サーマ・ヴェーダは恋慕を明け方に
メルヴィナ・エルネイジェ
ルウェインがメルヴィナを婚約者からNTRし、そのまま朝チュンするノベルをお願いします
アドリブアレンジその他諸々お任せします。
●時系列
ノベル【サーマ・ヴェーダは恋慕を星空に】で、メルヴィナがルウェインを自室に連れ込んだ直後です。
●奪還
メルヴィナとルウェインはベッドに腰を下ろして暫く黙り込んでいました。
するとメルヴィナはぽろぽろと泣き始めてしまいました。
「殿下……いえ、メル……ヴィナ……」
ルウェインは己の無能を悔いるばかりです。
掛ける言葉が見付かりません。
「嫌なのだわ……」
メルヴィナは泣き続けます。
「怖くて、痛くて、気持ち悪くて……全然幸せじゃなかったのだわ……あんなのが初めてなんて、やっぱり嫌なのだわ……」
ルウェインの脳裏に当時の光景がフラッシュバックします。
怒りと悔しさで頭を柱に叩き付けたい衝動に駆られました。
「違う! 絶対に違う! あんな想いが伴っていない行為など!」
それは現実逃避の叫びでした。
メルヴィナを奪われたという事実は、ルウェインにとって気が狂うほどに辛い事実だったのです。
「ルウェインがもっと早く来てくれないからなのだわ!」
メルヴィナはルウェインの肩に縋り付き、顔を埋めて泣き腫らします。
ルウェインはメルヴィナの顔が見られませんでした。
「あの時、俺がメルヴィナを引き止めてさえいれば……!」
ルウェインは過去の自分を呪いました。
「どうして止めてくれなかったのだわ!? 私の事を愛してるって言ったのに!」
「本当はメルヴィナのお側を離れたくなかった。行かせたくなかった。しかしメルヴィナの決意を妨げてはならないと……それに、今の俺では、メルヴィナに並び立つ事など……」
「言い訳ばっかりなのだわ!」
「申し訳ありません」
「もうルウェインなんて大っ嫌いなのだわ!」
「お怒りは……当然です……」
ルウェインには他に返す言葉が見つかりませんでした。
「なのに……ルウェインが助けに来てくれて、嬉しかったのだわ……」
「俺は無能を晒しただけです。お救いする事ができなかった」
「違うのだわ……本当はルウェインは悪くないのだわ……そんなの分かってるのに……私はルウェインに酷いことを言ってしまうのだわ……」
「心を鎮める時間が必要なのでしょう。今のメルヴィナは、深く傷付いておられる」
「もう分からないのだわ。ルウェインの事が嫌いなのに……どんどん好きになってしまうのだわ……」
啜り泣くメルヴィナが漏らした言葉に、ルウェインは全身の血が熱くなりました。
「メルヴィナ、俺は……!」
ですが続く言葉が出てきません。
「ルウェイン……こんな私でも、まだ好きなのだわ?」
メルヴィナは恐る恐る尋ねました。
こんな訳の分からない、わがままな自分なんて嫌われて当然と思ったからです。
「好きです!」
ルウェインは即答します。
「愛しているのだわ?」
メルヴィナはさらに尋ねました。
「愛しています!」
ルウェインは迷わず即答します。
メルヴィナは決心しました。
そしてベッドに仰向けに寝転がりました。
「なら……証明するのだわ」
潤んだ瞳で見つめるメルヴィナに、ルウェインは身を乗り出しそうになりました。
ですがすぐに顔を背けてしまいます。
「今の俺にそんな資格など……」
「やっぱり、汚されたこの身体じゃ嫌なのだわ?」
「違います! 断じて! メルヴィナは汚されても汚すこと叶わず! いや、美しくあろうとも、汚されていようとも、俺にとっては等しくメルヴィナなのです! ですが……」
言い淀むルウェインに、メルヴィナは不安になります。
「メルヴィナをお救いできなかった俺に、証を立てる資格などありません」
「また言い訳ばっかり……!」
「違うのです!」
声を荒げたルウェインにメルヴィナは肩を竦ませます。
「今すぐにでもメルヴィナを抱き締めたい! だが今の俺は、メルヴィナを奪われた怒りと悔しさで狂いそうになっている! そんな状態でメルヴィナを抱けば、本当に潰してしまう……!」
歯を食いしばって堪えるルウェインの顔を見て、メルヴィナは察しました。
彼は嫉妬に狂っているのだと。
まるで自分のように。
メルヴィナは身体を起こし、ルウェインの頭をそっと抱きました。
そして耳元でこう囁きました。
「潰れるくらい抱き締めて欲しいのだわ」
メルヴィナの目から涙が溢れ出ます。
「あんな初めての奪われ方は嫌なのだわ……だから奪い返して欲しいのだわ……」
「俺は……」
「ルウェイン……好きなのだわ」
その一言でルウェインの中の留め金が外れてしまいました。
メルヴィナはルウェインの体重を感じながら、背中に腕を回します。
そして強く抱き締め合いました。
まるで共に海の底へと沈んでゆくかのように。
●朝チュン
それから翌朝。
窓から差す陽射しと、海鳥の声でメルヴィナは目を覚ましました。
「とても長く深く眠っていたような気がするのだわ……」
まだ頭の中が夢見心地のようにぼんやりします。
ですが、噛み跡だらけになったルウェインの寝姿を見て、昨日の事が夢では無い事を理解しました。
「昨日は最低な気分だったのに……今日はなんだか凄く穏やかで、幸せな気分なのだわ……」
メルヴィナはルウェインを起こさないよう、そっとベッドから立ち、鏡を見ます。
鏡に映った自分の全身には、小さな痣が無数に残されていました。
噛み跡だらけになったルウェインを見た時、ちょっと罪悪感が湧きましたが、鏡を見てお互い様だなと思いました。
その痣は、ルウェインが拙くも必死に想いを伝えようとした証でした。
メルヴィナにはそれらがとても愛おしく思えて、同時に儚く思えました。
「一日もしたら消えちゃうのだわ」
「メルヴィナ……? いえ、殿下……?」
起きてきたルウェインも夢見心地のようにぼんやりとしていました。
「おはようなのだわ」
メルヴィナに声を掛けられたルウェインは、ようやく今の状況が飲み込めました。
「申し訳ありません。昨晩は恐れ多くも一時の情動に押し流されてしまい、取り返しのつかない事を……」
「一時? 一時の気の迷いと言うのだわ?」
メルヴィナから怒りと悲しみの混ざった表情を向けられ、ルウェインは即座に否定しました。
「いえ! 滅相もございません! ですが殿下……」
「メルヴィナなのだわ」
「……メルヴィナ、その……俺に至らぬところはありませんでしたか? 苦しい思いをさせていませんでしたか?」
「至らないところばっかりだったのだわ。私の身体は、あなたが思ってるほど頑丈じゃないのだわ」
「申し訳ありません! メルヴィナを間近にして、先走る衝動を御する事ができませんでした!」
ルウェインはベッドから飛び降り床に頭を付けます。
そのルウェインの頭を、メルヴィナはそっと抱き寄せました。
「でも、良かったのだわ」
「メルヴィナ……?」
「あなたの気持ち、よく分かったのだわ」
ルウェインからは見えませんでしたが、メルヴィナは幸福に満ち足りた笑顔をほころばせていました。
「私こそ、背中を引っ掻き傷だらけにしてごめんなさいなのだわ。痛むのだわ?」
「お構いなく! これはメルヴィナによって刻まれた祝福の証です! すぐに消えてしまうのが惜しまれますが……」
「なら、また付ければいいのだわ」
ルウェインは言葉の意味を察して絶句しました。
「立つのだわ。シャワーを浴びに行くのだわ」
「はっ! しかし一緒に向かわれては、メルヴィナに不名誉な噂が立ってしまうのでは……」
「伴侶が一緒にシャワーを浴びて何がいけないのだわ?」
「伴侶は些か時期尚早かと……」
「その程度の覚悟で私を抱いたのだわ……?」
メルヴィナの声が失望に震えます。
「いいえ! 生涯忠誠! 愛を忠義に替えて貫く覚悟です!」
ルウェインは大慌てで言い繕います。
「なら早く私を連れて行くのだわ」
メルヴィナはよろしいと言いたげに鼻を鳴らしました。
「はっ! ご一緒させていただきます!」
ルウェインはメルヴィナに手を差し出しました。
「今度はちゃんと離さないでいるのだわ。でないとまた誰かに奪われてしまうのだわ」
メルヴィナは差し出された手を強く握り返しました。
「離しません。例え骨肉の一片、魂さえ砕け散ろうとも」
ルウェインはメルヴィナの手をより強く握りました。
「ルウェイン、痛いのだわ」
「申し訳ありません!」
だいたいこんな感じでお願いします。
ルウェイン・グレーデ
メルヴィナとの合わせノベルとなります。
内容はメルヴィナ側のリクエストと同文です。
よろしくお願いします。
●夜明けにはまだ遠い
引き込まれるようにして招かれたメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)の自室においてルウェイン・グレーデ(メルヴィナの騎士・f42374)は己の視線の置き場に困っていた。
何処を見ても不躾な視線になることを承知していたからだ。
だからといって、目をつむるわけにもいかない。
己の手を引いたメルヴィナ。
思いがけず力強い。
この手を振り払うことなどできようはずもない。
むしろ、今の彼女を独りになどできるわけがなかった。
とは言え、距離が近すぎる。
どうしたものか。どうするものなのか。
夜更けに淑女の自室にいるのだ。
どうするのが正解なのか。
そもそも作法というものは、物事を滞りなく進ませるために存在するものである。決して、見栄を張るためのものではないことは言うまでもないことであった。
わかっている。
わかっているのだ。
だが、理解しているということと、可能かとでは意味合いがだいぶ変わってくる。
ルウェインは、己がそれが可能であるかと問われたら、まごついてしまうだろうということまで想像できてしまっていた。
情けない限りである。
しかし、メルヴィナはどこか強引とも言えるような力強さで彼女のベッドに腰掛けた。
引かれた手はまだ握られたままだ。
視線がかち合う。
涙に濡れた瞳。
青い宝石、星空とさえ思えた彼女の瞳が濡れているのだ。
静謐なれど訴えかけるような瞳の色にルウェインは射抜かれて硬直するしかなかった。
なにか、なにか言葉を発せねばならないと思いながらも、はぐはぐと息が漏れるばかりであった。
息を飲み込んだ。
意を決した、とも言える。
ルウェインは、ぐ、と奥歯を噛み締めながら、心中でええい! と気合を入れてメルヴィナの隣に腰を落とす。
言葉はなかった。
けれど、隣り合って座るメルヴィナの体温を感じてしまう。
沈黙。
自室に引っ張り込まれるように招かれて以来、メルヴィナは言葉を発していなかった。無論、ルウェインもまた同様である。
今宵、彼女の身に降り掛かったのは災難だ。
もっと悪いことに彼女の身には一国の民の多くがのしかかっていた。
彼女は、それを気に留めていなかった。
跳ね除けられるだけの力を持っていたし、それだけの覚悟もあった。
だが、運命というものは悲劇の連続なのかもしれない。
彼女の身は、嘗ての婚約者……未だ有効であるという者の狼藉によって穢されてしまった。
そうした穢など飲み込めばいいし、飲み干すのが王族としての責務なのだと言われたのならば、それまでだ。
しかしこれではただの人身御供ではないか。
ルウェインは、彼女を慕うあまりそう思ってしまう自分がいた。
そんな思いすらも建前でしかないことを自覚的だったからこそ、彼は動けずにいた。
「……」
なにか、なにか傷心の彼女に言葉を。
慰めの言葉を。
そう思うが声がでない。
彼女の心を思えば、身が引き裂かれんばかりの思いである。
意気地がない。
あまりにも。
隣に座るメルヴィナの体が震えたかと思った瞬間、彼女の夜空を閉じ込めたような瞳から大粒の涙が溢れた。
ぼろぼろと。
その涙の一滴すら愛おしく思えるというのに、ルウェインは身を固くするしかなかた。
「殿下……」
涙はこぼれ落ち続ける。
見開かれた瞳から、ぼろぼろと。
止まらない。滂沱とは言わぬが、しかし川の流れのように止めどくなく涙が落ち続けている。
それをなんとかして止めたいと思うのは人の情だろう。
殿下。
そう呼んだルウェインにメルヴィナは視線を向けることさえしなかった。
だが、空気でわかる。
ピリつくような空気の凍てつき。
ルウェインは己の不明を恥じる。
「……いえ、メル……ヴィナ……」
「嫌なのだわ……」
何が、と問い返すことはできなかった。
それを言葉にすることは、彼女の心をまた徒に傷つけることにほかならなかったからだ。
涙は溢れ続ける。
もしも、手を伸ばすことを許されたのならば、その涙を拭って差し上げたい。
そう思うも、許しを乞うこともできない。許されない。
なぜなら、誰かの涙を拭いたいと思う気持ちは優しさに他ならないからだ。
だが、優しさとは許しを乞う理由にはならない。
許しを請うためであったのならば、それはもはや優しさでもなんでもないものに成り果てるものであったからだ。
「怖くて、痛くて、気持ち悪くて……全然幸せじゃなかったのだわ……」
メルヴィナは訥々と言葉を紡ぐ。
何を言わんとしているのか、わかる。
そこまで鈍感ではいられない。
何より、敬愛すべきメルヴィナが打ちひしがれているのだ。
「あんなのが初めてなんて、やっぱり嫌なのだわ……」
その言葉はルウェインに、組み敷かれるメルヴィナの姿を鮮明に想起させた。
シーツに散った朱。
今と同じ涙をこぼすメルヴィナの頬。
そして何より、彼女の純血を奪った男の顔がルウェインの頭を殴りつけるようだった。
怒りと悔しさ。
悔恨が喉元に込み上げてくる。
これは吐き気ではない。言いようのない怒りだった。
衝動的にルウェインはメルヴィナの手を握りしめた。
「違う! 絶対に違う! あんな想いが伴っていない行為など!」
そう、思いたかった。
肉体的なつながりなど、と言うつもりはない。
心が通っているのならば、と信じられるほどルウェインはおおらかではない。
自らの狭量さなど言うまでもない。
今も、彼女の言葉に己が無能という事実から目を逸らしたかっただけだ。
騎士として彼女に仕える。
そう誓っておきながら、肝心要の時には役立たずだったのだ。
申し開きなどできようはずもない。
気が狂いそうだった。
あまつさえ、メルヴィナを奪われた。
戦場であれば身を挺して守ればいい。だが、国と国との外交の場において己は、あまりにも無能極まる。
力もなければ、立場もない。
すべてをひっくり返す権力すらない。
あるのはただ想いだけだ。
それがどれほど役に立たないのかをルウェインは、最悪の形で突きつけられたのだ。
現実逃避できるのならば、どんなによかっただろう。
だが、ルウェインがそれをできなかったのは、メルヴィナがいたからだ。
彼女が現実に涙しているから、逃避することも許されない。
「ルウェインがもっと早く来てくれないからなのだわ!」
己が肩に衝撃を感じる。
メルヴィナはルウェインの肩に額を押し付けた。
すがりつくようだった。
この方の寄す処にならねばならないとルウェインは思っただろう。
涙がにじみ、己の肩を濡らす。
この熱さと狂おしいほどの胸の痛みを生涯忘れてはならないとルウェインは思った。
彼女の黒髪を見下ろす。
彼女の顔は見えない。いや、見れない。
どんなに彼女が心痛に涙しているのかなど、男の身である己には理解しようとしても理解に及ばぬ遠ころであった。
「あの時、俺がメルヴィナを引き止めさえいれば……!」
「どうして止めてくれなかったのだわ!? 私の事を愛してるって言ったのに!」
責める言葉にルウェインはじくじくとした痛みを感じる。
すがりつくルウェインの肩にメルヴィナの指が食い込む。
痛みは感じれど、それに身を捩る資格など己にはないとルウェインは思った。
この痛みはメルヴィナが感じるところの数万分の一にも満たないだろうとさえ思った。
過去の己の無能さを呪う。
だが、呪ったところで、どうなるというのだ。
時は逆巻くことはない。
過ぎ去ったものは、変えられない。
だからこそ、押し出される。
「本当はメルヴィナのおそばを離れたくはなかった。行かせたくなかった」
二の腕に食い込むメルヴィナの指の力が僅かに緩んだ。
己の本音。
己のエゴ。
そうした己自身が忠義と忠誠でもって塗り固めて覆い隠したものを、吐露する。
「しかしメルヴィナの決意を妨げてはならないと……」
そう、メルヴィナは決意していた。
流されるままではなく、自らの意志でもって決然と状況に立ち向かおうとしていた。
その姿ことそ、己の求めるところであった。
己が忠誠を捧げるに値する御方なのだと、一種の誇らしさすら感じていたのだ。
だが、それも己のエゴにすぎない。
問題を、彼女に押し付けた。
彼女は王族だ。
身分が違いすぎる。
そんな彼女に対して己がどれだけのことが物申せるというのだ。
『エルネイジェ王国』は、力さえ示せば、自ずと権力も地位も与えられる。
だが、己にはすべてが足りないのだ。
「……それに、今の俺では、メルヴィナに並び立つことなど……」
そう、許されない。
気持ちの問題ではない。
周囲のすべてがルウェインの言葉に真っ向から否と突きつけるだろう。
どんなに想っても、周囲がそれを許さない。
状況が許さない。
時代の潮流であると諦めるしかなかったのだ。いや、諦められるほど、彼女との出会いは易いものではなかったのだ。
己の生涯を懸けてと誓うほどに、彼女に対する気持ちは重たく大きい。
だからこそ、力をつけねばならなかった。
地位をえなければならなかった。
少なくとも彼女に並び立つことができるほどの地位と力とが。足りないのは、その二つだけだった。
だが、その二つが途方もなく高い壁となってルウェインを阻んでいた。
その壁の高さ、分厚さ。
どれだけ己が剣で道を切り開くことのできる権利を『エルネイジェ王国』のすべての民が持ち得る『強者絶対』たる国言があるのだとしても。
それでも、どれだけ多くの騎士が壁の前に項垂れていたことだろうか。
流されてしまうことの心地よさを知っている。
どれだけの向上心があっても、長くは続かない。
そういうものなのだ。
諦めてしまえばいい。
己に言い訳して。
納得して。
蓋をしてしまえばいい。
そうやって大人になっていくのだと言われたら、その通りだと思う。
だが。
「言い訳ばっかりなのだわ!」
それは壁を容易くぶち抜く怪獣の如き一喝であった。
メルヴィナは泣き腫らした瞳のままルウェインを見つめていた。
真っ直ぐに。
他の誰でもないルウェインを真っ直ぐに捉えていた。
こぼれる涙は止まっていない。
今も大粒の涙がこぼれ落ちている。
「申し訳ありません」
対するルウェインは、その視線から避けるように頭を垂れる。
介錯して欲しい。
情けなさで胸がいっぱいになる。
どうしようもない愚図だ、己は。
自嘲が重たく肩にのしかかるようだった。
力の無さも立場の低さも、全ては今の彼女の一喝で思い知らされる。
「もうルウェインなんて大っ嫌いなのだわ!」
土手っ腹に強烈なボディブローめいた言葉が叩き込まれる。
そう言われることは覚悟していた。
だが、いざ言われると腹に響く言葉であった。五臓六腑のすべてに衝撃が走るようであったし、すべてがひっくり返るような衝撃である。
尋常成らざる汗が溢れ出すようだった。
「お怒りは……当然です……」
そう言うしかない。言葉にするなら、そうした言葉しかでてこなかった。
返す言葉などない。
「本当に大っきらい、きらいなのだわ! でも、でも……」
メルヴィナはルウェインの肩を掴んだまま額を彼の頭頂部に合わせた。
「なのに……ルウェインが助けに来てくれて、嬉しかったのだわ……」
脳天に響く言葉。
ルウェインは、その言葉だけで救われた思いであった。
だが、その救われたと思えた心すら、己を自責する心が引き止める。
何を許されたつもりになっているのだ?
無能のくせに。
愚図のくせに。
肝心な時に役立たず。
何もできないのに、思いだけは一丁前。
守れもしなかったのに、ただ一言に舞い上がってしまうほど、その罪状は軽くはないのだ。
そういうように心に重石が乗せられた。
「俺は無能を晒しただけです。お救いすることができなかった」
そのとおりだ。
許されてはならない。
許されると想ってはならないのだ。
「違うのだわ……本当はルウェインは悪くないのだわ」
メルヴィナはそんな一人で重石を抱えるようにして内罰的な思考に陥るルウェインを慮るように言葉を続ける。
「……そんなの分かっているのに……私はルウェインに酷いことを言ってしまうのだわ……」
叱責の言葉は当然だ。
ルウェインは頭を振る。
面を上げることはできない。
だが、メルヴィナの傍にいることは許されない。彼女の熱を感じる資格などないのだ。
体を離そう富を起こして腰を上げようとする。
だが、メルヴィナの手が力強く、その腰を上げようとする体をベッドから離れる事を許さなかった。
戸惑いが生まれる。
「本当は、こんなことを言うつもりなんてなかったのだわ……変なのだわ……あなたを責めるような言葉に、なってしまうのだわ……私、こんなつもりじゃ」
「心を鎮める時間が必要なのでしょう。今のメルヴィナは、深く傷ついておられる」
それはどこか他人行儀な言葉だった。
触れることを拒むようにルウェインは身を離そうとした。
再び、掴む手に力が込められた。
言い訳めいた言葉だと自分でも思う。
これではますますメルヴィナに嫌われてしまう。
「もうわからないのだわ。ルウェインのことが嫌いなのに……どんどん好きになってしまうのだわ」
とめどない言葉は、支離滅裂だった。
嫌いなのに好きになる。
相反する言葉。
なのに、この身に滾る血の熱さは一体なんだというのだろうか。
ルウェインは身を乗り出しそうになった。
「メルヴィナ、俺は……!」
メルヴィナは面を上げた。
涙は止まってない。まだ流れている。
その様すら美しいと想ってしまう。晴れた瞼も、涙がこぼれ落ちた跡も、痛々しいと思えるのに、愛おしいと想ってしまう。
メルヴィナのすべてが愛おしいのは、当然のことなのに、今はそれ以上に思えてしまう。これ以上の感情を示す言葉をルウェインは持ち合わせていなかった。
続く言葉が支えて出てこない。
どんな言葉を紡げば、間違えないのか。
いいや、その思考すら間違いだということにルウェインは築いていた。
だからこそ、おいそれ言葉にできなかったのだ。
そんなルウェインをよそにメルヴィナは思う。
自分の言葉は、すべてが重たい。
王族であるから、というだけではない。女としての性を受けた身から発露する言葉のすべてが、他の女性からすれば重たすぎる。
分かっている。
真の愛というものを求めることが、どれだけ相手に負担をかけることなのかを。
相手が逃げ出したくなるのも頷けるものだ。
わかっている。
重々承知している。
けれど、メルヴィナは止められない。
この衝動なくば、己自身ではないとわかっている。改めなければならない。この重たさで、眼の前の実直と愚直を履き違えた男を潰してしまう。
なのに、どうしても、己の重たさを試して見たくなってしまう。
これが女の性なのだと言われたのならば、悪癖でしかないと応える他ない。
だからこそ、恐れる。
メルヴィナはこの期に及んで、試す。
だから、どうか潰されないでと願ってしまう。
求めるのは、頑強さだ。
何者にも、いかなる状況にも潰されることのない真の愛に飢える。
「ルウェイン……こんな私でも、まだ好きなのだわ?」
恐れるべきだ。
こんな理由のわからない女。
試して、試して、挙句の果てに壊してしまうような女など。
だが、同時に嫌われたくもないと思った。
どうか、受けれいて欲しい。
愚直さすらも踏み潰してしまうような重さであったのならば、もうメルヴィナはどんな男さえ愛せないだろう。
その予見がメルヴィナの胸を押さえつける。
愛されるのは、愛するもの。
その思いが正しいことを証明できるのが、愚直さだけだと示して欲しい。
「好きです!」
それはあまりにも短絡的だった。
あまりにも感情的だった。
後先など考えていない答えだった。
けれど、真だった。心の底から、あらゆる懊悩であれ吹き飛ばしてでも飛び出した言葉だったのだ。
なのに、まだメルヴィナは足りないと思った。
足りないのだ。
もっと。我儘が過ぎる。嫌われてしまうかもしれない。なのに、裏腹に試してしまう。
「愛しているのだわ?」
「愛しています!」
ルウェインはきっと何も考えていないのだろう。
だから、怖いもの知らずに、そんなことが言えるのだ。けれど、同時に思う。
人を愛することは傷つくことを覚悟することだ。
己の思う愛の形と、他者の愛の形が異なることを受け入れることだ。
摩擦は傷を生む。
痛みだって齎すことだろう。
それを厭わぬことこそ、真の愛なのかもしれない。
メルヴィナは、そう思った。
だから、決心したのだ。
こころを決めたのだ。
試したのなら、示さねばならない。何を? 証を。
「なら……証明するのだわ」
倒れ込むようにしてメルヴィナは仰向けに身をベッドに沈める。
手を伸ばす。
それは褒美ではない。
試練に耐えた男に対する報酬ではない。
ルウェインは察するに余る思いだった。身を乗り出す。
だが、顔をそむけた。
それは拒絶にも、辞退にも取られる行為だった。
メルヴィナの瞳は潤む。
「今の俺に、そんな資格など……」
それは無粋極まる言葉だった。
けれど、許そうとメルヴィナは思った。自分の重たすぎる言葉に、愛に踏みこらえることができた男が、今更、肉欲一つなど問題にはならないと知っているからだ。
そして、妨げとなっているのは、やはり己の身が汚れているからだと思う。
仕方ない話である。
純血とは男にとって、それほど大事なものなのだ。
奪い取ってでも得たいと思うものだ。
それを今の己は差し出せない。
何もない。
それは、メルヴィナにとって後悔の証だった。
けれど、そうした後悔すら今のメルヴィナを止められない。
「やっぱり、汚されたこの身体じゃ、嫌なのだわ?」
試す。
まただ、と自嘲するしかない。
疑いから来るものではない。これは、ただ拗ねているだけだ。
己の欲するところを察して欲しい。
「違います! 断じて! メルヴィナは汚されても汚すこと叶わず! いや、美しくあろうとも、汚されていようとも、俺にとっては等しくメルヴィナなのです!ですが……!」
その言葉はメルヴィナに不安を抱かせるだけだ。
己の身が汚れている。それを否定したい一心なのだ。
それはきっと優しさから出た言葉なのだろうが、女としては不安を募らせるだけだ。
言い淀む姿だって、そうだ。
「メルヴィナをお救いできなかった俺に、証を立てる資格などありません」
「また言い訳ばっかり……!」
いい加減怒りが込み上げてくる。
鈍感。唐変木。
「違うのです!」
ルウェインは苦悩するように頭を振る。
メルヴィナの顔の直ぐ側に彼のたくましい腕が突き立てられるようにして落ちる。
思った以上の衝撃にベッドが軋む。
「なら、何が違うのだわ」
「今すぐにでもメルヴィナを抱きしめたい! だが今の俺は、メルヴィナを奪われた怒りと悔しさで狂いそうになっている! そんな状態でメルヴィナを抱けば、本当に潰してしまう……!」
その表情を見て、メルヴィナは察した。
ああ、とどこまでも愚直なのだな、と。
同時に愛おしくも思えてしまった。
これは存外、と思う余裕はなかった。
今のルウェインは嫉妬に狂っているのだ。まるで鏡合わせだとメルヴィナはおもっただろう。
自分がそうであったように。
自分の顔の直ぐ側に突き立てられた腕を、メルヴィナはそっと取った。
嫉妬に狂う男の顔。
覗き込むようにしてメルヴィナは見上げ、そして身を起こした。
ルウェインは、歯噛みするように顔を歪めている。
その顔。
どうしてか、今まで以上に昂っている。
頬を寄せるようにルウェインの耳元にメルヴィナは口付けるように、けれど、触れることなく吐息だけを滲ませた。
熱を届かせるだけ。
触れることのない熱はルウェインの耳朶をこれ以上ない位に強かに打ち据えるものだった。
「潰れるくらい抱きしめてほしいのだわ」
涙は堰き止められていたわけではない。
けれど、涙が溢れた。
「あんな初めての奪われ方は、嫌なのだわ……だから奪い返して欲しいのだわ……」
「俺は……」
「ルウェイン……好きなのだわ」
躊躇いなど引きちぎってしまえばいい。
気持ちを留め置くものなどなくなってしまえばいい。
引きずり込んだっていい。潰れたっていい。
なんだっていい。
どうなってもいい。
この重さが自分の幸せなのだと言うようにメルヴィナはルウェインの重さを感じながら、ベッドに沈む。
回した腕は囚えたのか、囚われたのか。
いずれにしたって構わない。
なぜなら、今二人は共に海の底に沈んでいっている最中なのだ。
他の何も聞こえない。
軋む音も。
打ち付ける音も。
互いの声がすべてかき消している。
名を呼び合うだけで、感情が濁流になって溢れてしまう。
身体中が喜びに満ち溢れている。
幸福とはこういうことを言うのだと知る。
世界にただ一人でいい。
たった一つのつながりで、生のすべてが報われた幸福に満ち足りたように二人は溺れていくのだった――。
●キール
頭がぼんやりする。
最初にそう思った。
窓から差す陽射しと海鳥の鳴き声。
その二つがメルヴィナの視覚と聴覚を刺激した。
いつもならば心地よいとは思えないものであったが、今朝はどこか違うような気がした。
身が痛むのを感じながらメルヴィナは身を起こした。
「とても長く深く眠っていたような気がするのだわ……」
瞼が重たい。
けれど、頭の中は夢見心地のままだった。
いや、起こした身もまた重たい。
「……」
視線を隣に向ければ、ルウェインがいた。
その体に刻まれた噛み跡に、メルヴィナは頭が煮立ったような熱に襲われる感覚を覚えた。
ぐらぐらと揺れる。
夢ではない。
あれは夢ではなかった。
「昨日は最低の気分だったのに……今日はなんだかすごく穏やかで幸せな気分なのだわ」
ベッドからそろりと降りる。
シーツを一枚手にとって……と思ってルウェインの体が僅かに揺れた。
あ、と思う。
シーツは一枚しかない。
必然、自分が引っ張れば、彼が寒くなってしまう。
あれだけ彼の体は熱を帯びていたのに、心配はないかもしれない。けれど、万が一もあるかもしれない。
そう思ってメルヴィナはシーツから手を離して、ルウェインの肩にかける。
自分が狼藉を犯した痕跡から目を背ける、という意味がなかったと言えば、きっと嘘だ。
昨日の自分はなんていうか、歯止めが効かなかった。
痛かっただろな、と思う。
でも、とメルヴィナは姿見の前に立って、お互い様だと思った。
鏡の中の彼女の白い肢体には、数々の赤い痕跡が残されていた。
小さな痣、といえばいいだろうか。
いや、それはあまりにもおぼこいが過ぎる。
昨晩のことを思い出して、ますますメルヴィナの体は熱を帯びたように桜色に染まっていく。
「……無茶ばかりするのだわ」
言葉とは裏腹に鏡の中のメルヴィナは、その小さな数々の痕に愛おしげに指を伸ばす。
これはルウェインが拙くも必死に想いを伝えようとした発露なのだ。
であれば、この痕を永遠にしたいとも思えてならなかった。
だが、人間の体とは難しいものである。
残したいもの、残したくないもの。
取捨選択を許されていないのだ。
「一日したらきっと消えちゃうのだわ」
「メルヴィナ……いえ、殿下……?」
「おはようなのだわ」
背後から聞こえる夢見心地な声にわずかに笑むが、メルヴィナはすぐに顔を引き締めた。緩めたらだめだと思ったのだ。漏れ出てしまう。
その言葉にルウェインはベッドの上で身を翻して正座していた。
平身低頭とはこのことだとういうようにルウェインは額をベッドにこすりつけた。
だが、一瞬で駄目になってしまった。
なぜなら、メルヴィナの香りがしたからだ。
ルウェインは恥じた。
こんな状況でも体は如実に反応してしまう。
己の体ながら節操がなさすぎて涙がでそうになる。馬鹿者。
「申し訳ありません。昨晩は恐れ多くも一時の情動に押し流されてしまい、取り返しのつかないことを……!」
ぎち、と思い出すだけでルウェインは体とは裏腹な心で涙するしかなかった。
「一時? 一時の気の迷いだというのだわ?」
空気が凍てついた。
やらかした。
ルウェインは即座に理解した。
鈍感極まりないのだとしても理解したのだ。馬鹿ではないのだから。別の意味で。
そこに怒りと悲しみとがないまぜになった表情にますます萎縮してしまう。
「いえ! 滅相もございません! ですが殿下……」
「メルヴィナなのだわ」
「……は」
「メルヴィナなのだわ」
「……」
「メルヴィナなのだわ。夜は、あんなに懸命に呼んでくれたのに」
「……メルヴィナ、その……俺に至らぬところはありませんでしたか? 苦しい思いをさせていませんでしたか?」
「至らないところばかりだったのだわ。私の体は、あなたが思っている程頑丈ではないのだわ」
「申し訳ありません! メルヴィナを間近にして、先走る衝動を御することができませんでした!」
何を己は高いところから頭を下げているのだろうか、とルウェインは即座にベッドから飛び降りて、額を床にこすりつけた。
床がおろしがねだったらよかったのにと思うほどであった。
「でも、良かったのだわ」
だが、そんなルウェインの天頂部、つむじに触れてメルヴィナは言った。
面を上げたルウェインを抱き寄せてメルヴィナは感極まったように言葉を告げた。
「メルヴィナ……?」
「あなたの気持ち、よくわかったのだわ」
ルウェインにはわからないことだったが、メルヴィナの顔は幸福に満ち足りた笑顔を浮かばせていた。
抱きしめられて、埋められてルウェインは気が付かなかったが、それでも彼女の顔には笑顔が咲いていたのだ。
他ならぬ彼がそうしたのだ。
「私こそ、背中を引っかき傷だらけにしてごめんなさいなのだわ。痛むのだわ?」
平身低頭したルウェインの背中を見下ろした時にメルヴィナは心を痛めた。
お互い様だが。
「お構いなく! これはメルヴィナによって刻まれた祝福の証です! すぐに消えてしまうのが惜しまれますが……」
「また、それなのだわ……でも、消えてしまうならまたつければいいのだわ」
「そ、それは……!」
言葉がでない。
その意味がわからないわけではない。
え、どういう? ルウェインは頭を振った。
そんなわけないと思うのと同時に期待もあったのは、嘘ではない。
「立つのだわ。シャワーを浴びにいくのだわ」
「はっ! しかし、一緒に向かわれては……そのメルヴィナに不名誉な噂が立ってしまうのでは……」
その言葉にメルヴィナは何も後ろ暗いことはないというような笑顔を向けた。
あまりにも魅力的な笑顔だった。
この笑顔を他の男が見なければいい。
彼女の美しさは万国共通である。だがしかし、その笑顔は反則が過ぎる。
誰もが胸を撃ち抜かれてしまうだろう。
あどけなさと妖艶さがないまぜになった笑顔でメルヴィナはルウェインの腕を取った。
こういう時、彼女の力は強い。
「伴侶が一緒にシャワーを浴びて何がいけないのだわ?」
伴侶。
頭蓋をルウェインは撃ち抜かれた思いであった。
「は、伴侶は些か時期尚早かと……」
しどろもどろである。
「その程度の覚悟で私を抱いたのだわ……?」
失望が刃のように突き立てられる。
満身創痍である。だが、男たるもの、それは勲章でしかないのだ。
「いいえ! 生涯忠誠! 愛を忠義に変えて貫く所存です!」
「なら、早く私を連れて行くのだわ」
鼻を鳴らしてメルヴィナは手を広げる。
それは、つまり、とルウェインはおずおずと手を伸ばした。
「今度はちゃんと離さないでいるのだわ。でないとまた誰かに奪われてしまうのだわ「」
握りしめた力は強い。
けれど、この強さをルウェインは知っている。
華奢な手ではないのだ。
守らねばならないものであるかもしれないけれど、それで壊れてしまうことなんてない。
故にルウェインは力強く握り返した。
「離しません。例え、骨肉の一片、魂さえ砕け散ろうとも」
これだけは譲れない。
これだけは曲げてはならない。
もう決めたことだ。どんな障害を前にしたとしても、もう二度とうなだれることはない。
ルウェインはこの手を離さない。
どれだけ試練が激流のように己達を試し、襲うのだとしても、だ。
「ルウェイン、痛いのだわ」
「申し訳ありません!」
「いいから、はやく、なのだわ。待ちきれないのだわ」
「はっ! 殿下の命あらば!」
「……」
「……、め、メルヴィナのためなら!」
「じゃあ、お願いなのだわ」
「し、しかし、日がまだ」
「だめ、なのだわ? だって、こんなに」
「……」
「ルウェイン」
「……ッ!!」
ルウェインはたじろいだ。だが、メルヴィナは止まらなかった。
枷が外れたのは、一体どちらであったのか。
これでは定かではない。
けれど、求め、求められるから愛なのだとすれば、二人の間には確かな愛があるのだろう。
二人は出会った。
真に出会ったものに別れは来ない――。
成功
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