アウェルネス・インプレッション
●ツヴァイヘンダー
師匠たるイリアステル・アストラル(魔術の女騎士・f45246)はここ数日、留守にしている。
猟兵というもの覚醒しているため、この世界とは異なる世界に踏み込むことができるらしいのだ。
己は猟兵ではない。
だが、師匠のように猟兵の力に覚醒したとしても、己は役に立たないだろうな、と自覚はある。
例え、世界を渡ることができても力量不足のままでは、ただ他者の足を引っ張るだけだ。
足を引っ張るだけならいい。
己の未熟さをカバーすることで師匠に迷惑をかけてしまうのは嫌だった。
「……いや、別に師匠を追いかけたいとかそういうんじゃないんだけど」
ぶるぶると頭を振るう。
これはきっと不純だ。
師匠は今も他の世界で守るために戦っているのだろう。
それも大切な使命だ。
「なら、俺にできることは一つだよな」
そう、鍛錬である。
騎士団での鍛錬もあるが、そればかりでは足りないように思えた。
自分は遥か先に往く師匠たちからは何歩、何十歩も遅れてた位置にいるのだ。同じような鍛錬では到底追いつけない。
追いつくためには多くの時間が必要だ。
寝る間も惜しまなければならない。
素振りだってそうだ。
万全と振るっていても意味がない。
全ての事象に目を向けなければならない。
戦いとは常に観測と観察をしなければ、変化する状況についてはいけない。
「……そう言えば、槍使いの先輩の踏み込みが速かったよな。あれだけ長い槍を振り回しても重心がぶれないのはやっぱり歩法によるところが大きいんだろうか」
自分の得物を見やる。
ツヴァイヘンダー。
両手剣。
槍もよほどのことがない限り両手で扱うだろう。
似ている。
「リカッソの部分を持てば、突きもできる、のか?」
試してみよう。
イリアステルも剣での刺突を組み入れていた。なら、己もと思い手にしたツヴァイヘンダーを振るう。
あ、だめだ、と即座に理解した。
なぜ、槍の穂先があの形をしているのか理解したのだ。
「重さが、じゃない。重心のバランスが違うのか」
だが、己がそうであったように両手剣は振り回すものという意識は敵対者も持っているはずだ。
そこで突きができたら?
「意外性は強み、だよな!」
やろう。
けれど、思った以上に足腰に負担がかかる。主に腰部だ。
明日は起きれないかも知れないと思いながらも、それでも一歩を確実に踏み出すために痛みすら糧にしていくのだ――。
成功
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