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美ら島旅行〜琉球の文化と自然の彩

#アスリートアース #戦後 #キャンプ

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●グリモアベースにて
「みなさん、修学旅行にいきましょう!」
 元気のよい呼びかけの言葉と共に、「修学旅行のしおり」と書かれた手作り感いっぱいの冊子をじゃじゃーんと掲げるは、榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)。
 唐突な言葉にきょとんとした表情を浮かべる猟兵たちを見渡せば、えへへ、と小さく照れ笑いする。
「えっと……あたしの出身世界である、サイキックハーツにあった武蔵坂学園では、一年に一度、修学旅行に行っていたのですよ」
 在校生には今もお馴染みかもしれない学園行事の一つ、修学旅行。小学6年生、中学2年生、高校2年生、大学1年生の、特定の異なる学年の生徒たちが沖縄へ向かう、特別な旅行だ。
 現地ではスケジュールに従って一緒に行動して、楽しみながら素敵な思い出をいっぱい作って、とにかく楽しかったのだと。ちょっぴり当時の記憶に思いを馳せた陽桜は、楽しそうに微笑んで。
「あたしも、今は学園を卒業しちゃったので、武蔵坂学園生としては修学旅行を味わうことはできない身の上なのですけど。でも、あの時のワクワクした気持ちと楽しさを、みなさんにも味わっていただきたいなぁと思って、今回、真秀さんと一緒に旅行計画を練ったのですよ!」
 それが今回の「修学旅行」なのですと、ぐぐっと握り拳をする。
 要は、かつての武蔵坂学園の修学旅行になぞらえて、猟兵みんなでお泊まり旅行を楽しみましょうというわけだ。
「ちなみに行き先は、サイキックハーツではなくて、アスリートアースの沖縄なのです! 3泊4日で、美味しいもの食べたり泳いだり観光したりで楽しんじゃうのです♪」
 なんやかんやと梅雨も明け、青い空とキラキラとした強い日差しに照らされ輝く海。
 体験する食事や訪れる場所によっては猟兵たちが普段様々に訪れる世界の中で見る景色ともほんのり異なる何かがあるかもしれない。
「ちなみに、あたしが担当するのは、旅行の1日目と2日目なのです」
 言いながら陽桜は、集まってくれた猟兵たちへ向けて、手作りのしおりをどうぞと配り始める。
 皆にしおりが行き渡ったところで、見てもらいたいページを告げてから、スケジュールの説明を始めた。
「1日目は、主に那覇市をはじめとした沖縄本島の中南部が中心になります。首里城を観光して、ソーキそばをいただいたり、沖縄の文化に触れる体験学習をしていただきたいなって思ってます」
 体験学習は、琉球古武術やエイサーに三線、琉球舞踊などの芸能に触れてみたり、紅型や琉球ガラス、焼き物でシーサーなどを作るなど。実際に手や身体を動かして歴史や文化に触れてほしいというわけだ。
「2日目は、沖縄本島の北部へ向かいます。美ら海水族館へ行ったり、やんばるの森でカヌー体験やトレッキングをしてみたり、なのです」
 亜熱帯海洋性気候に属する沖縄の海に森に育まれた貴重な生き物たちを間近で眺めたり、自然に触れ合ったりに重きを置いた内容になっているようだ。
「あ、それぞれのスケジュールは、メインのご案内内容をお伝えしてますけど、観光スポットは他にもありますから、皆さんが行きたいところへ自由に行動してもらって問題ないのです!」
 とはいえ、旅行は全部で4日間。1日目と2日目だけで全部とは思わず、3日目と4日目の楽しみもとっておくのが、めいっぱい楽しめること間違いなしだ。
「あとは……えっと、あたしの知人で武蔵坂学園の卒業生でもあるさくらえさんにも声かけたんですけど、さくらえさんは来れないそうで。でも代理でってことで、翼さんがご一緒するそうなのです」
 翼さんはサイキックハーツ出身ではないけれど、出身世界に関わらず、猟兵みんなでわいわいできたらいいと、陽桜は満面の笑みを浮かべて。
「そんなわけで、みなさん! 思いっきり楽しんでくださいなのです!」


咲楽むすび
 初のキャンプで、沖縄で、コラボシナリオです♪

 そんなわけで、こんにちは。
 咲楽むすび(さくら・―)と申します。
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。

●内容について
 アスリートアースの依頼です。

 今回は、湊ゆうきマスターとともに、修学旅行キャンプといたしまして、沖縄の旅をお届けします。

●1日目、2日目「美ら島旅行~琉球の文化と自然の彩」 本シナリオ
●3日目、4日目「美ら島旅行~琉球の風と魅惑の島々」 湊ゆうきマスター

 詳細は各シナリオをご確認ください。
 両方のシナリオへの同時ご参加、またどちらか片方のみのシナリオへご参加いただいても大丈夫です。
 スケジュールの都合上、1日目と3日目が同時に進みます。あまり細かいことは気にせず参加いただけると嬉しいです。

 旅行のスケジュールは2015年の修学旅行を参考にしています。詳細が知りたい方はこちらでご確認ください。
( http://tw4.jp/html/world/event/042/042_setumei.html )

 このシナリオでは1日目と2日目を扱います。

 1日目(第1章)は、沖縄本島の中南部あたりで思い思いに観光をお楽しみください。
 2日目(第2章)は、沖縄本島の北部を中心とした観光やアクティビティをお楽しみください。

 フラグメントは気にせず、行き先についても大まかな目安として考えていただいて大丈夫です。
 宿泊も、基本はホテルですが、中南部、北部ともにキャンプができる場所はありますので、テントやコテージなどに宿泊したことにしていただいてもよいです。
 行きたいところ、やりたいことをプレイングに記載していただければ、そのように対応・描写いたします。

 ちなみに現在、首里城は再建中ですが、このシナリオの首里城は再建前の姿をとどめているものとしてお楽しみいただけますと幸いです。
(再建前の内部も存じておりますので、当時の雰囲気を楽しむ感じで描写させていただきます)

 同行者様がいらっしゃる場合はその旨お書き添えください。

 2章のみ、お声掛けがあれば、陽桜、または翼が同席いたします。
 それぞれ思い思いに楽しんでますが、声掛けがない場合は登場いたしません。

●プレイング受付と締切について
 マスターページとタグにてご連絡いたします。

 それでは、もしご縁いただけましたらよろしくお願いいたします!
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第1章 日常 『キャンプめしを食べよう!』

POW   :    出来立てを沢山美味しく食べる

SPD   :    現地で何らかの食材を調達してくる

WIZ   :    キャンプならではの調理法に挑戦する

イラスト:真夜中二時過ぎ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

八坂・詩織
先輩の白夜さん(f37728)と大人の修学旅行。

まずは首里城へ。
懐かしいですね、白夜さんも修学旅行沖縄だったんですよね?
白夜さんのことだから暑さでぼーっとしてたんじゃないですか?
もう一回復習ですね!

写真もいっぱい撮らないと。
去年オーロラ撮るために買ったんですよ一眼レフ。

有名な守礼門もバッチリ撮り、主殿への道を進む中。
あ、これこれ、日影台!
漏刻門の水時計の補助的な道具として使われたんですよね。
天文と時には密接な関係がありますからね。
往時は二十四節気に基づいて年に24回角度を変えてたそうですよ。
今は年に4回、先日は夏至でしたからその時にも変えてるはずです。
往時の時を感じますね…(シャッターを切り)


鳥羽・白夜
学生時代の後輩、八坂(f37720)と。

大人の修学旅行に行こうという後輩に連れられ首里城へ。
俺の年は学年ごとに行き先違ったけど、高校生は沖縄だったからな。
首里城も行ったはずだけど…よく覚えてね―んだよなぁ…

って、お前いつの間にカメラ女子になったんだよ。
オーロラ…お前らしいなほんと。

そういえば見覚えのある守礼門を通り、主殿へと進む中後輩が目を止めたのは。
日時計…?お前日時計とか好きなの?
へぇ、二十四節気ねぇ…わざわざ角度変えないと使えないなんて不便だな。

往時の時とか言われてもよく分からないけど、とりあえず後輩が楽しんでるのは分かる。日時計にここまで夢中になるやつも珍しいだろうな…




 銀の雨降る世界でなくとも、南国のこの地に降り注ぐ日差しの強さはそう変わらないらしい。
 仰ぎ見た空に輝く太陽の光。その眩しさに、鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は青の瞳を細める。
 夜型な白夜としては、日中のこの日差しの下を歩くことは本来好むところではない。
 常であれば夜勤仕事前の英気を養うべく、根城たるボロアパートでゆるゆると過ごしているところではあるのだが。
「懐かしいですね、白夜さんも修学旅行沖縄だったんですよね?」
 声のする方をちらと見やれば、後輩――八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)の穏やかな微笑みがあった。
 後輩から「大人の修学旅行に行こう」と誘われれば、白夜が断る理由もない。
 銀誓館学園在籍時代から数えればだいぶ長い付き合いとなる上に、猟兵に覚醒してからもなんやかんやと世話になっている身の上でもある白夜としては、できる限り後輩の要望は叶えてやりたいと思う。それが先輩としての勤めだからな、なんて。
「ああ、俺の年は学年ごとに行き先違ったけど、高校生は沖縄だったからな」
 今回の旅行の案内役は別の世界出身として修学旅行の話をしていたが、銀誓館学園にも修学旅行はあった。
 小学6年生・中学2年生・高校2年生が、一斉に旅立つ学園行事。
 銀誓館学園の場合は、年度ごとに行き先が異なっていたり、同じ年度であっても学年が違えば異なる場所へ行くこともあった。
 白夜は2009年、詩織は2010年。それぞれ学年は違っていたから、学生時代に一緒に修学旅行へ行く機会には恵まれなかったけれど。それでもそれぞれの年の行き先は沖縄だったから、共通の話題としては持っている。
「首里城も行ったはずだけど……よく覚えてね―んだよなぁ……」
「白夜さんのことだから暑さでぼーっとしてたんじゃないですか?」
「あー……そう言われると否定できないな」
 実際、今もこの日差しの強さに目が回っているし、ありえる。しかしなぜ当時の俺の状況をまるで見ていたかのように言うのか。
 などと、心の声がないまぜになった視線を、白夜は無意識のうちに詩織に向けていたらしい。
 何とも言えない白夜の視線と表情に、詩織はくすくすとおかしそうに笑い出す。
(「そりゃあ、わかりますよ」)
 ――当時はさておき、今の白夜さんのことはよく見ているし、想う時間も長いですからね。
 気のおけない先輩後輩の間柄。けれど、万が一相手に察してしまわれればもしかしたら崩れてしまうかもしれない、ほんの少しだけ危うい距離。
 何が最善かはわからないけれど、願わくばこの居心地の良い距離感のまま、いられたらいい。
「では、白夜さんはもう一回復習ですね! その前にこれどうぞ。首元に当てると少しは涼しいと思いますよ?」
 言いながらハンカチで包んだ冷たいペットボトルのお茶を白夜へと手渡し、詩織はにっこりと微笑む。
「さぁ、行きましょう。最初はあの、守礼門からです」


 ペットボトルの冷たいお茶が喉を潤し、ほんの少し元気を取り戻した白夜は、詩織が示す先へと視線を向けた。
 鮮やかな朱色に彩られた門。掲げられた|扁額《へんがく》には「|守礼之邦《しゅれいのくに》」の文字。
「なるほどなぁ、観光名所……」
 以前に来た記憶にもあった、見覚えのある守礼門。
 観光ガイドマップでもよく目にするから、馴染みはある。けれど実際目の前にあると不思議な気分になってしまう。
 思いを馳せつつも門へ近づくべく、歩みを進める白夜だったが。
「ん? 詩織?」
 ふと隣から後輩の気配が消えた気がして振り返れば、可憐な娘には似つかわしくない本格仕様の一眼レフカメラを構え、写真を映す後輩の姿。
「……って、お前いつの間にカメラ女子になったんだよ」
「去年オーロラ撮るために買ったんですよ一眼レフ」
「オーロラ……お前らしいなほんと」
「ふふ、ありがとうございますと言っておきますね。……今回の旅行も写真もいっぱい撮らないと」
 この場所の景色も、これから先に出会うであろう自然や星の煌めきも。
 カメラに収めた分だけ、振り返った時に思い出す記憶もきっと増えると思うから。
 図らずして守礼門とそれを眺める先輩の後姿を収めることができたのもまた、後で見返した時にきっと楽しくなるはずだ。


 そうして。
 守礼門をくぐり、正殿へと通じる第一の門である|歓会門《かんかいもん》、第二の門である|瑞泉門《ずいせんもん》を潜り抜け。
「これが第三の門ってやつか?」
「そうですね。扁額に『漏刻』とあるので、|漏刻門《ろうこくもん》だと思います」
 門に刻まれた「漏刻」は、中国語で水時計のことを示すのだと説明を加えてから門をくぐった詩織は、周囲を見渡し、ぱっと顔を輝かせる。
「あ、これこれ、|日影台《にちえいだい》!」
「にちえいだい……?」
「いわゆる日時計のことです」
「日時計……?」
 後輩が説明と共に指し示す先を、白夜もまたまじまじと見つめる。
 木の柵で囲われた中央には、石が積まれ直方体の形に整えられた台。その上にはさらに色合いの異なる石の円盤があり、十二支が刻まれている。
 円盤の中央からにょっきりとしている棒は金属の何かだろうか。棒を照らす日差しが作り出した影が、円盤に刻まれた十二支の位置を示しているのを見ると、いわゆるアナログ時計のようだ。……もっとも、スマートフォン上のデジタルな数字表示が主流の昨今からすると、アナログ時計も珍しいものになりつつあるし、何にせよ時計とは縁のない生活を送りたい白夜としてはこれ以上の思考は避けたいところである。
「お前日時計とか好きなの?」
「好きというか……天文と時には密接な関係がありますからね」
 微笑む後輩の言葉に、妙な納得を覚える。
 なにせ、後輩は月と星空をこよなく愛する、無類の天文好きなのだから。
「日影台は、漏刻門の水時計の補助的な道具として使われたんですよね」
 資料によれば、かつて日時計は、漏刻門での水時計と一緒に使うことで正確な時刻を測っていたのだという。
 水時計は、門の上の|櫓《やぐら》に水槽を設置し、水が漏れる量で時刻を測定したといわれているから、手法の異なる二つの時計を使うことで測定精度を高めていたであろうことは容易に想像できる。
 いつの時代も時を正確に把握するのは重要だったようですね、と。日影台を見つめながら、詩織は微笑む。
「往時は二十四節気に基づいて年に24回角度を変えてたそうですよ」
 「二十四節気」は、四季・気候などの視点で地球上の一年を仕分ける方法で、中国発祥のものだ。一年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けたものとなる。日本の暦とも深く結びついたこれらの内容は、一見すると国語や古典分野にも見えるが、実際は理科の領域であり、国立天文台が編集する理科年表の暦部にも詳しく記されている。
 主に月の満ち欠けによって定められる太陰暦をベースにしながら、季節の移り変わりである太陽の動きにも対応できるように作られた「太陰太陽暦」に、季節の目安として設けられたのが、二十四節気なのだと。心持ち説明の言葉が楽しそうなのは、本業の理科教師たる所以か。
「へぇ、二十四節気ねぇ……わざわざ角度変えないと使えないなんて不便だな」
「確かに今は、そこまでの回数は変えることはなくなったでしょうけど、それでもまだ四季の目安は残ってますから。今は年に4回、先日は夏至でしたからその時にも変えてるはずです」
「おー、夏至。聞いたことあるヤツだ。もしかして春分の日とか、秋分の日とかも?」
「ええ、そうなりますね。往時の時を感じますね……」
 気がつけば先輩と後輩ではなく、先生と生徒のやりとりになってしまっているけれど。それもまた修学旅行らしいといえよう。
(「日時計にここまで夢中になるやつも珍しいだろな……」)
 往時の時とか言われてもよく分からないけど、とりあえず後輩が楽しんでるのは分かるから。
 日差しの熱さで再びほてり始めた頬を手にしたペットボトルで冷やしながら。楽しそうに日時計へと一眼レフのレンズを向ける後輩を眺め、白夜は微笑ましげに目を細めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高嶺・円
【妖怪境界組】
首里城も色々歴史があるけど、完全な復興はすぐそこかな?

『首里城にこんなカフェ(茶屋)があったなんてな、これが琉球菓子かぁ』

琉球菓子……何だか独特な感じがするね、ちんすこうは名前だけは聞いた事あるけど、甘くて少し硬くて独特な食感のビスケット?

汀砂あんも、何かスパイス効いてる独特感あるけど、こんな餃子パイあってもいいかも

吉備ちゃんの茶屋に、何かしら参考になったりするのかな?

デイジーちゃんは、擬似的な多幸饅頭に使えたりするのかな?

『そーいや吉備とデイジーは店経営してたっけな、あっ……円、冬瓜漬も香りと甘さが逸品だぜ』

確かにこれ、優しい感じ香りと甘さがあるね

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


デイジー・クゼ
【妖怪境界組】
修学旅行はわたしは経過した身の上ニャけど、もう一度修学旅行に近い事が出来るとは思わニャかったんよ

沖縄琉球の文化も食文化も独特ニャね
……汀砂あんはグローブかニャ?でもこの香りと甘さもとても美味しいニャんよ

円ちゃんの餃子パイにも吉備ちゃんの和菓子にも組み込めそうかも、わたしも擬似的な多幸饅頭作って、中身をこの餡にしても

(円とユピテルーク、吉備となまりとひいろのやり取り見て)

ニャんだか微笑ましくて落ち着くけど……相方わたしも欲しいかもニャ

(影使いでゼージャッテン(影業)を海産物に姿を変え)

お土産かぁ、わたしもルインクちゃんとヒナスミちゃんに買っていくかニャ


小雉子・吉備
【妖怪境界組】
実際見てみると、完全な立ち直りも近いかな?茶屋が建つくらいには?

にしても、ここの茶屋のお菓子……りゅーきゅっ!って感じを表現するくらいに独特だよね……キビの茶屋で参考に出来るかな?汀砂あんは原材料があれば取り入れやすそーだけど、確かにそんな餃子パイや自作多幸饅頭も面白そうかもっ!

なまりちゃん、ひいろちゃん、ちんすこうや冬瓜漬美味しい?

何か、こう言う雰囲気も独特なホッコリ感あるよね、琉球菓子をじっくり味わって……さんぴん茶の香りも変わってるけど、琉球菓子にあってるかも

うん、ちんすこうもこの甘さに食感も面白いし……お土産に琉球菓子色々買えるなら買っとこう

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]




 ――首里城公園の正殿内、|鎖之間《さすのま》にて。
「修学旅行はわたしは経過した身の上ニャけど、もう一度修学旅行に近い事が出来るとは思わニャかったんよ」
 くすぐったそうに微笑み「修学旅行のしおり」を開いて、首里城に関する記載を指でそっとなぞりながら、デイジー・クゼ(シーアクオン弐號と書いてニャゴウ・f27662)は自身が座るその場所をぐるりと見渡す。
 掛け物が飾られた床の間のある、落ち着いた雰囲気の畳の間。
 開かれた障子戸の間から見えるのは、琉球石灰岩を積み上げ、一本の仕立てた松の木とソテツで構成された、枯山水風の庭園だ。訪れる前に調べた資料によれば、琉球庭園と呼ばれる、日本庭園の様式を主体に中国庭園の様式を加えた、琉球独特の庭園様式であるのだとか。
 琉球王朝時代は、王子の控えの間や賓客をもてなす場所として使われていたといわれるその場所から見える外の景色はなんとも風情があって。
『それにしても、首里城にこんな|カフェ《茶屋》があったなんてな』
 なるほどな、と呟きを漏らすのは、高嶺・円(名とご当地を受け継ぎし、餃子スサノオ・f44870)がルーくんと呼ぶ、相棒の|天雷神機《ユピテルーク》。
 今回はユーベルコード【|天雷神機・雷獣変《ユピテルーク・ライジュウチェンジ》】によって雷獣に変化し、円とともに旅行を楽しむ身だ。
 彼もまた、円の肩の上に乗り、興味津々に周囲を見渡し、その雰囲気を楽しんでいるようだった。
 すっかり観光客気分の相棒の言葉に、円はくすりと小さく微笑んで。
「首里城も色々歴史があるけど、わたしが行ったことのある世界の首里城は、正殿はまだ復興に向けた修繕中なんだよ」
 現代地球であるUDCアースでは、まだ正殿は復興していない。それでも、このアスリートアースの首里城は、他世界よりも一足早めに復興できているようだった。
 もしかしたらと思って訪れた正殿内部にある鎖之間においても、かつてのようにカフェがあって。なんだか不思議な気持ちになりながら休憩しているのが今だったりする。
「あ、でもここ以外の首里城も、完全な立ち直りも近いかなーっては思うんだよ。鎖之間ではないけど、茶屋は建ってるって話は聞くから」
 ユピテルークに説明する円の言葉に補足して微笑むのは、小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)。
 この旅行に行く前に調べたところによれば、休憩所として提供されている施設内に併設されているみたいだよ、と言いながら。吉備は、目の前のお膳に置かれた菓子を見つめる。
「にしても、ここの茶屋のお菓子……りゅーきゅっ! って感じを表現するくらいに独特だよね」
「琉球菓子……何だか独特な感じがするね」
 吉備の言葉に同意し、円もまた、目の前に置かれた皿の上の菓子を見つめた。
「ちんすこうは名前だけは聞いた事あるけど、甘くて少し硬くて独特な食感のビスケット?」
 卵やバターを使わず、小麦粉・砂糖・ラードを使った焼き菓子であり、いわゆる沖縄の定番土産にもなっている菓子、「ちんすこう」。
 形もまた土産でよく見るような細長い形をしている。資料によれば、かつては菊の花の形をしていたのだとか。
 食感が面白いと感想を述べる円に、デイジーもまた頷きを返して。
「こっちのくんぺんはちんすこうとは違う食感の生地に胡麻の餡が使われているニャね」
 外側の生地に卵黄・小麦粉・砂糖を使い、中身として胡麻の餡を入れて焼き上げたのが「くんぺん」だ。
 目の前のそれはカットされ、何分の一かのサイズで盛り付けられているけれど、一つ丸ごとを食べるとまた味わいが異なるのかもしれない。
「この砂糖菓子みたいニャのは、グミみたいにもちっとしているニャ!」 
 一見して生姜の砂糖漬けにも似た見た目に、グミのような弾力のある食感の菓子は「|冬瓜漬《とうがんづけ》」。
 冬瓜と呼ばれる、沖縄では炒め物や味噌汁の具などで馴染み深い野菜を使っているのだという。ちなみに冬瓜の季節は、名前に反して夏。今が旬の野菜だ。名前の由来に「冬」が入っているのは貯蔵性が高く夏に収穫して冬まで貯蔵することができることから来ているのだとか。
「へぇぇ、野菜を煮詰めて作るお菓子なんだねぇ」
 デイジーがもきゅもきゅしている様子に、吉備もまた面白そうに冬瓜漬を見つめてパクリとする。
 生姜や果物の砂糖漬けは見かけるけれど、冬瓜って、西瓜の親戚のような名前だから、ものによっては大きいんだろうけれど。砂糖漬けにするために色々手間をかけているのかな、と思いながらもきゅもきゅとして。それから吉備は、菓子とともに提供されていたお茶の器を手にした。
 器を傾けてお茶を一口含めば、ジャスミンを思わせる芳香と、烏龍茶を思わせるさっぱりとした味わいが吉備の口の中に広がる。
「さんぴん茶の香りも変わってるけど、琉球菓子にあってるかも」
 中国のジャスミン茶とも似ているそのお茶は、「さんぴん茶」という、沖縄ではよく知られているお茶らしい。なるほど菓子との相性はよく、これもまたとても美味しい。
「何か、こう言う雰囲気も独特なホッコリ感あるよね。なまりちゃん、ひいろちゃん、美味しい?」
 ほぅっと息を吐いてから、吉備は傍で同じように菓子を食べている青色の狛犬なまりと、赤い猿ひいろにも声をかける。
 なまりはちんすこうを食べながらわふっと頷きしっぽをふりふり。
 ひいろもまた、吉備の真似っこをして冬瓜漬を食べながらさんぴん茶を飲み、満足そうに頷きを返してくれた。
 二匹の可愛らしい仕草にもほっこりとしつつ、吉備がさんぴん茶を飲み干せば、カフェのスタッフがお茶のおかわりを提供してくれて。
 円もまた、おかわりとして淹れてもらったお茶を飲み、相棒の雷獣に声をかければ、
「ルーくんもさんぴん茶のおかわりいるよね?」
『ああ、いただくぜ。悪いな円』
 機嫌良さげに尻尾をパタパタとさせる雷獣もまた、提供された菓子を頬張る。
『あっ……円、冬瓜漬も香りと甘さが逸品だぜ』
「確かにこれ、優しい香りと甘さがあるね。あとはこのピンク色の……汀砂あん、かな?」
 雷獣に勧められるままに冬瓜漬をいただき、ほっこりとした円は、お茶請けとして出された四つの琉球菓子の最後の菓子を口にする。
 見た目ピンク色の饅頭にも見える「|汀砂あん《てぃーさあん》」。|丁子《ちょうじ》を加えて香りをつけた小豆あんをピンク色のパイ生地の皮で包んだその菓子は、聞けばペリーが琉球を訪れたときにもてなすための料理の一つとして出てきたとの記録もあるという。
「何かスパイス効いてる独特感あるけど、」
「……このスパイスはグローブかニャ? 沖縄琉球の文化も食文化も独特ニャね。でもこの香りと甘さもとても美味しいニャんよ」
 丁子は、洋名ではクローブというのだと言いながら、デイジーもまた菓子を口にする。
 食べれば口の中に広がるスパイスの香りは、独特ではあるけれど、決して嫌いな味ではない。
 微笑むデイジーに、円はふと思いつき。
「デイジーちゃんは、擬似的な|多幸《たこ》饅頭に使えたりするのかな?」
「そうニャね……わたしも擬似的な多幸饅頭作って、中身をこの餡にしてもよいかニャと思うニャ。円ちゃんの餃子パイにも、吉備ちゃんの和菓子にも組み込めそうニャよ」
「あっ、デイジーちゃんもそう思う? わたしも、こんな餃子パイあってもいいかもって思ったんだ。あと、吉備ちゃんの茶屋にも、何かしら参考になったりするのかなって」
『そーいやデイジーと吉備は店経営してたっけな。その辺どうなんだ?』
「キビもね、茶屋で参考に出来るかな?って思ってたよっ! 汀砂あんは原材料があれば取り入れやすそーだよねっ」
 なんやかんやで食べ物には思うところを持つ三人+αが集えば、自然と盛り上がるのは自分の店や得意分野にどう取り入れていくかの話で。
「円ちゃんとデイジーちゃんのいう、そんな餃子パイや自作多幸饅頭も面白そうかもっ!」
 汀砂あんの餡だけでなく、くんぺんの麻餡を使うのもよさそうだと付け加えて吉備は微笑む。
 三人の会話を聞いていたスタッフが微笑みながら教えてくれた話によれば、くんぺんの餡はこの場で提供されている胡麻の餡だけではないという。黒胡麻メインだったり、白胡麻とピーナッツを混ぜた餡など様々で風合いもまた異なってくるのだとか。
 汀砂あんや冬瓜漬は現在では提供する店は限られているものの、ちんすこうやくんぴんをはじめとした一部の琉球菓子は、首里城周辺に点在する製菓店によっても独自の製法があり、味わいが少しずつ異なってくるというスタッフの話に、
「ふふっ、いいこと聞いたよね! ちんすこうもこの甘さに食感も面白いし。キビの茶屋にも、円ちゃんとデイジーちゃんのアイディアにも使えそうなら、お土産選びながら琉球菓子色々買えるなら買っとこう!」
 ね、なまりちゃん、ひいろちゃん、と。自身の相棒達にも呼びかける吉備。
『円も土産買うんだろ?』
「そうだね、ルーくん。餃子パイの具のアイディアにも使えるならいいかも」
「お土産かぁ……、」
 確かによいニャね、と。デイジーも手にした茶器を傾けさんぴん茶を飲みながら、小さく頷く。
 けれどその視線は、菓子というよりは、わいわいと話をする吉備と円とそれぞれの相棒達に向けられていて。
(「ニャんだか微笑ましくて落ち着くけど……相方わたしも欲しいかもニャ」)
 ちょっぴり羨ましそうに目を細めてから、デイジーがそっと呼び出したのは、自身の愛器である影業「ゼーシャッテン」。
「……わたしもルインクちゃんとヒナスミちゃんに買っていくかニャ」
 海産物の影が同意するように揺れれば、デイジーは微笑む。
 あと数日滞在する修学旅行。大切な人たちに買う、形あるもの以外にも、たくさんの体験をお土産話として持ち帰るのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
【🐟️×🍄×🥟】
首里城の火災による大災からの、立ち直り今に至る様には、何と言うか共感を感じ得ませんでしたが

この後、ソーキそばを食べるのが習わしでしたでしょうか?取り敢えず『グルメ情報&情報収集』して

頃合いのお店を見つけましたが、キノコはどのお店にも見当たりませんでしたが

ソーキにも興味が?それならこのお店(てだこ)で

味噌味のソーキそばは、甘めの味噌にソーキの味と麺の食感が……エミリさんは自家製餃子付きですか

『これがソーキそばか、麺の食感もさる事ながら餃子とも合うとは』

ルイさん、アメリさん、味噌スープとソーキの組み合わせも良いですよ

わたしもアメリさんのを少し頂きたいです。

※アドリブ絡み大歓迎


エミリロット・エカルネージュ
【🐟️×🍄×🥟】
首里城の今に至るまでの過程、ボク達にも、思い至る事があるから尚更だよね、下手すればボク達今もこの場には

……雨にも負けず、風にも負けずとはこの事かな?これからも首里城を見習って、ん?ソーキそばかぁ

キノコは残念だけど、それは次に他ジャンルで探してみようか

それにしても、このお店……人際濃い感じするね、ソーキそばのお店始めてだから、比較は出来ないけど

あっ、このソーキそば……餃子も付いてるんだ、コクがあるけどさっぱりしてて、餃子とも合うっ!

シャオロンも、ルイさんも、アメリちゃんも食べて見てよ

『ちゃーお♪(餃子とスープを合わせ食べたり麺を食べたり)』

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


アメリ・ハーベスティア
【🐟️×🍄×🥟】
そう言えばビスちゃんもエミリちゃんも、一時期大変だったのは聞いていますが、周りの支えがあって

首里城自体も中国と日本のミックスの独特な風貌ですが

『共感しそうと言うか、ある意味あり様は似てるね……あっ、確かに首里城周辺にソーキそばのお店が沢山あったかな?』

茸自体が沖縄ではマイナーなのは残念ですが、無くはないので後日期待して、アメリもソーキも興味あるので、異議無しなのです

『これがソーキそば、麺も噛み応えあって、スープも調和してて美味しいや』

ソーキも中々美味しいのです、餃子とも合うのですか?味噌とソーキも、じゃあ、互いに分け合いっこを

これも素敵なのです

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎




 せっかく案内人の娘から「修学旅行のしおり」をいただいたのだからと。
 可能な限りしおり記載の|スケジュール《ならわし》に従って行動してみようと示しあわせるは、【🐟️×🍄×🥟】ことビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)、アメリ・ハーベスティア(キノコ好きの「よいこ」な地竜の末裔・f38550)、エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)の三人組。
 ビスマスとアメリそれぞれのユーベルコードにより変化したルイと小型化したラングリフ、そしてエミリロットの相棒であるシャオロンの三匹(体)も加わり、なかなかの大所帯になった一行は、しおりに示された首里城と首里城公園内をゆっくりと見て回った後、現在は昼食場所として定めたとある沖縄そば専門店に訪れていた。
「ソーキそばのお店は、取り敢えずグルメ情報から情報収集して頃合いのお店を見つけてみたのですけれど……首里城からは思ったより離れてましたね」
 修学旅行らしく、地元の交通機関も活用しながら訪れたその店は、首里城公園のある那覇市の隣にあたる浦添市に位置していた。
 近くには市役所や図書館といった公共施設らしい建物が目につく、住宅地寄りの場所は、ともすると迷ってしまいそうだったと、苦笑するビスマスに。
「けれど、ビスちゃんの情報は確かなのです。アメリもソーキも興味あるので、とても楽しみなのです」
 猟兵であれば自前のあれやこれやですんなり移動できるけれど、あえて公共交通機関を使うのが旅行の醍醐味だと思うのですと、アメリは微笑む。
 惜しむらくは茸を使った沖縄そばのお店を見つけられなかったことくらいだろうか。
 茸自体が沖縄ではマイナーなのかもしれないと思うと残念ではあるけれど、全く望みが無いとも言えない。その点は後日期待したいところだ。
「それにしても、このお店……人際濃い感じするね」
 ビスマスとアメリの話を聞きながら。店の前に並ぶ人々の列に加わりつつ、まじまじと店の外装を見つめていたエミリロットは素直な感想を述べた。
 雨風を受けて年季の入ったコンクリートの建物の一階。赤瓦の屋根とタイル張りの構えは、独特な雰囲気で。
 前情報がなければ入るのを一瞬躊躇ってしまうかもしれない。
「イメージとしては濃い感じですけれど、調べた限りでは、長年経営している沖縄の飲食店はこういう雰囲気のところ多いみたいですよ」
 ちなみにこの店に限らず沖縄県内で数十年レベルで昔から続いている食堂をはじめとした飲食店は、一見さんにはなかなか敷居が高く感じられてしまう外観が多かったりする。けれど一度中に入ってしまえば、なんとなく昔から通っていたような気分になってしまう。
 俗に言う古い飲食店あるあるとも言えよう。
「そっかぁ。昔ながらの餃子店みたいな感じなのかな」
 一番身近な餃子専門店をあれこれ思い浮かべて思わずくすりとするエミリロット。
 ソーキそばのお店は初めてだから、比較は出来ないけど。ソーキそばや沖縄そばに限らず、この旅行の中で目に触れる機会があればわかってくるものなのかもしれない。
 そんな言葉を交わすうちに、いつしか行列の先頭に立っていたエミリロット、アメリ、ビスマスの三人は店員に呼ばれ、店内の席へと案内されるのだった。


 席へと着いてそれぞれに注文を終えた三名+αの面々が、食事を待つ間に言葉を交わすのは、先ほど見て回った首里城公園の話で。
「首里城は、それ自体も中国と日本のミックスの独特な風貌でしたね」
 様々に興味深かったのですと、微笑んだアメリの言葉に、
「首里城の火災による大災からの、立ち直り今に至る様には、何と言うか共感を感じ得ませんでしたが」
 改めて首里城正殿を見た時に感じたことを振り返ったビスマスは、しみじみと息を吐く。
 現代地球として訪れる機会の多いUDCアースの沖縄においては、数年前の大火事によって、正殿をはじめとした首里城の中心部にあたる建物が消失しており、現在は目下復旧作業中となっている。
 だが、今回機会を得て訪れたアスリートアースの首里城正殿はかつて見た堂々たる威厳を放ちながら|御庭《うなー》と呼ばれる中心部から見た正面に鎮座していた。見渡す限りの朱の彩の鮮やかさも、足を踏み入れ玉座に至るまでの内装の美しさも、ビスマスの記憶に残る首里城そのままだった。
 焼失したあの日の出来事は、まるでビスマスが幼少の頃に体験した自身を取り巻く環境が一転した過去のある日を見ているかのようで、とても苦しかった。そのまま焼失したままの状態になるかと思われたところに、差し伸べられた周囲の助力の手。
 それは、終わりの見えない地獄の日々に心身ともに沈みかけていた当時の自分と、手を差し伸べ掬い上げてくれた恩師の状況にとてもよく似ていた。
 だからこそ、再建が完成した状態の首里城をこのアスリートアースの地で目にした時にはなんとも言えない気持ちになってしまったのだと。
 ぽつぽつと語られるビスマスの素直な感想に、うんうんと頷いたのはエミリロット。
「うん、ビスちゃんの言いたいことはわかるよ。首里城の今に至るまでの過程、ボク達にも、思い至る事があるから尚更だよね」
 エミリロットもまた、ビスマスと同じように過去の転機に打ちのめされかけた経験がある。
 失われていたはずの、ヒーローズアースで恩師に保護される前の記憶。意図せず覗き見ることになったその真実は、あまりにも衝撃的すぎた。
「……。うん、下手すればボク達今もこの場には……」
 いなかったと思う。言いかけた言葉の最後をそっと飲み込む。
 神隠しに合ったあの時はもちろん、その記憶を知ってしまった時も、苦しかった。苦しくて、打ちのめされそうにもなった……けれど、今生きて、こうして笑ってここにいることができている。
「ビスちゃんもエミリちゃんも、一時期大変だったのは聞いています」
 神妙な顔でそれぞれを見つめていたアメリが、コップの水を飲みながら頷く。
「周りの支えがあって、なのですね」
 今、アメリと一緒にこうしてソーキそばのお店でお話ができているのも、たくさんの助けと支えがあったからこそ、なのですね。
 アメリから溢れたしみじみとした共感の言葉には、そうだねぇと返してから、エミリロットは小さく笑った。
「……雨にも負けず、風にも負けずとはこの事かな?」
 幸いにして、エミリロットは一人ではなかった。ビスマスが、親しくしてくれた様々な人が支えてくれたから、少しずつ向き合うことができている。
 首里城が災難に見舞われたのは、数年前の火災だけではない。
 歴史を紐解けば過去幾度となく焼失したという記録を持つこの城が、そのまま失われることなく再建を迎えることができたのは、偏に周囲の助力によるものが大きくて。そしてそんな首里城同様に、エミリロットもビスマスも、周りに支えられているから。
「これからも首里城を見習って――、」
『ちゃーお!』
 頑張ろう、なんて。綺麗な言葉で締めくくろうとしたところににゅっと割り込み一声鳴いたのは、相棒のシャオロン。
「ん? どうしたの、シャオロン?」
「エミリさん。どうやら、注文したものができあがったようですよ?」
 シャオロンをフォローするようにそっと言葉を添えたビスマスが、微笑みと共に視線を向ける先には、配膳トレイに注文の品をのせて運んでくる店員の姿があった。
 さぁ、ここからはソーキそばへの舌鼓タイムだ。


「あっ、このソーキそば……餃子も付いてるんだっ」
 カタリと置かれた皿の上に並ぶのは、エミリロットにとっては馴染み深いもの。
 沖縄そばのお店なのに餃子があるという嬉しい驚きに金の瞳をパチクリとさせるエミリロットに、ビスマスは微笑んで見せる。
「ええ。サイドメニューにあったんです。エミリさんなら絶対喜んでくださると思って一緒に注文してみました」
「えー、全然気が付かなかった! ありがとう、ビスちゃん! では早速!」
 メインのソーキそばはもちろん食べるけれど、餃子があるなら最初に食しておきたいと。何はさておいてと手にしたエミリロットは、お箸で餃子を一つ摘み、早速パクリ。
「わっ、三枚肉入りの餃子だぁ。沖縄そばの具材が餃子のトッピングになってるんだね。もっちりとした生地もおいしい!」
 もきゅもきゅ味わったところで、本命のソーキそばもいただきます。
「スープ、コクがあるけどさっぱりしてて、餃子とも合うねっ!」
 スープは、一見濃い豚骨スープのようだけれど、実際はとてもまろやかであっさりとしていて、飲み干してしまえるほど。
 それに合わせる麺だって、負けていない。細部にまで店のオーナーのこだわりがうかがえる自家製麺は、スープと合わさることで全体のおいしさを引き上げてくれている。
「シャオロンも、ルイさんも、アメリちゃんも食べて見てよ」
 満面の笑みでおすすめするエミリロットと、餃子とスープを合わせて食べたり、麺を食べたりしているシャオロンに倣って、アメリもまた、ソーキそばのソーキをパクリ。
「ソーキも中々美味しいのです、餃子とも……合いますね、美味しいのです」
 しっかりと煮込まれたソーキは、口に入れて噛むたびに肉の旨みが広がってきて、とても美味しい。スープと餃子の相性も抜群だ。
 アメリの相棒ラングリフも、アメリに分けてもらいながらスープと麺をいただいて。
『これがソーキそば、麺も噛み応えあって、スープも調和してて美味しいや。餃子も合うなら僕もアメリと一緒に食べてみたいな!』
『ふむ、麺の食感もさる事ながら餃子とも合うとは奥が深いのう』
 同じくもきゅもきゅと麺とスープと餃子のハーモニーに舌鼓を打っているのは、ビスマスのファミリア、ルイだ。
「定番スープ、おいしそうですね。ルイさん、アメリさん、味噌スープとソーキの組み合わせも良いですよ」
『味噌味とな!』
「味噌味もあるのですね。これは奥が深いのです」
 目を丸くするルイと、興味深げに瞳を輝かせるアメリに、ビスマスはにっこりとして。
「はい、この味噌味のソーキそばも甘めの味噌にソーキの味と麺の食感がよくあっています」
 麺にスープに具材にと組み合わせが様々に存在しているところは、ラーメンのそれともよく似ていて。けれど実際に食べてみるとラーメンとはまた異なった味わいが楽しめるのが、沖縄そばらしさと言えるのかもしれない。
「ビスちゃんの味噌味ソーキそば、アメリも食べてみたいです」
「いいですよ。わたしもアメリさんのを少し頂きたいです」
「じゃあ、互いに分け合いっこをしましょう」
 定番に変わり種のソーキそばに、餃子にと、それぞれのメニューをシェアして楽しみながら。一行が過ごすソーキそば時間はゆっくりと過ぎていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリガ・ホーリエル
アンナ(f03717)と一緒に

前から来たかったのよね沖縄。恋人のアンナも(無理矢理)連れてきたからにはやることは一つ!旅行を全力で楽しんで、二人の思い出を残すことよ!
あと旅行中は人への擬態を解いて本来の魔王姿になる。せっかくの開放的な場所だし…ね♪

というわけで前から興味があった琉球ガラスを作りに来たわよ。熱いと言っているアンナと一緒に風鈴作りに挑戦してみるわ。大丈夫、手先は器用よ(WIZ判定)。

お互いに出来たら、アンナと互いにプレゼント!出来がどうであろうと恋人からのプレゼント。大事にさせてもらうわ。

時間も余ってるし、他の店にいくわよアンナ!こうして私たちは観光するため走り出すのだった。


アンナ・フランツウェイ
オリガ(f12132)と一緒に

どうも、クーラー効いている部屋でダラダラしていたら、恋人のオリガに沖縄へ連れてこられたアンナです…。まあせっかくだから、沖縄を楽しもう。…冷たくて美味しいものあるといいなぁ。

「あっつ…」
それが琉球ガラス工房に入った私の一言目。熱くて逃げたいけど、オリガが作るようだし、せっかくだからオリガへのプレゼントを作ろう。え、手先の器用さ?い、【医術】や【武器改造】の原理で、こう…。

出来たらオリガにプレゼント。出来は色んな意味で保証は出来ないけど、喜んでもらえると嬉しいな…。

終わったから冷たいの…と思ったらオリガはまだ観光すると言い出した。
「あ、あああ~(引っ張られていく)」




 青い空に白い雲。さんさんと降り注ぐ陽の光を受けて輝く、エメラルドグリーンの海と極彩色の植物たち。
 いかにも南国と言わんばかりの景色を前にして、キラキラと青の瞳を輝かせるのは、オリガ・ホーリエル(黒き天使と歩む快虐の魔王・f12132)。
「前から来たかったのよね沖縄!」
 そこには、常のお嬢様然とした姿はない。せっかくの開放的な場所なのだからと、人への擬態を解いて本来の魔王の姿となったオリガに、楽しむ以外の選択肢などない。
「やることは一つ! 旅行を全力で楽しんで、二人の思い出を残すことよ!」
 そうでしょ、と、声を弾ませ視線を向ける先には、最愛の|娘《ひと》――アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)の顔。
「ね、楽しみましょうね、アンナ!」
「……」
「ちょっと、アンナ大丈夫?」
 さすがに心配になったオリガがぎゅっと抱きしめれば、
「……うん、大丈夫〜」
 ちょっと南国の日差しの強さと暑さにクラクラしただけ。ついさっきまでクーラー効いている部屋でダラダラしていたところから連れ出されての今なのだ。身体だってびっくりしてしまう。
 けれど、流石にオリガを心配させるわけにはいかない。オリガがアンナへ想いを寄せてくれるのと同じくらい、アンナだってオリガのことが大好きで大切だから。なんだかんだ言っても、恋人には笑顔でいて欲しい。
「まあせっかくだから、沖縄を楽しもう」
 とっかかりはさておき、せっかく訪れた南の島。オリガが喜ぶ顔を見ることはもちろん、アンナ自身も楽しんでこその旅なのだから。
(「冷たくて美味しいものあるといいなぁ」)
 だが、そんなささやかな願いはすぐには叶わないことを、アンナはすぐに知ることになる。


 オリガの希望に合わせて二人が訪れたのは、読谷村にある、琉球ガラス工房。
 広い敷地に工房と販売スペースが併設されたその場所で体験するのは言わずもがなの「琉球ガラス体験」。
 販売スペースに足を踏み入れれば、迎えてくれたのは店内のライトを受けてキラキラと輝く色とりどりの琉球ガラスの数々で。
「すごいわね! 彩鮮やかでとても綺麗よね!」
 前から興味があったと歓声を上げるオリガを横目に、なんとなく嫌な予感を募らせていくアンナ。
「……オリガ……もしかしてこれ」
「ええ! 作るわよ? そのために来たんだもの!」
「ええ〜……だってそれすごく熱いんじゃ……」
「そりゃそうよ、だって琉球ガラスなのよ? 高温でガラスを溶かすんだから」
「私……体験しないでもいい?」
「ダメよ! 私、アンナと一緒にガラス体験するの楽しみにしてたんだから!」
「……そうだよね……」
 作るのなら何がいいだろう。作る工程の熱さは避けられないのなら、せめて出来上がったものは少しでも涼を感じられるものがいいなぁと思うアンナの傍で。
「ねぇ、アンナ。これなんかどうかしら」
 店のスタッフから渡されたオーダーシートを眺めていたオリガが指で指し示す先には、風鈴の文字。
 確かに涼を感じはするけれど、グラスよりも技術度が上がりそうにも見える。
「これって……」
 ――難しかったりするんじゃないかなぁ?
 弱気な言葉が口から出そうになるも、オリガのキラキラとした笑顔が眩しくて、アンナは言葉を飲み込む。
 こんなに楽しみにしている恋人が、一緒に体験したいと言っているのだ。これ以上ネガティブな言葉を発して彼女をがっかりさせるわけにはいかない。
 ……きっと熱いけど。絶対逃げたくなるけど。もうそれはそれだ。
(「せっかくだからオリガへのプレゼントを作ろう」)
 出来栄えがどうなるかはちょっとわからないけれど、医術や武器改造スキルがこう、いい感じになるならば……!
 内心で色々覚悟を決めれば、アンナは改めてオーダーシートに視線を落とした。
 スタッフが示してくれるサンプルの中から目に留まったのは、ディープブルーとエメラルドグリーンが入った|外見《そとみ》を持った風鈴だった。
 エメラルドグリーンはこの店に入る前に見た、沖縄の海の色。ディープブルーはオリガの瞳の色にも似た美しい青色だ。
 波模様になるようなデザインにできたらきっとかわいくなるだろうし、オリガもきっと喜んでくれる。
(「綺麗にできるといいなぁ」)
 もしかしたら出来栄えはあんまりかもしれないけれど、お店の人もサポートしてくれるなら多分どうにかなる……かな。
 記載したオーダーシートをスタッフに手渡しながら、改めてオリガの方を見やれば目が合った。
「うふふ、吹きガラス体験、楽しみましょうね、アンナ♪」
 これからの体験が楽しみだと微笑む恋人に、アンナも小さく笑みを返すのだった。


 デザインが決まり、スタッフの確認が入った後。オリガとアンナはスタッフの案内と共に工房内へ。
「……あっつ……」
「アンナってば、またそんなこと言って。はい、軍手。アームカバーはつけてあげるわ」
 スタッフから渡されたアームカバーを自身の腕に装着してから、オリガはアンナへと軍手を手渡した。
 その一方で、アンナの腕にもアームカバーを装着させていく。ゆっくりペースながらも恋人が軍手を装着してくれたことを確認したところで、いよいよ体験開始だ。
「最初はガラスを吹く作業だそうよ!」
「え、あの赤いものを吹くの? 熱そう……」
 スタッフの話によれば、溶けたガラスは、1300度もあるのだとか。
 猟兵である上に魔王だったり天使だったりなオリガとアンナであれば最悪どうにかなるのかもしれないが、何はともあれ危険なことには変わりないし、何より今日は戦闘ではなく工芸体験。しっかりとスタッフの指示に従ってこそだと、目配せとともに頷き合い、二人は慎重にガラスを吹いていく。
 グラスであれば長く吹くほど高くなるという溶けたガラスは、風鈴の場合ならばあんまり大きすぎるのも可愛くない気がする。
(「強く長く吹くというよりは、心持ち優しく風を送るほうがいいのかしら」)
 イメージするなら恋人に優しい風を送る感じ……?
 アンナの耳元にふっとするようなイメージを思い浮かべたら、可愛らしいリアクションする様子まで想像できてしまって、思わず口元を緩ませてしまうオリガ。もちろん|恋人《アンナ》には内緒である。
 熱いガラスを膨らませる作業は一回のみだが、手早く行わなければ熱で溶けたガラスは下に垂れてしまうという。
 時間との勝負と聞けばここは集中しなければ。そんな風に気持ちを込めて丁寧に吹いたガラスは、オリガの手によって、それらしい形へと変化していく。
 高温の熱を帯びて赤く発光していたガラスは、温度が下がればオーダーシートに記載した完成の色が見えてくる。
 ガラスが割れてしまわないようスタッフの手で定期的に温度を上げてもらいながら風鈴の口を広げていき。
 やがて完成したのは、淡いエメラルドグリーンに波を思わせる深いグリーンの模様が入った、丸っこい形をしたお椀状のガラスだった。
「いい感じにできてるでしょ?」
 このお椀状の部分を外見にして、パーツをつければ風鈴になるのだと言いながら、オリガは問いかけとともにアンナを見やった。
「うん、縁の部分とか形が整ってていいと思う〜」
「ホント? よかった、アンナにプレゼントしたくて作ったから、気に入ってもらえると嬉しいわ」
「そうなの? 私も、オリガにプレゼント……なんだけど」
 最後はもごもごとしながら、アンナがそっと指し示す先には、全体的に少し歪なお椀の形になった、ガラスがあって。
 試行錯誤はしたんだけど、出来はイマイチになっちゃった、と。少し申し訳なさそうにするアンナに、そんなことないとオリガは微笑む。
「出来は関係ないわ。だって、アンナからのプレゼントなんだもの。大事にさせてもらうわ」
 だって、世界に一つだけの、オリガのためだけのものだから。歪さもひっくるめて大切な、オリガだけの宝物だ。
「ありがとう。私も、オリガからのプレゼント、大事にするね」
 体験で作成した二人のガラスの作品は、徐冷窯にいれて一晩かけてゆっくりと温度を冷ました後に受け取ることができるのだという。
 受け取りは翌日になるというスタッフの説明に、受け取ったら改めて互いにプレゼントをしあおうと、オリガはアンナと二人顔を見合わせ頷いて。
「それじゃあ、熱い体験も終わったから、冷たいの……」
「ね、アンナ。このガラス工房の近隣には、むら咲むらっていう体験型テーマパークがあるそうよ!」
「え?!」
「だって、まだこんなにも日は高いし、時間は余ってるもの! 全力で楽しむにはまだまだ時間はあるわ! 行きましょ!」
 力強く言い放った言葉と共に、オリガは満面の笑みでアンナの手を取り、引っ張っていくのだった。
「あ、あああ~」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榛名・真秀
【真胡】

沖縄久しぶりー!
ていうか、世界が違うのに一緒なの不思議だねー
くるみちゃん、わたし琉球ガラス作り体験してみたいんだ!
自分用にもお土産にもなるし

自分用には浅くて口広めのパフェグラス♪
沖縄の海をイメージした青を差し色に気泡の入った透明なグラスを
あ、パラスさんって屋台で縁があった人だっけ
うんうん、また今度みんなで行こー♪

さ、張り切ってやるよ!
教えてもらいながら体験
ドジなわたしでも大丈夫かな?
わ、あっという間
よーしお土産に他にも色々作っちゃう!
エリシャさんにはこども食堂に飾れる風鈴を

くるみちゃんの出来はどうかな?
すごーい!
色違いのお揃いいいね

確か完成まで時間がかかるんだね
届くの楽しみに待ってよ♪


未留来・くるみ
【真胡】
ホンマ久しぶりや
太陽が眩しいっ!
海が空が青いっ!
やっぱ違うなぁ

ええねええね
琉球といえば琉球ガラス!
真秀はんは何作るん?
それパフェが美味しなるやつやん
うちはグラスを作るんや!
パラスはんとこで使うてもらうねん
あそこええとこやでー
皆で一緒に行きたいわ
エリシャはんには風鈴かぁ
こども食堂の子らぁも喜ぶやろね
うちもお土産にしたろ

早速体験開始や!
色は泡と黄色と青にしよ
泡は雰囲気出るし黄色はうちのカラーやし
青は沖縄の海と空や
パラスはんには青と水色と白
沖縄の砂浜イメージや

職人はんに手伝うてもろて
はしゃぎながら体験開始
息吹込み過ぎて止められたりはご愛敬
今日の沖縄を切り取ったみたいなええグラスになるとええね




 ――読谷村にある、琉球ガラス工房にて。
「うわぁ、海きれー!」
「太陽が眩しいっ! 海が空が青いっ! やっぱ違うなぁ!」
 工房のすぐ前に広がる青い空と海を前に、思わず声に出して叫んでから、榛名・真秀(スイーツ好き魔法使い・f43950)と未留来・くるみ(女子大生宴会部長・f44016)は互いの顔を見合わせて微笑み合う。
「沖縄久しぶりー!」
「せやな! ホンマ久しぶりや!」
「ていうか、世界が違うのに一緒なの不思議だねー」
 自分の闇と死と文字通り隣り合わせで戦い、走り抜けた武蔵坂学園の学生時代。
 まさに青春としか言いようのないあの時の修学旅行は、本当に楽しかった。
 楽しかったから……もしかしたらあの頃と同じようには楽しめないかもしれないと、心のどこかでちょっぴり思ったりもした。
 けれど、そんな旅行前の不安は、この空と海を前にして、全部吹き飛んでしまった。
 かつての修学旅行とは、世界すらも違うというのに。この南国の太陽は、空と海は、あの時と同じように真秀とくるみを迎えてくれたから。
 様々な想いを胸に、しばらく空と海を眺めてくるみとはしゃぎ合ってから、真秀はふぅ、と満足げに息を吐いてにっこりと微笑む。
「くるみちゃん、今日はわたしのリクエストに付き合ってくれてありがとー!」
 沖縄に訪れた一日目の工芸体験は、紅型や焼き物など様々な内容があったけれど、真秀がぜひにと希望したのが琉球ガラス作り体験だった。
 自分用に作れば使うたびに旅行のことを思い出すことができるし、お土産にしたら相手にもきっと喜んでもらえると思うから。
「琉球といえば琉球ガラス! うちも作ってみたかったしな!」
 にぱっと太陽のような笑みとともにサムズアップするくるみ。
 体験は、一人よりも二人以上で分かち合ってこそだし、何よりこの旅行は修学旅行。思いっきり楽しんでこそ、帰ってからのお土産話にも花が咲くというものだ。
「ほな行くで、真秀はん! 景気のええものぎょうさん作ったるで!」
「うん! 一緒にがんばろー!」


 工房内の販売スペースで受付を済ませれば、しばしデザインを決める作戦タイム。
 案内されたテーブル席へと座り、借り受けたペンを片手でくるりと回しながら、くるみはオーダーシートへと視線を落とした。
 あれもこれもと膨らませた希望は、現実的にできるかどうかについてスタッフと相談しながら具体的なデザインに落とし込み、オーダーシートを作った後に実際の体験になるのだという。
(「こうやってみると、色々迷うやんな」)
 基本デザインとして色や形を選んでから、オプションとしてガラスの破片を使って色の模様をつけたり、泡や模様を入れたり、縁の形や取っ手をつけるなどを考えていく。選択肢の幅はなかなか広い。
 スペース内の棚には、さまざまな色や形のデザイングラスがずらりと並んでいるから、完成形をイメージするのは簡単ではある。けれど、その分作りたいものが無限に増えてきてしまって、つい悩んでしまう。
「真秀はんは何作るん?」
「わたしは、浅くて口広めのパフェグラス♪」
「それパフェが美味しなるやつやん」
「でしょ? 帰ってからパフェを食べるたびに沖縄の海を思い出すことができたら素敵だなって思ったんだよね」
 沖縄の海をイメージした青を差し色に気泡の入った透明なグラスを作ることができたらいいなと言う、微笑んだ真秀の言葉を聞きながら。くるみがちらと見やるは窓の外。
 さきほど真秀と二人で楽しんだ空と海の青の景色を琉球ガラスの作品として持ち帰って手元に置けるのは確かに魅力的だ。
「ええねええね、よっしゃ、うちも決めたで!」
 くるくるとさせていたペンをぐっと持ち直し。これにするわ、とオーダーシートの一つにチェックを記せば、真秀もそっと覗き込み。
「くるみちゃんはグラスにするんだね!」
「せや! パラスはんとこで使うてもらうねん」
「あ、パラスさんって屋台で縁があった人だっけ。エリシャさんからも話を聞いたことあるよー」
 名前を聞いて真秀が思い起こすのは、猟兵に覚醒して間もない頃にあった幻朧桜舞う世界であった大規模戦争の報告書。
 図らずも大行列となってしまったくるみの焼きそば屋台を手伝ってくれたというその人の名前は、確か真秀が手伝いをしているこども食堂の運営者でもある知人からも聞いた記憶がある。
「せやで、あそこええとこやでー。皆で一緒に行きたいわ」
 アルダワ魔法学園という蒸気機械の世界にある、バーなのだというくるみの説明に、大人な雰囲気の場所なんだねとぱちくりと瞬きをする真秀。
 ちょっぴり敷居が高い気もするけれど、そういえば夜スイーツのお店はバーも兼ねているところもあると聞いたことがあるから、もしかしたらスイーツみたいな何かもあったりして。
「うんうん、また今度みんなで行こー♪」
 今日はこの場にはいないこの旅行の案内をしてくれたスイーツ同志な友人も交えて、と真秀は頷く。
「くるみちゃんがパラスさんへのお土産作るなら、わたしも、エリシャさんへのお土産も考えちゃおうっと」
 スタッフの人には多めに製作したいとは伝えているから、オーダーシートは複数もらっている。あとは何を作るかだ。
 グラスも一輪挿しも素敵だけれど……、とサンプルの棚を眺めていると、ちりんと涼やかな音が聞こえてきた。
「あ、風鈴もあるー。きれー。これなら、こども食堂にも飾れるからみんなで楽しめるかも!」
「ええね。エリシャはんには風鈴かぁ。こども食堂の子らぁも喜ぶやろね」
 お土産を贈る相手を思い浮かべながら、言葉を交わし。そうして完成させたオーダーシートを前に、二人は顔を合わせにっこりと微笑み合う。
 完成形のイメージはバッチリ。あとは体験本番だ!


「さ、張り切ってやるよ!」
「せやな! 満を持しての体験開始や!」
 工房内にてスタッフから手渡されたアームカバーや軍手を丁寧に装着し、真秀とくるみは、気合を入れるべくえいえいおーと手を上げる。
 最初は、溶けたガラスを吹く作業だ。
「この作業でグラスの高さが決まるんやて!」
 体験とはいえ、泣いても笑っても一回勝負。とはいえ慎重にしすぎて時間をかければそれだけ溶けたガラスが垂れてしまうのだとか。
 そんな説明ののち、職人がガラスを溶かして準備をする様子を、わくわくと瞳を輝かせて食い入るようにしているくるみとは対照的に、真秀は緊張の面持ちだ。
「ドジなわたしでも大丈夫かな?」
 楽しみにはしていたものの、初めての体験に緊張でドキドキとしてしまう。
 そんな真秀に、くるみはにかっと笑って。
「ほな、うちが先に体験するな。見ててや!」
 わくわくと瞳を輝かせながら前へと出れば、さっそく体験開始!
「よっしゃ、一気に吹き込むでー」
 ふーっと吹き込みの勢いが過ぎて、あやうくロンググラスになりかけたのはご愛嬌。職人からの制止に、ペロリと舌を出す。
 ガラスを吹いた後は、道具を使って飲み口を広げる作業だ。
 右手にハシという道具を持ちながら、左手はグラスのついている竿を専用の台に置き、ひたすらにくるくる回していく。
 左手の回す手は飲み口を広げる作業の間は絶対に止めてはいけないという。手が止まりそうになると職人より声掛けやフォローが入るので安心ではあるが、それでも肩に力が入ってしまうのは否めない。
 後半は集中して無言を貫き、職人より完成の言葉を貰えば、ぱっと顔を輝かせる。
 仕上がったのは、透明なグラスに泡模様と黄色の|ガラスの欠片《カレット》を散りばめ、青のラインを入れた美しいグラス。
 海の雰囲気を表現した泡模様に、黄色はくるみ自身を表す色で、青は沖縄の海と空のイメージだ。
 職人の手によって竿から離れ徐冷窯へと運ばれる自らの作品を見送り、くるみは真秀を見やった。
「どや、真秀はん、見とったか?」
「うん! すごーい!」
「せやろ? よっしゃ、この感じで色違いを作ってくで!」
 パラスはんには沖縄の砂浜をイメージした青と水色と白のグラスを。
 真秀はんには砂浜からの朝焼けをイメージした白、泡、オレンジのグラスを。
 そしてこの場にはいない案内役の友人へ、昼下がりの凪いだ海をイメージしたピンク、泡、白のグラスを贈るのだ。
「よーし、わたしも!」
 くるみの体験を先に見て流れを把握した真秀もまた、続けて体験を開始する。
 傍目で見ていると長い時間に感じられたけれど、
「わ、あっという間」
 口を広げる作業はかなりドキドキしたけれど、集中しているからなのか、いざ自分がやってみると思いのほか時間の経過は早かった。
 職人の手によって竿からの切り離され、生まれ落ちた作品は、沖縄の海をイメージした青を差し色に気泡の入った、透明なパフェグラス。
「よーしこの調子で他にも色々作っちゃう!」
 くるみちゃんと、案内役の友人へは、それぞれのイメージカラーを差し色にした、お揃いの色違いのパフェグラス。
 エリシャさんへは、海と風をイメージした色と模様を施した風鈴だ。
 職人によって最後の仕上げとして切り離してもらったそれぞれの作品を見つめ、真秀は顔を綻ばせる。
「体験前はドキドキだったけど、すごく楽しかったね!」
「せやね。今日の沖縄を切り取ったみたいなええグラスになるとええね」
「ね。きっとね、明日以降もわくわくいっぱいだから、受け取った時もっと嬉しくなってるよ!」
 出来上がったグラスは一晩かけてゆっくりと冷やす必要があるから、受け取りは翌日以降になるとのこと。
 完成品との対面を楽しみに、これからの数日間も思いっきり楽しむのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朝霧・晃矢
ダイヤモンドビーチを歩くよ
途中でシェルクラフト用に貝殻を拾うつもり

翼くん、ひさしぶり!
(姿を見かけて嬉しそうに手を振り)
うわぁ、おっきくなったね
見違えたよ

取り止めのない話をしつつ浜辺を散策

バイトが忙しくってね
でも前に沖縄に来た時が楽しかったから
頑張って休みをとってきたんだ(にこ)
翼くんにも逢えたし
来てほんとに良かった

翼くんの方の近況はどんな感じだろう?

色んな形の貝殻があって面白いね
これとか名前とかあるのかな
(スマホでポチポチと調べ)
…ウミウサギ?
へぇ、可愛らしい名前だね(ほわり)

何を作ろうかな
小さい貝殻が多いから
瓶に詰めてキーホルダーしちゃおうか
青い透明なジェルに浮かべて、ね




 ――恩納村、ダイヤモンドビーチ。
 紅芋タルトの販売で有名な菓子店の裏手の、アダンの木が茂った小道を通り抜けた先に広がるのは、キラキラと輝く、エメラルドグリーンの海だった。
「やっぱり、こういうところに来ると沖縄に来たって気分になるね」
 朝霧・晃矢(Dandelion・f01725)は漆黒の瞳を細める。
 管理されていない天然のビーチであるゆえののんびりとした雰囲気ゆえか。菓子店のすぐ裏あたりに多かった人の姿は、浜辺を歩いていくうちにどんどん少なくなっていった。
 しばらく波打ち際を歩いてから立ち止まれば、寄せては返す透き通った波が足をするりと抜けていく。感触のくすぐったさを感じながら遠くを眺めやれば、遠目に島らしい景色が見えた。
 遠くの水底の岩場まで見えるほどに透き通る海の穏やかさも含めて、全ての時間がゆったりと流れていて、それが何だかとても心地いい。
「……って、景色に見惚れすぎて日差し注意しないとだよね」
 さっき、あの子に気をつけてねって言われたばかりだし。
 ぽつりと口から溢れた言葉と共に晃矢が思い出すのは、今回グリモアベースで案内してくれた娘と一緒に同行すると話のあった少年のことだった。
 晃矢からすれば弟のような存在でもあるその少年とは、以前UDCアースの沖縄に遊びに行った際には一緒に首里を散策したこともある。
 今回も以前のように一緒に過ごすことができたらいいと思って声をかけたら、晃矢と久しぶりに会えたことに喜んでくれた彼は、誘いかけにも応じてくれた。とはいえ別の用事があるとのことで、後から合流することになっている。
(「ほんとおっきくなってて……見違えたよねぇ」)
 以前の旅行の時はだいぶ幼く小さかった少年は、見ない間に随分と成長していた。目線の高さが同じくらいだったから、身長は晃矢と同じくらいかもしれない。
 本当に、あの年頃の子の成長は早いな、なんて。まだおじさんと呼ばれる年齢には達していないはずなのだけど、ついそんなことを思ってしまうくらいには歳を重ねてしまったのだとしみじみしてしまう。
「ふふ、あの子の近況は、後からゆっくり教えてもらうとして」
 行き先は伝えているし、人も少ないからすれ違うことはないだろう。合流までの間は一人でゆっくり楽しもうと、寄せては返す波の感触を楽しみながらゆっくりと波打ち際を歩いていると、ちらほらと目につくのは、様々な色や形の石や貝殻で。
「そういえば、こういうのってあんまり見ないよね」
 一見石に見える十字架の形をした石は、実はサンゴのかけらだったり。シーグラスと呼ばれる丸っこい色石があったり。
 貝殻と思って手に取ったら、先住者ありのヤドカリだったりするのも何だか可愛らしくて面白い。
「これとか名前とかあるのかな」
 ふと手にしたのは、白く丸い卵のような形をした、どこか可愛らしい巻貝で。取り出したスマートフォンで写真を撮ってからぽちぽちと調べてみれば、
「……ウミウサギ?」
 ころんとした白い可愛らしい形状は、確かに晃矢の知る兎の姿に見えないこともない。可愛らしい名前にほんわりとしつつ、せっかくだから貝殻を集めて何か作れたらいいなぁと考え始める。
 管理されていないビーチだと、砂や貝殻を持ち帰ることは禁止されているかもしれないから、この辺は少しだけ慎重に。少年と合流した時に聞いてみてもいいかもしれない。
「でも、想像すると楽しいよねぇ」
 もし持ち帰れたなら。小さい貝殻が多いから瓶に詰めて、キーホルダーにすると、きっと綺麗なのだろう。青い透明なジェルに浮かべれば、この美しい海を表現することもできるからきっと楽しい。
 仮に持ち帰れなかったとしても。
 寄せてくる波に流されないようそそと歩くヤドカリの姿をスマートフォンの動画に映してから、ふふと微笑み、晃矢は景色を眺めやった。
 この美しい海と空の景色をしっかりと目に焼き付けることができたら、それでいい。
「……あ、到着したかな」
 ふと、晃矢の耳に届いたのは、自分の名を呼ぶ声。見やった先に元気よく手を振って近づいてくる少年の姿を捉えれば、晃矢もまた少年に合図をするようにゆっくりと手を振り返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユディト・イェシュア
世界は違えど沖縄に来るのも久しぶりですね
琉装体験に首里城を見学したあの時が懐かしいです

さて今回は…
沖縄でおなじみのシーサーが
作れると聞いてやってきました

家を守る魔除けの獅子
基本的には一対だそうですが
単体でもいいんですね
ではちょっと変わり種の
カフェ店員っぽいシーサーを作ってみましょう
お土産にしたいのでもう一体も同時に作ることにして

スタッフにイメージを伝えて
雄のカフェ店員シーサーと雌のエプロンシーサーを
確か口を開けている方が福を招くのでしたね
贈る人の顔を思い浮かべて
どちらも笑顔の優しいシーサーを作ります

粘土から作って色付けまでいくとかなり時間がかかりましたが…
楽しかったし、良い贈り物になりそうです




「世界は違えど沖縄に来るのも久しぶりですね」
 夏の日差しの強さも、それに負けないほどの鮮やかな彩りも。世界を違えたアスリートアースであっても、沖縄はやっぱり沖縄だなと思えば、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は小さく微笑む。
 以前にUDCアースの沖縄に訪れた際には、共に訪れた仲間と琉装を纏い、琉球王国の民になった気持ちで首里城正殿内部を見学した。|鎖之間《さすのま》で琉球菓子とともにお茶をしたり、記念撮影をしたのもいい思い出だ。つい昨日のことのように思い出されるのに、気がつけばもう5年以上が経過しようとしているなんて何だか信じられない。
 思い出と重ね合わせて感じる懐かしさと共に、今回の旅で味わう新たな体験への期待にわくわくとしながら、ユディトが訪れたのは、国際通りにあるとある体験工房。話によれば、沖縄でおなじみのシーサーを自分の手で作ることができるのだという。
 作ると聞くとどうしても職人の技からなる本格的なものをイメージしてしまうが、そこは観光客を相手にした体験工房。まったくの初心者であっても半日程度でできあがるという体験プランが用意されていた。
 その中でユディトが選んだのは、成形から絵付まで自由に作れるというシーサー作り。
「家を守る魔除けの獅子……基本的には一対だそうですが、単体でもいいんですね」
 スタッフの話によれば、シーサーの歴史や種類についてを紐解けば諸説あるようだが、最終的には作り手の想いを優先すればいいという。
 確かに、特に観光のお土産としてであれば、自分用であれ誰かにプレゼントするものであれ、込める想いはただ一つだから、難しく考える必要もないのかもしれない。
「……では、ちょっと変わり種のシーサーにしてみますね」
 出来上がりのイメージを頭の中で思い描きながら、ユディトは粘土を捏ね、形を作り始める。
 作りたいのはカフェ店員のようなシーサーだ。
 お土産にしたいので二体作りたいという希望をスタッフに伝えた上で、まずは一体目の作成に取り掛かる。
 一体目は、カマーベストに蝶ネクタイを着た雄のシーサー。
 蝶ネクタイ部分は成形し、後の色付け時にカマーベスト部分を表現してはどうかというスタッフの提案も聞きながら、職人さながらの真剣な表情でユディトは粘土と向き合う。あまり手で触りすぎると水分が抜けてひび割れてくるから、適宜水をつけて、整えていくことも忘れない。
「確か口を開けている方が福を招くのでしたね」
 魔を祓い福を招くと言われる口を開けたその表情は、贈る人の顔を思い浮かべながら丁寧に。笑顔の優しいシーサーができれば、つい嬉しくなってしまう。
 そうして一体目の土台を完成させてから、ユディトは続けて二体目のシーサーの成形を始めた。
 こちらも贈る人の顔を思い浮かべながら、笑顔の優しい表情にしていく。
 最初ほどは苦戦しなかったものの、それでも細かな部分はスタッフのサポートももらいながら作成した二体目は、雌のエプロンシーサーだ。
 頭のフリルなヘッドセットとエプロンの肩口のフリルは成形時に作成したから、あとは着色の際にそれらしく色を塗っていけばいい。
 そうして一気に作り上げた二体のシーサーは、スタッフに連れられ、焼きの工程へ。
 焼き上がりまでに30分ほどの時間があるという話を聞けば、スタッフに断りを入れた上で、ユディトは一度店の外に出ることにした。
 冷房の効いた室内から外へと出れば、眩しい日差しがユディトへ向けて降り注ぐ。
 故郷は砂漠だったから、日差しや気温に関してはある程度耐性はあるけれど、それでも暑いと感じてしまうのは沖縄の湿度の高さも関係しているのかもしれない。
 それでも、観光としての一時の滞在であれば、それもまた楽しみの一つではある。
 国際通りを歩き、お土産屋から流れてくる独特の音階の沖縄民謡に耳を傾けながら。ユディトはさきほどのシーサー作りの作業を振り返る。
「色付けが終わるまでにはもう少し時間がかかりそうですけど、でもこういうのって楽しいですね」
 成形作業は、最初こそうまくできるか不安はあった。けれど、蓋を開けてみれば時間を忘れてしまうほどにめいっぱい楽しむことができた。
「焼き上がり後の色付けも楽しみです」
 出来栄えを左右する大事な仕上げの工程だと思えば、多少緊張はしてしまう。けれど、成形作業も楽しかったから、色付け作業も同じくらい楽しめるだろうことは間違いない。
 良い贈り物になるように、もうひと頑張り。
 今はしばし、国際通りの観光を楽しむことにしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
渡されたしおりを読んでいた露から以外は発言を聞く。
「…。…ほぅ? それでいいのか? 君は」
露には珍しく琉球の伝統芸能に興味を持ったようだ。
浜辺や自然に触れたいと言い出すかと考えていたがな。
「…なら、行こうか」

まずは古武術の体験から始めるようだ。…武術か…。
日用品や農作具を扱うのが多い理由も教えてくれた。
政策で武器を禁じられていた為か…。なるほど。
体験して改めて解ったことだが私には向いていない。
露には運動不足と言われたが…確かに運動はしてない。
動くのは薬草の手入れと山羊の世話くらいだからな。
……散歩を日課にしてもいいかも…な…。

次は三線。琉球の伝統的な弦楽器のようだな。
不思議な音色だ。太く柔らかく…心地が良い。ん…♪
体験で私も奏でてみたが流石に上手くできなかった。
…だが僅かだがいい音を出せたようだ。…満足だ…。
余談だが。
三線を抱きかかえるようにして持つ露は似合っていた。
そして上手く奏でていたので聞き惚れてしまった。
確かこの子の『最終的な所持者』は遊牧民達だったか…。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
素敵な南の島に行くわ!どこに行こうかしら…。
しおりをめくっていてふと思いつくわ。
…いつもあたしの希望ばかり言ってる気がするわ…。
「初日は伝統芸能を体験しにいきましょ? レーちゃん」
え?なんで今までみたことない表情で目を丸くするの??

最初はちょっと興味がある琉球古武術の体験に行くわ。
理由は今後の戦いに利用できないかなーって思って。
基礎的なことを教わってから模擬的なことをして。
…そーいえば戦いの基礎ってあたし知らないわね…。
今度誰かに基礎だけでも教えて貰おうかしら…。
見たことも触れたこともない武器を扱うのは楽しいわ。
で。レーちゃんは運蔵不足って目に見えて解って。
ふふ♪レーちゃんてば戦う時はカッコいいのに♪

次はなんだか惹かれた三線の体験をしにいくわ。
見た瞬間から心奪われたのよね。なんでだろう?
もしかすると遊牧民族の『あの人』を思い出して?
と…とにかく色々基本を教えて貰って奏でてみるわ。
…ん♪なんだか初めてじゃないみたいに奏でられてる?
不思議な感じだわ。えへへ♪




(「どこに行こうかしら……」)
 案内役の娘から渡された「修学旅行のしおり」をパラパラとめくりながら、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は静かに思案する。
 ヤドリガミとして人間の姿を得る前のブルームーンストーンの頃から旅はいつも身近にあったし、猟兵になってからも様々な世界を巡る旅を重ねてきた露だから、旅をすることの楽しさはもちろん知っている。
 「|修学旅行《しゅーがくりょこう》」という言葉は耳慣れないけれど、みんなで一緒に同じ場所に行き楽しむ旅の一つの形と聞けば、楽しいものであることは容易に想像できる。
 実際、しおりに記された、行き先である素敵な南の島での過ごし方はどれも魅力的だ。
 せっかくの機会だから、大好きな親友――シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)と一緒にめいっぱい楽しみたいと思う。
 思うのだけれど……。
(「……いつもあたしの希望ばかり言ってる気がするわ……」)
 見せる態度こそ冷たいけれど、本当はとても優しくて温かい親友は、なんだかんだ言っていつも露の希望を優先してくれる。
 いつもはちゃっかりとその気持ちにのっかり甘えてしまう露だけれど、今日はできるだけ親友の希望も叶えたいと思ってしまう。
(「でも、レーちゃんにストレートに聞いちゃうのはきっとダメなんだわ」)
 口にしようものなら「君の好きにするといい」って絶対言うに違いない。少し前のレーちゃんならともかく、今のレーちゃんだと絶対そう。だってそれがレーちゃんクオリティなんだからっ(決めつけ)。
(「うん、そうよそう。今回は、あたしがレーちゃんの好みも考えて行き先を決めちゃうわ!」)
 うん、と内心で決意し頷いて。露は改めてしおりを読み直し始める。
 しおりに、せっかく予定表があるのだから、少なくとも一日目は、その流れに従ってみるのがきっと楽しい。
 でも、何がいいだろう。
 薬草とか本にまつわる何かもいいのかもしれないけれど、一日目にはそれらしいものはないようにも見える。
 親友の知的好奇心を満たしつつ、その上で露自身も楽しめそうなものといえば――。
 露はパラパラとページをめくり、
(「うん、そうよ、これよ♪」)
 そうして、ふと目に止まったその文字に、白銀の瞳を輝かせた。
「初日は伝統芸能を体験しにいきましょ? レーちゃん」
 しおりのページを指差し、露がシビラを見やれば、
「……。……ほぅ?」
 今まで見たことのない表情で目を丸くする親友の顔があって。
「え? ダメ?」
「いや、そういうわけではないのだが……それでいいのか? 君は」
 少しばかり戸惑うような顔になる露に、シビラは金の瞳を瞬かせた。
 珍しく琉球の伝統芸能に興味を持ったらしい相棒の発言は、シビラからすれば意外にも思えたから。
 そして、その内心はどうやらシビラ自身の表情にも表れていたらしい。
(「浜辺や自然に触れたいと言い出すかと考えていたが」)
 鏡を見るよりわかりやすい露の反応には、思うところはあるものの。この子なりに何か考えた結果なのだろう。
 これまで読んだ書物によれば、琉球という場所は、日本の国の一部ではあるけれど、日本とは少々色合いの違う文化があるのだという。
 そういえば、随分前に別の知人と共にUDCアースの首里城近隣を散策した際にもそんな雰囲気だった。
 当時は茶の文化を経験し、蔵元を回る文化体験をしたものだけれど、伝統芸能となれば、また異なる体験が得られるに違いない。
「……なら、行こうか」
「えへへ♪ ありがと、レーちゃん、大好き❤️」
 ふむ、と。頷きと共に目を細めて同意を示すシビラに、露は満面の笑みを浮かべ、ギュッと抱きつくのだった。


「……露」
「なぁに? レーちゃん?」
「……これは伝統|芸能《・・》とは違うんじゃないか?」
 言いながら、シビラは自分達の今いる場所をぐるりと見渡す。
 だだっ広い板張りの部屋。壁には部屋一面を映し出す大型の鏡。立てかけられた棒や、飾られている鎌をはじめとした武器らしい何か。
 そして目の前では、道着を着た体格の良い老若男女様々な人間達が、気合いの入った掛け声と共に一斉に拳を前に突き出している。
 目にする機会こそあまりないけれど、猟兵として幾度となく戦いの場に身を置くシビラだから、目の前の彼らがやっていることは何となくわかる。
 ――これは武術だ。
「レーちゃん、武術も芸能なのよ?」
「……まぁ、確かにそうではあるが」
 芸能と聞いてぱっと浮かぶのは歌や踊りではあるけれど、武術には実践以外に歌や踊り同様に宴の場で披露する演武だってあるのだから、確かにそう。
 シビラが頷けば、ちょっぴり得意げに露は胸を張って見せた。
「ここではね、琉球古武術の体験をしたいなって」
 今後の戦いに利用できないかなーって思って、と。歴戦を経た猟兵らしさが垣間見える理由を添える。
「芸能体験は、もう一つ考えてるのがあるの♪ でも、その前に身体を動かしましょ?」
 ね、とにっこり微笑み、シビラを体験に促しつつ、今回の体験の指南役へ向けてお願いしますと一礼をする露。
 体験は、約1時間半ほど。未経験者から有段者に至るまで、レベルに応じて基礎から指導をしてくれるのだという。
 まずは基礎。琉球古武術の成り立ちや使用する武器とその使い方を指南役の説明と共に身体を動かしながら学ぶ流れだ。
 そもそも、琉球武術は|徒手空拳術《としゅくうけんじゅつ》と武器術の二つから構成され、一般的には前者を空手と呼び、後者を琉球古武術と称しているのだという。
 両者共に全く別々のものではなく、実戦形式の琉球古武術においては武器の使用に加え空手の突きや蹴りなどを絡めて使用するためかなり奥が深いものになっているのだとか。
(「やっぱり、うまく使えるようになったら今後の戦いでも活用できそうよね♪」)
 あたしの見立てに間違いはなかったと、にこにことする露とは対照的に、真面目な表情で琉球古武術の歴史背景の理解を深めているのはシビラだ。
(「日用品や農作具を扱うのが多い理由は、政策で武器を禁じられていた為か……」)
 琉球古武術は、自己防衛のために日用品や農耕具、漁具といった生活民具を武器として使う研究がなされ、独自の発展を遂げていったという歴史を持つ。その発端は、15世紀に入って誕生した琉球王国の時代以降の国王の政策によるのだという。
 生活用具から発展したというから、その武器も豊富だ。
 農具のかつぎ棒が武器になったという説を持つ、六尺ほどの長さを持つ「棒」。
 インドの仏具より考案されたと言われている、人体の形を模した「|釵《サイ》」。
 石臼の取っ手、あるいは農業耕作業用のヘラが起源になったなどの諸説を持つ、短い棒に取っ手がついた、カタカナの「ト」のような形の「トンファー」。
 漁師が使っていた小舟を漕ぐ櫂をそのまま使用し、棒技にプラスして相手に砂を掛けて目潰しをして攻撃するなどの砂浜での戦いを想定した使い方をする「|櫂《エーク》」。
 農具の鎌がそのまま武器として使われた「二丁鎌」。
 亀の甲羅や鍋のふたを使用する「|楯《ティンベー》」と、農工具である一尺から二尺ほどの長さの「|手鉾《ティビク》」や漁具である銛、小刀などを使用した「|矛《ローチン》」を一組として使用する「ティンベー術」。
 馬につける口輪が有力な説として挙げられる、相手の攻撃を弱め沈静化するために用いられたという「ヌンチャク」。
 農耕用に使われている馬蹄だったものを拳に付けて使用する「鉄甲」。
 拳ほどの大きさの石を|棕櫚《しゅろ》から作った縄で結びつけ、隠し武器として使用した「スルジン」。
 紹介された武器に応じて使い方と伝承型が存在するというから中々に奥が深い。
(「……なるほど。それぞれの武器の使い方と構え型を戦いの中で使うことができたなら、露の言うようにかなり有利になるだろうな」)
 ふむ、と。知的好奇心が満たされたところで、今度は実際に身体を動かしての稽古だ。
 一、二、三。声掛けと共に指南役が先に動いて見せた後に続いて動きながら武器を使用しての型を学んでいくのだが……。
(「……思いの外身体に負荷がかかるな、これは……」)
 最初に学ぶのは琉球古武術の華でもあり基本とも言える、長い武器である棒。次に短い武器である、釵、トンファー、櫂、鎌、|楯と矛《ティンベー》。最後に隠し武器であるヌンチャク、鉄甲、スルジンと続く。
 体験だから各武器の基本となる型のみとなり、それぞれに姿勢や持ち方に対する一つ一つに指導が入っていくのだが、これがシビラには中々堪えた。
 最後の武器の使い方と構え型を教えてもらったところで、身体中が痛くなり、息も上がってしまっていて。
 少し休んではどうかと指南役に促されれば、道場の隅にある椅子に腰掛け、シビラは大きなため息を吐いた。
「レーちゃん、もしかして疲れちゃった?」
「……そうだな。体験して改めて解ったことだが、私には向いていない」
「ふふ♪ レーちゃんてば戦う時はカッコいいのに♪」
 それは明らかな運動不足ねの言葉と共にくすくすと笑う露に、むぅと思わず声が出た。
「……確かに運動はしてない」
 大きな息を吐き出しながら、しぶしぶ認める。確かに露の言う通りかもしれない。動くのは薬草の手入れと山羊の世話くらいだから。
「……散歩を日課にしてもいいかも……な……」
「そーよそーよ♪ それじゃ、これからはあたしと一緒にお散歩しましょ♪」
 疲れからか、レーちゃんが少しだけ嫌な顔をしたような気もするけれど、そこは気にしないことにする。
「ともあれ、レーちゃんはしばらく休んでて。あたしはもうちょっとだけ……そうね。指南役のお兄さんと模擬的なことをさせてもらおうかしら♪」
「……君は元気だな」
「うん♪ 見たことも触れたこともない武器を扱うのは楽しいわ」
 シビラにとっては堪えた稽古も、露にとってはまったく苦にならない。実際に武器を使った型を教えてもらうのもとても面白かった。
 こういう身体を動かす方が、おそらく自分には性に合っているのだろうと露は思う。
 せっかくだからと指南役にお願いして、教えてもらった型を使っての実践形式の手合わせをしてもらったら、筋がいいと褒められもした。
(「……そーいえば戦いの基礎ってあたし知らないわね……」)
 どこかで武術を習っていたのかと指南役に問われて、改めて考えてみる。
 そういえば、猟兵になってから今まで、そういう手ほどきを受けたことなど一度もない。
 埒外の存在であるがゆえに特別なことをしなくとも身体に順応してしまったのかもしれないが、長期的に見ればあまりいいことではないかもしれない。
(「今度誰かに基礎だけでも教えて貰おうかしら……」)
 この辺は、猟兵仲間の誰かに聞けばどうにかなるだろうから、近いうちにお願いをしてみることにしよう。
「さ、レーちゃん。休憩が終わったら、次の体験に行きましょ❤️」


「次はここよ!」
 琉球古武術体験の道場から移動すること数十分。露がシビラを連れてやってきたのは、那覇市の国際通り近くにある、とある三線専門店。
「わぁ、楽器がいっぱい! これが三線なのね……♪」
 入り口の扉を開けて足を踏み入れた露とシビラを迎えてくれたのは、壁に立てかけられ、設置されたたくさんの楽器達だった。
「琉球の伝統的な弦楽器のようだな」
 並べられた楽器を見渡し、シビラは金の瞳を細める。思い起こすのはかつて読んだ書物に記載されていた、三線にまつわる歴史だ。
 書物によれば。三線は、14世紀末に中国から琉球へ持ち込まれた|三絃《サンスェン》が原型となって生まれた楽器だと言われている。
 15世紀になり琉球王国の国王によって士族の教養の一つとして奨励されるようになり、その後日本へ三味線として普及するに至ったのだそうだ。
 三線は、原型である三絃と比較すると大きさは小ぶりになり、演奏方法も人差し指の爪を使うのでははなく、水牛の角などでできた「|義甲《ぎこう)」を人差し指に嵌めて「バチ」として使うなどで違いがあるのだとか。これもまた、先ほどの琉球古武術と同じくやはり奥深い。
 店主とも三線の背景について会話を深めていくシビラの傍で、露は店内に飾られた三線を一つ一つ丁寧に眺めていく。
(「見た瞬間から心奪われたのよね。なんでだろう?」)
 初めてなのに、なんだか懐かしい気持ちになる。
 そういえば、案内役の娘から提供された修学旅行のしおりに添えられていた三線の写真を見た時にも同じことを思ったんだっけ。
(「もしかすると遊牧民族の『あの人』を思い出して?」)
 「あの人」も、こういう楽器を使って演奏をしていた気がする。三線ではないけれど、確か似た雰囲気の楽器だった。
 ……だからだろうか。その外見に、奏でられる音色に、穏やかな気持ちになるのは。
「……露?」
 気がつけば、親友の金の瞳が不思議そうに気遣うように露を見つめていたから、何でもないと露はふるりと首を振る。
「あのね、今回すごーく惹かれちゃったのよ、この三線体験! 是非とも弾いてみたいわ、みたいわ♪」
「そうだな。では、早速体験といこうか」
 店主に要望を伝え、体験用の三線を借り受けて。体験を開始したシビラと露が最初に学ぶのは演奏の基礎とも言うべき、基本姿勢だ。
「これはさっき体験した琉球古武術と同じよね♪」
 うんうんと、頷きながら露は背筋を伸ばす。何事もまずは姿勢からということなのだろう。
 次に構え方。身体から拳一つ分ほど離すことで、音の響き方が変わるのだという。
 他にも、三線の胴体を置く位置、三線の頭となる棹の高さ、弾く時のバチの弾き方、弦を指で押さえる場合の押さえ方など。
 身体が慣れない時には意識を向ける必要があるというポイントを確認してから、弦を奏でる。
 一つ、二つ。弦を弾いて生み出されるは、これまで見知った楽器とも異なる面白い音色だ。
「ん……♪ 不思議な音色だ。太く柔らかく……心地が良い」
「レーちゃんもそう思う? あたしもよ♪」
 奏でられた音色が店内に響けば、シビラと露は顔を合わせて目を細め。
 そうして、店主から示された練習用として提供された曲の音を、店主の指導に合わせて奏でながら、一つの曲へと繋げていく。
「一つ二つの音はどうにか奏でられたが流石に上手くできないものだな」
 体験時間内で一曲弾けるようになると言うのは中々難易度が高いと、シビラは思う。
 一番簡単な曲だという夜空の小さな星の歌の童謡も最後まで音を繋げはしたが、流石に曲としての完成度までは持っていけなかった。
「……だが僅かだがいい音を出せたようだ。……満足だ……」
 店主にも礼の言葉を伝え、シビラはわずかに頬を緩める。少なくとも琉球芸能を体験するという目的においては、十分達成できたと思うから。
「そーよそーよ♪ レーちゃんの奏でる音、あたしもいいと思ったもの♪」
「……そうか」
 どう贔屓目にみても褒めてもらうところまでいってるとは思えないが、このあたりは素直に受け取ることにして。シビラは改めて相棒を見やった。
「君の方は、上手く奏でているな、露」
「……ん♪ なんだか初めてじゃないみたいに奏でられてる?」
 不思議な感じだわ、と言いながらも。シビラからの褒め言葉は素直に受け取り、えへへと嬉しそうに笑った露は、改めて三線を構える。
 三線を抱きかかえるようにして持つ露の構えは、一見すると基本の姿勢からずれているようにも見えるのに、似合っているという言葉がぴったりなほどに堂に入っていた。

 ――トゥン、トゥン、テン♪ トゥン、トゥン、テン♪

 滑らせた指から奏でられた調べは、三線に触れるのが初めてだというを感じさせないほどに美しい色を帯びていた。
 最初はゆっくりと、やがてリズムに乗せてテンポよく。聴く人が聴けば、踊り出したくなってしまうほどの美しい琉球音階。
「そういえば、この曲、この辺でよく聴くわよね♪」
 聞き齧ったという音だけを頼りにおもむろに弾き始めたのは、カチャーシーを踊る際に奏でられるという、アップテンポの沖縄民謡曲だった。
(「確かこの子の『最終的な所持者』は遊牧民達だったか……」)
 だとすれば、ここまで自然なほどに音を拾い即興で表現する力があることも納得がいくというものだ。
 店の店主も驚くほどの露の見事な演奏ぶりに、シビラは金の瞳を細め、しばし聴き惚れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高沢・麦
【🌾📖】
沖縄…ずりーよね、観光も文化も魅力たっぷりな上に最近気温もハンデじゃなくなったじゃん!
なーんて褒めまくり物産買いまくりながら旅行開始
空港着で即、沖縄主張強めTシャツ買ったし
帽子にサンダルも探そう
アダン葉の帽子いいね俺も買う!
今を最高に楽しむ、テーマパークのカチューシャ的に

行先ねー、俺はモノづくりできるとこ希望!
紅型体験行きたいんだよね
青春の思い出ってやつ
創良くんはこういう絵の具系アクティビティって嫌じゃない?何色が好き?

アートフェス~~!田植え手伝ってる時期なんだよなー俺もあまおとに足跡つけてもらいてー!のけぞり

海辺の馬センスいい!俺のにも描いておそろにしちゃう
てか一緒に来てくれるだけでほんっと感謝!
作品の話できるじゃん?
それでは聞いてください「珊瑚の海を泳ぐきぶな」の配色について!

こういうのって絵の完成度っつーよりは
今日この時この色を選びたい気分だった、っていうのが重要だと思っててさ
記念写真と同じレベルで今この瞬間を保存できるって思ってんだー…あっでも後で記念写真も撮ろー!


橘・創良
【🌾📖】

麦くんと一緒に久々の沖縄旅行

ふふ、麦くんは昔と変わらないね
沖縄や北海道はその土地にしかないものがたくさんだよね
確かに最近はどこも暑いし…

ご当地を楽しみつくすのはさすがだね
じゃあ僕もアロハシャツ…かりゆしウェアっていうんだっけ
白地に水色のデイゴの花が描かれたものを
帽子ならこんなのあるよ(アダン葉帽子を示して
僕も買って被っていこう

麦くんの今日のお目当ては?
紅型体験いいね
やったことないからやってみたいな
そっか高校の時も
10年ぶりぐらいになるのかな
僕は得意ってわけではないけど
ちょうどこの前も戦争でアートフェスに参加してきたんだ
(写真を見せて
何かを作り上げるのは好きだよ
色は森の緑とか空の青とかその辺りが好きかな

僕は決まった図柄のにしようかな…
え、麦くん描いてくれるの?
じゃあ、海を歩く与那国馬とかお願いできる?
教えてもらいながら染めも頑張ろう
麦くんのは…ああ、ご当地の
黄色がすごく目を引いていいね

麦くんってば芸術家だね
でも手作りのものはそのライブ感も大事だよね
うん、写真もたくさん撮ろうね




 ――沖縄県、那覇空港1階。
「沖縄……」
 到着ロビーに立ち、お出迎え看板が掲げられた自動ドアを潜り抜ければ、高沢・麦(栃木のゆるゆるヒーロー・f45122)は小麦色の瞳をすっと細める。
 空港内のクーラーで冷やされたものとは異なる、熱を含んだ空気は、日差しで温められた現地特有のもの。
 視線の先にはどう見ても眩しいとしか思えない日の光が、道路にくっきりとした影を作り出していた。
 目に映るその場所と空気が、武蔵坂学園に在籍していた時代に体感した麦の記憶のそれと同じことを五感全体で感じ取れば、麦は叫んだ。
「ずりーよね、観光も文化も魅力たっぷりな上に最近気温もハンデじゃなくなったじゃん!」
 麦の中でのナンバーワンは、いつだって愛すべきご当地、栃木。しかし、この沖縄という場所、北海道、京都と並ぶ都道府県魅力度ランキングにおいて常に上位をキープする、ご当地ヒーロー的には注目せざるを得ない存在なのである!
 ちなみに以前はこの独特の暑さも栃木を含めた本州ないし北関東界隈では体感できないものであり、夏場の旅行先としてはある意味ネックだったはずなのだが、近年はこの気温も時に沖縄の方が低かったりしている。沖縄の夏は日差しの強さはあるものの、海に囲まれているがゆえに海からの風によって、一定の数値をキープしているのだ。……認めたくないものだな、ライバルご当地の、さらなる魅力ポイントなど……!(ぐぐぐ)
 ――などと、口調こそ非難めいていて実際は褒めまくるという高度なスキルをフル活用して叫ぶ麦の後ろ姿を眺め、くすくすと笑い声を立てているのは、熱いご当地ヒーローとは真逆のクールな王子様、橘・創良(静謐の泉・f43923)。
「ふふ、麦くんは昔と変わらないね」
 猟兵に覚醒してから、同じ武蔵坂学園の仲間と交流する機会は増えたけれど、学園時代からの同級生との交流は久しぶりで、さらには久しぶりにも関わらず、いい意味で変わりなく明るく熱い友人に、つい笑みが溢れてしまう。
「沖縄や北海道はその土地にしかないものがたくさんだよね。確かに最近はどこも暑いし……」
「でっしょでしょ、創良くんもそう思うよね?! でもまー、だからこそ今回の旅行、目一杯楽しむんだけどさ! まずは物産買いまくろうかなーって!」
「ああ、そうだよね。物産買うなら2階だね。せっかくだから建物内から移動しようよ。到着ロビーイベントはしっかり体験できたんだしね」
 にっこりと微笑み、手招きしながら建物内へ入るよう麦を促す創良。
 麦と同じく沖縄旅行に心を躍らせている創良ではあるけれど、暑さと熱気の体験は、別の場所でもできると考えているから。少なくともこの場では暑さに触れることは避けたい。
「だな。よっしゃ、それじゃ創良くん、行こう! 俺、買いたいものがあるんだよなー」
 にっかと沖縄の太陽と同じくらい明るい笑顔で創良に頷きを返した麦が、創良とともに元気よく訪れたのは、2階の出発ロビーフロアだった。
 ご当地への旅は、テーマパークに繰り出すことと同義。
 その場所を最大限に楽しむためには、まずは装備を整えなければ!
 文字通りの観光客気分いっぱいで国内線用の3つの保安検査場と、国際線用の保安検査場までの間にある土産物売り場を端から端まで見て回り、やがて目についたのは、沖縄の自然をはじめ、ご当地の特色をふんだんに取り入れたデザインTシャツがディスプレイされた店舗。
「すげー、視力検査のマークがゴーヤーになってる! 沖縄のビール会社のロゴとのコラボシャツもあるんだな。えーと、これは『いしあたり』……?」
「『|石敢當《いしがんとう》』だよ、麦くん。沖縄では、丁字路の突き当たりなどに置かれている魔除けの石なんだって。こういうのもTシャツにあるんだね」
「へー、おもしれー! よっしゃ、じゃあ俺、このビール会社とのコラボってやつ買う! 生ビールと枝豆のデザインもおもしれーし、俺的推し物産の地ビールを生かす方向でもインスパイアされる感じで!」
「さすがだね。この店のシャツだとまさにご当地を楽しみつくす感じになっていいよね。じゃあ僕もアロハシャツ……かりゆしウェアっていうんだっけ」
 「めでたいこと」や「縁起の良いこと」を意味する「かりゆし」という言葉を名前に持つ「かりゆしウェア」は、アロハシャツをモチーフに、沖縄県産品で沖縄らしさを表現したものとして生まれた、ご当地ウェアだ。今では沖縄県内ではビジネスウェアとしても着用され、デザインも実に様々なものが用意されている。
 実際、この店にあるかりゆしウェアも、ユーモア度の高いデザインのTシャツとは異なり、自然や海をイメージした模様をあしらった落ち着いたデザインのものが多いように見えた。
 目について手に取ったのは、白を基調に淡い水色でデイゴの花が描かれたかりゆしウェア。花はシャツの左半分に大きな柄として描かれているけれど、使われている色味が淡いため、派手な印象にはなっていないのがよい。
「よっし、あとは帽子にサンダルも探そう!」
「帽子ならこんなのあるよ」
 ふと目について手にしたのは、かりゆしウェアとともにディスプレイされていた帽子。
 見た目は麦わら帽子にも見えるけれど、聞けばアダンの葉を編んで作られた帽子なのだとか。
「すげー、この帽子めちゃくちゃ軽い! いいね、俺も買う! 今を最高に楽しむ、テーマパークのカチューシャ的に!」
 創良くんとペアルックってのもまたいいと思うんだよなと笑う麦の言葉に創良も笑みを返して。
「僕も買って被っていこう」
 確かに軽いし、風通しもきっといいだろう。何だかんだと日差しの強いこの土地での散策も楽しむことができそうだ。


 頭にはアダンの葉のパナマ帽、沖縄特色の強いTシャツに、足元は島ぞうり。
 しっかりすっかりと沖縄を満喫するための装備を整えた麦を眺めやり、創良は微笑む。
「麦くんの今日のお目当ては?」
 修学旅行のしおりによれば、首里城観光にソーキそばとあるから、しおりの通りに行動するのなら首里城近隣の散策になるだろうか。
 眺めていたしおりをしまいながら創良が問いを投げ掛ければ、麦はしばし考え込む仕草をして。
「行先ねー、俺はモノづくりできるとこ希望! 紅型体験行きたいんだよね。青春の思い出ってやつ」
 思い出すのは2014年の修学旅行。確かその時に麦が紅型体験をした場所は、確か最終日のおきなわワールドだった。
 本来の紅型の制作には、デザインを掘り込んだ型紙を使用し、生地に糊を塗って型紙の柄を映し取った後で顔良で色を付けていくなどの細かな工程が存在しているが、体験においてはすでに糊付け済みの方が用意され、手軽に色付けができるよう工夫がされていた記憶がある。
 また、スタッフにお願いすれば、型を使わず生地に直接色を乗せていくこともできたから、麦はあえて型を使わず生地に直接絵を描いてオリジナルの手拭いを作ったのだった。
 当時の修学旅行を振り返りつつ。せっかくだから当時の思い出に浸るのも悪くないんじゃないかと思いながら、麦は創良の方を見やった。
「創良くんはどう? 他に希望あるならそっち優先するけど……」
「紅型体験いいね。やったことないからやってみたいな」
 麦の高校の時の修学旅行の話に耳を傾けながら、創良はふふと青の瞳を細めて。
「そっか高校の時も……ということは、10年ぶりぐらいになるのかな」
「……は! 言われてみれば確かにそうだ、10年! 5年か6年かそこらじゃ……って一瞬思ったけど、それは俺達の世界の戦い終わってからの話だもんな。そりゃあ青春の思い出を辿りたくなるわけだ」
「麦くん……このノリで話をしていると僕たちが随分歳をとった感じがするからそろそろやめない?」
 そりゃあ知人の先輩にはすでに二人目のお子さんが産まれていたりもするから、10年はそれなりに感慨深いではあるのだけれど。このノリからすると一度釘は刺しておいた方がいいような気がしたから言葉を足しておいた。決して深い意味はない。
 創良の言葉に一瞬神妙な顔つきになった麦を見つめてから、創良は改めてにっこりと微笑み、話を続ける。
「でも、せっかく青春の思い出を辿るっていうなら、いっそ同じ場所で紅型体験するのもいいんじゃないかな。行ってみようよ、おきなわワールド」
「え、いいの?! よっしゃー! それじゃ行こうぜおきなわワールド! せっかくだから紅型体験前に玉泉洞も見よーぜ!」
 神妙な表情から一転ぱっと顔を輝かせ、楽しみだと笑った麦に、創良も微笑みを返すのだった。


 ――南城市、おきなわワールド内。
「すごかったよなー! 地底探検!」
「うん。あんなに迫力ある感じだとは思わなかったな。フルーツ園で見る植物も、普段は本の中でしか見ないものだったからかなり面白かったし」
 巨大な鍾乳洞と熱帯フルーツ園を抜け。さながらちょっとした冒険を乗り越えたかのような活き活きとした表情で言葉を交わしながら、麦と創良が訪れたのは、紅型体験の会場になる場所。
 琉球王国の城下町を模した空間に軒を連ねる赤瓦の屋根の古民家達は、鍾乳洞を抜けてから見ると、本当にタイムスリップしてその場所に来てしまったかのような錯覚を覚えるから不思議だ。
 紅型体験の看板が示された古民家にてスタッフに声を掛けてから、案内に従い、二人は中へと上がった。
「おおー、あの時とあんま雰囲気変わってないんな! すげー」
 クーラーもないのに涼しげな風が回る、古民家の畳間に座りぐるりと見渡せば、思い出される青春の一ページ。
 あの時も友人と二人テーブルを囲みながら、スタッフの説明を聞いていたんだっけ。
「そういえば、今更なんだけど……創良くんはこういう絵の具系アクティビティって嫌じゃない?」
 紅型体験には興味を示してもらえたけれど、もしかしたら無理して合わせてくれたのかもしれない。
 だとしたらちょっと申し訳なかったなと思いながら、スタッフが席を離れた間に、麦がそっと問いかければ、
「僕は得意ってわけではないけど……」
 投げかけられた問いに少しだけ不思議そうに瞬きをしてから、ふいに思い出したとばかりに創良は微笑む。
「ちょうどこの前も戦争でアートフェスに参加してきたんだ」
 これがその時の、と。創良がスマートフォンを介して麦に見せたのは、去る5月の戦争の中で行われたアートフェスでの写真だった。
 創良が描いた緑の葉っぱだけの草木に、咲き乱れるのは様々に彩られたたくさんの肉球の花々で。
 楽しそうな創良の笑顔と、どこか得意げな顔の白い霊犬の表情が何ともたまらない。
「アートフェス~~!」
 まじまじとスマートフォンの画面に映る写真を見つめれば、次の瞬間悔しげな色と共に両手で顔を覆ってのけぞる麦。
「田植え手伝ってる時期なんだよなー、俺もあまおとに足跡つけてもらいてー!」
 アートなんて美味しいシチュエーションで戦えるとか、何だそれおいしすぎだろう! 俺もやってみたかったぁぁぁ……なんて。
 内心ではのけぞる以上に身悶える麦の様子に、やっぱり写真撮っててよかったなぁと、まんざらでもない顔でににこにことする創良。
 かの霊犬くんの飼い主はもちろん異なるから創良のわんこではないけれど。それでもあの子はなんやかんやと創良に懐いてくれるから、気持ちだけは愛犬の第二の飼い主だったり。
「……とまぁ、そんな感じだから、何かを作り上げるのは好きだよ」
「それならよかった! ちなみに何色が好き?」
「色は森の緑とか空の青とかその辺りが好きかな。麦くんは?」
「俺は――、」
 創良の問いに麦が答えようとするも、スタッフが近づいてくるのが見えたから、ごめん後でと言って麦はへへっと笑って見せた。
 話の続きは実際に手を動かしながら行うことにして。今は体験の説明に耳を傾けることにしよう。


 10年前はできていた型なしで行う自由な色付けが今もできるかについては少しだけ心配していたが、幸いにしてスタッフの理解は早かった。
 すんなりと了承を得た麦は、色付けを行うグッズを選び始める。
「前は手拭いにしたけど、今回はこれに決めたぜ!」
 悩みに悩んで麦が手にしたのは、エコバッグ。
 これならくるりと畳んで簡単に持ち帰ることができるし、日常にもしっかり活用することができるから。
「麦くんは手描きにするんだね。僕は決まった図柄のにしようかな……」
「創良くん、もしよかったら俺が創良くんのも描こうか?」
 ぶっつけ本番は流石に緊張するから、これで色を入れる下書きはするけど、と。いいながら、麦がチラリ見せたのはペンシルタイプの布用チャコ(水色)。
 もちろん、手書きであれば下書きをしたほうがいいという、スタッフからのアドバイスとともに貸出されたものである。
「え、麦くん描いてくれるの?」
 麦からの思いもよらない提案に、創良は思わず顔を輝かせ、
「じゃあ、海を歩く与那国馬とかお願いできる?」
 満面の笑顔で中々の難易度のものをぶっ込んできてるような……と、側でやり取りを聞いていたスタッフがそんなことをそっと思ったとか何とか。
 けれど、そのリクエストで怯む麦ではない。
「海辺の馬センスいい!」
 リクエストを受ける麦にとっては最良のインスパイアだった。いい、とばかりにキラキラと瞳を輝かせてサムズアップをキメて見せる。
 確か創良くんは馬好きだったはずだ。ということは、このリクエストは俺に紅型体験生命を預けてくれるわけで……!
「よっし、気合い入れて描くぜ! あと俺のにも描いておそろにしちゃう!」
 爆速で下書きとなる図柄のペン入れを行っていく麦。
「すごいね、本当にさらさらと描き上げてしまうんだね、さすが麦くんだ。教えてもらいながら染めも頑張ろう」
 あっという間にできあがった水色ペンで描かれた与那国馬を前にすれば、気持ち背筋を伸ばして創良は色筆を取った。
 せっかく綺麗に描いてもらったのだ、温厚で優しい性格の与那国馬になるようにとなれば、最初は黄色を入れてみるのもいいかもしれない。
「……てか、俺、創良くんには感謝しかないんだよなー。特にこの体験とかさ、改めて一緒に来てくれるだけでほんっと感謝!」
「え、感謝されることは何もしてないよ? 今もこうして下書き描いてもらっているし」
「それは俺が描きたかったからだし! こうやって一緒に体験してると作品の話できるじゃん? こういうのがまた思い出になるっつーか!」
 体験自体は一人でもできるけれど、こういう体験して楽しかったと、作品を前に思い出を共有し合えることが大事なんだと麦は笑う。
「そうなんだね。うん、僕もこんな風に麦くんと一緒できて嬉しいよ。……ところで、麦くんは何を描いているの?」
「おお、創良くん、聞いてくれるの? 嬉しー! それでは聞いてください『珊瑚の海を泳ぐきぶな』の配色について!」
 静かな古民家の部屋の中に、熱を帯びて語られる麦のこだわりトーク。
 ちなみにきぶなは、栃木県宇都宮市の郷土玩具だ。愛くるしい形状をしたその配色は、頭は赤、胴体は黄色、ヒレは黒、尻尾は緑の色合いが一般的だったりするが、この配色にはもちろんしっかりとした意味がある。
 まずきぶなは名前の通り「黄ぶな」であるが、これは栃木「きぶな伝説」によるものだ。
 昔栃木の宇都宮において疫病が流行った際、村人が病気の回復を日々神様に祈っていたところ見たこともない大きな黄色のふなが釣れたのだという。それを病人に食べさせたところ病気が治ったというのが、大まかな伝説の概要である。
 この伝説に加え、郷土玩具の世界で言われている「赤もの」と呼ばれる厄除けや病気除けの意味合いもあり、きぶなの顔は赤色になっているのだとか。
「そんな栃木の郷土玩具の愛らしいきぶなを、沖縄の美しい珊瑚の海で泳がせるコラボ感ってアートだと思うんだよね!」
「……ああ、ご当地のなんだね。黄色がすごく目を引いていいね」
 黄ぶなだから黄色なんだろうけれど、実際彼は黄色が好きなのかもしれない。旅行先でも郷土愛を忘れない、ご当地ヒーローの鑑たる麦の熱いご当地愛がしっかりと伝わってきて、創良はふふと微笑む。
 語りながらもしっかり手を動かしている麦のエコバッグに描かれていく「珊瑚の海を泳ぐきぶなと海を歩く与那国馬」の構図は、この短期間で仕上げられたとは思えないほどの秀逸な出来だったから、やっぱりこの辺は愛かもなぁ、なんて思ってみたりして。
 翻って自分のはと手元の描いてもらった与那国馬へと視線を落とす。
 比べるものではないとは頭では理解していても、流石に目の前に秀逸なものがあると見劣りしてしまう感じがして。
 思わず筆が止まりそうになったのと同時、顔を上げた麦と目が合った。
「こういうのって絵の完成度っつーよりは、今日この時この色を選びたい気分だった、っていうのが重要だと思っててさ。記念写真と同じレベルで今この瞬間を保存できるって思ってんだー」
 だから出来上がった自分の作品を誇っていいんだぜ、なんて。暗に気遣いの言葉を含んでいるような、タイムリーな麦の言葉に、創良は思わず瞬きし、それから目を細めて見せる。
「……麦くんってば芸術家だね。でも手作りのものはそのライブ感も大事だよね」
 本当にその通り。こうやって一緒に手を動かして、言葉をかわす時間もまた、出来上がった作品とともに思い出になるから。
 再び視線を落とし、自分のエコバッグに描かれた彩色途中の馬の絵に、再び丁寧に色を載せていく。
「でも、その論理でいくと、写真不要ってことになるけど……」
「うんにゃ! この瞬間はもちろんだけど、同じくらい写真も大事!」
 ふと溢れた創良の呟きに、そんなことはありませんー、と言わんばかりに首を横に振り、にっかと笑う麦。
「だから後で記念写真も撮ろー!」
「うん、写真もたくさん撮ろうね」
 そんな麦の言葉に、創良も微笑みと共に頷いて見せる。

 ――そうして。
 体験時間を目一杯使ってできあがったエコバッグを互いに見せ合ってから、スタッフにお願いをして写真撮影をする。
 二人が手にしたそれぞれのエコバックに描いたきぶなと与那国馬は、この先も続く旅行を楽しむかのような、穏やかな笑みを湛えているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『キャンプの夜を楽しもう』

POW   :    ゲームやお喋りに興じる

SPD   :    歌やダンスで盛り上がる

WIZ   :    満天の星空を眺める

イラスト:真夜中二時過ぎ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 思い思いの場所でそれぞれの観光に体験にと楽しんだ「修学旅行」は、無事に1日目を終えることができた。
 2日目もまた、各自思いっきり楽しんでほしい。
 今帰仁村にオープン予定の大型テーマパークへはまだ行くことはかなわないけれど、「修学旅行のしおり」に記載されている場所とあわせ、沖縄本島に近い離島に足をのばすことは可能だ。
 しおりに案内のあったスケジュールに従って海に森といった沖縄の自然に触れるもよし、それ以外の行きたいところに行くのもよし。
 どちらにしても楽しんだ者勝ち。気のおけない仲間、大切な人たちとの思い出を増やしていこう。
小雉子・吉備
【妖怪境界組】
むら咲むらのちんすこう作り体験、あの茶屋の後に予約しておいて良かったよう

にしても、観光で来た人達の作った生地の形が選り取り緑、何だか見てて楽しそーだし、キビはキビだけにキビさ……(《ひいろ》に口を塞がれ《なまり》にハリセンでツッコまれつつ、キビさとう糖のちんすこう生地を【料理】)

ひいろちゃんなまりちゃん、ひどーいっ!(と言いつつ犬、雉、猿、龍と生地の形にして)

デイジーちゃんは紅芋ちんすこうを猫ちゃん型、確かに紫にも見えるしデイジーちゃんにも見えるよね

円ちゃんはココナツちんすこうをルーちゃんとか、餃子型で……円ちゃんらしいけど、上手く作ってるねっ!

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


デイジー・クゼ
【妖怪境界組】
あの茶屋の後に、こう言う体験はタイミングが中々に宜しいニャんよね

それにしてもちんすこうも、色々工夫がし甲斐があるニャん……吉備ちゃん(また寒いギャグやり掛けたニャね、気の毒ニャけど、回りの観光客も居るし、ひいろちゃんなまりちゃんナイスフォローニャんよ)

あぁ、わたしは紫芋パウダーとグラニュー糖とラードと薄力粉使って、猫を……吉備ちゃん有り難うニャ、他にも苺パウダー使って、ヒナスミちゃんやルインクちゃん(童蜘蛛時代を想定して)も作ろうかニャと

吉備ちゃんは桃太郎的にらしいけど、龍は霓虹ちゃんニャね?

円ちゃんも雷獣と餃子、手が込んでるニャし焼成が楽しみニャね

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


高嶺・円
【妖怪境界組】
むら咲むら……あの茶屋の後でこう言う事が出来るのって、良いよね

『ちんすこうも美味かったけど、それを作るのも面白そ……吉備、ひいろとなまりも何やってるんだ?』

吉備ちゃんは、きび……あっ!(吉備ちゃんのギャグの深刻さ、霓虹ちゃんの戦車の人から話には聞いてたけど、そこまで深刻なのっ!?)

その状態で作業する吉備ちゃんも心配だけど、取り敢えずわたし達もちんすこうを……ココナツ生地で作ろっかな?

『ほほぅ、それで餃子と俺様を作ってる感じか?始めてにしては形整って良いじゃねーか、吉備やデイジーにも言えるが』

凄いのは、二人ともと言うか、料理の経験にだいぶ差を感じるかも

【アドリブ絡み掛け合い大歓迎




 一日目は首里城公園内の施設で琉球菓子を体験し、菓子談義に花を咲かせ。その流れから首里城周辺の菓子店も一通り散策し菓子の食べ比べも行っていた【妖怪境界組】の一行。
 けれど元より食への関心が高い彼らが、食べるだけで満足することはない。
 旅行から帰ってあれやこれやと自分達で研究することも考えたけれど、こういうものは現地で体験するのが早い。何よりその方が旅行としてももっと楽めるだろうから。
 そんな風に同じ考えに到達した面々は、早速とばかりに菓子作りの体験ができる場の手配を完了させ――そうして今に至る。
 一行が訪れたのは、読谷村にある、「体験王国むら咲むら」だった。
 今から30年も前に歴史ドラマの撮影のために作られたというスタジオを体験型テーマーパークにしたという成り立ちを持つその場所は、施設全体の雰囲気は琉球王朝時代の街並みを再現した造りになっている。
 そんなテーマパーク内で提供されている「ちんすこう作り」を体験することが、今回の目的だ。
「ちんすこう作り体験、あの茶屋の後に予約しておいて良かったよう」
 にこにこ笑顔の小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)の言葉に、
「うん、あの茶屋の後でこういう事が出来るのって、良いよね」
 高嶺・円(名とご当地を受け継ぎし、餃子スサノオ・f44870)もまた微笑みと共に頷き、
「タイミングが中々に宜しいニャんよね」
 デイジー・クゼ(シーアクオン弐號と書いてニャゴウ・f27662)もグッジョブと言わんばかりにサムズアップ。
 実際の体験を楽しみにしながら、目的地を目指して、一行は施設内を歩く。
「それにしても、昨日のりゅーきゅ、の雰囲気が続いてて面白いよね」
 前日からの流れで行くと、そのまま琉球王朝時代の世界に迷い込んでしまったかのような雰囲気に、吉備が周囲を見渡しながら歩いていると。
「……あっ、これってキビ達みたいな妖怪……なのかな?」
 目に留まったのはとあるオブジェ。古民家の中の暗がりに潜むようにして吉備達をじっと見つめている(ように見える)。
 中に灯りが灯っていて、灯籠のような造りになっているその妖怪の顔は、カクリヨの知り合いの妖怪達にどことなく似ているような、似ていないような。
 吉備が面白そうに眺めていると、そうニャね、と。同じく興味深げに眺めていたらしいデイジーが口を開いた。
「そういえば、琉球妖怪なるイベントも開催されているみたいニャんね」
 見れば、施設のあちらこちらに妖怪を模した灯籠……いわゆる「ねぶた妖怪」をはじめとした飾りが飾られているようだった。
 日の高い今見る限りは飾りがあるな程度だが、日が落ちた夜になれば異なる雰囲気になるのだろう。
「今日の目的はちんすこう作り体験だけど、夜まで滞在してイベントを楽しんでみるのも良さそうだよね、ルーくん」
 円が肩に乗せた雷獣化した相棒、|天雷神機《ユピテルーク》へと話を振れば、
『いいんじゃねーか? ……まぁ、何にせよまずは目的を楽しんでからになるだろうけど……と、あれじゃねーか?』
「あ、ルーくん?!」
 ふいに雷獣が円の肩からするりと地面へと降り、てってって……と走り出す。それを見た吉備の青の狛犬と、赤の猿もぴょこぴょこ追いかけ始める。
「え、ひいろちゃんなまりちゃん、待って……っ!」
「わたし達も行くニャ。待っててくれてるからゆっくり歩いて大丈夫そうニャね」
 石畳の道の前方を駆けていく三匹を追いかけ歩いていると、石を積まれて作られた塀と、その塀から飛び抜けた大きさのガジュマルの樹が見えた。
『お、来たな。ここが体験施設のようだぜ?』
 連なる塀をぐるりと周ったところにある門の前で待機していた雷獣が示す先には、「ちんすこうづくり」の看板があって。
「ありがとう、ルーくん。……それじゃあ、体験場所にも着いたことだし……ちんすこう作り体験、楽しんでいこう」
 円の肩に再び乗っかった雷獣が実は一番楽しみにしているのかもしれないなどと思いつつ。円は吉備とデイジーと顔を見合わせ微笑み合うのだった。


 スタッフへと声をかけ、案内された場所は、古民家の縁側だった。
 自然学校も併設しているというその古民家の縁側から見える庭は、子供達が走り回れるほどの広い敷地が確保されていて。
 施設内に入る前にも見えたガジュマルが大きく枝を広げて、涼しげな木陰を作り出してくれているおかげなのだろう。風通しのよい古民家自体の造りのよさもあって、暑さはあまり感じられない。
「にしても、観光で来た人達の作った生地の形がよりどりみどりで、何だか見てて楽しそーだよね」
 スタッフが体験用の材料を持ってきてくれるのを待ちながら、吉備はワクワクと周囲を見渡す。
 他のテーブルに座る観光客らしい人々が、吉備達と同じようにちんすこう作りを体験している様子をちらと眺めやる。
 彼らが思い思いの形づくりを楽しんでいる様子を見てとれば、希望すればある程度の自由はきくかもしれないなと小さく微笑んで。
「そうニャんね。ちんすこうも、色々工夫がし甲斐があるニャん」
 デイジーもまた、ローテーブルに並べられた材料を見やり黒の瞳を細める。
 スタッフが用意してくれた材料は小麦粉・砂糖・ラードという、シンプルな3点を、100:50:50の割合で混ぜる。これでプレーンタイプのちんすこうが作れるのだという。
 とはいえプレーンタイプだけではなくアレンジタイプも作ってみたいと思うのが、菓子を食べるのも作るのも好きな【妖怪境界組】の面々である。
 スタッフの方に丁寧にお願いし、持ち込んだアレンジ用の材料の使用について許可をもらった面々は、それぞれにこだわりある材料を使うことに。

「よーし、キビはね、これを!」

 にこやかな笑顔で吉備がテーブルの上に乗せたのは、用意されていた砂糖とは色の異なる、薄茶色の砂糖。

「キビだけにキビさ……、」

 ――パシィィィン☆

『……吉備、ひいろとなまりも何やってるんだ?』
 響き渡ったハリセンの音に雷獣が見やった先には、ひいろの手によって口を塞がれ、なまりの咥えたハリセンによって思いっきり叩かれたらしい吉備の姿。
「吉備ちゃんは、きび……あっ!」
 きょとんとした雷獣とは対照的に、薄茶色の砂糖の袋をみやって吉備が何を言おうとしていたかを察した円は、思わず自分の口を塞ぐ。

 ――「吉備だけに、使う砂糖は|きびさとう《・・・・・》」だなんて。

(「吉備ちゃんのギャグの深刻さ、霓虹ちゃんの戦車の人から話には聞いてたけど、そこまで深刻なのっ!?」)
 そう、深刻なんですよ……と言わんばかりにアイコンタクトしちゃったひいろとなまりの深い頷きに、円は苦笑するしかない。
 一方でやっぱり色々察しちゃったデイジーは、ひいろとなまりにアイコンタクトで労いを。
(「また寒いギャグやり掛けたニャね、ひいろちゃんなまりちゃんナイスフォローニャんよ」)
 吉備にとってはちょっぴり気の毒ではあるけれど、周りには観光客もいるのだから。寒いギャグの使用は計画的にというやつである。ニャむニャむ(心の中の合掌)。

「もご?! ぷはぁ、びっくりしたぁ! もう、ひいろちゃんなまりちゃん、ひどーいっ!」
 もうもう、渾身の出来だと思ったのにぃ、だなんてちょっぴり不服そうに頬を膨らませた吉備だったが。
「あ、スタッフさん、はかりを借りてもいいですか?」
 けれどこのツッコミも割と日常茶飯事なのだろう、わりとケロッとした顔で、スタッフからキッチンスケールを借りてきび砂糖を測り始める吉備。
 その切り替えの早さに違う意味でびっくりしてしまう円だったけれど、気を取り直すことにして。
「取り敢えずわたし達もちんすこうを……ココナツ生地で作ろっかな?」
 ココナッツ生地であれば、プレーンのちんすこうで使う小麦粉のだいたい3割くらいをココナッツファインにすればよかったはずだ。
「円ちゃんはココナツちんすこうなんだねっ。デイジーちゃんのは……デイジーちゃんは紅芋ちんすこうにするのかな?」
「あぁ、そうニャ。わたしは紅芋パウダーを使って猫を作るニャ」
 小麦粉・砂糖・ラードはそのままに。円のココナッツファインのように、小麦粉に紅芋パウダーを混ぜ込む。色味がつくので、だいたい1割くらいになるだろうか。
 最初は紫芋にしようかとも考えたけれど、せっかくの沖縄ならば、色味も似ている紅芋にすることにしたというデイジーに、吉備はにこにこと頷く。
「猫ちゃん型かぁ、確かに紅芋の色は紫にも見えるしデイジーちゃんにも見えるよね」
「吉備ちゃん有り難うニャ、他にも苺パウダー使って、ヒナスミちゃんやルインクちゃんも作ろうかニャと」
 義妹の相棒である明石だこと、かつての童蜘蛛時代の頃の義妹の姿をイメージして。そんな風に作るちんすこうは、今回の旅行ではお留守番をしている彼女達にも喜んでもらえると思うから。
 デイジーもまた、吉備の手元を見やった。
 手際よく材料を混ぜた後、作られていくちんすこうの形は、犬、雉、猿、龍。
 それぞれのちんすこうが、誰をイメージしたものかは容易に想像できて。
「吉備ちゃんは桃太郎的にらしいけど、龍は霓虹ちゃんニャね?」
「うん、霓虹ちゃんの龍も、キビらしいでしょ? すごく楽しく作れちゃった!」
 嬉しそうにデイジーへと頷いてから、今度は円の形作ったちんすこうへと視線を向ける吉備。
「円ちゃんはココナツちんすこうをルーちゃんとか、餃子型で作ったんだね。……円ちゃんらしいけど、上手く作ってるねっ!」
「ふふふ、ありがとう。……とはいえ、吉備ちゃんとデイジーちゃんは二人とも凄いよね。料理の経験にはだいぶ差を感じるかも?」
 体験レベルの菓子作りでも、ちょっとしたところに経験の差を感じ取ってしまい少しだけ気後れしてしまう円だったけれど。
『経験の差、なぁ。しかしちんすこう作りは初めてってーのは同じじゃねーのか? 餃子と俺様のちんすこう、初めてにしては形整って良いじゃねーか、って俺様は思うぜ?』
「そうニャよ。初めてなのは同じでそれぞれで上出来なのニャ。円ちゃんも雷獣と餃子、手が込んでるニャし焼成が楽しみニャね」
 雷獣とデイジーの言葉に改めてありがとう、と礼の言葉を伝えて微笑んだ円に、吉備も再び微笑む。
 そうしてオーブン皿の上に並べたそれぞれのオリジナルちんすこうは、スタッフの手によって焼きの過程へ。
 焼き上がるまでの空き時間は、縁側に座ってしばしこののんびりとした雰囲気を楽しむことにしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
【🐟️×🍄×🥟】
今回は琉球ガラス村で、グラスの彫り込み体験を事前に予約して置いたのが幸いでしたが

彫り込み用のイラストはアメリさんが用意してくれたんですね、わたし達はビスマス結晶とグルクン

『ワシの分もあるぞい、針鼠とブーメランじゃな、存外可愛く……ウルシとセットなのじゃな』

ルイさんとウルシさんの分もわたしがやるとして、それぞれらしいセレクトしてますね

『うむ、流石にワシらじゃ難しそうじゃしな、グラスの内側に絵を貼り付け、上からペンでなぞるか』

その後、ルータで掘るのでしたか……これは『第六感&応用力』で

あら、翼さんもグラス彫りに参加ですか?中々良い感じに彫れてますね

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


エミリロット・エカルネージュ
【🐟️×🍄×🥟】
食べ物の中で沖縄ならではの食器の類に挑戦するのも良いね、アメリちゃん絵心あるんだね、それだけ描ければ充分だと思うけど

ビスちゃん達やボク達の事良く解ってるし……じゃあ、ボクもアメリちゃんの用意した絵を使って

『ちゃー(絵を持ってグラスに入って内側から支える)』

シャオロン有り難う、これで下書きはやりやすくなるかな、ルータの時は危ないと思うし離れててね

ついでに下書きに餃子も加えて
ルータでの彫りは『第六感&応用力』で絵通りに彫って

慣れてきたら弱から強にしても良さげかな?あっ、翼くんも挑戦中なんだぁ

確かにビスちゃんの言う通り、良い感じに……頑張ってっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


アメリ・ハーベスティア
【🐟️×🍄×🥟】
琉球ガラスも素敵そうですけど、此方はデザイン的に自由度高そうなので、アメリが『アート』的にグラス彫り用に絵を用意してきたのです。

『キノコと僕、蒼鉛とグルクン、シャオロンと赤い龍、誰用か分かりやすいね……ルイとウルシのもあるけど』

アメリもこれを見ると、まだまだ努力が必要な気もするですが皆さんどうぞなのです

『アメリ……頑張って、僕は手が手だから今回手伝えないけど』

アメリも『第六感&アート』で下書きとルータでの彫りを、ビスちゃんエミリちゃんもう慣れてるので

翼さんも来てたのですね、グラス彫り始めてです?アメリ達も始めてなのですが、頑張りましょうっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎




 一日目は首里城公園で琉球王国時代の歴史に触れ、沖縄の食として沖縄そばを堪能した【🐟️×🍄×🥟】の一行が訪れたのは「琉球ガラス村」。
 糸満市にあるその場所は、職人が実際に作る様子の見学や商品の購入だけではなく、体験型のフォトスポットやカフェといった琉球ガラスにちなんだ様々な見所が詰め込まれた、いわゆる琉球ガラスのテーマパークといった造りになっていて。
「食べ物の中で沖縄ならではの食器の類に挑戦するのも良いね。他にも色々見て回るのも楽しそうだけど」
 わくわくと瞳を輝かせながらエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は案内マップを片手に周囲を見渡す。
 実際、レインボーストリートと名付けられた、カラフルな動線が描かれた通りを歩いていると赤瓦に朱塗りの建物のお土産ショップがあったり、吹きガラス職人が琉球ガラスを作る様子を間近で見ることができたり。さらにはガラスの歴史や技術を学ぶ場所があったりと本当に様々だ。
「ビスちゃん、あの大きな建物が本館みたいだね。ギャラリーとショップが合わさっているみたいだよ。色とりどりでなんだか綺麗だね!」
「そうですね、エミリさん。柱や壁の色合いもガラスのタイルで作られているみたいですね。中にも琉球ガラスの器が色々ありそうです」
 施設内でも一際大きな建物に近づきエミリロットが瞳を輝かせれば、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)も同意して目を細める。
「体験施設は、この建物とは別にあるようですね。どうしましょう? 先に本館を見てみますか?」
「中の施設は気になりますけれど、アメリは先にグラス彫り体験をやってみたいのです」
 ビスマスの問いかけに、ぎゅっと両手を握り締めるは、アメリ・ハーベスティア(キノコ好きの「よいこ」な地竜の末裔・f38550)。
 歩きながら目にした、職人が作る琉球ガラスはとても素敵だったけれど、予約制ということもあるのか、体験の枠はすでに埋まっているようだった。
 アメリ達が予定しているグラス彫り体験だって、希望者の数によっては万が一のこともある。
「確かに。事前予約をしようとしたら、当日直接申し込みしてくださいという話でしたものね。琉球ガラス体験のようにお断りされることはないようですけれど、待たされてしまうかもしれません」
「あそっか。それじゃあ、お楽しみを最優先、だねっ」
 ビスマスとアメリの言葉に頷き、エミリロットは改めて案内マップを手に周囲を見渡した。
 色とりどりのガラスで作られたガラスの家のある中庭のすぐ手前。デザイン性のあるロゴが描かれた建物が目に止まれば、ぱっと顔を輝かせ。
「見つけた! じゃあ、ビスちゃん、アメリちゃん、いこっ!」
『ちゃー』
 相棒シャオロンと共に皆に呼びかければ、エミリロットは先導すべく小走りに駆け出すのだった。


「グラスの彫り込み体験、待ち時間なしで入れたのは幸いでしたね」
 体験の申し込み後、スタッフへと案内された席に座り、ほっとしたようにビスマスは微笑む。
 ビスマスのファミリアであるルイも、そうじゃな、と頷き周囲を見渡して。
『見たところなかなかの賑わいぶりのようじゃな。ワシらも張り切っていかねばのう』
 広々とした施設内には実際に体験プログラムの作業を行う制作ブース以外にも、ハンドメイドアクセサリーの材料の販売ブースがあったり、カフェスペースがあったりとなかなか楽しめる作りになっているようだった。また、体験希望として訪れる客も多いようで、施設内は楽しげな活気に満ちていて。
「本当だよね。他のお客さんで賑わっていると、ボク達も楽しくなっちゃうよね。そういえば、みんなはグラスに何を掘り込むか決めたのかな?」
 スタッフから体験の流れについて説明を受けた後。エミリロットは問いかけとともにビスマスとアメリを見やる。
 グラスは施設内の専用ブースにあるものから自由に選べるし、彫り込む内容も自由。となれば、ある程度デザインする内容を決めてから作業に入った方が楽しいと思うから。
「はい、その点はアメリも考えていました」
 そんなエミリロットの問いかけに、アメリはにこにこと頷く。
「此方はデザイン的に自由度高そうなので、アメリが『アート』的にグラス彫り用に絵を用意してきたのです」
 言いながらテーブルの上に広げたのは、なんとも愛らしいイラスト達だ。
 一日目と同様小型化して同行していたラングリフもアメリの肩から広げられたイラストを眺める。
『キノコと僕、蒼鉛とグルクン、シャオロンと赤い龍、誰用か分かりやすいね……ルイとウルシのもあるけど』
 広げられたイラスト達はラングリフの言葉の通り。キノコとグリフォンはアメリ用、蒼鉛とグルクンはビスマス用、シャオロンと赤い龍はエミリロット用。
 さらには、ビスマスのファミリアであるルイに、ビスマスのグルメツールであるウルシをモチーフにしたイラストのようだ。
「アメリさん、ありがとうございます。わたし達はビスマス結晶とグルクンですね」
「シャオロンと赤い龍のイラストはボクのだね。アメリちゃん絵心あるんだね」
『ワシの分もあるぞい、針鼠とブーメランじゃな、存外可愛く……ウルシとセットなのじゃな』
「ふふ、そのようですね。ルイさんとウルシさんの分もわたしがやるとして、それぞれらしいセレクトしてますね」
「はわ、ありがとうございます」
 描くこと自体は楽しかったアメリだけれど、こうしてそれぞれが眺めながらわいわいとする様子に、なんだかドキドキとしてしまって。
「……アメリもこれを見ると、まだまだ努力が必要な気もするですが皆さんどうぞなのです」
「それだけ描ければ充分だと思うけど。ビスちゃん達やボク達の事良く解ってるし……じゃあ、ボクもアメリちゃんの用意した絵を使って制作するね!」
 それぞれに礼の言葉を伝えながら。描いてもらったイラストに合うグラスを選んで持ってくる面々。
 ビスマスは淡いアクアブルーと白の波模様のグラスを。ルイとウルシのグラスも、同じ雰囲気のを選んでみたり。
 エミリロットは赤色が美しいグラス、アメリはグリーンとイエローの泡模様のグラスを。
 それぞれ、絵を掘り込む部分とグラスの色や模様が綺麗にまとまるように考えながら選んだグラスを前にして、早速制作開始だ。
「まずは彫り込み前の下書きを……だね」
 最初は選んだグラスに絵や文字をペンで書き込んでいく作業。
「下絵ははずれない方にセロハンテープで固定すると描きやすいんだよね」
『ちゃー』
 エミリロットの言葉を聞き、それなら手伝うと言わんばかりに。小竜がイラストを口にくわえたかと思えば、グラスの中に入って内側から支えようとする。
「シャオロン有り難う、これで下書きはやりやすくなるかな」
 懸命に手伝ってくれる相棒に礼を言って、エミリロットは丁寧に書き込みを行っていく。プラスアルファで餃子のイラストも追加すればバッチリだ。
「エミリさんとシャオロンさんの連携さすがですね。わたしも自分の下書き分はできましたから、続けてルイさんとウルシさんの分もやりますね」
『うむ、流石にワシらじゃ難しそうじゃしな、お願いするのじゃ。ウルシ、ワシと一緒に運ぶのじゃ』
 転がさないように押し押しとして、自分達のグラスをビスマスの前に寄せる針鼠とスッポンのふたりの姿。そんな彼らの愛らしい仕草に微笑み、ビスマスもまた追加の下書き作業を行っていく。
 二つ目は、ルイ用の針鼠とブーメラン。三つ目は、お椀と、お椀に手足をつけた亀……いわゆるスッポンのイラストだ。
 それぞれに下書きをつけたグラスを置けば嬉しそうにするふたりに、実際の彫り込みも頑張りますねとビスマスは笑みを返す。
「はわ、エミリちゃんとビスちゃんは下書き完了です? アメリも頑張るのです」
 なんやかんやと慣れた手つきで作業を進めている二人の同行者にちょっぴり焦るアメリだったけれど、
『アメリ……頑張って、僕は手が手だから今回手伝えないけど』
「ランちゃん、大丈夫です。アメリも気合を入れ直して頑張るのです!」
『ちゃー?』
「アメリちゃん、下書きの固定作業、シャオロンが手伝うって!」
「はわ、ありがとうなのです!」
 小竜の手伝いとラングリフの応援をもらいつつ、アメリも少しずつ下書きを進めていき。
「みんなできたね?」
 やがて出来上がったそれぞれの下書きの入ったグラスを見渡し、うんうんと微笑むエミリロット。
「それじゃあ、次はルータを使って実際の彫り込みだね! シャオロンは危ないと思うし離れててね」
『ちゃー』
「確かにルータの作業は気をつけなければですね。ルイさんとウルシさんも、シャオロンさんと一緒に見守っててください」
『そうじゃな。まかせるのじゃよ。のう、ウルシ。ラングリフもアメリの応援じゃな?』
『そうだね。頑張ってね、アメリ』
「はいなのです!」
 わいわいとやりとりをしつつも、ルータで仕上げていく最後のあたりは集中して沈黙する面々。

 ――そうして。

「でーきた!」
「三つとも完成ですね」
「アメリもできましたなのです!」

 やがて、下書きの絵を綺麗になぞって掘り込んで出来上がった、愛らしいグラス達がずらり。
 出来栄えの良さにそれぞれの顔に笑みが浮かんだその時。

「すごーい、みんなのグラス綺麗だねぇ!」
 ふいに聞こえた、聞き覚えのある声。
「翼さんも来てたのですね」
 気がついたアメリの言葉にエミリロットとビスマスも見やれば近くの作業テーブルに座っている、見知った少年が手を振っていて。
「あら、翼さんもグラス彫りに参加ですか?」
「そうそう。オレもね、体験中なんだよ」
 皆がいることには気がついていたけれど、集中しているようだったから完成まで声かけるのを我慢していたのだと話す翼の手には、深い青色のグラス。
 よく見れば、月と翼の模様のような絵が描かれていて。
「あっ、翼くんも挑戦中なんだぁ」
「うん! 下書き終わったから、今から彫り込みしようかなぁって、ちょっとずつね。こういうの初めてだからちょっと緊張しちゃうなぁって」
「翼くんもグラス彫り初めてです? アメリ達も初めてだったのです」
「そうなんだ? でもアメリさんのもビスマスさんのも、エミリロットさんのも出来上がりすごく綺麗だよ? いいなぁって思ってたとこー」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。翼さんのも中々良い感じに彫れてますね」
「確かにビスちゃんの言う通り、良い感じに……だね」
「ホント? よーし、この調子でオレも頑張ってみる!」
 ビスマスとエミリロットの言葉に、翼は嬉しそうに頷いて。
「あのね。もしよかったら、なんだけど。オレの体験終わった後になるけど、一緒にお昼どうかな? 施設内にね、ごはんカフェがあって、すごく良さそうだったんだ!」
「ごはんカフェ、ですか? きのこのメニューもありますでしょうか」
「んっと、サイトでメニュー表見てたら『和風だしのきのこ餡かけのハンバーグ』ってあったよ。あとね、島豆腐のハンバーグっていうから、なめろうとか餃子のタネとかのアイディアになるかもだよ?」
「島どうふのハンバーグにきのこの餡かけ……ですか。それはアメリも食べてみたいのです!」
「そっかぁ、島どうふを餃子のタネにすることも確かにありだよね。きのこのメニューも楽しみ!」
「いいですね。わたし達も最初にこちらの体験に来たので、これから施設を巡るので……では、後ほど待ち合わせしましょう」
 お店の前でがいいですね。そう、ビスマスが言葉を結んで。一行は出来上がったグラスを手にし、体験施設を後にする。
「ね、ビスちゃん、アメリちゃん、今度は本館のギャラリーに行ってみようよ!」
「アメリも、本館のフォトスポットに行ってみたいのです」
「そうですね。では、改めて本館へ行きましょうか」
 そんな風に結んだ待ち合わせの約束を楽しみに。一行が琉球ガラスのテーマパークで過ごす時間は、ゆっくりと過ぎていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミルナ・シャイン
大親友ジゼル(f34967)と

既に銀誓館は卒業したけど、沖縄修学旅行の案内を聞き、せっかくなので高校時代の制服姿で行きたかった美ら海水族館へ。
ジゼルと一緒にまた修学旅行に行けるなんて、グリモア猟兵さんに感謝しなくては!

ジンベエザメのモニュメントの前で記念撮影し水族館へ。
元々水族館は大好きだけど、グリードオーシャン出身としてやっぱり見入ってしまうのはサンゴの海や熱帯魚の海。
ええ、懐かしい雰囲気ですわ…できるなら水槽の中に入って一緒に泳ぎたいくらい。
でもわたくし、ジゼルの傍にいられるならどんな世界でも良いんですのよ。

そうですわ、近くにエメラルドビーチもあるようですから後で一緒に泳ぎに行きましょう!


ジゼル・サンドル
大親友のミルナ(f34969)と

銀誓館に通う現役高校2年生。銀誓館でも修学旅行には行くけれど、先に卒業したミルナとはもう修学旅行にはいけないため、彼女が行きたがっていた美ら海水族館に一緒に行くことに。

そうだな、わたしもミルナと一緒に来られて嬉しいぞ。ミルナも高校の制服だしほんとの修学旅行みたいだ。
お揃いの制服姿で記念撮影し水族館へ。

サンゴの海や熱帯魚の海に見入っている親友、やっぱり故郷の海を思い出すか?
そ、そうか…えっと、ありがとう?

うん、わたしも去年の特訓のおかげで少しは泳げるようになったしな。ビーチで游ぶ時間も考えながら水族館回ろうか。
南国の海で泳ぐ人魚の親友は綺麗だろうな、と思いながら。




 青い空、白い雲。そして遠目に映る、まばゆい光を受けて輝く海の彩りを眺めやり、ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)は青の瞳を輝かせる。
「ジゼルと一緒にまた修学旅行に行けるなんて……!」
 案内人の娘への感謝と嬉しい気持ちを込めた言葉とともに。ミルナが笑顔を向ける先には大親友であるジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)の姿。
 銀の雨降る世界で通っていた銀誓館学園でも経験した行事、修学旅行。
 行事自体はもちろん楽しかったけれど、学年が異なるゆえに、ジゼルと一緒に修学旅行をすることは叶わなかったから。
「そうだな、わたしもミルナと一緒に来られて嬉しいぞ」
 ミルナの言葉に、ジゼルもまた嬉しそうにオレンジの瞳を細める。
 ジゼル自身は銀誓館学園の高校2年生だから、修学旅行には行くのだけれど、先に卒業したミルナとは一緒になることはない。
 そんな折に飛び込んできた沖縄への「修学旅行」の話は、大親友との修学旅行を実現させるまたとない機会だと思ったから。
 せっかくだからと、ミルナとともに銀誓館学園の高校生夏服姿で訪れた先は、親友が行きたがっていた「美ら海水族館」だ。
「ミルナも高校の制服だしほんとの修学旅行みたいだ」
「せっかくのジゼルとの修学旅行ですもの♪ さぁ、まずはあの子の前で記念撮影ですわ!」
 南国の陽の光を受けて輝く、遠くに映る海と同じくらい美しいシアンブルーの髪をふわりとさせながら、ミルナが指差す先には優雅に泳ぐ大きなジンベエザメのモニュメント。
 通りがかった人にお願いをしてモニュメントの前で記念撮影をしてもらえば、大切そうにスマートフォンを抱きしめんばかりにぎゅっとするミルナに、ジゼルはくすぐったそうに微笑んで。
「それじゃあ、行こうか」
「ええ!」


 記念撮影をしたモニュメントのある4階から、|海人門《ウミンチュゲート》と呼ばれる門をくぐり、広がる海の景色を楽しみながら入館したミルナとジゼルを迎えてくれたのは、珊瑚礁と色とりどりの熱帯魚達だった。
「すごいな、光で水の中がキラキラしてる」
「直接陽の光を水槽に取り入れているようですわね」
「……言われてみれば。この水槽、屋根がないみたいだな」
 そういえば、4階に何かがゆらめいているように見える場所があった気がする。あれが水面だとすれば、今見ている景色は、まさに水中の、海の中ということなのだろう。
 館内マップを見ると「サンゴの海」とある水槽には、大小様々な大きさからなる珊瑚礁がメインとなっているようだった。
 珊瑚礁の周辺を泳ぐ小さな魚達の姿を眺めながらエメラルドグリーンの世界をゆっくりと進めば、やがて大きさも彩りも様々な魚達の群れが舞い泳ぐ「熱帯魚の海」の水槽へと繋がる。
 真上から差し込む光と珊瑚礁からなる影が織りなす世界は、見る角度によっても彩りが全く違っていて。
 大海への誘いを受けて始まった海の旅は浅瀬の珊瑚礁を追いかけながら熱帯魚の海、黒潮の海へと渡り、やがて深海へと続いていく。沖縄の海を少しずつ潜っていくような体験ができる造りになっているのだと気がつけば、その先に進むのが楽しみになってくる。
 訪れることができてよかったと思いながら、ジゼルが傍を見やれば、じっと水槽を見つめる親友の美しい横顔があった。
「ミルナは、やっぱり故郷の海を思い出すか?」
「ええ、懐かしい雰囲気ですわ……できるなら水槽の中に入って一緒に泳ぎたいくらい」
 ジゼルの言葉に頷きを返し。誘いかけるように近づいてきた水槽内の赤色の魚に、ミルナはふふっと小さく笑う。
 元々水族館は大好きで、学園近くにあるのをはじめ、訪れる場所の数もその頻度も人よりも多い方だと自覚しているミルナではあるけれど。
 水槽の中に広がる、陽の光を受けて輝く珊瑚と熱帯魚に彩られた世界は、ミルナの故郷であるグリードオーシャンをどこか彷彿とさせるものがあって、つい見入ってしまう。
 ――けれど。
 ミルナが傍へと視線を向ければ、そこには大好きな親友なるお姫様。
 彼女が向けてくれる視線を受け止め、見つめて、ミルナは微笑みを返す。
「でもわたくし、ジゼルの傍にいられるならどんな世界でも良いんですのよ」
「そ、そうか……えっと、ありがとう?」
 オレンジ色の瞳が、照れたように泳ぐ。
 一瞬の間の後。やがてはにかんだように微笑んだジゼルに、ミルナは再び微笑んで……それから、思いついたとばかりに、ぽむと両手を合わせる。
「そうですわ、後で一緒に泳ぎに行きましょう!」
 そうだ、水槽を眺めて故郷を懐かしむ必要などない。ここは南国。泳ぎたいと思ったのなら、思うままに泳いでしまえばいい。
 パンフレットによれば、水族館の近くにはエメラルドビーチもあるという。
 |礁湖《ラグーン》内にあり、波が穏やかだというから、ジゼルと一緒に楽しむにはうってつけの場所だ。
「うん、わたしも去年の特訓のおかげで少しは泳げるようになったしな」
 ジゼルも頷く。昨年のグリードオーシャンの地でミルナと一緒に頑張った成果が、修学旅行を楽しめる思い出の一つになることはすごく嬉しい。
「ビーチで游ぶ時間も考えながら水族館回ろうか」
 熱帯魚の海の先には、この水族館のメインスポットとも言える「黒潮の海」が待っている。
 魅力的な展示を前にすればつい時間を忘れがちになってしまうから、気をつけながら楽しんでいきたいところだ。
「ええ、そうですわね。……うふふ、水族館にビーチにと楽しむことたくさんですわね。あ、記念撮影ももっとたくさん撮らなくては、ですわね!」
 盛りだくさんだからこそ取りこぼしてはもったいないとばかりに、行きましょうと差し出してくれたミルナの手に、ジゼルは自らの手を重ねる。
(「南国の海で泳ぐ親友は綺麗だろうな」)
 まばゆい陽の光が降り注ぐエメラルドグリーンの海を泳ぐ人魚の親友は、さぞ美しいに違いない。
 そんな風に想いを馳せながらも、ミルナと共にジゼルは歩き出す。
 今はもう少し、親友とともに、水族館の海の旅を楽しむことにしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳥羽・白夜
八坂(f37720)と。

2日目は国頭村森林公園にあるキャンプ場でキャンプ。
レンタルしたハンモックで気持ちよく寝ていたら後輩に起こされ、バランスを崩して落ちてしまい。
うるせえよ!はあ…昔の修学旅行でもハンモックで昼寝してて落ちたんだよなぁ…

ぶつぶつ言いながらも後輩が作ったインドカレーは美味しく、これ美味いな!トマト使ってる?と喜んで完食。

日が落ちて後輩の星見に付き合うことに。はー、こんな綺麗に見えるもんなんだな。
てぃん…?何だそれ?
へー、天の川ねぇ…
波照間島も星綺麗に見えるんだっけ。
なんか修学旅行というより星旅になってるな…
(八坂に誘われなかったら沖縄行こうとか思わなかっただろうしまあいいけど)


八坂・詩織
白夜さん(f37728)と。

2日目は国頭村森林公園でキャンプ。

見事な落ちっぷりでしたね、とハンモックから落ちた先輩をからかいつつ。
白夜さんがやんばるの森行ってたなんて意外でしたけど、ハンモックでのお昼寝が目当てだったんですね。
今日もよく寝てましたもんね。
(あまりにも気持ちよさそうに寝てたから夕方になるまで起こせなかった)

夕食は自慢のインドカレー。作る過程でトマト缶を使うんです。

日が落ちたらお楽しみの天体観察!
さすが世界でもトップクラスの星空、てぃんがーらもきれいに見えますね!
沖縄の方言で天の川のことですよ。
国頭村では一年中天の川を見ることができるんです。
明日の波照間島の星空も楽しみですね!




 ――国頭村森林公園。
 施設の一角にある炊事棟で夕食を作っていた手を止め、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は空を見上げて目を細める。
(「こうしていると、南に来たんだと実感しちゃいますね」)
 常であれば夕方と呼ばれる時間帯にあってもなお明るい空の下。
 市街地の賑やかさとはうってかわっての静けさの中、聞こえてくるのはやんばるの森の自然の音と、料理をする自分の手元から生まれる音だけ。
 学園の教師に猟兵の仕事に日常は何かしら忙しないけれど、こうして自然の中に身を置きながらゆっくりと料理を作るのは悪くないことだと思う。
(「とはいえ、日が暮れるまでには夕食は食べておきたいところです」)
 詩織がこの地でのキャンプを決めたのには理由があるのだから。お楽しみは陽が落ちた頃。だからこそ、その時までにお腹も含めたコンディションを整えておかなければ。
「……と、そろそろあっちも起こさなくては、ですね」
 飯盒のご飯も炊けたし、腕によりをかけて作ったインドカレーの出来上がりももうすぐとなれば、残りのやることは一つとばかりに、詩織は炊事棟からほど近い距離にあるキャンプ台の一つへと視線を向けた。
 設営された二つのテントが建てられたキャンプ台の側でゆらゆらと揺れているのは、安定感抜群となる自立型のハンモック。揺れているのはもちろん占拠している者がいるからで。
 その揺れ具合から、占拠する人物が未だ夢の中だと判断すれば、詩織は炊事棟の火を止め、ゆっくりとハンモックへと近づいた。
「――白夜さん」
「……んー? ……って、うわっ?!」

 ――ぐりんっ、どっすんっ☆

「……いたた……」
「……わー……見事な落ちっぷりでしたね、白夜さん」
「うるせえよ!」
 からかいの色をたっぷり含んだ後輩の言葉に、鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は反射的に言葉を返した。
 気持ちよく寝ているところにいきなり声をかけられれば誰だってびっくりするし声も荒げたくなるというものだ。
 とはいえ理由があろうとも声をかけてくれた後輩に非があるわけでもない。
「はあ……昔の修学旅行でもハンモックで昼寝してて落ちたんだよなぁ……」
 ぶつぶつと言いながら、バランスを崩した折に打ち付けたところをあちこちこちさする。この痛みも含めて懐かしいといえば懐かしいだろうか。
 そんな白夜の様子に、詩織はくすりとして。
「白夜さんがやんばるの森行ってたなんて意外でしたけど、ハンモックでのお昼寝が目当てだったんですね。今日もよく寝てましたもんね」
 からかい口調で言いながら、主人のいなくなったハンモックにそっと触れる。
 全身を包み込むようにして眠るから、安心感もあるだろうし、宙に浮いた状態からくる揺れも心地良く感じるのかもしれない。
 実際、白夜があまりにも気持ちよさそうに寝てたから夕方になるまで起こせなかったくらいである。とはいえそこは詩織の中だけの秘め事ではあるのだけれど。
「まぁ、よく寝てたってのは否定はしないけどな。八坂に起こされなけりゃ朝まで熟睡コースだったろうし」
「そんな風に見えたから起こしたんですけどね。夕食と、その後も含めて白夜さんには付き合ってもらうんですから」
 機嫌の悪い表情でぶつぶつとこぼす白夜の言葉はさらりと流しつつ。炊事棟を指し示し、詩織はにっこりと微笑む。
「そんなわけで、働かざる者なんとやらです。食事はできてるんで、準備を手伝ってください」


 寝起きだとどうにも不機嫌になってしまう白夜ではあったが。
 その不機嫌さも、後輩お手製のインドカレーの美味しさを前にすっかり吹き飛んでしまった。
「これ美味いな!」
 ご飯がターメリックライスだったり、配合されたスパイスが本格的だったり。とはいえ細部のこだわりまではわからないけれど、これだけはわかる。
「なぁ、これトマト使ってる?」
 不機嫌とは打って変わっての明るい声で問いを投げれば、やっぱりわかるんですねと後輩は微笑む。
「ええ、作る過程でトマト缶を使うんです」
「なるほどなー、やっぱりそうだよなー」
 そういえば、インドカレーのベースにはトマトをふんだんに使ったものがあると聞いたことがある。後輩の腕もさることながら、最高だな、トマトベースのインドカレー!
 何はともあれとにかく美味しくて、あっという間に完食してしまった。
 改めて礼の言葉とともに後片付けを手伝ったところで、白夜は空を見上げる。
「そろそろ日が暮れる頃だな」
 夕方の赤い色が空の彼方へと沈む一方、夜を思わせる濃く深い暗い青の色が空いっぱいに広がっていく。
「というか、星って夕暮れ時から見えるもんなんだな」
「この施設全体で屋外照明は使用していないからよく見えるんでしょうね。もう少し日が落ちたら、星見の散歩に行きましょう」
 そんな言葉と共に、後輩は楽しみだと言わんばかりに目を細めて微笑むのだった。


「行きましょう、白夜さん。お楽しみの天体観察です!」
 準備万端とばかりに白夜のテントへ声をかけてから、キャンプ台から降りて小径へと出た詩織は改めて空を見上げる。
 真っ暗な木々の影から見えた空は澄んでいて、こぼれ落ちそうなほどの星々がキラキラと輝いている。
「ここは木々に囲まれてるのでちょっと空が狭いですけど、広場に出ればもっとよく星が見えますよ」
 足元は注意ですけど、と言いながら。懐中電灯を片手に白夜とともに小径を辿って広場へと歩けば、徐々に見える空が広がって。
「はー、こんな綺麗に見えるもんなんだな」
 施設内で最も星が見えるというキャンプサイトへと到着すると同時、傍らから聞こえてきた感嘆の声に、詩織もまた景色を見渡した。
 満天の星という言葉の通りの見渡す限りの星空に思わず頬が緩む。
「さすが世界でもトップクラスの星空です」
 施設内には天文台もあるようだけれど、周辺を散策するだけでもたくさんの星を楽しむことができることに軽く感動を覚える。
 宝石のように散りばめられた星々。それらとあわせ、空一面を流れる川のように広がる淡い輝きを帯びた光の帯。あれは――、
「てぃんがーらもきれいに見えますね!」
「てぃん……? 何だそれ?」
「沖縄の方言で天の川のことですよ。国頭村では一年中天の川を見ることができるんです」
「へー、天の川ねぇ……」
 声を弾ませ説明をする後輩の声に耳を傾けながら、白夜もまた星々を見上げる。
 後輩曰く、天の川を見るためにはいくつかの条件があるのだという。
 特に市街地などの人工的な光の不適切な使用によって起こる「|光害《ひかりがい》」のない、ある程度の暗さが保たれた、視界が開けた場所で見ることができるのだとか。
 銀誓館学園近隣も、他の地域においても、市街地である程度賑やかな場所に住んでいるとどうにも縁遠くなってしまうのはわかる気がする。
「はい。だから、この場所でこんな風に星空を楽しめるのは結構貴重なんですよ」
 空を見上げながら、心持ち熱を帯びて話をする後輩の横顔を眺めながら、白夜はふむ、と相槌を打つ。
 街灯のない暗さが保たれた施設であっても、目が慣れればそれなりに視界は保たれる。熱っぽく星を語る、後輩のキラキラとした表情は、実に楽しそうで。
「明日の波照間島の星空も楽しみですね!」
 本当に楽しみだという色を声に滲ませて後輩が口にするのは、沖縄の星スポットの一つ。
「波照間島も星綺麗に見えるんだっけ」
 沖縄本島北部でもこれだけ見えるのならば、離島ではさらに見えるものなのだろう。
 中でも波照間島と場所を指定するからには、後輩の目から見て魅力的なポイントがあるのだろうから。
 白夜としては細かいところはわからないけれど、その点については現地で後輩に説明してもらえばいいだろうか。
「なんか修学旅行というより星旅になってるな……」
 思わず溢れた言葉に気がついて白夜を見やった後輩へ、何でもないと返して。
(「八坂に誘われなかったら沖縄行こうとか思わなかっただろうし、まあいいけど」)
 こういう旅も悪くない、と。改めて星を眺める後輩を眺め、白夜は小さく微笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
露のしおりを参考にやんばるの山原を露と共に散歩する。
亜熱帯の植物で形成されている森はとても興味深い。
「私の知らない名前の植物ばかりだ。ふむ…」
スマホで一つ一つ調べながら露にも解説しよう。
ふむ。植物の話は露には多少退屈かもしれないな…。
幾つか果物のことも解説に加えておこうか。
あの子は私の話で退屈はしないだろうがな。
あの子が好きそうなものを解説にいれてもいいだろう。

果物の話をしていたら喉が渇いて来たな。
「旨いマンゴージュースを出す店を見つけたが…。
この後、その店にいくか?」
植物のことを調べるついでに検索してみたのだが。
露は喜んでくれたようでよかった…。
更についでだが。
恩納村でホテルも予約しておいたことも告げよう。
3日目の予定も決める為にホテルは必要だ。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
あたしのしおりを参考にするみたいね♪
そうね。どこがいいかしら?うーん。
レーちゃん植物も好きだから「やんばる」がいいかも。
「ここがいいわ♪ レーちゃん、植物好きだし♪」

やんばるの森はあたしが知ってる森とは違くて。
亜熱帯の植物って凄いのねー。大きいわ♪
植物のことはレーちゃんが一つ一つ説明してくれて。
とっても面白くって聞き行っちゃうわ!
…あれ?果物の説明が幾つか出てきて驚いちゃうわ。
ん。多分これって…あたしのため…かしら?
こーゆーところも含めてレーちゃんは大好きよ♪

「うん♪ あたしも喉乾いたわ。いきましょ♪」
ジュースのお店も調べてくれていたみたいね。えへへ♪
ぎゅーってしちゃうわ。わーい♪
そしてホテルまで?流石レーちゃんね!




「2日目も、君のしおりの内容をもとに行き先を決めよう」
 シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)の言葉に、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)はぱちくりと瞬きをする。
「いいの? レーちゃん」
「ああ。1日目も色々興味深かったし、体験も楽しめたからな」
 ふむ、と頷いて見せるその表情は全く含むところがない。
 表面上は冷淡に見えて実はものすごく気遣いをする親友は、時折自分の思うところを口にしないことがある。
 付き合いもそれなりに長い露には、そういう部分がわかってしまうこともあるのだけれど。どうやら、今回に関しては心から楽しんでくれたらしい。
 となれば、2日目の行き先設定も俄然やる気が出るというものだ。
(「そうね。どこがいいかしら? うーん」)
 せっかく参考にしてもらえるのだから、やっぱり親友には思いっきり楽しんでもらいたい。
 そう考えながら1日目と同様に露はしおりをパラパラとめくる。
 しおりの流れに従うなら、2日目は自然に触れる流れになっている。
 海の水族館か、それとも森の自然か。
 あれこれと思考を巡らせながら、目に止まったのは緑豊かな自然の写真。
(「レーちゃん植物も好きだから「やんばる」がいいかも」)
 やんばるとは、基本的には沖縄県北部地域の総称で、広義でいえば南は恩納村から北は国頭村までの12市町村のことを指す。
 その場所には、世界自然遺産として登録された豊かな自然があり、固有種を含めたたくさんの動植物が生息しているのだという。
「ここがいいわ♪ レーちゃん、植物好きだし♪」
「……ふむ、森か。地域的にも興味深い。行ってみるとしよう」


 そんなやりとりの後、シビラとともに露が訪れたのは、恩納村にある「県民の森」。
 自然を楽しむためのいくつかのコースがある中、マイペースにのんびりと散策ができそうな「渓流コース」を選んだ二人は、スマートフォンで調べて見つけた案内マップをもとに出発!
「園内はちょっと歩いちゃうけど、頑張りましょ、レーちゃん♪」
「まぁ、これも軽い散歩の一つと思えば、ではあるな」
 昨日自覚してしまった運動不足も多少の解消にはなるか。ふむ、と頷き、歩きながら周囲を見渡すシビラ。
「それにしても、亜熱帯の植物で形成されている森とは……」
 整備された公園内の歩道から見える木々は、見るからに生命力に溢れ、力強さを感じる。
 人の手によって整備が行き届いているからこそこうして道の形をなしているが、それらがなければあっという間に取り込まれてしまうのかもしれない。
「あ! レーちゃん見てみて、看板があるわ! もうちょっとで『渓流コース』よ♪」
 楽しそうにぱっと顔を輝かせた露が、ぴょんぴょこと飛び跳ねながら指差す先には、出入り口を示す看板があった。
 見れば整備された階段からなるなだらかな遊歩道が続いており、比較的歩きやすそうな造りになっているようだ。
「……ふむ、亜熱帯の植物で形成されている森はとても興味深いな」
 歩道の両端の木々を眺めながら、シビラは目を細める。わかりやすく無秩序に鬱蒼と生い茂る木々は、先ほど遠目に見た時よりもずっと力強く感じて。
「亜熱帯の植物って凄いのねー。大きいわ♪ この鳥の羽に見える葉っぱってなんだか不思議ね!」
「ふむ、これは『ヒカゲヘゴ』だな」
 植物を眺め、手にしたスマートフォンで種類を調べながら解説をつけていくシビラ。
 日本では奄美大島以南に生息しているという常緑木生シダの一種で、大きなものでは高さが10mを超えるほどになるのだという。
 やんばるの森の亜熱帯らしい森の景観に一役かっているとも言える、特徴ある植物なのだとか。
「へぇ〜。じゃあじゃあ、この、くるんと巻いた感じになっている木は?」
「これも『ヒカゲヘゴ』だな。どうやら新芽で、食べられるようだな」
「そうなの?! おいしいのかしら、かしら? 何だか不思議ね! じゃあじゃあ、この木は?」
「これは……おそらく『イタジイ』だろうな。この木が、やんばるの森の多くの景観を構成しているらしい」
 日本では「スダジイ」と呼ばれている常緑の広葉樹で、ノグチゲラなどの野生動物が生育するための環境を保つ役割を果たしているのだという。
 ちなみにやんばるの森の中ではこの木の割合が最も多く、やんばるの森を遠くから見た時の景観がブロッコリーのように見えるのも、そういう理由かららしい。
「へぇ〜。……話している間に随分下まで降りてきちゃったみたいね。あっちには橋が架けられてるみたい!」
 露が楽しそうにぱたぱたとかける足音と共に、虫や鳥の鳴き声に混ざって聞こえてくるのは穏やかな沢のせせらぎの音で。
 音と沢から吹いてくる風の心地よさに、シビラはしばし目を細め、それから天を仰いだ。
 真っ直ぐ高く伸びて葉を広げるヘゴの木がいくつも生え、空を遮るように覆い隠す光景は、書物で見るような恐竜などが出てきそうな何とも言えない雰囲気を醸し出している。
(「……それにしても。私の知らない植物ばかりで、個人的には興味深いのだが……露には多少退屈かもしれないな……」)
 歩道を歩きながら、植物を指し示しあれやこれやと質問を投げかける露は、シビラの解説にキラキラと目を輝かせながら聞いてくれてはいる。見る限り退屈はしていないのだろうが……その様子に甘えるばかりなのはなんだか心苦しい気がして。
(「ここは、折を見てあの子が好きそうなものを解説にいれてもいいだろうか」)
 そんなことを考え。シビラは、楽しそうに沢の流れを眺めている露へと近づいた。
「……この森の植物は樹木が多いようだが……」
 このあたりで幾つか果物のことも解説に加えておこうかと、ふむ、と一つ頷く。
「森を散策して見つけられる植物は結構多いが……それ以外にも、やんばるで栽培されている果物としてはマンゴーやパインナップル、シークァーサーがあるな」
 他にもタンカン、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツなどなど。それぞれの市町村の産直施設においても特産品として販売もされている……などと話したところで。見れば、不思議そうに瞬きをする露の顔があって。
「……ん? どうした?」
「ううんー。何でもないわ」
 植物の説明の中に、いつの間にか果物についての説明が入ってきたことを、一瞬だけ不思議に思ったのは事実だけど。
 改めてどうしたとシビラに問われれば、露はふるふると首を横に振って見せる。
(「ん。多分これって……あたしのため……かしら?」)
 あえては聞かない。けれど、森で見かけた植物の話に栽培されている果物のことを織り交ぜたのは、きっとレーちゃんはあたしのことを考えてくれてのことだろう。
 そうよ、絶対そう。
(「えへへ、こーゆーところも含めてレーちゃんは大好きよ♪」)
 森の自然に触れ合いどこからともなく聞こえてくる虫と鳥の鳴き声の心地よさもよいけれど、それ以上に親友の心遣いが嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまう。
「レーちゃん、トレッキングコースはもうちょっとで終わりみたい!」
「……そのようだな」
 ふむ、と頷き、シビラは改めて自身のスマートフォンへちらと視線を落とす。
「果物の話をしていたら喉が渇いて来たな」
 自然の中の散歩も十分に楽しんだことだし、そろそろ休憩も兼ねて、また別の場所に移動してもよいだろう。
「旨いマンゴージュースを出す店を見つけたが……この後、その店にいくか?」
 県民の森からさほど遠くない同じ恩納村内には、「おんなの駅」と呼ばれる道の駅があるようだ。
 マンゴージュース以外にも色々あるように見えたから、見て回るのもいいだろう。
 どうだろうかと。問いかけ、小首を傾げて見せるシビラに、露は今度こそ満面の笑みを浮かべて。
「うん♪ あたしも喉乾いたわ。いきましょ♪」
 レーちゃんが、あたしのためにお店を調べてくれていたなんて感激以外の何者でもない。
 あまりにも嬉しくて、嬉しさのあまり、勢いよくぎゅーっとシビラを抱きしめる。
「えへへ♪ レーちゃんだーいすき❤️」
「……まぁ、な、」
 勢いにむぎゅっとなるも、ある意味それはいつものことだから些細なことで。それよりも、相棒が喜んでくれていることが素直に嬉しい。
 内心の気持ちは言葉にできなかった代わりに、もう一つ告げることがあったのを思い出せば、シビラは言葉を続けた。
「更についでだが。恩納村でホテルも予約しておいた」
「ホテルまで? 流石レーちゃんね!」
「ああ。3日目の予定も決める為にホテルは必要だから、な」
 さらに強く抱きしめてくる露のされるがままになりながら。喜んでくれたようで良かったと、シビラは金の瞳を細めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高沢・麦
【🌾📖】
ヤンバルクイナが見たい。
我々探検隊は森の奥地に踏み込んだ…なーんてね嘘嘘!さすがに夏に挑戦する事じゃねーわ
俺が運転するからさ、今日は道の駅行かね?安波ってとこ
のんびりすんのに良さそーなんだ
そーそーガイアチャージできるし!
やんばるの森を屋内から楽しめる観察棟があるんだってー
海無し県民だから夏の海も感動だけど
沖縄来てみたらあまりにも植物の種類が違って
森の観察にも興味わいちゃった
創良くんは読みたい本持ってきてる?
俺どっかで動植物図鑑でも買おっかな
未知ってテーマも良いよね

めちゃウマパイナップルドリンクを手に
ゆったりソファに座り
目の前には大自然
でも涼しくて
ボーッと眺めてると本をめくる音が聞こえて
何読んでんの?なんてぽつりぽつり話して
静かで贅沢な時間最高!
喋らない系の交流も楽しいよ
この意外性も魅力的っしょ?なんちってー
ひとつのかたちに囚われたくなくてさ
何でもやってみる、かつ何者でもないことが目標
これも未知へのわくわくなのかもね

ブランコ乗りたい夕焼けの時間狙ってこー!
青春の続き、って感じ!


橘・創良
【🌾📖】

ヤンバルクイナ探検隊?
…あ、行かないんだ
うん、道の駅いいね
ご当地パワーもチャージ出来そうだよね

道の駅であり、みちの駅なんだね
未知のものに出会うのはいつだってわくわくするよ
読書もそのひとつだと思ってるんだ

展望台からやんばるの森を眺めて
あれは世界自然遺産の森なんだ
パイナップル畑も広がってるね

え、屋内からも森を楽しめる場所があるの?
確かに沖縄の動植物は本州とは違うよね
本はいつも何冊か持ち歩いてるんだ

パイナップルスムージーをお供に
沖縄が舞台の推理小説を読むよ
麦くんは図鑑買えた?
あ、今ヤンバルクイナの声がしなかった?
大自然を眺めての読書は贅沢だね

麦くんはもっとアクティブなことがしたいのかと思ってたんだ
紅型の時も集中してたし
黙々と作業する職人型なのかな?
ギャップってやつだね
そうだね型にはまるよりは
何にでもなれる存在でありたいとは思うかな
そういう意味では猟兵になって世界が広がったんだ

あ、そうだ
あとで屋上のブランコ乗らない?
大人になってからなかなか乗らないからね
そう、青春はまだ続いてるんだよ




「ヤンバルクイナが見たい」
 大真面目な表情で高沢・麦(栃木のゆるゆるヒーロー・f45122)は開口一番そう言って、ハンドルを持つ手をぐっと拳を握りしめる。
 ちなみに今は一日目の宿泊先だった那覇で借りたレンタカーを運転している最中だ。
 ベタな沖縄あるあるであれば、のんびり一般道の58号線あたりから北上といったところになるが、今回は目的地に着くことを優先させて途中高速道路の力を借りることにした。
 地元栃木の高速ネットワークと比較すれば、沖縄の高速道路は距離も短くシンプルだと思う。
 とにもかくにも安全運転。視線はまっすぐ前方を見つめながらもなんとなくイメージするのは、頭の中でショウワの時代に大衆を魅了したという某探検隊シリーズ風の映像とテロップだ。

 ――沖縄やんばるの森に踏み込んだ者達は、果たして何を見たのか。
 ――調査を開始した探検隊に待ち受けるのは、毒ヘビと巨大なヒカゲヘゴからなる自然の脅威だった!
 ――多彩な亜熱帯植物からなる森林の奥には果たして何が隠されているのか?!
 ――亜熱帯密林に幻の野鳥ヤンバルクイナを探せ!

 様々な賛否両論の飛び交う伝説番組へのリスペクト的な熱い思いとともにそれらしい台詞を連ねるご当地ヒーロー氏が運転する車の助手席に座り、涼やかな笑みを浮かべるは、橘・創良(静謐の泉・f43923)。
「ああ、僕も一応嗜んでるよ。そうだね、その路線でいくなら僕たちはヤンバルクイナ探検隊ってところかな?」
「そうそう、我々探検隊は森の奥地に踏み込んだ……って!」
 創良の言葉に、首がもげんほどにうんうんと頷く麦。視線こそ前を向いたまま真剣さを帯びた表情をつくるも、
「……なーんてね嘘嘘!」
 次の瞬間、真顔を崩しへらっと笑った。
「さすがに夏に挑戦する事じゃねーわ!」
「……あ、行かないんだ?」
 麦くんであれば、それこそノリと勢いで実行するかと思ったのに、などとどこか芸人的な期待を寄せていたらしい創良の言葉に、麦は肩を竦めて。
「さすがの俺でも、熱射病に熱中症のリスクまで背負ってはやらないよ! ていうか、俺がやる場合創良くんにも付き合ってもらう予定なんだけど」
「ああ、それは確かにないね」
「……うん、創良くんはそういうと思ってた。……で、俺は考えたわけです。探検隊をせずに色々満喫する方法を!」
 ヤンバルクイナが見たいのは本当だけど、別に某探検隊のオマージュをしてあれやこれやしなくとも、もっとスマートな方法はある。
 この辺りを無計画に実行するなど、ご当地ヒーローとしての名が廃るというものだ。
 話しながらも一時休息とばかりに、麦は車両を伊芸サービスエリアの駐車場に停止させる。
 購入したさんぴん茶のペットボトルの一つを創良へと手渡し、自身も片手に一時の休息を取りながら。麦は自ら温めていたやんばる満喫プランを披露する。
「俺が運転するからさ……って、今も運転中なんだけど。今日は道の駅行かね? 安波ってとこ。のんびりすんのに良さそーなんだ」
 言いながら創良へと見せたのは、スマートフォンにお気に入り登録していた道の駅のWEBサイト。
 パイナップルのイラストと組み合わせたバナーロゴに、イエロー系のカラーデザインが施されたそこには、施設紹介と見所がぎゅぎゅっと凝縮されていて。
「うん、道の駅いいね。ご当地パワーもチャージ出来そうだよね」
「そーそーガイアチャージできるし! あと、ここにはやんばるの森を屋内から楽しめる観察棟があるんだってー」
「え、屋内からも森を楽しめる場所があるの? それはすごいね」
「でしょでしょ?! 海無し県民だから夏の海も感動だけど、沖縄来てみたらあまりにも植物の種類が違ってて、森の観察にも興味わいちゃったんだよね」
 1日目におきなわワールドでの植物園で見たヤツも面白かったから。やんばるの森の植物や生き物もさぞ魅力的に違いない。
 にかっと笑って見せた麦の楽しそうな語り口に、
「確かに沖縄の動植物は本州とは違うよね」
 創良はふふっと微笑み、自身のスマートフォンでも同じようにWEBサイトを表示させてみる。
「道の駅であり、みちの駅なんだね」
 WEBサイトのトップページにあるキャッチコピーは、道の駅の「みち」を様々な「み」と「ち」に置き換え、掛け合わされていてなんだか面白い。
「未知のものに出会うのはいつだってわくわくするよ。読書もそのひとつだと思ってるんだ」
「わかるー! 未知ってテーマも良いよね。あと読書も! ……というか、創良くんは読みたい本持ってきてる?」
「うん。本はいつも何冊か持ち歩いてるんだ。旅の合間の読書って結構集中できるからね」
「おおー。さすが! 俺どっかで動植物図鑑でも買おっかなぁ。ここのサービスエリアにそれらしい何か売ってるといいけど。遭遇した未知を解き明かすのもまたロマン、ってね!」
 観察棟に本を持ち込んで自然と読書の両方を楽しむというのもきっとありだろう。
「よっしゃ、気分転換もできたし、創良くんと話しててもっと楽しみになってきたし、気合いも十分! 運転再開といくかー」
「そうだね。ナビは頑張るんで、引き続きよろしくね、麦くん」
 ペットボトルの残りのさんぴん茶をぐいっと飲み干し、にぃっと笑みを浮かべる麦に、創良もまた微笑みを返すのだった。


 ――そうして。高速道路の終点となる許田インターチェンジを抜け。なんやかんやと道を抜け、たどり着いた道の駅にて。
「駐車場から見える森の景色すげー! せっかくだし、展望台から拝みたいよねこの景色!」
「そうだね。早速行ってみよう」
 駐車場に設置されていた案内板を頼りにしつつ、麦と創良が最初に向かったのは本体棟にある屋上展望台だった。
「おおー! 原生林の真っ只中! 実際に見ると思った以上に森っぽい!」
「やんばるの森、いい眺めだよね。あれは世界自然遺産の森なんだ。パイナップル畑も広がってるね」
「なるほど、世界自然遺産。どれほどかと思ってたけど迫力あるよなー。パイナップル畑もすげー。そして遠くに海まで見えるとか最高だねこれ!!」
「本当だね。海は太平洋になるのかな。森と海の両方を一度に見れるのも面白いよね」
 それぞれに感想を言い合いながら、しばし展望台からの景色を楽しんだ後。二人は改めて施設内の散策を始めた。
 まずは本体棟。天井が高く全体的に広々としたモダンな造りの空間には、カフェスペースと物販スペースが併設されていて、この施設オリジナルの土産物も販売されているようだった。
「創良くん、これ買おうぜ! パイナップルスムージー!」
「いいね。観察棟のお供によさそうだ。買ったら早速移動してみようか」
 飲み物を手に、有料ゾーンとなるチケットも購入した二人は、施設案内に従いながら観察棟へ。
 観察棟は、本体棟とは別棟にある、コアワーキングスペースなどがある交流棟から少し離れた位置にある施設だ。続く道は、階段状の遊歩道になっていて、森林の中を分け入り潜り込んでいくような造りになっているようだ。
「この遊歩道を進むみたいだね。……ふふ、測らずもヤンバルクイナ探検隊になりそうだよ?」
「マジか……のんびり屋内移動かと思いきや、プチ冒険要素まであるとかすげーなこの施設」
「そうだね。一応施設の一部だし、整備されているから心配ないようだけど。ひとまず麦くん先にどうぞ?」
「お、おう……『我々探検隊は森の奥地に踏み込んだ』……」
 創良の言葉にごくりと息を呑むも、ここへ向かう途中で自ら発した台詞を再度口にしつつ、前に立って遊歩道の階段を降り始める麦。
「……あ、看板があるね。なになに『毒ヘビ注意』?」
「ひぇ……マジっすか……うう、引き返したくなる……」
「まぁ、注意は必要だけど大丈夫じゃないかな。……ほら、せっかくのスムージーも溶けてしまうから、先へ進もう」
「創良くんてば涼しげな顔で男前ね……うう、そーだよな、一応施設だし、遭遇率は低いはずだもんな……」
 文字通りおそるおそる進む麦と、その背後から、周囲を観察しながら進む創良。
 そんな風に歩みを進める二人の前に現れたのは、カフェを彷彿とさせる黒の外観の小さな建物だった。
「『観察棟』って案内版もあるね。まるで秘密基地みたいだね」
「うおぉぉ、なんか感動……! まさに冒険の果てに秘境を見たって感じだよなー! 早速入ろうぜ、創良隊員!」
 一転して元気を取り戻した麦の言葉に、そうだね、と返して微笑む創良。
 ここからはゆっくりとした時間を楽しむことにしよう。


(「はー……色々あったけど落ち着くよなー、ここ」)
 ゆったりとしたソファの背もたれに深く座り、麦は手にしたパイナップルスムージーを一口含む。うまい。
 シンプルながらも最上のリスペクト込めた想いを胸に前方へと視線を向ければ、映画館の巨大スクリーンを彷彿とさせるような大きな窓があり、その先には緑豊かな大自然が広がっていた。
 耳に響くのは虫と鳥の鳴き声からなる自然の音。
 巷にはこういうヒーリング音楽もあるというけれど、これがどこかの動画サイトからなるものではないことは、今ここに麦自身がいることで証明されていると言えよう。
 まさに森の中にいるにもかかわらず、亜熱帯特有の湿気や熱とは無縁の、空調の行き届いた涼しさはなんとも言えず心地よくて。
 マインドフルネスの体験ってこういう感じなんだろうなー……などと浮かんでは消える取り止めのないことを思いながら、麦がぼんやりと森の景色を眺めていると。
「……創良くんは何読んでるの?」
 自然音の中に混ざって聞こえてきたのは、パラリと紙をめくる音。これは傍の席に座る創良が本を読んでいるのだと思えば、唐突にぽつりと話しかける。
「沖縄が舞台の推理小説だよ。麦くんは図鑑買えた?」
「図鑑は買えなかったかな。でも――、」
 ぽつりぽつりと言葉を交わす間に、どこからともなく聞こえてきた可愛らしい鳴き声。
「――あ、今ヤンバルクイナの声がしなかった?」
「え、マジ? 今聞こえたあの声?」
 幻の野鳥の生声! とそわそわとした声を上げる麦に、思わずとばかりに創良はくすりとして。
「うん。以前動画サイトを介して聞いたことがあるんだけどね。多分そうなんじゃないかな」
 事前に調べた情報によれば、彼らはシャイらしく、この観察棟の場においても直接お目にかかれる機会は少ないのだという。
 けれどこんな風に声だけは聞こえてくるのだとか。
 そんな説明をする間にも、本を読む姿勢はそのままだった創良だったが。やがて読み進めていた小説のエピソードに一区切りついたのを確認すれば、しおりを挟み本を閉じた。
 置いていたパイナップルスムージーで喉を潤し、改めてご当地ヒーロー氏へと顔を向ければ微笑んで。
「大自然を眺めての読書は贅沢だね」
「わかるー。静かで贅沢な時間最高! って俺も思ってたとこ」
 めちゃウマパイナップルドリンクも最高だしさ、とうんうん頷く様子に、そうなんだね、と言葉を返す。
「麦くんはもっとアクティブなことがしたいのかと思ってたんだ」
 トレッキングにシーカヤックをはじめ、やんばるの自然を満喫するプランは探せばいくつもあったから。
 それこそヤンバルクイナ探検隊が結成されてもおかしくはないかとなんとなく思っていたから、今回のチョイスは個人的に少し意外な気がした……などと。素直な感想を述べながら。創良は推理小説の主人公さながらに彼の人となりに想像を巡らせる。
「紅型の時も集中してたし……黙々と作業する職人型なのかな?」
「喋らない系の交流も楽しいよ」
 アクティブ系はもちろん楽しいけれど、それだけじゃないと。にっと笑む彼に、創良もつられてふっと笑む。
「ギャップってやつだね」
「この意外性も魅力的っしょ? なんちってー」
 おどけるように笑って見せた後。パイナップルスムージーの甘さを飲み込み、でもさ、と麦は言葉を続ける。
「ひとつのかたちに囚われたくなくてさ。何でもやってみる、かつ何者でもないことが目標なんだ。これも未知へのわくわくなのかもね」
 気がつけば、まだ何者でもなかった10代はとっくに過ぎてしまって。人によっては自分自身とその進む先を固めてしまっていたりもする。
 それだってカッコよくはある。けれど。
 おどけている時とは異なり静かに紡がれた言葉に込められた想いは、創良にもなんとなくわかる気がして。
「そうだね。型にはまるよりは何にでもなれる存在でありたいとは思うかな。そういう意味では猟兵になって世界が広がったんだ」
 実際、世界がこんなにたくさん存在するなんて知らなかったし、これからも知らないことは増え続けるのだろう。
 そういうものを、これからも楽しんで行けたらいい。それこそ新たな本を手にする時のように。
「あ、そうだ。未知へのわくわくといえば、なんだけど。あとで屋上のブランコ乗らない? 大人になってからなかなか乗らないからね」
 最初に本体棟の屋上展望台から全体を見渡した時に目について気になっていたものを、創良は口にした。
 それは、交流棟の建物の屋上に設置された、巨大ブランコのことで。
 あのブランコに乗って眺めるやんばるの森の景色は、展望台から眺めるのとはまた違った印象を受けるに違いない。
「ブランコ乗りたい! 夕焼けの時間狙ってこー! 青春の続き、って感じ!」
 一も二もなく賛成した麦が億面もなく言い放った「青春」の言葉に、思わずくすりとするも、創良は頷きとともに微笑みを返す。
「そう、青春はまだ続いてるんだよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榛名・真秀
【真胡】

陽桜ちゃん、一緒に沖縄スイーツ巡りしよー♪
沖縄と言えばなんてったって南国フルーツ
それに紅芋や黒糖を活かしたスイーツもいいよね!
わたしの調査では有名商品の影に人気スイーツあり!
くるみ隊員、このサーターアンダギーのお店です!

揚げたてサーターアンダギーも美味しいしもちろん食べるけど
この三矢ボールはタピオカ粉を使っててもちもちなんだって!
数量限定で賞味期限も一日らしいから
ここでしか食べられない…
影の人気商品って感じだね
ん、美味しー!
幻のお菓子も買って帰ろ♪

次は果実店がやってるカフェだね
やっぱマンゴーだよね♪
陽桜ちゃんは何にする?
わたしはかき氷とパフェの欲張りセット♪
二人も一緒に食べて食べて~
マフィンとジャムもお土産に買って帰るよ

あとあと、ハワイアンパンケーキのお店も行きたい!
わたしはナッツのにマウンテンホイップ追加で!
えへへ~幸せ~
パンケーキ大好きだよ!
学生時代もみんなで食べたし
確かに新鮮なフルーツは最高だよね
陽桜ちゃんも沖縄で好きなスイーツ見つかった?
うんうん美味しい旅行になったよね♪


未留来・くるみ
【真胡】
陽桜はんも同じくらい出たってや!

沖縄にはめちゃ美味しいスイーツが目白押し
その情報の真偽を確かめるべく
スイーツ調査隊は恩納村の奥地へと向かった(キリッ!
真秀隊長!お宝スイーツはどこですか?

三矢ボール?サーターアンダギーとは違うん?
…ってまず見た目が違うんやねえポンデケージョみたいや
せっかくやしサーターアンダギーと食べ比べしてみよ
さっくりふんわりなサーターアンダギーとはまた違うねんな!
もっちもちでうまうまや!

うちはこの!贅沢パフェを食べてみたい!
果実店がやっとるパフェなんて美味しいにきまっとるやない
ジャムでも冷凍モンでもないフレッシュマンゴーたっぷりで
ホンマ美味しい!

真秀はんはホンマにパンケーキが好きやねんなぁ
陽桜はんはスイーツやったら何が好きなん?
遠慮せんと行きたいとこ行こな!
うちは何やかや言ってフレッシュフルーツが一番や思うとるで
なるべく加熱せんと贅沢にスイーツに変身させるんがええんやで

いやーホンマええ旅や




 沖縄本島のほぼ中央部西海岸側に位置し、ホテルやビーチが点在する沖縄本島屈指のリゾートエリアとされる地、恩納村。
 ここには青い海に映える像の鼻の形をした絶壁が印象的な名所「万座毛」や、「青の洞窟」と呼ばれるダイビングとシュノーケルのスポットとしても知られる「真栄田岬」をはじめ、観光客に人気の観光スポットが多数ある。
 人気のスポットが多数ということは、すなわち、人気のスイーツスポットも多数あると言うことで。

「沖縄にはめちゃ美味しいスイーツが目白押し――!」

 ナビ代わりに手にしていた愛らしいナノナノのカバーケースのついたスマートフォンをきゅっと握り締めるは、未留来・くるみ(女子大生宴会部長・f44016)。

「その情報の真偽を確かめるべく、スイーツ調査隊は恩納村の奥地へと向かった!」

 キリッとした顔でどこぞかの方向へカメラ目線をキメた後、くるみはくるりと振り返った。

「真秀隊長! お宝スイーツはどこですか?」

 キラキラと瞳を輝かせながらくるみは榛名・真秀(スイーツ好き魔法使い・f43950)を見つめる。
 今回のスイーツ調査隊隊長にして、自他ともに認める無類のスイーツ大好きっ娘である彼女の手にかかれば、解けないスイーツの謎などあるわけがない!
 そんな隊員の期待の眼差しを受け止め、真秀は隊長たる威厳とともにウィンクして見せる。
「沖縄と言えばなんてったって南国フルーツ! それに紅芋や黒糖を活かしたスイーツもいいよね!」
 南国フルーツならマンゴーにパイナップル、スイーツならばやっぱり紅芋タルトに、サーターアンダギー、ちんすこう。
 誰もがよく知る、そしてそれゆえに地元民や観光客に愛され続ける、有名どころな存在であるが――、
「わたしの調査では、『有名商品の影に人気スイーツあり』! そこにお宝スイーツもあるんだよ!」
「なるほどな、有名商品! ……ちゅうことはすでに目星はついとるんやな、さすがは真秀隊長や!」
「えへへー、スイーツのことならお任せ! だから今から移動しちゃうよ、くるみ隊員!」
 互いにサムズアップを交わして。それからとくるみと真秀が視線を向ける先には、修学旅行1日目と2日目の案内人でもあり、友人でもある榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)。
「ほな、陽桜はんも調査隊一緒したってや!」
「うんうん、陽桜ちゃんも一緒に沖縄スイーツ巡りしよー♪」
 二人の言葉に、陽桜もまた嬉しそうに微笑み頷いて。
「うふふ、はいです! あたしも、くるみちゃんと真秀さんと一緒のスイーツ調査隊すごくワクワクします! 楽しみなのです」
「やったね! 今日は三人で一緒に楽しもうね! ……と、そうそう。今日のわたし達はスイーツ調査隊だから! わたしのことは隊長と呼んでください!」
「うちは隊員! 陽桜はんはうちと同じく調査隊員やで!」
「うふふ、真秀隊長にくるみ隊員なのですね、承知しました!」
 こくり頷き、ノリノリでキリッとした表情とともに敬礼の所作をする陽桜に、真秀とくるみはにっこり笑って。
「うんうん! それじゃレッツゴー!」
「ほな、改めて! 『衝撃! 南国恩納村奥地の魔境に幻のお宝スイーツを追え!!』スタートや!」


「わー、外から見た以上に賑やかなのですー」
「ムール貝のウニソースがけやなんてめっちゃ美味しそうやんー。あ、あっちにはてびち唐揚げやて!」
 入り口から入れば、美味しそうな写真付きの看板に、あちらこちらから漂ってくる香ばしい匂い。さらには飲食店前のテーブル席に座る人々が美味しそうに食べる料理まで。
 視覚嗅覚を刺激しまくるスイーツ以外のご当地グルメの誘惑に、うっかりと当初の目的を忘れそうになる隊員二人。
 そう、第一の調査スポットとしてスイーツ調査隊が訪れたのは、「おんなの駅」。
 今や沖縄県内においては道の駅許田に次いでの人気の産直施設となったその場所では、スイーツ以外にも多数のB級ご当地グルメが提供されており、訪れた者の五感をフルに刺激しまうのだ!
「きゃー、二人とも、ご飯ものの誘惑に負けちゃダメなんだよー!」
 食べたい気持ちはわかるけど今回は我慢してと。
 声掛けとともに隊員二人の手それぞれの手をきゅっとする真秀隊長。
「せや、うっかりご当地グルメの誘惑に負けるとこやった!」
「はわわ、スイーツ以外にも色々って話はありましたけど、ここまでの威力とは思わなかったのです」
「わかるよー。でもね、今回わたしが求めたいスイーツは、一日の提供時刻と数量が決まってる限定品だから急がなくちゃなんだよ!」
「ほぇ、数量限定?!」
「なんやて?!」
 なるほどそれはクリティカル! 確かに誘惑に負けてる猶予などない。
「真秀隊長! そないなお宝スイーツは……」
 本日二度目となる、真剣な眼差しを向けたくるみに、真秀は頷き店を指差す。
「くるみ隊員、このサーターアンダギーのお店です!」
 示された指の先には、赤の看板が目を惹く、サーターアンダギー専門店。
 看板の下に貼られたサーターアンダギーの種類は、シンプルなプレーンに、沖縄らしい黒糖に紅イモ、田イモ、さらにはモカ、バナナ、ココナッツ、カボチャなどなど。
「わぁ、フレーバー色々なんですね!」
 見れば、張り出されたメニュー表の種類以外のも様々揃えられているのが見えて、面白そうに瞳を輝かせる陽桜。
 サーターアンダギー自体は沖縄ではよくある揚げ菓子ではあるが、ここまで多くのフレーバーが揃えられているのは珍しい。
「揚げたてサーターアンダギーも美味しいしもちろん食べるけど……って、あ、あった! 『三矢ボール』!」
 掲げられた店前のメニュー表を真剣な表情で眺めていた真秀が、ぱっと顔を輝かせる。
「みつやぼーる?」
 思わずとばかりに目をぱちくりとさせる陽桜と、
「三矢ボール? サーターアンダギーとは違うん?」
 やっぱり不思議そうにしながらじぃっとメニュー表を見つめるくるみ。
「この三矢ボールはタピオカ粉を使っててもちもちなんだって! あ、あんこ入りとプレーンの両方くださーい!」
 そんな二人のリアクション横目に、真秀はちゃきちゃきと店員さんに注文する。
「数量限定で賞味期限も1日……って思ってたんだけど、今見たらプレーンは3時間らしいね!」
「「さんじかん?!」」
「うん、あつあつが一番美味しいんだろうね♪  ここでしか食べられない……影の人気商品って感じだね」
 だからこそ、どーしてもゲットしたかったんだよねぇ、と満面の笑みでプレーンのボールを頬張る真秀。
 ちなみにこのサーターアンダギー専門店、恩納村内には数軒存在しているが、あんこ入りのボールをゲットできるのは、「おんなの駅」にある店だけなのだとか。
 賞味期限3時間ものの限定品も、店舗ならではの限定品も両方ゲットしたいと思うあたりがスイーツ愛の強い真秀ならではである。
「ん、美味しー! えへへ、念願叶って感動だよー! はい、陽桜ちゃんもくるみちゃんもどーぞ♪」
 探検隊モードもすっかり忘れ、しっかりと味わった真秀が満面の笑みで渡したプレーンのボールの入った包みを受け取り、くるみはじぃと見つめた。
 スイーツ探検隊に相応しい、文字通り現地でしか食べられない「幻のお宝スイーツ」である。
「……ってまず見た目が違うんやねえ、ポンデケージョみたいや」
 もしくは、某ドーナツ店のリングドーナツがボール状になったような感じだろうか。形は本当にコロコロとした、ボールのようにまんまるだ。
 サーターアンダギーの、花が咲いたような形とは異なるのだなと思いながら、面白そうにその形状を観察し、パクりとする。
「もっちもちでうまうまや!」
 確かにこれは、時間が経つと本来の美味しさが損なわれてしまうのかもしれない。
「せっかくやしサーターアンダギーと食べ比べしてみよ」
「うふふ、くるみちゃんもそう思いました? あたしも同じくだったのでプレーンのサーターアンダギー買ってみたのでどうぞです!」
「ええのん? おおきに、陽桜はん!」
「はい、真秀さんもどうぞです♪」
「ありがと、陽桜ちゃん! 揚げたて同士の食感比べは美味しくて楽しくて最高だよね♪」
 えへへとそれぞれに笑みを交わしてほくほくとサーターアンダギーを堪能する三人。
「あとねー、この店には、幻のお菓子も売ってるんだって! あ、あった♪」
 どことなくレトロ感のあるシールの貼られたセロファンパッケージで包まれたそのお菓子は、カステラでもない、シフォンケーキでもない、しっとり・ふわふわ・もちもちの食感が楽しめるのだとか。通常のカスタード味のお菓子以外に、同じくこの店にしかないという、幻の切れ端という限定品までゲットすれば、真秀は満足そうに微笑んで。
「えへへー、それじゃあ、時間も押してるし、次の店行ってみよー!」
 グルメな魔境の地「おんなの駅」における様々な誘惑を振り切り、スイーツ調査隊は次のスイーツな目的地へと向かうのであった。


「次は果実店がやってるカフェだねー……あっ! 運転手さん、ここで止めてくださーい!」
 「おんなの駅」からタクシーで58号線を北上すること十数分。万座ビーチの入り口であることを示す標識を前にふと道沿いを見やってようやく気がつくその店は、沖縄ではよく見かけるコンクリート造りの平屋建て。何も知らなければそのまま通り過ぎてしまいそうほどにシンプルな作りの建物に掲げられた看板も、よく見なければそれがカフェとは全く気が付かない。道沿いにはためくカラフルなかき氷の上り旗も、わかる人が見てようやくといったところだろうか。
 気がつけたのは、スマートフォンの地図アプリと道沿いの景色とを交互に睨めっこしていた真秀だからこその功績と言えよう。
「ほー! ここが果実店のカフェなんやねぇ」
「うん! まー、実際にフルーツ売ってるかってのはさておき、沖縄の契約農家さんから直接仕入れたフルーツを使ってかき氷やパフェを提供してるお店なんだよ♪」
 なんやかんやと人気店らしく店の前に行列はあったものの。幸いにもタイミングがよかったか、待ち時間もなく店内へ。
 前払い制との話に、早速とばかりに思い思いに注文を済ませた三人は、案内された席へと座り、興味津々に店内を見渡す。
「なんだか、外の素朴? な感じとは違って可愛らしい店内なのですね!」
 海を思わせるエメラルドグリーンで彩られた店内。さっぱりとした印象ながらも壁には海にまつわる写真や絵、小物が飾られ、全体的にセンスの良さが感じられる。
「今はマフィンは提供されてないのかも? でもジャムおいしそー! あとで買って帰ろっと♪」
 真秀がセルフサービスコーナーから人数分の水の入ったコップを持ってきて配る間に、くるみは改めてレジ前のメニューを眺め、わくわくと瞳を輝かせる。
「うちはこの! 贅沢パフェにしてみたんや! 果実店がやっとるパフェなんて美味しいにきまっとるやない〜」
「うんうん、やっぱマンゴーだよね♪ わたしはかき氷とパフェの欲張りセット♪ どっちかなんて選べないもん!」
 やっぱりキラキラと瞳を輝かせた真秀が選んだのは、くるみと同じ贅沢マンゴーパフェに、果実のこぼれ氷と書かれたかき氷。
 フレーバーも迷いに迷ったけれど、せっかくだからとマンゴー尽くしのダブルマンゴーにしてみたと、ふにゃっと口元をゆるませ微笑んで。
「陽桜ちゃんは何にしたの?」
「ものすごく迷ったのですけど、あたしはこの|島豆花《しまとうふぁ》にしてみました!」
 台湾のスイーツとして知られる「|豆花《とうふぁ》」は、いわゆる豆乳ゼリーのようなもの。この店では県内の島豆腐店から仕入れた豆乳を使い、トッピングに沖縄の食材を使用して独自のスイーツとして提供しているようで。
「トッピングはマンゴーにフーチバー団子にパッションフルーツなのです♪」
「わぁ、それも美味しそう〜!」
「うふふ、是非ともみんなでシェアしましょう♪」
 そんな風に言葉を交わす間に、店員が持ってきてくれたそれぞれのメニューに、三人はキラキラと瞳を輝かせる。
「ふわぁぁぁ、まさに贅沢の極みや! ジャムでも冷凍モンでもないフレッシュマンゴーたっぷりでホンマ美味しい!」
「ほんとうだよぉ、ほっぺた溶けちゃいそー! ああ、でも油断してるとかき氷溶けちゃうかも?! 二人も一緒に食べて食べて~」
「かき氷も大ボリュームなのですね……! 豆花もさっぱりとした甘さでとっても美味しいのですー♪」
 そんな風に、互いにシェアもしつつ、沖縄果実にスイーツにと目一杯楽しんだ後。満足そうな微笑みとともに、真秀は口を開く。
「あとあと、ハワイアンパンケーキのお店も行きたい!」
 同じく恩納村内にあるというそのパンケーキの店は、今いる店の姉妹店にあたるのだという。店の営業時間からするとギリギリ滑り込めるかなぁと言いながら、スマートフォンの時計を眺める真秀。
 ここを出る前にタクシーを捕まえようと配車アプリをポチポチとしてからにっこり微笑む。
「二人とも、お腹は大丈夫だよね? スイーツ調査隊の現地調査はまだまだ続いちゃうんだよー!」
 そんなわけで、三つ目のお宝スイーツを目指し、スイーツ調査隊は、次なる目的地へと向かうのであった!


 さきほど立ち寄ったカフェよりも温かみを感じるクリーム色の外観の建物の、木製のドアを開ければ、迎えるのは店員の「アロハ!」の掛け声。
 外観と同じくクリーム色の内装にアメリカンテイストの音楽が流れる、アメリカンダイナーのような店内。見る人が見ればハワイの雰囲気を醸し出しているであろう店内の、案内された席に座ってメニューを眺めながら、くるみは思わずくすりとする。
「真秀はんはホンマにパンケーキが好きやねんなぁ」
「うん、パンケーキ大好きだよ! 学生時代もみんなで食べたし!」
「ですよね。あたし、あの時真秀さんと食べた虹色のパンケーキの美味しさ、今でも忘れられないのです!」
「あのパンケーキは味はもちろん美味しかったけど、見た目も抜群に映えてたよねぇ♪」
 うんうんと、かつての学園時代のことも振り返りつつ、それぞれにオーダーするものをチョイスして。
「わたしはナッツのにマウンテンホイップ追加で!」
 真秀が迷うことなくビシッと指し示すは、店オリジナルのナッツソースがかけられた、このパンケーキ店のおすすめなのだという。
 数量限定で売り切れることも多々あるというそのメニューも、提供可能とのことで。
「えへへ〜、やったね!」
「うふふ、これも真秀さんのスイーツ愛の賜物ですよね」
「せやね。パンケーキの神さんも真秀はんに微笑んだっちゅう感じやな! うちはこのベリーのにしよか」
「あたしはこのトロピカルってあるのにします〜。パインを焼き込んだ生地ってなんだかわくわくするのです!」
 それぞれに味が違うのを頼めばシェアもそれだけ楽しくなると。言葉にせずとも気持ちは同じだったようで、店員へ注文した後に、三人で顔を見合わせればふふ、と小さく笑い合い。
「そういえば、陽桜はんはスイーツやったら何が好きなん?」
「あたしですか? 全般好きですけど、今だったらプリンとか、ババロアとかゼリーとか、つるんとしたのが好きです!」
「あ、それじゃあ、さっきの島豆花もだね!」
「はい、あれも美味しかったのです!」
「せやね、さっきのマンゴーもうまうまやったし! うちは何やかや言ってフレッシュフルーツが一番や思うとるで。なるべく加熱せんと贅沢にスイーツに変身させるんがええんやで」
「確かに新鮮なフルーツは最高だよね〜。さっきのパフェもかき氷もすっごくよかったし!」
 わいわいと、文字通りのスイーツトークを交わす時間はあっという間で。気がつけば、三人の前には注文したパンケーキの皿がずらり。
「わ〜♪ マウンテンホイップのボリュームが圧巻だぁ♪」
 先のお宝スイーツ同様にしっかりとスマートフォンのカメラにパンケーキの画像を収めてから、真秀はさっそくパンケーキをナイフで切り分け、ぱくりと一口。
「えへへ~、幸せ~」
 パンケーキの生地に使われたバターミルクの味わいも、ナッツのソースの程よい甘さもたまらなく美味しいと、ふにゃりと口元を緩ませる。
 そんな真秀の幸せそうな笑顔に釣られるように、くるみと陽桜もほわりと微笑んで。
「うん、パンケーキもうまうまやね! 真秀はん、うちのも食べたってや!」
「あたしのもどうぞですー!」
「ありがとー! えへへ、そんな感じで今回の調査隊は大成功! 美味しい旅行になったよね♪」
 大好きを思いっきり頬張りながら満面の笑みを浮かべる真秀に、
「せやね! 残りの二日も思いっきり楽しんでええ旅にしていくでー!」
 くるみもまた、にっかと笑ってサムズアップを返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユディト・イェシュア
翼くん、良かったら一緒に美ら海水族館に行きませんか?
去年、一緒に北海道の水族館に行きましたよね
今度は沖縄…南北の水族館を一緒に体験できるなんてすごいですよね

美ら海水族館は数ある水族館の中でも特に人気だと聞きますが…
黒潮の海の大水槽は圧巻ですね…
ジンベエザメやマンタが悠々と泳いでいます

あと、沖縄といえばサンゴ礁も有名ですし
見ておきたいです
熱帯魚も生き生きとしていますね

イルカショーも楽しみにしてたんです
大きな身体が宙を舞う姿に拍手喝采
本当にお利口ですね
ふれあい体験にも申し込んでおきました

堪能したらカフェで休憩しましょう
水槽に面した席で目の前を泳ぐ魚たちに思わず笑顔に
まるで海の中にいるみたいですね
やっぱり翼くんとはカフェに来ないとですね
バタフライピーの紅茶に紫芋のタルトをいただきます

あ、それから…これ昨日作ってきたんです
プレゼント包装したカフェ店員シーサーを差し出して
翼くんをイメージして作ってみました
お家に飾ってもいいと思いますし
いつか翼くんが店を持った時にも
きっと幸運を招いてくれると思います




「美ら海水族館――久しぶりですね」
 一面の深い青の世界。差し込んでくる光の柱を囲むかのように舞い泳ぐ魚たちの群れを横目に悠々と泳ぐのはジンベイザメ。
 時折すぅっと横切るマンタや、魚たちに戯れるように泳ぐウミガメが交差する様子は、ずっと眺めていても飽きなくて、ともすると時間が過ぎるのを忘れてしまいそうになってしまう。
「あの時からもう2年……なんだか不思議な気持ちになりますね」
 そんな風に「黒潮の海」の大水槽を見上げ眺めながら、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は感慨深げに息を吐く。
「ユディトさんとここ来たの、2年前だったんだ! オレ、もっと昔に来た感じがしてたよ」
 傍で同じように水槽を見上げていた翼が、びっくりした顔をするのに思わず笑み。
「ふふ、俺もそんな気分です。その後、北海道の水族館にも行きましたよね」
 昨年訪れた商業施設の中にある都市型水族館では、ペンギンの愛らしさや水槽内でたゆたうクラゲの美しさがとても印象的だった。もっともあの時は、水族館より甘味……夜パフェに重きが置かれていたような気もするけれど、それはそれだ。
「今回改めて沖縄で……南北の水族館を一緒に体験できるなんてすごいですよね」
「えへへ、確かにそうだよねぇ。今回も色々見ておきたいよね!」
「そうですね。今回は俺も色々調べてきました」
 前回は翼の案内に乗っかる形でサプライズ的に訪れた。
 あの時だってもちろん楽しかったけれど、今回は事前の下調べをした分、楽しみはさらに広がっている。
 実際、この「黒潮の海」の大水槽に至る前にあった水槽もじっくりと堪能した。
 施設の入り口から入ってすぐにある珊瑚礁に囲まれた浅い海「イノー」に住む生き物たちを眺めるのはちょっとした面白さがあったし、「サンゴの海」や「熱帯魚の海」では、陽の光あふれるエメラルドグリーンの海の中の珊瑚たちが綺麗で、泳ぐ魚たちも色とりどりでとても美しかった。
「今回はせっかくですから、水族館館内だけじゃなくて屋外展示とかも見ておきたくて」
 言いながらユディトは手にしたパンフレットを翼へと示す。
 沖縄美ら海水族館は、広く見れば海洋博公園の施設の一つ。このため水族館以外にも沖縄を体感できる施設が多く用意されている。
 水族館周辺となるオーシャニックゾーンでは、ウミガメやマナティを飼育展示している施設があったり、イルカを間近で観察できたりするイルカラグーンと呼ばれる施設があったりと、心惹かれるものが多い。
「俺としては、イルカショーも楽しみにしてたんです」
「オレ、イルカショーまだ見たことないやー。いつもタイミング逃しちゃうんだよね」
 今回は間に合いそうだよねと、パンフレットに記載された開催時刻を見ながら瞳を輝かせた翼に、ユディトもまた頷いて。
「確かにショーの時間は決まってますからね。今回は是非とも間に合わせましょう」


 屋根のある半月状の観客席に座れば、目の前には沖縄の青い空と海を背景にした、イルカたちの水槽のある舞台があった。
 イルカショーの開始を告げる噴水と共にステージに上がった飼育員が合図をすれば、水面から顔を出して観客へ挨拶をするイルカたち。
 ショーが進むにつれ、リズミカルな音楽に合わせて披露されるのは、華麗なる技の数々だ。
 水面から飛び出しての大ジャンプがあったかと思えば、複数頭のイルカたちによる連続での一斉ジャンプが続いて。
 息のあった連携に観客から歓声が上がれば、まだまだと言わんばかりに披露されるは水面から飛び出した一頭のイルカによる、水飛沫を上げながらのスピンジャンプ!
 大きな身体が宙を舞う姿に、拍手喝采の止まらないユディトと翼。
 想いは同じとばかりに観客席の至る所で拍手と歓声が上がり、会場いっぱいに響き渡ったところで、観客席前のステージに上がったイルカによる愛らしい鳴き声の挨拶でショーは終わりを迎えた。
「本当にお利口ですね……実際に目の当たりにすると迫力があってびっくりしました」
「うん、すごい大迫力! 楽しかったよね! ショーを観た後だと、近くでイルカに触れたくなっちゃうよね」
「実は、イルカのふれあい体験にも申し込んでおいたんです」
「え、給餌体験とかじゃなくて?」
「はい。給餌とふれあいと撮影があるらしいですよ」
 楽しみですよね、と微笑むユディト。猟兵の身の上であってもイルカに触れ合える機会は滅多にないから、今回の旅行においてもきっと素敵な思い出になる。
「せっかくの機会ですし、翼くんも一緒に行きませんか?」
「わぁ、是非! オレも一緒したい! えっと、場所はイルカラグーンの方だったら……あっちだよね。行こ、ユディトさん!」
 楽しそうに笑って歩き出した翼に、ユディトも微笑みを返して歩き出すのだった。


 イルカとの触れ合いという、忘れられない思い出を撮影写真として収めた後。ユディトは翼と共に再び水族館の中へ。
 黒潮の海の大水槽に隣接するカフェの、人気のある水槽側の席の一つへと座れば、気分はすっかり海の中でのカフェタイムだ。
「あ、ユディトさん見てみて、ジンベイザメ!」
「そうですね。やっぱりここまで間近で見れるのっていいですよね」
 以前に訪れた時もこんな風に水槽側の席で、少年と一緒に話をしていたことを思い出しながら、ユディトは微笑む。
「この席もですけど……イルカとの触れ合いも楽しかったですね。俺自身、あそこまで間近に見て触れてはなかったので新鮮でした」
「ねっ、すごくよかったよね! ユディトさんが予約してなかったら体験できなかったから、本当に感謝だよ! ……イルカの感触もなんか不思議でびっくりしちゃった」
「そうですよね……こう、言葉の表現難しいんですけど、硬くもなく、つるつるとした感じで……でも、どこかで触れたことがあるようなないような」
「ゴムのタイヤとか、茄子みたいっていう人もいるよね?」
「ああ、言われてみれば似てましたね。張りのあるしっかりとした強い茄子、というところでしょうか」
 人によっても表現は変わってくるかもしれないが、撫でてみた感触としてはそうだったように思う。体温の温もりのある、温かみを帯びた茄子。今度義姉の料理の手伝いをする際に、茄子を扱うことがあれば話の種にすることにしよう。
 そんなことを思いながらも、テーブルの上へと視線を落とす。ティーカップに浸かった、くつろぐように胸びれを広げたジンベイザメのティーバッグが可愛らしいお茶はバタフライピーなのだという。カップを持ち上げ、深海のような鮮やかな青を一口飲む。苦味や酸味があるかもしれないという予想に反してクセはなく、飲みやすさを感じた。
 一緒に頼んでいたむらさき芋とさつま芋のタルトのケーキを食べつつ少年を見やれば、彼もまたユディトと同じお茶を飲みながらカップの中の青を見つめていて。
「バタフライピーって、色味は強いけど他のハーブティに比べて強い味はないよねぇ。ゼリーとかドリンクのアレンジ用で使う人が多い理由、改めてわかった気がするなぁ」
 お茶を飲みながら考えるように呟きを漏らす翼にふふ、とユディトは微笑んで。
「やっぱり翼くんとはカフェに来ないとですね。今もノートへ書くのは続けてますか?」
「うん! ユディトさんからいただいたノートにもいっぱい書き込んでるよ。書き込むの足りないとこはメモ貼ったりしてるんだぁ。……あとね、先日いただいたミルクフォーマーも使ってるよ。いっぱい練習してるんだ」
「それは、贈り手としては嬉しい言葉ですね。……では、よかったらこちらもどうぞ」
 大事に使っているのだと身振り手振りも加えながらの翼の話を、ユディトはにこにこと聞き、そうして鞄の中から、ラッピングされた箱を取り出す。
「これ昨日作ってきたんです」
「え、プレゼント?」
 テーブルの上に置かれた箱を驚きと嬉しさがないまぜになった顔でしばし見つめる翼。
 ユディトが促せば、ゆっくりと包装を外し――、
「……わぁ、シーサーだぁ。すごい、ベストに蝶ネクタイ着てる?!」
「はい、翼くんをイメージして作ってみました。店員さんのシーサーです」
 紺色のカマーベストに蝶ネクタイを着て、人懐っこい笑顔を浮かべている。
 カマーベスト部分に金色で小さく描かれているのは、月と翼をモチーフにしたデザイン。
 以前揃いで仕立てた給仕服と全く同じではないものの、少しでも雰囲気に近づけるようにと頑張ったつもりだ。
「えへへ、なんだかかっこいいなぁ、嬉しい!」
 矯めつ眇めつし微笑む翼に、ユディトもまたつられて微笑んだ。
「お家に飾ってもいいと思いますし、いつか翼くんが店を持った時にもきっと幸運を招いてくれると思います」
「お店……! でも、そうだよね。オレの先生だって今のオレと同じくらいの年代でお店始めてたって聞いたことあるし」
「ふふ、そうですよ。翼くんの出身世界ではまだだと思っても、猟兵的な観点で言うなら……というのもありますから」
 だからこそ、楽しみにしていますね、と。そう遠くない未来に彼の店で微笑むシーサーの姿を思い描きながら、ユディトは微笑み、お茶を飲む。
 そんな風に言葉を交わす二人の横を、再びジンベイザメが通り過ぎていき――海色に満たされたのんびりとした時間は、ゆったりと流れていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎木・葵
陽桜さんと一緒に
好きなように動かしてください
猟兵なのでダイビングはできます大丈夫です

陽桜さん
青の洞窟に行きませんか?
せっかくですからダイビングで海の中を泳いでみたいです
ガイドなしで二人で行きましょう

朝日を浴びながら美しい海の中に入れば
熱帯魚たちが出迎えてくれて

海の中を泳いでいけば
真っ青な洞窟に到着
素晴らしい青に言葉を失って
こんなに美しい青があるんですね
深くて神秘的でどこまでも深くて

青の洞窟から出て戻ろうとしたら
野生のジンベエザメに遭遇
念のためUCの準備をしながら
ジンベエザメの隣を陽桜さんと一緒に隣を泳いで
このまま沖まで行ってしまいそうになりますが
深海へ戻るジンベエザメを見送って浜へ戻ります

凄い体験ができましたね!
興奮気味に話をして
あの青を忘れないうちに、何か形に残しておきたいです
この近くにブレスレットを作れる体験工房があるみたいです
行きませんか?

僕は真っ青な石と桜色の珊瑚を合わせたブレスレットを作ります
そして陽桜さんにプレゼント
本当に美しい景色でしたね
明日からの旅もよろしくお願いしますね




 ――恩納村、真栄田岬。
 シュノーケリングやダイビングスポットとして沖縄県内で最も知名度の高いその場所において、一番の難関とも言われる長い階段を降り切ったエントリーポイントである海岸の前に立ち、榎木・葵(影狩人・f44015)は目を細める。
「――やはり、早朝に来て正解でしたね」
 目の前には、真っ青な海と海面に広がる陽の光が作り出した輝く道。
 朝や夕方といった陽が高くない時間帯にだけ見ることができるというその光景は、とても綺麗だ。
「すごいですね、葵さん、海に光の道が見えるのです……!」
 傍に立つ榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)の声に、そうですね、と葵は微笑んで見せる。
「この朝日を浴びながらの海の中はきっともっと綺麗ですよ」
「ですね! とっても楽しみ……って、そういえば、今日ってスキューバダイビングじゃないんですね?」
 葵も陽桜も、猟兵である以前に出身世界でもなんやかんやと海に潜る機会も多かったから、相応のライセンスも持っている。
 このため、スキューバダイビングをすること自体は全く問題はないのだけれど。
 一応確認とばかりに投げかけられた問いに、葵は頷いて。
「はい。せっかくですからスキンダイビングで海の中を泳いでみたいです」
 スキンダイビングは、ボンベやレギュレーターなどのスキューバダイビング器材を使用せずに、最低限の装備だけで潜水することだ。
「なんだか学園に通ってた時みたいですよね」
 あれやこれやの学園行事を思い出しながらくすりとする陽桜に、そうですね、と葵。
「ある意味、修学旅行らしさがあるでしょう? あと、ガイドなしで二人で行きましょう」
「ふふ、その方が自由度高いですもんね」
 二人で過ごすことに重きを置くのなら、確かに色んな意味でガイドは不要と言えるだろうか。
 葵の腕に自らの肩を寄せながら、楽しげにくすくすとする陽桜に、葵もまた笑みを返す。
「行き先はやっぱりあの場所ですよね?」
「はい」
 視線を合わせて見つめ合えば、言葉にせずともわかること。
 ――青の洞窟。
 真栄田岬でのマリンアクティビティであれば絶対に外せないポイントを思い浮かべれば、にっこりと二人は微笑みを交わす。
 そうして準備を整えて。バランスを取るように互いの手を取りながら、ゆっくりと海の中と入っていくのだった。


 見上げれば、神々しさすら覚える輝きを放つ陽の光があった。
 そこから生み出された無数の光の筋は、澄み切った透明の世界に差し込み、キラキラとした輝きを生み出していく。
 美しい海の世界の水面と海底を行き来し、時に寄り添い、触れ合い、陽桜のユーベルコードで互いの心を通わせながら。葵と陽桜は朝日差す方向へと泳いでいく。
(「見てください、陽桜さん。魚の群れが。後光を纏って踊っているようです」)
(「わぁ、すごいのです! あ、あのあたり、船があるようですね。小さな魚の影もたくさんなのですー」)
 差し込む陽の光を反射してキラキラと輝く銀色の魚たちの大群は、右へ左へゆらゆらり。青色の世界に一層の美しさを添えていく。
 そうして煌めきとともに舞い泳ぐ魚たちを追いかけながら、泳ぎ進む先に見えたのは、洞窟の入り口だった。
 海底に近い洞窟の影に薄桃色の魚たちの群れが行き来するのを目にしながら水面へと浮上すれば、視界に映るは、差し込んでくる陽の光を受けて輝く、美しい青の世界。
「わぁ、すごい綺麗なのです……!」
 立ち泳ぎのままにくるりと洞窟内を見渡した陽桜が改めて傍を見やれば、魅入られたように洞窟内の青を見つめる葵の横顔が見えた。
「――こんなに美しい青があるんですね」
 しばらくの間の後。聞こえてきたしみじみとした言葉に、陽桜は微笑む。
「青の洞窟は、午前中の太陽の位置からの光が一番綺麗らしいですね」
 聞いた話によれば、「青の洞窟」は、特定の地名を指すわけではなく、洞窟内で海の水が青色に輝いて見える場所をそのように呼ぶのだという。
 太陽の光と程よい水深、石灰岩の海底といった様々な要素が重なって生まれる、奇跡と言っても過言ではないその景色を、葵とともにしばらく眺めてから、陽桜は言った。
「葵さん、潜りませんか?」
 今いる水面の青も綺麗だけど。潜った時に見える海底の青も、海底から見上げた水面もきっと美しいだろうから。
「――そうですね、潜りましょうか、陽桜さん」
 深く息を吸い込み、目配せを交わして海中へとダイブすれば、深い青の世界と舞い泳ぐ魚たちの群れが見えた。
 ――深くて神秘的で、どこまでも深く感じられる、青。
 さらに洞窟の入り口から差し込む陽の光が、後光のように反射してキラキラと輝く。
 そんな様々な青に魅せられながら、潜水と浮上を繰り返して。葵と陽桜は、洞窟内の景色を思いっきり楽しむのだった。


 外へと出れば、迎えてくれたのは強烈な光のシャワーだった。
 洞窟内ほどの青さはないけれど、透明度の高いエメラルドグリーンの海面に浮上すれば、葵と陽桜は改めて笑みを交わす。
「青の洞窟、とっても綺麗でしたね、葵さん」
「はい。あとはゆっくりと真栄田岬の海を楽しみながら戻りましょうか」
 来た時と同じく海底と海面を行ったり来たりしながら魚たちと戯れ泳ぐのを楽しもうと。
 言葉を掛け合い、海中へ潜ろうとした、その時。
「……葵さん、見てください!」
 遠くへと視線をやった陽桜が、声に驚きの色を滲ませそっと葵の名を呼んだ。
 その指差す先には、自分たちの方へゆっくりと近づいてくる、大きな影があった。
 よく見れば灰青色に白の斑点模様。平べったい顔と大きな口。どことなく愛嬌を感じさせるその特徴を見間違えることはない。
「……ジンベエザメ、ですか」
 おそらく野生であろう。水族館以外で目にするのは初になるだろう個体がゆうらりと接近してくる様子に、葵は静かに息を飲む。
 温厚な性格で、危険性は低いといわれているけれど、万が一のこともある。
 念のためユーベルコード【|小柄の罠《コヅカノワナ》】を発動させることも念頭に置きつつ、近づいてきた個体の進行方向を妨げないようにしながら腕の中に陽桜を抱いてそっと動けば、ジンベエザメはそのすぐ真横をすうっと泳いでいく。
「葵さん、あの子、方向転換しましたね」
 葵の腕の中に収まったまま、ジンベエザメの動きを視線で追いかけていたらしい陽桜が、ちらと葵を見やって言葉を投げかける。
「そうですね。……もしかしたら僕達と一緒に泳いでくれるかもしれません」
 せっかく訪れた機会、逃す理由などない。視線とともに笑みを交わせば、葵と陽桜は再び同時に泳ぎ出した。
 向かってきたジンベエザメの進行方向を遮ることはもちろんしない。個体の進む方向に合わせながら、その隣について一緒に泳いでいく。
 シュノーケリングからダイブへと切り替えて海中に潜れば、悠々と泳ぐジンベエザメ。
 いつしか他の魚も加わり、群れをなし泳いでいると、時間の流れを忘れてしまいそうになる。
 ――そうして、周囲がエメラルドグリーンからコバルトブルーへと変わる頃。
(「あたし達は、ここまでのようですね」)
 ジンベエザメとの、束の間の海の旅。葵に触れながら心の声で話しかけた陽桜の言葉を合図に、海中から海面へのシュノーケリングに切り替える。
 海深くへと泳ぎゆくジンベエザメと魚たちの姿が見えなくなるのを見送れば、同時に込み上げてくるのは静かな感動。
 青の洞窟で見た美しい世界も、ジンベエザメと共に泳ぎながら見た雄大な海の世界も、どちらもとても綺麗だった。
 余韻も冷めやらぬままに巨体の去った方向を見つめ続ける葵を見やって。陽桜は目を細め、再びその腕にそっと自らの手を重ねる。
(「戻りましょう、葵さん」)
(「――そうですね」)
 体験への興奮冷めやらぬまま、心の声と頷きを陽桜へと返し、葵は陽桜の手を取った。
 ともすれば、湧き上がる胸の内の感動をすぐにでも傍の最愛の人に伝えたい想いに駆られたけれど。まだ二人の海の旅は終わっていないから。
 互いに視線を交わし合い、二人は再び岸辺へ向けて泳ぎ始めるのだった。


 真栄田岬での忘れられない海の中の旅を終えて。
 体験して感じた想いを陽桜へ向けて熱く語りながら、葵が陽桜を誘った先は、ブレスレットを作れるという体験工房の店だった。
「あの青を忘れないうちに、何か形に残しておきたいです」
「うふふ、いいですねっ。体験直後の手作りってなんだかわくわくするのです♪」
 早朝から動いているからこそ、時間には余裕がある。
 真栄田岬からタクシーに乗って少しばかりの距離を行き。到着したのは、パステルカラーの彩りに人魚のイラストが描かれた愛らしい雰囲気の建物。
 扉を開ければ、迎えてくれたのは、沖縄の砂浜を思わせる、白を基調にした明るい空間だった。
 まるで砂浜で宝探しをしているようだと。わくわく瞳を輝かせながらディスプレイされたアクセサリーや小物を眺める陽桜に目を細め、葵はスタッフへ手作り体験希望の旨を伝える。
 店内中央のテーブルに案内され、説明を受ければ早速体験開始だ。
「色もパーツもいっぱいでどれにしようか悩んじゃいますね。……葵さん、このホタルグラスの青とか良さそうですよ」
「いいですね。この桜色の珊瑚は陽桜さんの雰囲気によさそうです」
 ディスプレイされた色とりどりの天然石に、充実したアクセサリパーツを見ながら話をしているとつい時間を忘れてしまいそうになるけれど。
 言葉を交わしながら、思い思いに色を選んでいく二人。
 選んだパーツの配置を決め、スタッフの手を借りて仕上げてもらえば完成だ。
「葵さんは、どんなの作ったんですか?」
「僕は真っ青な石と桜色の珊瑚を合わせたブレスレットです。細石を選んでみました」
 言いながら、陽桜の手首にそっとつけてやる。揺れる青と桜色は、葵の思った通りよく似合っていて。
「えへへ、ありがとうございます。……でも、考えることは同じなのですね? あたしは、葵さんへ、なのですよ」
 嬉しそうに、くすぐったそうに微笑んだ陽桜は、今度はとばかりに葵の手を取った。
 その手首に滑らせるようにして装着させたのは、ホタルグラスとラピスラズリに、メタルパーツを組み合わせた天然石のブレスレットだ。
「細石だとちょっと華奢に見えちゃうかなぁって思ったので、天然石の丸石にしてみたのですよ」
 このあたりに、今日見た青が入ってますと、葵の手を取りながら石を指し示す陽桜に、葵もまた目を細めて。
「本当に美しい景色でしたね」
 ブレスレットの青に洞窟で見た青の景色を重ねる。
 今だ残る感動の余韻を胸に、残りの旅も楽しみだと、葵は微笑んで見せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年10月29日


挿絵イラスト