●予知:虐殺の罪を清算する日。
キャメロット城から離れた北方にある港湾都市、ノースポート。
地方の独立勢力として幾つもの騎士団が駐在し、幾人もの円卓の騎士を輩出してきたその地には、当然ながら百獣族を殺戮してきた過去がある。
この地を治めるミュラー辺境伯家を筆頭に、その罪を忘れずに鎮魂を続け、平和を守り続けている。
……そのノースポートの近郊、豊富な鉱山資源が取り尽くされ禿山となった荒地の一角に、その神殿はある。
かつて人類の非道の犠牲となった百獣族達の為に鎮魂の儀式を行う祭壇が置かれた、名もなき神殿だ。
ノースポートの騎士たちは毎年定められた日にここを訪れ、彼らの無念を少しでも慰めるべく祈りを捧げている。
その神殿に住むのは、ただ一人の女魔法使い。
過去の戦いで無数の百獣族を滅ぼした神算鬼謀の持ち主、メルセデス。
何百年と生き続けているか定かではない彼女は、一日と絶やすことなく百獣族への鎮魂を続けている。
――その日が来る、その瞬間まで。
「……。ああ、ついに、参られたのですね」
祭壇の前で膝を突き首を垂れていたメルセデスは、背後に現れた気配を察して立ち上がって振り向いた。
そこにいるのは、冷たい視線をした一人のオブリビオン。
そして、筆舌に尽くしがたい怨嗟と憤怒を嚙み殺している三頭の狼。
多頭の獣の下半身を持つ百獣族、スキュラの戦士である。
「魔法使いメルセデス。かつてこの地のバハムートキャバリアに、バハムートウェポンを与えた女。
我が姿、我が種族のこと。覚えておらぬとは言うまいな」
「もちろんです、百獣族スキュラ。あなたたちを滅ぼしたバハムートウェポンは……『ホロス・コーストス』。
三度目と、そして、四度目に使用して、滅ぼした種族であること。……よく覚えております」
「そう、そうだ。貴様の生み出した兵器によって、我らは塵のように焼き殺された。
決闘の約定を違え、不意の劫火によって、我らは死を迎えた。
……我らだけであれば、戦士だけであれば、まだ怒りを抑えることはできよう。
だが、貴様は、貴様らは。戦士だけで、ない。
死した戦士たちの、子を、孫を。
親を亡くし、嘆き、父祖の無念を悼み、悲しみに暮れる、ただの子らを。
戦士のいない、我らの集落を。
この、忌まわしき炎で焼き尽くしたのだ」
スキュラは怒りを抑えるように右手のランスを強く握り締め、左の手中に収める一つの弾頭を見せつける。
メルセデスは、それを見て目を見開き、そして苦しむように表情を歪ませる。
人の姿の掌で持つことができる程度の大きさのそれが、一つの都市を地上から消し去る炎を生み出すキャバリア用兵器。
メルセデスが生み出したバハムートウェポン『ホロス・コーストス』であった。
「ああ……封をした洞窟を、見つけ出したのですね」
「そうだ。騎士の守りを排し、独り隠居した貴様を殺すのは、容易い。
だが。ただただ殺すのでは、溜飲は下がらぬ。我が種族の恨みを晴らすには到底足りぬ。
ゆえに、これの在処を調べ、探し出して、貴様に叩きつけに来た」
メルセデスを苦しめるために、加虐な暴行をするでもなく、無辜の民を襲うでもなく。
メルセデス自身の象徴たる兵器によって命を奪う。それが、スキュラの考え抜き、選んだ復讐だ。
そしてそれは、メルセデスにとって望外の沙汰であった。
「……あれほどの、凄惨な地獄を生み出したのです。
裁きを受けるその日を……ずっと、お待ちしておりました。
この命で百獣族の皆様方の御魂を慰撫していただけるのであれば……何卒、何卒……」
「……ああ。自らが生み出した炎に焼かれて果てるがよい」
平伏するメルセデスに向けて、スキュラは自らの兵装に『ホロス・コーストス』を装填する。
この距離で放てば、スキュラ自身も巻き込まれることは避けられない。
それでもスキュラは一瞬の躊躇の後、引き金を引くのだった。
●招集:魔法使いに|呪《すく》いあれ。
「オブリビオンに命を狙われている魔法使いがいる。ちと手間がかかる相手なんだが、助けてやってくれねぇか?」
バハムートキャバリアで生まれ育ったグリモア猟兵。
ジェラルディン・ホワイトストーン(シャドウエルフのタイタニアキャバリア・f44830)はグリモアベースに居合わせた猟兵たちに声をかける。
ジェラルディンは、とある魔法使いがオブリビオンに殺害されるという事件を予知したのだ。
「その人の名は、メルセデス。俺の地元のノースポートって辺境に住んでる若い見た目の婆さんでな。
大昔に百獣族との戦いでとんでもねぇ戦果……もとい、戦禍をもたらしたって言われてて、その所業を恥じて一人鎮魂の儀式を行う祭壇がある神殿で余生を送ってるんだ。
昨今百獣族がオブリビオンとして蘇って来てる話を聞いて、変な考えを起こすんじゃないかって思ってたんだが……どうもその通り、罪滅ぼしのつもりか因縁のある百獣族を迎え入れて、殺されようとしてるらしいんだ」
ジェラルディンがグリモアを使い、その予知を見せる。
そこは燃え滾る溶岩だけが映し出されている。
神殿があった場所がオブリビオンの手によって魔法使い諸共焼き滅ぼされ、石も土もすべてが燃え尽きたのだ。
「この光景を生み出すのが、メルセデスが造ったっていうバハムートウェポン『ホロス・コーストス』。
本来は超遠距離から射出して敵陣を焼却するって代物らしいが……回避とか防御とか、そういう概念も含めて全部焼き尽くすとかいうとんでもねぇ呪い染みた兵器だそうだ。
こいつをオブリビオンとして復活した百獣族スキュラの一人が見つけ出して、メルセデスに浴びせ返すってのが今回の事件だ。
それを未然に防いでほしい」
魔法使いメルセデスはずっと祭壇のある神殿にいるため、接触する事は難しくない。
彼女は、百獣族の手で殺されることを甘んじて受け入れようとしている。
何かしら接触の仕方によって、考えを改めてもらわなければ守ることは難しいだろう。
「噂によると、バハムートウェポンは一つだけじゃないらしい。
安全装置の意味も込めて、互いに対抗しうるバハムートウェポンがあるって噂だ。
それがあればスキュラの暴挙を食い止める切り札になるかもしれねぇ。
メルセデスを改心させることができたら、保管してる場所を教えてもらえるかもな」
スキュラも仇敵を前にして、バハムートウェポンが使えなくなったからと言って引き下がることは無いだろう。
それでもバハムートウェポンを打ち消すことができれば、スキュラと真っ向から戦うことができる。
また、戦いは避けられないにしろ、会話に耳を傾ける余裕が生じるかもしれない。
メルセデスとスキュラの間にある遺恨を、晴らすことができるかもしれない。
ジェラルディンはグリモアを起動して、メルセデスの居る神殿に通じるゲートを展開する。
「……メルセデスは、神殿の婆さんは昔っから陰鬱な人だけど、ずっと苦しんで生きてきた。
神罰が下るのを待ってるとか言ってたこともある。死んで解放されたいって、願ってるのかもしれねぇ。
けど、過去に非道な事をしたからって、未来永劫苦しむってのは、俺は好きじゃない。
俺はグリモアでゲートを維持しなきゃいけないから、現地には行けない……だから、頼む」
そう言って、ジェラルディンは協力してくれる猟兵たちを送り出すのだった。
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回の舞台はバハムートキャバリア。辺境にある港湾都市ノースポート近郊です。
オブリビオンに命を狙われている魔法使いを助けることが目的です。
第一章:百獣族に狙われている魔法使いメルセデスに接触し、事情を尋ねてください。
彼女はかつて人族の参謀として非道な作戦を幾つも成功させてきたという負い目から隠遁しており、虐殺された百獣族の鎮魂のために祭壇で余生を過ごしています。
ただ事情を説明しただけでは、迫るオブリビオンの手で殺されることを甘んじて受け入れようとするでしょう。
ここでの接触内容が、第二章に影響します。
第二章:第一章の接触の結果によって分岐します。
メルセデスからバハムートウェポンに関する情報を聞き出した場合は、百獣族の持つバハムートウェポンに対抗しうるバハムートウェポンを封印・隠匿している場所を教えてもらえます。
条件を満たして目的地に至った場合、バハムートウェポンを手に入れることができます(第三章のプレイングボーナスになります)。
第一章でメルセデスからバハムートウェポンに関する情報を聞き出せなかった場合、第三章でのプレイングボーナスはなくなります。
第三章:『獣騎スキュラ』との戦闘です。
一族の仇であるメルセデスの命を狙い、バハムートウェポンを携えた百獣族スキュラが襲来します。
プレイングボーナスは、『第二章で手に入れたバハムートウェポンにより、スキュラのバハムートウェポンの効果を打ち消すこと』です。
バハムートウェポンの効果を打ち消すことができれば、真っ向勝負を挑むことができます。
状況によっては、聖なる決闘に応じるでしょう。
登場人物:メルセデス。無限の寿命を有する熟練の魔法使い。妙齢の女性の姿をしているが、実際の年齢は不詳。
ノースポート地方にて、妖精たちと共に数多くのバハムートキャバリアとバハムートウェポンを造り出した英雄だが、その惨状を目の当たりにして自責の念に苛まれ、以来独り祭壇で鎮魂の祈りを続けている。
風の噂で百獣族が蘇ってきていると耳にして、ようやく罰を受けることができると前向きになった。
オープニング公開後、断章を公開します。
プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『鎮魂の儀式』
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POW : 舞踊や武芸を奉納する
SPD : 灯火や花を祭壇に捧げる
WIZ : 死者の魂の安寧を祈る
イラスト:ハルにん
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:罪深きメルセデスの回顧。
魔法使いメルセデスは若輩者であった。
年若き頃から才気に溢れ、師事した大魔法使いから数多くの魔法を会得したものの、それが引き起こす結果に思い馳せる深慮に欠けていた。
だからこそ遥かな昔。
人々が百獣族に対抗するためにバハムートを捏造した時に、吾も続くぞと義憤に駆られて立ち上がった。
制止する師の言葉を怯懦と見なして一顧だにせず、同じ熱意を抱いた妖精族たちと力を合わせて数多の兵器を造り上げたのだ。
「吾は、あまりにも浅慮だ」
整備したバハムートキャバリアが華々しく活躍する度に。考案したバハムートウェポンが獣騎を撃破する度に。
メルセデスは喝采を浴びた。
脆弱な人類も百獣族と戦えるのだ、勝てるのだと、熱気の渦中でもて囃された。
日々増えていく仲間たちに称賛され続けることで、メルセデスは法悦に浸っていた。
その無邪気な喜びが反転したのは、連戦連勝を続けていくうちに生じ出した歪みを直視した時だった。
ある日のことだ。
メルセデスの信頼する騎士が作戦通りに百獣族を倒した後、用心のためにと敵の陣地に『ホロス・コーストス』を落としたと聞いた。
『ホロス・コーストス』はメルセデスが戦争後期に造り出したバハムートウェポンであり、ひとたび放てば必ず敵を葬る傑作としての自負があった。
戦場跡でないならば安全に経過を観察できるのではと思い至り、メルセデスは一人で現地に赴いた。
そこで初めて、自らの罪科を目の当たりにした。
騎士が嘯いていた敵陣とは、戦えない女子供しかいない集落だったことを知ったのだ。
「吾は、あまりにも罪深い」
それからメルセデスは、見ようともとしていなかった非道の数々を調べて回った。
聖なる決闘の定めを無視して戦う騎士が多くいることを知った。
バハムートキャバリアを用いて変形もできない無抵抗な民まで一方的に殺戮していることを知った。
家族を愛し、友と笑い合う、信頼する仲間たちが……百獣族が相手であれば無慈悲に蹂躙していることを、知った。
善良さと悪逆性が、入り混じっていることを知った。
それからメルセデスは兵器を造ることができなくなった。
かろうじて、既存のバハムートウェポンに対抗しうるバハムートウェポンを造り上げたものの、それを誰に託すこともできず、俯いて過ごすことしかできなかった。
新しく信じた相手が虐殺をしないことを、信じることが出来なくなっていた。
「吾は、もう。神罰を待つほかに……ない」
戦えなくなったメルセデスを、仲間たちは責めることはなかった。
疲れたのだろうと慰め、心優しいのねと慈しみ、後は任せろと笑っていた。
それが一層メルセデスを苦しめた。
やめてくれ、殺さないでくれ。そう思っているうちに百獣族は絶滅した。
許してくれ、助けてくれ。そう請っているうちに定命の友はみな天寿を全うした。
殺してくれ、罰してくれ。そう願っていると、滅びた筈の百獣族が蘇り人類を断罪すべく戦っているという話を聞いた。
「嗚呼……。吾は、ようやく。|死ねる《寝れる》のですね」
メルセデスは百年以上眠ることができずにいた。
百年以上の間、いつも気絶するまで鎮魂だけを続けていた。
眼下の隈はとても厚く、瞳孔の開閉も一定していない。
彼女の精神は極限状態にあり……著しく冷静さを欠いている。
彼女は今、ようやく眠りにつけるのだと小さく微笑んでいた。
ランスロット・グレイブロア
…罪は、鋼の咎はあるのだろうな
生存競争とは言え、罪無き非戦闘員すら蹂躙した…間接的に関与したその罪悪感は計り知れないだろう
けれども、それでは駄目なんだ
死ぬ事も苦しむ事も、彼らに対する贖いには届かない
メルセデス
今、バハムートキャバリアの人類は騎士道を以て犯した『鋼の咎』に向き合っている
どれだけ取り返しがつかなくても、君はまだ生きている
その智謀と才覚を悔いるのでは無く、人類と百獣族の未来の為に使ってみてはどうだ
君の起源は、義憤だった筈だ
どれだけの罪を犯そうとも、その原初の想いに嘘をついては駄目だから
後悔と罪悪感に浸るだけではなく、考える自分自身を以て…他にも償える方法を、見つけ出せるんじゃないか?
●姫騎士は悪役を任ずる。
「……罪は、鋼の咎はあるのだろうな」
「……あなたは?」
「我が名はランスロット・グレイブロア。当代の円卓の騎士だ、メルセデスよ」
先んじて魔法使いメルセデスのもとに姿を見せたのは、バハムートキャバリアを駆る円卓の騎士。
ランスロット・グレイブロア(姫騎士は悪役に思いを馳せる・f44775)だ。
「生存競争とは言え、罪無き非戦闘員すら蹂躙した……間接的に関与したその罪悪感は計り知れないだろう」
「…………」
ランスロットの指摘に、メルセデスが顔を俯かせて黙する。
ランスロットは、百獣族が滅びたのは生存戦争による物だと考えている。
殲滅しなければ人間に尊厳と生命が無かったが故に。
しかし、それは負い目がないということではない。
|人間《メルセデス》は鋼の咎を抱き続け、背負い続けているのだ。
「けれども、それでは駄目なんだ。死ぬ事も苦しむ事も、彼らに対する贖いには届かない」
「……では吾は……どうしろと、言うのですか……」
ランスロットは肩を震わせるメルセデスの前に立ち、現在から目を背けているその姿に言葉を投げかける。
「メルセデス。
今、バハムートキャバリアの人類は騎士道を以て犯した『鋼の咎』に向き合っている。
騎士も、民も、妖精も、半妖精だって、皆。蘇った百獣族たちと対峙している。
そして……どれだけ取り返しがつかなくても、君はまだ生きている」
ランスロットは膝を折ってメルセデスと顔の高さを揃える。
下を向いて唇をかみしめるメルセデスに、まだできることはあるはずだと。
これからのことを考えるよう、言葉を紡ぐ。
「その智謀と才覚を悔いるのでは無く、人類と百獣族の未来の為に使ってみてはどうだ。
君の起源は、義憤だった筈だ。
どれだけの罪を犯そうとも、その原初の想いに嘘をついては駄目だから」
「……それは……」
ランスロットの言葉を受けたメルセデスの瞳が揺らぐ。
そこにある意志、原初の想いがまだ消えていないことを見定めて、ランスロットはユーベルコードを発動し、堂々と宣言する。
「我が名はランスロット。『悪役』を担う円卓の騎士。
嘆く者よ、我が剣の一閃を見るが良い。ここに誓おう。
我が剣の煌めきは、全ての奪われし者の涙を拭う為。再構築蘇生の果てでも例外は無い」
それは奪われた者の嘆きに応じ、その慚愧を晴らすに基づく誓いを立てる誓約。
《慚愧の慟哭よ、晴らせ我が誓約(アロンダイトロア・オールハード・ゲットオーバー)》。
メルセデスに向けて、そしてこの先に現れるだろうスキュラの百獣族に向けて。
ランスロットは誓いを立てる。
「後悔と罪悪感に浸るだけではなく、考える自分自身を以て……他にも償える方法を、見つけ出せるんじゃないか?」
「……償える方法、ですか」
ランスロットは手を差し伸べることはなく、ただ毅然と見つめている。
そんな姫騎士の姿を眩しそうに見つめて、メルセデスは小さく首を縦に振るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携○
▼心情
バハムートウェポンか
未だ名の知れないキャリブルノスの真の剣ももしや関係が?
いや、今は想像を働かせる時ではないな
▼説得
メルセデスに接触しまずは事情を聞こう
その上で復讐者として生きたブレイド世界の自身の視点で説得を試みる
復讐は何も生まないが奪われた側が未来を取り戻すために必要な儀式だと思う
けれどそれは仇に対しての正しい復讐であればの話だ
あなたは兵器を生み出した元凶かもしれないが
結局直接手を下した仇でなければ真の復讐は果たされない
あなたの死は百獣族の鎮魂にはなりえず、その魂の虚を広げるだけになるだろう
ならば責任を果たすべきだ
元凶たる兵器を止める事こそがあなただけが出来る贖いとなる
●異界より渡り来たる剣士。
「バハムートウェポンか」
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)はケルベロスディバイドの特務機関DIVIDEに所属するケルベロスである。
しかし如何なる因果か。彼はクロムキャバリアにて発見された『巨神』、人造竜騎にして巨神たる剣、剣の騎神『キャリブルヌス』の操者となり、数多くの戦場を翔けている。
そんなハルは、今回の事件で顕在化したバハムートウェポンという兵器に関心を寄せているようだ。
「未だ名の知れないキャリブルノスの真の剣ももしや関係が?
――いや、今は想像を働かせる時ではないな」
バハムートウェポンと『キャリブルヌス』との間に何かしら|縁《えにし》があるのかもしれないと思考を巡らせるハルであったが、すぐさまその考えを片隅に置いた。
思索に耽る時間は後に回して、まずは事件を防ぐことを念頭に置く。
ハルは魔法使いメルセデスに接触して、事情を尋ねることにした。
「あなたがメルセデスだな」
「あなたは……異界の、騎士の方ですか」
「ケルベロスの刀剣使いハルだ。まずは話を聞かせてもらいたい」
|バハムートキャバリア《この世界》の住民ではない相手であれば、告解の口も軽くなるだろう。
メルセデスは長き人生のうちに抱え続けてきた呪いのような想いを、ハルに語った。
メルセデスの身の上を聴いて、ハルは復讐者として生きたブレイド世界の自身の視点で説得を試みる。
「復讐は何も生まないが奪われた側が未来を取り戻すために必要な儀式だと思う。
けれどそれは仇に対しての正しい復讐であればの話だ」
「……正しい、復讐……ですか?」
「そうだ。あなたは兵器を生み出した元凶かもしれないが。
結局、直接手を下した仇でなければ真の復讐は果たされない。
あなたの死は百獣族の鎮魂にはなりえず、その魂の虚を広げるだけになるだろう」
復讐に、報復に正否が問われるのかと、メルセデスは虚を突かれた様子でハルを見つめる。
殺戮の元凶となった自分が殺されても、百獣族の無念は晴れる訳ではない。
彼らを殺した兵器の、その引き金を引いた騎士そのものが、もういなくなっているのだから。
オブリビオンとして蘇ったスキュラの仇は、過去にしか残っていないのだから。
「そん、な……だが、彼らは、もう……それでは、それではどう、しろと……!」
「ならば責任を果たすべきだ」
ハルはしっかりとメルセデスと目を合わせる。
揺らぐことなく真っ直ぐに、心の奥を見据える視線をもって、メルセデスへハル自身の視点を告げる。
「かの百獣族が見つけ出したバハムートウェポンが、二度と惨劇を引き起こさないように。
元凶たる兵器を止める事こそがあなただけが出来る贖いとなる」
「バハムートウェポンを……再び、使わせないように……」
メルセデスは目線を泳がせて、考えを巡らせる。
贖いを果たす覚悟を固めようと、黙考するその姿をハルはじっと待っている。
長き停滞の末に、この魔法使いは必ず立ち上がるはずだと、信じて待ち……そして。
「……嗚呼。そう、であれば……。吾は……この身の咎の、責務を……果たします。
バハムートウェポンを、『ホロス・コーストス』を、二度も燃え上がらせぬように……止めます」
「わかった。ならば俺たちが助けになろう」
立ち上がったメルセデスを助けるために、ハルは刃を振るうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘルゲ・ルンドグレン
例え望んでいるとしても黙って殺されるのを見過ごすわけにはいかないわ!
鋼の咎を背負う今を生きる騎士として、ね!
祭壇に向かったらメルセデスに挨拶して、花と祈りを百獣族に静かに捧げます
その後に彼女に事情を説明
過去を悔いているのは知っています
それでも若輩のアタシは魔法使いの先達に言わせてもらうわ!
貴女はその罪を贖うために生きなければならない!
百獣族の怒りは正当でも、その断罪が行き着く先は人が犯した虐殺と同じ!
そうなったらまた歴史の繰り返し……
だから、苦しくても眠れなくなっても!
今を生きる人は止めなければならないの!
お願い、力を貸して!
滅ぼすためでなく、守るためにバハムートウェポンの力を揮う時が来たの!
ザビーネ・ハインケル
今にも死にたがってる目をしてるが…これが名高い魔法使いのメルセデスとはな
死ぬのはてめぇの勝手だ
けどな、命を投げ出すってのはただの責任放棄だ
婆さんが造った兵器で確かに多くが死んだ
それは事実だ
でもよ…死んだ奴らが望むのは婆さんの死か?
せめて罪を背負って、どう生きるかってとこじゃねぇのか?
『生きる価値』があるってんなら、オレらはそれを背負って戦うぜ
……だから、オレらに託してくれねぇか?
スキュラが使うバハムートウェポンに対向する術をだ
それで今度は守らせてくれ
これは罪滅ぼしなんかじゃねぇ
『もう誰も死なせねぇ』って、そう誓って生きる覚悟だ
……婆さんの『眠る』決意が変わんねぇなら、それだけでも見届けてくれよ
●奇跡の結晶たちの意志。
多数の騎士たちを代々輩出してきた名門の一族の中で、先祖返りとして半妖精の力に目覚めた魔法使いの騎士。
大魔法使いを目指す者、ヘルゲ・ルンドグレン(魔導騎士・f44787)は祭壇に向かうとメルセデスに挨拶する。
「はじめまして、魔法使いメルセデス。アタシはヘルゲ・ルンドグレン。
お話はありますが……まず、一時の祈りを捧げさせてください」
「……ええ。どうぞ」
ヘルゲは鎮魂の祭壇に花を置き、メルセデスの隣で静かに祈りを捧げる。
過去に死した百獣族の魂の安寧を願い……しばらくしてから、メルセデスに向き直る。
そして此度の事情を簡潔に説明して、事態を把握したメルセデスに告げる。
「……オブリビオン。蘇った、百獣族……やはり実在するのですね」
「あなたが過去を悔いているのは知っています。
それでも若輩のアタシは! 魔法使いの先達に言わせてもらうわ!」
百獣族が復讐に来るという話を聞き諦観の澱みを感じさせるメルセデスに向けて、ヘルゲは毅然と宣言する。
それは、ヘルゲ自身の意志による言葉である。
「貴女はその罪を贖うために生きなければならない!
百獣族の怒りは正当でも、その断罪が行き着く先は人が犯した虐殺と同じ!
そうなったらまた歴史の繰り返し……だから、苦しくても眠れなくなっても!
今を生きる人は止めなければならないの!」
「っ……だが……吾は……」
「今にも死にたがってる目をしてるが……これが名高い魔法使いのメルセデスとはな」
ヘルゲの真っ直ぐな言葉に感情を揺さぶられていると、祭壇にもう一人の猟兵が現れる。
彼女こそ、『街道の騎士団』を名乗る荒くれ者の頭目。
重税に喘ぐ領民から税を搾りに搾っていた悪徳領主を成敗する半妖精騎士。
ザビーネ・ハインケル(Knights of the Road・f44761)だ。
「死ぬのはてめぇの勝手だ。けどな、命を投げ出すってのはただの責任放棄だ。
婆さんが造った兵器で確かに多くが死んだ。それは事実だ。
でもよ……死んだ奴らが望むのは婆さんの死か?
せめて罪を背負って、どう生きるかってとこじゃねぇのか?」
「……吾に、生きろと。生きなければ、ならないと……あなたたちはそう仰るのですね……」
「例えメルセデスが死を望んでいるとしても、黙って殺されるのを見過ごすわけにはいかないわ!
アタシが、アタシたちが鋼の咎を背負う今を生きる騎士として、ね!」
強い意志を込めた、二人の半妖精の騎士の言葉に。
慄くように震えていたメルセデスの身体から、緊張が解ける。
メルセデスの肩から力が抜かれた様子を見て、ザビーネは小さく笑みを溢す。
そして目的である情報を聞き出しに入る。
「もし、お前さんに『生きる価値』があるってんなら、オレらはそれを背負って戦うぜ。
……だから、オレらに託してくれねぇか?」
「……何を、託すというのですか……」
すでにメルセデスも、十分に分かっている。それでも自分から告げることを恐れているのだろう。
自分から提供するという事実に、再び心が圧し折れることを恐れているのだろう。
それを察したか、ザビーネとヘルゲは単刀直入に頼み込む。
「スキュラが使うバハムートウェポンに対向する術をだ。それで今度は守らせてくれ」
「お願い、力を貸してメルセデス! 滅ぼすためでなく、守るためにバハムートウェポンの力を揮う時が来たの!」
「……嗚呼。……そう。……そう、ですか」
天井を仰ぎ、メルセデスは逡巡するように瞑目する。
わずか数秒の沈黙を経て、メルセデスは改めて二人の猟兵に視線を戻す。
その眼は未だ揺れているが……若い騎士たちの言葉を受けて、僅かながら信じる覚悟を取り戻したように見える。
「……わかり、ました。『ホロス・コーストス』に対抗しうるバハムートウェポン。
『アポリト・ミデン』を封じた洞窟を、教えましょう」
「! ありがとう、メルセデス! 絶対に、守ってみせるよ!」
「これは罪滅ぼしなんかじゃねぇ。『もう誰も死なせねぇ』って、そう誓って生きる覚悟だ。
……婆さんの『眠る』決意が変わんねぇなら、それだけでも見届けてくれよ」
ヘルゲとザビーネ、そしてこの場に参じた他の猟兵たちも、皆。
そのバハムートウェポン『アポリト・ミデン』を託されることになった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杓原・潤
うーん、酷い話。
でもうるう、死んでお詫びをって好きじゃない!
とりあえず出会い頭にうるうの魔法でヒール!
これでちょっとくらいは元気にしてあげられないかな?
特に寝不足の頭とかを。
さてと。
今から小娘が分かったような口を利くけど、最後まで聞いてね。
過ちを償おうって言うんなら、二度と同じ事を起こさないように頑張らなきゃ!
その為に皆は騎士道とか色々やってるんだよねぇ?
せっかく長生きしてるんだから、昔の非道を語るとか非道な兵器が作られそうになるのを止める努力をするとか……生きてやるべき事が色々あるでしょ?
あると思ったらもう一つの武器の場所、教えて欲しいな。
あ、ついでにいい感じの魔法とか教えてくれてもいいよ!
小鳥遊・トト
えーっと、えーっと。
死んじゃうのを黙って見過ごしたくはないんですけど、メルセデスさんの話が全く理解出来ないわけじゃなくて。ボクなんかがどう説得したらいいか分からなくて。
と、とりあえず1度寝ましょう!間に合うような時間で起こしますので。
じゃあ、膝枕しますっ!
メルセデスさんを無理やり膝の上に押さえつけて子守唄を歌おうとします。
膝枕の結果はどうあれ、メルセデスさんに1度寝てもらわないとヤバい気がする恐怖心でバロックレギオンを召喚。眠り粉を散布します。
※アレンジ歓迎
●少女たちによる、安らかな献身。
「うーん、酷い話。でもうるう、死んでお詫びをって好きじゃない! ということで」
UDCアースの中学生であり、とある|きっかけ《サメックス断章》で『秘められし魔力』が開花した本物の魔法使い。
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は、出会い頭に魔法使いメルセデスへユーベルコードを放った。
「元気出して! ふーっ♪」
「えっ……!?」
突然の行為に反応が遅れたメルセデスに命中したのは、癒やしの水泡。
対象を高速治療するが、自身は疲労するうるかの魔法《Heal You!(ヒール・ユー)》だ。
寝不足のメルセデスを癒して、頭の巡りを良くしようという気遣いであろう。
「これでちょっとくらいは元気にしてあげられないかな?」
「あ……ああ、……楽になった気が、します……?」
「さてと。今から小娘が分かったような口を利くけど、最後まで聞いてね」
突然の癒しに困惑するメルセデスに、潤は立て板に水を流す勢いで話し始める。
「過ちを償おうって言うんなら、二度と同じ事を起こさないように頑張らなきゃ! その為に皆は騎士道とか色々やってるんだよねぇ?
せっかく長生きしてるんだから、昔の非道を語るとか非道な兵器が作られそうになるのを止める努力をするとか……生きてやるべき事が色々あるでしょ?
あると思ったらもう一つの武器の場所、教えて欲しいな」
「え。えっと、それは、あるには、あるけれど……」
「あ、ついでにいい感じの魔法とか教えてくれてもいいよ!」
「あ、えっ、魔法……?」
百年単位の|引きこもり《メルセデス》には、生意気少女の元気な熱量は眩しいようだ。
潤の怒涛の問いかけにたじろぎ狼狽しているメルセデスへ、追い打ちをかけるようにバロックメイカーの手が伸びる。
「えーっと、えーっと。死んじゃうのを黙って見過ごしたくはないんですけど」
アリスラビリンスからの帰還者の残留思念がリリス化したと思われる、シルバーレイン出身のサキュバス。
小鳥遊・トト(|愛《快楽》も知らず・f39451)のエントリーだ。
トトは自信なさげな様子で、躊躇いがちにメルセデスに歩み寄る。
「メルセデスさんの話が全く理解出来ないわけじゃなくて。ボクなんかがどう説得したらいいか分からなくて、だからその、と、とりあえず一度寝ましょう!」
「えっ、えっ……?」
そしてトトはおそるおそるメルセデスの頭を掴むと、無理やり膝の上に押さえつけて横たえる。
困惑するメルセデスを眠らせようと、子守唄を歌い始める。
「じゃあ、膝枕しますっ! 間に合うような時間で起こしますので!」
「あ……いや、ですが、吾はもう何年も眠れずにいて、ですね……」
「おお、ナイス判断だよトトちゃん! うるうも魔法でヒールがんばるよ!」
《Heal You!》を使用すれば潤は披露する。
更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能になるのだ。
そして、メルセデスへトドメを刺すべく。トトのユーベルコードが炸裂する。
「あ……」
トトのユーベルコード《ソウアップ・バロック》。
トトの、メルセデスさんに一度寝てもらわないとヤバい気がするという恐怖心に合わせて増殖するバロックレギオンが召喚されると、辺りに眠り粉を散布する。
潤の癒しとトトの歌声、そしてバロックレギオンの状態異常のコンボを受けて、心身ともに損なっていたメルセデスが抵抗できるはずもない。
何年もの間ギンギンに目を開けていたメルセデスの瞼がうつらうつらと落ちていく。
長い年月を経て、メルセデスはようやく憩うことができたのだ。
「……すぅ……すぅ……」
「……!」「……」
安らかな寝顔のメルセデスを見つめて、潤とトトは静かにハイタッチを交わす。
その後。
潤とトトの献身にて体調と精神状態が改善されたメルセデスは、猟兵たちにバハムートウェポンを封印した洞窟の場所を教えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
印旛院・ラビニア
メルセデスさんにどう声をかけたらいいか
『なら、俺様に任せろ』
オブリビオンマシン『劫禍』が人型になりメルセデスに語りかける
『百獣族は滅ぶべくして滅んだ。貴様が気にすることではない。ホロス・コーストスがなくとも、早かれ遅かれ滅んでいただろう』
「ちょっと劫禍?言い方とかさ……」
『決闘に従わぬ無法者に対応できぬ柔軟性のなさ、思考の欠如。自分たちが最強の種族であるとの驕りもあったのだろう。クロムキャバリアであれば人類の強かさは賞賛されても文句を言われる筋合いはない』
仲間でない相手なら反論もぶつかり合いもしやすいだろう
『託すに信用できないならいっそ壊してしまえ。負い目を感じているのならな。それを見届けろ』
●蘇った騎士の諫言。
「う~ん、メルセデスさんにどう声をかけたらいいか」
印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)は遺伝子番号が焼却したゲームプレイヤーである。
いろいろあって偽造遺伝子番号を生み出すことで統制機構の手をやり過ごし生き延びているが、基本ヘタレで調子に乗るとイキる性格のウサギさんだ。
そんなラビニアがどのようにメルセデスと接触しようか悩んでいると、これまたいろいろあってラビニアに惚れ込んだ邪悪なオブリビオンマシン『|劫禍《ごうか》』が代わりに前に出る。
『なら、俺様に任せろ』
「あ、劫禍……それじゃあ、まあ、うん。よろしく」
『フッ。ラビ子の願いだ。ここは聞いてやろう』
「こいつ、自分で言い出しておいて……」
《豪華なる協力者(スパダリサポーター・ゴウカクン)》。
他者からの命令を承諾すると人の姿となったオブリビオンマシン『劫禍』が出現し、命令の完遂か24時間後まで全技能が「100レベル」になるユーベルコードだ。
人型になった『劫禍』が卓越した話術技能を身に宿し、メルセデスに語りかける。
『百獣族は滅ぶべくして滅んだ。貴様が気にすることではない。
ホロス・コーストスがなくとも、早かれ遅かれ滅んでいただろう』
「っ……」
「ちょっと劫禍? 言い方とかさ……」
バッサリと人の心に切り込む『劫禍』であるが、これは彼の意図だ。
仲間でない相手なら反論もぶつかり合いもしやすいだろう。
落ち込んで諦めているメルセデスに、激情を思い出させようとしているのだ。
『決闘に従わぬ無法者に対応できぬ柔軟性のなさ、思考の欠如。
自分たちが最強の種族であるとの驕りもあったのだろう。
暴力で権威を決していた連中が、暴力で奪われただけのことだ。
弱肉強食と割り切ればいいだろう』
「貴殿に……! 君たちに、何がわかるというのだ!
相手の高潔さを利用して、定められていない非道を繰り返した!
その悪辣さを、割り切ることなど……開き直ることなど……! 許されない!」
そして『劫禍』のもくろみ通りに、メルセデスは感情的になり噛みついて来る。
自分たちの所業を正当化する言葉を、受け入れる訳には行かないと思っているのだろう。
加害者であるメルセデスとしては、百獣族を罵ることを認めることはできないのだろう。
自分が悪いのだと、そう思わなければ耐えられないのだろう。
胸に掴みかかる細い女の敵意を受けて、しかし『劫禍』は怯むことは無い。
『クロムキャバリアであれば人類の強かさは賞賛されても文句を言われる筋合いはない。
敗北して奪われることを厭うなら、なりふり構わず勝利を目指せばよかった。
かつての貴様等のように、今蘇ってきている|百獣族《オブリビオン》のようにな』
「それはッ……!」
『ああ、百獣族等は呪いをかけるとかいろいろしているそうじゃないか。
あいつらも立派に学んで活かそうとしている訳だ。貴様の遺した兵器とやらも存分に使ってくれるだろうさ』
「違っ! そんなことは、……いや……そう、……だな……」
『劫禍』の説得に、メルセデスは思考を巡らせる。
猟兵たちとの接触で解された知性で、バハムートウェポンを手にした百獣族が引き起こすだろう光景を想像している。
自分の罪過が赦されないことであっても、これから起きる惨劇を見過ごす理由にはならないのだと、理解したようだ。
『……文句があるなら止めてやれ。託すに信用できないならいっそ壊してしまえ。負い目を感じているのならな』
「……ああ。彼らに、吾等の所業を繰り返させるのは……決して、善い振る舞いではない。
……わかりました、異界のキャバリア。貴方たち猟兵に、バハムートウェポンの対処を……頼みます」
『ああ。それを見届けろ』
心を動かされたメルセデスは、猟兵たちに協力することを約束する。
斯くして、『ホロス・コーストス』に対抗しうるバハムートウェポン。
『アポリト・ミデン』を封じた洞窟へと案内してもらえることとなったのだ。
『どうだラビ子! 俺様に惚れ直すといい!』
「いや、べつに……」
その後、『劫禍』はドヤ顔でラビニアに迫るもののけんもほろろに受け流される。
成果を上げたは事実であるが、『劫禍』のできる男アピールがクドいので正直に褒めたくなくなるラビニアであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『洞窟探検』
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POW : 灯りを掲げ、ひたすら前進する
SPD : 周囲の音や気配に気を配る
WIZ : 魔法を使い、危険から身を守る
イラスト:みささぎ かなめ
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:バハムートウェポン『アポリト・ミデン』
祭壇は、とある荒地の禿山にある。
その山はかつては鉱山として運用されていたため多くの坑道が作られており、そのうちのいくつかをメルセデスはバハムートウェポンを封じる洞窟として活用していた。
数多くある穴の入り組んだ道のどこにあるのか、何も知らなければ探し出すことは難しいだろう。
猟兵たちとの交流を経て幾分かスッキリとした表情のメルセデスは、滑らかな動きで猟兵たちを案内しながらバハムートウェポンに関する情報を説明する。
「『ホロス・コーストス』は焼却に特化した魔術兵装になります。
装弾という工程を踏んだ後、引き金を引いて射出される手順を行うことで安全機構が解除され、内部の術式が分解を開始する機能があります。
そう、構築ではなく分解だ。ゆえに魔術の発動を阻害する行為も、起爆を早めることにしかならない。
着弾して術式が破損するか、一定の秒数を経過して分解が完了した時点で、仕込まれていた術式が解放される。
それは、自動的に射程範囲内に存在するすべてを焼き尽くすものだ。
……すべてというのは誇張ではない。生物は当然のこと、金属や液体も、空気も魔力も大地すら、須らく燃やす。
放たれた時点で範囲内にいたものは、逃れられない。防御も回避も間に合わない。
たとえ即座に地の果てまで転移しようと、火炎は移動の軌跡を辿って追い続ける。被害が増えるだけだ。
あらゆる攻撃を防ぐ結界を展開しようと、結界の境界を端から焼いて飲み込む。焼かれる時間が長引くだけだ。
誤射は決して許されない、意味通りに必ず殺す兵装だ。……です」
空を翔ける獣騎が風を切る流れにすら、『ホロス・コーストス』の火は伸びる。
狙われた現場にいる時点で、『ホロス・コーストス』に焼かれる以外の選択はすべて焼却されるのだ。
超遠距離狙撃型バハムートキャバリアによって運用されたこの兵器は、聖なる決闘のために戦場へ足を運んだ百獣族を一方的に火葬してきた。
姿を見せることなく、名乗りを上げることもなく、不意打ちの一撃で焼き殺してきたのだ。
「『アポリト・ミデン』は、その対抗手段として開発したバハムートウェポンです。
絶対の冷気と名を冠してはいますが、その実態は強制停止術式です。
稼働した範囲内における魔力の動きを、変化を停止させる。起動はもちろん、分解も破損すらも、だ。
もっとも、この術式は特定のマナにのみ作用するようにしている。
さもなければ無差別に、あらゆる『魔』を停止させる兵器になるからだ。
……調整によっては、妖精や精霊といった、魔力を糧にしている存在を、永劫に停止させることができるからだ。……です」
封印している『アポリト・ミデン』は、『ホロス・コーストス』の術式にのみ作用するよう設計されている。
獣騎スキュラが迫った際に稼働させれば、その手にある『ホロス・コーストス』をどうしようと焼却は発生しなくなるだろう。
スキュラのバハムートウェポンの効果を打ち消すことができれば、スキュラと真っ向勝負をすることができる。
「……『アポリト・ミデン』は、この先です。罠や番犬もありません。
ここまでの道程と、この先の狭さが障害なのです」
メルセデスが指示した穴は、小さく狭い。
高さと幅が2mに満たないその道は、人間でも身をかがめなければ進むことは難しい。
当然キャバリアや獣騎に変形した百獣族では、踏み入ることもできない。
ただ、それ以外は特に危険もない。
……まあ、暴れれば崩落するかもしれないが、そんなことは起きないだろう。
「進んだ先に、棺を安置しております。その中に、バハムートウェポンはあります。
……棺の封は、吾が解かねばなりません。それが吾の、責任ですから」
メルセデスが先導する中、猟兵たちは暗く狭い洞窟の中に続いて行く。
……辿り着くまでの間に猶予はある。
メルセデスへの問いかけやバハムートウェポンの仕様確認、スキュラへの対応を検討するなど、思い思いの時を過ごそう。
※条件を達成したため、、バハムートウェポンを手に入れることができます。
こちらが第三章のプレイングボーナスになりますので、途中参加を予定されている方はご注意ください。
ヘルゲ・ルンドグレン
なるほど、話を聞いていた時に思ったけれど、貴女の作ったバハムートウェポンは魔術兵装だったのね……!
うーん、あんな風に啖呵を切った手前、ちょっと不謹慎だけれど魔法使いとしては、その理論や存在には興味を引かれるわ!
バハムートウェポンの魔術理論に興味を示しつつ、メルセデスさんからバハムートウェポンについての話を聞きましょう。
ふんふん、この狭い洞窟に封じられているのだからそのアポリト・ミデンもサイズとしては小型、なのかしら。
人造竜騎ではなくても使えそうなのは取り回しが良そうですけれど。
ああ、あと範囲内の魔力に干渉する、とのことだけどどんな形状をしているの?
ランスロット・グレイブロア
成程、絶対焼却兵器……これは凶悪だ
分解をトリガーとしている以上止めるには破損ではダメ、やるなら『完全抹消』か『停止の理』しか難しい、と……
しかし、私はバハムートキャバリアの使い手だが……どちらかというと、生身で戦う事が多いな
メルセデスと共に孔に潜りながら、ふとこんなふうに問いかける
私は感情と流体をUCとする事が多いのだが、生身の兵器の開発は出来るのだろうか?
君はその叡智を今の世界に出すべきだ
今の人類は『鋼の咎』を悔いている
なら、昔の様にはならない
いや、私がさせない――例え『悪役』となろうと、君の兵器は悪用させない
だから、誰かを守る武器の開発を、してみないか?
ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携歓迎
メルセデスの導きに従いアポリト・ミデンの回収に向かおう
この狭さでは生身で向かうしかないだろう
念のためUCを薄く展開し、移動を阻害せず地形に影響を与えないように味方を保護する
しかしキャバリアも通れないこんな場所にしまい込まれているとはどのような武器なのだろう
キャバリアが振るう武器としてはかなり小さいものなのだろうか?
アポリト・ミデンについての仕様や使い方などを教わりながら進む
スキュラをどうするつもりか?
彼らの復讐すべき本来の相手はここにはなく、彼ら自身もまた過去の残響のようなものだ
復讐の助けにはなれないが、せめてその時に彼らが果たせなかった決闘の約定を果たそう
印旛院・ラビニア
兵器の仕様について考察とかしてようかな
「なんか、制作過程も怖いような……安全機構の取り付けに失敗したら大事故になりそうだし」
そんな中、劫禍が攻略法を語る
『発動させなければいい、というのであれば対処法はいくつかあるがな』
「……例えば?」
『その性質上、敵味方構わず焼き払う兵器だ。つまり重要拠点を占拠、または人類側の重要人物をそばに置けば無力化できる。後者なら誘拐してどこの百獣族の部隊にいるか分からないようにすれば、事前調査が必要になり不意打ちの可能性が落ちる』
「そんな事、百獣族はできないんじゃ」
『だから滅びた』
ホロス・コーストスの欠陥を発見なりでっち上げれば後追い研究の可能性とか無くなるかな
杓原・潤
わー、とんでもないもん作っちゃってたんだねぇ。
そのホロなんとかってのは今回見つけられたのが最後の一つなの?
壊すなりなんなりしとけば良かったのに。
まさか他にも隠してたりしないよねぇ?
もしまだあったらそのアポリトってので処分しなきゃだよ、この事件の後即座に!
今は百獣族が復活してるんだもん、誰かが見つけたら絶対に使われるはず。
それが百獣族でも人間でもね。
もう無くても誰かが似たようなのを発明しちゃったら、結果は同じ。
さっきも言ったけど、そーゆーのを防ぐのが罪滅ぼしには良いんじゃないかなぁ?
同じ魔法使いとしてそう思うよ、うるうは。
うん、良い事言った!
ちょっとキツい事も言ったかもだけど、元気でたでしょ?
ザビーネ・ハインケル
●WIZ
罠や番犬の類は居ねぇ、な
婆さんがそう念押すなら信じるぜ
ま、一本道とは限らねぇだろうがな
ランタン代わりの光球を照明にしながら【抜け道探し】の知見で空気の流れ、岩の歪み、残留魔力とか感じ取って安全かつ有利なルートがないかを見極めるか
おい、鼻が利くオレの使い魔
炭鉱のカナリア代わりに先行って、有害なガスが漏れ出てたら吠えろ
『おいら、カナリアじゃねぇっての!』
分岐路では岩肌に染み込んだ魔力の痕跡を読み取りながら有力な進路を決定
経路の脇に竪穴や今にも崩落でもあったら【魔力具現化】の光る矢印でマーキングだ
突発的なガス爆発や岩崩れの備えに【魔力防御】で魔力を纏った障壁を何時でも出せるようするぜ
●隘路の道中にて。
メルセデスの導きに従い、猟兵たちは共に孔に潜り『アポリト・ミデン』の回収に向かう。
最後尾を歩いていた一名が逸れたが、それは別の話として。
「我が眼前に集え世界。降りそそげ破邪の光塵、|白蓮雪華《びゃくれんせっか》」
この道の狭さでは生身で向かうしかない。そうなると何かトラブルが起こった際に、負傷者が出るかもしれない。
ハル・エーヴィヒカイトはスキュラとの戦いの前に怪我をしては元も子もないと、念のために仲間たちに向けて防御の手配をする。
戦場全体に無数の剣を内包した領域と幾億の微細な白刃を発生させ、領域を舞う刀剣をビットのように纏わせる事による攻撃力と防御力の強化を与えるユーベルコード《境界・白蓮雪華(キョウカイ・ビャクレンセッカ)》を薄く展開して、移動を阻害せず地形に影響を与えないように味方を保護する。
これで足元を踏み外したり、頭をぶつけたりしても、些細な出来事なら傷を負うことはない。
「罠や番犬の類は居ねぇ、な。婆さんがそう念押すなら信じるぜ。
ま、一本道とは限らねぇだろうがな」
「道順は覚えています。野生動物が棲みつく環境でもありませんし、道が崩落していなければ大丈夫でしょう」
「おっと、さっそくこの先崩落してるみたいだぜ。……これくらいなら、足元の瓦礫に注意すれば進めるな」
ハルの結界に保護されながら、ザビーネ・ハインケルはランタン代わりの光球を照明にして坑道の順路を見定める。
自らの抜け道探しの知見を活かして、メルセデスが進路を判断するサポートをしている。
空気の流れや岩の歪みを感じ取り、残留魔力の痕跡を読み取り、行く先が安全かどうか、崩落しているなら迂回するルートがないかを見極めているのだ。
「おい、鼻が利くオレの使い魔。
炭鉱のカナリア代わりに先行って、有害なガスが漏れ出てたら吠えろ」
『おいら、カナリアじゃねぇっての!』
また、ザビーネの灰狼の使い魔『ワーグレイス』を先頭に行かせることで、穴やガス溜まりを検知する役目も担っている。
そうして経路の脇に竪穴があったり、あるいは頭上に今にも崩落しそうな亀裂があったり、危険を察知すると魔力具現化により光る矢印でマーキングを行い、仲間たちを支援しているのだ。
●『ホロス・コーストス』について。
そうして互いに協力することで道中の安全を保つ中、猟兵たちはメルセデスと話をする。
「なるほど、話を聞いていた時に思ったけれど、貴女の作ったバハムートウェポンは魔術兵装だったのね……!」
「ええ。多くのバハムートウェポンがありましたが、吾の兵器はすべて魔術によるものですね」
「うーん、あんな風に啖呵を切った手前、ちょっと不謹慎だけれど魔法使いとしては、その理論や存在には興味を引かれるわ!」
ヘルゲ・ルンドグレンはバハムートウェポンの魔術理論に興味を示し、メルセデスからバハムートウェポンについての話を聞いている。
「成程、絶対焼却兵器……これは凶悪だ。
分解をトリガーとしている以上止めるには破損ではダメ、やるなら『完全抹消』か『停止の理』しか難しい、と……」
「なんか、制作過程も怖いような……安全機構の取り付けに失敗したら大事故になりそうだし」
「それは……当時は、吾も慢心が強く。そして勝利のために手段を選んでは、いなかったので。
細心の注意を払ってはいましたが、……もし誤っていれば大惨事になっていたでしょう」
「うぅ、怖い怖い……」
ランスロット・グレイブロアと印旛院・ラビニアも、バハムートウェポンの仕様について考察している。
そんな中、引き続き《豪華なる協力者》にて人型の状態を維持してラビニアの真後ろに同行しているオブリビオンマシン『劫禍』も検討していた内容を口に出す。
『発動させなければいい、というのであれば対処法はいくつかあるがな』
「ほう?」
「……例えば?」
ランスロットとラビニアに促され、『劫禍』は思いついた『ホロス・コーストス』の攻略法を語る。
『そいつは性質上、敵味方構わず焼き払う兵器だ。
つまり重要拠点を占拠、または人類側の重要人物をそばに置けば無力化できる。
後者なら誘拐してどこの百獣族の部隊にいるか分からないようにすれば、事前調査が必要になり不意打ちの可能性が落ちる』
「そんな事、百獣族はできないんじゃ」
『だから滅びた』
「……百獣族の聖なる決闘においては、相手の姫君をさらうという常套手段があった」
「は?」
それはオブリビオンとして蘇った百獣族にも時折見かけられる、決闘の意志表示だ。
さらうことはあくまで決闘を申し込む為の手段。
姫君の親族や従者は決して申し込みを断れないが為に「最上級の挑戦状」と百獣族の間では考えられているのだ。
さらってきた姫君には一切どのような危害も加えることはなく、高貴な姫君に対する最大の礼と待遇をもって接するという。
さらわれた側も誇り高く、騎士道に則り正々堂々と姫君の身柄をかけた聖なる決闘を行うのだ。
「ただ、当時は、人間相手にそこまで、敬意を向ける百獣族はいなかったから……。
結果的には、その対処法は、使われずに済みました」
「だが、今は違うな」
「やばいじゃん」
『できる策を使わなかったのか。なおさら救いがたい奴等だ』
●『アポリト・ミデン』について。
「わー、とんでもないもん作っちゃってたんだねぇ。壊すなりなんなりしとけば良かったのに」
『ホロス・コーストス』の話を聞いていた杓原・潤の快活な言葉に、メルセデスは冷静に応答する。
「『ホロス・コーストス』に関しては、処理方法も危惧していたのです。
正式な手順を踏まなければ安全機構が解除されないとわかっていても、破棄した際に万が一内部の術式が分解されれば……作業に従事した人が、死にますから」
『アポリト・ミデン』は、その万が一の事故を防ぐために作られたのだろう。
ただその力は凄まじく、本来の用途として運用することも躊躇するほどのものだった。
当時の騎士たちの心中を察すればゆえに、メルセデスは使うことなく封印という手段を選んだのだろう。
「しかしキャバリアも通れないこんな場所にしまい込まれているとはどのような武器なのだろう。
キャバリアが振るう武器としてはかなり小さいものなのだろうか?」
「ふんふん、この狭い洞窟に封じられているのだからその『アポリト・ミデン』もサイズとしては小型、なのかしら」
「はい。キャバリアの片手に収まる程度のものです。
重量は見た目ほどではありませんので、人によっては抱えて持ち運ぶことも可能でしょう」
ハルとヘルゲの『アポリト・ミデン』についての問いかけに、メルセデスは回答する。
ハルたちは歩みを進めながら、メルセデスから兵器の仕様や使い方などを教わる。
「それだと人造竜騎ではなくても使えそうなのは、取り回しが良そうですけれど」
「いいえ。あくまでも『アポリト・ミデン』はバハムートウェポン。
バハムートキャバリアでないにせよ、何かしらのキャバリアが握ることを前提としております。
……しかし、でも、そうですね。人間が生身で使用することも、できなくは、ないかも……」
「ああ、あと範囲内の魔力に干渉する、とのことだけどどんな形状をしているの?」
「あ、そうですね。形状は小振りの鎚のような……こう、丸みのある棒状のもので……」
メルセデスが空中にイメージ図を魔力で描いてみせる。
その姿は、猟兵たちの知識の中では『横槌』と呼ばれるモノの形状が一番近しいだろう。
柄とハンマーの頭部の、円柱の軸が合致している雰囲気です。
「ふむ。使い方は?」
「用途は柄を握ってから、この頭の部分を目標……『ホロス・コーストス』に向けます。
使用者ではなく『ホロス・コーストス』を装弾した武器や、射出された『ホロス・コーストス』の弾そのものですね。
そして魔力……人によっては気迫や騎士道精神、バハムートの風と称していた騎士もいたが、持ち手自身の精神的な活力を込めて発動を意識し、コマンドワードとしてアポリト・ミデンの名を叫ぶことで薄い膜のような空間が目標方向に広がり、包み込む。
その膜に接触すれば『ホロス・コーストス』内部の術式が停止して不発に終わる。再稼働することは、無い。
一度停止させた対象を再起動させる方法は、無いのだ。……無いです」
「そうか」
「そして、バハムートウェポンではありますが、『アポリト・ミデン』はあくまで対抗手段。
使用は一発限りの消耗品として設計しております。
ですので不発や狙いが外れた場合を考慮して、複数個用意しております」
「そういう感じなのね。他のものに影響はないのね?」
「はい。試験では滞りなく機能を発揮できました。
……吾の作成した『アポリト・ミデン』はすべて、『ホロス・コーストス』の術式にのみ作用するよう設計されている、ので」
ただし、未使用の『アポリト・ミデン』を魔法技術に秀でた者が解析すれば……。
その危惧があるからこそ封じていたメルセデスだが、今は猟兵たちを信じている。
信じた以上隠し事をすることはなく、不備や不足がないようにと思考を巡らせているようだ。
潤も、説明を耳にしながらメルセデスの抱いた危惧を口に出す。
「誰かが似たようなのを発明しちゃったら、結果は同じ。
さっきも言ったけど、そーゆーのを防ぐのが罪滅ぼしには良いんじゃないかなぁ?
同じ魔法使いとしてそう思うよ、うるうは」
「……心が強いのですね。吾も、見習わなければ」
潤の言葉に、メルセデスは気持ちが晴れているようだ。
それは気のせいではなく、潤のユーベルコードによるものだ。
「うん、良い事言った! ちょっとキツい事も言ったかもだけど、元気でたでしょ?」
「ええ。ありがとうございます」
罵詈雑言にしか聞こえない励ましによって負けん気を発生させ、味方の負傷を回復し、再行動させる《Secret Cheer!(シークレット・チア)》。
潤が強い言葉で責めるように話しかけていたのは、メルセデスの心の傷を癒し、再び立ち上がる活力を与えるためであったのだ。
「そういえば、そのホロなんとかってのは今回見つけられたのが最後の一つなの? まさか他にも隠してたりしないよねぇ?」
「…………」
「今は百獣族が復活してるんだもん、誰かが見つけたら絶対に使われるはず。それが百獣族でも人間でもね」
前後にいる猟兵たちの視線がメルセデスに突き刺さる。
メルセデスは居心地が悪そうな顔をしている。
その表情が、答えを物語っていた。
「……もしまだあったらそのアポリトってので処分しなきゃだよ、この事件の後即座に!」
「はい、後日封印箇所を巡ります」
「その巡行のためにも、この先の戦いを乗り越えねばな」
●スキュラへの想い。
そう、『アポリト・ミデン』を回収に向かっている理由は、『ホロス・コーストス』を手にする百獣族を撃退するためだ。
そのことを意識したメルセデスが、猟兵たちに問いかける。
「……こんなことを、聞く資格はないのかもしれませんが。
貴方たちはスキュラと、……スキュラを、どうなされるのでしょうか?」
「そうだな」
一族の仇である魔法使いメルセデスの命を狙うスキュラとは、対話はできても和解は難しいだろう。
ハルは一拍置いてから、淀みなく答える。
「彼らの復讐すべき本来の相手はここにはなく、彼ら自身もまた過去の残響のようなものだ。
復讐の助けにはなれないが、せめてその時に彼らが果たせなかった決闘の約定を果たそう」
戦うことが避けられないのであれば、と。
大なり小なりの差はあれど、猟兵たちの想いは同じようだ。
ヘルゲも、ランスロットも、ハルも、ラビニアも、潤も、ザビーネも、今は姿の見えない猟兵も。
戦いを通して、戦いを通じて伝えられることはあるのだろう。
「……そう、ですか。それは……きっと、救いになるでしょう」
「ああ。私たちは人造竜騎を駆る騎士として、正々堂々と戦おう」
●バハムートキャバリアの騎士として。
「しかし、私はバハムートキャバリアの使い手だが……どちらかというと、生身で戦う事が多いな」
もう間もなく目的地に着くという頃合いに、ランスロットはふとメルセデスに問いかける。
それはランスロットに、そしてメルセデス自身に関係することであった。
「私は感情と流体をユーベルコードとする事が多いのだが、生身の兵器の開発は出来るのだろうか?」
例えば、《悪役の滅紫よ、刻が示す義であれ(アロンダイトロア・ルーティーン・オブ・ヴィランズ)》。
1日8時間以上『悪役』としての正義とそれに関連する行動を行うと、翌日にそれに関する行動の成功率・効率・芸術性が3倍になるというユーベルコードがある。
日常的に感情を体現することで、悪役姫騎士としてのランスロットの立ち居振る舞いを洗練させているのだ。
悪役というロールプレイを維持しているランスロットの感情が、メルセデスに向けられている。
「……それでしたら、ええ。可能、ですが……」
「そうか。ならば、提案がある」
メルセデスはバハムートキャバリアやバハムートウェポンを手掛けてきた技術者であるが、人間の魔法使いでもある。
キャバリア規格よりも小型の、人間が振るう兵器も造ることはできる。
だが、ランスロットの問いかけに、流石にメルセデスは警戒を滲ませている。
ランスロットがこれから提案する言葉を察している。
「君はその叡智を今の世界に出すべきだ」
「ッ……!」
「ちょっと」
他の猟兵の言葉を手で制し、ランスロットは切り込む。
かつてのメルセデスの仲間たちとは違う、当事者ではない若造が。
奪われた者に思いを馳せられるだけの少女が、毅然として告げる。
「今の人類は『鋼の咎』を悔いている。なら、昔の様にはならない。
いや、私がさせない――例え『悪役』となろうと、君の兵器は悪用させない」
目を背けるだけではなく、過去の償いをするだけでなく。
今を生きるからこそ、これから先の未来に意識を向けなければならないと。
ランスロットは、『悪役』を担う。
「だから、誰かを守る武器の開発を、してみないか?」
「…………」
その問いに、メルセデスはただ沈黙する。
すぐに答えることはできない様子だ。
そうしている間にも歩みは進み、『アポリト・ミデン』を封じている目的地に至った。
●『アポリト・ミデン』×個数。
「……ここです」
「ん、一番奥じゃないのか」
『あ、おいら進み過ぎた?』
『ワーグレイス』が進んで行った洞窟の最奥よりも手前の脇道。そこが目的地だった。
一見するとただの亀裂にしか見えないその先に、広めの採掘現場があった。
本来の道は封鎖されているため正規ルートではたどり着けない、廃棄された空間。
その壁際には、工事用の資材を入れる木箱が積まれている。
その箱たちによって、壁に埋め込むように安置されている棺は秘匿されていたのだ。
その数……108個。
猟兵たちが、メルセデスを見る。
「おい」
「今、封を解きます」
「おい」
メルセデスは静かに棺の封を解き、中にある『アポリト・ミデン』を取り出せるようにしていく。
『アポリト・ミデン』は『ホロス・コーストス』への対抗手段として造られたバハムートウェポンだ。
そして消耗品という仕様上『ホロス・コーストス』より多めに造ることは当然なのであろう。だが。
「ひとまず、お一人一つとして。6,7個あれば、足りるでしょうか」
「待てや」
ザビーネがメルセデスの肩を掴むが、メルセデスは目を逸らす。
潤がメルセデスの前に回り込み、その眼をじっと見つめて問いかける。
「……もう一度聞くけどさ? メルセデス。ホロ兵器何個作ったのさ?」
「……吾が戦後、未使用品を回収し、封印したのは……16個です」
「わぁ……わぁ……!」『全部で幾つ造ったんだ貴様』
「それ以上は絶対にありません、心が病んでても在庫の管理は厳しくしていました、ので……!」
今回のスキュラのほかに、『ホロス・コーストス』があと15個ある。
メルセデスはこの事件もあとも生き続けることを強いられることになる。
産み出した兵器への責任を果たす、巡礼を行わなければならないのだ。
|閑話休題《それはさておき》。
『アポリト・ミデン』を手にした猟兵たちは、戦いに備えて洞窟の外に出る。
荒廃した大地の向こうから、下半身の獣脚を走らせて迫る影が見える。
それこそ予知にて映し出されていた『獣騎スキュラ』。
何処かに封じられていた『ホロス・コーストス』を探し出し、携えて襲い来る百獣族だ。
バハムートウェポン同士の戦いが近づいていた。
大成功
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小鳥遊・トト
ちょっとシナリオから外れますが、戦いの準備としてトト個人の事をさせて下さい。『アポリト・ミデン』は他の皆さんが何とかしてくれると信じて。
トトは途中までは狭い坑道をついて行くんですけど、誰かに急に腕を噛まれます(?)
振り返るとトトの手を握る人影が見えるんですけど顔が良く見えません。
『やっと見つけた』
えーっと、どちら様でしょうか?
『暗くて顔が良く見えない。外出る。』
わわっ、引っ張らないでくださいー。
外に出ると、人影は大きくなりそこには絆創膏でつなぎ止めたようなパッチワーク模様が特徴的なハイドラキャバリアが居ます。
『やっぱりトトだ。我が乗り手、あの不思議の迷宮を共に駆け抜けた勇敢な夢幻の騎士!』
人違いじゃないですか?全く記憶にないですし、そんなボクが勇敢だなんて……。
『我がトトの匂いを間違えるはずがない。それにトトのバロックレギオンの気配もした。自信が無くなるとすぐに弱気になる。やっぱりトトだ。』
そのまま無理やり中に載せられます。
ゲ、ゲートさん助けてー
2台目のキャバリアを手に入れます
●久しぶりに出会う記憶にない相手との初めての再会。
メルセデスの導きに従い、猟兵たちは共に孔に潜り『アポリト・ミデン』の回収に向かう。
だが最後尾を歩いていた小鳥遊・トトは、途中狭い坑道の中で誰かに腕を掴まれる。
否……何かに腕を噛まれる。
『やっと見つけた』
「え? あ、あの、ちょっと……?」
幸いな事に同行していた猟兵のユーベルコードのおかげでダメージも痛みもない。
だが腕を捕える力は強く、振り解けそうにない。
トトは足を止めざるを得ず、先を行く猟兵たちに気にしないでと手振りを見送り、振り返る。
手を握る人影は暗い闇に紛れ、その顔は良く見えなかったが……敵意は感じられない。
「えーっと、どちら様でしょうか?」
『――暗くて顔が良く見えない。外出る』
「わわっ、引っ張らないでくださいー」
人影もトトの顔が良く見えなかったようで、明かりのある外へ連れ出そうと強引に引っ張り始める。
トトは特に抵抗することなく、他の猟兵たちよりも先に外に出る。
そして洞窟から引っ張り出されると、気づけば人影は大きくなっていた。
トトが見上げた先に居るのは、絆創膏でつなぎ止めたようなパッチワーク模様が特徴的な、ハイドラキャバリアだ。
予知で見せられたオブリビオンでも、関りのある猟兵のキャバリアでもない、トトにはまったく見覚えのない相手であった。
「あの、どなたですか……?」
『やっぱりトトだ。我が乗り手、あの不思議の迷宮を共に駆け抜けた勇敢な夢幻の騎士!』
ハイドラキャバリアは嬉しそうな言葉を溢して、そのままトトの身体を軽々と持ち上げる。
困惑するトトは、誰かと間違っているのではないかと慌てて問いかける。
「人違いじゃないですか? 全く記憶にないですし、そんなボクが勇敢だなんて……」
『我がトトの匂いを間違えるはずがない。それにトトのバロックレギオンの気配もした。
自信が無くなるとすぐに弱気になる。やっぱりトトだ。
これから、ずっと一緒にいられる』
「え、えー? ゲ、ゲートさん助けてー」
『了解した、我が主』
ハイドラキャバリアはトトの言葉を無視して、そのまま機体内部へ取り込む。
開放されたコックピットに無理矢理載せて、何処かに立ち去ろうとした。
トトはこのままではよくないと感じ取り、サイキックによる意思疎通と互いの信頼関係によって《ゲート・プリーズヘルプミー》を発動する。
その効果によって、意思をもつキャバリア巨神『ゲート』が現れて、トトを連れ去ろうとするハイドラキャバリアに対峙する。
『我が主を離せ』
『なんだ、トトは渡さないぞ』
「ああ、待ってください、争うのはやめてくださいー」
『ゲート』とハイドラキャバリアがにらみ合い、一触即発の状況が長引く。
――何だろう、この三角関係。
困惑しているトトが何かしらの行動を起こすその前に、洞窟の中からメルセデスと猟兵たちが出てきた。
百獣族スキュラの持つバハムートウェポン『ホロス・コーストス』に対抗する『アポリト・ミデン』を手に、戦いの準備を済ませてきたようだ。
そしてトトもまた……トト個人の、戦いの準備を済ませる。
「話を、話をさせてくださいー」
猟兵たちが見守る中、トトの献身によってハイドラキャバリアを説得することは……きっと、できるのだろう。
二台目のキャバリアを手に入れることになる。
そして、間もなくして『獣騎スキュラ』が姿を見せるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『獣騎スキュラ【ウルフヘッズ】』
|
POW : ビーストビット
自身の身体部位ひとつを【胴体から分離可能でビームも吐く獣】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : ヴァリアブル・コンビネーション
【武器攻撃】【魔法攻撃】【パワーチャージ】【下半身からの蹴り】【尻尾攻撃】【浮遊兵装による攻撃・結界展開・ブースト】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : ハウリングストーム
自身が装備する【浮遊兵装を周囲に展開して威力ブーストして】から【魔術の嵐と共に獣の咆哮】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【詠唱・伝達・通信阻害】の状態異常を与える。
イラスト:Matsuhisa
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠陽環・柳火」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:ウルフヘッズ・スキュラの怨恨。
「……そうだ。無抵抗な相手を殺すのは、我らの心が澱む。
それでこそ、我らの敵だ。我らが討ち果たすべき怨敵だ」
多頭の獣の下半身を持つ百獣族、スキュラ。
タイガーやカピバラなど多種多様な首を持つ獣の中でも三頭の狼の頭を有する彼女は、かつてこの地域で知られる魔法騎士であった。
脆弱な人類が架空の生物を信仰して聖なる決闘に名乗りを上げて各地で多くの獣騎たちが葬られていることを知り、慢心することなく仲間たちを率い正々堂々と戦おうとしていた戦士であった。
「かつての我らに慢心はなかった。だが、油断はあった。我らは貴様らの殺意を見誤った。
求めるものが誇りではなく殺戮であると見抜けなかった。我らの落ち度である」
今。スキュラはオブリビオンとして蘇り、信仰の力で|獣騎《バルバ》に変形して怨恨の相手に報復しようと現れた。
メルセデスと猟兵たちを睥睨するスキュラは薄く微笑みを浮かべているものの、八つの瞳からは冷徹な意志と燃え滾る感情が同居して感じられる。
卓越した武術と魔術を駆使する上半身と、相互に連携する凶暴で獰猛な下半身。
一つの命に複数の判断機能が搭載されている、強敵である。
その手にはバハムートウェポン『ホロス・コーストス』が握られており、いつでも装填可能な状態で『ジャコン』装填された。
「我らの死は弱者故のこと、責める意図はない。
だが我らの一族の死……我が種族を消し去った咎はメルセデス。その身命心魂を葬ることで|雪《そそ》がれよう。
死ね、魔法使い」
戦力となる猟兵たちが立ち塞がる状況では、スキュラが引き金を引くことに躊躇はないだろう。
問答を行うためにも、手に入れたバハムートウェポンにより、スキュラのバハムートウェポンの効果を打ち消すことは必要条件となる。
『ホロス・コーストス』による惨劇を生み出さないためにも、猟兵たちは預かった『アポリト・ミデン』を構える。
スキュラに、真っ向勝負を挑むために。
※プレイングボーナスは、『第二章で手に入れたバハムートウェポンにより、スキュラのバハムートウェポンの効果を打ち消すこと』です。
一人でも『アポリト・ミデン』を命中させることができれば、以降は通常通りの戦闘が行われます。
メルセデスは戦いの邪魔にならないように身を守る防御魔法を使いながら、戦いを見守る様子です。
皆様、よろしくお願いいたします。
ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携歓迎
キャリブルヌスに[騎乗]
まずはあれを止めなければ始まらない
ホロス・コーストスを装弾した銃、あるいはそこから放たれる弾
[心眼]で銃口をこちらに向けた瞬間を[見切り]、[念動力]を込めてアポリト・ミデンの名を叫ぶ
無効化したならば、あくまで私の考えでしかないが復讐を知る者として言葉を紡ぐ
「生み出した咎がないとは言わないが。力はただ力、振るう者次第で虐殺の火にも復讐の刃にもなる。彼女を葬ったところでお前たちの無念は晴れまい。
故に今この場で出来る事はあの時果たせなかった決闘を果たすという一点のみだ。名乗るがいい誇り高き魔法騎士よ」
あちらが提案に乗るならこちらも名乗り返し、真の姿たるキャリブルヌス・エクセリオンで決闘を開始する
UCを発動し高速で飛び回る[空中戦]を展開
分離して襲い来る狼を[心眼]で[見切り]、[霊的防護]を備えた刀剣を射出してビームを[受け流し]噛みつき攻撃は優先して回避
[カウンター]で狼を斬り裂き[部位破壊]を行う
そして至高の斬撃でスキュラを真正面から堂々と両断する
ヘルゲ・ルンドグレン
そうね、貴女たちの無念は理解できる……でも、だからといってその蛮行を見逃すわけにはいかないわ!
騎士ヘルゲ・ルンドグレンの魔法の力を見せてあげる!
まずはホロス・コーストスの力を打ち消さないと……!
とはいえ、アポリト・ミデンはカウンター……つまり、攻めまくってスキュラにバハムートウェポンを使わせてやるわ!
狙うのはその瞬間!
かもん、木像兵!
【高速詠唱】で詠唱を阻害される前に召喚!
暴れて暴れて暴れまくりなさーい!
ウッドゴーレムを突っ込ませて攻撃させつつ、アポリト・ミデンを発動するタイミングを狙うわ
状態異常もお構いなしのゴーレムを破壊するためにホロス・コーストスを使った瞬間にアポリト・ミデンを発動!
杓原・潤
これがバハムートウェポンってゆーやつかぁ。
テルビューチェのでっかい手で使えるかなぁ……まぁ無理なら支えるだけでいいか、後は念動力で作動させるよ。
上手く行かなきゃ全滅だもん、頑張っちゃう!
ちゃんと出来たら相手のお望み通り、正々堂々決闘開始!
相手の浮遊兵装が展開する間に魔法でパワーアップしよう。
うるうの高速詠唱なら、状態異常を受ける前に詠唱が間に合うかも!
後は真正面から戦うだけ。
うちの子の戦い方は騎士さん達に比べたら暴力的かも知れないけど、これは誇りある戦士の流儀だよ。
そんな大量破壊兵器で全部終わらせるより、よっぽどあなた達の気に入ると思うよ!
さぁテルビューチェ、負けずに吼え返しちゃえ!
ランスロット・グレイブロア
『アポリト・ミデン』ーーこれを以てスキュラのバハムートウェポンを無効化するのが前提の戦闘か
さて、ではUCの展開…と行こうか
周辺の重力現象に使用者の精神と神経を具現化したエネルギーを注ぎ込み変形
変形後の周辺の重力現象による攻撃を以て、『完全掌握』の状態異常を追加で付与
重力現象を操作し、確実に『アポリト・ミデン』を命中させる!
バハムートウェポンの無効化を確認したら、次はこちらの番だ
剣の重力現象を付与し、強烈な重量と衝撃を纏った斬撃を繰り出していく
その悲嘆、その憎悪…今を生きる私達が、背負って見せよう
傲慢だと、不躾だと言われるかもしれない
けれど、当時を生きていない私は、そうして鋼の咎を贖ってみせる!
印旛院・ラビニア
劫禍は本来の姿となり、ラビニア搭乗
「弱さを認められるタイプかー」
『付け入る隙がなくなり厄介だな』
ホロス・コーストスが一つとも限らない。装填させた浮遊兵器を近くに隠している可能性もある。自分達は仲間のアポリト・ミデンでの封印失敗した時に備え警戒。場合によってはUC【オブリビオン・ヴォイド】で射出を妨害、直接ミデンでホロスをぶっ叩くように発動させる
『この時点で手札は切りたくなかったのだがな』
後の戦闘では、相手のUC起動時など致命的なタイミングで射撃を封じつつ仲間を支援。時間制限に気をつけながら細かく発動させつつ、自分達も切り込む
「百獣族は滅びたけど、騎士道は根付いた。そこは誇ってもいいと思うんだ」
小鳥遊・トト
(予備の『アポリト・ミデン』を受け取り損ねた)
えーっと、えーっと、とりあえず突っ込みます!(?)
サリーアルさんの噛み付き捕食でスキュラの動きを制限しにいきます。
そのまま乗り捨てるようにゲートさんに乗り換えてからクリスタルビットで突き刺し結界術も追加。
混乱しながらゲートさんも降りてこの隙に予備の『アポリト・ミデン』を受け取りに行きます。
……え、他の人がもう使ってる。すみません。
す、スキュラさんもすみません。なんか変な行動しちゃった……。
横から来たボクがその怨みに何か言う事は出来ないんですけど、復讐の前にメルセデスさんの話を聞く事は出来ないでしょうか?
問いかけの後、キャバリアに乗り損ねるので、それぞれの自我に手伝ってもらいながら自前で攻撃します。
ザビーネ・ハインケル
●POW
ハッ、そうは問屋が卸さねぇぜ
ふざけたババアを八つ裂きにしてぇ気持ちは分かるがな…オレらと|聖なる決闘《トーナメント》をやってからにしな!
決闘は正当性のみで決まらず
罪咎の懺悔のみで決まらず
ただ、結果のみが真実!
…いくぜ!
|人造竜騎《ガラドリエル》、召喚!!
さぁて、まずはこっちの攻撃を当てることからだな
胴体から分離可能な獣の頭部からのビームも吐く猛攻を、竜騎用フェアリーダストで発生させた光で敵の目をくらます「妖精の粉」でまず躱す
ちょこまかとすばしっこいがアポリト・ミデンうを構えながら『多重爆炎弾』を唱え、炎弾が外れようが地形を炎上させりゃ行動を阻めるだろうよ
あとは正々堂々、決闘だ
●聖なる決闘の喝采を。
『ホロス・コーストス』の引き金に指を添える『獣騎スキュラ【ウルフヘッズ】』。
多勢の猟兵を前にしても臆することなく、スキュラは装填したバハムートウェポンを放とうとする。
その直前に、対峙する猟兵たちが声を上げる。
「ハッ、そうは問屋が卸さねぇぜ。
ふざけたババアを八つ裂きにしてぇ気持ちは分かるがな……オレらと|聖なる決闘《トーナメント》をやってからにしな!」
「む……」
ザビーネ・ハインケルの言葉にスキュラは一拍を置いて、言葉を待つ。
『ホロス・コーストス』が掌中にある現状では、スキュラは対話に応じるつもりはない。
それでも誇り高い戦士として、聖なる決闘の言葉を無視することはできなかった。
引き金にかけられた指が止まったことを確認して、ザビーネは威風堂々と鬨の声を上げる。
「決闘は正当性のみで決まらず。罪咎の懺悔のみで決まらず。
ただ、結果のみが真実! ……いくぜ! |人造竜騎《ガラドリエル》、召喚!!」
ザビーネは悪徳領主の置き土産を頂戴して手に入れたタイタニアキャバリア『ガラドリエル』に搭乗し、『アポリト・ミデン』を構える。
「まずはあれを止めなければ始まらない」
「まずはホロス・コーストスの力を打ち消さないと……!」
ハル・エーヴィヒカイトとヘルゲ・ルンドグレンもまた、それぞれの相棒に騎乗する。
剣の騎神『キャリブルヌス』と、魔力と精を無尽蔵に喰らう蛇型の生物を顕すタイタニアキャバリア『ウロボロス』。
剣と魔法を携えて各々戦いに臨もうとする。
「『アポリト・ミデン』――。これを以てスキュラのバハムートウェポンを無効化するのが前提の戦闘か」
「これがバハムートウェポンってゆーやつかぁ。
テルビューチェのでっかい手で使えるかなぁ……まぁ無理なら支えるだけでいいか。
上手く行かなきゃ全滅だもん、頑張っちゃう!」
ランスロット・グレイブロアはこの世界で流された涙に応じて精神感応と強化を施す|機神《バハムートキャバリア》、涙応龍機『アロンダイト』を駆ってみせ。
杓原・潤は魔力と思考で操る事が出来る鮫を模した魔法のキャバリア『テルビューチェ』に乗り、『テルビーチェ』の大きな手で『アポリト・ミデン』を抱えている。
「弱さを認められるタイプかー」
『付け入る隙がなくなり厄介だな』
印旛院・ラビニアは、人型から本来のキャバリア形態に戻った『劫禍』に搭乗し、警戒している。
スキュラが有するバハムートウェポンが予知で確認できた『ホロス・コーストス』一つのみとは限らないと予測して、『ホロス・コーストス』を二つ三つを見つけ出して装填させた浮遊兵器を近くに隠している可能性を危惧して身構えている。
仲間のアポリト・ミデンでの封印失敗した時に備え、視野を広く取って少し後ろに佇んでいる。
自然と隊列を組み、互いの役目を全うしようとする猟兵たちの姿を見て、スキュラはバイザーの奥の目を細め小さく言葉を漏らす。
「……眩い、な」
「(予備の『アポリト・ミデン』を受け取り損ねた)えーっと、えーっと」
そして。
諸事情があって洞窟内に同行できなかった小鳥遊・トトは一人だけ『アポリト・ミデン』を配布されておらず、突然自らをコックピットに招き入れたハイドラキャバリア『サリーアル』の中で焦っていた。
トトを主とする巨神『ゲート』が脇に佇み睨みつけている中で緊張がピークに達したのか、困惑した勢いで『サリーアル』を突進させる。
「とりあえず突っ込みます!?」
「ッ!」
猟兵たちとスキュラが見合っていた均衡はおもむろに破られ、なし崩し的に戦端が開かれる。
●『ホロス・コーストス』対『アポリト・ミデン』。
「お、お願いします、噛みついて動きを止めて」
「《ビーストビット》!」
トトの願いを聞いた『サリーアル』が首を伸ばし、噛み付き捕食を仕掛けて動きを制限しようとする。
真正面から迫る敵に、スキュラは胴体から分離可能でビームも吐く獣の頭部に変形した下半身の狼を放つことで迎撃する。
『サリーアル』とウルフヘッドの一頭が噛みつき合いもつれあう中、分離したスキュラが『アポリト・ミデン』の引き金を引こうとする。
だが、それに反応してランスロットがより早くユーベルコードを展開する。
「さて、ではユーベルコードの展開……と行こうか」
それは、周辺の重力現象に使用者の精神と神経を具現化したエネルギーを注ぎ込み変形させるもの。
変形後の周辺の重力現象による攻撃を以て、『完全掌握』の状態異常を追加で付与するユーベルコード。
《掌握神聖の重力現象(アロンダイトロア・マインドダウン・グラビティ)》だ。
「嘆く者よ、我が剣の一閃を見るが良い。
重力によって沈むのが理の様に、我が思念を体現した力動は重力を掌握し思念そのものを掌握する」
「む……」
重力現象を操作し、ランスロットと仲間たちが『アポリト・ミデン』を命中しやすくする領域を形成する。
スキュラ本体も《ビーストビット》の頭部たちも掌握状態にされ、重力によって動きが鈍る。
この悪影響の中では『アポリト・ミデン』の起動が妨害されるかもしれない……スキュラが迷いを見せる間に、トトは『サリーアル』を乗り捨てるように脱出して『BS-Fオベリスクソードビット』による結界でトトを保護する『ゲート』に回収されていた。
「さぁて、まずはこっちの攻撃を当てることからだな」
「とはいえ、『アポリト・ミデン』はカウンター……。
つまり、攻めまくってスキュラにバハムートウェポンを使わせてやるわ!」
「ッ、《ビーストビット》!」
トトを乗せた『ゲート』とすれ違いスキュラに迫る、ザビーネとヘルゲ。
スキュラはタイタニアキャバリアたちの乗り手が駆使する魔法を警戒して、『アポリト・ミデン』を放つ猶予を得ようと《ビーストビット》を暴れさせる。
《ビーストビット》が吐き出すビームの猛攻を、ザビーネは『ガラドリエル』の胴部に取り付けた『竜騎用フェアリーダスト』で対抗する。
発生装置から発せられる『妖精の粉』を纏うことで、光で敵の目をくらまし身を躱すのだ。
『ガラドリエル』の手に握る『アポリト・ミデン』をスキュラ本体に向けて構えながら、もう片方の手に杖を握り締めてユーベルコードを放つ隙を伺っている。
「古の森よ、深き根の囁きよ、大地の鼓動、木霊の息吹を呼び起こせ。
樹塊の人形よ、今こそ目覚め、我が意の侭に動かん。
――かもん、《木像兵(ウッドゴーレム)》!」
そしてヘルゲはザビーネの陰で《ビーストビット》の攻撃から逃れつつ高速で詠唱し、戦場に大樹のゴーレムを召喚する。
現れた大樹のゴーレムはヘルゲが指定した対象1体を自動的に追尾し、巨木の四肢で攻撃し続けるのだ。
『サリーアル』と『ガラドリエル』、そして《木像兵》が三頭の《ビーストビット》を押え込む。
まだ半数の猟兵が遠間に控える中、《掌握神聖の重力現象》によって動きが鈍っているスキュラは焦れる様子を見せる。
「暴れて暴れて暴れまくりなさーい!」
「ならば……《ハウリングストーム》!」
ウルフヘッズだけでは首が回らなくなるとスキュラは戦況を判断して、手数の多い攻撃ではなく決定打を放つべく浮遊兵装を周囲に展開する。
威力ブーストしてから魔術の嵐と共に獣の咆哮を放つことで、周囲の敵全員にダメージと詠唱・伝達・通信を阻害する状態異常を与える《ハウリングストーム》が猟兵たちのユーベルコードの詠唱やキャバリア遠隔操作を阻害しようとする。
これならば、ハルや潤やラビニアにも被害が届くだろう。
「そこだ!」
「っ!」
スキュラが魔術を放つ寸前、ザビーネは《多重爆炎弾(ブレイジング・バレットストーム)》を唱える。
『竜騎用ウィザードロッド』の先から着弾地点で爆発する高速の炎弾を連射する。
狼の下半身が分離しようと素早く動けるスキュラだが、魔術の嵐を放とうと詠唱する隙を突けば回避は難しい。
たとえ炎弾が外れようと地面に落ちれば地形が炎上してスキュラの行動を阻めるという目論見だ。
スキュラは一発二発を浮遊兵装で防ぎつつ回避行動に入るが、炎上する地形を見てその目に怒りを顕せる。
「跡形もなく灰燼に帰せやがれ!」
「それは……こちらの台詞だ!」
大地に着弾し、燃える炎を見て思うところがあるのだろう。
スキュラは使用する機を伺っていたにも関わらず、つい衝動的に焼却するバハムートウェポン『ホロス・コーストス』を放つ。
辺り一帯を焼き尽くす劫火が銃口から発射される瞬間。
その瞬間を、猟兵たちは待っていた。
「「「「「アポリト・ミデン!」」」」」
スキュラが『ホロス・コーストス』を使った瞬間、五つのバハムートウェポンが放たれる。
ヘルゲとランスロットとザビーネが、それぞれ異なる角度から思い思いの力を込めて『アポリト・ミデン』を発動する。
『テルビーチェ』の大きな手でしっかりと兵器を支えている潤も、『キャリブルヌス』を駆り空中から銃口の向きから弾道を心眼で見切っているハルも、念動力を込めて『アポリト・ミデン』の名を叫ぶ。
立体的に包囲された『ホロス・コーストス』は薄い膜に包まれ、その内部の術式を停止させる。
《掌握神聖の重力現象》の影響を受けた弾頭は、そのまま地面に落ちて沈黙する。
「……そうか。やはり、対抗手段が、あったか」
「(やっぱり。使いたくはなかったみたいだね)」
『(手札を切らずに済んだが……まだ油断は禁物だな)』
スキュラがどこか安心するように、転がる『ホロス・コーストス』の弾丸を見下ろしている。
しかし、その様子を見てもラビニアは油断なく二の矢三の矢に用心する。
一人未使用の『アポリト・ミデン』を構え続けており、もしもの場合に備えて奥の手であるユーベルコードを稼働可能な状態で待機している。
そしてトトは『ゲート』からも降りてメルセデスのもとに向かい、予備の『アポリト・ミデン』を受け取りに行っていたが……背後の状況を見て、もう必要なさそうですねすみませんと恐縮そうにしている。
「ちゃんと出来たよ! それじゃあ相手のお望み通り、正々堂々決闘開始!
夜の魔力よ、力を――!」
そして使い終えた『アポリト・ミデン』を地面に置いて、満を持して潤が行動を開始する。
潤はスキュラが展開した浮遊兵装が再び威力ブーストする前に、|魔法《ユーベルコード》を詠唱する。
《星夜魔装(スターライト・ナイト・クラッド)》。
自身の装備武器――何らかの木材と魔獣の牙で作られた、キャバリア用の頑丈で重い近接武器『ヌイ・ロア・レイ・オ・マノ』に星と闇の魔力で形成した追加装備を搭載して、破壊力を増加するユーベルコードを発動させる。
潤の詠唱が完了して、『テルビューチェ』がパワーアップした迫力満点の装備を振り上げる。
「後は真正面から戦うだけ。
うちの子の戦い方は騎士さん達に比べたら暴力的かも知れないけど、これは誇りある戦士の流儀だよ。
そんな大量破壊兵器で全部終わらせるより、よっぽどあなた達の気に入ると思うよ!」
「……そうだな。使えない兵器に固執するのも、不発だからと矛を収めるのも、戦士の流儀ではない。
わかった。これよりは、一介の戦士として。全力を振るおう」
スキュラはどこかスッキリとした様子で、しかし恨みと怒りは晴れることなく。
猟兵たちを打ち倒し、その奥にいるメルセデスをその手で討ち果たさんと気炎を吐く。
もうスキュラに大量殺戮を引き起こすバハムートウェポンを行使する様子は見られない。
ここからは、|聖なる決闘《トーナメント》となるのだ。
●聖なる決闘の果てに。
「さぁテルビューチェ、負けずに吼え返しちゃえ!」
怪力による暴力を十分に発揮するべく、潤は『テルビーチェ』を突進させる。
ウルフヘッズが出払っている今、スキュラは上半身のみで大地に立っている。
だがそれは機動力を失ったことにはつながらない。獣の下半身が分離していようとも、卓越した蹴り技を放てるだけの自前の脚は鍛えているのだ。
『テルビューチェ』の突進を正面から受け止め、スキュラの槍と『ヌイ・ロア・レイ・オ・マノ』がぶつかり合い、鎬を削る。
「《ハウリング――」
「そうはさせない、かな!」
鎬を削りながら潤を包囲するように浮遊兵装を操作して魔術の嵐と共に獣の咆哮を放とうとするスキュラだったが、ラビニアが『劫禍』と共に切り込んで《ハウリングストーム》を封殺する。
ラビニアたちの秘めていた切り札は、オブリビオンマシンが有するユーベルコード《オブリビオン・ヴォイド》。
時間制限に気をつけながら細かく『劫禍』から骸の海を放出し、戦場内全ての射撃武器を無力化するその効果によってスキュラの射撃武器である魔術と浮遊兵装による攻撃を的確に封じ込んで支援していく。
「ッ、この力は、まさか、我らと同じ……!?」
「百獣族は滅びたけど、騎士道は根付いた。そこは誇ってもいいと思うんだ」
「そうね、貴女たちの無念は理解できる……でも、だからといってその蛮行を見逃すわけにはいかないわ!
騎士ヘルゲ・ルンドグレンの魔法の力を見せてあげる!」
そしてヘルゲは『ウロボロス』の内部に搭載された専用の『魔力炉』で増幅された魔力を熱量に変化させる。
潤とラビニアが稼いだ時間で十分に蓄積された熱量は、口部に増設された『魔力砲』から凄まじい威力の魔法光線を放つ。
背面に発生する回転鋸状の『オーラバズソー』で飛んだ『テルビューチェ』は避け、ビームがスキュラに直撃する。
「よいしょー!」
「がはっ……!」
「手ごたえあり! ……って、回復してる!」
痛打を与えることに成功したが、ほぼ同時にウルフヘッズがスキュラに合流して治療する。
『サリーアル』と《木像兵》に噛みつき奪った|生命力《エネルギー》を上半身に還元したのだ。
《ビーストビット》が健在である限りスキュラは継戦可能だろう。
「ふぅ……射撃戦は封じられる、か。ならば次は」
「次はこちらの番だ」
「ッ、バハムートキャバリア……!」
凶暴な牙を剥く《ビーストビット》を手元に戻し白兵戦に専念しようとするスキュラに向けて、ランスロットは『アロンダイト』の持つ聖剣『アロンダイトブレイド』に重力現象を付与し、強烈な重量と衝撃を纏った斬撃を繰り出していく。
『叫びに報いる』というランスロットの最重要本質を体現した水流状の刃がスキュラの槍とぶつかり合う。
潤の『テルビーチェ』と同じ流れであるが、武術と魔術を併用していた先程と異なり武器攻撃に専念したスキュラの槍は手堅く、そして強い憎悪は重みを増幅させていた。
スキュラの冷たい殺意とウルフヘッズの煮え滾る怨念は、非道の罪の象徴たるバハムートキャバリアを目の当たりにして膨れ上がっている。
「――その悲嘆、その憎悪……今を生きる私達が、背負って見せよう。傲慢だと、不躾だと言われるかもしれないが……」
「言わぬよ……我らの怒りはメルセデスに向いている。だが、構わない。貴様が、それを駆り、翔ぶ!
それだけで戦う理由には十分! 貴様は、|架空の生物《バハムート》は我らの敵であるが故!」
「けれど、それでも! 当時を生きていない私は、そうして鋼の咎を贖ってみせる!」
「ならば為すがいい! 我らは我らの|我《が》を貫く。貴様も、貫き通してみせるがいい!」
裂帛の気合いが篭められた双方の覇気がぶつかり合う。
ランスロットとスキュラが数合斬り合った末、『アロンダイトブレイド』がスキュラの浮遊兵装を全て打ち落とす。
一方で、スキュラの|尻尾の一撃《テイルスイング》で『アロンダイト』もダメージを負う。
ランスロットは仕切り直そうと、スキュラとの距離をあける。
深呼吸で息を整えるランスロットの前に、スキュラと対峙するように『キャリブルヌス』が舞い降りる。
「私にも奴に告げたい言葉がある。代わってもらえるだろうか」
「すぅ……ふぅ……わかった。あとは任せる」
「ハァ……ハァ……その、バハムートキャバリアは……」
猟兵たちを相手に単騎で立ち回り、満身創痍でありながら一向に戦意が衰えないスキュラに、ハルは言葉を紡ぐ。
あくまでハル自身の考えでしかないが、復讐を知る者として伝えたい想いがあるのだ。
「生み出した咎がないとは言わないが。力はただ力、振るう者次第で虐殺の火にも復讐の刃にもなる。
彼女を葬ったところでお前たちの無念は晴れまい」
「……だが、我らの溜飲は下がる。焼き尽くした下手人が時の流れに消えた今、八つ当たりであろうとも発端となった者を討てば、我らの心は一時、安らぐだろう」
『ホロス・コーストス』を失った今だからこそ、スキュラに対話の猶予が生まれている。
戦士の本懐を遂げんと武術と魔術を駆使するスキュラに、ハルの言葉が届く。
「八つ当たりと自覚しているのであればなおのこと。
故に今この場で出来る事は、あの時果たせなかった決闘を果たすという一点のみだ。
名乗るがいい誇り高き魔法騎士よ」
「……我らは百獣族スキュラの戦士。ヴォラスリマニのヘカテイアだ」
「ハル・エーヴィヒカイトだ。私がお前を堂々と討とう、ヘカテイア」
ハルは名乗り返し、|真の姿を解放《オーバーロード》する。
真の姿たる『キャリブルヌス・エクセリオン』にて、聖なる決闘を開始する。
「ハル・エーヴィヒカイト、受けて断とう。――奥義、サンダンヅキ!」
「キャリブルヌス、オーバーロード!」
スキュラが繰り出す槍の渾身突きに、分離する三頭の《ビーストビット》からビームが併せて三本放たれる。
その連撃に対して、ハルは《キャリブルヌス・エクセリオン『雪月風花・零』(セツゲツフウカ・ゼロ)》を発動する。
『キャリブルヌス』の外套型古代武装"妖精"を解放した形態となり、時速16400kmで飛翔するユーベルコードだ。
ハルは襲い来るウルフヘッズのビームを心眼で見切って、霊的防護を備えた刀剣を射出して受け流す。
そしてなおも迫るウルフヘッズの噛みつき攻撃を高速で空中を飛び回ることで回避し、すれ違いざまにカウンターで斬り裂き一頭、二頭、三頭と部位破壊を遂行する。
文字通りの半身が次々に破壊されていく中でスキュラは怯むことも臆することなく、むしろその隙を狙わんと跳びかかる。
スキュラは高速で飛び回る『キャリブルヌス』の動きを見切り、『キャリブルヌス』の中にいるハル目掛けて、渾身の一撃が叩き込まれる……刹那。
ハルのカウンターが閃く。
「|絶刀《ぜっとう》・|雪月風花《せつげつふうか》――!」
射程無限・直線上の全てを切断貫通する至高の斬撃が放たれる。
『キャリブルヌス』から放たれた斬撃は、スキュラを……ヘカテイアを真正面から堂々と両断した。
致命傷を与えたハルは、その後も残心を怠ることなくヘカテイアの前で立ち続け、その最期を見届ける。
こうしてバハムートウェポンに端を発した事件の、戦いの決着がついたのであった。
●心和やかに語らう、道の是非。
猟兵たちと百獣族スキュラの決闘は終わった。
キャバリアも無傷とは行かなかったが、誰も欠けることなく戦いには勝利した。
何か一手間違えていれば、被害は大きくなっていたことだろう。
メルセデスが遠くから、倒れ伏し消滅しつつあるヘカテイアを見つめている。
「す、スキュラさんもすみません。なんかボク、変な行動しちゃった……」
「…………」
獣騎への変形が解けたヘカテイアの傍に、生身のトトが駆け寄って声をかける。
予想外のハイドラキャバリアとの接触もあったものの、二機のキャバリアと共に戦列に並んだことに違いはない。
スキュラは立派に戦った戦士へ視線を向け、今際の状態で耳を傾けている。
「横から来たボクがその怨みに何か言う事は出来ないんですけど、次は復讐の前にメルセデスさんの話を聞く事は出来ないでしょうか?
ボクにできることがあれば頑張って手伝いますし、その、殺したり殺されたりばっかりっていうのは、あんまり……」
「…………」
「ダメ……でしょうか……?」
自信なく情けない表情で問いかけるトトの言葉を、ヘカテイアはどう感じたのか。
返答を口にすることはなく、ヘカテイアはメルセデスに目を向けて、そしてトトを見つめて、ただ小さく微笑んだ。
その瞬間の顔には、恨みも怒りも無いように感じられた。
「あ……!」
そして、トトが何か言う前にヘカテイアは、オブリビオンは消滅した。
滲出した過去の化身であるヘカテイアは、激闘の痕跡だけを残して再び眠りについたのだ。
メルセデスの命は救われ、その心も癒された。
彼女の命を狙うオブリビオンはまた現れるかもしれない、だがもうメルセデスは唯々諾々とその命を捧げることはしないだろう。
自らの残した咎、バハムートウェポンを回収して処理する巡礼に向かうためだ。
「ありがとう。あなたたちのおかげで、吾は立ち上がることができます」
猟兵たちに謝意を述べて、メルセデスは歩き出す。
過去の罪滅ぼしをするべく、前に向かって進み出すのだった。
成功
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