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ケルベロス・ウォー⑨〜蔓延のメデューサ

#ケルベロスディバイド #ケルベロス・ウォー #原罪蛇メデューサ

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●ケルベロス・ウォー
『おそれ』とは生存本能と捉えることもできるだろう。
 知性を宿すが故に宿り得る、生命の危機を忌避する能力。そう思えば『おそれ』とは決してネガティヴな感情ではないのだろう。
『おそれ』があるから知性体は危険を察知するであろうし、危機を回避するために己の身体能力を引き出すだろう。
 全ては感情なのだ。
 感情があるからこそ、知性体は己の限界を拡張し、引き出し続けてきた。

 ――とも言える。

 太古の昔、ケルベロスディバイド世界の人類に『知恵』を与えたのが十二剣神『原罪蛇メデューサ』であるという。
 喰らうために愛する。
 喰らうために産む。
 喰らうために見守る。
 その全てが『原罪蛇メデューサ』にとって矛盾しない事柄であった。
 死せる知性体は、彼女がそう命じたからだ。
 喰らうためには、死は絶対である。
「禍禍禍 愛し子達を喰らうは今」
 彼女は鉄の天蓋晴れた湾岸の決戦都市から『おそれ』が晴れていくのを見た。
 だが、完全に拭えたものではないし、消え去ることはない。
 そこに知性体、人間がいるのならば『おそれ』は生まれる。
 例え、拭えたように見えたとて、一点の染みでも、拭った僅かな跡でもいい。
 わずかでも『おそれ』があれば、彼女は『それ』ができたのだ。

「禍禍禍」
「爻爻爻」
「亞亞亞」
「咒咒咒」
 奇妙な声が、湾岸の決戦都市のあちこちから突如として響き渡った。
 グランドロン、ゴッドペインター、ガジェッティア、土蔵篭り。
 彼らは最前線である東京に近しい湾岸の決戦都市で決戦配備の建造に携わっていた。誰もが危険を顧みず、覚悟を持っていた。
 だが、そんな覚悟の裏に僅かでも『おそれ』があれば『原罪蛇メデューサ』は、彼らの肉体に入り込むようにして、その姿を『メデューサ人間』へと変えてしまうのだ。

「……馬鹿な、どうして!」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、決戦都市のあちこちから響き渡る奇妙な声に後ずさる。
 突如として、頭髪が蛇へと変貌した多くの人々に困惑する。
 鉄の天蓋の如き竜の群れを猟兵たちが退けた後だというのに、次から次に撒き起こる異常事態に困惑しているようだった。
「禍禍禍 『おそれ』は拭えぬよ 愛し子達よ 私はお前たちを愛している 喰らうために愛している 私の飯たち しもべは何処にでも入り込む」
 そう、寂れた廃屋。放課後の教室。怨嗟渦巻く電子の匣、そのいずれにも『おそれ』あるのならば、必ず『原罪蛇メデューサ』は配下を送り込むことができる。
 その恐ろしさを猟兵たちも体感していただろう。
 だが、それだけではないのだ。
 配下を送り込むことができるのならば、『原罪蛇メデューサ』自身が潜り込むことができるのだ。

 荒業と言わざるを得ない。
「禍禍禍 禍禍禍 禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍!」
 奇妙な笑い声が響く中、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は猟兵たちを転移させながら、異常事態を理解する。
 決戦都市の至るところであらわれる『メデューサ人間』たち。
 自我を喪った『メデューサ人間』たちは、いずれもが『原罪蛇メデューサ』と同等の力を持っている。
 恐るべきことである。
「『メデューサ人間』に変えられた皆さんは……! 恐らく、ただ撃破するだけでは、その生命を喪ってしまいます! なんとか、殺さぬように無力化しなければなりません!」
 彼女の悲痛な叫びを猟兵たちは聞いただろう。
 一体一体が『原罪蛇メデューサ』と同等の戦闘力を持つ相手を如何にして無力化できるというのか。
 そして、仮に無力化できたとて、『メデューサ人間』からどのようにして戻すというのか。
 その疑問にナイアルテは答えた。

「恐らく……『決戦都市に残った人々』の中のいずれかに本体である『原罪蛇メデューサ』が紛れ込んでいるはずです……! 本体である『原罪蛇メデューサ』の融合した『メデューサ人間』を見つけ出し、本体を撃破できれば、元の人間に戻れるはずです!」
 それは困難な道だった。
 けれど、やらねばならない。
 人々の生命とに天秤にかけるまでもない。猟兵達は、恐るべき敵を前にして己達の持ち得るユーベルコードの煌きでもって、これに抗するしかないのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『ケルベロス・ウォー』の戦争シナリオとなります。

 太古の昔、ケルベロスディバイドの人類に『知恵』を与え、いずれ自分が喰らうべく慈しみ育ててきた十二剣神『原罪蛇メデューサ』との決戦シナリオです。
 人の抱く『おそれ』を媒介にして|小剣《グラディウス》なくとも配下を地球に送りこむことのできる随一の侵略・制圧能力を誇っています。
『原罪蛇メデューサ』は地上に満ちた『おそれ』の力で決戦都市に残った人類の肉体を『メデューサ人間』に変えてしまいました。
 それと共に『メデューサ人間』のいずれかに本隊でる自身をも紛れ込ませたのです。
『メデューサ人間』は自我を奪われておりますが、全てが『原罪蛇メデューサ』と同等の戦闘力を持っています。
 普通に戦って倒せば、素体なった人間も勿論死んでしまいます。
 なんとか殺さずに無力化しなければならないでしょう。また、本隊を見つけ出して撃破すれば、『メデューサ人間』は元の人間に戻ることができます。

 ※プレイングボーナス……メデューサ人間を殺さないよう無力化する/メデューサの「本体」と融合したメデューサ人間を見つけ出す。

 それでは、狙われた地球を守るために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『十二剣神『原罪蛇メデューサ』』

POW   :    蛇蛇獄魔獄狡兎殺
【全身から染み出す「超次元の蛇」】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
SPD   :    朧朧蛇蝎奇霊夜行
自身が対象にとって未知の存在である限り、通常の行動に追加して「【広域感染型の金縛り】」「【鎮火できず永遠に追尾する鬼火】」の心霊現象を与える。
WIZ   :    歓歓禍禍大虞呪咒
【底知れぬ恐怖をもたらす笑い声】を放ちダメージを与える。命中すると【「おそれ」】を獲得し、自身が触れた対象の治癒or洗脳に使用できる。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アメリア・イアハッター
折角光が戻ったと思ったら厄介な奴がきたわね
一人じゃどーにもならなさそうだから、先駆けとしてできそうなことをやってみよう

方針
自身のみの解決は目指しすぎず後に繋がる様に

行動
UC発動
後続が敵を見つけやすくなるように敵のみを空へ浮かばせ続ける
浮遊の維持のため攻撃よりも宇宙バイクによる逃走・回避を優先
道中浮遊した敵がいれば、地面へ叩きつけ関節を決めて無力化を目指す
無理そうなら即逃走し殺害は必ず避ける

本体以外に自我がないなら、意志を持ち話したりするのが本体かな
敵に近づけば未知を晴らし理解するためにも話しかけ、本体かどうかを見極めよう
本体が分かればUCを全力でぶつける
お腹すいたなら林檎でも食べてなさいよ!



 鉄の天蓋は取り払われど、しかして地に満ちるのは混乱という名の『おそれ』であった。
 誰もが『おそれ』を抱く。
 白地に染み付いた黒い染みをどれだけ丹念に拭おうとも、拭いきれぬ黒があるように。
 湾岸の決戦都市に生きる人々の『おそれ』もまた拭い切れるものではなかった。
 だが、それを責めることも、責められるいわれもない。
 何故なら、『おそれ』とは知性体の誰しもが有し、決して消えない感情であるからだ。
 
「だからって、その『おそれ』を利用して余計にみんなを!」
 苦しませることは許せないとアメリア・イアハッター(夢想空流・f01896)は、湾岸の決戦都市に満ちた『メデューサ人間』たちを見つめる。
 彼らはこの決戦都市の最前線で決戦配備を建造していた覚悟ある人々だった。
 だが、彼らの『おそれ』を持って十二剣神『原罪蛇メデューサ』は『メデューサ人間』へと変貌させてしまったのだ。
「禍禍禍」
 奇妙な声を上げる『メデューサ人間』を前にアメリアは己ができることを探す。
 一人でできることは限られている。
 いや、一人ではどうしようもない。
 なら、とアメリアは後続に、この事態の収拾を託す先駆けとしてユーベルコードの輝く瞳と共に踵で地面を打ち鳴らしてステップを踏む。

「折角みんなに希望の光が戻ったっていうのに、なんでそんなことするのよ!」
 打ち鳴らされた踵。
 その地面から噴出するのは、アメリアの激情を示すような竜巻だった。
 それが彼女のユーベルコードである。
 戦場となった湾岸の決戦都市において、アメリアがしたことは、『メデューサ人間』になった人々を空へと浮遊させることだった。
 宇宙バイクを駆るアメリアは『メデューサ人間』から放たれる鬼火を引き連れて空を飛ぶ。
「禍禍禍 どれだけ希望を見せようとも、絶望は隣り合わせ なら、死さえも遠ざけることはできない それが私の愛し子たちの運命 私に喰らわせてくれ 愛したことも、すべて喰らうためなのだから」
 どこからか聞こえる『原罪蛇メデューサ』の声にアメリアは鬼火を躱しながら、空を舞う。

「どこ!?」
 アメリアは周囲を見回す。
 声が一体どこから響いているのかわからなかった。
 舞い上げた『メデューサ人間』たち。この中にいるのか? そもそも『メデューサ人間』に自我はない。
 なら、言葉を発するということは意思を持っている本体だということだ。
 だが、それが特定できない。
「禍禍禍 無駄だ 私は『おそれ』と同じようにどこにでもいる どんな場所にも生まれる 例え、それが電子の海であってもだ」
「見極められない……けど!」
 アメリアは竜巻で舞い上げた『メデューサ人間』の幾人かの体をつかみ、強引に地面に叩きつける。
 関節を極めて無力化を目指すが、『メデューサ人間』のそれは人間のものではなかった。
 人間の体だから、と思っていたが膂力が尋常ではない。
 このまま無力化できないと悟ったアメリアは即座に空へと逃げるように飛び立つ。

「禍禍禍 私は喰らいたいだけだ そのためならば愛そう」
「そんなにお腹が空いたなら林檎でも食べてなさいよ!」
 何も人類を喰らわなくたっていい。
 喰らうことが愛することだなんていわなくたっていい。
 アメリアにとって、愛するってことはそういうことではなかった。まったくもって理解できない。だからこそ、アメリアは竜巻で舞い上げた『メデューサ人間』たちを見上げる。
 空に舞い上げた彼らを仲間の猟兵たちならば見極めてくれるだろう。
 その一助となるためにアメリアは駆けつけたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
|竜使い《ドラゴンテイマー》が居なくなったと思ったら、今度は『蛇』が来たか。

自分を感染させて広まっていくのは面倒ね。
おそらく本体は、『おそれ』を自分で集めずに、配下のメデューサ人間に集めさせているんでしょう。

「式神使い」で黒鴉の式を多数放って、市街地を徹底的に走査。
いかにもドヤ顔してそうな、動きのない個体がいれば、そちらへ向かっていくわ。

途中遭遇するメデューサ人間は、盤古幡で重力5倍~10倍にして動けなくする。

見つけたわよ、“原罪蛇”メデューサ!
「全力魔法」重力の「属性攻撃」「破魔」で盤古幡、重力千倍!
このまま押し潰して、街の人たちを元に戻させてもらうわ。超次元の蛇も、重力で抑え込む。



 鉄の天蓋取り払われた青空は、きっと希望の色だった。
 だが、地にあるのは絶望の色。
 湾岸の決戦都市に残っていた人類……多くの種族やジョブを持つ者たちが集い、覚悟を持って最前線にて決戦配備を建造し続けていた人々が、次々と『メデューサ人間』へと変貌していく。
 それは恐るべき光景であったことだろう。
 混乱が絶望を呼ぶ。
 絶望が『おそれ』を呼ぶ。
「なんて悪循環……|竜使い《ドラゴンテイマー》が居なくなったと思ったら、今度は『蛇』が来たか」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は呻いた。

 この状況は最悪だ。
 漸く、決戦都市を襲った鉄の竜の群れを撃退できても、そこにいた人々が犠牲になっては意味がない。
「自分を感染させていくなんて、面倒なことこの上ないわ」
 しかも、『おそれ』は伝播していく。
 放っておくだけで、『おそれ』は人々に伝い、十二剣神『原罪蛇メデューサ』の力になるだろう。
 しかも『メデューサ人間』になった人々の区別がつかない。
 いずれもが頭髪を蛇にし、更には『原罪蛇メデューサ』と同等の強さを持っているのだ。
 無論、手繰るユーベルコードも本体と遜色ない。

「禍禍禍」
 奇妙な声と共に一斉に『メデューサ人間』たちが超次元の蛇を放つ。
 膨大な数。
 先行した猟兵が竜巻で巻き上げた『メデューサ人間』たち以外にもまだ『メデューサ人間』はいるのだ。
 彼らが放つ超次元の蛇は、まるで濁流のようにゆかりに迫る。
「流石にドヤ顔してそうな個体は……いないようね」
 ゆかりは式神でもって『メデューサ人間』たちを走査させていた。
 少しでも他の『メデューサ人間』と違う動きをしている者がいれば、それが本体が潜む『メデューサ人間』だと思ったのだ。
 
 だが、宛が外れた。
 いずれの『メデューサ人間』にも目立った動きはない。
 ただただ、己達猟兵を排除せんとするように超次元の蛇を放ち続けているのだ。
「深き闇の底にて分かれては絡まる原初の力よ。現世に顕現し、全てを捕らえ大地に縛り付けよ! 疾!」
 迫りくる『メデューサ人間』にゆかりは、己の豊富な霊力を以て、盤古幡(バンコハン)を開放する。
 それは重力を無限に増大さ焦る球体。
 さながら分子模型めいた黒球が迫る超次元の蛇ごと『メデューサ人間』たちにかかる重力を増大させ、その身を留めるのだ。

「まったく……何処にいるってのよ、『原罪蛇メデューサ』!!」
「禍禍禍 私はどこにでもいる 愛し子たちを見守っている すべては喰らうため 死は愛し子たちにとって必定 死んでしまうが、しかし、それは私の腹に収まるため」
「理由のわからないことを言って!」
 ゆかりは、次々と集まってくる『メデューサ人間』たちを己がユーベルコードで押さえつけ続ける。
 彼らを傷つけることはできない。 
 本体を発見し、仲間たちがこれを撃破するまでなんとかして彼らをとどめ続けなければならないのだ。
「みんな! お願い!」
 ゆかりは仲間たちに呼びかける。
 早く本体を見つけて欲しい、と。
 いつまでも押さえつけてはいられない。最悪の事態に陥る前に、と願うようにゆかりは己のできることをなし続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イクシア・レイブラント
ドローン展開、[索敵]開始。
いくつか戦場を回ったけれど、特にこの戦場のメデューサ人間は動きや仕草に差異がなさそうね。
だけど、ゆかりさんたちとの問答は、本当に全ての個体がやっていたのかしら?
[情報収集、瞬間思考力]で実際に話している個体を探す。

本体が見つければ本体のみを、見つけられないならまとめて対処する。
大型フォースブレイドを[武器巨大化]させて【融合切除】で[なぎ払い]。
このUCはメデューサ人間へと変化させた原因のみを切除し、因果事象の修復力で身体も心も元の人間に戻すもの。
そして、ダメージを与えるはとりついている本物のメデューサのみ。
超次元の蛇はシールドビットで[盾受け]して被弾を防ぐよ。



 イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)はドローンを飛ばし、湾岸の決戦都市の情報を一つでも多く習得しようと索敵を開始していた。
 それは他の猟兵たちも同様に行っていたことだった。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』は『おそれ』を介して、人々を『メデューサ人間』へと変貌させていた。
 いずれの『メデューサ人間』も戦闘力は『原罪蛇メデューサ』と同等。
 はっきりと言って、それは荒業どころかウルトラCとも言えるような侵略であったことだろう。
 本体を見つけ出し、倒さねば『原罪蛇メデューサ』によって『メデューサ人間』に変えられた人々を救うことはできない。
 そして、彼らを殺さずに無力化しなければならないという枷を猟兵達はハメられているのだ。
「いくつか戦場を回ったけれど、特にこの戦場の『メデューサ人間』の動きや仕草に差異がなさそうね」
 共通しているのは、『決戦都市に残った人々』という事柄のみである。
 だからといって、『原罪蛇メデューサ』本体が潜伏している『メデューサ人間』を見つけられるかと言えば、それは難しかった。

 動きや、言動。
 そうした差異を見出そうとしても。
「禍禍禍」
 奇妙な声が湾岸の決戦都市中から響いてくるのだ。
 それが『原罪蛇メデューサ』の声であるとイクシアは知っている。
「禍禍禍 愛し子らは全て私の飯だ 喰らうために愛した 愛したから喰らう ただそれだけのこと」
 声が響く。
 イクシアは『メデューサ人間』のいずれからか、もしくは全てから声が聞こえるように思えたことだろう。
 瞬間思考で集めた情報を精査する。
 だが、すべての『メデューサ人間』の口が動いているのだ。
 当たりをつけるのは難しい。

「であれば……」
 イクシアの瞳がユーベルコードに輝く。
「禍禍禍 無駄なことを 全ての知性体の生命 我が愛し子たちは全て死ぬ まぎれもない事実にして結末だ」
「だからといって、抗わない理由にはならないでしょう。例え、あなたがこの世界の人類に知性を与えた存在だからといって」
 イクシアは己に迫る超次元の蛇たち、その濁流の如き光景を見上げる。
 全ての『メデューサ人間』たちが放った超次元の蛇は、圧倒的な奔流となってイクシアを襲う。
 シールドビットで受け止め、躱し、逃げるように飛翔して尚、超次元の蛇たちはイクシアを噛み殺さんと迫っているのだ。

「全て同じ攻撃。どれか一つが強いということもない。やはり、全て同じ……なら、どうやって見つければ」
 イクシアはもう一度『メデューサ人間』のことを思い返す。
『決戦都市に残った人々』全てが『メデューサ人間』になっている。
『原罪蛇メデューサ』は何処にでもいる。
『おそれ』を抱く限り、逃げ場はない。
 戦う猟兵達以外の誰かだというのならば、とイクシアは思考を巡らせ、しかし迫りくる超次元の蛇を手繰る『メデューサ人間』をユーベルコードに輝く瞳で見つめる。


「今は、迷っている暇はない。まとめて対処させてもらうよ。『メデューサ人間』の内部……その異物たる『原罪蛇メデューサ』の『おそれ』。検知、同定。切除開始」
 イクシアが振るう大型フォースブレイドがユーベルコードの輝きを受けて長大に形成されていく。
 因果事象の修復力。
 込められた刀身のちからが、一閃でもって迫る『メデューサ人間』を打ち据える。
 その一撃は肉体を傷つけるものではなかった。
『メデューサ人間』達の中にある、『原罪蛇メデューサ』の『おそれ』のみを切り裂き、イクシアは力喪って倒れた『メデューサ人間』たちを抱えて飛翔する。
 戦いに巻き込ませるわけにはいかないのだ。
 イクシアは、そうした救助活動を行いながら、未だ猛威をふるい続ける『メデューサ人間』を見下ろすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
先駆けの猟兵が『メデューサ人間』を空に浮かべてくれたおかげで、こちらは落ち着いて準備ができる
洗脳されれば、私も……誰かを傷つけてしまうかもしれない
耳元に『月隠』の護符を当てて。あの笑い声から、心を護るわ
たとえ、まだ襲い来る者がいたとしても――結界術で動きを封じ、触れさせない
絶対に、誰も、傷つけたりはしないわ

教えて、『邪視の瞳』“本体”を探し出して――
悪魔が見抜いたその“芯”へ、私は光の矢を放つ

子を生かそうとする親もいれば、子を喰らうあなたのような者もいる
愛を語りながら、それを喰らう
――その矛盾を、あなたは本当に矛盾だなんて、思っていないのでしょうね



 空に舞い上がる『メデューサ人間』たちを見上げるのは、青い瞳。
 その瞳には決意が満ちているように思えてならなかった。
 先行した猟兵達の活躍によって『メデューサ人間』は竜巻に巻き上げられている。しかし、それも永遠でもなければ、長時間の拘束にも向くものでもなかった。
 あくまで時間を稼ぐ。
 それを理解したからこそ、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は心を落ち着かせていた。
 大丈夫、と。
 己の心は、まだ小波。
 荒れ狂うような心の動きは足元を掬われることになる。
 だから、大丈夫だと彼女は己の心に言い聞かせるようだった。

「禍禍禍 禍禍禍禍禍禍」
 奇妙な笑い声が響く。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』によって『メデューサ人間』に変貌した湾岸の決戦都市に残った人々。
 彼らを傷つけることはできない。
 本体である『原罪蛇メデューサ』を打倒すれば、彼らを『メデューサ人間』から元に戻すことができる。
 しかし、静漓は己の頭の中に響く声に耳を覆った。
 己の心の中が反転するような感覚。

 護りたいと思った心が、誰かを傷つけたいと思う心に反転するようだった。
「……絶対に」
 彼女の耳に押し当てていたのは護符。
 それによって『メデューサ人間』たちが放つ奇妙な笑い声を遮断し、己の心を守る。
「誰も、傷つけたりはしないわ」
 息を吐き出す。
 彼女は額に汗を浮かばせながら、青い瞳を『メデューサ人間』に向ける。
 その輝きはユーベルコードの光であったが、彼女の決然たる意思を示すようでもあった。

「教えて、邪視の瞳(ジャシノヒトミ)」
 悪魔の瞳。
 それが静漓の瞳と重なる。
 視界に映し出されるのは、靄のように決戦都市全体に広がる『おそれ』であった。
 それは途方も無いものだった。
 全てが同じ。
 色濃い場所があるのではないかと思えたが、しかし、全てが同一なのだ。
 静漓は瞳を閉じた。
「禍禍禍 私はどこにでもいる 愛し子らが生きているかぎり『おそれ』が消えないのと同じようにな 私は 愛している 愛し子らを なぜなら喰らうためだからだ 愛するために喰らう 喰らうために愛する 同じことだ」
 響く言葉に静漓は頭を振る。

『原罪蛇メデューサ』の言葉は矛盾している。
「子を生かそうとする親もいれば、子を喰らうあなたのような者もいる」
「禍禍禍 それが知性というものだ 愛し子らが 私と相反するのと同じように私と同じようになるのもまた 知性ゆえ これが見守る愛」
「愛を語りながら、それを喰らう。それは確かに正しいことなのかもしれない。知性と呼ぶのかも知れない。けれど、知性を宿すからこそ、それが矛盾だと知る。あなたは、本当に矛盾だなんて思っていないのでしょうね」
 静漓は瞳を閉じながら光の矢を構えた。
 見えるから、見えない。
 引き絞った光の矢は悪魔の力によって膨れ上がって、煌々たる光を湛えていた。

「だから、私はあなたの愛を、その矛盾を穿つ」
 光があるから闇がある。
 であるのならば、『おそれ』払う光もまた強くなる。
 そして、その光でもって色濃くなった場所へと静漓は光の矢を放つ。
 その矢は『メデューサ人間』達の群れではなく……決戦都市の中枢へと飛んだのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
任務了解しました。ミレア・ソリティス、出撃します
3型隠密兵装及び5型近接戦兵装を装備、また自衛モードの『ヴィントシュティレ』を囮として別行動させ、『アクティブステルス』を起動し姿を消して移動して【コード・モルフェウス】を使用。

戦場全体を半電脳領域化し高速でのハッキング及び「メデューサ人間」のデータ解析を開始します
…構成成分の差異、各個体が自律しているかあるいは中枢に統率された端末に過ぎないのか、敵性存在の分布状況、行動のタイムラグ、これらの解析情報を集め他の猟兵への提供を。

攻撃については本体発見時のみ、本体に対し隠密状態で接近、『ペインレス・セイバー』及び近接格闘兵装を用いた近接戦を狙います



 湾岸の決戦都市に急行したミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は、現状を把握する。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』によって決戦都市に残って決戦配備を建造していた人々が『メデューサ人間』へと変貌させられている。
 自我を失い、しかも『原罪蛇メデューサ』と同等の力とユーベルコードを手繰るのだという。
 恐るべきことである。
 しかも、戦場には奇妙な笑い声が響いている。
「禍禍禍 禍禍禍禍禍禍禍」
 それが『メデューサ人間』たちから一斉に響いているのだ。
 いい知れぬ恐怖を齎す笑い声。
 だが、ミレアは近接戦闘用の兵装を装備し、さらに隠密兵装を装着して自律するユニットを囮として先行させる。
 あくまで『原罪蛇メデューサ』の力は人類における感情を司るものばかりだった。

 すべては『おそれ』という感情を起点っとしている。 
 であれば、とミレアは己には作用できないだろうと思っていた。。
「コード・モルフェウス、アクティブ。半電脳領域構築……完了。領域内への事象干渉・改変を開始します」
 ユーベルコードの発動。
 実体化した電子情報でできた電子の杭が決戦都市に降り注ぐ。
 それは実体と同時にデータ化した半電脳領域化するユーベルコードである。
 感情すら電子情報に変換していく。
 先行した猟兵たちによって舞い上げられた『メデューサ人間』たちの電子情報をミレアは即座に習得し、解析する。
 全てが同一。
 同一ではないのは、『メデューサ人間』に変貌した人々の種族差程度であろう。
 グランドロンや土蔵篭り、ゴッドペインターなど、そのあり方は差異でしかない。だが、その他のパラメーターは同じだった。
『おそれ』――『原罪蛇メデューサ』は、そうした感情パラメータを以て他者に介入し、『メデューサ人間』に変貌させているのだ。
 本体が入り込んでいるのならば、そのパラメーターに異常があるはずなのだ。

 そもそも、『メデューサ人間』たちは自律しているのか?
 自我を喪っているのならば、これを統率している本体がいなければならない。けれど、ミレアは理解した。
「『原罪蛇メデューサ』が変貌させた『メデューサ人間』は全てが同一パラメーターを獲得。それは本体と変わらぬ、と。同等であるという情報を踏まえても、これは理解できるところです」
 ミレアは即座に決戦都市に点在する全ての『メデューサ人間』たちの所在を把握する。
 それはまさしく決戦都市に残っていた人々と同数であることを示していた。
「一人残らず『メデューサ人間』化している」
 例外はないという事実。
 それが何を示しているのか。
 ミレアはその情報を他の猟兵に共有すべく電子情報を集め、電子の杭として戦場となった決戦都市に残る。
 後続の猟兵たちならば、この事実から真実を手繰り寄せることもできるはずだ。

「後続への支援を継続。情報収集」
 ミレアは隠密状態のまま身を隠して、さらに情報を集め集積していく。
 そうすることで他の猟兵達の行動をサポートするのだ。
 これもまた猟兵の戦い方の一つだ。
 支える者、立ち向かう者、守る者。
 そしてその全てが繋ぐ者となるのならば、きっと守れる。
 それを示すようにミレアは電子の杭へと情報を送信し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルテミシア・アガメムノン
【魔王国】
厄介ですわねぇ。デビキンの皆さんでしたら平等にぶっ飛ばしても大丈夫でしょうけれど流石に人間さんに頑丈さを望むのは酷ですわよね。
【認識不能の神威】で不可視の存在に。
魔力で触れる事で奪う記憶を見てメデューサさん本物か偽物かを判別いたしましょう。魔力波みたいな感じで広範囲を!(できなければコツコツ接触していきます)
フカヒレさん、ユニさんと手分けして探してみましょう。
探している最中も『魔力溜め』で魔力ゲージをマシマシにして行きます。
見つけたら――『全力魔法』でぶっ飛ばしてあげましょう!
「美味しく頂く為に知恵を授けるとはグルメですわねぇ。ですが、知恵を持てば抗われるのも分かっていたでしょうに」


ユニ・バンディッド
【魔王国】
あくまで同等の戦闘力。「メデューサ人間」と「本体との融合体」は違う存在なら。
魔王様にフカヒレさんが動きやすい様に【フェイクアップ!】【ラス・オブ・バンディット】を同時発動!
絢爛装飾の注目効果でボク自身を囮に疾走し、悪魔的視力で動き盗んで先読み回避。
透過の穿掌でメデューサ人間達の記憶を、関節の骨を、アレもコレも盗って戦闘力を削ぎ、メデューサ人間達を|攻略《無力化》するよ!ついでに本体だけの記憶が盗れれば良し!それに|ハズレ《同じ敵ではない存在》を引いたのなら、それは|アタリ!《本体との融合体》
もー!ボクはあくまで盗賊、盗むのがお仕事だからね!あとはまかせたよ!(みつけたら合図で合流)


フカヒレ・フォルネウス
【魔王国】アドリブ歓迎

手分けして捜索ですね、かしこまりました。
なるほど。見た目は同じ、自我の有無だけが差異と。
……会話を試みて反応が合ったら本体、と見込んでみますか。

故事に曰く、蛇の怪物は酒を好むモノ。
酒煙鮫を取り出し濃厚な酒の息吹を吐かせて誘い出して、近づいてきたメデューサたちをバブルワンドで殴ります。
メデューサ人間ならばUCでメデューサ化という強化を解除できるはず。
原罪蛇からすれば愛とかいう厚意であるなら、バフは剥がせるものです。
原罪蛇本体でも歓歓禍禍大虞呪咒で得た「おそれ」を失わせることができるでしょう。

本体なら派手な魔法で合図を出してお二人に報告。合図を確認したら黄駆鮫に乗って合流を。



 十二剣神『原罪蛇メデューサ』は随一の侵略・制圧能力を有した存在である。
 それを証明するように湾岸の決戦都市一つがまるごと『メデューサ人間』へと変貌を遂げていた。
 決戦配備の建造のために残っていた多くのグランドロンや他の種族、汎ゆるジョブであろうと関係なく、だ。
 そこに知性体がいるのならば、全てが『メデューサ人間』に変貌する。 
 例外などない。
 例外があるとすれば、猟兵とケルベロスのみであろう。
 人々は頭髪が蛇となった『メデューサ人間』へと成り果てていた。。

 しかも。
「一体一体が『原罪蛇メデューサ』と同等の戦闘力……この電子の杭の情報からすると、『原罪蛇メデューサ』と『メデューサ人間』の差異はない、ってことみたいだけど」
「厄介ですわねぇ」
 ユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)が先行した猟兵が残した電子情報によって構成された電子の杭を手にして内包された情報を読み取ってアルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)に伝える。
 あくまで戦闘力が同等というのならば『原罪蛇メデューサ』はオリジナルとしての差異があるとユニは思っていたのだが、どうやら違うらしい。
 精査した猟兵たちもいたし、彼らの見解もまた同様だった。
 それが『原罪蛇メデューサ』の厄介な所であった。
 そんな猟兵たちを嘲笑う課のように奇妙な笑い声が『メデューサ人間』たちから放たれる。
 いい知れぬ恐怖。
 その感情が胸の奥から込み上げてくる。

「禍禍禍 禍禍禍禍禍禍」
「デビルキングワールドの皆さんでしたら平等にぶっ飛ばしても大丈夫でしょうけれど、流石に人間さんたちに頑丈さを望むのは酷ですわよね」
「流石にそれは無理だと思うよ、魔王様!」
 アルテミシアは困ったように呟いた。
 デビルキングワールドの悪魔たちであれば、多少乱暴にぶっ飛ばしてもケロリとしているところである。だが、ケルベロスディバイド世界の人類はそうもいかんあい。
 であれば、とアルテミシアはユニと共に立つフカヒレ・フォルネウス(鮫の悪魔の四天王・f31596)に目配せする。
「手分けして捜索ですね、かしこまりました」
 フカヒレはアルテミシアの視線から委細仔細を承知しているようだった。
 即座にフカヒレが走る。
 同時にユニもまたユーベルコードの輝きたる光を解き放つ。

「――絢爛たれ、金銀砂贋の装飾! そしてそして! ――熾烈に盗め、瞬蹄の盗賊。無数の蹄音。透過の穿掌!」
 ユニは二つのユーベルコードを同時に併用し、己の絢爛装飾たる輝きでもって戦場を疾駆する。
『メデューサ人間』たちから放たれる鬼火が彼女を襲う。
 膨大な数だ。
 それもそのはずだ。
 彼女の絢爛たる姿に誘われるようにして『メデューサ人間』たちは鬼火を放っているのだ。まるで鬼火の雨だ。いや、大瀑布の水量を思わせる鬼火がユニへと迫る。
「ユニ・アイズは回避力!」
 鬼火の瀑布をかいくぐりユニは『メデューサ人間』へと迫る。 透過する穿掌の一撃が『メデューサ人間』の一人の顎を打ち上げる。
 瞬間、ユニは『メデューサ人間』の解体新書を得る。
 全てが同一。
『おそれ』を介在して融合を果たした『原罪蛇メデューサ』本体が入っている『メデューサ人間』との差異は見受けられない。
 種族の差はあれど、それは今のユニたちにとっては誤差みたいなものだった。

「見分けられんないよ~! もー! ボクはあくまで盗賊、盗むのがお仕事なのに、盗めるものが全部一緒だなんて聞いてないー!」
 ユニは迫りくる鬼火を巧みに躱しながら泣き言めいた声を上げる。だがしかし、囮としての役割を損なうことはなかった。
 見事な絢爛たる舞いじみた動きにアルテミシアは認識不能の神威(ヘルメース)によって己が身を覆っていた。
 ユニが囮になってくれているおかげで行動しやすい上に、標的にされない。
 何故なら、今のアルテミシアは知覚されない状態なのだ。

 ゆっくりとした動作でアルテミシアは『メデューサ人間』にふれる。
 魔力で触れることで記憶を奪うアルテミシアのユーベルコードは『メデューサ人間』の一人の記憶を垣間見る。
 そこにあったのは、闇に塗りつぶすかのような真っ黒な『おそれ』の感情の洪水であった。
「これは……なるほど荒業、というのも頷けるところですわ」
 アルテミシアは理解しただろう。
「禍禍禍 理解したか、猟兵 これが私の愛 見守る愛 いずれもが私の飯となる定めゆえに永遠には生きられない 全ては私が喰らうために愛したのだから」
 重なる声。
 全ての『メデューサ人間』たちの口が一斉に開き、アルテミシアに告げるのだ。
「うわ、なんか急に喋ったー!?」
 ユニの驚く声が聞こえる。
 アルテミシアは頷く。なるほど、と。やはり全てが同一。
「喰らうといういうことは一部になるのではなく同一になるということ。であれば、『メデューサ人間』の全てが同一で差異がない、というのも頷けますわね」
「そして、故事に曰く、蛇の怪物は酒を好むモノ」
 フカヒレの瞳がユーベルコードに輝く。

 フカヒレが放つのは濃厚な酒の息吹。
 それによってかどうかはわからないが、周囲に満ちる奇妙な笑い声が増していく。
「禍禍禍 私が好むは 愛し子そのもの 愛し子が私の飯なのだから 酒などというものは添え物に過ぎない」
「そうですか。ですが」
 なるほど、とフカヒレは全ての『メデューサ人間』が同時に同じ言葉を発していることを理解する。
 全て同一。
 であれば、本体と融合している個体を如何にして導き出すのか。
 猟兵たちを欺くのならばどうするのか。
 巧妙なる罠を仕掛けるまでもない。何故なら、全て同一なのだから。それは先行した猟兵達がもたらしてくれた情報からも判明している。

「であれば、小賢しい術など」
 四天王である己には通じないというようにフカヒレのユーベルコードの煌きと共に、その肉体に刻まれた膨大な呪力でもって『メデューサ人間』を貫く。
「喰らうことが愛であるというのならば、それは厚意。厚意はバフ。バフであるというのならば、剥がせるのまた道理」
 フカヒレの一撃が『メデューサ人間』の中にある『おそれ』を拭うようにして、その強化を解除させる。
 人々が『原罪蛇メデューサ』と同等の戦闘力を得たというのならば、その強化の範囲に収まる。
 フカヒレは、それを逆手に取って『メデューサ人間』から『おそれ』を日置剥がしたのだ。
「これはやはり、手当たり次第か……しかし、敵は圧倒的物量。早めに当たりを引き当ててもらうのを期待するしかありませんね」
「ほんとうだよー!」
 ユニが派手に囮になり、フカヒレがこれをさばく。
 アルテミシアはうんうんと頷く。

「『原罪蛇メデューサ』さんは美味しく頂くために知恵を授けるグルメさん。ですが、知恵を持てば抗われるのも分かっていたでしょうに」
 確かにグルメだ。
 悪辣だ。ワルだ。だが、抵抗されるとは思っていないところが、愛の盲目さであろう。
 ならば、とアルテミシアは瞳を見開く。
 そう、どんなに愛していたとしても生命は知性を宿した。
 であれば、喰らわれぬために愛から逃げることもあるだろう。
 それを知らぬ『原罪蛇メデューサ』のあり方にアルテミシアもまた抗するのだ。
 己が放つ魔力波によって『メデューサ人間』の位置を特定し、ユニが引き付け、フカヒレが『おそれ』を拭う。
 それは三人だからこそできることであった。
 少しでも早く、本体と融合した『メデューサ人間』を見つけるために。
 その範囲を絞るためにも、三人は獅子奮迅なる働きでもって迫る『メデューサ人間』の『おそれ』を払い続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杓原・潤
ピヨちゃん(f42991)大丈夫?
イライラしてない?
全員ぶっ飛ばしちゃダメだからね?
うるうが皆にお願いしてあげるから、落ち着いてやろうねぇ?

うーん、まだメデューサ人間になってない人がいたら、その人の所に本体がおそれを食べに来そうなんだけどなぁ。
いないならその時は力押し、片っ端から魔法で判別して行こう!
いくらメデューサと同じ力を持っていても、元に戻せるならまだ生命体のはず。
自我も無いなら、体だけはうるうのお願いを聞いちゃうよねぇ?
お家に帰って、ってお願いしたらどうかな?
元人間はどこかに帰ろうとするし、メデューサ本体は抵抗するだろうから分かるかも!
後は根気比べ。
見つかるまで頑張らなきゃね!


ファルコ・アロー
うるせーですよ杓原ぁ(f28476)!
ちっとでも早いトコ終わらせねーとやべー状況なんです、さっさとやる事やれです!
後ぜってーボクにその術使うんじゃねーですよ!

ボクはメデューサ人間の動きを止める事に専念するです。
電撃を弱めて気絶攻撃にすれば死ぬ事はねーでしょう。
ほんとに気絶してくれたら楽で良いんですけど、あいつらがそこまでヤワかは分かんねーですね。
油断せずに行動を妨害して杓原に手出しされねーようにするです!
超次元の蛇は近付かせなきゃ食らわずに済みそうですけどあのバカ笑いはどこからでも撃って来そうですから、瞬間思考力で片っ端から止めてやるです!
もし本体が見つかれば、集中砲火でやっつけてやるですよ!



 湾岸の決戦都市を取り巻く状況は、さらに悪化していた。
 天蓋のごとく空を覆っていた鉄の竜の群れ。
 これを払えど、しかし襲い来るのは『おそれ』という根源的感情を力に変える存在。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』である。
 その力は、恐るべきことに決戦都市に残っていた人々の全てを『メデューサ人間』に変貌させるものであった。
 さらに悪いことには。
「『メデューサ人間』全てが『原罪蛇メデューサ』と同等の戦闘力を持っているっつーのは、なんてめんどくせー状況なんですが! まったく!」
「ピヨちゃん、大丈夫? イライラしてない?」
「うるせーですよ杓腹ぁ!」
 ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は小さな体を揺らして、杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)の言葉に地団駄を踏むようだった。
 潤の言葉通り、彼女は苛立っていた。
『原罪蛇メデューサ』の能力は厄介極まりないものだった。
『メデューサ人間』は湾岸の決戦都市に残っていた人々と同数。
 猟兵達によって、幾分かは減らされているはものの、未だ本体である『原罪蛇メデューサ』の所在は判明していないのだ。

「ちっとでも早いトコ終わらせねーとやべー状況なんです、さっさとやれることをやれです!」
「全部ぶっ飛ばしちゃダメだからね?」
 潤はファルコの勢いにそう言った。
 そうなのだ。
『メデューサ人間』たちは、素体とされているだけだ。倒してしまうこともできるが、そうなると彼らは死亡してしまう。
 人命を第一とする猟兵たちからすれば、すこぶる相性が悪い。
「わかってますよ! だからめんどーだっていってんでしょうが!」
 ファルコは身を揺らしながら頭を振る。
 己にできることはなんだ。
「禍禍禍」
 奇妙な笑い声が響く。
 まるでファルコの苛立ちを嘲笑うかのようで、一層ファルコは憤慨する。

「うーん、まだ『メデューサ人間』になってない人は……いないみたいだね。もしかしたら、と思っていたけど、決戦都市まるごとみーんな『メデューサ人間』にしちゃうなんて……」
 潤は考える。
 落ち着こう。ファルコの憤慨もわかる。けれど、まずは落ち着かなければ立ち行かないと潤は理解していた。
 だからこそ、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「For Me,Please!(フォー・ミー・プリーズ) ねぇおねがーい! その奇妙な笑い声、やめてー!」
 潤の言葉に『メデューサ人間』たちの全てから放たれていた笑い声がピタリと止まる。
 やっぱり、と潤は理解した。
 そう、自我が失われていると入っても潤のユーベルコードであれば、『メデューサ人間』たちは無意識の内に友好的に振る舞ってしまうのだ。

 それが『原罪蛇メデューサ』と同一になっている『メデューサ人間』であればなおさらだ。
「禍禍禍 愛し子の願いであれば 致し方あるまい だが それでも私は愛し子らを喰らう 何故なら愛しているからだ 飯として喰らう それが私の愛だ」
「お家に帰ってくれないかなぁ?」
「禍禍禍 それはできない もはや不可逆な事態であるからだ ゆえに私は愛し子を残らず平らげることにきめたのだ」
 これは根比べだな、と潤は思っただろう。
「ピヨちゃん!」
「ピヨちゃん言うな、杓原ぁ! そのユーベルコード、ぜってーボクにむけんなっていったじゃねーですか!」
「これは不可抗力! やっぱり本体が見つかるまで根比べみたい! がんばろ!」
「わかってますよ! だからやってやろーじゃねーですか! アローアップ!」
 ファルコの瞳がユーベルコードに輝く。

 元からそのつもりだと言うようにファルコの全身から静電気が発せられる。
 その静電気は矢の形を形成し、戦場に雨のように降り注ぐ。
「禍禍禍 あくまで抗するか だが それも私は受け入れよう それが私の愛」
「チェェェェンジ! アクィラ!」
 ファルコの身より放たれる雷霆の矢。 
 一斉に放たれる光と『メデューサ人間』たちが放つ超次元の蛇。
 激突する二つが戦場に吹き荒れ、衝撃波を生み出す。
 ファルコからすれば、それは攻撃というよりも『メデューサ人間』たちをこれ以上、好きに行動させぬための方策であった。
 彼女の放つ静電気から雷霆の矢へと変貌したユーベルコードは、『メデューサ人間』たちを殺すことはできない。
 言い換えれば、殺さないということでもある。
「この世界の奴らが、この程度でくたばっちまうほどヤワじゃねーってことはわかってんです!」
 ファルコは飛翔する。

 己を見ろ、と言うようにファルコは全身から静電気を放ち続ける。
「杓原ぁ! そのユーベルコードで呼びかけ続けて、動きを止め続けるです! 本体が見つかるまで、誰も死なせねーですよ!」
「うん! 任せてよ、ピヨちゃん!」
「だーからー! ピヨちゃんって言うなって言ってんでしょーが!」
 二人は、戦場にありながら笑い合う。
 それはまるで『おそれ』を吹き飛ばすような、爽やかな風のように響くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御影・しおん
あらあら、案外往生際が悪い……というべきかしら?

見分ける方法?……うふふ、わたしは御影しおん、【境界線を見る者】よ?
『黒鏡』で光を喰らい作り出した闇に紛れ、更に結界を創り攻撃に対応、メデューサ人間たちの「境界線」に異常がないかを見て回るわね
案外、「本体」が融合しているせいで境界線に「異常」が起きているかもね

もし見つけたのなら、『影刃縛』を放って縛り、結界を融合された側の保護に用い、「メデューサという存在と他者とを分ける境界線」への『彼岸へ連れ去るモノ』による概念的な「切断」を試みるわ?
相手の方を傷つけぬよう集中しなきゃいけないから、難しいようなら情報を提供し他の猟兵に任せる事にするわね



「あらあら、案外、往生際が悪い……というべきかしら?」
 御影・しおん(Unknown・f27977)は、十二剣神『原罪蛇メデューサ』が湾岸の決戦都市に残って決戦配備の建造を行っていた人々を『メデューサ人間』へと変貌させた光景を目の当たりにして、そう呟いた。
 決戦都市に残されていた人々の全てが『メデューサ人間』に変えられ、その猛威が猟兵たちに襲いかかっている。
 しかも『メデューサ人間』と『原罪蛇メデューサ』は同一。
 そこから本体を見つけ出さなければならないのだ。

 同一であるがゆえに、見分けがつかない。
 そして、戦闘力が同等とは言っても差異はあるはずであったが、それさえも『原罪蛇メデューサ』は嘲笑うように奇妙な笑い声を上げ続けているのだ。
「禍禍禍 愛し子らは 私の飯だ 私の愛のために生きて死ぬ 喰らうということはそういうことなのだ」
 全ての『メデューサ人間』から同じ声が響く。
 しおんもまた笑った。
「同一? うふふ、わたしは御影・しおん、『境界線を見る者』よ?」
 しおんは影に紛れるようにして闇に消える。
 迫る鬼火は追跡すべき対象を見失ったように空中に浮かぶ。
 揺らめく鬼火。
 そのさなかにありながら、しおんはゆっくりと視線を巡らせる。

『メデューサ人間』たちは『おそれ』を介して『原罪蛇メデューサ』によって変貌させられた者たちだ。
 であれば、そこに境界線があるはずだったのだ。
 しかし、境界線がない。
 続くのはどこまでも平坦な『おそれ』である。
 靄のように広がるそれは、知性体が必ず持ち得る感情を根源としているのだ。故に、『本体』たる『原罪蛇メデューサ』は『おそれ』の中に身を潜めているのだ。
「でも、揺らいでいるわね?」
 他の猟兵のユーベルコードの光によって、僅かに揺らぐ場所がある。
 どこか、といわれれば答えは簡単だった。
「この都市の中枢……そうね、そこよね?」
 走るは、影の刃。
 しおんは、境界線を走るようにして放たれた刃は『おそれ』を破壊する。

「あなたは生命を喰らうもの。その一瞬だけは、同一ではいられない。その境界線を、御影・しおんは見逃さない。うふふ、みぃつけた」
 決戦都市の中枢。
 そこにいるのは何者か。
 言うまでもない。
 しおんは、それをもう見たのだ。
 だが、『原罪蛇メデューサ』が融合しているのならば、そのガードも固いのも頷ける。
「融合した人間を傷つけぬように集中しなきゃいけないのは、難しいわね……それに」
 周囲には『メデューサ人間』がまだいるのだ。
 これ以上は難しいと、しおんは判断し、己がユーベルコードの光と手繰る影の刃を天に延ばす。
 それは標。
 ここだ、と言うように、しおんは他の猟兵たちに情報という標を示して見せたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

|この状況《シリアス》はいつまで続くんですか……。

ナイアルテさん、なんとかしてくださいよぅ。
練乳代なんとかしてくださいよぅ!

あ、それとシリアス終わったらいっしょにダイエットしませんか?
ナイアルテさんもチョコでだいぶやっちゃって……行ってきます!(最敬礼

で、今回はメデューサですか。
へび座って黄道十二神関係ないのになんで出てくるんでしょうか。迷惑ですよね。

そして勇者としてここはやはり、メデューサ人間をなんとかしないとですね。
こういう場面こそ、癒やしの奏勇者が本領発揮するところですし!

何ですかステラさん。
納得してない感じですけど、耳栓抜きましょうか?

ステラさんまで響け【Canon】!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまーすっ!
戦闘時に付き極シンプルverです!

シリアスは戦争終わるまで続くよ
ですがシリアスこそ私が得意とするところ!
ルクス様は生きて
あと体重の話なぜここでしました??

しかし状況はカオス
エイル博士の愛は私のもの!
いきますよ!

メデューサ人間はルクス様にお任せしましょう
ええ、誠に!不本意ですが!きっとメデューサ人間は動けなくなる!
ルクス様の演奏にはそれだけの力があるのです!
普通の人間には耐えられないともいう

ですからまだ動きの変わらない、あの個体!

【トニトゥルス・ルークス・グラディウス】!
一撃必殺で仕留めてみせます!
何故かってこれ以上は鼓膜が持ちませんし!



 一体全体、どこまでこの状況が続くのだろうか。
 大いなる戦いに挑む限り、シリアスからは逃れられない。それはルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は今月が始まって以来、ずっと思っていた。
 一定の周期で訪れる大いなる戦い。
 その度に練乳の消費が凄まじいのである。経費でどうにかならないだろうか。どうにもならない。経費で、といえばなんとかなるのは、別に魔法の言葉でもなんでもない証明でもあった。
 ルクスはせめて練乳代だけでもどうにかなればいいと思っていたし、それ以外であればどうとでもなるとさえ思っていた。
 後方の転移を維持しているグリモア猟兵も理解してくれるとルクスは思っていた。
 すらりと伸びた手足。
 引き締まった腹部。
 であるのに、女性的な丸みを帯びたスタイル。
 ルクスは思った。戦いが終わったら一緒にダイエットしませんか? と誘うつもりだったのだが、なんかその必要性を感じられないな!?

「なんで!?」
 言うまでもない。
 食べたら動いているからである。
 褐色の肌に浮かぶ玉のような汗。転移とは多大な集中を必要とするものである。であれば、当然、チョコレートなどの糖分は必須。それを余すことなく消費したうえで健康的な運動を心がけているのだ。
 そう! スタイルとは!
 一日そこらの一石二鳥でどうにかなるものではないのだ! そういうものなのだ! らくしてスタイルを維持したい? 上等! だが、グリモア猟兵が許しても、天と己が肉体が許してくれんのである!
 故に弛みない積み重ねこそが、明日の己のボディをメイクアップしてくれるのだ!
 そんな具合のことを感じ取ってルクスは最敬礼した。
 が。

「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまーすっ!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びっていうか、雄叫びっていうか、なんかこう久しぶりというか、逆にレアなシンプルバージョンにルクスは、いつもこうならいいのだろうけど、シリアスブレイカーには程遠いなぁって思った。
「シリアスは戦争終わるまで続くよ、ということでございます。ですが、シリアスこそ私が得意とするところ!」
 かっこ、笑い、というやつである。
「それは無理あると思います」
「無理じゃないです! しかし状況はカオス!『エイル』博士は私のもの!」
「さりげなく所有発言よくないですよ」
 ルクスの言葉が発せられた瞬間、決戦都市の中枢に影の刃が立ち上る。

 それをステラは見ただろう。
「影の刃……? 他の猟兵の方、でしょうか? まさか!」
「……? なんでしょうね? 今回はメデューサですか。へび座って黄道十二神関係ないのになんででてくるんでしょうか。迷惑ですよね」
「違います! そうじゃあないです! ああもう『メデューサ人間』たちが!」
 ステラたちを妨害するように『メデューサ人間』たちが自我を失いながらも『原罪蛇メデューサ』によって操られるままにステラたちに迫っているのだ。
 明らかにおかしい。
 己たちがあの影の刃に気がついた瞬間に襲いかかってきた。
 であれば!

「ルクス様!」
「わかってますよ! 勇者としてここはわたしがなんとかします! こういう場面腰、癒やしの奏勇者が本領発揮するところですし!」
「誠に不本意ですが!」
「なんですか、ステラさん、納得してない感じですけど」
「いえ! 普通の人間に耐えられないですが、『メデューサ人間』状態であれば!」
「耳栓抜きましょうか?」
 ルクスの言葉にステラは己が耳を抑えた。
 彼女の演奏は確かに『メデューサ人間』たちの体を吹き飛ばし、動きを止める。
 凄まじい破壊音波。
 それによって『メデューサ人間」たちは動けなくなってしまっているのだ。

 周囲に動きの変わらない『メデューサ人間』はいない。
「であれば、やはりあの影の刃が突き立てられた中枢……! 気がついているのは、まだ私達だけかもしれません。であれば!」
「ステラさんまで響けー!」
「ルクス様、今はそれどころじゃあありません! ええい、トニトゥルス・ルークス・グラディウス! どうか皆さんに届いてください、私のユーベルコード」
 ステラの迸る雷光の剣。
 それは長大なる刀身でもって戦場になった湾岸の決戦都市に塔のように聳える。
 その切っ先は影の刃が消えゆく中枢を示していた。
 これ以上は己が身というか、耳栓っていうか、鼓膜が保たない。
 どうか、とステラは願いながらルクスの演奏に身を震わせながら、雷光の剣を中枢に向け、他の猟兵たちに示し続けたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日野・尚人
【ドヴェルグ】
げ、こいつはまた面倒な能力だなぁ。
『おそれ』の無い人間は居ないし、どいつに本体が潜んでるかなんて見分けが付く訳ないだろ?
でもどいつかに潜んでるっていうのなら・・・
UCで|「大空を覆うもの」の一部《ダチ》を呼び出して戦場の大気を支配下に!
メデューサ人間を酸素欠乏にする事で本体を炙り出すぜ!
流石にメデューサは失神しないだろうし、メデューサ人間を殺さず無力化してポーラのサポートだ。
ついでに俺たちはダメージと|状態異常《洗脳や心霊現象》の|無効化《霧による遮断》で守りもバッチリって寸法だな♪

本体を見つけたらあーちゃん、ポーラ、ゼロと協力してぶっ飛ばす!
俺たちの連携<連続コンボ>を食らえ!


ゼロ・ブランク
【ドヴェルグ】
よぉし、船のみんなと元気よく敵さん探してボコボコにしちゃうぞ~!
冬の妖精なポーラちゃんと一緒に行動だから着込んでおかなきゃね?(モコモコダウンジャケット着用)

メデューサ人間の中に、メデューサ本体が紛れているんだねぇ?
じゃあまずは本体を探すということで、これは尚人くんとポーラちゃんにお願いだよぉ!
あー、ダウンジャケット助かる~♪(UCの効果で大量の雪が降ったため)
メデューサの【おそれ】に対抗するため、技能【元気】で心を強く持つよぉ!

メデューサ本体が見つかったら、アタシの出番!!
UCで氷のドラゴンを描いちゃおう♪
【魔力注入】で氷のブレスを吐かせたり、爪での切りつけ攻撃で本体を殴るよ!


アイシャ・ソルラフィス
【ドヴェルグ】
尚くん(f01298)、ポーラちゃん(f06947)、ゼロさん(f42919)と出撃

良くも悪くも食欲を司りすぎじゃない? このメデューサさん??(汗

敵の攻撃は《全力魔法》+《盾受け》+《受け流し》による【魔法障壁】で防御
心霊現象と「おそれ」は《祈り》《浄化》《呪詛耐性》《勇気》《青春》で何とかすれば尚くんがUCで無効化してくれるはず

あとボクのUCでみんなのUCも強化!

メデューサ探しはポーラちゃんがなにかするみたい。いちおう防寒着着ておこうっと
(ここで《幸運》《奇跡のドジ》で何か起こしていただけたら幸いです)

見つけたら《全力魔法》+《属性攻撃》による【精霊魔法】で攻撃するよ!


ポーラリア・ベル
【ドヴェルグ】
冬だよ、冬だよ、今は冬。ポーラサンタがやってきたよー!

【空中戦】で空飛んで、わんさかさんなメデューサ人間を振り切って、
【天候操作】で大雪降らして、UCで都合よくメデューサ本体を孤立させて引き剥がしにいくよー!
出てきた本体は
ゼロろんのかっこいい氷竜のブレスに【凍結攻撃】の吹雪を乗せて連携!
冷凍展示会にお出ししちゃうんだから!

十分な雪が積もるまでは皆の力も借りないと。防御とか助かる。
相手の笑い声に関しては雪で遮ったり【楽器演奏】でベル鳴らして相殺したり、ドヴェルグの皆に何とかしてもらったりするー!

「怖いのが相手だわ!石化はしないの?」
「幸せな雪でこわいのとんでけしちゃうのよー♪」



 湾岸の決戦都市に満ちるは『メデューサ人間』。
 彼らは全て、決戦配備の建造のために最前線に残っていた人々であった。その全てが十二剣神『原罪蛇メデューサ』によって『メデューサ人間』に変貌させられていたのだ。
 しかも、その全てが同一。
 本体が潜り込んでいるという個体との区別が全くできていなかった。
「また面倒な能力だなぁ」
 日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)は思わず呻いていた。
『原罪蛇メデューサ』は『おそれ』を介して全ての能力を手繰る。
 配下を地球に送り込むことも、『メデューサ人間』に変えることも、だ。
『おそれ』のない人間なんていない。
 だからこそ、湾岸の決戦都市の人々は全て『メデューサ人間』に変わってしまったのだ。

「しかも全部同じってんだからな……」
「良くも悪くも食欲を司りすぎじゃない? このメデューサさんっていう十二剣神?」
 アイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)の言葉に尚人は苦笑いするしかなかった。
「うっ、それにしても……寒い」
 震えるアイシャに尚人は自分のコートを掛けてあげた。温かなジャケットは思いがけない幸運であったし、防寒着を来ているのだから、大丈夫だよ、と言いかけて尚人が笑ったので何も言えなくなった。
「あーちゃん、風邪引いたらだめだぜ」
「尚くんこそ」
 そう、ここには共に来た仲間がいる。
「わんさか『メデューサ人間』さんたちがいるねー! 冬だよ、冬だよ、今は冬。ポーラサンタがやってきたよー!」
 季節とは裏腹な冬景色めいた空が広がるのは、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)のユーベルコード故であった。
 己の力で発生させた大量の雪。
 それを降らせ、彼女は決戦都市に蔓延る『メデューサ人間』たちの動きを鈍らせていたのだ。

「禍禍禍 寒さで愛し子たちの動きを鈍らせるか だが それで私の愛し子たちが止まらぬよ」
 声が響く。
 瞬間、無数の鬼火が『メデューサ人間』たちから一斉に放たれる。
 まるで大瀑布のような圧倒的な数の鬼火。
 それが一気に迫るのだ。しかし、ポーラリアの小さな体を抱えて、ゼロ・ブランク(スリーオーブラック・f42919)が鬼火を躱し、尚人とアイシャもまた地面に激突して立ち上る鬼火を見上げる。
「わー! 恐いわ! 石化しないの? メデューサなのに?」
「そうみたいだねぇ。けど、ありがたいことじゃない?」
 もこもこのダウンジャケットに身を包んだゼロは、抱えたポーラリアに、そういって笑った。
 石化までさせられたら、たまったものじゃあないと言いたげだった。

「まずは、この『メデューサ人間』たちをどうにかしないとな! 悪いな、ちょっと力を貸してくれ! 守りは頼んだぜ!」
「大樹の苗木、少しの間ボクたちに力を貸して! みんなに更なる力を!」
 尚人のユーベルコードの光が輝くのと同時にアイシャの瞳もまたユーベルコードに輝く。
 大樹の苗木。。
 それを抱えるアイシャは、己が聖痕に込められた力を開放する。
 煌めく瞳が見つめるのは、三人。
 尚人、ゼロ、ポーラリア。
 彼らのユーベルコードを強化する光が周囲に満ちていく。

「『メデューサ人間』は殺しちゃだめだ。無力化しよう! 頼んだぜ、ゼロ! ポーラ!」
 尚人のユーベルコードが周囲の大気を操り『メデューサ人間』たちを酸欠に追い込む。
 動きが鈍った所にゼロのユーベルコードが輝く。
「本体は……一体どこなんだろ! わからないけど、まずは『メデューサ人間』たちをどうにかしないとね!」 
 ゼロが描くのは氷のドラゴン。
 アイシャのユーベルコードによって強化された氷のドラゴンが咆哮し、さらにポーラリアのユーベルコードが大量の雪と共にブレスとなって『メデューサ人間』たちに荒ぶ。。
 それは猛烈な吹雪と呼ぶに相応しい攻勢であったことだろう。
 殺さずに無力化する。
 それが四人の出した結論だった。

「凍結展示会だね、これって!」
 ポーラリアは降りしきる大量の雪とゼロの描いた氷のドラゴン、そして満ちる光と霧を認めて笑う。
「幸せな雪でこわいのとんでけしちゃうのよー♪」
 人にはどんなにあがいても拭えぬ『おそれ』がある。
 それは仕方のないことだ。
 知性を宿していれば、それはどうしようもないことであったから。
 けれど、ポーラリアは知っている。
 共に戦場に立ってくれる仲間たち。彼らがいれば、『おそれ』が拭いきれないのだとしても、心を温めてくれる。
 冷たさを齎す雪だって、幸せな記憶にできる。
 だから、ポーラリアは笑うのだ。ベルを打ち鳴らし、鳴り響く奇妙な笑い声を打ち消して、『おそれ』抱いても。
「そんなのへいちゃらなのよー♪」
 大したことなんてないと言うように笑った。

「そうだぜ、あーちゃん、ポーラ、ゼロ!」
「うん! 尚ちゃん!」
 アイシャのユーベルコードが一層光を放つ。降りしきる雪とゼロの描いた氷のドラゴンが光を反射して煌き、『おそれ』を追いやるような光景を見せつける。
 そして、彼らは見ただろう。
 立ち上る影の刃と雷光の刃。
「あれって……」
「他の猟兵さんたちのユーベルコード?」
「つまり……あそこに?」
 四人は互いを見やり、頷く。
『原罪蛇メデューサ』の本体。それを他の猟兵たちが見つけたのかも知れない。なら、と四人は邪魔立てさせぬとばかりに中枢に向かって行こうとする『メデューサ人間』たちを迎え撃つ。

「仲間の邪魔はさせないよ!」
「ああ、ここで本体に加勢しようとする『メデューサ人間』たちは!」
「行こう、みんな!」
「はーい!」
 四人は頷き、迫りくる「メデューサ人間」たちを次々と無力化し、決戦都市の中枢に向かう猟兵たちをサポートするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
『おそれ』の力で人を変貌させる能力か。
……おれも猟兵じゃなければ、あの『メデューサ人間』に変えられてたんかもしれねえな。
そう思うと、怖くて堪らない。変わった人たちが強敵として立ちはだかるってんなら、なおのことだ。
でも、そういう人を助けなくちゃ、何のために『おそれ』におれなりに立ち向かっているのかわからなくなっちまうよな。
……出来るかどうかはわからねえけど、出来る限りのことを。

『メデューサ人間』への変化が治せるものなら、UCで治せないか試みる。仮に治らなくても、痛みで無力化することはできるはずだ。
虱潰しに当たっていれば、いずれ本体にも遭遇するはずだ。
攻撃を〈見切り〉ながら、反撃していくぞ。



『おそれ』、それは知性体が有する根源的感情である。
 生存本能によって獲得した感情であるとも言えるだろう。その『おそれ』というものを鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、最もよく理解していたことだろう。
「……おれも、猟兵じゃなければ、あの『メデューサ人間』に変えられていたかもしれねえな」
 嵐は、いや間違いなくそうなっていただろうと確信する。
 今も、嵐の心の中には恐怖があった。
 戦いに向かうといつだって込み上げてくる『おそれ』がある。
 消えない。消せない。
 塗り替えられない。
 そんな感情に胸が押しつぶされそうだった。息が乱れる。鼓動が早鐘を打つ。
 けれど、今は、と嵐は顔を上げた。

 迫るのは超次元の蛇たち。
『メデューサ人間』たちが放つユーベルコードの光。
 彼らは皆、決戦配備を建造するために決戦都市に残った人々だ。誰もが覚悟を持っていた。誰もが『おそれ』に立ち向かっていた。
 そうしなければ、己達の生存が脅かされるからだ。
 だからこそ、そんな彼らが己達の前に『メデューサ人間』として立ちふさがっている。
「……そうだ。おれは、彼らを助けなくちゃならないんだ」
 己に問いかける。
 己がここにるのはなんのためか。
 ただ、『おそれ』に震えているだけか。
 違う。

「おれは、『おそれ』におれなりに立ち向かわなきゃならないんだ!」
 そうでなければ、なんのためにここにいるのかわからなくなってしまう。
 できるかどうかではないのだ。
 やらねばならないことがあるからこそ、嵐は一歩を踏み出す。
『おそれ』は根源的感情。
 だが、根源から派生した感情は、『おそれ』すら踏み越えることができる。
 人はそれを克己と呼ぶであろうし、嵐は、その克己の一歩目を踏み出したのだ。その一歩すらないものは、ずっと『おそれ』続けるしかない。
 拭えずとも、振り払えずとも、それでも抱えて進むものにこそ力は宿るのだ。
「やってみるさ!」
 針の一刺、鬼をも泣かす(ペインエディター・ペインブレイカー)。
 彼のユーベルコードが、手にした針に集約される。

 光をともした一撃が超次元の蛇を躱しながら『メデューサ人間』へと叩き込まれる。
 その一撃は針の刺突であったが『メデューサ人間』を傷つけるものではなかった。
 彼の針の一撃は、その肉体や精神が抱えるあらゆる異常のみにて突き立てられるものであった。
「禍禍禍 私の愛を異常と感知するか」
 声が響く。 
 全ての『メデューサ人間』から響く声。同一であるがゆえだろう。
 嵐には『メデューサ人間』に潜んだ本体である『原罪蛇メデューサ』を判別する方法がない。だが、その『おそれ』を介在して『メデューサ人間』へと変貌させていた力を異常として攻撃することはできるのだ。
「そうだよ……できるできない、なんて考えるのは後回しだ。おれは、おれのできることをやるだけだ!」
 そう、嵐が選んだのは最も、険しい道。
 虱潰し。

 それは確かに本体にたどり着くまでに途方もない時間を要することであっただろう。
 だが、それでも彼の戦いは多くの『メデューサ人間』たちを留めるものだった。
「おれができなくても、仲間たちがやってくれる。その仲間たちの助けになれるのなら!」
 己はいくらでも険しい道を選ぶだろう。
『おそれ』抱きながら、進むこと。
 それを人はなんと呼ぶのか。
 勇気。そう呼ぶのだ。

 嵐は己が手にした針に踏み出す勇気を込めて、『おそれ』を貫く一針を並み居る『メデューサ人間』に叩き込み続け、濁流に飲み込まれて尚立ち続ける強固な意思を輝かせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソニア・コーンフィールド
知香ちゃん(f40900)と!

メデューサ人間…元から怪談っぽい力多かったけど憑依まで!?
他にも隠し玉あるかもしれないしここで何とか封じたい所…!
エイル博士も知香ちゃんも任せて!
頑張って倒すからねー!

足止めは知香ちゃんに任せUC起動、拘束する為の縄やネット射出するガジェット召喚して足止めされたメデューサ人間達を殺さないように高速するね。
十二剣神なら憑依しててもその力は健在の筈、ただ素直に捕縛されるとは考えにくい…演技とかしてても咄嗟の反応とかで他との違いあるんじゃないかな?
そこをよーく観察、メデューサ発見出来たら既知になってるしガジェットに破魔の魔力纏わせて弾丸撃ち込むよ!

※アドリブ絡み等お任せ


雨河・知香
ソニア(f40904)と。

そんな能力まであるのかい?あのメデューサ!
召喚能力だけでも厄介なのに人質まで…いいや、何としてでも助けてみせる!
いくよソニア!片っ端から止めていく!

UC起動、おおぐま座の重力でメデューサ人間達を足止め。
重力はキツいがダメージはない、ちょいと我慢してくれ…!
で、メデューサ人間の探し方はこの高重力下での反応。
原罪蛇が憑りついてるなら他とは違った挙動に…あまり影響なさそうに見えたり足のない蛇のように下半身の動かし方がおかしかったり様子を観察し特定。
注意深く索敵し発見出来たら重力強め超次元の蛇も足止めしつつ破邪の力籠めてぶん殴る!
あとはソニア、頼んだよ!

※アドリブ絡み等お任せ



 十二剣神『原罪蛇メデューサ』の能力は厄介極まりないものだった。
『おそれ』を介在して配下を地球に送り込む侵略能力。
 そして、『おそれ』抱く人間を『メデューサ人間』として変貌させる制圧能力。
 まさしく根源的な『おそれ』の力を手繰るに相応しい能力であった。
「元から怪談っぽい力が多かったけれど、まさか憑依までなんて!」
「まさか、こんな能力まであるとはね、あのメデューサ!」
 ソニア・コーンフィールド(西へ東へ・f40904)の言葉に雨河・知香(白熊ウィッチドクター・f40900)は思わず呻いていた。
 そう、配下を地球に召喚するだけではない。
 己自身と同一化させることで、同等の戦闘力を保たせ、制圧する能力。
 これが最も厄介な能力だった。

 しかも、人命を優先する猟兵やケルベロスたちにとっては、『メデューサ人間』は戦力であると同時に人質でもあったのだ。
 よく、こちらの嫌がるところを突いてくるものだと知香は思ったことだろう。
「他にも隠し玉があるかもしれない……どうにかここで封じたい所……!」
「いくよソニア! 片っ端から『メデューサ人間』を止めていく!」
「うん! 知香ちゃんも任せて!『エイル』博士も……『エイル』博士?」
 通信の先にいるであろう『エイル』博士からの答えがない。
 まさか、とソニアは思っただろう。 
 そう、『原罪蛇メデューサ』は、この決戦都市全ての残っていた人々を『メデューサ人間』化している。
 
 であれば、当然。
 一人だけ『メデューサ人間』化していない例外などありはしない。
 つまり。
「……そんな!」
「ソニア、今は!」
「う、うん!」
 知香るの瞳にユーベルコードの光が灯される。
 それは、おおぐまの星は煌めいて(スターライト・ブレッシング)示すような標であった。
 己が肉体に宿る力。
 おおぐま座の重力と加護が開放され、『メデューサ人間』たちの動きを止めるのだ。

「禍禍禍 時間稼ぎか だが それも無意味だ 『おそれ』は如何なる知性体にも宿るもの 私の愛し子にも例外はない」
「だろうね。だからって諦めるわけにはいかないんだよ。『メデューサ人間』にされちまった人達を助けるためにも、アンタはここで倒す!」
「ドラゴンガジェット・イグニッション! 知香ちゃん、後ろに飛んで!」
「あいよ!」
 重力によって動きを止められた『メデューサ人間』たちが、ソニアの放ったガジェット……ネットによって一気に絡め取られる。
 ソニアは『メデューサ人間』たちが簡単に捕縛されるとは思っていなかった。だが、知香のユーベルコードとソニアのガジェットでもって、なんとか拘束することはできた。
 無限に進化するガジェットは、『メデューサ人間』に対しても有効な性能を発揮できているようだった。

「禍禍禍 いずれお前たちにもわかる 愛とは即ち喰らうことなのだと 喰らうことは愛することだと だから私は愛し子らを見守ってきた 喰らうに値するまで」
 溢れる超次元の蛇。
 それを知香は解放した重量で地面に叩き落とす。
『メデューサ人間』ではないのならば、遠慮はまるで必要ない。
「ソニア! 頼んだよ!」
「うん!」
 ソニアが放つは破魔の弾丸。
 それは『メデューサ人間』の暴れる体を抑えつけるものだった。鎮静剤とも言えたかもしれない。
 二人が『メデューサ人間』たちを抑え込んでいると、背後……決戦都市の中枢に雷光の如き光が立ち上る。
 それはまるで、『ここだ』というようだっただろう。

「あれって……他の猟兵の人のユーベルコード?」
「だろうね。恐らく、あそこに本体がいるってことだろうさ。ソニア、まだいけるかい?『メデューサ人間』たちが、あそこを目指してる!」
「大丈夫! 邪魔はさせないよ! 知香ちゃん、行こう!」
 二人は抑え込んだ『メデューサ人間』たちの奇妙な笑い声を背にして、更に走る。
 そう、立ち止まってはいられない。
 少しでも早く人々を解放するために。己たちができることをするのだと、二人は未だ混乱が満ちる決戦都市を走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
●SPD

性懲りもなくまた顕現するとは…流石は蛇の執念深さか
しかし、メデューサ人間とは考えたな
確かに木を隠すには森の中だろうが…生憎このような状況は『あちら側』でもよくあったのでな…原罪蛇メデューサ、お前だけを斬らせて貰う

誰も彼も同じ姿の蛇人間だが『殺界形成』を用いて割り出そう
私の殺気に奥せず立ち向かう者あれば【浄化】の霊力を帯びさせた斬霊刀の峰打ちによる手加減攻撃を与え、少々痛いだろうが大人しくなって貰おう
意識をさらに研ぎ澄まし、感じ取るはより強力な『おそれ』が転じた禍々しいまでに輝くオーラ

本体を見据えれば刃を返し、全身より染み出す蛇を薙ぎながら【切り込み】…その首を【切断】し貰い受ける



「まさしく蛇の執念深さというやつだな」
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は、湾岸の決戦都市に満ちる『メデューサ人間』たちの姿を認めた。
 あらゆる知性体に『おそれ』は宿る。
 例え、一欠片であったとしても、それは拭い切れるものではないのだ。そして、その『おそれ』を介在して『原罪蛇メデューサ』は己が配下を地球に送り込むことができる。
 そして、そればかりか人類を『メデューサ人間』へと変貌させることができるのだ。
 十二剣神随一の侵略と制圧能力を有する存在。
 それを証明してみせるかのような制圧能力の発露を、今まさにジークリットは目の当たりにしていたのだ。

「確かに木を隠すには森の中だろうが……生憎、このような状況は『あちら側』でもよくあったのでな……」
 ジークリットの瞳がユーベルコードに輝く。
 解き放たれるのは漆黒の殺気。
 膨れ上がった殺気は弱者を闘争させ、強者のみを戦場に残す。
 だが、『メデューサ人間』は決して弱者ではない。そして、付け加えるのならば、この決戦都市に残った人々は全てが覚悟を持っていた。
 最前線で決戦配備を建造する危険を顧みない覚悟。
 その意味では。
「ここに弱者などいない、か。そうだろうな。であれば、だ」
 ジークリットは斬霊刀を構える。
 襲い来る鬼火を斬り伏せ、さらに踏み込んで『メデューサ人間』へと肉薄する。
 輝くオーラを以てジークリットは『メデューサ人間』たちの位置を全て把握していた。

「『原罪蛇メデューサ』、お前だけを斬らせて貰う」
 振るわれる斬撃。 
 それは峰打ちだったが、『メデューサ人間』を大地に叩きつけるには十分だった。
 周囲から迫りくる大群。
 それらを相手取るようにしてジークリットは華麗なる剣技でもって、これを打ち払い続けた。
 鬼火を払い、金縛りすら引きちぎるようにしてジークリットは剣を振るう。
 意識を研ぎすませる。
 窮地にあってなお、己の心は落ち着きを払っていた。
 これがもしも、一度目であったのならばためらいもしただろう。だが、このような事態を常にジークリットは想定していた。
 禍々しいオーラ。
 集中すれば、それは一層強く立ち上るものである。

 彼女が捉えたのは、湾岸の決戦都市の中枢。
「あそこか」
 そう呟いた瞬間、立ち上るのは雷光の如き輝き。
 他の猟兵のユーベルコードの輝きだった。
「ならば、邪魔立てはさせんよ。来るがいい。『原罪蛇メデューサ』、お前は必ず『メデューサ人間』を使って、私達を妨害するだろう。ならば」
 己はここで『メデューサ人間』を食い止める。
 ジークリットは己が斬霊刀の峰を見やる。
 加減はしなければならない。容易ではない状況だ。だが、だからこそ心が高ぶる。困難な状況であるからこそ、己がこれまで鍛え上げてきた練磨の価値がある。
「来い。貴様の企み、貴様の語る『おそれ』など、我ら人類は幾度も乗り越えてきたということを証明してみせよう――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
武器:漆黒風

メデューサも厄介なことしてきますよねー。
ですが…やることは一つ。
UC発動。吸い取った生命力で無力化の補助、さらに齎されたそ幸運をもって、メデューサの本体にあたりをつけましょう。
…ええ、霊力とか含んでますから。微妙に違えばわかったりしますよー。
本体へは、貫通重量攻撃な漆黒風投擲でー。

…エイル博士、『おそれ』を抱いてないんですねー?
だって、メデューサ人間になってませんから。
おそれよりも、闘争心とか勝ってません?


陰海月「ぷ」
影からこっそり触腕伸ばして気絶攻撃。無力化狙い。
本体へは、地形破壊な怪力叩きつけ。



 周囲に満ちるのは呪詛であった。
 己が身、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が封じてきた呪詛。。
 四悪霊たる身に満ちていた呪詛は、『メデューサ人間』の持ち得る生命力を吸い上げ、彼らの幸運をもたらしていた。
 目指すは『原罪蛇メデューサ』。
 かの存在、本体が潜む『メデューサ人間』を打倒すれば、『メデューサ人間』化された者たちも元に戻るのだ。
「メデューサも厄介なことをしてきますよねー」
『疾き者』は息を吐き出し、雷光迸る湾岸の決戦都市の中枢へと急ぐ。

 阻むように『メデューサ人間』たちが迫る。
 まるで瀑布のように迫る鬼火。
 それが『疾き者』へと迫るが、ことごとくが幸運によってそれていくのだ。
「恐らく、あの雷光は他の猟兵のユーベルコード……攻撃、ではないとすれば」
 加えて『メデューサ人間』の数が中枢に至らせまいとするように増しているのだ。まるで壁のように己たちを阻んでいることからも、『原罪蛇メデューサ』の本体が入り込んだ『メデューサ人間』がいるのは間違いない。
「……まさか」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士。
 彼女は猟兵たちが転移してきたとき、通信に答えていた。
 だが、『メデューサ人間』に例外はない。

 条件はいくつかある。
 まず第一に『おそれ』を抱いていなければならない。これは知性体であれば、どんな存在であれ拭えぬものである。
 そして、第二に猟兵やケルベロスではない者。
 故に決戦配備を建造していた覚悟ある人々ですら、須らく『メデューサ人間』化されていたのだ。
 であれば、だ。
 最後の通信を行った『エイル』博士だけが例外であるわけがない。
 何故なら、この湾岸の決戦都市すべての人々が『メデューサ人間』となっているからだ。

 齟齬。
 そう、齟齬がある。
「『エイル』博士も『おそれ』を持っている。それは、例外ではない。例え、闘争心が『おそれ』に勝っているのだとしても、それを持ち得ないということではない」
 ならば。
「まさかあの光は!」
 雷光のように迸る光。
 己たちが例外だと思っていた存在にこそ『原罪蛇メデューサ』は目をつける。
 そこに潜むのは、謂わば灯台下暗しのようであった。

「ぷ」
『陰海月』が『メデューサ人間』を触腕で叩きつけ、同意する。
 であれば、『疾き者』もまた理解する。
 この『メデューサ人間』たちが己たちを中枢に行かせまいとする動きこそが、証明。
「やはり中枢にいる『メデューサ人間』……!」
 それは、『エイル』博士だ。
 彼女こそが『原罪蛇メデューサ』の本体を内包している存在なのだ。
 闘争心だけでは如何にしてでも『おそれ』は拭えない。 
 例外はない。
「急がねば」
『疾き者』は迫りくる『メデューサ人間』たちを無力化し、同じく答えにたどり着いた猟兵たちを送り届けるように彼らを退けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

なるほどー
つまり間違い探しだね!
任せてよ!まとめてドーンンッ!だよ!
なんてのは冗談!

●何を隠そう!(UC『神知使用』)
ボクは【封印術】の達人にして超人級の【心眼】の持ち主!
目的を達しつつ目当ての彼女を見つけ出すなんて簡単なことさ!
見ていなよ…と言いつつうんいつもの【第六感】で当てちゃおっ!
[叡智の球]くんの球を介し精神に【催眠術】と【封印術】をかけ
本物にはさらに【除霊】をしかける!

未知ゆえの恐れこそが力だって?でも残念!キミはもう訳の分からないバカデカイ何かなんかじゃあない
そうボクの各種【知識】や【情報】も言っている
恐れを集めようとすればするほどキミは姿をさらさないといけなかった
でもそれはホラー映画のオチをみんなが知っちゃうようなものさ!
さあ、|神殺し《噛み殺し》の出番だよ
と除霊して浮き上がらせたとこを[餓鬼球]くんにパクーーッ!としてもらおう!

畏れよ恐れよ怖れよ
子喰らいの神の末路をってね
まあまだそうそう死にはしないだろうけれど
片鱗…爪の先ほどは感じてくれた?



 まるで間違い探しだね、とロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は納得していた。
 湾岸の決戦都市に満ちる『メデューサ人間』たち。
 いずれもが、この決戦都市にて決戦配備を建造していた人々だ。
 彼らは避難することもなく、覚悟を持って建造に従事していた。逃げることもしなかった。ただただ、覚悟を持って全世界決戦体制のために行動していたのだ。
 だが、そんな彼らとて『おそれ』を拭えなかった。
 いや、抱えて尚、進む勇気があるのならばこそ、皮肉にも『メデューサ人間』化は逃れられなかったのだ。

「禍禍禍 愛し子は誰にも渡さない 私が愛しているからだ 私が喰らうために愛したのだ それは誰にも譲らない 私の 全て 私の飯だ」
 全ての『メデューサ人間』から声が響く。 
 同一。
 間違い探しにもならぬほどの同一。
 ロニは困ったように笑った。
 まあ、間違い探しに行き詰まったのならば、やることは一つ。
「まとめてドーンンッ! だよ! あ、うそうそ、なんてのは冗談冗談!」
 ロニは笑っていたが、笑えない話しである。

「何を隠そう! ボクは封印術の達人にして超人級の心眼の持ち主!」
 ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
 周囲に蔓延るのは『メデューサ人間』たち。
 いずれもが同一であり、見分けがつかない。
 放つ鬼火だってそうだ。『原罪蛇メデューサ』と遜色などない威力でロニを襲う。
「わっ、ほっ、よっと!」
 それらを第六感で躱しながら、ロニは周囲を見回す。
 どこにもいない。
 いや、どれもピンと来ない、というのが正しいだろう。

「うん! ここにはいない感じだよねえ! あれ~? どこかな~?」
 ロニはキョロキョロと周囲を見回しながら、迫る鬼火を冗談みたいな動作で躱し続けていた。
「禍禍禍 見えているものだけを見ているのならば 形なき『おそれ』を見ることはできぬ それが私の愛 愛は視えぬもの 愛は喰らうもの すべて違ったとしても すべて同じになる」
「うーん、わかってないよねー。それってさー、結局、未知なるものの恐れってやつじゃない? それが力っていうんなら、残念! 正直な所、君はボクらの知らないバデカイなにかじゃないんだよね!」
 ロニは笑って『メデューサ人間』たちを見やる。
 そう、これまで見てきたのだ。
『メデューサ人間』が『原罪蛇メデューサ』と同一であり、判別もできないというのならば、その全てがロニの前にさらけ出されている。
 知識も情報もある。
 なら、未知への『おそれ』なんてものは、知識と情報によって灯される光で詳らかにされてしまうものなのだ。

「恐れを集めようとすればするほど、キミは姿をさらさなくちゃあならない。でもそれってさ、ホラー映画のオチをみんなが知っちゃって、恐怖が薄れちゃってミーム化しちゃうようなものなのさ!」
 ロニは湾岸の決戦都市の中枢に立ち上る雷光を見た。
 ああ、そこなんだ、とロニは笑う。
「さあ、|神殺し《噛み殺し》の出番だよ!」
 ロニは迫る『メデューサ人間』たちを引き付けるようにして駆け回りつつ見上げる。
「畏れよ恐れよ怖れよ、子喰らいの神の末路をってね。まあまだそうそう死にはしないだろうけれど、キミも感じてくれたかな、爪の先ほどには」
 復活のできない死が迫る恐怖。
 だが、『原罪蛇メデューサ』は相変わらず嗤っていた。

「禍禍禍 要らぬ そのような感情など 無意味 私か子供たち どちらかが残れば全滅にはならない なら 私が愛し子たちに敗れ、不死性を破られても」
 問題などならない。 
 何故なら、ケルベロスディバイド世界の人類は、『原罪蛇メデューサ』にとって全て愛し子。
 その愛し子が生き延び、己が死せるのだとしても、なんら問題などない。
「禍禍禍 禍禍禍 禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍!」
 原罪の蛇。
 その意味を抱える『原罪蛇メデューサ』は、ロニの言葉に笑い続けた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
あやー。
どうやらメデューサさんはとてもとてもお忍びが上手なようでっしてー。
藍ちゃんくんも是非ともコツを教授してもらいたいとこなのでっす。
ひとまず片っ端から激しくブレイキンしていただいて、舌を噛んでもらって笑い声未遂にしたり、接触させないようにしたりと時間を稼ぎつつ。
(本体相手には音響攻撃追加)
名探偵さんの登場まで、藍ちゃんくんも考えてみましょうか。
声や仕草と言ったものからの判別は不可。
精査しても無理。
困ったことなのです。
見守ってるということなので、藍ちゃんくんを観測して、踊ってくださったりしていれば、他の皆様が見つけてくださるかもですけどねー。
後は、そう。
愛、でしょうか。
それだけはお母さんの在り方的に誤魔化せないと思いますれば。
もしも遭遇できれば、その愛故に気づけるやもでっすねー。
ところで。
冒頭ではご無事でしたが、エイル博士は健在でしょうか?
都市の責任者である彼女は誰よりも己のおそれと戦い続けてきましたし、都市全体も見れますし。
電子伝いにあの後蛇人間化して本体に乗っ取られてたりなどはー。


鳥羽・弦介
狡賢けぇ手使いやがる!くそがよ!!
……エイル博士だっけか?一応アンタも燃やさせてもらうが良いな!!

回点号【操縦】サイキックシールドで金縛りや鬼火を【オーラ防御】
メガスラスター【推力移動】で飛翔、メデューサ人間から距離をとりつつRX退魔刀を抜き払い『浄化大霊炎』祓えッ!
広範囲に【浄化】の大霊炎を放ちメデューサ人間達に巣食う|畏れ《妖気》だけを燃やし、【第六感】で苦しむメデューサ人間達の中から意志以て動き奴を感じとる!

湾岸の決戦都市にいる奴ぁ全員妖しいんでな、メデューサが博士に化けてる可能性を潰しとくのも大事だ!

本体を見つけ出したらなら!改めてRX退魔刀から浄化の大霊炎をもう一度放って燃やす!!!



「禍禍禍 禍禍禍 禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍!」
 それは哄笑ではなかった。
 己が不死性が破られんとしている状況。
 その可能性が喉元に突きつけられて尚、十二剣神『原罪蛇メデューサ』は嗤っていた。
 何故なら、己が例え不死性を破られ二度と復活できぬぐるモアエフェクトの光に滅ぼされても、生存を第一と考えるデウスエクスとしての性は全滅を免れることを知っている。
 何故なら、このケルベロスディバイド世界の人類は、『原罪蛇メデューサ』によって知性を与えられた存在。
 であれば、それは『原罪蛇メデューサ』にとって、己が子、子孫が生存しているということになるからだ。

「禍禍禍 私の愛し子たちが生きていれば それでいい それで全滅したことにはならない
 なんの問題も ない」
 それが愛だというのならば、確かにその通りなのだろう。
 喰らうのは生存に必要な行為だからだ。
 そして、愛することは喰らうことと同義。
 そう定義するのならば『原罪蛇メデューサ』の行動に一切の矛盾はない。あるとすれば、それは相対するものから見れば、矛盾以外の何ものでもない、ということだった。

「あやー。随分と『原罪蛇メデューサ』さんはお忍びが上手なようでっしてー」
 だが、と紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は、湾岸の決戦都市の中枢にたどり着いた猟兵の一人だった。
 影の刃と雷光の刃。
 その二つが決戦都市の中枢に煌めいたのは、何故だったのか。
「ここにお隠れになっていたのでっすねー?」
 いやはや、と藍は己にもコツというものを教えて欲しいと思っていた。
 眼の前にいるのは、亜麻色の髪の女性『エイル』博士だった。

 答えは、ない。
「わかっていたのでっすよ。声や仕草からの判別はでいない。精査しても無理。大変困りました。藍くんちゃんも、猟兵の皆様方も苦戦しました。ですが、あなたは『見守っている』とおっしゃった。ええ、勿論、藍ちゃんくんも観測していらっしゃった。後は、そう。愛、でしょうか」
 藍の言葉に亜麻色の髪が徐々に黒く染まっていく。
 黒く染まった毛先はまるで蛇のように口裂を生み出していた。
「そう、どんなにお忍びになられても、お母さんの在り方はごまかせないのでっすよー」
「狡賢けぇ手使いやがる! くそがよ!!」
 藍の言葉の背後、決戦都市の中枢たる建造物の天井をぶち抜いて現れたのは、鳥羽・弦介(人間のキャバリアパイロット・f43670)が駆るキャバリア『回天号』だった。
 サイキックシールドで道を阻んだ『メデューサ人間』たちの鬼火を振り切って、中枢に飛び込んできていたのだ。

 恐るべき力技である。 
 だが、それを上回るのが『原罪蛇メデューサ』の荒業。
「見つけた!『エイル』博士だな!」
 弦介は他の猟兵達の残した電子の杭や、その他の情報を得てここに到達していた。そして、思い至ったのだ。
 最も疑わしき存在は、すでに示されていたのだ、と。
 これがもしも、推理小説であったというのならば、あまりにもあけすけ。
 そう、『原罪蛇メデューサ』のちからは、猟兵とケルベロス以外の全てに作用する。
『おそれ』を抱く知性体全てを『メデューサ人間』に変貌させる。
 そこに例外はない。
 
 であれば、だ。
 最後まで猟兵たちと通信を行えた『エイル』博士だけが例外であるわけがない。
 もう一度いう。
 これが推理小説であったというのならば、すでに犯人は登場していたのだ。
「そう、『エイル』博士、あなたは決戦都市の責任者でもある。あなたは誰よりも己の『おそれ』と戦い続けてきましたし、都市全体を見れまっすよね? そして、『原罪蛇メデューサ』は」
「電子の匣……つまりは、ネットワークすら介在して『おそれ』に到達することができるってわけだ! クソが! よりにもよって一番面倒な場所に潜んでいやがったとはなぁ!!」
 そう、この湾岸の決戦都市に存在する人々、その全てが『原罪蛇メデューサ』によって『メデューサ人間』にされる条件を満たし地得るのだ。
 言ってしまえば、この決戦都市に残っているもの全てが怪しい。全てが怪しいのならば、例外はない。 
 だが、猟兵たちには例外として視えていたものがいた。
 それが亜麻色の髪の女性『エイル』博士だったのだ。ならば、当然可能性は、ある。
 藍と弦介は見破っていたのだ。
 弦介の瞳がユーベルコードに輝き、『エイル』博士へと、その『回天号』の手にした退魔刀に宿る圧倒的浄化大霊炎を叩きつけるのだ。

 それは浄化の大霊炎。
「事後承諾だが、もうアンタ以外考えられねぇ! 安心しろ、燃えるのは!」
「禍禍禍 禍禍禍禍禍禍! 見事である愛し子 私を見つけたか であれば」
 奇妙な笑い声と共に、二人に底しれぬ恐怖が襲いかかる。
 だが、それを踏み込めるようにして弦介は『回天号』の退魔刀を振り上げる。次の瞬間、『エイル』博士の体から飛び出すように『原罪蛇メデューサ』、その本体が飛び出し、刃を受け止める。
「禍禍禍 ここからは私自身が戦うとしよう いや 食らわせてもらうとしよう お前もまた私が愛すべき愛し子なのだからな」
「うるっせぇぇんだよッ!!」
 弦介は、浄化大霊炎(ジョウカダイレイエン)をともした退魔刀を振り抜き、『原罪蛇メデューサ』の腕を切り裂く。
 真っ二つに避けた『原罪蛇メデューサ』の血潮が鬼火へと変貌し、『回天号』を吹き飛ばす。

「ぐっ、クソがっ! だが!」
「禍禍禍 無駄だ お前もまた私の飯 食らわせてもらおう」
『回天号』を抑えつける『原罪蛇メデューサ』。
 しかし、次の瞬間、その体は激しく揺れ、その場で踊りだすではないか。
「な、なんだぁ!?」
「それでは『原罪蛇メデューサ』さん、ご一緒に! レッツ・ダンシングなのでっすよー!」
 その声は藍の声。
 そして、明滅するはユーベルコードの光。
 そう、『原罪蛇メデューサ』が急に踊りだしたのは、藍のユーベルコード。
 どんな存在であっても、藍ちゃんくんと愉快な観客達!(リー・アー・アイチャンクーンッ)へと引きずり込んでしまう。

 例外はない。
 であればこそ、藍は弦介の窮地を救えたのだ。
「禍禍禍 なるほど 愉快 私の愛とは違う だがそれも知性故だ だから 私はお前たちが愛おしい 違うから 可能性を示すことができる 『おそれ』一つとっても同じではない それが私には愛おしい」
「んなろぉぉッ!!」 
 弦介が咆哮し『回天号』が『原罪蛇メデューサ』を押しのけ、退魔刀を振りかぶる。
 再びふるい上げられた煌めく炎。
「やはり、愛、なのですね」
 藍は、その斬撃の軌跡を見た。
 炎がゆらめきながら『原罪蛇メデューサ』を切り裂く。

 血潮が飛ぶ。
『原罪蛇メデューサ』の手は天を法要するように伸ばされていた。
 きっとそれは、愛ゆえに。
 喰らう愛。
 愛故に喰らう。
 それはきっと彼女にとっては矛盾ではない同一。
『おそれ』と同じように、様々な形があることを示すものであった。
 だからこそ、藍と弦介は、これを打倒する。
 母の愛は確かに重たくも、あらゆる外敵から守るものであったかもしれない。けれど、それでもいつか。
 そう、いつか。
「子供ってもんは旅立つもんだ」
「ええ、巣立ち、戻ることもあるかもしれせんっがー」
 崩れ行く『原罪蛇メデューサ』の体。
 湾岸の決戦都市のあちこちで『エイル博士』を始めとする『メデューサ人間』たちが元の姿に戻っていくことだろう。
 
 人々は明日に羽撃いていく。
『おそれ』と愛とを抱え、勇気に変えて、生きてく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年05月25日


挿絵イラスト