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廃墟に遺されしもの

#UDCアース

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#UDCアース


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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「UDCアースにて、放棄されたとあるUDC支部の廃墟に、過去に収容されたUDC怪物がまだ残っていることが判明しました」
 当時のUDC職員の尽力によって、辛くも封印することのできた邪神や怪異、あるいはオブジェクト。それが何らかのいきさつで他の支部に移されることもなく、誰もいなくなった跡地に放置されているという。言うまでもなく、これは非常に危険な状態だ。

「現在はまだ収容状態は維持されているようですが、遅かれ早かれと言ったところでしょう。対象が封印を破り、事件を起こし始める前に対処しなければなりません」
 問題となったUDC支部跡地は、元々はUDC怪物の研究施設だったようだ。どうやら過去に大きなトラブルが発生していたようで、放棄された詳細な理由は現在のUDC組織にも記録されていない。この時点で極めて不穏と言わざるを得ないだろう。
「ですが、どのようなUDC怪物が放置されているかについては、リムのグリモアでも予知することはできませんでした」
 UDC怪物はそれぞれが特異な能力を持ち、専用の対処法が必要になるケースも珍しくない。情報不足のまま挑むことの危険性は、UDCとの関わりが深い猟兵ほどよく知っているだろう。故にリミティアはまず、旧UDC支部廃墟の探索を提案した。

「廃墟内では『黒い泥のようなもの』と『女性のような人影』が観測されています。また、放棄の際に持ち出せなかった資料がそのまま残されているようです」
 件のUDC怪物に関する調査レポートや、封印維持作業の手順書を見つければ、封印された怪物の能力や弱点なども分かるかもしれない。本件とは直接関係のない記録等もあるので調査は難航するかもしれないが、やってみる価値は十分にある。
「また、封印が緩んだUDC怪物の力に影響されて、下級のUDC怪物が集まっている可能性もあります。十分に注意してください」
 調査によって敵の正体を暴き、最終的に放置されていたUDC怪物の撃破または再封印を成し遂げれば、今回の依頼は成功となる。対象が未知数であるため、どのような脅威が待ち構えているかは現状推測しかできないが、だからこそ、この危険なミッションに挑める者は猟兵しかいない。

「危険なUDCの復活を阻止するために、皆様の力をお貸しください」
 説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、旧UDC支部の研究所跡地へと猟兵達を送り出す。
 誰からも忘れ去られたまま、廃墟に放置された未知のUDC。その正体を暴き、再収容を果たす為の調査が始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはUDCアースにて、旧UDC組織支部に残されたUDC怪物を発見・処理する依頼です。

 シナリオの舞台となるのは、すでに放棄されて久しい研究所の廃墟です。
 ここにはかつて行われていた実験の記録や収容されていたUDCに関する資料が残されています。これを調査して対象の情報を集めるのが1章の目的になります。

 調査の結果によってシナリオは2章、3章に移行します。
 最終的には支部に残されていたUDC怪物を撃破または再封印し、脅威を取り除くことができればシナリオ成功です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『UDC支部廃墟探索』

POW   :    手当たり次第に資料を漁る

SPD   :    鍵のかかった棚や金庫を調べる

WIZ   :    魔術的な儀式の記録を探す

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

四王天・燦
女の子好きとしては『女性のような人影』てのに期待しながら探索しますか
ただ。こういうのって大体、非人道的な研究してたりするんだよな…

不意打ちや危険物はあるかもしれねーし五感は研ぎ澄まして探索するぜ
物音や異臭がありゃ発生源にはまだ近づかず後回しだ
『黒い泥』なんてあれば要警戒。正体不明だし動かないなら触らぬ神に祟りなしだね

サクサクと鍵開けして、PCは電源通ってねーだろうからHDD抜いて自前のスマホなりにつないで盗賊式電脳戦法で中を見るぜ
『封印』『特性』などの単語で検索かけて当該UDCの正体を調べる
その間に紙の資料も読み漁るよ

気分のいい案件じゃなさそうだよなぁ
職員が夜逃げ(?)した理由も気になるし



「女の子好きとしては『女性のような人影』てのに期待しながら探索しますか」
 四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)が今回の旧UDC支部廃墟探索に参加した理由には、シンプルな下心も含まれていた。こんな所で目撃される女性はほぼ普通の存在ではないと思われるが、とりあえず顔を見てから判断しても遅くはない。
「ただ。こういうのって大体、非人道的な研究してたりするんだよな……」
 廃墟となった研究所に、放置されたUDC怪物。現状分かっている情報をなぞるだけでも怪しい気配がぷんぷんする。
 鬼が出るか蛇が出るか。あるいはもっと悍ましいものが出てくる可能性も念頭に入れながら、燦は調査を開始する。

(不意打ちや危険物はあるかもしれねーし)
 日中でも薄暗い廃墟の中で、些細な違和感も見逃さないよう、五感を研ぎ澄ませる燦。職員が退去して以来ここは無人のはずなのに、確かに「なにか」の気配がする。耳を澄ませば床を這いずるような異音に、かすかに鼻をつく異臭。
(まだ後回しだ)
 発生源には近づかず、まずは資料やデータの回収を優先。虎穴に入らずんばとも言うが、危険を犯すのは他にできる事をやった後でもいい。途中で報告にあった『黒い泥』らしきものも見かけたが、これも警戒したうえで通り過ぎる。

「触らぬ神に祟りなしだね」
 建物の隅にへばりついたまま動かない、正体不明の泥状物体をスルーして、燦は資料室と思しき部屋に。サクサクと鍵を開けて中に入ると、放棄されたコンピューターや資料棚が埃を被って並んでいる。シーフ的にいうなら「宝の山」だ。
「電源通ってねーよなぁ、そりゃ」
 試しにスイッチを押しても反応はなかったが、まだデータは残っているはず。筐体からHDDを抜いて自前のスマホに繋げば【盗賊式電脳戦法】で中身は引き出せる。バックドアから認証をすり抜けると、明らかになった膨大なデータの中から『封印』『特性』などの単語で検索をかけ、当該UDCの正体を調べていく。

『――■■月■■日、"欲望教"と名乗る邪神教団のアジトから回収されたオブジェクトの収容が完了した』

 検索結果にヒットしたのは、過去にこの研究所に収容されていたUDCの報告書と思しきデータ。
 添付されていた画像は、人型を怪奇に歪めたような「神像」の如き物体だった。

『対象物は教団にて"御神体"として祀られており、その材質は泥岩のような未知の物体であり――』

『■■月■■日、収容中オブジェクトに異常発生』

『オブジェクトから生成された"黒い泥"は、人間の意識に感応し、形状を変化させる特性を持つ模様』

『オブジェクト本体の封印をより厳重にした上で、黒い泥に関する性質調査を行う』

 データには破損箇所もあったが、同時に紙の資料も読み漁ることで情報は補完できる。
 邪神教団から回収された"御神体"なるUDCオブジェクト。それが、この廃墟に残された怪異の正体なのか?
 報告書の末尾に向かうにつれて、文章は徐々に拙劣で要領を得ないものになっていく。

『私達は誤解していた』

『黒い泥は人間の意思に反応するのではなく、より正確には私達の――を――喰らって――』

『――もう手遅れだ。産まれる』

 その文章を最後に報告書は途切れていた。類似の記録を残す紙の資料には、血痕のような赤いシミが残されている。
 これだけでは具体的になにが起こったかは分からない。しかし職員にとって想定外の、深刻なトラブルが発生したのは確実だ。
「気分のいい案件じゃなさそうだよなぁ。職員が夜逃げ? した理由も気になるし」
 知れば嫌な思いをするかもしれないが、だからと言ってここで仕事を放り出すわけにもいかない。顔をしかめて髪をがしがしかき回しながらも、燦はまだ生きていそうなコンピューターを探し、さらなる情報を盗み出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
放棄された理由はなんだったのやら
とはいえ放置はできないから調査に協力するよ

出発前に類似の施設の構造や
UDC組織の資料のフォーマットを調べておこうか
同じような目的の施設なら
似たような設備や構造になっている可能性はあるし
残された資料を見た時に要点を探しやすかったり
抜けているページに気づけたりするかもしれないからね

現地についたら文書が保管されていそうな場所を探そうか
ついでにどんな用途の設備の残骸があるかも見ておこうか

暗い所ではゴーグルの暗視機能を利用したり
狭い所や隙間はドローンに入り込ませて確認したりして
調査を進めよう

UDC組織の封印術を多少知っているから
どんな封印がされていたかわかるかもしれないね



「放棄された理由はなんだったのやら」
 元はそれなりに規模も設備も整っていたらしいが、現在は完全に廃墟と化した旧UDC支部跡地を歩きながら、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は呟く。只事ではないトラブルがあったのは予想できるので、本来ならあまり近づきたくない場所だが。
「とはいえ放置はできないからね」
 危険なUDC怪物がまだ残っていて、しかも復活の恐れがあると言われては、調査に協力しないわけにいかなかった。
 管理下にないUDC怪物が封印から解き放たれてしまった時どんな悲劇が起こるのか、晶は身をもって理解している。

「中はだいたい他所と同じだね」
 出発前に類似の施設の構造やUDC組織の資料のフォーマットは調べておいた。同じような目的の施設なら、似たような設備や構造になっている可能性はあると考えたからだが、早速役に立っている。突入から十数分ほどで、資料の残された部屋を見つけることができた。
「大急ぎで引っ越したって感じだね」
 室内に設置された機材の残骸や、棚から落ちた文書の散らばり具合からして、当時この研究所は相当余裕がなかったようだ。残骸から窺い知れるのは、大学の実験室などをさらにグレードアップした感じか。複数の研究が並行して進められていたのはほぼ間違いない。

「どれどれ……」
 多機能ゴーグルの暗視機能をオンにして、残された資料を閲覧する晶。膨大な文字の中から要点を探しだし、抜けているページに気付けばドローンを飛ばして、狭い隙間に落ちていた資料も全て見つけだす。事前準備はここでも功を奏しており【庸人の一念】が調査の成功率を高めていた。
「『黒い泥』を生み出す御神体……これが切っ掛けだったみたいだね」
 見つけ出したのは、とある邪神教団からUDC組織が回収・収容したというオブジェクトの報告書。最初はこの御神体が封印されたUDCの正体かとも思ったが、他の資料とも照らし合わせていくと、もう少し事態は複雑らしいことが分かる。

『■■月■■日。ついに生まれてしまった』

『あの御神体は"神"を産む母体だったのだ。私達人間が発する感情や思念……"欲望"を糧として、あれは顕現に必要なエネルギーを蓄えていた』

『"黒い泥"は私達に対するエサだ。研究者としての探究心や知識欲さえも、あれは巧みに利用し……気付いた時には、もはや手遅れとなっていた』

『あらゆる欲望を肯定し叶える、欲望の邪神。あれは人間の世界にあっていいものではない』

 当時の研究員の1人が遺したと思しき記録からは、執筆者の焦り、恐怖、後悔、絶望がありありと感じ取れた。
 そこから推察できるのは、御神体から"誕生"した邪神によって、このUDC支部が壊滅的被害を受けたこと。そして、その被害を支部内部のみで辛くも収束させたことだ。

『顕現した邪神を殺す術は、今の私達にはない。だがあれは糧となる人間の欲望がなければ弱体化する』

『生存欲すらも欲望である以上、人間がいる限りあれの成長を止めることはできまい』

『故に私達は、現状できうる全ての手段であれをこの場所に留め……そしてあれに関する一切の記録を破棄する』

『破棄とは即ち、私達自身も含めてだ。あれの研究に携わった全ての人間は、この支部と運命を共にする』

『一時凌ぎにしかならないだろうが……あれが再び動き出す前に、あれを処理できる者が現れることを願う』

 確認できる限りもっとも日付が新しい記録は、そこで途絶えていた。
 添付された資料には、施設の地下にある広大なスペースと、そこに施された封印術式の概要が記されている。
「なるほどね。よく分かったよ」
 UDC組織の封印術を多少知っている晶は、ここにどんな封印がされていたかも概ね理解できた。物理だけでなく情報的にも遮断することで、邪神の影響力を抑制する収容手順――だが、どんな厳重な封印でも、この世に完璧はないのだ。
 邪神に憑かれた者として確信を持って言える。この地に封じられた「欲望の邪神」は、すでに目覚めかけていると。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『堕落の猿』

POW   :    刈り取る目と舌
【無数の眼球による下卑た視線】を向けた対象に、【何処までも伸びる鞭のような舌】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    獣の蹂躙
敵より【仲間の数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    異形の知性
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【戦場の仲間達が的確に統率され、連携攻撃】の威力と攻撃回数が3倍になる。

イラスト:オペラ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 旧UDC支部廃墟に突入した猟兵達の調査により、かつてこの施設で起きた事件のあらましは判明した。

 始まりは邪神教団「欲望教」のアジトから回収されたオブジェクト。
 教団の御神体として崇められていたこの像は、初期調査では「黒い泥」という未知の物質を生成するだけの代物だと思われていた。

 だが、その実態は邪神を現世に顕現させるための祭器。
 支部にいた人々の欲望を取り込むことで、十分なエネルギーを得た御神体は、ついに神を"誕生"させる。
 あらゆる欲望を肯定し叶えようとする、欲望の邪神を。

 遅ればせながら事態の深刻さに気付いた支部は、必死に収容計画を実施。
 支部の地下に邪神を物理的に閉じ込めるのと同時に、邪神にまつわる一切の情報を外部に漏れないようにした。
 これにより、欲望の供給源を失った邪神は不活性化。引き換えに支部は放棄され、真相は闇に葬られた。

 以上の情報を得た猟兵達は、今も邪神が封じられているはずの地下へ調査の手を進める。
 地下に通じる階段を一歩降りれば、そこはもう至る所に「黒い泥」がへばりついた、異界の如き様相となっていた。

『ギギギッ』『ギヒィッ』

 そして、暗闇の奥から聞こえる「先客」の声。
 現れたのは、複数の眼球を持つ猿に酷似した怪物。『堕落の猿』と呼ばれる低級のUDCだ。
 邪神が自らの眷属として創造したと噂され、邪教集団の儀式の場などでよく確認される。
 それが此処にいるということは――やはり、欲望の邪神の封印はすでに解けかけているのだろう。

 もはや一国の猶予もない。
 とっととこの猿どもを蹴散らして、邪神の元に辿り着かなければ。
四王天・燦
UDC職員頑張ってたんだなー
で、欲望を叶える神様か
じゃあ先ずは眷族の見た目を可愛くしてくれるよう願っておくか
今の外見の方が遠慮なく戦えるけど

神鳴で斬って払うぜ
舌を切り払うが、うわー気持ち悪い…精神的によろしくない敵だぁ
こっち見んな!

統率性の本質が地形利用と分かればフォックスファイア・参式を地下に放り込むよ
火を放ち、陽炎に紛れて暗殺していく。ギィギィ喚いてくれると位置が分かり易くていいね

ついでに地下に置かれた物品をぶっ壊し、地形を利用できねーようにしておこう
火を扱う知恵もねえ猿が、人に勝てるわけがないのだ

さあて欲望成就の神様のご尊顔が見たい…そんな欲望を叶えてもらいに行きますか



「UDC職員頑張ってたんだなー」
 非人道的な研究でもやっていたのではないかと疑っていた燦だが、蓋を開けてみればそんなことはなかった。旧UDC支部の職員達は彼らなりに出来ることをやって、危険なUDC怪物を封じ込めていたようだ。その結果、自分達が犠牲になるとしても。
「で、欲望を叶える神様か。じゃあ先ずは眷族の見た目を可愛くしてくれるよう願っておくか」
 地下の封印区画に入った燦を待っていたのは、動物の猿をグロテスクにしたような見た目の『堕落の猿』。どうせお近づきになるなら眷属だって可愛い女の子だったりしたほうが気分がアガるが――残念ながらまだ|願い《欲望》が本体まで届いていないのか、突然敵の姿が変わるようなことはなかった。

「今の外見の方が遠慮なく戦えるけど」
「キキィーッ!」
 けたたましい鳴き声を上げながら、堕落の猿達は紫色の長い舌を伸ばして攻撃してくる。唾液まみれの毒々しいそれを、燦は神刀「神鳴」で斬って払う。戦場の暗闇に紅の閃光が走ったかと思えば、斬り飛ばされた舌が地面に落ちる。
「うわー気持ち悪い……精神的によろしくない敵だぁ」
 体液を撒き散らしながらびちびちと別の生き物のように跳ねる舌が、生理的な嫌悪感を抱かせる。邪神の眷属なんて大概がそういった輩だと言えばそうだが、分かっていても付き合いたい連中ではない。さっさと始末してしまおうと、得物を握り直す。

「ギィッ!」「ギヒヒッ!」
 堕落の猿達はなおも統率の取れた動きで連携攻撃を仕掛けてくる。周囲にこびりついた「黒い泥」を拾い上げて刃物や鈍器に変化させたり、壁や天井の泥を掴んで足場にしたり。主である邪神が産んだものを利用する【異形の知性】が彼らには備わっているようだ。
「こっち見んな!」
 ギョロギョロと無数の眼球で凝視しながら襲ってくる猿どもに、燦は一喝しながら【フォックスファイア・参式】を発動。多数の狐火を合体させた大火球が地下に放り込まれると、赫々と火の粉を散らして大爆発。着弾地点から周辺を大炎上させた。

「炎よ、灼熱と陽炎の領域を展開せよ!」
 猿どもの統率性の本質が地形や物品の利用にあると見抜いた燦は、それらを焼き払う事で敵の優位を消さんとする。
 狐火が黒い泥を炭に変え、壁や天井にまで延焼し、炎と陽炎が視界を幻惑する。そられに戦い方を依存していた堕落の猿達は、激しい動揺を示した。
「ギ、ギギッ?!」「ギィィ!?」
 野生の動物は火を恐れる傾向にあるが、彼らもそうなのか。炎上に巻き込まれないよう散り散りになって逃げ惑う。
 あっけなく統率を失った彼らの死角から、燦は陽炎に紛れて暗殺を図る。四王稲荷神社の巫女である彼女にとって、このフィールドは独壇場だ。

「ギィギィ喚いてくれると位置が分かり易くていいね」
「ギ……!!」
 再び閃いた紅の稲妻が、今度は舌ではなく首を斬り飛ばす。地形の有利が逆転すれば、彼我の実力差は歴然だった。
 その間にも火の手は広がり、堕落の猿達にはますます不利な状況となる。もはや周囲に彼らが利用できそうな物品はない。
「火を扱う知恵もねえ猿が、人に勝てるわけがないのだ」
 しょせんは異形の浅知恵だと、敵の戦法を破綻させ、、余裕の戦いぶりで順序よく狩っていく燦。【フォックスファイア・参式】の効果が収まる頃には、堕落の猿達は殆どが暗殺されるか、炎に巻かれて黒焦げの焼死体と化していた。

「さあて欲望成就の神様のご尊顔が見たい…そんな欲望を叶えてもらいに行きますか」
 邪魔者を排除した燦は地下空間のさらに奥へ。噂の『欲望の邪神』がどんな御姿なのか、期待に胸膨らませて進む。
 同時に緩みかけた気を引き締め直す。ここから先は眷属などと比べ物にならない、禍々しい気配に満ちている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
覚悟を以て任務を完遂した人達の思いを無駄にしたくないね

ゴーグルの暗視機能を使って視界を確保
ガトリングガンで牽制しながら
範囲攻撃で数を減らしていこう

視線は人間的な気持ち悪さを感じるけど
行動自体は獣のそれかな
囲まれないように位置に気を付けつつUCを使用
本体を攻撃するついでに舌の攻撃を射撃で迎撃するよ
もし抜けてきたら神気で防御

邪神の気配を表に出せば動きが鈍ったりしないかな
虎の威を借る狐のようで癪だけど
過去の職員達の事を考えると贅沢を言える余裕も無いしね
使えるものは何でも使おう

あまり時間も無いみたいだし
倒してもきりがないようであれば
神気の防御とガトリングガンの制圧力で
包囲を強引に突破して地下を目指すよ



「覚悟を以て任務を完遂した人達の思いを無駄にしたくないね」
 かつてこの支部で起きた事件とその顛末を知った晶は、欲望の邪神が封じられた地下空間に足を踏み入れた。多機能ゴーグルの暗視機能を使って視界を確保すると、闇の中から不気味な怪物の群れが現れる。邪神の眷属としては一般的なUDCの一種、『堕落の猿』だ。
『ギギギッ!』『ウギィッ!』
 堕落の猿達は無数の眼球でぎょろぎょろと獲物を舐め回すように下卑た視線を向け、鞭のように長い舌を伸ばす。彼らの【刈り取る目と舌】は、邪神の敵を排除するために発達したもの。機械的に始末するのではなく玩ぶような、醜悪な意思を感じる。

「視線は人間的な気持ち悪さを感じるけど、行動自体は獣のそれかな」
 晶は囲まれないよう位置取りに気をつけつつ【回転式多銃身機関銃全力稼働】を使用。携行型ガトリングガンによる掃射で敵を牽制しながら範囲攻撃を仕掛ける。この機関銃は邪神の物質創造能力を利用して外装や弾を生成しており、どれだけ撃ちまくっても弾切れは起こり得ない。
『ギギッ!?』『ウギィッ!』
 毎秒数十発のペースで放たれる弾丸の嵐は、猿の舌を迎撃し、猿本体にもダメージを与える。地下に響き渡る銃声に切れ間はなく、敵を制圧するまで掃射が止まることはない。堕落の猿達は慌てて逃げ惑いながら、それでも弾幕の隙間を縫うように舌を伸ばすが――。

(邪神の気配を表に出せば動きが鈍ったりしないかな)
 弾幕を抜けてきた猿の舌を、晶は神気で防御する。その瞬間、気温が数度下がったような錯覚と共に、彼女の周りだけ銃声がふっつりと消える。晶と心身を融合した邪神は「静謐」を司る神格であり、あらゆるものの動きを停めることで自らの権能を体現する。
『ギッ……?!』
 その静謐なるオーラを感じ取った猿達が、怯えたように硬直する。邪神の眷属として創造された彼らは、たとえ自身の主ではなくとも、高位のUDCには本能的に萎縮するようだ。人間と邪神の融合体ゆえに気付いていなかったようだが、これだけ顕示されれば獣の知性でも分かるか。

「虎の威を借る狐のようで癪だけど、過去の職員達の事を考えると贅沢を言える余裕も無いしね」
 使えるものは何でも使おうと、神気のオーラをことさらに撒き散らしつつ、ガトリングガンによる掃射を続ける晶。
 さっきまでの威勢はどこへやら、堕落の猿達は明らかに竦み上がった様子で、反撃にも防御にも気迫がない。ここまで露骨に反応が変わるものか。
「あまり時間も無いみたいだし、ここは通してもらうよ」
『ヒギ……ッ!?』『ギャーーッ!!』
 こいつらを一匹残らず倒すのはきりがないし、時間の無駄だ。神気の防御と威圧、そしてガトリングガンの制圧力で包囲を強引に突破した晶は、地下のさらに奥を目指す。弾幕から生き延びた連中が追ってくる気配はない――欲望の邪神との決戦に、横槍を入れられる心配はなさそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

熊ヶ谷・咲幸(サポート)
お騒がせ☆アイドル×力持ちの女の子です。

戦闘時など、アイドル⭐︎フロンティア以外ではコンパクトを力技で【こじ開け】て変身します。そのせいかリボンが絡まるなど不完全な変身も
がむしゃらに頑張るタイプで【怪力】による正面突破や力技がメインですが、力をコントロールできなかったり等でドジをすることもしばしば。【奇跡のドジ】でいい方向に向かうことも

マスコットのクマリンは「咲幸ちゃん、〜リン、〜だリン」みたいな感じで喋りツッコミ等サポートも兼ねます

UCは指定した物や公開されている物をどれでも使用し、公序良俗に反する行動はしません。

あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「悪い神様がこの先にいるんだね。なら、ほっとけない!」
 廃墟に遺されたオブリビオンの脅威を聞き、サポートに駆けつけたのは熊ヶ谷・咲幸(チアフル☆クレッシェンド・f45195)。先行した者達の後を追いかけて地下に降りると、薄暗く陰鬱な雰囲気の中、猿に似た不気味な化け物の群れが待ち構えている。
『ギギギッ……!』
 彼ら『堕落の猿』は新たな人間がやって来ると下卑た視線を向け、口をいやらしく歪めて笑う。あらゆる生命を冒涜することが、我らの使命だとでも言うように。咲幸の故郷アイドル☆フロンティアにはいなかったタイプのオブリビオンだが、戦わねばならぬ相手には違いない。

「咲幸ちゃん、変身だリン!」
「うんっ! へん……しん!」
 マスコットの妖精『フラクトクマリン』に促されて、咲幸は変身アイテム『レジェンドパクト』に手をかける。そのコンパクトは選ばれた者にしか開けないと言われるが、彼女はそれを力技で無理矢理こじ開けて――あふれ出した七色の光が、彼女をアイドル「チアフル☆クレッシェンド」に変身させる。
「お猿さん達、おしおきの時間です!」
 赤いコスチュームに身を包み、ビシッと指を突きつける。リボンがヘンな形で手足に絡まっていなければ、バッチリ様になったのだが。ともあれ、その宣言に反応した堕落の猿達は、壁や床にへばりついた「黒い泥」を掴み、投げつけてくる。

『ウギギッ!』
「うひゃあ!?」
 邪神から【異形の知性】を授けられた堕落の猿は、周囲の地形や物品を利用して戦う術に長けている。あの黒い泥は欲望の邪神の力が具現化したもの――見た目からしても生理的な嫌悪感をもよおすそれから、咲幸は慌てて逃げ回る。
「や、山に籠もってた頃は泥んこになるのもしょっちゅうでしたけど、その泥はちょっと……あわわっ!」
 立派なアイドルになるため日々奮闘中だが、まだまだ自分の力をコントロールできないお騒がせ☆アイドルの咲幸。
 絡まったリボンのせいでバランスを崩し、うっかりすっ転んでしまう。その隙を見逃さず、猿達はドジなアイドルに一斉に襲い掛かる――。

「な、なんとかなれーっ!」
『『ウギッ?!』』
 ピンチの咲幸は破れかぶれで「チアフル☆ロッド」を力任せにブンブン振り回す。すると、まるで台風のような突風が黒い泥を吹き飛ばし、風圧が堕落の猿をなぎ倒した。これは別に魔法やアイドルの不思議なパワーとかではない――ただの力業だ。
『『ウギギギィィーーーッ?!』』
 概念や物理法則も無視する圧倒的パワーの前では、獣の浅知恵など無力。これが咲幸のユーベルコード【クレッシェンド☆クラッシュエンド】だ。キュートなデザインのロッドも彼女の手にかかれば鈍器となり、ゴツン☆と鈍い音でオブリビオンを昏倒させていく。

「なんとかなっちゃいました!?」
 とにかくがむしゃらに頑張ってみた結果、いつの間にか咲幸の周りは死屍累々。【異形の知性】を相殺、いやさ凌駕する怪力無双によって、堕落の猿達は大打撃を受けていた。一体どちらが猛獣の戦い方かわからない――というのは、アイドル相手に流石に失礼だろうが。
「相手は怯んでるリン! チャンスだリン!」
「う、うん!」
 的確なアドバイスやツッコミを行うクマリンのサポートもありつつ、咲幸は猿の群れを正面突破。嵐の如きお騒がせっぷりとハチャメチャっぷりを存分に見せつけた上で、大ボスこと欲望の邪神までの道程をこじ開けていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから11年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!

あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ

商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません

あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします


クリスティナ・バイエンス(サポート)
火の神の名を持つキャバリアに選ばれたサイキックキャバリア乗り
水着みたいな格好なのは、コックピットが蒸し風呂みたいに熱いから仕方なくだからね

正直キャバリアを降りての戦闘はあまり得意じゃないのよ
でもキャバリアを使っての戦いは任せてね、みんな炎で薙ぎ払ってやるわ
とはいえ、必要ないところで炎を使うつもりはないの危ないもんね
使わなくても私の〔炎神機カグツチ〕は十分強いもの

よろしくね!



「どんな欲でも全部叶えてしまうのは良くありませんわ。なにごとも、ほどほどが肝心ですわ」
 そう語るのは納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)。昔は本当に振り切れまくってたらしい彼女も、今は中庸を愛するシーツおばけ。あらゆる欲望を際限なく叶え、人を破滅に導く『欲望の邪神』なんて、認められるはずもない。
「困ったちゃんにはちょっとだけお仕置きですわ」
『ギギギ……ッ!』
 廃墟と化したUDC支部にやって来た彼女に、立ち塞がるのは『堕落の猿』。こいつらも邪神の眷属として悪さを働くなら、お灸を据えておく必要がある。花柄が刺繍された「知恵の布」の中から、彼女は花とリボンでかわいらしくデコられた「勇者の剣」を取り出した。

「正直キャバリアを降りての戦闘はあまり得意じゃないのよ。ここならギリギリ乗れるかしら」
 ピンチンと同タイミングでサポートに駆けつけたのはクリスティナ・バイエンス(炎のキャバリア乗り・f30044)。
 彼女が駆るサイキックキャバリア「炎神機カグツチ」は、その名の通り火を司る。元UDC支部の地下空間はキャバリア戦闘が可能なほどのスペースはあるが――。
「とはいえ、必要ないところで炎を使うつもりはないの。危ないもんね」
 閉鎖空間での火炎攻撃は味方を巻き込んだり、火災や酸欠の恐れがある。故に彼女はその使用を自ら戒めたうえで、神器「焔ノ剣」を地面に突き立て、愛機を召喚する。火の神の名を冠するキャバリアが火を使えないのは大幅な戦闘力ダウンだが、それを憂う様子はない。

「使わなくても私の〔炎神機カグツチ〕は十分強いもの」
 自身に満ちた表情でクリスティナはキャバリアのコクピットに乗り込み、【鳳翼飛翔】を始動。背部の飛行ユニットから翼のようにオーラを吹き出し、超高速機動で敵陣に吶喊する。勇壮たる炎の神機の手には、クリスティナが召喚に用いた神剣をキャバリア用サイズにした「RX焔ノ剣」が握られている。
「くらいなさい!」
『『ギャーーーッ?!!!』』
 目にも止まらぬ速さで一閃すれば、進路上にいた猿達が断末魔の絶叫を上げる。数の有利を活かして【獣の蹂躙】を行うのが堕落の猿の得意戦法だが、今回は逆に蹂躙される立場だ。炎を抜きにしても「カグツチ」のパワーとスピードは群を抜いており、小手先の連携で太刀打ちできるものではない。

「ほないっちょ、アタシもやりますわ」
 派手な大立ち回りを見せるクリスティナに続いて、ピンチンもトコトコと敵に接近。知恵の布の端をスカートのようにふわっとなびかせながら、勇者の剣をひと振りする。すると刀身からあふれ出した聖なる輝きが、光の斬撃となって敵陣をなぎ払った。
「はい、さよならですわ」
『グギャァ!?』『ウギィッ!!』
 この【ブレイブソード】の威力は仲間が受けた負傷に比例するが、ほとんど負傷者のいない現状では大したダメージは出ない。が、あくまで「お仕置き」をしに来ているだけで、殺伐とした戦いを好まないピンチンにとっては、むしろ好都合。閃光に斬られた猿達はギャグ漫画のように派手に吹っ飛ばされるが、気絶するだけで息はあった。

「みんな薙ぎ払ってやるわ。ここは通してもらうわよ!」
 ふんわりユルい雰囲気のピンチンとは対照的に、クリスティナの戦いぶりは熱烈だ。炎神機のコクピットは常に蒸し風呂状態なので、物理的にも暑い。彼女が水着のような耐暑スーツを着ているのはその対策であって、決して趣味とかではない。
『グギャ……!!』
 カグツチの剣が振られるたび、敵が斬り捨てられる。高速移動しながら火炎弾を連射するのが【鳳翼飛翔】の本来のスタイルだが、延焼予防で火炎弾を控えても十分すぎる戦果が挙がっていた。逃げ惑う堕落の猿達の悲鳴が、次第に少なくなっていく。

「これに懲りたら、もう悪さはあきませんよ」
 クリスティナが討ち漏らした敵は、ピンチンがそっと「お仕置き」する。剣で斬る直前に刃を返して叩いたり、血腥い戦法を極力避けるスタイルは、やられる側からすればまだマシだろう。もっとも、だからと言って逃がしてくれるほど甘くはないが。
『ギ、ギギィ……』
 個性豊かな猟兵達の攻勢により、堕落の猿達はほとんどが倒れるか、さもなくば散り散りとなった。行く手を阻む者がいなくなれば、いよいよ残すは『欲望の邪神』のみ――旧UDC支部を舞台にした冒険は、クライマックスを迎えようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『欲望の邪神』

POW   :    欲望のままに生きようね
自身が【他者の欲望を満たし続けて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【黒き泥の妨害阻止】によるダメージか【黒き泥が他者を取り込むこと】による治癒を与え続ける。
SPD   :    全部満たしてあげるね
小さな【自分の体】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【あらゆる欲望を叶える空間】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    抵抗しちゃダメだよ?
【沼地とかした黒き泥】【女性の姿をした黒き泥】【X型の磔台に変形した黒き泥】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。

イラスト:sio

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は美国・翠華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「いらっしゃい」

 堕落の猿を退け、探索を再開した猟兵達の前に「それ」は忽然と姿を現した。
 まるで、そう望まれたから現れてやった、とでも言わんばかりに。

「来てくれて嬉しい。わたしの元にヒトがやって来るのは久しぶり」

 その見た目と口調はあどけない子どものようだが、禍々しいオーラに本能が警鐘を鳴らす。
 彼女の足元からは、これまでの道中も散々見てきた「黒い泥」が沸き立ち、不規則に様々な形を成そうとしている。

「あなたの欲望はなあに? なんだっていいよ。全部わたしが叶えてあげる」

 知的生命体のあらゆる欲望を肯定し、成就させる『欲望の邪神』。
 カルト教団の御神体より「顕現」し、UDC支部の尽力により辛くも封印されていた其れは、今ふたたび己の権能を旗さんとしていた。

 邪神の言葉は耳に心地よく、黒き泥はあらゆる形を取ってヒトの欲望を満たさせるのは事実だが。
 際限なく叶う欲の果てに、待っているのは破滅だけ。断じて彼女をここから出してはいけない。

 性質上、あれは近くにいる生命体の欲望を受けて強さを増す。
 なら逆に、なんとかして欲望の供給を絶てば――または、いまだこの場に残る封印の痕跡を利用すれば、有利に立ち回れるだろう。

「またわたしを封じる? それがあなた達の欲望? でも、本当はもっと叶えたい欲望があるんじゃない?」

 ささやきかける少女の甘い誘惑に、溺れてはならない。
 廃墟に遺されしもの――欲望の邪神を討ち倒せるのは、この場にいる猟兵達だけだ。
美国・翠華
【敗北系でお願いします】
【アドリブOK】
彼女は猟兵の突入前から欲望の邪神の放つ黒い泥の中にすでに取り込まれていた。
一体どのくらいの時間が経過したかわからないまま、黒い泥の海の中に四肢を拘束され、窒息しそうなほどに様々な欲望をぶつけられていた。

「っう…ぇ…あ…ぅ…」
翠華は黒い泥の中から吐き出され、朦朧とした意識の中その肉体を無理やり邪神に操られながら猟兵に襲いかかる。体内のUDCは彼女に手を貸すことはない。

…戦いの末に彼女はどうにか開放されたが、同時に邪神の無数の触手が全身を貫く

「素敵な欲望をありがとう。お姉ちゃん。わたしは一旦消えるけど…それでもお姉ちゃんの中で育ってあげるからね。」
という不吉な言葉とともに肉体を侵食された。

なんとか救出され、翠華は全身が泥に塗れたままで倒れる。
彼女はそのまま搬送されていった。

体内に邪神の種を埋め込まれ、わずかに胎動をし始める…


イネス・オルティス(サポート)
『この鎧は一族伝統のものよ、それがどうかしたの?』

アックス&ウィザーズ辺境のどこかにある隠れ里に住む一族の女戦士
〔一族伝統の鎧〕のビキニアーマーを愛用し主に〔巨獣槍〕という槍を使う
”ダッシュ”で近づき”なぎ払い”、”串刺し”等をよく行う

ボン・キュ・ボンのナイススタイルで、ビキニアーマーを普段使いしている
恥ずかしさ耐性のあるイネスは、周りの視線を気にしません
そのビキニアーマー姿の存在感で、無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません

アドリブ・絡み・可 ””内技能
描写はセクシーレベルまで
キャバリアには乗らず生身で戦います(他の人のキャバリアを足場にする等はあり)


風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可

約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
ヴァンパイアを狩るため、あるいは次に狩るべきヴァンパイアの手掛かりを得るためにここにいる。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。

次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。


響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです



「あれがこの世界の神か」
 旧UDC支部廃墟に顕現した『欲望の邪神』を、風雷堂・顕吉(|吸血鬼《ヴァンパイア》|狩人《ハンター》・f03119)は物珍しそうな目で見る。ダークセイヴァーで100年に渡り吸血鬼との死闘を繰り広げてきた彼も、異界の神は専門外。とはいえ、やってやれない事はないと刀に手を掛ける。
「あれをここで倒さないと、大勢の人が犠牲になるのね。なら、やらないと」
 そう言ってイネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)も、槍を構えて臨戦態勢に入る。身に纏うは一族伝統のビキニアーマー。アックス&ウィザーズ辺境の隠れ里出身の彼女は、一族の掟に従って己の力を世のために振るう。人を狂わす邪神の討伐は、その使命に適うものだ。

「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
 援軍としてこの場に駆けつけた猟兵はもう1人。響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)はおしとやかな雰囲気で同行するメンバーに挨拶する。一方で眼前に立ちはだかる邪神への視線は厳しい。敵であろうとも相手を想い、寄り添おうとする彼女でも、あれは看過できぬ災いであった。
『いろんな欲望が集まってる。全部満たしてあげるね』
 猟兵達の想い、使命、信念――そこから生まれ出る欲望を、邪神は全て肯定する。少女を象ったかんばせが微笑みを浮かべると、足元にたゆたう泥が沼のように広がり、表面からなにかが浮かび上がってくる。それを見た瞬間、猟兵達の表情に緊張が走った。

「あれは……まさか、すでに取り込まれた人間がいたのか?」
 思わず顕吉が口にした通り、それは全身黒い泥に塗れていたが、確かに人間だった。それもただの人ではなく、彼らと同じ猟兵――名を美国・翠華(生かされる屍・f15133)という。彼女はグリモアが今回の事件を予知する以前から、すでに欲望の邪神に取り込まれていたのだ。
「っう……ぇ……あ……ぅ……」
 一体どのくらいの時間が経過したかわからないまま、黒い泥の海の中に四肢を拘束され、あらゆる欲望を叶える空間の中で、窒息しそうなほどに様々な欲望をぶつけられていた翠華の精神は、もはや崩壊寸前だった。泥の中から吐き出された彼女は朦朧とした意識の中、その肉体を無理やり邪神に操られ、同胞である猟兵に襲いかかる。

「なんて非道な……!」
「来るわよ。下がって!」
 あまりのことに息を呑むリズを、庇うようにイネスが前に出る。人間相手とはいえ今の翠華は明らかにまともな状態ではなく、下手に手加減すればこちらがやられる。力尽くでも大人しくさせて、邪神の支配から引き剥がさなければ。
「ぃ……ぁ……うぅ……!」
 朦朧状態の翠華は魔剣「磔刑婦人エリザベート」を振り回し、敵が誰かもわからずに斬り掛かる。不幸中の幸いは、彼女の体内に宿るUDCは今は手を貸してくれないことだ。欲望の邪神に反発しているのか、それとも宿主の無様な姿をせせら笑っているのか。どちらにせよ心身ともに万全とは言い難い状態だ。

「今、伝統の鎧から神威開放」
 自慢のビキニアーマーで翠華の攻撃を受け止めたイネスは【新薄衣甲冑覚醒 弐】を発動。邪神の力なにするものぞと解き放たれたビキニアーマー神の神気が、地下空間を眩く照らしだす。その神威は力弱き者を萎縮させ、戦意を挫く。
「ひ……っ……」
 現状、イネスの実力はわずかにだが翠華を上回っている。そのためビキニアーマーの神気を受けた翠華は剣を取り落とし、怯えた表情で後ずさる。黒い泥はそんな彼女を無理矢理に拘束して戦場に留まらせようとするが――泥と本人の力が拮抗した結果、進むも退くもできない状態に。

「今、解放いたします」
 この間にリズは聖痕から癒しの光を放ち、翠華を支配する泥の浄化を試みる。欲望を具現化する邪悪な神威が、溶けるように消えていき、哀れな少女は自由の身に。もはや自力で立ち上がる力も残っていなかった彼女は、ガクリとその場に崩れ落ちた。
「ぁ……私……なにを……あぐぅっ?!」
「いけない!」「やめろ!」
 だが。それと同時に邪神の元から無数の触手が飛び出し、翠華の全身を貫く。再び彼女を欲望で支配するつもりか。
 リズとイネスはそれぞれの神威と聖光をもって触手を退けるものの、翠華は全身が泥に塗れたままバタリと倒れる。

『素敵な欲望をありがとう。お姉ちゃん。わたしがここで消えたとしても……それでもお姉ちゃんの中で育ってあげるからね』
 薄れゆく意識の中で、翠華はささやく少女の声を聞く。体内に埋め込まれた邪神の種が、わずかに胎動をし始める。
 どうやら彼女は、すでに融合しているUDCに加えて、新たな厄介事をその身に抱え込んでしまったようだ。だが、その事実を知る者はまだ誰もいない。

「欲望のままに生きようね」
 ひとりの少女の欲望を満たした邪神は、さらに多くの者を黒い泥に呑み込まんとするが――いつまでも好き勝手を許す猟兵達ではない。リズとイネスが気絶した翠華を安全な場所まで搬送する間、邪神の前に立ちはだかるのは顕吉だ。
「その泥を操るのがお前の能力らしいな。だが、見切った」
 鞘に納めた銘刀「|小竜公《ドラクリヤ》」が、目にも止まらぬ早業で抜き放たれ、黒い泥を切り払う。長き闘争の日々で会得した【抜刀術の極意】は、文字通り「抜く手も見せぬ」神速の反撃と納刀を可能にする。何度攻撃が繰り返されようとも、手の内の割れた技など彼には通じない。

「|地下《ここ》なら日差しも届かないからな。本気でやらせてもらうぞ」
 日差し避けのサングラスを外し、真紅の瞳を露わにする顕吉。その剣技はますます冴え渡り、欲望の泥に触れる隙を与えない。泥沼を切り払いながら前進し、ついには欲望の邪神本体にも一太刀浴びせる――ヒトを模したその体から流れるのは赤い血ではなく、やはり黒い泥であった。
『強いのね。でも、もっと強い欲望でないと……』
「いや。俺はこれで十分だ」
 邪神は泥を自らに浴びせることでダメージの治癒を行う。傷口が泥で埋めるように修復される様を見て、しかし顕吉は慌てなかった。できるのならトドメを刺すのも視野の内ではあったが、それが難しいなら次に続く猟兵が戦いやすい状況を作るのも彼の役目だ。

「あの方の受けた痛みを、あなたにも差し上げますわ。……なん倍にして」
 黒い泥が切り払われ、障害も妨害も減った戦場。そこに戻ってきたリズが、鋭い眼差しで欲望の邪神を睨みつける。
 手に持った魔導杖「ルナティック・クリスタ」を掲げると、先端の青いクリスタルが光を放つ。その輝きは、邪神が翠華に与えた苦痛と負傷に比例したものだ。
「光の槍よ、敵を撃ち貫け」
 凛とした詠唱と共に放たれる閃光。地下空間全域を照らすほどの輝きと化した光の槍が、欲望の邪神めがけて飛ぶ。
 今の邪神にそれを阻む術はない。回避すら許されない。幼子のように目を丸くしながら、胸の中心を槍に貫かれる。

『わぁ……すご、い……!!』
 傷口と口から泥を吐きながら、不明瞭な言葉を発する欲望の邪神。その表情は歓喜に咽ぶようにも苦痛に悶えるようにも見えた。人間の欲を糧にする恐るべきUDCとはいえ、決して無敵の怪物ではない――3人の猟兵の奮闘は、その事実を明らかにした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

四王天・燦
勝手に呼ばれて封印されるなんざ理不尽だわな
禍々しくあるが同時に、権能に振り回される未熟な神様にも見える
封じるより送還を叶えたいね
素直に問うぜ。どうすりゃ元鞘に収まるだろ?

勝って躯の海に還すしかねーなら戦う覚悟を決めるよ
宣戦布告!
戦って頂けるってだけで欲が一つ叶えられてパワーアップとか神様ずるくね?

黒泥をアークウィンド振るって起こした風や衝撃波で吹き飛ばす
【女性の姿をした黒き泥】も神鳴一閃で薙ぎ払う。送還の願いは欲より強い!

手が届く間合いに入ったら【精気循環符】をおでこにピタリ
神の力をアタシに流すぜ。どこまで耐えられるかが肝だが限界突破して超レベルになってやんぜ
神パワーみなぎってきたー!

送還の手掛かりがあれば従うし、なけりゃ召喚術の逆転応用して神様を還してみせるよ
倒すしかないなら不本意だが【精気循環】で神力を吸い尽くして躯の海へと送還だ。神様、大人しく還ってくれ!

で、問題の御神体ってあるの?
あったら潰しておきたいんですけど
神様は遠くからちょっと欲を叶える力を貸してくれるくらいが丁度いいのさ



「勝手に呼ばれて封印されるなんざ理不尽だわな」
 欲望の邪神を現世に顕現させたのは、あくまで人間の欲望によるもの。燦から見た其れは禍々しくあるが同時に、権能に振り回される未熟な神様にも見えた。危険な存在であることは否定しようがないが、敵意を向ける気にはなれなかった。
「封じるより送還を叶えたいね。どうすりゃ元鞘に収まるだろ?」
 なので燦は素直に問う。相手が「ヒトの欲望を叶える神様」なら、自分の願望を素直に伝えるのが解決の近道だと。
 たゆたう黒い泥の中心で、邪神の少女はきょとんとした表情を見せ――それから、どこか優しげな表情に変わった。

「わたしを帰したいなら"これ"を壊せばいいよ」
 そう言って邪神は自分の胸元に手を当てる。そこからぬるりと体内から出てきたのは、彼女と面影の似た女神像――おそらく彼女を誕生させた祭器、いわゆる御神体と思しきものだった。現在祭器は邪神と一体化し、邪神を現世に留まらせるための楔になっているようだ。
「"これ"はわたしの心臓だから、わたしの意思でも"これ"は壊せない」
「なら、結局勝つしかねーか」
 やること自体は骸の海に還すのとほぼ同じだ。戦う覚悟を決めた燦は、改めて欲望の邪神に宣戦布告する。それが真なる願いであれば、邪神は決して拒まない――笑みを深めた少女の足元から黒い泥沼が広がり、妖艶な女性とX型の磔台が出現する。

「戦って頂けるってだけで欲が一つ叶えられてパワーアップとか神様ずるくね?」
 さっきまでよりも活き活きとした様子の邪神様に、顔をしかめながら「アークウィンド」を振るう燦。精霊の祝福を受けた彼女の短剣は、空気の淀んだ地下空間に清涼な旋風を呼び起こし、衝撃波をもって黒き泥を吹き飛ばしていく。
「ふふ。あなたの欲望を感じる。もっと感じさせて?」
 なおも黒い泥沼はボコボコと沸き立ち、燦を捕らえようと様々なものを具現化させる。女性の姿が多いのは、女の子が好きな燦の性癖を反映してのことだろうか。彼女らは豊満な肢体や蠱惑的な仕草で迫り、抱擁しようとするが――。

「送還の願いは欲より強い!」
 今ばかりは情欲に流されるわけにはいかないと「神鳴」の一閃で女達を薙ぎ払う。真っ二つにされた女達は泥に還るが、大元をなんとかしない限り湧き続けるだろう。右手に雷の神刀、左手に風の短剣をもって、目指すは欲望の邪神。
「抵抗するんだね。ふうん」
 身を委ねればあらゆる欲望が叶うというのに、あえて自分に挑み続ける猟兵の「願い」を、邪神は肌で感じていた。
 泥が実現する有象無象の欲を凌駕する、ひとつの純粋な意思。想いを乗せた疾風と稲妻が、邪神への道を切り拓く。

「御狐・燦が命ず。符よ、此の者の力を奪い取れ!」
 手が届く間合いに入った瞬間、燦は【精気循環符】を邪神のおでこにピタリと貼る。たちまち金色に染まった符は、邪神の力を奪い、術者に与える。水の貯まったダムから穴が開き、そこから勢いよく水が吹き出すように、とてつもない量のエネルギーが燦の体に流れ込んできた。
「神パワーみなぎってきたー!」
 邪神の力を利用する【符術"精気循環"】で、限界を突破した超レベルに到達する。これが燦の勝利の秘策であった。
 どこまで耐えられるかが肝だが、長期戦になれば元から敗北必至だ。彼我のレベルが均等に近付くこの瞬間に、全力を尽くす。

「これはセクハラじゃないんで赦してくれよな!」
 そう言って燦は刀を手放すと、邪神の胸元に手を伸ばす。ずぶり、と底なし沼のように沈み込んだ指先が、石のように硬いものに――祭器に触れる。邪神降臨の原理がコレを核とした召喚と受肉の一種だとすれば、逆転応用することで送還の儀を執り行えるはず。
「神様、大人しく還ってくれ!」
 不本意ながら【精気循環】で神力を吸い尽くす案もあったが、そも燦自身が「不本意」と思っているプランよりも、こちらのほうが成功率は高い。四王稲荷神社の巫女として、まつろわぬ神に敬意をもって、その御霊を此方より彼方へ送り還す――。


「それがお姉ちゃんの欲望なら……しかたないね。また遊んでね?」
 まるで波が引くように、地下室に広がった黒い泥が少女の足元に収束する。遊んでもらって満足した子供のように、欲望の邪神は無邪気な笑みを浮かべ、ばいばいと手を振りながら姿を消した。四王天・燦渾身の送還術は、無事に成功したのだ。
「ふう、なんとかなった……で、これが問題の御神体ね」
 邪神がいた場所に遺されていたのは、泥がこびりついた女神像。一連の事件の元凶ともいえるそれを、燦は神鳴の鞘で徹底的に粉砕する。こんなものがある限り、欲深い人間はいずれまた神を呼び出してしまうだろう。だったらいっそ潰しておくのが一番だ。

「神様は遠くからちょっと欲を叶える力を貸してくれるくらいが丁度いいのさ」
 そう呟くと、燦は粉々になった御神体を捨てて踵を返す。あの叶えたがりの神様と二度と出会わないことを、願うのではなく祈って。厄災が取り払われた旧UDC支部はほんとうの意味で廃墟となり、穏やかな静寂に満たされていた――。



 ――かくして廃墟に遺されしものは去り、猟兵達は勝利の報告を持ち帰る。
 薄氷の上にあるUDCアースの平和と日常は、今日も無事に守られたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年08月20日
宿敵 『欲望の邪神』 を撃破!


挿絵イラスト