結わえて行きますね

最後は花壇のお手伝いをします
また様子を見に来たいですね


葛城・時人
ダチの神臣(f35429)と

駆逐できてよかったよ
「これで安全になったね」
じゃあお手伝いやろっか

ホント素材色々落ちて嬉しいな
普通は倒したら敵と一緒に全消えだけど
此処はゲームの理が生きてるからこうなんだね

俺のもほぼ神臣と同様だけど
幾つか種あったから
「鑑定で大丈夫なら植えよかなって」
敵ドロ強いの出る事多いしだ
普通なら樹木医の神臣の判断で良いけど
此処は異世界だしね

鑑定待つ間に神臣の作業をお手伝い
神臣は器用だけど重いのとか引き受けたら楽だからさ
「こっち持ってるから大丈夫。結わえてだよー」

種が大丈夫なら端に花壇作って植えるね
そういうのは慣れてるんだ
「よしOK!」
いつかまた此処来てどうなったか見たいかもだね



「パンの国の皆さんも、拠点も無事で良かったです」
「これで安全になったね。駆逐できてよかったよ」
 誰も欠けることなくバグプロコトルを一掃し、元の平和な姿を取り戻した開拓地と和やかなパンの国のメンバーの姿に、神臣・薙人と葛城・時人はホッと胸を撫で下ろす。
 猟兵にとっては一般人の安全を守るのが一番の役目であれど、彼らにとってはここからの開拓作業こそが本番だ。

「それでは、後はお手伝いですね」
「だね。お手伝いやろっか!」
 二人は顔を見合わせて笑顔をみせると、開拓作業を手伝う為にまずは二人で素材を吟味する。大自然の中、追加で採取してみるのは何かと使い道が多く足りなくなりがちな素材であろう、石や木のブロック型の汎用素材。石は土台に、木は柱になるだろうか。
 ついでに二人でその辺りのモンスターも倒していけば、先程のまでの戦闘と合わせてドロップ素材はあれこれ雑多。ゲームに詳しくない薙人がこれらの使い道に首を傾げる隣で、時人はこの雑多な『ゲームらしさ』を楽しみながら素材を改めていく。

「ホント素材色々落ちて嬉しいな」
 消えずに残るドロップ素材という戦果は、ここがゲームの理の中にある事が見て取れるもの。一見使い道がなさそうなものも余さず集めれば、どこかで加工して使えることもあるだろうか。そんなことを考えながら素材を集めるのもゲームの楽しさだ。

「葛城さんはどんなものが見付かりましたか?」
「うん。幾つか種があったよ」
「見た目は…この種は全部一緒に見えますね…?」
「此処はゲームの異世界だしね。鑑定で大丈夫なら植えよかなって」
「種を植えるのは良いですね。あちらで鑑定して頂きましょう」
 何かわからないまま植えれば、また植物系モンスターが育ってくれる事もあるだろうけれど──せっかく安全になったのだ。せっかくなら綺麗な花壇を作ってみたいと、一区切りをつけて皆の元へ。種の鑑定を頼んでいる合間に次は二人でクラフトのお手伝いだ。

「お疲れ様です。私達にもお手伝いさせて下さい」
「なんでも手伝うよ。この素材も使ってほしいな」
「おっ助かるよ。そんじゃ建築の手伝いをお願いしようかな。
 皆あれこれ集めてくれたし、この辺りに倉庫を作りたいんだ」
 石材のブロックを床材として並べて、木材のブロックを積み重ねて柱を作って骨組み作り。開拓地という特殊なクラフトエリアだからこそ積み木を積み上げるようにカジュアルな作業は、教えてもらいたての薙人でもさほどの難はなく。そしてゲーム経験が豊富にある時人は、手慣れた様子で効率的にクラフト。手分けして作業を進めればあっという間に三角屋根の外装ができあがりだ。

「おーい、種の鑑定終わったよー。ヒマワリとかチューリップとかグラジオラスとか、メジャーどころの種だったよ」
「ありがとう。さっそく花壇作って植えるね」
「ありがとうございます。今の時期なら…植える花に悩みますね」
 ちょうど種の鑑定も終わったと駆け寄ってくれる相手から種を受け取って、薙人は少し頭を悩ませる。今の時期に植えるなら秋蒔きの一年草か多年草などが良い…というのは、あくまでもゲームの外での話だ。

「えー?ゲームだからいつ何植えても全部咲くよ?」
「そうなのですか…?」
「ゲームだもんね。神臣、せっかくだから全部植えてみようよ」
 樹木医としての知識があるからこそ戸惑いに目を瞬かせる薙人を、時人は笑顔で引っ張ってゆく。
 そうして次は倉庫の周りを彩るように花壇作り。やっぱりここでも開拓地らしくリアル重視な工程は不要だが、薙人の主導でどんどん勧めていく。

「こっちをこうして…これはしっかり杭打ちを…」
「重いのとかは引き受けるよ」
 力仕事めいたものは時人が、細かな部分は器用な薙人が。土をならして耕して季節で区切って、木のブロックで加工してもらった杭を、まるで打ち込むように置いてゆく。

「こっち持ってるから大丈夫。結わえてだよー」
「ふふ。ありがとうございます」
「…よしOK!」
 紐を結って飾り、最後に種を撒いたら倉庫の周囲を囲う花壇の完成だ。

「いつかまた此処に来て、どうなったか見たいかもだね」
「はい。また様子を見に来たいですね」
 ゲームの世界だからこそピョコンとさっそく芽を出す緑を眺めて、二人は微笑みを浮かべる。種を撒いたとたん姿を見せるくらいに気が早いのだから、そう長くを待たずに花を咲かせて彩ってくれるだろう。
 季節を問わず種々様々の花を咲かせる花壇は、きっと──こうしたゲームの中でしか見られない楽しげな光景なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
クラフト系技能はほぼ無いから素材集めを手伝うよ
最初の探索時に石化したアルラウネ達にUCを使用
リビングスタチューにして連れて行くよ
いずれは街の装飾と防衛要員を兼ねて貰おう

近くならパンの国のメンバーでも集めれそうだから
少し離れた森で木材を集めよう
アルラウネやドライアードみたいな人型モンスターがいたら
造像石霧で石化したりリビングスタチューに石化で倒させたりして
リビングスタチューの数を増やしておくよ

木製素材がある程度集まったら
一部を松明にして拠点の一角を掘り始めよう
石材や鉱石は沢山必要になるだろうし
地下に空間を作れば避難場所になるしね

もしできるなら
鶴嘴やスコップのクラフトは
お願いできるとありがたいかな



 バグプロコトルの脅威は去り、開拓地はすっかり平和になった。あとはクラフトに没頭するだけだとなれば、佐伯・晶のやるべき事は決まろうもの。

「クラフト系技能はほぼ無いから素材集めを手伝うよ」
「おおっありがとう!素材はいくらでも助かるぞ!!
 何か必要な道具はあるか?俺に作れるものなら何でも作ろう!」
「それなら道具…ツルハシとか斧とか、スコップを作って貰っていいかな。やっぱりあると効率が違うだろうし」
「なるほど確かに必要だな!任せてくれ!後でストックも大量に作っておこう!!」
 GGOは自由度の高いゲームだからこそ、やはり己の技能を見極め適材適所で動き、時に手を貸してもらう事も必要不可欠。パーンが大急ぎで揃えてくれた道具一式をありがたく受け取れば、晶は次に拠点の隅っこへと向かう。
 拠点の隅っこに並ぶのは──最初の探索で晶が石化し、撃退したアルラウネたちの彫像だ。すぐさま邪神の軍勢で呼び起こせば、自動で動いてくれるリビングスタチューへと変化する。今回は同行して手伝ってもらいつつ、いずれは街の装飾と防衛要員を兼ねて活動してもらうことになるだろう。…見た目が若干ホラーなのだけが欠点だ。

 準備が整えば晶は少し離れた森の中へ向かい、さっそく木材集め。近場は『パンの国』のメンバーも素材集めに開拓にと踏破していたからこそ、少し離れるだけで密集する木々の密度も違うもの。しかし今晶の手には、斧があるのだ。道具で効率を格段にアップさせて、斧でコンコン軽快な音を鳴らしながらどんどん木材を回収してゆく。

 そして拠点から離れた分、モンスターも湧いてくるものだが──今の晶にとっては、今後の開拓地への備えを分厚くできる好都合な存在だ。
 森を荒らされ怒り狂ったアルラウネやドライアードが出現するも、晶やリビングスタチューの手にかかればあっという間に石化して、それらも新たなリビングスタチューとして生まれ変わらせてゆく。
 そうしてすっかり増えたリビングスタチューの一群に、木材集めも木製素材も充分になれば素材集めは次の段階へグレードアップ。

 今度は拠点にトンボ返り。かまどを借りて集めた木々の一部を燃やして木炭に、木の棒と合わせて松明に。ひとまず一スタック分を準備したら、パーンが作ってくれた道具も抱えて拠点の一角へ。
 そうして中心地から程々の空き地へ辿り着いた晶は、さっそくスコップとツルハシで地面を掘りまくる!

 ある程度の広さに入り口部分を作ったら、慌てずに通れる広さに通路を斜め下へと掘り進め、狙いの深さで再び空間を広げてから、再び地下へ向かう通路を掘り進める。二部屋作って一スタック用意した松明の在庫は切れるが、後は壁を掘り進めてゆけば効率的な採掘場になってくれるだろう。

 地上に戻った晶は最後に必要なクラフトを頼んでから、いよいよ仕上げに取り掛かる。それっぽい入り口を木材ブロックで組み立てて、ガタガタの通路に階段を設置し、地下空間にはチェストを設置しツルハシやスコップのストックも置いておく。
 最後に松明の置き忘れがないかを確認し、リビングスタチューの護衛も配備すれば、ようやく──緊急時には避難場所にもなる鉱山の完成だ!
 何を作っていくにせよ、クラフトに石材や鉱石は必要不可欠。できたてホヤホヤのこの鉱山は、この開拓地でのクラフトに貢献してくれるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年09月11日


挿絵イラスト