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ケルベロス・ウォー⑩〜グリモワールは逃げ延びたい

#ケルベロスディバイド #ケルベロス・ウォー #宣託者グリモワール #決戦都市レッドリーフ

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●予兆:第三十六の予言! 逃げるに如かず!
「むがあっ!! 僕がまた死んだっ!!」

 グリモアの創造者を名乗るデウスエクス、十二剣神『宣託者グリモワール』が死んだ。
 自らの持つグリモアの力によって猟兵たちの行動を予知し、未来の自分が死ぬさまを見た。

「く、まただ、また死んだ……! なんだ、何なのだ、六番目の猟兵たち!
 君たちのグリモアは一体何だ? グリモアを創造した僕でさえ、……いや、今は僕が作っただなんて事はどうでもいい!
 足掻いて、生き延びる方法を模索する……!」

 グリモアを輝かせて予知を覗き見る。その先でグリモワールは死んだ。
 無数の刃に貫かれたり切り刻まれたり。
 大量の砲火に撃ち抜かれたり吹き飛ばされたり。
 キャバリアに襲われたり、純粋なパワーや魔力で押し潰されたり。
 猟兵たちがどんな行動をしてくるかを予知していたグリモワールが、その予知の裏をかかれて倒されていく。

「うわあっ!? こんな最期はいやだっ! せめてトドメを刺せぇ!!」

 幾度と繰り返したグリモワールの予知。尊厳を踏みにじられる形で敗北する有様を見て、グリモワールの心は著しく疲弊した。
 グリモアによる予知能力を駆使して極めて優勢に地球侵略を優勢に進めていた謎深き十二剣神は、『楽園』を失って以降放浪者に身をやつしてから劣勢に陥った経験が久しい。
 コテンパンに叩きのめされていく予知を見つめ、自らの予知を上回る存在を知って、戦意を挫かれていった。

「……」

 そして、グリモワールは急に落ち着き冷静に考える。
 特務機関DIVIDE本部『東京タワー』の地下に渦巻くグラビティ・チェインの源流、『地球の精髄』を奪い取れば勝利はこの手に収まる。
 だが『|永遠回廊《グラビティ・ゲート》』が破られた今、予知で見た猟兵たちとぶつかって勝てる道筋を見いだせずにいる。
 他の十二剣神も次々に倒されている、あの『神経樹グラビティピラー』すらも撃退されつつある状況を理解する。
 ……それほどの強敵が相手であり、勝てないのであれば。

「よし、逃げよう」

 時間切れまで逃げ延びる。
 グラビティピラーが完全に滅ぼされる未来を見たグリモワールは、本来ならば命を賭してグラビティ・チェインを奪いに行くのが正しい。
 だからこそ、その行動は予知されやすい。
 だからグリモワールは逆に、一度逃げるのだ。
 ケルベロスや猟兵が声高に叫ぶ全世界決戦体制が解除される六月まで、全力で逃げて隠れて生き延びる。
 そうすれば、戦後に態勢を立て直すことができると判断した。

「僕が生き残っていれば逆転の目が残る。
 こっちは六番目の猟兵という情報を得た、まだ現れていない十二剣神もいる。活路は見えた!」

 そして、グリモワールの時間軸が現在に近づいてく。
 逃げた先でどうなるのかを必死に予知しながら、グリモワールは入念に柔軟運動を行う。
 不安を抱きながらも、戦場となる決戦都市レッドリーフに出現する。

「さあグリモアよ、今度こそいい予知を識らせてくれよ。
 彼ら新型グリモアの予知を上回るような、希望に溢れる奴を頼む……!」

 強大な敵の出現に固唾を飲んでいた決戦配備中のケルベロスたちが見たものは。
 素早いサイドステップで都市の路地裏に逃げ込んでいく十二剣神の影だけだった。

●招集:グリモワール追いしこの決戦都市で。
「あいつグリモワール! 逃げやがりましたよ! 皆様、追いかけてください!」

 怒り心頭とばかりに瞳……目の部分に炎を浮かべて声を荒げているのは、グリモア猟兵の一つ。
 ケルベロスディバイドの特務機関『DIVIDE』の一員である猟兵の、段ボール箱型ミミック、紅葉(歩く宅配便・f40976)だ。
 紅葉の予知した十二剣神『宣託者グリモワール』の姿は、堂々とした神の姿ではない。
 グリモワールは自分自身の経験がまるで通用しない猟兵たちに危機感を抱き、打倒することを諦めて生存することに注力し始めたのだ。
 様々な状況を予知し、グリモアを駆使して猟兵の動きを封殺する。その能力を逃走と生存に割り切った場合、どうなるか。
 倒すのがとても厄介になる。

「『宣託者グリモワール』は、グリモアの創造主を名乗っています!
 実際その手に浮かぶのはグリモアですし、こちらの行動を予知する様子も散見されます!
 私共が予知した状況でもこちらの動きを知っていたように対処してくる、強敵です!
 ――なのに逃げようとしてやがりますねぇ!!」

 よほど、予知で見た戦いが酷いモノだったのだろう。
 思い当たる節のある猟兵の方、とてもいい笑顔ですね。
 何はともあれ、相手はデウスエクスの首級である十二剣神の一角だ。
 さらには予知能力まで有しているとあらば、見過ごす訳にはいかない。
 降伏するのではなくゲリラとして潜伏されては、たまったものではないのだ。

「全力を以って逃走ルートや潜伏先を予知して皆様を送り込みますが、必死に逃げるグリモワールも強敵には違いありません!
 追いかけることばかりに気を取られて、ユーベルコードで返り討ちにならないようお気をつけて向かってくださいませ!」

 紅葉が箱の中からグリモアを出して、現地に向かうゲートを展開する。
 だが、グリモワールは決戦都市に踏み込む猟兵の姿も能力も予知しているだろう。
 かの十二剣神を取り逃がさないように打ち倒すために、予知した内容の裏をかくことが大事であろう。
 戦争が終わる前に、追撃戦染みた戦いが始まる。


リバーソン
 こんにちは。リバーソンです。
 マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。

 今回のシナリオは一章構成です。ケルベロスディバイドの戦争シナリオとなります。
 決戦都市レッドリーフで十二剣神『宣託者グリモワール』を撃破することが目的です。
 グリモワールは「まっとうに戦った場合は倒される」予知を行っているため、猟兵が普段使うアイテムや技能、ユーベルコードの一部を知っていると思われます。
 それを逆手に取れば、上手く裏をかけるかもしれません。
 プレイングボーナスは、『グリモワールが予知した内容の裏をかく』ことです。

 オープニング公開後、断章を公開します。
 プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
 皆様、よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『十二剣神『宣託者グリモワール』』

POW   :    第四十四の予言「逃れ得ぬ死」
【敵の防御・回避手段を予知して】から発射した【「避けられぬ死の運命」を宿すグリモア】を、レベル回まで跳弾できる。跳弾回数に比例して命中率・致死率が向上。
SPD   :    第六十六の予言「動かざる未来」
【敵の移動先を予知して】から、物質を透過し敵に【行動不能】の状態異常を与える【「不動の定め」を宿すグリモア】を放つ。
WIZ   :    第百壱の予言「楔の巨獣マインドノソリン」
【敵の使うユーベルコードを予知して】から1体の強力な【四足獣型に変形した思念兵器マインド】を召喚する。[四足獣型に変形した思念兵器マインド]はレベル秒間戦場に留まり、【予知された技をかき消す鳴き声と肉弾戦】で攻撃し続ける。

イラスト:ぽんち

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章:これが『宣託者グリモワール』の逃走経路。

「っ! 来たぞ、グリモワールだ!」
「第四十四の予言!」

 敵の防御・回避手段を予知してから『避けられぬ死の運命』を宿すグリモアを発射する、《第四十四の予言「逃れ得ぬ死」》。
 百回以上は跳弾可能なグリモアは、都市の壁や看板を不規則に飛び交いケルベロスを翻弄する。

「う、うおおおお! 食らえっ!」
「第六十六の予言!」
「うげ!? う、動けな……!?」

 敵に行動不能の状態異常を与える「不動の定め」を宿すグリモアを放つ《第六十六の予言「動かざる未来」》。
 敵の移動先を予知してから放たれるグリモアは物質を透過し、遮蔽に身を潜めていたケルベロスの攻撃行動を停止させる。
 その脇をグリモワールが全力疾走で駆け抜ける。

「第百壱の予言!!」
「何か出てきたぞぉ!?」「た、退避ー!!」

 1体の強力な四足獣型に変形した思念兵器マインドを召喚する《 第百壱の予言「楔の巨獣マインドノソリン」》。
 敵の使うユーベルコードを予知してから現れるマインドは予知された技をかき消す鳴き声を轟かせ、肉弾戦で敵を蹂躙する戦闘力を有する。
 決戦配備の陣地を敷いていたケルベロスたちにのっそのっそと迫り、バリゲードを押しのけてグリモワールが通る隙間をこじ開けた。

「よーし、予知では無効化されたり逆手に取られたりしているが……使い方を変えれば対応できまい。
 勝つため倒すためじゃない、僕が逃げ延び生き残るための活用法ならまだ予知されていないはずだ」

 いずれも強力無比に相違ないユーベルコード。それを駆使してもグリモワールは負けるのだ。
 こうするはずと猟兵の動きを予知しているはずなのに、裏をかかれて倒されるのだ。
 顔を覆うベールを通り越してなお、グリモワールの表情は引き攣っている。
 緊張と警戒に口の端が吊り上がり、不敵に笑っているようにも見える。

「こいつ、今度は上から来るのか……! 下水道は、ダメだ! あいつの魔の手から逃げられない!
 ……この僕もいろんな断末魔を上げるものだ……!
 だが、現実ではそうはいかないよ。何故なら僕は死なないからねぇ!」

 グリモワールは立ち塞がるケルベロスたちには目もくれず、破壊活動も戦闘行為もせずにひたすら回避と妨害、障害排除にのみ専念して、決戦都市の中を駆け回っている。
 その歩みは無作為なように見えて……迷いなく、とある場所を目指している。
 その目的地は……避難した一般人が集まる、シェルターだ。

「まさか僕が敵陣の真っ只中で大人しく潜伏しようとは、如何にグリモア持ちでも露程も思うまい!
 索敵用の探知系ユーベルコードでバレるまでしばらく時間を稼げるはず!
 見つかったとしても、民間人の中に紛れ込めば範囲攻撃は躊躇するだろうさ!」

 なんということだろうか。こいつは、グリモワールは非戦闘員を巻き込もうとしているのだ。
 なお、その目論見はこうして予知されている。今ならば……逃げ込む前に、接敵できるのだ。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

|「いぇーい、グリモアちゃん見てるー?これから未来のあなたをえっちなのうみそおいしいです❤しようと思いまーす♪……どこに逃げようと言うのかね?」《カウンター先制攻撃、精神汚染、情報伝達》
と|予知の先から『夜』に堕とすでダブルピースするグリモアちゃんを後ろから抱っこして”なかよし”しながら、予知中のグリモアちゃんと目を合わす。《多重詠唱結界術、第六感、心眼、恐怖を与える、逃走阻止》私が捕捉した以上は予知先にも安寧はないわよ☆
身体部位封じ&禁呪封印術で鳴き声を封じ、肉弾戦を鉄壁の結界術でいなすわ。
で|なかよし《近接》を警戒して距離をとるグリモアちゃんにシャドウペルソナを|そーい、”なかよし”しーましょ❤《夢の中に入る》。
精神世界は私の領域なので中に入ってしまえばここっちのものよ♪予知先と現代で2度いただけておとく♪
|腰が抜け意識が飛ぶほどの快楽を与えて、えっちなのうみそおいしいです❤《マヒ攻撃、気絶攻撃、欲望解放、魂の契約、愛を伝える、料理、大食い》


リリエッタ・スノウ
僕っ娘のグリモワールとの追いかけっこだね。
んっ、逃げようとしている場所が分かってるから先回りは楽ちんだよ。

ここから先には進ませないよ!と【バインド・バレット】を使用。
足元を狙うのはバレているはずだから最初に撃ったのはフェイントだよ。
地面で跳弾するように調整して、跳弾した弾が避けた先の地面に打ち込めるようにビリヤードの要領で別の銃弾で弾いちゃうよ。
んんっ、いつもと少し違う使い方したから縛り方がいつもと違うね?
リリも敵のグリモアのせいで行動不能になっちゃうけど……どっちみちUC中は動けないから問題ないね。

むぅ、殺されるのが嫌ならわざわざ決戦都市に来なければよかったのに?

※アドリブ連携大歓迎


エリー・マイヤー
なるほど…
猟兵の与える精神的陵辱に耐えかねたわけですね。
おいたわしい。
仲間達の非道、誠に申し訳なく思います。

まぁ、だからって見逃したりはしませんが。
あちらが逃げるのは、実に都合がいいですね。
私が持つ索敵用の探知系UCである【念動サーチ】。
これの効果範囲は、猟兵の中でもそこそこ広めだと自負しております。
これで敵を見つけ出し、仲間に位置を知らせましょう。
で、そのまま攻撃に参加せず、索敵に専念します。
場所さえわかれば、歴戦の猟兵がほどよくボコボコにしてくれるでしょうからね。
その代わり、敵の位置だけは絶対見失わないことを保証します。
予知したところで避けようのない、圧倒的索敵力をお見せしましょう。


天御鏡・百々
連携・アドリブ歓迎

まさか予知を利用して逃亡を企むとは
とはいえ、そのこと自体が予知できていればやりようはあるな

シェルターの方に先回りし、道を塞ぐようにグリモワールの前に立ちはだかろう
そして、『天之浄魔弓』より放つ光の矢で攻撃していくぞ
この攻撃が予知されていることは承知の上だ
そうしてシェルターへ逃げ込むまでの時間稼ぎをしつつ
あえて予知通りに動き、敵のユーベルコードを使わせるぞ

さあ、ここからが本番だな
倒すための行動は予知できても
それに対する逃亡に更に対策する行動までは予知できまい
『惑いの封魔鏡』で閉じ込めてくれる
この中では鏡に惑わされ、多少の予知では対応できぬ
グリモワールよ、ここが年貢の納め時だ!


雨河・知香
うわぁ…うっわぁ……
ま、まあどうあがいても絶望だと十二剣神でもそんな反応は…あるの?
ともかく予知されたならそうするんだろう。卑劣な逃げ込み阻止する為に頑張るとするかね!

アステリアの自動操縦でオルテュクスを空でこれ見よがしに旋回させる。
ヘリ乗りのアタシ、上空にヘリが飛んでたら当然乗って空から狙ってくると予知して警戒するだろう。
なのでアタシ自身は一般ケルベロスと共に地上からこっそり近づいて、ある程度近づいたらヘリを降下させる。
グリモワールの注意がそっちに逸れた瞬間真逆の方角から飛び込みつつUC起動、ボコる!
ヘリの方の移動先は読めても中身の現在地までは予知できてないみたいだね!

※アドリブ絡み等お任せ


鷹神・豊
なんという無様…予兆と全然違うではないか
更に卑劣な逃亡計画まで企てるとは
民間人や他のこいつの為にも放置できん

奴は予知で俺の顔を見ただろう
鷹の目(装備)をかけケルベロスコートを着て
変装で正体を曖昧化する

俺の能力は基本的にただの運動神経と暴力だ
普段ならそれに物を言わせた追跡劇を行う所だが…
敢えて敵を待ち伏せし射撃するスナイパー路線へ変更
潜伏先はビルの屋上等を選ぶ

視力で狙いを定めたらUC発動
銃撃戦になるが射撃も下手ではないぞ
視力や護身術でまともに対応するより
予測不能な勝負勘で敵の弾を避ける事に賭ける
勇気のない貴様には出来まい

逃走抑止が効いたらビルから飛び降り踏みつけ(暴力
俺が誰か理解したか?
もう遅い


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かに、有効な手段では有りますねぇ。

複数の探査系UCと『FPS』を持つ私から「逃走」を想定するなら、「足止めして範囲外へ逃げる」か「先制攻撃で叩く」かの二択が対処法になるでしょう。
であれば、何方も封じられるよう『FAS』で飛行し彼女の目的地点のシェルター上空に先回り、『FLS』で『死の予言』のベクトルを歪めて『命中自体を防げる』状態として【澄眸】を発動しますねぇ。
超長射程化した『FPS』で目的地までの経路を『探査』、発見したら『探査』のみ追跡、同様に超長射程化した『FMS』のレーザーか、『FRS』『FSS』の砲弾を『FIS』で転移させたテレポートショットで叩きましょう。


メンカル・プルモーサ
……私達のこと棚に上げて言うけど予知ってずるいよねぇ……やる事は何でもバレるんだから…
…なので今から毒を仕込みます…重奏強化術式【エコー】で現影投射術式【ファンタスマゴリア】を強化…
…一帯に発動することで廃棄されたシェルターを一般人がいるシェルターのように周辺地域ごと偽装…目論見を破壊しようと『本気で考える』…
…そうするとこれが予知されて…幻覚を警戒して逃走速度が遅れる…と動揺してくれれば幸いだね
…で…見つけたら行動不能を起こすユーベルコードへの対策として【災禍を映す水鏡】で反射を狙う事も予知されてるだろうから…
…それをチラつかせて【狩り立てる嵐の魔犬】で速攻を仕掛けるとするか…


フリル・インレアン
ふえ?逃げるですか?
私から言わせたら、その選択はあなたには無理だと思いますよ。
だって、何でまだ逃げてないんですか?
逃げる時はまず、一目散に逃げるべきなんです。
それに私の予知なんてしたせいで余計に混乱しているんじゃないですか?
私がまっとうに戦うなんてありえないんです。
私を予知するとアヒルさんの動きばかりが気になってしょうがないんじゃないですか?
でも、そのアヒルさんはあんな遠くでふんぞり返っているだけです。
そして、私を行動不能にしてももう意味がないですよ。
発射されたものは止まることができませんしね。
ところで、どこの誰ですか!
人を打ち出す兵装なんて考えたのは!!


夏霜・ルア
…なるほど、逃げを打てるは己を知るが証拠。
ならば…私も全力で。
…その跳弾するグリモアは、緋き贋作神刀『弦月』により斬り捨てる。グリモアはまだしも、「避けられぬ死の運命」という概念を斬ると決めたので。

さて、どんなに逃げたとて…範囲内ならば私の間合い。宣託者グリモワールを、蒼き贋作神刀『繊月』による【月の剣・居合】にて斬る。できれば足の方を。
凍結効果により、足は動かなくなります。つまり、足止めです。
ええ、トドメは味方に任せますから。

いくら予知ができて私が刀使いだとわかっていても。どの『贋作神刀』を使うかわからないでしょう?
これ、刀身しか色違わないんですから。


サタニア・ダイモーン
「グリモアの創造者か。
 第六の猟兵が現れるまでは予知により優位に立っていたというが……何時から侵攻を始めたのだ?
 1998年? 
 20年以上予知というアドバンテージを持ちながら勝ち切れなかったというのか?
 デウスエクス。想像以上に無能揃いだな」
「まあ、良い。今更遅いのだ。
 最初からその必死さがあれば結果も変わっていたかもしれないな」
(シェルターで)
「グリモワールよ。探知系UCを使うまでもなくお前が此処に居るのは分かっているぞ。何故ってお前も良く知っているだろう?グリモアだ」

【魔神術式Ⅵ】を発動。
グリモワールのみを結界内にご招待。

「ようこそ私の世界へ。そしてさようならだ。」
敵SPDUCはこの空間に居る限り受け続ける状態異常完全回復で無効化。
後は全周囲から無限に生じる神槍でグサグサグサグサグサグサ――
欠片も残らない感じで。
別にサタニアはグリモワールに特別悪意はないです敵対者にはだいたいこんな感じ。



●描き続けた未来さえ|貪《むさぼ》られる|運命《さだめ》なのだ。

 グリモアの創造者を名乗る、謎深き十二剣神『宣託者グリモワール』。
 自らを挑戦者と評した存在は、決戦都市レッドリーフの中を逃げ回っていた。
 そんなグリモワールを追い立てるべく、十一名の猟兵が駆け付けた。
 そのことを予知していたグリモワールは、絶望的な表情を浮かべながら……今なお、逃げ続ける。

「お前! お前ぇ! もうX回も! あの、|魔王《アリス》ぅ!!
 僕が転移して28分で迫って来るとか! もうなんだよぉぉぉぉ!!」
「|いぇーい、グリモアちゃん見てるー?これから未来のあなたをえっちなのうみそおいしいです❤しようと思いまーす♪……どこに逃げようと言うのかね?《カウンター先制攻撃、精神汚染、情報伝達》」

 と。予知の先からユーベルコード《『夜』に堕とす(デモンズ・ディール)》を行使して|ダブルピースする別時間のグリモワールを後ろから抱っこして”なかよし”しながら、予知をしている最中の現在のグリモワールと目を合わす《多重詠唱結界術、第六感、心眼、恐怖を与える、逃走阻止》|混沌魔術実践者《ケイオト》。
 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)の魔の手から逃れたい一心で地上を全力疾走する十二剣神がいた。
 アリスは自身のユーベルコード5つを選び、思念から具現化した仮初の肉体『虚影の仮身』に籠めることで、24時間行動毎に2種類づつ発動できる《虚影の混沌魔術(ケイオスマジック)》を駆使しながら、グリモア越しにグリモワールをじっくりと見つめていた。
 もうニゲラレナイゾ。

「私が捕捉した以上は予知先にも安寧はないわよ☆」
「捕まってたまるかぁぁぁぁ!!」
「なるほど……猟兵の与える精神的陵辱に耐えかねたわけですね。
 おいたわしい。仲間達の非道、誠に申し訳なく思います」

 都市内を叫びながら走るグリモワール。
 しかし、その居所も挙動もすべて猟兵たちには筒抜けだ。
 グリモア猟兵の予知だけではない、アポヘル生まれのフラスコっ子。
 エリー・マイヤー(被造物・f29376)の《念動サーチ(サイ・サーチ)》と《念動ソナー(サイ・ソナー)》によるものだ。

「――ああ。あちら側に逃げるのは、実に都合がいいですね」

 1,884m。
 それが現時点のエリーの念動力の能力射程圏内であり、その効果範囲にある人や物を探知する念動力の波がリアルタイムでグリモワールの動きを見続けている。
 エリーは今回攻撃に参加することなく、索敵に専念するスポッターとして同行していた。
 仲間の操るヘリの中で一服しながら、他十名の猟兵たちにその位置と動きを伝達して一糸乱れぬ連携を可能にしている。

「だったら見逃してくれないかね!?」
「まぁ、だからって見逃したりはしませんが」
「だろうねー!!」

 足を止めれば、グリモワールはアリスに|えっちなのうみそおいしいです❤《マヒ攻撃、気絶攻撃、欲望解放、魂の契約、愛を伝える、料理、大食い》される(暗喩)。
 それを予知しているためにグリモワールは足を止めることがない。
 だが、その動きはしっかりと捕捉されており、飛んで逃げようにも頭上はヘリに抑えられている。

「うわぁ……うっわぁ……。
 ま、まあどうあがいても絶望だと十二剣神でもそんな反応は……あるの?」
「十二剣神って言っても心はあるのだよ!?」

 エリーが乗っているのは、天使核動力の改造ヘリ『オルテュクス』。
 ケルベロスディバイドによく似た異世界でケルベロスを支援し続けた白熊の獣人型ウェアライダー、雨河・知香(白熊ウィッチドクター・f40900)の所有する、魔術機械工学および呪術による疑似的な重力子演算装置を搭載したヘリだ。
 操縦サポートAIシステム『アステリア』に自動操縦を任せている『オルテュクス』はこれ見よがしに空を旋回し、眼下を走るグリモワールを追跡している。
 エリーはヘリの中で腰を掛けたまま、念動力の操作に集中できる訳だ。
 遮蔽をモノともしない空中機動とエリーの念動力の索敵は、とても相性が良い。

「ともかく予知されたならそうするんだろう。卑劣な逃げ込み阻止する為に頑張るとするかね!」
「んっ、逃げようとしている場所が分かってるから先回りは楽ちんだよ」
「……なるほど、逃げを打てるは己を知るが証拠。ならば……私も全力で」

 知香の意気込みに応じるように、リリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)と夏霜・ルア(朧・f42570)もやる気を見せている。
 シャドウエルフののガンスリンガーとUDC組織に所属しているエージェントは、それぞれの獲物である銃と刀、長距離狙撃を行えるようにスコープも完備したリリエッタ用にカスタマイズした突撃銃『LC-X12 Type ASSAULT』と、UDCの肉体を加工して造り上げた『贋作神刀』を手に、配置につく。

「むぅ、殺されるのが嫌ならわざわざ決戦都市に来なければよかったのに?」
「無敵の『|永遠回廊《グラビティ・ゲート》』が君たちの決戦配備に破られたから留まっても死、なのだよ!」
「ところで、どこの誰ですか! 人を打ち出す兵装なんて考えたのは!!」
「ぐわっ」

 一方、いつも大きな帽子を被っているアリス適合者の少女、フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は何故か決戦兵器スナイパーの砲塔に装填されていた。
 その訳は、この後明らかになる。

「なんという無様……予兆と全然違うではないか」
「そんなことを言われてもね、グリモアによる予知能力という優位性を覆されたらどうしようもなくなるんだよねぇ!」

 本業は公安警察、武蔵坂学園を卒業生した、孤高の戦争請負人。
 鷹神・豊(蒼天の鷹・f43985)は、グリモワールの醜態に、憐れみとも嘲りとも感じられる嘆息を吐く。
 そして、自身の愚痴にグリモワールが予知して反応していることをエリー経由で確認すると、隠密の準備を始める。
 不可視光線等の可視化に加え、顔認識を曖昧化する変装機能も備えた高性能サングラス『鷹の目』をかけケルベロスコートを着て、一般ケルベロスたちに見えるような変装して正体を曖昧化していく。

「更に卑劣な逃亡計画まで企てるとは。民間人や他のこいつの為にも放置できん。
 ……これで奴は予知で俺の顔を見ただろう。所定の位置に着く」
「ああ。表の処理は任せる。……ふむ、グリモアの創造者か」

 移動する豊の後ろ姿を見送って、スペースオペラワールドで遥か昔から『暗黒竜』の異名で畏れられている宇宙海賊。
 サタニア・ダイモーン(暗黒竜・f39306)は、ふと抱いた疑問を傍にいる非猟兵の一般ケルベロスに問いかける。

「第六の猟兵が現れるまでは予知により優位に立っていたというが……何時から侵攻を始めたのだ?」
「1998年から、ですね。突然の奇襲で、私たちの親の世代はかなりの被害を受けたと聞いています」
「……20年以上予知というアドバンテージを持ちながら勝ち切れなかったというのか?
 デウスエクス。想像以上に無能揃いだな。……まあ、良い。今更遅いのだ。」

 現地のケルベロスから回答を得たサタニアは、悪意も何も無く純粋にグリモワールを評価する。
 そして、そのサタニアの近くに、待ち伏せ勢の猟兵たちも集結した。

「確かに、有効な手段では有りますねぇ」
「まさか予知を利用して逃亡を企むとは。とはいえ、そのこと自体が予知できていればやりようはあるな」
「……私達のこと棚に上げて言うけど予知ってずるいよねぇ……やる事は何でもバレるんだから……」

 童顔且つ小柄ながら桁違いに発育の良い体型の美女、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。
 とある神社にて御神体として祀られていた破魔の神鏡のヤドリガミ、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)。
 そして各世界の技術・魔法に類するものを研究・分析してオリジナルの術式に取り入れているプルモーサ家の次女、メンカル・プルモーサ(星導の魔女・f08301)。
 グリモワールの予知の目を掻い潜るべく、各々の結界や幻術を駆使し、現在位置を偽装し続けている熟練の猟兵たち。
 彼女たちは、グリモワールが狙うシェルターを事前に用意し、道を塞ぐように先回りしてグリモワールを待ち構えている。

「それでは、宜しくお願い致しますぅ」
「ああ、よろしく頼むぞ!」
「ん……よろしく」

 そして、逃げに走ったグリモワールの、終わりが始まる。


●『楽園』を喪失した放浪者の行末。

「場所さえわかれば、歴戦の猟兵たちがほどよくボコボコにしてくれるでしょうからね。
 その代わり、敵の位置だけは絶対見失わないことを保証します。
 予知したところで避けようのない、圧倒的索敵力をお見せしましょう」

 エリーは所定の位置に猟兵たちが着いたことを確認すると、各員に合図を送る。
 決戦都市内を走るグリモワールを誘導するため、そして消耗させるため、連続攻撃を実行するのだ。
 まず最初に、知香が『オルテュクス』をグリモワールに向けて急接近させる。

「……! 誰が、どれが、来る……雨河・知香か! ならば第六十六の予言!」

 グリモワールは降下して接近する『オルテュクス』を察知すると、グリモアを輝かせて予知を行う。
 敵の移動先を予知してから物質を透過し敵に行動不能の状態異常を与える「不動の定め」を宿すグリモアを放つ《第六十六の予言「動かざる未来」》を発動して、『オルテュクス』に照準を合わせる。
 おおぐま座の重力を解き放ったり、爆破させたり、あるいは『オルテュクス』で突撃したり……グリモワールは、『オルテュクス』から繰り出される様々な攻撃や挙動を把握しており、迎撃のためにグリモアを武器として輝かせる。
 ゆえに。ヘリパイロットである知香の情報を熟知しているが故に。
 ケルベロスたちに混じって地上を歩き、グリモワールの側面からこっそり近づいて殴り掛かって来る知香への反応が遅れた。

「さあ気合い入れていくよ!」
「っ!? ヘリオライダーが肉弾戦を!?」

 決戦配備ディフェンダーの遮蔽から身を躍らせて、知香は《空に輝く活力の銀光(ルナティックハイ)》を発動する。
 偽物の、生命力を賦活化させる輝きを放つ銀の満月を創造し、戦場上空に浮かべるユーベルコードにより、知香の身体機能は活性化した状態となりボクシングによる連続攻撃能力と超再生能力を得る。
 そう、知香の趣味はボクシング。|ずっと以前《ケルベロスブレイド》から続けてきて洗練された拳圧が、グリモワールに迫る。

「ヘリの方の移動先は読めても中身の現在地までは予知できてないみたいだね!」
「クッ! こ、この……! ……あっ、まずい、脚が取られる!」

 至近距離で振るわれる知香の拳がグリモワールのボディに突き刺さる。
 グリモワールも溜めておいた「不動の定め」を宿すグリモアを放ち直ちに知香の動きを封じ込めるものの、偽物の満月で賦活化した知香にダメージまでは通らない。
 そして知香にグリモワールの意識が向いた瞬間、止まった足にリリエッタが狙い済ませる。

「あとは頼むわよ、リリエッタちゃん!」
「うん。ここから先には進ませないよ――バインド・バレット!」

 リリエッタが使用するのは、《バインド・バレット》。
 対象の足元に複数の魔弾を射ち込み、対象の全身を地中から伸びた複数の闇鎖で締め上げるユーベルコードの弾丸だ。
 解除されるまでリリエッタ自身も行動不能になるが、標的に闇属性の継続ダメージを与え続けることができる。
 その射撃を予知したグリモワールは間一髪で跳躍し、魔弾を避ける。
 が、それはフェイントだ。

「ヘリパイロットがいないなら、るこるが来る前に空を飛んで逃げれば……!」
「逃すものか」
「む……! ケルベロス、ではない! 君は、武蔵坂学園の!」
「俺が誰か理解したか? もう遅い」

 豊の銃撃が空に浮かんだグリモワールに撃ち込まれる。
 エリーから与えられる位置情報を基に、優れた視力でビルの屋上から狙いを定め、敢えて敵を待ち伏せし射撃するスナイパー路線へ変更していたのだ。
 空中から、着弾地点で爆発する特殊な弾丸を連射する《霹靂(ヘキレキ)》。
 爆発は敵にダメージを、地形には逃走抑止効果を与える、超能力を用いずに範囲攻撃を行う方法だ。
 グリモワールも変装した豊の正体に勘付き、咄嗟に《 第四十四の予言「逃れ得ぬ死」》を放つ。
 敵の防御・回避手段を予知してから『避けられぬ死の運命』を宿すグリモアを発射するユーベルコードだが、グリモワールは一、二発撃っただけですぐに翼を動かし逃げを取る。
 猟兵と戦うのではなく、逃げを打つ。

「だ、第四十四の予言!」
「俺の能力は基本的にただの運動神経と暴力だ。普段ならそれに物を言わせた追跡劇を行う所だが……」

 散発的に放たれたグリモアを、豊は防御することも避けることもしない。
 視線を逸らすこともなく、グリモワールを捉え続けて逃げる先に《霹靂》を撃ち込み続ける。
 そしてその予測不能な勝負勘は、味方の援護という形で功を奏する。
 跳弾するグリモアを、ルアが斬ると決めた存在・概念を斬る緋き贋作神刀『弦月』により斬り捨てる。
 グリモアそのものはまだしも、避けられぬ死の運命という概念を斬るとルアが決めた。よって、どれほど跳弾しようとその危険性は切り捨てられた。

「っ、第四十四の予言の致死率は、跳弾回数に比例して向上する……! 当たれば、死ぬのだぞ!?」
「ふん。勇気のない貴様には出来まい。仲間を信じるということを」
「大丈夫……さて、どんなに逃げたとて……範囲内ならば私の間合い」

 そしてビルの屋上から、ルアは《月の剣・居合(ツキノケン・イアイ)》を放つ。
 自身から半径134m以内の指定した全ての対象とした、贋作神刀による神速の居合切り。
 使う贋作神刀によって、様々なことができる斬撃は、高さという距離をものともしない。
 グリモワールの足が斬った箇所が一時的に凍結する蒼き贋作神刀『繊月』に斬られる。
 切断こそ免れたものの、凍った足の重みで動きが劇的に鈍くなる。

「いくら予知ができて私が刀使いだとわかっていても。
 どの『贋作神刀』を使うかわからないでしょう? これ、刀身しか色違わないんですから」
「まさか、グリモアを斬っていたのは……これを、誤認させるためか!」
「つまり、足止めです。ええ、トドメは味方に任せますから」

 そしてリリエッタの《バインド・バレット》も、地面で跳弾するよう角度を調整していた。
 跳弾した弾が避けた先の地面に打ち込めるように、ビリヤードの要領で別の銃弾で弾くように曲芸撃ちを披露していたのだ。
 地形のあちらこちらから生じる大量の闇鎖と、撃ち込まれていく逃走抑止効果がグリモワールの逃げ場を封じ込める。

「んんっ、いつもと少し違う使い方したから縛り方がいつもと違うね?
 リリも敵のグリモアのせいで行動不能になっちゃうけど……どっちみち動けないから問題ないね」
「よし。ここいらで……ん?」

 そして、動きが鈍ったグリモワールをビルの上から踏みつけてやろうと豊が身を乗り出したところで。
 遠く、決戦配備スナイパーが動きを見せる。

「ふえ? 逃げるですか?  私から言わせたら、その選択はあなたには無理だと思いますよ。
 だって、何でまだ逃げてないんですか?」
「おおお、おバカッ! 君は、君はなんで気づいてないんだ!?
 自分のグリモアちゃんと使ってるのか!? もうすぐ打ち出されるぞ!!」
「あっ。おいおいおい」

 豊は飛び降りる先を変更して行動不能になっているリリエッタを抱えて、巻き込まれないよう射線上から退避する。
 知香もまた一般ケルベロスたちに連れられて安全な場所に移動したことで、フリルの攻撃対象は足止めを受けたグリモワール一体のみとなる。
 奇しくもフリルが告げるとおりに、仲間たちは一目散に逃げていた。

「逃げる時はまず、一目散に逃げるべきなんです。
 それに私の予知なんてしたせいで余計に混乱しているんじゃないですか?
 私がまっとうに戦うなんてありえないんです」
「違う違う違う! 逃げるのは君! 君も早く『アヒルさん』から離れ、逃げるんだ!」
「ぐわっ!」

 フリルと一緒に行動しているアヒルちゃん型のガジェットの『アヒルさん』は今、スナイパーの発射ボタンの前にいる。
 それを圧せば、砲塔の中にいるフリルが無事射殺もとい射出されるという寸法だ。
 ここまで情報が揃えば、グリモアを使わずとも未来が予知できる。

「アヒルさんですか? もう、私を予知するとアヒルさんの動きばかりが気になってしょうがないんじゃないですか?
 でも、そのアヒルさんはあんな遠くでふんぞり返っているだけですよ」
「落ち着け冷静に考えるんだこのままでは君もただでは済まないぞ!」
「そして、私を行動不能にしてももう意味がないですよ。
 発射されたものは止まることができませんしね」
「こ、この子、わかった上で運命を受け入れているというのか……!?」

 《恋は盲目の恋?物語(イチズナオモイ)》。
 他は全て無視し続けることにより、26,569mまでの視認している対象を、一直線に突撃するユーベルコード。
 ケルベロスたちが丹精込めて作り上げた砲塔から、フリルが発射される。

「フッ、フリル、止めろっ!」
「ふわあ、この思いはもう止められません!」

 勢いよく突っ込んで来たフリルの頭部がグリモワールの腹部を強打する。
 凄まじい衝撃を受けながら、グリモワールは勢いよくすっ飛んでいった。


●夢が悉く舞い散る宣託者の末路。

「~~~! これが、僕の逃走経路だ……!」

 吹っ飛ばされたグリモワールは、しかし笑みを浮かべる。
 動きを封じられた時には詰んだと思っていたが、半死半生クラスの大ダメージを受けた代わりに、いくつかピックアップしていた目的地の一つに迫っているからだ。
 そこは、非戦闘員が避難するシェルターだ。
 猟兵たちが待ち構えていることを予知しながらも、死中に活を求めるように覚悟を決めて吹っ飛んでいく。

「来たか、グリモワール! シェルターには入らせぬぞ!」
「天御鏡・百々! そして、夢ヶ枝・るこる……! ここで、使うしかない!」

 シェルターの前に陣取る百々が、神弓『天之浄魔弓』より光の矢を放つ。
 その攻撃もグリモワールには予知されており、シェルターへ逃げ込むまでの時間稼ぎをするべく、グリモワールは切り札を切る。
 本当ならば、まだ姿を潜めているアリスのユーベルコードを予知してかき消したかったユーベルコード。
 《 第百壱の予言「楔の巨獣マインドノソリン」》を行使する。

「第百壱の予言!」「なぁーん」
「出たか……! 楔の巨獣マインドノソリン!」

 敵の使うユーベルコードを予知してから召喚される1体の強力な四足獣型に変形した思念兵器マインドは、予知された技をかき消す鳴き声を轟かせ、肉弾戦で敵を蹂躙する戦闘力を有する。
 百々が得意とするWIZ型ユーベルコード、光を用いた様々な技を一鳴きでかき消す巨獣がのっしのっしと歩みを進め、シェルター前のバリゲードをなぎ払う。
 圧倒的なパワーで百々を追い立てることで入口に空きが生じる。
 グリモワールは吹っ飛んでいる勢いそのままに突っ込んで入ろうとするが、そうは問屋が降ろさない。

「そう、転移も予知できれば避けられるのだが避け切れない弾幕はやめて欲しいなっ!!」
「複数の探査系ユーベルコードと『フローティング・プローブ・システム』を持つ私から逃走を想定するなら、足止めして範囲外へ逃げるか先制攻撃で叩くかの二択が対処法になるでしょう」

 るこるは三対のオーラの翼型祭器『フローティング・エアロフォイル・システム』で飛行して、グリモワールが狙うシェルターの上空に先回りしていた。
 所持している多数の『祭器』を完全に制御し『祭器』の召喚や空間歪曲障壁の展開を行える札型祭器『フローティング・リンケージ・システム』で放たれた《第四十四の予言「逃れ得ぬ死」》の|軌道《ベクトル》を歪めることで到達時間そのものを延長させて、その間にるこるはユーベルコードを発動せる。

「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『神眼の加護』をお与え下さいませ」
「やめてって!!」

 《豊乳女神の加護・澄眸(チチガミサマノカゴ・テンタカキヒトミ)》。
 発動中、るこるの防御力は0となり、全ての攻撃が致命傷になるリスクを背負う。
 しかし代わりに、長大な射程と透過視界を得る『眼』を纏い、攻撃力が8倍になるのだ。
 超長射程化した浮遊する164枚の円盤型祭器『フローティング・ミラーコート・システム』のレーザーと、浮遊する百数十台の球体と対になる一対の腕輪で構成された砲台に変形して砲撃が可能となる祭器『フローティング・レイ・システム』、中心に砲門が有り射撃にも使用可能なビームシールド型祭器『フローティング・シールド・システム』といった砲撃を、16本の浮遊する水晶柱型祭器『フローティング・インタディクト・システム』の瞬間移動で転移させる。
 つまり。

「ぐはぁ!!」
「このまま叩きますねぇ」

 吹っ飛んでいるグリモワールの周囲三百六十度から光線と砲撃が叩き込まれていく。
 だが、グリモワールはその攻撃を予知していた。
 全方位攻撃という大ダメージを浴びたことで慣性が無くなり、地に落ちるグリモワール。
 瞬間、全力疾走でシェルターに逃げ込もうとする。
 グリモワールの目には、まだ希望の光が宿っている。

「僕! は! 死ななぁい!」

 グリモワールは懸命に予知して、致命傷だけは避けて、防いで、対処して、進む。
 ――シェルターに逃げ込むことができれば。その一点だけを希望に縋り、突き進む。
 背後や側面から『祭器』の遠距離攻撃を浴びながら、百々の放つ光の矢をマインドの巨体で防ぎながら、グリモワールは必死にシェルターへと転がり込む。
 シェルターに入れば、地球人という人質がいる。民間人の中に紛れ込めば、時間は稼げる。
 息も絶え絶えの中、希望に縋ったグリモワールが堅固な扉を開けたところで……そこには、サタニアとメンカルだけが待っていた。
 サタニアの冷たい視線がグリモワールに突き刺さる。

「最初からその必死さがあれば結果も変わっていたかもしれないな」
「なん、だと……!? 僕が、僕が予知で見た人間たちはどこに!」

 そのシェルターには、避難している民間人はいない。
 このシェルターは、メンカルの手によって作られた偽りのシェルターだった。
 メンカルの実体はないが、あらゆる感覚器・センサーを欺く幻を作り出す現影投射術式【ファンタスマゴリア】を術式の威力や効果を強化する重奏強化術式【エコー】で強化させることで、ここ廃棄されたシェルターを一般人がいるシェルターのように周辺地域ごと偽装していた。
 目論見を破壊しようとして実際に人がいるシェルターを守ろうとすれば、猟兵たちが本気で考えた防衛線をグリモワールが予知して他のシェルターへ逃げ先を変えるかもしれない。
 グリモワールを諦めさせないため、程よい障害のある活路を演出した。
 それがこの戦場から逃がさないための、仕込まれた毒であった。

「そういう……ことか……!」

 丹念に予知すれば、幻の挙動や雰囲気に違和感を抱いたり、メンカルが【ファンタスマゴリア】を発動する場面を見ることができただろう。
 だが、ここまで多くの猟兵たちの足止めと攻勢を避けるためにグリモアを用いていたグリモワールには、幻を見抜く余裕は与えられていなかったのだ。
 そして、ただの偽りのシェルターが、二人の猟兵の手によってグリモワールを閉じ込める牢獄と化す。

「倒すための行動は予知できても、それに対する逃亡に更に対策する行動までは予知できまい」
「グリモワールよ。探知系UCを使うまでもなくお前が此処に居るのは分かっているぞ。
 何故ってお前も良く知っているだろう? グリモアだ」
「っ、 第六十六の――」

 入口から入って来た百々、そして対峙するサタニアが、それぞれユーベルコードを発動する。
 その内容を改めて予知したグリモワールは、息を飲んで対策を打とうとする。
 《 第六十六の予言「動かざる未来」》で「不動の定め」を宿すグリモアを放てば、詠唱を止めることができる。
 だがサタニアを庇うようにメンカルが前に出たことで、グリモワールは《第六十六の予言「動かざる未来」》を躊躇する。

「《災禍を映す水鏡》……! 」
「……で……見つけたら行動不能を起こすユーベルコードへの対策として反射を狙う事も予知されてるだろうから……ね……」

 行動不能を起こすユーベルコードへの対策として、メンカルは《災禍を映す水鏡(ディザスター・リフレクション)》で悪因転写術式の自動発動による反射を狙う事も予知されてることを予測して、それをチラつかせて佇んでいる。
 反射を警戒して一拍遅れたその結果、グリモワールは完全に封じられる。

「鏡よ鏡、邪なる者を惑わし、封じ込めよ」
「ゼノ・ツキウ・キ・ボウョイ・ボリウト」

 百々の戦場全体に悪しき者の方向感覚を狂わせる、全てが鏡で出来た迷路を作り出す《惑いの封魔鏡(マドイノフウマキョウ)》。
 サタニアの戦場全体に魔力が拡がり、内部に閉じ込める結界を発生させる《魔神術式 Ⅵ(マジンノセカイ)》。
 二つの領域が重層し、グリモワールを閉じ込める空間を形成する。
 いかに予知能力があろうとも、迷路と結界を同時に攻略する道筋を見通すのは困難で……そして、猟兵たちの攻撃が放たれるとあっては、どうしようもない。
 エリーの指揮のもと、外で足止めを行ってきた猟兵たちも追いついて集まってきた。
 もはや、グリモワールの逃げ道はどこにもない。

「この中では鏡に惑わされ、多少の予知では対応できぬ。グリモワールよ、ここが年貢の納め時だ!」
「紡がれし魔弾よ、追え、喰らえ、汝は猛追、汝は捕捉。魔女が望むは追い立て喰らう魔の猟犬」
「ようこそ私たちの世界へ。そしてさようならだ」
「……はぁ。予知は、僕のアドバンテージだったのになぁ……」

 抵抗の気力を失い、鏡の迷宮の中心で諦めて笑うグリモワールに、攻撃が殺到する。
 メンカルが用意した魔法陣から放たれる、追尾性の高い魔弾を連射する超高速連続攻撃が可能な術式《狩り立てる嵐の魔犬(ストーム・ハウンド)》が噛みつく。
 また、《魔神術式 Ⅵ》により無限に生じる防御無効の神槍を浴び続け、串刺しになる。
 光の矢が、砲撃が、銃弾が、居合が、アヒルさんの嘴が、グリモワールに叩き込まれる。
 肉体の欠片も残らないほどの圧倒的暴力を一身に浴びて、グリモワールは偽りのシェルターの中で討伐される。
 十二剣神『宣託者グリモワール』は逃げ延びることかなわず、猟兵たちの手によってトドメを刺された。

 猟兵たちの勝利に決戦都市のケルベロスたちは、市民たちは喝采を上げるのであった。


●……逃げ切れると思っていたのかね?

 そして、グリモワールは倒された……はずなのだ。
 グリモワールの……肉体は、無事に滅ぼされた。
 だがグリモワールの精神は、アリスの毒牙に捕らわれていた。
 残念ながら、敗北した上で尊厳を踏みにじられるようです。

「なんで、なんで……なんで……!?」
「|そーい、”なかよし”しーましょ❤《夢の中に入る》」

 アリスの|近接攻撃《なかよし》を警戒して走り回っていたグリモワールだが、距離を取っても無関係だとばかりにアリスは『虚影の仮身』に装填していた二種類目のユーベルコードを発動していた。
 《シャドウペルソナ》。
 対象1体の精神世界に『分身精神体(シャドウペルソナ)』を召喚するユーベルコードによってグリモワールの精神世界に分身体を送り込んだアリスは、自らの精神世界とグリモワールの精神世界を混ぜ混ぜしていた。
 その上で、精神世界内部で結界を構築してグリモワールのマインドをご招待。
 現実の身体が滅んでも、その心をおもてなしするのだ。

「精神世界は私の領域なので中に入ってしまえばここっちのものよ♪ 予知先と現代で2度いただけて、お・と・く♪」
「マインドノソリン! マインドノソリン! 第百壱の予言ンンン!!」
「ノソリンなら私の|ベッド《結界術》の中で寝てるわ」

 必死のグリモワールが心の内側で召喚した《第百壱の予言「楔の巨獣マインドノソリン」》も、アリスのユーベルコードに依らない結界術で封印されて閉じ込められている。
 肉弾戦を誇るパワーであったが、欲望開放500レベルのアリスに抗うには現実での戦いで消耗が激しすぎた。
 精神世界にもグリモアはあったが……それで見えるのは、絶望の未来のみ。
 腰が抜け意識が飛ぶほどの|状態異常《セカンドカラー》がグリモワールを蹂躙する。

「えっちなのうみそおいしいです❤」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」

 こうして、十二剣神『宣託者グリモワール』は絶望に沈み……心身共に、無事に撃破されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年05月28日


挿絵イラスト