美ら島旅行~琉球の風と魅惑の島々
●グリモアベースにて
「みんな、修学旅行に行かない?」
何やらお手製のしおりを手にした榛名・|真秀《まほ》(スイーツ好き魔法使い・f43950)が、笑顔で猟兵たちにそんな風に誘いかけたのは梅雨入り宣言も出始めた6月のある日。
「あのね、わたしの出身世界――サイキックハーツの武蔵坂学園では、この時期に修学旅行として沖縄に行ってたんだよ!」
|灼滅者《スレイヤー》たちの拠点であり、サイキックアブソーバーを有する武蔵坂学園ではあったが、こういった普通の学園行事ももちろん行われていたのだ。
「6月って梅雨のイメージだけど、沖縄はこの時期はもう梅雨明けしてるんだー。沖縄って観光名所もいっぱいだし、あったかいからこの時期からでも海でも遊べるし……わたしも学生時代、修学旅行をめいっぱい楽しんだんだよ!」
武蔵坂学園の修学旅行は、小学6年生、中学2年生、高校2年生、大学1年生の生徒だけが向かえる数年に一度のお楽しみ。現地では、4つの学年が一緒に行動する賑やかな旅行となるのだ。
「それでね、あの時の楽しかったことを思い出してたら、みんなにも同じ気持ちを味わってほしいって思って。それで、陽桜ちゃんと一緒に旅行計画を立てることにしたんだ!」
かつて灼滅者としてダークネスと戦っていた真秀も、猟兵として異なる世界にも行けるようになった。自分たちの住んでいた世界と似た世界がいっぱいあることも知って。それになんだか旅行をするのにちょうどいい世界もあるようで。
「というわけで、修学旅行っぽく3泊4日の沖縄旅を考えてみたよ。ただ、世界はサイキックハーツじゃなくて、アスリートアース! キャンプが人気な世界だし、観光も美味しいものもいっぱい楽しめちゃうね♪」
真秀が学生だった頃からそれなりの時間が過ぎていて。変わらない場所もあれば、新たに出来た場所もあるだろう。来月には大きなテーマパークも開業する沖縄。そこには無限の楽しみが待っている予感。
「3泊4日の旅行だけど、わたしが担当するのは3日目と最終日だよ」
これがしおりだよ、と真秀は手作り感満載の冊子を興味を持った猟兵へと配っていく。
「グリモアで自由に転送は可能だけど、せっかくだから那覇空港辺りから出発して、1日目は沖縄本島の観光や文化に触れたり、2日目は北部で観光や体験をしてみたり。3日目は、引き続き本島で観光したり、離島に行ってみてもいいしね。最終日は国際通りでお土産を買ったりとめいっぱい満喫できるからね」
とはいえ、本当の修学旅行ではないので、1日だけ参加するなども自由であるし、行き先は目安であるので、自分たちがしたいことをやればいい。
「沖縄の離島もいっぱいあって迷っちゃうよね。東洋一の楽園といわれる、はての浜がある久米島に、星空に最も近い波照間島。水牛車で観光できる竹富島に、日本最西端の与那国島も。綺麗なサンゴ礁が広がる吉野海岸がある宮古島はわたしも行ったんだ! それからマンタと出会えるかもしれない石垣島もあるよね。うーん、どれも素敵!」
それぞれの島の特色や名物がある。詳しくはしおりを見てね、と真秀は言い添えて。
「あと、沖縄スイーツも外せないよね! 国際通りにもたくさんお店はあるだろうし、離島にもおしゃれなカフェがあったり……トロピカルフルーツ満載のパフェとか食べたいな~。あ、沖縄のぜんざいはかき氷みたいなのって知ってる?」
そんな風に沖縄スイーツへの興味も尽きない真秀だった。
「あ、今回は創良先輩も一緒に来てくれるんだって。やっぱり卒業生にとっても沖縄は思い出の場所なんだよね~」
とはいえ、武蔵坂学園卒業生も現役学生もそうでない猟兵たちも、みんなで一緒に楽しみたいのだと真秀は笑顔で告げる。
「と、いうわけで。沖縄旅行、みんなでめいっぱい楽しんじゃおうね!」
湊ゆうき
こんにちは。湊ゆうきです。
沖縄修学旅行キャンプやりたかったんです!
どなたさまも楽しんでまいりましょう!
今回は、咲楽むすびマスターとともに、沖縄の旅をお届けします。
●1日目、2日目「美ら島旅行~琉球の文化と自然の彩」 咲楽むすびマスター
●3日目、4日目「美ら島旅行~琉球の風と魅惑の島々」 本シナリオ
詳細は各シナリオをご確認ください。
両方のシナリオへの同時ご参加、またどちらか片方のみのシナリオへご参加いただいても大丈夫です。
スケジュールの都合上、1日目と3日目が同時に進みます。あまり細かいことは気にせず参加いただけると嬉しいです。
旅行のスケジュールは2015年の修学旅行を参考にしています。詳細が知りたい方はこちらでご確認ください。
( http://tw4.jp/html/world/event/042/042_setumei.html )
このシナリオでは3日目と4日目を扱います。
3日目(第1章)は、沖縄本島でマリンスポーツ体験などをするもよし、離島観光をするもよし。4日目(第2章)ももう少し離島で遊んでも良し、本島で観光やお土産などを買うもよしです。
フラグメントは気にせず、大体沖縄でできることでしたら何をしてもらってもいいです。キャンプをしてもいいです。宿泊はホテルイメージですが、テントやコテージに泊まってもいいです。
同行の方がいらっしゃる場合はその旨お書き添えください。
受付期間はタグやMSページでお知らせします。
2章のみ、お声掛けがあれば真秀または創良もご一緒させていただきます。
それでは初夏の沖縄旅行をめいっぱい楽しんでください!
第1章 日常
『キャンプめしを食べよう!』
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POW : 出来立てを沢山美味しく食べる
SPD : 現地で何らかの食材を調達してくる
WIZ : キャンプならではの調理法に挑戦する
イラスト:真夜中二時過ぎ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
邨戸・嵐
泰然(f38325)と
シューガクリョコウ、お肉焼いて食べるんでしょ?
俺も調べて来たんだよ
勝手に予約したコテージはBBQサイトつき
食材セット、一番たくさん食べれる奴って頼んじゃった
夜行性だからこう言うとこ珍しいんだ
周囲の客の料理を見るたび泰然に質問攻め
あれって美味しい?君も作れる?
言われたら手伝いはするけどさ
味見で減って行くのは許してねえ
だって美味しそうなもの見てるとおなかが減るでしょう
ねえ、その大きいお肉もう食べられる?
暑いのだけは覚悟してたけど予想以上かも
君の体すぐだめになりそうだねえ
凍らせたお茶のペットボトル抱えて冷えよう
凄い早さで溶けてってちょっと面白い
飲む?
あっ焼きそば
食べたい
作って
杜・泰然
嵐(f36333)と
お前の修学旅行の認識はどうなってんだ
色々と飛躍しすぎだ
コテージを確保する社会性があるだけマシな方か…?
来たもんは仕方ねえしBBQセットを確認
何もかも揃ってやがる…至れり尽くせりだな
腹を減らすと嵐がうるせえし
とりあえず肉も野菜もまとめて焼くか
というかコイツ今既にうるせえ
あれは焼きそば向こうはアヒージョあっちはシュラスコ
焼いて雑に味付けする以外を俺に期待するな
お前の方が圧倒的に量食うんだから
ちったぁ手伝え
暑さについては同感
一度死んでる分、体が腐りそうだ
嵐が食ってる間にドリンクを冷やしてる氷水に
手を突っ込んで休む
日陰から一歩も出ねえぞ俺は
袋入り焼きそば麺を投げつけて終了
自分でやれ
●くわっちーさびら
目の前にはエメラルドグリーンに輝く美しい海が広がる浜辺。
揺れるヤシの木と青い空。南国感漂う風景に温かいを通り越して熱くて暑い陽射しと気温。
「やって来たよ、沖縄」
ふふん、とどこか得意げな顔をして海を見つめる邨戸・嵐(飢える・f36333)は、一緒にやって来た杜・泰然(停滞者・f38325)をBBQサイトへと連れてきた。
「ああ、想像通り……いや、想像以上に暑いな」
一年前にグリードオーシャンの南国の島から特産物を売り込む依頼に行った時は春先だったが、今回は初夏の沖縄。照りつける陽射しの熱量にややうんざりした様子の泰然は、嵐の言葉に頷いた。
「それで、今から食事か?」
「うん、そうだよ。俺も調べて来たんだよ」
泰然の問いに、嵐はまたもや得意げな様子でえっへんと胸を張る。
「シューガクリョコウ、お肉焼いて食べるんでしょ?」
「……お前の修学旅行の認識はどうなってんだ」
嵐から飛び出た言葉に、即座にそう切り返す泰然。
確かに今回は修学旅行のように沖縄を楽しんで来てと送り出されたが、修学旅行=肉を焼いて食べるとは、さすがにいろんなものをすっ飛ばして飛躍しすぎな気がする。
「えー、違うの?」
「場合によっては違わないだろうが、それは一般的に同意を得られないと思うぞ」
そうなんだ、と言いながらも、嵐は予約した席を見つけると、ぱっと顔を輝かせる。そこには、たくさんのBBQ用の食材が用意されていたのだ。
「食材セット、一番たくさん食べれる奴って頼んじゃった。いやー、BBQサイトがついたコテージを予約して良かったよね」
もちろん泰然に何の相談もなく、嵐がちゃっかりコテージを予約していたのだが。
(「コテージを確保する社会性があるだけマシな方か……?」)
いろいろなことに納得がいかないが、なんとかそう思いなおす泰然だった。
「とはいえ、これでも足りるかな。ま、足りない時はその時考えればいいよね」
見たところどう見ても二人前以上あるのだが、嵐は食べる前からそんな心配をしている。
「まあ、もう来てしまったし、仕方ねえな……」
ため息とともにそう呟きながら、泰然が用意されているBBQセットを確認する。
「……何もかも揃ってやがる……至れり尽くせりだな」
メインとなる肉には、沖縄産のアグー豚のロースやソーセージに牛ステーキに牛タン、焼き鳥串などもあり種類も豊富。エビやイカ、ホタテなどの海鮮に野菜もしっかり揃っているし、アヒージョやホイル焼きが出来るセットに、焼きおにぎりも出来る白米のおにぎり、さらには焼きそば用の麺も揃っていた。もちろん肉を焼くコンロと網に炭火のセット一式。食器から調味料まで完全な品揃え。
「それにしても太陽が眩しいね。夜行性だからこう言うとこ珍しいんだ」
きょろきょろと辺りを見回しては、近くで同じようにBBQを楽しむ客に視線をやった嵐は、美味しそうにBBQを頬張る姿に興味津々。
「美味しそう……早く食べたいな」
そう嵐が呟くより先に、どうせ腹を減らすとうるさいからと、泰然はさっさと用意された木炭に火をつけ、準備を進めていた。
「ねえねえ、あれって美味しい?」
「あれは焼きそば。食えばわかるだろ」
「じゃあ、あれは? あれもお肉じゃないね。あ、あっちは大きなお肉!」
「向こうはアヒージョ、あっちはシュラスコ」
「泰然は詳しいねえ。それで、君も作れる?」
「焼いて雑に味付けする以外を俺に期待するな」
腹を空かすとか以前に既にうるさい嵐に辟易しつつも、泰然は温まった網の上で肉も野菜もまとめてどんどん焼いていく。
「作れるんだね? じゃあ、あれもあとで……」
「おい、お前の方が圧倒的に量食うんだから、ちったぁ手伝え」
嵐があちこち見ている間に焼けた肉を皿に移していた泰然が思わすそう声をかけると、嵐も言われたなら手伝うという風に、ソーセージやおにぎりを網に並べていく。
「手伝いはするけどさ、味見で減って行くのは許してねえ」
「おい」
「だって美味しそうなもの見てるとおなかが減るでしょう。ねえ、その大きいお肉もう食べられる?」
「待て待て、もうちょっと焼いてからだ」
半生だろうが嵐なら別に食べても問題ないだろうが、せっかく美味しく食べるなら焼き加減は大事だ。結局泰然がせっせと焼き、それを美味しく嵐が食べるという図が完成していた。
「ふう、ようやくちょっと空腹が落ち着いたような気がする。それにしても暑いのだけは覚悟してたけど予想以上かも」
「それは同感だな」
お腹の具合については置いておいて、暑さについては同感だと泰然は頷く。この気候に加え、火を使うBBQなのだから余計だ。
「君の体すぐだめになりそうだねえ」
「一度死んでる分、体が腐りそうだ」
僵尸として蘇り、死なない身体になったものの、この暑さでは腐りかねないと泰然は真顔で呟いていた。
「はー、こうするといいかも」
凍らせたお茶のペットボトルを抱えて涼を取る嵐。きんきんに凍っていたはずなのに、それがものすごい速さでとけていく様子を面白く感じて。ほどよくとけたところで、泰然へと訊ねる。
「ねえ、冷たい飲み物飲む?」
「いや、こっちのがいいな」
肉を焼く作業がひと段落したところで、嵐が食べているその隙に、飲み物を冷やしている氷水に直接手を突っ込んでは身体を冷やすことにする泰然だった。
「今日は日陰から一歩も出ねえぞ俺は」
「そうだね、腐っちゃうといけないもんね。あっ、そうださっき見た焼きそば食べたい。作って」
しかし嵐に返って来たのは快い返事ではなく、袋に入ったままの麺だった。
「自分でやれ」
嵐に麺を投げつけ、泰然はこれ以上動かないぞという姿勢を見せつける。
「えー、美味しいのが食べたいのになあ」
そう言って、ごそごそと見よう見まねで焼きそばを作ろうとする嵐。
――数分後。見かねた泰然が結局焼きそばを作る羽目になるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリガ・ホーリエル
アンナ(f03717)と一緒に
沖縄に来たならば海!ということでアンナとマリンスポーツをしてみるわ。アンナは海で遊んだことがあまりないから有事に備える&解放的な雰囲気だから私もユーベルコードで本来の魔王姿に戻り、楽しむわよー!
マリンスポーツの内容はお任せで。アンナと一緒にやるときは魔王の力を最大限活用し可能な限りアシストやアドバイスをして、一緒に楽しむわ。
自分が楽しむのも大事だけど、アンナの笑顔を見れるのが私の一番の幸せよ!
アンナ・フランツウェイ
オリガ(f12132)と共に
オリガに無理矢理連れられてきた沖縄。3日目で私たちが挑むのは…マリンスポーツ。正直スポーツどころか、海では浅瀬でしか遊んだことがないけど、オリガが一緒にいてくれるなら…やってみてもいいかな。
とりあえず簡単そうなのをお任せで。とはいっても慣れてないからバランス崩して海に落ちたりしちゃう私。でも前の浅瀬での海遊びとは違う、身体を動かしてのマリンスポーツも楽しい…かも。
その後オリガと笑い合いながら、筋肉痛でホテルの部屋で倒れるほど、何回もマリンスポーツに挑む私だった…。
・アドリブ歓迎です
●魔王と天使のマリンスポーツ体験
沖縄旅行三日目も太陽が眩しいくらいの晴天だ。
「ふふ、やっぱり沖縄に来たならば海!」
目の前に広がるエメラルドグリーンの美しい海を前に、オリガ・ホーリエル(黒き天使と歩む快虐の魔王・f12132)は、魔王らしい存在感で腰に手を当て、びしっと水平線の彼方を指差した。
やってきたのは、マリンスポーツが楽しめる名護市の『かりゆしビーチリゾート』だ。
「海、確かにそうかも……」
オリガとは対照的に、物珍しそうに辺りをきょろきょろと見つめているのはアンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)。彼女は自ら沖縄行きを望んだというより、オリガに無理やり連れてこられたのだ。
「海といえばマリンスポーツ! どう? アンナは何かやってみたいものある?」
「マリンスポーツ……! うう、正直スポーツどころか、海では浅瀬でしか遊んだことがないけど……」
「そう? じゃあ、初心者でもできそうなものを探しましょうか」
「オリガも一緒だよね?」
「もちろんよ。ふふ、アンナはあまり海で遊んだ経験がないようだから、有事に備える意味も込めて、本来の魔王姿に戻りましょう」
開放的な雰囲気も相まって、オリガはユーベルコードで真の姿へと変身する。今日はいつもの青いゴスロリ服ではなく、青いゴスロリ風水着である。
「さあ、楽しむわよー!」
(「ちょっと不安だったけど……オリガが一緒にいてくれるなら……やってみてもいいかな」)
オリガに手を引かれたアンナはそんなことを思いながらついて行くのだった。
「ウェイクボード?」
「ええ、水の上を板の上に立って滑っていくの。見た目より難しくはないそうよ」
そうしてアンナも水着に着替えたのだが、オリガがこれがいいといって着せたのは、メイド風水着だった。
(「ちょっと恥ずかしい……」)
この格好でアルバイトをしていたこともあるけれど、辺りの視線が自分に注がれるたび色白の頬が朱に染まる。それはアンナのメイド水着姿があまりにも可愛らしいからなのだが、本人に自覚はあまりないようだった。
早速レクチャーを受けていくのだが、水上に出る前にまずは地上で練習をする。
「大切なのはボードの上でバランスを保つことね」
アンナはレクチャー通り、砂浜に置いた足を固定する器具のついたボードの上に乗って膝を曲げては、体重を前後左右に動かしてボードの動きを確認する。
「バランス……こ、こうかな?」
「アンナ、いい感じよ」
その次の段階ではボードに紐をつけて引っ張られる感覚を体験する。こちらもまだ水上には出ず、砂浜でお互いのボードにつけた紐を順番に引っ張っていく。
「なるほど、これで力の入れ加減がわかるわね」
「わわ、砂の上でも難しいかも」
そんな風にしばし練習を繰り返してから、いよいよ海へと繰り出す。
最終的にウェイクボードに立って楽しむが、まずは座った状態でスタートするのが一般的。先程やった練習も踏まえ、ボードを引っ張ってもらう力を利用して立ち上がる。だが、コツを掴むまでは少し時間がかかるのが普通。
「わ、オリガはもう立ててる……」
「さ、アンナも繰り返してコツを掴むのよ!」
魔王モードのオリガはあっという間にバランスの取り方を会得していた。
「わ、私も……」
なかなか上手くいかなくても、アンナも繰り返して練習することで、ようやくスムーズに立ち上がることが出来た。
「わ、できた……!」
その弾けるような笑顔に、オリガもまた嬉しくなる。
「前の浅瀬での海遊びとは違う、身体を動かしてのマリンスポーツも楽しい……かも」
(「自分が楽しむのも大事だけど、アンナの笑顔を見れるのが私の一番の幸せなのよ」)
アンナの笑顔にオリガもにっこり。改めて誘って良かったと思うのだ。
その後は二人仲良く水上を走り、オリガは波に乗ってジャンプをするまで上達して。
「アンナも翼を使ってみたらいいのよ」
華麗なジャンプを披露するオリガがアンナにアドバイス。アンナのオラトリオの翼は黒い片翼が特徴的で。翼で身体を支えれば確かにジャンプできそうな気がする。
「え、翼を使ったらずるくないかな……」
「いいのよ、使えるものは使わないと」
だがその助言もあって、波をジャンプする際に翼の力も借りれば、ふわりと上手に飛ぶことが出来て。
「すごい……!」
瞳を輝かせたアンナのとびきりの笑顔が見れるのだった。
そうしてたっぷりとウェイクボードで遊んだ二人は、すっかり満足したのだけれど、頑張った分だけ、その後に筋肉痛がやってきて。
アンナに至っては宿泊したホテルで倒れて動けなくなるほど。けれど、それも旅の思い出のひとつ。共に顔を見合わせ笑い合うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・葵
【桜葵】
石垣島を観光して
気が付いたら波照間島行き最終便のフェリーに乗っていて
我に返ってフェリーであたふた
すみません陽桜さん
波照間の星空が見たくなってしまって
石垣島のホテルまでグリモアでお送りしますから
あたふた言い訳をしていたら
各種手配をしてくださって
すみません付き合わせてしまって
宿から一緒に手を繋いで歩いて
砂浜に寝転んで星空観賞
本当に綺麗な星空ですね
ここは故郷と同じ星座なのが面白いですね
南十字星が見えないのは残念ですが
希望の光は僕達自身で探しなさい
そういうことでしょう
起き上がり波打際へ
海遊びしましょう
波打際で水を掛け合えば
星の海で遊んでいるみたいですね
いいことも悪いことも
一緒に楽しみましょうね
榎木・陽桜
【桜葵】
波照間島のニシ浜で星見です
(星空が見たくなったの言葉にくすくすしつつ宿泊手配を行い)
(夕暮れから夜にかけ海へと
手を繋ぎ可能なら、葵さんの腕に寄り添うようにして歩き
海へと着けば葵さんに倣って砂浜に寝転び星眺め)
葵さん、猟兵になってから
一緒に色んな世界の星空見ましたけど
あたし達の世界と似たこの世界の星もとても綺麗ですね
南十字星はあるでしょうか
希望の光みたいな神秘の象徴なのだそうですよ
(満天の星空にそれらしき星は見えなかった
けれど十分堪能すれば起き上がり波打際へ駆け寄って)
いいですね、海遊び!
(水掛けられれば笑いながらお返しを)
確かに星の海ですね!
ふふ、もちろんですよ
これからも一緒に、です!
●最果てのうるまに輝く希望の星
沖縄に来るのは、学生時代の修学旅行以来だろうか。
学生時代は、学年縛りの関係で一緒に修学旅行に来る機会はなかったけれど、こうして今、大切で愛おしい人と一緒に、再び沖縄に来れることが嬉しくて。
「陽桜さんと石垣島に来れて良かったです」
沖縄旅行三日目に石垣島を訪れた榎木・葵(影狩人・f44015)は、傍らを歩く榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)へと微笑みかける。
ここが自分たちがいた世界とは違う沖縄だということが少し不思議ではあるけれど、猟兵となった今、驚くことが多すぎるので、もはや慣れてしまったといえるかもしれない。
「はい、葵さんとも一緒に来れて、真秀さんと旅行を計画して良かったのです」
「本当にありがとうございます」
そう、葵が丁寧にお礼を言って顔を上げれば、ふとフェリーの発着場が目に入って。
「ここから他の離島にも行けるんですね。竹富島に西表島……波照間島も」
「石垣島からは他の島へのフェリーが充実してますね」
二人で航路を眺めていれば、葵は突然陽桜の手を取り、チケットを買いに向かう。
「葵さん……?」
「今ならまだ間に合います。陽桜さん、波照間島に行きましょう!」
そうして数十分後、二人は波照間島行きの最終便のフェリーに乗っていた。
波照間島への航路は波が高く風雨の影響も受けやすいため欠航率が高いという。揺れも激しいが、無事乗れたことに安堵した葵だが、はっと我に返る。
「すみません陽桜さん、勝手にフェリーに乗ってしまって……」
「あたしは構いません。葵さん、行きたかったんですよね?」
自分勝手な行動だと怒られても仕方ないと反省している葵だが、陽桜はにっこりと笑っては首を横に振る。
「はい、急に波照間の星空が見たくなってしまって……」
「星空に一番近い島、ですからね。気持ちはわかるのです」
「あ、でも石垣島でホテルを予約しておいたのに……きちんとグリモアでお送りしますから」
せっかく計画していたプランから外れてしまい、なんとか力技で解決しようとする葵に、陽桜は愛おしそうにくすくすと笑いながら、すぐさま波照間島で宿泊できそうな場所をスマートフォンで探す。
「せっかく来たんですから、星空いっぱい堪能していきましょう。現地の宿泊の手配は任せてください」
「あ、す、すみません、付き合わせてしまって。ありがとうございます……」
あたふたとしている自分と、てきぱきと各種手配をこなす陽桜。ちょっと落ち込みそうになるが、陽桜が葵の手に自分の手を重ねてにっこりと微笑みかけてくれる。
「今日は天気がいいから、星空、楽しみですね」
そうして無事今日の宿を確保してから、二人は手を繋ぎながら、夕方の波照間島を散策する。
陽桜は葵の腕に寄り添うようにして歩いては、学生時代とはまた違う幸せな時間を噛みしめる。
向かう先は、島の北側にあるニシ浜。ハテルマブルーと呼ばれる、空と海の青が混ざり合う絶景スポットだ。
6月は日が長いので、この明るいハテルマブルーも、沈んでいく夕日もしっかりと堪能することが出来て。やがてゆっくりと日が落ちて、空には満天の星が瞬き始める。
「まるで天然のプラネタリウムですね」
真っ白い砂浜に寝転んで、葵は空を見上げて楽しそうに呟く。
「はい。本当によく見えますね」
同じように葵の横に寝転んだ陽桜も星を眺めては頷く。
「葵さん、猟兵になってから、一緒に色んな世界の星空見ましたけど……あたし達の世界と似たこの世界の星もとても綺麗ですね」
「はい、本当に綺麗な星空ですね。あれは、さそり座でしょうか。故郷と同じ星座なのが面白いですね」
世界は違っても空に輝く星の美しさは同じ。そして故郷と同じ星座が空に瞬く世界もまた、とても大切に思えてくるのだ。
「葵桜さんのこともありますし……世界は違っても繋がっているのかもしれませんね。そうだ、南十字星はあるでしょうか?」
「南十字星……確か、本州などでは見れない星座でしたか」
「はい。沖縄本島より南にあって、南の水平線が見える地域ならば南十字星が見れるそうなんです。あたし、以前も修学旅行で波照間島に来たんですが、その時は秋だったので、見れなかったんです」
それでも、友達と共に見た夜空も、砂浜で見つけた貝殻も綺麗だったのはしっかりと覚えている。
「そうですか。今回は見れるといいですね」
「はい。南十字星は希望の光みたいな神秘の象徴なのだそうですよ」
そうして二人は波音を聴きながら満天の星空の中に南十字星を探してみるけれど、どうにもそれらしき星が見当たらない。
「残念ながら南十字星は見つけられませんでしたが、星空は十分に堪能しました」
そう言って陽桜は起き上がり、にっこりと微笑む。
「南十字星が見えないのは残念ですが、希望の光は僕達自身で探しなさい……そういうことでしょう」
「そうかもしれませんね」
葵も起き上がるとそのまま波打ち際へと向かう。
「陽桜さん、海遊びしましょう」
「いいですね、海遊び!」
夜になっても沖縄の気温は暖かい。裸足になって海水を掛け合い、学生時代に戻ったかのようにはしゃぐ二人。
「葵さん、お返しです!」
「まるで、星の海で遊んでいるみたいですね」
「確かに星の海ですね!」
ここに来るまでもいろんなことがあったけれど、きっとこれからもいいことばかりがあるわけではないだろう。それでも、この人となら一緒に乗り越えて行けると思えるから。
「いいことも悪いことも一緒に楽しみましょうね」
「ふふ、もちろんですよ。これからも一緒に、です!」
それから少しして葵が少し席を外している間、陽桜は波音を聴きながら浜辺に素敵な貝殻が落ちていないか探していた。
「陽桜さんお待たせしました。行きましょう」
「葵さん? 行くってどこですか?」
けれどただ微笑むだけの葵に連れられ、歩くことしばし。島の南側に到着したところで、葵が水平線を指差す。
「南十字星は6月でも見えるそうです。南の空の水平線ギリギリに……あ、あれでしょうか」
葵が指差した先に、それらしき十字の姿を見つける。6月は星座の南中時刻が早まり、南十字星は日の入りと同じくらいになってなかなか見えにくいが、それでも時間によっては見ることが出来ると葵は短時間で調べたのだ。
「あれが……南十字星……希望の光ですね」
「はい、自分たちで見つけられましたね」
陽桜の手を繋ぐ手に力を込めて、葵は優しく微笑む。
「葵さん、ありがとうございます」
「いいえ、僕の勝手な行動に付き合ってくれて……こちらこそありがとうございます」
最南端の島で見た希望の光。遥か昔から航海者たちを導いてきたその星座は、まるで二人の未来をも明るく照らしてくれるかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳥羽・白夜
八坂(f37720)と波照間島の星空観測タワーへ。
休業中ながら絶好の星空観測スポットらしい施設周辺から見る星空は天然のプラネタリウムさながら。
え、すご…こんな星見えんの?
なんか見えすぎて逆に怖いな…
沖縄からなら南十字星見えるんだっけ?
そもそもどれがなんの星だかさっぱりだけど、後輩の案内を頼りに探してみる。
アク…?ミモザ?えーと…あー、あれか?意外と小さい十字なんだな。
散開星団とか言われてもなんのこっちゃだが双眼鏡を見れば。
星めっちゃあるじゃん、すげーな…
星に興味はないけれど、天文好きな後輩と星を見るのは嫌いじゃないかもしれない…と思ったりはする。星の名前は何回教えられても覚えられないけど。
八坂・詩織
白夜さん(f37728)と波照間島へ。
星空観測タワーは休業中だけど、周辺は遮るものがなく絶好の星空観測スポット。
さすが星空に一番近い島、すごい…!
ふふ、都会ではまずこんな星空は見えませんしね。
私、銀誓館の修学旅行中に石垣島で初めて南十字を見たんですよ。今の時期ならぎりぎり、水平線の上に見えるはずなんですが…
あれがスピカだから…あ、あれですね!あそこの明るい星、1等星アクルックスとミモザ、それに残り2つの星を結んでできるのがみなみじゅうじ座。
全天で一番小さい星座なんですよ。
散開星団ジュエルボックスも観たいんですよね、持ってきた双眼鏡で…
わー、これも綺麗!
三脚に固定し先輩にも見せて。綺麗でしょう?
●サザンクロスを探して
星空に一番近い島――波照間島。
そのキャッチコピーは誇張などではなく、日本最南端にある有人島であり、緯度が低く、灯りが少ないという好条件を満たす波照間島の星空は、多くの天文学者や星空マニアたちが日本一と絶賛するほどの星の名所。
「やってきましたね、波照間島へ」
島内は1周しても10km程度という波照間島にやって来た八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は、そう言っては、同行者の鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)へと微笑みかける。
「日本最南端の島だっけ。八坂のお目当ては星空観測タワーだったか」
「はい。ただ、星空観測タワーは、現在休業中みたいで。でも星を見るなら、あの辺りが一番だと思うんですよ」
詩織の表情がとても楽し気に輝いている。銀誓館学園で中学理科教師として教壇に立つ詩織は、天体観測が大好きで、天文部としても日頃から活動しているのを白夜も知っている。
「そうか、休業中……」
それは残念だと思いつつも、詩織の様子を見れば、その場所に行かなくても星は十分に見れるようだ。
「望遠鏡やプラネタリウムがあって、夜は星空案内をしてくれるツアーもあったのですけど……老朽化のため、休業が続いているようですね」
日が落ちる前に星空観測タワーの辺りまで行けば、辺りは遮るものが何もない広い場所。すぐ近くには、日本最南端の碑がある。明るいうちにそこで記念撮影をし、いよいよ日が落ちてくれば、星空観測の時間。
「さすが星空に一番近い島、すごい……!」
「え、すご……こんな星見えんの?」
ビルやネオンなどの光が溢れる大都市では決して見られないような満天の星空。詩織が絶好の観測スポットだと言うだけあって、ここから見る星空は天然のプラネタリウムさながらだと白夜は唸る。
「ふふ、都会ではまずこんな星空は見えませんしね」
「なんか見えすぎて逆に怖いな……」
こちらの方が自然であるはずなのに、どうしてだかそんな気さえするのだ。
そうしてしばらくまずは肉眼で、降ってきそうな星空を眺めていれば、そうだ、と白夜がぽつり。
「沖縄からなら南十字星見えるんだっけ?」
緯度の関係で、沖縄以外では見れない南十字星という星座があるのは、学生時代になんとなく聞いたことがあるような気がする。
「はい、そうです。沖縄本島より南にあって、南の水平線が見える地域ならば南十字星が見れるんです。私、銀誓館の修学旅行中に石垣島で初めて南十字を見たんですよ」
「お、やっぱりそうか。じゃあ、ここで見れるんだな」
「ただ、南十字星を観測できるのは、12月から6月と言われています。今の時期ならぎりぎり、水平線の上に見えるはずなんですが……」
時期によって星座の高さが異なるため、星座が一番高く上がる南中時刻の前後数時間が最も綺麗に見える時間とされている。
「あれがスピカだから……あ、あれですね!」
そもそも南十字星どころか、輝く星たちのどれが何の星だかさっぱりわからない白夜だったが、詩織が指差す方を見て、ひとつひとつ確認する。
「あそこの明るい星、1等星アクルックスとミモザ、それに残り2つの星を結んでできるのがみなみじゅうじ座」
「アク……? ミモザ? えーと……あー、あれか? 意外と小さい十字なんだな」
星の名前を繰り返すことは出来なくても、詩織が教えてくれた場所にほんの少し傾いた十字を見つけた白夜は、思っていたよりも小さな姿に目を丸くする。
「全天で一番小さい星座なんですよ」
「へーそうなのか」
「ニセ十字の方が大きいですからね」
「ニセ……?」
それも星座かと問えば、詩織は南十字星とよく間違えられるニセ十字の存在を教えてくれる。そんな風に、星空を見上げていれば、話はいつまで経っても尽きなくて。
「あ、そうだ。散開星団ジュエルボックスも観たいんですよね」
「さんかいせいだん?」
「わー、これも綺麗!」
持ってきた双眼鏡を覗いては、詩織は感激の声を上げる。
「白夜さんも見てみてください。みなみじゅうじ座の左側……β星のベクルックスのすぐ隣です」
白夜が見やすいようにと、詩織は双眼鏡を三脚に固定し、その場所を譲る。
「ベク……ええと、左側の……わ、星めっちゃあるじゃん、すげーな……」
詩織に言われるまま双眼鏡を覗き込んだ白夜は、見つけた宝石箱星団の輝きに思わず感嘆の声を漏らす。
「綺麗でしょう?」
「ああ、綺麗だな……星の名前は何回教えられても覚えられないけど」
その言葉に詩織はくすくす笑い、何度でも教えますからね、と教師らしい顔を覗かせる。
(「特別星に興味があるわけではないけど……天文好きな後輩と星を見るのは嫌いじゃないかもしれない……」)
「ここでしか見られない星空、今日はたくさん楽しみましょうね」
まるで今にも降ってきそうなほどの満天の星空。
はてのうるまと名付けられたその島で、二人は心行くまで星空を鑑賞するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
初めの二日間はあたしの希望で沖縄本島で楽しかったわ。
今度はレーちゃんの希望を聞いて一緒に堪能するわよ!
決めてる?って聞いたら『久高島』って答えてくれたわ。
「うん、わかったわ。楽しみね、わ~い♪」
『久高島』へ。レーちゃん行きたい場所があるみたいで。
島に到着するまでの間に行きたい理由を少し教えて貰ったわ。
琉球を創った神様が初めに降り立った土地みたいで。
そして島全体が異界に繋がる聖地みたいね。
…あたしとの親和性が高そうよね…その島って。
で。レーちゃんってこーゆーの好きよね。気質なのかしら。
島に着いて暫くはそーでもなかったけど…。
聖地って場所へ近づくたびに精霊さんに会うようになって。
「わ♪ ねえねえ、あそこに面白いお面の子がいるわ❤」
「あ! あの子は稲穂抱きかかえてる。可愛いわ♪」
手を振って応えるけどレーちゃんには視えないみたいね。
むぅ。精霊さん視えないの残念ね。とってもいい子なのに。
それでもレーちゃんは満足みたいであたしのこと見守ってて。
えへへ♪ぎゅーってしちゃうわ♪
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
今度は私の希望の島へ赴くようだ。ふむ…。希望か。
「そうだな…。久高島が気になるかな」
到着するまでに暇なので露へ少し説明する。
琉球の創世の神が国づくりを始めた神話があること。
ニナイカナイという異界につながる聖地があること。
…。
島全体を何かが満ちているような不思議な感覚はある。
露は私よりもかなり強くソレを感じているようだ。
聖地と言われていた場所へ向かう露の表情や仕草で解る。
面を被った少年や稲穂を抱きかかえた少女が居るらしい。
私も目を凝らすが視えない。流石精霊。親和性が高いな。
「君が解説をしてくれるから問題ない」
共有したかったのだろう。残念そうに言う露に声を掛ける。
まあ。楽しんでくれているようだからいい。
「…ここからは、やめておこうか」
聖地には一般人や異性を禁じる法があるから踏み入らない。
同姓でも決められた者だけが立ち入れる規則がある地も同様だ。
踏み込んではいけない領域というものは存在する。
まあ露なら入っても問題はないかもしれない。
「さて。今日はこの島に泊ろうか。予約はした」
●神話の息吹を感じて
「沖縄旅行とっても楽しいわ! しゅーがくりょこう? らしくいろんなこと学べたしね♪」
行く前から熟読していた手作りのしおりを胸に抱きしめた神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)がうきうきとこの二日間を振り返る。
初めの二日間は露の希望で沖縄本島で過ごすことにして、古武術体験や琉球伝統の弦楽器・三線を奏でたりと、修学旅行らしい学びや体験をすることも出来た。
「君にしては珍しい選択だと思ったが、楽しめたようで何よりだ」
露と一緒に沖縄本島内を巡り、琉球の伝統芸能を体験したシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)もこの二日間を思い出しては頷いた。沖縄は南国の魅力あふれる島国。露なら浜辺や自然に触れたいと言い出すものだと思っていたのだが。それでもシビラにとっても伝統芸能に触れ合う時間は満足のいくものだった。
「うん、とっても楽しかったわ! それでね、残りの二日はレーちゃんが行きたい所に行きたいと思うのよ♪」
「ん? 私の希望……?」
「そうよそうよー。あたしの希望に付き合ってもらっちゃったんだもの。で、レーちゃんはどう? 行きた場所決めてる?」
「ふむ、希望か。あるといえばあるが……」
「もう決まってるのね♪ じゃあそこ行きましょ? それで、どこが希望なの?」
露としてはシビラが望むのならどこへだってついて行く。いつものようにぎゅーっと腕に抱きついた露はどこ? と可愛らしく首をかしげて訊いてくる。
「そうだな……。久高島が気になるかな」
密着してくる露のせいで暑いと内心思いながらも、シビラは沖縄で気になっていた島の名を上げる。
「島なのね? じゃあ船に乗っていくのかしら」
「ああ、フェリーや高速船が出ている。今からなら昼までに到着できるだろう」
「うん、わかったわ。楽しみね、わ~い♪」
沖縄本島の南東端にある安座真港から久高島行きのフェリーと高速船が出ている。
所要時間は20分ほど。少し時間があるのならと、船に揺られながら、シビラは久高島について露に説明する。
「久高島は、『神の島』とも呼ばれる島で、琉球民族発祥の地と言われているそうだ」
琉球|開闢《かいびゃく》の祖であるアマミキヨが神の世界とされるニライカナイから舞い降りたのが久高島であり、琉球の歴史はこの島から始まったと伝えられているそうだ。
「そうなのね。確かアワジシマは神様が一番初めに創ったところだったわよね。ふふ、また神様に縁のあるところに来れて嬉しいわね♪」
「沖縄には海のはるか向こうに理想郷があるという伝説があり、その理想郷はニライカナイと呼ばれている。久高島にはこのニライカナイに繋がる聖地があるそうだ」
「そうなのね……島全体が異界に繋がる聖地みたいね」
シビラがその島に興味を持った理由を教えてもらい、露はなるほどと納得しつつ、ふとあることに気づく。
(「レーちゃんってこーゆーの好きよね。気質なのかしら」)
二人で一緒にいろんな世界の様々な場所へと遊びに行くことも多く、シビラが好みそうな場所というのも、露には大体わかってきていた。以前の淡路島も、神戸で訪れた古墳も、どこか神聖な場所に興味を持つことが多いように感じる。
そしてシビラの話を聞くにつれ、露はこうも思ったのだ。
「……あたしとの親和性が高そうよね……その島って」
「君もそう思うか? ああ、きっとそうだろうな」
そうして船は久高島の徳仁港へと到着し、二人は早速この神秘の島の空気を全身に感じる。
久高島は周囲が約8kmの細長くて小さな島。人口も200名程度。だが、琉球神道において祭祀を行う施設である|御嶽《うたき》や、古くから守り伝えられてきた史跡が多く、琉球王朝時代には歴代国王の巡礼の地としても知られてきた神聖な場所。
港から海沿いに東に歩いて行けば、イシキ浜と呼ばれる浜辺へと辿り着く。
「ここも聖地か……島全体に何かが満ちているような不思議な感覚はあるが、ここはより強く感じるな」
「レーちゃんも? うん、ここはすごく感じるわ」
露が自ら言っていたように、全ての属性の精霊と仲が良い露の表情や仕草を見れば、この不思議な感覚を露がより強く感じていることはシビラにもわかった。
イシキ浜は聖地のため遊泳禁止。神話では、ニライカナイから神様を乗せた船がこの浜に来たという伝説もあるのだ。
「わ♪ ねえねえ、あそこに面白いお面の子がいるわ❤」
「お面の子?」
露が指差した先を見つめるが、シビラの瞳には無人の砂浜が映っているだけだ。
「あ、ほら、手を振ったら応えてくれたわ。わーい♪」
「露には、精霊が視えているんだな。私には視えない」
目を凝らしてみるが、どうやってもシビラには見ることは出来ないようだ。
「むぅ。精霊さん視えないの残念ね。とってもいい子なのに」
ちょっと残念そうにそう呟く露だったけれど、どんな精霊がいてどんな振る舞いかを露が丁寧に説明してくれるので、シビラも想像が出来た。
「君が解説をしてくれるから問題ない」
「そう? なら、いっぱい解説しちゃうわね~」
イシキ浜をあとにしたその後も、巨大なガジュマルの樹の下に、可愛らしい精霊がいたことを露は教えてくれた。そして島の最北端にあるカベール岬は、島の人からはハビャーンと呼ばれていて、琉球開闢の祖であるアマミキヨが降り立った地とされ、とても神聖な空気を感じる。
「あ! あの子は稲穂抱きかかえてる。可愛いわ♪」
「やはり、露はこの地の精霊とも親和性が高いようだな」
「えへへ、そーよー」
露の解説を聞いては満足そうにしているシビラへと、嬉しくなって露はぎゅーっと抱き着いて。それを精霊たちもにこにこと見守ってくれているようだった。
遥かなる時に紡がれた琉球の歴史に思いを馳せつつ、二人はのんびりと島を巡っていく。
そうして島をぐるりと一周し、島の中央西側にあるフボー御嶽に着いた時、その不思議な空気をより強く感じた。
「……ここからは、やめておこうか」
シビラは空気からそう察したが、目の前の立て札にも聖地のため一般人の立ち入りを禁じる但し書きがされていた。
「あ、ここからは入っちゃだめなのね」
「ああ、聖地には一般人や異性を禁じる法があるのはよくあること。そう言った場所には踏み入らないことだ」
「そうね、精霊さんたちにとって大切な場所は静かにしてあげないといけないものね」
露も納得し、聖地に集う精霊たちのことを慮る。
「ああ、踏み込んではいけない領域というものは存在する。……まあ露なら入っても問題はないかもしれないが」
「ふふ、そうかもしれないけど。でもその島の掟には従わないとね♪」
そう言いながらも、露は近くにいる精霊ににこにこと手を振っている。
「露のおかげでよりこの島のことを知れた気がする」
「えへへ、どういたしまして~」
あたしも楽しかったわ! と露は笑顔でシビラへと抱き着いて。
「さて。今日はこの島に泊ろうか。予約はした」
「ま、レーちゃんさっすが!」
小さな島であるので、宿泊できる場所は限られている。既に手配をしているシビラの手際の良さに露は目を丸くし、そうしてこの神秘の島の空気をもう少し体験できることが嬉しくて満面の笑みを浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アメリ・ハーベスティア
【🐟️×🍄×🥟】
宮古島の体験工芸村の料理工房で、サーターアンダギーとか肉巻きおにぎりとか、沖縄料理の体験をするのです
『ここ、前日予約オッケーだったのが幸いだったね』
沖縄料理も色々未知ですが、この機会に挑戦してみたいのですよ。
『グルメ知識&情報収集』してアメリは沖縄で採れる茸で炊き込みご飯を作り、アグーを巻いて肉巻き料理を料理
ビスちゃんは、沖縄の魚介類でなめろうの他に、サーターアンダギーを……薬膳味噌や柚子味噌を入れるのですか?
はわぁ……美味しそうな香りがするのですっ!
エミリちゃんのアグーやゴーヤ、沖縄食材の餃子も美味しそうですし
『アメリの方の肉巻きおにぎりも、美味しそうな匂いがするよ、アメリのお手並みも見事だね』
ランちゃん、有難うです……こんがり美味しそうに、これがアグーの肉巻きおにぎり、まん丸なのです
ビスちゃんやエミリちゃんも、それぞれ出来て、サーターアンダギーにあんこのトッピング?
『確か……聞く話、口の水分持ってかれるって聞くし、ナイス判断かも』
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
ビスマス・テルマール
【🐟️×🍄×🥟】
料理工房以外にも色々あるみたいですが、予約が間に合って良かったかもしれませんね
沖縄の海産物で、なめろうは勿論の事
沖縄のサーターアンダギーにも色々可能性を感じますし、この機会に『料理』体験して触れてみようかと
薬膳味噌や柚子味噌等のレパートリーもあるのも幸い
アメリさんは、茸の炊き込みご飯でのアグー肉巻きおにぎりですか、アメリさんらしいセレクトで良いですね
エミリさんも、アグーやゴーヤを使ったご当地餃子を、それも美味しそうですが
そうと決まればわたしも……ホットケーキミックスと薬膳味噌や柚子味噌で作った生地を、抹茶も用意しても良いですね
スプーンで形を整え早速投入、焦げやすいので『第六感』で頃合いを『見切り』揚げましょう
サーターアンダギーにあんこのトッピングですか、エミリさん良案ですね
『おぉ!これがサーターアンダギーというものか、デコボコして丸いぞ……ウルシ、お主は味噌に反応しとるかもしれんが、お座りなのじゃ』
ルイさんもウルシさんも微笑ましいですね。
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
エミリロット・エカルネージュ
【🐟️×🍄×🥟】
沖縄料理の工房かぁ……沖縄の食文化も色々独特だし、美味しそうだよね
アグーにゴーヤにもずくに、島唐辛子も使えるし、『グルメ知識&情報収集』して、美味しい沖縄のご当地餃子が作れそうだよね
アメリちゃんのは、茸(沖縄の茸で)の炊き込みご飯の肉巻きおにぎりも、らしいね
ビスちゃんは、なめろうは平常運行として、後でなめろうも分けて貰うとして
サーターアンダギーを選ぶなんて珍し……薬膳味噌に柚子味噌、何となく納得したかも
(次々と沖縄の食材でご当地餃子を『料理』しながら)
アメリちゃんの肉巻きおにぎりも、ビスちゃんのサーターアンダギーも美味しそうっ!
でも、サーターアンダギーって、その特性上、トッピングがあった方が良いよね
あんこのトッピングはどうかな?アイスも用意出来ればするとして
『ちゃー♪(エミリが焼いた餃子(あんこ入り?)の匂いを嗅ぎながら)』
シャオロン、それは沖縄のハブの毒饅頭を参考にして、あんこと……唐辛子を少し混ぜたんだ、甘いけど辛いから気をつけてね。
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
●いっぺーまーさん
「沖縄旅行三日目は宮古島に来たのです!」
6月とはいえ、梅雨も明けた沖縄は、暑いながらも晴天で観光にもぴったり。
アメリ・ハーベスティア(キノコ好きの「よいこ」な地竜の末裔・f38550)の元気な声に、一緒にやって来たビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)とエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)も笑顔で頷く。
『沖縄旅行もいよいよ三日目か~』
今日ももちろん小型サイズで皆に同行する、自我と人格を持つグリフォン型特機ラングリフも楽しかった旅行前半に思いを馳せる。
「首里城の観光も出来て良かったですね」
「うん、そのあとに食べたソーキそばも、餃子も美味しかったし!」
「はい、沖縄のご当地パワーをとても感じたのです。ただ、アメリとしては少しキノコ要素が足りないので、今日で補充するのです!」
初日の思い出を振り返りつつ、アメリはなんだか気合を入れている。
『というわけでここにやって来たんだね』
アメリの気持ちを汲んだラングリフが、やってきた場所を見渡す。
「はい、ここは宮古島にある体験工芸村なのです。アメリたちが向かうのは、料理工房ですが、他にも染物や織物、琉装などの体験や手作り工房がたくさんある場所なのです」
沖縄特有の植物が植えられた工芸村には、まるで民家のような赤瓦の工房が九つもある。観光客はそれぞれ自分の気になる体験工房へと向かうのだ。
「沖縄料理の工房かぁ……沖縄の食文化も色々独特だし、美味しそうだよね」
ソーキそばをはじめとする沖縄そばに、タコスの具材をご飯に乗せたタコライス、ポークたまごおにぎりは沖縄のソウルフード。島豆腐や豆腐ようにジーマーミー豆腐、ぷちぷちした食感の海ぶどうなどはここでしか味わえない逸品。
中でも沖縄固有のアグー豚にゴーヤやもずく。さらに島唐辛子といったスパイスなどは、特に餃子作りに活かせそうだとエミリロットも頷いて。
『ここ、前日予約オッケーだったのが幸いだったね』
「はい、予約が間に合って良かったかもしれませんね」
四日間の旅行だからこそ、こうして予約が出来たのだとラングリフとビスマスも良かったと笑い合う。
「沖縄料理も色々未知ですが、この機会に挑戦してみたいのですよ」
ソーキそばも美味しかったので、今度は自分たちで料理してみたいと、料理工房を予約したのだ。
普段は工房では、沖縄のおばぁたちがサーターアンダギーなどの作り方を丁寧に教えてくれるのだが、アメリたちは料理ができるということで、好きな沖縄食材で料理していいとキッチンを貸してくれた形だ。
工房に入れば、ここに来るまでに調達した食材などを広げ、早速料理開始。
「それで、アメリちゃんは沖縄のキノコ見つかった?」
アグー豚のミンチや、ゴーヤ、島唐辛子などの材料を広げながらエミリロットはアメリに訊ねる。
「はいです! 情報収集したところ、沖縄ならではの美味しいキノコがあることがわかったのです」
『なんでも、松茸に匹敵する……いや、それを超える絶品キノコなんだって』
沖縄の温暖で湿度の高い気候はきのこの育成に適しているのだとアメリはノートにメモした情報を二人にも伝える。
「そのおかげで、肉厚で食感が良く、香りが豊かで風味も強く、栄養価が高いのだそうです。それに何より、年間を通じて生産可能なのでいつでも美味しく食べられるのです」
そう言ってアメリが取り出したのは、三種類のきのこ。
「これが、くろあわびたけ。見た目が黒アワビに似ていて、肉厚で弾力のある食感なのです。こっちは、うすひらたけ。薄い傘が特徴で、ひらたけに似ているのですが、更に小さいのです。独特の香りと風味があるのですよ」
『僕も香りを嗅いでみたけど、どれもそれぞれ違ってたよね』
アメリと一緒にきのこ探しを手伝ったラングリフも、うんうんと頷いている。
「そしてこれが、たもぎたけ。以前は幻のキノコとも呼ばれていて、涼しい地域の夏に自生する種類なのですが、最近では人工栽培も出来るようになって、沖縄でも流通するようになったそうなのです」
鮮やかな黄色い傘のたもぎたけは、癖のない味わいで、どんな料理にも合うそうだ。
「さすがアメリさん、情報収集ばっちりですね」
「それを使って何の料理を作るのかな?」
アメリの研究熱心さに感心した二人が興味深そうに、沖縄産きのこを眺めては言葉をかける。
「この沖縄のキノコを使った炊き込みご飯を作ります。さらに、それをアグーで巻いて、肉巻きおにぎりにするのです」
『まさに沖縄ならではだね。完成が楽しみだよ!』
「なるほど、沖縄の食材を使った肉巻きおにぎりかあ……アメリちゃんらしいね」
しっかりきのこ要素も盛り込んで、地元の食材と融合を果たしているところがさすがだとエミリロットは唸る。
「エミリちゃんはやっぱり餃子なのです?」
「うん、もちろん。食材はこの通り。他にもスイーツ餃子も作っちゃうよ」
「それは楽しみなのです。ビスちゃんは何を作るのです?」
「ここはやはり沖縄の海産物でなめろうは外せません」
ビスマスももちろんですよ、と調達してきた沖縄産の魚たちを見せては微笑んでいる。
「うんうん、やっぱりビスちゃんはそれが平常運行だよね。後で餃子にも使いたいから分けてね」
「もちろんですよ、エミリさん。あとは、沖縄のサーターアンダギーにも色々可能性を感じますし……作ってみようと思うのですよ」
「はわ、サーターアンダギーはアメリも気になるのです」
沖縄おなじみの揚げ菓子の一種であるサーターアンダギー。沖縄に来たからには食べたいし、せっかくなら作ってみたい。
「アメリさんも気になりますか。調べていたら薬膳味噌や柚子味噌等のレパートリーもあるので俄然気になってしまいました」
「ビスちゃんがサーターアンダギーをなんて珍しいって思ったけど……薬膳味噌に柚子味噌……何となく納得したかも」
「ふふ、わかっていただけましたか?」
そんな風に話をしながら、三人はそれぞれお目当ての料理を作り始める。
『アメリはその三種類のキノコ、全部入れるんだね』
「そうなのです、ランちゃん。それぞれ食感が違うので、いいアクセントになると思うのです」
そう言ってアメリは一口大に切ったきのこたちを米と一緒に昆布だしで炊いていく。
「わたしはもちろんなめろうを……沖縄の魚としては県魚のグルクンや一般的に食べられているタイの一種のクチナジを。こちらにも薬膳味噌を使っても良さそうですね」
ビスマスは慣れた様子で魚を捌いてはたたき、沖縄色あふれるなめろうを作っていく。
「お、ビスちゃんいいね。じゃあ、それを包ませてもらうね。あとは……」
ビスマスのなめろう餡以外にも、アグーミンチとゴーヤ、もずくなどを使ったご当地餡を作って餃子の皮で包んでいく。
「はわぁ……美味しそうな香りがするのですっ!」
じゅうじゅうといい音を立てて焼けていくご当地餃子の香りにアメリが反応する。
『そういうアメリが作った炊き込みご飯も美味しそうな匂いがするよ』
「はい、炊き上がりましたね。では、肉巻きおにぎりの準備をするのです」
アグー豚の薄切り肉を広げ、炊き上がった炊き込みご飯を少し冷ましてから丸く丸めて、巻いていく。
「炊き込みご飯の味もしっかり味わってほしいので、お肉は少し薄めの味付けにするのです」
白いご飯であれば周りに巻く肉にしっかりとたれの味付けをするのだが、今回は炊き込みご飯。それにアグーは肉質が柔らかく旨味と甘みが強いので、あっさりとした味付けでもその美味しさが引き立つ。
一口大の肉巻きおにぎりをフライパンで焼いていけば、辺りにはまた別のいい香りが。
『うん、アメリのお手並みも見事だね』
「ランちゃん、有難うです……こんがり美味しそうに、これがアグーの肉巻きおにぎり。まん丸なのです」
食べやすようにと小さめに作った肉巻きおにぎりの可愛らしいフォルムにアメリもにっこり。
「さて、わたしはサーターアンダギーの方も。ホットケーキミックスを使うのがいいみたいですね」
そうしてビスマスはホットケーキミックスを使い、薬膳味噌や柚子味噌を入れた生地を準備していく。
「抹茶も用意しても良いですね」
『ビスマスの方はバリエーションも豊富だなあ!』
「せっかくですから沖縄の黒糖も……では、それぞれの生地をスプーンで整えて、投入していきます」
丸く形を整えた生地を次々に油で揚げていく。サーターは砂糖、アンダーギーは油で揚げたものという意味の沖縄の揚げ菓子だが、縁起の良い菓子としても祝い事でも振舞われるそうだ。
「油断をすると焦げてしまいますので、頃合いを見計らって……今ですね」
揚げている途中に表面がさくっと割れるのもこの菓子の特徴。
「アメリちゃんの肉巻きおにぎりも、ビスちゃんのサーターアンダギーも美味しそうっ!」
「続々と完成してきましたね」
「でも、サーターアンダギーって、その特性上、トッピングがあった方が良いよね」
そうエミリロットが提案すると、さっとスイーツ餃子にも使ったあんこを差し出す。
「あんこのトッピングはどうかな? アイスも用意出来ればするとして」
「サーターアンダギーにあんこのトッピングですか、エミリさん良案ですね」
「あんこのトッピング?」
『あー、確か……聞く話、口の水分持ってかれるって聞くし、ナイス判断かも』
アメリが不思議そうに首を傾げれば、ラングリフはなるほどと頷く。
「アイスなら、近くに売ってそうだったのです」
「沖縄のアイストッピングも良さそうですね」
シークワーサーや紅芋、マンゴー味なんかがあるとより沖縄らしさを感じられそうだ。
「さ、ボクの方も完成!」
エミリロットが焼き上げたスイーツ餃子からあんこの匂いを嗅ぎつけたシャオロンが『ちゃー♪』と言いながらやってくる。
「あ、シャオロン。それは沖縄のハブの毒饅頭を参考にして、あんこと……唐辛子を少し混ぜたんだ。甘いけど辛いから気をつけてね」
「はわ、毒饅頭! 刺激的なのです」
「味は食べてみてのお楽しみってね!」
本家のハブの毒饅頭は、6個の中に1個激辛饅頭が入っているロシアンルーレット方式だが、エミリロットのスイーツ餃子は、ほんのり辛いつもりで作ったのだが、その味は食べてからのお楽しみ。
そんな風に全ての料理が完成すれば、屋外の屋根のある席で皆で仲良くいただくことに。
「アメリちゃんの肉巻きおにぎり、きのこの炊き込みご飯もとっても美味しいし、それをアグーで包んでいるから、まさに沖縄らしい料理ですごくいいね」
『うん、三種類のキノコそれぞれの食感が違うのも、キノコのいい香りもしっかり感じられるし、さすがだよ!』
「えへへ、ありがとうなのです。沖縄のキノコの知識も増えて、アメリも大満足なのです」
「まさにご当地料理ですね。エミリさんの餃子もそういう意味ではまさにご当地餃子。ゴーヤの苦みもアグーの甘みが引き立つ気がしますし。なめろう餡の餃子ももちろん美味しいです」
「うん、沖縄のお魚と薬膳味噌のなめろうもすごくいいよね。この味噌、ビスちゃん気に入ったんじゃない?」
「そうですね。薬膳味噌は玄米や黒ごま、大豆なども入った雑穀と麹と塩で出来た味噌ですから。他にはなかなかないですね」
そんな風に沖縄特有の食材や調味料で話が盛り上がっていれば、元気な声が聞こえてきて。
『おぉ! これがサーターアンダギーというものか。デコボコして丸いぞ……』
白ハリネズミのルイが、興味深そうにサーターアンダギーを見つめていた。そのすぐそばで、スッポン型グルメツールのウルシが今にも食べたそうな動きを見せていた。
『ウルシ、お主は味噌に反応しとるかもしれんが、お座りなのじゃ』
まずは自分からとルイはサーターアンダギーをぱくりと頬張る。
『おお、これは美味!』
「はい、ウルシさんもどうぞ。ルイさんもウルシさんも微笑ましいですね」
ビスマスが薬膳味噌入りのサーターアンダギーを差し出せば、嬉しそうに食べるウルシだった。
「うん、薬膳味噌も柚子味噌も風味があっていいね。あんこもアイスも合うよね!」
「はわ、確かに口の中の水分を持っていかれる感じなのです……あんこやアイスのトッピング、納得なのです!」
『で、エミリのスイーツ餃子が気になるんだけど……』
「甘いけど、あとから辛さがぴりっとくるかも。はい、シャオロンも」
ラングリフとシャオロンに食べさせたエミリロットは、どうかな? と反応を待つ。
『ん、確かに甘いけど、辛い……なるほどハブの毒饅頭かあ……確かにね!』
『ちゃー♪』
辛さはあとからじわじわと来るが、激辛ではないので、程よい辛さが癖になりそうだ。
「ふふ、こういうのもありかなって思ったけど、気に入ってくれたなら嬉しいな!」
それぞれの料理のレパートリーにまた新たなメニューが加わって。
「沖縄の食材も可能性がいっぱいなのです」
「ふふ、ガイアパワーをたくさんチャージ出来そうですね」
ご当地ヒーローたちによる、現地食材での料理は大きな力を生み出し、宮古島での楽しい食事と談笑はもう少し続くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユウ・リバーサイド
石垣島にある農園で夜間ライトアップされたサガリバナを
|縁《エン》、|絲《イト》を呼んで見に行くよ
(七不思議達の喜ぶ様子をほんわり見守る
エンが耳元で『甘くて美味しい香り』と言えば笑顔で)
以前は俺も「バニラの香りのするミルクティが合いそう」なんて言っちゃったけど
…また、来たよ
今回は、俺だけだけど
(そっと花々に)
ん、何、イト?
(『とっとと吐いた方が楽になるぜ?』)
それ、こないだのラジオの台詞!
(イタリアを舞台にした冒険活劇のラジオドラマだ
ここまではまってくれるとは)
(噴き出してエンを見れば
腰に手首を当て頷く姿が
ラジオに出てくるマフィアになりきってるらしい)
「ゆ、言うもんか、お前らなんかにっ!」
(自分が演じる少年の台詞をなぞってから
ふわっと表情崩し)
…降参だよ
昔さ
この世界じゃないけど友達や大事な人と見に来た事があるんだ
皆ともう逢えないとしても
大事な思い出なんだ
こうして振り返る機会があって良かった
それに今度はお前達と一緒に見れた
今日の日も大切な思い出になるよ
(抱き寄せれば、2人とも笑顔で)
●再びの幻想花
陽が落ちる頃に花を咲かせ、夜明けには散ってしまう幻の花――サガリバナ。
咲いてから散るまでも限定的だが、その花が見られるのも夏の間だけ。特にこの初夏の時期が見ごろと言われ、そして日本では南西諸島でしか見ることが出来ない希少な花。
その幻の花を見に、石垣島の農園へとやって来たユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)は、辺りに漂う甘い匂いに懐かしさを覚える。
(「世界は違っても、こうして同じようにサガリバナを見られる農園はあるんだな」)
ユウが記憶を共有している同一存在は、サイキックハーツ世界で10年前に沖縄の修学旅行を楽しんだのだ。今ならばその全ての記憶がユウにあって、そのひとつひとつがユウにとっても大切な思い出になっているのだ。
『花、すごくきれい』
『タンポポみたいね』
一緒に連れてきた優しい七不思議――人の姿をした|縁《エン》と|絲《イト》が楽しそうにライトアップされた花を見ている様子に、ユウの頬は思わず緩んでしまう。
「うん、この白や淡いピンクの綿毛がタンポポっぽくもあるよな。枝から垂れ下がったように咲くからサガリバナ。サワフジって別名もあるんだけどね」
二人が興味深そうに見ているので、そんな解説も加えて。そうすれば、ユウに近寄って来たエンが耳元で『甘くて美味しい香り』と囁いて。
「そうだよな。見た目も綿菓子っぽいし。以前は俺も『バニラの香りのするミルクティが合いそう』なんて言っちゃったけど」
エンへと笑顔を返し、そうして10年前の記憶を思い返す。
この10年の間にも、花たちはこうして咲いては散って、そして種になり、また花を咲かせるを繰り返して――。
「……また、来たよ。今回は、俺だけだけど」
思わず、そっと小さな声で目の前の花々にそう告げるのだった。
ユウの様子がいつもと少し違うことを、エンとイトも敏感に感じ取っていたのだろう。懐かしそうにサガリバナを眺めていたユウの服の袖をイトが引っ張って。
「ん、何、イト?」
ユウが振り向けば、腕組してポーズを決めたイトがこう言い放つ。
『とっとと吐いた方が楽になるぜ?』
「それ、こないだのラジオの台詞!」
唐突に思えるその言葉だが、ユウにはすぐにぴんときた。イタリアを舞台にした冒険活劇のラジオドラマの一幕での台詞なのだが、すぐに出てくるあたり、どうやらイトはかなりこの話が気に入ってはまってくれているようだ。
思わずおかしくなって、イトがこんなこと言ってるとエンの方を見れば、今度はエンが腰に手首を当てて、何やらうんうんと頷いている。こちらも、どうやらラジオに出てくるマフィアになり切っているようだ。
二人の息を合った演技に思わず呆気にとられつつ、その当意即妙な連係プレーには舌を巻く。ならばここはユウも役者として即興劇で対応するまでだ。
「ゆ、言うもんか、お前らなんかにっ!」
自らが演じる少年の台詞をしっかりと迫真の演技でなぞってから、ユウはふわっと表情を崩し、両手をあげてから二人へと微笑んだ。
「……降参だよ」
二人はユウの手をそれぞれ片方ずつ握っては少し心配そうな顔をしている。敏感なこの子たちには、ユウの微かな感情の揺れも感じ取れてしまうのだろう。
「二人とも大丈夫だよ」
きゅっと繋ぐ手に力を込めて、ユウは微笑む。
「昔さ、この世界じゃないけど友達や大事な人と見に来た事があるんだ」
10年前の沖縄での修学旅行。それは正確にはユウの記憶ではないけれど、でももうその記憶も過去も全部自分が引き受けると決めたから。
「皆ともう逢えないとしても、大事な思い出なんだ。こうして振り返る機会があって良かった」
石垣島だけでなく、沖縄本島で首里城を観光したり、琉球古武術に琉装や琉球ガラス体験、美ら海水族館にやんばるの川でのカヌー体験……たくさんの思い出が蘇る。
あの時一緒に来た友達と、もう逢えないとしても。それはユウの中でもかけがえのない思い出としてこれからも残り続けるから。
『もうあえない?』
自分たちがユウと会えなくなることを想像しているのか、エンの声がとても寂しそうで。
「別れもあれば出会いもある。悲しい思い出じゃないんだ。それに、今度はお前達と一緒に見れた」
何よりもそれが嬉しくて。ユウは二人を両手で抱き寄せてはその気持ちを伝える。
「今日の日も大切な思い出になるよ」
サガリバナの花言葉は『幸運が訪れる』。
この優しい七不思議たちに出会えたことに感謝したい。そして彼らと共に歩む道がこれからも幸せの笑顔で溢れるように。
二人の表情が笑顔で輝くのを見て、ユウもまた満たされた気持ちになるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
榎木・葵桜
【桜輪】
輪と夜の竹富島散策に行くよ!
姫ちゃんは弟くんと遊びに行ってるんで、私は私で身内召喚!
だってこーゆーの一人じゃつまんないし!
あとおばあちゃんは都合つかなかったんだもん
あと、輪は昼より夜派でしょ?
昼間に水牛楽しむって感じはイメージできないしね!(失礼)
それにここ、夜は月明かりだけになるらしいよ
星見ながら、独特の街並み眺めて散策するにはもってこいじゃない?
ほら、ちっちゃい頃に一緒に遊んだ…って、
えー、頑なに違うって言ってるけど絶対遊んでるって
でも、それが正しかろうと間違ってようとどっちでもいいんだよ
だって、なんやかんやいって私の誘いを断ってないしね!
(散策し浜辺に着いたら、田中さん召喚し)
さぁ、着いたー!
てことで私の舞を見てよ!
はい、田中さんは三線よろしく!
かつての沖縄の人たちは「もーあしびー」っていって、
夜の浜辺で歌ったり踊ったりしてたっていうじゃない
せっかくだから輪も踊ってみる?
「カチャーシー」とか楽しいよ?
(言いながら軽く両手を返してそれらしいリズムをとってからにんまりと笑って)
影見・輪
【桜輪】
葵桜と夜の竹富島を散策
…正直、今なんで僕がここにいるかわかんないんだけど
(いわゆる「修学旅行」というものらしいことは聞いてはいる
けれど行く表明をした記憶もないのに
ろくな説明も受けずに娘に引っ張られるがままに連れてこられたのが今だ
ものすごく嫌そうな顔で手を引かれ)
…いや、
水牛のイメージないっていいながら
結局昼間も散々引っ張り回してたじゃないか君は…
(昼も拒否ったのに相手がこの娘となると要望受け入れてしまうあたり、自分は甘いと思う)
(小さい頃遊んだどうのの話は余計なことを言うと墓穴を掘りそうなので黙り
※参照シナリオ「たそがれ追って」)
(「着いた」の言葉にようやく手が離れれば、息を吐き周囲を見渡し)
…確かに風情はあるよね
(静かな海と空を眺めていたら、沖縄の独特の音階が聞こえ
見れば、満面の笑みの娘と娘が召喚した霊の姿)
…三線ひかせるんだ…というか、ひけるのか君は
(妙に楽しそうな葵桜の相棒に苦笑い)
…とりあえず少しは付き合おうかな
(誘いかけてるように見えてほぼ強制な娘の笑みにはやれやれと)
●星降る浜辺でもーあしびー
竹富島は、八重山列島にある島のひとつで、石垣島から高速船で10分ほどで訪れることの出来る、観光客にも人気の島。
沖縄の昔ながらの街並みが残るこの島では、伝統的な赤瓦の家々やサンゴの石垣、アスファルトで舗装されていない白い砂の道、そして屋根の上のシーサーと、生活の中に確かに息づく伝統と文化を感じることが出来る。
それらの街並みを人が歩くよりもゆったりとした速度で進む水牛車に揺られながら巡るのがこの島の大定番のひとつでもある。
ともかく、南国の空気と自然をいっぱいに感じてゆったりと島時間を楽しむことが出来るのだ。
「……正直、今なんで僕がここにいるかわかんないんだけど」
そんな呟きを影見・輪(玻璃鏡・f13299)が漏らしたのは、すでにさんざん一日中竹富島で時間を過ごした後、夜の帳が下りる時刻だった。
「輪もキャンプに目覚めたんだから、こうして旅行で観光するのもいいと思うんだよね!」
どう見てもアウトドア派とは思えないヤドリガミの青年を引っ張り出しては、こうして旅行に連れ立ってやってきた榎木・葵桜(桜舞・f06218)は、明らかに迷惑そうな輪の表情をものともせずにそう言い放つ。
「いや、キャンプに目覚めてないから。一回参加しただけだし、その時ものんびりしてただけで、特に何かしたわけでもないし……」
勝手にアウトドアに目覚めたなどと思われては困るので、葵桜に手を引かれながらも輪はそうはっきりと告げる。
どうやら今回は修学旅行という趣旨も含まれた旅行のようで、好奇心旺盛なこの娘が目を輝かせないはずはないと輪も理解はしているが。
(「そもそも僕は行く表明をした記憶もないんだけど……それに、ろくな説明もないまま突然ここに連れてこられたんだけど」)
「もー、輪ってばもっと楽しそうな顔しなきゃ! 島の人も見てるよ! だって、姫ちゃんは弟くんと遊びに行ってるんだもん。こーゆーの一人じゃつまんないし!」
ならばと葵桜が繰り出したのは身内召喚。残念ながら大好きな祖母は今回都合がつかなかったのだ。
「あっちの両親はもちろん二人でらぶらぶなわけだし」
今回旅行を提案してくれたサイキックハーツ世界の母である陽桜は、皆の案内でも忙しいだろうし、時間があるとしても父と一緒に過ごしたいはずだ。
「それで僕……でも、行くって言った覚えないんだけど……」
「行かないとは言わなかったよ! というわけで、竹富島散策、夜も楽しんじゃおー!」
(「まあ、こうなるわけか……」)
多少強引な理論ではあるけれど、自分を箱の中から連れ出してくれるのは、いつもこの娘なのかもしれないと思いながら、輪は葵桜に手を引かれるまま歩いて行く。
最終のフェリーが出航すれば、島には昼間と違った静けさが訪れる。もちろん葵桜たちのようにこの島で一泊する観光客もいるが、半日でも観光して回れるのが竹富島のいいところだ。
「輪は昼より夜派でしょ? 昼間に水牛楽しむって感じはイメージできないしね!」
さらりと失礼なことを言えるのも身内ならではで。この島に来たなら水牛車に乗ってのんびり観光とも思ったが、どうにも輪が楽しんでいる図が浮かばなかった葵桜はそう言って悪気なくにぱっと笑う。
「……いや、水牛のイメージないっていいながら、結局昼間も散々引っ張り回してたじゃないか君は……」
だからといって葵桜が日中大人しくしていたわけではない。輪は拒否したつもりだったが、結局人気のフォトスポットである西桟橋に行ったり、竹富島のシンボルであるなごみの塔を見に行ったり、昼食に八重山そばなど島ごはんを食べたり、さらには南国パフェを食べる葵桜に付き合わされたりした。
それでも輪が最終的に要望を受け入れてしまうのは、相手が葵桜だからだろう。
(「相手がこの娘になると……どうにも自分は甘いと言わざるを得ないな」)
そう自己分析していようと、葵桜は全く気にした風もなく、楽し気に空を指差す。
「ここ、夜は月明かりだけになるらしいよ。星見ながら、独特の街並み眺めて散策するにはもってこいじゃない?」
夜の散策の利点を述べては、輪にも楽しんでもらいたいと屈託なく笑う姿は昔と変わらないと思い、どこか安堵してしまうけれど。
「大人になってもたまには一緒に遊ばないとね!」
「まるで昔遊んだみたいな言い方だよね」
「ほら、ちっちゃい頃に一緒に遊んだ……って、えー、頑なに違うって言ってるけど絶対遊んでるって」
以前から何度か繰り返される問答。きっと葵桜が忘れているはずと思っていた輪は、おぼろげながら自分との記憶を大切にしている娘の姿にどきりとするが、それでもその罪悪感から肯定することは出来なくて。これ以上の問答は墓穴を掘りかねないとだんまりを決め込むのだった。
「ま、輪はそう言うけど。でも、それが正しかろうと間違ってようとどっちでもいいんだよ。だって、なんやかんやいって私の誘いを断ってないしね!」
ふふん、と得意げな顔でそう言い切った葵桜の言葉は正しくて。輪は葵桜に引かれるまま、月明かりが照らす街並みをゆっくりと散策するのだった。
「さぁ、着いたー!」
やって来たのは島の西側にある星砂の浜とも呼ばれるカイジ浜。砂浜には無数の星砂が散らばり、そっと砂を手に取れば、星を掴むことが出来るだろう。
「……確かに風情はあるよね」
空には満天の星が瞬き、月明かりを受けた海面が静かに波打ち、昼間の賑わいとは違う静寂な空気をはらんでいる。昼はエメラルドグリーンに輝く海と白い砂浜の対比が見れたのだろうが、夜の浜辺の空気は輪にとっても落ち着く。
「へえ、星砂浜……」
立て看板に興味を持った輪が浜辺の砂を観察している間に、葵桜は仲良しの武者鎧姿の古代の霊である田中さんを召喚する。
「はい、田中さんは三線よろしく!」
輪が辺りを眺めている間に、葵桜は準備を済ませ、辺りに沖縄独特の音階が響き始める。
「……三線ひかせるんだ……というか、ひけるのか君は」
ひかされているというよりは、どこか楽し気に演奏している器用な葵桜の相棒に、思わず輪も苦笑い。そういえば、田中さんは何でもこなせると聞いたことがある。
「さっすが、田中さんでしょ! てことで私の舞を見てよ!」
穏やかな浜辺に流れる三線のメロディに合わせ、葵桜は桜の花弁があしらわれた舞扇を手に優雅に踊り始める。
葵桜の言うように、しばらくはその舞を眺めていれば、葵桜の成長を感じる。出会った頃はまだ小さかった娘が猟兵としても社会人としても成長している姿には、やはり少し心打たれるものがある。
「どう? 輪も楽しくなってきた? かつての沖縄の人たちは『もーあしびー』っていって、夜の浜辺で歌ったり踊ったりしてたっていうじゃない」
「ふうん、そうなんだ」
「せっかくだから輪も踊ってみる? 『カチャーシー』とか楽しいよ?」
カチャーシーとは、身体全体を使ってリズムに合わせて踊る、沖縄の伝統的な踊り。
そう言って葵桜は田中さんにカチャーシーに合う曲を弾いてもらうと、音楽に合わせて踊り始める。両手を頭上に上げ、手首を回しながら左右に振って踊るのが基本だ。
「幸せが逃げないように指は閉じるんだって」
今年こそはRB団候補からの脱出を誓う葵桜がにんまりと笑う。
「ほら、輪も」
「え、僕はいいよ……」
「ほら、手だけでもいいから!」
誘いかけているように見えるが、その実誘われた時点でほぼ強制されることが決まっている。心とは裏腹に、それに従ってしまう輪だった。
「……まあ、少しだけ付き合うよ」
「やった! 手の動きはこう! 田中さん上手だから見て!」
やれやれと吐息をこぼしつつも、満面の笑みの葵桜と楽し気な相棒の動きを真似て身体を動かしてみる。
「カチャーシーってかき混ぜるって意味からきてるんだって。喜びや悲しみをすべてかき混ぜてみんなで分かち合いましょうってことなんだって!」
だから一緒にと微笑みかける娘の屈託のない笑顔に、やはり敵わないなと輪は思うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
高嶺・円
【妖怪境界組】
沖縄本島のキャンプをする前に、久米島のやちむん土炎房でオリジナルシーサーを作るって認識で良かった?
『沖縄と言えばシーサーなのは、解るけど……このシーサーの餌って何だ?』
ちょっとお土産で気になったから、買って見たけど、黒糖チョコな感じのお菓子で、そこら辺のシーサーにお供えする用途らしいけど、美味しかったよ、ルーくんも吉備ちゃんもデイジーちゃんも食べてみてよ。
(そう言いつつ、シーサーの形を作り)
『あっ、こりゃ確かに黒糖の風味がチョコと違和感なく……何かそのシーサー、スサノオっぽくねぇ?尻尾も餃子だし』
あっ、無意識に餃子スサノオ大神っぽく作っちゃった、吉備ちゃんはなまりちゃんっぽくて可愛いし、デイジーちゃんも、猫っぽいシーサーで可愛いね
後は焼いて……届くのは数カ月後かぁ、後日再び訪れるしかないかなぁ?アスリートアースに住所無いし
(バドモン……ゲットなのよっ!)
楠乃葉っ!?
吉備ちゃん、デイジーちゃん、今、バドモンゲットなのよって声が、二人はグースって?
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
小雉子・吉備
【妖怪境界組】
うん、キビの茶屋に飾るのに作るの面白そーだし、デイジーちゃんにも円ちゃんにも、役に立ちそーだし、縁起も込めてシーサー作りも良さそーだと思うし
それにしても、シーサーの餌……面白そーなのちょろっと買ってきたよね、円ちゃんは、あっ……これは面白い味、茶屋にあっても良いかも
キビは見本の《なまり》ちゃんが居るしね、円ちゃんのもモフモフで可愛いシーサーだと思うし、◯◯◯◯ゲットだぜなゲームに出ても違和感ないかも
デイジーちゃんのも、猫シーサー可愛いし、焼き上げ完成するのに時間が掛かるなら、キャンプ場に行く前に、シーサーにお供えしまくるのも
(グースっ!)
ん?デイジーちゃん、円ちゃん、今、グースって言った?え?楠乃葉って円ちゃんの義妹の?猟兵になったとは聞いてないけど……バドモンゲットだせ?
円ちゃんの作ったシーサーみたいな感じのゲームのモンスターっぽい響きするけど
楠乃葉ちゃん周りに聞いてみる?
(その後、探してみるも見つからず、作ったシーサーも忽然と消えていた)
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
デイジー・クゼ
【妖怪境界組】
久米島の工房でシーサー作りで縁起を担ぐと言うんも、面白ろそうニャね。店先に飾るのも含めてニャし
それにしても、シーサーの餌……お供え前提のお菓子とは面白そうニャんよ、シーサー覚醒の儀式ニャんてのもあるって聞くニャし
これは香り高くて優しい味がするニャんよ、タコ饅頭の餡に黒糖混ぜても良さそうかもニャ
円ちゃんは、そう言えばスサノオは獣人の他にそう言う形態もあると聞くニャけど、シーサーと上手く融合した円ちゃんらしいデザインやと思うニャよ
確か、大ヒットしたモンスター対戦ゲームに出てきそうニャしね
吉備ちゃんのも、妖怪のアニメゲームのも◯げー言いそうニャ可愛さあるニャよ、なまりちゃんにも似とるニャけど
(グース!グース!コーレーグース!)
ニャニャ⁉今、グースって……誰か言ったニャ?楠乃葉ちゃん……円ちゃんの義妹さんニャか?
取り敢えず、ちょろっと探してみるかなニャ?
……結局円ちゃんの言う楠乃葉ちゃんは見つから、わたし達の作ったシーサーが消えてるニャんよっ!?
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
●守り神と不思議な声
「沖縄旅行三日目は、離島で楽しむんだねっ!」
仲良し同士で行く旅はどうしたって楽しくて、今日到着した久米島の景色を眺めながら、小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)は、元気に同行の二人を振り返る。
「うん、確か予定では……沖縄本島のキャンプをする前に、久米島のやちむん土炎房でオリジナルシーサーを作るって認識で良かった?」
旅立つ前に渡された手作りのしおりに書き込んだ予定を見返しながら、高嶺・円(名とご当地を受け継ぎし、餃子スサノオ・f44870)が、金色の二股尻尾の鼬姿になっているユピテルークへと問いかける。
『ああ、確かそういう予定だったはず』
「ここの工房では、久米島で採れる土を100%使ってるそうニャよ。久米島の工房でシーサー作りで縁起を担ぐと言うんも、面白そうニャね」
久米島にそよぐ爽やかな風を受け、ご機嫌にケットシーの尻尾を揺らしたデイジー・クゼ(シーアクオン弐號と書いてニャゴウ・f27662)が、そう相槌を打つ。
久米島は沖縄本島より西方向に100km程離れた場所にある、沖縄諸島でも最西端の島。自然豊かな久米島は島全体が県立自然公園に指定されてもいるのだ。
特に人気があるのは「はての浜」と呼ばれる無人島。東洋一の美しさと称される絶景が見られるこの場所へ、大勢のダイバーやシュノーケラーが訪れるのだ。
その他にも、パワースポットである2つの岩からできている「ミーフガー」や奥武島にある「畳石」、不思議な目の錯覚を起こす「おばけ坂」など見どころが満載。
この島を歩くだけでも、その自然の美しさや神秘さを感じることが出来る。
「一日目は首里城に行って、琉球菓子をたくさん味わって楽しかったよね! そこでもキビは茶屋のこと考えてたんだけど……シーサーって茶屋に飾るのにも作るのも面白そーだよね!」
「そうニャね。わたしも吉備ちゃんもお店を持ってるから、店先に飾るのも含めてニャし」
吉備はUDCアースの山中にある待ち合い茶屋処『吉備男』を。デイジーはヒーローズアースの明石で明石焼き屋『すこてぃっしゅ』をそれぞれ経営している。店の繁盛を願う意味でも、それは楽しく意義のある体験になりそうだ。
『シーサーは魔除けや厄除けになるって言うもんな』
「うん、デイジーちゃんにも円ちゃんにも役に立ちそーだし、縁起も込めてシーサー作りも良さそーだと思うんだ!」
「うん、シーサー作り、みんなで頑張ろうね」
円も頷いては微笑むと、一行は目的地である、やちむん土炎房へと辿り着いた。
沖縄らしい赤瓦の工房の前で、赤と黄色が目を引く一対のシーサーが出迎えてくれる。
『そういえば……沖縄と言えばシーサーなのは、解るけど……このシーサーの餌って何だ?』
改めてシーサーの姿を見ては、ユピテルークは円が先程から手にしているお菓子に視線を送る。箱には個性的なシーサーのイラストと「シーサーの餌」の文字。
「ん、これ? ちょっとお土産で気になったから、買ってみたけど……」
「それにしても、シーサーの餌かぁ……面白そーなの買ってきたよね、円ちゃんは」
そのお菓子には、吉備の好奇心もくすぐられる。
吉備ちゃんも気になる? と言いながら、円はひょいっとそれを摘まんで口に入れる。
「黒糖チョコな感じのお菓子で、そこら辺のシーサーにお供えする用途らしいけど、美味しいよ」
「それにしても、シーサーの餌……お供え前提のお菓子とは面白そうニャんよ。シーサー覚醒の儀式ニャんてのもあるって聞くニャし」
デイジーもまた興味津々のようだ。
沖縄伝統のシーサーは家々の屋根や門を守る像。魔除けのお守りとして、また幸運をもたらすものとして愛されている。しかし、ただ置くだけではその真の力が発揮されないという話もあるのだ。
「シーサーの覚醒? それまでは寝てるってこと?」
吉備が不思議そうに首をかしげると、デイジーはあまり一般には知られていないそうニャけど、と言いおいてから聞いた話を教えてくれた。
「シーサーの覚醒は、まずシーサーに塩をかけて清め、次に水をかけて洗い流してから、口に酒を注ぐそうニャよ」
それから大きく息を吸い込んで、勢いよくシーサーに息を吹きかけることでその精神を呼び覚ますというのだ。最後に大きく柏手を打つことでシーサーが覚醒するのだという。
「とはいえ、沖縄の人でもこの儀式を知らない人は多いそうニャよ。でもこういうのはちょっとわくわくするニャね」
そんな守り神であるシーサーへのお供えのお菓子というものが存在するのも、沖縄の歴史や文化を象徴しているのかもしれない。
「はい、ルーくんも吉備ちゃんもデイジーちゃんも食べてみてよ」
話を興味深く聞いていた円が、噂の菓子をどうぞと差し出せば、全員がそれぞれ手に取り口に放り込む。チョコレートと黒糖を使ったお菓子は、口に入れた瞬間ほろほろと溶けていく食感がおもしろい。
「なるほど、これは香り高くて優しい味がするニャんよ」
「あっ……これは面白い味、茶屋にあっても良いかも」
「タコ饅頭の餡に黒糖混ぜても良さそうかもニャ」
デイジーと吉備がその美味しさに驚きつつ、このアイデアが活かせそうと早速アイデアを膨らませ始める。
『こりゃ確かに黒糖の風味がチョコと違和感なく……二人とも、シーサー作る前から商売熱心だな』
「そーゆー話を聞いたなら、キャンプ場に行く前に、シーサーにお供えしまくるのもありかもしれないね」
そんな風に地元のお菓子を話題に笑い合いつつ、いざシーサー作りへ。
古民家風の建物の中は、畳のあるゆったりとした工房。まずは講師の先生が基礎的なレクチャーを行ってくれ、そうしてモデルになるシーサーをいくつか並べておいてくれる。
『こうしてシーサーが並んでるのを見ると、全然表情が違うんだな』
とても朗らかに笑っているシーサーから、きりっとした凛々しいシーサーに、悪いものを追い返してくれそうな力強いものまで様々だ。
「どんな風にするか迷うニャね。でもとりあえず作っていく間に決まっていきそうな気もするニャ」
そう言いながら、デイジーはレクチャー通り、早速シーサーの胴体と尻尾部分の骨組みを作っていく。
「キビは大体イメージが出来てるんだ。すぐそばに見本がいるからね」
そう言いながら、吉備は迷いなく胴体と尻尾を作り上げていく。
「こうして……こうかな。あとはこうして……」
胴体と尻尾が出来れば、あとは粘土をちぎって、丸めて、時にパーツとして作ってくっつけて。その作業を夢中で繰り返していれば、円が作り上げたシーサーは――。
『……何かそのシーサー、スサノオっぽくねぇ? 尻尾も餃子だし』
「あっ、無意識に餃子スサノオ大神っぽく作っちゃった」
ユピテルークに指摘され、はたと我に返れば、確かにスサノオの面影のあるシーサーに。
「円ちゃんの、モフモフで可愛いシーサーだと思うな! ほら、ボールでモンスターを捕まえるゲームに出ても違和感ないというか」
「そう言えばスサノオは獣人の他にそう言う形態もあると聞くニャけど……シーサーと上手く融合した円ちゃんらしいデザインやと思うニャよ」
確か、大ヒットしたモンスター対戦ゲームに出てきそうニャしね、とデイジーも吉備の言葉に頷いて。
「そう言ってもらえると安心するよ。ね、ルーくんも気に入った?」
『まあ、悪くねえな。俺様のがかっこいいけどな!』
今は雷獣の姿を模しているが、特機としてのユピテルークは雷を纏った天雷神機の名にふさわしい威厳のある姿なのだ。
だが、そう言いながら鼬姿でふんぞり返っている姿もどこか可愛い。
「あ、それで二人は? わあ、吉備ちゃんはなまりちゃんっぽくて可愛い!」
「うん、やっぱり見本のなまりちゃんがいるとどうしてもね」
小柄で利発な青色狛犬の愛らしさをぎゅっと詰め込みつつ、シーサーらしい姿に仕上げ、吉備も満足そうに頷いている。
「デイジーちゃんのも、猫っぽいシーサーで可愛いね」
見ればなんとも猫っぽい表情と仕草のシーサーが。シーサーは獅子であるということを踏まえれば、猫に近いというのも当然。
「うん、デイジーちゃんの猫シーサー可愛い!」
「吉備ちゃんのも、妖怪のアニメゲームに出てきて、しゃべってそうニャ可愛さあるニャよ」
もちろんなまりに似て可愛いとデイジーはにっこり。
三者三様、それぞれの個性が出たシーサーが形作られ、あとは焼き上げを残すのみとなった。
「後は焼いて……届くのは数カ月後かぁ、後日再び訪れるしかないかなぁ? アスリートアースに住所無いし」
形が完成しても、ここからしっかりと乾燥させて固める必要があるので、完成まで一ヶ月以上かかるのだ。郵送で届けてはくれるが、他世界から来ている猟兵は固定の住所がないのでもう一度取りに来ようかと円が思案していれば。
(『バトモン……ゲットなのよっ!』)
聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた気がして、円は弾かれたように顔を上げ、辺りを見渡す。
「この声……楠乃葉っ!?」
けれど辺りには円たち以外には誰もいなくて。
「吉備ちゃん、デイジーちゃん、今、バトモンゲットなのよって声が……」
(『グースっ!』)
「ん? デイジーちゃん、円ちゃん、今、グースって言った?」
吉備は吉備で違う言葉が聞こえていたらしい。不思議そうに辺りを見回すが、円もデイジーもユピテルークも首を横に振る。
(『グース! グース! コーレーグース!』)
「ニャニャ!? 今、グースって……誰か言ったニャ?」
「二人はグースって?」
どうやら吉備とデイジーには少し共通点がありそうだが、二人とも少しタイミングが違っている。それぞれにその言葉が届いたということだろうか。
「円ちゃんが言った楠乃葉って円ちゃんの義妹の?」
「そう、確かあの声は楠乃葉の……でもバトモンゲットって……」
「楠乃葉ちゃん……円ちゃんの義妹さんニャか?」
バトモンといえば、沖縄旅行に旅立つ前に耳にした新しい世界の噂。そこにいるバトルモンスターのことがまず思い浮かぶ。
「猟兵になったとは聞いてないけど……バトモンゲットに何か意味がありそうだよね」
ちょうど円が作ったシーサーは、その見た目からもモンスターをゲットするゲームに通ずるところがありそうだ。
「デイジーちゃんはグースって聞こえたの?」
「グース! グース! コーレーグース! って聞こえたニャ」
「コーレーグースは、沖縄の島唐辛子を使った調味料ね」
円たちがきょろきょろしていると、レクチャーをしてくれた工房の講師がそう教えてくれる。
「沖縄に来たせいもあるのかな?」
「取り敢えず、ちょろっと探してみるかなニャ?」
吉備とデイジーがそう言って、工房の外にも何か手掛かりがないかと探してくれる。
『声だけ聞こえるって……しかも、円だけじゃなくて、二人にも』
「うん、でもやっぱりあれは楠乃葉の声だった」
円の中のスサノオとして過ごしてきたマドカにもはっきりとそうだと言える確信がある。
そう言って円も辺りを探してみるが、楠乃葉らしき影は見当たらない。
「うーん、いないねえ」
「……結局円ちゃんの言う楠乃葉ちゃんは見つからなかっ……あれ!?」
「どうしたの、デイジーちゃん?」
「わたし達の作ったシーサーが消えてるニャんよっ!?」
「えっ、工房の人が片付けたのかな?」
けれど、どうにもそうではなく。一瞬の隙に三人が作ったシーサーは忽然と姿を消していたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩瑠・翼
【桜翼】
オレ、石垣島のカフェとスイーツ巡りしたい!
姫桜姉、一緒いこー!
え、だってスイーツ食べたりとかカフェ巡りとかは昼しかできないよ?(ぱちくり)
シュノーケリングは、夜行虫眺めるのあるらしいから夜に行こうよ!
(明らかにスイーツ系最優先って顔で目をキラキラさせている)
最初は、石垣島の天然の塩を使った「塩サーターアンダギー」のあるお店で
サーターアンダギー食べるんだ
揚げたてって外カリッとで中ふんわりで、塩気がちょっとあるのもいいよね
次はね、石垣島の牛乳を使った牛乳プリン!
えへへ、地元の牛乳の濃厚な味がすごくおいしいね(ほくほく)
さんぴん茶ミルクティーっていうのもあるんだ?
オレ、さんぴん茶ってストレートのイメージしかなかったけど
そういえば台湾茶とかもミルクティーしてたりするし似た感じなのかも?
(思わずメモをとり)
んん、これ、お土産にしたいよねぇ
(父と母と二番目の姉と、兄貴分と
サイハ世界の父の家族にもあるといいかもとわくわく指折り
今回旅行案内してくれたスイーツ好きのあの人にも渡したいなとにこにこ)
彩瑠・姫桜
【桜翼】
翼と一緒に
ねぇ、石垣島来たならマリンアクティビティじゃないの?
(カフェやらスイーツやらのガイドをワクワクと眺めているっぽい弟に苦笑し)
確かにこの日差しだと昼泳ぐと日焼けすごそうだものね
夜行虫は確かに興味あるわね
後の楽しみにしておこうかしら
(案内されたカフェ巡り1店舗目の塩サーターアンダギーの店では
行きたいと言われた店の赤瓦と石畳の雰囲気にほんわりとし
それから購入したサーターアンダギーの大きさと量に目を丸くした)
翼、半分こしましょう?
スイーツやらカフェやらってことは他にも行くんでしょ?
シェアするくらいがちょうどいいわよ(真面目に)
あ、確かにドーナツよりはちょっと固めかしら
食感ハマるわよね
セットにしたソフトクリームをつけて食べるのも美味しいわ
(牛乳屋さんのカフェでは、さんぴん茶ミルクティーにメモ取る弟に思わずくすり
この熱心さにはあたまが下がる)
牛乳プリンもだけど、ローゼルシロップ入りの牛乳もすごく飲みやすくていいわよね
お土産は確かにありね
私も、あおへのシェア用で買っておこうかしら
●絶品島スイーツ巡り
「着いたね、石垣島!」
目の前に広がる南国らしい眩しい太陽の光に照らされた美しい自然と海の景色に、彩瑠・翼(希望の翼・f22017)はきらきらの笑顔で嬉しそうな声を上げた。
「沖縄本島から飛行機で約50分……ここも大きな島だし、魅力がいっぱいね」
瞳を輝かせる弟の様子を微笑ましく思いながら、共にやって来た彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)も、改めて八重山諸島の主島である石垣島の魅力に触れる気分だ。
沖縄の中でも、本島、西表島に次ぐ大きさで、リゾートホテルやショッピングモールが完備されている一方、市街地には沖縄らしい赤瓦の民家やさとうきび畑などの昔ながらの風景も広がっている。
「さあ、それじゃあ何から楽しみましょうか」
そんな大きな島であるので、見どころがいっぱい。海岸やビーチはあちこちにあるし、島の北西のダイビングスポットでは、高確率でマンタやウミガメに遭遇できるという。サンゴ礁で出来た鍾乳洞も気になるし、バードウォッチングも出来る展望台で石垣島の自然を余すところなく堪能することも可能だ。
「オレ、石垣島のカフェとスイーツ巡りしたい! 姫桜姉、一緒いこー!」
姫桜が石垣島のアクティビティに思いを馳せていれば、翼は、はいっと手を挙げてはそう希望を口にした。
「え、スイーツ巡り?」
全く予想していなかった提案に、姫桜は思わず聞き返してしまった。
「そうだよ、ここでしか食べられないスイーツもいっぱいあるからね」
「せっかく石垣島に来たならマリンアクティビティじゃないの?」
もちろん翼の言うこともわかるけれど、海が美しい島に来てマリンアクティビティをしないというのも何だかもったいないような気がして。
「え、だってスイーツ食べたりとかカフェ巡りとかは昼しかできないよ?」
むしろ翼もまた驚いたように目をぱちくりとさせる。カフェやスイーツを事前に調べていたのだろう。先程からそれらが載っているガイドブックをわくわくと眺めている弟の姿に、姫桜は思わず苦笑してしまう。
(「本当にカフェのことになると一生懸命なんだから」)
少し前に、妹の理恵とも弟の成長について話をしたばかりだったので、なんだかつい微笑ましく思ってしまう。
「シュノーケリングは、夜行虫眺めるのあるらしいから夜に行こうよ!」
「……確かにこの日差しだと昼泳ぐと日焼けがすごそうだものね」
梅雨が明けた沖縄の本気の夏の陽射しには確かにちょっとひるんでしまう。観光地のカフェは夕方にはクローズしてしまうことを考えれば、翼の言う通りな気がする。それに――。
「夜行虫は確かに興味あるわね。後の楽しみにしておこうかしら」
「うん、そうしよー!」
その表情は、もちろん夜もそれなりに楽しみなのだろうけれど、スイーツを最優先したいという翼の表れのようで。輝く瞳と表情に、姫桜はそうね、と柔らかく頷いた。
「で、どこに行くの? その様子だともう目星はつけているのよね」
「うん、まずはね、沖縄と言えばの、サーターアンダギーのお店に行くよ!」
翼の案内でやって来たのは、石垣島の絶景スポットでもある川平湾から徒歩すぐの場所にある、赤瓦の屋根と石畳が目を引くおしゃれなカフェ。とはいえ、店内に飲食スペースがあるわけではなく、店のそばに設置してあるテーブルでいただくか、テイクアウトして食べることになる。
「ここの塩サーターアンダギーがすごく気になってたんだ」
なんでも石垣島の天然の塩を使ったサーターアンダギーで、注文を受けてから揚げてくれるそうだ。
「姫桜姉待ってて」
外のテーブル席で待ってもらい、翼がオーダーすると、その後揚げたてで提供されたものをほくほく顔で運んでいく。
「お待たせ」
「って、なかなかの量と大きさね……」
翼が購入したサーターアンダギーの物量に驚きつつ、姫桜はこう提案する。
「翼、半分こしましょう?」
さすがに拳大とまではいかないが、なかなかの大きさの揚げ菓子なので二人でシェアするくらいがちょうどいいと思うのだ。
「うん? いいよ!」
「スイーツやらカフェやらってことは、この後も他にも行くんでしょ?」
「もっちろん」
「じゃあやっぱり、シェアするくらいがちょうどいいわね」
さすがしっかりものの長女の姫桜はこの後の行動のことも考えてきちんと胃袋の空き容量をキープしておく。
「二週間ぐらい日持ちもするから、お土産にもいいよね」
そう言いながら翼は揚げたてのサーターアンダギーをまず一口。
「んんっ、美味しい! 揚げたてって外カリッとで中ふんわりで、塩気がちょっとあるのもいいよね」
もちろん冷めても美味しいのだが、揚げたてでしか味わえない美味しさがある。
「塩でさらに甘さが引き立つのね。この食感ハマるわよね」
「うん、ドーナツよりはちょっと固い感じがするよね」
「あ、確かにドーナツよりはちょっと固めかしら」
そう言い合いながらまずはサーターアンダギーだけで食べ、その次に翼が注文しておいた石垣島の牛乳を使用した濃厚なソフトクリームをつけて食べてみる。
「姫桜姉もやってみて!」
「それじゃあ……ええ、ソフトクリームをつけて食べるのも美味しいわ」
じっくりと美味しさを堪能した後、二人は川平湾の絶景を眺めてから次の店へ。
「次はね、石垣島の牛乳を使った牛乳プリン!」
「さっきのソフトクリームも美味しかったものね」
「うん!」
店内に入れば、親子の牛の像が出迎えてくれ、元気そうな少年のイラストの看板が目を引く。
「牛乳以外にもジェラートや食パンもあるのね」
けれど、まずは翼お目当ての牛乳プリンから。
「えへへ、地元の牛乳の濃厚な味がすごくおいしいね」
イートインも出来るので、ほくほくと、本当に幸せそうに牛乳プリンを食べる弟の姿に、姫桜も微笑んで。同じように牛乳瓶に入ったプリンを食べては、なめらかな味わいに舌鼓。
「他にもいろいろ味わいたいなー。あ、さんぴん茶ミルクティーっていうのもあるんだ?」
店の中を見て回っていれば、ふと気になる商品に目を留めた翼。
「オレ、さんぴん茶ってストレートのイメージしかなかったけど……そういえば台湾茶とかもミルクティーしてたりするし似た感じなのかも?」
その偶然の出会いに、思わずメモを取り始める翼。どんな時でも好きなものに対する研究を怠らない弟の様子を見て、思わずくすりとした姫桜は、プリンを食べ終わって牛乳を一口。
(「この熱心さにはあたまが下がるわ」)
沖縄でおなじみのさんぴん茶と石垣島の牛乳を使用して作られたさんぴん茶ミルクティーは人気商品のようで、飲んでみれば、あとからふわりとさんぴん茶の風味が追いかけてくる。
「牛乳プリンもだけど、ローゼルシロップ入りの牛乳もすごく飲みやすくていいわよね」
姫桜が飲んでいたのは、熱帯地方原産のローゼルのシロップを使ったドリンク。鮮やかな紅色をしていて、爽やかな酸味とビタミンが豊富であり、女性にも人気だ。これを混ぜることにより、牛乳がぐっと飲みやすくなるのだ。
「ジェラートは無理だけど、他のはお土産にしたいよねぇ」
「お土産は確かにありね」
弟の言葉に、姫桜も大きく頷いて。だよね、とぱっと顔を輝かせた翼が、あげる人の顔を思い浮かべながら、わくわくと指折り数を数えていく。
(「父さんと母さんと理恵姉とユディトさんと……あ、サイハ世界の父さんの家族にもあるといいかも」)
「私も、あおへのシェア用で買っておこうかしら」
今回は別行動の親友の顔を思い浮かべながら、姫桜はどれにしようかと思案する。
(「それから、今回旅行案内してくれたスイーツ好きのあの人にも渡したいな」)
離島で出会った素晴らしきスイーツを、大切な人たちにお裾分けする楽しみを想像しながら、翼は幸せそうに微笑むのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宮儀・陽坐
【陽胡】
沖縄料理は豚肉の使い方が多彩で興味深い
ゴーヤ、もずく、イカスミに…ヤギ肉?なるほどそのあたりの食材を使いこなしてこそ沖縄に向かい合えたということか
本島の繁華街をざっと流し見て食材調査の独り言
そこに聞こえてくる元気な声に思わず
あっ…
と声が出る
武蔵坂の修学旅行だから期待してないと言ったら嘘だけど待ち合わせた訳でもなく
海外料理修行の間ほぼ単独行動で人付き合いに自信もなく
相手の予定も分からない現状
声をかけて誘うのはハードルが高い脳内言い訳うんぬんかんぬん、うん無理かもと立ちすくむ
天ぷら差し出されてボーナスタイム?いやさすがに口つけたらだめだろとか無駄に悩む
それを突破してきてくれる所とか好き
あといっぱい食べるところ
昔と変わらず会話できる空気感
覚えててくれて嬉しい
何とか捻り出した美味しいお店ありました?にたくさん返事をくれて楽しい
餃子は食べます即答
俺はこれからブランド牛の視察で石垣島に行こうと思っていて…あのその、
くるみさんも行きます?いや予定とか無ければの話なんですけど
ぇあっ…?!握手緊張
未留来・くるみ
【陽胡】
沖縄グルメ食べ歩き!
天ぷら齧りながら歩いとったら目が合って
なんや陽坐はんやないの!
陽坐はんも来とったんやね!
笑顔で駆けより手元のメモ帳に目をやって
なんや沖縄のご当地調査してはったん?
研究熱心やねぇさすがご当地の鑑!
せやせや!天ぷら食べはった?
沖縄の天ぷらは一味違うで~?
ずずい、と紫芋の天ぷらを差し出して
戸惑ってるように見える陽坐はんに内心冷や汗
アカン相手無視して一方的に距離詰めるんはうちの悪い癖やー!
懐かしゅうて一人で喋ってもうたし
研究したいのに迷惑やろなぁ退散せな
ほな、また…と別れようとした時に美味しい店の話に嬉しくなって
うちの沖縄コレクション見てくれはる?
立話もなんや
そこに沖縄食材使うた餃子屋さんがあるねんけど行かへん?
食べ歩きの成果をまとめたスクラップブックを広げて
ショップカードや箸袋なんかを貼り付けたってんねん
ここが良かったあそこもなかなか…と語り
石垣島?行く!
やー、うちなんも予定決めてなかったんよ
一緒に行ってくれるんは嬉しいわぁ
よろしゅうな!
笑顔で握手!(他意は無し)
●再会は南国の空の下
「沖縄も美味しいもんが多くて幸せやわ」
旅行も三日目になり、未留来・くるみ(女子大生宴会部長・f44016)は、今まで食べてきた沖縄グルメを思い返しては満面の笑みを浮かべる。
関西育ちのくるみは、美味しいものが身近にあったおかげか、昔から食べることが大好きだった。そのせいだろうか、サイキックハーツ世界でエクスブレインとして活動していた時も、なぜだか食べ物に関する予知は多かったのだ。そして食で皆を笑顔にするためのプロデューサーとしても積極的に活動するうちに、ついたあだ名は宴会部長。彼女の朗らかさと皆を自然と元気にする力を表しているのだった。
「スイーツ系は前半で食べたし、後半はグルメの方頑張るで」
沖縄にしかないアメリカ発祥のハンバーガーチェーンで食べたバーガーも、これぞ沖縄というポークたまごおにぎりも、定番のタコライスも美味しかった。
「今日もいろいろ食べ歩くで~」
小柄でスレンダーな身体ながら、こう見えて大食漢なくるみは、そう気合を入れつつ、ご機嫌な様子で飲食店街を彷徨うのだった。
「なるほど、沖縄料理は豚肉の使い方が多彩で興味深い」
同じ頃、この沖縄旅行に参加していた宮儀・陽坐(いつも心に餃子怪人・f45188)は、本島の繁華街を歩きながら、食材調査をしていた。
「ゴーヤ、もずく、イカスミに……ヤギ肉? なるほどそのあたりの食材を使いこなしてこそ沖縄に向かい合えたということか」
調査の結果、得られた情報を声に出して呟く陽坐。なんとなくしゃべり方が悪の幹部っぽい気がするのは、彼が昔闇堕ちした時、指導者とか軍服とか赤マントとかが好きな学生だったからだろう。そんな過去を経て、陽坐は今、出張料理人として食のプロになるべく修行中なのだ。
陽坐はサイキックハーツ世界において、武蔵坂学園の灼滅者たちに救われた元・宇都宮餃子怪人。何度か闇堕ちして暴走してしまったほど、餃子――とりわけ宇都宮餃子への愛は深い。だからこそ愛する餃子を今以上に普及させたいと己を鍛錬している最中。
気がつけば猟兵なるものになっていて、他の世界に行けるようになったことは驚きだったけれど、世界が広がれば己の知見も広がり、そしてまた餃子を普及できる場所も増えるというもの。
ちょうど武蔵坂の修学旅行を謳ったこの沖縄旅行が行われるということで、料理人としての経験を積むうえでもいい機会だと参加したのだ。
「アグー豚も気になるし、材料を調達して実際に作って……」
ぶつぶつとメモに取ったことを読み返している時だった。
「次は何食べよかな~」
聞き覚えのある声が耳に入り、思わずそちらへと視線を向ければ、ちょうどその人物とばっちりと目があってしまって。
「なんや陽坐はんやないの!」
懐かしく明るく親しみのある声が間違いなく陽坐へとかけられたのだ。
陽坐は「あっ」と声を出しながらも、言葉を続けるより先にその太陽のような眩しい笑顔に目が眩みそうになる。
「陽坐はんも来とったんやね!」
満面の笑みで駆け寄ってきてくれるのは、最後に会った時よりも大人びた雰囲気をまとい素敵な女性に成長したくるみだった。
「く、くるみさん……」
武蔵坂の修学旅行なら懐かしい顔に会えるかもしれない。
そんな淡い期待をしていなかったといえば噓になるが、特に約束や待ち合わせをしていたわけではなくて。だからこそ嬉しいよりもどうしようという気持ちが先に立ち、気の利いたことを言うことも出来ず、気さくに話しかけてくれるくるみに頷いたり、単語で応えるのがやっとだった。
「陽坐はん、少し見ない間にたくましくならはったなぁ。え? 海外修行してはったん?」
己を鍛えるための海外料理修行の間は、ほぼ単独行動だったため、人付き合いにもあまり自信が持てなくて。けれどくるみは、会えなかった時間を何でもないように飛び越えて来てくれる。
「なんや沖縄のご当地調査してはったん? 研究熱心やねぇさすがご当地の鑑!」
陽坐の手元のメモ帳に目をやったくるみは、関西ガールらしく、ばしっと陽坐の背中を叩いた。
(「くるみさん、全然変わってない!」)
そんな安堵感を抱きつつも、とはいえくるみにはこれからどんな予定があるかわからない。このまま立ち話で終わるのは避けたいが、どうやって相手を誘えばいいのかわからない。
(「さすがにハードルが高いか……うん無理かも」)
餃子に関する時に見せる執着と圧はどこいったと問い詰めたいぐらいのあっさりさで陽坐が諦めかけた時だった。
「せやせや! 陽坐はんは、もう天ぷら食べはった?」
まるで救世主のように、天ぷらの話題が降臨したのだ。そういえば、出会った時からくるみは手に天ぷらを持っていた。沖縄グルメを食べ歩きしていたのだろう。
「え、いえ。まだですが……」
「ほな、食べてみる?」
「いえ、そんな、でも……」
くるみが食べるために買った天ぷらにさすがに口をつけたらだめだろうと思い悩み、半分食べて返す……いや、もっとだめだろうと思っていれば。
「まあまあ、遠慮せんと。これも研究の一環や。沖縄の天ぷらは一味違うで~?」
陽坐の逡巡を軽く乗り越えて、ずずい、と紫芋の天ぷらが目の前に差し出される。
「は、はい。食べます……」
ここまで来てくれたのなら食べなければ男が廃る。そんな気持ちで口にした天ぷらは衣が分厚くてふわっとして、サクサクというよりもちもちしている。
「これは……!」
「な、ひと味違うやろ? 他にももずくの天ぷらもあってな……」
そこからくるみがひたすらに沖縄グルメの話を語りだして。陽坐はそれを嬉しく聞いていたのだが、一人でしゃべりすぎたと思ったくるみは、はたと我に返る。
(「アカン、やってもうた! 相手無視して一方的に距離詰めるんはうちの悪い癖やー!」)
先程から陽坐はほとんどしゃべっていないし、かなり強引に天ぷらを勧めてしまったように思える。
(「懐かしゅうて一人で喋ってもうたし……料理の研究したいやろうに、うちがいたら迷惑やろなぁ。退散せな……」)
きっと陽坐はくるみのマシンガントークに戸惑っているに違いないと反省し、ほな、また……と言って別れようとした時だった。
「あ、あのくるみさん。美味しいお店ありましたか?」
昔と変わらず会話できる空気感が嬉しくて、ここに来て陽坐も何とか言葉をひねり出したのだ。
「え、美味しいお店? いっぱいあったで! 良かったらうちの沖縄コレクション見てくれはる?」
ぱあっとまた顔を輝かせるくるみの表情を見れば、勇気を出して訊ねて良かったと陽坐は内心安堵する。
「もちろんです」
「ほな、立話もなんやし、そこに沖縄食材使うた餃子屋さんがあるねんけど行かへん?」
「行きます。餃子は食べます!」
餃子のことになれば、即答する陽坐だった。
「これがアグーを使った餃子……いただきます」
店内で席に着いた陽坐は早速注文した餃子が来るなり口に運ぶと、口の中で溢れる肉汁の量に驚く。
「脂はさっぱりしているけれど甘味をしっかり感じます……なるほどこれがアグー豚の旨味……皮はもっちりしていてこれまた良く合います」
「陽坐はんの餃子に対する情熱、昔のままやね」
食べる様子をにこにこと見守っていたくるみの視線に気がつくと、陽坐はまたやらかしてしまっただろうかと焦る。愛が強いあまり、たまに迷惑と紙一重なところがあるのだと自覚はしている。
「はっすみません……暴走しないように気をつけているんですが……!」
「ううん、なんや世界は変わってしもうたやん。うちもある日、グリモアが手元にあって驚いてん。でも、懐かしい顔見てたら安心するっていうか。うちもちゃんと歳の分だけ成長できとるかなぁ?」
「くるみさんは……」
昔も可愛かったけど、今も可愛くてさらに綺麗になったとか、笑顔が最高に癒されるとか、美味しそうに餃子を食べる姿が好きだとか、伝えたいことはたくさんあるけれど。
(「はっ、これってこのご時世だとセクハラとか言われてしまう可能性も……? 今は何かとコンプライアンスとか厳しいし……」)
ちょっと時代の波に怯えつつ、口に出来たのは、聞こえないくらいの「今も昔も素敵です」という言葉だった。
そうして餃子を味わったあとには、この旅行での食べ歩きの成果をまとめたスクラップブックを広げるくるみ。
「すごいですね……!」
そこにはショップカードや箸袋、チラシの切り抜きなどが貼りつけられ、くるみのコメントが添えられている。
「ここめっちゃよかってん! ほんで、あそこもなかなか……」
笑顔と共に店の説明をしてくれるくるみ。そう言っているうちに、追加注文の餃子が運ばれてきた。
「そういえば、こうやって陽坐はんと一緒に餃子食べるのもいつぶりかな。なあ、葵はんの誕生日に、陽坐はんがかまくらでうちに餃子怪人の至高のたれ食べさせてくれたこと覚えてる?」
「も、もちろんです!」
「生きててよかったって思うくらい美味しかってんで」
感動のあまり、涙まで流していたくるみのことをもちろん陽坐も覚えている。
(「ちゃんと覚えててくれて嬉しい。俺が消極的な態度でも、それを突破してきてくれる所とか好き。あといっぱい食べるところ」)
この旅行で再会できたのも何かの運命。そうに違いないと、この状況がそっと陽坐の背中を押す。
「俺はこれからブランド牛の視察で石垣島に行こうと思っていて……あのその、くるみさんも行きます?」
ようやく自分から誘いらしい言葉を投げかけることが出来た。しかし、相手の都合も考えず、言ってしまって良かったのかと口にしてから心配になる。
「いや、あの、予定とか無ければの話なんですけど……」
「石垣島? 行く!」
陽坐の心配をよそに、くるみもまた即答した。
「やー、うちなんも予定決めてなかったんよ」
前半の日程を一緒に過ごした仲良しの二人は案内や予定があるようだから、後半の日程はどうしようかと考えていたところだったという。それは陽坐にとって僥倖に他ならない。
「ほ、ほんとですか?」
「うちも一緒に行ってくれるんは嬉しいわぁ。よろしゅうな!」
そう言って、くるみは笑顔で手を差し出す。
「ぇあっ……?!」
差し出された手は握手を求めたもの。握手とは手を握ること。
くるみに他意はないのはわかるのに、陽坐はことさら緊張し、ズボンでごしごしと手を拭いてから、遠慮がちに手を差し出して。
「石垣島、楽しみやな!」
(「うわー、ボーナスタイムが続いてる。夢なら覚めないで!」)
これは餃子神……いや、餃子怪人の導きなのか。
沖縄での久しぶりの再会が二人の距離を縮めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
一ノ瀬・漣
【煙響】
はての浜だー!
ねね、梓!なんもなーい!海綺麗ー!!
ビーサンに揃いのアロハシャツで駆け出し
波打ち際で貝集め
桜貝は絶対欲しいけど…あ、ほかにもピンクのあるんだ
ふふ、見て見て梓
ピンク尽くしー!(ほくほく
撫でられ更に幸せ笑顔
籠の中の梓の眼の色を愛おしくみつめ
…丁度十年前だったんだ、去年が
家族を失くして死にたくてどうしようもなかった日から
十年経って漸く抜けだし始めた時…梓と出逢った
初めてまともに依頼で闘った
季節イベントも梓のお陰でめっちゃ愉しかった
…10年後、大切な人に出逢えて
こんなに笑えるようになるんだよ、って
あの頃のオレに教えたい
…それに、両親にも
「その人と結婚することになった」って知ったら驚くだろうな(くすくす
左手を空へ
薬指の『Halo』が嬉しくて
下ろしたら恋人繋ぎ
薬指へのキスに静かに驚き
手紙に…?
梓の言葉ひとつひとつ噛み締めて
泣きそうな笑顔で
…ふふ。うん、それやろ
あと…折角なら梓も映ってよ。ほら、笑顔ー!
顔寄せてスマホで2人自撮り
…ありがとう、梓
オレと出逢ってくれて…隣にいてくれて
都嘴・梓
【煙響】
おーおー、ホントだぁなんもねぇ
(無邪気に走り回る漣越しの海を長めながら引っかけてきたビーサンで散歩
砂も綺麗だし水も綺麗で、それこそほんと異世界って感じ)
はーあっつい…んでもちーと湿気少ないから、東京よりはマシかぁー
なーに漣、拾いモン?へぇ貝殻…やだぁめっちゃファンタジーじゃん
よしよし可愛い可愛い(撫で撫で
(伸び伸び楽しむ様子に内心安心
ここ最近ふと遠く見る時間多かったし、気が紛れてるなら何より―…)
は?
え、待って
待って待って待って
そんな、
(そんな
さらりと言われたことは、知ってはいたけど“いつだったか”を、俺は配慮してなかったかも
ちょっと、悔しい
グッと胸が苦しくなるような詰まるような
けど、それでも漣がそれを口にしてくれたことが嬉しい)
(繋いだ手を取って口付けて)
―ねぇ漣、それ全部手紙にしよ
出すのは俺ン家だけど、漣の気持ち文字にして残すの
折角だから漣の笑顔の写真も突っ込んで、さっき拾った貝だって突っ込んで…
漣の思い出が、気持ちが誰より輝くように
俺の方こそ、生きてくれてありがとう―漣
●共に歩む軌跡を刻んで
古来から、「琉球列島で最も美しい島」という意味の「|球美《くみ》の島」と呼ばれていた久米島。その呼び名に相応しく、久米島から船で30分程度で行ける場所にある「はての浜」は東洋一の美しさと称される絶景スポットだ。
「はての浜だー!」
そんなはての浜にやって来た一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)は、初夏の太陽の光に照らされて輝く白い砂浜と、時間ごとに色を変える美しい海と、果てのない蒼穹からなる絶景を前に、思わずはしゃいだ声を上げていた。
「ねね、梓! なんもなーい! 海綺麗ー!!」
「おーおー、ホントだぁなんもねぇ」
楽し気な漣の様子を目を細めて見守っていた都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)の口からも、砂浜と海以外に何もない景色に漣と同じ感想が漏れる。
対UDC組織『|Defin∃Ёarth《ディファインアース》』に所属する梓にとっては、東京をはじめとする都会での仕事が多く、何もないこの光景はまさに平穏な休暇でしか得られない貴重なひととき。
お揃いのアロハシャツを着てはしゃぐ漣が海を見て目を輝かせている。そして砂浜を見ては何かを見つけたのか波打ち際に座り込んだ。どうやら貝を集めているようだ。
「砂も綺麗だし水も綺麗で……それこそほんと異世界って感じ」
普段のかっちりとした着こなしとは真逆のアロハシャツに、リゾート気分でひっかけてきたビーチサンダルで砂浜を歩きながら、そんな風に独り言ちて。確かに正しく異世界ではあるのだが、休暇をとっても仕事だと呼び出されることの多い梓にとっても、まさに楽園とも呼ぶべき場所かもしれない。
「はーあっつい……んでもちーと湿気少ないから、東京よりはマシかぁー」
梅雨も明けた沖縄はもはや夏同然。だが、南国らしいからっとした空気なのが幸いして、同じ暑さでも随分マシに思えるのだ。
空を見て、海を見て、砂浜を見て。砂浜ではまだ漣がせっせと何かを拾っている。
「なーに漣、拾いモン?」
「ふふ、見て見て梓」
波打ち際で漣が集めていたのは、貝殻。桜貝は絶対欲しいと探していたが、他にもピンク色のものを見つけ、せっせと籠に集めていたのだ。
「へぇ貝殻……やだぁめっちゃファンタジーじゃん」
その淡い桜色の貝たちを見て梓はそんな感想を漏らす。
「そう、ピンク尽くしー!」
ほくほくと戦利品を見せてくれる漣の笑顔があまりにも眩しくて。
「よしよし可愛い可愛い」
条件反射的にその頭を優しく撫でる梓だった。
「ここの貝殻は持って帰っていいんだって」
梓に優しく撫でられ、更に満面の幸せ笑顔になった漣は、籠の中の貝殻を愛おしそうに見つめた。その色は、時折見せる梓の瞳の色に似ていて。漣にとってより特別に感じるのだ。
そんな漣の様子を見て、梓も内心で安堵していた。
(「ここ最近ふと遠く見る時間多かったし、気が紛れてるなら何より――」)
時折物思いをしている様子の漣のことが気になっていた。けれど、こうしてのびのびと楽しむ姿を見ては、ここに二人で来れて良かったと思うのだ。
ふいに貝殻を手にした漣が、空と海の交わる水平線を眺めながら、ぽつりと言葉を零す。
「……丁度十年前だったんだ、去年が」
「は?」
唐突に紡がれた漣の言葉が予想外だったため、梓からはそんな気の抜けた声が漏れる。
「家族を失くして死にたくてどうしようもなかった日から、十年経って漸く抜けだし始めた時……梓と出逢った」
「え、待って。待って待って待って。そんな――」
漣の口からさらりと出た家族を亡くしたという事実。それはもちろん梓も知っていたけれど、それが十年経っても軽いものではないことも理解している。
交通事故により両親を同時に失い、そして大切な妹は、いなかったことにされた。
(「知ってはいたけど“いつだったか”を、俺は配慮してなかったかも」)
漣の様子に気づいていただけに悔しくて、彼がその間、どんな気持ちでいたのかを考えると、胸が苦しくなって息が詰まる心地がした。
「梓、覚えてる?」
漣が立ったライブステージに突如現れた淫魔。混乱する会場を収めるためにやってきた警察官――それが梓だった。
灼滅者として戦う力は持っていたけれど、猟兵に覚醒した漣を導いてくれたのは梓なのだ。
「ああ、もちろん」
その後猟兵として異世界にまで足を伸ばすことになって。
初めてまともに依頼で闘った。今まで通り過ぎてきた季節ごとのイベントも、梓のおかげでとても愉しくて。
「……10年後、大切な人に出逢えて、こんなに笑えるようになるんだよ、って、あの頃のオレに教えたい」
色彩を失っていたあの頃。けれど今、目の前に広がる空や海の青さも、桜色の貝も、おそろいのアロハシャツも、鮮やかに目の前に広がっている。
「……それに、両親にも。『その人と結婚することになった』って知ったら驚くだろうな」
そんな想像を巡らせるだけで、家族で平和に暮らしていたあの頃が優しく思い起こされて。今はもう悲しいだけの過去ではない。梓が傍にいてくれるから。
そっと漣は左手を空へと伸ばして。薬指に輝くのは、梓が贈ってくれた赤い宝石のついた指輪。
そのことが嬉しくて、漣は降ろした左手を梓に伸ばして、指と指を絡める恋人繋ぎをして。
梓は一度ぎゅっと握り返すと、その手を取り、薬指の辺りにそっと口づけを落とす。
「梓……?」
ほんのわずかに目を見開いて静かに驚く漣だったけれど、梓は愛しい恋人へと頷きを返す。
「――ねぇ漣、それ全部手紙にしよ」
「手紙に……?」
先程は、自分への不甲斐なさも感じた梓だったけれど、それでも漣がそのことを自分の前で口にしてくれたことが嬉しかった。
「そう、手紙。出すのは俺ン家だけど、漣の気持ち文字にして残すの」
今まで共に歩んできた軌跡を、もう一度振り返り、紡いでいく。
「折角だから漣の笑顔の写真も突っ込んで、さっき拾った貝だって突っ込んで……漣の思い出が、気持ちが、誰より輝くように」
その梓の言葉ひとつひとつを大切に噛みしめて、漣は泣きそうな笑顔で頷く。
「……ふふ。うん、それやろ」
早速スマートフォンのカメラを取り出すと、梓へと顔を寄せてカメラを構える。
「折角なら梓も映ってよ。ほら、笑顔ー!」
ぱしゃり、とシャッター音が響き渡れば、この瞬間の二人の笑顔が刻まれて。
「この海も一緒に撮りたいよね。あと桜貝も」
そうして今日の思い出をいっぱい一緒に収めて。そうしてしみじみと漣の胸を満たすのは、穏やかな幸福。
「……ありがとう、梓。オレと出逢ってくれて……隣にいてくれて」
「俺の方こそ、生きてくれてありがとう――漣」
出逢えた奇跡を、共に歩む軌跡に刻んで。
海と空が溶けあうはての楽園で、ゆっくりと二人の時間は過ぎていく――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『キャンプの夜を楽しもう』
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POW : ゲームやお喋りに興じる
SPD : 歌やダンスで盛り上がる
WIZ : 満天の星空を眺める
イラスト:真夜中二時過ぎ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●琉球の風を感じて
沖縄旅行もいよいよ最終日。引き続き、本島や離島で、ここでしか出来ない体験をするもよし。一緒には来れなかった大切な人たちにお土産を選ぶのもいいだろう。
どこで過ごそうとも、そこでは今しかできない最高の瞬間が訪れる。
初夏の眩しい太陽の下で、更なる最高の思い出を作ろう!
邨戸・嵐
泰然(f38325)と
昼に歩くのってほんとに珍しいから暑くて倒れそう
だけどプロのご飯も食べなきゃ帰れないよ
BBQも一日経ったらすっかり消化しちゃった
繁華街をうろついて賑わってるお店を探そう
レビューとかあんま見ないんだ
ご飯が美味しくて悪いことはないけどさ
たくさんひとがいるなら、そっちの方が俺の主食だからねえ
地元風の居酒屋で乾杯
見たことないメニューは全部頼んじゃおっと
グラスのなかは当然泡盛
泰然って何でも知ってるけど
こう言ういかにも南って感じのごはんも食べたことあるの?
あ、蛇の入ってるお酒があるんでしょ?気になってたんだ
俺が漬けられたら同じ味なのかな
飢えに飢えたらそのうち自分の尻尾齧り出すかもねえ
杜・泰然
嵐(f36333)と
まあ夜まで保たねえとは思ってたよ
アグー豚を丸ごと食べたところで
お前は満腹にはならねえだろ
せっかくなら酒が出る店に入るか
陽気な酔っ払いがいた方が
嵐の相手をしてくれるだろうからな
酒は俺も泡盛
夜とはいえまだ暑いしロックで飲むか
ツマミは海ぶどうと揚げたグルクン
このへんは味にクセも無いし食い易くて助かる
別に詳しかねえよ、一般知識レベルだ
沖縄自体そもそも初めてだしな
食べたことのない味は当然知らないし
その点においてはお前の方がよほど知ってるだろ
卓に並んだ料理の種類の多さにげんなりしつつ
…お前の悪食は知ってたが
まさか共食いも気にならねえとはな
お前が酒に浸けられても飲み干して出てくるだろうが
●シマーで乾杯
青い空と海が見渡せる沖縄のコテージの傍でBBQを楽しんだ翌日。
今日も太陽の陽射しは容赦なく、二人を照りつけ体力を奪っていく。
「昼に歩くのってほんとに珍しいから暑くて倒れそう」
満ちぬ腹を持て余し、いつか己を満たす一口を求め、雑踏と夜を選んで渡りを続けている邨戸・嵐(飢える・f36333)にとっては、日中出歩くということ自体が珍しいことで。
なるべく日陰を選んで歩いていても、高い気温に辟易しては、そんな言葉が漏れる。
「暑さには同感。俺も体が腐らないか、いよいよ心配になってくる」
不死の身体を持つ杜・泰然(停滞者・f38325)が、BBQの時にも口にしていた懸念を上げつつも、嵐と共にたくさんの店で賑わう通りを歩いて行く。
「……だけど、倒れてる場合じゃないね。プロのご飯も食べなきゃ帰れないよ」
なんとか気力を振り絞るように、嵐がそう声を出しては、自身のお腹の辺りをさする。
「BBQも一日経ったらすっかり消化しちゃった」
「……まあ夜まで保たねえとは思ってたよ」
相当の量を食べていたと思うが、もちろん嵐にとって満腹などということはないので、この状況を泰然も予想はしていた。
「アグー豚を丸ごと食べたところでお前は満腹にはならねえだろ」
「確かにそうだねえ……ね、この辺りで賑わってるお店を探そうよ」
ちょうどこの辺りは繁華街。飲食店もたくさんある。
「そうだな……目当ての店はあるのか?」
「ううん、特に。レビューとかあんま見ないんだ」
もちろん料理が美味しくて悪いことはないけれど、嵐にとっては賑わっているということの方が重要で。
「たくさんひとがいるなら、そっちの方が俺の主食だからねえ」
人間の感情を糧にする妖怪にとっては、そこにいる人々の感情もまた立派なご馳走なのだ。
「なるほどな」
ならばと、泰然は賑やかそうな店に焦点を当てて探すことにする。となれば、ここは居酒屋だろうか。
(「陽気な酔っ払いがいた方が、嵐の相手をしてくれるだろうからな」)
そんなことを考えながら、ふと目に留まった地元の居酒屋。店内からは明るい笑い声や威勢のいい店員の声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ!」
元気の良い声に出迎えられ、二人は勧められた席に着く。
「じゃあ、かんぱーい」
沖縄料理も豊富そうな地元感漂う居酒屋で、まずは泡盛で乾杯。
琉球諸島で作られる蒸留酒を泡盛と呼び、この居酒屋でも多くの客たちがグラスを傾けている。度数は高いものが多いが、口当たりは柔らかく、比較的飲みやすくはある。
ようやく日が傾き、夜へと向かっているが、それでもまだ暑さは残っている。泰然の飲み方はロックで、冷たい泡盛が熱を持った体を冷やしていく。
「やっぱり地元のお酒には地元の料理だよね。見たことないメニューは全部頼んじゃおっと」
興味津々にメニューを覗き込んでは、嵐は宣言通り片っ端から頼んでいく。最初につまみ用に頼んだ海ぶどうを口に運びつつ、その様子を横目で見やる泰然。
「ねえ、それは何?」
「こっちは海ぶどう。こっちは揚げたグルクン」
ぷちぷちした食感でほんのり塩気のある海ぶどうは、まさに沖縄名物。そしてグルクンは温暖な海域に生息する白身魚。唐揚げ以外にも刺身、塩焼き、塩煮と様々なグルクン料理が沖縄の食卓に並ぶという。
「このへんは味にクセも無いし食い易くて助かる」
ヤギ汁なんかも沖縄料理のレパートリーに入るけれど、あれはかなり好みが分かれる一品。
「泰然って何でも知ってるけど、こう言ういかにも南って感じのごはんも食べたことあるの?」
「別に詳しかねえよ、一般知識レベルだ」
沖縄自体がそもそも初めてだしな、と泰然は言い添えて。
そうして次々と運ばれてくる嵐が頼んだメニューに目をやる。
「食べたことのない味は当然知らないしな」
「そっか。じゃあ、これ食べてみる?」
そうして嵐が示したのは、ジーマーミ豆腐と豆腐よう。豆腐の島とも呼ばれることがあるほど、沖縄の豆腐は名物のひとつ。ゴーヤーチャンプルーなどに使われる島豆腐や、島豆腐を作る過程で海水やにがりを入れたゆし豆腐など四大豆腐が存在するのだ。
「これ、豆腐なのにもちもちしてるよ」
ほんのり甘くて食感が独特のジーマーミ豆腐は、ピーナッツの絞り汁にサツマイモのデンプンを加えて作られているのだが、酒のつまみとしてもなかなかいける。
「こっちは赤い豆腐か……」
泡盛や紅麹に島豆腐を漬け込み、長時間発酵させて作る豆腐ようは、ねっとりとした食感だが、こちらも酒によく合うと居酒屋では欠かせないメニューなのだ。
「これは前にどこかで食べたのに似てるかな?」
ラフテーをぱくりと食べ、ソーメンチャンプルーをもぐもぐしながら嵐が感想を述べる。
「味を知ってるかどうかという点においては、お前の方がよほど知ってるだろ」
「ん、そうかもしれないね」
たくさんの人々の賑やかな声や感情も喰らっているのか、美味しそうに平らげていく嵐を見て、泰然も泡盛を飲みながら、少しずつつまんでいく。
(「それにしても……大量だな」)
もずく酢に島らっきょう。ミミガーにてびち。沖縄の地魚の刺身に島ダコのカルパッチョ。タコライスやイカ墨焼きそばと沖縄料理がずらりと一堂に会している。
並んだ料理の種類の多さにややげんなりする泰然だった。
「泡盛も美味しいなあ。他にお酒は……あ、蛇の入ってるお酒があるんでしょ? 気になってたんだ」
メニューに載っているのは、ハブ酒。その名の通りハブ一匹をまるまる泡盛などに漬け込んだ酒で、沖縄の居酒屋においてはメジャーですらある。
「俺が漬けられたら同じ味なのかな? 飢えに飢えたらそのうち自分の尻尾齧り出すかもねえ」
「……お前の悪食は知ってたが……まさか共食いも気にならねえとはな」
酒になるぐらいだ。きっといい味がするのだろう。なら、己の尻尾も食材としてもありかもしれないと嵐は嘯いて。
「お前が酒に浸けられても飲み干して出てくるだろうが」
大人しく漬けられている様子が想像できなくて、泰然はそう言っては泡盛をぐいっと飲み干すのだった。
大成功
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アンナ・フランツウェイ
オリガ(f12132)と一緒
マリンスポーツ三昧の3日目が終わり、最終日。筋肉痛がある程度良くなった私は…国際通りに連れ出され、沖縄のスイーツ巡りをしていた。
色々食べ、最後に辿り着いたのは、沖縄で結構有名なパンケーキ店。どうやら私がジャムや果物が好きなのを知っているオリガが気を利かせてくれたみたい。
注文を聞かれたら、イチゴがたくさん入っているパンケーキを注文。パンケーキが来て食べての感想はただ一言。美味しい。だってパンケーキとか今まで食べた事なかったから。
そしてオリガに沖縄はどうだったかを聞かれる。最初は暑くて嫌だったけど、楽しい事を知ることが出来た。それにオリガがいたから…とても楽しかった。
オリガ・ホーリエル
アンナ(f03717)と一緒に!
ふふふ、やってきたわよ国際通り!色んなスイーツがあるみたいだし、食べ歩くわよ!行きましょアンナ!
黒糖や紅芋、マンゴーとかを使ったスイーツを一通り堪能したら、予約してある本命の店…有名なパンケーキ店へGO!アンナ果物とか好きだし、喜んでもらえると嬉しいわ!
アンナも注文するみたいだし私も注文。ここは豪勢に…ミックスフルーツとマンゴーのパンケーキを注文するわ!金額?結構するわよ?
食べ終わったら沖縄に来てどうだったかをアンナに聞く。普段からいろいろ連れまわしてるから、若干申し訳なく思っているの。…もし楽しかったと言ってもらえるのなら、これ以上に嬉しいことはないわ!
●奇跡の1マイルで出会うスイーツ
沖縄旅行最終日。前日はエメラルドグリーンの美しい海でマリンスポーツを思う存分楽しんだ。その後にやってくる筋肉痛の洗礼をしっかりと受けたけれど、今朝はだいぶん良くなってきたので、最終日の沖縄を楽しむために大きな通りへと繰り出して。
「わ、お店がいっぱい……」
両脇にヤシの木が植えられた広い通りを前に、アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)は、少し驚いたように緑の瞳を瞬かせていた。
「ふふふ、やってきたわよ国際通り!」
アンナをここまで連れ出したオリガ・ホーリエル(黒き天使と歩む快虐の魔王・f12132)は、そう得意げに宣言すると、アンナを振り返る。
「ここには色んなスイーツがあるみたいだし、食べ歩くわよ! 行きましょアンナ!」
「う、うん……!」
那覇空港からほど近い国際通りは、那覇市のメインストリートだ。全長約1.6kmある通りには、土産物屋やレストラン、雑貨屋に居酒屋など、約600ほどの店が並ぶ。
その中でもオリガのお目当てはスイーツだ。
「はい、これが沖縄名物のサーターアンダギー。プレーン以外にも黒糖味や紅芋味があるわね」
「ん、ドーナツみたい……さくっとして美味しい……」
まずは沖縄名物のサーターアンダギーの揚げたてを口にして。次にアメリカ生まれ、沖縄育ちのアイスクリームショップで、シークヮーサーや島パイン、塩ちんすこう味などもシェアして食べて、沖縄ならではの味を堪能する。
「フレッシュなフルーツも食べたいわよね」
トロピカルフルーツを売る果物店で、パインやマンゴー、ドラゴンフルーツなどのカットフルーツを買って食べ歩きをしては南国気分を味わって。
「うん、新鮮で美味しい」
アンナが美味しそうに頷く様子を嬉しそうに見守ったオリガは、「最後に本命に行くわよ」と宣言して、アンナの手を取った。
「本命……?」
不思議そうに首を傾げるアンナだが、二人がやって来たのは、南国の雰囲気を感じるパンケーキの店。
「アンナ、果物とか好きでしょ? 有名な店だし、喜んでもらえると嬉しいわ!」
「あ、私のために……?」
店に着けば、人気店らしく並んでいる客も多くいて。けれど予約を済ませてあるオリガは、すぐに店員に案内される。
(「私がジャムとか果物が好きなのを知っているから……気を利かせてくれたのかな」)
メニューを見れば、美味しそうなパンケーキにフルーツやクリームが乗っていて。トッピングなどの違いでいくつかメニューがあるようだ。
「さ、アンナはどれにする?」
「え……それじゃあ、このイチゴがたくさん入っているの……」
「ふふ、いいわね。それじゃあ私は……。そうね、ここは豪勢に……ミックスフルーツとマンゴーのパンケーキを注文するわ!」
「フルーツたくさん……やっぱりその分高かったりするの?」
「金額? 結構するわよ?」
そりゃあ、もちろんねと言いながらもオリガはにっこり。
「美味しいものが食べられるんだから、値段は二の次よ」
そう、オリガが見たいのは、アンナの喜ぶ顔なのだから。
そうして待つことしばし、運ばれてきたパンケーキを口にするなり、アンナは驚きと感動で目を輝かせていた。
「美味しい……」
「ふふ、良かったわ!」
焼き立てのふわふわの生地に、いちごと特製のクリームが乗っていて。甘さは控えめながら、添えられたソースがまた美味しさを引き立ててくれる。
アンナからは美味しい以外の言葉が出てこなかった。今までパンケーキというものを食べたことがなかったので、この夢のようなスイーツに心奪われてしまう。
「ね、来て良かったでしょ?」
フルーツたっぷりのパンケーキを口に運びながら、オリガも嬉しそうに微笑んで。別添えのはちみつもあるので、それをかけて最後までしっかり楽しむ。
二人が食べ終わったところで、オリガはアンナにこう訊ねる。
「それで、アンナは沖縄に来てどうだった?」
今回は――いや、今回もアンナの了承なく勝手にいろいろと連れまわしてしまった。そのことを申し訳なく思っていたオリガは、アンナの返答を待つ。
「沖縄……最初は暑くて嫌だったけど……」
けれど、海が綺麗な場所で、マリンスポーツを楽しむことが出来た。その他にも今までしたことのないことに挑戦することが出来た。
「……でも、楽しい事を知ることが出来たかな」
「そう、良かったわ!」
アンナの表情からも、楽しかったことが窺えて、オリガはほっと安堵し、そして満面の笑みを浮かべる。
「それにオリガがいたから……とても楽しかった」
そう言ってもらえるのが、何よりで。オリガにとってこれ以上に嬉しいことはない。
「もちろん私も楽しかったけど、アンナが楽しんでくれたのが何よりよ」
独特の歴史を歩んできた南国の島で、天使と魔王はひと夏の思い出を作るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
八坂・詩織
引き続き、白夜さん(f37728)と波照間島。
昨夜は宿に泊まり(部屋は別)、今日はニシ浜へ。
わぁ…これがハテルマブルー!星空も素晴らしかったけど、海も綺麗ですね。日本じゃないみたい…(持参した一眼レフで写真撮りつつ)
仕方ないですね、じゃあ白夜さんは日陰で休んでてください。カメラ預かっててもらえると助かります。
去年の水着コンで着た瑠璃色のビキニに着替え、しばしシュノーケリングを楽しむ。
一人でも楽しいけど…
海から上がり、上着を羽織って白夜さんのところへ。
泳がなくていいので一緒に来ませんか?足を浸すだけでも気持ちいいですよ。
海に連れだし、波打ち際で足を浸しながら散歩。今度は海水浴できるといいですね。
鳥羽・白夜
八坂(f37720)と引き続き波照間島。
昨夜はそれぞれ別に部屋をとって泊まり、朝八坂に起こされてニシ浜へ。
お前元気だな…(注:低血圧で朝に弱い)
たしかに綺麗な海だけど、俺水着持ってねえし海水浴は無理だな。
そうさせてもらうわ、暑いし。
カメラを預かり近くの休憩場所で持参のトマトジュースを飲みつつ、ぼんやり海を眺めてるうちにうとうと…してたら急に声かけられて少々びっくり。
わっ…!すまんちょっと寝てた。あ、カメラは無事だから!
んー…まあ、足浸けるくらいならいいか…
後輩に連れられ海に入れば思いの外気持ちが良いもので。あー涼しい!
いや俺泳ぎ下手だしこれくらいがちょうどいいよ、と話しながら波打ち際を歩く。
●ハテルマブルーの煌めき
沖縄旅行最終日。日本最南端の島で、まるで降ってくるような星空を堪能し、そのまま波照間島に宿泊した八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は、窓から差し込む朝の陽射しを浴び、大きく伸びをした。
「今日は海に行きましょうか」
昨夜一緒に満天の星空を見た鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)が、起きてこない様子に、詩織は白夜の部屋のドアをノックする。
「白夜さん、起きていますか?」
しばらくしてから眠そうな声で「今行く」と返事が返って来た。
波照間島の宿泊施設は民宿的なものが多く、アットホームな雰囲気がある。地元食材を使った朝食を食べ、二人が向かう先は、波照間島において、星空とともにその美しさが謳われるニシ浜。
「わぁ……これがハテルマブルー!」
目の前に広がるのは、どこまでも続く白い砂浜に、鮮やかなエメラルドグリーンの海とコバルトブルーの空が混ざり合う、まさに絶景。
「星空も素晴らしかったけど、海も綺麗ですね。日本じゃないみたい……」
思わず駆けだした詩織が持参した一眼レフカメラで早速この美しい景色を記録していく。
「お前元気だな……」
詩織に起こされなければ、そのまま宿で眠っていたかもしれない白夜は、朝から活動的な詩織の様子に思わずそんな言葉が漏れて。もともと低血圧で朝に弱い白夜は、景色は綺麗だとは思いつつも、テンションが爆上がりすることもなく、その様子を眺めていた。
「これほど綺麗な海なんですから、白夜さんも泳いでみませんか?」
ニシ浜は遠浅なので泳ぎやすく、波照間島に生息する貴重な生き物も間近で見られ、泳いだり、釣りをするのも人気なのだ。
「たしかに綺麗な海だけど……俺水着持ってねえし海水浴は無理だな」
「そうですか……仕方ないですね。じゃあ白夜さんは日陰で休んでてください」
まだ眠そうな白夜にそう声をかけ、詩織は準備してきたシュノーケリングのセットを取り出す。
「そうさせてもらうわ、暑いし」
「あ、カメラ預かっててもらえると助かります」
「ん、了解」
そうして詩織は、昨年の水着コンテストでも披露した、美しい星空を想起させる瑠璃色のビキニに着替え、早速シュノーケリングを開始する。
透明度の高い美しい海の中を覗いてみれば、南国らしいカラフルな魚たちが気持ちよさそうに優雅に泳いでいる。エメラルドグリーンの視界の中、サンゴ礁や魚たちを見て回り、美しい自然を体感する。
(「そういえば、運が良ければウミガメに会えることもあるとか」)
サンゴ礁の影からひょっこり顔を出さないかと、そんな期待を胸に泳いでいればあっという間に時間が過ぎていく。
一方、屋根のある休憩場所で腰を下ろし、持参したソウルフードでもあるトマトジュースを飲んでいた白夜もまた、のんびりと海を眺めていた。預かったカメラをしっかりと抱えつつ、しかし自分から動くつもりはなく、波音を聴いているうちに、やさしいゆらぎのリズムに眠気を誘われて……。
「……さん、白夜さん?」
「わっ……!」
うとうとしていたところに声をかけられ、慌てて目を開けては返事をする。
「八坂か……すまん、ちょっと寝てた。あ、カメラは無事だから!」
眠っていてもしっかりと抱えたカメラを見せては、仕事は果たしていたと告げる。シュノーケリングをしていた詩織は、水着の上に上着を羽織った格好をしていて、白夜の様子を見てくすくす笑う。
「波音が子守唄になったのかもしれませんね。白夜さん、泳がなくていいので一緒に来ませんか?」
シュノーケリングは一人でも楽しかったけれど、この美しい海を一緒に共有できればもっと楽しいと思うから。
「足を浸すだけでも気持ちいいですよ」
「んー……まあ、足浸けるくらいならいいか……」
水着なしで泳ぐという気にはなれないけれど、確かに足を海に浸すくらいならばと白夜は腰を上げた。
「良かった。あ、カメラありがとうございます」
預けていたカメラを受け取り、詩織は美しい白い砂浜を歩き、波打ち際へと白夜を連れていく。
裸足になった白夜は寄せては返す波の中、波打ち際を散歩すれば、思いの外気持ちが良くて。
「あー涼しい!」
「ね、気持ちいいでしょう?」
すっかり目は覚めたのか、白夜の明るい声に詩織はにっこりと笑い、海を指差す。
「海の中にはたくさんの魚たちがいたんですよ。時折、ウミガメもやってくるそうです」
「へー、ウミガメも……」
「白夜さんも、今度は海水浴できるといいですね」
「いや俺泳ぎ下手だしこれくらいがちょうどいいよ」
これで充分だと頷いた白夜は海を眺めながらあることに気づく。
「ん? なんかさっきと色が変わってないか?」
「ここの海は、光の加減で、刻々と色が変わるんです。透明度が高く、宝石のように輝く海の碧さをハテルマブルーと呼ぶんですよ」
「夜の星もすごいけど、昼の海もすごいんだな」
後輩は星だけでなく、海の美しい景色も知っているのかと白夜は感心しつつ、ゆっくりと波打ち際を歩いては、この絶景と心地よさを堪能するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
最終日は久高島の宿泊施設でのんびりすることにしたわ♪
パジャマ姿でずーっとレーちゃんの傍から離れないわよ。
背後からぎゅーってしてると心地よくって眠くなっちゃうわ。
…ふかふかお布団とレーちゃんの匂いで…ついうとうとと…。
…はっ!いけないわ!レーちゃんを堪能するって決めたのに!
レーちゃんを更にぎゅーって抱きしめて眠気を飛ばさないと!
「ねえねえ、なに読んでるの? レーちゃん」
背後だけじゃつまらなくなってきたから前に移動するわ。
本とレーちゃんの空いてる隙間に身体をねじ込むわよ。
難しそうな内容だけど何となく解るわ。これって…。
「…レーちゃん。精霊さんを視たり、お話したいの?」
『魔術を組み立てる時に役立つ』とか説明してくれたけど。
勿論。活用するために読んでるのは本当なんだろうけど…。
んー。久々に同種さん視て浮かれ過ぎたかしら?あたし。
可愛いって想いとちょっとの申し訳なさで抱きしめるわね。
レーちゃんは『なんだ?』って驚いてたけど。
「今度、あたしの精霊力を使った魔術も開発して♪」
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
最終日。ゆっくりと島のホテルで過ごすことにした。
十分観光はしたし『神の島』でくつろぐのもいいだろう。
普段はしないがベットの中で本を読むことにした。
目覚めた露は後ろから抱き着いてくるが慣れている。
ん。手に取ったのは偶然にも精霊に関する内容で。
そういえばこの手の術は手持ちに少ないと思い立つ。
…なるほど。面白いな…。ふむ…。…。
「…文字がぶれる。余り動かないでくれ。露…」
「こら…。文字が読めない…」
露が視界を遮ってきて読書が中断される。全く。
暫くして露は心配そうな微妙な表情で振り返って。
『精霊を視たり話がしたい?』と聞いてきた。
そんな気はなかったんだがな…やれやれ…。
「いや。新しい術の開発に役立つと考えただけだ。
…精霊の視認は、君一人で十分に満足だよ。露」
私の言葉をどう解釈したのか思い切り抱きしめられる。
む?言い方が悪かったのか?それとも…通じてない?
…まあ。他の精霊が視認できないのは残念ではあるが…。
何?露の精霊力を利用した魔術を創ってくれ?
「…考えておこう…」
●神の島でくつろぎのひととき
沖縄旅行最終日は、前日に訪れた神の島とも呼ばれる久高島でのんびり過ごすことにして。
「レーちゃんが宿を取ってくれて良かったわー♪」
宿の窓から差し込む朝日を浴びては、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)はうーんと伸びをした。
「露にとっては居心地の良い島だろうからな。気に入ったなら何よりだ」
露にどこに行きたいと問われ、この島の名を上げたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、ご機嫌な露の様子にそう言葉を返す。
昨日は二人で歩いてあちこち回ってみたが、神の島の名にふさわしい、神秘的な力を随所に感じたものだ。
「ええ、ええ! だって昨日は綺麗な夕日も見れたし、夜の満天の星空もお泊りしないと見れないものだからね♪」
日帰りでも充分楽しめる小さな島ではあるので、最終の船便が行ってしまえば、残るのは少しの観光客と島の人々のみ。この島に泊まる者だけが見られる沈みゆく夕日に余計な明かりがないからこその満天の星空。
「この島での月光浴はまた力をもらえる感じがしたわ♪」
数千年もの間、月光だけを浴び続けたブルームーンストーンが本体のヤドリガミである露は満足げだ。
「ああ、夕日も星空もまた美しかったな……」
自然に満ちる力と特別なこの地の神秘性。それらを感じたシビラもそう言って頷くのだった。
そうして二人で語り合ってから、次はこの宿で食べられる朝食を取るために部屋を出る。
宿のシンボルでもあるガジュマルの樹の下で、特製の朝食をいただけるのだ。
露天の席に着けば、出てきたのは、自家製の酵母パンと、庭で採れた野菜がたっぷり入ったスープ。さらに自家栽培の薬草茶もつけられるということで、興味津々なシビラはもちろんそれもオーダーしていた。
「緑に囲まれての朝ごはん、素敵だわ♪」
「ああ……自家製のパンも、薬草茶も楽しめるとは……」
特に自らが管理する薬草園を持っているシビラにとって、ポットで提供される薬草茶はとても興味深いものだった。
「うむ、良い香りだ。ブレンドすることにより、香りと効能どちらも素晴らしいものになっている」
沖縄で古くから薬草として伝わるキク科の野菜『ハンダマ』は、不老長寿や血の薬として食べられてきた。鉄分やポリフェノールも豊富で、そのハンダマティーに柚子陳皮を加えたブレンドは爽やかな香りも楽しめる。
「ふふ、レーちゃん良かったわね♪」
酵母パンとスープも美味しいわと露もご機嫌で。二人は食事を済ませると、部屋へと帰っていく。
せっかくなので、最後の日はレイトチェックアウトをお願いして、宿でゆっくりと過ごすことにしたのだ。
「十分観光はしたし『神の島』でくつろぐのもいいだろう」
「そうね、そうね♪」
リラックスモードのまま、露はパジャマ姿でシビラに寄り添う。
シビラの過ごし方はというと、いつもならすることのない、ベッドの中で読書するというもの。これもまたシビラにとって最高に贅沢な時間なのだ。
「ふふ、レーちゃん♪」
そして露にとって幸せな時間はやはりシビラをぎゅーっとすること。背後から抱き着いてはその心地よさを堪能する。
(「んー、ふかふかのお布団とレーちゃんの匂い……幸せ……」)
あまりの心地よさについうとうとしてしまう露だった。
シビラはといえば、露の行動は予測済みというかもはや慣れているので、気にせず本を読み進めている。
(「……はっ! いけないわ! レーちゃんを堪能するって決めたのに!」)
思わず寝入りかけた露だが、はっと目を見開くと、眠気を飛ばそうとさらにシビラを強く抱きしめにかかる。
「……文字がぶれる。余り動かないでくれ。露……」
強めの締めつけを感じつつも、シビラは本の内容が面白く興味深いものだったので、あまり気にせず夢中で読み進めている。ただ文字が読めなくなるのは困る。
「ねえねえ、なに読んでるの? レーちゃん」
背中を抱き締めるだけじゃ少し物足りなくなった露が声をかけ、シビラの前へと移動する。夢中で本を読んでいるシビラと本の間にある隙間に身体を捻じ込み、ぎゅっとくっつく。
「なんだか難しそうね。あら、でもこれって……」
ちらりと覗き見た本の内容から、露はそれが何の本なのかを察した。
「……レーちゃん。精霊さんを視たり、お話したいの?」
「こら……。文字が読めない……」
視界に映るものが文字から露の顔へと移り変わり、シビラは思わずそう苦言を呈してから、先ほどの露の質問に応える。
「ん、これか? 確かに精霊に関する本だが、いくつか持ってきたうち、たまたまこれを手にしただけだ」
昨日のこともあり、露が視える精霊たちをシビラが視えないことを気にしていると思ったようだが、特段そういうわけではなかった。
「この手の術は手持ちに少ないと思って、読み進めるほど面白くなっていたところだ」
だから読書の邪魔をしないでくれと暗に言っているのだが、なぜだか露は納得せず、どこか心配そうな表情でこちらを見てくる。
「ほんとに?」
露としては昨日はしゃぎすぎてしまっただろうかと内心反省していて。シンパシーを感じる同種の存在を見て浮かれてしまったのは確かだけれど、それがシビラにはつまらなかったのではと心配になるのだ。
(「どうやら本当に心配しているようだな……そんな気はなかったんだがな……やれやれ……」)
シビラとしては本当に他意はないのだが、取り急ぎ露の心配は取り除いてやるべきだろう。
「昨日も言ったが、露が解説をしてくれるから視えなくても問題ない。精霊に関する知識が増えれば、新しい術の開発に役立つと考えただけだ」
実際、シビラの頭の中では、この知識を活かしてどう新しい術を開発しようかと既にいくつか案が浮かび、早く試してみたい気持ちと、もっと本を読み進めたい気持ちでいっぱいなのだ。
「本当に? 寂しかったりしない?」
「ああ、精霊の視認は、君一人で十分に満足だよ。露」
シビラの言葉はきっと本心でもあるのだろうし、シビラのことだから魔術の組み立てに活用するために読んでいるというのも本当なのだろう。
けれど露の心には何かが引っかかる。やはり昨日浮かれすぎたことが少なからず影響しているような気がして。
もしそうなのだとしたら、シビラがとても可愛く思えるし、露は露で少しの申し訳なさを胸に抱いて、その気持ちのままシビラをぎゅっと抱きしめる。
(「む? 言い方が悪かったのか? それとも……通じてない?」)
無言で力強く抱きしめられ、どうやら自分の言いたいことを受け止めてもらえていないようだと感じたシビラは頬をかく。
(「……まあ。他の精霊が視認できないのは残念ではあるが……」)
けれど、ほとんどの者がシビラと同じで精霊を視認できるわけではない。露が特別であり、それは誇ってよいことだと思うし、シビラにその様子を伝えてくれればそれで充分だ。
「どうしたんだ、露……?」
しばらく無言で抱きしめられ続けていたシビラが困惑気味にそう問いかけると、露はぱっと顔を上げてこう告げた。
「ねえ、レーちゃん。魔術の組み立てに役立つのなら、今度、あたしの精霊力を使った魔術も開発して♪」
「何? 露の精霊力を利用した魔術を?」
「うん、そうよ♪ きっとレーちゃんだもの素敵なものを創ってくれるはず♪ 楽しみだわー♪」
返事を聞く前から露はノリノリ。どんなものかしらと想像を膨らませて幸せそうな笑顔を見せている。
シビラは自分の魔術でと考えていたが、確かに露ならばまた様々な可能性がありそうだ。
「……考えておこう……」
けれど、その前にこの本を読み切ってしまいたい。
「とりあえず、このままでは本が読めない。どいてくれないか?」
視界に入ったままの露が満面の笑みで「はーい」と言ってまた背中へと移動していき、いつものようにぎゅっと抱きしめられる力を背中に感じたシビラは、やれやれと息を吐き出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ビスマス・テルマール
【🐟️×🍄×🥟】
あやかりの社キャンプ場を今回選んでみましたが、近くで食材の買い出しが出来て、図書館やカフェと施設が豊かで目移りしそうです
至る所で沖縄情緒な景色を感じますね
ここでは、グルクン等の沖縄の魚で
さんが焼きを炭火焼きで……薬膳味噌や柚子味噌を入れたパンケーキをスキレットで焼いて『料理』してみましょうか
エミリさんはタコライスと、タコミートを使った餃子も美味しそうですね
アメリさんは、たもぎ茸や黒あわび茸をBBQに生かすのですね
『炭焼きの網焼きも情緒はあるが、内輪で仰ぐのは大変じゃ……ウルシ、お主、美味しそうな匂いは解るが大人しく内輪で仰ぐのじゃ!』
何だか微笑ましいですが、ルイさんもウルシさんも、上手いやっているので任せても良さそうでしょうか?
あっ、創良さんもここに来ていたんですね、もしかしてここの図書館に興味が?わたし達も後で見てみたいですが
良ければ、少し食べていきます?
パンケーキも上手く焼けてきましたね、スキレットで焼いてみましたが、どうでしょう?
※アドリブ絡み掛け合い歓迎
エミリロット・エカルネージュ
【🐟️×🍄×🥟】
あやかりの社かぁ、ここの環境も中々良さそうだね、BBQとか終わったら、色々施設を回ってみようかな
ビスちゃんは……さんが焼きは確かに炭焼きも美味しそうだし、パンケーキをスキレットで?もしかして味噌入り?
アメリちゃんは、あの茸をBBQに使うんだ、網焼きや鉄板焼にも相性は良いと聞くし適任かもね、見栄えも鮮やかそうだし
ボクはタコライスをスキレットで焼いて、余ったタコミートを餃子に『料理』したり……餃子の皮でタコスにしてみようかな
デザートはマンゴーやパイナップル使ったスイーツ餃子もUC『早業&料理』しておこうっと
あっ、ルイさんとウルシくんがさんが焼きを内輪で、何だか可愛らしいなぁ……もしかしてシャオロンも混ざりたい?
あっ、創良さんいらっしゃい
そう言えば、このキャンプ場図書館もあったよね、ボクも後で料理関係の本を見て回るかな?一時的に借りて外に持ち出せないのは残念だけど
あっ、パンケーキもBBQもボクのも良い感じかな?創良さんも良かったらって思うよ。
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
アメリ・ハーベスティア
【🐟️×🍄×🥟】
図書館……キャンプ場としては珍しいのですが、これは沖縄の茸について良い情報が知れそうなのは嬉しいのです
BBQしたら、後でじっくり本の虫に……その前に『料理』しなくてはですね
『アメリらしいね、アメリはたもぎ茸や黒あわび茸とかをBBQに使うのかい?』
はい、それに向いてるらしいですし、色々な料理にも向いてるので、BBQに使っても美味しい筈なのです
炭焼きで昨日作った茸入り肉巻きおにぎりを……『グルメ知識&情報収集』して料理しがいあるです
ビスちゃんは、炭焼きのさんが焼きも美味しそうですが、パンケーキ……はわ、味噌ですね
『パンケーキにしても美味しそうだね、サーターアンダギーも美味しかったし……エミリはタコライスを餃子に、アメリの茸入れても良さそうだね』
アメリもそう思うです、良かったら使って下さい
はわっ!創良さんも来ていたのですね、成る程……確か図書館に関わる仕事をしていたのなら、納得なのです
丁度、色々美味しそうに出来たのでアメリも食べて欲しいのです
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
●自然と文化にあやかって
「沖縄旅行もいよいよ最終日ですね」
昨日に引き続き、好天の沖縄の空の下で、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、やってきたキャンプ場を前にそう言っては微笑む。
「うん、毎日楽しかったけど……最終日も沖縄の食材で美味しい料理作っちゃおう!」
それがボクたちらしいよね、と皆へと笑いかけるエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)の横で、シャオロンも元気に『ちゃー♪』と返事をした。
「というわけでやってきのは、沖縄本島のキャンプ場なのですね」
『ここ、キャンプ場だけじゃなくて、いろいろな施設があるみたいだね!』
緑あふれる見晴らしの良い場所にあるキャンプサイトから辺りの景色を眺めていたアメリ・ハーベスティア(キノコ好きの「よいこ」な地竜の末裔・f38550)の言葉に、ラングリフも同じように辺りを見渡しては頷いた。
「ランさん、そうなんです。今回、この『あやかりの杜』キャンプ場を選んでみましたが……近くで食材の買い出しも出来ますし、敷地内に図書館やカフェもあって、施設が豊かで目移りしそうです」
ここを選んだビスマスが、にこにことラングリフに頷くと、同じく見晴らしの良い場所からの眺めを楽しむ。
「至る所で沖縄情緒な景色を感じますね」
「あやかりの社かぁ、ここの環境も中々良さそうだね」
那覇空港からは車で一時間弱ほどの距離にあるあやかりの杜は、図書館に体験学習施設、宿泊施設、キャンプ場を有する複合施設。あやかりとは、先人にあやかり、異文化にあやかり、という意味からつけられたまさに学びのための場所。
「はわ、図書館もあるのですか……キャンプ場としては珍しいのですが、これは沖縄の茸について良い情報が知れそうなのは嬉しいのです」
『うん、きっといい本に出会えるんじゃないかな?』
「ボクたちは地元の人じゃないし、本を借りて持ち出すことは出来ないみたいだけど、施設の中で読むことは出来るみたいだよね」
エミリロットも気になっていたようで、アメリの言葉に同じ気持ちだと頷いた。
「はい、楽しみなのです。では、BBQしたら、後でじっくり本の虫に……その前に料理しなくてはですね」
「ふふ、二人とも研究熱心ですね。図書館にはあとで向かいましょうか。まずはここの炊事場を借りて、料理をはじめましょう」
既に必要な食材は買い出しも含め準備してあるので、三人はキャンプサイトにテントを設営してから炊事場で料理を始める。
「さて、では今日も沖縄の食材を使って料理していきましょうか」
「ビスちゃんは今日もなめろう?」
昨日は沖縄の地魚を使ったなめろうがとても美味しかった。薬膳味噌も利いていて、いつもとはまた一味違っていたのだ。
「今日はさんが焼きにするつもりです。炭火で焼いてみようと思いまして」
「わあ、いいね!」
また違うアレンジにエミリロットも思わず笑顔になる。炭火で焼くとまた美味しそうだ。
「魚はグルクンにしてみました」
「ふふ、いいね。アメリちゃんは何を作るの?」
「はい、今日はキャンプらしくBBQにするのです」
『その後は、図書館で勉強だっけ……アメリらしいね。それで、アメリはたもぎ茸や黒あわび茸とかをBBQに使うのかい?』
先程の言葉を思い出しながらラングリフが訊ねれば、アメリは元気よく返事をして。
「はい、それに向いてるらしいですし。他にも色々な料理にも向いてるので、BBQに使っても美味しい筈なのです」
昨日は炊き込みご飯に使った沖縄のきのこたち。それをまた別の料理にして食べる楽しみがあるとアメリもわくわくしているようだ。
「たもぎ茸や黒あわび茸をBBQに生かすのですね」
「アメリちゃんは、あの茸をBBQに使うんだ。網焼きや鉄板焼にも相性は良いと聞くし適任かもね。見栄えも鮮やかそうだし」
昨日も食べた美味しい沖縄のきのこたち。ビスマスとエミリロットも興味津々の様子で見つめる中、アメリはきのこを串に刺していく。
「ふふ、楽しみにしていてくださいなのです」
着々と準備が整い、炭の準備も済み、焼き場は温まっている。
「さんが焼きを炭焼きにするのも美味しそうだね。あれ、スキレットも?」
ビスマスがスキレットを手にしているのを見て、エミリロットはおや、と思って訊ねる。
「はい、こちらはパンケーキを作ろうとおもいまして」
その返答に、すぐにエミリロットはある可能性に気づいた。
「もしかして味噌入り?」
「さすがエミリさん。ご名答です」
「はわ、やはり味噌ですか」
昨日作った味噌を使ったサーターアンダギーに可能性を見出したビスマスは、また新たなメニューに挑戦するようだ。
『パンケーキにしても美味しそうだね、サーターアンダギーも美味しかったし……』
「確かにそうなのです!」
昨日の流れがあるからこそ、納得のチョイスである。
「ボクもスキレットを使うんだけど……今回はタコライスを作ってみるよ」
「ああ、沖縄の名物ですね」
メキシコ料理であるタコスの具材をご飯の上に乗せたタコライスは、アメリカ統治下の沖縄で生まれ、今や沖縄のご当地メニューとして人気が高い。
「そう! 余ったタコミートは餃子にしてもいいし。餃子の皮を使ってタコスにしてもいいよね」
「ひき肉を使う料理ですから、餃子との親和性も高いですね」
ひき肉と玉ねぎを使い、それをチリパウダーやブラックペッパーなどのスパイスで味付けするタコミートはスパイシーな味わい。いつもと違う餃子が楽しめそうだ。
「はわ、タコミートでたくさんの料理が出来るのですね!」
それひとつで様々なレパートリーへと派生させることが出来るタコミートの可能性にアメリも瞳を輝かせる。
『そうだ、エミリがタコミートを餃子にするんだったら、アメリの茸入れても良さそうだね』
「アメリもそう思うです、良かったら使って下さい」
「わ、ありがと! それじゃあありがたく使わせてもらうとして……それからもちろんデザートにはスイーツ餃子も考えてるよ!」
「はわ、フルコースなのです!」
「これは出来上がりが楽しみですね」
そうしてそれぞれの料理を手際よく調理すれば、辺りには楽し気な話し声と良い香りが広がっていく。
「アメリは昨日作った茸入り肉巻きおにぎりを炭焼きで焼いていくのです」
沖縄での新しいきのことの出会いを通じ、どんな料理に合うのかもたくさん調べて勉強した。炭火で焼くと、また昨日とは違う発見があるだろう。
「料理しがいあるのです」
アメリが肉巻きおにぎりを焼いているその横で、何やら賑やかな声が聞こえてくる。
『炭焼きの網焼きも情緒はあるが、うちわで仰ぐのは大変じゃ……』
ハリネズミ姿のルイが器用にうちわを手に持っては、炭焼きの手伝いをしている。
『ウルシ、お主、美味しそうな匂いは解るが大人しくうちわで仰ぐのじゃ!』
隣にいるウルシが美味しそうな匂いにうちわを持つ手を止めている姿をルイが叱責する。
「何だか微笑ましいですが……ルイさんもウルシさんも、上手にやっているので任せても良さそうでしょうか?」
『あい、任された。大変ではあるが、上手といってもらえたからには、やらんわけにはいかんじゃろ。あとで美味しいさんが焼きを食べさせてもらうのじゃ』
「はい、ルイさんとウルシさんが頑張ってくれているのですから、もちろんです」
その言葉を聞けば、ウルシはやる気を出したようにせっせとうちわで扇ぎ出した。
『全く、ウルシときたら……』
そうぶつぶつ言いながらも、ルイの手は止まらない。
「ルイさんとウルシくんが、さんが焼きをうちわで扇ぐの手伝ってるんだね。何だか可愛らしいなぁ……」
その様子を微笑ましく見ていたエミリロットが手元のスキレットに視線を戻せば、何やらうらやましそうにそちらを見ている別の視線に気づく。
「もしかしてシャオロンも混ざりたい?」
『ちゃー♪』
うずうずとした様子のシャオロンへと微笑みを返しながら、エミリロットはビスマスの方を向く。
「ビスちゃん、まだうちわあるかな?」
「あ、ここにありますよ」
「じゃあ、シャオロンもお願いね!」
小ぶりのうちわを手渡せば、待ってましたとばかりに張り切るシャオロン。
「ふふ、よろしくお願いします」
「はわ、いい香りがここまで漂ってくるのです……」
さんが焼きのいい香りに加え、スキレットには味噌を使ったパンケーキ。
「さあ、ボクもタコライスにタコミート餃子、餃子タコスが完成したし、スイーツ餃子を作ろうかな」
沖縄らしくマンゴーやパイナップルを使ったスイーツ餃子をエミリロットは手早く仕上げていく。
「アメリもいい感じに出来たのです」
焼き上がった炭焼きのきのこ串と肉巻きおにぎりにアメリもご満悦の様子。
『うんうん、美味しそうに出来たね!』
「楽しそうな声と美味しそうな匂いがするからひょっとしてと思ったら……みんな、楽しんでるようだね」
そこへかけられた声に皆が同時に振り返る。
「あっ、創良さんもここに来ていたんですね」
先日も餃子フェスの折に一緒にりんご飴を食べた橘・創良(静謐の泉・f43923)がにこにこと笑顔を浮かべ、こちらに近づいてきていた。
「あっ、創良さんいらっしゃい」
「はわっ! 創良さんも来ていたのですね」
「もしかしてここの図書館に興味が? わたし達も後で見てみたいと思っていたんです」
ビスマスがぴんときてそう訊ねると、創良はそうなんだと頷いた。
「僕は司書の仕事をしているから、こんな場所があると聞いて気になって来てみたんだ。みんなも興味があるんだね」
武蔵坂学園では図書館学部を卒業後、司書として働く創良にとって、やはりここは気になる場所だったようだ。
「成る程……図書館に関わる仕事をしていたのなら、納得なのです」
「うんうん、このキャンプ場、図書館もあるもんね。ボクも後で料理関係の本を見て回ろうかと思ってたんだ」
「アメリもです! お料理も出来て、図書館で学ぶことも出来る……とっても素敵なのです」
『さすがアメリだね!』
職業柄、本に興味を持ってくれることが嬉しくて、創良は皆の反応に微笑む。
「うん、僕はさっき行って来たんだけど、すごく良かったよ。子どもたちもたくさん通ってるみたいで」
「現地の子にも人気なんだね。ボクたちは貸し出しはできないから、外に持ち出せないのは残念だけど……」
「そうだね、それでもこうして開放してくれるだけでもありがたいよね」
「はい、あとでわたし達も行ってみましょうか……と、その前に。創良さんも、良ければ、少し食べていきます?」
図書館も気になるが、まずはこの出来立ての料理たちを楽しんでから。ちょうどいいところだと、ビスマスは創良も一緒にどうかと誘いかける。
「え、いいの?」
「はいです。丁度、色々美味しそうに出来たのでアメリも食べて欲しいのです」
「うん、ビスちゃんのパンケーキもアメリちゃんのBBQも、ボクのタコスな餃子たちも良い感じに出来たからね。良かったらって思うよ」
そう、皆に声をかけてもらえれば、遠慮がちだった創良もそれじゃあと頷いて。
「お言葉に甘えていただこうかな」
『ほっほ、さんが焼きも上手く焼けたぞい!』
『ちゃ~♪』
賑やかな声にも背中を押され、創良はご相伴に預かることにした。
見晴らしのいいキャンプサイトに完成した料理を運んで、テーブルの上にずらりと並べていく。
「これはタコライス、こっちはタコミート餃子で、こっちは餃子タコスだよ」
アイデア抜群のキャンプ料理は、見た目も華やか。味はもちろん抜群で。
「とっても美味しいのです」
『アメリのキノコもいい味だしてるね』
「うん、アメリちゃんありがとうね! キノコのBBQも美味しいね。それぞれ香りや歯ごたえが違って、でも風味がしっかりあって」
「はい、アメリも勉強になるのです。あ、創良さんこれは茸の炊き込みご飯で作った肉巻きおにぎりです」
「ありがとう。わあ、炊き込みご飯の肉巻きおにぎりは初めて食べたけど……とっても美味しいね。これは沖縄の食材を使ってるの?」
「はい。アグー豚も茸も地元のものを使ってみました」
せっかくの沖縄旅行ですから、とアメリはにっこりと微笑んで。そうしてたくさん勉強もしたのです、と大切なノートを見せてくれた。
「さんが焼きに使った魚も沖縄のグルクンです。こちらのパンケーキには、薬膳味噌や柚子味噌を入れて……スキレットで焼いてみましたが、どうでしょう?」
「すごいね、ちゃんとキャンプ料理になって。みんな本当に料理が上手なんだね」
さんが焼きもパンケーキも美味しいと創良が微笑めば、ルイもそうだろうと胸を張っていた。
「はい、ルイさんもウルシさんもお手伝いありがとうございます」
さんが焼きを幸せそうに頬張るウルシと、餃子タコスの味にうんうんと頷くルイ。その姿は自然と皆の頬を緩ませる。
「スイーツ餃子もあるからね!」
『ちゃ~♪』
『アメリ、僕も食べたい!』
「はい、ランちゃん。あーんなのです」
賑やかな声に包まれ、美味しい料理を堪能したあとは、図書館で本に囲まれて過ごすひとときが待っているのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・葵桜
【二桜】
姫ちゃんと一緒に
国際通り…って思ったけど、せっかくだからここに行こう、浮島通り!
国際通りから一本入ったところにあるんだよ
沖縄っぽいデザインのアクセサリとか洋服を旅行記念で買って
ホタルグラスのイヤリングもお揃いにしたいな
あ、確かにお土産いいね
私はおばあちゃんと、エリシャさんにもお土産しよーっと!
あとねー、素敵なカフェがあるらしいからそこいこ!
クラゲの幼生の名前がカフェ名になってて、いろんな本があって雰囲気いいっぽいよ
姫ちゃん好きそうだなーって
え、石垣島でスイーツ巡りしたの?
やった、美味しいのお裾分け嬉しい!
夜の夜光虫はいいよね
今度は私と一緒にシュノーケリングとかダイビング行こうね♪
私は竹富島満喫してきたよ!
一人じゃつまんないから、身内召喚してみた!
昼は観光で夜はもーあしびーしておもしろかったー!
本来のもーあしびー? そーいえばそんな感じだったよね
誘ったのはあんまり深く考えてなかったけど
んー、友情?から始まる恋愛もありっちゃありかー(納得)
よし、今度どーよって聞いてみることにするー!
彩瑠・姫桜
【二桜】
あおと一緒に
浮島通り…そうなのね、国際通りの雰囲気とはちょっと雰囲気が違う感じがするわ
一点物のアクセサリとか洋服多いのね
色違いでも、お揃いの服は流石に恥ずかしい気もするけど
とはいえ水着やら何やら一緒にお願いしたりもしてるから今更かしらね
ホタルグラスのイヤリングは綺麗よね
これはママや妹にもお土産にするわ
クラゲの幼生の名前がカフェ名なのね
確かに雰囲気が素敵ね
紅茶の種類もたくさんで、プリンも美味しいわ
ここで本に浸ってたら本当に観光忘れちゃいそうね(くすり)
石垣島?
日中は弟とスイーツ店巡りしたわ
海はね、夜に行ったの
夜光虫がとても綺麗だったわ
このホタルグラスみたいな感じね
また機会があったら今度は一緒にいけたらいいわね
あおは竹富島へ行ったのね
…ねぇ、本来のもーあしびーって男女の逢瀬含めた集まりって聞いたことあるけど
(問いかけ、帰ってきた言葉にぽかんとして)
意図してなかったの?(呆れ顔)
…というか、聞いてみるって…
(可愛い小物を選ぶような軽いノリに、苦笑い
ほんのり相手に同情しつつ紅茶を飲んだ)
●今と昔が交わるストリート
「沖縄旅行最終日は、姫ちゃんとお買い物ー♪」
今日も青空が広がる沖縄で、榎木・葵桜(桜舞・f06218)は、そう元気に声を上げては親友の腕をきゅっと抱きしめる。
「楽しい時間はあっという間ね。記念にいろいろ買って帰りたいわ」
昨日は別行動だったが、合流した葵桜の元気いっぱいな様子に、いい思い出が出来たのだろうと彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)も柔らかく微笑んで。
「最後まで楽しんでいきましょうか」
「うんうん! やっぱり沖縄でお買い物っていうと国際通り……が王道なんだけど」
観光マップを眺めるだけでもうきうきしてしまう那覇市のメインストリート。約600もの店が並ぶ通りは、観光客にも大人気。
「せっかくだからここに行こう……浮島通り!」
けれど、葵桜は地図の別の場所を示す。
「国際通りから一本入ったところにあるんだよ」
浮島通りは国際通りよりは短い距離ながら、おしゃれなカフェやこだわりを感じる雑貨店などが軒を連ねる感性豊かなストリートなのだ。
「浮島通り……いいわね。行ってみましょう」
葵桜の提案に姫桜も楽しそうと頷き、早速足を踏み入れてみればおしゃれな店が二人の目を引く。その中でも、沖縄の昔ながらの町並みが残り、そういった歴史観のある建物を活かしたカフェや雑貨店が並んでいて、少し年代を遡ったような感覚になるのだ。
「国際通りとはちょっと雰囲気が違う感じがするわ」
「でしょでしょー? もちろん国際通りもいいけど、ここでしか出会えないものもありそうだよね!」
「確かにあおの言う通りかも。一点物のアクセサリとか洋服が多いのね」
ガラス越しに見る店内の商品も美しく陳列されていて。洋服やバッグにアクセサリーと、沖縄らしいものから、きらりと個性が光るものまで様々だ。
「ね、このお店入ってみよー!」
葵桜が気になったのは、沖縄らしい鮮やかな色遣いの洋服やバッグなどが並ぶ店。
「このワンピースかわいー! ね、姫ちゃんお揃いとかどう?」
「ええ、とっても可愛いけど……お揃い?」
沖縄の青い空と海を思い起こすワンピースに姫桜も目を引かれたけれど、お揃いはなんだか少し気恥ずかしい気がして。
「えー、いいじゃん! 双子コーデみたいにしても。それとも色違いにする?」
「色違いでも、お揃いの服は流石に恥ずかしくないかしら……」
「この前の猟兵コレクションでもお揃いのアイドル衣装着たよね♪」
恥ずかしがる姫桜に葵桜はにこにこと迫る。
「う、そうだったわね……思えば水着や他にもいろいろ一緒にお願いしたりもしてるから、今更かしらね……」
確かにそうだったと観念した姫桜に葵桜はにししと頷き、じゃあこれもと指を差す。
「そうそう! あと、このかばんもお揃いにしよー♪」
わかったわと頷く姫桜は、他にも店内の商品に目をやって。
「あら、赤ちゃん用のスタイもあるのね。あっちの妹にちょうどいいかもしれないわ」
それぞれお気に入りを手にし、次はヤシの木のネオン看板が出迎えてくれるアクセサリーや雑貨の店へ。
「わーこれ綺麗! ホタルガラスって言うんだね」
葵桜が目を奪われたのは、青い輝きを放つ石が使われたアクセサリー。
まるで沖縄の海を閉じ込めたような美しく透明度の高い青の世界に、銀箔の光が反射しキラキラと輝きを放つ様子からホタルガラスと呼ばれるようになったという。
「ええ、このイヤリングも綺麗よね」
「姫ちゃんイヤリングもお揃いにしよー! デザインもいろいろあるし……あ、この貝殻使ったネックレスやブレスレットも可愛いなあ!」
「お揃い……わかったわ。それにしても、たくさんあって迷っちゃうけど……この中からママや妹のお土産を探そうかしら」
「あ、確かにお土産いいね。じゃあ私はおばあちゃんと、エリシャさんにもお土産しよーっと!」
そうして自分たちの旅行記念とお土産にと、お気に入りのものを存分に選んで楽しんで。
「いいものいっぱい買えたね♪ 浮島通り来て良かったよー!」
「ほんと、国際通りもいいけど、ここでしか出会えないものを買えた気がするわ」
国際通りに比べれば短い通りではあるが、それでも眺めているだけでも楽しくて。
「あとねー、素敵なカフェがあるらしいからそこいこ!」
「いいわね、ゆっくりお茶してみたいわ」
事前にチェックしていたらしく、葵桜は確かこっちのはずと言いながら姫桜を案内する。
「あ、ここだね!」
小さな看板に店名が記され、店の前にはおしゃれな椅子とテーブルが置かれている。レトロな雰囲気漂う外観から中に入って見れば、アンティーク調の家具が置いてある落ち着いた雰囲気の店内。
「あら、たくさん本があるのね」
「そうそう、いろんな本があって、どれでも自由に読んでいいんだって。思った通り、雰囲気いいね。姫ちゃんが好きそうだなーって思ったんだ」
「確かに雰囲気が素敵ね……」
葵桜が思った通り、姫桜も一目で気に入った様子。
「このお店の名前はね、クラゲの幼生からきてるんだって」
「あら、そうなのね。確かにカウンターにクラゲの置物があった気がするわ」
「うんうん、このオブジェとかもそれっぽいし!」
天井から吊るされているブーケのようなオブジェはまるで揺蕩うクラゲのようで。
オーナーのこだわりと愛を感じる店内に二人で微笑み合うと、案内されたソファの席に着き、メニューを眺める。
「紅茶の種類もたくさんね……デザートにはロールケーキとプリンがあるのね」
「これはシェアしないとね♪」
「ふふ、そうね」
そうして紅茶とデザートを頼んだ後は、姫桜は店内の本へも視線を巡らせる。
「雰囲気もいいし、ここで本に浸ってたら本当に観光忘れちゃいそうね」
そう言ってくすりと笑う。
「それもありかもしれないねー」
そんな風に笑い合っていれば紅茶とデザートが運ばれてきて。
ガラスの透明なポットで提供された紅茶をお洒落なカップに注げばふわりとよい香りが漂ってきて。ふわふわのロールケーキや昔懐かしいプリンも紅茶のお供にぴったり。
「ロールケーキふわふわで美味しい!」
生クリームたっぷりながら甘さ控えめのシンプルなロールケーキを頬張り、葵桜は満面の笑み。
「プリンも美味しいわよ」
少し硬めの昔ながらのプリンを口に運び、姫桜も満足そうに微笑む。二人でシェアしては、ここ沖縄でもその美味しさを分け合う。
「そうだ、プリンで思い出したけど……昨日、日中は翼と石垣島でスイーツ巡りしてきたの。あおにもちゃんと買って来てあるからね」
「え、石垣島でスイーツ巡りしたの? やった、美味しいのお裾分け嬉しい!」
牛乳屋さんの絶品牛乳プリンやさんぴん茶ミルクティーの話に、揚げたての塩サーターアンダギーの話を聞けば、葵桜の瞳も輝いて。
「スイーツ巡りいいなあ……あれ、海には行かなかったの?」
「海はね、夜に行ったの」
そうして姫桜はその後、日が暮れてからシュノーケリングをしたことを伝える。
「夜光虫がとても綺麗だったわ。このホタルガラスみたいな感じね」
先程買ったホタルガラスを示しながら、姫桜が微笑む。
「そっか夜に……うんうん、夜の夜光虫はいいよね。今度は私と一緒にシュノーケリングとかダイビング行こうね♪」
今回は別行動だったけど、次はまた一緒に、できればお揃いの服を着てと、葵桜は満面の笑みを浮かべて姫桜へと誘いかける。
「そうね、また機会があったら今度は一緒にいけたらいいわね。……そういうあおは、竹富島に行ったのだったかしら?」
「うん、そう! 私は竹富島満喫してきたよ!」
シェアしたプリンを美味しそうに味わったあと、葵桜は元気にそう応える。
「姫ちゃんは弟くんと一緒だし、一人じゃつまんないから、身内召喚してみた!」
「そうだったのね。それで、楽しかった? 何をしたの?」
「うん、昼は観光で夜はもーあしびーしておもしろかったー!」
定番の水牛車には乗らなかったんだけどね、と葵桜は付け足して。
けれどその言葉に、姫桜は不思議に思って首を傾げる。
「……ねぇ、本来のもーあしびーって男女の逢瀬含めた集まりって聞いたことあるけど」
葵桜が今年こそはRB団候補からの脱出を誓っていることは聞いているが、それで敢えて身内を誘ったのだろうか。
「本来のもーあしびー? そーいえばそんな感じだったよね」
けれど問われた葵桜にはその辺りのことを考えていた様子はなかった。
「意図してなかったの?」
葵桜の返答に姫桜はおもわずぽかんとして、そして呆れてしまう。
「うん、誘ったのはあんまり深く考えてなかったけど……」
そうか、男女の逢瀬……と呟いて葵桜は何やら考え込んでいる様子。
「んー、友情? から始まる恋愛もありっちゃありかー」
特段特別な感情を抱いていたわけでないが、あの夜が楽しかったのも確か。
「よし、今度どーよって聞いてみることにするー!」
「……というか、聞いてみるって……」
まるで可愛い小物を選ぶような軽いノリに、姫桜は思わず苦笑い。
(「まあ、相手がどう思ってるかはわからないけど……いろいろ大変そうね」)
ほんのりと相手に同情した姫桜は、紅茶のカップを傾けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
小雉子・吉備
【妖怪境界組】
古宇利島のキャンプ場の周辺の海景色、沖縄情緒あふれるのきれーな海の絶景かな絶景かなっ!
お昼も夜も、この光景で作るキャンプ飯はおいしーよね、きっと
キビは沖縄らしくサーターアンダギーを作っちゃおうかな?沖縄キャンプ飯の一つだし
円ちゃんは餃子を挟み焼きはパリパリそーだし、デイジーちゃんはグルクンの炊き込み御飯、お魚路線で行くんだねっ!そっちはお任せして
だけど口の中水分奪われるし、【グルメ知識&情報収集】して、生地であんこを包んで揚げ【料理】しちゃうかな?
円ちゃん、シークァーサーの果汁や皮を入れるのは良い案かも、確かサッパリするよね
あんこはノーマルの他に白餡、栗餡、紫芋の餡と生地に包んで、焦げない様にタイミングを【見切り】してカラリと揚げちゃおう
なまりちゃん、美味しそう?
ひいろちゃんは包丁で揚がったの切り分けてくれるんだ、じゃあ【動物使い】で切り方教えて
あっ、真秀ちゃんいらっしゃい
キビ達の様子見に来てくれたんだ
皆も出来たし丁度良いし
一緒に食べよっ!
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
高嶺・円
【妖怪境界組】
このキャンプ場、海も神秘的だしキャンプも始めてだけど、この光景で食べる御飯は確かに美味しそうだね
『まぁ、最高のスパイスになりそーだが、円は餃子を……ホットケーキサンドメーカーか?まさかそれで焼くのか?』
うん、事前に情報収集したんだけど、普通の餃子とは違った趣の食感になるんだって、宇都宮餃子もきっと美味しくなるよ
早速、事前に宇都宮餃子やアグー餃子とか色々焼く前の下拵えして包んだのは用意してるから、使って焼いてみよう
『吉備はあのゴツゴツしたの作るのか?水分吸われそうなのがキャンプ飯か?あんこ入れても重そうだぜ……』
じゃあ、シークァーサーの皮と果汁を生地に入れてみたら?ご当地としてはレモンやレモン牛乳勧めたいけど
デイジーちゃんはグルクンの炊き込み御飯とか色々美味しそう、メインは任せたかな?
でも、吉備ちゃんだけにデザート任せるのもアレだし、ルーくん餃子の皮で包みパイの下拵えしててくれる?
『アレも美味そうだよな、よし……おっ!真秀じゃねーか、良く来たな』
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
デイジー・クゼ
【妖怪境界組】
確かに、明石の海とは違った意味で神秘的で良い海風景ニャね、後でゼージャッテン·キャリパーで空を駆けるのも良さそうニャけど
吉備ちゃんと円ちゃんが油っぼいのを担当するニャら、わたしは魚路線で行くニャんよ
グルクンの炊き込み御飯とかシイラの照り焼きとか、お魚【料理】して捌いて炊き込み御飯の用意しニャがら
フライパンでシイラを照り焼きと……沖縄の海産物で明石焼きも良いニャね
事前に持ってきた銅板で……《ゼージャッテン》のタコ足影を【影使い】で作って足りない手の代わりに
とマルチタスクしてる間に、餃子やサーターアンダギーの美味しそうニャ香りするニャよ
あっ……ルーくんや、餃子の皮包みパイは、わたしが焼くから安心するニャんよ
真秀さんも来たんニャね、わたしも修学旅行を2度体験出来るとは思わニャんだけど、素敵な2度目招待有り難うニャんよ
わたしも、吉備ちゃんらに賛成ニャんよ…明石焼きは出汁は冷たい方が良いニャね、【属性攻撃(冷)】を加減して冷やしとくニャよ
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
●美ら島の絶景と絶品キャンプ飯
「うわあ、とっても綺麗な景色だね!」
小高い場所から見えるのは、沖縄のエメラルドグリーンの美しい海。
その絶景に、高嶺・円(名とご当地を受け継ぎし、餃子スサノオ・f44870)は思わず感嘆の声を漏らす。
「うんうん! 古宇利島のキャンプ場から見る周辺の海景色……沖縄情緒あふれるのきれーな海の絶景かな絶景かなっ!」
円の隣で同じ景色を眺める小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)も、その美しい景色に思わずそう叫んでしまう。
「確かに、明石の海とは違った意味で神秘的で良い海風景ニャね」
二人とは対照的に落ち着いた様子で景色を眺めていたデイジー・クゼ(シーアクオン弐號と書いてニャゴウ・f27662)は、頬を撫でる爽やかな風に気持ちよさそうに目を細めた。
地元でありご当地の明石に架かる明石海峡大橋とともに眺めるのとはまた違う海の景色に、うんうんと頷いている。
沖縄旅行最終日。三人がやって来たのは、古宇利島のキャンプ場だ。
本島からほど近い島である古宇利島は、本島北部から大きな橋を渡って行くことが出来る。島の外周は約8kmと、小さな島ではあるが、透明度が高くエメラルドグリーンに輝く海や、ハートの形をした岩があったりと、観光客にも人気がある。
そんな古宇利島の高台にあるキャンプ場は、自然豊かで絶景が楽しめる素晴らしい場所のひとつ。
「このキャンプ場、海も神秘的だしキャンプも初めてだけど、この光景で食べる御飯は確かに美味しそうだね」
『まぁ、最高のスパイスになりそーだな』
円の言葉に、今日も雷獣姿のユピテルークは確かにそうだと頷き、吉備もまた景色を眺めてにっこりする。
「うんうん、お昼も夜も、この光景で作るキャンプ飯はおいしーよね、きっと」
三人はこの自然豊かなキャンプ場にテントやタープを設け、そして早速料理の準備を始めていた。
「後でゼーシャッテン・キャリバーで空を駆けるのも良さそうニャけど、まずは食事の準備をするニャね」
それぞれが準備してきた食材を広げ、料理が出来るよう火の準備をする。
『円は餃子を……それはホットサンドメーカーか? まさかそれで焼くのか?』
キャンプでは定番の直火焼き出来るタイプのホットサンドメーカーを手にした円へと、ユピテルークは不思議に思ってそう訊ねる。
「うん、事前に情報収集したんだけど、普通の餃子とは違った趣の食感になるんだって。宇都宮餃子もきっと美味しくなるよ」
ホットサンドメーカーといっても、ホットサンドだけでなく、オムレツやお好み焼き、ピザなども作れるレシピもある。もちろん餃子もあって、これに円は目をつけたのだ。
『へぇ……なるほどな……』
餃子はフライパンや鉄板で焼くもの。その常識は自由にキャンプを楽しむには余計なものなのかもしれない。
「円ちゃんは餃子を挟み焼きするんだね。パリパリで美味しそー! なら、キビは沖縄らしくサーターアンダギーを作っちゃおうかな? これも沖縄キャンプ飯の一つだし」
「サーターアンダギー、まさに沖縄って感じでいいね」
「でしょでしょー? なまりちゃんにひいろちゃんも食べてみたい?」
そう問いかければ、二頭もうんうんと頷いて。
「ニャるほど、吉備ちゃんと円ちゃんが油っぽいのを担当するニャら、わたしは魚路線で行くニャんよ」
二人の様子を見て、デイジーは準備していた魚を使ったメニューを考える。おかずとデザートとくれば、主食が必要だろうか。
「沖縄のお魚……グルクンの炊き込み御飯とかシイラの照り焼きとかが良さそうかニャ?」
「デイジーちゃんはグルクンの炊き込み御飯かあ。他にも色々美味しそう。メインは任せたかな?」
「うんうん、お魚路線でそっちはお任せするね」
作るものが決まり、料理が得意な三人はそれぞれ自分の料理を手際よく進めていく。
「餃子の餡はね、下拵えしてきたんだ」
前もって宇都宮餃子に加え、沖縄のアグー豚のミンチを使った餃子の餡を準備しておいた円は手際よく餡を皮で包んでいく。
『あー確かに、蓋の代わりになるんだな』
「そうそう。挟んで焼くからね。あと、調べてたら包まない餃子のレシピもあったんだけど、それはまた今度試してみてもいいかも」
ホットサンドメーカーに綺麗に包んだ餃子を並べて蓋をして。円は手際よく餃子を焼いていく。
「キャンプならではの餃子もいいニャね」
そう言いながら、デイジーも慣れた様子で魚を捌き、炊き込みご飯と照り焼きの調理を進めていく。
「さて、フライパンでシイラを照り焼きと……沖縄の海産物で明石焼きも良いニャね」
炊き込みご飯を炊いている間に、フライパンにシイラを入れて。さらに明石焼きも作ろうと、持ってきた銅板を準備し、自身から伸びるゼーシャッテンの影を使って、足りない手をタコ足で借りる形に。
「キビはサーターアンダギーを作るわけだけど……そのままじゃ、やっぱり口の中の水分が奪われちゃうかな?」
沖縄でおなじみの揚げ菓子のサーターアンダギー。とても美味しいのだが、なかなかに口の中の水分を持っていかれるお菓子でもある。そこで吉備が考えたのは、生地の中にあんこを包んで揚げること。これなら生地の部分も少なくなり、かなり食べやすくなるだろう。
『吉備はあのゴツゴツしたの作るんだろ? 水分吸われそうなのがキャンプ飯か? あんこ入れても重そうだぜ……』
沖縄のあちこちで見かけたサーターアンダギーを思い出しながら、ユピテルークが心配そうに吉備が料理する様子を見守っている。
「じゃあ、シークヮーサーの皮と果汁を生地に入れてみたらどうかな?」
『お、それいいな』
「そうだね、円ちゃん。シークヮーサーの果汁や皮を入れるのは良い案かも。確かサッパリするよね」
あんこは重いという意見も一理あると、吉備は円が提案してくれた案に頷いて。爽やかな酸味が特徴の沖縄特産のシークヮーサーなら確かにその重さを軽くしてくれそうだ。
「ご当地としてはレモンやレモン牛乳勧めたいところだけど……はい、使うかもって買っておいたんだ」
「円ちゃんありがと!」
渡してもらったシークヮーサーを受け取り、早速果汁と皮をサーターアンダギーの生地に混ぜ込んでいく。
「あんこはね、ノーマルの他に白餡、栗餡、紫芋の餡と用意してみたんだ」
それをひとつひとつ生地に包んでいって、温度を適温まで上げておいた油で焦げないように気をつけながら、からりと揚げていく。
「なまりちゃん、美味しそう?」
吉備が揚げたサーターアンダギーの匂いをくんくんと嗅いでいるなまりの様子に気がつくと、吉備はそう問いかけて。
「なまりちゃんも気になるかニャ? わたしがマルチタスクで料理をこなしている間に、美味しそうな香りが辺りに漂っているニャね」
円の餃子や吉備のサーターアンダギーは、料理の音だけでなく、良い匂いも辺りに届けてくれる。
「まだちょっと熱いから……あ、ひいろちゃんも手伝ってくれるの? じゃあ粗熱が取れたら、揚がったのを切り分けてくれる?」
あんこが詰まったサーターアンダギーだが、どのあんこが入っているか傍目には見分けがつかないので、吉備は半分に切って出すことにしたようだ。
「サーターアンダギーも出来上がって来たね。でも、吉備ちゃんだけにデザート任せるのもアレだし……ルーくん、餃子の皮で包みパイの下拵えしててくれる?」
『アレも美味そうだよな……よし任せな』
円の提案に、ユピテルークがすぐに快諾して手伝ってくれて。
「わ、デザートが増えるんだね。包みパイも楽しみだね、なまりちゃん」
ひいろに包丁で切り方を教えていた吉備がそうなまりに笑いかけると、なまりもせっせと取り分けの食器などを運んでくる。
「あっ……ルーくんや、餃子の皮包みパイは、わたしが焼くから安心するニャんよ」
『おう、デイジー頼むぜ』
包むところまで済ませれば、あとは引き受けるとデイジーが妹を持つ姉らしく気を利かせる。
シイラの照り焼きも完成し、明石焼きもいい感じに仕上がっている。そうしてデイジーがパイを焼いている時だった。
「わ、みんなで美味しそうなの作ってる! あれはサーターアンダギーだし、あれはパイ?」
特にスイーツに興味を示し、弾んだ声を上げたのは、この旅行を計画した一人でもある榛名・真秀(スイーツ好き魔法使い・f43950)だった。
『おっ! 真秀じゃねーか、良く来たな』
「えへへ、みんなの行動予定は聞いてたから、様子を見に来ちゃったんだ♪」
「あっ、真秀ちゃんいらっしゃい! そっか、キビ達の様子見に来てくれたんだ」
ちょうど最終日は本島で過ごしていたので、せっかくならとやって来たと真秀は笑顔で告げて。
「真秀さんも来たんニャね。わたしも修学旅行を2度体験出来るとは思わニャんだけど、素敵な2度目招待有り難うニャんよ」
そう丁寧にデイジーにお礼を言われ、真秀は照れながらもこちらこそと笑顔を見せる。
「修学旅行は何度行ってもやっぱり楽しいよね! わたしも今回とーっても楽しんだんだ。みんなもそうなら嬉しいよ♪」
「うん、とっても楽しんでるよ」
円の分も……という言葉はそっと飲み込んで、円もこの四日間を思い出して微笑む。
「うんうん、何か不思議なこともあったりしたけど……そうだ真秀ちゃん、皆の料理も出来たところで丁度良いし、一緒に食べよっ!」
「え、いいの? わたし何も手伝ってないから悪いなあ……」
あ、でも飲み物の差し入れは持ってきたんだと、真秀はマンゴージュースやグァバジュースの入ったビニール袋を差し出す。
『お、ありがとよ。でも気にすることはないぜ。美味しく食べてもらえるのが嬉しいんだからな!』
「そうそう、わたしも吉備ちゃんらに賛成ニャんよ……真秀さん、一緒にどうぞ」
「わーい、ありがとー!」
そうして真秀は出来上がった料理を運ぶのを手伝ったりしつつ皆と共に席に着く。
「すごーい、豪華! これみんなで作ったの?」
『おう、キャンプアレンジってやつだな』
自分たちも手伝ったのだと、ひいろが皿に乗せたサーターアンダギーを真秀に勧める。
「どれも美味しそうだけど、やっぱりスイーツが気になるよね♪ ん、あんこが入ってる。美味しー!」
「サーターアンダギーだけだと、口の中の水分が全部持っていかれるから、あんこを入れたんだよ。こしあんに、白餡に、栗や紫芋もあるんだよ!」
『そうそう、あと生地にはシークヮーサーの皮と果汁が入ってるんだぜ』
「だから爽やかな酸味を感じるんだね!」
うんうん、とサーターアンダギーを頬張ったなまりも頷いている。
「さ、真秀ちゃん、ホットサンドメーカーで焼いた餃子もどうぞ!」
「わ、キャンプっぽーい! 円先輩ありがとうございます」
「そうして焼くと皮がパリっとしてまた美味しいんニャね」
ホットサンドメーカーで焼いた餃子のいつもとはまた違う食感に皆で舌鼓。
『おお、最初はどうしたことかと思ったけど、確かにこれはありだな!』
餃子は鉄板で焼くものという概念を覆され、ユピテルークは感心している様子。
「さあさ、わたしのグルクンの炊き込みご飯もどうぞ。シイラの照り焼きもあるニャよ」
「わーい、沖縄のお魚! いっただきまーす」
一口食べるなり、どれも美味しいと真秀は幸せそうに味わっている。
「お魚美味しいね。あ、確かデイジーちゃんは明石焼きも作ってたよね」
「喜んでもらえてなによりニャ……そうそう、明石焼き。ただ、この季節だと……出汁は冷たい方が良いニャね」
そう言ってデイジーは手早く出汁を冷やしていく。
「明石焼きは本来冷たい出汁で食べるんだったよね。ルインクちゃんに教えてもらったんだ。ふふ、霓虹ちゃんとすこてぃっしゅに行った二年前が懐かしいなあ!」
「わたしが留守の時ニャね。そうそう、今では少数派になったけど、夏はやっぱりこれだと思うニャよ」
今回は沖縄の食材として、うみぶどうともずくを入れてみたんニャよと、デイジーは得意げに尻尾を揺らすのだった。
「んんー、明石焼きも美味しいよ!」
「真秀、俺様が手伝った餃子の皮包みパイもあるからな!」
「わー楽しみ!」
好天に恵まれた沖縄の絶景を眺めながら食べるキャンプ飯は、会話も弾み、とても美味しく楽しく、思い出に残るものになるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩瑠・翼
真秀さんお誘いして国際通り近隣散策
真秀さん、お久しぶりです!
よかったらオレとも、カフェとスイーツ巡りしませんか?
まずはね、黒糖ぜんざい専門店!
沖縄の大宜味村のいちごを使ったかき氷なんだって
見た目にもすごく綺麗だし、真秀さん絶対好きだと思うんだぁ
他にも、紅芋やドラゴンフルーツの黒糖ぜんざいもあるし、紅芋餅も美味しそうだなぁって
次はアラビアがテーマのコーヒー専門店の喫茶店
トルココーヒーとかモロッコミントティーとかの飲み物も
お店特性のフレンチトーストもとても美味しそうなんだよ
最後はね、夜パフェ専門店!
ここも、沖縄の素材を中心に使って、とっても綺麗なパフェを作ってるんだよ
写真では見てたけど実物もすごく綺麗だよね
オレはアルコール入り頼めないからちょっと残念だけど
…って、うちの姉さんとか友達と同じ感じで連れ回しちゃったから
疲れさせちゃってたらごめんなさい
でも、修学旅行の企画お疲れ様でありがとうございました!
えっと、これはお礼とお土産に
石垣島で買ったプリンとさんぴん茶ミルクティー
よかったらどうぞだよ!
●琉球のカフェと魅惑のスイーツ
沖縄旅行最終日は国際通りへ――。
前日は石垣島でのカフェとスイーツ巡りと、夜は夜光虫を眺めるシュノーケリングを楽しんだ彩瑠・翼(希望の翼・f22017)は、観光客で賑わう通りを見渡した。
「国際通りも気になるカフェがたくさんあるんだよね」
全長1.6kmもある通りを歩くとなれば、買い物の合間にくつろげるカフェの需要も高い。しかもおしゃれな店が多いのは既にチェック済み。それに加えて今回は美味しいスイーツが食べられる場所も調べておいたのだ。なぜなら――。
国際通りを歩く人々の中に、見知った顔を見つけた翼は、走り寄って声をかける。
「真秀さん、お久しぶりです!」
「あ、翼くん! 沖縄旅行楽しんでる?」
この旅行の企画者の一人である真秀は、ソフトクリームを手にした状態で手を振ると翼に微笑みかける。どうやら大のスイーツ好きの真秀もここでスイーツ巡りをしていたようだ。
「よかったらオレとも、カフェとスイーツ巡りしませんか?」
スイーツ好きの真秀がここにいるだろうことは想像がついたので、もし会えたなら一緒にスイーツ巡りが出来ればと思っていたところだ。先日、翼が案内したアルダワでの依頼では、カフェ志望者の翼とスイーツ好きの真秀で、それはそれは話が盛り上がったのだ。
「え、翼くんもカフェ巡りしてたの? わーい、それならぜひぜひにだよ!」
ちょうど友人たちとも今日は別行動。思いっきり沖縄スイーツを楽しもうとしていた真秀にとって翼の提案は、とても嬉しくて。
「良かった! オレ、気になるお店ピックアップしてあって……良ければそこに行ってみませんか?」
「翼くんの気になるお店はわたしも気になる……うん、ぜひ連れてって欲しいな♪」
真秀は気の向くまま、ぶらぶらと歩いていこうと思っていたようで、おすすめの提案に楽しみと頷いては、手にしたソフトクリームをいそいそと食べ終えて。
そうして二人並んで国際通りを歩いていく。
「まずはね、黒糖ぜんざい専門店!」
初めに翼が案内したのは、沖縄名物のぜんざいのお店。ぜんざいと言えば一般的にはおもちとあんこを使った温かいものを想像するが、沖縄ぜんざいは金時豆を使ったかき氷風の冷たいスイーツ。
「わ、沖縄ぜんざい食べたかったんだ!」
ぱっと顔を輝かせる真秀の様子に良かったと内心安堵しながら、翼は調べていた情報を伝える。
「沖縄の大宜味村のいちごを使ったかき氷なんだって」
「ご当地素材もいいよね。それに……これめっちゃ映えるね!!」
人気メニューの島いちご黒糖ぜんざいは、ふわふわのかき氷にたっぷりの島いちごシロップをかけ、てっぺんにはふわふわのクリームといちごを模したミントの葉が飾られたもので、見栄えも可愛らしい。
(「良かった。真秀さん絶対好きだと思ったんだぁ」)
店の選択はばっちりだったと、翼も真秀の笑顔に嬉しくなる。
「他にも、紅芋やドラゴンフルーツの黒糖ぜんざいもあるし、紅芋餅も美味しそうだなぁって」
「うん、わたし、いちごのと、紅芋餅も食べるんだー!」
本当はもうひとつぐらいぜんざいも食べたいところだけれど、他にも店を巡るからと、真秀はぐっとこらえた様子。
ふわふわの天然氷と沖縄の厳選食材を使ったまごころのこもった沖縄ぜんざいと、真秀は抹茶の添えられた紅芋餅も美味しく食べ終えて、手を合わせる。
「うーん、美味しかった! ごちそうさま」
「次はね、アラビアがテーマのコーヒー専門店の喫茶店だよ!」
沖縄ぜんざいを美味しく食べ終えたあと、翼は国際通りのちょうど真ん中辺りにある喫茶店へと案内する。
「わ、なんか外から見ただけでもお洒落」
店の入り口には大きなコーヒーミルのオブジェ。年季の入った扉を開ければ、まるで異世界に誘うように地下への階段が現れる。
店内には異国情緒漂う音楽が流れ、調度品からもアラビアンな空気が感じられる。
「これは確かに翼くんが気になるのはわかるよー」
普段からカフェの研究をしているらしい翼が見つけた素敵な喫茶店に真秀も瞳を輝かせる。
「えへへ、沖縄にいるのに異世界に来たみたいだよね。あ、コーヒー専門店だけど、コーヒー以外もいろいろメニューがあるんだ」
二人でメニューを覗けば、可愛らしい手描き風のイラストが描かれている。
「オレが気になるのは、トルココーヒーとかモロッコミントティーとかの飲み物と……お店特製のフレンチトーストもとても美味しそうなんだよ」
「フレンチトースト! じゃあ、わたしはそれと……モロッコミントティーにしてみようかな」
翼が気になるメニューはきっとお店的にもおすすめに違いないと真秀は迷いなくオーダー。そして翼は、トルココーヒーと自家製のケーキを注文。
「前にもね、ユディトさんとUDCアースにあるアラビアンなプラネタリウムカフェに来たことがあって……」
「あ、エリシャさんの義弟さんだね。二人は仲がいいってわたしも聞いたよ」
こども食堂を手伝っている真秀もユディトと面識がある。アルダワの依頼でも一緒だったのだ。
「その時には、トルココーヒーで占いもしたんだよ」
「え、コーヒーで占いが出来るの?」
「オレもその時は驚いたんだけど……」
まるで異世界に来たかのような雰囲気の中、そんな風に話は盛り上がり、二人はゆったりとした時間を楽しんだ。
「最後はね、夜パフェ専門店!」
「わ、夜パフェ!」
翼の言葉に真秀は瞳を輝かせる。夜パフェと銘打っているが、お店は昼過ぎから開いているのだ。
「最近多いよね、夜パフェ。夜でも昼でも食べたいけど!」
去年の夏にもナイトプールで同じようなことを言っていた真秀がうきうきとメニューを眺める。
北海道の札幌で生まれたシメパフェ――夜パフェは今や全国に広まり、愛されている。
「わわ、どれも素敵すぎる!!」
想像通り瞳を輝かせる真秀をにこにこと見守った翼は、丁寧に材料がひとつひとつ書かれたメニューを指差す。
「ここも沖縄の素材を中心に使って、とっても綺麗なパフェを作ってるんだよ」
「うーん、なかなか決めれない~」
さんざんうんうんと悩んだあと、真秀は沖縄三大名花のひとつをモチーフにしたパフェを選ぶことに。
「決め手は沖縄ならではの食材がいっぱい使われてるから!」
どのパフェも見た目は素敵すぎて選べない。だからこそ食材で選んだのだと真秀は微笑み、早速運ばれてきたパフェを撮影。
「写真では見てたけど実物もすごく綺麗だよね」
その芸術的なまでの美しさに、翼は自分で頼んだフラミンゴモチーフのパフェをしげしげと眺める。
「真秀さんのはアルコール入ってるのかな? オレはアルコール入り頼めないからちょっと残念だけど」
夜パフェというからにはその辺りも大人な感じで、セットとして選べるドリンクにもアルコールが選べるのだ。
「うん、ちょっと入ってるみたい。あ、じゃあさ、翼くんが二十歳になったら、また一緒に食べに来ようよ!」
沖縄以外にも夜パフェの店はあるからと真秀は朗らかに笑って見せた。
「え……う、うん。また来れたらいいな!」
「それまでも、素敵なお店見つけたら、また教えてね!」
今日もとっても楽しかったねと真秀は笑っているが、翼ははたと我に返る。
「……って、真秀さん疲れてない? うちの姉さんとか友達と同じ感じで連れ回しちゃったから……」
「え? 疲れてないよー。スイーツ食べる度に元気チャージしてるし!」
「それなら良かった……でも、真秀さんは修学旅行の企画から動いてたし……今回は、企画お疲れ様でありがとうございました!」
丁寧にぺこりと頭を下げる翼に、真秀はお礼を言うのはこっちだよ! と首を振る。
「みんなに楽しんでもらえたのなら何よりだよ! わたしもとーっても楽しんだしね!」
「オレも姉さんやみんなとたくさん楽しんできました。あ、えっと、これはお礼とお土産に……」
「え、お土産? わたしが昨日買い込んだスイーツはスーツケースにしまってるから、また改めて渡すね」
翼からお土産を手渡されると、真秀は慌ててそう約束して。
「ありがとうございます。それで、これは石垣島で買ったプリンとさんぴん茶ミルクティー。よかったらどうぞだよ!」
「翼くん、ありがと! さんぴん茶ミルクティーって気になる!!」
大切そうにお土産の入った袋を受け取ると、真秀は初めて聞く言葉に興味津々。
「んっと、牛乳屋さんがやってるカフェで見つけたんだけど……」
大好きなスイーツの話題はまだしばらく続くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
宮儀・陽坐
【葵胡桜坐】
2人きりはまだ早かったのでは!
フェリー内で大した会話も振れず肩を落とす
イメトレで会話を“準備”しつつも1日持たないかもと不安に思っていた所に急展開
陽桜さんと葵さん!
久しぶりすぎて声をかけて良いのか何を言えば良いのか固まり手を引いてもらうまでがお約束展開
えっと、お久しぶりです…!
はっ!陽桜さんの物言う瞳!
いやこれはあのですね?ぼっちで修学旅行に来てしまった所偶然会ったくるみさんが食材研究に付き合ってくれてると言いますか豊富な飲食店情報をアドバイスいただいたというか(早口)
迷惑だなんてそんな!その、盛りあげ上手で楽しいっていうか…(徐々に小声)
でも本当に、お2人に会えて嬉しいです!
しばらく栃木にいるつもりなのでまた餃子パーティーにお誘いします
和牛のお店はかなり調べてきたのですが
俺の旅行計画って食事総量が一般向けではないので、行き先を変えようと思っていました
なので市場は賛成です!
実際に来てみると薬草が面白いので女性目線でハーブなど選んでもらえたら
たい焼きは…差し替えてもいいですね…
榎木・陽桜
【葵胡桜坐】
(フェリーを降りたところで聞き覚えのある声に
葵さんの背中からひょっこり顔出せば見知った顔二人)
くるみちゃん!(ぱっと笑み手を振り)
もしかして陽坐さんです?
お元気でしたか?
観光に行った先で知り合いに会うとなんだか楽しい気分になっちゃいますね!
(くるみちゃんと一緒ということはデートかな、とわくわく瞳を輝かせ)
そうですね
せっかくお会いできたのです、よかったら観光ご一緒しませんか?
石垣グルメなら、石垣市公設市場に行けば美味しいものたくさんなのですよ!
野菜や果物いっぱいですね!
お魚は青や赤で色とりどりなのです
かまぼこも沖縄独特な感じかな?(わくわく)
シーサーも大きさも表情も色々ですね
あたしに似てます?(思わず睨めっこし)
えと、じゃあ、この子と一対になってる子は葵さんですね?(うふふと笑って)
石垣牛はハンバーグもありますね
食べられるところもあるようですけど
お土産にしたら餃子のタネにもなりそうですよ
あたしはスイーツ食べたいです!
リコッタスフレパンケーキに米粉のパインたい焼きパフェなのです♪
未留来・くるみ
【葵胡桜坐】
石垣島到着ー!
ポーズ決めとったら呆れた声が
なんや葵はん奇遇やないの
石垣島に来とったんやね
手を振って駆け寄って
ホンマに筍みたいに背ぇばっかり伸びよって
文句言う葵はんは華麗にスルーして後ろにいる陽桜はんに駆け寄って
あ、陽桜はんや!
何してはるん陽坐はん!そないすみっこで立っとらんと
早うこっち来ぃ!
手を掴んで二人のところに引っ張り出して
うち陽坐はんと一緒に石垣島に来てん
せや!陽桜はん葵はん一緒に観光せえへん?
美味しい和牛食べられる店知っとるねんて
な?(にっこりハードル上げる)
何早口になってはるん?(首傾げ)
陽坐はんが興味津々見てはる店を覗き込み
へえ宮古島ってハーブ栽培も盛んなん?
ハーブティーやったらこっちのモリンガのがええと思うで
青シソ餃子があるくらいや
ハーブ餃子なんかも面白いん違う?
スイーツ!
やっぱりスイーツは外せへんで
このタイ焼きパフェの発想!たまらんなぁ
うちはバターあんこにしよ
甘じょっぱくて美味しい!
陽坐はんは何しはったん?
ええなーそっちも気になる!
うちのと半分こせえへん?
榎木・葵
【葵胡桜坐】
陽桜さんと一緒にフェリーを降りれば
聞きなれた声が
ポーズを決めているくるみさんに半ば呆れて声掛け
何してるんですか
振り返ったくるみさんに軽く手を挙げて挨拶
身長は知りませんよ僕のせいじゃありません
あなたは昔から変わりませんね
仲良く喋っている二人の背中を見送って
陽坐さんの隣で気遣うように
くるみさんがご迷惑をお掛けしていませんか?
彼女は少々強引なところがありますから
いつぞやの誕生日には
かまくらで美味しい餃子をありがとうございました
餃子会は楽しそうですね
ぜひ呼んでください
ではご一緒しましょう
お土産も買いたいので丁度良いですね
本当に魚も野菜も珍しくて色鮮やかですね
確かに僕が想像するかまぼことは違います
見てくださいシーサーがたくさんいますよ!
色んな表情があるんですね
これはなんだか陽桜さんに似ていますね
一つ購入していきましょう
ふふ、目元がそっくりです
リコッタスフレパンケーキですか
これは美味しいですね
口の中で溶けてしまいます
口直しのさんぴん茶も独特な風味で
また楽しい思い出が増えましたね
●再会に思い出を重ねて
(「2人きりはまだ早かったのでは!」)
沖縄本島から石垣島行きの飛行機に乗った宮儀・陽坐(いつも心に餃子怪人・f45188)は、内心焦りを覚えていた。
「もうすぐ到着するみたいやね。石垣島楽しみやわ」
隣の座席では、窓の外の景色を眺めている未留来・くるみ(女子大生宴会部長・f44016)が、そんな陽坐の気持ちに気づくことなく、これから訪れる石垣島で過ごす時間を楽しみにしている様子。
沖縄旅行で運命的に再会した陽坐とくるみ。餃子怪人の導き(?)により、二人で石垣島に向かうことになったのだが、前日も発揮した陽坐の人付き合い自信ないオーラが彼を包み込むと、気の利いた話も振れず、落ち込むばかり。
とはいえ、くるみはといえば、そんな空気に息苦しさを感じることもなく、マイペースに旅行を楽しんでいる。
「石垣島って結構大きい島やんな。どっかで誰かに再会したり……なんてな!」
いつも通りの朗らかさでいてくれるくるみに安堵しつつ、しかしこれから先はまだまだ長い。
(「昨日、イメトレで会話を準備しておいたけど……これじゃ1日持たないかも……」)
そんな不安を抱きつつ、石垣島に降り立った陽坐。けれどもちろんくるみはここでも元気だった。
「石垣島到着ー!」
空港のロビーで腰に手を当て、天を指差しては、びしっとポーズを決めるくるみ。
「くるみさん……何してるんですか」
そこへ半ば呆れたような声がかけられ、振り返ったくるみの目には、どこか戸惑ったような表情を浮かべる榎木・葵(影狩人・f44015)の姿が。
「なんや葵はん。奇遇やないの!」
先程の想像が現実となり、この広い沖縄で偶然に再会したことに笑みを浮かべる。そうして、元気に手を振っては駆け寄って。
「葵はんも石垣島に来とったんやね」
笑顔を浮かべつつも、視線をぐっと上に上げてはしみじみ呟く。
「……ホンマに筍みたいに背ぇばっかり伸びよって」
「身長は知りませんよ、僕のせいじゃありません……あなたは昔から変わりませんね」
くるみに手を挙げて挨拶した葵は、いわれのない文句にやや顔を引きつらせる。だが、これこそがくるみだとなんとなく安堵してしまう気持ちもあって。
「くるみちゃん!」
懐かしい声を聞きつけ、長身の葵の背中からひょっこりと顔を出した榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)は、くるみの姿に顔を輝かせる。
「あ、陽桜はんも! もう、葵はんに隠れて、全然気ぃつかんかったわ。陽桜はんらも石垣島かぁ……なんか、嬉しいわあ!」
「昨日は波照間島に行っていたんです。ほんとは昨日も石垣島に泊まるはずだったんですが……」
「いろいろとありまして……」
そう言って顔を見合わせ微笑み合う二人。きらきらでらぶらぶのオーラにくるみも仲がようてええねぇとにこにこするのだった。
そんな再会の片隅で、陽坐はどのタイミングで会話に入るべきか、いや、そもそも久しぶりすぎて声をかけてもいいのか、かけたところで、何と言えばいいのかわからず固まっていた。
「……もしかして陽坐さんです?」
そんな陽坐に気がついた陽桜がそう話しかければ、こちらと距離のある陽坐に気づいたくるみはすぐさま声をかける。
「何してはるん陽坐はん! そないすみっこで立っとらんと早うこっち来ぃ!」
「は、はいっ……!」
それでもまだ迷っている様子の陽坐へ近づいたくるみは、その手を掴んで二人の所まで連れてくるのだった。
二人の前に引っ張り出された陽坐は改めて挨拶をする。
「えっと、お久しぶりです……!」
「陽坐さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」
「旅行先での再会とは、嬉しいですね」
陽桜と葵に優しく微笑まれ、陽坐も久々の再会になんだか心が温かくなる。
「はい、観光に行った先で知り合いに会うとなんだか楽しい気分になっちゃいますよね!」
葵の言葉に陽桜が頷き、そうして陽坐とくるみを見つめては、どこかわくわくと瞳を輝かせる。
(「くるみちゃんと一緒ということは、ひょっとしてデートでしょうか?」)
二人で石垣島に来たということはと、期待してしまう陽桜。くるみ自身は、この前一緒にパフェを食べた時に、特に浮いた話はないと言っていたけれど……。
(「これはきっと運命の再会なのです。学生時代から、二人は仲が良かったですもんね」)
(「はっ! 陽桜さんの物言う瞳!」)
そんな陽桜の期待に満ちた(?)視線を感じた陽坐は、取り繕うように口を開く。
「いやこれはあのですね? ぼっちで修学旅行に来てしまった所、偶然会ったくるみさんが食材研究に付き合ってくれてると言いますか、豊富な飲食店情報をアドバイスいただいたというか……」
早口でまくしたてるところが陽坐の内心の焦りを物語っていた。
「そうそう、偶然再会してな。陽坐はんと一緒に石垣島に来ることになってん! ……何早口になってはるん?」
陽坐の挙動に首を傾げつつ、くるみは再会した経緯を説明する。
「それにしてもここで会ったのも何かの縁……せや! 陽桜はんに葵はん、うちらと一緒に観光せえへん?」
「そうですね。せっかくお会いできたのですから、観光ご一緒したいです。ね、葵さん?」
「僕はもちろん構いませんよ。陽坐さんは、それで大丈夫ですか?」
くるみの性格を知っている葵は、振り回されているのではと心配したようで、きちんと陽坐にも確認する。
「もちろんです! ブランド牛の視察と思っていましたが、観光もしたいです」
「陽坐はん、美味しい和牛食べられる店知っとるねんて。……な?」
悪気なく、笑顔でハードルを上げていくくるみ。
「は、はい……任せてください……」
ちょっと声は小さくなっていったが、陽坐は確かに頷いた。
「石垣グルメなら、石垣市公設市場に行けば美味しいものたくさんなのですよ!」
「そうか、ほな、まずはそこへ行こか!」
そう言って女子二人はきゃっきゃと楽し気に二人並んでおしゃべりを始める。
そんな二人の背中を確認し見送ると、葵はすぐさま陽坐のそばに来ては気づかわしげに口を開いた。
「あの、陽坐さん……くるみさんがご迷惑をお掛けしていませんか?」
「迷惑だなんてそんな!」
その言葉に陽坐はぶんぶんと首を振る。
「彼女は少々強引なところがありますから」
先程のやりとりを見ても、完全にくるみが主導しているように見えて、葵は陽坐が心配になったのだ。
「引っ張ってもらって助かることも多いです。それに、その、盛りあげ上手で楽しいっていうか……」
自分がこんな性格だからと、くるみの力強さがちょうど良いのだと、それにそんなくるみの明るさに助けられていると言いかけては、陽坐はだんだんと小声になっていく。
「それならいいんですが……そうです、いつぞやの誕生日にはかまくらで美味しい餃子をありがとうございました」
「覚えててくれたんですか?」
「もちろんですよ。ふふ、懐かしいですね」
昨日、くるみと沖縄の餃子を食べた時もその話題が出て。二人の中で忘れられない思い出になっているのだとしたら、それは嬉しい。あの時よりも修行を積んで、さらに美味しい餃子を提供できる自信もついたのだ。
「しばらく栃木にいるつもりなのでまた餃子パーティーにお誘いします」
「餃子会は楽しそうですね。はい、ぜひ呼んでください」
あれから短くない時間が経過したけれど、それでもこうしてあの頃と同じように変わらない態度で接してくれるのが嬉しい。
「本当に、お2人に会えて嬉しいです!」
「僕たちもですよ。では、市場の方に行ってみましょうか」
石垣島の中心地にある石垣市公設市場は、設置されてから実に100年以上もの時を数える歴史ある島の台所と呼ぶべき場所。石垣島の特産品の販売や食堂を兼ねた三階建ての巨大市場は、地元の人たちはもちろん、観光客のお土産選びにも適した魅力あふれる場所なのだ。
「野菜や果物いっぱいですね!」
まずは新鮮なフルーツに鮮魚や精肉の販売をしている1階のフロアを散策。市場の名にふさわしい、新鮮な食材が路面販売形式で売られている。
「南国らしいフルーツもいっぱいやな」
陽桜とくるみがドラゴンフルーツやスターフルーツを見て笑い合う。
「お魚は青や赤で色とりどりなのです」
「本当に魚も野菜も珍しくて色鮮やかですね」
続いて鮮魚の店の方へと向かえば、普段見ないような魚の姿に陽桜と葵が珍しそうに眺めて。
「かまぼこも沖縄独特な感じかな?」
かまぼこ専門店の前にはたくさんのかまぼこが並んでいるが、よく目にする板の上に半円筒型に盛りつけられた板かまぼこは蒸しかまぼこであり、沖縄では揚げかまぼこが一般的という違いがある。
「確かに僕が想像するかまぼことは違います」
もずくや島豆腐が練り込まれたかまぼこや、卵と砂糖を練り込んだカステラかまぼこなんかもある。さらにはおにぎりやゆで卵を包んだ商品もあって、かまぼこの常識が覆されそうだ。
「見てるだけでも楽しいですね」
「陽坐はんは、研究進みそうか?」
くるみと陽坐は精肉の店の前までやって来ていた。
「はい、和牛のお店はかなり調べてきたのですが、俺の旅行計画って食事総量が一般向けではないので、行き先を変えようと思っていました」
「料理人やもんなぁ」
「なので市場に来れて良かったです」
「石垣島のブランド牛だけあって、石垣牛のサーロインステーキはすごいな」
ショーケースに並ぶ美しいさしの入ったお肉にくるみも興味津々。陽坐もまた、市場の人に質問したりして、目的である研究の方も上々のようだ。
「くるみさん、こっちもいいですか?」
陽坐がそう声をかけ、向かった店で見つめるのは、石垣島で栽培されたハーブ。
「へえ石垣島ってハーブ栽培も盛んなん?」
「山羊汁にもハーブは欠かせないそうですから」
「なるほどなぁ」
「あの、良ければ女性目線でハーブなど選んでもらえませんか?」
和牛だけでなく、実際に見て面白いと思ったハーブについてもここは知識を増やしたい。
「ん? うちが? そやなぁ……ハーブティーやったらこっちのモリンガのがええと思うで」
くるみが選んだのは、栄養豊富なスーパーフードとしても知られるモリンガのハーブティー。
「なるほど、モリンガですか……」
「ビタミンやミネラルとかぎょうざん栄養素が入っとるし、女子的には鉄分や食物繊維も入っとるのが魅力やね」
モリンガには90種類以上の栄養素がバランスよく含まれ、肌荒れや便秘などにも効果があるのだそうだ。あのクレオパトラもモリンガのオイルを肌に塗り、モリンガのお茶を飲んでその美しさを維持していたという逸話もあるとのこと。
「陽坐はんがハーブに興味を持つってことは……。青シソ餃子があるくらいやハーブ餃子なんかも面白いん違う?」
「そうですね……考えてみます!」
そんな風に二人はあれこれとハーブを手に取っては、話を弾ませるのだった。
鮮魚や精肉店と同じフロアには土産物屋もある。
「陽桜さん見てください。シーサーがたくさんいますよ!」
お土産も選びたいと思っていた葵だったが、圧巻のシーサーたちの姿に思わず興奮した声音で指を差して。
「それにしても色んな表情があるんですね……」
ずらりと並ぶシーサーたち。沖縄土産の定番ではあるが、どれも同じものではない。
「はい、大きさも表情も色々ですね」
素焼きの単色のものから、赤や青、黄色など原色系のものまで様々だ。大きさも手のひらサイズのものから、しっかりと家に飾れるようなものまであり、買い物客の希望に叶うものが見つかりそうだ。
「あ、これはなんだか陽桜さんに似ていますね」
葵が手に取ったのは、ピンク色のシーサーで。
「あたしに似てます?」
そう言って陽桜は葵が手にしているシーサーとしばしにらめっこ。
「ふふ、目元がそっくりです」
凛々しい顔立ちのシーサーもいるが、このシーサーは柔らかく朗らかに微笑んでいて。それが陽桜の持つ空気と似ていると葵は感じ、すぐにお土産に購入することを決めた。
「えと、じゃあ、この子と一対になってる子は葵さんですね?」
隣に並ぶシーサーを指差して、陽桜はうふふと笑う。
「そういうことになりますね」
笑顔のシーサーたちを見ていれば、こちらも幸せな気持ちになる。
「二人はええもん見つかった?」
「あ、くるみちゃん。はい、シーサーを見てたんです」
お土産物屋で二組は合流。そうしてくるみも手にしていた袋を掲げる。
「ええね、ええね。沖縄らしゅうて。うちらもいろいろ買うてんな」
「はい、ハーブティーを」
陽坐も満足げな様子で、先程買ったハーブティーを二人にも見せてくれた。
「それにしても、他にもいろいろええもんぎょうざんあるなぁ。そうや、食べられる場所もあるんやっけ?」
「はい、飲食できる場所もありますね。行ってみましょうか」
1階の店舗で飲食できる場所を目指して歩いていれば、ふと陽桜が目についたのは精肉店。
「石垣牛はハンバーグもありますね」
「高級なステーキも美味しそうやったなぁ」
先程見たぶ厚いステーキ肉を思い出し、くるみは頷く。
「食べられるところもあるようですけど……お土産にしたら餃子のタネにもなりそうですよ」
「餃子のタネ……なるほど、陽桜さん、ありがとうございます!」
生肉を持って帰るのはハードルが高いが、パウチに入ったハンバーグなら持って帰るのに支障がない。陽坐はぱっと顔を輝かせ、お土産に買うリストに追加した。
「さすが陽桜はん。餃子フェスで垣間見た餃子好きは伊達やないな」
「うふふ、それを言うなら、くるみちゃんもじゃないですか」
「え、何ですか、餃子フェスって?」
その言葉に即座に食いつく陽坐に、くるみは休憩しながら話すわと言ってにかっと笑う。
「あたしはスイーツ食べたいです!」
「スイーツ!」
陽桜の言葉に反応したくるみの瞳がきらきらと輝く。
「やっぱりスイーツは外せへんで」
「これは、やはりスイーツを食べる流れになりそうでしょうか」
「二人が嬉しそうですし」
男子二人もその流れに乗るべく、やってきたのはパンケーキの店。
「ここのリコッタスフレパンケーキが食べてみたいのです!」
「パンケーキ、ええねぇ!」
石垣島産のリコッタチーズをふんだんに練り込んだ生地に丁寧に泡立てしたメレンゲを混ぜて焼いたパンケーキは驚くほどふわふわなのだ。
ひとつひとつ丁寧に焼き上げるので、20分以上はかかるというので、その間に別の店も覗いてみる。
「こちらの名物は、米粉のパインたい焼きパフェなのです♪」
「パインたい焼き……?」
陽坐はその名前にふと首を傾げる。確かにたい焼き風の生地はパイナップルの柄をしている。でも鯛の姿だからたい焼きなはずなのに、もはや鯛は置き去りにされてしまったことに少しの哀愁を感じる。
(「いや、何でも皮に包めば餃子になる論者としては、たい焼きの皮で包めばこれもまたたい焼きという理屈は理解できる……!!」)
はっとそのことに気づくと、愕然とする陽坐だった。
それにしてもこれは最近流行りの映えるスイーツである。たい焼き生地の中にはアイスや生クリーム、白玉と言った具材が隠され、てっぺんにはチョコ掛けのちんすこうが生クリームの上にちょこんと乗せられているのだ。
「このタイ焼きパフェの発想! たまらんなぁ……陽坐はん、どうしたん?」
「あ、いえ、なんでもありません……くるみさんは食べるんですか?」
「もちろんや! うちはバターあんこにしよ」
そうしてパンケーキも焼き上がったところで、四人一緒にスイーツタイム。
「リコッタスフレパンケーキですか……これは美味しいですね」
葵が口に入れた瞬間、ふわふわの生地が口の中でとろけていく。
「この白いソースも美味しいのです」
練乳にはちみつを混ぜた特製のソースは優しい甘さでパンケーキの美味しさをさらに引き立てている。
「このタイ焼きパフェも甘じょっぱくて美味しいで!」
生クリームにバニラアイス、こしあんやバターに白玉、一番底には赤米ココナッツあんこが入っている食べ応えのあるスイーツにくるみも満足。
「はい♪ あたしは白玉カスタードにしたのですよ。こっちも美味しいです。葵さんも一口どうぞです!」
「ありがとうございます」
「ほんで、陽坐はんは何しはったん?」
「あ、俺はスイートチリタコスにしてみました」
食事系クレープがあるように、甘くないパインたい焼きパフェもあったのだ。
「ええなーそっちも気になる! うちのと半分こせえへん?」
「えっ……」
陽桜と葵が当然のように仲良く分け合っているのはわかるが、その空気のまま、自分たちも分け合っていいものか。
「あ、もちろん全部一人で食べたかったらかまへんで」
「あ、いえ……その、くるみさんが構わないなら……どうぞ!」
とりあえずまだ口をつけていないたい焼きパフェをさっと差し出す。
「おおきに! うちのも食べたってや。ほんま美味しいで~」
(「な、なんかカップルっぽい雰囲気!? いや、そんな邪念は振り払っておかないと闇堕ちしかねない……」)
そんな微笑ましい二人のやりとりを見ながら、陽桜と葵もにっこり。
「一緒に来れて良かったですね、葵さん」
「はい。こうして四人でわいわいと観光するのも楽しいです。それに、このさんぴん茶も独特な風味で美味しいです」
甘いものを食べたあとの口直しにと、葵はさんぴん茶のすっきりとした味わいに微笑み、これまでの日々を思い出す。
「また楽しい思い出が増えましたね」
かつて共に戦い、青春を過ごした学園での出来事も輝かしい思い出ではあるけれど、こうして新しい世界が開かれた未来で共に歩む日々もまた、とても心躍るものだと感じずにはいられないのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
一ノ瀬・漣
【煙響】
宿でお風呂あがってベランダで涼む
んー…気持ちいー…
だねー
明日もう帰る日かぁ…3泊4日とかあっという間だったなー…
ふふ、帰った翌日から梓また仕事だもんね
…まぁ、そういうオレも新曲作らなきゃだけど…
えー?夜風で乾くよぉ…
言いながらも呼ばれたら苦笑して梓のそばの椅子に座って
いつもみたく頭乾かしてもらう
マメだなぁ、梓
髪に触れる指先とか手つきとか
優しくてなんだかふわふわな心地になって好き、ってのは秘密
口元はにまにましちゃうけど
寝落ちしかけたところで梓のお誘いに目が覚めて
いーね!折角だし、お揃いのなんかお土産買おうよ
えへへ、記念に残るのが良いな
梓と一緒に修学旅行来れてたらこんな感じだったのかな
なんて思いながら
4日目の朝に写真刷ってオレらの家に投函したらお土産買いに
ねね、梓!このホタルガラスっての、綺麗じゃない?
ピアスとか…あ、指輪もある!指輪にしよ!
この沖縄の海みたいな小さな青い石のついた銀の指輪
ギター弾くときは首から提げるだろうけど、今は早速嵌めて
差し出された手に重ねた指に、青を燦めかせる
都嘴・梓
【煙響】
本島も他の島も回って、今日は手紙も書いて…
慌ただしいようでどこかのんびりしていた今日も終わり、
ちゃんと二人で思い出しながら手紙だって書けたし、
写真明日の朝刷って入れれば送れちゃう!
まーねー…案外早いよね、初日はこんなに休みがー!とか思ってたのにさ。
本島も中々楽しかったけど、どこ行っても海綺麗でよかったよねぇー……ってぇ、まぁた漣おサボりしてんの?
髪は乾かしなっていつも言ってるでしょ!ほらこっちおいで(椅子をぽんぽん)
ベランダで星を眺めていた漣を呼んでぷんすこしたフリをしつつ
汗を流した風呂上がり、夜風で乾くなんてワイルドなこと言う漣の髪をドライヤーで丁寧に乾かす
段々気持ちよさに船を漕ぎそうな漣の髪へヘアオイルを塗りつつ
そーだ!お土産さぁ、口コミのいい店探そ!
お揃い?えー、可愛すぎないそれー!
少し学生気分で返しながら、4日目は写真を手紙に入れ送るのは二人の家
読むのが楽しみと思いつつ、呼ばれて振り返り
どったの?
ホタルガラス…へぇ、いいねぇ
可愛いことばかり言う漣の手を引いて
●美ら海ブルーに燦めいて
「んー……気持ちいー……」
はての浜ではしゃいだ楽しすぎる時間が過ぎていき、今日の宿で汗を流し、ベランダで涼んでいた一ノ瀬・漣(Pour une infante défunte・f44080)は、火照った身体に夜風を感じては、その気持ち良さに目を細める。
「今日もあっという間だったなー」
スマートフォンで撮影した写真をソファに座って確認していた都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)が、漣の向こう側に広がる星空を眺めてはしみじみと呟く。
「だねー」
「でも、ちゃんと二人で思い出しながら手紙だって書けたし、写真も明日の朝刷って入れれば送れちゃう!」
本島も他の島も回っての沖縄旅行。はての浜で思いついた『今日の日を文字に残す』という作業のため、手紙を書いて、送るべき貝殻や写真を二人で選んで。慌ただしいようでどこかのんびりしていた今日もようやく終わりが近づいてきた。
「そうだね、明日の朝投函しよ。あー、明日もう帰る日かぁ……3泊4日とかあっという間だったなー……」
「まーねー……案外早いよね、初日はこんなに休みがー! とか思ってたのにさ」
最初はたっぷり時間があると思っていたけれど、楽しい時間程早く過ぎるのもよくあることで。明日が最終日だと思えば、一抹の寂しさを覚える。南国の楽園とも明日でお別れだ。
「ふふ、帰った翌日から梓また仕事だもんね。……まぁ、そういうオレも新曲作らなきゃだけど……」
お互いに、警察官として、アーティストとしての日常が待っているのだ。
「やだやだ、それを言わないでー。……コンクリートジャングルに戻るより、南国でこうして漣とのんびしてたいよぉ」
「ふふ、それはオレも同じ気持ちだけど……」
仕事中は真面目で厳しくキリッとしている梓が見せるオフの時のゆるい口調も態度も漣は大好きだけれど、UDC蔓延るかの世界では、警察官としての梓も必要とされているのだから。
漣もまたライブハウスで待っているファンのためにも、アーティストとしての活動を止めるわけにははいかない。
この旅行は明日で終わるのは寂しいが、それでも二人に溢れるほどの思い出と楽しさを残してくれた。
「旅行、ほんとに楽しかったね」
「うん、本島も中々楽しかったけど、どこ行っても海綺麗でよかったよねぇー……」
この数日間を思い出し、スマートフォンの写真を見返しては、梓が呟き漣を振り返り、ふとあることに気づく。
「……ってぇ、まぁた漣おサボりしてんの? 髪乾かしてないでしょ?」
先程からベランダで星を見ている漣が、ドライヤーを使っていた形跡はないし、これからやるという風でもない。
「えー? 夜風で乾くよぉ……」
「髪は乾かしなっていつも言ってるでしょ! ほらこっちおいで」
部屋の中の椅子をぽんぽんと叩いて手で示しながら、梓はぷんぷんと怒った体をとっては、漣を呼び寄せる。
「マメだなぁ、梓」
その様子を見て、苦笑しながらも言われた通り梓の傍の椅子に座れば、梓は慣れた手つきで漣の髪をドライヤーで乾かしていく。
「夜風で乾くなんてワイルドなこと言うんじゃありません」
「だって放っておいても乾くし」
せめてもの抵抗のようにそう反論するが、梓に乾かしてもらうのはまんざらでもない。
「そりゃ乾くは乾くけど、夏はまだしも冬なら冷えて風邪ひくかもだし、綺麗な漣の髪がぱさぱさになったりするんだからね」
まだぷんすこしながらも、梓は丁寧にドライヤーをかけてくれる。言葉とは裏腹に、髪に触れる指先や手つきがとても優しいのだ。
その心地よさに漣は思わず目を瞑る。
(「なんだかふわふわな心地になって好き、ってのは秘密」)
とはいえ、口元はその幸福感のせいで、にまにまとして隠しきれてはいないけれど。
「綺麗な髪なんだからちゃんと手入れしなきゃだよ」
漣が気持ちよさそうにしているのは、梓もその指先から感じていて。だんだんと気持ちよくて船を漕ぎそうになっている漣の髪へとヘアオイルを塗って仕上げていく。
「やるとやらないじゃ次の日全然違う……あ、そーだ! 明日お土産買いに行くとして、口コミのいい店探そ!」
うとうととしかけていた漣だが、梓の心躍るお誘いにばちっと目が覚めて。
「いーね! 折角だし、お揃いのなんかお土産買おうよ」
「お揃い? えー、可愛すぎないそれー!」
そう口にしながらも、梓もなんだか学生時代に戻ったような気持ちになる。
(「梓と一緒に修学旅行来れてたらこんな感じだったのかな?」)
武蔵坂学園では学年の違う生徒たちが一緒に修学旅行に行くので、歳が離れている自分たちでも、こうやって一緒に楽しめたのかもしれないなんて想像しながら。
「えへへ、記念に残るのが良いな」
そんな明日への期待を胸に秘め、三日目の夜は過ぎていった。
「よし、送ったぞ~」
「うん、オレと梓の家に沖縄の思い出投函!」
四日目の朝、二人は昨日書いた手紙や写真などを入れた手紙を無事にポストに投函した。
あの時の気持ちをまた帰ってから改めて読むのが楽しみだと思いつつ、二人で口コミも頼りにお土産店へと向かう。
「沖縄のお土産か~。さらに攻めたアロハシャツはどう?」
昨日も二人おそろいのアロハシャツで揃えていたが、沖縄のアロハシャツ――かりゆしウェアには、デザインも様々だ。
「ほら、これなんか南国でしかなかなか着なさそうな」
そう言って梓は、ややサイケデリックな色遣いのかりゆしウェアを手に取る。
「確かに。でもほら、水着の上に着るにはいいよね。オレはこのハイビスカスのとか好きかも」
「お、いいね。南国感。じゃあさ、さらにこれなんてどーよ?」
梓がすっと手にしてかけたのは、ハート型のサングラスだ。おしゃれ女子がかけるイメージが強いが、ゆるゆるモードの梓にもばっちりはまっている。
「ぷっ……梓似合うね! ねーねー、オレはどう?」
そうして漣も色違いのハート型サングラスをかけてみる。
「やだ、漣ったらかわいー! これはもう、二人で最強のパリピを目指してみるのもありかもしれないねぇ……」
そんな風に、わいわいと二人で楽しく沖縄土産を選んで見て回っていたところ、ふと漣の目に留まったのは、青い輝き。
「ねね、梓! このホタルガラスっての、綺麗じゃない?」
「ん、どったの?」
弾んだ漣の言葉に振り返った梓の目に入ったのは、沖縄の海を閉じ込めたような美しいブルーの石。
「ホタルガラス……へぇ、いいねぇ」
透明度の高い煌めく青に、銀箔の光が反射しキラキラと輝きを放つ様子がホタルガラスの名の由来なのだそうだ。
沖縄のお土産としても人気のホタルガラスは様々なアクセサリーとしても売られている。
「ピアスとか……あ、指輪もある! ねぇ梓、指輪にしよ!」
特に指輪が気に入った漣の様子に、梓はその可愛さに思わずわしわしと頭を撫でつつ頷いて。
「うん、指輪。お揃いな」
「ん、お揃い!」
嬉しそうな漣の笑顔を見たら、またわしわしと梓は頭を撫でるのだった。
二人で一緒に見た沖縄の海と同じ美しい青の石がついた銀の指輪を選んでは、早速購入。
「ギター弾くときは首から提げるだろうけど、今は……」
二人で選んだ指輪を早速嵌めてみては、しっくりとくるその姿に嬉しくなる。
「どう、梓?」
「ん、よく似合ってる。……さ、漣」
そう言って自身も指輪を嵌めた梓がそっと漣に手を差し出して。
その手に自分の手を重ねて、漣は今ともにある幸せを噛みしめる。
ふたり重なった指には、一緒に見た海の色が燦めいていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
高沢・麦
まーほちゃん!
帰りがけにふらっと現れて声かけ
旅行幹事お疲れありがと!楽しんだよーそりゃもー全力で余すことなく!
全身沖縄の装いで沖縄ヒーローとしてもやってけそーっしょ?
思いつきで創良くん振りまわすのも悪いから3日目は独りで体力勝負のアクティビティ詰め込んだの
ダイビングしてパラセーリングしてしてカヌーして森林探検して野生動物探して洞窟行って
成功して失敗して空振りして夕陽見て星空観て
ぶっ倒れるまで遊んだ時に感じるガイアパワーの満ちてる感じがすげー良かったんだけどさー?そこで
あっ、これ修学旅行だったわ。
って思い出したわけ!
団体行動して誰かと一緒にいた方が良かったなって反省した!
だから今日は戻ってくるみんなの顔を見よーと思って
帰る前に寄りそうな場所で待ち伏せー
みんな良い顔して帰ってくるもん
楽しい旅行だったんだろうってさ、嬉しくなるよね!
真秀ちゃんも楽しめた?なんつって
きっと楽しかったろーなって分かってて聞いてんだけど
俺は来てよかったよ!
お礼言おうと思って声かけたんだわ
またこういうイベントよろしく!
●過去と未来を繋ぐ縁
美ら島を巡る旅行もいよいよ最終日。
沖縄でこうして過ごすのも、武蔵坂学園で訪れた修学旅行から数えれば早十年。きらきらと輝いていた懐かしい青春時代の思い出だ。
しかも灼滅者としてダークネスと戦っていたのは過去のことかと思えば、最近猟兵なるものにも覚醒し、ゲームで見たようなファンタジーやら近未来やらな世界に加え、自分たちが暮らしていた地球によく似た異世界が存在することを知り、そこに行って世界を救うなどという、情報量が多すぎる事態に直面した。
「でも結局は世界が違おうが、やることは変わらないんだよね」
三日間沖縄を楽しみつくした高沢・麦(栃木のゆるゆるヒーロー・f45122)はそう思い出を振り返ってしみじみと呟く。似たような異世界と言われようが、この世界の栃木だって愛すべきご当地であるし、この沖縄の海や動植物とふれあった時間に感じたガイアパワーは、まがいものなどではない。
サイキックハーツ大戦後、麦が気を配ったのは一般エスパーたちのこと。突然に寿命以外のあらゆる死を克服し超人類となった人々が戸惑うのは自明で、そんな彼らの立場に立って世界を見渡し、どうすればいいかを考えてきた。そして今もエスパー化に馴染めなかった人々に対するケアを行っているのだ。
世界は違えど、そこに困っている人々がいるのなら。自分がやることは何も変わらない。
人々を苦しめるような敵が出れば戦い、異世界の人だろうが、持ち前のコミュニケーション能力でふれあい、力になるのは変わらない。相手が栃木を知らなかったとしても、推し物産を知ってもらうことも好きになってもらうこともできるはずだ。
ひとまず今回は沖縄旅行。敵はいないから全力で遊んで、気がついたらあっという間に迎えた最終日。学生時代でも、最後にお土産を買うのが定番だった。だから、皆に会えるとしたら国際通りではないかと思ってきてみたのだが――。
「あ、いたいた! まーほちゃん!」
たくさんの観光客が行き交う通りの中に、見知った顔を見つけ、麦は全力でぶんぶんと手を振って声をかけた。
「あ、麦先輩!」
その姿に気づいた真秀も同じように元気に手を振り返す。
「沖縄旅行楽しかったですか?」
麦の方へと駆けて来た真秀は、全身沖縄装備な麦の格好に笑顔を浮かべている。
「真秀ちゃんは、旅行幹事お疲れありがと! 楽しんだよーそりゃもー全力で余すことなく!」
「ですよね! だってその格好……」
「ん、これ? そうそ、沖縄に着くなり全身で沖縄を満喫することにしてさ。沖縄ヒーローとしてもやってけそーっしょ?」
「ふふ、ほんとそうですね! 創良先輩からも少し聞きましたよ」
一日目には鮮やかな紅型のエコバッグの、二日目はやんばるの森の写真が送られて来たのだと真秀が言う。
「そうそ、学生以来の紅型体験も最高に楽しかったし、大自然を感じながらの読書体験も贅沢な時間だったよね」
二日間は創良に付き合ってもらって文化系のアクティビティを楽しんだ。とはいえ、思い付きで創良を振り回すのも悪いからと、三日目は独りで体力勝負のアクティビティを詰め込んだのだという。
「ダイビングしてパラセーリングしてしてカヌーして森林探検して野生動物探して洞窟行って……」
「わわ、沖縄満喫詰め合わせセットですね!」
「そ! もちろん成功もすれば失敗もして……空振りもあったし、それでも太陽浴びて、夕陽見て、星空観て……ぶっ倒れるまで遊んだ時に感じるガイアパワーの満ちてる感じがすげー良かったんだけどさー?」
そこで麦はふと我に返ったのだ。
「あっ、これ修学旅行だったわ……って思い出したわけ!」
「え、たくさん満喫して、じゅうぶん修学旅行じゃないですか?」
麦の言葉に真秀は首を傾げる。
「わたしは琉球ガラス体験もしたけど、他はほぼスイーツ満喫三昧です!」
「あはは、それは真秀ちゃんらしくていいと思うよ! でもほら、誰かと一緒にだったわけでしょ?」
「そうですね、くるみちゃんや陽桜ちゃんに付き合ってもらって」
「そこ! ほら、せっかくの修学旅行なんだから、団体行動して誰かと一緒にいた方が良かったなって反省した!」
「あー、そこですか!」
とはいえ、前半は創良と一緒にいたのだから、しっかり修学旅行としても楽しんだのではと真秀は思うのだが。
「いや、もちろん昨日も楽しかったんだけどね。でもせっかくの機会だからさ」
懐かしい顔もちらほら見えて。昔よりは丸くなったという自覚はあるが、ついつい自分の思う道を行く性格は変わっていないのかもしれない。
でも、そう思ったのならまた行動を起こせるはずだ。
「だから今日は戻ってくるみんなの顔を見よーと思って。帰る前に寄りそうな場所で待ち伏せー」
「なるほどです! 国際通りならお土産を買いに立ち寄る確率高いですもんね」
そう言って真秀も頷く。
「そうそ、真秀ちゃんに会うまでにもちらちらっと知ってる顔見つけたんだけど。みんな良い顔して帰ってくるもん」
その表情を見れば、楽しい旅行だったんだろうと容易に想像がつき、麦も嬉しくなるのだ。
「ふふ、良かったです!」
「真秀ちゃんも楽しめた?」
そう聞いてはみたものの、麦は真秀の表情からその答えをわかっているようだった。
「はい、それはもうもちろん!」
「だよね、きっと楽しかったろーなって分かってて聞いてんだけど……もちろん俺は来てよかったよ!」
だからありがとうと丁寧に感謝を伝えてくれる麦へと真秀も良かったですと満面の笑みを浮かべて。
「麦先輩、わたし思うんです。世界は想像以上に変わっちゃって、なんだか戦いも続いているけど……でも、あの学生時代の思い出はかけがえなくて。何よりもこうして今もみんなと顔を合わせることが出来ることが幸せだなって」
「うん、俺もそんなこと考えたりしてた! こうやってまたみんなで再会できたのも何かの縁ってゆーか……その機会を与えてくれてありがとう!」
この旅行を計画したのはふとした思い付きからだったけれど、その根本にあったのは学生時代の懐かしさと楽しい思い出の数々。こうして皆に喜んでもらえたことは、真秀にとっても本当に幸せなことだった。
「こちらこそ、参加してくださってありがとうございます。みんなにもたくさん喜んでもらえて……またこういう企画出来たらなって思います!」
「やった! またよろしくって言おうと思ってたんだ!」
「はい、任せてください! そうだ、麦先輩。せっかくだし、スイーツでも食べませんか? あそこからなら通りがよく見えるし、また知った顔に会えるかもしれませんよ」
真秀が指差したのは、通りに面したジェラート店のテラス席。
「お、いいね! 地元素材のジェラートでも食べながら、みんなに会えるよう待ち伏せだー」
「わたしにも、三日間の冒険、聞かせてくださいね!」
晴れ渡る南国の空の下、通りを行く人の顔は皆明るい。
その後――麦はまた、たくさんの懐かしい顔に再会するのだった。
大成功
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