ハッピーバースデー・サプライズ
●誕生日
誕生日とは祝い事の最たるものであろう。
すくなくとも、そう思う。
だから、弟子としてではなく一人の人間として師匠――イリアステル・アストラル(魔術の女騎士・f45246)に贈り物をするのだ。
包まれているのは師匠が好む酒瓶。そしてつまみのセットだ。
これを購入するのも、酒場でリサーチを重ねた結果――ではなかった。
そう、師匠であるイリアステルの人造竜騎から伝え聞いたのだ。
「はじめはびっくりしたんだよなぁ。話せる人造竜騎っているんだなぁ……」
そういうのもいるのかもしれない、と受け入れられたのは、己も丹力というものが備わってきたからかと、うぬぼれた。
だが、それでも師匠がよろこでくれるだろうと思えたのだから良しとしようではないか。
「よっし! 準備は……まあ、できてるようなできていないような」
此処はイリアステルの部屋だ。
後は彼女が戻ってくるのを待っているだけなのだが、飾りつけなどはできなかった。
どうやら、この部屋、机の上のものなどが乱雑に置かれているが、これは師匠なりに計算され尽くした置き場なのだという。
あまりいじられると危ないとは言われたが、具体的にどう危ないのかはわからない。
だが、そういい付けられたのだから極力触らないほうが良いとも理解していた。
「でもなぁ……こう、なんていうか生活感……」
目の遣り場に困る。
どうしたらいいのだろうかと思う品物がそこかしこにある。
「でもまあ、いいか!」
用意はできている。
後は杯に酒を注いでイリアステルに献上するだけである。
そう思っていると背後の扉が開く。
「あれ? 今日はもう終わりって言ってたんだけど……」
「師匠! お誕生めでとうございます!! これ、ささやかですが!」
そう言って差し出した杯とおつまみのセットを示す。
本当にささやかだ。
日頃の修行の御礼とも言える。
けれど、イリアステルは感激したように肩を震わせていた。
涙ぐんでさえいたのだ。
「え、えっ!? ええっ!? し、師匠!?」
「あ、ありがとおおお!」
「ぐ、ぐえーっ!? く、くるし……」
「ありがと! ありがとおおお! うれしいよぉー!!」
感激のハグは、柔らかいやら苦しいやらだった。
気恥ずかしさに振りほどこうにも振りほどけないほどの強烈な力。万力みたいな力で感激の意を示すイリアステルにタップするも、弟子はまるで離してもらえなかった――。
成功
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