●小さなラグナロク
サクール帝国艦隊の強襲から始まった港区での戦闘。
防衛に当たるカメリア合衆国軍は、水上支援を受けるアッバースの大軍に圧倒され、内陸側へと押されつつあった。
高層ビルの屋上を陣取るディアーナ・レナがロングランチャーを撃つ。
だがビームが標的を射抜く前に、光の矢と衝突し、プラズマの火花となって散った。
ディアーナ・レナが発射したビームの数と同じ数の光の矢が放たれ、正確無比な狙いで相殺してしまう。
「操られていても巨神は巨神ね」
ディアーナ・レナは目標への称賛を禁じ得なかった。
称賛を向けた目標――アイリスは、ディアーナ・レナと同様にビルの屋上に立ち、大弓を引き絞っている。
地上ではマイティ・ストライカーとアッバースが射撃戦を繰り広げていた。
殆どのアッバースは、アイリスの大弓とよく似た形状の武器を装備している。
ビームバズーカほどの威力はあるとディアーナ・レナには思えた。
「アイリスのカラドボルグを真似したようね」
贋作とは言え侮り難い。
拓也の事もある。
ディアーナ・レナの中で焦りが滲む。
「ミカ! いつまで手こずってるのよ!」
焦りと苛立ちを込めて、ロングランチャーを撃つ。
地上の建御雷もまた、巨神との戦いを余儀なくされていた。
「気安く言うてくれるのぅ……妾は巫女無しじゃぞ? 外界の機械神ほど都合良くできてはおらんでの」
紫電を纏った雷切を上段に構え、素早く力強い踏み込みと共に振り下ろす。
落雷の如き太刀筋は、大盾によって跳ね返されてしまった。
建御雷は後方へと大きく飛び退く。
「巫女無しでは、やはりこの程度が限界か。しかし傷もまともに付かぬとは……頑丈な盾であるな」
大盾を構えるマイラは、微動だにもしない。
壁のように無言で立ちはだかるだけだ。
マイラとアイリス。
この二機の巨神は十中八九、ディアーナ・レナと建御雷の足止めを命じられているのであろう。
ともすれば……建御雷はいよいよ拓也が心配になってきた。
建御雷の予感は的中していた。
主戦域から離れた区画で交戦している拓也とエドガーの戦況は、初動からエドガーの優勢が明らかであった。
大きく仰け反ったリベレーションゼロが強引に姿勢を制御し、横方向へと瞬間加速した。
直後、背にしたビルに巨大な鉄拳がめり込んだ。
鉄拳の主はエドガーだった。
エドガーは武装巨人のユーベルコード――大威鍛で、標準的なキャバリアより遥かに大きな武者の上半身に化けたのだ。
『どうした? 逃げ回るだけか?』
「大威鍛まで使うのか! 猟兵なんじゃないのか? こいつは!」
拓也は苦く歯を食い縛る。
リベレーションゼロは大威鍛を軸に旋回軌道を取り、縦に連結した二丁のビームライフル、腰部の左右にマウントしたレールガンを同時に発射する。
収束ビームと高速弾体は確実に大威鍛を直撃した。
けれど怯む気配もない。
『まるで羽虫だな!』
太く長い腕が振るわれる。
リベレーションゼロは上昇して回避した。
「目標が大きいなら、こいつで!」
リベレーションゼロの胸部に開いたビーム砲にプラズマが集う。
『む?』
それを見たエドガーは大威鍛の両腕を十字に交差させた。
「くらえぇぇぇッ!」
拓也の裂帛と共に解き放たれた高収束かつ大出力のプラズマビームが、大威鍛の腕に命中した。
大威鍛の装甲強度は尋常ではない。
しかし、戦艦をも一撃で撃沈せしめるこのビームの直撃なら――。
魔眼が視せたのは、迫る巨大な手だった。
照射を中断してリベレーションゼロを後退加速させる。
『今のは悪くなかったぞ?』
大威鍛の掌は空気を掴んだ。
直撃を与えた腕部装甲は……表面が赤熱化している。それだけでしかなかった。
「関節部を狙う!」
拓也は敵を取り囲んで槍で突くイメージを飛ばす。
リベレーションゼロの背部ラックから射出されたファンネルが、大威鍛を全包囲した。
『小手先ではな!』
大威鍛は身を捻って狙いをずらす。
大きさと外見からは想像し難い運動性に、拓也は顔を強張らせた。
腕が一振りされるだけで空気が轟く。
そのたった一振りで、リベレーションゼロの射出したファンネルの多くが撃破、あるいは墜落した。
「通常兵器が効かないならば!」
腕を振った事で大威鍛に隙ができた。
飛び込むなら今しかない。
拓也は瞬時にパージ操作を行う。
リベレーションゼロがビームライフルを投棄した。
風を纏う右腕部を突き出す。
「旋風術!」
バーニアノズルが噴射炎を炸裂させた。
機体ごとぶつかる覚悟で猪突する。
狙いは先程ビームを直撃させた箇所だ。
「疾風!」
全身を壁に叩きつけたかのような衝撃。
しかし痛み以上に手応えを感じた。
リベレーションゼロの右腕を通じて伝わる、装甲を貫いた手応えを。
追撃に拘れば捕まる。
拓也はリベレーションゼロをバックブーストさせた。
相対距離が一気に開く。
手応えに間違いはなかった。
大威鍛の左腕の装甲に、穴が穿たれていた。
小さいが確かな一撃だ。
『傷を付けるとはな。やはり腐っても猟兵か?』
「な……!?」
勝機を見出した途端、すぐに拓也は絶望を見せ付けられた。
穿った穴がみるみる間に塞がってゆく。
「ナノクラスタ装甲か!? 或いは……」
魔法の類による再生か。
いずれにせよ、既に穴は閉じてしまった。
こいつは……強い。
今の自分では、撃墜など不可能だ。
時間稼ぎに徹する意外に道はない。
拓也の頭の中で現実的な打算が逡巡する。
『さて、こちらも面白い術を見せてやろうか。木術・我分身降誕』
大威鍛の左右のアスファルトを突き破り、木が芽を出す。
木は急激に成長し、人の姿を形作った。
それはエドガーによく似た姿だった。
『問題だ。このふたつの分身は、俺と同じように大威鍛が使えるか? 使えないか?』
拓也が答える間もなかった。
エドガーの分身体はさらに枝を伸ばし、幹を太らせ、巨木と化す。
だが拓也も傍観しているだけの間抜けではない。
急成長を続ける分身体に照準を合わせ、トリガーキーを引く。
リベレーションゼロがレールガンを速射する。
高速の弾体が木の幹を貫く。
しかし肥大化と再生は、損傷のスピードを遥かに上回っていた。
『答えは……言うまでもないな?』
そして分身体は、二体の大威鍛に成長を遂げた。
『いつまで俺の相手が出来るかな? 原初の魔眼の使い手よ』
体格に不釣り合いな、しなやかな挙動でリベレーションゼロに迫る。
とは言え、機動性はリベレーションゼロが圧倒的だ。
ここからは時間稼ぎの勝負となる。
原初の魔眼が反応したのは、拓也が方針を固めた瞬間であった。
「なにっ!?」
分身体の大威鍛が両手の五指を伸ばした。
五指は何本にも枝分かれを繰り返す。
「捕まえるつもりか!」
正面、横、上、下から襲いかかる枝に、リベレーションゼロは二本のビームサーベルを抜いた。
ランダムな回避運動で躱しつつ、頭部バルカンで撃ち落とし、ビームサーベルで切り払う。
原初の魔眼が視せる軌道を頼りに、何十あるとも分からない枝を躱す。撃つ。切る。
「分身でもこんな……!」
拓也は直感した。
エドガーに遊ばれている。
力量の差はまるで大人と子どもだ。
であっても、時間を稼げるだけ稼がなければならない。
大統領は元より、レナとミカを離脱させる時間も必要だからだ。
この状況でエドガーに注意を割く余裕はなかった。
急に視界が晴れた。
無数の枝の代わりに現れたのは、大きな鉄拳――。
「がッ!?」
圧倒的な実体弾耐性を持つβネオキャバリニウム合金装甲。
咄嗟に最大放出した斥力。
ふたつの内のどちらか片方が欠けていれば、リベレーションゼロは鉄拳で粉砕されていたであろう。
強烈な打撃を真正面から受け、高層ビルの壁面に叩きつけられる。
機体がコンクリートにめり込むほどの衝撃。
それは拓也の脳を激しく揺さぶった。
意識に靄がかかる。
視界の縁が暗く窄まってゆく。
気を失っている場合ではない。
途切れかけた意識を気合いで繋ぐ。
コクピットの中に響くアラート音。
モニターに表示された損傷を伝える警告文。
機体のコンディションは、あちこちが赤や黄色に灯っている。
「動け! 動いてくれ! リベレーションゼロ!」
機体の四肢が凍り付いたかのように動かない。
絶望的な状況に、コクピットの空気が冷たく感じられた。
ところどころがブラックアウトした全天周モニターに、白が染み出してくる。
それを見た時、無意識にこう呟いていた。
「霜……?」
冷たく感じるのではない。
コクピット内の空気が、本当に冷えてきているのだ。
サブウィンドウへ目が走った。
機体表面の温度が氷点下を下回っている。
機体内の温度は……急激に低下中だった。
いまのカメリアは初夏だ。
夕方が目前とはいえ、太陽は照り付けている。
なのに、機体表面の温度は、真冬のコールドクローズの地域よりも冷たい。
まるで氷漬けにされかけているかのよう――。
「……まさか!?」
そう思った瞬間、拓也はコクピットハッチを強制排除した。
外の状況も確認せずに機体から飛び出す。
そうしなければ氷漬けにされる。
原初の魔眼で視るまでもない。
直感がそう告げた。
ビル数階分の高さから飛び降りた拓也は、アスファルトの上に難なく着地する。
振り返ると、空を突く高層ビルが丸ごと一棟、根本から氷に飲み込まれてゆく最中だった。
「これは……! こんな事ができるのは!」
「あらら、脱出されたか。これも原初の魔眼ってやつの力か?」
拓也は脊髄反射で銃とクナイを抜き、男の声がした方向から飛び退く。
アイアンサイトの向こうに見えた男の姿を見た瞬間、背中に電流が走った。
「氷雪帝のヒョウガ……だと!? 何故ここに!?」
まさかとは思っていた相手。
その名で呼んだ男は、コクピットの中で感じた冷気を纏っていた。
「そりゃあ、大総統からの命令があったからに決まっているでしょう。ここの攻撃作戦に加われってよ」
ヒョウガはさも当然と言いたげに首を竦める。
氷雪帝のヒョウガ。
拓也が知る情報が誤りではなければ、サクール帝国軍の大将。
しかも最高戦力と目される一人だ。
想定外の事態に、最悪の事態が重なる。
悠々とした足音を連れて、エドガーまでも現れた。
「ヒョウガ、お前がここに来たという事は、合衆国の官僚達は全員始末したのか?」
「フリーズドライしておいた。利用価値があるだろ?」
「利用価値など無い。後で始末しておく。大統領はどうした?」
「ファーリス隊が捕まえたぜ。だからここは俺に任せて、あんたはファーリス隊の方に行ってくれや」
二人はまるで拓也が居ないものかのように喋り続ける。
「なら任せたぞ」
踵を返して立ち去るエドガーの背中に、拓也は「待て!」と叫んだ。
「お前には二階級特進してもらおうか、防人拓也准将」
飄々とすらしているヒョウガの声に、駆け出そうとした足を止められた。
「邪魔をするな!」
こいつを倒さねば、エドガーの後は追えない。
一秒でも早くケリを付ける。
覚悟がクナイと拳銃を硬く握らせた。
「おうおう、そんな怖い顔しなさんな」
ヒョウガが冷気の渦を纏う。
拓也は風の渦を纏う。
マズルフラッシュの瞬きが、戦闘開始の合図となった。
●バスク・オズワルド
西の空が朱色を帯び始めた。
ファルケンD.C.の港区から発せられる爆轟は、郊外にまで届いている。
「デストロイヤー・ゼロの量産が、ここまで進んでいたとはな」
地に膝を付いたバスクは、周囲に居並ぶキャバリアを見上げた。
夕陽に照らし出された紅の装甲は、血濡れの色だった。
「アッバースもです。これもヒューバに大規模な工業地帯を築いて頂いた、アイゼンブラッド艦隊のイングヒルト・アーキバス大佐殿のご厚意ですよ」
背後から声を掛けられた。
何者にせよ、バスクを捕らえたファーリス隊の隊員である事に間違いない。
「我々の予想が甘かったな。いや、和平協定などという甘言に騙された時点で、この結果は決まっていたのだろう」
「そうだ。お前たちはいつも甘い。だから奪われるばかりで、何も守れない」
唾を吐き捨てるかのように言うエドガーの瞳には、跪くバスクへの侮蔑が込められていた。
「さて、大統領。このような形ではあるが、国のトップ同士がご対面だな。これがお前にとって最初で最後の対面になるだろうが」
「頭が頭を取りに来るとはな。クロリダと平原はやはり陽動だったか」
「分かっていた上で踊らされるとは、どこまでも甘い男だ。だからファルケンD.C.を二度も失う羽目になったのだ」
「あちらには猟兵がいる。お前達では勝てんよ」
「敗北も想定内だ。エルネイジェがベヒーモスDoGを出してくる事は想定外だったが……大陸外の国を抱き込めた点だけは褒めてやろう。だが、戦狂いのあの王国も、他国の領土で戦略核を使う勇気はあるまい」
「その認識も外れだ。エルネイジェとは、ただ猟兵を雇用した関係に過ぎない。それにどうかな? 想定の上を行くのが猟兵だぞ?」
「合衆国の中枢を担う官僚達の殆どを始末できた時点で、我々の勝ちだ」
エドガーは刀を抜き、バスクの首筋に刃を添える。
「何か遺言はあるか?」
バスクは瞑目すると深く呼吸した。
そして見開いた双眸で、エドガーの瞳の奥を射抜いた。
「我が合衆国は支援してくれる国すら無く、孤立して窮地に陥り、国の滅亡の時が刻々と迫ってきてはいるだろう」
事実を事実として受け入れているバスクの中に、恐れや後悔の念はない。
「だが、歴代大統領が守ってきた自由民主主義の国、そう易々と滅ばぬぞ!」
その声には空気を震わせ、ファーリス隊の隊員達を後退りさせるだけの思惟があった。
ただ一人、エドガーだけは口角に微笑を滲ませる。
「自由民主主義の国の元首として相応しい遺言だな。しかし、貴国の栄光の時代は終わったのだ。これからは、サクール帝国がカメリア大陸の新たな覇者であり、守護者となる」
終わらない。
ならない。
バスクは硬い確信を持ち、エドガーの瞳を睨め付ける。
「では、さらばだ」
「防人准将、後は頼む」
二人の声が重なった刹那、バスクの頭は地面に落ちた。
形相は死ぬ直前まで変わらなかった。
身体が呆気なく崩れ落ちても、広がる血溜まりの中に没しても、今も自分を睨むバスクに、エドガーは忌々しさと薄ら寒さを覚えた。
「目標は達成した。残党を掃討しつつ、この街の占拠を進めろ」
エドガーは簡潔に言い残すと、ファーリス隊に後を任せてその場を去る。
決してバスクに臆したからではない。
自分への言い聞かせを、心の内で漏らす。
バスクの目は、エドガーの背中を睨み続けていた。
●敗退
『……退いていく?』
ディアーナ・レナは困惑を禁じ得なかった。
先程まで千日手を繰り広げていたアイリスが、急に興味を失ったかのように後退していったからだ。
『腹が空いた訳ではあるまいな?』
建御雷と交戦していたマイラも同様だった。
『レナ、ミカ……聞こえるか……?』
時期を同じくして、二機の元に弱々しい拓也の通信音声が届く。
『拓也!?』
『状況は……?』
『たった今アイリス達が急に逃げていったわ!』
『妾は手が空いた。今からそちらへ向かうぞ』
通信の向こうで安堵の息遣いが聞こえた。
『二人はそのまま……グランシスコへ向かえ。生き残った合衆国軍が、グランシスコへ撤退している……』
『ちょっとなによそれ!? まるで私達が負けたみたいな――』
『負けたんだ……俺達は……』
呼吸の度に途切れる拓也の声が、ディアーナ・レナの予感をあっさりと肯定した。
『なんで!』
『大統領が、処刑されたらしい……』
ディアーナ・レナは驚愕に言葉を失う。
建御雷は「ほう?」と悟ったような息を吐いた。
『大統領が殺されたっていうの!? というか、あなた今どこにいるのよ!? あなたもさっさと逃げて態勢を立て直さないと!』
『無理……だな……』
拓也の言っている言葉の意味が、ディアーナ・レナには分からなかった。
『俺は……ヒョウガに、負けた……』
●氷牙
レナが叫んでいる。
ミカがレナを宥めている。
しかし何を言っているのかよく聞き取れない。
意識は霞んで、身体は動かない。
腕、足、そして腹を氷柱で貫かれ、仰向けになって地べたに伏しているなら当然であろう。
「周りの事が見えていない、愚かで無力で無価値な俺に……お似合いの最期……だ…な……」
自嘲と共に、視界が暗黒に窄まってゆく。
まるで、深い眠りに付くかのように。
「思ったより手こずったが……ま、戦う相手が悪かったな」
磔にした拓也を見下ろし、ヒョウガは頬を手で拭った。
手のひらを見ると、微かに血が付着していた。
「終わったようだな」
特に急ぐでもない様子でエドガーが訪れる。
もう興味が失せた相手に、向ける眼差しはなかった。
「いくら相手が猟兵でも、ここで負けたら最高戦力の名が廃っちまう。さて、俺の約束を果たさせてもらうぜ、大総統さんよ」
「お前が防人拓也を確保した場合、処遇は一任する……だったか?」
「ああ」
「准将とはいえ奴はカメリアの人間ですらない。利用価値があるとは思えんな」
「原初の魔眼は貴重な物なんだ。目玉だけはくり抜いておいた方がいいだろう?」
「宝石でもあるまいに」
エドガーは背中を向ける事で返答とした。
我が物顔で港に居座る潜水空母へと去ってゆくエドガーを見送った後、ヒョウガは深い溜息を吐いた。
「そんな悪い趣味はないんだけどな」
しゃがみ、拓也の身体に手を触れる。
一瞬で氷漬けとなった拓也を担ぎ、ヒョウガも潜水空母へと足を向けた。
●リザルト
ファルケンD.C.はサクール帝国軍の手に落ちた。
大統領のバスクは処刑され、捕らえられた官僚達も同様の処遇を受けた。
なお、防人拓也准将はMIA認定されている。
ディアーナ・レナと建御雷は、残存した合衆国軍と合流し、グランシスコへの撤退に成功した。
しかし敵の追撃は執拗であり、グランシスコに辿り着けた合衆国軍は少なかった。
クロリダ方面の戦闘は、合衆国軍が戦術的勝利を納めるも、防衛拠点としての機能を喪失。
合衆国軍はオールドオーリンズへの撤退を決断した。
カメリア中央平原の戦闘は、合衆国軍の勝利で終結。
帝国軍は撤退し、避難民キャンプの被害も極軽微に留まった。
夕陽が水平線に沈んでゆく。
海面を血のように赤く染めあげて。
その光景は、まるで合衆国の落日を暗喩するかのようであった。
これから長い夜が始まる。
成功
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