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欲望の果てに白理は来たり

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 贅を尽くした宝物庫の背景を満たすのは、溢れんばかりの金銀財宝。いかにも豪華絢爛なこれらは|ただのハリボテ《グラフィック》に過ぎないが、所狭しと散らばる宝箱の中には本当の金銀財宝──|トリリオン《金》と|レアアイテム《宝》が詰まっている。
 宝箱の前で、不釣り合いな白の衣が翻る。無垢を思わす白の聖者は宝箱を注視しながら、ブーツの底を鳴らして秒数を数えながら背面に回った。そしてようやく爪先で軽く蹴飛ばして箱を開けば、そこには輝きを放つレアアイテムが収まっていた。

「欲望の尽きぬプレイヤーが見つけ出した『セオリー』ですか」
 聖者は深々とため息を吐き、忌々しそうに顔を歪めて再び宝箱を爪先で蹴り飛ばした。一連の動作はランダムに報酬が変わる宝箱の乱数を調整し、効率的に利を求めるテクニックだ。簡単な動作で外れ枠をほぼ確実に排除でき、金策に大変都合が良く──プレイヤーたちはこぞって乱数調整による効率的な金策に励んでいた。
 …それは、プレイヤーたちの欲望に節制と管理が行き届いていないという、何よりも明白な証拠だろう。
 欲望はさらなる欲望を呼び、果てのない欲望が醜く肥大し続ける。それは愚かなことだ。いち早くプレイヤーを管理し、節制を促さなければ。

「征きましょう。我らが白き教義に反する者たちに、罰を与えるために」

 ●

「ヤァヤァ。猟兵の皆々サマ、ごきげんよう!
 現実世界は毎日暑くてウンザリするよねェ…今回はオンラインで涼しく過ごしたい皆々サマへ、今ホットなダンジョンの予知だよ」
 靴底をカツカツと鳴らしながら、猟兵たちの前へ姿を現すのはバロン・ドロッセル。

「皆々サマは、金策ダンジョンって知ってるかい?正式名称じゃなくて、通称なんだけどね。
 なんでも|資金《トリリオン》を大量に稼ぐのにピッタリなダンジョンなんだって!」
 軽快に言葉を並べ広げてゆくのは、人気の『金策ダンジョン』についてだ。

「人気故に、ダンジョンにはもうあれこれ効率が確立されていてね。そうして多くのプレイヤーが脳死周回しがちになってねェ…うっかり死んでしまうのさ。
 もちろん、ただゲーム的に死ぬだけなら問題ないんだけど、『うっかりバグプロトコルに殺されて、遺伝子番号を焼却される』事が今まさに多発しようとしているんだねェ」
 人気の裏で広がりつつあるのは紛れもなく、バグプロコトルによる人権剥奪事件。統制機構の人間からすれば、『うっかり』で人権を失うなど堪ったものではないだろう。事件が多発する前に、迅速に対応するのも猟兵たちの務めだった。
 バロンは軽くステッキをくるりと回してから、『金策ダンジョン』の詳細を開いてゆく。

「さてさて、場所は魔王の住まう宮殿ダンジョン。目的地は魔王の待つ最奥…じゃなくて、一番の稼ぎ所である宝物庫だよ。
 主なルートは三つ。どのルートを選んでも宝物庫に辿り着けるよ。最初はまるで正常なダンジョンだけど、そこそこの難易度だからねェ、上手く魔王の配下やら仕掛けられている罠やらを切り抜けていってね」
 皆々サマには余裕だろうけれど──等と、バロンはニヤリと笑って言い添える。しかし猟兵たちにとっては過酷なものにはならないのは『正常』なままであればの話だ。
 バグプロコトルに乗っ取られた影響で、どのルートにも本来ならば存在しない場所に罠も控えていよう。『うっかり』を警戒するに越したことはない。

「宝物庫の前へ辿り着いたら、いよいよバグプロコトル『白教のシスターたち』のお出ましだ。
 マップは円状の八部屋と中心部の一部屋になっているから、グルッと回ってから中心へ向かうのがセオリーだ。不意打ちを狙って仕掛けてくるから、気を付けると良い」
 脳死周回のプレイヤーを狙うバグプロコトル故に、プレイヤーのセオリーはあちらも把握済み。不意打ちを誘発し対応しても有利に戦う事ができるだろう。

「そしてここで、お得で便利な|アドバイス《tips》だ。
 なんと全ての宝箱の中身はランダムなんだけど、簡単にアタリ宝箱に乱数調整できるんだよ!」
 本来ならば期待外れの宝もあれば、低確率でミミックのようなモンスターが出てくる事もある宝箱だが──このダンジョンの宝箱では、乱数調整をする事で中身が必ず一定以上の高レアアイテムを獲得できるという。

「どのルートを辿ろうとも注意深く見れば宝箱があるし、宝物庫にはもちろん宝箱が並んでいるからね。忘れずに、効率的に回収すると良い。
 本来なら魔王に挑む道中だから、ステータス増強アイテムや特攻が付く高レア装備、敵に有利になる能力を持つアイテムなんかも期待できるよ」
 宝物庫の中心部で待ち構えているボス『白聖者』は強力なバグプロコトルだが、ボス戦までの道中で装備やアイテムを都合良く整える事ができれば──強敵であろうとも、有利に戦う事ができるだろう。

 バロンがパチンと指を鳴らせば、輝くグリモアが重厚な扉を開く。扉の先に待っているのは、欲望のままに手を伸ばせばその手が届く金銀財宝──そして、その欲望に管理と節制を強いるべく、超常の力を振り上げる白き理だ。

「皆々サマの健闘と、そして幸運を祈っているよ」


後ノ塵
 後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。GGOで金策ダンジョンを攻略する、三章構成のシナリオとなります。
 一章はオープニング公開後からプレイングを受け付けております。

 尚、予告なくプレイングの再送信のお手間をいただくことがございます。再送信をお願いする場合、個別の連絡は行いません。ご了承下さい。

 一章は冒険です。
 なるべく速攻で先に進みたいところですが、戦いに役立つ何らかのアイテムや換金可能なお宝を手に入れることができます。乱数調整すると高レア確定です。任意のアイテムも入手できるかも?

 二章は『白教のシスター達』との集団戦です。
 エンカウント時、不意打ちを狙ってきます。この章でも一章と同じくお宝を回収することができます。

 三章は『白聖者』とのボス戦です。プレイングボーナス:手に入れたお宝を戦闘に利用する。
 強力なバグプロトコルとの戦闘です。かなりの強敵ですが、道中で回収したお宝の中に有利に戦えるものがあるかもしれません。

 皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『宮殿エリアの大冒険!』

POW   :    強力な精鋭兵とド派手なバトル!

SPD   :    複雑怪奇な罠を超絶技巧で解除!

WIZ   :    強烈な魔法で魔物の軍勢をぶっ飛ばす!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

佐伯・晶
常にスリル満点は疲れるし
脳死周回も必要とは思うけどね

雑魚の多いルートを進むよ
防御型タンクなら楽だし

魔王城らしく女悪魔型の敵が湧く所だけど
普通より数が多い気がするね
一撃は軽いから硬化した石の体と神気で耐えれるかな
宝箱の場所まで引っ張り
造像石霧にまとめて巻き込もう

後は敵が石化するまで耐えるだけだね
微小ダメージと回復が続いて少しむず痒いかも

その間に宝箱を空けよう
乱数調整でレア武器を狙うよ
格闘でも火力出せると楽になるし

宝箱にこんな威力の罠あったっけ?
飛び出した刃物でドレスの胸元が割れたよ
造像石霧で再生するから実質被害0だけど

アイテムも手に入って
敵も倒したし進もうか
彫像が増えて宝物庫らしさが増したかな?



 佐伯・晶を迎えるのは、おどろおどろしい装飾が視界を賑やかせる豪奢な宮殿──魔王城だ。魔王が住まうというその設定からそこそこの難易度ではあるが、乗り越えられる者にとっては絶好の『脳死周回』の金策ダンジョンとなる場所。
 しかしここには、すでにバグプロコトルが介入している──脳死周回を阻む為の、思わぬ難関が待ち受けている。

「常にスリル満点は疲れるし、脳死周回も必要とは思うけどね」
 晶はため息まじりの言葉を吐き零す。ゲームに求めるものは娯楽やストレス発散なのだし、スリルを求めるとしてもあくまでも安全なスリルだけだ。脳死のうっかりが社会的死なるなんて、たまったものではないだろう。

 晶が進むのは魔物の軍勢が蔓延る、つまり雑魚の多いルートだ。さっそく晶が魔王城らしい装飾の大扉を開けば、女悪魔のアクティブモンスターたちが出迎える。ぞろりと並ぶその数は魔王の軍勢と呼ぶにふさわしく…いつもよりも些か多いほど。

「おっと」
 早々に三叉の槍を構え突っ込んできたインプの一撃を、晶は瞬時に硬化した体で受け止める。次から次へと波のように押し寄せる攻撃は、その一撃こそは軽くとも数の面で侮れないが、防御型のタンクの晶の耐久性であれば、そうやすやすとやられはしない。

 晶は悪魔の軍勢を押し退けるように突っ切ってゆく。ターゲットを振り切らないようにモンスターたちを引っ張り、転がるように飛び込んだのはいくつかの宝箱が配置されている大部屋だ。もはや晶に逃げ場などない──悪魔たちはほくそ笑むが、それは悪魔たちとて同じ事だ。
 晶が造像石霧を広げれば、周囲は視界を遮る石化の霧に包まれる。興奮しきってがむしゃらに武器を振り回す悪魔たちの様子には、先程までの軍勢としての纏まりは欠片もなく、もはや脅威とは言えない。微小ダメージと霧による回復が続いて少しむず痒いが、石化するまで耐えて待つだけでは手持ち無沙汰だろう。晶は今のうちに宝箱に駆け寄ると、素早く乱数調整の手順に倣う。

「格闘で火力を出せる装備がいいんだけどっ」
 宝箱を注視しながら背面から爪先で蹴飛ばし開けば、出てくるのは『モイライの身代わり人形』…ダメージを阻む消費アイテムだ。残念ながら今は外れだ。狙いの定まらぬ悪魔の攻撃を硬化で受けながら、すかさず次の宝箱も乱数調整で開いていく。次に出てきたのは『ネフィリムの|手甲《ガントレット》』…オリハルコン製の輝く手甲。

「当たりだね」
 これなら火力も期待できるだろう。晶は中身へ手を伸ばし──その瞬間、いくつもの鋭い刃が襲いかかった。
 晶は素早く手甲を掴み取り回避するが、避けきれなかった刃にドレスの胸元をぱっくりと切り裂かれ、そして『うっかり』巻き添えを食らった近くの悪魔はざっくりと首が落ちていった。

「宝箱にこんな威力の罠あったっけ?」
 想定外の罠に晶は少し驚くが、覚えのない即死級の罠もまたバグの介入なのだろう。造像石霧で石化しなおし繋いだら晶自身の被害は実質ゼロだ。

 そうして程なく、石化に侵食される軍勢は動きと息を止めた。
 晶の去った跡には、所々を砕かれた悪魔たちの苦悶に喘ぐ彫像が立ち並ぶ。それはきっと──魔王城を彩る|背景《グラフィック》に相応しい趣きだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
確かに『うっかり』で遺伝子番号を焼却されてはたまりませんね
ゲームは不慣れですが
幸いこの世界には何度か来た事があります
少しでも対応のお手伝いをしましょう

早く進みたいところですが
私は攻撃手段があまりありません
何か攻撃に使えそうなものか
魔力を高めるようなものを探しつつ行きましょう

ダンジョンに入った時点で
白燐光追駆咬傷使用
白燐蟲と視覚を共有し
手分けして宝箱を探します

宝箱を見付けたら
周囲に罠等が無いか確認して開きます
ええと乱数調整は
くるっと回ってからえいっと後ろから爪先で…
これで良いのでしょうか

中身を回収した後は
視覚共有を続けつつ
罠や不意打ちに備えて先へ進みます
罠があれば白燐蟲に噛み付かせ
壊してから先へ



 神臣・薙人は龍笛を細く奏で白燐蟲の残花を呼び寄せると、魔王の住まうダンジョンへと足を踏み入れる。ひと呼吸のうちに使うのは白燐追駆咬傷──静かに目を伏せ五感を共有すれば、白燐蟲の『目』はダンジョンの様子をつぶさに語ってくれる。
 薙人はゲームこそ不慣れだが、この|世界《ゲーム》にはもう幾度目かの来訪となる。こういったルートの分かれたダンジョンでは選ぶ手が肝要。攻撃手段をあまり持たない薙人に、強敵や魔物の軍勢の待ち構える道は荷が重い…ならば、選ぶのは罠の蔓延るルートだ。
 慎重に豪奢な通路を向かえば、一見何の変哲もない通路の先には、大きな振子の大鎌が揺れている。

「行って下さい、残花」
 残花に先行してもらえば、あからさまな罠の前にも、あらゆる隙間に仕込まれている罠がよく|見えた《・・・》。道筋を見つけ辿れば容易く進める…これもまた脳死周回の金策ダンジョンと言われる所以なのだろう。
 けれど、ここは既にバグプロコトルが介入しているダンジョンだ。白燐蟲がころりと床を進めば──次の瞬間、無数の鋭い槍が壁から飛び出した。残花は目にも止まらぬ素早さで、一瞬のうちに槍の罠へ噛み付き残らず壊してゆく。砕けて転がる槍の破片を眺め、薙人は静かに息を吐いた。

「確かに『うっかり』で遺伝子番号を焼却されてはたまりませんね」
 |一般人《プレイヤー》にとっては厳しい三段構えの罠でも、残花となら対応しきれる。薙人は怖じることなく大鎌も乗り越えて、通路の先へと更に進む。
 …そのまま駆け抜けてしまいたいところだが、この先では避けきれない戦いも待っている。備えに欲しいものは攻撃に使える装備か、あるいは魔力を高めるアイテムだ。

 残花に先行してもらいながら、今度は宝箱も探してもらう。この罠ばかりのルートはモンスターがおらず、ドロップアイテムが期待できないからか、宝箱も豊富なようだ。その分ミミックなどのリスクもあろうが…今度は、都合の良い乱数調整の出番となる。

「ええと…くるっと回ってからえいっと後ろから爪先で…」
 宝箱の元へ辿り着いた薙人は、残花の目と共に周囲のめぼしい罠を壊してから、乱数調整の手順を思い出しながら宝箱を見つめて周囲をくるりと歩き、宝箱を爪先で蹴ってみた。
 少し痺れる爪先に眉を寄せて、それから薙人はそっと中身を覗いてみる。開いた宝箱にころんと転がっているのはガラス瓶…飲めば魔力を高めるポーションだ。目当ての運に恵まれたことに頬を綻ばせ、次の宝箱へと向かう。

「えいっ!」
 今度もまた同じ手順で乱数調整。出てきたのは『病毒の|魔導書《スクロール》』…治癒を阻害し呪詛を与える消費アイテムだ。再び他の宝箱を開けば、今度は羽根のような見た目の投擲ナイフが出てきた。『イカロスの羽根』…ステータスには飛行特攻と記されている。これらのアイテムがあれば、手助けもできるだろうか…。

 薙人は立ち上がると、再び残花と共に罠を退けながら、通路の先へと進んでゆく。この先にはバグプロコトルたちが待ち受ける宝物庫──避けることのできない戦いが待っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ?乱数調整って何ですか?
……ゲームの世界だとランダムは本当にランダムになっていないって、アヒルさん本当ですか!?
だから、決まった手順で行動すれば望む結果が得られるって、それズルくないんですか?
当然ズルだけど、それを使わないと不可能な戦いもあった???
って、アヒルさん遠い目をしてどうしたんですか?

えっとそれなら、その手順で開ければいいアイテムが手に入るんですね。
えい!!
……あのアヒルさん、なんで私はミミックさんに齧られてるんですか?
しかも、これで何度目ですか。
ふえ?乱数に余計なユーベルコードが混じってるって、なんで私ばっかりついてないんですか!!



「ふえ?乱数調整って何ですか?」
 魔王の住まう宮殿のダンジョンを進みながら、フリル・インレアンはグリモア猟兵の語った言葉に首を傾げる。それはゲームの裏技なあれこれを知らぬものには無縁の言葉。ゲームの世界だとランダムは本当にランダムになっていないものなのさ、と饒舌に語るのはガジェットのアヒルさんだ。ところがフリルは目を白黒させて驚きのあまり足を止めてアヒルさんに詰め寄った。

「アヒルさん本当ですか!?
 決まった手順で行動すれば望む結果が得られるって、それズルくないんですか?」
 いや、それはまあ勿論、そう言われれば当然ズル…だけど。でもほら…それを使わないと不可能な戦いもあったし?なんて、アヒルさんは遠い目をして言葉を並べる。あんまり触れてはいけない。乱数調整のイエスノーは、ゲームやプレイヤーによってはセンシティブだから。

「えっとそれなら、その手順で開ければいいアイテムが手に入るんですね」
 フリルは一先ず納得して、ダンジョンへ向き直る。ちょっとズルとて使いよう。モンスターに襲われてはゆっくり宝箱も開けられないから、フリルとアヒルさんは罠の蔓延る道へと向かう──。

「ふええっ!!」
 そんな道中は(フリルだけ)壮絶な道程だった。あらゆる罠という罠にかかり…もちろんアヒルさんは助けてくれるのだけど、助けてもらった端からやっぱり罠にかかるばかり。運良く傷は負わなくてもメンタルは消耗するばかり。そんな時にポツポツ見つかる宝箱は、きっと心の清涼剤だろう。
 だからフリルは気合を振り絞って──いざゆかん、乱数調整の宝箱タイム!

「えいっ!!」
 ……。
 ……、……。

「……あのアヒルさん、なんで私はミミックさんに齧られてるんですか?」
 フリルの頭をすっぽり覆う大きさのミミックが、フリルをがじがじ。しかもこれは何度目なのか。もはや数えるほうが面倒なくらいに、フリルはミミックと|遭遇《エンカウント》しまくっていた。一人だけ罠にもガンガン引っ掛かっているので、脳死周回金策ダンジョンって…なんだっけである。
 ミミックを外そうとしたら、今度は腕にがぶり。悲鳴をあげるフリルの一方で、アヒルさんは乱数調整で換金アイテムをたっぷり獲得。どうしてなんで、なんて嘆くことなかれ。理由はハッキリしている──だってフリルは|たった一人の被害者《スタンドアローン》なのだから。

「ふえ?乱数に余計なユーベルコードが混じってるって、なんで私ばっかりついてないんですか!!」
 そんなことアヒルさんに言われてもー。ミミックがじがじフリルをよそに、アヒルさんはフリルの代わりに残った宝箱を、ていっ。乱数調整によって出てきたのは『沈黙のラッパ』…吹けば周囲がみーんな喋れなくなるアイテムだ。

「何に使うんですか、そんなのー!!」

成功 🔵​🔵​🔴​

マルティナ・ルクレール
白教の動きがこの辺りであると聞いて来てみれば、罪無き人々を手に掛けようとする所業、見過ごすことはできません
名前が似ただけの別物の可能性もありますが、ここは企みを挫く為に働きましょう

【祝福授けし天矢の慈雨】を賜り、高めた行動速度と探索・踏破能力でいかなる罠も潜り抜け、宝物庫へ向かいます
感知・知覚能力を最大限活かすことで乱数調整の度に宝箱の中身を開けることなく察知し、目的のアイテムを頂戴いたしましょう

狙いは魔力を桁外れに高めるポーションです
これならば戦いの際、確実に役立つことでしょう
確か宝物庫のドアを特定回数ノックし、宝箱の側面を6秒間注視した後に正面から開けることで種類を絞ることが出来たはずです



管理と節制を教義とし、果てにはこの世界の人々を弾圧する白教──それが関与するという、此度の事件。マルティナ・ルクレールは胸にロザリオを掲げ、静かに魔王の住まうこの宮殿ダンジョンへと足を踏み入れる。

「罪無き人々を手に掛けようとする所業、見過ごすことはできません」
 白教とは名ばかりで、似ただけの別物の可能性もあるかもしれないが──敵がバグプロコトルである以上、|罪なき人々《プレイヤー》を害する者であることに間違いはない。ならばその悪しき企みを挫く為に、マルティナの祈りは信仰する神へと捧げられる。

「天より見守りし御使達よ、ここに祝福の慈雨を降らせたまえ──」
 祈りを捧げ空の手で矢を空を放てば、天は厳かに光り輝く。迎え入れるように両手を広げるマルティナのその胸に、授かる祝福の慈雨はダンジョン探索に特化した爆発的な|能力強化《バフ》だ。最大限に活かせば、いかなる罠も事前に感知し素早く潜り抜けるだけでなく、もはや宝箱の中身を開けることもなく察知し、目的のアイテムだけを回収できよう。

 壁から飛び出す罠も、落とし穴も、落下する天井も。向上した能力でマルティナは無数の罠を難なく切り抜け、通路を駆け抜けながら行く先々で散らばる宝箱の『期待値』を目敏く見極める。乱数調整ができるとて最高効率を求めるならば、開く宝箱を厳選するのも選択のひとつだ。
 程なく辿り着いた小部屋の前でマルティナはふいに足を止めた。小部屋の中には宝箱があった筈…そして、思い出すのはもうひとつ。

「確か種類を特定できた筈ですね」
 なにせ、乱数調整の手順はひとつではない。小部屋の前に仕掛けられた罠をすり抜け、マルティナは扉に密着する。マルティナが求めるアイテムは、この先の戦いへの備え。
 宝箱の配置されている部屋を一定回数ノックしてから、体を滑り込ませるように中へと入る。床のタイルの下に仕込まれた罠を飛び越え、宝箱の宝箱の側面を──6秒間注視。正面から開けば、マルティナはようやくお目当てのアイテムと対面する。

「準備は整いました」
 マルティナが宝箱から入手するのは繊細な銀装飾の施されたガラス瓶。これこそ、最高レアリティの魔力ポーションだ。魔力を桁外れに高めるポーションがあれば、この先の戦いでどれほどの強敵が待ち構えていようとも──確実に役立つことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『白教のシスター達』

POW   :    ホワイト・ウォーデン
戦闘力のない【白き天使の幻影】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【天使が放つ管理の鎖】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD   :    ホワイト・コンバージョン
視界内の任意の全対象を完全治療する。ただし対象は【管理を司る白き光】に汚染され、レベル分間、理性無き【白教の信者】と化す。
WIZ   :    ホワイト・バイブル
自身が戦闘不能となる事で、【白教の管理に従わない】敵1体に大ダメージを与える。【白教の聖書の内容】を語ると更にダメージ増。

イラスト:ミスカ◇スミン

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 宮殿ダンジョンを駆け抜け、猟兵たちはいよいよ宝物庫の前へと辿り着く。いかにも豪奢な大扉を開けば、猟兵たちを迎えてくれるのは、目が眩むほどの豪華絢爛なグラフィック。
 トリリオンコインに宝石、貴金属、ありとあらゆる高レア装備…描写されているだけの宝物の数々は、手が届かないハリボテの背景だ。けれどこの空間に並び連ね、積み上がる宝箱にはそれらに類いする宝物が入っている。…そんな期待は、否応なしにプレイヤーの欲を掻き立てるのだろう。

 猟兵たちは宝物庫の中へと慎重に歩みを進める。欲望に染まるプレイヤーを狙うのは、管理と節制を掲げプレイヤーへと押し付け、あまつさえ遺伝子番号を焼却しようする──|敬虔な《・・・》白教のシスターたちだ。
 宝箱を求め歩みを進める欲深きものを仕留めるべく、シスターたちは宝物庫のそこかしこに隠れ潜んで不意打ちを狙っているだろう。

 猟兵たちの装備は、もう充分だろうか。シスターたちを乗り越えた後には、この宝物庫の最奥で白聖者が待ち受けている。強敵の前に、新たに装備やアイテムを整えるならば今しかない。
 だが宝箱を求める猟兵たちもまた、白教のシスターたちのかっこうの獲物となろうもの。宝箱を漁るならば不意打ちを覚悟することも必要か──或いは逆に、シスターたちを誘い込むこともできるだろうか。
神臣・薙人
貴方がたの信ずるものを否定するつもりはありませんが
こちらの障害となるのでしたら話は別です
退いて頂きましょう

とはいえ相手の数が多いですね
周囲の様子に注意を払いつつ宝箱を探します
見付けたら蟲笛を隠し持って近付いて
宝に夢中になっているふりをします

大きな宝箱です
きっと良いものが入っていますね
うまくシスター達が近付いて来たら
白燐桜花合奏を使用
こちらもダメージを受けますが
蟲達が治癒してくれます
多少の痛みは堪えて
蟲笛の演奏を続けます

せめて聖書の内容を語らせないよう
可能な限り大勢が範囲に入るように
立ち位置を調整しましょう

魔力を上げるポーションは取っておくつもりですが
あまりに不利な状況に追い込まれれば使用します



 宝物庫に辿り着いた神臣・薙人は、注意深く周囲を見渡す。きらびやかな宝物庫はそれだけで視線を奪うものだが──そこかしこには白教のシスターたちが秘めやかに潜んでいる。
 ここはボス戦前の前哨戦とはいえ、数の多さは決して侮れないだろう。いざとなったら出し惜しみはしていられない。薙人は隠し持った蟲笛を袖の下で確かめながら、懐のポーション瓶を撫でると視線を上げる。それは豪奢な背景に思わず魅入られ浮かれる気持ちの装いだ。
 そのまま見つけた宝箱にわざとらしく駆け寄ると、薙人は大きく両手を打った。

「大きな宝箱です。きっと良いものが入っていますね」
 そうして宝に夢中になる薙人の背後へ、静かに忍び寄るのは白教のシスター達──大きな宝箱の蓋をどうにか持ち上げれないかと、まごまごしている薙人を取り囲みじわりじわりと円を狭める。
 あとほんの僅か。いよいよ聖書を振り上げた次の瞬間、薙人は大きく姿勢を下げて振り向いた。

「な──ッ!?」
 聖書による殴打は空を切り、不意打ちを避けられ驚くシスター達の耳に届くのは、薙人の笛が奏でる白燐桜花合奏。
 柔らかな春の音色が鋭く響けば、桜の花と白燐蟲による淡色の吹雪は薙人を諸共包み込むように、シスター達へと襲いかかってゆく。

「きゃああっ!」
 高く伸びゆく春の吹雪は瞬く間にくすんだ白を裂いてゆく。大きくHPを削られるシスター達はけれど、まだ屈するわけにはいなかった。全ては白教の教えに、管理に従わぬ悪しきが目の前にいるのだから。

「く、ぅ…!欲深きものよ、お聞きなさい…っ!」
 ──白は正しい者の道を知られる。しかし、悪しき貪欲の道は滅びる。白教の聖書を諳んじる言葉は吹雪の前に途切れようとも、シスターの意志は揺るがない。糸が切れたように倒れ伏せば、その身を引き換えにした反撃のダメージは薙人へと襲いかかる。

「…っ!」
 薙人の笛の音は、その痛みに僅かに揺れる。だが、聖書の語りが途切れたお陰で、想定外というほどのものではない。なんとか堪えて揺らぎを立て直し演奏を続ければ、残花は薙人の傷を癒やしてくれる。
 未だ折れぬ薙人の姿に、シスター達は再び声を張り上げようと息を大きく吸い込んだ。けれど薙人とて二度も同じ攻撃を食らうつもりはない──狙いを定めさせぬように、大勢のシスターが吹雪の中へと収まるように滑らかに立ち回る。

 シスターたちの信ずるものを否定するつもりは、ないけれど──それが薙人の、猟兵の障害となるものというならば。

「…退いて頂くだけです」
 笛を下ろした薙人は大きく息を吐き、宝物庫の最奥へと視線を向ける。
 すべてを退け、ただ前へ。笛の音の余韻の中で、桜の花は静かに白へ降り積もっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マルティナ・ルクレール
隠れ潜んでの不意打ち……ですか
でしたら敢えて隙を晒すことで攻撃を誘い、痛い目に遭っていただく
ことといたしましょう

予め『いと貴き天上の加護』を纏い、知らぬ振りをして宝物庫へと入ります

隙を見せる為、こちらでも宝探しと厳選を
希少な古書や良質な杖を目的に探索をしましょう

先程の様に確認することなく中身を見抜く、というようには参りませんが、主より賜りました[祝福]により、欲しいものを連続して引き当てて喜ぶようなこともあるかもしれませんね

絶好の隙を狙った彼者らは、私が書の状態を確認し終え、振り向く頃には強力な[神罰]をその身に受けて倒れ伏していることでしょう



 白教のシスター達が潜む宝物庫の扉を前にして、マルティナ・ルクレールは胸の前で両手を組むと目を閉じる。

「はじまりにして至高の加護で、困難へと向かう者をお護り下さい……」
 そうして静かに祈りを捧げれば、神々しい輝きがマルティナを包むように降り注ぎ──ほんの一瞬で、ふつりと掻き消えた。だがマルティナは戸惑うなくことなく顔を上げると、穏やかな微笑を浮かべて豪奢な扉に手を添える。いと貴き天上の加護はこの身に賜られた。絶対不可知にして頑強無比の奇蹟の加護は、どんな不意打ちであろうとも打ち破ることは罷りなぬ。

「それでは、厳選させて頂きましょう」
 今度は|何もせず《・・・・》ゆっくりと扉を開くと、マルティナは宝物庫の宝箱へと真っ直ぐ進む。このダンジョンの探索の前に賜った|祝福《バフ》は未だ効果を失ってはいないが、先程の様に宝箱を確認せずに中身を見抜くことも、特定の一品だけを選ぶこともない。この先で必要なのは効率を求めた厳選ではなく…敢えて隙を晒すことで敵の攻撃を誘い、痛い目に遭ってもらう『釣り』を兼ねた吟味なのだから。

 マルティナは周囲を改めるように見渡し、積み上がる宝箱を明らかにしてゆく。求める物は希少な古書や良質な杖だが…ある程度の期待値が堅い中で、これほどの宝箱があれば純粋な『幸運』までもが応えてくれよう。

 立て続けに開いた宝箱から出てきたのは、二頭の蛇が巻き付いた『カドゥケウスの杖』と、タイトルが削れて読み解けない古書だ。訪れてくれた幸運に、マルティナは微笑を浮かべる。聖なる力と呪力を高める杖を小脇に抱えると、分厚い皮表紙を撫でてから書を開いた。
 そうして宝物庫に古い紙とインクの香りが立ち上り──マルティナの背後には、密やかに忍び寄る白教のシスター達の魔の手が伸びる。

「欲深きものへ、粛清を…!」
 マルティナのモノトーンの修道服は、改めるまでもなく異教徒の証。ならば異端審問すら不要だ。欲望に溺れる異教徒を葬るべく、その絶好の隙にシスター達は囁くように諳んじる。
 ──おお、白主よ。正しき者を管理し、炎をもって強欲を焼き尽くすように、かの罪人を覆い尽くしたまえ。直後シスターの一人倒れ付し、その命を引き換えに白教に背く者を断罪する。

「…!?」
 けれど、古書を読み耽るマルティナへ|その力《ダメージ》は届かない。奇蹟の加護は白教の力を防ぎ切り──シスター達が驚きに顔を歪めた直後、彼女たちには厳かに『神罰』が降り注ぐ。マルティナが書の頁を捲るたびに、シスター達は瞬く間にその身を滅ぼしてゆく。

「該当エリアのダンジョンを踏破してゆくと、その地にまつわる神話や伝説の記述が開放される書のようですね」
 古書を検めたマルティナは呟いて表紙を閉じる。このダンジョンでいえば、魔王を倒すか何かしらのタスクをクリアすれば解放される物語があるのだろう。しかし今回はそうしたやりこみ要素は無縁だ。
 マルティナは宝箱に踵を返して、いよいよ最奥へと向かってゆく。その足元には、神罰に倒れ付したシスター達の骸が転がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、どうにか宝物庫に着きましたが、今手に入っているアイテムはアヒルさんが手に入れたラッパだけ……。
ふええ!?このラッパはアヒルさんが見つけたものだから私には貸さないって何を言っているんですか!
ふえ?私はここの宝箱からレアアイテムを見つけろって、アヒルさんひどいですよ。
ふええ、ここで手に入らないと次はないって、なんとしても見つけないといけませんね。
それに、ここにはミミックさんの他にも邪魔をする敵がいるって、シスターさんってことは美白の魔法で光に耐性をつけておいてから宝箱を開けましょう。
アヒルさんはもうアイテムを手に入れているんですからシスターさんの足止めをしてくださいね。



「ふええ、どうにか宝物庫に着きました…!」
 稼ぎが良いダンジョンとはなんとやら。罠やらミミックやらで散々なたフリル・インレアンも、どうにかこうにか宝物庫へ辿り着く。しかしどうして、今手に入っているアイテムは頼りないラッパだけ。この先待ち受ける強敵とか、あと今まさにどっかしらに潜んでる白教のシスター達とか、どうしたって大変だろう。それに…このラッパを見つけたのはアヒルさんなのだ!

「ふええ!?このラッパはアヒルさんが見つけたものだから私には貸さないって何を言っているんですか!」
 声が大きいでしょ!アヒルさんはすかさずラッパを吹かして、声の出なくなったフリルは口をパクパク。隠れている筈の白教シスター達は絶好の機会を狙っているし、フリルはフリルで何か手に入れないと次はない!なんとかレアアイテムを手に入れてよねとアヒルさんにフリルはこくこく頷く。

「……ぷはっ!アヒルさんは足止めをしてくださいね」
 ようやくラッパの効果が切れて、フリルはしっとり艶々なお肌を守る美白の魔法の下準備をしてから宝箱をぱかり、がぶり。

「ふええ!アヒルさーん!!」
 再び現れたミミックにフリルは齧られて、アヒルさんはやれやれ。レアアイテムが欲しいなら乱数調整もしなくっちゃ。美白の魔法でつるんと抜け出せたフリルの、その後ろから白教のシスター達は迫っている。

「ああ、哀れで欲深き子羊と…アヒルよ?白教の加護を授けましょう」
 管理を司る白き光が瞬けば、治癒と白教への盲信が与えられん──けれどそんなフラグは美白の魔法で予防済み。シスターたちが驚いている所に、アヒルさんがつるんと突っ込みどったんばったん。

「ふえぇ、今のうちですね」
 そしてフリルも宝箱を開けまくる。ミミックは出てくるけれど、どたばた逃げ続けて数うちゃ当たる!ようやく手に入れた『アルテミスの弓』に『キューピッドの矢』を番えてえいやっと次々に上へ放ってゆく。
 フリルは気付かなかったけれど──それは必中の弓に瞬きの魅了の矢。白教のシスター達もミミック達も魅了した一瞬の隙にアヒルさんは宝物庫を駆け回り、つるりと滑って連続ストライク!
 ミッションコンプリート──勝ち誇るアヒルさんの後ろでは、シスター達もミミック達もまとめてみんな仲良く目を回していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
次は防具を探そうか
装備したら手甲のテクスチャが石っぽくなったね
ストースタチューの特性なのかな

まず煙幕代わりに造像石霧を使用
発見されにくくして宝箱を探索
霧を抜けてきたらデバフかかるしね

乱数を調整して女性向けの防具を狙おう
ゲームによくある見た目と防御力が釣り合わないやつ
節制を旨とする相手を引っ張り出すのに使えるかも

…うん、石像で良かったと心底思うよ
全身灰色だから遠目にはわかりにくいし
体も防具も硬くなってるから戦ってる時に動いたりずれたりしないし

その後敵が隠れてそうな物陰近くを進もう
奇襲されたら造像石霧を使用
普段節制してる相手なら興奮作用が効果的かもね
混乱している間に新調した装備と石化で倒していこう



「ストースタチューの特性なのかな…」
 ネフィリムの手甲を装備した佐伯・晶はぽつりと呟く。視線の先にあるのは、輝くような色から石っぽいテクスチャに変化した手甲だ。どんな見た目になろうとも性能は変化しないことが幸いだろう。
 ともかく武器はこれで充分。次は防具を見つけて次の備えにしたいところ。宝物庫へと踏み込んだ晶は、さっそく煙幕代わりの造像石霧を広げてゆく。視界を遮る霧の中で晶ひとりを見つけ出して、不意打ちを狙うのは白教のシスター達にも難しいだろう。無理に抜けてくるならば──その身にはデバフが襲うだけだ。

「よっ、と」
 先ほどと同じく乱数調整しながら次々と宝箱を開けてゆけば、強欲に宝箱を漁る物音は宝物庫によく響く。霧に尻込みしていたシスター達もいよいよ霧の中へ踏み込んでくるだろう。
 背後に蠢く気配に警戒しながら、晶は素早く宝箱の中身を取り出す。入手したのは『アイギスの胸当て』…レアリティも高く高防御力を誇る防具だが、どうみても見た目はビキニアーマーだ!

「…うん、石像で良かったと心底思うよ」
 一瞬だけ悩んで渋々装着した晶は、みるみるうちに石の色に染まったビキニアーマーに、改めてこのストーンスタチューの特性へ感謝する。守ってる範囲が怪しそうなビキニの上半身に、元々着ていたゴシックドレスの下半身では、露出度もファッションもまあ…チグハグと言えようか。とはいえ全身灰色で遠目にはわかりにくいし、見た目に反して防御力は申し分ない。おまけに石の体の特性で固くなっているからこそ、ビキニがズレる心配も必要ないのだから。
 忍び寄るシスター達の気配に晶はスカートを翻す。そのまま物陰近くを進んでゆけば、いよいよ聖書を振りあげるシスター達とエンカウント。

「ああ白よ!淫らな欲深き者へ、管理を!節制を!」
 既に霧の中を進んできたのか、その言動はデバフに侵され大振りでぎこちなく…いくら奇襲を狙おうとも対応は間に合うものだ。糸が切れたように倒れユーベルコードを解き放つその攻撃は、晶が再び広げた造像石霧によって目標を見失う。いよいよ霧の興奮作用に飲み込まれた彼女たちは聖書を掻きむしり、己の中に膨らんだ混乱の中でも支離滅裂な言葉を諳んじる。

「新調した装備のお手並み拝見だよ」
 容易くシスター達の背後を取った晶は、すかさず拳をシスターへ解き放つ。ネフィリムの手甲…それは、巨人の名を冠する装備。攻撃は巨大な拳となって、白教のシスター達を一掃していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『白聖者』

POW   :    ホワイト・オーダー
【節制の光】を宿し戦場全体に「【我欲を捨てよ】」と命じる。従う人数に応じ自身の戦闘力を上昇、逆らう者は【触れる者を崩壊させる白き羽根】で攻擊。
SPD   :    ホワイト・マジェスティ
【管理を司る白き光】を見せた対象全員に「【白教に従え】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【行動成功率】が半減する。
WIZ   :    ホワイト・エンジェルズ
レベル体の【純白の天使軍】を召喚する。[純白の天使軍]はレベル×5km/hで飛翔し【白光の矢】で攻撃する。

イラスト:レインアルト

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 獲得した宝を握りしめて、猟兵たちは宝物庫を進み行く。装備を整えた今、猟兵たちの目的はこの先に待ち受ける強敵の撃退だ。たとえ輝くエフェクトに目が眩もうとも、目先の欲望に立ち止まることはない。猟兵たちはただ前へ進み──そうしていよいよ、最奥の扉へと辿り着いた。

 見上げるほど大きな扉は、触れるまでもなくひとりでに開かれる。これまで訪れた部屋よりも広く大きなホールとなっている宝物庫。その贅を尽くした背景を満たすのは、溢れんばかりの金銀財宝と宝箱。もはや見慣れた光景の中心で、見慣れぬ白がたった一つ。
 開かれた扉の先で、不釣り合いな白が翻る。無垢を思わすその姿は無機質なほどに、ただ白く。

「ああ。…我らの白き教義が届かなかったのですね」
 猟兵たちの姿に目を見張り、すぐさま忌々しげに顔を歪めた白い聖者──彼こそが、このダンジョンで罪のないプレイヤーを狙っていたバグプロコトル、その大元だ。
 警戒を向ける猟兵たちを一瞥した白聖者が、おもむろに両手を振れば羽毛が踊り白いモザイクが列を成す。次の瞬間、白聖者の姿が無数の鳩と霧散した。
 部屋をぐるりと巡り、再び集まった鳩たちが再び人の形を造り描くのは──モザイクの冠を戴く白聖者の、超常的な力で人々を弾圧する完全な敵としての姿。

「そのように欲望にまみれるなど、愚かなことです。管理と節制こそが──正しき理」
 どこか抑揚の欠けた空虚な声が響き、その身にはらむ威圧感が膨れ上がる。欲望に溺れるすべてを、粛清するために──白聖者は猟兵たちへ襲いかかる!
神臣・薙人
いよいよ大詰めですね
罪の無いプレイヤーの皆さんから
人権を剥奪させる訳には行きません
戦いましょう

事前に魔力を上げるポーションを使用
その後ヤドリギの織姫を使用して
少しでも装甲を強化します

天使軍を捉える事は難しいでしょうから
先程手に入れたイカロスの羽根を使用
飛行特攻とありましたし
これでどうにかなるでしょうか
その後は植物の槍で攻撃しつつ
一点突破で白聖者の元を目指します

白聖者までたどり着けたら
手や足を狙って槍を撃ち込み
少しでも機動力を削いで行きます
負傷時は生命の実で回復
心持ち攻撃を優先します

白教そのものを否定するつもりはありません
けれどその教えを他者に強いる事は間違っています
人の心は自由であるのですから



「罪の無いプレイヤーの皆さんから人権を剥奪させる訳には行きません」
 このダンジョンでの戦いもいよいよ大詰め。神臣・薙人は対峙する白聖者へ鋭い視線を向けると、ひと息に魔力ポーションを飲み干し大きく柏手をひとつ。開いた手のひらから広がるヤドリギの蔓は、またたく間に新緑のローブへと織りゆき、薙人の体を包む装甲となる。

「ホワイト・エンジェルズ…速やかに粛清を」
 白聖者もまた臨戦態勢の猟兵に対し両手を広げる。羽毛が虚空から白いモザイクを呼び起こし、現れるのは純白の天使軍だ。天使たちは素早い動きで薙人を取り囲むと、輝く白の弓に白光の矢を番え狙いを定め一斉に解き放った。
 白く瞬く光の一撃──天使軍の攻撃は苛烈だが、ヤドリギの織姫はその装甲で薙人を守ってくれる。だがこのままでは白聖者に攻撃は届かないだろう。天使の包囲を切り崩すべく、薙人が取り出したのは先程手に入れたイカロスの羽根だ。
 ヤドリギのローブから生えた植物の槍を掴み、薙人は真っ直ぐ白聖者へと駆けてゆく。素早い天使軍の動きを捉えることは難しいだろう──ならば、一点突破で白聖者を目指すのみ。羽根を模したナイフの切っ先を白聖者へと向けて投擲する。天使の動きがいくら素早くともその身を盾として白聖者を庇うならば、回避することは難しいのだから。
 天使の翼にナイフが突き刺さった瞬間、イカロスの羽根は溶けるように発火し、翼の燃え尽きた天使たちが次々に墜落してゆく。
 穴の開いた包囲網はけれどすぐさま天使の翼が埋めるも、イカロスの羽根ならばその翼の悉くを焼き切れる。白聖者に近付けば近付くほど白光の矢雨の勢いは増してゆき、いよいよ防御しきれなくなった攻撃は薙人の体にダメージを刻む。だが、ここで怯んではいられない。生命の実をもぎ取り傷を素早く回復すると、薙人は真っ直ぐに白聖者の元へと駆けてゆく。

「白教そのものを否定するつもりはありません」
 過ぎた欲は確かに身を滅ぼすもの、時に節制も必要だろう。管理された生活は無駄がなく、気楽に過ごせる事もあるだろう。

「けれど、その教えを他者に強いる事は間違っています」
 だがそれは人々が己の手で選び取るものでなければ──そして、いつでも手放しても良いものでなければならない。
 薙人の言葉に白聖者はただ沈黙を返し、片手を振り上げる。天使軍は白光の矢を番え狙いを定め、薙人へ矢雨を解き放つ──その瞬間、薙人は手元に残っていたイカロスの羽根のすべてを投擲した。
 軍列は崩れ雨も乱れる。翼の壁が燃え尽きた今ならば、薙人の植物の槍は白聖者へと届きうる。白聖者の機動力を削ぐべく手足を狙って、薙人は槍を打ち込んだ。真っ直ぐに伸びゆき迫る植物の槍の切っ先に超常的な光が瞬き防御を図るも、槍を防ぎ切れなかった白聖者の右手からは羽毛に解けて鳩が飛び立つ。

「人の心は自由であるのですから」
 白教にも、バグプロコトルにも。人の心を縛ることはできない──人は欲望を、望みを糧に生きているものなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」

基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。

探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。

情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。

戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。


水心子・真峰(サポート)
水心子真峰、推参
さて、真剣勝負といこうか

太刀のヤドリガミだ
本体は佩いているが抜刀することはない
戦うときは錬成カミヤドリの一振りか
脇差静柄(抜かない/鞘が超硬質)や茶室刀を使うぞ

正面きっての勝負が好みだが、試合ではないからな
乱舞させた複製刀で撹乱、目や足を斬り付け隙ができたところを死角から貫く、束にしたものを周囲で高速回転させ近付いてきた者から殴りつける
相手の頭上や後ろに密かに回り込ませた複製刀で奇襲、残像で目眩まし背後から斬る、なんて手を使う
まあ最後は大体直接斬るがな

それと外来語が苦手だ
氏名や猟兵用語以外は大体平仮名表記になってしまうらしい
なうでやんぐな最近の文化も勉強中だ



 白聖者と戦闘が繰り広げられる宝物庫の最奥に、突如エンジンが轟き響く。

「アタシらの力が入用かい?」
 飛び込んできたのは水心子・真峰を後ろに乗せた数宮・多喜の宇宙カブだ。新たな猟兵の姿に白聖者は眉を歪ませるが、この乱入者もまた白教の管理と節制に従わぬ不心得者。ならば白聖者はその全てを粛清するのみ。

「ホワイト・マジェスティ…我らが白教に従え」
 空間がひび割れ白いモザイクがその数を増やせば、超常的な輝きを瞬き始める──それは管理を司る白き光。白聖者の命令に従わなければ、猟兵たちの行動成功率は半減してしまう。

「そうはさせないよ!偏在同定固有振動数、解析完了……存在そのものを揺さぶられちまえ!」
 だが白き光が宝物庫を満たすその寸前、多喜の騎乗する宇宙カブJD-1725から時空間の激震が放たれる。宙を揺らす荒波はダメージを与えるのみならず、白聖者のユーベルコードの使用を阻害する。
 白聖者の表情が歪み白いモザイクが揺れ弾け、ガラスのようにひび割れ壊れる。管理を司る白き光は弱々しく明滅すると掻き消えた。光無き今、もはや白聖者の命令は無意味なものだ。

「正面きっての勝負が好みだが、試合ではないからな」
 真峰はニヤリと笑みを深め、両手を打つと瞬く間に百を越える水心子真峰を複製し飛び出した。多喜もまた同時に宇宙カブを突進させて、白聖者へ挟み撃ちを仕掛けてゆく。
 カブの機動力で縦横無尽に動き回る多喜の姿は白聖者とて捉え難いもの。さらには多喜の電撃のマヒ攻撃と衝撃波による援護射撃の中で、真峰は念力で複製刀を自在に操り素早い乱舞を繰り出し撹乱してゆく。ジワジワと劣勢を強いてゆくも、相手は強力なバグプロコトル。そな表情を崩すにもまだ遠い。
 だが一撃一撃のダメージでは足りずとも──力を束にした攻撃ならば。猟兵たちは呼吸を合わせ白聖者へと飛び出した。多喜の魔導SMGから一斉に発射される弾丸と、複製刀を束にした斬撃が狙うのは白聖者の片足。羽毛に解けたその足に、追い打ちをかけるのは死角からの一撃。

「さて、足の一本でも頂いておこう」
 死角から放つ水心子真峰の一刀は、白聖者の片足を見事に両断したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マルティナ・ルクレール
白教、遂に現れましたか。
何とも嘆かわしい……
欲望あってこその人、それを無理矢理抑え付け抹消しようなど、ましてや強要するなどあってはいけません。
不埒な企みを挫き、彼者らに大いなる裁きを。

今までに入手したカドゥケウスの杖とポーションを使い増強した魔力で【月光を纏いし聖徒達】を行使、極めて能力を向上させた状態で我が同胞達を呼びます。
彼女達はその身が朽ちようとも共に戦うでしょう。

私自身は[リジェネレート]による回復や全体強化で補助に専念、白い羽根には修道女部隊による相互回復で対処。
更に重ねた全体強化と遠距離攻撃の[神罰]の光条で/:白を滅すべし_¥司祭を蹂躙して差し上げましょう。

あら、私は何を……?



 遂に現れたその白き姿。この金策ダンジョンにまつわる事件の首謀者であり──白教を信仰する、完全なる敵だ。

「何とも嘆かわしい……欲望あってこその人、それを無理矢理抑え付け抹消しようなど、ましてや強要するなどあってはいけません」
 マルティナ・ルクレールは四肢の一部が欠けた白聖者に鋭い視線を向けながら、白教の歪んだ信仰を吐き捨てる。もはや論ずる事すら忌々しく厭わしい──ならば、管理と節制を掲げる白教などというふざけた信仰に、修道女は全力で立ち向かうまで。
 銀装飾のポーションをひと思いに飲み干したマルティナは、カドゥケウスの杖を天へ掲げる。

「道半ばで息絶えたわが同胞達に、今一度救いの光をお与えください」
 白と黒の輝きが陣を描き、強固な決意の眼差しが並び連なる。月光の輝きの中から呼び起こすのは、かつてマルティナと共にあったという彼女の同胞──精鋭修道女部隊だ。
 月光を纏いし聖徒達は二つのアイテムで増強したマルティナの魔力によって、更にその能力を極めて向上させている。

「ホワイト・オーダー…傅きなさい。我欲を捨てよ」
 敵意を向ける修道女に白聖者は眉をひそめ、しかし淡々とこの場のすべてに命ずる。眩いほどの節制の光をその身に宿せば、ノイズ混じりの白き羽根が広がり宝物庫を覆う。それは命に逆らう者を崩壊させる白き羽根──わずかでも動けば、我欲を捨てぬ異端者を粛清する破壊の力だ。

「不埒な企みを挫き、彼者らに大いなる裁きを」
 けれど修道女たちは白教に怖じることはない。マルティナのひと声に、精鋭修道女部隊は躊躇いもなく武器を構える。たとえこの身が朽ちようとも、彼女たちはマルティナと共に戦うだろう。
 マルティナを中心に修道女たちから無数の聖なる光が輝き、一斉に味方全体へと強化をかける。百を超える過剰なバフは我欲の権化であろうとも、崩壊する端から互いに回復を重ねがければ彼女たちの体の崩壊はその全てが治癒される。
 崩壊と治癒の中で聖なる輝きが一斉に白聖者へと放たれる。防ぎきれぬ光に幾つもの羽を散らし、白聖者の体から鳩が飛び立ちその体を削ってゆく。

「神罰の光条で/:白を滅すべし_¥」
 マルティナもまた多重の強化の恩恵を輝かせ、背教者を滅ぼす神罰を解き放つ。聖なる光が膨れ上がったその時、マルティナの声にノイズが走った。焼け付くようにブレるグラフィックの中で、マルティナの頭頂には罅割れた光輪が──。

 ──ブツッ。ノイズが視界を埋め侵蝕存在を滅す天啓を堕落崇拝侵蝕侵蝕蝕蝕萓オ陜慕・樒スー鄂ー鄂ェ貊?ケりコ呵」──。

「あら、私は何を……?」
 杖を両手に握りしめたマルティナは、雪のように舞い落ちる白い羽根の中で周囲をきょろりと見渡し呟いた。ふいに飛んだ記憶の存在感だけが手の中にある…確かなものは、マルティナの視界に映る白聖者の、身の欠けた無残な姿だけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、ようやくたどり着きました。
もう、アヒルさんがそのラッパで遊んでばかりいるから、他のみなさんが先に行っている事に気付けなかったんですよ。

それにしても……。
(って、またアヒルさんはあのラッパを使って遊んでますよ。
 あれ?白聖者さんが何か言おうとしているのでしょうか?
 吹き出しが出るのですがすぐ消えてしまっています。
 何か言おうとしているのでしょうが、さっぱり分かりません)
とりあえず、今のうちに攻撃です。
さっき手に入れた弓と矢で攻撃して……?
あれ?私どこにしまったんでしたっけ?
ふええ!?なんで私の弓矢をアヒルさんが持っているんですか!?
私のものはアヒルさんのものって、普通は逆ですよ!



「ふええ、ようやくたどり着きました。
 もう、アヒルさんがそのラッパで遊んでばかりいるから、他のみなさんが先に行っている事に気付けなかったんですよ……」
 遅れてようやく宝物庫に辿り着いたフリル・インレアンは、アヒルさんにそう言って肩で息をする。白聖者とのボス戦はもう中盤に差し掛かり、猟兵たちとの戦いを重ねたバグプロコトルのその姿もボロっとしている。だがだからこそ、ここは気を引き締めなければならない局面──!だったとしても、アヒルさんはどこ吹く風で沈黙のラッパを吹かして遊ぶ。

(って、またアヒルさんはあのラッパを使って遊んでますよ)
 もうニ度目にもなれば、フリルだってそろそろラッパの|沈黙《デバフ》も慣れたもの。喋れない事は気にせず口パクしつつ、フリルはアヒルさんに呆れながら白聖者へと向き直る。

「愚かな…。白教は、そのような欲望の徒な   」
 欲望のままにラッパで遊ぶアヒルさんの姿に白聖者は顔をしかめ、再び眩いほどの節制の光をその身に宿す。ノイズ混じりの白き羽根が一面に広がる──だが。

「   」
(あれ?白聖者さんが何か言おうとしているのでしょうか?)
 口を開く白聖者からは何度も吹き出しが出るものの、すぐさま消えてしまって|声《ボイス》も|言葉《テキスト》も届かない。沈黙のラッパはもちろん、バグプロコトルにも効果があるのだ!
 命令がなければ逆らうも何もない。触れる者を崩壊させる羽根はフワフワ漂うだけの|雰囲気《エフェクト》だ。今ならいくらでも攻撃のチャンス!

(さっき手に入れた弓と矢で攻撃して……?あれ?私どこにしまったんでしたっけ?
 ……ふええ!?なんで私の弓矢をアヒルさんが持っているんですか!?)
 そうして自分の所持欄をひっくり返してキョロキョロ見渡して、フリルは喋れぬ代わりにアヒルさんの新たな姿にオーバーリアクション。
 アヒル真拳『フリルのものはアヒルさんのもの』…アヒルさんはラッパと弓矢をフル装備!アヒルさんはフリルのガジェットなので、普通に考えたら逆なものだが、これぞアヒルさんイズムだ。
 フリルの抗議も虚しく(何せ聞こえないのだから!)アヒルさんはキリッと白聖者を睨み付けていざ出陣!アルテミスの弓でキューピッドの矢を放てば、白聖者は僅かな時間だけ魅了されて無防備に。
 えーとあとは…ミミックにやられたフリルの敵だー!

「死んでませんったらー!あっ喋れました」
 アヒルさんの突撃を食らってくの字に折れる白聖者は無残にも、そのHPと共に静かに白い鳩の羽根を散らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
このゲームが欲望塗れなのは
まあ事実かな
秩序過激派みたいな敵は定番で
いても不思議じゃないけど
危険なバグプロコトルなら倒さないとね

配下を召喚するなら範囲攻撃で対応しようか
造像石霧で天使軍にデバフをかけつつ
視界を覆って射撃しにくくするよ

多少攻撃が届くかもしれないけれど
硬化した石の体と神気の防御
それとアイギスの胸当てで防ごう

聖者に接近できたら格闘攻撃
グラップルで体勢を崩したら
石の重量を活かした攻撃とネフィリムの手甲で
ダメージを稼ごうか

万が一の場合も身代わり人形があるから安心だね

そういえばこの宝物庫にも宝箱あるのかな
もう少し使いやすい防具か
せめて胸当てと組み合わせても
違和感が無い防具があればいいんだけど



 ボス戦もいよいよ終盤──幾度となく羽を散らし、HPももう残りわずかとなった白聖者。佐伯・晶はその白い姿と背後に広がる背景を見つめる。金銀財宝で彩られた豪奢な宝物庫。このゲームが欲望塗れなのは、見て通りの事実だろう。そして…それほどの欲望を、プレイヤーが求めていることもまた事実。

「秩序過激派みたいな敵は定番でいても不思議じゃないけど…危険なバグプロコトルなら倒さないとね」
 求める者があれば奪う者がある。ゲームとしてはスタンダードでロジカル構造であっても、バグによって|娯楽《ゲーム》から逸脱するならば、猟兵の目標はひとつだ。

「ホワイト・エンジェルズ…この場の全てを、白に染めよ!」
 |欲望《レアアイム》を手にした猟兵に白聖者は全ての力を振り絞る。散らばる羽毛が虚空から白いモザイクとノイズを呼び起こし、現れるのは純白の天使軍。
 天使軍が羽ばたき展開するその寸前、晶が広げるのは視界を遮る石化の霧。造像石霧のデバフによって敏捷力と移動力を低下させた天使軍の動きは緩慢。その羽ばたきが霧を押し退けようとしても、一度霧に触れた翼は徐々に石化が蝕む。
 晶は姿勢をかがめて霧の中を駆けてゆく。視界を阻害する霧の中では致命傷を狙うことすらままならないもの。一挙に矢の雨を降らせても、その矢は硬化した石の体も、神気の防御も──高レア防具であるアイギスの胸当ての防御力も越えられない。

 小石のような矢を払いのけ動きの重い天使をすり抜けて、白聖者へと接近した晶は接近戦で格闘攻撃を繰り出す。回避されてもかまわない、狙いは白聖者の体勢を崩すことだ。晶は揺れる司祭服の端を掴むと、すかさず引き寄せ拳を突き出した。|ネフィリム《巨人》の手甲は巨大な拳となり、石の重みがさらなる火力となって白聖者を圧し潰す。
 ダメージ稼ぎには十二分の威力。だが石の重量で圧し潰される白聖者は、羽に崩れかけた顔を苦痛に歪めながら晶を睨み付ける。

「節制と、管理とは…然るべきその時に、全てを解放する為にあるのです…!」
「くぅっ!?」
 その時、ゼロ距離から放たれるのは超常的な力の奔流。追い詰められたボスによる正真正銘の最後のシンプルな攻撃──自爆だ。
 晶が純白の眩しさに目を瞑ったその瞬間、しかし覚悟した衝撃は訪れず。徐々に色を取り戻す視界の中で、身代わり人形が音を立てて崩れ落ちた。

 宝物庫から白き脅威は消え去り──白鳩の羽根だけが降り積もる。金銀財宝が輝く部屋は、まるで最初から何事もなかったかのようだった。

「せっかくだし、最後に宝箱を漁ろうかな」
 晶は体を伸ばすと、今更ながらこの宝物庫に散らばる宝箱を振り返る。なにせ大仕事の後なのだから、報酬のひとつやふたつを貰っていっても文句はない。そして何より宝箱はダンジョン探索の華なのだ。

「もう少し使いやすい防具か、せめて胸当てと組み合わせても違和感が無い防具があればいいんだけど…」
 ついでに違和感のある半端な装備が何とかなるならどうにかしたい、もまたしっかり晶の本音だ。
 もはやお馴染みの要領でいくつかの宝箱を開けば、やっぱり出てくるのはトリリオンやら高レアアイテムやら。晶はその中の防具を二つ手に取り改める。

「えっと、『アイギスの腰当て』に『アイギスの盾』…これはシリーズ防具なのかな…」
 シリーズ防具というなら、セット装備時のボーナスもまた期待できるだろうか。晶は少しばかり悩む様子を見せたが、一応装備しておいた。晴れてビキニアーマーの完成だ!
 喜ぶべきか否か悩むところだが、悲嘆するほどではないだろう。これでも、見た目からは想像できないほどの防御力があるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年08月06日


挿絵イラスト