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マホマジ・イェーガー☆彡 りばいぶっ!

#UDCアース #【Q】 #憑依型UDC

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#【Q】
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●『超次元の渦』からコンニチハ
 超強大な完全なる邪神達が蠢くそこから、ぽろりと地上に滲み出た邪神がひとつ。
 しかし地上だと喜ぶ間もなく本来の肉体を失ってしまい、邪神は嘆きながら今の状況をどうにかこうにかしようとして――出来てしまった。都合よく通りがかった人間の肉体へと憑依したのである。
 生まれも育ちも、日々の生活も普通の人間だ。邪神に憑依され、気付ける筈がない。
 ただの女子高生であるその人間に特筆すべき点があるとすれば、若者特有の真っ直ぐな正義と情熱を胸に宿し、不気味に建つ病院を見上げるその目に、ちょっとやそっとでは消せない炎を燃やしていた事くらいだろう。

●マホマジ・イェーガー☆彡 りばいぶっ!
「で、その子が『この廃病院に残る魔法少女的ポルターガイストは幽霊でも何でもないって解き明かしてみせる……現代の知識と科学力にかけて! この世のホラーに誰もが怯えなくていいように!』って熱い想いをブワァ~!させた所でダンディーニが体を乗っ取っちゃうのよ! 乙女の正義感と情熱が出現の鍵って所はギリ魔法少女らしいけど、無断で憑依してるでしょ? 魔法少女としてどうかしらって思うわ!」
 いやぁねぇ。
 藤代・夏夜(Silver ray・f14088)は機械の指をぴらぴらさせ――ぐっと握り込む。
「残念だけど今言った事は全部本当よ。魔法少女的ポルターガイストが起きる廃病院も、『大変態魔法少女騎士』ダンディーニの出現も」
 普段は楽しげに煌めいている金の瞳が、猟兵達を射抜くように見た。
「魔法少女にされる覚悟はあるかしら?」

 ――されるの?
 ――されるわ。

 というのも、廃病院の名前がとある魔法少女モノに登場する病院と同名であった為、作品のファンによる聖地巡礼やコスプレ撮影、想いやら何やらが自然と集まった事で念の煮凝り状態に。
 そこへ、面白がったのか、マナーのなっていないごく一部のファンによるものか。魔法少女的な衣装や変身グッズが|セッティング《不法投棄》された。
「そんなこんなで、魔法少女的アイテムのアレコレが着用者を求めるポルターガイストになってるのよ。ただ、こっちの影響は見た目だけ。魔法の力はないわ。ただし、ダンディーニは相手を魔法少女にするユーベルコードを持ってるの」
 どちらも、一部には強烈なダメージになるだろう。
 しかし後者は普通に武器として使える為、敢えてユーベルコードを受け、利用するのも手だ。
 ――利用する事で、余計に心的ダメージを負う可能性はあるが。
「例の女の子……|岸・由梨子《きし・ゆりこ》ちゃんは廃病院に到着してて、中を探索してるわ。隅々まで調べて解明するまで外に出ない筈だから、みんなも探索してちょうだい。それと……」
 夏夜が人差し指と中指を立てる。
「全部由梨子ちゃんに肩代わりさせられちゃうから、ダンディーニが現れるまでは一切攻撃しない事。魔法少女的ポルターガイストを上手く誤魔化すか、破壊する――つまり『被害を軽減』しておくと、ダンディーニの弱体化が見込める事。この2つを覚えておいて」
 憑依型UDCを殺せば宿主も同時に死亡してしまうが、弱体化させられれば、憑依型UDCを宿主から引き剥がし、対象のみの撃破が叶う。
「情報はこれで全部よ。ちょっとばかりアレがソレだけど、みんなにしか頼めないわ。よろしくね!」
 誰かの為にという純粋な想い。
 少女の未来。
 どちらも魔法少女を名乗るUDCに消費されないように――夏夜のグリモアが輝き、猟兵達を廃病院前へと転移させる。


東間
 お前も|第六魔法猟兵《マホマジイェーガー》にならないか?、パートツー。|東間《あずま》です。
 2作目ってスーパーとかリターンとか付きますよね。

●受付期間
 タグと個人ページ、X(https://twitter.com/azu_ma_tw)にてお知らせ。
 オーバーロードは受付前送信OKです。

●シナリオについて
 コメディです。
 各章、導入場面あり。公開までお待ち下さい。

●1章
 廃病院の探索パート。肝試しだと思って頂ければ。
 この章では|岸・由梨子《きし・ゆりこ》とは会えず、ポルターガイストも起きません。
 まだ。

●2章
 魔法少女の衣装や変身アイテムといったグッズが猟兵達を襲う!
 わあーたいへんだー!
 ポルターガイストを上手いこと誤魔化したり、破壊しておくと、3章ボス戦で有利になります。

●3章
 憑依型UDC=『大変態魔法少女騎士』ダンディーニ戦です。
 がんばえー! まほまじいぇーがー!

●グループ参加:3人まで、オーバーロードは人数制限なし
 プレイング冒頭に【グループ名】をお願いします(【】は不要)
 送信タイミングは同日であれば別々で大丈夫です。
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びてお得。
 グループ内でオーバーロード使用が揃っていない場合、届いたプレイング総数によっては採用が難しい場合があります。ご注意下さい。

 以上です。
 皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 冒険 『怪奇・誰彼病院』

POW   :    扉やロッカーをこじ開ける

SPD   :    こっそりと病院内を調査する

WIZ   :    院内の人影に聞き込みを行う

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第1話💫✕✕✕✕病院ニヨウコソ
 もとより忍び込むつもりの訪問者に、外と内とを区切る塀も南京錠が掛けられた門も効果をなさない。
 猟兵相手となれば紙きれも同然だった。
 こじ開けるなり飛び越えるなりして踏み入った病院敷地内は、外では雑草や初夏から夏にかけて咲く花が好き放題に伸び、アスファルトを青々と侵食している。内では埃と少々のゴミが幅を利かせており、正面から入ってすぐの受付広場に並ぶ椅子は、埃と経年劣化によってなかなか芸術的な様になっていた。
 塗料が綺麗に塗られていた壁や毎日の清掃で磨かれていた床のタイルにはヒビが入り、ガラスの窓は砂色スモーク仕様。華やかさを添える巨大な絵画は置いていかれたままで、埃と蜘蛛の巣だけが寄り添っていた。患者や面会に来た人々の道しるべだった案内板は錆びて、赤茶色の染みがいびつに広がっている。
 人がいなくなり、使われなくなった。
 数年かけて老いた病院はひどく空虚で、静かで、淀んでいる。

 そんな場所に魔法少女的ポルターガイストが蔓延っている。

 信じがたいが残念ながら現実であるそれ、今は遠い脅威に出くわす前に、熱く純粋な想いを抱く無辜の少女を探さなくては。幸いな事に真新しい足跡がある、それを辿っていけばいずれは会え――――何かすっごいあっちこっち行ってる。

 ちなみにこの廃病院は地下1階、地上7階建てだ。
 錆びついた案内板によると、地下1階には主に各検査室が。売店があった1階と、4階までは各診療科の診察室と手術室が。5階から上は全て病室となっていた。渡り廊下で繋がる2階建ての別棟は病院スタッフ専用の施設らしい。泊まりとなったスタッフの部屋や更衣室があるようだ。

 このいずれかに岸・由梨子は居て――探索のさなか、魔法少女な衣装やアイテムも見つかるだろう。
 見つけた瞬間運命を感じたり感じなかったりするかもしれないが、それらは今はこの病院と同じ。放棄された、ただの『物』だ。――今の所は。
 
薄翅・静漓
アドリブ歓迎
少女を見つけに行くわ
こんな場所に、たった一人で
邪神に憑依されたまま
どんな思いで過ごしているのか……心配ね
(自分の足跡が混ざらないように空中浮遊)
(足跡をうろうろふわふわ追ってみる)

古びた廃病院……なんだか、背筋にひやりと寒気が走る
……今の、風の音よね
周囲に気を配りながら、慎重に進みましょう
魔法少女――は、よく知らないけれど
キラキラした小物が置いてあるのが、そうなのかしら
誰かの祈りや憧れが込められているようなデザインは、美しいと思うわ
心惹かれたら、指で触れてしまうかもしれない



 湿度と、真夏の手前らしい暑さ。人がいなくなって相当経つ場所特有の、淀んだ空気。けれどふわり漂うように訪れた薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)の目は静かで涼しげなまま、待合室をぐるりと見る。
 天井も床も、並ぶ椅子も、砂粒と蜘蛛の巣と埃とゴミが一緒くたになった彩で覆われて、蛍光ランプは天井のどこにも見当たらず、日中だというのに暗い。
「こんな場所に、たった1人で……心配ね」
 しかも魔法少女な筋骨隆々成人男性型の邪神に憑依されたままだ。知らぬ事は岸・由梨子にとって幸いなのだろうけれど、その状況は色々な意味でよろしくない。
 静漓は由梨子のものと思われる足跡を自分のもので崩さないよう、床から浮いたまま追う事にした――結果。待合室をぐるりと1周、そこから椅子の列と列の間をひとつ残さず巡り、受付カウンターの向こう側を覗く事になった。由梨子の足跡は案内板前へ向かい、立ち止まってからまた歩き出している。行き先は。
「2階……?」
 床に残る足跡はUターンしていない。静漓は手すりにふかふかと残る埃を横目に足跡を辿って――ふいに、止まる。緩やかに振り返ったそこには過ぎたばかりの空間しかない。なのに背筋にはひやりとした寒気が残っていて、

 ひーい

 遠い遠いどこかからした今の音は。
「……風、よね」
 廃病院となってそれなりに経っていそうだ。とすれば隙間風のひとつやふたつもあるだろう。きっとそう。
 けれど念には念を。少女の足跡へ向けるものと同様、周囲にも気を配る姿は人魚めいた浮遊感で2階に辿り着く。伸びる廊下、引き戸タイプの各診察室ドア。足跡を辿りながら由梨子が見たものを目にする中、覗き込んだ診察室にそれはあった。
 落ちた天井タイルで埋まるデスクの上、丸みを帯びた厚めのコンパクトケースは埃色の中で非常に浮いて見えた。
「もしかして……これが、そうなのかしら」
 蓋にデザインされているのは7色の花びら持つ花だった。ステンドグラスめいたそこに、誰かの祈りや憧れが見えない彩となって宿るよう。美しい、と感じた心は指先に映り、静かに触れる。かちりと蓋が開いて、

『オーケェィ! カモンッ、シャイニング・ハート!』
「え」
『トゥインクルトゥイントゥトゥットトゥ――』

 ぶづっ

 急に喋り、急に終わった。
 静漓はもう一度蓋を閉じ、また開けてみる。
「……今度は静かね……故障しているのかしら?」

 見つけたそれが『変身バンクが賑やか過ぎる』と放送当時に視聴者を大笑いさせたものだなんて、魔法少女をよく知らない静漓は勿論知らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ!?アヒルさん、どうしたんですか?
突然、私の事をちゃん付けで呼んだりして。
たまにはマスコットらしくしてみたって、それはいいんですけど、なんで廃病院にいるんですか?
ここから悪の魔法少女パワーを感じるって、なんで当たり前のように地下の方に向かっているんですか?
絶対、ボスさんじゃなくて別の見てはいけないようなものを見てしまうパターンじゃないですか。
正義の魔法少女なら人の嫌がる役目をするべきって、たいてい見てはいけないものを見たら殺されちゃいますよ。
それかクライマックスまで出番なしですよね。
とにかく、ひどい目に遭うのは絶対ですよね。



 アヒルさんはいつでもどこでもアヒルさんだ。だから今回もフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)はアヒルさんにつつかれる形で、ここにいる――のだが。
『クワァ』
「ふえ!? アヒルさん、どうしたんですか? 突然、私の事をちゃん付けで呼んだりして」
『グワワ♪』
「“たまにはマスコットらしくしてみた”って、それはいいんですけど……」
 フリルはびくびくと周囲を窺う。薄暗く、埃っぽく、空気は淀んで、あちこち傷んで――どこからどう見ても廃病院だ。なんでここにいるんですかと呈した疑問に、アヒルさんがやだなあフリルちゃんとグワグワ鳴き、翼で下り階段を指す。
「“ここから悪の魔法少女パワーを感じる”……って」
 思わず足が止まる。
「なんで当たり前のように地下の方に向かっているんですか?」
 階段を1段も下りていないのに下から伝わる空気が何だか嫌だ。しかも地下だから1階のここよりも逃げ場がない。眉を八の字にしたフリルだが、構わずぴょんぴょん下りていくアヒルさんを慌てて追いかけた。
「絶対、ボスさんじゃなくて別の見てはいけないようなものを見てしまうパターンじゃないですか」
『ガアガア、グワワ』
「“正義の魔法少女なら人の嫌がる役目をするべき”? ア、アヒルさん。たいてい見てはいけないものを見たら殺されちゃいますよ」
 『ホラー』がつくありとあらゆる創作ジャンルがそれを証明している。猟兵達が関わった様々な事件でも、残念ながらそういう事はあったろう。創作物ではクライマックスまで出番なしという事だって普通にある。
「だから戻――」
『グワ!』
「ふええ!?」
 アヒルさんが急に走り出した。自分達だけの廊下に響くアヒルさんの足音がひどく耳に残る。フリルは数秒怖さに震えてから追いかけた。ああ、どうしよう。とにかくひどい目に遭う事は絶対で――おや?
「アヒルさん、何を抱えてるんですか?」
『グワ』
 それは淡いピンク色をしていて、ふわふわで、小さくて、ころりとしたファンシーな猫のぬいぐるみだった。三角耳には星のマークがあり、首元には宝石風の飾りが付いたひとつ。可愛らしい――が、鼠に齧られたのだろうか。隻眼の猫ちゃんになっていた。
「魔法少女のグッズでしょうか?」
『グワ!』
「ふえっ!? 持って行くんですか!?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
狐変化すると人語は話せない
魔法少女と聞いたら友人が思い浮かぶけど、詳しくはしらない。

ほんとの、おばけさん、出てこないなら、へいき!!
まだ!日中!だし!!へいき!!!
なぁんて余裕綽々で敷地内へ入ったものの…
わ、わぁあ……お、おばけさん、は、出ない…よね…?
一瞬で雰囲気にのまれそう。
ほんとに、いない、よ、ね…?
(おばけきらい)

こ、こヤ……
思わず狐鳴きもらしつつ
燐火であちこち明るく照らしつつ
少女探してうろうろきょろきょろ
内心ばくばく
そういえば、普通に病院も苦手…
き、きぅ………
きゅっと自前尻尾を抱きしめて
診察室とか検査室とか…ましてや手術室なんて…
扉から中をチラっとは見れても、入室はちょっと…遠慮したい
そんなキモチで、主に売店や待合室あたりを捜索

突然、魔法少女なアイテムがぴろりろ鳴ろうもんなら
きゅャぁああああん!!!
ぽひゅん!と狐変化
きゅ、きぅ!きゅヤ!!!
おどさないでとばかりにアイテムへ抗議しても仕方ない
びっくりしちゃたから、仕方ない
…きゅ?
(ところで、これ、なぁに…?)



 ほんとの、おばけさん、出てこないなら、へいき!!
 まだ! 日中! だし!!
 へいき!!!

 立派な狐尾をふっさふさ揺らして余裕綽々、意気揚々。転移直後はそんな様だった火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は、誰かが開けて以降ずっと開いたままと思われるドアから、そろりそろり、慎重を5枚ほど重ねながら顔を覗かせた。
「わ、わぁあ……」
 思わずこぼれた声が、廃病院内部を満たす薄暗さへと吸い込まれ、消えていく。
 そして残る静寂に、さつまはごくりと唾を飲んだ。
「お、おばけさん、は、出ない……よね……?」
 ――右。いない。
 ――左。いない。
 上は。下は。沢山並んでいる椅子と椅子の間や、その奥は。
 その場から動かず確認していくさつまの狐耳は、ぴんと立った状態からどんどんへにょりと倒れていく。只今28歳。猟兵。それでもさつまのおばけ嫌いは今すぐどうにかなるものではないから、こうなってしまうのも仕方のない事だった。
「ほんとに、いない、よ、ね……?」
 返事もなし。
 さつまは狐尾をくるりと体の前へ回して両腕でぎゅうと抱え込み、きらいなものがいそうな場所との接地面を出来るだけ減らしてから、最初の1歩を踏み出した。

 ぺたり。
 ぺたり。
 聞こえる足音は間違いなく自分のものだけで、周りと前方には、薄暗さを一気に軽減してくれる燐火もある。それでも“いそう”な廃病院はさつまの狐耳を倒させたまま、立ち上がらせてはくれない。
「こ、こヤ……」
 ひとりで行く廃病院。思わず狐鳴きも漏れるというもの。
 けれどさつまは、明るく照らしたあちこちに女の子がいないかと目をきょろきょろさせ、進み続けた。両腕は尻尾を抱えていたし、歩む速度は1歩1歩に慎重の2文字輝くうろうろだったけれど。それでも、それでも。
「……あっ」
 そういえば、普通に病院も苦手――そう気付いた瞬間にさつまは「帰ろ!」とは思わず、結んだ唇をぷるぷるさせて、
「き、きぅ………」
 またも漏れた狐鳴き。両腕も、きゅっと自前尻尾をよりしっかり抱きした。
 診察室。検査室。――手術室。
 プレートを見た瞬間に毛並みもきゅうっと縮こまる。
 けれどさつまはぷるぷるふるふる、心臓もばくばくさせながら、どうにかこうにか頑張って中をチラッと覗いていく。
「な、なんにも、いない! ちゃんと、見た!」
 入室?
 それは、ちょっと。遠慮の方向で。
 さつまはそんなキモチで――それでも心を振り絞ってチラッとしては次へ行く。そして辿り着いたのは埃まみれの棚が並ぶ売店だった。ややこじんまりとしたコンビニという規模のそこは、患者や病院関係者にとっては貴重なオアシスだったろう。しかし今はほぼ空っぽで、さつまは周りをびくびく気にしながら店内を回っていく。
「……あれ?」
 埃色ばかりだった棚にカラフルな物があった。なんとそれは縞模様のキャンディスティック! しかも大きい! かと思いきや、甘い匂いは全くしない。にせものだと、さつまは摘んだそれをぺたぺた触りながら色んな角度から眺め――

 ぴろりろぴろりろ! きゅぴりりりーんッ♪

「きゅャぁああああん!!!」
 ぽひゅん!
 突然鳴り響いたマジカルでファンシーな音色は、さつまにとっては恐怖の玉手箱が開いたに等しかった。スティックを勢いよく放り投げ狐変化し、レジカウンターの向こうへ雷も顔負けの速さで逃げ込んだ。前足で両耳をしっかり押さえ、響くぴろりろ音色からのガードも忘れない。
「……きゅ、きゅャ?」
 音がなくなってる。
 そうっとカウンターから顔を出せば、床に転がるキャンディスティックひとつ。静かに寝転ぶ様に、さつまは耳も尻尾も目もキュッと上げて飛びかかった。
「きゅ、きぅ! きゅヤ!!!」
 おどかさないでと抗議しても相手はただの無機物だから仕方ない。多分知らずスイッチを押してしまったのだ。しかしびっくりしちゃったのだから、抗議するのも仕方がない。
 ところで。
「……きゅ?」
 これ、なぁに?
 この廃病院と同名の病院が登場した魔法少女モノのタイトル、スティックの名前、それの使用者である少女の名前、変身バングの再現などなど――嬉々として解説してくれるだろう狐語のわかるオタクは、残念ながらここにはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『襲い来る怪奇現象』

POW   :    物理的に押さえ込む

SPD   :    お札など呪術道具を使う

WIZ   :    怪奇現象を起こしている存在へ説得をする

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第2話💫ポルターガイスト(マジカルのすがた)
 少女が残した足跡を辿り、廃病院のあちこちを探索する――その道のりは建物の劣化と埃とゴミが目立つものだったが、時折カラフルなグッズと出会う事もあった。その中に、明らかに放棄されたものでないカメラが何台かあったのだけれど――。
「あっハイ! 私が設置しました! 動いたものを感知すると撮影始めるタイプと、高画質でバッテリーも神な隠しカメラと、あとサーモグラフ機能付きとか。検証するには色んな資料がいりますからね」
 遮るもののない屋上。伸び放題の雑草。容赦なく降り注ぐ夕暮れの日差し。
 その中で落ちる汗を笑顔で拭う少女こそ、邪神に憑依されているとは全く気付いていない|岸・由梨子《きし・ゆりこ》だ。
 冷却ファン付きのジャケット、長ズボン、軍手、帽子、保冷剤付きスカーフ。単独行動だからこそ暑さ対策もバッチリしてきたと見える少女は、自分達しかいない屋上をぐるりと見る。
「ポルターガイストの噂がある割に、今のとこ異常は見当たらないんですよね。この屋上だって普通の屋上じゃないですか? 人がいなくなったら雑草だらけになるのは普通ですし……あとは、あちこち設置してきたカメラを後日回収してチェックして、そこに異常がなければですよ? ここのポルターガイストの噂はただの噂だったって、証明できますよね!」
 キラッキラの笑顔で拳を作る姿に異常や変化はない――のだが。屋上ドアの脇に、中身がカラフルなポリ袋が3つある。
「あ。あれですか? 噂の素を残していくわけにはいかないですからね、きちんと分別してゴミに出します」
 魔法少女らしさ溢れる様々な衣装。コンパクトやステッキなどの変身アイテム。マスコットのぬいぐるみ。由梨子は、探索中に見つけたものをしっかり回収していたのだ。袋の数と密度から、相当数あると判る。
「でもマスコットはお焚き上げをお願いしようと思っていて……」

 カツッ

 変身アイテムだらけのポリ袋から、アイテムが1つ、ぽーんと弧を描いて袋の外に出た。丁度アスファルトが覗くところに落ちたらしい。それよりも、飛び出す瞬間を見た由梨子がハッと息を呑んだ。
「見ました今の!? まさかポリ袋の中に鼠が!?」
 中身を改めようと、恐れず向かう少女。しかしその目の前で、衣装が、アイテムが、ぬいぐるみが、ポリ袋から次々に飛び出した。シャワーのように溢れるカラフル達。わたしをつかってと言わんばかりの勢いは、屋上にいる全員へと等しく向かう。
 
朧・紅
さつまさん(f03797)が居ればご一緒に
以前魔法少女にされた依頼を
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=5732
見られてて魔法少女だと思い込まれています


ぅや?さつまさんです!
…怖いの苦手なのです?
そんなの手を繋いで二人でお歌うたえばへっちゃらですよぅ
いえ魔法少女だからじゃないのですよ?
違うのです…!(信じて貰えない

ポルターガイストを【第六感】で感知
さつまさんが怖がる前に
内密に極小サイズのギロチン刃でかたっぱしから粉々にしちゃお

僕は魔法少女じゃないので要りません!
ほら、何も起きませんでした、ね?


さつまさんのプレイングに合わせたアレンジ・アドリブ大歓迎


火狸・さつま
朧・紅f01176と!
合流、出来たら、良い、なっ
来てくれる、はず!
だて、紅は、本物の、魔法少女!なんだから!

狐変化中
人語は話せない

こ、こヤぁあん!!
襲い来るグッズに驚きじゃんぴんぐ

きゅ、こヤ、きゅヤっ!
ぽるた、がいすと、なんてっ
しらないしらない!
やだやだ!!これはきっと種も仕掛けもある!はず!
狐鳴きしつつ、とにかく、しっぽあたっくでぺちんぺちん叩き落とす

こャヤ…
そ、いえば、売店でも、驚かされた…!
きと、動くもんなんだ、ね!!
そう、最近の技術て、すごい!から!!
無理矢理納得
俺、おばけさんなんて知りません!
(おばけきらい病院やだやだ)
ちょっぴり心がぴんち……

きぅっ!!!
わぁあ!紅!朧!ロウくん!
ピンチに駆けつけてくれる、なんて…流石!
やっぱり、紅は、本物の魔法少女、だね!
嬉しさいっぱい、尻尾ふりたくり。
何か聞こえた気がするけど気のせい気のせい。
だて!紅は!間違いなく!本物の魔法少女さんっ!!
魔法少女といえば紅!!
本物の登場で安心感いっぱい
いつもの調子取り戻し、的確にしっぽあたっくで次々と破壊



 ふりふりヒラヒラ衣装。ファンシーでマジカルなアイテム。ユメカワでふわふわなマスコットぬいぐるみ。作品を知るファンや、こういった物にトキめかずにいられないちびっこ達なら、歓声を上げ両手を伸ばしただろう。けれどそれらは、さつまにとって恐怖の大波でしかなかった。
「こ、こヤぁあん!!」
 驚きじゃんぴんぐ――からの、自分を追いかけてくるグッズ達にまたも悲鳴を上げて、雑草だらけの屋上を逃げ回る。
「どうして狐ちゃんを追いかけ――ハッ! まさかイタズラ目的でラジコンに改造されて!?」
 由梨子が持参したらしい金属バットを構える間も、さつまは必死だ。
「きゅ、こヤ、きゅヤっ!」
 走って、跳んで――やだやだと狐鳴き。
(「ぽるた、がいすと、なんてっ、しらないしらない!」)
 さつまは急ブレーキをかけて跳び、大変にモフモフとした尻尾でウサギマスコットを思いっきりぺちんっ。その一撃でメロンアイス色をしたウサギは雑草の海へぽすんと落ち、動かなくなった。
「こャヤ……」
 も、もうおいかけてこない? ツンツンして確かめるにも、他のグッズ達が宙を不気味になぞるような軌跡で迫っている。さつまはギョギョッと全身を総毛立たせ――思い出した。
(「そ、いえば、売店でも、驚かされた……!」)
 それはつまり――こういう事じゃなかろうか。
 ポルターガイスト? 幽霊の力? ちがうちがう。
(「きと、動くもんなんだ、ね!! そう、最近の技術て、すごい! から!!」)
 無理矢理納得させたさつまの目つきは心なしかキリッと頼もしくなり、尻尾のモフ度も何だかアップしている。俺、おばけさんなんて知りません! フリルいっぱいの衣装をもっふりぺちんと叩き落として、勝利の「こヤーン!」。屋上に響いたひと鳴きは――こャ、と萎んだ。
 アイテムをぺちん。衣装をぺちん。それでも減らないグッズ達が、さつまの『おばけきらい病院やだやだ』な心を刺激し続ける。
(「ちょっぴり心がぴんち……」)
 耳も尾もしょぼぼと垂れ下がりかけたその背後に忍び寄る、先端にハート飾りが付いたリップスティック型のマジカルアイテムがひとつ。きらりと夕日を反射したそれがさつま目がけ真っ直ぐ落ちた――刹那を鋭い一撃が砕く。あまりにも一瞬過ぎて音すら生まなかったそこに差し込んだのは可愛い声だった。
「ぅや? さつまさんです!」
「きぅっ!!!」
 さつまはキャッと跳び上がってすぐ雑草の海に隠れた。それでも震える真っ黒な狐耳と尾は隠しきれない。ぴょこりぷるぷる覗くそこに、声の主はこてんと首を傾げた。
「……怖いの苦手なのです? そんなの手を繋いで二人でお歌うたえばへっちゃらですよぅ」
 聞き覚えのある声。ほら、と続いた声は見なくても『笑ってる』とわかる。狐耳と尾の震えはたちまち失せ、ぴんっと元気を取り戻す。
「きゅヤヤあぁ~~!」
 紅! 朧! ロウくん!
 しゅばっと感激じゃんぴんぐ、からの、嬉しさいっぱいの声で足元をぐるぐる猛ダッシュ。さつまの鮮やかなビフォーアフターに、朧・紅(朧と紅・f01176)はきゃっきゃと無邪気に笑う。
「あれ、狐ちゃんのお友達です――かっ!」
 カキィン! 金属バットで変身アイテムを雑草海へ痛烈ヒットさせた由梨子に、紅は笑顔で「はいっ」。さつまも「きゅヤん!」と歓喜のジャンプをして、尻尾をふりふりぱたぱた、ふりふりぱたた。
(「ピンチに駆けつけてくれる、なんて……流石! やっぱり、紅は、本物の魔法少女、だね!」)
「いえ魔法少女だからじゃないのですよ?」
「きゅヤ? ……きゅっ!」
 さつまはハッとした。
(「そうだた! だて、紅は、本物の、魔法少女さんっ! 正体、ひみつしとかなきゃ、ね」)
 |一般人《由梨子》をチラッと見て、キリリ顔で再びこくこくこく。まかせて、ひみつまもるよと語る黒狐に、紅はつぶらな目をもっと丸くした。
「だから違うのです……!」
 とある依頼で魔法少女にされた所を見られて以来ずっと、自分は魔法少女だと思われている。違うと言ってもこの通り。ぴゅあな眼差しに紅はどうしたらいーんでしょと腕を組んで、

 ぱさっ
 ぽすっ
 ぽとっ

「きゅ?」
 何だかあちこちから草の音がする。けれどキョロキョロしてもボーボーに生えた草ばかり。気のせいみたい? こてんと首を傾げるさつまに、紅も「どうしました?」と笑顔で不思議そうに首を傾げ――ひゅん。極小サイズのギロチン刃で、悪戯が過ぎるグッズ達を斬って刻んで、粉々に。あれらは持ち主を求めているらしいけれど――ああそう、それで?
(「僕は魔法少女じゃないので要りません!」)
 あげるものはギロチン刃と、心の中でのあっかんべー。これで、万が一という『衣装やアイテムに取り憑かれ、さつまからの本物魔法少女視がエターナルレベルに強化される』事もない。
(「完璧ですねー、ふふーん♪」)
「きゅヤーん♪」
 ぺちん、ぺちん、ぺちちんっ。間違いなく本物の魔法少女の登場に安心感でいっぱいの黒狐も、雑草の海を軽快に跳び跳ねては尻尾あたっくを次々見舞って、
「きぅ!」
 ぐっ!
 勝った、と突き上げる右前足。紅も笑顔で「やー!」とグーを作って――またひとつ、小鳥風マスコットを雑草の海に落として笑う。


“ねえ知ってる? あの廃病院では、ポルターガイストが起きるんだって!”


 ――へぇ、そうなのです?
 でもほら、何も起きませんでした

 ね?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ!?ポ、ポルターガイストです!?
誰も触れてないのに物が勝手に動いて……。
あれ?これって私にもできますよね。
サイコキネシスで離れた所にある物でも動かすことができます。
お化けとかじゃないんですね。
よかったです。
空を飛ぶアイテムもアヒルさんが次々とはたき落としていってますし、一件落着ですね。
ふえ?アヒルさん何ですか?
急に私の肩を叩いたりして……?
あれ?アヒルさんはあそこでアイテムをはたき落としていますし、この気配の大きさは人じゃない……?
これって振り向いたらいけないパターンですよね。



 わたしを着て!
 わたしを使って!
 わたしを選んで!
 ポリ袋から元気に飛び出したグッズ達の波に、フリルの目が限界まで丸くなる。
「ふええ!? ポ、ポルターガイストです!? 誰も触れてないのに物が勝手に動いて……」
「大丈夫落ち着いて! 動いているのには理由があるはず、つまり動かなくしてから調べれば……とりゃあああ!」
「ふ、ふええ!?」
 全く動じない上に解明する気満々で金属バットを振り回す由梨子は、頼もしいようでいて、フリルから見るとポルターガイストと同じくらいビックリの元だ。けれどフリルも猟兵の1人、いくつもの世界、いくつもの戦いを経験していた。だからだろうか。あれ、と気付く。
(「誰も触れてないのに物が動く……これって私にもできますよね」)
 サイコキネシス。自分の力。よく知るそれ。
 じゃあ。
「お化けとかじゃないんですね。よかったです」
「そうそう! お化けなんていないんだから!」
 フリルの事を『怖がりな普通の女の子』と思っているらしい由梨子の笑顔に、フリルはおずおず頷いて――元気な『グワワ!』の方を見る。丁度アヒルさんが空飛ぶ猫形マスコットをはたき落とした所だった。この雰囲気なら一件落着の4文字もすぐ到着する事だろう。
 フリルはホッと胸を撫で下ろし――とんとんっ。何かに肩を叩かれた。
「ふえ? アヒルさん何ですか? …………ふえ?」
 待って。おかしい。
 今のはアヒルさんじゃない。
 だって、アヒルさんはあそこで魔法少女グッズ達を次々にはたき落としている。
 それに。
(「この気配の大きさ」)
 フリルは無意識に唇をきつく結んでいた。
 空気が、音もなく重たくなっている気がする。夏なのに、暑いという感覚が何だか遠い。
(「これって振り向いたらいけないパターンですよね」)
 ふりむかない。ぜったい、ふりむかない。
 フリルは心にそう刻み、アヒルさんの魔法少女グッズはたき落としアタックに、こっそり紛れ込む。転がっていた石で可愛い衣装に、ぼすッ! 一撃ストレートによってひらひら衣装は伸び放題だった雑草の上に落ち――一撃の勢いがショックだったのか、謎の気配が急に薄れていく気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
アドリブ歓迎

――これは、見せてはいけないもの
ああ、困ったわね……
ポルターガイストのせい、なんて……絶対に、由梨子に思わせては駄目

飛んでくる魔法少女グッズには素早く反応し、『早業』で掴み取る
そのまま『光の矢』で破壊――少し光ってしまうけど
これくらいなら、誤魔化せる……はず

急に動くから、びっくりしたわよね
きっと、埃をかぶっていたせいで誤作動を起こしたのよ
熱暴走とか、そういうこと
ほら、ほんの少し触れただけなのに
ごく自然に、まるで予定調和のように壊れてしまったわ

私は動揺を顔に出さず、表情は真顔のまま
――がんばって、グッズが自然に壊れたように見せかけるわ



 それぞれにテーマがあると人目でわかる衣装や変身アイテム。なぜか動物達を模した可愛らしいぬいぐるみ達。それらが一斉にポリ袋から溢れた時、由梨子は鼠が原因ではと疑っていた。金属バットを手にグッズを殴打した時は、誰かがラジコンとして改造したのではと推測していた。
 つまり、霊的なものだとは全く思っていない。
(「けれど、ああ、困ったわね……」)
 静漓は密やかに溜息をこぼし、少女を見やる。――タンバリン形の変身アイテムをフルスイングして、屋上入口の壁に叩き付けていた。動かなくなったそれを素早くポリ袋へ放り入れながら、次のグッズを金属バッドで殴っていく様は、野球部の練習さながらだ。
 科学の力で解明する。そんな志が揺らぐ気配はないけれど、いつそれが崩れるかもわからない。――『これ』は、見せてはいけないものだ。
(「ポルターガイストのせい、なんて……絶対に、由梨子に思わせては駄目」)
 そんな時は、どうするか?


 |こうして、《一瞬で鷲掴み》

 |こうだ。《光の矢で破壊》

 
 静漓の行動は下した判断と同じくらい早かった。早業といって差し支えない早さは、一般人である由梨子には、何かが太陽光を反射したようにしか見えない。その煌めきに思わず反応した少女へ、静漓は感情の窺えない表情のまま、小さく首を傾げた。
「急に動くから、びっくりしたわよね」
「本当ですよ! 片付いたら、鼠の仕業かどうか確かめないと! グッズは誰かがラジコン改造説が私の中で濃厚なんですけど、お姉さんはどうですか?」
「きっと、埃をかぶっていたせいで誤作動を起こしたのよ」
 さらりと自然に繋がれた言葉に、由梨子がキョトンとして「埃」と繰り返す。
 そう、埃。
 静漓は無言で頷く。
「熱暴走とか、そういうこと。ほら、ほんの少し触れただけなのに……ごく自然に、まるで予定調和のように壊れてしまったわ」
「わ、本当だ! こういう所でずっと放置されてたら、確かに壊れやすくなりますもんね。あ、ポリ袋どうぞ」
「ありがとう。……そういう事だから……ああ、ほら。まただわ」
 ガッと掴んでパキンッ。
 由梨子の死角でまたひとつ華麗に破壊したものを、ポリ袋へ。
 ぎゅんっと向かってくるグッズに内心驚きもしたけれど、その動揺は顔に出さないまま。1つずつ素早く、テキパキと|片付け《誤魔化し》て――変わり果てた姿のグッズ達は、それぞれのポリ袋へと帰還させられる。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『大変態魔法少女騎士』ダンディーニ』

POW   :    可愛らしい呪文(野太い声で)
単純で重い【魔法】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ライドオンステッキ
【ステッキに跨り絶叫しながらの突撃】による素早い一撃を放つ。また、【服をパージして褌一丁になる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    レッツ!メイクアアァァァァップ!!
いま戦っている対象に有効な【魔法少女化洗脳光を放ち、新しい衣服と武器】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第3話💫|魔法少女《じゃしん》降臨
 斬って、砕いて、殴って。物理もしくはユーベルコードで処された魔法少女グッズ達は、その全てが元いたポリ袋の中へしまわれた。由梨子はポリ袋の口をしっかり念入りに縛ると、晴れ晴れとした笑顔で猟兵達にぺこっと頭を下げる。
「皆さんのおかげで早く片付けられました、ありがとうございます! 後は私が責任を持って処分しますね」
 鼠がいた痕跡や、改造された形跡はないか?
 各所に設置したカメラ映像も確認・分析して、何も異常が見られなければ、ポルターガイストの噂は噂でしかなくなる。
 明るい時間帯でもこの廃病院近くを通るのが怖かった人は、早足も回り道もしなくて済む。

 ここが、ただの廃病院だと証明出来れば――!

「ううん、こうしちゃいられません! 早く帰って少しでも早く着手しないと! 魔法少女的ポルターガイストは幽霊でも何でもなかったって、安心してもらうんです!!」
 誰かの『怖い』をひとつでも減らしたい。
 熱く真っ直ぐな想いは笑顔に宿り、沈んでいく夕日が笑顔をオレンジ色に染め上げる。
 それは夏の夕暮れ時の、ただのワンシーンだ。それだけの筈だった。けれど少女の中には邪神がいる。無垢なキラメキはほんの一瞬で鍵となり――邪神が、現れる。

 視界を灼くような眩い光。
 躍るプリズム。
 響く轟音と衝撃、もうもうと上がるユメカワ色スモーク。
 そして。

「いつの世も未来の希望を摘み取る悪は許さない!! 魔法少女騎士ダンディーニ、此処に推参よっ!!」
 キュピリーンッ★
 バチコンとウインク、目元で横向きピース。ポーズも決めた筋骨隆々な身にピンク色の可愛らしい衣装を纏い、『邪神』の2文字が裸足で逃げ出すだろう大変態が猟兵達を見てカッと目を見開き叫ぶ。
「さあ此処から始めましょう……全人類魔法少女ドリームプランをッッッッ!!!」
 まずはアナタ達から!!
 そう言って向けてきたステッキは、ハートをかたどり翼をあしらった可愛らしいデザインをしていた。
 
朧・紅
さつまさん(f03797)と一緒に
アドリブ歓迎

誤解を解くためにも
魔法少女には絶対になりません!

ですが
純粋な眼差しがアツイのですぅ

その油断で紅とロウくんはスイーツ系魔法少女(詳細お任せ)になっちゃう
しまったです
ふぁ?なんですかこのエフェクト!?
さつまさん気が利きすぎですぅ(涙

くっこうなれば
魔法少女を語る不届きもの!
本物の魔法少女は僕です!(勢いで言った

えぇいさつまさんも道連れです
魔法少女になぁれ!
ほぁ!魔法少女さつまさんかわっ!可愛いすぎっ!
もふるし写真も撮る

スイーツギロチン振り回し
さつまさんと掛け声合わせ大技(MS様にお任せ)を使いたいです!


そして信じ切ってしまったさつまさんどうしよってなる


火狸・さつま
朧・紅f01176と
狐姿で人語話せず


こ、こャ…
わぁ…
魔法少女…?
きゅヤ?っと首傾げ紅を見る
きゅ。
うん、本物は紅!!
だて、ほら!ロウくんだって居るしっ
完璧!様式美!紅は本物の魔法少女さんっ!
うんうんっと頷き
きぅ!!
紅!今こそ!!っと期待の眼差しで声援
狐力の狐火で変身を盛り上げるエフェクト盛り盛りお手伝い
流石!似合う!可愛い!
きゅヤこヤ拍手はくしゅ!
きゅ…?
俺も?いっしょに…?
え?俺で良いの?
きゅャ!!
わかった!!とキリリ!
これ、俺、知ってる!
コンビもの魔法少女っ!
おみみにおリボン付けてぴこりっ♪
ふわやかなしっぽをふさふさりっ☆
凛々しく!たくましく!プリティで!キュートに!!
こヤーん!!
ばんざいぽーずキメ
きぅっ!(お揃いっ!
同系統モチーフ衣装で御機嫌!
もふもふもお写真も全力で☆
スキンシップで治癒もばっちり!

野望を持ち欲望の為
世界を一方的に変えよと戦うのは
悪の所業っ

敵味方の動き見切り
行動合わせ上手く連携攻撃
本物の魔法少女な紅を
狐力や雷火の雷でサポート&本物はコチラ☆あぴーる
合体大技をおみまい!



 全人類魔法少女ドリームプランを宣言したダンディーニへ、紅は真っ向から否定の視線を向ける。ダンディーニがUDCである事も、人類皆等しく魔法少女にするという計画もよくない。とても良くない。
(「さつまさんの誤解を解くためにも、僕は魔法少女には絶対になりません!」)
 言葉がいらないほど心の声を明瞭に届ける視線に、ダンディーニが不敵に笑う。ムキムキの両腕をゆっくりと動かし、マジカルなステッキをバトンのようにクルクル操り始めた。
「感じるわ……貴方の熱いキモチ。魔法少女の可能性を!」
「こ、こャ……」
 大絶賛狐姿維持のさつまは、後ろ足で器用に立ったまま尻尾をぷるりと揺らす。つぶらなお目々もぱちぱちさせた。――魔法少女、だって。――でも、今ここにいるのは。
「きゅヤ?」
 こてん。首を傾げて紅を見る。
「きゅ!」
 こっくり! さつまは明るさ百点満点の笑顔で頷いた。紅が「えっなんですか」と目をぱちぱちさせていても、さつまはわかっていた。うん、本物はここにいる。魔法少女って何だっけとなるおじさんが登場したけれど、紅が『魔法少女』というものを教えてくれる!
(「だて、ほら! ロウくんだって居るしっ。完璧! 様式美! 紅は本物の魔法少女さんっ!」)
 うんうんっと頷いてきゅヤこや鳴くさつまに、紅は頭を抱えそうになる両手をどうにかこうにか堪えた。純粋な眼差しがアツイ、アツ過ぎる。その苦悩が浮かぶ動きは一般的に『ろくろを回す』といわれるアレだったが、さつまはマジカルアタックの前フリかなと更に目を輝かせるばかり。更に。
「きぅ!!」
 紅! 今こそ!! 期待の眼差しでぴょんぴょこ跳ねての無邪気な応援に、なぜかダンディーニが後方腕組み有識者の面構えでうむうむと頷いた。
「迷える魔法少女のタマゴを導くのも私の役目ッ! いざッ!」

 レッツ! メイクアアァァァァップ!!

「ぅややー!?」
「きゅやーん!?」
 圧に満ちた雄叫び。ムキムキマッチョボディから繰り出されたキュートなポーズ。その全身から迸った光が紅とロウを問答無用で包み込み――。
「な、な、な……!」
「きゅヤァ~!」
 光が晴れてすぐに紅はショックに震え、さつまは大喜びじゃんぴんぐを繰り返した。
 ふりふわな生地を重ねたスカート。鈴蘭のようにふわんとした袖。髪や首元を飾るリボン。色も形もユメカワなマシュマロであちこちを彩った、甘く可愛らしい――どこからどう見てもスイーツ系魔法少女・紅とそのマスコット・ロウな姿にされていた。
 しまったこれじゃあますます魔法少女疑惑が――! 紅は慌ててさつまの方を見て、
(「あっ」)
 遅かった。
 キラキラぴかぴかになった眼差しが、疑惑が崩しようのないくらい固まったと教えてくる。
 紅が脱力仕掛けた時だ。さつまの眼差しと同じように嬉しげな気配で狐火が舞い――ふわっ、ぽわっ、ぽわわっ! 紅とロウの周りを華麗に駆け抜ける。
「ふぁ? なんですかこのエフェクト!?」
「きゅヤッ、こヤ~!」
 ぺちぺちぺち! さつまの可愛らしい拍手にダンディーニの逞しい拍手が重なった。
「素敵! お砂糖菓子みたいな魔法少女、その中には愛と平和にかける炎のような想いがある……そう感じさせる見事なエフェクトよキツ――狐でいいのよねアナタ?」
「こやん!」
「さつまさん気が利きすぎですぅ」
「きゅ、きゅっ……!」
 ダンディーニへ頷き、紅へテレテレしながら頬を掻く。どこか平和な光景で、しかしそこにはムキムキ魔法少女UDCが混じっているという、どうにもならない現実がある。紅は決意した。
「くっ、こうなれば……!」
「あらっ、何かしら」
「魔法少女を語る不届きもの! 本物の魔法少女は僕です!」
 もう勢いしかない。その勢いにさつまはというとTV前のちびっこが如く、きゅっきゅヤー! と紅をアツく応援している。しかしそれもそこまでだった。
「えぇいさつまさんも道連れです!」
「きゅ……?」
 “さつまさんも”――それってつまり、
(「俺も? いっしょに……? え? 俺で良いの?」)
 目をぱちくりさせるさつまに紅が頷く。ダンディーにも頷く。何で混じってくるんですかというツッコミを紅は放り投げ、びしりっ。
「魔法少女になぁれ!」
「|きゅャ《わかった》!!」
 表情と同じくらい耳も尻尾もキリリとさせて、夕空へと真っ直ぐじゃんぴんぐ。その心は明るいキラキラでいっぱいだ。
(「これ、俺、知ってる! コンビもの魔法少女っ!」)
 ぴこりっ♪ ユメカワ色のリボンを付けた大きな三角耳。
 ふさふさりっ☆ ふわやか尻尾は誇らしげ。
 すちゃっ。着地したなら四肢を元気に伸ばして――凛々しく! たくましく! プリティで! キュートに!!
「こヤーん!!」
 ――決まった。圧倒的パーフェクトなばんざいキメポーズに紅の表情はとろけた。
「ほぁ! 魔法少女さつまさんかわっ! 可愛いすぎっ!」
「きぅっ!」
 もふって写真も撮ってと大はしゃぎ。さつまは尻尾をぷりぷりさせ全力で応える。ちなみにダンディーニは魔法少女コンビ誕生に涙ぐみながら拍手していた。そこへ2人の目がきらりと向いて――戦る気に染まる。
「行くですよぅさつまさん!」
「きぅー!」
 甘く美味しく染め上げたギロチンが鋭く舞い、さつまの見事な尻尾に紋様が駆ける。
 即座に仕掛けてきた2人に――ダンディーニはステッキを荒々しく構え、笑っていた。
「来なさい! 新たな魔法少女に実践で指導……先輩魔法少女としてこれ以上の喜びはなくってよ!!」
「きぅ! きゅヤー☆」
 本物は! |紅《こっち》☆
「きゅッ」
 ね。ぱちりんこされたウインクに――紅はちょっぴり躊躇いがちに頷いた。けれどスイーツギロチンを引っ込めはしない。さつまの尻尾から迸った黒雷に軌道もスピードも合わせ、雑草の海を一瞬で斬り夕空へ大きく舞い上げる。
「これが! 僕達の! 合体技!」
「きゅッこヤーん!」

 きらりーんッ☆

 オレンジの陽射しを浴びた2人の技。
 ハートを描いて輝く軌跡は芸術的で、ダンディーニが歓喜の声を響かせる。

 2人は勿論容赦なくそこへズドンと叩き込んだ。
 なぜなら悪は滅びるべきだからである。
 唯一の懸念は――、

「きぅきぅ♪」
(「うう、さつまさん信じ切ってます……どうしよ……」)

 求ム、魔法少女確定の崩し方。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ!?フリルちゃん!変身だよ!!って、アヒルさん勝手に私を変身させないでください。
といっても、聞いてくれないんですよね。
それにしても、魔法少女さん同士で戦うのはいいんですか?
ふえ?昨今魔法少女界隈も派閥があるから、問題ないんですか?
うう、どうしましょう。
逃がしてくれなさそうです。

ふえ?!強力な魔法がくるから、私も魔法で食い止めてって、あんなのは止められませんよ!!
魔法に単純で重いなんて表現は絶対にしないですよ。
ふええ、この世界がどうなってもいいの?なんて聞かれても困ります。
どうにか頑張りますから、アヒルさんが隙をついて攻撃してください。



 ズドォンという轟音と共に伸び放題だった雑草が派手に舞い、屋上のあちこちに散って――ぬうん、とダンディーニが立ち上がった。夕日に縁取られて聳え立つ巨漢に、フリルは「ふえっ」と小さな悲鳴を上げて縮こまる。しかし。
『ガアガアッ、クワワー!』
「ふえ!? 『フリルちゃん! 変身だよ!!』って、アヒルさん勝手に私を変身……ふええ~~!?」
 アヒルさんが聞いてくれるわけがなかった。本人の許可なしにアヒルさんが立てた誓いが、キラキラピカピカ、無数の星屑やら花びらのマジカルなエフェクトと共に『魔法少女フルフリフリル』を降臨させるのである。
「成る程、アナタの変身はそこのアヒルちゃんでやるのね……ステキだわッ!」
「ふええ……」
 変身した。させられてしまった。しかもダンディーニからは分厚い好感触の空気が迫力と共に向けられている。フリルはしょんぼりしたりびくびく怯えたりと忙しかったが、どうも気になって仕方がない。
「それにしても、魔法少女さん同士で戦うのはいいんですか?」
「あらそこ? 大丈夫よフルフリフリル。昨今魔法少女界隈も派閥があるから問題ないわ。お互いの正義でぶつかるなんてまあまあ起きる話ですもの」
「ふえ? そうなんですか?」
「そうよ。フフフ、気になる事があるならドシドシ聞いて。先輩として応えるわ」
 それと。
 ダンディーニが腰を落とし、身構える。
「戦い方も実戦で教えられてよ」
「ふえ……」
 どうしよう。これはどう見ても逃がしてくれない流れだ。でも――と思っている間にダンディーニの両目がくわッと見開かれ、マッチョボディから突風めいた勢いで魔力が溢れ出す。
「行くわよフルフリフリル!」
「ま、待って下さ――」
「待たないわ! 私の必殺技『トキメキ☆ランページ』を喰らいなさい!!」
 どうしよう逃げなくちゃ。パニックがぐるぐる周り初めた瞬間、アヒルさんの言葉がフリルをハッとさせた。強力な魔法がくるからフリルも魔法で食い止めて。成る程――って。
「あんなのは止められませんよ!!」
「『トキメキ☆ランページ』!!」
「ふええ!?」
 咄嗟に避けた頭上からの一撃は単純だからこそ純粋に重い。――魔法少女でその表現は絶対にしないものでは? しかし敵は止まってくれない。アヒルさんも『この世界がどうなってもいいの?』と困る事を言ってくる。フリルの思考はより大慌てでぐるぐる回り――その目がダンディーニをしっかりと見る。
「どうにか頑張りますから、アヒルさんが隙をついて攻撃してください……!」
『グワグワ!』

 ひとりじゃないから、何とか頑張れる。
 そんな“魔法少女あるある”がフリルを、邪神に憑依された由梨子を救う希望の光になる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
アドリブ歓迎

な、なに……光に、身体が包まれて――
これは……魔法少女? 私が……?
驚きと戸惑いが押し寄せるけれど、身体が自然と動く
これは……邪神の力なの?
でも――そうであっても、やるべきことは変わらない

ダンディーニ……あなたのやり方では、人は救えないわ
誰かのために『怖い』ものに立ち向かう
そんな優しい少女を大変態に変えるなんて許さない
はやくその子を開放しなさい

相手の動きを見極めて距離を取りつつ
三日月の光刃に浄化の力を込めて放つわ
月よ……わたしの想いに応えて

由梨子、大丈夫よ
私たちがきっと、元のあなたに……戻してみせる



 魔法少女にされたのだとしても、猟兵達の意思は変わらない。邪神に憑依された少女の為、彼らの攻撃はダンディーニを容赦なく追い詰めていく。
 しかしダンディーニが「ふんぬッッ」という掛け声と共に立ち上がり、呼吸と姿勢を整える。鋭い目にはやたらとキラキラした光を浮かべ、魔法少女らしさ溢れるステッキをがっちりと握り締めた。
「私は諦めないわ……愛と夢と希望と世界の為ッ、絶対に全人類を魔法少女にして世界をハッピーにするのよ!!」
(「魔法少女以外の何かになりたい人も、いると思うのだけど……どうするのかしら」)
 そう考えた所で静漓は緩やかに首を振った。この邪神はそういった事情を一切考慮しないタイプだ。だからこそ今ここでと決意――したのだが。
「レッツ!」
 ダンディーニが両手の人差指と親指をくっつけ、こちらに向けていた。手ハートだ。
「メイク、」
 その手ハートになぜかキュインキュインとピンクの光が収束し、
「アアァァァァップ!!」
 雄々しさ溢れる叫び声と共にピンクの光が迸った。なに、と静漓が戸惑う一瞬の間に全身がきらりぴかりと包まれ――、
「これは……」
 純白のフリルをたっぷり抱えた、鰭めいた切れ込みが入る淡いブルーのスカート。首元で煌めく青は、中央に三日月を抱いた優美な蝶のブローチだ。――腰の後ろにも何か、と手を伸ばして探るとダンディーニがウフフと笑う。
「魔法少女の衣装にはリボンが欠かせない。大きな蝶々みたいでステキよ、新・魔法少女!」
「魔法少女? 私が……?」
 一瞬で変わった服装。なぜか手にしていた、矢のない銀月めいた弦。
 押し寄せる驚きと戸惑いは止められない。なのに静漓の体は自然と矢を番える動きをしていた。あれもこれも邪神の力なのか? 戸惑いはやっぱり薄れず――それでも、静漓の心は変わらない。
「ダンディーニ……あなたのやり方では、人は救えないわ」
「ンまッ!? そんなコトないって戦いながら教えてあげるわ! とうッ!」
 だむッ! 逞しい両足が見事な跳躍を披露する。夕日を背に黒く染まる大きなシルエットがステッキを構える。静漓は冷静に見上げたまま数歩横に移動した。岩の如き着地を躱すには、それだけでいい。
「やるわね、でも……!」
「……無駄よ。誰かのために『怖い』ものに立ち向かう。そんな優しい少女を大変態に変えるなんて許さない」
 あの少女が自分に憑依したものの見目を知らなくとも。
(「由梨子、大丈夫よ。私たちがきっと、元のあなたに……戻してみせる」)
 静漓の想いに清らかな光が寄り添った。それはたちまち三日月の光刃となって弦に添う指先に宿り、弦を弾いた瞬間に無限の光となって邪神目掛け翔けていく。ダンディーニに次の手を取らせない速さが、夕日のオレンジ色を白銀色に染め返す。
「ぬおおォォ! こ、こんなッ……私の夢が、希望がッ……!」
「はやくその子を開放しなさい」
 邪神の夢も希望も、叶えさせはしない。
 次々に降る光刃が邪神の声をかき消して――それが収まった時。そこにいたのは大変態ではなく、正義感と優しさを持った少女が1人、すやすや満足げに横たわっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年07月27日


挿絵イラスト