ゴーストタウン『佳村医院』
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W県S村の集落には『佳村病院』という廃院が存在する。
木造2階建ての施設には院長家族の住居スペースの他に手術室や来院・入院患者用の病棟がある。集落には似つかわしくない規模のその病院だが医師の腕は確かであり、辺境にあるにも関わらず絶え間なく人が訪れていた。
しかし、ある日整形手術中に医療事故が起きた。顔に大きな障害が残るその事故が原因で院長は気を病み、院内で首を吊って命を絶った。
当然病院はそのまま閉鎖。集落も時が移ろったことで過去の栄光も語られることは無くなりただ朽ち果てるのを待っていたのだが、最近になってある現象が起きていた。
いわく、夜になると窓に影が蠢き、病院の一室から時折眩い光が発せられるのだという。
故にそれを聞いた人々は口々に語る。
病院で自殺した院長が幽霊となり新たな患者を求めているのだと――。
●
「噂と言う物は面白いものですね。真実は違うのに、全く別の要因とほんのわずかな共通点があるだけで別の物へと歪めてしまうのですから」
昼の残暑を引き摺る夜も深まった頃、ハイ・ティーとして出された紅茶と簡単ながらと出されたローストビーフサンドウィッチを摘まみながら猟兵はグリモア猟兵、ディル・ウェッジウイッターの話に耳を傾けていた。
「『院長が自殺した廃院に幽霊が出る』……そんな噂の廃病院、『佳村病院』は現在ゴーストタウンとなり、オブリビオンが出現するようになっています」
ゴーストタウンになったのは何十年も前に廃業してしまった病院だ。今まではただひっそりと朽ちるのを待っていた廃病院だが、最近になって夜になると時折院内から強い光が発せられ、同時に院内の廊下を歩く人影が見えた、という現象が発生した。
その原因が先の噂となって広まりかけているという。
「噂の流布はまだ近隣だけで済んでいますが、噂が広がれば肝試しに来た一般の方にも被害が出る可能性があります。皆様には現象が見られる今の時間帯から現場へ赴き、このゴーストタウンに巣食うオブリビオンの討伐をお願いします」
ゴーストタウンということはここに巣食うのは自殺した院長や患者のゴーストなのか?と猟兵が問えばディルは首を横に振った。
「先ほどの噂こそありますが、実情は大きく違うようです。院長は自殺していませんし、美容外科ではなく外科医師並びに村医者としての役目を果たす総合医だったようです。
もちろん入院患者や亡くなられた方もいらっしゃったようですが……今回集まっている敵を呼び込む原因では無さそうです」
なぜこうも真実が捻じ曲がってしまったのか……それを分かる者はいないし、この話の本題ではない。
求められるのはこの状態を解決する力、それだけである。
ディルは持ち込んでいたタブレットの画面を点けると一枚の画像を猟兵に見せる。
その画像は古びた紙の画像。ボロボロな紙面に病院の見取り図がうすぼんやりと描かれていた。
「とても古い施設なので探すのは大変でしたが、見つける事ができました。
この病院は手術室を中心に病棟、診察スペース、居住スペースが繋がっています。この一番真ん中、手術室にこの廃病院で一番強いオブリビオンがいる事は予知しております。皆さんには先の3か所のどこかに存在する鍵を入手後、手術室へと向かってください」
暗い病院内で探索すればいいのかというとそうでは無い。院内には誘蛾少女という埃と汚泥に塗れたオブリビオンが徘徊しているので、これを撃破しながらの探索となる。
暗い場所でも活動できる誘蛾少女による奇襲を受ける形もあるかもしれないが、猟兵が苦戦するほどの強さは無い。
そして、彼女たちの特性を活かせば楽に倒せる。
「彼女たち誘蛾少女は蛾の特性を持つからか光に強く引かれ、暗い院内に小さな灯りがついているだけで無防備に寄ってくるようです。この習性を使えば無駄な戦闘を行わずに探索もできるでしょう」
先も言った様に決して苦戦する相手ではないが、体力を温存したければこの習性を覚えていてもいいかもしれない。
そして鍵を手に入れ手術室に入った先、そこにこの病院で一番強いオブリビオンが存在している。
どんな敵かと問えばディルは難しい顔をして。
「大きな鍵を持った少女の様でしたが、後は眩い光に照らされて上手く見えませんでした。お力に成れず申し訳ありません」
ただ、とディルは言葉を紡ぐ。
「その光は少女から発せられた光の様でした。平時に見た私でも目が眩んだのに闇夜に眼が慣れた皆様がその光を直視したらその隙は大きく、致命的な物になる事でしょう。どうぞ、お気を付けを」
猟兵がティーカップをソーサーに戻したのを確認すると、ディルはグリモアを起動させると紅茶の香りと共に猟兵達を件の病院――『佳村診療所』へと誘うのであった。
遭去
遭去です。探索ホラゲーの主人公たちってなんでわざわざ夜に危ない場所へ行くんですか?
●舞台
日本のどこかにある廃病院が舞台です。ゴーストタウン化した影響か院内の様々なものが手つかずのまま放置されている状態になっており、この中のどこかに鍵があります。
手術室を真ん中に病棟(2階建て)、居住区域、診察スペースが廊下で繋がっています。
時間帯は夜中の1時2時頃。
1章のみほんのすこし驚かせる描写入れるかもしれません。苦手な方はプレイング冒頭に『✕』をお入れください
●1章
誘蛾少女戦
彼女たちを倒しながら手術室まで進んでください。
油断しなければ1人でも普通に対処できますが、OPの通り灯りをうまく使えばもっと対処しやすくなります。
●2章 ボス戦
光を使う敵です。暗闇の中でその光は皆さんの目には眩しすぎるかもしれません
それでは皆さん、良い夜を
第1章 集団戦
『誘蛾少女』
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POW : 汚泥弾
【汚泥の如き呪詛塊】を放ち、命中した敵を【呪詛】に包み継続ダメージを与える。自身が【汚れた姿を】していると威力アップ。
SPD : 凶兆の化身
自身に【凶兆のオーラ】をまとい、高速移動と【疫病】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 穢れの気配
【ケガレ】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【疫病】を誘発する効果」を付与する。
イラスト:七夕
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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蒸し暑さが残る深夜2時。猟兵の目の前には所々の窓が割れ、屋根や壁の一部は木々の一部となり果てた施設の姿。
古錆びれた看板には『佳村医院』の字がわずかに残っており、ここが今回の目的地だとかろうじて証明していた。
最早どこから入っても問題なさそうな程に老朽化した施設をぐるりと回り、雑草をかき分けた先にやっと目当ての扉を見つけた。
僅かに力を入れれば壊れそうな扉を押すと金属が悲鳴を上げながらその口を開ける。
廊下は暗く、月明かりが自身の背後から差し込んだ距離しかぼんやり見える程度。
目を凝らせば時代こそ感じられる物の、まるで今も診察を行っているかのように設備は整っている院内の様相が見える。硝子が差し込まれている窓――外から見た時は割れていたはずなのに――には月明かりすらを映しこまない。おそらくゴーストタウン化した際に歪んてしまったのだろう。
まずはこの施設を探索し手術室の鍵を見つける、計画を思い出しながら猟兵達は持ち込んだ光源の灯りを点けると慎重に玄関を潜った、瞬間、
――バンッ!
突如背後で音もなく扉が閉まった。
慌てて扉を引くも、先ほどとは打って変わってピクリとも動かないではないか。
……ズッ。ズズズッ、ず、
それは遠くか、近くか、上か下か。何かを引き摺るか細いが耳に入った。
この音の主は看護師でも患者でもなく、夜の闇に惹かれた汚泥まみれの少女たち。先ほどの音は今しがた来た猟兵を歓迎するためにわざと鳴らしたのだろう。
ならばこちらも歓迎の礼をするべきだろうか。
意を決した猟兵は2メートル先を見れるか分からない光を頼りに、院内の奥へと足を踏み入れるのだった。
御鏡・幸四郎
「かつては地域医療に尽力していた病院だったのでしょうに」
簡単に移ろってしまう人々の興味関心に、一抹の寂しさを覚えます。
せめて噂を現実のものにしないために一働きしましょうか。
霊媒眼鏡を通して見れば闇の中でも問題無し。
少し広めのスペースの天井からLEDランタンをぶら下げます。
これで灯りを壊されるまで、多少の時間を稼げるでしょう。
暗がりに身を潜め、残留思念をチャージしながら誘蛾少女が集まるのを待ちます。
この辺りの誘蛾少女が殆ど集まったら、頃合いを見て雑霊弾を発射。
敵を一掃したら、鍵を探して辺りを探索します。
特に隠そうとでもしていないのであれば、恐らくこの辺に……
ビンゴ。
さて、鬼が出るか、蛇が出るか?
●
「かつては地域医療に尽力していた病院だったのでしょうに」
踏むごとにリズムを刻んで鳴く廊下を進みながら、御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)はかつての病院のありように一抹の寂しさを感じていた。
連日多くの人が救いを求めて足を踏み入れていた崇高なる病院は今や化け物の巣窟へと変わってしまった現状に。後を継ぐものが居ないがゆえに閉院は仕方ないのかもしれないが、それが本来の目的とはかけ離れた者達がはびこる場所になる事は赦せる物ではない。
巣食う者を払うべく、幸四郎は意を決すると院内へと足を踏み入れた。
霊媒眼鏡を越しに見通す視界は施設内をはっきりと映された階段を上がった先の部屋のドアをあけると複数のベッドが整然と並んでいた。
「ここにしましょうか」
部屋の隅に置いてあった椅子を台に部屋の真ん中の天井にLEDランプを設置すると幸四郎はそのまま部屋の奥の仕切り裏に隠れると、愛銃のフェアリーガンナーに残留思念を充填を開始する。
ずっ。ずずずっ。
充填が成される間に部屋の入り口から何かが引きづりながら入ってくる音がした。幸四郎が仕切りの向こうへと視線を向ければ人ならざる者の影が複数蠢いている。
アッ……ガッ……ウァ。
光へと導かれた影はランプの周りへと群がり動きを止める。部屋の外から音がしなくなった時、幸四郎は仕切りの後ろから躍り出た!
「――降り注げ!」
銃口より|雑霊弾雨《ゴースト・スコール》が放たれ、籠められた雑霊たちの力が誘蛾少女たちの元へ降り注ぐ!
光に気を取られていた彼女たちに幸四郎の攻撃に対処する事は出来ず――なんの動きを取る事をできず、雑霊たちに喰われ、その姿を消していった。
――再びの静寂から敵を一掃したと判断した幸四郎はふっと小さく息を吐くと先ほど来た道を戻っていく。
彼が足を踏み入れた場所は入り口付近の看護士詰所――ナースステーションの奥。
「特に隠そうとでもしていないのであれば、恐らくこの辺に……」
鍵の保管所にぶら下がっていた鍵の束の中からを一つ、また一つ見ていく。
――『資料室』『食堂』『X』『A201』『ミテルヨ』『2階便所』『××ちゃんの部屋』『用具室』――
「――ビンゴ」
幸四郎の手には擦り切れた『手術室』と書かれたプレートが下がる鍵が握られていた。
「――さて、鬼が出るか、蛇が出るか?」
奥に住むオブリビオンを討つべく、幸四郎は慎重に廊下を進んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
穂村・耶子
いつものお仕事をするよ
誘蛾少女……学生時代に何度も戦って来た相手だけど、それだけに厄介さも知っている
本体は強くないけど、病気を撒くから面倒なんだよね
ここは蛾の性質を利用して、変なことされる前に燃やしちゃおう
敵は熱じゃなくて光に誘われてきているから、UCで視聴嗅覚での感知を不可能にすれば、僕や僕を包む不可視の炎の位置は悟られないはず
後は鬼火を適当に飛ばして何かを燃やし、それにつられて敵が集まってきたところで、鬼火を爆破して一網打尽にするよ
残った敵は、炎の輝きが消える前に近づいて斬り捨てる
どうせ、こっちの位置は分からないだろうからね
数が多い場合は、鬼火を全方位に放射して病原体ごと焼き払うよ
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「いつものお仕事をするよ」
猟兵よりも能力者として長く活動する穂村・耶子(甘党残念剣士・f35497)は暗闇の中、壁伝いに慎重に歩を進める。
「まずは視界の確保といこうか」
普通の灯りでは誘蛾少女をおびき寄せる可能性もある事から耶子は|焔狐火界陣《エンコカカイジン》を使い鬼火に身を包みこんだ。鬼火は相手が視聴嗅覚での感知を不可能にする炎であるため、相手に悟られずに光源を確保するのにはうってつけだった。
そうやって光を手に入れた耶子は改めて周囲を確認する。
奥へと続く廊下の扉の上には『受付』『調剤室』『診察室弌』『鬼』『診察室弐』と書かれたプレートが、その部屋の向かいには長椅子が数個設置されている事からどうやらここは外来の患者を向かい入れる診察区画なのだろう。
耶子は目当ての物は無いかと移動しようとしたとき、待合スペースに積まれていた『ソレ』に目を付ける。
「……うん、これで良いだろうか」
耶子は廊下の一角に積まれていた古い雑誌、新聞紙の束に指先を向け、鬼火を放った。
その炎は耶子を包んだ鬼火とは違い、普通の炎として辺りを煌々と燃え続け、そして。
――ア"、……ウゥ”――
ずるり、べしゃり。廊下の奥側より何かを引きづる音と不快な臭いを引き連れて誘蛾少女が姿を現す。
「……変わらないな、彼女たちも」
光に誘われる誘蛾少女から一定の距離を保ちながら耶子は独り言ちる。
誘蛾少女は耶子が銀誓館学園の学生時代から何度も戦ってきたオブリビオン、否、ゴーストだった。
ゴーストタウンではたまた外で何度も刃を交えたゆえに、彼女たちの特性というのもよく知っている。
(彼女たちは強くない。だけど病原菌を撒くから面倒だったな)
誘蛾少女は埃と汚泥に塗れた少女達は疫病、そして凶兆を媒介する。
実際に過去に相対すれば疫病や呪詛に塗れた汚泥を能力者達に浴びせられて来た。
(廃院とはいえ病院に病原菌をまき散らす存在が蔓延るのも良くないね)
――彼女たちがこれ以上この病院を汚す前に、一瞬で終わらせる。
耶子はサムライブレイドに手をかけながら炎に群れる誘蛾少女達を見やり、集中。
「――ハァッ!!」
一閃。暗闇の中僅かな光を浴びたサムライブレイドの刀身が鋭利な光を放ちながら誘蛾少女達の脇を通り過ぎ、
業ッ!
一拍おいて沸いた青い炎が誘蛾少女達を灰燼へと帰したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
榛原・七月
鳥羽・白夜(f37728)と
廃病院のゴーストタウンか~!去年行った南十字病院(※拙作、「死者満ちる廃病院と、悪戯の夜」参照)思い出すね(輝く瞳で写真撮りまくりつつ)
…あれ?噂をすれば白夜さんも来たんだね。久しぶり(手を振って)
廃墟探索に灯りは必須、でも灯りがあると敵を誘き寄せてしまう…困ったね。でも、僕にいい考えがある。
ヘッドライトの光量を最大にして敵を誘き寄せ、【パイ投げ・奥義】!
クリームは柿色とか、闇に溶け込む色合いにして
これで敵はしばらく動けないはずだし、こっちは【闇に紛れる】色合いのクリームまみれで隠密効果、さあ鍵を探しに行こう
…どうしたの白夜さん?パイよりケーキの方がよかった?
鳥羽・白夜
榛原(f43956)と
廃病院のゴーストタウンか…
蘇る、去年の南十字病院での出来事。
(あの時は散々な目にあったなー…さっさと探索済ませて帰るとするか…)
|起動《イグニッション》を済ませ、紅い刃の大鎌を手にいざ潜入…したら榛原に遭遇。
げっ、榛原…!?なんだよお前も来たのかよ。
はぁ…頼むから変なことすんなよ。
暗闇で鍵探すのも難だしな…いい考え?
おわっ!?なんだこれ、クリーム!?
たしかに隠密行動できそうだけど…うーベタベタしてあんまいい気分じゃねえ…
ともあれ自身も暗闇の利を活かし威力3倍を狙って『ヴァンパイアストーム』で攻撃、【吸血】による【生命力吸収】。
…どっちかっつーと、トマトの方がよかったな…
●
「廃病院のゴーストタウンか……」
朽ちかけた病院入り口の前で白夜は逡巡していた。
怖いから、ではない。脳裏を過るは昨年の事だった。
多くのオブリビオン、そしてあの少年。
(あの時は散々な目にあったなー……今回はさっさと解決するか)
どこか予兆めいた感覚を抱きながら白夜は悲鳴をあげる木製の扉を潜り抜けた。
(あの時より廊下は狭いから武器の立ち回りは少し考えないとな)
|起動《イグニッション》を済ませた赤い刃の大鎌を手に、埃っぽい空気の中音もなく廊下を歩む。
周りとみると足を踏み入れたここ場所は診察区域なのだろう。朽ちかけた廊下から続く扉の頭上には『受付』『調剤室』『診察室参』『死体置所』『診察室肆』と書かれたプレートが、その部屋の向かいには長椅子が数個設置されていた。
ふいに、反対側の廊下の曲がり角より軋む音が響いた。
件の誘蛾少女か。白夜は大鎌を構え、タイミングを計る。
音が段々近づいてきた、その時。向かい側からきらりと光るレンズが白夜を捉える――!
「……あれ?噂をすれば白夜さんも来たんだね。久しぶり」
後退り距離を取った白夜の姿を認めた猫耳フードを被った少年、榛原・七月(廃墟と悪戯・f43956)はひらひら手を振るった。
「げっ、榛原……!?なんだよお前も来たのかよ」
「うん、廃墟探索としてね。
丁度去年の事を思い出していたんだ。元気だった?」
「ああ、まぁ……」
(まさかここで榛原に会うなんて……)
にこにこと笑いかける七月を前に白夜の脳裏を過るのは昨年のゴーストタウンの探索の出来事。
昨年訪れたゴーストタウン『南十字病院』。本来は白夜だけで攻略のはずだったが、たまたま廃墟めぐりをしていた七月と共にゴーストタウン現象の解決を成しえたのだ。
「病院、病院だからか!?」
廃病院のゴーストタウンを探索した者同士が再び廃病院のゴーストタウンで再会する、凄い偶然である。
いや、ここまで被る事ある?
ーーズッ、ズズッ。
過去に浸っていると七月の後方から漏れ聞こえる声に白夜は現実に引き戻された。
「再会を喜ぶのはいいけどまずはここを突破しないとね」
「喜んでねぇよ……! はぁ、確かグリモア猟兵の話だと手術室に入るための鍵を手に入れる必要があるんだったな」
「そうそう。で、廃墟探索には灯りは必須、でも灯りがあると敵をおびき寄せてしまう。困ったね」
「暗闇で鍵探すのも難だしな……」
「でもここで良い考えがある」
「良い考え?」
まぁ見ててよ、と七月は装着していたヘッドライトの光量を最大にして点灯!
――ガッ、アオァ……――
ずるり、ずるり。汚泥の臭いを振りまきながら廊下の闇から現れたのは誘蛾少女たち。ヘッドライトの光を求め、彼女たちは無防備に光に寄ってくる。
10歩、9歩、8歩……あと3歩という所で七月はそれを手に動く。
「ここですぱーんっ!」
「うおっ!?」
手に持っていたのは――パイ!クリームがたっぷり入った柿色のパイが誘蛾少女達、そして白夜の顔面へと投げる!
「これで敵はしばらく動けないはずだし、こっちは闇に紛れる色合いのクリームまみれで隠密効果、さあ鍵を探しに行こう」
「こんなので動きが塞がれるわけ……」
――オッ、アアッ……
パイで視界を潰された誘蛾少女は途端におとなしくなった。
「……マジかよ」
さすがに全員が全員動きを封じられたわけではなく、潜り抜けた誘蛾少女がお返しとばかりに汚泥をぶつけに来たが
「うーベタベタしてあんまいい気分じゃねえ……」
その汚泥は白夜たちに辿り着く前に吸血蝙蝠の群れに阻まれ、逆に襲い掛かられて少女たちの命を吸い上げ、息の根を止めた。
「よしっ、じゃあ早速鍵を探しに行こう。受付にあるかな」
コウモリやパイで敵が無力化された事を確認すると七月は軽い足取りで受付のドアノブを回す。
そんな様子の七月を見ながら、白夜は小さくため息をついて、ひとつ。
「……どっちかっつーと、トマトの方がよかったな……」
言葉を零すと七月の後をついていくのだった。
「……どうしたの白夜さん?パイよりケーキの方がよかった?」
「良くねぇよ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
酒井森・興和
閉じ込める扉、遠くで聞こえる何かの音…ゴーストタウンに来た、と言う気がするねえ
それはともかく病院というのは苦手だ
葛城戦のあと放り込まれた病院は当時は得体が知れないモノだらけで…と、追想はこの辺にしておくか
入院した記憶から居住区をあたってみる
【暗視】で進み廊下の鏡にスマホのライト(苦労して点ける)を向けて置き【おびき寄せ】
敵を【気配感知】したら三砂で床を打ちUC火纏で近い敵を焼く
もし火明かりで敵が寄ってくれば纏めて倒す
【毒耐性】はあるけど毒蛾から疫病なんぞ貰いたくないからねえ
さて鍵だな…うーん
居住区の詰所、事務室、診察スペースへ出て医務室等へ
【第六感】の勘を頼りに引き出しやキーボックス内を捜そう
●
入った瞬間背後で扉が閉まり、朽ちたはずの施設の奥で聞こえる物音。
非日常の権化、通常ならば肝試しなどと訪れる者もいる者だが、銀の雨降り注ぐ時代に数多のゴーストと相対してきた酒井森・興和(朱纏・f37018)にとっては『懐かしい』の一言であった。
「しかし病院か、病院はなぁ……」
苦い顔をしてあの時を思い起こす。
それは遥か昔、もう15年以上前の土蜘蛛戦争の葛城山殲滅戦までに遡る。当時銀誓館学園とは敵対勢力であった彼は終戦後にこの時病院に放り込まれたのだが、それは当時の土蜘蛛達には見慣れない施設で。もちろん無体を働かれた訳ではないが、その時の戸惑った記憶が今も残っているのだ。
追想もほどほどに、と興和はスマホの画面の光を頼りに辺りを見やれば奥に続く廊下には洋風の花瓶や鹿首の壁がけなどが設定されている。手近のドアを開けば上品な装飾が成された家具が調度品が見られることからここは居住区だと判断した彼は手あたり次第、勘に任せて辺りを探索を開始する。
(手術室の鍵を居住スペースに置くならば家族の手が届く場所には置かないよねぇ……)
玄関先の引き出し、鍵置き場などを探す。ダイアル式の金庫の番号を『1031』にすれば中から豪華な音と共に詠唱銀が出てきたが今は別に欲しくはない。
1階は探し終わったので2階の階段の踊り場に足をかけた、その時。2階から何かを引き摺る音がした。
興和は踊り場スペースで息を殺しながら上を見やると丁度誘蛾少女がずるりずるりと汚泥を振りまきながら歩いている。
このまま彼女を倒そうとじっと伺っていると彼女の後ろ側、階段上の廊下に鏡が設置されている事に気付いた。
(あの鏡、使えそうだねぇ)
興和は一度一階に戻りスマホを取り出し――ライトを点けようと数分格闘し――鏡の前にスマホを取り付ける。
待つ事数分。
――ズッ、ズズッ……アァァァ
掠れた、ラジオのノイズの様なうめき声をあげながら誘蛾少女が鏡によって増幅した光に群がって来た。
興和は愛用する|三砂《みさご》を持って踊り場からデッキへと飛躍し、三砂を振り下ろす!
「八相、烈火」
三砂がデッキの一部を抉る。瞬間そこを起点に炎が巻き上がり、辺りの誘蛾少女を瞬く間に焼き尽くした!
スマホのライトの消し方が分からず四苦八苦する事もあったが、引き続き捜索を続ける。
寝室、衣装置き場、風呂場――
「――あった」
区域の最後、院長が使っていたであろう書斎。その机を漁ると手術室と書かれた鍵が、興和の手に納まっていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『アカツキノアルナ』
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POW : 暁ノ神は空に昇り
【闇を破り世界を照らす太陽の光】を放ち、命中した敵を【暖かくもその身を焦がす光】に包み継続ダメージを与える。自身が【居る場所を暗く】していると威力アップ。
SPD : 光は世界を照らし
【太陽の光を浴びている】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : また一日が始まる
自身が装備する【鍵】から【降り注ぐ太陽の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【一定時間、盲目】の状態異常を与える。
イラスト:真夜中 足穂
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ディ・エル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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暗闇の中鍵を手にした猟兵達は手術室の鍵穴へ鍵を差しこむ。
ぎぃ、と先ほど医院内に入って来た時と同じように軋む扉を開けた。
中を覗けば施設用途の都合室内は窓一つ、それに伴い光源も何一つない闇に包まれている。各々持ち歩いていた光源を差し向ければ手術台を中央に、ストレッチャーや手術に使うと思しき機器やそれを納める棚が倒れていたり、乱雑に置かれていた。
「あなた方はどこか患われ、藁にも縋る思いでこちらにいらっしゃった方でしょうか? 残念ながらここにはお医者様はいらっしゃいません。お帰りを」
芯の通った声と共に、手術台の奥の闇から一人の少女が姿を現す。
深緑の軍服ドレスに身を包んだ少女の四肢はモザイクがかかっており、彼女が人ならざるものであることの証明していた。
『ガ、ガアアアッ!』
突如猟兵の後ろから姿を現した誘蛾少女。猟兵は武器を身構えて迎撃しようとするも、蛾の化け物は猟兵の横を通り過ぎる。
パンッ!
猟兵達が振り向くより前、不意に真白き光が部屋を、猟兵の網膜を焼いた。
光が収まったあと。一瞬のためらいを経て焦げ付いた臭いが充満する方を振りむいた。
そこにあったのは床に何かの影が焼き付いた跡の前に立つ先ほどの少女。
「彼女たちは何故か私に向けて襲い掛かります。なので時折こうして手術室に籠っています。ええ、|彼女たちでは効率が悪くて疲れてしまうので《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》」
少女が自身の腕をちらと見やる。
そこには先ほどと変わらずたモザイクがかかっていたが、先ほどよりもわずかに晴れていた。
「私はアカツキノアルナ。先ほどはご無礼を致しました。どうぞゆっくりお寛ぎ下さい。あなたの|命《エネルギー》がこの体を満たしてくれるのでしたらば、そのお命ありがたく頂戴いたしますので」
そういうと少女、『アカツキノアルナ』は鍵を模した剣先を猟兵へとむけた。
★特殊ギミック
・暗がりの中アカツキノアルナの放つ光(全ての攻撃)を直視すると命中率、回避率が大幅に低下
・遮蔽物の裏に隠れる、サングラスをかける等で対策可能
穂村・耶子
なるほど、君が誘蛾少女をおびき寄せていたんだね
サムライソードを抜くと同時にモラストラップを投げつける
静電気程度じゃ、一瞬驚かせる程度だっていうのはわかっているよ
そのまま一気に距離を詰めて、縦位置文字に斬りかかる
相手が太陽の光を放ってきたら、わざとやられたフリをして刀を投げつけ……素早く九字を切ってUCを発動
これで、僕自身の目が見えなくても関係ないし、この状態の刀は敵意を感知して敵を自動追尾する
刀には視覚なんてないから目潰しも無意味だ
苦し紛れの投擲だと思わせておいて、相手の死角から飛翔する刀で刺突攻撃のカウンターを仕掛けよう
「見た目の常識に騙されないこと……それが、僕が銀誓館学園で学んだことだよ
●
「なるほど、君が誘蛾少女をおびき寄せていたんだね」
穂村・耶子はサムライブレイドに手をかけながら此度の元凶たる目の前の少女、アカツキノアルナへと問う。
問う言葉には敵意が滲む。いくら目の前の少女が可憐であろうと、彼女は力を有するゴースト。多くのゴースト、ゴーストタウンを征してきた耶子にとって彼女は倒すべき敵には違いない。
そして、そういう敵こそ一筋縄では対処できない事も、耶子は十分に分かっていた。
『誤解ですよ。勝手に近寄って来たんです』
アカツキノアルナも耶子の敵意を受け止めながら動きは軽く、鍵を剣の様に構え静止する。
一瞬の静寂。
静寂を破り、先に動いたのは耶子だった。
抜刀と同時に手に握りしめいていた物を叩きつけた!!
『なっ、なに……あいたっ!』
突然飛来したそれ――モーラットを模したモラストラップに慌てたアカツキノアルナは額でそれを受け止めると、衝撃と共に発せられたぱりっと静電気に眼を白黒させる。
僅かな隙をついて耶子は重心を低い姿勢で駆け、必殺の居合を――
『っ、させません!』
その眼前に鍵が、光を放たれる!
「くっ……!」
耶子は居合一閃は不可能と判断、得物を投げつけるも明後日の方向に飛んでいった。
『ふっ、何処を狙っているので?』
その場で距離を取るも足取りはどこか覚束ない。その様子を見てアカツキノアルナは満足気に微笑む。
『っ、驚きましたが詰めが甘かったですね。あの程度で攻撃ができない私ではないのでっ!』
得物を手放した耶子にアカツキノアルナ一種の慢心を覚えている。一方で耶子はというと光に眼がくらんでこそいるもその口元は薄く笑みを浮かべていた。
「あなたもその光にっ、対処できないのですね……」
光によって視界が塞がれているにも関わらずに不敵な笑みにアカツキノアルナは怪訝そうな顔を浮かべる。
『何を……』
言っているのです、その言葉を紡ぐ前にアカツキノアルナの横に何かが通り過ぎた。
なんだと見ればサムライブレイドが宙を駆ける姿。
『苦し紛れの投擲では無かったのですか!?』
「そんなことするわけないだろう?」
先程のアカツキノアルナからの攻撃の際に刀を投擲、距離を取る動作と共に九字を切り、サムライブレイドが敵意ある対象を狙う力を発動していたのだ。
「見た目の常識に騙されないこと……それが、銀誓館学園で学んだことです!」
太陽の光を予測は可能でも回避が追いつくことはできず。
音速を超える刃の乱舞が、アカツキノアルナへと襲い掛かる。
大成功
🔵🔵🔵
鳥羽・白夜
榛原(f43956)と
あんなんくらったらひとたまりもねーな…俺太陽の光苦手だってのに。
俺サングラスとか持ってねーしな…仕方ねぇ。
大鎌であえて利き腕と逆の腕を切りつけ『ブラッディ・ハイディング』発動、自身の血液で鮮血の隠れ蓑を作り遮蔽物とする。
榛原、とりあえずこの後ろ隠れとけ!
こんなんトマトジュース飲んどけば治るからさ、とソウルフードのトマトジュースを飲み【気合い】で痛みに耐える【激痛耐性】
お前のことだから隠れてなんかするのは得意だろ、あいつの動き止められるか?
一時的にでも動きを封じたならその隙に大鎌の【斬撃波】で【部位破壊】、鍵を持つ手を攻撃し【武器落とし】を狙う。
(…こんな時でもバナナかよ)
榛原・七月
鳥羽・白夜(f37728)と
聞いてたけど噂とは全然違うね、根も葉もない噂で廃墟が勝手にホラースポットにされるのはよくあることだけど、困ったものだよ(肩すくめ)
ともあれ、これじゃ眩しすぎるね
お~…さすが先輩。カッコいい(ちょっと目を丸くして)
それじゃ、ありがたく使わせてもらおうかな。
一応闇医者でもあるし、後で治療するよ
もちろん、任せてよ
鮮血の隠れ蓑に隠れた死角から、敵の足元に向かってバナナの皮を投げる!【そんなバナナ】
【体勢を崩す】【不意打ち】【死角攻撃】
フッいつもポジションはスナイパーだったからね…僕のバナナの皮は百発百中だよ
一時的にでも動きを封じられたら、影業で【武器落とし】の手伝いをするよ
●
「聞いてたけど噂とは全然違うね」
「全くだ」
アカツキノアルナから都度放たれる輝きから追いやられ、鳥羽・白夜と榛原・七月は仮の避難地の棚の後ろに隠れていた。
「根も葉もない噂で廃墟が勝手にホラースポットにされるのはよくあることだけど、困ったものだよ」
「で、どうする。あんなんくらったらひとたまりもねーな……俺太陽の光苦手だってのに」
七月と白夜は小さくため息一つ零した。それは七月はゴーストタウンの噂の正体に、白夜はゴーストタウンの主が発する光に対してだ。
貴種ヴァンパイアである白夜にとって光、特に太陽光というのは天敵のため他の種族に比べて光の影響は大きい。多少にしてもあの光を受けてしまったら戦線に復帰するのは難しいだろう。
「夜に強いが故のデメリットだよねぇ……サングラスとか持ってないの?」
「持ってねーんだよな……仕方ねぇ」
白夜は手にしたブラッティサイズの刃先で左腕を真っ直ぐになぞる。白い肌から血が滲み、地面に滴り落ちる、その前に血液は煙状に湧き上がり赤黒い遮蔽物へと変化した。
「お~……さすが先輩。カッコいい」
「榛原、とりあえずこの後ろ隠れとけ」
「それじゃ、ありがたく使わせてもらおうかな。一応闇医者でもあるし、後で治療するよ」
技を発動するにあたりつけた傷を治療を申し出るも、白夜はそれを静止しながらどこからか紙パックを取り出す。
「こんなんトマトジュース飲んどけば治るからさ」
「便利だねその体」
トマトジュース好きなのかな、七月の思いを他所に、白夜は遺物の向こうへと視線を向けた。
「それよりも……お前のことだから隠れてなんかするのは得意だろ、あいつの動き止められるか?」
「もちろん、任せてよ」
「了解、任せたぜ」
『おしゃべりは終わりましたか? そろそろ出て来てきて欲しい所です』
太陽の光のように冷たい声が鼓膜を振るわせるのと同時に眩い光が辺りを包む!
「――っ!」
白夜は先の煙――ブラッティ・ハイディングによって太陽光の攻撃をなんとか耐えると、お返しとばかりにブラッディ・サイズを振るう。
『無駄ですよ、あなたの攻撃は視えたので』
攻撃を予測したアカツキノアルナはその一撃を容易く回避。
上手く避けられたと喜んでいたが彼女は気付かなかった。
ブラッディ・ハイディングは一つではないこと。
そしてそれが予測の外、死角に青年と共にあることを――!
「これでもっ、くらえー!」
『くっ……!』
少女が距離を取るより先、七月の動きが早かった。
足物に投げた黄色いそれは……
バナナ!
正確には、バナナの皮!
『へっ、……きゃぁつ!?』
あまりに予測不可能なそのバナナの皮。彼女の移動導線にぺっと置かれたバナナの皮に対処はできず見事に転倒する!
『ど、どうして私の足の踏み場をわかって……まさか私と同じで予知を?!』
「フッ、いつもポジションはスナイパーだったからね……僕のバナナの皮は百発百中だよ」
アカツキノアルナはそのバナナの皮の設置の正確さに予知を疑うも、七月のバナナの皮さばきは予知に非ず。学生時代に|スナイパー《プロ》として活動していた故の正確さだからである。
「さて、先輩。後は任せたよ」
「おう」
(こんな時でもバナナかよ……)というツッコミは心の中にしまい込み、白夜はブラッティサイズを振るう!
『くっ……!』
鎌と鍵が鍔迫り合いを行うも体勢を崩す少女が立ち向かえるはずもなく――あっという間に鍔迫り合いは終わり、アカツキノアルナが持つ鍵はモザイクがかかった血と共に宙を飛んでいったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
酒井森・興和
何かを殺せばそのモヤは晴れるのかね、お嬢さん?
蜘蛛の端くれだがその為に差し出す命は無いよ
蛾の娘たちは光に寄る習性があるとかで飛んで火に入るなんとかを体現したようだな
にしてもこの光は強烈だね
飛斬帽を目深に被り光を遮蔽するがこれはほぼ目隠しか
【第六感と集中力】で敵の動きや【気配感知】し光る直前に【早業と咄嗟の一撃】でUCを撃つ
外しても足場の糸から目視に頼らず気配を読み【追跡、狩猟】のように三砂で【重量攻撃】
敵の脚を潰すかツルハシ部で叩き千切る勢いで振るい動きを鈍らせよう
返しで振り上げ【2回攻撃】
胴より上部へ【怪力】打撃
モザイク部潰しが可能なら鍵か腕を【吹き飛ばし】てやるが…
加減せず仕留めたいねえ
●
『くっ……!』
アカツキノアルナの悔し気な声と共に鍵剣が、血がからんと地面に落ちる。
通常ならば撤退も視野に入る程の負傷度。しかし彼女の目から闘志は消えていなかった。
「何かを殺せばその靄は晴れるのかね、お嬢さん? 年長者の諫言だけど止めておいた方が良い」
目的のためとはいえ他の命を略奪した結末は大概良い物ではない、酒井森・興和は長年の経験も交えた提言を素直に言葉にするも少女は頑と拒んだ。
『まだっ、まだです! もっと多くの命があれば、あなた達の命があれば……!』
「そうかい……じゃあ僕は能力者として、猟兵として凶行を止めりよ」
落とした鍵の元へと駆け寄ろうとするアカツキノアルナへ鋼糸が放たれる!
その糸を捉える事は暗闇の中ではさらに難しい。まるで太陽をも捕まえんとばかりに正確かつ縦横無尽に、鋭利に室内に張り巡らされていく。
少女は体が糸に苛まれて全身を赤く染めるも、やっとの思いで鍵を拾い上げその先を興和へと向けた。
『こんな糸、|こちらが動かなければ《この光があれば》、意味などありません!』
勝利宣言と共に鍵を中心に光が零れた。
その光は朝陽。闇に慣れた者の目を潰し、邪なる者を退ける神聖なる光が部屋中に溢れかえる。
これで消えていなくても盲目という不利を抱く者に遅れを取る事はない――アカツキノアルナがそう思った瞬間、光を切り裂いて一人の男が少女の元へ飛び込んできた!
「なるほど、この光があれば蛾の娘たちも飛んでくるわけだ」
『なっ――』
飛斬帽を深くかぶった興和の目線と少女の目線があった。
振り下ろされた三砂と鍵が交差する。火花を散らしながら拮抗する!
『ぐっ……!』
「まだ戦闘経験が少ないようだね。武器の特性はよく見ていた方が良い」
興和は三砂のピックに鍵をひっかけると、そのまま自身の方へと引き寄せた!
『あっ……!』
鍵毎興和へと引き寄せられるアカツキノアルナ。その体に興和の重い掌底が、少女の胸の真ん中を貫いた!
大成功
🔵🔵🔵
御鏡・幸四郎
先ほど誘蛾少女を倒したのは、アルナが操る強力な光でしょう。
ならば……
「護りの壁となれ、ルーク!」
詠唱銃にルークの駒をセット。宿らせた雑霊を発射し巨大な盾を形成します。
盾で太陽の光を受け止めてエネルギーをチャージし、雑霊弾に変換して発射。
しかし、これはUCで予測されており、回避されるでしょう。
そこでもう一手。
私は盾の陰に身を隠して、光に当たらないようにしていました。
つまり私自身の攻撃は予測出来ないはず。
雑霊弾を避けるために光が止んだ一瞬をついてアルナに駆け寄ります。
鍵を持つ手を刃で切り飛ばし、返す刀で零距離射撃。確実に仕留めます。
今後、この病院が人々の間に悪名となって残ることがありませんように。
●
『がっ、く、ぅ……!』
体の至る部分を抉られ、先ほどの胸への衝撃をこらえながらも少女、アカツキノアルナはまだ立ち上げる。
体の至る場所がモザイクに掛かっていても尚、溢れ出る血によって彼女の体は限界に近いだろうことは見て取れた。
「退く気は有りませんか」
『退いたところで、逃げる場所は有りませんので……!』
しかし彼女はいまだ立ち続け、落とした鍵を左手で拾い上げると、鍵先を御鏡・幸四郎へと突きつけた!
「ならば倒すまでです……護りの壁となれ、ルーク!」
詠唱銃にルークの駒を充填、目の前へと放てば巨大化した城壁が幸四郎の前へと立ち塞がり鉄壁を展開するのと陽光が部屋に満ち溢れるのはほぼ同時だった。
「ルーク、攻撃を」
その声に呼応するようにルークはその身を輝かせ、無数の光――雑霊弾をアカツキノアルナへと放った!
『くっ……!』
苦々しくアカツキノアルナはその攻撃を避けていった――。
(ここまでは計算通りですね)
アカツキノアルナは攻撃を避けながら 心の中で笑みを浮かべる。彼女が先に放った太陽光は光を浴びた対象の行動を予測するもの。つまりルークが雑霊弾を放つことも、その軌道も全て分かっていた。
苦戦している振りをし油断を誘ったら目の前の男に一撃を喰らわせ撃破、直ぐに撤退。これが彼女の策だった。
(攻撃激しいですが凌げばチャンスが――!)
「――などと考えていらっしゃるのでしょうか?」
見透かしているかのような声が響く。それは光が無くても目の前の少女の行動を見通す、推理の力。
雑霊弾を放つ盾の光が途切れた瞬間、幸四郎は一瞬でアカツキノアルナの元へと躍り出る。
『あっ――』
鉄壁の盾の攻撃の激しさに忘れていた。
光が当たったものの行動は読めるが、逆を言えば当たっていない物は読むことはできない。
(私の光と盾の展開、どっちが先でしたっけ?)
鍵を持つ手を幸四郎のフェアリーガンナーの刃で弾き返され、零距離から放たれた一撃が胸を抉った後、アカツキノアルナは残された僅かな時間でそれを考えていた。
●
アカツキノアルナが消えた影響か、ゴーストタウンの空気が変わる。直にこのゴーストタウンも元に戻り、空間に巣食う蛾も消えるだろう。
「今後、この病院が人々の間に悪名となって残ることがありませんように」
その願いが届くように、廃病院に朝陽が差し込んだ。
大成功
🔵🔵🔵