城郭都市に夜明けの導きを
「ハッハハハッ、この程度で儂に逆らうとはなぁ!とんだドブネズミ共が潜んでいたものだ!」
無駄に肥えた体を大きく揺らし、歪んだ嘲りを浮かべているのは横暴な男NPC──この城郭都市の領主ドルン。
「力も技量も知恵もまるで足りん!
哀れだなぁエイル、こんなものがお前が見つけた『英雄』とはなぁ?」
モンスターの群れに、騎士のNPC。領主が率いるのは膨大な数の暴力だが、それだけならば『黎明の刃』というクランにとって脅威という程のものではない。だが──。
「くそぉ…!バグってなけりゃこんなクエスト…!」
倒れ伏すプレイヤーたちは悔しげに言葉を吐き出した。
壁から飛び出す弓矢や投げ槍、狭い通路で揺れる振り子や落とし穴、移動を強制するワープやパーティーを分断するトラップの数々…どれもありふれた罠だが、それらは直前までプレイヤーにはまるで感知できない上に、即死級の火力を持つという致命的にバグった挙動になっていた。
どれほどの精鋭であっても、回避できない即死級の罠の前ではプレイヤーHPは削られてしまえば──後は、|遺伝子番号《ジーンアカウント》を失うだけだった。
「そんな…こんな筈では…」
そうして最後にはたったひとり。残された女騎士のNPCはその表情を絶望に染め、為す術なくその場に崩れ落ちていた──。
●
「今回、皆に向かってもらいたいのはGGOだよ!
クランクエストに忍び込んでいるバグプロコトルの討伐をお願いしたいんだ!」
集まった猟兵たちへ、さっそく予知を広げるのは布都御魂・アヤメだ。
「あ、クランクエストっていうのは、プレイヤー同士が結成したクランで挑む事になる専用のクエストなんだって!
ひとりだけのクランでも参加はできるんだけど、ソロ用とは違う難易度っていうか…ソロにはちょっと大変だったり、規模が大きなものになったりするんだよね」
皆には難易度はあんまり関係ないないけどね、とアヤメは笑って言い添える。
猟兵たちにとっては難易度のグラデーションなど些末なものでも──クエスト参加条件は『クラン』に加入していることとなる。
猟兵たちがこのクランクエストに参加するには、既存のクランに参加するか、即席でクランを結成して参加するか、どちらかになるだろう。もちろん、クランの結成と解散はいつでも自由にできる。クエスト完了後に解散或いは脱退するのも自由だ。
アヤメは猟兵たちを見渡して、改めて問題のクランクエストの内容を広げ始める。
「それでね、問題の場所は、横暴な領主による苛政で苦しむ城郭都市だよ!
レジスタンスを率いる女騎士と協力して、領主を打倒して街を救済するってストーリーで、進捗はもう最終クエストの直前なんだ。
城郭都市の閉鎖された正門から突入する陽動と、地下水路から侵入する本命に別れて領主を倒すって流れなんだけど…本命が進むこの地下水路が『バグり倒した危険なダンジョン』になっちゃうんだ!
地下水路を進む『黎明の刃』は武闘派のクランで、実力もある精鋭プレイヤーたちだけど…バグダンジョンの理不尽な即死バグやバグプロコトルが相手じゃ、勝てっこないよ!」
このままでは、プレイヤーたちが苦労して進めてきたクエストが水泡に帰すだけではなく、プレイヤーの|遺伝子番号《ジーンアカウント》も危険に晒されてしまうだろう。
「それにプレイヤーだけじゃないよね。GGOのノンプレイヤーキャラクターだって皆生きてる。城郭都市のNPCも領主のせいで苦しんでるなんて…領主もしっかり懲らしめてやらなくちゃ!
プレイヤーの遺伝子番号も守って、少しでも早くクエストを成功させてあげるのが一番だよね!」
バグプロコトルの策略により、プレイヤーの動きは既に領主へ筒抜けとなっている。傲慢な領主は自らダンジョン内へ足を運び、膨大な数の暴力を率いて侵入者を直々に『見物』しに来るだろう──だがそれも、そのまま絶好のチャンスとなろう。
猟兵たちの力を見せ付けることによって領主の心を挫けば、領主は逃走しバグプロコトルの元へと案内してくれるだろう。
「危険なバグダンジョンと悪い領主を乗り越えて、バグプロコトルを倒す!
プレイヤーさんたちも居るけど、皆なら大丈夫だよ!」
アヤメは笑顔を浮かべると握りこぶしを突き出した。猟兵たちは拳を合わせて、グリモアの輝きの中へと飛び込んでゆく。
●
月夜の下で、明るい焚火が音を立てて弾けている。
規則的に火花を散らす明かりを笑顔で囲むのは、共にこのクエストを進めてきた同志たちだ。
談笑の中心にいる男は、ふいに目の前に佇む堅牢な城郭を見上げ、噛みしめるように言葉を吐き出した。
「いよいよ最後のクエストだな」
プレイヤーの出入りすら封鎖されたこの城郭都市。街への侵入から始まり、隠されたフラグを紐解いて|協力者《NPC》と巡り合い。これまで進めてきたクエストは、いよいよクライマックスを迎える。
「絶対成功させないとな」
「ああ!バカ領主をやっつけて、エイルや街の皆に笑顔を取り戻してやろうぜ!」
そうして一同は大きな掛け声と共に、夜空へ拳を突き上げる。閉ざされた街を解放する為に集ってくれた頼もしい|同志たち《クランメンバー》…男は彼らを見渡して大きく頷いた。
彼らはNPCの騎士と共に暗雲に包まれるこの城塞都市へと足を踏み入れる。苛政を強いる悪しき領主を挫き──夜明けを導くために。
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。三章構成のシナリオとなります。
一般プレイヤーのクランに混ぜてもらうか、猟兵同士でクランを作ってクランクエストに挑戦する事になります。明記がない場合プレイヤーのクランに一時加入します。シナリオ終了後は解散・脱退の扱いと致します。
一章は冒険です。地下水路へ到着した時点で、バグり倒した危険なダンジョンに変化しています。
危険なダンジョンの中で、領主が膨大な数の敵対モンスターや、騎士NPCを解き放ってきます。モンスターとNPCはバグではない為プレイヤーも応戦してくれるでしょう。
敵対者と理不尽なバグを切り抜け、猟兵の強さを領主にわからせてやりましょう!
二章は『紫黒の貴族聖剣士・ネーベル』とのボス戦です。
領主を退けダンジョンを抜けると、クエストボスであるバグプロトコルとの決戦になります。周囲もやはりバグって危険な状況です。気をつけて戦いましょう!
三章は日常です。城郭都市でのひと時を楽しみましょう!
領主からもバグからも解放され、平和になった街を観光するも良し、或いは己を研鑽するも良しです。ご自由にお過ごしください。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 冒険
『わからせ領主にわからせろ!』
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POW : 力づくでわからせる
SPD : 技量でわからせる
WIZ : 知恵で分からせる
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神楽崎・栗栖
SPD 連携・アドリブ歓迎
オンラインゲーム……
あまり馴染みがありませんが
(※過去の記憶が一部ないため)、
領主の圧政とやらは見過ごせません
プレイヤーの皆さんのクランに一時お邪魔して、
使命を果たすとしましょう
UCで剣を召喚し、罠をはじめとしたバグや敵を迎撃
バグ以外の障害に対しては、他のプレイヤーの皆さんに倒してもらうなどして花を持たせる
領主に対しても、他の皆さんやエイルさんのほうが思うところが多くあると思うので、先に言いたいことを言ってもらう
最後に
「ノブリス・オブリージュ……高貴なる者には、それだけ大きな義務が伴うものですよ」
領主を諭すと同時に、自分の記憶から英国貴族としての過去を思い出しかける
夜陰に紛れた外周の森──集う人影たちは密やかに言葉を交わしていた。
「正門の面子は充分、騎士団が相手でも時間が稼げるはずだ」
「それは頼もしい。では予定通り、夜明け前に門を開こう」
「ああ、ありがとう。君の立場もあるのに…」
「よしてくれ。私は貴族なんだ、この街の為なら粉骨砕身の覚悟もあるとも」
貴族服の男性と騎士の女性。共に並ぶのは、種々様々な装備を纏う人々の姿だ。
神楽崎・栗栖はこのGGOの世界へ足を踏み入れる直前に聞いた、このクランクエストの概要を辿る。クエストを進めるプレイヤーたち、女騎士に、彼女に与する貴族もまたNPCなのだろう。
「新しい協力者のようだね。エイル、君たちの健闘を祈っているよ」
栗栖が彼らへ近付けば、貴族の男は爽やかな笑みを浮かべて城郭都市へと去ってゆく。
「こっちの助っ人に来てくれたんだな。黎明の刃だ。よろしく頼む」
「神楽崎・栗栖です。よろしくお願いします。オンラインゲームには……あまり馴染みがないのですが、お邪魔させていただきます」
「それなら派手な戦闘のある正門班よりこっち向きだな。ま、ここも精鋭揃いだから安心してくれ。サポートを頼むよ」
「お任せください。共に使命を果たしましょう」
過去の一部が欠けた栗栖にとって、あまり馴染みのないものへの未知数は、この|世界《GGO》でもささやかな不安要素になりかねない。けれど共に並び互いを補い合う事はどんな世界でも変わらない。
温和な笑顔と共に握手を交わせば、いよいよ一同は地下水路へと突入する。
「なんだ、これは…!?」
そして足を踏み入れた途端、女騎士エイルは驚愕の声上げた。栗栖にとっては初めて見る地下水路でも、この城郭都市のNPCにとって変化は一目瞭然だ。
動揺の中でも果敢に足を進めようとする一同を栗栖は引き止める。
「お待ちください。…舞えよ我が剣、花のごとく!」
長剣を掲げれば、複製されるのは142本もの剣。念力でバラバラに操作してダンジョンの壁を狙えば、次の瞬間飛び出してきた投擲武器を弾き飛ばした。
「こんな所に罠が…助かった!」
「露払いは私にお任せを。慎重に進みましょう」
「サンキュー!」
危険なバグも猟兵の力があればなんの事はない。四方八方から襲い来る罠を弾き、落下しそうになれば素早く剣の橋をかけて。予期せぬバグからプレイヤーを守りながらダンジョンを駆ければ、一同は広間へと辿り着く。
「おお、一人も倒れんとは。ドブネズミのクセにやるではないか」
「ドルン…!」
正面テラスから降り注ぐ傲慢な男の声に、女騎士は侮蔑を滲ませて領主の名前を吐き捨てる。
「だが儂に逆らうなど無駄な事よ。今からでも服従するならば寛容な心で許してやるぞ?」
「黙れ!貴様にどれほど民が苦しめられていると思っている…!
服従などするものか、私は貴様の悪しき心を挫く為にここに居る!」
「生意気な女め…ならば服従させるまでだ。者共出てこい!」
領主のひと声でバグったグラフィックの裏側から出現するのは、広間を埋め尽くさんとするモンスターの群れだ。だが、有象無象のモンスターに怯む者など居はしない。
「行くぞ皆!」
黎明の刃が先陣を切る中でも理不尽なバグは彼らへ襲いかかろうとするが、栗栖の剣の舞が迎撃すれば彼らへ届くことはない。栗栖は補助に徹しプレイヤーたちへ花を持たせながら、領主へ向かって密かに剣を忍ばせる。
領主の苛政、圧政。暴虐に苦しむ民がいるというならば栗栖は見過ごす事などできはしない。何故なら、貴族たる者には、それ相応の責務があるのだから。
「ノブリス・オブリージュ……高貴なる者には、それだけ大きな義務が伴うものですよ」
「な、なんだこの剣は…!?」
栗栖はそう諭しながら、剣を操り領主へ突きつける。富める者は社会の模範となり、貧しき者へ与える者でなければ──それが英国貴族たる者の姿なのだから。
その瞬間、栗栖の脳裏にチラつくのは失っていた記憶の片鱗。見覚えのない、けれど懐かしい風景の中で穏やかに微笑む|英国貴族としての姿《栗栖の過去》──。
「ひいぃ!儂を助けろぉ!」
栗栖の剣に領主はみっともなく悲鳴をあげると、呼び寄せたモンスターを犠牲にして慌てて逃げ出してゆく。栗栖は思い出しかけた記憶を振り払うように頭を振った。義務も責務も放棄する領主をみすみす逃すわけにはいかない。道を誤る者を正す事も、英国貴族の使命なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ミノア・ラビリンスドラゴン
なかなかよく出来たクエストですわね!
ヘイトを集める領主、そこそこの強さの味方NPC、弱くも数が多いエネミー、回避の難しいトラップ……
えぇ、それぞれの出来はいいですわ
ですが全部盛りは良くなくってよ!
ドラゴンプロトコルとして、特定のクランに肩入れし過ぎるのは良くありませんわね
自前でクラン設立!
メンバーは【迷宮メイド】たちを登録すれば良しですわ!
好き勝手しているところごめんあそばせ~!
地形データをスキャニング(ハッキング)!
目に見えずとも、トラップの分だけデータ容量が大きくなる筈ですわ!
メイドたちに【カウンター】トラップを発動させて相殺!(罠使い)
ボスとしての格の違いを教えてさしあげますわ~!
猟兵として事件に参戦するべく、城郭都市へと馳せ参じたミノア・ラビリンスドラゴンだが──プレイヤーたちと合流するその直前に足を止める。
「ドラゴンプロトコルとして、特定のクランに肩入れし過ぎるのは良くありませんわね」
|管理者AI《ドラゴンプロコトル》としてのミノアのポジションは、クエストやダンジョンの裏方からボスまで多岐に渡るもの。今回の一般プレイヤーたちとも、いつどこでゲームマスターとして関わるともしれないのだ。どのような事情の中でも、いつだってプレイヤーにフェアでいなければ!
「となれば、自前でクラン設立! そして出でよ! わたくしに仕えるメイドたち!!」
しかしそれでいて、助力は惜しまず全力で!
仁王立ちのミノアがドドンと召喚するのは、167人もの迷宮メイド。メンバーとして登録すれば、即席ながらも大所帯のクランが爆誕する!
「皆様方のお手伝いに参りましたわ! わたくし達に殿はお任せあれ〜!」
「おお、助かる…多いな!?」
プレイヤーたちのド肝を抜きながら、ミノアもこのクランクエストへ参戦したのだった──。
一同は領主ドルンが早速仕掛けてきたモンスターハウスを退けて、再びダンジョンを進みゆく。
予期せぬバグと襲撃だったが、精鋭のプレイヤーたちであれば猟兵の助力があれば難なく熟れてくるもの。そうしてあっという間に道中を切り抜ければ、先程と似通った広間で次なるステージバトルの開幕だ。
「ハァ、ハァ…ドブネズミ如きが、この儂を舐めよって…!」
傲慢な領主によって再び広間はモンスターハウスへと変貌するも、一同はすでに一度乗り越えてきたのだ。しかしそれでもやはり思わぬバグは彼らへと襲いかかる。
「ウワッ!?」
「えっなんで!?」
前衛が踏んでしまったのはワープのトラップ。モンスターの群れへと突入したその姿は一瞬で掻き消えて、勢いのまま後衛へと衝突する。
そしてモンスターがトラップを踏めば、今度は思わぬところから出現し奇襲する敵の姿に、他のトラップも容赦なくプレイヤーへ襲いかかれば、隊列はすっかりてんやわんやの有り様だ。
「なかなかよく出来たクエストですわね!」
そんな混乱の渦中でも、しかしミノアは不敵な笑みを浮かべる。ヘイトを集める領主、そこそこの強さの味方NPC、弱くも数が多いエネミー、回避の難しいトラップ……それぞれの出来は、ドラゴンプロコトルが思わず賞賛する程だ。だがそれはあくまでも、一つ一つを個別に評価するならばの話。
「それぞれが良くとも、全部盛りは良くなくってよ!」
クエストたるものゲームたるもの、全体のバランスとメリハリが大事。欲張ってプレイヤーを食傷にするのは三流の仕事だ。故に、ここからバランスを調整するのはドラゴンプロコトルの腕の見せ所!
「好き勝手しているところごめんあそばせ~!」
ミノアは迷宮メイド引き連れて前へと駆け出すと、素早く地形データをスキャニング。グラフィックに隠されて見えずとも、バグったトラップの分だけ容量は大きくなっているもの。
「バレバレですわよ〜! そこですわ!」
マップ上の不自然な容量のポイントをハッキングで突き止めて、迷宮メイドたちへ共有すればあとは簡単。ミノアの一声でメイドたちはカウンタートラップを発動させて、全ての罠を片っ端から相殺してゆく。
面倒な罠さえ無効化してしまえば、残る障害は数が多いだけのモンスターだけ──ならば勿論、ここからはミノアのターンだ!
「ボスとしての格の違いを教えてさしあげますわ~!」
迷宮メイドはその名の通り|迷宮《ダンジョン》がホームグラウンド。ミノアの的確な指示によって、メイドたちは黎明の刃のサポートは勿論のこと、その迷宮特化の戦闘能力を思う存分発揮して、一同はモンスターの群れを難なく蹴散らしてゆく。
「ひっ、ひいいいっ!」
精鋭プレイヤーたちに迷宮メイドも加えた圧倒的な数の暴力を前に、領主は顔を真っ青に染めると情けない叫び声と共に再びダンジョンの奥へと逃げ出していった。
大成功
🔵🔵🔵
オニキス・ヴァレンタイン
一般市民を苦しめる領主、ですか。
暴力もまた快楽の内ですが、無辜なる市民を苦しめるのはいけません。
クランはエイルさんという方を探して『黎明の刃』に加入すれば良いのでしょうか?
僕は英雄ではありませんが、ね。
うへぇ、地下水路ですか……僕、見えなくても良いものまで見えてしまって、ちょっとこういう場所は苦手なんですよね……。
エイルさんがこのクエストの進行役NPCでしょうか、彼女が戦闘不能にならないよう気を付けながらエスコートを。
敵はブラック・グリードで黒き光線を放ち攻撃。
地下水路に潜むモンスターからドレインしたエネルギーを治癒に使うのは気持ち的に抵抗があるので洗脳して同士討ちか道案内をして頂きましょうか
領主の暴政に苦しむ一般市民の噂を聞き及び──立ち上がろうとするのは、何も城郭都市のNPCやプレイヤーだけではない。
「暴力もまた快楽の内ですが、無辜なる市民を苦しめるのはいけません」
闇夜に紛れそう囁くのは漆黒の黒聖者。いくら欲望を肯定するのが黒教だとて、その欲望が無辜を加害する暴力ともなれば看過などはできないものだ。
「ということで、僕もお手伝いに参りましたー!」
「うわっビックリしたぁ!」
森の茂みの中から勢い良く手を上げて、最後のクエストに挑まんとしていた『黎明の刃』一行の前に現れたのは黒聖者のNPCオニキス・ヴァレンタイン。
「クエストに参加するには『黎明の刃』に加入すれば良いのでしょうか?あ、エイルさんという方にお願いする感じですか?」
「ああ、いや、エイルは私だが…」
「クラン加入は俺のほうだ。歓迎するよ、よろしくな」
「はーい!オニキスです。よろしくお願いしますね」
呆気にとられる女騎士やプレイヤーたちへオニキスが友好的に畳み掛けてあれよこれよ。加入と共に挨拶も済ませれば、これにてクエストへと進む準備はバッチリだ!
最終クエストを前に、少し気の抜けた一同の背中を見つめるオニキスは誰にも届かぬ声で囁く。
「僕は英雄ではありませんが、ね」
|オニキス《NPC》は女騎士が望み求めた|英雄《プレイヤー》ではないけれど──密やかに微笑みを浮かべながら、彼らと共に並びゆく。
「うへぇ、地下水路ですか……」
──そして英雄ならぬ黒聖者の冒険は、弱音から始まっていた。
既に領主の仕向ける策を二度も退けた一行は、バグって迷宮化した地下水路を引き続き警戒しつつ進行は軽快。それでいてオニキスの笑顔には、この手の場所への苦い気持ちがあらわれていた。
「僕、見えなくても良いものまで見えてしまって、ちょっとこういう場所は苦手なんですよね……」
「…目を閉じているのに…か?」
「実はこれでも、目が良いんですよ〜」
オニキスは閉じた双眸を指差し笑顔を向ける。…その視線はなるべく遠くへと向けられていた。
バグダンジョンとなってすっかりバグり散らかしていようが、どこまで行ってもベースのマップは地下水路。バグってようがなかろうが、この手の暗い淀みの汚泥には見えなくても良いものもあれこれ落っこちているものだし、それでいて今は余計なものもバグによってお呼ばれしているものだった。
…例えばそう、不意打ちを狙う不届き水棲モンスターとか。
「おおっと」
「うわっ!?」
気持ち良くはない水柱をバシャッと上げて飛び出してくるモンスターたち。けれどオニキスの視力は直前の水面の揺らぎすら見逃してはいなかった。
不意打ちをくらいかけた味方の腕を素早く引っ張り、巻き上がる滴に顔をしかめながらも目敏く奇襲を阻止すれば、すかさずブラック・グリードによるカウンター。黒き光線を放ち敵の第一ウェーブをダウンさせてドレインエネルギーもばっちり獲得し──オニキスはほんの少しの逡巡する。
「回復もできますが、ここのモンスター相手には気持ち的に抵抗がありますので!」
指先だけでモンスターちょんちょん触れて、残らず洗脳して先行させれば潜んでいた第二ウェーブと同士討ち。残ったモンスターには再び水路を先行させて、入り組んだ水路を道案内してもらえば、正解の通路の奥から響くのはそろそろ聞き慣れてきた男の悲鳴だ。
「ぎゃああっ!グズ共何をしている!儂を守れぇっ!」
「…おや、領主さんとやらもそちらに居ましたか。皆さん、正解の道はこっちみたいですよ」
モンスターの道案内の領主悲鳴を目印にオニキスは一行をエスコート。入り組んだ水路を進んでゆけば、このバグダンジョンの終わりも近いだろうか。
だが何も心配することはない。猟兵たちの手厚いサポートがあれば、この先に何があろうと乗り越えられないものはないのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ウュル・フゥ
黎明の刃さんにお邪魔させてもらってクエスト参加するよ。
クライマックスを無事に迎えるためのお手伝いとして来ました!よろしくねー♪
にしても凄い敵の数だねえ。このままじゃ囲まれてボコボコにされちゃいそう。
なら、囲めないように動けなくしちゃえば良いよね!
というワケで魔喰戦技:氷衝撃波発動、群がる敵を纏めて攻撃しつつ足止め。
後はクランの人達に動けない敵を各個撃破して貰えば良いかなって。
あ、そこトラップあるから気をつけて!
(トラップの位置を随時確認し仲間へ注意呼びかけ)
勿論アタシも戦闘に参加。罠探しが優先ではあるけど。
飛び道具を使う敵を優先的に狙って、キャットクローの【アクセルコンボ】で殴り倒すよ!
バグり倒した地下水路のダンジョンの道程もいよいよゴールが目前となれば、最後に待ち受けるのはやっぱり|領主ドルン《中ボス》の存在だ。
代わり映えのしないダンジョンの広間に一行が辿り着けば、広い部屋の奥では肥えた体に汗を滲ませながら傲慢そうにふんぞり返る領主の姿がある。
「儂を散々コケにしよって…!絶対に許さんぞ!」
領主は荒い息を吐きながらテンプレートな言葉を並べ、再びモンスターの群れを呼び寄せるも──もう三度目の中ボス戦ともなれば、これまでとは多少の差もみられるもの。
領主の背にある出口と思わしき鉄の扉がおもむろに開けば、領主を守るように囲むの人影は騎士団の姿だ。
「騎士まで連れてきたのか…!領主に罪はあれど、奴に従う彼らに罪はない。すまないが、犠牲を出さぬよう気を付けてくれ!」
「了解した!気をつけろよ皆!」
女騎士によって新たなタスクが加わった中ボス戦だが、黎明の刃というプレイヤーたちにとっても、猟兵たちにとってもやる事はこれまでと変わらない。
「はーい!クライマックスを無事に迎えるためのお手伝いだもんね。頑張るよー♪」
「行くぞみんな!」
「おー♪」
ウュル・フゥもまたやる気充分の笑顔をみせて、プレイヤーと共にさっそくモンスターの群れへと突入してゆく。
モンスターはさしたる障害にはならないものでも、相変わらずまともに感知できないバグった罠が、プレイヤーたちにとって一番の障害だ。
「あ、そこトラップあるから気をつけて!」
だからこそウュルは彼らが難なく動けるように、くまなく罠の索敵しながらしっかり注意を呼びかけて、プレイヤーへのサポートを欠かさない。
しかし勿論、ウュルもこのクエストでは大事な戦闘要員だ。
「はい、そこっ!飛び道具は禁止だよー♪」
モンスターの攻撃をいなしながら、群れの奥からキラリと光る鈍色を見つければ、ウュルはすかさず猫のように敵をすり抜けて高くジャンプ。そのまま騎士団へと飛び込み、キャットクローのアクセルコンボで弓兵たちをバッタバッタと殴り倒して気絶させる。
迫り来る槍と剣の数に多勢に無勢とみれば、今度はすぐさま仲間の元へと戻る。そんな身軽なウュルの姿はまさしく遊撃手だろう。
「サンキュー!助かった!」
「任せて!黎明の刃さんにお邪魔させてもらってるからね!カッコ悪いところは見せないよ♪」
ヒット&アウェイを徹底して縦横無尽に飛び跳ねるウュルだが、そうして視野を広くしていればこそ見えてくるのはなかなか減りそうにない敵の数だ。
モンスターはともかく騎士へ手加減をしていては、攻勢となっても攻め切れないもの。このままでは囲まれたとたんボコボコにされてしまうだろう。
「なら、囲めないように動けなくしちゃえば良いよね!」
ウュルはペロッと唇を舐めると笑顔を浮かべ、高くジャンプして飛び込むのは敵が群がる交戦状態のド真ん中。敵も味方も密集するダンジョンの床へ着地しながら、勢いのままに拳を振り下ろす。
「はーいっ!みんなちょっとストーップ♪」
ウュルの可愛い掛け声とはミスマッチな威力の拳が放つのは、極低温の衝撃波。瞬く間に氷が戦場を覆い尽くせば、ダメージと共に敵の足元は残らず凍りついて、移動不能の状態へと陥った。
「それじゃ、反撃の時間だよー♪」
「よし行くぞーッ!!」
どれほどの数を用意しようとも、どんな敵も動けなくなってしまえば各個撃破も容易いもの。モンスターも騎士団も、プレイヤーたちと共に難なく倒してしまえば、最後に残ったのは勿論、旗色どころか顔色までもがすっかり悪くなってしまった中ボスだけだ。
「もう逃げられないね♪」
「ひいっ!わ、儂が悪かった…!なんでもする、許してくれぇ…!!」
「んー?どうだろ。決めるのはアタシじゃないからねー」
凍りついた足元ではまともに動けないせいで、倒れるように膝をついて懇願する領主の姿に、ウュルがいたずらっ子のような笑顔を向ければ、領主はがっくりと項垂れた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『紫黒の貴族聖剣士・ネーベル』
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POW : 聖剣士の技を見切れるか!
【神速のレイピア突き】が命中した敵を【神速のカウンター】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[神速のカウンター]で受け止め[神速のレイピア突き]で反撃する。
SPD : 私の剣技に見惚れるかい?
自身が装備する【レイピア】から【紫の衝撃波と剣撃】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【麻痺や毒や魅力】の状態異常を与える。
WIZ : 我ら聖剣士の力を見よ!
【レベル×5のNPC聖剣士達を召喚し剣】で装甲を破り、【NPC聖剣士達の連携】でダウンさせ、【NPC聖剣士達とネーベルが連携しレイピア】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
イラスト:ポポ助
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「推葉・リア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ありがとう。君たちのお陰でドルンを捕らえる事ができた」
プレイヤーと猟兵たちを見渡して、女騎士エイルは微笑む。その足元では、先程までの横暴な姿などなかったかのように意気消沈し、ぐったりと座り込み項垂れる領主ドルンの姿があった。
「いや、まあ…そうか。これで終わりか」
「ああ…私も気持ちは同じだ」
黎明の刃のプレイヤーたちと女騎士は、どこか困惑した面持ちで互いを見やりながら、歯切れの悪い言葉を返す。
城郭都市の民を虐げる領主を打倒する…その目的を達成した今、このクランクエストは完了したとも言えるだろう。だがそれでいて、何一つ筋書き通りに進んでいないのも事実だった。
「だが急ぎ城の者にも伝えなければな。正門の陽動班も待機したままでは、無為な戦闘が始まりかねん」
「あー…そうだった、夜明け前にはまだ間に合うか?」
違和感と困惑の中で得られたものは、達成感よりも燃えカスのような消化不良。しかしそれでもクエスト目標は達成しているし、この街では事後処理だって待っているだろう。ゲームの中でありながら、NPCは生きている…それがこのGGOというゲームなのだから。
──そう、NPCは生きている。それは勿論、悪役にも言えることだ。
「ぐっ!?」
「エイル!!」
一瞬の気の緩み。その瞬間、女騎士の背中を襲ったのは肥えた肉の体当たりだ。不意打ちに倒れる女騎士を尻目に領主は思わぬ素早さで出口からダンジョンの外──地下水路から繋がる城内へと走ってゆく。
「馬鹿共がッ!儂がドブネズミなどに負けるわけがなかろう…!
誰かー!誰かおらんか!!賊が入り込んでおるぞぉー!」
一行は急いで領主の背中を追いかけるも、領主の逃げ足だけはこれまで散々みてきた通り。不自然なほどひと気のない城内を走り、追い付けぬまま廊下を曲がったその時、ひとつの黒い影が領主の前へとあらわれる。
貴族服の男性の姿…それはこのクエストに関わる者には見慣れたNPCの姿。
「|ネーベル《・・・・》!何をしておる!?早く儂を助けんか!!」
女騎士や黎明の刃は安堵に頬を緩め、領主は激高しながら男に助けを求め──次の瞬間、領主の胸元に銀色が閃いた。
「な…っ!?ネーベル、何を…!?」
「失礼、見苦しいところを見せたね。まさかバグダンジョンを乗り越えて来るとは…しかも、こんなに早く」
絶句する女騎士に目を合わせることもなく、ネーベルは温和な微笑みを浮かべたままレイピアを引き抜いた。その銀色が纏うのは、途切れながら渦巻く紫のノイズだ。
ネーベルがレイピアを振り抜き風を切れば、一瞬で城内のグラフィックは揺らいでノイズが走り──ほんの少し前に過ぎ去ったばかりの、バグり倒したトラップだらけのダンジョンへと変貌してゆく。
緊張に生唾を飲み込むプレイヤーたちを背中に、猟兵たちは静かに武器を構える。
「次は私がお相手しよう。ボスとしてこのバグダンジョンと共に、ね」
いよいよ正体を現したバグプロコトル『紫黒の貴族聖剣士・ネーベル』と再び出現したバグダンジョンに、慌ただしいエマージェンシーが鳴り響く。
神楽崎・栗栖
POW 連携・アドリブ歓迎
貴族にして聖剣士……それでも
バグプロトコルと化せば強敵となる、か
なかなか恐ろしい世界ですが、
相手にとって不足はありません
ここは逃げも隠れもせず、貴族らしく一騎討ちと参りましょう
エイルさんとクランの皆さんには、
バグによる罠の危険を改めて警告
剣戟を交わしながら、UCで敵のレイピア破壊を狙う
(反撃は確かに恐ろしい……ですが、そのための武器がなければ?)
私とて……貴族の血を継ぐ身。
民の命を背負って、やすやすとは負けられません
血に染まったレイピアを突き付けるバグプロコトルの姿を前にして、困惑と動揺を隠しきれないままに蹈鞴を踏むのは、これまでの|ネーベル《NPC》を知る者たちだ。
「どのような者でも…バグプロトコルと化せば脅威となるのですね」
神楽崎・栗栖もまた──彼らとは少しばかり異なる戸惑いを口にしながらも、ネーベルへ鋭い警戒を向ける。
貴族であり聖剣士…本来ならば温厚で高潔であった存在であったとしても、バグに歪めばプレイヤーへと敵意を向け脅威を振りまく強敵となる。それはGGOの恐ろしい世界の一端。
だが、かつてがどれほどの|人物《NPC》であったとしても、今の彼はバグプロコトルだ。
「相手にとって不足はありません」
ならば猟兵の役目はひとつ。栗栖は目の前に広がるバグダンジョンにも臆する事なく、長剣を抜き払うと静かに前へ出る。
「ここは逃げも隠れもせず、貴族らしく一騎討ちと参りましょう」
「ほう。私が『紫黒の貴族聖剣士』と知ってならば光栄だ。
ああ、安心してくれ。知らなくても容赦はしない」
栗栖の思わぬ申し出にネーベルは目を見開き、挑発的な笑みを溢すとレイピアを前へと構える。
「ま…待てっ!一騎打ちならば私が…」
「動かないで下さい、エイルさん!」
名のしれた聖剣士でありバグプロコトルである|強敵《ボス》に、一騎打ちを申し出る栗栖の姿に女騎士が踏み出しかけたその時。栗栖は振り向かずただ鋭く警告する。
「黎明の刃の皆さんも気をつけてください。バグによる罠の危険が看過できない今…下手に動くのは危険ですから」
女騎士の目にどう映ろうとも、栗栖の決闘は決して無謀ではない。罠に無防備な彼らを庇いながら戦うよりも、小細工の付け入る隙を与えぬ事がボスのHPを削る一手になり得るのだから。
「それではお手並み拝見といこう。さあ、聖剣士の技を見切れるか!」
突進と共に繰り出されるのはレイピアによる鋭い刺突。目にも止まらぬ速度はまさに神速。回避するのも難しいほどの激しい剣戟に、予測不能な罠の数々が加われば栗栖は徐々に押されてゆく。
躱しきれずに長剣で受け止めればすかさずカウンターが襲いかかり、攻勢に出ようとも神速のレイピアは尽くを受け止めて反撃に転じてこよう。
神速の反撃は恐ろしい──だが、それはその手に握られている獲物でなければ、発揮されないものであろう。
栗栖の狙いは一撃。その一瞬の為ならば肉を切らせる覚悟だった。
銀朱の魔剣士は捌き切れぬ剣戟の中、すべての力をただ一撃の剣に込める。
ネーベルが突如ワープトラップによって掻き消え、栗栖の視界に罠による投擲武器が飛び込んだ。それと同時に栗栖の背後に出現するのはネーベルの気配と強烈な殺意。
逃げ場のない袋小路でも栗栖は臆する事はない。目前の投擲武器になど構わず振り向くと、レイピアを回避しネーベルの懐へ飛び込んだ。
「……お覚悟を」
背中を襲う痛みがあろうと栗栖の剣は止められない。
距離を詰められたネーベルは体勢を崩しながらも、神速のレイピアが長剣を受け止める。
だがこの一撃が栗栖の狙いだ。レイピアを破壊し、その勢いのままネーベルの身を裂く一撃こそ──必殺剣。
「私とて……貴族の血を継ぐ身。
民の命を背負って、やすやすとは負けられません」
それは思い出しかけた過去の欠片。痛みの中でも膝を付くことなく、栗栖を確かに支えてくれていた。
成功
🔵🔵🔴
ウュル・フゥ
あれ、なんだかおかしなコトになってるね…
でも、こうなったらやっつけるしかなさそうだよ!
と呼びかけて、引き続き黎明の剣の皆と共闘。
さっきのダンジョン同様、バグトラップの位置を随時スキルで【情報検索】、皆に教えつつ戦ってくよ。
流石にこの敵は強いから、アタシが主に攻撃を引き受ける形を取る。
キャットクローの【斬撃波】で攻撃したり、キャットイヤーの直感力で敵の攻撃を【瞬間思考力】で適宜判断し回避したり。
聖騎士を呼んできたら、敢えて敵の只中へ飛び込んで、魔喰魔術:閃光衝波を発動。ダメージを与えつつ目くらまし(味方への隠密状態付与)。
後はこの効果が続いてるうちに、皆でネーベルをボコり倒すよ。
「あれ、なんだかおかしなコトになってるね…。
でも、こうなったらやっつけるしかなさそうだよ!」
いよいよ姿をみせたバグプロコトル、紫黒の貴族聖剣士・ネーベルを前にした一行へ向かって、ウュル・フゥは力強く呼びかける。
彼らの胸にどんな戸惑いがあろうとも、目の前の状況に足を止めてはいられない。猟兵によってレイピアの刀身は半ばで折れ割れ、その身体には刻まれた負傷があろうとも──ネーベルのHPもこの場を覆うバグもまだ健在。
折れたレイピアを投げ捨て廊下に飾られた甲冑の剣を引き抜いたネーベルは、その切っ先をプレイヤーたちへと向けていた。
「く…っ!そうだ、ボサッとしてる場合じゃない!やるぞ、皆!」
「その意気だよ!トラップの位置はアタシに任せて!」
なんとか動揺を押し殺し臨戦態勢に入る一行を、ウュルが鼓舞すれば再び共闘のスタートだ。
「行くよ!」
ウュルはバグったダンジョンの情報を検索し、危険な罠の位置を把握するとすかさず皆へ共有。そのまま間髪入れずにネーベルへ先行して繰り出すのは、キャットクローによる衝撃波だ。
「浅い!」
「まだまだっ!」
たとえ初撃を防がれようとウュルは止まらない。ピコピコ揺れるキャットイヤーの直感力でネーベルの攻撃を察知すれば、猫のように機敏な動きで回避して余所見をする隙を与えぬように、絶え間なくキャットクローを繰り出してゆく。
ウュルが巧みにヘイトを稼ぎ、ネーベルのターゲットを取って立ち回り攻撃を引き受けていけば、味方は慎重に罠を回避し敵を攻撃範囲に捉えられるもの。ネーベルを囲うように展開した味方の援護は、徐々にそのHPを削り始め、ウュルの爪もそのHPへと届き始める。
「フ…多勢に無勢とは。ならば私も『友』の手を借りるとしようか。我ら聖剣士の力を見よ!」
しかしHPが削れてくれば、攻撃パターンも変化するのがボスのお約束。剣を掲げたネーベルが召喚するのは無数の聖剣士達だ。卓越した連携攻撃はプレイヤーなど一溜まりもないだろう。
「そっちの好きにはさせないよ!はーいこっち見てこっち見てー!」
だが新たな脅威の出現にもウュルは臆さず、大きくジャンプ。ネーベルと聖剣士たちがプレイヤーたちへ剣を向け連携攻撃を繰り出そうとしたその瞬間、ウュルは敢えてその真っ只中へ飛び込んだ。
「どーん!」
「何…っ!?目が…!?」
無防備な着地に注目が集まった刹那、ウュルの全身から凄まじい閃光が放たれる。
閃光衝波の眩しさはダメージと共に一時的な麻痺を与え、更には味方へ隠密状態のバフを与えてくれるもの──いよいよチャンス到来だ!
「今だよ、皆でネーベルをボコり倒すよ!」
「おおーっ!!」
ウュルの合図で一行がネーベルと聖剣士たちへひたすら総攻撃を繰り出せば、周囲は数多の攻撃エフェクトで眩しく染まる。
絶え間のない攻撃の中でもネーベルは反撃を繰り出そうとするも、麻痺で自慢の速度を失ったその攻撃は鈍く、目が眩んだ聖剣士との連携もあらぬ方向へ空振り。聖剣士たちの多くはそのままあえなく消え去り、ネーベルのHPも着々と削れてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ミノア・ラビリンスドラゴン
皆様方の反応から察するに、中立ないしは味方ポジションのNPCを装っていたバグプロトコルといったところかしら?
【双剣使い】モードの装いにチェンジ!
領主への刺突、ダンジョンをバグらせる剣閃
技の主軸をふたつも見せるだなんて、調子に乗ってパフォーマンスが過ぎましたわね!
莫大なリソースを割いた【戦闘演算】による【龍の叡智】で、衝撃波と剣撃を【見切る】!
双龍剣の片方で切っ先を逸らし、もう片方で【カウンター】の斬撃!
迷宮ミルクの【瞬間強化】バフが乗った一撃は痛いでしょう!
先の戦いでメイドがそこらじゅうに【鉄壁】の罠を仕掛けているので、黎明の刃の皆様方の護り(拠点防御)も抜かりなく!
「くそっまだ倒れねえのかよ!」
「うう…見知ったキャラの裏切りってちょっとキツいんだよな…」
ボス戦はすでにHPの半分を過ぎ去って──猟兵の活躍、そして共闘によって負傷や消耗は抑えられ、戦況はプレイヤーたちの優勢に傾いている。となれば、プレイヤーたちの胸に浮かび上がるのは油断からくる気持ちの余裕、雑念だった。
雑念に邪魔され機敏さを失えば余計な被弾が増えるもの。危うい所で女騎士エイルはプレイヤーへと迫る攻撃を打ち払う。
「何をしている!皆、油断はするな!」
「ううっごめんなさい…」
申し訳なさそうにするその姿からは、士気やら集中力やらの低下が見て取れる。そんなプレイヤーたちの状態から伺えるのはネーベルとの関係値だろうか──。
「…皆様方の反応から察するに、中立ないしは味方ポジションのNPCを装っていたバグプロトコルといったところかしら?」
ミノア・ラビリンスドラゴンは冷静に分析しながら呟き、己の装備を双龍剣へと切り変える。バグに邪魔されては気持ちが乗らなくなるのも無理からぬことだろう…ならば、こんなバグゲーなど手っ取り早く終わらせるまで!
「皆様方、後はわたくしにお任せあれですわ!!」
ミノアがパチンと指を鳴らせば、その装いは純白のドレスから双剣使いのドレスアーマーにモードチェンジ!
そのままミノアは迷宮ミルクのひと瓶をクイッとあおって間合いへ飛び込むと、ドラゴンの意匠が施された双剣で素早い攻撃を仕掛けてゆく。
「フッ。私の剣技に見惚れるかい?」
「ごめんあそばせ。そちらの手の内はもう|視えて《・・・》おりますわ!」
「ハッタリを!」
ネーベルの剣が紫のノイズを纏い渦を巻けば、剣撃と共に切っ先から放たれるのは紫の衝撃波だ。
メイン武器を失い威力も冴えもいくらか落ちようと、ネーベルの剣技が未だ脅威である事は変わらない。更には麻痺に毒に魅力にとバグったデバフがてんこ盛り。
当たれば不利を免れないその攻撃を──だが、ミノアは容易く見切り流れるように回避する。
ネーベルの瞳が驚きに見開かれる中で、ミノアが片方の剣で切っ先を逸らし滑らせれば、すかさずもう片方でカウンターの斬撃を叩き込む。
ミノア印の迷宮ミルクがあれば、通常攻撃のカウンターだってボスのHPを大きく削るクリティカル級!
「ぐう…っ!?」
「迷宮ミルクの|瞬間強化《バフ》が乗った一撃は痛いでしょう! まだまだ、百手先まで読み切りましてよー!!!」
強烈な一撃に体勢を崩しかけたネーベルだがなんとか持ち堪えミノアへ再び鋭い剣撃と浴びせるが、そのひとつとて届きはしない。
──ミノアがその視界に視るのは、膨大なリソースを割いた戦闘演算による龍の叡智。
領主への刺突、ダンジョンをバグらせる剣閃──戦いを前に技の主軸をふたつも見せるなど、調子に乗ったパフォーマンスに過ぎる愚行。ドラゴンプロコトルの膨大なリソースを以てすれば回避はあまりにも容易いものだった。
「ならば…!」
圧倒的な劣勢にネーベルは周囲を見渡し、再び紫の衝撃波を放つ。ミノアが回避するならばネーベルが狙うはその背後。無防備な黎明の刃の姿に、邪悪な笑みが浮かぶその寸前──密かに罠を仕掛けていた迷宮メイドたちは、涼し気な顔でお辞儀ひとつでその|仕掛け《トラップ》は起動する。
轟音と共に乱立するのは鉄壁の防御。いかにバグった衝撃波でも、要塞のような盾の前では数える程を打ち砕くだけだ。
再び驚愕するネーベルの目前に、銀色に輝くのは白亜の刃の双つ首。
「わたくしのクランを甘く見ましたわね! バフたっぷりの一撃、食らっていただきますわ!!」
ネーベルの無防備な体へミノアが放つのは重なる双龍の鋭い斬撃。そのクリティカルダメージはボスのHPをゴッソリと削るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
オニキス・ヴァレンタイン
黒い、聖剣士……?
黒教の方、ではないんですよね……????
ですよね! 良かったぁ〜! これで気兼ねなくぶっ飛ばせます!
エイルさんはお怪我はありませんか? あの方はお知り合いで?
ドルンさんは倒れられたことですし、ふん縛って回復した方がいいんでしょうか……?
とりあえず、|異教徒の方《ネーベルさん》は申し訳ないのですが、バグり散らしているので一旦ナタで潰させて頂いても?
【グランドクラッシャー】
僕、回復ジョブなので速さでは敵いそうにないですね。
灯りを壊して暗闇に紛れ込み
オーラ防御の上、ナタで武器受け。
視力、心眼で相手や味方の位置を確認。
もう地形ごと壊していくしかないですかね?(地形の利用)
ボス戦闘の最中、一行の負傷を癒やしていたのはオニキス・ヴァレンタインだ。猟兵たちの活躍によって戦況はプレイヤーたちの優勢のまま…そんな余裕の中であればこそ、つい気になるのは倒れたままのNPCの存在だった。
「ドルンさんは倒れられたことですし、ふん縛って回復した方がいいんでしょうか……?」
バグって本来のクエストから外れた今、本来のクエスト目標である彼の生死も無視し難い。一瞬悩んだオニキスは隙を見てささっと領主へ駆けつけて、虫の息で生きていた領主を回復してふん縛っておく。
そうして戦況はいよいよ終盤へ。ダメージを重ねたネーベルは、ついに崩れ落ちかけたその体を剣で支える程へと至る。
「この私が…敗北など…!」
HPはもうあと僅か──だが尽きぬ敵意は変わらず一行へと向けられ、激昂するネーベルの攻撃は脅威となって襲いかかる。
「ぐ…っこいつ、まだこんな力を…!」
メイン武器を失った攻撃とてプレイヤーたちは負傷覚悟で凌ぎ切るのが精一杯。次々に膝を折る彼らへ、すかさずオニキスが回復をすれば歓声が湧き上がった。
「悪い、助かった!」
「いえいえ、ご無事で何よりです。エイルさんもお怪我はありませんか?」
「ああ、大丈夫だ!」
再び立ち上がる一行に胸を撫で下ろすも、まだ油断はできない。回復役のオニキスとて前衛へ出る必要があるだろう…だがその前に、確かめなければならない事が一つあった。
「ところで、あの方……黒い、聖剣士? とはお知り合いで?」
「ああ…領主に従う貴族も多い中で唯一、民らと同じ憤りを抱き…我らに力を貸してくれる友だと…そう思っていたのに…!」
「エイル…」
オニキスの問いに女騎士が語るのは、これまでのクエストで通過してきたであろう|設定《ストーリー》…辿ってきたその背景。悔しさを滲ませる女騎士にプレイヤーたちは言葉を失う。
…が、そういうのは一先ず置いといて。
「黒教の方、ではないんですよね……????」
「えっ。ああ…そうだな。特定の信仰はないはずだ」
「ですよね! 良かったぁ〜! これで気兼ねなくぶっ飛ばせます!」
「ええ…?」
晴れかなニッコリ笑顔を浮かべてぐるぐると肩を回すオニキスに、一行は思わず困惑の表情を浮かべるが──そこの確認は当たり前の事である。敬虔な黒聖者にとって、敵対する者が黒教なのかは重要なポイントなのだから!
「とはいえ、僕は回復ジョブなので速さでは敵いそうにないですね」
ぶっ飛ばすにはひと工夫も必要。となればオニキスはコソッと手早く打ち合わせ、いよいよナタを片手に前衛へ。
「|異教徒の方《ネーベルさん》は申し訳ないのですが、バグり散らしているので一旦ナタで潰させて頂いても?」
「ふ…そんな武器で、聖剣士の技を見切れるか!」
「おっと!」
ネーベルが繰り出してくる神速の攻撃をオニキスの心眼は目敏く見極め、オーラ防御を纏ったナタで受け止める。なんとか凌ぎ切ってはいても速さの前には防戦一方を強いられる。反撃の機会を得られぬまま拮抗する両者──だがその時、暗闇が二人を包み込む。
「何…!?」
いくら神速といえど暗闇に放り込まれれば皆ターゲットを見失う。手応えを失いネーベルが驚く一方で、オニキスの閉じた瞳の視力はネーベルの姿がよく|視えて《・・・》いた。
「残念でしたね。グシャグシャになぁれ♪」
あらぬ場所へ攻撃を繰り出すネーベルへ、オニキスが振り上げるのは単純で重いナタの一撃。たとえ神速のカウンターが間に合おうとも、その攻撃を受け切るにはもう遅い。
「そんな馬鹿な…っ!この私が…!」
グランドスマッシャーの地形ごと破壊する一撃は、容赦なくボスのHPを叩き潰した。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『城郭都市エリアでのひと時!』
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POW : 酒場に繰り出して賑やかす!
SPD : 練兵場で鍛える!
WIZ : 市場で掘り出し物を探す!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
紫黒の貴族聖剣士・ネーベルはHPの全てを失い、崩れ落ちるように膝を付く。
敗北に目を見開き何かを語りかけた唇は、しかしなんの言葉も残さずに掻き消えてゆく──。
バグプロコトルの消失と共に、バグったダンジョンも解けて消える。静まり返った城のグラフィックが戻ってくれば、バグプロコトルと化していたNPCの存在ごと、バグの痕跡は消え去っていった。
知己へ駆け寄る事もなく、その消失を見送った女騎士は拳を握り締めると、『英雄たち』へと振り返る。
「──我々の勝利だ!」
ぎこちない笑顔を浮かべる女騎士の上で、クエストコンプリートのテロップが朝日に照らされていた。
●
夜明けを迎えた城郭都市の門が開かれる。
バグプロコトルの存在によって、本来発生するはずだった正門での戦闘の殆どがスキップされた影響か、はたまたバグが収束した恩恵か…領主ドルンの生存が面倒事を引き起こさずに恙無く進められたのか。人知れず激動の一夜を明けた街に広がる混乱は、実に小さなものだった。
街の人々は戸惑いの中で、人が変わったように身を縮ませる領主に驚きながら、街の通りをゆく『英雄たち』を賞賛する。長らく閉じていた街は開かれ、いずれプレイヤーたちの往来で賑わってゆくだろう──。
「いやー終わった終わった!」
「なんか色々あったけど…終わって良かったー!」
両手を上げて開放感に浸るのは、黎明の刃のプレイヤーたち。バグプロコトルに遭遇した彼らにとっては、クランメンバーを誰も失う事なくクエストクリアまで漕ぎ着けた事は、きっと一番のご褒美だ。
「それもこれも、あんたらのお陰だな。ありがとう、助かったぜ」
笑顔を見せる彼らと猟兵たちは握手を交わす。口々に告げられる感謝の嵐の中で、ふいに猟兵たちへ問われるのはこの後の予定だ。
「俺達は他のクランとも合流して、街の酒場でパーッと打ち上げしようかと思ってな。
もちろん奢りだから、あんたらも気が向いたら参加してくれよ」
「あたしパス!市場でショッピングしたいもん!
ここプレイヤーの出入りもなかったんだよ、掘り出し物とか絶対あるし!」
「ようやくまともな交易ができるって言ってたNPCも見たな〜。レア素材とか安いかな?」
「あっ、そうそう。エイルは練兵場に顔出すって言ってたよ。私達も後で顔出さなきゃね」
「絶っ対、鍛錬するから付き合えって言われるヤツじゃん!」
プレイヤーたちはひとしきり楽しげに語ると、猟兵たちへ大きく手を振り、思い思いの場所へと散ってゆく。
共に戦ったクラン『黎明の刃』と騒ぎ合ったり、語り合うならば酒場へ行くと良いだろう。
或いは、何か掘り出し物を探してみたいならば、市場へ足を運ぶのが良いだろうか。
女騎士エイルに用があれば、練兵場へ行くと良い。ただし練習試合を挑まれる覚悟をする必要があるだろう。
平和が訪れ、活気に溢れるこの城郭都市。はじめての街のどこへ行き何を楽しむのも、猟兵たちの自由だ。
神楽崎・栗栖
POW 連携・アドリブ歓迎
クラン『黎明の刃』の皆さんと話しに酒場へ
お酒は飲める年ではないのでお断りして、ノンアルコールの何かをマスターにお任せで頼みましょう……そういえば、クランの皆さんは何を飲まれるのでしょう? 一見、お若い方も多いようですが……
クランの皆さんがこれからもこの世界で戦うように、私も英国貴族として、そして猟兵の使命として、戦い続けていきたい
その参考とするために、クランの皆さんがゲームを始めたきっかけや、今も戦っている理由を聞いてみましょう
またいつか共に戦う……あるいは、守るべき人々の心を知るために
「おーい、こっちこっち!」
酒場へ足を運んだ神楽崎・栗栖を快く迎えてくれるのは『黎明の刃』のクランメンバーだ。賑わいの中を促され、大皿の並ぶテーブルへ着席すれば見覚えのない顔も並んでいる。今回のクエストの功労者の一人だと紹介されれば、酒場の空気はより一層の盛り上がりに包まれる。
「ドリンクは何にする?」
「お酒は飲める年ではないので、ノンアルコールの何か……お任せで」
「オッケー!マスター、追加のオーダー!」
「ゲームの中なのに真面目だなぁ」
「いやいや、ゲームだからでしょ。没入感は大事だよ」
追加の注文を頼むついでに話題を広げる面々は実に陽気だ。若々しい|見た目《アバター》が多くとも、既に酒を飲んだ気分になっているのだろうか。
「皆さんは何を飲まれるのでしょう? お若い方も多いようですが…」
「私はノンアル〜! 見た目も中身も18歳だからねぇ」
「はいはい。…|現実《オフ》じゃ酒豪って噂だ」
ゲームの中だからこそ、現実とのギャップも時にあるもの。密やかな耳打ちに思わず苦笑いだけを返せば、栗栖の手元にもようやく明るい色の爽やかなジュースが運ばれてくる。
「それじゃもう一回、カンパーイ!」
「お疲れ様ー!」
皆に倣ってグラスを掲げれば、いくつもの軽快な音が喧騒の中に響き渡った。
「皆さんがこのゲームを始めたきっかけはあるのですか?」
そうして語り合うのはささやかな話題だ。このゲームを始めたきっかけ、そして数多のプレイスタイルがある中で、戦いに向かうクエストを楽しむ事を選んだ理由──栗栖は、わずかな時間でも関わった彼らの事を知りたいと思ったのだ。
「やっぱストレス発散かなー」
「現実には娯楽がないし、やっぱりな」
「なんにも選べないから何にでもなれるのが魅力だよねぇ。勇者とか英雄とか、カッコイーし!」
苦笑いを浮かべる彼らの姿から伺えるのは、|統制機構《コントロール》による管理、抑制された生活への苦悩や不満だ。
苛政に苦しむ領主から街を救う…テンプレートな物語は、統制機構に生きる人々には共感を抱くエピソードのひとつ。逃げ場のない現実から逃げ出したい──その気持ちはこのゲームでの活動にも現れているのだろう。
「だからこそ、エイルさんにも、この街にも親身になっていたんですね」
「ああ。ま、そんなの無くても助けてたよ。俺達は『英雄』だからな」
「…ヤバッ! 照れくさくなってきた〜っ」
「良いじゃん、お前ポエミーだし? 前のクエストでは入り込みすぎててさあ…」
「ギャー! ストップ!」
そうしてあっという間に賑やかさ取り戻す彼らの姿に、栗栖は穏やかな微笑みを浮かべる。
「私も英国貴族として、そして猟兵の使命として、戦い続けていきたいですね」
栗栖の囁きは誰にも拾われずに酒場の喧騒に溶けてゆく。
またいつか共に戦う……あるいは、いつかどこかで守るべき人々の心。彼らの在り方は、数多の世界でこれからも戦うであろう栗栖の胸に、確かな灯火を与えてくれるものだった。
大成功
🔵🔵🔵
ミノア・ラビリンスドラゴン
ほっほぉ~う?
交易閉鎖の影響で価格がごちゃついている可能性がありますのね!
商機にして勝機!
地域特有の名産品なんかがダブついているかもしれませんわ~!
エイルさんのご様子は気にならないことはないですが、わたくしってば|ドラゴンプロトコル《管理者》かつ|没貴族《嫌われ者》
訪ねたところでギクシャクするだけですわ~!
商店や露店の並ぶ賑やかな市場を巡りますわ~!
城郭都市ならば武器防具の質が良さそうですわ!
ふむふむ、貴族聖剣士がいたり味方NPCが女騎士だけあって、剣の種類が豊富ですわね!
属性耐性こそないものの鎧もいいものがありますわ!
【龍の財宝】で宝物庫に接続して、買った物を次々に放り込みますわ~!
「ほっほぉ~う? 交易閉鎖の影響で価格がごちゃついている可能性がありますのね!」
お宝、掘り出し物──そんな言葉を耳にすれば、もちろんミノア・ラビリンスドラゴンも黙ってはいられない。なにせこの街は正門を閉鎖され、人々の往来も長らく制限されていたのだ。それなりの数のプレイヤーが一斉に訪れたことで、どの店も慌ててのれんを掲げていようとも──そこらの価格設定はまだまだ手探りなのだから!
「商機にして勝機! 地域特有の名産品なんかがダブついているかもしれませんわ~!」
市場価格が均される前の今ならば、破格のお宝も転がっているだろう。常に金策に追われる中でダンジョン運営をしているミノアにとっては、紛れもなく美味しい話だ。
「エイルさんのご様子は気にならないことはないですが……」
市場へ足を向けながら、ミノアは後ろ髪を引かれる思いを呟くと、そのまま言葉を途切れさせる。猟兵という立場からのスポット参戦ではあれど、やはりクエストを見届けた以上は彼女の顛末も気になるもの。
だがやはり──ミノアはどうしたって|ドラゴンプロトコル《管理者》かつ|没貴族《嫌われ者》のポジションなのである!
「訪ねたところでギクシャクするだけですわ~!」
ミノアは頬に甲を当てると、高らかな笑い声を青空へと羽ばたかせる。|立場《ポジション》を理解し適切な距離感を徹底する、それもまた出来るドラゴンプロコトルなのだ!
市場へ着いたミノアを迎えてくれるのは、プレイヤーやNPCたちの姿で彩られた賑やかさだ。混雑というにはまだ遠くとも、どの店も閑古鳥の鳴き声は聞こえない。
平和な喧騒の中でより一層の鮮やさが目に付くのは、やはり武器や防具だろう。城郭都市という設定が効いているのか、ひと目見ても質が良い装備が軒先に並んでいる。
「ふむふむ、貴族聖剣士がいたり味方NPCが女騎士だけあって、剣の種類が豊富ですわね!」
特に武器の中でも、街で需要が存在する剣は種類も実に豊富のようだ。直剣やレイピアなど汎用性の高いものから刀身も重さもバリエーションも多く、趣向を凝らした柄の意匠も印象的。
一方で鎧といった装備は、剣の並びに比べればそこまで多種多彩とは言い難いだろうか。精鋭のプレイヤーならば純粋な物理防御だけではなく属性耐性も欲しくなるところだが、プレイヤーの行き来がなかった事は品揃えに現れているのだろう。
とはいえ属性耐性がないだけで、ここに並ぶ鎧の質もなかなか良いもの。
「こちら、ひと通り購入させていただきたきますわ〜!」
良いものならば──投資を惜しむ理由はない!
ミノアは市場を渡り歩いて、あれこれ見定め吟味して片っ端からショッピング。そんな豪快な買いっぷりに動揺するのは市場の|親切な人《NPC》だ。
「姉ちゃん、そんなに買って大丈夫か? どっかに運ぶなら馬車も出せるけどよぅ」
「ご心配なく! 宝物庫に直で放り込めますの!」
心配そうな声が聞こえても問題ない。龍の財宝でミノアの迷宮の宝物庫とそこらの空間を接続すればあら不思議。虚空に開いた宝物庫は無限のストレージとなって、ミノアの購入した商品を一つ残らず納めてくれる。
すっかり身軽になったミノアは手を払うも、まだまだ|お宝探し《ショッピング》は始まったばかり!
「じゃんじゃん買って、じゃんじゃん放り込みますわ〜!」
そんなミノアの姿は商人NPCも通りすがりのプレイヤーでも呆気にとられる買いっぷりで──そうして自ずとほんの一時的、瞬間的ながらも、当然のようにこの局所で高まった武器と防具の需要。この街の市場価格が辿る道はありふれたテンプレートだ。
その後、市場の価格が瞬間的に高騰したとか暴落したとか、激しい波が訪れる事になったとか──。そんな噂を耳にするのは、ミノアがこの街を去ってしばらく後の事だった。
大成功
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