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ケルベロス・ウォー⑩〜黄金のグリモワール

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●ケルベロス・ウォー
 十二剣神『宣託者グリモワール』は、己がグリモアによる予知の光景を認め頷くような所作を見せた。
「六番目の猟兵達よ、君たちのグリモアもそうだが」
 その言葉は困惑というより、驚愕であっただろうし、同時に猟兵を脅威と認めているようであった。
 むしろ、十二剣神と呼ばれる強大な力を持つデウスエクス特有の不死ではない存在を見下すような雰囲気すらなかったし、それどころか猟兵たちに一定の敬畏すら持ち得る様子であった。
 謂わば、それは挑戦者の気概とも言うべきものだった。

「まさか『マインド』まで急造してみせるとはね」
 それは未来を見るがゆえの言葉であった。
 猟兵達は『まだ』、『宣託者グリモワール』が語るところの『マインド』を急造してすらいない。
『宣託者グリモワール』の背後に現れるのは黄金の人型思念兵器。
「『マインド』……まさか、これすらも君たちはすでに知り得ているし、建造することができるのか。グリモアが『列強化』していないのみならず、この土壇場で『マインド』を急増する選択すらして見せるとは」
 その瞳には未来が視えている。
 猟兵達は、グリモア猟兵、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)を振り返った。

「どうやら十二剣神『宣託者グリモワール』もまた『予知能力を有している』ようです」
「いや、一つ訂正させてもらおうか。六番目の猟兵。僕の保つグリモアよりも君たちのグリモアのほうが優れている。それはれっきとした事実だよ」
「……! ですが、その背後の人型思念兵器は……!」
「そうだ。これが『マインド』。思念によって形を自在に変える超兵器。この群れで僕は君たちに挑む」
「やはり……ですが!」
 ナイアルテの言葉を遮って『宣託者グリモワール』は告げる。
「そして、君は次に『こう言う』だろう」
 その顔にかざした掌に浮かぶ瞳が猟兵たちを見据える。

『皆さん、『惑星ロボ建造計画』を思い出してください。スペースシップワールドにおいて、クエーサービーストの外郭……『マインド』と決戦配備のための資材を合わせれば、『急造思念兵器』でもって、あの黄金の『マインド』たちに対抗することが可能です』

 重なる『宣託者グリモワール』とナイアルテの言葉。
 微笑む口元。
『宣託者グリモワール』とは裏腹にナイアルテは己の言葉を先回りされたことに、歯噛みする。
 それが『宣託者グリモワール』の予知能力の証明であったからだ。
 いや、違う。
 ナイアルテはこれまで多くの猟兵たちに予知した事件の詳細を語ってきた。
 それを。
「セリフを横取りしないでいただきたいです! それは! 私の! 役目です!!」
「ふ、そこに起こる君の顔も視えていたよ。だが、君も視ていただろう? ここからは読みあいと思念のぶつかりあいだ」
『託宣者グリモワール』の背後から『マインド』軍団が動き出す。
 そう、猶予はない。
 しっかりと迫る『マインド』軍団に抗することができるだけの思念を編み上げることができるか、それすらも定かではない僅かな時間。
 けれど、やるかしかないのだ。

「さあ、グリモアよ。いい予知を識らせてくれよ。彼ら新型グリモアの予知をうわまるような希望に溢れる奴を頼む……!」
「ならば、見せましょう。他ならぬ皆さんが抱く希望こそが、あなたの予知した未来をさらに希望に溢れたものにするはずだと! そうですよね、みなさん!」
 ナイアルテの言葉に猟兵達は頷く。
 予知能力と予知能力。
 思念と思念。
 その激突は、この先の未来に希望を齎すか――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『ケルベロス・ウォー』の戦争シナリオとなります。

 十二剣神『宣託者グリモワール』と呼ばれる謎多き存在との決戦シナリオです。
 その二つ名が示す通り、グリモアによる予知能力を有する上に、黄金の人型思念兵器『マインド』の群れを駆動させ、襲いかかってきます。
『マインド』は生身では、おおよそ太刀打ちできない脅威の超兵器です。
 ですが、皆さん猟兵は既に、スペースシップワールドでの戦いにおいて思念兵器の建造ノウハウを獲得しています。
 そのため、決戦配備のための資材から、一戦程度であれば保つであろう『急増思念兵器』を造り、それを利用して『宣託者グリモワール』と『マインド』軍団に対抗しましょう。

 ※プレイングボーナス……急造思念兵器を造り(デザインや能力を発案すること)、グリモワールとの戦いに持ち込む。

 それでは、狙われた地球を守るために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『十二剣神『宣託者グリモワール』』

POW   :    第四十四の予言「逃れ得ぬ死」
【敵の防御・回避手段を予知して】から発射した【「避けられぬ死の運命」を宿すグリモア】を、レベル回まで跳弾できる。跳弾回数に比例して命中率・致死率が向上。
SPD   :    第六十六の予言「動かざる未来」
【敵の移動先を予知して】から、物質を透過し敵に【行動不能】の状態異常を与える【「不動の定め」を宿すグリモア】を放つ。
WIZ   :    第百壱の予言「楔の巨獣マインドノソリン」
【敵の使うユーベルコードを予知して】から1体の強力な【四足獣型に変形した思念兵器マインド】を召喚する。[四足獣型に変形した思念兵器マインド]はレベル秒間戦場に留まり、【予知された技をかき消す鳴き声と肉弾戦】で攻撃し続ける。

イラスト:ぽんち

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

儀水・芽亜
スペースシップワールドには行ったこともないのですが、皆さんから話を聞いて造ってみましょうか。

私の背後に展開して、音波を収束する、黄金のステージ『ハーモニクス』。
「楽器演奏」「歌唱」「全力魔法」「衝撃波」「範囲攻撃」「音響攻撃」のブラストヴォイスを増幅し、自在に収束・拡散出来る音響施設型思念兵器です。
その性質上、放たれたグリモアは私に届く前に弾き飛ばしますし、彼女の|思念兵器《マインド》にも破砕ダメージを与え、行動を封じます。
グリモアワールさんも音波に巻き込めば、五体がズタズタになるはずですが。

さあ、今最新の予知に従った攻撃をどこまで予知出来るか、試してみてください、創成の“託宣者”!



「なるほど」
 十二剣神『宣託者グリモワール』は己が視た予知を興味深そうに吟味するようだった。
「君は己の喉を起点にした能力者なんだね」
 その言葉に儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)は、やはり己の行動を予知されているのだと理解しただろう。
 グリモア。
 それは猟兵達によって未来に起こり得る事件の予知を示すものである。
 故に猟兵達は敵対するオブリビオンの行動を読み解き、対抗策を打ち出してきた。
 だが、ここに同じ予知能力を持ち得る者がいる。

「選択の余地を与えない、というのはなかなか良い手なのではないかな?」
「であれば、最新の予知に従った攻撃を何処まで予知できるのか試すとしましょう」」
 芽亜の瞳がユーベルコードに輝くのと同時に彼女の背後に黄金の思念兵器が構築されていく。
 全世界決戦体制によって集められた資材とクエーサービーストの外郭。
 これらを組み合わせることによって彼女が作り上げたのは己が発する音波を収束させる黄金のステージ。
「『ハーモニクス』プラス、ブラストヴォイス!」
 芽亜の声帯より発せられる絶唱。
 切り裂くような高音が倍音となって解き放たれ、黄金の思念兵器を介して迫る黄金の人型思念兵器『マインド』へと放たれる。
 自在に収束と拡散を行う思念兵器から放たれたユーベルコードの一撃に『マインド』たちが吹き飛ばされていく。

「考えたようだけれど、僕の不動のグリモアは君に届く。なにせ、物質を透過させるということは、妨げることができない、ということだからだ。確かに君のユーベルコードは強烈だ。急造とは言え『マインド』で増幅する、ということも含めて、ね」
 だが、と『宣託者グリモワール』は言う。
 己が放った不動のグリモアは芽亜へと放たれている。
 ブラストヴォイスはグリモアを弾き飛ばせない。
 あくまで彼女の声は、己を襲う敵対者全てを無差別攻撃する力である。

 ならば、これは結局どういうことなのか。
 予知と予知。
 思念と思念。
 それが互いに先読みをし、先んじようとする動きと退路を封じようとすうる動き。
 同時に放たれたそれは、互いの身をやはり同時に打ち据えるだろう。
 芽亜の声は、『宣託者グリモワール』と『マインド』軍団を打ち据え吹き飛ばす。
 だが、芽亜もまた不動のグリモアによって、その場から動くことができない。
「痛み分け、ということですか」
「なに、そうでもない。僕は一方的に攻撃を受けた。対する君は、ただ動けなくなっただけだ。けれど」
「ええ、私は動けずとも声を発することはできる」
 芽亜の言葉に『マインド』軍団が再び立ち上がる。
 戦いはまだ始まったばかりだ。
 だが、これで敵である『宣託者グリモワール』の予知もまた完璧ではないことを知らしめることができただろう。

 予知を手繰る恐るべき敵。
 だが、予知の読みあいを制することができれば、決して打倒できぬ敵ではないのだと芽亜は示してみせたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
マインドの届かない高度の空に浮かぶまんまるボディ。その表面には夥しい数の主砲がぎっしり。
AI搭載超巨大全自動侵略衛星要塞帝都デスアップル。これがわたしの急造思念兵器なのです。
わたしはその中枢で果実変性・ウィッシーズアリスを発動したらその後はなにもしません。椅子に座っています。
側に侍るねこさん達もマインドやグリモワールに幻覚を見せて同志打ちを狙う以外はなにもしません。動かないから不動の定めも意味はないのです。
デスアップルに至っては物質なのでグリモアが透過します。なので行動不能にはなりません。

あとは無数の主砲による絶え間ない全自動砲撃で敵陣を蹂躙するのみ。
予知も最早意味を為しません。



 空に浮かぶのは黄金の果実めいた球場の『マインド』。
 急造とは言え思念兵器。
 その玉座めいた内部にあって、七那原・望(比翼の果実・f04836)は地上の十二剣神『宣託者グリモワール』を見下ろしていた。
 いや、見下ろしていたというよりは認識していたというのが正しいだろう。
 彼女の目元を黒い眼帯が覆っていたからだ。
 視認する必要はない。 
 そこに存在しているというだけでいいのだ。

「考えたね。僕の予知が及ぶ範囲であっても関係ない場所。空、か」
『宣託者グリモワール』は空に浮かぶ球体のごとき急造思念兵器を見上げていた。
 望が急造とて思念で作り上げたのは、全自動侵略衛生。
「名付けて、AI搭載超巨大全自動侵略衛星要塞帝都デスアップル、です」
 望が見下ろしていたのは、『マインド』軍団の手が届かぬ場所である高高度の空にいるからだ。
 彼女の思念が望んだのは己が移動せずとも攻撃できること。
 AI制御であるということ。
「僕のユーベルコードを警戒しての対策、か。なるほど、やはり新型のグリモアは僕の予知を上回るらしい」
「それだけじゃありません。わたしは望む……果実変性・ウィッシーズアリス(トランス・ウィッシーズアリス)」
 幻覚を操る四匹の猫たちが望むの思念兵器の中に飛び出す。

 瞬間、『宣託者グリモワール』の視界を幻覚が襲う。
「幻覚、か。目に見えるものが全てではないと知っているのなら、幻覚も意味はない。いくら幻を視たとて、現実は変わらない。なら、知覚できるものが真実。それを君は知っているんじゃあないのかい?」
 視線がかち合うわけでもないのに、望は己が視ている世界と『宣託者グリモワール』の視ている世界が同じであることを知っただろう。
 幻覚は『マインド』軍団と『宣託者グリモワール』には意味がない。
 だが、彼らの頭上から注ぐデスアップルと名付けた衛生からの砲火は、その球体の表面におびただしく配されている。
 球体でありながら砲門を多数配しているということは、それはつまり、多方面からの攻撃に対して一斉に攻撃できるということである。

 そして、自分たちが敵の頭上を執っているのならば、ある面だけの砲門だけが地上に対してこうげきできるということだ。
 砲撃の衝撃で球体が回転する。
 そして、回転して地上に面した砲だけを連続して放つことができる。
 謂わば、ガトリング砲と同じだ。
 確かに連射能力は必要だが、砲身が焼ききれては元も子もない。
 だからこそ、球体を回転させ、砲身を休ませる時間を確保しているのだ。
「こちらのユーベルコードへの対策も万全か。なるほど。自身が動けなくても構わない攻撃方法を思念兵器で作り出せばいい、と」
 絶え間ない砲火。
 それは地上に注ぐ雨のように『マインド』軍団と『宣託者グリモワール』を襲う。
 例え、全て予知できるのだとしても、雨降る中を一滴の雫すら受けずに歩むことができる者がいないように、その砲火の雨もまた『マインド』軍団を襲い、地上に壊滅的な蹂躙劇を
描き、散々に砕くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミュー・ティフィア
スピリトーゾで空中戦です!
空を空中機動力を駆使して飛び回り肉弾戦とかが届かない高度で相手の攻撃を回避しながらアナイアレイションと全力魔法の乱れ撃ちで攻めます!

うん、やっぱり無効化されますよね!でも諦めません。一度で駄目なら何度だって!貴方に届くまで撃ち続けるだけです!

向こうが私に注目していれば注目しているほどいい。だって私は囮だから。

本命は急造思念兵器。知覚されず、予知やユーベルコードをジャミングとバリアで捻じ曲げて逸らす、機械仕掛けの不可知の暗殺者。
この暗殺者がマインドの群れを掻い潜りながらグリモワールに必殺の刃を届かせるまで、グリモワールやマインドの注目を空の私に引き付けます!

届いた!



「きっと、君は考えているんじゃあないか?」
 十二剣神『宣託者グリモワール』の声が戦場に響く。
 砲火にさらされた地上には爆炎が立ち上がっている。その中にあって『宣託者グリモワール』の顔を覆う掌に煌めく単眼がミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)の光翼でもって旋回するさまを認めている。
「こちらのユーベルコードの詳細を知っているのなら、自分のユーベルコードは無効化されてしまうんじゃあないか、と」
 その通りだった。
 ミューは『宣託者グリモワール』のユーベルコードによって呼び出された『ノソリン』と呼ばれる四足獣型のマインドを見やる。
 あれは己のユーベルコードを無効化する。
 例え、ミューがユーベルコードでもって矢を向けた対象に自立して動く全ての装備武器での連携を向けたとしても、ことごとくが無効化されてしまう。

 だが、諦めない。
「ええ、やっぱり無効化されますよね! でも!」
「次に君は『こう言う』」
『でも諦めません』
「一度で駄目なら何度だって! 貴方に届くまで撃ち続けるだけです!」
「その気概は認めるけれどね。しかし、君、それはあまりにもジリ貧じゃあないか? 僕に届かない攻撃。けれど、君はマインドノソリンに襲われ続ける。そして、マインドはそれだけじゃあない」
 そう言って、『宣託者グリモワール』の背後から黄金の人型思念兵器たちが群れをなしてミューに襲いかかる。
 それは圧倒的だった。
 数の暴力である。

 生身では『マインド』に敵うべくもない。
 それほどまでに『マインド』とは超兵器なのだ。加えて、こちらのユーベルコードは無効化されてしまう。
 打つ手がない。
 詰将棋のように今、ミューは追い込まれている。
 けれど、それでもミューは諦めずに抵抗を続けているのだ。
「なのに、どうしてだろうね。君は、君の瞳は諦めていない。諦念に満ちていない。どうしてだい?」
「お得意の予知で視てみたらどうです?」
 ミューは、そう言い返す。
 だが、同時に確信も得ていた。
 そう、尋ねるということはわからないからだ。どうして己が『宣託者グリモワール』にとって無駄とわかる行為を続けているのか。
 それがわからないから『『宣託者グリモワール』は己に訪ねたのだ。

 つまり。
『宣託者グリモワール』の予知は、己のユーベルコードが無効化されながらも、抵抗を続けている、という範囲までしか予知できていないのだ。
 であれば、己の本当の目的を敵は察知していない。
 己が囮であることを悟られていないのだ。
「……何か、狙っているね?」
「仮にそうだとして、はいそのとおりです、なんて言いますか?」
 言いませんよね? とミューの言葉が放たれた瞬間『宣託者グリモワール』は知っただろう。己の失策を。

「私は囮! なら! もっと考えるべきでしたね! 視えているものばかりを追いかけるから、視えないものに不意をつかれる!」
 そう、ミューが生身で立ち向かっていたのは、己が思念でもって急増された『マインド』……本命である機械仕掛けの不可知の暗殺者から目をそらすためだ。
 己という存在の為す行動全てに予知の力を使わせ、思念によって生み出した暗殺者の一撃を届かせるため。
 そのためだけにミューは危険な立場に身を置いていたのだ。
「まさか!」
「もう遅いよ!」
 届くか。届いて欲しい。いや、届け。
 その思念を受けた機械仕掛けの暗殺者の一撃が『宣託者グリモワール』の身を切り裂き、宙に鮮血を舞わせた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユキト・エルクード
急造兵器ねぇ……、俺はエンジニアってガラでもねぇし細かい意匠までは造れねぇが、どんなもん造ればやっこさんが嫌がるかってのなら何となく分かる。

即ち単純な爆発。 それも敵が死ぬまで爆発し続け、拡散した爆炎から指数関数的に分裂再生産されてまた追いかけ爆発する自己再生機能付きの超小型自爆思念兵器群だ。
卑劣だ浪漫が無いと言われようが知ったことか。 戦いは勝てばいいってお前さんの友達だろう汚いヒゲも言ってたぜ?

どれだけ先が見通せようと、逃げる場所が無ければ関係あるまい。先が見えることを逆に後悔すると良い。

俺が最後にやることはただ一つ、ただ刃を潜ませておくことだけ。
視えている死に、自分から突っ込んで来な。



「柄ではない、と思っていてもやめるという選択肢は君にはないんだね」
 十二剣神『宣託者グリモワール』の言葉にユキト・エルクード(亡霊夜警・f38900)は、あ? と首を傾げた。
 確かにそう思った。
 思った、が。
 口にした覚えはない。
 であれば、『宣託者グリモワール』は予知にて己が、そう口に出す、ということを視たのだろう。
 けったいな能力である。
 いや、それは猟兵側にとっても言えることであった。

 これまで猟兵達は予知によってオブリビオンの能力を知り、事件に対処してきた。
 それが今回『宣託者グリモワール』もまた持ち得た力だと言うだけの話だ。 
 そして、空より迫るのは黄金の人型思念兵器『マインド』たち。
 であれば、こちらがどう動くのかもまた計算づく……いや、予知の通りだと思っているのだろう。
 予知能力を保つ者は、これまでその予知を行動の指針にしてきた。 
 だが、予知が揺らぐ理由を知らぬのならばユキトにとっては、やるべきことは一つだった。
「知ったことかよ」
 そう、柄ではない。
 が、エンジニアでなければなんでもない己の思念に反応するのが急造であれど思念兵器『マインド』である。
 急造でどこまでできるかはわからない。
 細かい意匠をどうにかできるほどでもない。
 だが、一つだけわかっていることがある。

「お前さんが嫌がることはなんとなくわかる」
「嫌にならないかい、それは」
「ならねぇな。悪党をぶちのめせるんだ。それでお釣りが来る」
 ユキトが思念によって急増したのは、思念兵器……だが、炸裂するは爆発。
 単純な爆発だった。
 思念兵器とも言えないような、単純なもの。
 爆発が空を染め上げ、『マインド』軍団を飲み込んでいく。
「それで『マインド』はどうにもできないよ。予知を視たのならば、君も知っていることだろう」
「だろうな。だが、見失うだろう。そして」
 ユキトの眼前で己が生み出した思念兵器が再生される。そして、また爆発していく。分裂し、爆発し、数珠つなぎのように空を埋め尽くしていく爆発。
 それ自体に『マインド』軍団をどうにかする能力はない。

 だが、爆発は空のみならず地上にも至る。
 当然『宣託者グリモワール』にも至るのだ。取り囲む爆発。それは実利を突き詰めたようなものだった。
 爆発によって周囲を埋め尽くす。
 逃げ場など何処にもない。
「卑劣だ浪漫がないといわれようが知ったことか。戦いは勝てばいいっておまえさんの友達だろう汚いヒゲも言っていたぜ?」
「困ったな。そういうつもりは僕にはないんだが……けれど、君が動く場所も僕は視ているんだよ? どれだけ爆発を引き起こそうとも、それで視界を塗りつぶそうとも」
「いいや、違うね」
 その言葉に『宣託者グリモワール』は訝しむ。
 ユキトが爆発の合間に飛び出す。
 それを『宣託者グリモワール』は見ていた。

 だが、視えていたのはユキトだけだ。
 爆発の合間を縫うようにして『宣託者グリモワール』もまた飛び出し、その胸に突き立てられる刃を見た。
 いや、突き立てられたのではない。
「お前さんが突っ込んできた、だけだ。俺は、動けない。お前さんは俺ばかりを視ていた。だから、お前さんが爆発のどこから飛び出してくるのかを予測していた。これは予知じゃあない。ただの」
 暗殺技能。
『宣託者グリモワール』は自らユキトの配置していたナイフに突っ込んだだけなのだ。
「視えている死を避けようとするから、突っ込んでしまう。そういうことだ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
やれやれ、敵も予知の力を使うってわけかよ。
こっちの手の内が読まれてるとか、ぞっとしねぇな。おかげでいつも以上に怖えよ。
だけど……予知に縋るほどおれは絶望なんてしてねーんだ。
因果律を「読める」のがテメエだけだと思うなよ……!

スペースシップワールドの本で読んだ、精神感応型の自律機動兵器。
大小さまざまな剣の形をしたそれは、|登録者《おれ》の心に従って直接攻撃やビーム攻撃を行うらしい。
時には複数のビットが協調してシールドやマイクロブラックホールを作ることもできるとかいうすげえヤツ。

相手のグリモアの力で動くことは出来ねーけど、ビットで上手く攻撃を逸らしたり、UCで幸運を引き寄せて致命傷だけはやり過ごす。



 胸に突き刺さったナイフを抜き払って十二剣神『宣託者グリモワール』は息を吐き出した。
 なるほど、これは厄介だ、と。
 新型グリモア。
 予知と思念。
 これらを手繰る猟兵たちは『宣託者グリモワール』の予知を上回る行動を見せている。
「やはり学びというのは必要だ。己が絶対者だと思うものほど、学ばない。失敗を恐れる。失敗はないと思い込む。だから、何も得られないし、学ばない」 
 だが、と『宣託者グリモワール』は違う。
 己は新型グリモアへの挑戦者。
 傷を得ることは、経験を得ることだ。 
 その経験を持って、さらに前に進む。

「そして、君。君はまだ絶望していないね?」
「そうだよ」
 敵が予知の能力を使う。 
 それは猟兵にとって最大の脅威であった。
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、『宣託者グリモワール』の言葉に頷いた。
 心には恐怖があった。
 己の手が読まれている。ぞおっとする。何時も以上に心に恐怖が渦巻いている。
 けれど、そのとおりだ。
「……予知に縋るほどおれは絶望なんてしねーんだ。因果律を『読める』のがテメエだけだと思うなよ……!」
「それはそのとおりさ。僕もまた、君たちという脅威を前に立ち止まってはいられない流浪者。であれば」
 黄金の『マインド軍団』と共に『宣託者グリモワール』のユーベルコードが走る。
 不動のグリモア。

 あれに囚われては嵐は行動不能になってしまう。
 なんとしても、嵐は不動のグリモアをかわさなければならない。
 そのためには。
「『マインド』を作り上げなければならない。そして、それは君の精神に感応する自律機動兵器、というわけだ」
 嵐は、そこまで視られているのか、と思っただろう。
 その通りだった。
 スペースシップワールドの書物で読んだ精神感応型の自律機動兵器を嵐は思い描いていた。
 それは大小さまざまの剣の形をした自律機動兵器。
 己の心に従う剣の従者たち。
 ビットとも呼ばれた機動兵器は嵐の思念に呼応して黄金の『マインド』軍団をかいくぐり、『宣託者グリモワール』に迫る。
 放たれるビームが網目のように迫る中を『宣託者グリモワール』は予知で視た通りに躱していく。

「ありきたりだな。どれだけ数を容易しようと、来るとわかっているのならば、射線以外に身を置けばいい」
「だろうな。そう考えているのは、分かっていたよ。だがよ。視えているから、そのとおりに動けるのは、常にテメエが万全であれば、の話だろう!」
「どういうことだい」
「わからないか。戦場に結果はつきものだ。だけど、常に強いものだけが勝利するんなら、ここまで争いは続かねーよ! 勝負は、時の運だっていうだろ!」 
 嵐は動けぬ身であった。 
 しかし、その額には忠義貫く犬の祝福(ドッグス・ホーカス・ポーカス)が煌めいていた。
 そう、幸運をもたらし、敵対者に不運を齎す力。
 それによって『宣託者グリモワール』は『運悪く』ビームが交錯し、力場が歪むことで射線が曲がった一撃に貫かれてしまうのだ。

「……っ、まさか、運だけで!」
「そうだよ! テメエは恐い。だけど、運を引き寄せるのも勝負のうちだろ!」
 嵐の言葉に呻きながら『宣託者グリモワール』は、その身を穿つ一撃に身をかがめるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

賤木・下臈
兵器のコンセプトは「予知可能理解不可能」です。デザインは私に馴染むように極力手を抜き、こけしに棒状の手足が生えたような見た目、胴体には明朝体で「下臈」と大書し、顔はへのへのもへじ、布団たたきを装備。能力は音響です。では、「ゲロボット弐号」発進!
まず布団たたきをぶん投げます。どうせ動けなくなるので使いません。グリモワールに接近、予知したことを後悔する程のあほな妄言でゲロイズム汚染を仕掛ます。動きを止められても音響装置で世間話をします。ところで、ゲロイストは自爆や爆発で自己表現します。下臈いことがしたくなったら、マインドを自爆させてみてはいかがですか。あ、そうそう。ゲロボットもそろそろ自爆します。



「『下臈』とはまた、一体全体どういう意図なんだい、それは?」
 それに、とビームに穿たれた身をかがめながら十二剣神『宣託者グリモワール』は、眼前に迫る謎の『マインド』を前にして理解に苦しむようだった。
 身を穿つ一撃よりも、そちらのほうがどうにも身を苛むようだった。
「私の名前でございますよ。そして、これぞ『ゲロボット弐号』! 発進!」
 それは、賤木・下臈(おいしいクッキーです・f45205)の思念によって生み出された急造思念兵器。
 まるでコケシが棒人間になったようなデザイン。
 下臈の手に馴染むようにデザインされたようであるが、どうにも理解不能であった。
 予知はできても、理解ができない。 
 それで一体どうしようというのだ、という思いしか『宣託者グリモワール』の中にはうjカバなかったことだろう。

 胴体には明朝体で『下臈』と大きく書かれている。 
 その文字になんの意味が?
 自分の名前だという下臈に『宣託者グリモワール』はますます困惑するばかりであった。
 顔もヘノヘノモヘジである。
 まるで手抜き。
 いや、これはこれで前衛的なのではないかと解釈してしまいそうになるほどに、下臈の思念兵器は、あまりにも胡乱であった。
 しかも、武装は布団たたきである。

「それでは、まずは一手」
「だからといって、手持ちの武器をいきなり投げるやつがあるかい?」
 それも予知していたのだろう。
『ゲロボット弐号』が手にした布団たたきを投げ放つのを『マインド』軍団が阻む。
 それは武装を放棄するようなものだった。
「どのみち、あなたのユーベルコードで動けなくなるのです。持っているだけ無駄です」
 ならなんで思念で作り上げたのか。
「簡単な話でございますよ」
 下臈の瞳がユーベルコードに輝く。

 そう、簡単な話である。
 敵が予知能力を持っているのならば、これから起こり得る事柄を直接、視るだろう。そして、その後にまた予知した現実が襲い来る二倍増し。
「なんだい、このよくわからない自己主張は……!」
「わたしも下臈さん あなたも下臈さん(コノママデハスベテガゲロウニナッテシマイマス)肉。うんまいちゃん。モホロビチッチ不連続面。ンヘマヘ。にぼし。ヌヘチャイチャイ。ラブリーオッサン。ちりめんじゃこ。和の心。釜飯」
 まるでわからない。
 精神汚染。
 言葉に意味はない。行動にも意味がない。
 ろれつが回らない酔っ払いの妄言のほうがまだマシである。

「これぞゲロイズム」
 わからない。
「さっぱりわからない。なんだい、これは。まさか……思念を汚染して!」
 黄金の『マインド』軍団たちの姿が歪んでいく。
 そう、下臈のゲロイズム侵食によって『マインド』軍団の形が支離滅裂な形へと変わっていく。
『宣託者グリモワール』の思念で、あの『マインド』軍団が作られているのなら、それを汚染してやれば、形もまた汚染されたものになる。
 下臈の狙いは、それであった。
「ところで、ゲロイストは自爆や爆発で自己表現します。下臈いことがしたくなったら、マインドを自爆させてみてはいかがですか」
 あ、と下臈は頷く。
「君、まさか」
「ええ、視られたのですね。そろそろ自爆します」
 光と共に炸裂する『ゲロボット弐号』の自爆。
 その爆発は『宣託者グリモワール』を巻き込み、まさしくゲロイズムの骨頂を見せるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
戦いで壊れた決戦配備を、急増思念兵器として再構築するわ
……もう一度立ち上がって『セラフィム』
君の思い描く――願いを宿した機体
街を守り続けたあなたの姿、私には守護天使のように見えていたわ
きっと「避けられぬ死の運命」と戦う力を持っているはずよ

一人では届かない未来も、手を取り合えばきっと辿り着ける
『セラフィム・クレッセント』を変形させ、決戦配備を補うように合体させるわ
限界を超えた――たった一度の輝きをここに

たとえ全てを見通すのであろうと……
それよりもっと速く、鋭く、未来を超えていく
跳弾するグリモアの軌道を潜り抜け回避しながら
心に宿した思念を、搭載装備に込めて――狙い撃つ



「視えているよ、猟兵。君の未来は」
 その言葉に薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は息を飲んだかもしれない。 
 だが、同時に覚悟を決めた者の意志を青い瞳に宿しているようでもあった。
 十二剣神『宣託者グリモワール』はグリモアによって予知能力を持ち得ている。こちらの行動はすでに知られていると思っていいだろう。 
 故に躊躇わなかった。
 予知されているとされていないと関わらずに、静漓の心は決まっていたのだ。
「……もう一度立ち上がって『セラフィム』」
 彼女の言葉と共に思念兵器は急造であろうと再構築するように、周囲に朽ちた決戦配備の人型戦術兵器『セラフィム』が組み上がっていく。
 黄金の駆体。
 それは思念兵器であるが故である。

「『マインド』の技術を使っているにしては小さい……いや、わかっているよ、猟兵。君は」
『宣託者グリモワール』の言葉と共に静漓の駆る『セラフィム・クレセント』が変形していく。 
 それは本来あり得ない形であった。
 だが、予知は告げている。 
「できる、と信じるのならばできるもの」
 静漓の瞳は確信に満ちていた。
 白銀の装甲を持つ『セラフィム・クレセント』が急造思念兵器である『セラフィム』をかたどった黄金の駆体と合体する。
「限界を超えた――たった一度の輝きをここに」
「ただ一度きりの輝きのために、自らの命運を託すというわけかい。

「そうよ。だって、私はもう知っている。思い、描くこと。それは」
 君の思い描く――願いを宿した機体。
 想像力は、創造力。
 であるのならば、思念兵器は応える。
 静漓はずっと思っていた。
 湾岸の決戦都市の決戦配備、自律人型戦術兵器『セラフィム』。
 それは守護天使のようだ、と。
 守るために戦う姿を見てきた。幾度となくデウスエクスに敗北するのだとしても、それでも立ち向かう姿を見てきた。
 意志宿さぬ機体であっても、そこには作り上げたものの意志が介在している。

 だから、彼らは臆することなく戦うのだ。
 故に、静漓は思う。
「一人では届かない未来も、手を取り合えばいい。そのための合体よ」
「君たちのグリモアが『列強化』していないのは、まさか、そのためだとでもいうのか。だが、理屈に合わない。『列強化』は取り除けていない。グリモアは『奉仕』化することを免れない。なのに、君たちのグリモアは」
「もっと速く、鋭く、未来を超えていく」
 放たれたグリモアが跳弾し、『セラフィム・クレセント』と合体した『セラフィム』と静漓へと迫る。
 だが、それさえも尋常ならざる軌道を描いて、白銀と黄金が合わさった装甲を保つ思念兵器は飛ぶ。

 跳弾するグリモアの間隙を縫うようにして『宣託者グリモワール』へと迫る。
 その手に宿る光はユーベルコード。
 けれど、未来を思う……。
「これが『希望』……!」
「心があるから希望がある。この思念は、一人で紡げないもの。だから」
 放たれる貫手の一撃。
「皆で、思い、描くかたち(カタチ)なのよ」
 それが避けられぬ運命すら砕きながら、『宣託者グリモワール』を吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくん、リフレクトステーッジ!
藍ちゃんくんでっすよー!
マインド製のリフレクトステージの効果は文字通り、反射・反響の超強化なのでっしてー!
藍ちゃんくんのパッションと声が響き渡りまくるのでっすよー!
グリモワールのお嬢さんも、マインドも、死のグリモアも吹き飛ばしまくってお手玉しちゃうのでっす!
勿論、お嬢さんもグリモアを跳弾させてくるでっしょうがー。
このステージ、反射も超強化するのでっしてー。
え、それって跳弾グリモアパワーアップで痛いのでは、と?
はいなのでっす!
とはいえ元から避けられないなら、大差ないのでは?
跳弾階数に比例して致死率上がるなら、むしろとっとと当たっておくべきでっすし。
それにでっすねー。
跳弾する度に超加速する弾、制御できますかー?
極論秒速一億Kmなんて細かに操作できまっすか?
跳弾する度に未来変わって、毎回予知して、調整して、思考して操作してと、時間使ってる内に弾はどっかいきますし。
本来その辺、踏まえた上で速度や操作性調整していたでしょうしねー。
そこを崩されるのは辛いのではー?



 体が吹き飛ぶようにして宙に舞う。
 十二剣神『宣託者グリモワール』は、体に走る痛みと共に理解しただろう。同時に視た。
 新たなる予知。
 まだ戦いは終わっていない。
 避け得ぬ死の運命を宿したグリモアは弾丸のように『宣託者グリモア』を守るように周囲を飛び跳ね続けている。
 だが、おかしい。
 挙動がおかしいのだ。己のグリモアの跳弾は、ここまで速度が出ただろうか?
「いや、これは……」
「そうなのでっす! 藍ちゃんくん、リフレクトステーッジ!」
 それは急造思念兵器。
 いや、パフォーマンステージであった。

 三角形集合構造体……即ち、トラスで組み上げられ、音響とライトアップ機材で包まれた急造思念兵器。
 全てが黄金。
 煌めく光は、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)のユーベルコード。
「それでは皆様、ご一緒に! 藍ちゃんくんでっすよー!!!」
 そう、これが藍ちゃんくんパッショネイトステージ!(エキサアアアアアアイットォォォッ)。
 膨れ上がるは、藍のパッションとライブの熱狂。
 急造思念兵器は、反射と音響の超強化を為す。それによって、熱狂的なユーベルコードの光の渦が洗浄に満ちていた。

「この跳弾の速度は、君か。まさか此方の跳弾の勢いまで増すとは、自殺的な行為だとは思わなかったのかい?」
「いいえ! まったくもって! 何故なら! グリモアの跳弾が加速するということは、『宣託者グリモワール』さんのコントロールできる限界を超えていくということなのでっす! 跳弾のたびに加速していくグリモア! お手玉でもうまくできなくなってしまいまっすよねー?」
 その通りだった。
 跳弾するグリモアは反射の度に加速度的に速くなっていく。
 まるで嵐のようだった。
 制御できるのだとしても、ひどく難しいものになるだろう。
 ましてや、予知することができるのだから、その処理速度というのは時間が経てば経つほどに増大していくだろう。

 そして、グリモアの跳弾を反射するのが藍の生み出した思念兵器の特性なのだ。
 反射と反響だけに特化したのは、このためだ。
 だが黄金の『マインド』軍団がまだ残っている。
「なら、『マインド』軍団ですり潰すまでさ!」
「あやー、お忘れになりましたか? グリモアの跳弾を予知するだけでも大変ですのに、そこから『マインド』軍団を操る……とっても大変ですよね?」
 その瞬間、グリモアの跳弾が『マインド』軍団と激突する。
 破壊される黄金の装甲。
 跳弾する度に調整しなければならない操作。
 容易いことではない。 
「例え、僕でもそれは計算しきれない、と」
「ええ、予知できるのは未来のみですっしー? こうなる、とわかっていたところで、無数に動き回る物体を一つ一つ認識して躱す、なんて土台無理な話なのでっす。どれだけ瞬間思考で計算できるのだと仮定しても、一度間違えれば」
 どうなるかなど言うまでもない。

 一つの間違いが全てを瓦解させていく。 
 前提である予知ですら崩していく。
 猟兵たちがオブリビオン事件に挑むときと同じだ。予知された内容にたいして、それを大きく逸脱するようなことを行えば、前提の予知が崩れる。
 今の状況は。
「『宣託者グリモワール』さん自身が招いたことなのでっすよー」
 故に、操作性の調整すらできぬ状況。
 これを崩された『宣託者グリモワール』にできることは多くはない。
 グリモアの跳弾をやめる。
 藍は、己の存在一つでもって『マインド』軍団を破壊し、『宣託者グリモワール』に採れる選択肢の一つを潰してみせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・ラーズグリーズ
白銀で発進、途中にドヴェルグをばらまきつつ走行!
……まあ読まれてるんだろうけど……けど、白銀を自動安全走行モードに!

そして…
酔ったママが散々語ってた武勇伝(本当か怪しいけど)通りの…「生身でドラゴンと斬り合い、ダモクレスの大艦隊に単騎で空中戦を挑める」まるで漫画みたいな性能の「ヴァルキュリアの刀剣士×鎧装騎兵」な『自律型汎用ママ型決戦兵器』もとい思念兵器『機械妖精/タイプ:ヴァルキュリア』を出します!

更に【戦闘配備:牽制支援】!配置したドヴェルグを全機起動して弾幕形成開始!後は|私《ノエル》が行動不能でも白銀は安全走行するし、ヴァルキュリアとドヴェルグは問題なく自立稼働し、敵と戦い続けます…!



 グリモアの跳弾による包囲攻撃。
 これは十二剣神『宣託者グリモワール』にとって猟兵に対する手段の一つだった。
 避け得ぬ死の運命を付与したグリモアは、着弾すれば、その名の通りの効果を齎す。だからこそ猟兵はこれを絶対にかわさねばならない。
 となれば、如何に予知を猟兵が持ち得ていたとしても『マインド』軍団を警戒しきれない。
 これにて『宣託者グリモワール』は猟兵たちを打倒せんとしていた。
 しかし、それも打ち破られている。
 砕けた黄金の装甲。
『マインド』軍団たちは思念兵器。であれば、『宣託者グリモワール』の思念さえあれば、再び形を為すこともできるだろう。
 だが、それには時間を要する。
 であれば、『宣託者グリモワール』が望むのは時間。
「……その隙は与えない……っていうこちらの思考もまあ、読まれてるんだろうけど……」
 ノエル・ラーズグリーズ(楽園の追放者・f40853)は魔導装甲車両『白銀』を走らせながらセントリーガンをばら撒きながら自動安全走行モードへと移行させる。

 そして、彼女は思い描く。
 急造とは言え、思念兵器。
 であれば、己の思念こそが思念兵器の肝。
 ノエルは己が母親の武勇伝を思い描く。本当かどうかいつも疑問だった。疑問であったが、そうであったのならば、と思う。
 生身でドラゴンと斬りあい、ダモクレスの大艦隊に単騎で空中戦を挑む。
 そんな夢物語のような荒唐無稽。
 それを思い描く。
 まるで漫画だ。けれど、それでもノエルは信じる。
「ヴァルキュリアの刀剣士にして鎧装騎兵……『自律型汎用ママ型決戦兵器』もとい!」
 ノエルは思わず苦笑いしてしまう。 
 我ながらなんてものを、とも思った。
 だが、これでいい。
 あの日、アルコール臭い息のまま己に寝物語に語った母を思い出す。

「タイプ、ヴァルキュリア!」
 ノエルの言葉と共に急造思念兵器が黄金の輝きを放ちながら半壊した『マインド』軍団を更に蹴散らすように飛び込み、その剣を振るい、さらにアームドフォートの砲撃でもって、これを吹き飛ばす。
『宣託者グリモワール』の周囲から『マインド』軍団を引き剥がさなければならないのだ。
「でたらめだな。それも君の思念、というわけだけれど!」
 放たれるは不動のグリモア。
 あれに触れては此方は行動できなくなってしまう。
 だが、ノエルの瞳はユーベルコードに輝く。
『宣託者グリモワール』は己の最大の一手が、あのタイプ・ヴァルキュリアだと思っているだろう。
 だからこそ、己を行動不能にしてしまえると思っていた。
 事実、その予知通りにノエルは動けなくなってしまう。

「それでも『白銀』は安全走行モード! そして! 戦闘配備:牽制支援(コンバットシフト・コンテインシュート)は!」
 配置したセントリーガンは遠隔軌道でもって『宣託者グリモワール』へと弾丸を叩き込み続ける。
 そう、自分が行動不能になっても、己が配置した兵器は動き続ける。
 ノエルは我が身を囮として、『宣託者グリモワール』の予知の目をかいくぐったのだ。
 その銃撃の嵐は『マインド』軍団を引き剥がされた『宣託者グリモワール』には防ぐ手立てなどなかった。
 そのさまをノエルは『白銀』の中から見やり、そして、己が母が語った武勇伝の続きを視るように、己が急造思念兵器の活躍するさまを、やはり苦笑いで見上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
了解しました。ミレア・ソリティス……迎撃に出ます
思念兵器は基礎設計を自立型砲台『ヴィントシュティレ』と同様とし、私と同じ兵装を複製・搭載しましょう

私自身も砲戦使用の4型兵装+ヴィントシュティレで出撃、UC【コード・タルタロス】を使用、
時間の流れそのものが「1/146(内部での1秒経過=外部では146秒経過)」となる時間遅延領域「タルタロス」へと落とし、その間に思念兵器も含めた全兵装で一斉攻撃、
領域消滅と同時に「全火力が集中した飽和攻撃」となるように仕掛けます

領域展開さえすれば敵UCも遅延しますし、最悪、バリア機能及び攻撃手である思念兵器を自律させる事で
私自身の行動不能への対抗策としましょう。



「ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)……迎撃にでます」
 ミレアは砲撃戦仕様の兵装とサブユニットの同期を終えて戦場に飛び出す。
 すでに猟兵と十二剣神『宣託者グリモワール』との戦いは佳境に入っているようだった。
 しかし、未だ『宣託者グリモワール』の脅威度判定は下がることはなかった。
 予知。
 それはグリモアの力である。
 未来を視ることで、その未来を捻じ曲げる力。
 それは猟兵たちにとって、己たちより強大な存在であるオブリビオンと戦うために必要な力であった。
 しかし、それを敵対者もまた手繰るというのであれば、話は別であろう。

「急造思念兵器……であれば基礎設計、思想、コンバート」
 ミレアは即座に思念兵器を生み出す。
 己と同じ兵装。
 搭載された大型ランチャーの砲身を構える。
「視えているよ、猟兵。君は、こう考えている。複製された自らの砲身の二つを持って、僕を時空を歪める重力特異点へと引きずりこもうと。だが、どうだろうか。ただ時間経過を外界よりも遅くしたところで、僕には視えているんだよ?」
「であればこそ、です」
 ミレアは大型ランチャーから放たれた重力特異点弾頭を放つ。
 敵はこれを回避するだろう。
 直接受けるいわれなどないからだ。
 それに予知されているのならば、その着弾点だってわかっている。それ故に思念兵器でもって複製された大型ランチャーと弾頭である。

 二つの時空を歪める重力特異点。
 これによって広範囲でもって『宣託者グリモワール』を逃さぬ檻とするのだ。
「領域内部の時間経過が遅くなる、ということはあなたのユーベルコードが私に到達するまでの時間に猶予があります。であれば」
 ミレアの兵装と思念兵器によって複製された兵装が煌めく。
 全火力を一点集中する飽和攻撃。
 無論、火力は『宣託者グリモワール』に到達せんとすれば、重力特異点によって速度をげんぜられる。
 爆ぜることもない。
 そして、ミレアのユーベルコードには時間制限がある。
 その意図に気がついた『宣託者グリモワール』が半壊した『マインド』軍団を差し向けたとしても遅い。

 飽和攻撃をしたのは、重力特異点の中に囚われた『宣託者グリモワール』に逃げ場を失わせるためだ。
 そして、彼女のユーベルコード、コード・タルタロスが解除された瞬間、放たれていた火力が『宣託者グリモワール』と一気に加速して迫るのだ。
 如何に予知できていたとしても、その加速した攻撃に反応できなければ意味がない。
 ミレアは、その差異を狙って火力を集中させ、己を襲う不動のグリモアの影響を受けながら、しかして己の持ちうる全火力で持って『宣託者グリモワール』を飲み込ませるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
グリモアの扱いには一日の長があるようデスネ、グリモワール殿。
しかして密度であれば、ワタシたちの経験値も負けてはおりマセーン!
生身で太刀打ちできぬ思念兵器『マインド』!
こちらの思念兵器と、この我輩自身で対抗させていただきマース!
「骸式兵装展開、争の番!」

デザインに関してはナイアルテ殿の御助力もいただきたく。
具体的にはイェーガーヴィネットの時のワンダレイ・プラモ!
それを兵器化しマース!
そしてキャバリアになった我輩がワンダレイに乗って、航空強襲を仕掛けるプランであります!
機動力、破壊力、インパクトもバッチリ!
回避手段を予知されてもワンダレイが回避挙動を取るか、ワタシが防御をするか選択できる訳デスネ!



 グリモア。
 それは予知の力である。
 少なくとも猟兵たちにとっては、だ。
 猟兵達はグリモアというものがオブリビオンによる事件の予知を齎すものである、という認識だ。 
 だが、十二剣神『宣託者グリモワール』にとってはそれだけではないようだった。
 何故なら、『宣託者グリモワール』の言葉。
『列強化』、である。 
 そもそも猟兵達の手にしたグリモアは、それぞれに形が違う。
 そして、多種多様な種族でもって共有される。
 それ自体が異常なことだと『宣託者グリモワール』は言っているようなものだった。だからこそ、新型のグリモア、と称したのだ。
「HAHAHA! さすがはグリモアの扱いには一日の長があるようデスネ、『宣託者グリモワール』殿」
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の言葉に『宣託者グリモワール』は苦笑いするようだった。

「それは何のアドバンテージにもならないことを他ならぬ君たち自身が証明しているだろう? いやはや、新型のグリモア。なるほど、挑戦者の気概を持ってしても、まさかここまでとはね。それに加えて」
「ええ、ワタシたちの経験値! これまでの道のり! それは負けておりマセーン!」
 迫るは半壊した黄金の『マインド』軍団。
 人型の『マインド』たちがバルタンを襲う。
 なるほど、こちらの行動を予知しているのだろう。
 それ故にこちらをすり潰す行動に出ている。数は強さだ。しかも、生身では太刀打ちできない思念兵器『マインド』。
 これを持って、こちらを打倒しようとするのは、正しい判断だ。

 だが。
「骸式兵装展開、争の番!」
 バルタンの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に『鉤爪の男』を模した人型兵器キャバリアへとバルタンは変貌する。
「そして! これはワタシの思い出の形! イェーガーヴィネット、カム・オン、デース!」
 瞬間、バルタンの手の内にあった模型……それは飛空戦艦のモックアップ、即ち模型であった。
 バルタン自身が作り上げた模型を核にして、思念兵器を構築していく。
 それは黄金の巨大戦艦。
「ワンダレイ・プラモ! デース! HAHAHA! さらにワタシ、ライド・オン、デース!」
 バルタンは思念兵器の上に飛び乗り、まるで巨大なマンタを駆る鋼鉄の巨人のように『マインド』軍団の攻勢を躱しながら、強襲する。

「強襲、とは……結局のところ、敵に予期させぬ、というところに重点をおくべきものだ。であれば、それもまた僕は視ている」
 跳弾するグリモア。
 それらはバルタンを襲い、さらには思念兵器であるワンダレイ・プラモすら取り囲んでいく。
「その跳弾はノーサンキューデース!」
 鉤爪から放たれる超電撃が跳弾するグリモアを打ち落とし、さらに真空波による一撃が『宣託者グリモワール』に飛ぶ。
 視えているのなら、視えぬ攻撃を放つまで。
 予知されているのならば、それの仔細まではわからないだろう。
 視えぬものは、避けられない。
 バルタンは、超電撃で『宣託者グリモワール』のグリモアを撃ち落としながら、視えぬ真空波でもって、その体を打ち据えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

くぅ、なんてこったい!
未来が読まれちゃうなんて―
これじゃてのうちようがないぞー

●なんとかなれー!
くっここは苦し紛れでしのぐしかない!
これはキミが悪いのであってつまりボクは悪くない
そうボクにできることはなんとかなれー!って祈りながら彼を投げるくらいだからね!
●UC『神猫』を放てっ
さーて今日の猫ちゃんは天使のような翼の生えたウイングキャットのヘルキャットくんです!
彼は並外れた肥満体でいーっつも何事も我関せずの顔でノソノソ動くよ!
でも油断してると…ドーーーンッ!!

さあ、キミが倒れるのが先か!
ボクがヘルキャットくんまたは死の運命に食当たりするのが先か!|勝負《ゲームの始まり》だよ!
回避は【第六感】でなんとかなれーッ!

そう死は避けられない…誰でもいつかは死ぬ…ボクだってそのうちいつかは…死ぬ…よね?かな?まだ死んだことないけれど、多分!
でも…『死』はなだめすかしたり買収したりお菓子で釣ったり一緒に遊んだりすれば先延ばしにはできるんだよ!

あ、いまどんな未来が見えてる?



 戦いの趨勢は確かに猟兵たちに傾いている。
 しかし、それが果たして勝利へとつながるのかと問われたのならば、首を横に振るしかない。
 何故なら戦いの結末は未だ決定されていないからだ。 
 例え、未来を予知することができたとしても、その未来はいつだって否定される可能性を秘めているからだ。
 どんな因果にも決定されたという過去があるからこそ、その事実が確定するのだ。
 ならばこそ、未だ勝利が確定していないのならば、敗北につながる道筋の一つでしかない、という可能性もまた捨てきれぬものであった。
「くぅ、なんてこったい! 未来が読まれちゃうなんてー」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、襲い来る半壊した『マインド』軍団を見やり、呻いた。

 半壊しているとは言え、まだ動くのだ。
 なんてことだ、とロニは驚愕したし、また敵が予知能力を持っているのならば、手のうちようがないとも思っていた。
 苦し紛れに凌ぐ。
 それしかないと思っていた。
「これはキミが悪いのであって、つまりボクは悪くない!」
「それはそうだね。けれど、そうやって逃れるほど甘くはないよ」
 迫る『マインド』軍団に加え、『宣託者グリモワール』の放つグリモアは跳弾し、更には避けられぬ死の運命すら付与されているのだ。
 当たれば、ロニもまた即座に死ぬ。
 そういうものなのだ。
「誰でもいつかは死ぬ。神だって例外ではない」
「そうかも! 確かにボクだっていつかは……死ぬ……よね? まだ死んだことないけれど、多分!」
「いいや、運命というものは、そういうものさ」
「なんとかなれー!」
 祈られる側の存在が、祈るとき、それは一体どのような結末をうみだすだろうか。

「いっけー!」
 神猫(ゴッドキャッツ)が放たれる。
 天使の翼が生えたウィングキャットめいた猫をロニは力いいっぱい『宣託者グリモワール』へとぶん投げる。
「今日の猫ちゃんのお名前はヘルキャットくんです!」
 放たれた猫はまるでゴム毬……いや、球体に近しいほどの肥満体であった。
 だがしかし、ヘルキャットくんは、のたのたと戦場を動く。
 猫の俊敏性の欠片もない動き。
 のそのそと動く様は、なんか別の動物に視えてならないほどであった。

「直線上の全てを切断貫通する猫、というわけかい。だが、それはあくまで直線上だけ、だろ?」
『宣託者グリモワール』の言う通りであった。
 だが、猫というのは気まぐれなものである。
 如何に未来予知ができるのだとしても、迫りくる猫は急に気まぐれに方向転換するのだ。
 恐るべきことに。
「……!?」
「そうだよ。キミが倒れるのが先か! ボクがヘルキャットくん、または死の運命に食あたりするのが先禍! |勝負《ゲームの始まり》だよ!」
 第六感でどうにかなれ。
 そういう思いを込めてロニは、戦場を走る。
 そこはもう混沌であった。

 グリモアの跳弾と『マインド』軍団。そして猫。
 そこを走り抜けるロニと『宣託者グリモワール』。いずれもが、迫りくる脅威を拭うのに必死であった。
「『死』なんてものは、なだめすかしたり買収したりお菓子で釣ったり一緒に遊んだりそれば先延ばしできるものなんだよ!」
 できるものでもない気がするが、言わんとしていることはわからないでもない。
 それでも同仕様もない時はどうすればいいのか。
「君には視えているかい、この未来が」
「え、どんな未来が視えているの?」
「こういうとき、僕はこういうことにしているんだけれど」
「うんうん」
「考えても無駄」
「それってつまり」
 その言葉と共に降り注ぐのはグリモアの跳弾と猫の衝撃。
 まるで無敵な猫の一撃は戦場を砕き、ロニと『宣託者グリモワール』を巻き込みながら、その破壊の渦を巻き起こすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅葉・紅葉
アドリブ連携歓迎

こんなこともあろうかと!
これまでの総決算! グランドロン! ゴッドペインター! ガジェッティア!
皆様の血と汗と涙の結晶! 研究の成果を束ねてきた絆のマシン!
最強の急増……もとい急造思念兵器!
セラフィム・D! 出撃しましょう!
どうぞ、私をコックピットにセットしてください!
そしてパイロットを!
サポートボックスの力で、私の有するUCをご自由に使ってもらうシステムなので。
ええ、一人では足りない、仲間の助けがいるのがこのセラフィム・D!
Dは段ボールという訳ではなく、friend,kind,bondのD!
友情、思いやり、絆のセラフィムという訳ですね!
さあ、エイル博士! 紅葉のUCを存分に!



 紅葉・紅葉(歩く宅配便・f40976)には一度は言ってみたいセリフがあった。
 敵対するは十二剣神『宣託者グリモワール』。
 未来予知を齎すグリモアを手繰る存在。
 その予知能力故に、これまでケルベロスディバイドの特務機関DIVIDEは後手に回ってきた。
 何故なら、その侵略は常に地球側が如何に動くのかをあらかじめ知ることができていたからだったのだ。
 だからこそ、恐るべき敵であった。
 しかし、今は違う。
 猟兵たちがいる。彼らの持ち得るグリモアによってデウスエクスに先んじることができていたのだ。
 そして、紅葉は叫ぶ。

「こんなこともあろうかと!」
 彼の思念のみならず、この湾岸の決戦都市に集っていた決戦配備を建造せんとしていた人々のすべての思念……謂わば、血と汗と涙の結晶。
 即ち、研究の成果を束ねてきた絆のマシン。
 最強の急造思念兵器!
「『セラフィム・D』! 出撃しましょう!」
 紅葉の四角いダンボールボディが黄金の思念兵器……『セラフィム』を模した胸部へとすっぽりハマる。
 何故、胸部にそんな誂えたような四角い溝があるのかといわれたら、これが紅葉の思念であるからだ。

「そして、『エイル』博士!」
「え!?」
 急に呼び出されたのは、湾岸の決戦都市の責任者である亜麻色の髪の女性『エイル』博士であった。
 彼女からすれば、急展開がすぎる。
「どうぞお乗りください!」
「え、えっ??」
「ええ、一人では足りない、仲間の助けがいるのが、この『セラフィム・D』! Dは段ボールのDではなく! Friend、Kind、BondのD!」
「普通、頭文字取らないかな?」
「よそはよそ、うちはうちです! そういうわけで、友情と思いやりとイズナの『セラフィム』、ゴー! というわけですね!」
「いやいや、待ってくれたまえ! ちょっと急展開過ぎて、私は何がなんだか!」
「わからないと! ですが、おまかせを! 紅葉は支援型移動式段ボール箱(サポートボックス)ですから!」
 何も説明になっていない、という『エイル』博士に紅葉は頷く。

「な、何一つわからない!」
「存分に暴れまわりましょう! それ見たことか、『マインド』軍団が来ましたよ! こういうときはご存知ですよね!」
「わからないってば!?」
「ご一緒に! ロケットパーンチ!」
 紅葉の言葉と共に放たれるのは思念兵器と化した『セラフィム・D』の前腕部。
 そう、まるでロケットのように放たれる一撃は、迫る『マインド』軍団をぶち抜きながら、半壊していた彼らを粉砕してしまうのだ。

「え、ええ……」
「一体どこにそんな力が……これはまさか」
『宣託者グリモワール』は呻いていた。
 紅葉からしても予想外の一撃である。ロケットパンチと言えど、こんな強かったか? とも思っただろう。
『エイル』博士を載せているからか? いや、彼女はこれまでデウスエクスに敗北し続けてきた。特別な力と言えば、『絶対負ける』ということのみ。
 であれば、これはどうしたことなのか。
「……うーむ、つまり?」
 わからない! と紅葉は思考を放棄しながら、しかし、『セラフィム・D』の力を存分に発揮するようにロケットパンチを乱れ打ち、『マインド』軍団を尽く破壊して回るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
託宣者グリモワール……!
予兆に見た言葉から聞きたい事もあるのですが
まずはこの状況を収めるのが先決!
出来るメイドは順番間違えません!

やっぱりセラフィムつくりましょうねぇ(じゅるり?)
といっても造形に私の想像など不要
ええ、一回やってみたかったのです
アスアスで使っているクリムゾンリッパーを
キャバリアサイズにしてリモートレプリカントみたいに操るの!

私の中でセラフィムは最強
急造思念兵器としてなら十分に有用でしょう!

まっすぐ、突っ込んで!
セラフィム!! 【クリムゾンウイング突撃】です!
小さなモンスターのトレーナーみたいな感じで!

トレーナーへのダイレクトアタックは反則ですよ
全力で攻撃は回避するとしましょう!



 黄金の『マインド』軍団は猟兵達の活躍によって砕かれた。
 粉砕された破片が舞い散る中、十二剣神『宣託者グリモワール』はグリモアの力をたぐり、未来を予知する。
 迫るは赤い閃光。
「……どこまでも邪魔をするんだね、熾天の落とし子たち。だが、僕とてただ流浪していたわけではないよ」
 グリモアが『宣託者グリモワール』の掌から浮かび上がり、避け得ぬ死の運命を宿して注意に散る『マインド』軍団の破片に跳弾し、迫る猟兵を阻まんとしていた。
 まるで嵐のような光景。
 その中を赤い閃光が疾走る。

「『宣託者グリモワール』……! 聞きたいこともあるのですが、まずはこの状況を収めるのが鮮血! できるメイドは順番間違えません!」
「そうかな? 君はすでに順番を間違えている、とは考えないのかい?」
「どういう意味です!」
「そのままの意味さ。君の思念で作り上げた、『それ』のことさ」
 ステラは己が思念で作り上げた赤い『クリムゾン・リッパー』を見上げる。
 彼女にとって『セラフィム』とは機動兵器の中で最強。
 そう思うのならば、思念兵器として十分に有用である。加えて、アスリートアースにおいて使用したプラスチックホビー。
 これを思念の核としているのだから、思念は寄り強固なものとなるだろう。
 であれば、まっすぐに突っ込んでぶちのめすだけでいい。

 しかし、『宣託者グリモワール』は言った。
 順番が間違えている、と。
「できるメイドは何も間違えませんが!?」
「君はどうして、『彼』のことを気に入ったのかな。主と認めたのかな。君が見初めたつもりでしかないのかもしれないよ」
「何がいいたいのです。思わせぶりな言葉で此方を煙に巻こうとしているのなら!」
「そうとも言うがね。けれど」
 グリモアの跳弾が『クリムゾン・リッパー』を襲う。

「トレーナーへのダイレクトアタックは反則ですよ」
「戦いに反則もなにもないだろう?」
「ならば……『セラフィム』!」
『クリムゾン・リッパー』の背面から展開した真紅の光の翼が実態を伴ってグリモアを弾き落とし、さらに『宣託者グリモワール』へと迫る。
「クリムゾンウィング、フルブースト!!」
 加速する黄金の『クリムゾン・リッパー』。
 噴出した光の翼を羽ばたかせ、一気に飛び込む。
 その突進を受け止めた『宣託者グリモワール』は笑むようだった。

「僕が視た未来すら振り切る速度、か……確かに、そう『視えて』いてもしかたない、な……だが、奉仕者よ、君がそのままでいるのならば君は、きっとそのままではいられないだろう。主従とは常に逆転の可能性を秘めている。そして、それは」
 最後の言葉は激突した思念兵器の爆発に巻き込まれてかき消された。
 思念の爆発。
 一戦しか保たぬ急造。
 しかし、その爆発に飲み込まれた『宣託者グリモワール』の姿は、もはや何処にもない。
「勝利、したのでしょうか……」
 ステラは拭えぬ感覚に歯噛みする。
 再び見えることはあるのか。これはただ撃退しただけに過ぎないのか。
 いずれにせよ。
 ステラは爆散した思念兵器の残骸と共に、守りきったことだけを胸に抱えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年05月28日


挿絵イラスト