不治の|雷棲滅鬼悪《ライスメキア》
●永流姫
「これを」
そう短く告げたのは玲瓏なる声。
文一つ差し出す所作は、たおやかであった。
『世羅腐威無』と呼ばれる坂東武者たちの一派が戴く、やんごとなき身分の姫、『永流姫』は御簾の奥から差し出された文をしたためた者だった。
彼女がそうした文を何故、とは問うことを亜麻色の髪を揺らし、男装の麗人『皐月』は受け取った。
「しかと、拝命仕りました」
「よしなに。しかし、病み上がりに悪いと思っています」
『永流姫』が妖の襲撃によって坂東武者『世羅腐威無』たちの頭目であった『皐月』が傷を追っていることを知っている。
だが、急を要するのだ。
もしも、これを放置すればアヤカシエンパイアの平安結界が破壊されかねない。
「ご配慮、痛み入ります。ですが、恐れ多くも申し上げます。我らは坂東武者『世羅腐威無』。この平安結界を護るために存在しております。むしろ、この文の意味する所……我らの不甲斐なさを証明するところであり、恥じ入るばかりでございます」
「良いのです。人には人の。できることとできぬこと。多くの事柄があります」
「ですが……」
「恥じることも悔いることも必要ありません。我らは人々の安寧のために戦う宿命。であれば……此度のこと、とうてい許容できぬこ」
その言葉に男装の麗人『皐月』は頭を垂れ、受け取った文を懐にしまった。
「では」
「ええ、頼みます。『不死の妖』……皇の残影……今再び災いとして降りかかるというのならば、我らの手でなくとも……必ずや」
『永流姫』は御簾の中から出ることのできぬ我が身を憂い、けれど、託した文が届き、異界よりも現れし猟兵たちが『不死の妖』を討つことを期待するのだった――。
●皇の残影
病は気からと言う。
人間というのはひどく愚かな存在だ。
知性を宿しながら、その知性に振り回される。
体躯は確かに理によって動く。だが時として、理を覆すような驚くべき力でもって容易に体の理を捻じ曲げ、傷つけてしまう。
「そうだな。疫病、なんていうのはどうだろうか? 来る日において疫病が流行り、人々は死に絶える。多くは助からない。……が、この清めの水を飲み干せば助かる、と噂を流布する」
その声は面白そうに笑って配下……とも言い難い程度の小間使である妖……『化け雑色』たちに告げる。
「して、その清めの水、とは」
「馬鹿だな。どうしてそんなに察しが悪いんだ?」
『化け雑色』たちが傅く前にあぐらをかいて座る妖……『不死の妖』こと皇の残影『月華鬼』は心底馬鹿にしたようにため息を付いた。
「清めの水なんてない。適当な井戸水でも汲んで来りゃいい」
「ですが、それではなんの……」
「いいんだよ、それで。実際に疫病が流行るって噂が流れりゃ、人間ってのは勝手に恐慌状態に陥っていくれる。何故かそうした良くないことが起こる、という噂に人間は敏感だ。何の確証もない未来だっていうのに、容易に信じてしまう。そして……」
『月華鬼』は、にたり、と笑った。
「清めの水っていう何の根拠もない、けれど、自分たちを救ってくれるかも知れないものに対して、夢中になる。そして、奪い合うのさ。ただの水をな。時には我が親、我が子すらころしてしまうだろうさ。それくらい、人間ていうのは単純で愚鈍なんだ。で、肝心なのがここからだ」
『月華鬼』は己が封印された社の内側から、小間使である『化け雑色』たちに告げる。
「俺の『不死』の要は、人間どもが流布された噂に踊っていることだ。もうじき、この社の封印も解ける。その時を狙って、あの『雷棲滅鬼悪・永流姫』は必ず……ああ、なんていったっけか……」
「坂東武者『世羅腐威無』、でしょうか」
「ああ、それだ。そいつらを仕向けてくる。別に俺に及ぶこともないが、面倒と言えば面倒だ。それにもっと面倒な連中を連れて来るかもしれない。そいつは、俺にとっても大変都合が悪い。なら、解るな――?」
●アヤカシエンパイア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます」
彼女はそう言って一つの文を広げた。
なんだ? と猟兵たちが首を傾げるのを見やり、ナイアルテは頷く。
「アヤカシエンパイアのとある止事無き御方からのお手紙です」
猟兵たちは、あれ、このやりとり一度あったな、と思っただろう。
差出人は『雷棲滅鬼悪・永流姫』である。
以前も彼女から文を受け取っていたのだ。
「ええと、これによると、ですね、『不死の妖』なる妖の討伐を依頼されているようですよ」
不死?
猟兵たちは皆、訝しむ。
不死の妖。
言葉だけ聞くのならば、オブリビオンなのだろうと理解できる。
「曰く、その妖は戦闘能力こそ他の強大な妖と大差ないものの、何故か如何なる手段を持ってしても殺すことができず、やむを得ず、社に封印するしかなかったのだそうです。その社の封印が解かれようとしている、と文にはあります」
なるほど、と猟兵たちは理解する。
それで己達に白羽の矢が立ったというわけなのだ。
そして、今、アヤカシエンパイアの都では、謎の疫病が流行っているらしい。
身体中に湿疹が現れ、多くがかゆみや赤みを帯びているのだという。
だが、問題は其処ではない。
「どうやら、その疫病、民の皆さんの思い込みによって皮膚疾患が発症しているようなのです」
どういうことだろうか?
「これは恐らく『不死の妖』の目論見なのでしょう。この思い込みによる疫病の流行こそが、不死のヒミツ、なのかもしれません」
まずは、都に赴いて噂の疫病が何のことはない思い込みだということを民衆に伝え、根気よく彼らの心の不安を取り除くことが必要になるだろう。
「不思議なものですね。人の心というものは。ですが、これを利用しようとする妖を捨て置くことはできません。どうかお願いいたします」
そう告げ、ナイアルテは猟兵たちを転移させ、送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
アヤカシエンパイアにて、やんごとなき身分の姫『雷棲滅鬼悪・永流姫』から皆さんの文がとどいました。
不死の妖と呼ばれる、社に封印するしかなかった妖が復活する兆しがあり、これの討伐を皆さんに願ったのです。
ですが、不死の妖は、如何なる手段でも殺すことができません。
この原因を特定し、不死を解除して、これを打倒するシナリオになります。
●第一章
冒険です。
予知によれば、都で大流行している疫病は、疫病ではなく、ただの民衆の思い込みによる湿疹であるようです。
ですが、民衆は流された噂に翻弄され、ただ噂に過ぎないと説得しても中々信じようとはしないでしょう。
そもそも、何故こんな噂が流れ、まことしやかに人々が思い込みで湿疹を発症するようになったのでしょうか。
都の民衆を説得や、治療などで噂はやはり噂でしかないのだと示しましょう。
●第二章
集団戦です。
前章の結果から、不死の妖の『不死の秘密』が判明します。
これを阻むために現れる『化け雑色』と呼ばれる妖との対決になります。
●第三章
ボス戦です。
皆さんの第一章、第二章の活躍によって『不死の妖』の不死性は失われました。
封印から復活を果たした、皇の残影『月華鬼』との対決となります。。
それでは、噂によって思い込まされた病に苦しむ人々を救い、不死の妖を打倒する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『都を襲う疫病』
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POW : 病人を安全で清潔な場所に運び出す/大声で呼びかけ応援し元気を出させる
SPD : 薬学で薬をつくり病人に与える/最新の医術技術で処置する
WIZ : 回復魔法で病を治す/加持祈祷を行い妖気を払う
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「き、清めの水……! それがあれば、この病は治るのだな!?」
「おい、押すな! 清めの水は俺のものだ!!」
「やめろ、独り占めするつもりなのだろう! よこせ!!」
都では、原因不明の湿疹の起こる疫病がはびこっていた。
事実、それは疫病などではない。
だが、流布された噂を信じ込んだ人々が、思い込み効果によって皮膚疾患を引き起こしてしまっていたのだ。
そして、その『清めの水』なるものがあれば、疫病を治すことができるのだという噂もまた都中に広まっていた。
「どうか、どうか清めの水を……幼い我が子がいるのです!」
「嘘を申すな! 貴様には子がいないだろうに!」
「本当です、本当なのです!!」
あちらこちらで清めの水を求める人々が、諍いを起こしている。
その清めの水もまた、疫病が治る確証などない。
だが、誰も彼もが必死だった。
噂を信じ、噂に取り憑かれている。
己が身に降りかからんとする災厄を打ち払おうと必死であったし、そのためならばどんな非道すら厭わぬなくなっていた。
それはもうまるで獣であった。
そんな都の状況を前に猟兵たちは、彼らを救い、この噂の流布を止めねばならないのだ――。
八秦・頼典
●WIZ
平安結界に大きな綻びが生じればそこから疱瘡や麻疹と言った流行病が流行するものだけど、今のところ都の平安結界に大きな綻びが生じている気配は感じられない
十中八九、妖の仕業による一時的なものだろけど…病は気からとも言う
噂に尾鰭が付く前に人知れず闇から闇へと葬る…いやぁ、偉くなる前の|陰陽師探偵《ボク》を思い出すね
さて、久々のお忍びで遊び人の庶民に扮して噂の現場に足を運んでみたけど…うん、これは目にも余る酷さだ
けど、噂好きの京雀が利用されているのならこちらも利用するまでさ
人ごみに紛れ、妖の妖気を感じる御方を宥めるふりをしながら形代を肌に押し付け『病魔召喚』
形代に悪い気を移せば正気に戻るはずさ
都中に蔓延るという疫病。
そのいずれもが、人々の肌に浮かび上がる湿疹であった。
彼らは皆、その異様さに恐怖し、救いを求める。
癒やすには『清めの水』なるものが必要だという噂までが一揃いであったのは、なにか意図されてのことがあるように思えてならなかった。
少なくとも、八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)はアヤカシエンパイアと呼ばれるこの世界が、平安結界によって保たれていることを知る者であるからこそ、この事態に違和感を覚えていた。
「平安結界に大きなほころびが生じた様子はない……だが、現に人々には疱瘡や麻疹ではなく、湿疹が生じている……」
もしも、平安結界にほころびあれば、雪崩込んだ妖たちによって、そのような症状が疫病として見られるはずだった。
だが、それが見られない。
平安結界の様子を見ても、そうではないのだ。
ならば、これは十中八九、妖の仕業によるものだ。
「……病は気からとはよく言うが、今回の仕事は噂に尾鰭がつくまえに人知れず闇から闇へと葬る……いやぁ、偉くなる前の|陰陽師探偵《ボク》を思い出すじゃあないか」
頼典は独りごちる。
敵の狙いがなんであれ、このような暴挙を許してはおけない。
人々の心の安寧。
それこそが、彼の護るべきものであったからだ。
「とは言え、だ。これは目に余る酷さだな」
彼の眼の前では『清めの水』を求める人々が醜い諍いを起こしている。
それが一体なんであるのかもわからず、されど、噂に流されるままに欲し、手に入れた者を襲ってでも手に入れようとする。
価値も変わらず、けれど、眼の前にある物に即物的に飛びつく人の悪性というものを見せつけられているように思えてならない。
「これは噂好きの京雀たちが利用されているのだろうな。であれば、だ。こちらも京雀たちを利用させてもらうまでさ」
そう呟くと往来にて視線がかち合う男がいた。
彼は頼典を睨みつけるままにずかずかと近づいてくるではないか。
「お前! 其処のお前だ! 身なり良いようだが、『清めの水』を持っているのだろう! よこせ!!」
頼典の姿を認め、湿疹が肌に浮かぶ男が掴みかかる。
「おっと、乱暴はしてもらおうか」
ひらりと躱して、頼典は男の腕を掴むより早く、己が手にした形代を湿疹浮かぶ肌に押し付け、舞うようにステップを踏んだ。
「クッ……! いいからよこせ!」
「よこせ、とは言うが何故だい?」
「この疫病を治すためだ! お前が『清めの水』を持っているんだろう! でなけりゃ、そんな肌がきれいなはずがない!」
「うん? 君、見た所、湿疹なぞいないじゃあないか」
頼典はそう告げ、男に押し付けた形代を握りつぶす。
それは取る足らない病魔出会ったがゆえに、容易く引き裂かれる。
するとみるみる間に男の肌に浮かんでいた湿疹が消えていくのだ。
「なに? そんな……ええっ!? な、なくなってる! 綺麗さっぱりに!」
「そうだろう? 何をそんなに憤っているのかわからないが」
「ど、どういうことだ……?」
「心配ならば、君の家族も見てやろう。そうすれば、全部杞憂だってわかるはずだ」
頼典はそう告げ、困惑する男の家族の元へ向かう。
御婦人もいるだろう、というのは計算の内。
何の打算もなく男性を助けるわけがないのである。。だが、頼典は、これもまた一つの役目だと自らに言い聞かせる。
「さあ、向かおうか。細君はどんな御方だい? 娘はいるかい?」
「え、あ」
困惑する男と共に頼典は、論じるよりも示してみせようと手始めの彼の家族を治し、噂の沈静化を図るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
へー、噂でこんなになっちゃうんだぁ。
どこの世界も同じだね、うちの方も噂一つでトイレットペーパーとかすぐなくなるし。
ここは一つ魔法使いとして……この世界だと何かな、陰陽師?巫女?
まぁそんな感じでやってみよう!
まずは辻ヒール!
原因が思い込みなら、治癒力強化したうるうの魔法も効くかな?
この混乱の中じゃ、きっと誰も小さな泡にも治った事にも気付かない。
全員治すと疲れちゃうから、ある程度の人数を治した所で治ってるよって教えて上げよう。
お水が無くても治るんじゃ?
って思った人から症状は治まるはず。
思い込みが強い人は、仕方ないからうるうがこっそり治してあげる。
人の噂も七十五日、ってね!
噂一つ。
たったそれだけで人の理性は儚くも崩れ去るものである。
それを様々と見せつけられているような気持ちになる。
少なくとも杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は、アヤカシエンパイアの都にて起こる騒動を見てそう思った。
人々の肌には湿疹が浮かび上がっている。
そして流布された噂……疫病の流行という情報によって人々は混乱と恐怖で恐慌状態に陥っていた。
明らかに誰かに扇動されているのは間違いないだろう。
「へー、噂でこんなになっちゃうだぁ。どこの世界でも同じだね」
潤は自らの世界でも噂一つでトイレットペーパーが枯渇したことを思い出す。
誰だってそうだ。
我先にと奪うように手を伸ばす。
一種の生存本能なのだとも言えただろう。
けれど、それは正しく状況を認識していないとも言えるだろう。そうなった時、人は理性で行動ができなくなってしまう。
どこまで行っても感情の獣なのだと潤は思った。
けれど、それで人々が傷つけ合うのは見ていられない。
「よーし、ここは一つ、潤が魔法使いとして……えっと、この世界だと何ていうんだっけ? 陰陽師? 巫女? まぁ、そんな感じでやってみよう!」
くるりと身を翻して潤のスカートの裾から水泡が、ふわりと恐慌を起こした人々へと飛ぶ。
それはユーベルコードによって生み出されたものだった。
潤流に言うのならば、魔法だ。
「ふーっ♪」
潤の吐息に流されて飛ぶ水泡が、『清めの水』を求めてごった返す人々の合間を塗っていく。
「それをよこせ! 俺のものだ!」
「これはおっかぁのために! あんた、疫病にかかってないじゃないか!」
「うるさい、だまれ!!」
そんな争いをしている大人と子供。
その間に潤が生み出した水泡が飛ぶ。
ぱちん、と触れて弾けた水泡は、子供の肌に浮かぶ湿疹を即座に治療する。まさに一瞬だった。
『清めの水』を求めて争っていた当人たちですら気がつくことのできないほどの一瞬で、潤の生み出した水泡は子供の肌に浮かんだ湿疹を失せさせていたのだ。
「おい! お前、お前も肌になにもできていないだろ!」
「何いってんだ、おいらだって……!」
「ね、きみ。治ってない?」
潤は子供の背中を軽くつついて、示す。
腕に浮かんでいた湿疹は潤のユーベルコードによって跡形もなく消えている。それを見やり、子供は目を見張る。
どうして、と呆然としていると、その間に手にしていた『清めの水』を奪い取られてしまう。
「あっ! おっかぁの!」
「大丈夫。ね、お水がなくても治るんじゃない?」
「いや、だって……」
「お母さんのところに戻ってあげてよ、きっと治ってるよ」
そうやって潤は周囲の人々にも似たように声を掛ける。
浮かぶ水泡は風に乗って周囲に満ちていく。
こっそりと潤が治療を施したのは、それによって強い思い込みを、ネガティヴなものからポジティヴなものに転化させるためだった。
実際に彼女の言葉に湿疹が治まった人々は『清めの水』を求めなかった。
次々と『清めの水』と呼ばれた水を収めた竹筒をその場に打ち捨てていくのだ。
「ほら、やっぱりみんな思い込みが強いぶん、すぐに治っちゃう」
潤の魔法は、ただ治療するだけではないのだ。こうやって、人の心も救っていくのだ。
「人の噂は七十五日っていうしね――!」
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
もっもっ。あむあむ。もぎゅ。ごっくん。
もっもっ。あむあむ。もぎゅ。ごっくん。
(無心で新作スイーツを貪りつつ、精神力回復中)
(ああ、またステラさんが雄叫んでいる)
いや、そんなことより今はスイーツ。
なんだかみたことないですけど、とにかく甘い!脳に来る甘さ!
えへ、えへへへへ。染みます。いろんなところに甘味が染み込んでいきます……。
(しかしなんか凄い単語聞こえてきましたね。そのうち想像妊娠とかしそうで怖いです)
って、あーあーあー!?
スイーツ!わたしのスイーツ!心の拠り所が!?
演奏?リラックス?
え?蕁麻疹にはスイーツじゃないんですか?
わかりました。わかりましたよぅ。
クラリネットでいきまーす!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!!
香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!
颯爽と美人メイド参上です
こちらはペットの光の勇者
新作スイーツで餌付けはばっちりです
まぁ先日の戦いでは大変お疲れさまでしたからね
さて
謎の疫病ときましたか
聞いている限りでは蕁麻疹ですかね?
思い込みによる発症……
想いがカタチになる……
はっ!?もしかして今ならメリサ様の子供を孕める!?
そういえばなんていうか予兆で聞いた口調
なんかメリサ様っぽかったですけど
ともあれ先に対処が必要ですね
ルクス様出番です
リ・ラ・ッ・ク・ス、できる曲でお願いします
落ち着けば湿疹も消えるのではないでしょうか
その間にメイドは軟膏と包帯でフォローしていきますね!
都が疫病の流行という噂によって混乱し、恐慌状態に陥っていたとしても、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)には関係がなかった。
「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!」
そんな彼女の雄叫びにも人々は反応していなかった。
それはそれでなんだか寂しいことである。
しかし、人々はそれどころではなかった。
流行した疫病。
これを癒やすためには『清めの水』というものが必要なのだという。それを求めて人々は相争い、ごった返す人の中で押し合い、もみ合っていた。
それはまさに獣のような形相であった。
「颯爽と美人メイドの参上です。こちらはペットの光の勇者」
ステラもかまわかなった。
これもまたルーチンというか、お約束というやつであった。
「もっもっ。あむあむ」
ペット扱いされてもルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は平然としていた。
いや、もっと正確に言うのならば。
「新作スイーツで餌付けばっちりです! まぁ先日の戦いでは大変お疲れ様でしたからね」
これくらいは、とステラは寛大な心というか優しさを示しているつもりなのだろうが、はっきりとペット、餌付けって言ってたからね?
「ごっくん」
そんな中、ルクスは無心で新作スイーツを貪っていた。
なにかステラが雄叫びをあげているなぁ、とは思っていたが、今はそんなことよりスイーツなのである。
世はもはや夏!
日照る太陽の光は肌を突き刺すし、容赦なく体が体温を調整せんと汗を噴出させる。
暑い! たまらない暑さである!
こんな時に発売される新作スイーツなど、涼を取るもの以外ありえないだろう。
氷菓。
氷菓子をルクスは無心で書き込んでいた。
とにかく甘く、とにかく脳に直撃する甘さ!
「えへ、えへへへへへ。染みます。色んなところに甘味が染み込んでいきます……」
大丈夫?
なか違法なものとか入ってない?
顔が勇者にあるまじき顔をしているのだが、ルクスは構うことなく新作スイーツの甘さに心底惚れ込んでいた。
「さて、謎の疫病ときましたか。聞いている限りでは、蕁麻疹ですかね?」
ステラはそんな餌付けをしたルクスを引き連れて、都の様子を見やる。
大騒ぎをしている彼らの肌を見ると、湿疹が発生しているよう思えた。
それは思い込みによる発症なのだという。
「……」
ステラは考えた。
「想いがカタチになる……」
なんか言ってるなぁ、とルクスは思った。
こういう時のステラはたいていどうしようもないことを言い出すんだよなぁ、とパクパクしながら思った。止めることはない。なにせ、新作スイーツを食べるのに忙しいからだ。
「はっ!? もしかして今なら『メリサ』様の子を……!!」
ステラは想像妊娠することを決めた。決めるな。
いけるかもしれない、とステラは己の創造力を総動員する。やばすぎる。
そんなステラになんかやばい単語が聞こえてきたなぁ、と思った。そのうち、想像妊娠とか言い出しそうで怖いなぁと思っていた。
だが、新作スイーツに忙しいのだ。
「ともあれ、先に対処が必要ですね。ルクス様出番です」
「あーあーあー!? なんで、なんで取り上げられましたか!?」
「あのですね、こういう場合、恐慌状態に陥っている皆さまを落ち着かせなければならないのです。ですから、ルクス様の出番なんです。遺憾ながら」
「スイーツ、わたしのスイーツ! 心の拠り所が……え? 蕁麻疹にはスイーツですよ。ステラさん知らないんですか?」
「それはあなただけです! いいですか、あくまでリ・ラ・ッ・ク・ス、できる曲ですからね!?」
念押しである。
その圧迫感にルクスは、頷く。
「わかりました。わかりましよぅ。クラリネットでいいんですよね?」
「ちゃんとしてください」
「やってますけど、いつも!?」
「やってないから言っているんですが!?」
そんな二人のやりとりと共に都の騒動は沈静化に向かうのだった、たぶん――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
雅な都のはずがこれは酷い…!
すっかりパニック起こしてやがる!だがこんな状況では無理もなしか…
だったらベルト・ラムバルドが病める民を救う為の騎士道の権化である事を示してやるのよ!
貴人のカリスマっぷりを見せつけ堂々と参上!
諸君!私は猟兵…もとい騎士どおっと!?待て待て!大勢でよるな!
痛い痛いわかったわかった!落ち着け!今すぐ治療を始めるから!ちゃんと列に並んで!も~!
UCでサクラミラージュから桜の精の學徒兵達を召喚!彼等の治癒力で疫病の治療を行おう!
身もふたもない噂を流しやがって…噂流した奴を懲らしめてやる!
…しかし湿疹か…痒そうだな…なんだか痒くなってきた…あー嫌だ痒い!ぼりぼり…
「これは酷いな……」
ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)は、アヤカシエンパイアの都に巻き起こる疫病騒動による人々の恐慌状態を見やり、思わず声を上げた。
雅な都。
風流によって維持される平安結界。
その名とは裏腹に今まさに人々は疫病に効果があると言われる『清めの水』を求めて相争っていた。
「すっかりパニックを起こしてやがる!」
ベルトは、だがしかし理解もできていた。
人は得体のしれないものを恐れる。
それが疫病のように目に見えず、理屈もわからないものであればなおのことである。これが人の理性の限界だとでも言うかのように人々は『清めの水』を奪い合っている。
醜い獣そのものだ、これでは、とベルトは思っただろう。
しかし、このような人々を救うのが己の騎士道であると定めたベルトは、都の往来にごった返し人々を前にして声を上げた。
「諸君! 私は猟兵……もとい騎士……」
ベルトは威風堂々たる佇まい、貴人としてのカリスマを発露するように参上し、人々の耳目を集めた。
「騎士? 何だ、騎士って?」
「もしや、清めの水をもっているのか!? ならそれをよこせ!」
「こっちもだ! 足りないんだよ!」
「おっと!? まてまて! 大勢で寄るな! って、痛い痛い! わかったわかった! 落ち着け!」
「落ち着いていられるか! 疫病が!」
「ええい! これだから」
ベルトは嘆息しながら詰め寄る人々を落ち着かせようとするが一人では無理なことだった。
一人で無理ならば、人数を増やすまでである。
「頼んだぞ、超弩級!勇侠桜春隊(オソレシラズノユウキョウオウシュンタイ)!」
ベルトのユーベルコードによってサックラミラージュより、桜の精の學徒兵を呼び寄せる。
「さあ、治療をはじめよう!」
ベルトは呼び出した學徒兵と共に湿疹を肌に浮かべる人々の治療を始める。
なんてことはない。
これはただの思い込みによる湿疹症状でしかない。
疫病も何もないのだ。
だが、この噂を流した張本人は、人々が混乱に陥ることを望んでいる。
「碌でもない噂を流しやがって……」
ベルトは治療を続けながら、噂を流したやつを懲らしめねばならないと思った。
人々の不安を煽り、対立させる。
仮に疫病騒動が収束しても人々の心にはしこりを残すだろう。
それがどんなに面倒なことかをベルトは知っている。
だからこそ……。
「……なんだか痒くなってきたな……あー嫌だ痒い!」
ベルトは人々の湿疹を見て当てられたのか自分まで痒くなってきたのだ。
かるく肌を書きながらベルトは、碌でもない噂を流したものを絶対に許しはしないと、決意を新たにするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『化け雑色』
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POW : 隠し尾の一撃
【蜥蜴の如き尾】が命中した対象を切断する。
SPD : 蜥蜴草子
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【手足の爪】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 見様見真似の歌詠み
敵のユーベルコードを【和歌を書くための短冊】に呪文として記録し、戦闘終了まで詠唱で使用可能。敵を倒せば戦闘後も永続。
イラスト:佐鳥キヨ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……あれなるは猟兵、か?」
疫病騒動の渦中、『清めの水』を配っていた雑色たちは皆、一様に突如として現れて人々を治療していく猟兵たちの姿を認めて、表情を歪めた。
彼らは『不死の妖』の配下だ。
無論、この引き起こした疫病騒動は彼らが原因だ。
そして、何故そんなことをしでかしたのかと言われれば、この噂によって生まれた人々の猜疑の心、他者を疎む心、そうした負の感情のエネルギーこそが『不死の妖』、その『不死』たる秘密そのものであり、源泉なのだ。
これを猟兵たちが疫病騒動を終息させることで、その力が弱まってしまう。
「それはさせてはならぬ」
「だが、疫病はやつらによって終息させられんとしている」
「ならば、力ずくで人間どもを恐怖に叩き落としてやればよい!」
雑色たちは、顔を見合わせ、その身に封じた妖気を解き放つ。
「わ、わああああっ!? ば、化け物?!」
変化を解いた『化け雑色』たちは、疫病騒動によって都の往来に集まった人々を襲い始める。
もはや手段を選んではおられない。
手っ取り早く、人々の負の感情を得るために『化け雑色』たちは人々を襲い、己たちの目論見を阻んだ猟兵達を始末遷都するのだった――。
八秦・頼典
●WIZ
はは、遂に尻尾を出したようだね?
噂によって広がる人心の乱れが妖の狙いであったか
けども噂とは、迷信とは蘇り流布されるもの
ここで華麗にボクが妖を祓ったとしても、いつかまた『清めの水』が復活するだろう…だったら徹底的に否定させねばだ
御符で結束されたお忍び服を陰陽師装束に変化させた姿は、狛犬と狐を掛け合わせた顔の面を被りし謎の陰陽師こと…陰陽師探偵ライデン
肌爛れ
諍ひの火種
播きしもの
報ひはわれに
あらずやと知れ
和歌と共に舞い起こすは黒き『形代招来』
中身はキミ達が撒いていた湿疹の病をボクなりに弄った呪詛返しだ
治したいのなら、その『清めの水』を使ったらどうだい?
まぁ、もっと酷い目に遭うだけだろうけどね
人の弱き心を利用し、不死の秘密とする。
それがこの疫病騒動の源であり、元凶であった。
「はは、遂に尻尾を出したようだね?」
だがしかし、悪の栄えた試しはない。たとえ、善が世界のすべてにいきわたることがなくても、だ。
人の心は弱い。
どうしようもなく。
状況に流され、誘惑に負け、悪道へと進むこともあるだろう。
それは灯火がないからだ。
正道に導く光がないからこそ、人は迷う。
ならばどうする。
「この探偵陰陽師ライデンが示してみせようじゃあないか!」
噂によって人心が乱れる時、妖は力を増す。
それを狙うということは、それだけ妖たちの悪心が強大になってきているという証拠。
噂はやはり噂でしかない。
けれど、噂は迷信とともに蘇り、何度でも流布されるものだ。
たとえ、己が妖を祓ったとて、いつかまた『清めの水』騒動は息を吹き返すだろう。
ならば、徹底的に否定するのだ。
「肌爛れ
諍ひの火種
播きしもの
報ひはわれに
あらずやと知れ」
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は、ついに姿を表した噂の流布を担っていた妖『化け雑色』たちの前に和歌の奏と共に現れた。
「この和歌は……! まさか!」
「そのまさかさ!」
頼典は陰陽師装束を変化させ、狛犬と狐を掛け合わせた面を被って『化け雑色』の前に姿を現す。
「陰陽師探偵ライデン、推参!」
手にした形代が宙を舞う。
小さな形代を前に『化け雑色』たちは笑う。
「そのような小さな形代で何ができる!」
「記録するまでもない弱き力などいらぬわ!」
「そうかな? 一つ一つは弱くとも、戦いの基本というやつは、数なのさ」
形代招来(カタシロショウライ)によって飛び出した形代は、『化け雑色』たちの一撃で消滅していく。
だが、『化け雑色』たちの顔色が変わる。
「くっ、どれだけ叩いても、次から次に……!」
そう、彼らを襲うのは800を超える無数の形代。
小型故にぐるりと『化け雑色』たちを取り囲む形代は、一気に雨のように降り注ぎ、彼らの体を打ちのめす。
「馬鹿な、これだけの数を操るなど、容易なことではないはず、それを……!」
「それだけじゃあないさ。形代に込めるは呪詛返し……そう、君等が振りまいた疫病……湿疹の病。ボクなりに弄ったものさ」
「ひ、ヒィィッ!? な、なんだこれは!? この呪詛は!?」
『化け雑色』たちの肌に浮かぶは、無数の湿疹。
「治したいのなら、その『清めの水』とやらを使ったらどうだい? まぁ、もっとひどい目に遭うだけだろうけどね」
頼典は己が操る形代を持って、『化け雑色』たちを取り囲み、散々に打ちのめし、人々の心を弄び、恐怖に叩き落とした意趣返しを呪詛でもって見事に為し得るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
わ、何してんの!
ついに手段を選ばなくなってきたね!
とりあえず雷の属性攻撃を込めた泡を飛ばして敵を攻撃!
マヒ攻撃で皆が逃げる時間稼ぎをしよう。
人が戦場から離れたら本格的に戦闘開始!
うるうの魔法でやっつけてやるもんね!
で、この人達はその魔法を真似しちゃうんだっけ?
うーん、うるうのは殆どかわいい女の子にしか許されない感じの魔法なんだよね。
あ、これはどう?
真似して良いよ、使いこなせるなら!
とゆー事で、シェイプ・オブ・ウォーター!
深海適応出来ない子には扱いにく過ぎる、玄人好みの魔法。
皆深海で和歌とか詠んだ事とかないよねぇ?
うるうの人魚のような高速泳法に見惚れながら、危険なバブルワンドの泡に囲まれちゃえ!
都の往来にて現れた妖『化け雑色』。
彼らは疫病騒動の渦中にいた。
なぜなら、その手には人々が疫病から逃れるために必要だと噂されていた『清めの水』があった。
それも大量に、だ。
竹筒であるが、中身はただの水でしかない。
特に効能があるわけでもなんでもない。
「クッ……猟兵が嗅ぎつけてくるとは! だが、ここで連中を排除すれば!」
彼らは猟兵達を力業で排除せんとしていた。
少なくとも、そうしてしまえば人々は疫病の噂を再び信じ、翻弄され、争い、醜くもその悪性を発露し続けるだろう。
それこそが『不死の妖』の『不死の秘密』なのだ。
「わ、何してんの!」
「ええい、邪魔をするな!」
『化け雑色』の前に立ちふさがった杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)。
彼女はついに妖が手段を選ばなくなってきたと感じていた。
手にしたバブルワンドから生み出された雷の属性を宿した泡が『化け雑色』たちを囲む。だが、それを彼らは弾くように押しのけ、潤に迫る。
「わっ、こんな人の多いところで何考えてるの! 迷惑でしょー!」
「知ったことか! 人間は相争っておればいいのだ! 我らが主の『不死の秘密』を知ったからには、貴様らも生かしてはおけぬ……ぐっ!?」
『化け雑色』たちは、しかしそれ以上進めなかった。
何故ならば、潤の放った雷を宿した泡は、触れただけで『化け雑色』たちの動きを麻痺させたのだ。
「動けぬ……! だが!」
「動くんだー! 仕事熱心なのもいいけど、もうちょっと力抜きなよ-!」
「うるさい! 貴様らはあの御方の恐ろしさを知らぬから、そう言えるのだ!」
「そうなの? でも……みんなが逃げる時間は稼げたよ! じゃあ、うるうの魔法でやっつけてやるんだから!」
「ふっ……貴様ごときのっユーベルコードなぞ!」
『化け雑色』は手にした短冊を掲げる。
そう、『化け雑色』は敵のユーベルコードを短冊に記録して放つことができるのだ。
つまり、潤の手札がそのまま利用されてしまうのだ。
厄介極まりない。
けれど、潤は笑む。
「え~? うるうのユーベルコードはかわいい女の子にしか許されない感じなんですけど~?」
「許す許さぬもないのだ! 貴様のユーベルコードは全て!」
「そう? じゃあ、これはどうかな! シェイプ・オブ・ウォーター!」
潤の瞳がユーベルコードに輝き、ソーダ水の雨が降りしきる。
それは周囲を深海と同じ環境に変化させ、深海に適応した者しか動けないのだ。
「お、重たい……体が……押しつぶされる!?」
「そうだよ~深海適応できないでしょ。まさに玄人好みの魔法。それに、深海で短歌とか詠んだことないよねぇ?」
潤は深海と同じ環境となった宙を人魚のように高速で泳ぎように飛びながら、手にしたバブルワンドを振り回し、泡を生み出す。
「ぐっ、く……動けぬ……!」
「ふふん、危険な泡に囲まれちゃえ!」
潤の放った雷宿した泡が一瞬で『化け雑色』たちを打ち据え、その身を焼き焦がすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
まさかの実力行使です!?
しかし!
こういうときこそ真価を発揮するのが勇者というもの。
一般の人たちを護るときの勇者は無敵なんですよ!
さらに!
腐敗した官僚を成敗するときの勇者は、とてつもなく輝くのです!
助さ……じゃない、ステラさん、懲らしめてやりなさい!
えっ。なんでですかー!
ここはノってくれるところじゃないんですか!?
(【光の勇者、ここに来臨!】発動失敗)
たしかに紋所とかないですけども!
わかりましたよぅ。やりますよぅ。
なんにしても、役人が民衆を襲うなんて成敗して良しの案件です。
先ほどのスイーツでこちらは充電満タンですからね。
遠慮なしにやらせてもらっちゃいます!
【悪魔のトリル】いっけー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
まさか!?
ルクス様の演奏に耐え切れず正体を?!
これが無意識勇者ロール!?
勇者って理不尽
さて
畏れを集めるが妖の習性ならば
何ら不思議ではありませんが
看過する訳には
ええ、ここはルクス様の独壇場でしょう
誰が助さんですか
せめてやべーメイドといいなさい
じゃなくて
えーなんで私なんですかー
|光の勇者《変なバフ》があれば大丈夫
ぐっどらっく
まぁせっかくなので歌いますか
希望を伝えるのはいつも歌から
ならば
【アウルム・ラエティティア】
大丈夫です
未来が理不尽に壊されるならば
その理不尽を壊しましょう
この終末が作為ならば
その思惑を壊しましょう
私たちは猟兵にして|終焉を終焉させる者《エンドブレイカー》なのですから
ついに正体を現した妖『化け雑色』たち。
身なりを見れば、下級貴族の装いであることがわかるだろう。だがしかし、彼らは『化け雑色』と呼ばれる妖。
『不死の妖』の配下として、その『不死の秘密』の源である人々の不安や恐怖。そうした感情を増幅させるために、この疫病の噂を撒き散らしていたのだ。
「まさか!? ルクス様の演奏に耐えきれず正体を!?」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は思わずうめいていた。
確かにリラックスできる演奏を、とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)に頼んでいた。
だがしかし、まさかこんな事態になるとは思ってもいなかったのだろう。
「これが無意識勇者ロール!? 勇者って理不尽ですね」
「それをステラさんに言われるのもなんかちょっと違う気がするんですけど……」
「いえ、どう考えても理不尽じゃあないですか? 演奏を止めても、妖しいやつ、演奏を止めなくても演奏で正体を暴かれる。どうあっても正体がバレるクソゲーというやつじゃあないですか」
それもそうかもしれないな、とルクスは我がことながら思った。
だが、それどころではない。
あの『化け雑色』たちは人々を襲わんとしている。
力付くでも人々を恐怖で縛り上げ、『不死の秘密』の根源たる感情をかき集めようとしているのだ。
「実力行使ってやつですよね? しかし、しくじりましたね!」
「しくじった? 我らがしくじった、だと?」
ルクスの言葉に『化け雑色』たちは困惑した。
「ええ、勇者とは! こういう時こそ進化を発揮するものなんです! 一般の人たちを護るときの勇者は無敵なんですよ!」
「やはり理不尽じゃないですか」
「ステラさんは、ちょっと今いいところなんで! ……さらに! 腐敗した官僚を成敗する時の勇者は、とてつもなく輝くのです! スケさ……じゃない、ステラさん、懲らしめてやりなさい!」
「誰がスケさんですか。せめてやべーメイドといいなさい」
それもどうなんだろうか。
ステラからすれば、こういうときはルクスの独壇場である。
ならば、自分の出る幕はないように思えてならなかった。
「えっ。ここはノってくれるところじゃないんですか!?」
「|光の勇者《変なバフ》があれば大丈夫。ぐっどらっく」
「ぐっどらっくじゃないですよぉ!」
「ごちゃごちゃとわけのわからぬ会話をしおって! 貴様らを引き裂いて、人間どもの恐怖をさらに煽ってくれるわ!」
周囲の建物の壁を蹴って『化け雑色』たちは一気に二人に襲いかかる。
3次元の動き。
直線的ではあるが、壁を蹴り、大地を蹴り、二人の四方を取り囲む『化け雑色』たち。
その爪の鋭さは剣呑そのもの。
「確かに紋所とかないですけども! わかりましたよぅ。やりますよぅ!」
「ならば、私は歌いましょう。希望を伝えるのはいつも歌から、ならば! アウルム・ラエティティア!!」
ステラの口から紡がれるのは、衝撃波を伴う歌声。
「未来が理不尽に壊されるのならば、その理不尽を壊しましょう」
「ぐっ、何だ、この衝撃波は!」
「この終末が作為ならば、その思惑を壊しましょう。なぜならば、私達は猟兵にして|終焉を終焉させる者《エンドブレイカー》なのですから」
ステラの歌声は、人々を恐怖と不安で縛ろうとする理不尽そのものたる妖を吹き飛ばす。
壊す。
そう、その恐怖と不安とによって生み出された理不尽なる終わりを破壊するのだ。
そして、ルクスはその歌声に添えるように旋律を響かせる。
それはステラの歌声よりも、さらには破壊的な衝動を齎す、悪魔のトリル(アクマノトリル)であった。
「なんにしても、役人が民衆を襲うなんて成敗して良しの案件です! 先程のスイーツでこちらは充電満タンですからね! 遠慮なしにやらせてもらっちゃいます!」
ルクスは奏で続ける。
『化け雑色』たちが、己たちの三半規管を狂わされ、周囲を飛び回る子すらできずに、のたうつように地面を転げ回る。
それは破滅への第一歩。
逃さず放たれる衝撃波が、彼らを散々に打ちのめし、ルクスは紋所はなくとも、そのユーベルコードの光灯す瞳でもって、彼らの悪行を照らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『皇の残影『月華鬼』』
|
POW : 傷風弄月
【佩刀する三振の太刀それぞれ】で虚空を薙いだ地点から、任意のタイミングで、切断力を持ち敵に向かって飛ぶ【用いた刀に応じて水/雷/光の霊刃】を射出できる。
SPD : 狂花睡月
自身の【周囲に舞う桜の花弁を変化させ小鬼】に【鋭い刃を持たせた上で死の】属性を付与し、レベルkm/hの飛翔能力・五感共有・捕縛能力「【狂花睡月】」を与える。
WIZ : 瞬花終月
自身の【顔とその額より伸びる禍々しき鬼角】を目視した対象に【旧き知古として認識させる記憶障害】の精神状態を与え、無防備に自身に近付かせる。
イラスト:ぽんち
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠白矢羽・尭暁」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
皇の残影『月華鬼』は嗤っていた。
都に蔓延る疫病。
ありもしない思い込みの産物である、その騒動にひどく愉快な気分になっていた。
「あいつら馬鹿だなぁ。疫病なんて何もないのに。あんなに夢中になって。愉快だ。もっともっと、踊れ。不安と恐怖とに駆られて、ずっとずっと踊り続けて、俺の不死のために感情を湧き上がらせ続けてくれよ?」
このまま続けば、きっとそうなる。
一度は封印されたが、今度はうまくやる。
そのための『化け雑色』たちだった。
だが。
「……あいつら、まったく下手を打って」
息を吐き出す。
『化け雑色』たちは皆、猟兵達によって打倒されていた。
恐らく此方の『不死の秘密』も理解していることだろう。だから、猟兵たちはまずさに気に噂の沈静化を行ったのだ。
「まあ、それでも。俺が負ける道理はない」
不死の秘密なくとも、そもそも強大なのだ。
あれは保険程度でしかない。
「たかが猟兵ごときに遅れを取る理由なんて何一つない」
にたり、と笑う。
その美しき姿とは裏腹な、醜悪な笑み。
人々の不安と恐怖とを糧に不死を得た者は、その性根に相応しい悍ましき笑みと共に猟兵たちの前に降り立つ。
「お前たちがむざむざ殺られる姿を見て、また人間どもは恐怖と不安に歪んでくれるだろうさ。であれば、何の問題もない。さあ、やろうか」
これは己がための宴だというように皇の残影『月華鬼』は嗤うのだった――。
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
まだかゆい~が親玉か!出遅れちゃったがなんとかなる!
かっこつけやがって!しょーもない噂を流した罰をその身で償うがいい!
騎士道精神の権化のベルト・ラムバルドだってかっこいいぞ!
キャバリア乗って出撃!
おっと二刀…いや三刀流!?三属性のオカルトチックな斬撃とは雅!
回避で手一杯!ハイテクのキャバリアとは相性悪いか!
古風で雅な妖は厄介…だが現代を刹那的に生きる妖怪達はもっと強いのよ!
UCでカクリヨの妖怪達を召喚!
そして化けるはUDCやらで猛威を振るうスギ花粉の嵐!
むはは!目ぇしょぼしょぼ鼻水ずるずるで麗しい顔が無残だな!
不死であろうとなかろうがアレルギーは防げんよ!
…まずい…目がかゆい…
「まだかゆい~!」
ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)は、騒動の渦中にありながら、かゆみと戦っていた。
自らもかゆみと戦うことになろうとは思ってもいなかった。
結局、疫病騒動、その噂を撒き散らし、人々の間に恐怖と不安とで不和を呼び込み、恐慌となしていた元凶である『化け雑色』たちは排除された。
「後は! 親玉のみ! 出遅れちゃったが、なんとかなる! なんとかする! なんとかなれ!」
ベルトは己がキャバリア『パロメデス』を駆り、その暗黒騎士の如き姿でもって、『不死の妖』とも呼ばれた皇の残影『月華鬼』を睨めつけた。
「なんだ? 鋼鉄の巨人……だとでも言うのか、さかしいな」
『月華鬼』はベルトの駆る『パロメデス』を前にして動揺していなかったが、苛立つようだった。
「かっこつけた物言いしやがって! しょーもない噂を流したくせにな!」
「ハッ、確かにしょうもないが、しょうもないのは人間だろう? あの程度の噂で右往左往して可笑しいったらなかったぜ?」
「ふん、その罪、罰を持って贖ってもらうとしようか!」
「なら、どうするよ!」
「こうするんだよ! 騎士道精神の権化、ベルト・ラムバルドだって、かっこいいぞってところを見せてやるんだよ!」
ベルトと共に『パロメデス』が疾駆する。
迫るは、『月華鬼』。
振るうは三つの刀。
斬撃が虚空より現れ、瞬時に三連撃……それも水、雷、光といった異なる属性のユーベルコードとなって『パロメデス』を襲うのだ。
「ぬ! 二刀流……三刀流か! しかもオカルトチックな斬撃とは雅!」
「わかるか? だとしても、この斬撃は躱せまい!」
「いいや、手一杯であるが買わせぬほどではない!」
ベルトが駆るキャバリア『パロメデス』が迫る三つの斬撃を受け止め、いなし、躱す。
それはギリギリの攻防だった。
走る斬撃は『パロメデス』の装甲の上を撫でるように傷跡を生み出し、けれど、どれもが紙一重であった。
「古風で雅な妖は厄介……だが、現代を刹那的に生きる妖怪たちはもっと強いのよ! 頼んでいいか、涙の東方妖怪軍団(アノトキタスケタトウホウヨウカイノミナサン)のみなさん!」
それは世界を跨いで現れる東方妖怪たち。
以前、ベルトが助けた者たちだった。
「恩返しをするのはいまよ! で、何をすればいい!」
「ありがとう! では、変化によって猛威振るうスギ花粉の嵐!」
「そんなものでいいのか! では!」
どおろんと、妖怪たちは変化するはスギ花粉の嵐。
それは黄色い猛威。
「なんだ、これは……んぶえっくしょっ!」
「ハハハ! 不死であろうと無かろうと、アレルギーは防げんよ!」
「あれるぎぃ?」
「わからんか! だが、止まらんだろう、くしゃみが! ハハハ、その麗しい顔が無惨だな!」
ベルトは高笑いしながら、くしゃみの止まらなくなった『月華鬼』を見て高笑いする。
だが、キャバリアのコクピットの中にまで侵入してきたスギ花粉にベルト自身もまた……。
「ぶえっくしょい! ……まずい……目がかゆい……!」
「同士討ちだろうが、これは!」
「そうとも言う……ぶえっくしょ!」
それは妖怪たちの変化が解けるまで続き、互いに痛み分けとなるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
これが綺麗系ラスボスってやつですか。
最近は改心して終わる物語も多いですけど、今回はなさそうですね。
しかしなんでラスボスは不老不死とか多いんでしょうね?
そんなになりたいでしょうか?
だいたい不老不死になってなにしてるんでしょう。
今回のボスだと、一日中鏡見てニヤついてるくらいしかしてなさそうなんですが。
世界の迷惑ですから、せめて田舎でスローライフしててくれませんか?
って、え!?
わたしボールに入らないといけないですか!?
しかもツッコませておいて放置プレイ!?
最近わたしの扱い雑ですよね……(拗ね拗ね
いえ、誤魔化されはしませんよ?
サポートはしますけど!
あとでちゃんとボール買ってくださいよー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
これが黒幕!
ちょっとイケメンなのがイラっとしますね
しばき倒したいその笑顔
さぁ、ルクス様、出番です! 君に決めた!!
いえ、別に乗らなくてもいいですが
さっきルクス様のターンだったので今回私でと思って
信じる者は救われる
ですが、掬われる可能性だってあるのです
信仰を流布する者が悪意を持つならば
いーえ、善悪など問うつもりはありません
私が戦う理由は一つ
エイル様が困っているからです
というわけでルクス様出番ですテイク2!
今度こそ行きますよ!
【テールム・アルカ】起動!!
人間サイズにリサイズしたパルスマシンガンとフレイムランチャーを
両手に構えて真正面から制圧射撃
さぁ、消毒のお時間ですよ!!
皇の残影『月華鬼』は涙を拭った。
花粉に変化した妖怪によって著しく、その鼻腔の粘膜にダメージを受けていたのだ。
涙に濡れた顔すら、なんだか耽美に思えてしまうのは美形であるが故か。
「ちょっとイケメンなのがイラっとしますね」
「これが綺麗系ラスボスってやつですよね」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は『月華鬼』のくしゃみの残滓に塗れた顔を見ても、なんていうか、一切ギャグ堕ちしないところに、そんなふうに思っていた。
「最近は改心して終わる物語も多いと聞きますけど、今回はなさそうですね」
「しばき倒したいその笑顔」
「ずび、何を悠長に語っているんだか知らないが」
「しかしなんで不死になりたんでしょうか?」
「永遠不滅を求めるなんて、生きていりゃ望むものだろう。金、権力を手に入れた後に望むのはいつだって永遠の生命だぜ?」
「だいたい不死になってなにするんですか? 一日中鏡見てニヤついてるんですか? 暇なんですか? それより必死に生きていた方がよくないですか? 世界の迷惑ですから、せめて田舎でスローライフしててくれませんか?」
それは、どの道放っておいてはくれないフラグでしかないような気がする。
「ますます理由のわからないことを言うな」
周囲に舞う桜の花弁が子鬼に変化していく。
その手には死の属性宿した刀。
触れれば、容易く死を齎す力にステラはルクスの背中を叩いた。
「どうでもいいです。さぁ、ルクス様、出番です! 君に決めた!!」
「って、え!? わたしボールに入らないといけないんですか?!」
「いえ、それは確実に違うやつです。それに別に無理して乗らなくていいのですよ」
「じゃあ、ツッコませないでもらえます!?」
「さっき、ルクス様のターンだったので、今回私で、と思いまして」
「最近、わたしの扱い雑ですよね……」
ルクスは拗ねた。
拗ねに拗ねた。
だが、安心して欲しい。最近ではない。ここ数年ずっとな気がしないでもない。
「信じるものは救われる。ですが、掬われる可能性だってあるのです。信仰を流布するものが悪意を持つならば」
「何が悪いんだよ。人間だって同じようなことをしているじゃあないか。それと何が違う? 救われなかったと嘆くものは、自分では何もしなかったものだぜ?」
子鬼たちを使役して『月華鬼』は笑う。
「いーえ、善悪など問うつもりはありません。私が戦う理由は一つ。『エイル』様が困っているからです。というわけでルクス様出番ですテイクツー!」
「ごまかされませんよ!? いえ、サポートはしますけど」
「近どこそ、テールム・アルカ! 武装、転送!」
「魂の演奏は、すべてを貫きます!」
響くは爆音。
ルクスの演奏は爆発。爆発が芸術なら、芸術は爆発である。
ならば、ルクスの生み出した音の洪水たる爆発は即ち、芸術である。
「あとでちゃんとボール買って下さいよー!」
「ほしいんですか、ボール」
それでいいのか、とステラは思いながら、迫りくる子鬼たちをリサイズしたパルスマシンガンとフレイムランチャーで薙ぎ払いながら、首を傾げる。
ボールを買って投げたら取りに行く、とかそんな感じなのだろうか。
ますます持って、ワンコに思えてならない。
「まあ、わかりました。消毒のお時間が済んだ後、ですね――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杓原・潤
予知によるとお顔を見ちゃうとダメみたい。
えー、せっかくの美形枠のお顔を見れないのぉ?ざーんねん!
まぁいいや、性格悪そうだし。
それに相手を見ないでやっつければ良いって言うのは分かってるからね!
とゆー事で出ておいで、うるうのサメ達!
サメはね、目玉をぐるっと回して視覚を守れるんだって。
その時はもちろん、あなたの顔どころかなんにも見えないよ。
その代わりにほら、ポルチーニ?ロレンチーニ?とか言うので獲物がどこにいるかは分かるから、そこそこ正確に噛みつきに行くんじゃないかなぁ?
うるうは後ろを向いて、気配感知の魔法でサメ達のサポートをするよ。
やっぱり外見だけじゃなく中身も良くなくっちゃ。
うるうみたいにね!
皇の残影『月華鬼』。
そのユーベルコードは、彼の顔、禍々しき鬼角を直視した者に認識障害を与えるものであった。
恐るべき力であることは言うまでもない。
もしも、直視してしまったのならば、猟兵であれど耐えることのできない認識障害によって、狂わされることは間違いなかった。
「えー、せっかくの美形枠のお顔見れないのぉ? ざーんねん!」
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は心底残念がっていた。
他の猟兵たちの語る所を聞く限り、『月華鬼』は大層に美形であるようだった。
けれど、見てしまえば、その認識障害によって潤はきっと旧き知古として認識させる記憶障害によって戦えなくなってしまう。
そうなれば、潤と言えど危うい。
「見たって構いやしねーだろうよ。俺の顔を見たいんだろ?」
潤は、ぞわりと背筋に走る声に身を震わせた。
「いーよ! なんか性格悪そうってことだけは、見なくたってわかるもん!」
潤は『月華鬼』に背中を向けて目を瞑っていた。
確かに声も美形を感じさせるものだった。
けれど、潤は特別残念に思うことはなかった。どこまで行ってもオブリビオンはオブリビオンであるし、己は猟兵なのだ。
相容れることはない。
なら、やることはひとつなのだ。
「とゆーことで、でておいで、うるうのサメたち!」
己の背中に立つであろう『月華鬼』へと向けて、召喚したサメを飛ばす。
「ハッ、鮫と言えど俺の顔と鬼角を見たのならばなぁ!」
「知らないの? サメってね。目玉をぐるっと後ろに回して視覚を守れるんだよ?」
「なに……?」
「つまり、あなたのこと、うるうみたいに、みなーいってこともできるんだよ!」
「だが、それでは俺を攻撃などできないだろう!」
潤は、その言葉にフフンと鼻を鳴らした。
心底馬鹿にしたような響きに、『月華鬼』は、ひくりとこめかみを脈打たせた。
「知らないのー? 海の深くてくらーい場所でも、お魚がどこにいるのかを探るためのえっと、ボルチーニ? オレンジーナ?」
ロレンチーニ器官。
微弱な電磁波を感受する器官である。
それを備えたサメたちは、目視でなくても『月華鬼』の所在を把握できているのだ。
「ともかく、そのなんかすんごいサメの特性で! シャーク・トルネード!」
回転ノコギリを生やしたサメたちが空を飛び、まるで深海のように『月華鬼』を見つけて迫るのだ。
「冗談も大概にしろよ! なんだこいつらは!」
「あははっ、すっごいでしょ、うるうのサメたち! やっぱり外見だけじゃなく中身もよくなくっちゃ」
潤は背を向け、メをつむりながら、思う。
もしも、自分が恋人にするのならば、やはり内外伴ったイケメンがいい。
理想のタイプは。
「うるうみたいな人がいいよね!」
だって、と潤は笑む。
「うるうはどっちも完璧だもの!」
自分で言うな、という声がシャーク・トルネードの最中から聞こえたような気がしたが、潤は聞かないふりをして、サメたちの乱舞に『月華鬼』を飲み込むのだった――。
大成功
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八秦・頼典
●POW
ようやく黒幕のお出ましか
ご覧の通り、キミが配下を使って流した噂は新たな噂で上書きされつつある
しかし、また新たな噂を流布されては困るし…噂は噂のまま消えて貰おう
既に相手は自身の不死性がなくなったと自認している
となれば、相手も躍起になって激しく抵抗しつつ都の外へと逃れよう
京の町並みは碁盤目の整然さから迷いにくいようで、同じような通りが多くあるから意外と複雑でもある
相手は皇族の残影であればそれを利用するだろうが…残念だけどボクも日頃の夜回りでどの通りが交わる場所か分かるし、困った時は通り名の数え唄もあるしね
阿近と吽近に先回りして退路を封じ、徒手空拳から『霊剣鳴神』を抜刀した閃光と共に…成敗だ
「ようやく黒幕のお出ましか」
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は面の奥で笑む。
すでに都にて広がった噂は、猟兵たちの活躍に寄って疫病騒ぎを収束に向かわせていた。
それは『不死の妖』である皇の残影『月華鬼』の『不死の秘密』である人々の不安や恐怖といった感情を濯ぎ落とす行為であった。
故に『月華鬼』は不死の力を大きく落としていたのだ。
そこに猟兵たちの攻勢である。
「……だけどもな、人間てのは愚かだ。どんなに否定しても、心の隅にひっかかりがるもんだ。そこに不安や恐怖ってのは住み着くものなんだよ」
「だとしても、だ。キミが配下を使って流した噂は新たな噂で上書きされつつある」
「フン、知ったことかよ」
構えるは、帯びた三連刀。
「お前たちを消して、また流せばいいだけの話だ」
「そうかね。まあ、それは困る。なら……噂は、噂のまま消えてもらおう」
頼典もまた構える。
敵の不死は失われている。
であれば、敵の狙いはなにか。
つまるところ、己達猟兵の排除。それが敵わないのであれば、体制を整えるために都の外に出ようとするだろう。
それに、都を逃げ回れては厄介だった。
碁盤の目とも称される都の造りは単純であるが、しかしどれもが似たような通りになっている。
見分けがつかない中、逃げ込まれたのならば再び尻尾を掴むのは容易ではない。
「逃がしはしないよ」
「ハッ、そうかよ。どこまでも自信たっぷりのようだが……!」
放たれる三連撃。
三つの異なる属性の斬撃は、頼典を襲う。
対する頼典は徒手。
得物もたぬ相手へと放たれた瞬時の三連撃は、過たず彼の体を切り裂くだろう。
だが、頼典の霊力を第方にして生み出された霊剣――霊剣鳴神(レイケンナルカミ)は、一瞬にして三連撃を受け止めていた。
「……俺の斬撃を一瞬で止めた…?」
「そうさ。ボクの霊剣は伸縮自在なる霊気の剣。であれば、刀身を曲げることも伸ばすことも容易というわけさ。だから、こんな使い方もできる!」
頼典が振るう霊剣が鞭のようにしなって弧を描きながら『月華鬼』を追い詰める。
身を翻す『月華鬼』。
逃げに転じようというのだろう。
だが、そこに先回りした式神が退路を阻むように『月華鬼』へと激突するのだ。
「ぐっ……式神が!」
「人の心の弱さにつけ込んだ噂によって得た不死……そして、それを人の心を傷つけて維持しようとするなど言語道断だよ」
頼典はユーベルコードと霊力によって形成された刀身を振るう。
それは弧を描きながら『月華鬼』の体躯を切り裂く。
「く、そ……こんな、ところで……! 俺は、まだ!」
「いいや、ここまでさ……成敗」
頼典は切り裂かれた『月華鬼』の姿を認め、その体が霧散するのを見ただろう。
もはや都には不穏なる噂はない。
あるのは、人知れず悪鬼を滅ぼし、人々に平穏を与え、影から影に飛ぶ猟兵たちの活躍の噂だけだった――。
大成功
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