●アイス
アイス、と一口に言ってもアイスクリームなのか、アイスミルクなのか。
はたまたラクトアイスなのか、氷菓なのか。
まあ、細かいことはいいっこなしである。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の屋敷を目指して、茹だるような太陽を受けながら、ぷかぷかと『陰海月』は触腕の一つで大きな日傘で自身に陰を落とす。
そして、さらに別の触腕でビニール袋を幾つか抱えていた。
ビニール袋の表面には汗のように水滴が付いている。
中身は冷たいもの。
まあ、ここまで言っておいてわからないわけがないだろう。
そう、アイスである。
あれ? 3月に懸賞で当たったはずではないか?
あれはすっかりみんなで食べてしまった。
今年の夏はどうにも先取りが過ぎるような気がしてならない。
梅雨の時期からすでに暑かったし、真夏日だってやってきていた。そんなわけだから、アイスの消費量も加速度的に増してしまうのも無理ない。
「ぷきゅー……」
今日も最高気温は、頭がクラクラしそうな数字を叩き出している。
何もこんな日におつかいにイカなくても、と思う。だが『陰海月』自身が立候補したのだ。
他のみんなはどうにもこの夏の暑さにやられてヘバッているようだった。
友達である『霹靂』なんてその羽毛ゆえに大変な思いをしている。
こういう時は下手に外に出ないことだ。
「ぷきゅー……」
そういう気遣いもあった。
だが、やっぱり暑いものは暑い。
一体全体、今年の夏はどうなっているのだろう。
抱えた袋は、その量も相まって長持ち思想である。
しかし、『陰海月』は、これもすぐになくなるのだろうな、と思っていた。
それほどまでに暑い。
彼自身は一日一個食べるのが限界だった。
氷菓であっても、やはり食べると体が冷えすぎてしまうのだ。しびしび動けなくなってしまうのは避けたかった。
とは言え、この暑さ。
「ぷきゅ……」
二個、いや三個はいけるような気がする。
とは言え、本来ならそんなに食べないほうが好ましいのだ。
しかし、暑い。
もう何度暑いと思ったかわからない。
「ぷきゅ……」
これだけ暑いとおつかいもままならない。
であれば、先日動画で見かけた『簡単手作りアイス』に挑戦してもいいかもしれない。
確かヨーグルトと牛乳、ハチミツなんかがあればできたはずだ。
まあ、それもこのアイスが無くなってからの話だろう。
今は、兎に角早く屋敷に帰りたい――!
成功
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