サーマ・ヴェーダは彼我を概算しない
メルヴィナ・エルネイジェ
メルヴィナの普段のお勤めの風景のノベルをお願いします。
以下を参考としてください。
●メルヴィナの役目
メルヴィナはリヴァイアサンの巫女であり、海竜教会の司祭です。
●お勤めの内容
リヴァイアサンのお告げを伝える事です。
リヴァイアサンは海に関する多くの事を知っています。
これは広域通信網が失われた現代において、大きなメリットを持っています。たぶん。
メルヴィナはリヴァイアサンの声(厳密にはなんとなく意思が伝わってくる)を聞くことのできる唯一の人物です。
●祭事
日々のお祈りなどを執り行っています。
リヴァイアサン教を信仰する著名人が亡くなった際には、葬儀を担当します。
なお水葬です。
●天気予報
海域の天候を報せます。
これによりエルネイジェの海運の安全性が守られています。
「3日後に大きな嵐がくるから船を出してはいけないのだわ」
●地殻変動
海底プレートの動きや海底火山の活動の予兆を伝えます。
「この海域の火山が噴火しそうなのだわ。島ができるかも知れないのだわ」
●漁獲量の決定
リヴァイアサンは水産資源の増減を察知できます。
「今年はここの海域は禁漁なのだわ」
「こっちの海域は夏先まで大漁なのだわ」
なお、エルネイジェでは密漁は重い罪が課せられます。
「エルネイジェや周辺諸国の雇用と食糧事情を守るためなのだわ」
●領海侵犯の監視
他国の船やキャバリアが入り込むとリヴァイアサンが気付きます。
「北西の海域で変な船がうろうろしてるのだわ」
大抵はエルネイジェ海軍が対応に当たります。
リヴァイアサンが危険な存在と判断した場合は、メルヴィナがスクランブルさせられます。
「夜中にやられると本当に迷惑なのだわ……」
●領海の範囲
曖昧です。
エルネイジェはリヴァイアサンの警戒域=我が国の領海と一方的に主張しています。
周辺国からはこれを非難する声も上がっています。
「国が勝手に決めてることで、私が決めた訳じゃないのだわ」
●リヴァイアサンの思惑
人間を使って自分の縄張りを管理しています。
リヴァイアサンは海は常に調和が取れた状態であるべきと考えています。
現在は機械神と崇められていますが、元々は超常的な巨大生物です。
元いた世界(不明)で本来の姿(真の姿)だった頃は、海の生態系の頂点に君臨していました。
例えるならレジェンダリー版のゴジラです。
●メルヴィナの持つ影響力
エルネイジェはリヴァイアサンとその巫女の存在により、他国と比較して、海洋での経済・軍事面に置ける優勢を得ています。
なのでメルヴィナの持つ影響力は非常に大きいと言えます。
近頃のメルヴィナは、自分の持つ影響力を自覚して少し図太くなりました。
「私のお告げを聞けなくなると困るのはあなた達なのだわ」
●メルヴィナを欲しがる勢力
上記の理由に加え、第二皇女という身分(第一皇女より娶るハードルが低い)から、メルヴィナとの政略結婚を狙う者は少なくありません。
また、エルネイジェ政府もメルヴィナを外交のカードとして利用しようとしています。
かつてメルヴィナが一方的に破棄した婚約(まだ有効)も、そういった政治的背景があります。
逆に言えば、ルウェインのような社会的地位を持たない者との結婚はメリットがありません。
●お勤め中の服装について(登場画像)
由緒正しいリヴァイアサン教の修道服です。
かなり攻めたデザインだと自覚しています。
「大胆過ぎるのは分かってるけど、伝統だから仕方ないのだわ……」
「ルウェインは何とも思わないのだわ? それはそれでなんだか腹が立つのだわ……」
●ルウェインに対する感情
嫌いではなくなりました。
好きになるには切掛が足りない状態です。
「約束はちゃんと守れる人なのだわ」
ルウェイン・グレーデ
メルヴィナとの合わせノベルとなります。
●ルウェインの役目
メルヴィナの身辺警護係として聖竜騎士団から派遣されています。
●具体的な業務内容
メルヴィナに付いて回ってあらゆる脅威を排除することです。
「メルヴィナ殿下に害を及ぼす者の死。それが俺だ」
●業務中のルウェイン
「メルヴィナ殿下のお側にいられる……こんなに嬉しい事はない!」
騒ぐとメルヴィナの邪魔になるのは分かってるので静かにしています。
●ルウェインの立場
海竜の大剣を賜った事でメルヴィナの伴侶とされました。
その証として海竜教会からは海竜の外套を贈られました。
ルウェインは無名の一兵卒で下級貴族です。
リヴァイアサン教の宗派内では
「我らが機械神がお選びになられたのなら仕方ない」
という扱いです。
議会政府は
「認められない」
「メルヴィナには議会に定められた婚約者がいる」
「海竜教会の一方的な主張は受け入れられない」
「国益や国際問題に影響する」
といった見解を示しています。
●それらに対するルウェインの立場
一貫した立場を貫いています。
今はお仕えしているという認識です。
「全てはメルヴィナ殿下の御心のままに」
「しかし伴侶というのは幾らなんでも時期尚早過ぎるのでは……」
「メルヴィナ殿下を慕う心に嘘偽りはなくとも、メルヴィナ殿下の御心が動いてくださらねば」
「それに、今の俺はまだメルヴィナ殿下に並び立てるほどの人間とは思えない」
●メルヴィナの服装について
結構攻めたデザインだとは思っていますが、意識しないように頑張っています。
「なんと艶かしい……いかん! 煩悩よ消えろ! 消えろったら消えろ!」
●緊張
血筋とは血統。
誰もが人は脈々と紡がれてきた意味を内包するものである。
全て平等に、だ。
だが、平等であるが上下はある。
生命のどれ一つとっても唯一であることは語るべくもないが、しかし、そこに上下という概念は常に付きまとうものだ。
それを無視して理を語るのならば、価値観が歪んでいくのは必定であろう。
クロムキャバリアのアーレス大陸の覇権を争う小国家『エルネイジェ王国』においては、貴族制度が取り入れられている。
貴族を貴族たらしめるのは、受け継がれてきた血脈ゆえであるが、それは結局のところ、力ではなく立場でしかない。
生まれ出るところの差異でしかない。
しかし、『エルネイジェ王国』の王族は違う。
語る通り、人の生命は唯一だ。
だが、価値には上下が生まれる。
なぜなら、人は比べる生き物だからだ。
他者なくば自己を認識できない獣のことを人間という。
社会というものを形成して、自然の猛威から己等を守ろうとすれば当然生まれるシステムであるとも言えた。
「そういう意味では『リヴァイアサン』様は、そうした理の外にあられるのだな」
ルウェイン・グレーデ(メルヴィナの騎士・f42374)は海竜教会の扉の前に立ち、独りごちる。
その隣には彼の乗騎『ヴェロキラ・イグゼクター』が漆黒の装甲と共に夜の帳の中にあった。
いつでも緊急出動ができるように炉は温めてある。
彼の任務は、『エルネイジェ王国』第二皇女であり、海竜教会が戴く機械神『リヴァイアサン』の巫女であるメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)の身辺警護である。
元は下級貴族であるルウェインが就くことのできる役職の天井を知るのならば、それは天井破りの如き出世であったことは言うまでもない。
地面につきたて柄に両手のひらを置いた彼の剣……『海竜の剣』の刀身が夜空の星々の光を受けて僅かに輝いている。
無論、彼の本来の所属は『聖竜騎士団』だ。
有事となれば『聖竜騎士団』の団員として行動することになる。
だが、彼が手にした『海竜の剣』は、所謂、特権の象徴であった。そうした有事に対して『リヴァイアサン』の巫女であるメルヴィナの有事を優先することができる。
彼が下賜された大剣には、『リヴァイアサン』の巫女の伴侶という意味がある。
夜風にはためく海竜の外套は、海竜教会からも彼の地位が約束されたものでもある。
『リヴァイアサン』から与えられた『海竜の大剣』は正しく、彼をただの階級貴族の一兵卒から引き上げる規格外たる品物であった。
己等が戴く神そのものが選んだのだから、そこに人間である己たちが意見を挟む余地はない、と。言外に諦念が見て取れることは言うまでもない。
同時にルウェインに対しては認めこそすれど、干渉はしない、と言っているようなものだった。
議会政府は強硬な態度を取っている。
すなわち、メルヴィナの外交カードとしての強みを彼の存在が地に失墜させるものであったからだ。
事実、メルヴィナは政略結婚によって友好国へと嫁いでいる。
一方的とは言え、破棄した婚約は未だ有効であるのは、彼女がリヴァイアサンの巫女であるという海洋勢力の強化が無効化されることを恐れてのことだ。
事実上は関係解消であっても、未だ外交カードとしては失われていないと議会政府は主張するものであった。
「浅ましいものだな」
ルウェインは、そうした事情を知ってはいたが、だからなんだというのだ、というスタンスを貫いていた。
国益や国際問題など知ったことではない。
確かに己は『エルネイジェ王国』の騎士だ。だが、その前にメルヴィナの騎士なのだ。
であれば、第一に考えるべきことはメルヴィナの感情である。
「それを推し量れずして、国益? 認められぬなどと」
周囲の空気が重たくなっていく。
剣の柄においた手から骨が軋む音が響く。
こめかみに浮いた血管が図太くなければ、今頃ルウェインは血の汗を噴出していたことだろう。
彼にとって最大の事柄は常にメルヴィナのことなのだ。
ならば、この場合議会政府の物言いは己に対する侮辱ではなくメルヴィナに対する侮辱であると捉えるものだったのだ。
「ルウェイン」
「ハッ!」
夜の帳の中に響いた声にルウェインは即座に膝を折った。
項垂れる頭に注ぐ玉のような声に胸が知らずと高鳴る。
「北西の海域で変な船がうろうろしているのだわ」
「北西……エルネイジェ海軍への連絡を」
「いえ、『リヴァイアサン』が言っているのだわ。『あれ』は私達で対応すべきなのだ、と。夜中に、本当に迷惑なのだわ……」
どこかふわふわとした物言いだった。
それもそのはずである。
今は夜中。
当然、メルヴィナも就寝していた時刻であろう。
とは言え、敵対する者たちにとって時刻はまるで考慮しないものだ。
それに『エルネイジェ王国』の擁する海域は敵対勢力からすれば広大である。
『リヴァイアサン』がいることを知っているのならば、おいそれ手を出せない領域だ。ならば、搭乗者である巫女を狙うのが定石と言えば定石である。
『リヴァイアサン』の力を発揮するためには巫女の存在が必要不可欠。なら、この時刻に仕掛けてくる、というも頷けるところであった。
「メルヴィナ殿下は、どうかお休みください。不肖、このルウェイン・グレーデ! 神明を賭して不埒者を退治してご覧にいれましょう!」
「あっ、待つのだわ……!?」
面を上げて宣誓したルウェインは目を見開いた。
そこにいたのは女神であった。
いや、メルヴィナは常に女神である。
神々しく、夜の帳の如き黒き髪に煌めく星々の瞬きのような艶。
深海の如き色合いに輝きを放つ青い瞳。それは天上の宝石と言われても信じるほどの美しさである。
そうした容姿の全てをルウェインは崇拝していた。
見慣れていたのかと言われたら、それは否である。見慣れてなどいない。
何度拝見してもメルヴィナの姿というものは、ルウェインにとって言葉に尽くせないほどの輝きを放つものであった。
一秒とて直視すれば常人は脳が焼かれて廃人になる美しさだと思っていた。
だが、愚鈍なる常人たちは、鈍感故にメルヴィナの姿を直視しても網膜が焼かれていないだけなのだ。
ルウェインほどになれば、常に脳が焼かれっぱなしである。
それはそれでどうなのかと問われれば、ルウェインは己が果報者であることを知るのだと応えるだろう。
敬愛するメルヴィナの身辺警護を任されていることは、焼かれた脳を常に活性化させてくれるものであったからだ。
常にウッキウキである。
「そ、その御姿は……! 失礼いたしました! この夜半においてもまだ執務中であったとは!」
再び、ルウェインは頭を垂れた。
だが、彼の盲目にはメルヴィナのリヴァイアサン教の修道服姿が焼き付いていた。
「……」
ルウェインのその態度にメルヴィナは胸の奥でモヤモヤとしたものが立ち込めるのを感じたかもしれない。
彼女の身にまとう修道服は、優位所正しいものである。
確かに?
ものすごく攻めたデザインであることは承知している。
だが、伝統だから仕方ないのだとも思っている。
なにせ、リヴァイアサン今日の修道服と言ったら、その大変に大変なデザインをしているのだ。
全体的なシルエットだけ見たのならば、なるほどシスターである。
しかし、細部を……いや、男性の視点で見るのならばどうしたって視線が誘導されてしまう箇所があるだろう。
そこだけ! なんていうか! すごく! 扇情的なのである!!
ルウェインもまた理解している。
だが、意識すると大変に無礼なのではないかと思っていたのだ。
確かに由緒正しいのだろう。
だがしかし……!
メルヴィナの美しさと扇状的なデザインが合わさるとどうなる? 知らんのか? ルウェインの理性がフル動員されて獣性を抑え込む。するとどうなる? 抑え込まれた煩悩は更に膨れ上がっていくのである。抑えようとすればするほどに、だ。
そういうものなのである。
素数を数えろ。
そんな葛藤をメルヴィナに知られてはならない。
努めて意識しなければならないのだ。
例え、今すぐ面を上げれば、メルヴィナの白磁の如き肌に脳を焼かれるという栄誉に預かるのだとしてもだ。
よ、大将やってる? と暖簾を潜るような所作でもって、その花園へと飛び込みたいと思っていたとしても、深い刺激的なスリットから覗く白い腰部と大腿の海に沈みたいと思っていたとしても、だ!
ルウェインは耐えた。
すんごく耐えた。
それは彼が真摯にメルヴィナの心に寄り添おうとしているがゆえであったが、メルヴィナからすれば、それはそれでなんだか腹立つものであった。
魅力がないということか? と僅かにでもメルヴィナが思っていることをルウェインが理解していたのならば、気の利いたことでも言ったかも知れない。
いや、どちらにせよ不敬罪で首が飛んでるところである。
八方塞がりだ。
「良いのだわ。面を上げるのだわ、ルウェイン」
「ハッ! い、……いえ、しかし!」
「良いのだわ。『ヴェロキラ・イグゼクター』で『リヴァイアサン』の直掩に付くのだわ」
「それは……議会政府の承認をまだ、得られておりません」
「良いのだわ。あれらも私のお告げを聞けなくなると困るのだわ」
ならば、己の決定に逆らうことは許さないと僅かに強権を振るうように彼女はなっていた。
それは独裁者のそれではなく、子どもの僅かなわがまま程度のものであった。
これまでの彼女は言われるままに従うだけの小娘でしかなかった。
祭事や天候予測、地殻変動の情報収集、漁獲量の裁定。果ては領海の監視。
その全てが『リヴァイアサン』ありきであり、その巫女であるメルヴィナを介して伝えられるものであった。
であれば、それはメルヴィナ自身が持ち得る影響力であると言えるだろう。
それをこれまで自覚していなかったのが、メルヴィナの不幸であり、議会政府の幸運であった。
だが、いつだってそうだ。
眠る獅子は眠ったままではない。獅子が目覚めたのならば、これまで不当なる扱いをしてきた者たちを許すことなどないだろう。
つまり、今のメルヴィナはいつだって議会政府に対して牙を突き立てることができる。
だが、それをしない、ということの意味を議会政府も理解しているだろう。
「で、ですが」
「くどいのだわ。私を利用しようとするのならば、それ相応の対価というものを払って貰うのだわ」
メルヴィナの言葉は玉の言葉である。
珠玉の言葉だ。
だからこそ、ルウェインは一音も聞き逃さぬとしていた。
しかし、眼の前のメルヴィナの姿に煩悩が止まらないのだ!
耳ではメルヴィナの言うことを捉えていたが、頭ではなんていうか、こう! その! 破廉恥な煩悩が暴れ狂っているのだ。
「ルウェイン……」
伸ばされた手が頬に触れる。
メルヴィナの香りはまさに大海に抱かれるかのようであったし、白い肌は修道服の暖簾では抑えきれない。もとより抑えるつもりなどないし、主張ばかりする双球が目の前で艷やかに揺れているのだ。
それに己の名を呼ぶメルヴィナの甘やかなことは、それだけでルウェインを天上の極楽を想起させただろう。
……いや、メルヴィナはこんな甘ったるい声で己を呼んだりしない!
これは己の願望!
いや、醜悪なる妄想!
こんな妄想が頭の中を巡っているなどメルヴィナに知られてはならない!
こんな妄想をしてしまう己は、まだメルヴィナ殿下に並び立てるほどの人間とは思えないのだ!
己の心に偽りはない。
だがしかし、己が彼女を慕う気持ちは、己の都合であってはならない。
あくまで彼女の心が動いてもらわねばならないのだ!
「ルウェイン?」
「ハッ! お供させていただきます!」
「よろしいのだわ……それと、なにか言うことはないのだわ?」
「……ッ、ッッ、……~~~ッ、お美しい、です……ッッッ」
揺れる修道服。
ルウェインは今度こそ、己の理性をフル動員させ、ようやく一言を絞り出し、『ヴェロキラ・イグゼクター』と共にメルヴィナの駆る『リヴァイアサン』に随伴する。
事を終えて戻った時、ルウェインはメルヴィナの言葉と姿以外の全ての記憶がすっぽり抜け落ち、出動した際の報告書の作成に非常に苦しむことになるのだった――。
成功
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