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セレスティアルマロウに陽を迎えて

#シルバーレイン #戦後 #メガリス

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 シルバーレインの日本列島、そのどこか一角に存在する妖狐の隠れ里。
 ここでは星読みを生業とし、災いの予兆あらば密かに世に伝える――先祖代々、そのような使命を受け継いできた日本妖狐たちが、慎ましく禁欲的に暮らしていた。
 ところで先の冬、里に病が流行り老齢の者が軒並み夜を儚んでしまい、里にはまだ未熟な若い衆のみが残された。
 彼らもまた、先達の遺志を継ぎ、粛々と日々の努めを果たしていたのだが。

「暑いよー!!」
「海に行きたいよー!! 川とかでもいいけど!!」
「たまには私たちだって遊びたいよー!!」

 ……猛暑と閉鎖的な生活でこの度、ついに限界が来たようです。


「ここで悲報、或いは妖狐たちには朗報かも知れませんが」
 虹目・カイ(○月・f36455)は相も変わらずニコニコとしている。
「そんな妖狐たちの魂の叫びに応えた何かがいたのか、はたまた出来の良すぎる偶然か。彼らの保有する、星読み用の望遠鏡がメガリス化……厳密に言えば、元々メガリスだったものが本来の力を取り戻してしまったのですね」
 仮に『宿曜の瞳』としましょうか、と言うカイによると、日本の星読み、即ち占星術のルーツは平安時代にあると言う。この仮名はそれに由来するそうだ。
 なお、正式名称ではないため、持ち帰りたいという者がいれば、改めて名付け直してもいい、ともカイは言う。
 そう、今回の任務は新たなメガリスの回収だ。
「妖狐たちの願いに呼応するように、宿曜の瞳は異なる空間に彼らを迎え入れてしまいました。その場所というのが、遥か遠く|異世界《スペースオペラワールド》に存在するレジャー&リゾートホテル『シアヌス』――」
 神隠し案件!?
「の、そっくりそのまま複製でございますね」
 よかったスペオペで出せよというツッコミは要らんかった。
「このメガリス、どうも『所有者が一年間、このメガリスで星読みに専念することで、行きたいと願った場所の再現を特殊空間として創り出し、所有者をそこに迎え入れる』といったもののようです。異世界のそれとは言え、あくまで既存の場所の再現なのは、恐らくゼロから何かを創造することが出来ない性質なのでしょう」
 だが、問題はそこではないとカイは言う。
「これ、帰る手段が実質、銀誓館学園生徒並みに鍛えられた能力者か、猟兵でなければ帰る手段がないということです。しかも前者ならそれこそ学園規模の人数が必要な上、時間がかかります」
 やばいじゃん。
「というわけで、皆様に妖狐たちとメガリスの回収をお願いしたいのですね……あ、メガリス自体は妖狐の里に置き去りにされてますので、脱出後に回収、で差し支えございません」
 妖狐たちはどう説得すれば?
「存分に現地で楽しませた上で事情を説明すれば大丈夫でございますよ。今は亡き先代の星読み妖狐たちはともかく、遺された若い妖狐たちは丁度古くなってきていたのもあり、新しいものを買おうかと思っていたところのようで」
 こだわりはないのね。
「と、いうわけでございますので。妖狐の皆様に気兼ねなく現地を楽しんで頂くためにも、皆様にもシアヌスでのひとときを楽しんでいただくことが肝要でございます。幸い、シアヌスには私も以前、先輩に誘っていただき訪問した経験がございますゆえ。いただいてきたパンフレットがこちらにございます。人数分はなかったのでコピーにはなりますがね」
 淡く涼やかなセレストブルーを基調にしたパンフレットには、シアヌスの情報がしっかりと記されている。
 元は惑星アンディヴェヌスに存在するレジャー&リゾートホテル『シアヌス』。
 ホテル内の屋外プールは温水対応で年中開放されている。更に今は夏の時期ということで、『セレスティアルマロウ』なる花をプールに浮かべているそうだ。
 すると起こるのは、時間経過による水の色の移ろい。
 日の高い内は、晴天の如き空色に。
 日が傾く頃には、夕陽と宵の境の紫に。
 日が沈んだ時には、星の形した檸檬を浮かべて。
 そして、可憐なピンク色へと変身する。
「マロウブルー。ご存知ですか? 夜明けのハーブティーと呼ばれるもので、青から紫、そしてピンクへと、時間経過と条件によって三色にその彩りを変えるお茶なのです。夏のシアヌスのプールの色変えも、そこから着想を得たようですね。そして、シアヌスが存在する惑星には、それを可能にする条件も揃っていた」
 それこそが『セレスティアルマロウ』なのだろう。
「プールではサービスで、水出しマロウブルーもいただけるそうですよ。ピンクへの色変え用にスターレモンの輪切り……星切り? ですかね? と、お茶菓子代わりのマシュマロも添えて」
 色の変わるプールを満喫するも、プールサイドのビーチベッドでのんびりも、サービスの水出しマロウブルーを味わうもよし。
 更に今回は半ば強制的に一泊二日になる関係上、ホテルに泊まったり、レストランで夕食をいただいたり、ピンクに染まったナイトプールをそのまま楽しんでもよい、とのことだ。
「ま、要は楽しんだもの勝ちということでございます。先のコンテストで水着を新調した方にもいい機会かも知れませんね」
 一応行方不明案件なのにいいのかな、と思わなくもないが、それが解放の条件だと言うのだから、これも任務、だろう。
 程度の差はあれ呑み込んだ、或いは楽しむ気満々の猟兵たちの様子に、カイはにこりと微笑んで。
 その掌の上に、|虹《グリモア》を輝かせた。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあです。
 リゾートのプールは行ってみたい。プールサイドを散歩するだけ。(入らない)

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:冒険『妖狐の隠れ里の秘密』
 第2章:日常『夏に広がる花の道』

 第1章では、妖狐の里から繋がってる異空間『シアヌス(複製)』の探索をしていただきます。
 探索とは名ばかりでホテルのプールを満喫しよう! の回ですが!
 出来ることはオープニングでも描写しておりますが、詳細は断章にて。

 第2章では、夜または翌朝のシアヌスを満喫していただきます。
 こちらも出来ることの詳細は断章にて執筆予定です。
 向日葵要素とは? も断章で説明させていただければと思います。

 ★メガリス『宿曜の瞳(仮)』について
 取得希望の方は第2章のプレイング冒頭に★の記載をお願いします。
 メタ的には持ち帰ると『過去の絵琥れあノベル企画(終了済)を復刻していない&ノベル受付期間外でも発注出来るようになる』ものです。(タイミングで受理出来ないことはあります)
 希望者複数名の場合はMS判定(基準は非公開)になります。逆に希望なしの場合は銀誓館預かりになります。

 ★グリモア猟兵について
 第2章ではお声掛けいただくことがあれば一部の拙宅グリモア猟兵(※)が、関係性や公共良俗的に不可能がなければご一緒させていただきます。
 なお、全編通して妖狐に事情を説明する猟兵がいなかった場合でも、リプレイ外でカイが説明を行いますので、必ずしも誰かが接触プレを入れる必要はありません。
 (むしろ強く妖狐への説明描写の希望がない限り遊びに注力してほしいまであります)
 ※陸慧、シトロンは如何なる場合でもご一緒できません。また、レオンには必ず|保護者《カイ》が同伴します。
 ※グリモア的には『猟兵たちの先行調査の結果、危険はなく時間経過で帰れると判断し後追い可能になった』判定となります。

 ★シアヌスについて
 詳しくはこちら(確認必須ではありません)
 https://tw6.jp/club/thread?thread_id=125856&mode=last50

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 各章の状況などの追加情報も、断章での描写という形で公開いたします。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきます。

 それでは、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『妖狐の隠れ里の秘密』

POW   :    体力の限り里を駆け回り調査する

SPD   :    秘密が隠されてそうな場所を中心に捜査する

WIZ   :    他の世界の知識を駆使して調査する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 開放感のある床から天井までの大きな窓が並んだ白い壁。
 床には海を思わせる、マリンブルーのカーペット。
 家具のアクセントには、流木やラタン、アイアンを用いて。
 リゾートホテル『シアヌス』――の、再現であるホテルのエントランスはそういった、|現代地球風世界《シルバーレイン》で言うところの地中海風の様相を呈したインテリアが、特別な非日常感を演出していた。
 早速水着に着替えてプールに向かう妖狐たちの姿が見えたので、猟兵たちもチェックインを済ませてプールに向かう。
 着替えなどの準備も終えて、目的の屋外プールに辿り着けば。
 燦々と輝く太陽の下、碧海にも似てゆらゆら揺れる、水面には既に花が咲いている。
 セレストブルーを僅かに濃く、鮮やかにしたような葵の花。あれこそがプールを彩る『セレスティアルマロウ』だろう。
 まだ、水の色は変わっていないが、時間と共にその彩は紫に、そしてピンクに移り変わっていく筈だ。
 プールサイドにはラタンをベースにしたビーチベッドが並べられている他、グリモア猟兵からの説明にはなかったので新設されたのだろうか、少し離れたところには、複数人で一緒に座れそうな、大きく真っ白でほどよく柔らかそうな丸型ソファーを内包した、ラタン風――強度的なことを考えると、あくまで『風』ではあろうが――の装飾ガゼボが見える。それらでの休憩も可能だろう。太陽を感じたいならビーチベッド、日陰でのんびりしたいならガゼボ――もといカバナ、と使い分けるとよさそうだ。
 宿泊客およびプール利用者には、その全員にサービスで水出しマロウブルーが出される。猟兵たちは全員前者に当てはまるので、プールに入らず日光浴のみでも問題なく提供される。
 水出しマロウブルーには、色変え用に星の形をしたレモンであるスターレモンが輪切り、ならぬ星切りで添えられる。更に、お茶菓子代わりのマシュマロもついてくる。淡いパステル調のブルーとパープル、ピンクの三色だ。

 花咲く水面は晴天の如き空色に。
 仄かな甘いフローラルの香りに包まれて。
 快晴の空を花と共に漂うような、不思議な体験。

 そして、魔法の時間――マジックアワーに空と水面がその彩を変える頃まで。
 ひとまずは、日が傾くまでのその時間を、安全確認も兼ねて、のんびりと過ごそうか。
八坂・詩織
2024年水着姿。今年のは和風寄りなので、去年の瑠璃色に金のラメの水着の方が場の雰囲気に合うかなと。

またシアヌスに来れた…と錯覚しそうになるけどここあくまでシルバーレイン世界なんですよね。不思議な感じです…

前来た時は水面が紫からピンクの時間帯だったんですよね。
こうして見ると青い水面も綺麗…せっかくだから青の世界で泳いでみようかな。
仄かなフローラルの香りに包まれて泳ぎ、水面に浮かんで空を眺めれば空の青と水の青が溶け合ってまさに一面青の世界。空に浮かんでるみたいですね…

しばし泳いで少し疲れたらカバナで水出しマロウブルーをいただき休憩を。青もいいけどやっぱり色変わり実験やりたくなっちゃうんですよね。




(「またシアヌスに来れた……と錯覚しそうになるけど」)
 広がる非日常。溢れる南国リゾート感。
 それはかつて、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)が見たものと、何も変わっていなかったが。
(「ここ、あくまでシルバーレイン世界なんですよね。不思議な感じです……」)
 まさか故郷にいたまま、またこの場所に来ることになろうとは。人生、何があるか分からないものである。
 チェックインは済ませたので、詩織も水着に着替えてプールへ。今年も素敵な和テイスト水着を新調したけれど、南国リゾート感に則って去年の瑠璃空に金の星々輝く水着を。
 プールは既に花に染まって、青く碧く揺らめき、煌めいている。
「前来た時は水面が紫からピンクの時間帯だったんですよね。でも、こうして見ると青い水面も綺麗……」
 思わず溜息を吐くほどの美しさだ。美しいものは、いつ見ても美しいのだと改めて感じさせられる。
(「せっかくだから青の世界で泳いでみようかな」)
 水面に身体を預ければ、程よくひんやりとして冷たい。
 それでいて、急激に冷えてしまうということもない。雪女である詩織にとってはもう少し冷たさに振っていても不快には感じなかっただろうが、ここは様々な種族が利用するリゾートホテル。それを考えれば、非常にいい塩梅だ。
 水面を揺らせば、仄かに花の香りが詩織の後をついてきた。
 くるり、碧に背中を預けて空を仰いで揺蕩えば、空と水の彩が溶け合う世界はまさに一面蒼の世界。
(「空に浮かんでるみたいですね……」)
 水の涼やかさと、ふわふわとした浮遊感と、包み込む優しく甘い香りがひどく心地よい。
 しばし、そうして青の世界を堪能して、程よく泳ぎ疲れた頃、詩織はカバナへ移動した。
 身体を拭いて、ふかふかのソファーに腰を下ろせば、柔らかく、しかし沈みすぎない、絶妙な特別感とリラックスタイムを味わえた。
 程なくして、やってきたスタッフにお礼を告げて、水出しマロウブルーを受け取る。その色は、まだプールと同じ、淡くも鮮やかな碧のままだ。
 詩織はそれを、ゆっくりと味わう。
(「青もいいけど、やっぱり色変わり実験やりたくなっちゃうんですよね」)
 教師の性でしょうか、なんて苦笑しつつも。
 それとは別に、この移ろう彩りを堪能しないのは、純粋に勿体ないとも詩織は思うのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・久遠
メガリスって言われると身構えてまうな
なんて死と隣り合わせの青春送った人あるあるを披露しつつ
シアヌスを存分に楽しみましょか
……ほほう、この流木の曲線の使い方ええな
この窓の取り方も……
嫁さんから「ちゃんと楽しんでる?」メールがきて
慌てて水着2025衣装に着替えプールへ

流石にこの水着で泳ぐ勇気はあれへんので
カバナでマロウブルーをいただき……これがカバナか、ほうほう?
マシュマロのブルーとピンクに笑って
「楽しんどるよ」とプールを背景に自撮り、返信
家族も連れて来れたら良かったんやけどねぇ
子供らが喜びそうな花咲く水面を眺めつつパープルのマシュマロぱくり
ふふ、甘っま……あまぁ
マロウブルーの爽やかさで口直ししよ




(「危険はないってことやったけど、やっぱメガリスって言われると身構えてまうな」)
 ある種、銀誓館学園出身能力者の職業病のようなものである。
 そんな死と隣り合わせの青春送った人あるあるを披露しつつ、劉・久遠(迷宮組曲・f44175)もまた、シアヌスを存分に楽しむべくやってきた。
 早速、まずはロビーに向かって、フロントでチェックインを済ませようとしたのだが。
「お?」
 久遠の足は、フロントとは別のところに向いていた。
 その視線の先にあったのは。
「……ほほう、この流木の曲線の使い方ええな」
 ロビーの一角、そのインテリア。
 かと思えば、次は壁、と言うより窓に視線を向けて。
「この窓の取り方も……」
 そう、これもまた職業病。そしてそんな久遠を、家族はよく理解しているようで。
「ん?」
 何やら着信音。久遠がスマートフォンを覗けば、奥様から『ちゃんと楽しんでる?』とメッセージが。
 どうやらそろそろだろうと読まれていたようである。慌てて水着に着替えに向かう久遠。
 白と水色のボーダーが涼やかな薄手のパーカーに、細身のシルエットででスマートな印象を与える膝丈のビーチショーツという出で立ちで、サングラスは額に乗せつつ、泳ぐと言うよりは、日光浴や散策でのんびりスタイルだ。そもそも久遠自身も、この姿で泳ぐ勇気はない。
 というわけでカバナでマロウブルーをいただきに行きます。
「これがカバナか、ほうほう? ラタンそのものやと強度に不安が出るから、人工ラタンを金属フレームに編み込んどるんやね。ソファーフレームもおんなじ人工ラタンかな?」
 やっぱりちょっと職業病。
 そんな時に、お待たせいたしましたと声が掛かれば、どうやら水出しマロウブルーを用意してくれたようで。
 受け取れば添えられたマシュマロのブルーとピンクに、柔く穏やかに笑んだのは、愛の深さゆえ。
 『楽しんどるよ』とプールを背景に、マロウブルーも映るようにして自撮りして、先程のメッセージに返信した。
(「ほんとうは、家族も連れて来れたら良かったんやけどねぇ」)
 メガリスの特殊空間につれてくるわけにもいかないし、猟兵でない家族を本物のシアヌスに連れていくことも出来ない。その事実は一抹の寂しさをもたらすけれど。
 お土産話を聞いた家族が、まるで一緒に行った気分になってくれるように、めいっぱい楽しまなければと、切り替えて。
「花咲く水面は子供らが喜びそうやねぇ」
 先程の写真を見て、子供たちは喜んでくれるだろうか。喜んでくれたらいい。
 そんなことを考えながら、ブルーとピンクが混ざったような、パープルのマシュマロをぱくり、と口に含めば。
「ふふ、甘っま……あまぁ」
 優しい味ではあったけど、久遠的には少々甘すぎたようです。
(「マロウブルーの爽やかさで口直ししよ」)
 清涼感のある味わいが、マシュマロの甘さもほどいていく。
 ゆるく、ほどよく。穏やかな時間は過ぎてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神塚・深雪
【星麟鳳】
シェル(f35465)と雪羽(f44012)と一緒に
※アドリブ歓迎
※昨年の水着でバカンスする気満々

夏休みよー!!
夏休みなんだから遊びにいくのよ! いくんだったら!
それにこれだってメガリス確保っていう、れっきとしたオシゴトだもん!
それにやっぱり危ない目にはあってほしくないし! ね、シェル!

ふふ、きれーい! ……来てよかったでしょ?(ドヤ顔気味で雪羽に)
えー! そこはわかってくれるとこじゃないの?!

……なんかシェルの扱いがひどい気がする。
折角おめかししてるのに! ほら、ほら!
(家族とだからかなのか、色々なもの(INTとか年甲斐とか)が投げ捨てられている気配がちらほらどころかありありと)


シェルリード・カミツカ
【星麟鳳】
雪(f35268)と雪羽(f44012)共に
※アドリブ可
※流石に空気を読んで水着に上着を羽織って

(万年夏休みという言い方はあってるようで間違ってもいるので板挟みのような何かに陥っている)
(それはそれとして雪が騒がしい……)

猟兵である以上生命の埒外としてそうそう危険な目にはあわないとはいえ、目の届くところでというのもわからなくは……
(いや、雪がそこまで考えてるのかは謎だな……)

二人共、はしゃぎ過ぎて転んだりするなよ……。
(どちらも傾向は違えどもはしゃいでいるのは見抜いているので窘めつつ、寛げるようカバナを確保に)
(なんだかんだ、伴侶と娘には甘い。指摘されたら本人は否定するのだが……)


神塚・雪羽
【星麟鳳】
父様(f35465)と母様(f35268)と一緒に
※アドリブご随意に
※年相応の水着姿

夏休みなのは私であって、母様はある意味万年夏休みでは?
と、いうか、前に引っ張ってこられたのも、こういうのでしたよね、母様。

そうして、母様に半ば強引に連れてこられたシアヌスは、とても綺麗で幻想的なところ。
……母様の言うこともたまにはわからな……いな、うん。(母親に同意するのはなんだか負けた気がするお年頃)

母様じゃないんですから変な所で転んだりしませんっ。
適度に泳いで遊んで、父様が確保してくれてカバナで休憩して。
……まあ、こういう夏休みの旅行も、ありなのかな。(それはそれとして母様の意に乗るのは悔しい)




「夏休みよー!!」
 シアヌス――を再現した空間に響く、神塚・深雪(光紡ぐ|麟姫《りんき》・f35268)のはしゃぎ声。
「夏休みなんだから遊びにいくのよ! いくんだったら!」
「夏休みなのは私であって、母様はある意味万年夏休みでは?」
 と、娘である神塚・雪羽(星刻の|麟姫《りんき》・f44012)は指摘したものの。
「それにこれだってメガリス確保っていう、れっきとしたオシゴトだもん! それにやっぱり娘に危ない目にはあってほしくないし! ね、シェル!」
「と、いうか、前に引っ張ってこられたのも、こういうのでしたよね、母様。ねえ父様……父様?」
「シェル?」
「………………」
 あれ、なんか旦那・父親が静かだな、と思った母娘が振り返れば、確かに彼はそこにいたのだが。
 何やら難しい顔をしているシェルリード・カミツカ(|黄金《きん》の|鳳皇《ほうおう》・f35465)である。
(「万年夏休み……は、合っているようでもあるし。違ってもいるしな……どうしたものか」)
 旦那様ビッグラブな奥様と、ファザコ……父親想いの娘に挟まれ板挟みの様相。
(「それはそれとして雪が騒がしい……」)
 娘を前に母としていいのかそれは、と思わないでもないシェルリードだが、振り切れた時の彼女は大体こうだしなと、指摘はしないことにした。雪羽も多分、こういう時の母はこういうものだと悟っているようだし。指摘しても多分効果はないし。
「……まあ、猟兵である以上、生命の埒外としてそうそう危険な目にはあわないとはいえ、目の届くところでというのもわからなくは……」
 ない。いや、寧ろわかるのだ。わかるのだが。
(「いや、雪がそこまで考えてるのかは謎だな……」)
 こういった方面での信用がいまいちない深雪である。とはいえそこは、自分が考えればいいかと考え直したシェルリード。ナイスサポート。
 なお、勿論既に一家、チェックインを済ませて水着でプールに向かっております。
「二人とも合わせてくれたんだものね、ふふふ!」
「……場所が場所だからな。空気は読むさ」
「私は父様に合わせたんですからね、母様」
 赤と白の飾り紐つきの、真っ白な深雪の和風水着。
 それに合わせるような形で、シェルリードはシンプルな青地の膝丈トランクス型水着に、羽織風ラッシュガードという出で立ちだ。雪羽は、ベースは深雪のものとそっくりだが、巫女の袴を思わせる赤のパレオを一緒に纏っている。
 と、水着談義をしつつ、屋外プールに出てみれば。
 広がるのは爽やかな夏空に、花を抱えて揺らめき煌めく碧海を思わせるプールの水面と、まさに青の世界。
「……わあ」
 平素、大人びている雪羽も、その幻想的な美しさに、思わず感嘆の溜息ひとつ。
「ふふ、きれーい! ……来てよかったでしょ?」
 そんな娘の様子を察して、我ながらいい提案をしたとドヤ顔の深雪に、雪羽はハッと我に返り。
「……母様の言うこともたまにはわからな……いな、うん」
「えー! そこはわかってくれるとこじゃないの?!」
 ショック! な顔する深雪さん。
 一方、素直に同意するのはなんだか敗北感。ゆえ、やっぱりツンとしてしまう雪羽である。複雑なお年頃です。
「二人共、はしゃぎ過ぎて転んだりするなよ……」
 自身が余り泳ぐつもりがないのと、どちらも傾向は違えどはしゃいでいる……そんなことはしっかりとお見通しな夫、兼、父たるシェルリードは、たしなめつつも二人が疲れた時に休憩出来るよう、カバナの確保に。
 ソファーが広いから、家族三人で寛いでも十分すぎるほどの広さだ。尤も、この嫁と娘は距離を詰めてくる気がするが。
「母様じゃないんですから、変な所で転んだりしませんっ」
「……なんかシェルの扱いがひどい気がする。折角おめかししてるのに! ほら、ほら!」
 自分はしっかりしてます手がかかりませんアピールの娘・雪羽と、折角の休日なんだからもっと甘くしてくれてもいいのよ主張な嫁・深雪。
 溜息吐くしかないシェルリード。だが、二人を前に纏う空気は、分かるものにしか分からないが、実は二人がいない時よりずっと、優しいのだ。本人にそれを伝えれば、きっと否定してしまうだろうけれども。
 そして、そんな眼差しを向けられている自覚があるのかないのか、インテリジェンスの値とか、年甲斐とか、遠慮のいらない家族であるゆえか、躊躇いなく投げ捨ててきた様子の母親に、雪羽もまた、今度は呆れの溜息ひとつ吐きつつも。
 適度に泳いで遊んで、疲れたらカバナで休憩して。そんな時間は、確かに満ち足りたものであったから。
(「……まあ、こういう夏休みの旅行も、ありなのかな」)
 心の中では素直にそう、思うのだ。
 ……と言っても口には出さないんですけどね!
 母の思惑通りになったような気がするのは、やっぱりちょっと癪なので!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アンジェリカ・ディマンシュ
リカ(f40842)と
惑星アンディヴェヌスに存在するレジャー&リゾートホテル『シアヌス』……その複製体の世界、ですか
しかし、良い景色ですわね
セラスク水着を着て日光浴をしながら、リカと共にプールサイドに

色々と立て込んでいて、出かけるのも久しぶりでしたからね
今日はゆっくりと楽しみましょう

そう言って一緒にプールを泳ぎ、マロウブルーの香りと色彩を楽しみながら泳ぎ、その次はティーパーティーを
水出しマロウブルー、ピンクへの色変え用にスターレモンの輪切り、お茶菓子代わりのマシュマロも添えて、ですか
中々に楽しみなお茶ですわね

そしてリカ、プレゼントありがとうございます
そう言ってリボンを受け取りましょう


早門瀬・リカ
アンジェリカ(f40793)と

折角だし楽しませてもらおうか
アンジェの誕生日もお祝いしたいし、
お出かけも久しぶりでドキドキしてしまうよ

複製とはいえ異世界のリゾートホテルの
雰囲気に気分も高揚するね
アンジェと一緒で本当に夢の中にいるみたいかな

じっとしていると落ち着かないし、
水着姿でプールで一緒に泳げればかな
アンジェも綺麗だよ
少しは速く泳げるようになったかと思うし
競争してみるのもいいかもね
仄かな甘いフローラルの香りとピンク色に
変わっていく様に花の中にでもいるようだね

それからマロウブルーでちょっとしたお茶会気分かな
この機会にアンジェにプレゼントを渡そう
光りの当て方で色が変わるお洒落なリボンだ

アドリブ歓迎




 燦々と輝く太陽は、しかし決して不必要に肌を焼かず。
 むしろ晴れやかに澄み渡る夏空と、光を受けて輝く碧海にも似た水面を美しく演出している。
「惑星アンディヴェヌスに存在するレジャー&リゾートホテル『シアヌス』……その複製体の世界、ですか」
 アンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)は、実際のシアヌスを訪れたことこそないものの、その審美眼で精巧に模倣されているのだろうなと感じた。それは外観だけでなく、空気感とでも言うのだろうか。
「しかし、良い景色ですわね」
「そうだね。折角だし、楽しませてもらおうか」
 傍らには、早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・f40842)の姿があった。今日も愛らしい姿をしているが、れっきとした男性であり。そして、アンジェリカとは恋人同士でもある。
「お出かけも久しぶりでドキドキしてしまうよ」
「色々と立て込んでいて、出かけるのも久しぶりでしたからね。今日はゆっくりと楽しみましょう」
 数ヶ月前には故郷――厳密には、アンジェリカにとっては少し違うのだが――で戦争もあったし、終戦を迎えてからも、その後処理などにも追われていた。
 折角世間は夏休みでもあることだし、一応任務ではあるものの、楽しむことが任務ということだし、ここで羽を伸ばすのも悪くないだろう。
(「それに、アンジェの誕生日もお祝いしたいし」)
 八月は、リカの愛する恋人が世界に生まれてくれた、祝福の月だ。このタイミングで小旅行のようなことが出来るのは、タイミングに恵まれたと言える。
「しかし、複製とはいえ異世界のリゾートホテル……って雰囲気。気分も高揚するね」
「そうですわね。まるで真夏の夢を見ているかのよう。今は夜ではないですが」
「うん、本当に……夢の中にいるみたいかな」
 アンジェと一緒だね、とリカが微笑めば、アンジェリカもそっと微笑み返す。
 こうして、言葉と笑顔のやり取りに、花を咲かせるだけでも幸せなのだけれど。
「じっとしていると落ち着かないし、プールで一緒に泳げれば、かな」
「ええ、リカ。喜んでご一緒いたしますわ」
 まずはプールサイドに腰掛けて、脚のみプールに浸るアンジェリカと、一足お先にプールへ浮かぶリカ。
 リカの出で立ちは、南国の緑を思わせるエメラルドグリーンのオフショルダービキニにスイムスカート、それに合わせたリボンにシューズ、留め具に淡いブルーの花飾りと、間違いなく夏らしく、可憐なものたが。
「セレストブルーに染まるプールもいいけれど」
 その眼差しは恋人の元に。
「アンジェも綺麗だよ」
 すらりとしたシルエットを引き立てるスクール水着の上から、マリンブルーカラーに純白のセーラー服が眩しい。上半身の露出は控えめながら、それが彼女の清らかさ、凛とした美しさを十二分以上に引き出している――と、リカは感じた。
 今度は少しはにかみながら、けれど、愛する人にそう感じてもらえたことがだろうか、どこか誇らしげに微笑んだアンジェリカに、リカも満たされた心地になるのだ。
「少しは速く泳げるようになったかと思うし、競争してみるのもいいかもね」
「では、試してみましょうか」
 そうして二人、端から端まで泳いでみたり、ただゆらゆら揺蕩ってのんびりしたり。軽く水をかけ合ったり……などなど、セレスティアルマロウの咲くプールを満喫。
「色が変わっていく……フローラルの甘い香りも仄かにするし、花の中にでもいるようだね」
「ええ……とても幻想的な体験です。……リカ、疲れてはいませんか? カバナから、休憩しながらプールを眺めてみませんか」
「いいね、アンジェに渡したかったものもあるし」
 そうして、空が魔法の時間、黄金と薔薇色で彩られる夕暮れに、二人はカバナへ向かい。
「それでは、水出しマロウブルーでティーパーティーといきましょうか」
「ちょっとしたお茶会気分かな。ああ、ちょうどスタッフさんが来てくれたみたいだね」
 マロウブルーの水面は先程までの青と全く同じ色。ここもこれから紫へと変わり、そして添えられたスターレモンの雫を落とせば、ピンクへと変わるのだろう。
 添えられた、それらの色のマシュマロに視線を落として、アンジェリカがふふと微笑む。
「中々に楽しみなお茶ですわね」
「っと、アンジェ。その前に……」
 リカは、スタッフから別のものも受け取っていた。
 プールで泳いでいる内は、濡れないようにと預かってもらっていたのだ。
 その小さな、けれど丁寧にラッピングされた箱を、アンジェリカに渡して。
「誕生日おめでとう。これを受け取って欲しいんだ」
「まあ……」
 箱の中身は、美しく手触りもなめらかなリボン。けれど、それだけのリボンではないことに、アンジェリカは気がつく。
 黄金を生む夕陽にそれを透かしながら、角度を変えてみれば、まるでこのプールの、そしてマロウブルーのように、彩りが移ろう。
「光の当て方で色が変わるお洒落なリボンだ」
「リカ、プレゼントありがとうございます」
 アンジェリカはそのリボンを、リカにそっと手渡す。
 その意味するところをリカも察した。元より、そのつもりでもあったのだ。
 リカによって、リボンはアンジェリカの髪を束ねて彩る。そうして二人、また顔を見合わせ微笑むのだ。
 その横顔は、魔法の時間に照らされていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『夏に広がる花の道』

POW   :    ちょっと向日葵畑に寄り道していこう

SPD   :    向日葵畑を眺めながらゆっくり移動しよう

WIZ   :    向日葵畑の写真を撮ったり絵を描いていこう

イラスト:もちつきかがみ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 シアヌスでのひとときも夜を迎え、プールもピンクに染まる頃。
 猟兵たちも夕食をとり(東南アジア風絶品料理が楽しめた)、部屋へと戻り夜を、或いは翌朝を過ごす準備を始める。
 部屋自体も人数にかかわらずスイートルームを確保することが出来(料金は既に支払われている、とフロントスタッフは言っていたが、恐らく複製空間のため支払いの必要がないことに、メガリスが整合性を取ったものと思われる)、ラグジュアリーな空間に広々としたダイニングやキッチン、バスタブにベッドルームは勿論のこと、オプションでバトラーサービスもつけられ、三人以上のグループ向けルームには、ジム、ミニバー、カラオケルームのいずれかがついている(なお、三人以下でも希望すればこの豪華な部屋を使っていいとのことだ)という贅沢っぷりだが。
 やはりこのホテルの夜の目玉は、ピンクに染まったナイトプールだろう。
 設備自体は昼のものと変わりはないが、まず何よりも夜の闇に包まれたことで、プール内は勿論、プールサイドもライトで煌めくラグジュアリー空間に変貌を遂げている。それでいて光の量は眩しすぎない程よいものであり、品の良さは損なわれていないと感じられる。
 また、プールサイドやビーチベッド、カバナで味わえるドリンクがより充実しているようだ。まず、アルコールが解禁される。モヒート、ピニャコラーダなどの南国を感じられる定番ドリンクメニューから、高級感あるシャンパンもある。
 そしてオススメはふたつあり、ひとつはスターアンディスリングなるカクテルだそうだが……これはいわゆる地球で言うところのシンガポールスリングのようだ。チェリーレッドのドリンクに、添えられたチェリーとスターレモンの星切りを挿した、見た目からして鮮やかでお洒落な一品だ。
 もうひとつはマロウブルー・クーラーだ。作り方はほとんどダージリン・クーラーと同じだが、紅茶ではなくマロウブルーでリキュールを作り使用している。漬け込むことの時間経過により、色は最初から紫ではあるが、スタッフが目の前でシェイクしてくれるため、紫からピンクへの変化は十分に楽しめるという。
 当然ながらノンアルコールのソフトドリンクやモクテルのメニューもある。こちらはマロウブルー、もしくはスターレモンを用いたものがメインとなっており、昼にも出されたマシュマロつき水出しマロウブルーの他、マシュマロがなくなり代わりにタピオカドリンクにしたタピオカマロウブルー、スターレモンをふんだんに使ったスターレモネードがある。また、ノンアルコールのモヒートもあるそうだ。
 他、浮き輪やセレスティアルマロウの形のフロートマットの貸し出しもあり、輝くプールで遊ぶことも出来る。
 しかし、あえて夜ふかしせず、早朝を待ってエントランスアプローチガーデンの散策に出るのもいいかもしれない。
 と言うのも、もしかしたらこの空間に来てすぐに猟兵たちは見たかも知れないが、アプローチのガーデンスペースには、ゲストを出迎えるように、或いは見送るように、向日葵の道が出来ていた。
 この向日葵は、ここアンディヴェヌス(の、模倣なのだが)にしか咲かない『アンディソーレ』なる花だという。この花は、夜になるとまるで萎れたように俯いてしまう。しかし、実はこの間、月の光を溜めているのだ。
 そして朝を迎え、陽が昇ると、伸長成長の時期を過ぎたものも含めて、太陽を追いかけるように顔を上げる。花の高さが元に戻った瞬間、その一瞬、アンディソーレの花弁は溜めていた月の光を放出し、光の粒子を周囲に弾けさせると同時、鮮やかなペリドットの色に輝くのだ。その一瞬を共に見ることが出来た恋人や|伴侶《パートナー》は、希望の光で満たされるように、末永く幸せに、共に在れるというジンクスがある。
 ……ちなみにこれは必ずしも恋人や伴侶が『二人きりで見ないといけない』というわけではないようだ。カップルの他に連れがいてもいいし、ダブルデートでもいいし、夫婦なら子供など家族が一緒でもいい。なんならスマホの電波も何故かシルバーレイン内に限り通っているようで(異界駅の親戚かな?)、テレビ電話越しに見てもジンクスの対象になる、とのことだ。
 早起きして、その一瞬の目撃者になるのもいいだろう。

 楽しかったシアヌスでのひとときも、もうすぐ終わる。
 何をして過ごすも自由だが、どうか、悔いのないように。
劉・久遠
スイートルーム内を一頻り|観察《職業病》し尽くしたら
せっかくやし一度はプールに入ろかな
綺麗なピンク……あ、ええこと思いついた
スタッフさんにお願いして水面に浮かぶ姿を撮ってもらい
「ママ色に染まりました」と送信
礼を言いながらカバナでマロウブルー・クーラーを色・味共に楽しんでると
「こっちはパパ色だよ♪」と嫁から
そこには青い入浴剤のお湯に浸かる双子の画像が
何それかわえぇボクなんで其処に居らんの(ごろごろ悶え

早朝に向日葵の道をテレビ電話しながら散策
朝から元気な子供らの姿に笑いつつその時を待つ
あ、もうすぐやない?
黄金にも似た美しい黄緑に家族の幸せを思い
もう少ししたらパパ帰るから、そしたら夏休み最後に遊ぼな




(「せっかくやし一度はプールに入ろかな」)
 何やらやり遂げた顔で、夜のプールへと足を向ける劉・久遠(迷宮組曲・f44175)。ちなみに表情の理由はスイートルーム内を一頻り|観察《職業病》し尽くしたためです。収穫収穫。
 さて、いざナイトプールへ着いてみれば、確かに広がる水面は薔薇色にも似たピンク色。そして久遠の目から見れば、照明の数や位置、光量もその彩を引き立てるべく緻密な設計のもと、設置されているのだと分かる。
「綺麗なピンク……あ、ええこと思いついた」
 スタッフさんよろしゅうおたのもうしますー、とスマホ手渡し、久遠自身はピンクの中へ。
 ゆるやかに浮かぶ姿で先程のスタッフに視線を戻せば、撮りますよーの掛け声。ニッとゆるやかに笑めば瞬間、パシャリとシャッター音。
 撮れた写真を確認して、送信するのは勿論、家族の元に。
(「『ママ色に染まりました』っと」)
 淡いピンクのよく似合う、愛する人の色。
 送信完了を確認して、スタッフさんにお礼を言って、それからカバナで一息ついて。
 オーダーすると目の前でシェイクされたマロウブルー・クーラーを受け取り、その色と味をのんびり堪能していると。
「うん?」
 何やら短く通知音。
 見てみると、新着メッセージ一件……いや、二件か。画像も送られてきているようだ。
 見れば奥様からの返信で『こっちはパパ色だよ♪』と。
 同時に送られてきた画像へと視線を落とせば、そこには青い入浴剤のお湯に浸かる、愛すべき双子の姿。
「何それかわえぇボクなんで其処に居らんの……!」
 ごろんごろんとソファーで悶えパパ。思わぬ形で『旅行もいいけど、家には家のよさがあるよね』を実感することとなったようである。かけがえのない家庭があるとね、なおさらですよね。


 翌日の早朝。
 久遠はナイトプールでの時間を早めに切り上げて就寝し、起きて支度を済ませてすぐに、エントランスアプローチのガーデンスペースへと足を運んでいた。
 テレビ電話の先から、どこかそわそわしたような、あどけない声がふたつ。
『ねえねえパパ、まだ?』
『まだかな〜』
 朝から元気な子供たちと、それを笑顔で見守る妻の姿に久遠も笑って。
「……あ、もうすぐやない?」
 むくり、と。
 目覚めの時を迎えたかのように、顔を上げる向日葵――アンディソーレ。
 最愛の家族にも見えるよう、カメラを花々に向けた、まさにその瞬間。
 光を放つかのように、花開けば弾ける光の飛沫とともに、|太陽の石《ペリドット》にも似てアンディソーレは輝いた。
 その美しい黄緑の色は、徐々に光を脱ぎ捨てていくけれど、一瞬一瞬が、まるで彩を変える黄金にも似て。
 この輝かしい時を共有出来る、最愛の家族が、いつまでも幸せで在るようにと希い。
 わあ、と弾んだ声が聞こえる、その向こう。
「もう少ししたらパパ帰るから、そしたら夏休み最後に遊ぼな」
 そう告げれば、やったー! と、無邪気に喜ぶ愛しい声が、夏の空にも届くように、響く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織

カイさん(f36455)をお誘いして、カバナで少しお話を。
一緒にシアヌスに行ったのは2年前でしたか、まさかシルバーレイン世界にいながらシアヌスを体感できるとは驚きました…妖狐の皆さんはシアヌスのことなんて知らなかったでしょうに、メガリスの仕組みはどうなってるんでしょうね。異なる宇宙も観測できる望遠鏡なのかな…
望遠鏡のメガリスというだけで興味深いですが。

と、また喋り過ぎてしまいました…
せっかくなので私はマロウブルー・クーラーでもいただこうかと。マロウブルーをカクテルにする発想がなかったので気になって。カイさんは何か飲まれます?
ピンクに変わったプールとカクテルを写真に納めて乾杯できればと。




「一緒にシアヌスに行ったのは二年前でしたか」
「もうそんなになりますか……早いですねェ」
 ナイトプールを臨むカバナに腰を下ろした八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)の隣には、今は紫陽花を思わせる出で立ちの虹目・カイがいる。何を隠そう、彼女が事前に話していた『先輩』とは詩織のことだ。
「まさか、シルバーレイン世界にいながらシアヌスを体感できるとは驚きました……妖狐の皆さんはシアヌスのことなんて知らなかったでしょうに、メガリスの仕組みはどうなってるんでしょうね」
「|銀の雨降る《シルバーレイン》時代から謎多きオーパーツ感はありましたが、メガリスの発生源? を含めた様々な世界と繋がって以降、むしろ謎は深まったような気もいたしますね」
 カイが尻尾をゆらりと振れば、淡い紫の紫陽花が揺れた。そう言えば、紫陽花はリトマス試験紙と逆の反応をするのだったなと詩織は一瞬思ったが、この流れでする話でもない、と呑み込むことにした。
「異なる宇宙も観測できる望遠鏡なのかな……私にとっては、望遠鏡のメガリスというだけで興味深いですが」
「天文部ですものね」
「と、また喋り過ぎてしまいましたね」
 ふと我に返り、苦笑する詩織。カイは気にした様子もなく微笑んでいる。
 この人は、詩織が思考することと、その考えを口にすることを否定しない。それがありがたかった。
 とは言え、折角誘ったのだし、ここでしか出来ないことを何かしたい、とも詩織は思うのだ。
「私はマロウブルー・クーラーでもいただこうかと。マロウブルーをカクテルにする発想がなかったので、気になって」
「ハーブ系のリキュールが存在しているのは私も存じておりましたが、マロウブルーのリキュールとはどのようなものなのでしょうね」
「ね、気になりますよね。カイさんは何か飲まれます?」
「では、私はもうひとつのお勧めを。スターアンディスリング、でございましたね」
 スタッフに声をかけてオーダーを伝えれば、まずは一人が詩織の前で、ガラスシェイカーでのシェイクを披露してくれて。それが終わる頃に、もう一人のスタッフがスターアンディスリングを運んできた。
 乾杯しますか、とカイが問えば、詩織は頭を振った。
 瞬くカイに、詩織はスマホを構えて見せて。
「ピンクに変わったプールとカクテルを写真に納めて、乾杯しませんか」
「ああ、いいですね。では、もう一度スタッフの方をお呼びしましょうか」
 スタッフに撮影を任せて、プールサイドに並んで。
 乾杯の声と、グラスを重ねた短くも涼やかな音色。
 それと同時に、パシャリとカメラの音が鳴る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンジェリカ・ディマンシュ
リカ(f40842)と
ケルベロス世界とは異なる文化圏のスイートルーム
良い雰囲気ですわね
リカ、今日はゆっくりとしましょうか

ナイトプールでゆっくりと夜の熱を冷まし、ノンアルのスターレモネードで喉を潤わせましょうか
月の光も綺麗な事ですし、明日の向日葵の開花を楽しみに待ちましょう
そう言って団欒を行った後、早めにリカとダブルベッドで一緒に就寝

そうして夜明け前に一緒に目覚め、アンディソーレの一瞬の輝きを共に見ましょうか

リカ、今回は誘って下さいましてありがとうございます
今度は、わたくしが何か良い所に誘ってあげますわね
そう言ってリカの頬にフレンチ・キスを

アドリブ歓迎


早門瀬・リカ
アンジェリカ(f40793)と

あっという間に夜になってしまったかな
メガリスの力でスイートルームが確保出来るようだし
存分に二人で堪能させてもらおうか
二人でこれだけの部屋を自由にできるなんて贅沢だな
ピンクに染まったナイトプール・・・昼間とはまた違った雰囲気で
しばらくは眠れそうにないし、アンジェとプールサイドで
ノンアルのスターレモネードで乾杯させてもらうかな
プールで泳いだりして気分を発散するなどして夜更かしは程々にだね
早朝には向日葵の道にアンディソーレの一瞬の輝きは是非、
アンジェと一緒に見れらたらだね
最後誘いに応えてくれたアンジェには感謝するよ

メガリスの回収や妖狐たちの説明は忘れずに
アドリブ歓迎




「ふう、あっという間に夜になってしまったかな」
 休憩も兼ねて、早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・f40842)はアンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)を伴い、一度部屋へと戻る。
「メガリスの力でスイートルームが確保出来たようだし、存分に二人で堪能させてもらおうか」
「ええ。複製とはいえ、ケルベロス世界とは異なる文化圏のスイートルーム……どのようなものでしょうか」
 財団令嬢であるアンジェリカにとっては、スイートに泊まるという経験自体は珍しいものではない。が、流石に異世界のリゾートホテルのそれともなると、流石の彼女にとっても慣れたものとは言い難い。だからこそ興味があった。
 果たして、ドアを開けて改めて部屋を軽く探索してみれば、地中海風の中にもどこか、フューチャリスティックであったり、エキゾチックであったりな様式が混ざっているようだ。かと言って、リゾート感や品の良さが損なわれているということはないようだ。
「良い雰囲気ですわね。リカ、今日はゆっくりとしましょうか」
「そうだね。二人でこれだけの部屋を自由にできるなんて贅沢だな」
 部屋でもなかなか楽しめそうだけれど、その前に。
 少しだけ休憩して、また部屋を出る。向かう先は、すっかりその彩を変えたナイトプールだ。
「本当にピンクに染まってる……昼間とはまた違った雰囲気だね」
「星の形のスターレモンが幾つも浮かんでいる様子は、まるでピンクの星空ですわね」
 水面の色を鮮やかに魅せ、それでいて眩しすぎない絶妙な光の加減のお陰でとても幻想的だ。
 並んでプールサイドに腰掛け、脚で水面を軽く揺らし、夜の熱を冷ます。明日は早起きの予定だが、それでもまだ高揚感で眠れそうになかった。
「じゃあ、アンジェ。乾杯しようか」
「ええ、これで喉を潤わせましょう」
 キン、と涼しくも小気味よい音が鳴る。
「この後は……少し泳いだ方が気分も発散出来るだろうし、程よく疲れればよく眠れそうだ」
「そうですわね。月の光も綺麗な事ですし、明日の向日葵の開花を楽しみに待ちましょう」
「うん、夜更かしは程々に。だね」
 そう、折角ならナイトプールも、アンディソーレも楽しみたい。
 二人はゆるく泳いだり、談笑に花を咲かせるなどして時を過ごしつつ、日付が変わる前には部屋に戻ってベッドに潜った。
 勿論、二人ダブルベッドに寄り添って。


 そして翌朝。
 いや、それよりも早い、夜明け前。まだ少し、空に星が残る頃。
 エントランスアプローチガーデンの向日葵たちは、まだ目覚めてはいないようだった。
 一緒に見ようと約束した一瞬までには、まだ時間がありそうだった。アンジェリカは並んでゆっくり歩く、その最中にリカの名前を読んで呼び止めた。
「リカ、今回は誘って下さいましてありがとうございます」
「アンジェ……こちらこそ、誘いに応えてくれてありがとう、だよ」
 微笑み交わした、その瞬間に。
 地平線の向こうから、黄金がせり上がってくる。
 それを合図に、追いかけるようにアンディソーレは目を覚まし。
 花開ききるその刹那、光の飛沫が弾けて消えて、世界が|太陽の石《ペリドット》の光に包まれた。
 この一瞬の輝きが、見たかったのだ。他でもない、リカとアンジェリカ、二人で一緒に。これからも幸せに、共に在れるように。
 だから、アンジェリカは次の約束をする。
 次があるように。
「今度は、わたくしが何か良い所に誘ってあげますわね」
 約束は誓い、その証のように頬に触れるフレンチ・キス。
 リカはぱちりと瞬いて、頬を染めたが、それでも次の瞬間には、はにかむように微笑んで。
 次が――未来がある幸せに、光の中で二人、また微笑み交わすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神塚・深雪

【星麟鳳】
シェル(f35465)と雪羽(f44012)と一緒に
※アドリブ歓迎

(家族と(特にシェルと))末永く幸せに……(ごくり)

えー、折角なのにー
こんなとこ来れる機会なんて滅多にないのにー
(こういう所でいちゃいちゃ出来るなんて、ほんとうにない!)

起こされる前に起き出し
これでも夜明け前に起きるとかは昔はよくあったからその気になれば起きれます
大事なものが見れないなんていう事は無いようにぐっすり眠ってる雪羽を起こして、三人で『アンディソーレ』を観にいきましょ!

ペリドットって確か八月の誕生石だったっけ?
このタイミングでって凄く絶妙よね
うん、すっごく綺麗
今度は、三人でホントのシアヌスに行ってみたいな


シェルリード・カミツカ

【星麟鳳】
雪(f35268)と雪羽(f44012)共に
※アドリブ可

(双方からのなんともいえない気配に若干悟り気味な遠い目)

……ともかく
『アンディソーレ』が見たいなら、早寝しないと寝坊するぞ
2人ともはしゃいで疲れてるだろう(等と、2人とも寝かせる方向に持っていこうとする)
(独りの時間も欲しいタイプなので、折角なら独りでバーカウンターで静かに過ごしたいので)

朝はなんだかんだ一番最初に起きている
起きて来る順番は予想通り
朝食は『アンディソーレ』を観た後にした方が良さそうだな

成程、これは確かに綺麗だな
確かに終わりきらない夏の盛りには相応しいかもしれない
(それが話を聞きつけた雪のお手柄?なのは言わない)


神塚・雪羽

【星麟鳳】
父様(f35465)と母様(f35268)と
※アドリブご随意に

(父様と)共に在れる……(と、微かに呟いて両手をぎゅっと)

それはそうだけど……
(折角なら、母様より夜更かしして父様独り占めしたい、などと)

起きたら既に父様も母様もおきていた
どうせなら母様より先に起きて父様と2人の時間を過ごしたかったんだけどな
2人に促されて『アンディソーレ』を観に(母様に促されるのは不本意)

向日葵から溢れる光だから、黄色なのかと思ってたけど、ペリドットって緑色だったんだ
思ってたのとは違うけど、想像してたのよりずっと綺麗で、母様はともかく、父様とこの景色が見れたのは、嬉しい
また(父様と)一緒に見れたらいいな




「家族と……末永く幸せに……」
「共に……在れる……」
 ごくりと生唾を飲み込んだ様子の神塚・深雪(光紡ぐ|麟姫《りんき》・f35268)と、若干思いつめ気味に呟きぎゅっと両手を握る神塚・雪羽(星刻の|麟姫《りんき》・f44012)。なお双方|シェルリード・カミツカ《夫ないし父》(黄金きんの鳳皇ほうおう・f35465)𝑩𝑰𝑮𝑳𝑶𝑽𝑬民である。口にはしないが二人が『一緒にジンクスの目撃者になりたい相手』の大部分はシェルリード(特に雪羽にとっては)だ。シェルリードは全てを悟って部屋の天井を仰いだ。
「……ともかく『アンディソーレ』が見たいなら、早寝しないと寝坊するぞ」
「それはそうだけど……」
「えー、折角なのにー。こんなとこ来れる機会なんて滅多にないのにー」
 折角なら、母様より夜更かしして父様を独り占めしたい、なんて可愛らしい独占欲を見せつつも、聞き分けのいい娘と思われたい感もちょっとある雪羽と。
 こういう所でいちゃいちゃ出来るなんて、ほんとうにない! と、家族しかいない空間への安心感とリゾートという特別感ゆえか、下手すると学生時代より緩んでないかとシェルリードに指摘されそうな深雪とで。
 相変わらずの板挟みに気が遠くなりそうなシェルリードだったが、何とか平静を装って。
「二人ともはしゃいで疲れてるだろう、ほら」
 背を押すように女性陣をベッドルームに誘導するシェルリード。最早手慣れた感ある。夫兼父の余裕(?)かな。
「むー……仕方ないですね。母様、父様が言うんだから寝ますよ」
「ええー……まだ夜はこれからなのにー……」
 シェルリードの言うことならと、渋々ベッドインする女性陣。彼女たちがふかふかの大きなベッドに潜ったのを確認して、シェルリードはふうとひとつ溜息を吐いた。
 それから、独り静かにバーカウンターに腰掛けた。家族のことは勿論大切に想っている。が、それはそれとして、独りの時間も大切にしたいのが彼だった。口寂しくなったらバトラーを呼んで何か飲み物でも入れてもらうかと考えながら、シェルリードはしばし穏やかな夜の時間を楽しんだのだった。


 さて、空が白み始めて薄明るく、しかしまだ太陽の姿は見えぬ頃。
 最後まで起きていた筈のシェルリードが、何故か一番最初に起きていた。
 それから彼は妻と娘を起こそうとしたが、そう思った時には深雪は起きていた。
「ちゃんと起きたな。……まあ、何だかんだその辺りは昔からしっかりしていたが」
「ふふー、夜明け前に起きるとかは昔はよくあったから。その気になればちゃーんと起きられます!」
 褒めて! と言いたげな深雪を軽くあしらいつつ、まだぐっすりと眠っている雪羽に視線を向けるシェルリード。深雪も食い下がることはなく、それに倣う。
「朝食は『アンディソーレ』を観た後にした方が良さそうだな」
「ほら雪羽、起きて。大事なものが見れなくなっちゃうわよ!」
「……うーん……むぅ」
 むくりと起き上がる雪羽。
 最後ちょっと不機嫌そうだったのは、眠気のせいもあるが、母より先に起きられなかった上に、その母に起こされたからというのが大部分を占めていたりする。
(「どうせなら、母様より先に起きて父様と2人の時間を過ごしたかったんだけどな」)
 暫定ライバル、母様。
「さて、三人で『アンディソーレ』を観にいきましょ!」
 ざっと食事以外の朝の支度を済ませて、一家揃ってエントランスアプローチへ。
 ガーデンスペースには、まだ眠ったように俯いたままのアンディソーレたちの姿。
「ペリドットって確か八月の誕生石だったっけ? このタイミングでって凄く絶妙よね」
「そうだな、まさにこの月ならではか」
「パンフレットに書いてましたけど、ガーデンに植えられてるのも今月中だけだそうですよ」
 なんて、家族で言葉を交わしつつ散策していると。
 ついに、その一瞬が訪れた。
「わあ……」
 声を上げたのは深雪だったか、雪羽だったか。
 地平線の向こうから、淡い黄金色を連れて顔を出した太陽。
 向日葵たちは目覚めの時を迎え、太陽へと顔を向ける。
 そして背筋を伸ばして、花開いたその瞬間。
 弾けた光の飛沫と共に、温かな黄緑の光が三人の視界いっぱいに広がった。
「成程、これは確かに綺麗だな」
「うん、すっごく綺麗」
「確かに終わりきらない夏の盛りには相応しいかもしれない」
 シェルリードでさえそう評し、深雪も頷く。
 これは話を聞きつけた妻の手柄かと一瞬思ったシェルリードであったが、深雪が勢いづきそうなのでそのまま沈黙することにした。
「向日葵から溢れる光だから、黄色なのかと思ってたけど、ペリドットって緑色だったんだ」
 八月の宝石の色を、異世界の向日葵がもたらす光で知る。
 それは雪羽にとって奇妙な体験ではあったけれど、同時に特別なものを見られた、という気持ちも確かに強かった。
(「思ってたのとは違うけど、想像してたのよりずっと綺麗で、母様はともかく、父様とこの景色が見れたのは、嬉しい」)
 だから、そっと希ったのは。
「また一緒に見れたらいいな」
 主に父様と、ではあったが。
 そんな娘の心境を知ってか知らずか、母である深雪は柔らかく微笑んで。
「今度は、三人でホントのシアヌスに行ってみたいな」
 妻であり母である、彼女もまたそう、希わずにはいられないのだった。

 余談だが、『宿曜の瞳(仮)』は銀麟の社で預かることとなった。
 深雪の願いが叶うのも、そう遠いことではないのかも知れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年08月31日


挿絵イラスト