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シャイニング・スターダスト

#スペースシップワールド #戦後

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#戦後


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 宇宙に広がる無数の星を眺めながら、艦長は銀河帝国との激闘に思いを馳せていた。
 彼の艦は古い。武装も旧型だ。最新鋭艦と比べれば、その活躍は比べるべくもない。
 だがそれでも、誇りを持って戦った。被弾もしたし、クルーから死者も出ているが、船員たちもまた、決戦で死力を尽くした充実感を味わっているに違いない。
 軽巡洋艦、スターダスト。銀河帝国攻略戦に加わり、果敢に戦った数多の艦の一隻だ。
 激闘の果てに中破してしまった艦は今、宙域に留まり、クルーたちの手によって修理されている。
 修理ドックに入れればよかったのだが、銀河帝国との決戦で破損した艦は多い。旧式艦のスターダストを優先させられるはずもなかった。
 幸い、クルーの練度は高い。その上、近々猟兵たちも救援に駆けつけてくれるという。遠くないうちに、問題なく航行できるようになるだろう。
「猟兵……か」
 帝国との戦いに駆けつける直前で、スターダストは敵の強襲を受けた。それを撃退せしめたのは、猟兵と名乗る戦士たちのおかげだ。
 敵戦艦を内部から破壊するという、破天荒な作戦を慣行しただけでなく、帝国との直接対決でも鬼神の如き戦いぶりを見せた。
 決戦に勝利できたのは、彼らのおかげだ。この世界を救った英雄として、艦内では今もことあるごとに話に上がる。
「再会が楽しみだ」
「歓迎パーティでもやりたいところですが」
 通信兵がこちらを見上げる。そうしてやりたい気持ちは山々だが、修理物資で四苦八苦している状況だ。贅沢は望めない。
「せめて、酒でもあればな」
「うちは貧乏船ですからね」
「そう言うな。戦前よりはましだろう」
 苦笑して、艦長は頬杖をついた。
 デブリに身を隠していた頃よりは、積極的に補給も受けられるようになっている。砲台を近代化できれば、護衛艦として商船や民間船に売り込むこともできるだろう。
 なんにしても、今は準備期間だ。猟兵には、少し多めの食糧で歓待の意思を示す他ない。
「近隣宙域に機影なし。艦長、このあたりは貸し切りですよ」
 索敵兵が余裕そうに言った。事実そうなのだろうと思う。商業船すら通らない僻地宙域なのだから。
「うむ。だが、残党による強襲に遭遇したという話も聞く。油断はするなよ」
「了解」
 索敵兵の返事に頷いて、船長は再び、黒い宇宙を眺めた。
 青い流星が一筋、美しく輝いた。



「先般の戦争、ご苦労だった。貴様らの活躍ぶりは聞いている」
 集った猟兵を見回し、マクシミリアン・ベイカー(怒れるマックス軍曹・f01737)は淡々と言った。
 少しも嬉しくなさそうに見えるが、彼は笑ったり人を褒めたりは滅多にしない。
「宇宙を牛耳っていたクソどもは死んだが、残りカスが今も暴れているらしい。ゴキブリ以下の諦めの悪さだ。潰しても潰してもきりがない!」
 舌打ち交じりにそう言って、マクシミリアンは帽子をかぶり直す。
「さて、貴様らには、宇宙船の修繕を手伝ってもらう。これはミディア・スターゲイザーからの依頼でもある」
 決戦後、多くの戦艦が傷つき、今や修理艦は引っ張りだこの状況だ。後回しにされた艦には修理用の部品などが補給され、各自で最低限の修繕はできるよう手配されている。
 とはいうものの、人手が足りない。そこで、艦に直接転移できる猟兵の手を借りたい、とのことらしい。
「同じ戦場で同じクソを殺した兄弟の願いだ。家族の頼みを断るなどという野暮な真似はできん」
 マクシミリアンは、愛用のホワイトボードに船の名前を綴った。
「貴様らが行く船は、『スターダスト』という。旧式の軽巡洋艦だ。ボロだが、善戦した。おかげでどこもぶっ壊れて、まっすぐ航海できるかも怪しいくらいだ。それを直せ」
 修繕物資については、前述の通り補給を受けている。が、もし必要と感じたものがあれば、持ち込むのも構わない。
 また、修理に当たるのは猟兵だけではない。スターダストのクルーも共に作業に当たるので、彼らとコミュニケーションを取るのもいいだろう。
「修理が終われば作戦は終了だ。俺が迎えに行く。だが、最初に言ったように残党がウロウロしているらしい。戦いの準備は怠るな。クソは見つけ次第殺せ!」
 荒々しく言って、猟兵が頷くのを確認するや、マクシミリアンは熟練した敬礼の姿勢を取った。
「宇宙の英雄となった者たちに、敬礼! 歓迎されるだろうが、貴様らは仕事に行くことを忘れるな。しっかり働いてこい!」


七篠文
 どうも、七篠文です。
 今回はスペースシップワールドです。

 このシナリオは、「銀河帝国攻略戦⑤~星屑乱舞」(id=3192)の続編に当たります。
 とはいえ、どなたでもご参加いただけます。前回を参照いただかなくても問題はありません。

 内容については、オープニングで説明した通りです。
 何事もなく修理が終われば帰ってこれますが、マクシミリアンが危惧した通り、残党が襲って来そうです。
 敵が来たら、戦闘になります。例の極薄宇宙服を着れますので、生身と変わらず自由に宇宙空間を駆け巡り、ボコボコにしましょう。

 七篠はアドリブが多く、連携もどんどんしてもらいます。
「アドリブ少なく!」「連携しないで!」とご希望の方は、プレイングにその件を一言書いてください。
 ステータスも参照しますが、見落とす可能性がありますので、どうしてもということは【必ず】プレイングにご記入ください。

 グループで参加の場合は、合言葉のようなものを入れていただけると助かります。

 それでは、よい冒険を。皆さんの熱いプレイングをお待ちしています!
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第1章 日常 『レッツ!メカニック!』

POW   :    叩けば直るとばかりに力技で何とかする

SPD   :    技術を活かしてきちんと修理する

WIZ   :    効率よく修理を進めるための作業割り振りなど、裏方仕事をする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ようこそ、猟兵諸君! よく来てくれた。本艦は貴殿らを歓迎する!」
 ブリッジに転送された猟兵たちは、拍手で迎え入れられた。
 艦長を始め、クルーたちは皆、猟兵との再会を心から喜んでいる。
 とはいえ、ここにはすべきことがあって来たのだ。拍手が止むと、艦長は咳払いを一つ、頭を下げた。
「以前も助けてもらい、またこのような頼みをすることは申し訳ないと思う。しかし、手を貸していただきたい」
 部下の手前にも関わらず、艦長は深く頼み込む。
 誠意溢れるその姿に、猟兵たちはただ、頷いた。

 機関部、砲台、対空機銃、果てはトイレまで。破損箇所は多岐に渡る。
 艦を歩き回れば、直すべき場所はすぐに見つかるだろう。
 スターダストのクルーたちと協力し、さっそく艦の修理を開始しよう。
エーカ・ライスフェルト
WIZ
猟兵になってからの人生の密度が濃すぎて、前回の戦いが数年間の出来事のように感じるわ

「言葉にするのは申し訳ないけれど、この船に届く純正パーツは少ないと思うの。名目上は純正パーツでも癖が強すぎたりね」
「前回私達が来るまで耐えていた貴方たちのことは信頼しているわ。高度な技術や長年の経験で上手に扱うと確信してはいるのだけど、純正品より手間がかかってしまうでしょう?」
「純正品と同じように扱うためのパッチやドライバを作成しに来たわ」
必要ないならスパゲティプログラムをまともにする作業を

【ハッキング】でパーツから抜き出したデータを、艦のメカニックに見せて要望を聞いて、それを元にパッチやドライバを作成する


トリテレイア・ゼロナイン
銀河帝国攻略戦以来ですね、この船に乗り込むのは。
まずはクルーの皆様とあの戦いを生き延びられたことを喜び合いたいのですが、先に修理です。
この船も戦友の一人、その戦友がこのような姿なのはしのびないですからね

「怪力」を活かして修理用の大型資材の運搬も行いたいですが、損傷個所の調査なども行いたいですね。前線で自分を含めて物を壊すのが仕事なので、修理は得手ではありませんが出来うる限りやってみましょう

「世界知識」、どの損傷が艦にとって被害が大きいか判断する「破壊工作」の基本的な知識はありますので、それに照らし合わせて優先度の高い損傷個所を「見切り」、UCの妖精ロボを飛ばして損傷個所の詳しい調査を行います。


エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

WIZ選択

なんかこの船、俺の故郷に似てるなぁ。
他所との取引に使えるのが自前の武力だけだとか、物資不足を練度で誤魔化しながら運用してるとか…。
他人ごとに思えないし、ちょっとばかりお手伝いしますか。

まずは損害状況の確認からかな。
UC戦乙女の眼を発動、22機の観測機を艦の内外に展開して【情報収集】。
損傷個所をリストアップして、対処優先度順に誰に割り振るか決めていく。
その辺は長年船に触れてる整備班長辺りに話を通したほうがスムーズかな。

個人的には航行能力と自衛できるだけの火器管制の復旧を優先したいんだよねぇ。
それだけできれば、万が一戦闘になっても自力で退避くらいはできると思うし。




 懐かしい、と言うには最近の出来事かもしれない。それでも、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそう感じていた。
「銀河帝国攻略戦以来ですね、この船に乗り込むのは」
 感慨深そうに呟くトリテレイアの隣で、エルト・ドーントレス(灰色猟兵・f14009)は、スターダスト艦内の雰囲気に言い知れない望郷の念を覚えていた。
「なんかこの船、俺の故郷に似てるなぁ」
「そうなのですか?」
 船外へ出るためのハッチを開けながら、トリテレイアが振り向く。エルトは頷き、いかにも古い艦内の壁を撫でた。
「艦の型とかじゃないけどな。こう、他所との取引に使えるのが自前の武力だけだとか、物資不足を練度で誤魔化しながら運用してるとか……」
「旧式の戦闘艦ならではの生き方ですね」
「そうそう」
 今はなき母艦「ドーントレス」を想う。今更郷愁に酔うつもりもないが、故郷に似た船に思うところはあった。
「他人ごとに思えないし、ちょっとばかりお手伝いしますか」
「えぇ。この船も戦友の一人。その戦友がこのような姿なのは、しのびないですからね」
 トリテレイアがハッチを開けた。空気が宇宙空間に吸い出され、二人は船外に出る。
 無重力空間では、すでに船外作業員が修理を行っていた。黄色い宇宙服まで旧式で、通信回線でのやり取りとなる。
「よぅ、すまねぇな。英雄さんにこんな仕事させちまって」
 手を上げて言ったのは、一人だけ緑の宇宙服を着た男だった。整備長らしい。
 回線を合わせて、トリテレイアは通信に答えた。
「いえ。修理は得意ではありませんが、協力させてください」
「まずは損害状況の把握だなぁ。どんな感じだ?」
 エルトに聞かれ、整備長はバイザー越しに頬を掻く仕草を見せた。
「どんなも何も、見たままだ。どこもかしこもイカれてやがるから、手当たり次第ってなもんよ」
「……まぁ気持ちは分かるけどなぁ」
 被弾状況は相当なもので、よくも沈まなかったものだと感心するほどに、外観もボロボロになっている。
 とはいえ、片端から手を付けるのは非効率的だ。詳細な点検をするには人員も機材も足らないため致し方ないか。
「ならば、我々で調べましょう。小型偵察機を展開します」
 トリテレイアが格納していた小型妖精ロボを放つ。それを見て、エルトが「それなら俺も」と手を打った。
「コード実行。……データリンク正常。観測エリアの設定完了。ヴァルキリー、展開開始……」
 エルトの指示に応えて、小型のステルス観測機が二十二機、スターダストの周囲を飛び回る。
 人の目では限界があった状況把握は、正確なデータとして二人に届けられた。思っていた以上に酷く、特に火気管制は使い物にならない。
 また、メインスラスターの故障も致命的だろう。サブスラスターによる航行は可能だが、高速での移動はできない。敵と遭遇した場合、戦闘も撤退もままならないだろう。
「どっちかって言うなら、やっぱスラスターが先かぁ」
「そうですね。破損具合から見るに、交換になりそうですが――整備長、この件について、補給艦に連絡は?」
 聞かれた整備長は、苦笑を浮かべながらスターダストに牽引されているコンテナを指さした。
「言ったよ。んで、代えのスラスターも支給されてる。だが、あんなデカブツを俺らがどうこうできるわけなくてよ」
「それに、純正じゃないんですよ」
 黄色い宇宙服の中から、まだ若い女性整備員がタブレット端末を操作しながら言った。
「正確には、今使ってるのの後継機ですね。スターダストのスラスターは型が古すぎて、もう生産されてないんです」
「性能は上がってるらしいが、ドライバも合わないし、エンジンとの相性もある。簡単にはな」
 ただ交換するだけでは、どうにもならないようだ。トリテレイアとエルトは顔を見合わせて、揃って腕を組んだ。
 そこに、新たな通信が入った。艦内、メカニックルームからだ。四人は同時に応答した。
『その件については、考えがあるわ』
 トリテレイアは、その女の声をよく知っていた。何度も共闘したことがある、エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)だ。
「エーカ様。メカニックルームにいるので?」
『えぇ。この船のエンジン回りに使われてる回路を見てみたのだけれど、見事なスパゲッティプログラムよ。これじゃ純正品でもそのうち壊れちゃうわ』
「ほら、やっぱり怒られた」
 プログラムについて苦言を呈してきたらしい女性整備員がいたずらっぽく言うと、整備長がバイザーの奥で舌打ちをした。
「俺たちはこれでやってきたんだよ」
『あぁ、別に責めてるわけじゃないわ。あなた達がうまく工夫してきた証拠というのは、見れば分かるもの。ただ、悪いけど、ちょっといじらせてくれない?』
「どうするんだぁ?」
 宇宙に漂いながら胡坐を組むエルトが、首を傾げた。エーカは変わらない冷静な口調で、
『補給されたパーツをハッキングしてデータを抜き出せば、スターダストに適応させるためのパッチを作れるわ』
「なるほど」
 トリテレイアは頷いた。少々荒っぽい手ではあるが、うまくいけば旧式艦を生まれ変わらせることができるかもしれない。
 願ってもないことだ。整備長も反対はしなかった。
『そういうわけで、パーツの解析にしばらく時間がいるの。悪いけれど、二人が調べてくれたデータ、こちらにも送ってもらえるかしら』
「オッケー。もうちょっと調べるから、その都度そっちに送るよ」
 観測機から伝えられる破損状況の多さに辟易していたエルトが、肩をすくめて答えた。
『ありがとう。スラスターを最優先するけれど、少し時間がかかるわ。その間、他の作業を頼めるかしら』
「無論です。整備員の皆様をお手伝いしておりますよ」
『お願いね』
 通信が切られる。本命のスラスターはとりあえず置いておくとしても、外壁の修理や破損部品の取り外しなど、他にもやるべきことは多い。
 宇宙を航行するために、まずは何から手をつけるべきか。トリテレイアとエルトは整備長と話し合い、結果的に、片端から手を付けてることにした。



 メカニックルームでディスプレイを見つめながら、エーカは思わずため息をついた。隣では、初老のメカニックが申し訳なさそうにしている。
「ホント、すごい絡まりっぷりねぇ」
 思わず呟いた。今表示されているのは、スターダストのコアシステムと各パーツのシステムを繋ぐプログラム回路だ。
 整備長にも言ったように、何度も部品を取り換え、その都度工夫を凝らして使用した形跡が見られる。それは逆に言えば、不要なデータが多量に残されているということでもあった。
 ただでさえこんがらがっているプログラムは、トリテレイアとエルトから送られてくる破損データと照らし合わせると、断裂などによりさらに複雑になっていることが分かった。
 件のメインスラスターについては、ハッキングでプログラムを抜き出してある。パッチ作成はすでに終え、エーカはこの迷路じみたプログラムを整理することに注力していた。
「どうも、すみません。ややこしい艦でしょう」
 小型ディスプレイでメインスラスターの接続システムを構築していたメカニックが、頭を下げた。エーカはそれに、微笑んで首を横に振った。
「仕方ないわよ。言葉にするのは申し訳ないけれど、この船に届く純正パーツは少ないと思うの。名目上は純正パーツでも癖が強すぎたりね」
「そうなんですよ。補給されるのは最新型のパーツばかりで、そりゃ新鋭艦はいいでしょうけど、うちみたいなボロ船じゃ、宝の持ち腐れになってしまうので」
「これまでは、スターダストのコアシステムを無理やり改変して使ってきたのね。そんな無茶を利かせられるだけ、腕のいいメカニックが集まってる証拠よ」
 タイピングの手を止めずに淡々と言うと、メカニックは嬉しそうにニヤニヤしながら頬を掻いた。
 エーカの言葉に嘘はない。現に彼らは、銀河帝国が宇宙を牛耳っていた時代を生き抜いたのだ。この、博物館に飾られていそうな旧型艦で、である。
「あなたたちの腕は、信頼しているわ」
「猟兵の皆さんにそう言ってもらえると、へへ、嬉しいもんですね」
「……そう」
 これには、エーカは苦笑を返すほかなかった。彼らは猟兵たちをまるで歴戦の兵士であるかのように褒め称えるが、事実はそうではないのだ。
「私なんかは、猟兵となってからは日は浅い方なのよ」
「そうなんですか?」
「えぇ。もっとも、猟兵になってからというもの、人生密度が濃すぎるのだけれどね。この間の戦争が数年前の出来事みたいに感じるわ」
 激闘だった。猟兵もそうだが、何よりこの宇宙に生きる人々が、命を賭して戦ったのだ。あっという間だったようで、酷く長い間戦い続けた気もする。
 今、この宇宙には平穏が訪れている。残党が暴れてはいるが、巨大な脅威はない。それは、スターダストのクルーが見せる表情からも伝わってきた。
「あなたは、これからもこの艦に?」
 ようやく混迷極まるプログラムを解きほぐすきっかけが掴め、エーカは一息入れつつメカニックに尋ねた。
 彼はもういい歳だ。民間船に移り住み、戦いから身を引いてもいい頃だろう。しかし、メカニックは首を横に振った。
「この歳になるまで、私は所帯も持たずにスターダストと生きてきました。この艦は、私たちにとって家であり、妻であり、夫であり、母なんです」
「いいわね、そういうの」
「そうでしょう」
 またも嬉しそうに、今度は力強く笑みを浮かべるメカニック。スターダストのクルーを繋ぐ絆の理由が、エーカは分かった気がした。



 損害状況の調査が終わると同時に、トリテレイアとエルトのもとに通信が入った。エーカだ。
『プログラムの整理が終わったわ。エルトさんの端末にスラスター接続システムを送ったから、あとはそっちでメインスラスターの接続をしてくれる?』
「はいよ。じゃ、さくっと終わらせるかぁ」
 エルトは手元の整備用タブレット端末を操作し、新造のメインスラスターが格納されたコンテナを開けた。
 同時進行で取り外されたこれまでのスラスターと並ぶと、いかにも新品の眩しさがある。整備員たちから、早くも歓声が上がっていた。
すでにパッチは当てられているとのことなので、早速接続作業に入る。
「そんじゃトリテレイア、接続よろしく」
「了解しました。危険ですので、作業員以外は離れていてください」
 いかにウォーマシンのトリテレイアでも、宇宙艦のメインスラスターを一人で運ぶのは至難だ。運搬作業用ロボットに乗り込んだ作業員と共に、少しずつスラスターを移動させていく。
 幾人かの整備員とエルトは、その様子を離れた位置から見守っている。整備員たちは、皆一様に緊張の面持ちをしていた。
 メインスラスターの交換は、恐らく初めてなのだろう。取り外されたものの古さを見れば、それが嫌でもわかる。
「よくこれで戦おうと思ったなぁ。大したもんだ」
 わずかに微笑んで、エルトは呟いた。誰にでもない、強いて言うなら、スターダストに向けた言葉だ。
 巨大なスラスターを牽引するトリテレイアにも、作業員たちの緊張が伝わっている。メインスラスターはこの船の足であり、生命線だ。
 まして、本来はドックで行われる機械作業を人の手でしているのだ。当然の緊張感だった。
 ジョイント部と噛み合い、艦全体が振動する。整備員とエルトが持つ端末に、正常接続を知らせるグリーンサインが点灯した。
 整備員たちが歓声を上げる。エルトは空間の上下左右からハイタッチを求められ、手が痛くなるほどに応じた。
 古く傷だらけの艦体に比べて、浮いて見えるほど新しいメインスラスターは、それでも彼らの希望となったのだ。
 一仕事終えたトリテレイアが、エルトのそばに漂ってきた。並んでスターダストを見上げる。
「エーカ様、皆様の声が聞こえますか」
『聞こえてるわ。すごく楽しそうな声がね』
「まだスラスター代えただけなんだけどなぁ」
 呆れたように言うエルトも、悪い気持ちはしていなかった。むしろ、クルーの輝く笑顔を見て、こちらも明るい気持ちになれている。
 外も中も、整備すべきところはまだまだある。それでも、艦を推し進める力が蘇った意味は、大きい。
 船外のトリテレイアとエルトが見る端末と、メカニックルームのエーカが見つめるディスプレイに表示されたグリーンサインは、スターダストの行く先を示すが如く、誇り高く輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パル・オールドシェル
歴戦の船乗りの救援、作業用ドロイドとしての本領発揮ですね。
はじめまして、スターダストの皆さん。
キミたちの勇気ある戦いに感謝を、今度は僕らが報いる番です。

幸いにも前回の戦いで撃破された敵の装備残骸がまだ漂っていそうです。
それを以てヒューマンカウルを構築、船外作業に勤しみましょう。
資材運搬は任せて下さい。人型重機として、この船を立派に修復する助力をします。

クルーの皆さんともお話してみたいですね。
星の海を生きる"ヒト"、彼らが勝利の先に何を想うのか。
平和になったら何をしたいのか、とか。そういう願いはきっとヒトを理解することに繋がるはずです。

時間が余れば、そうですね。撤退まで周辺の哨戒もしましょう。


ネヴィス・マキヤーベイ
アドリブ絡み歓迎

SPD

さて、と
とりあえずは対空機銃の修復ね
防空システムをきっちりしないとすぐ陸戦隊にのりこまれるか
重要区画をやられてドカンだもの
直掩機が望めない場合だって考えられるわけだしね

損壊した機銃を新規のユニットに差し替え可能なら機体で作業
大きな質量を動かせるのは大型機の強み
作業機ではないが五指の汎用マニピュレータは器用なので

細かいところは降りて生身で作業
物理的な断線などのチェックと修復
機銃座で基本的な動作チェック
これらを修復可能な部分全てで

居住性に関しては知ーらない
損壊した旧式戦闘艦艇なんて居心地悪くて当たり前だもの
あと私サイボーグだからあんまり気にならないし
死ななきゃいいの死ななきゃ




 旧型艦ながら、猟兵によるプログラミング改変によって、スターゲイザーは最新鋭の装備を使えるようになった。
 その報を受けて、パル・オールドシェル(古き戦友・f10995)は補給艦から新型機銃ユニットを携え、仲間のもとに向かっていた。
 軽巡洋艦のものではあるが、機銃ユニットは小さくない。他の物資も受け取ったため、今は巨大なコンテナを二つ牽引している。自身を作業用ドロイドと位置付けるパルの、腕の見せ所だ。
「とはいえ、このままでは少々非効率的ですね」
 パルは周囲を見回した。今いる辺りは、銀河帝国攻略戦で激戦が繰り広げられた宙域だ。敵のウォーマシンや宇宙艦の残骸が散乱している。
 使えるものも多そうだ。パルは即座にヒューマン・カウルを展開した。
「主機関イグニッション。FCSオンライン。アクチュエータ正常」
 選択された残骸が、パルの周囲に集まる。それらは自動的に彼女の体に接続され、身体能力を強化していく。
 通常の二倍近い大きさのロボットになったパルは、接続した機材に異常がないことを確認し、再び牽引を開始した。
 遠くにスターダストの光が見える。周囲を漂う輝きは、整備クルーや猟兵の発するものだろう。
 最速で飛行するわけにもいかず、黒い宇宙を進んでいると、パルのレーダーが接近する物体を捉えた。識別信号は、味方だ。
『こちらネヴィス。牽引お疲れ様、手伝いに来たわよ』
 通信が入った方向を見てみると、高速で近づく機影が見えた。紺と白を基調とした、八メートルほどの人型マシンだった。
 特別攻撃装甲服と呼ばれるそれに搭乗しているのは、ネヴィス・マキヤーベイ(刃金の箒星・f12565)。彼女もまたスターダストから離れた宇宙に転移し、周辺の警戒をしながらスターダストを目指していたところだった。
 通常回線に切り替えて、パルは軽く頭を下げた。
「助かります、ネヴィスさん。では、そちらのコンテナをお願いします」
 パルは引いていたうちの一つを示した。どちらも同じ、大変な大きさだ。
 外部パーツであることは、ネヴィスにもすぐわかった。コックピットからコンテナを見上げ、思わず感嘆の声を出す。
「おぉ、これはまたすごい補給だね。中身は機銃かなにか?」
「えぇ、そちらは対空機銃です。僕たちが修理を手伝う旨を話したら、優先して都合してくれました」
 牽引ワイヤーを凡庸マニュピレーターで機体に接続し、エラーが出ないことを確認しつつ、ネヴィスは頷いた。
「対空防御システムは、きっちりしないとね。すぐ陸戦隊にのりこまれるか、重要区画をやられてドカンだもの」
「そうですね。主砲より優先度は高いでしょう」
 実際、銀河帝国は艦隊戦よりも白兵戦を得手としていたように感じる。だからこそ、猟兵たちの力が役立ったとも言えるのだが。
 牽引する機体が二つになったことで、パルは先ほどよりも速度が格段に上がったことを感じた。本当はもう少し速くすることもできるのだが、それはしない。ネヴィスも同様だった。
 二人はまだ、スターダストの面々と認識がない。戦闘能力を持つ機体が二機も急接近すれば、警戒させてしまう。
 なるべく驚かさない速度で進んでいたつもりだったが、それでもパルに通信が入った。すぐに回線をつなぐ。
『こちら、軽巡洋艦スターダスト。接近する機体へ、そちらの所属と名前を述べられたし』
 通信兵の声は、緊張感こそあるが、敵機だとは思われていないようだ。パルとネヴィスはひとまず安堵した。
「ボクはパル・オールドシェル。所属は……」
「猟兵、でいいんじゃない?」
 機体にブレーキをかけつつ、ネヴィスが言った。確かに、それが一番分かりやすいかもしれない。
「我々は猟兵です。はじめまして、スターダストの皆さん。キミたちの勇気ある戦いに感謝を」
「自分はネヴィス・マキヤーベイ。周辺宙域を警戒後、貴艦へ補給物資を届けに参りました。コンテナに補給艦のIDが記載されていますので、参照願います」
 通信越しに、ブリッジが慌てているのが分かる。かすかに聞こえた叱責の声は、艦長のものだろうか。
『えぇと、お待ちください……コンテナのIDを確認しました。すみません、猟兵のお二方。疑ってしまって』
 申し訳なさそうな声に、パルは見えないと知りながらも、首を横に振っていた。
「いえ、お気になさらず。貴艦への接近を許可いただけますか?」
『もちろんです!』
 ブリッジの上から輝く発光信号が、歓迎の合図に変わる。パルとネヴィスは揃って、各々の機体の中で頬を緩ませていた。



 スターダストの船外では、すでに多くの整備員と猟兵によって修理作業が進められていた。
 メインスラスターは最新型のものに切り替わり、修理ドックに入れない以上継ぎはぎではあるが、装甲の修繕も進められていた。
 初めて間近で見る艦に、ネヴィスが口に手を当てる。
「うっわ、本当にボロボロね……」
「ネヴィスさん、聞こえますよ」
 限定回線でパルから注意を受け、ネヴィスは頭を掻いた。
「えへへ、ごめん。でも、すごいわね」
 こんなにも破壊されつくしてなお、戦い続け、そして生き残ったのだ。運がいいだけでは成し得ない技だ。
 壊れてしまった部品を取り変えて、幾十年も宇宙を飛び続けるスターダスト。ネヴィスはなぜだか、死病を患った体を機械に差し替えて蘇った自分と重ねていた。他人事とは思えない。
 クルーたちもまた、決して艦を乗り換えようとしなかった。敵も味方も新型の船だが、ひるまず雄々しく戦った。その姿勢から学べることは、多い。
 同じ感想を、パルも抱いていた。死力を尽くして戦い、掴んだ勝利。その先に、星の海を生きる"ヒト"が、何を想うのか。
 だが、物思いにふけっているわけにもいかない。パルは静かにネヴィスへ告げた。
「……作業に入りましょうか」
「そうね。コンテナを展開するわ」
 ネヴィスが愛機「ゼファー」を繰り、大きなコンテナを開ける。中から現れた最新鋭の対空機銃を、艦内のクルーが窓から珍しそうに眺めている。
 まるで子供のように指さしている姿に苦笑しつつ、ネヴィスは機銃にワイヤーを接続し、ゼファーと繋いで固定した。
 その作業の合間に、パルは整備員と協力しつつ、これまで使われていた機銃を取り外した。知らない型番だった。恐らく、彼女が記憶を失くして眠っている間に作られたのだろう。
 この艦は、パルの知らない宇宙を見てきたのだ。そう思うと、敬愛にも似た感情が芽生えてくる。
 手際よく取り外しながら、パルは近くにいた青年整備員に声をかけた。
「キミは、いつからスターダストに?」
「ん、俺? 生まれた時からっすよ」
 珍しい話ではない。この世界では、一つの船が国であり、世界にもなり得る。この小さな軽巡洋艦も例外ではないのだ。
 艦内に親がいるのだろう。まだ若いが、子供もいるかもしれない。パルは先ほどの疑問を、この青年にぶつけてみた。
「銀河帝国が滅び、宇宙は平和になりましたが……。あなたは、何かしたいことがありますか?」
「したいこと? そうっすねぇ、色々あるけど……」
 しばし考え、青年は宇宙服の中で小さく笑い、明るい声で言った。
「まずは、こいつを綺麗にしてやりたいっすね」
 そう言って撫でたのは、ほかでもない、スターダストの外壁だ。まるで大切な人に触れるように、優しい手つきだった。
 取り外した機銃を持ち上げ、ワイヤーに接続しながら、パルは青年を見た。偽りのない言葉だが、なぜそこまで、この無機物に固着するのだろうか。
 作業員により移動させられる古い機銃に目もくれないパルへ、青年が照れ笑いを浮かべる。
「やっぱさ、この艦も、俺の親父……お袋か? まぁともかく、家族なんすよ。だから、大切にしてやりたい」
「この世界ならではの考えよねー」
 二人の上方向から言ったのは、コックピットから出てきたネヴィスだった。新型機銃の接続デバイスを青年整備員に渡しつつ、「とはいえ」と続けた。
「物に対して家族とか友達って感じられるの、人間の特権かもね」
「そうなのですか? 他の種族では、実感できにくいものなのでしょうか」
 真剣に振り返ったパルに、ネヴィスは少し困ったように頬を掻いた。
「んー……どうだろ。でも、説明するとなると難しいわね。愛着って言葉だと、ちょっと安っぽいし」
「そうっすねぇ。他に言うなら、故郷……かな」
「なるほど。それならば理解できます」
 生まれ育ったこの艦は、まぎれもなく彼らの故郷だ。その故郷と共に戦い、共に生き抜く。そういう意味では、確かに生き物として捉えられるかもしれない。
 モノや場所が実際にDNAを継承するという意味での家族になるわけではなかろうが、愛着が一定のラインに達すれば、そうした血の通った感情の相手になり得るということか。
「また少し、ヒトへの理解が進んだように感じます」
「ま、ヒトを理解するなんて、ヒトであってもできないことが多いっすけどね」
「そうねー。私も未だによくわかんない」
 肩を落とすネヴィスだが、彼女はまだ十三だ。無理もない。
 青年の手元で、デバイスがグリーンサインを出した。あとは接続するだけだ。ネヴィスはゼファーに乗り込み、パルと協力して新型機銃を銃座に近づけた。
 整備員たちが手を伸ばし、機銃をスターダストに固定する。そこからの手作業は、ネヴィスも参加した。
「本当にピカピカの、いい機銃だねぇ。よかったねぇ、スターダスト」
 宇宙服の奥から聞こえる初老の女性の声は、まるで孫に語り掛ける祖母のような温かさがあった。本当にこの艦はクルーの家族なのだと感じ、ネヴィスまで嬉しくなった。
 やがて、最後の固定作業が終わった。外部ハッチから銃座に乗り込んで動作確認をしていたパルとネヴィスのもとに、ブリッジから通信が入る。
『こちらブリッジ、スターダスト艦長だ。新型機銃の接続作業、感謝する』
 艦長の声の後ろからは、クルーたちの拍手が聞こえてきた。パーツが取り換えられるごとに、お祭り騒ぎなのだろう。
 見れば、作業に当たっていた整備員たちも、宇宙空間で器用にハイタッチをしたり、抱き合ったりしている。
 その光景を見ながら、ネヴィスは銃座の背もたれに体を預けた。
「どういたしまして。使い心地も良好よ」
「最新型ですので、これまでのものとはUIが変わっています。そのあたりについては、整備員の皆さんにお伝えしました」
『あぁ、助かる。残りの船外作業は、うちのクルーに任せてもらって問題ない。二人とも、休んでいただきたい。何も出せないが――』
「いいえ。多くをいただいています」
 そう言って、宇宙空間で作業に勤しむクルーを見つめるパルに、ネヴィスは「そうね」と首肯し、頭の後ろで手を組んだ。
「あんな嬉しそうな顔されちゃ、他に欲しいものなんて、出てこないわ」
「えぇ」
 パルとネヴィスは再び船外に出て、宇宙空間を漂いながら整備員たちの作業を見守った。
 生まれ変わりつつあるスターダストの姿は、船員の心に比例して、その輝きを増していく。
 この艦が再び堂々と宇宙に飛び立つ時、彼らはどのような顔を見せてくれるのだろうか――。
 そんなことを想像しつつ、青い流星が駆け抜ける宇宙を、二人で並んで見上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
救助の時はタイミングが悪く参加できなかったのです。
せめて修理くらいは手伝わせてもらうですよ。
とは言ったものの…素人だからね。
準備が大事っぽい?
まずはブリッジにいくです。
自己診断プログラムくらいは積んでるよね。
秘伝忍法でムカデを呼び出し、メインコンピューターにアクセス。
診断結果を受け取り、損傷レベルから順位付けして効率よく修理していくです。
過去の修理記録やマニュアルなんかも読み込んで準備完了。
修理に向かうですよー。
簡単だけど危険な場所を修理するのがいいかな。
クルーと協力すれば素人でもなんとかなる…といいよね。
安全に注意して、できる範囲でがんばるっぽい!
ん? 僕よりムカデのほうが役に立ってない?




 ブリッジにムカデが這っている。字面をだけで見ると大変な誤解を受けそうだが、事実そうなのだから仕方がない。
 露木・鬼燈(竜喰・f01316)が秘伝忍法によりサイボーグムカデを呼び出したときは、流石に騒然とした。しかしすぐに受け入れられたのは、彼らのほとんどが虫という生き物を見たことがないからだ。
「メインコンピュータへのアクセス権、そちらに渡します」
「頼むです」
 サイボーグムカデの目が輝く。スターダストの中核をなすシステムへアクセスし、艦全体の自己診断プログラムを起動させた。
 解析までは時間がかかるだろう。背もたれに体重を預けて、鬼燈はサイボーグムカデの頭を撫でた。
「ふぅ。一息入れるです」
「お疲れ様です」
 ストローのついたドリンクカップを鬼燈に渡し、衛生兵が隣に座った。鬼燈が使用してるデバイスは、彼のものだ。
 ありがたく飲み物を頂戴していると、まだ若さの残る衛生兵が言った。
「あなたも……銀河帝国との決戦に?」
「ぽい」
 ストローから口を離し、鬼燈が頷く。
「この船の救助作戦の時はタイミングが悪く参加できなかったけど」
「スターダスト以外にも、多くの艦船が皆さんに救われたと聞いています。さぞ活躍されたのでしょうね」
 控えめな印象の衛生兵だが、英雄と呼ばれる存在に憧れる想いはあるらしい。
 男ならば、そうした感情は少なからずあるものだ。とはいえ、その理想に振り回されて堅苦しくなるつもりも、鬼燈にはなかった。
 大きく伸びをして自己診断の進捗を見ながら、答える。
「活躍したかは分からないですけど、戦場が広いからね。やることは多かったっぽい」
「そうでしたか。一つの艦にいると、なかなか現実が見えませんね」
「そんなものです。でも、スターダストの活躍は聞いてるっぽい。せめて、修理くらいは手伝わせてもらうですよ」
 自己診断プログラムが終了した。整備員や猟兵の奮闘もあり、主要な部位はほとんどが問題無しになっている。
 しかし、一箇所だけが赤くなっていた。エンジンルームだ。
「七十二番バルブ?」
 書かれている文字を読み上げて、鬼燈が首を傾げる。
「む、またそこか」
 背後からの声は、艦長のものだった。渋い顔をしている。
「昔から調子が悪くてな。場所が場所だけに、エンジンを止めない限りは修理することもできないのだ」
「なんでです?」
「エンジンルームは、暑すぎるんです。専用の耐熱作業服はありますが、三分で熱中症になってしまい……」
 整備員が申し訳なさそうに言った。過去の修理記録を見ると、その都度エンジンを止めて補修していたことが分かる。船を止めるには、どこかのドックに入らなければならないのだ。
 ならばと、鬼燈は立ち上がった。
「誰か、通信でサポートを頼むです。僕が直してくるっぽい」
「いいのですか? エンジンを止められませんから、危険ですよ」
「危険な場所のために、僕らがいるですよ」
 軽く言いながら、鬼燈はエンジンルームに向かった。
 機関部は、艦の後方にあった。軽巡洋艦とはいえ、宇宙船を一隻動かすほどの大きさがある。
 鬼燈は宇宙船の整備については門外漢だが、クルーのサポートとサイボーグムカデの力があればなんとかなるだろう。
 エンジンルームの扉が開く。同時に、凄まじい熱気が溢れ出した。
「あっつ! これは確かに、長くいれないですね」
 サイボーグムカデを先行させて、鬼燈はエンジンルームの外でサイバーアイに転送されてきた内部の状況を確認する。
 件のバルブはすぐに見つかった。いかにも古く、本当に宇宙を飛ぶ船の心臓部なのかと疑ってしまうほどだった。
 バルブは耐熱作業服がなければ焼け死ぬかもしれないほど、エンジンに近い位置にある。とはいえ、直さずにいれば、重大な事故につながりかねない。
 耐熱作業服を着込んで修理キットを担ぎ、鬼燈はエンジンルームに入った。
『聞こえますか? バルブは本格的な修理でなく、締めるだけで結構ですよ』
 整備員からの通信に、鬼燈は首を横に振る。
「それじゃ、また緩んで同じことを繰り返さない?」
『修理ドックの順番が回ってくれば、本格的に直せますから。……猟兵さん、保ちますか?』
 鬼燈の体のことだ。心配はありがたいが、鬼燈は気丈に笑った。
「保たせるっぽい」
『すみません、頼みます』
 耐熱服の上からも伝わる熱に辟易しながら、鬼燈はエンジンルームの奥へと進む。
 修理個所にたどり着くと、サイボーグムカデがいた。心なしかぐったりしているように見えるが、それは鬼燈の心理がそう見させているのかもしれない。
「暑い……想像以上っぽい」
『古いエンジンですので、放出熱量も多くて。最新型のエンジンなら、こんなこともないんですけど』
「エンジンまでは支給されなかったですね」
『さすがにそこまで望んだら、怒られますよ』
 話をしつつ、鬼燈は緩んでいるバルブに手をかけた。素手で触れば焼けてしまうだろうバルブも、耐熱服のおかげで熱さを感じる程度で済んでいる。
 壊さないようゆっくりと締め、ついでに周囲に異常がないかを点検し、鬼燈とサイボーグムカデはエンジンルームから撤退した。
 出るなりヘルメットを外し、へばりつく前髪の汗を拭う。
「ふぅ、暑かった」
『お疲れ様です。異常信号が消えました。いつでも発進できますよ』
 整備員の言葉と共に、エンジンルームから大きな音がした。回転数が上がっているのだろう。
 まだ細かい整備が残ってはいるが、船としての体裁は整ったのだ。鬼燈がブリッジに上がると、通信兵が艦内に放送をかけていた。
「本艦はこれより、第七修理ドックへ向けて航行を開始する。繰り返す。これより航行を開始する――」
 いよいよ出発の時だ。見れば、艦長をはじめとしたクルーたちは、希望と誇りに満ちた顔をしていた。
 新鋭艦を受理された軍人にも負けない、凛々しい顔立ちだ。この船を愛し、この船と共に生きる決意を持っているからこその輝きに、鬼燈は知らず、口元に笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルト・カントリック
よーし!気合いを入れて手伝うよ。

叩く……のは良くないし、裏方仕事……は単純で直感的な僕には向いてないかも……。

まだ周辺が安全とは言いきれないらしいから、攻撃の為の設備を修理するのが重要かもしれないけど……、

トイレから先に修理しよう!トイレに行けなかったら攻撃もままならないよね。なるべく僕と同じく、トイレ設備に危機感を抱くクルーさんと協力して修理しよう。

【サイバーアイ】で破損について詳しく調べて、クルーさんに修理方法を教えてもらいながら修理するよ。

「どうしよう……水が……」
水道管を修理している間、ユーベルコード【消えた土曜日】でメリュジーヌに水を抑えて貰うよ。
■泉の精
私/~かしら、なのよね、だわ


ニィ・ハンブルビー
呼ばれて飛び出てボク登場ー!
久し振りのスターダスト!いやーお互い無事でよかった!
戦争ではボクらも助かったし、そう畏まらなくても持ちつ持たれつだよ!
てことで!船の修理のお手伝い頑張るぞー!

まあ、機械は専門外なんだけどね…
…よし!こういう時はプロに頼るに限る!
まずはクルーの人達に指示を仰ぐよ!

おっと、できる事がわかんないと指示も何もないよね!
とりあえず…【怪力】には自信があるよ!
障害物の除去なんかは任せといて!
【フェアリーランド】で物資の運搬もサクサクこなせるよ!
体が小さいから人の入れないような隙間にも入れるし、
そこそこ【暗視】も使えるから、狭所の作業もOK!
普通に人手がいる作業なんかも手伝うよ!



「呼ばれて飛び出てボク登場ー!」
 と元気よくスターダストに乗り込んだものの、ニィ・ハンブルビー(怪力フェアリー・f04621)は機械的な知識があまりないことを思い出していた。
 考えてみれば、スターダストを襲った敵艦でも、艦載機を殴り潰していたのだ。
「ええと、じゃあ壊れたところを……叩いて直す……?」
「叩く……のは、良くないと思う」
 答えたのは、同じく整備は専門外なアルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)だ。彼女は腕組みをして、できそうなことを指折り数えている。
 二人してうんうん唸って考えていると、天井のスピーカーから放送が流れた。
『これよりスターダストは、航行を開始する!』
 力強い宣言に、各方から歓声が上がる。一方、ニィとアルトは二人して腕を組みながら、冷や汗をかいていた。
「やることが……」
「なくなっちゃう! アルト、いこ! なんか探せばあるはずだよ!」
 二人並んで、艦内を当てもなく急ぐ。
 どこかに困っている者はいないか。もうこの際、故障でなくても構わないと思い始めたときだった。 
 悲鳴が上がった。少女のものだ。アルトとニィは顔を見合わせてから、そちらに向かって全速力で駆けた。
 居住エリアに続く角を曲がったところで、ずぶ濡れの眼鏡少女とアルトがぶつかった。
「きゃっ!」
「おっと、ごめん! 大丈夫?」
 支えると、少女は顔を上げて「すみません」と頷いた。
 悲鳴の主は、彼女だろう。見れば、クルーの着ている服とは違う、軽そうな白い服を纏っていた。
「キミは、船の人?」
 ニィに聞かれて、また頷き、少女はずれた眼鏡を直した。
「私、この船の炊事担当なんです。駆け出しですけど」
「その炊事係さんが、なんでずぶ濡れに?」
「それは……」
 炊事少女が指さしたのは、トイレだった。中から水音が聞こえる。
 壊してしまったのか、元から壊れていたのか。どちらにせよ、少女が一人で奮戦したも、虚しく敗れてしまったことは間違いなさそうだ。
 示されたトイレを見ていたアルトが、突然目を見開いて、嬉しそうに手を叩いた。
「トイレ……! うん、そうだ。ニィ、トイレだよ!」
「うん。行っておいで」
「違くて!」
 ブンブンと首を振って、アルトは自分のものより遥かに小さいニィの手を取った。
「トイレを修理しよう! トイレに行けなかったら、航海も攻撃もままならないよね!」
「なるほど! いいね、じゃあそれで!」
 二人は炊事少女が全身ずぶ濡れの理由を考えず、トイレに突撃を敢行する。
 そして、すぐに悲鳴を上げた。
「ぎゃー! 冷たいー!」
「ニィーっ! これどうなってるんだ!?」
 一瞬で水に浸ったニィを受け止めて、アルトは目を凝らした。
 水道管が破裂しているらしく、手を洗う蛇口の根本から全方位に水が噴き出している。
 あれを止めるしかなさそうだ。ニィが再び飛び上がり、半袖の服を腕まくりした。
「負けるもんか! よし、見てろー!」
「ど、どうするの?」
「僕の自慢は、腕力だっ!」
 飛び込んだニィは、蛇口の根っこを掴み水流を押し止めた。しかし、彼女の小さな手ではかばい切れない。
「なんのー!」
 なおも力んで、パイプが不快な音を立てる。アルトが止めなければと思った瞬間、蛇口がねじ切れた。当然、水は勢いよく飛び出し、ニィを直撃する。
「ぎゃー!」
「ニィーっ!」
 アルトは勢いを増した水を被りながら、ニィを救出した。
 一度トイレから出ると、炊事少女がモップを構えて待っていた。まだ中に入ることが出来ないことは、二人を見てわかったようだ。
「あの、大丈夫ですか……?」
「へ、平気平気っ! 見てて、すぐ直しちゃうから!」
 笑って答え、ニィがまたもトイレに飛び込もうとしたところを、アルトが両手で捕まえて阻止した。
「待った! 次は僕がやるよ。考えがあるんだ」
「むぅ」
 悔しそうにするニィを撫でつつ、アルトは炊事少女に言った。
「工具と、できればこういうのを直すことが得意な人を呼んできてくれないかな?」
「分かりました」
 炊事少女が急いでどこかに向かったところで、アルトはトイレに向かって両手を突き出した。
「美しきメリュジーヌ、君の力を借してくれ!」
 魔法的な力で響く声に、水が答えた。巨大な水球が現れ、それはすぐに女の形を取った。
 しかし、その足は蛇のものだった。美しい泉の精は、アルトの顔を見るなり妖艶な笑みを浮かべた。
「呼んだかしら?」
「うん。君の力がいるんだ。頼まれてくれる?」
「お願いの内容によるわねぇ」
 目を細めて微笑む精霊に、アルトとニィは身振り手振りでことの顛末を説明した。
 メリュジーヌは不可視の存在だ。猟兵の二人には認識できるが、スターダストのクルーは見ることも叶わない。
 二人して独り言を言っているように見られては、よろしくない。手早く説明を済ませると、メリュジーヌは顎に手を当て、
「トイレの水を止める、ねぇ……。それ、元の栓とかあるのではないかしら?」
「それが分かんないし、急いでるんだよぉ!」
 腕を振り回して叫ぶニィに、アルトも同調して頷く。
「ほら、宇宙船の水って貴重だから! すぐ止めないとなくなっちゃうかもしれないし」
「そうねぇ。まぁいいのだけれど」
 どこか不服そうに、メリュジーヌはトイレの中に消えていく。すると、途端に溢れていた水が止まった。
 無理矢理に止められてるのではなく、まるでそこにあるのが当たり前であるかのように、破裂した水道管の中に水をたたえている。
 一箇所だけ、水滴が落ち続ける箇所がある。泉の精はどこかにわざと抜けを用意することが多く、アルトが困らせられることも多々あった。
 とりあえず水の猛攻が止んだことに安堵して、ニィはアルトの頭にへたりと座り込んだ。
「いやー、参ったね。船の水、ほとんど流れちゃったんじゃない?」
「そこまではないと思うけどね」
 否定しきれないことにアルトが苦笑していると、炊事少女が老いた男性を連れてやってきた。
 老人は二人を見るや、妙な声を上げた。
「あんれま! こげな濡れ鼠でいっと風邪ひくど! ほれおんめ、手ぬぐいば貸しちゃれ」
「は、はい! どうぞ」
 タオルを渡され、ニィとアルトは髪やら顔やらを拭う。
 老いた男性――清掃員らしい――は、聞き取りにくい言葉と声で文句を言いながら、テキパキと蛇口の修理に取り掛かった。
 こうなると、もう見守るしかない。何もできずに突っ立っていると、炊事少女が遠慮がちに声をかけてきた。
「あの、本当にすみません。英雄さんに、こんなことさせて……」
「いやいや、大切なことだよ。僕たちが力になれたか分からないけど」
「そんなこと! お二人に手伝っていただき、光栄に思っています!」
 背筋を伸ばして言う炊事少女。眼鏡の奥の瞳は、緊張しきって見えた。
 ニィとアルトは目を合わせ、二人してにこりと微笑んだ。ニィが飛び寄り、炊事少女のおでこをつつく。
「戦争ではボクらも助かったし、そう畏まらなくても、持ちつ持たれつだよ!」
「うん。君たちがいたおかげで勝てた戦争だもん。英雄は僕たちじゃなく、この世界の君たちだよ」
「……ありがとう、ございます」
 照れ笑いを浮かべる少女から、緊張の色が消えた。屈託のない笑顔に、アルトとニィも釣られる。
 手持ち無沙汰と思ったが、話していると時が経つのは早い。気づけば、清掃員の老人がトイレから出てきていた。
「おんめら! 水ば命ちょなんべん言えば分かっど!? バカみでに垂れ流しっど、おっちんじまうど!」
「ご、ごめんなさい」
 何を言っているかはよく分からなかったが、怒っているらしいことは理解できたので、二人は炊事少女と一緒に頭を下げた。
 不可視のメリュジーヌが、男性の後ろで呆れたように肩をすくめ、消えた。水はもう漏れ出さない。
 ともかく、目的は達したのだ。ブツブツやりながら去っていく清掃員を見送って、三人の少女は顔を見合わせて笑う。
 目立つような修理こそ出来なかったが、船のために役立てたことは間違いない。ニィとアルトの手を引いて、艦内を案内すると張り切る少女が、その証拠だ。
 だが、その前に。
「服、貸してもらっていいかな?」
 アルトの言葉に、炊事少女は目を丸くして、また謝った。



 航海は順調。そうあってほしかった。
「艦長、接近する物体が多数! 識別信号……ありません!」
「来たかッ!」
 身を乗り出してレーダーを凝視し、赤い光点が無数近づくのを確認し、艦長は即座に艦内へ放送を流す。
「総員、戦闘配置につけ! 居住区隔壁下ろし、急げよッ!」
「未確認機体から、通常回線で音声通信です!」
「なに? ……受けろ」
 通信兵がパネルを操作し、ブリッジのスピーカーからノイズ混じりの音声が聞こえる。
「……こちらは……貴艦の……を渡し……」
「聞き取りにくい。通信兵! こちらの位置は割れているのだ、ジャマーを切れ」
「了解! ジャマー、切ります!」
 途端に音声がクリアになり、声の主は低い声で言った。
「ジャマー解除、感謝する。貴殿は懸命のようだ」
「御託はいい」
 宇宙の彼方を睨みつけて、艦長が目つきを鋭くさせる。ブリッジクルーは、息を潜めているかのように何も言わない。
「無駄話はお嫌いか。いいだろう。要求は一つだ、艦長」
「どのような要求も飲む気はないが、言ってみろ」
 しばしの沈黙。そして、敵は言った。
「貴艦の譲渡だ。あいにく私達は宿なしなのでね。クルーの命は保障する。大人しい間は、だが」
 クルーの顔色が変わる。それは、家族を引き渡せと言われているのと同義だ。
 飲めるわけがない。侮辱にも等しいその要求に怒り、艦長は重々しく宣言した。
「断る。断固として、貴様らを拒否する」
「……了解した。ではこれより、貴艦への攻撃を開始する」
 淡々とした宣告と共に、通信が切られる。そして、レーダーに映る赤い点が、一斉に加速した。
「敵機、来ます! すごい……大群だ!」
「落ち着け! 艦内警報! 非戦闘員に避難指示を出せ!」
 艦内に警戒音が流れ、真新しい対空機銃が動き出す。その最中、艦長が荒々しく叫んだ。
「各銃座、しっかり狙え! 主砲スタンバイ! ……我々がただの星屑ではないところを、見せてやる!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『スペースモヒカン』

POW   :    ゴミクズは焼却だーっ!!!
【手にした火炎放射器から放つ炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【暴力的な】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    俺様のスピードについて来られるか!!
自身が装備する【イタイ改造を施した宇宙バイク】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ   :    行くぜダチ公どもっ!!
【宇宙暴走族の仲間達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。

イラスト:ヤマトイヌル

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵が集った船外に続くハッチに、通信が流れる。艦長のものだ。
『すまない、猟兵の諸君。本来ならば私達だけで対処すべきところだが……力を貸してはくれないか』
 水臭い質問だった。皆が承諾すると、艦長は低く、はっきりした声で言った。
『すまない、感謝する。我々も援護はするが、自衛で手一杯になるかもしれん』
 スターダストに敵を極力近づけず、殲滅する必要がある。数は多いらしいが、やるしかない。
『また君たちと戦えて、光栄に思う。よろしく頼む!』
 ハッチが開かれ、猟兵たちが宇宙空間に飛び出す。直後、耳障りな通信が飛び込んできた。
「ヒャッハー! 新鮮な船だぁーッ!」
「飯だ! 女だ! 男は殺せぇーッ!」
 宇宙バイクを乗り回しながら、汚い声で叫ぶ男ども。その頭は、例外なくモヒカンヘアーだった。
 まさしく野盗といった連中だが、その数があまりにも多い。個は弱くともこの数では、対空防御で防げるものではない。
 スペースモヒカンどもが、猟兵たちに気づく。舌に開けたピアスをびらびらとさせながら、こちらを睨みつけてきた。
「んだぁ〜!? ガンくれてんじゃねっぞ!」
「まずはてめぇらから、身ぐるみ剥いでやんよーッ!」
 群がるスペースモヒカン。見るだけでも不快になる連中に、猟兵たちは知らず、武器を構えていた。
エミリィ・ジゼル
あ、汚物(モヒカン)が一杯いる!消毒しないと!
と使命感を胸に参戦致しました。
いっちょモヒカンどもをフルボッコに致しましょう。

とはいえ現状では多勢に無勢。
ちまちま倒していたのではラチがありません。

というわけでこちらもまず数を増やすべく《増えるメイドの術》で分裂。
そして相手が動揺したのを利用して《サメを呼ぶメイドの術》を使用。
大量のスペースシャークとかじできないさんズで容赦なくモヒカンに襲いかかります。

その後はインクシューターを乱射したり、チェーンソーやめいどかりばーで薙ぎ払ったり、目からビーム撃ったり、毒飲ませたり、芋煮ぶっかけたりとやりたい放題ってすんぽーです。

「ヒャッハー!死ねー!」




 宇宙を埋め尽くすほどの光点。そのすべてが宇宙バイクのヘッドライトであり、またマフラー型ブースターから噴き出す炎である。
 ここが音の伝わる空間であったならば、さぞ喧しいエンジン音が満ちていただろう。もっとも、通常回線に響くだみ声は凄まじいものがあるが。
「ヒィーハーッ! 酒だ! 飯だ!」
「奪い尽くすぜぇーっ!」
 喚き散らすスペースモヒカンたちの前に、一人の女性が使命感を胸に立ちふさがる。
 彼女の名前は、エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)。メイドである。
「汚物(モヒカン)が一杯いる……! 消毒しないと! いっちょフルボッコに致しましょう」
「なんだぁ? メイドだぁ!? 俺のメイドだぁぁぁッ!」
「アッテメー! その女俺に寄こせテメーッ!?」
 うら若い乙女であるエミリィに気を取られ、一塊のモヒカンどもが、エミリィに迫る。その数は、五十人はいようか。
 蛇行運転しながら近づくモヒカンたちに対して、エミリィは数の不利を覆すべく、右手を高らかに掲げた。
「いけ、かじできないさんズ!」
 宣言とともに現れる、額に「1」と書かれた二十五人のエミリィたち。一様に腕組みをし、謎の自信に満ち満ちた顔をしている。
 数字で言えば倍近く。しかし、モヒカンどもがそれを利とするのは容易ではない。
 なぜなら、彼女は――彼女たちは、自由なのだから。
 どや顔のまま、二十六人のエミリィが叫ぶ。
「サモン! シャークっ!」
 宇宙空間に恒星爆発の如き閃光を従えて、それは突然現れた。巨大な、宇宙艦スターダストよりも遥かに大きい、サメだ。
 それは、全てのサメの父。サメの神にして、サメの原点。サメの中のサメ。
「サメェェェエッ!?」
 モヒカンどもの蛇行運転が、恐怖によって乱れる。サメの父は宇宙空間でありながら、巨大な咆哮を上げた。
 そもそもサメが声を発するのかという問いに関しては、愚問と言わざるを得ない。サメに不可能はない。
 サメの父が発した声に合わせて、宇宙空間に無数のサメたちが出現する。サメの息子たちは、スペースモヒカンをエサとして捉え、一斉に攻撃を開始した。
 突如現れ捕食せんと迫るサメたちに、スペースモヒカンが通常回線越しに悲鳴を上げる。
「サメッ! サメが来るぞッ!」
「アーッ! 噛まないで! 噛まないで!」
「食われる! 食われアーッ!」
 次々に美味しくいただかれるスペースモヒカンたち。この機を逃す手はない。
 エミリィ(本体)が、振り上げた右手を、モヒカンどもに向けた。
「消毒開始ですよっ!」
 二十六人のエミリィが、スカートの下から得物を取り出す。それはインクシューターであり、チェーンソーであり、聖剣めいどかりばーであった。
 サメの襲撃で混乱しているモヒカンたちが、手に好き勝手な得物を持って嬉々とした表情で向かってくるメイドたちを見た。
「アッテメッコラ! やんのかいやだぁぁぁぁッ!」
 凄みかけた黄モヒカンが、その顔面にインクシューターの乱射を全弾受け止めて爆発した。
 その様子を見た白モヒカンと赤モヒカンが、復讐の念に駆られて飛び出してくる。
「テメッ! ダチをよくもやりゃがったなッ! 許さ助けてぇぇぇッ!」
 白と赤のモヒカンの宇宙バイクにいつの間にか相乗りしていたエミリィ(偽)が、チェーンソーめいどかりばーでバイクごとモヒカンを切り裂く。白モヒカンと赤モヒカンは愛車と共に爆発した。
「ハァーッ!? メイドなんでつえーんだよ! メイドが何でがっ」
 突如エミリィ(本体)に羽交い絞めにされた青モヒカンが、その口に瓶を突っ込まれた。あからさまに毒っぽい色の液体が口に流れ込み、青モヒカンの顔も青くなる。
「あっあっあっ――アーッ!」
 全身に毒が回った青モヒカンは、エミリィ(本体)が離れた瞬間、毒性に耐えきれず爆発した。
 みるみる数を減らしていくダチに恐怖し、エミリィに狙いを定めたモヒカンが撤退の姿勢を見せる。
「逃げろーッ! 死にたくネェーッ!」
「逃がしませんよっ」
 エミリィたちの目が一斉に輝く。その美しい光は、次の瞬間、五十二のビームとなって放たれた。
「エーッ!? 目からビーム!? なんでビーム!?」
「淑女の嗜みですっ! ヒャッハー! 死ねーっ!」
 逃げ惑うスペースモヒカンが、光線の直撃を受けて次々に爆発していく。
 もはや狩る側と狩られる側は逆転した。父なるサメに見守られ、エミリィを狙っていたモヒカンは最後の一人となってしまった。
 残された金モヒカンを取り囲み、エミリィ(偽)たちがその腕を、足を、頭をがっしりと掴み、固定する。
「いやっ、いやっ! やめてぇぇぇぇ!」
 悲鳴を上げる金モヒカンの口が、強引に開けられる。その前に浮かぶ、にこやかな笑みのエミリィ(本体)。
 彼女の手には、一杯のお椀が持たれていた。中には並々と芋煮が注がれている。
 湯気が立つ熱々の芋煮を、エミリィが金モヒカンの口に流し込んだ。無重力のはずなのになぜ流れるのかとか、そういう問いは無意味だ。彼女は自由である。
 味噌ベースの芋煮は、とろとろながら崩れていない里芋の食感と豚肉の上質な油によって、非常に美味な仕上がりとなっている。日本酒が合いそうだ。
 喉に流れる高熱の液体に涙を流し、東北の味を堪能しながら、金モヒカンは爆発した。
 周囲にモヒカンはいなくなったが、スターダストを目指す宇宙バイクの群れはまだまだいる。
 エミリィたちは、一様に舌なめずりをして、各々スカートからお椀を取り出した。中身はもちろん、熱々の芋煮だ。
 モヒカンのおかわりをすべく、メイド軍団が飛び立つ。彼女たちは嬉々として、口々に叫んだ。
「ヒャッハー!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ネヴィス・マキヤーベイ
アドリブ絡み大歓迎

よっしゃ皆殺し決定!

元気よくシートに乗り込んで機動
スリット状のカメラアイが点灯する

指揮官の要求はともかく
雑兵のあれはもうゴミ掃除よゴミ掃除
星屑なんてロマンチックなもんじゃなくてただのデブリにしちゃいましょ

ダッシュで船から緊急発進して敵集団に飛び込む
船をやらせるわけにはいかない

操縦空中戦で集団を掻い潜っておちょくるようなアプローチ
当然攻撃可能なら婚星で焼く

小回りは小兵のコイツラが上
なら引き離しておびき寄せる!

操縦空中戦ダッシュで集団から少し距離を取る

そんで美人に気を取られた馬鹿どもには…
コイツをくれてやる!

スナイパー一斉射撃UC使用

柱のような荷電粒子束をないで纏め食いを狙う


エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

SPD選択

帝国軍残党?っていうか宇宙海賊だよね、これ。
まあ、どっちにしろやることは変わらないんだけど。

『レッキス』に搭乗して機動戦闘を仕掛けるよ。
細かい機動ならこっちのほうが得意だし、敵の射線を制限するって意味で敢えて敵陣の中央にいたほうが有利かも。
UC静止世界もあるし後れを取ることもないでしょ。

高速思考中に相手の動きを観察して、バイクの予想進路上にグレネードを発射。
なんだかスピードに自信があるみたいだけど…。
ごめん、遅すぎて止まって見えるよ。

まあ、俺の仕事は敵のかく乱なんで深追いはしない。
できるだけ注意を引きつけるから、止めのほうはよろしく。



「帝国軍残党……? っていうか、宇宙海賊だよね、これ」
 高機動型パワードスーツ、PSX-03R『レッキス』のコックピットに入りながら、エルトは呆れたように言った。
 あるいは海賊の方が、まだ品があるかもしれない。UDCアースの東京に住んでいると、この様な手合いに遭遇することはあるが、地球でも宇宙でも下品さに変わりはなかった。
「まぁ、どっちにしろやることは変わらないんだけど」
「そうね! 皆殺し決定!」
 笑っていそうな明るい声で物騒なことを言ったのは、ネヴィス・マキヤーベイ(刃金の箒星・f12565)。彼女もまた、愛機の特別攻撃装甲服J-SAA-601『ゼファー』に元気よく乗り込んだ。 スターダストからエネルギーの供給を受け、二人は同時に機体を起動させる。
 スリット状のカメラアイが点灯し、ネヴィスはモニターに映された宇宙空間に輝くモヒカンの光を確認した。
「指揮官の要求はともかく……雑兵のあれは、もうゴミ掃除よゴミ掃除」
「だな。全滅させとくかぁ」
「星屑なんてロマンチックなもんじゃなくて、ただのデブリにしちゃいましょ!」
 機体チェックを終え、二機はスターダストから緊急発進した。
 急速に接近する機体に、モヒカンたちがバイクのヘッドライトを向ける。
「来たなァ! やっちまえッ!」
「オアーッ!」
 汚く叫んで、モヒカンたちが一斉に宇宙バイクの砲塔を二人に向けた。放たれたのは、火炎放射だ。
 直撃すれば、いくらパワードスーツや装甲服にいたとてただでは済まない。ネヴィスとエルトは散開し、火炎を回避した。
 会敵と同時に敵の動きを分析し、エルトは操縦桿を握り直した。
「ネヴィス、俺が飛び込むから、そっちは外からよろしく」
「いけるの?」
 敵の数に対して、短期突撃は無策と思われるかもしれない。しかし、エルトは首を傾げた。
「むしろ、いけないと思う?」
「……わかった! じゃ、美味しいところはもらっちゃうからね!」
「どうぞ。そんじゃ、やるかぁ!」
 脚部のスラスターが、限界域まで出力を上げる。超加速に耐えながら、エルトの機体は敵陣の中央に飛び込んだ。
 敵が無謀な突撃を敢行したと見たモヒカンが、奇声を上げる。
「ヤロッ! ナメッガッテー!」
「ブッコロオラーッ!?」
 襲い来る火炎放射を優雅によけつつ、エルトはユーベルコードを発動した。
「コード実行。高速思考開始……」
 脳が赤熱するかのような感覚と共に、エルトの体感的な時間が半減する。敵の動きもさることながら、その表情の微細な変化までが読み取れるようだ。
 機動力の高いエルトに痺れを切らし、モヒカンたちが宇宙バイクをより痛い宇宙バイクに変形させた。
「スピードなら負けねっぞオラ!」
「逃げんなコラー!」
 急激に速度を増して迫るモヒカンだが、それでもエルトが慌てることはない。全ての宇宙バイクの進路上に、グレネードを撃ち出した。
「エエエエエエッ!?」
 的確に放たれたグレネードを受け、敵が次々に爆発していく。その様子を見ながら、エルトは呟いた。
「スピードに自信があるみたいだけど……ごめん。遅すぎて、止まって見えるよ」
 エルトが敵陣の内側から攪乱する一方、ネヴィスもまた高機動を活かして、宇宙バイクの間をすり抜けるように戦っていた。
「ほら、こっちこっち!」
 わざと通常回線を開き、火炎放射の隙間を意味もなく縫うようにして飛行、挑発する。
 敵が冷静な軍人であったならば、通用しない手だ。だが、今回の相手は、そうではない。
「ナンテメー!」
「ザケテンナッコラッテメ! ブッコロオラーッ!」
 激昂したカラフルなモヒカンが、宇宙バイクの砲塔から火を放つ。それらを優雅に躱しつつ、ネヴィスは熱溶断兵器「婚星」をマニュピレーターに握った。
「熱には熱でお返しよ! てりゃぁーっ!」
 高速起動から放たれる、念動力とプラズマが複合化した一撃が襲う。
「テメッコラアーッ!?」
 直撃したモヒカンが、宇宙バイクもろとも両断され、プラズマの余波を受けて跡形もなく消滅した。
 強力な武器を持つネヴィスの機体が相手であっても、敵の攻勢は揺るがない。エルトのグレネードも合わせれば相当数を倒しているはずだが、減っている気がしなかった。
「もう! しつこい!」
「どっから湧いてくるんだ? こいつら。この世界のオブリビオンフォーミュラ、倒したよなぁ」
「戦争中は怖くて隠れてたんでしょ。弱い者いじめしかできない連中なのよ」
「誰がビビってんオラーッ!?」
 回線に割って入る怒声に、ネヴィスとエルトはそれぞれのコックピットでため息をついた。どうやら図星らしい。
 敵の指揮官は、何を思ってこの連中を配下に置いているのだろうか。真意を確かめるためにも、目の前の障害を素早く排除する必要がある。
 炎に混じって宇宙バイクによる突撃まで合わさる中、ネヴィスは手短なモヒカンを機体の足で蹴り飛ばし、気取られないよう後退しながら、専用回線通信をエルトに飛ばした。
「ごめん、敵の目をこっちに向けてくれない? すぐスタンバイするから!」
 その一言で察したエルトは、短く答えた。
「了解」
「ありがと! じゃ、よろしくね!」
 エルトのレッキスが、まっすぐネヴィスの方向へと移動を始める。敵は一瞬あっけにとられたが、的が一つに集まったことに狂喜し、すぐに向かってきた。
 コンソールを叩き、ネヴィスはゼファーに荷電粒子砲を構えさせ、その出力を上げていく。
「もっともっと。まだまだ!」
 チャージメーターが危険域を知らせるアラームを発しているが、まだ止まらない。この機体の限界は、機械よりもネヴィスがよく知っているのだ。
 超高速ですれ違うレッキスが、一瞬だけ接触回線を繋いだ。エルトは変わらない声音で、
「敵を引き付けたから、止めのほうはよろしく」
「任せて! 安全装置全解除!」
 敵の目がこちらに向く。モヒカンたちは一様に、いやらしい下卑た笑みを浮かべていた。
 通常回線で挑発しながら戦っていたのだ。ゼファーのパイロットが少女であることを、モヒカンたちは知っている。
「女ァー!」
「俺によこせェーッ!」
 広範囲から押し寄せる宇宙バイクに、エルトは振り返った。丁度、ネヴィスがトリガーに指をかけた瞬間だった。
「美人に気を取られた馬鹿どもには――」
 荷電粒子砲の砲塔が輝く。チャージした全エネルギーが集中する。唇をぺろりと舐めて、ネヴィスはトリガーを躊躇なく引いた。
「コイツを、くれてやるッ!」
 収束した輝きが、巨大なビームとなって放たれる。直線状にいたモヒカンたちが、声もなく消滅した。
「エエエエエッ!? どでかいビームッ!?」
「逃げろォーッ!」
 動揺し逃げようとする敵に目掛けて、ネヴィスは砲塔を横薙ぎに振るった。
「いっけぇぇぇぇぇッ!」
 宇宙を貫く柱の如きビームが、モヒカン軍団を薙ぎ払う。輝く柱が通過した後には、無数の爆発が見て取れた。
 出力を完全開放した荷電粒子砲は、ものの数秒でチャージしたエネルギーを使い果たした。
 一連の流れを後方から眺めていたエルトが、機体のレーダーで残敵を調べる。ネヴィスとエルトが相手をしていた敵反応は、一人残らず消えていた。
「お疲れぇ。やるじゃん」
「へへ、まぁね! そっちもナイスアシストだったよ!」
 ネヴィスのゼファーが、エルトと合流する。スターダストは健在だ。いったん補給に戻ったほうがいいかもしれない。
 船の方向へ反転した二人に、突如として通信コールがあった。専用回線だが、外部からのものだ。
 一瞬ためらったが、ネヴィスとエルトはそれに答えた。
『応答に感謝する。しかし……猟兵とはな』
「……あなた、敵の指揮官ね」
 警戒した声音で、ネヴィスが問う。目の前に広がる広大な宇宙空間に、敵影はない。しかし、近くにいる。二人は底知れない殺気を、通信越しに感じていた。
『彼らを私の部下とするならば、そうなる。もっとも、私にそのつもりはないが』
「へぇ。銀河帝国軍の残党部隊かと思ってたけど、違うんだ」
 エルトは普段と変わらないように思えるが、高速思考により敵が強襲を仕掛けてきた場合の備えは怠らない。
 遠くで、仲間たちが戦う光が見える。スターダスト艦に、徐々に敵が近づいているようだ。
『彼らはいわば、雇われの傭兵だ。私たち銀河帝国軍の傘下にはいたが、正式な軍隊ではなかった』
「そいつらを使わないといけないほど、人手に困ってるってわけね」
 挑発じみたネヴィスの言葉にも、指揮官は落ち着いた声音を変えなかった。
『巡洋艦一隻ならば、彼らだけでも十分奪えた。だが、まさかこの日に限って猟兵がいるとはな。私もつくづく運がない』
「それで、指揮官様はいつまでモヒカンに隠れてるわけ?」
『私が出れば、友人の邪魔になる。しばらくは見学させてもらおう』
 嫌味な物言いだった。スペースモヒカンたちは駒であり、囮でしかないのだろう。
 かといって、こちらが無視できるわけでもない。高みの見物を決め込んでいる敵指揮官に苛立ちながら、ネヴィスが吐き捨てる。
「次はあんたよ。待ってなさい」
『楽しみにしているよ、猟兵諸君』
 通信が切られる。エルトがすかさず回線の痕跡を辿ろうとするが、すぐに消えた。
 この戦い、簡単には終わらないかもしれない。ネヴィスとエルトは声にこそ出さなかったが、お互いに同じことを考えていた。
「……ネヴィス、補給に戻ろう」
「そうね。まだ、これからだもんね」
 二人の機体が、スターダストへ進路を取る。この後に訪れるであろう激しい戦いに備えるために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルト・カントリック
「下品だね」

ユーベルコード【戦場の霧】で霧状のドラゴンを召喚するよ。霧の壁を作って、見当違いな方向に突っ走って貰おう。

彼等の速度だと、簡単に霧が散ってしまうだろうからね、相手の思考が単純な事を願って……わざと霧の抜け道を作ったり、挑発的に霧を濃くしたりして彼等の進行方向を誘導するよ。

一人一人、霧の罠に引っかかって戦力を分散させる事が出来たら嬉しいな。個だと弱いから群れるんだよね?それは僕達、猟兵も霧も一緒。

霧を駆け抜けたら、一体何人減ってるかな?一瞬でも、足を止めたら同士討ちするように霧で視界を塞ぐよ。……味方の邪魔をしないように気を付けないとね。


エーカ・ライスフェルト
「あれがモヒカンなら私は何かしら。……スペース蛮族?」
猟兵になってからは行儀良くしているつもりだけれど、暴力やハッキングに対するためらいのなさは蛮族よね
使い慣れたバイクに乗って、久々に自己所有の宇宙服を着込んだら淑女の時間は終わり。蛮族(ヒャッハー・オブ・ヒャッハー)の時間よ!

既に戦いが始まっていたら、いえ、始まっていなくても真っ直ぐ突っ込むわ
ヒャッハーのバイクを奪ってもいいけど、奪うのに手間取って宇宙船が壊れるなんて情けない展開は嫌。つまり脳味噌筋肉思考で【自動追尾凝集光】をぶっ放す!
レトロフューチャーっぽいギザギザ軌道でレーザー風炎が飛んでいくわ。多分

【属性攻撃】で炎成分を増量しておく


トリテレイア・ゼロナイン
同じ世界出身とは思いたくないほどの気品のなさですね…
髪型も服装もスタイルも時代錯誤甚だしい(馬に跨り宇宙を駆ける自分は棚上げ)

機械馬に●騎乗、彼らに機動戦を仕掛けます。
ああいう手合いは見下されることを非常に嫌いますからね。馬に乗った騎士に負けるのを恐れるほどマシンに自信がないのかと挑発し、ターゲットを私に引き付けることでスターダストを●かばいます

直線スピードではあちらが有利ですが、此方には「足」があります。デブリを●踏みつけ急速方向転換で翻弄、●スナイパー技能で火炎放射器の燃料タンクにUCの焼夷弾を撃ち込みます。射程は弾丸の此方のほうが上の筈です。

焼死は惨いので●怪力で振るう槍で止めを




 猟兵の迎撃により出鼻は挫いたが、スペースモヒカンの数は圧倒的と言えた。
 スターダストへと接近しつつある敵は、さらに待ち構える猟兵を見て、汚らしい笑い声を上げた。
「ヒャー! 金になるもんよこせェ!」
「全部置いてけオラーッ!」
 衣服の上にそのまま着用できる、非常に薄い素材の宇宙服は、ご丁寧に連中の通常回線まで鮮明に拾ってくれる。
 不快感をこれ以上なく煽ってくる声に、アルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)は眉を寄せて、短く評価した。
「下品だね」
「まったく……同じ世界出身とは思いたくないほどの、気品のなさですね……」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、頭を抱えたい思いだった。そうしなかったのは、機械馬の手綱を握っていたからだ。
 敵はいかにも小物の集まりといった雰囲気だが、その数は脅威だ。スターダストに取りつかれてしまえば、瞬く間に落とされてしまうだろう。
 全滅はさせられなくとも、数は減らしたいところだった。しかし、正面切って戦ったところで、突破されてしまう。
「敵の目を眩ませられればいいのですが」
「視界を奪うだけなら、僕がやるよ」
 迫りくるモヒカンどもを見据えて、アルトが両の手を合わせ、念じる。
「見えざる者よ、我が前に姿を映せ!」
 合わせた手を開くと同時に、アルトの掌から霧が生まれた。あっという間に辺りを包み込んだ濃霧は、竜の形を取っていた。
 突如宇宙空間に出現した霧の竜と、視界が不明瞭になったことで、回線に飛び込んでくるモヒカンの声が悲鳴に変わった。
「エーッ!? 霧!? ドラゴン!? ここ宇宙っショ!?」
「ザッケンナ! ビビッテンナ! ブッコメ!」
 見えない霧の向こうで、いくつかの爆発が見える。視界を奪われたバイク同士が衝突しているのだろう。だが、敵の猛進はなおも止まらない。
 アルトは霧の中に抜け道を作った。その方向には、先の戦争でできたデブリ帯がある。
「トリテレイア、僕が奴らを誘導する。デブリ帯で仕掛けて!」
「承知!」
 機械馬が宇宙を駆ける。霧を抜けた先に現れた鋼鉄の騎士に、またも敵が頓狂な声を上げた。
「エエエエッ!? 騎士!?」
「ウォーマシンだ! パーツ高く売れっぞ!」
「剥ぎ取れッ!」
 欲望のままに突き進むスペースモヒカンに、トリテレイアは背を向けた。
 核熱ブースターやらなんやらを詰め込んだ痛バイクは、完成度はともかく、速度は機械馬より速い。それこそが彼らのプライドだった。
 だから、トリテレイアはあえて速さで仕掛けたのだ。
 デブリの上に機械馬で降り立ち、槍の尖端をモヒカンたちに向ける。
「私を売りさばくには、まず追い付いてもらわねばなりませんよ。機械とはいえたかが馬、追い付けないはず、ありますまい?」
「ナッテメ! ぜってぇコロス!」
「ヤッチマエー!」
 マフラー型ブースターが一斉に火を噴き、宇宙バイクが急加速を始めた。トリテレイアは再び反転し、機械馬を走らせる。
 デブリ帯には、戦艦やウォーマシンの残骸が散らばっている。それらを足場に、機械馬は跳躍するかのように自在に移動していった。
 宇宙バイクは直進には強いが、急な方向転換はできない。ましてそれが、数に頼って己を磨かない連中の運転技術なら、なおさらであった。
 アルトの霧が広がる。デブリ帯をも包んでいき、スペースモヒカンに焦りが浮かぶ。
「ヤベッ! 見えねぇ!」
「目こらせコラー!」
「ジャッテメッ追い付けボケー!」
「アンコラーッ!」
 口汚く罵り合いながら追いかけてくるモヒカンどもが、届きもしない火炎放射を放っている。その炎は、トリテレイアにとって弱点を教えてくれる灯に他ならない。
「騎士たるもの、火攻めなどという手は避けたいものですが……」
 方向を転換、機械馬に装着されたキャノン砲から、超高温化学燃焼弾頭を放つ。狙いは、宇宙バイクの燃料タンクだ。
「火炎放射器にも流用されていますね。さぞ大量に積んでいるのでしょう」
「エッ」
 撃たれた化学燃焼弾頭は、恐ろしく正確に、宇宙バイクの燃料タンクに直撃した。
 爆発とともに、有機物を瞬時に炭化させるほどの熱量を持つ炎が、スペースモヒカンを包み込む。
「アツーッ! アツイーッ!」
 絶叫しながらも彼らが即死しなかったのは、オブリビオンだからだろうか。燃えながら愛車を飛び降りもがくモヒカンどもに、トリテレイアは槍を向けた。
「……さすがに、焼死は惨いですからね」
 機械馬の足が、デブリを蹴る。加速した勢いのままに槍を縦横無尽に振り回し、今も炎に包まれているモヒカンの苦しみを、死をもって断ち切る。
 槍を携えたまま、朽ちた戦艦に着地したトリテレイアに、アルトから通信が入った。
『トリテレイア、霧の中に敵がまだたくさんいるんだ。僕は手が離せないけど、いける?』
「むっ」
 デブリ帯だからこそ、機械馬の機動力が発揮できたのだ。足のつかない宇宙空間では、宇宙バイクに機動力で勝つことができない。
 やむを得ない。頑丈さを生かした力押しでいくべきかと考えた、その時だった。トリテレイアの背後から、通信が入った。
「お困りのようね、お二人さん」
「その声は……」
 トリテレイアが振り返った先に、一筋の閃光があった。
 肌にフィットするタイプの宇宙服を纏い、漆黒の空間にピンクの髪を靡かせる、宇宙バイク乗りが、そこにいた。
 エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は、決して性能が優れているわけではない、しかし何よりも馴染んでいるバイクのハンドルを、思い切り捻った。
「あとは私が引き受ける! トリテレイアさんは、アルトさんを守ってあげて!」
「了解しました。ご武運を!」
 機械馬を走らせるトリテレイアの横を駆け抜け、エーカは躊躇わず霧の中――蠢くモヒカンどものど真ん中へ突っ込んでいった。
 思い返せば、猟兵となり世界を回るようになってから、ずいぶんとお行儀よく暮らしてきたものだ。
 しかし、彼女の本質は悪。憎み憎まれを繰り返し、血で血を洗う戦いの中に生きてきた。その感覚が、今はっきりと、肌に蘇る。
「スペースモヒカンねぇ。なら私は……スペース蛮族なんて、どうかしら?」
 回線をつないだまま独り言ちる。霧の中で右往左往していたモヒカンたちが、一斉にエーカを見つけた。
 彼女の姿は目立つ。バイクに跨る姿は威容さえ感じ、同じバイク乗りのモヒカンたちの目を引かないわけがなかった。
「ナ、ナンテメー……」
 控えめな怒声に、エーカは目つきを鋭くさせた。
「淑女の時間は終わり。ここからは蛮族の時間よ。坊やたちは骸の海にお帰り」
「ア? テメェコラー!」
 モヒカンたちが一斉に襲い掛かる。怒りが伝播でもしているのか、モヒカンたちは霧のあらゆる方向から、見る間に増えていく。
 体当たりやら火炎放射やらキックやらを的確なハンドル捌きで回避しながら、エーカはモヒカンどもが乗るバイクに目をつけていた。
「なるほど、いい性能のバイクね。……欲しくなるわ」
「アッ!? オメッ、奪うのは俺らで――」
「それを決めるのは、あなたたちじゃないでしょう」
 冷たく響く声に、モヒカンが黙る。その顔面をタイヤで轢き潰して、エーカは霧の中を疾駆しながら苦笑した。
「でもまぁ、いいわ。そんなつまらないことに手間取って、宇宙船がやられるなんて展開はごめんだものね」
『エーカ様、なんだか今日はその、雰囲気が……』
 突然入った通信は、トリテレイアからだった。その後ろで霧を出し続けてくれているアルトもまた、通信に参加する。
『こう、その、超冷徹だよね、今日のエーカ』
「私はいつも、そうだと思うけれど」
『いや、まぁそうなんだけど。なんていうかな……いつもよりワイルドで、イキイキしてる」
 彼らとは、同じ戦場を何度も戦い抜いている。その付き合いは長い。だが、エーカの本性を見せる機会はそうなかったのだ。
 冷静で、時に冷酷な魔導士。そういう印象だったのかもしれない。もっとも――。
「下衆に容赦がないっていう意味では、私はいつだって私よ」
『そ、そうですか』
 困惑するトリテレイアに思わず噴き出しつつ、背後から放たれた火炎放射を身を屈めて避ける。
 真空の世界に髪が靡き、その先端を焼いた。
「ヒュー! オシー!」
「もう一回! もう一回で殺す!」
「その前にお楽しみダローッ!? ヒャッハー!」
 自身の髪が汚い炎に侵され、エーカの目に凄まじい殺気が宿る。
「……いい度胸ね。もう遊ぶのにも飽きたし、そろそろ消してあげるわ」
 バイクに取り付けられた砲塔に、魔力を注ぐ。霧の中を大回りに走りながら、砲塔に注がれるエネルギーメーターを見つつ、片手でコンソールを叩いた。
「誘導属性付与……完了。さて、派手にいくわよ」
 にやりと笑い、バイクのヘッドライトをモヒカンに向ける。こちらに直進してくる宇宙バイクの群れに向かって、エーカはチャージした全エネルギーをぶっ放した。
「自動追尾凝集光、照射開始! ほら、逃げてみなさい!」
 放たれたホーミングレーザーを見て、モヒカンたちが悲鳴を上げて散り散りに逃げ始める。
 しかし、レーザーの追尾性能は驚くほど高い。どこまでもその背中を追いかけ、距離を詰めていく。
 そしてついに、最初の一人が被弾した。撃ち抜かれるかと思ったバイクはしかし、炎上する。
「エエエエエエッ!? なんで燃えんのッ!?」
 一斉に驚きの声を上げるモヒカンを見ながら、エーカは高らかに笑った。
「いい悲鳴ね。あなたたちの火があまりにもくだらなかったから、本当の炎を見せてやるってのよ」
『エ、エーカ……』
 何か含みのあるアルトの呟きは、今は無視した。
 蛇行運転で逃げるモヒカンを、レーザーのような炎は直角に曲がりながら、確実に追い詰めていく。
 濃霧の中で視界を奪われていながら、自分の身を守ることに集中しすぎたモヒカン同士が、衝突した。
「アーッ!」
「お前ザッケ! レーザーが――!」
 叫んだところで、間に合わない。霧の中にまた、爆発の輝きが広がる。
 足を止めようものなら、それこそレーザーに喰われる。そうでなくとも、別のモヒカンのバイクに轢かれてしまうのだ。アルトの出した戦場の霧は、今や地獄の世界となっていた。
 次々に爆破炎上していく光は、霧の外にいるアルトとトリテレイアにも見えた。
「なんか、すごいことになってるみたいだね」
「……エーカ様の性格を決め付けるつもりはありませんが……ううむ」
 盾を構えて警戒を続けるトリテレイアは、声からそうと分かるほどに動揺していた。
 爆発の光がなくなり、エーカが霧から飛び出してきた。追いかけるように濃霧を脱出したモヒカンは、全部で四人。他は、全滅だ。
「テメー! ダチ公をヨクモー!」
「自分勝手に逃げ回っていたというのに、よく言いますね」
 エーカに固執する四人のモヒカンを、トリテレイアが格納機銃で撃ち落とした。この程度なら、ものの数ではない。
 敵の全滅を確認し、バイクを反転させて、エーカが二人のもとにやってきた。徐行しつつ、彼女は額の汗を拭った。
「ふぅ、ちょっとはしたなかったかしらね」
「……」
 トリテレイアとアルトは、コメントを避けた。
 と、三人に通信のコールが入った。緊急回線だ。すかさず応答すると、スターダストのブリッジからだった。
『お三方の方向に、別動隊を確認しました! こちらからは戦力を割けず、艦の護衛に回っていただいている猟兵さんも手一杯です。すみませんが、対応願います!』
「まだいるの!? どこに隠れていたんだか」
 うんざりしながら肩を落とすアルトの肩に、エーカが手を置いた。
「アルトさん、休憩していてもいいわよ? なんなら私が一人で相手をしてもいい」
「冗談。ここからは僕も、思い切りやるよ」
「怪我だけはなさらないように。お二人は私が守ります」
 三人が口々に言いながら、それぞれの視線は宇宙のかなたを見つめていた。
 輝く無数の光点。あの数だけ、敵がいる。戦いはまだ終わらないが、いつまでも続くものでもない。
 その終わりが決して悲劇でないことを、エーカとアルト、トリテレイアは確信していた。
「よし、いこう!」
 アルトの叫びを合図に、奇声を上げて迫りくるスペースモヒカンたちへと、三人の猟兵は飛び込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

露木・鬼燈
敵襲はあると思ってたけど、こいつらかー。
大して強くないけど数は多いし、機動力はあるし…
うっとおしいなっ! イラッとするのです。
広範囲を焼き払うような技で一掃したいのです。
まぁ、ないものねだりをしても仕方がない。
地道に刈り取るしかないっぽい?
でも上手くやらないと囲まれて大変なことに…
優れた戦士は頭も使うっぽい。
ここに対空機銃があるじゃない!
これを利用すれば敵の数や動きを制限できるかも。
戦術データ・リンクを用いるです。
先ほどムカデがメインコンピュータへアクセスしてるしね。
難しくはないはず。
艦の通信システムを介せばデータリンクで他の猟兵との協力も!
宇宙用装備も問題なく稼働してるしイケルイケル!


パル・オールドシェル
なんという……敗残兵を通り過ぎて賊以下の振る舞い、むしろ族の振る舞いにはもう何も言葉がでませんね。
一刻も早い無力化のため、D型ジャケットを装備、敵機迎撃を支援します。

複合センサーと広域レーダーからなる防空監視網を展開、逐次情報を友軍へ共有。
効率的な迎撃を支援すると共に、スターダストの対空迎撃の精度を向上させます。
僕自身も直掩機として迎撃に参加します。
どうやら敵は長距離砲撃戦用の装備を持たない様子。ならばシールドを構えて突撃、艦に接近する敵をヒューマンカウルの質量で蹴散らしましょう。

ただし最優先はスターダスト、母艦の拠点防衛。
離れすぎないよう留意して敵の攻撃は盾受けで防ぎ、かばいきります。


ニィ・ハンブルビー
んもー!銀河皇帝も滅びたってのに性懲りもなく!
これだからモヒカンは困るんだ!

そのモヒカンを毛根から焼き尽くす…と言いたいとこだけど!
ここはスターダストの防御を優先しよう!
てことで【絆と誓いの魔法】!
スターダストを自動で【かばう】無敵の盾になるよ!
これを使うと、ボク自身の意思じゃ動けなくなるけど…
せっかく修理されつつあるスターダストなんだ!
壊させるわけにはいかないよ!
モヒカンどもには、指一本触れさせない!
金の精霊!なるべく大きくて、素早く守る盾をお願いね!

そんなわけで!
スターダストの守りはボクに任せろー!
攻撃はみんなに任せたよ!
艦長!ある程度はボクが守るから、砲撃でみんなを支援してあげて!




 スターダストを取り囲むように布陣する、宇宙バイク。それにまたがるスペースモヒカンたちは、初動に比べて人数は減っているが、船を一隻沈めるには事足りる戦力を保持していた。
「追い詰めたァーッ!」
「ヒャッハァー! 補給! 強制補給ダァー!」
 獲物を目の前にして興奮を隠さないモヒカンどもに、スターダストの新型対空機銃が火を噴く。敵を寄せ付けない働きは成しているが、撃墜には至らない。
「んもー! 銀河皇帝も滅びたってのに性懲りもなく! これだからモヒカンは困るんだ!」
 頬を膨らませながら、ニィ・ハンブルビー(怪力フェアリー・f04621)が小さな体を宇宙空間に翻らせ、スターダストとモヒカンの間に割って入る。
「ヒュー! 妖精だァ!」
「へへへ、人形遊びでもするかぁ? 人形役はおめぇだァーッ!」
 ベロベロと舌を出して下品に笑うスペースモヒカンに、ニィは非常に冷たい感情が心へ舞い降りるのを感じた。
「そのモヒカンを、毛根から焼き尽くす……!」
「ニィさん、落ち着いてください」
 妖精用フィルム宇宙服の耳元で聞こえたのは、パル・オールドシェル(古き戦友・f10995)の声だった。彼女はニィに先んじて出撃し、警戒管制D型装備を用い、艦に密着して戦況を細かく分析収集している。
「気持ちは分かりますよ。敗残兵を通り過ぎて賊以下の振る舞い――むしろ『族』の振る舞いには、もう何も言葉がでませんね」
「だったらさぁ! 思いっきりぶっとばそうよ!」
「そうした場合、スターダストに危険が及ぶ可能性があります」
 パルの冷静な言葉に、ニィは口を閉ざした。せっかく直りかけている艦を傷つけてまで、感情を爆発させたいとは思わない。
 唇を噛んで、下卑た笑みを浮かべるモヒカンを睨み付ける。
「ぐぬぬ……分かった! 今は防御を優先するよ! 金の精霊、ボクに力を貸してっ!」
 叫びに応えて、ニィの体が黄金に発光する。彼女が掲げた手の先に、浮遊する金の盾が現れた。
 突如現れた巨大な盾に、モヒカンたちがあからさまに動揺する。
「エエエエッ!?」
「盾ッ!? 宇宙に金の盾!?」
「売れば金にナンゾ!」
 好き勝手叫んで、モヒカンが火炎放射器を次々に放つ。しかしそれらは、精霊的な力を持つ金の盾の前で、ことごとく無力化された。
 あらゆる方向から迫るモヒカンたちに、ニィの体は自然と動く。そこに彼女の意志は介在しておらず、敵意に従って体が動き、火炎放射や体当たりを弾き返していった。
 しかし、きりがない。敵が慣れてしまえば、突破されてしまう可能性もある。ニィはパルに通信を飛ばした。
「パル、ボクだけじゃ防ぎきれないよ! なんとかならないかな!」
「了解。防空監視網の情報をニィさんと共有します」
 直後、ニィの眼前にグラフと数字が並べられた。常に変動している数値は、どうやら極薄の宇宙服により映されているようだ。
 何やら事細かに書かれている詳細な数字や激しく変動するグラフ、敵の武装などの情報が並ぶ映像を見回し、ニィは力強く叫んだ。
「よし! 全然分かんない!」
「右端の数字が敵の数です」
「あ、それなら分かる!」
 何度も頷いて、ニィは金色の盾をひっさげ、宇宙空間を自在に飛び回っては攻撃を防いだ。数が分かったところでやるべきことは変わらないが、それでも目安にはなる。
 無論、パルもただ情報を集め戦況を見守るだけではない。
「敵機の行動予測を完了。転送します」
 蠢く敵の動きをパターン化し、スターダスト内部へ送る。転送場所は、ブリッジだ。通信兵から応答が入る。
『こちらブリッジ、データを受信しました。機銃管制システムに組み込みます!』
 パルが適応化したデータによって、最新型の機銃による対空防御はより精度を高め、モヒカンに対する守りをさらに強固にする。
 その様子をスターダスト下部から眺め、露木・鬼燈(竜喰・f01316)は腕を組んでいた。
「敵襲はあると思ってたけど、こいつらかー」
 スペースモヒカンは、強い相手ではない。しかし、群れる上に機動力がある。まるで夏場の羽虫のようだ。
「鬱陶しいなー」
 接近戦を仕掛けることも考えたが、敵の速度や慣れない宇宙空間での戦闘となると、効率が悪いかもしれない。
 まとめて焼き払えるような技があればよいのだが、あいにく持ち合わせていない。高火力と言えばスターダストの主砲だろうが、エネルギー効率を思慮に入れれば、連射などできようはずもない。
「うーん、攻め手に欠けるです。地道に刈り取るしかないっぽい?」
「鬼燈ぃ! サボってないで手伝ってよー!」
 叫びの通信は、スターダストの周りを飛び回りモヒカン連中を防いでいるニィからだった。
「サボってないですよ。優れた戦士は頭も使うからね。精霊に体を預けてるニィさんも、ある意味ではサボってるっぽい?」
「なにおー! もうボクくたくたなんだけどー!?」
 冗談で言ったのだが、怒られてしまった。鬼燈は苦笑して、艦の上部に飛び上がる。
 相変わらずスペースモヒカンは多い。何やらこちらに向かっても威嚇をしているが、鬼燈は目も耳も貸すつもりもなかった。
 ふと、艦の対空機銃に目が行く。最新型の機銃はパルから送られてくる分析データによって精度を増しているが、実戦データが決定的に不足していた。
 本来なら旧品から引き継ぐものなのだが、これまで使っていたものがあまりにも古く、流用できなかったのだろう。
「よし、試してみるっぽい!」
 鬼燈は手短な銃座に滑り込み、コンソールとにらめっこをしていた中年女性の手元を覗き込んだ。
 コンソールを人差し指でちまちま叩いている。これでは、自動操縦以上の成果が得られないのも無理はない。
「おばちゃん、僕が変わるですよ」
「あぁ、猟兵さん。頼んでいいかい、あたしゃ機械に弱くてねぇ。これまで全部手で狙ってたってもんだから、やり辛いったらないね!」
「それは……むしろすごいっぽい」
 銀河帝国との決戦を全手動の機銃で戦ったらしい女性に敬服しつつ、鬼燈は席を替わった。コンソールにサイボーグムカデのデバイスを接続、データリンクを開始する。
 この機銃は自動照準も可能だが、必要に応じて完全手動に切り替えることもできるようだ。
「パルさん、ニィさん、聞こえるです?」
『こちらパル、良好です』
『ニィだよ。聞こえるよ!』
「艦の通信システムを使って、データリンクをするです。二人の動きに合わせて対空機銃を撃つから、よろしくっぽい」
『了解、いつでもどうぞ』
『ボクもオッケー!』
 応答を受けて、鬼燈はサイボーグムカデを介して艦の通信システムに接続、猟兵が纏う宇宙服から、その軌道を読み取る。
 防衛システムは、猟兵二人の動きに沿って照準を合わせ、対空砲火は一層激しさを増す。
 情報収集に徹していたパルが、防衛火力の増大を受けて、動いた。
「パルより猟兵各位へ。敵は長距離砲撃戦用の装備を持たない様子、僕自身も直掩機として迎撃に参加します」
『了解っぽい。頼むです』
 銃座で言う鬼燈に頷いて、パルはスターダストの外壁を蹴って飛び立った。
「ヒューマン・カウル展開。主機関イグニッション。FCSオンライン。アクチュエータ正常」
 撃ち落とされた宇宙バイクの残骸が、パルの体に装甲のように纏わりつく。
 鋼鉄塊を組み合わせたシールドを握ったパルは、ブースターを加速させ、群がる宇宙バイクに突撃した。
「エエエエエッ!? ロボ!?」
「こっちくんなアーッ!?」
 巨大な質量をもって、パルは逃げ惑うバイクを次々に蹴散らしていく。
 スペースモヒカンはニィの盾を掻い潜っても対空砲火で近づけず、鬼燈の操る自動照準機銃により、動きを制限されている。
「ナイス援護! ボクも負けてらんないね!」
 金の精霊に体を預けたまま、ニィの鉄壁の防御は揺るがない。スペースモヒカンの攻撃がいくら重なろうと、巨大な黄金の盾には傷一つつかない。
「スターダストには指一本触れさせない! 艦長、船はボクが守るから、砲撃でパルを支援してあげて!」
『了解した。君たちのおかげで攻勢に転じられる。副砲、一番から四番開け! 味方に当てるなよ!』
 スターダストの副砲が回頭する。放たれたのは、旧式の砲弾だった。艦隊戦においてはビーム兵器に遅れを取るが、生身の人が相手ならば、威力は絶大だ。
 熟練の腕前を持つ砲手の狙いは、レーダーの精度にも劣らぬ命中率を誇る。宇宙バイクの高速起動に合わせて、見事に着弾した。
「エッ!」
 短い悲鳴は、赤い爆炎に消える。黄金の盾を展開しながら、ニィが目を丸くした。
「すごーい! やるじゃん!」
『年寄りの底力だ。援護は任せてくれたまえ!』
 艦砲射撃が加わったことで、防戦は一転、攻撃の姿勢に移った。砲撃の支援を受けて、パルが加速する。
「支援に感謝します。僕は、敵を撃破します」
 まるで自分に言い聞かせるように呟いて、パルは大盾を眼前に構え、逃げきれない宇宙バイクを片端から跳ね飛ばしていく。
「アイターッ! テメロボ! ぜってぇブッコロ!」
「オメバカ! 逃げろオメアーッ!?」
 バイクから放り出されたスペースモヒカンに、機銃を手動に切り替えた鬼燈と中年女性の射撃が襲う。
 女性の銃弾は、一切ぶれない。大多数の弾丸を受けハチの巣にされて、モヒカンは無残に宇宙の塵となった。
「おばちゃん、いい腕してるっぽい!」
「はん! まだまだあたしゃ現役の船乗りだよ。バイク程度で粋がってるガキに負けるわけにゃいかないのさ!」
 威勢のいい中年女性射撃手の声は、パルとニィにも届いた。砲撃手といい、射撃手といい、実に頼もしい。
 宇宙バイクの数は目に見えて減り、もはや数えられるほどにまでなった。それでも諦めないスペースモヒカンが、ニィの背後に回り込んだ。
「イタダキィー!」
 ゴツゴツした手がニィを捕まえる。妖精とはいえ少女の体の柔らかさに、モヒカンがいやらしい笑みを浮かべた。
 しかし、直後に悲鳴を上げることになる。金の精霊との契約を終えたニィが、無言でモヒカンの指をへし折ったのだ。
「アイターッ!? 指が、指がーッ!?」
「さっきからお前たち、しつこいんだよー!」
 手からすり抜けたニィは、モヒカンの頭にしがみつき、自慢のシルバーモヒカンを根こそぎ抜き取った。
「アアアアアッ!? 俺のヘアー!?」
 毛根ごと根絶やしにされたモヒカンが、頭をペタペタ触りながら、激痛に目を白黒させる。
 その真下から、パルの突撃が飛び込んできた。重い衝撃を受けて、元モヒカンは毛のみならず命まで失う運びとなった。
 あらぬ方向に首を曲げたモヒカンを機体の手で払いのけ、パルがニィに振り向いた。
「ニィさん、残敵掃討に協力いただけますか?」
「もう守りはオッケーだもんね! 鬼燈も、準備はいい!?」
『任せるっぽい!』
 十に満たない数まで減ってしまったモヒカンたちは、撤退すべきかすまいかを逡巡している。恐らく、指揮官の許可が下りないのだろう。
 初めから見捨てるつもりでいるらしい指揮官に、三人はそれぞれに思いを巡らせた。しかし、すぐに切り捨てる。
 今考える必要はない。そうしなくとも、もう間もなくすれば、嫌でも会敵することになるのだから。



 モヒカンが逃げる。ダチを全てやられ、最後の一人となってしまった。もはや彼を支配するのは恐怖のみだ。
「ヒイイイイ! ヒイイイイイイ!」
 核熱ブースターを限界まで使用し、エンジンが爆発する危険性も厭わずに、ひたすら逃げる。
 遠くへ。どこか遠くへ――。
「ヒイイイイ!?」
 その眼前に見えた、青い光。真っすぐこちらに、向かってくる。
『情けない真似はやめたまえ。君たちは、宇宙最強のバイク乗りなのだろう』
「ダッテメー! ダチがみんな死んだッテメー!」
『ならば、それが君たちの限界だ。……猟兵と遭遇した、己の不幸を恨むがいい』
「不幸だと? テッメ! 謀ったなテッメ!」
 青の輝きは、帝国軍の機械鎧だった。手にするビームライフルは、真っすぐモヒカンを狙っている。
「アーッ!? なんでそれこっち向けてんノ!?」
「君たちはよくやってくれた。敵の力量を計るという意味で、実によく私に貢献してくれた。だが――その耳障りな声には、少々うんざりしたのでな」
 煌めいたサファイアのビームが、モヒカンのバイクを貫く。赤熱したエンジンの爆発に巻き込まれ、最後のモヒカンは息絶えた。
 機体がゆっくりと、スターダストへと向き直る。ただそこに浮いているだけなのに、ニィはこの敵が笑ったような気がした。
「出たな……指揮官!」
 パルとニィがスターダストを守るように位置取る。パルのレーダーには、遠方の敵を掃討し終えた仲間が駆け付ける様子が映っていた。
 機銃で青い機体を狙い続ける鬼燈も、その殺気から、このパイロットが強敵であることを見抜いていた。すぐにブリッジへ通信する。
「艦長。こいつ、何? ただ者じゃないっぽい」
『……なんということだ』
 艦長のみならず、ブリッジの誰もが、明らかに動揺していた。通信兵が、震える唇で漏らすように、その異名を呟く。
『アオ……!』
『君たちにそう呼ばれるのは、もう何度目になるだろうか。もっとも、私にとっては意味のある名ではないがね』
 アオと呼ばれたそのパイロットは、ビームライフルを下ろした姿勢のまま、淡々と言った。
『私の友人が、大変失礼をした。まさかあそこまで品性がないとは思わなかったのだ』
「仲間を撃っておいて、よくそんなこと言えるよね! 絶対ぶっ飛ばしてやる!」
 息巻くニィの声が、静寂の宙域に響いて消える。先ほどまで騒がしかった宇宙は、嘘のように静まっていた。
 集まりつつある仲間たちへ、パルが緊急通信を発する。
「パル・オールドシェルより猟兵各位へ。敵は――GRR-06S『ブラウエルフォーゲル』。帝国の、アオです……!」
 銀河帝国が誇った機械鎧のパイロット。「蒼い稲妻」の異名を持つ、一度の戦闘で六隻もの戦闘艦を沈めたという、伝説のエース。
 鬼燈とパル、ニィは、この場にたった一機の機械鎧がいるだけで、宇宙全体が凍りついたように感じた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『少佐専用の青の突撃騎士』

POW   :    見せてもらおうか、新しい相手の実力とやらを!
【全武装の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    …ついてこれるかな、蒼い稲妻と呼ばれたこの私に!
【新人類とも呼べる胸囲的な感応能力】に覚醒して【リミッターを解除した高機動モード】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    これ以上はやらせんと言っている!
【自身の強い意志】から【感応波】を放ち、【戦慄するプレッシャー】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:最古青

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は春日・釉乃です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 銀河帝国のアオ。スターダストクルーの、誰もが死んだと思っていた。それがまさか、自分たちを狙ってくるなんて。
 頭を抱えるクルーもいた。非戦闘員の恋人のもとへ駆け出す者さえいた。ベテランの乗組員だけが、戦う姿勢を貫いている。
『要求を変えよう。艦長、その船のコアを、私に譲ってはくれないか。そうすれば貴艦に手出しはしない』
 コアとは、エンジンに使われているコアブロックのことだろう。それがあれば、中破した程度で放棄された船を動かすことができる。
 だがそれは、スターダストの死を意味する。エンジンを完全停止などすれば、それこそ残党のよい的だ。
 要求に対し、艦長は無言を答えとした。
 スターダストを守るように並び立つ猟兵は、二人の通信を黙って聞いた。
『そうか。答えが変わらないのならば、私の取る手も変わらない。これより貴艦を撃沈する』
 ブースターを噴かしたブラウエルフォーゲルが、青い軌跡を残して消えた。あまりの速さに、レーダーすらも見失う。
 途端に、ブリッジが騒がしくなった。通信兵と索敵兵が声を荒げている。若い女性の泣く声も聞こえた。
 絶望に支配されかけている通信から、艦長の重い声が、猟兵のもとに届いた。
『今日まで生き残ったのだ……諦めてなるものか。猟兵諸君、我々も最大限援護する。奴を――アオを、倒してくれ』
 猟兵たちは、武器を構えた。それが返答だ。
『……ありがとう。感謝する。全砲門開け! 総員戦闘用意!』
 決意をもって開かれる、スターダストの全砲門。守りを考えれば負けるのは、恐らく猟兵も同じだろう。
 戦う姿勢を整えた戦士たちのもとに、不気味な程に冷静な声音が聞こえてきた。
『見せてもらおうか。帝国を倒した猟兵たちの、実力とやらを』
 蒼い稲妻が、宇宙を走る。
エーカ・ライスフェルト
「この気配、単機で戦況を左右するエースね。まずい、悪党退治に耽って緩んでいるというのに」
「あそこまで速いと1対1を強要されてしまう。望むところよ」

【エレクトロレギオン】で呼び出せる限界まで【機械兵器】を召喚し、艦の対空砲(なければ主砲)を護衛させるわ
私は、対空砲の死角(かそれに近い場所)を担当して護衛する

「今は消耗を強いるしか……このプレッシャーはっ、死角に回り込まれたっ!?」
「舐めるなぁっ」(歯を食いしばって【宇宙バイク】のアクセルを踏み、被弾しながら【機械兵器】と合流する

今回の攻撃手段は【属性攻撃】で雷を仕込んだ【機械兵器】よ。破壊されたとき周囲に広がるようにして、少しでもアオを消耗させる


露木・鬼燈
伝説のエースとはね。
出し惜しみできる相手じゃないっぽい。
竜が相手でもなければ成長のために使いたくはない。
だけど護衛対象がいるなら話は別です。
魔剣を限定開放、戦乙女の影を解き放つ!
彼我の戦力差を埋めるためにルーン魔術による援護を要請。
更に瞬身焔舞を発動し、生命力を注いで呪炎を強化。
攻撃ではなくブースターに回すですよ。
射撃戦は分が悪い、近接戦闘で戦うしかないっぽい。
ルーンによる補助と生命を注いだ呪炎。
これなら近接戦闘に持ち込む機動力は得られるっぽい。
闘志を、命を燃やして果敢に攻めるです。
足りない部分は戦乙女が埋めてくれる。
守りは考えず攻めに全振りするっぽい!
変形機構を駆使して絶えず攻撃するっぽい!


エミリィ・ジゼル
青いロボ…キャラがかぶってる…潰さないと!(使命感)

まずは《暴れまわるメイドロボの術》を使ってかじできないロボに変身。
『一斉発射』『範囲攻撃』の各技能を使ってマルチミサイルを一斉に発射します。
そしてこれはただのブラフです。

おそらく相手は感応能力とやらで回避しようとすると思います。
ので、回避されるまえにミサイルをすべて自爆させます。

そして爆風で視界を覆った直後に《時を止めるメイドの術》を起動。
時間を止めて、相手の背後に回りこみ、
そして『零距離射撃』『暗殺』『だまし討ち』の各技能をもって
超至近距離から密着ロケットパンチをぶっ放しましょう。

「胸囲的な感応能力になんて絶対に負けない! 死ねー!」


トリテレイア・ゼロナイン
蒼い稲妻…あの騎士と再び相見えることになろうとは!
相も変わらず凄まじい機動性です。
前回の戦いで使ったUC・巨大ロボ・ブローディアは大破、修復中。
ですが引き下がるわけには…!

機械馬に●騎乗、スターダスト各銃座と連携を密に取りながら、艦が迎撃し損ねたアオの攻撃から●盾受け●武器受け●格納銃での●スナイパーでの迎撃を用いて●かばいます

足となる機械馬へのダメージは避けますがその分が私に……!

●防具改造で付けたスモーク発生器で●目潰ししつつ、大ダメージで戦線離脱したと思わせ、UC発動
自身を●ハッキングし、ドッキング時のエネルギー配分を推進力に回し突撃、●怪力で振るう槍の一撃で●だまし討ち

この一撃が勝負!


エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

SPD選択

蒼い稲妻か…。また面倒なのが潜んでたな。
でもクルーたちの前で情けないところは見せられない、か。
んじゃ、死なない程度に頑張りますか。

でもさっきの戦いでこっちの実力は見切られてるだろうなぁ。
ならまだ見せてない2枚目の切り札を出すしかないね。

ってことで、しばらくはUC静止世界で敵との高速機動戦闘を行う。
多分追い詰めるどころか逆に翻弄されるだろうけど、あくまで油断させるため。
で、いよいよ止めってタイミングでUC限定解除を(できれば静止世界と併用して)発動。
相手が対応してくるまでの間に、こっちの全火力を叩き込むよ。

ここまでやったからには、四肢の一本くらいは意地でも持ってくぞ。


アルト・カントリック
「くっ……速すぎる……」

果たして僕の宇宙バイクでもついて行けるかどうか、かなり怪しい。狙いと考えが読まれる可能性が高いけど、やってみようじゃないか。

ユーベルコード【消えた土曜日】でメリュジーヌを召喚するよ。人……いや、精霊使いが荒くてごめんね。単刀直入に言うと“レーダーに映る”なら、虫のように宇宙の河をちょこまかと。“レーダーに映らない”なら、内部に入れなくても悪戯してきて欲しいなー。ダメ?追いつかない?

ドリルランスとか薙刀とか武器を貸すから……ダメ?色々、隙間とか可動部が気になるね。え、くどい?

……メリュジーヌの悪戯を成功させる為に、僕は宇宙バイクで回避に専念して臆病者を演じ切って見せるよ。


ニィ・ハンブルビー
くっ…なんて威圧感!
正直今すぐぶん殴りたいけど、ただ突っ込んでも軽く殺されちゃいそう…!
絆と誓いの魔法も見切られてるだろうし…

しょうがない!
ここは鬼燈を見習って、ちゃんと頭を使って戦おう!
どんなに速くて立ち回りが上手くても、
獲物を攻撃する一瞬は隙を見せるはず!
その瞬間を狙って、渾身の一撃を叩き込むよ!
てことで【目立たない】よう『闇の精霊の贈り物』を着用!
闇の中に身を潜めて隙を窺おう!

そんでもって!
アオが全力の攻撃を放つ瞬間に【報いと贖いの魔法】!
敵のユーベルコードを呑み込んで!
そのままアオにノシつけてお返しだ!
さあ闇の精霊!
宇宙と言う名の闇の中において、
一番恐ろしい精霊の力を見せつけてやろう!


パル・オールドシェル
エースパイロットが相手であろうと、守るべきヒトをやらせはしません!
敵が強力なエースであろうと、背に護りたいヒトがいれば、僕は。

ヒューマンカウルシステムを停止、"真の姿"たる衛星軌道迎撃システム"ヒューマン・ブライド"を起動。
δ-61α、私はこれより銀河帝国軍人型機動兵器を迎撃します。
麾下無人艦隊を召喚。全艦載機を放出し物量作戦を展開。
同時に戦艦に匹敵する私の質量と火力投射にて敵機を追い込み、猟兵戦友各位の援護を実行します。

私は祈ります。星無き宇宙に再びヒトの命の光が満ちますよう。
機械仕掛けの守り手として、帝国の残滓に安らかな眠りを。
そして愛しいヒトたちに、怯えることなき明日が来ますように。


ネヴィス・マキヤーベイ
色々大歓迎

さてこれで水入らず
一曲踊りましょうかロメオ

リミッターを解除し放熱のため各部装甲が解放される

UC使用スナイパー第六感併用
「このエース」とは過去2度交戦している
どれもが同一人物でどれもが別人
しかし操縦の癖はもう二度も見た
巴戦で同じ土俵に立つのは少し遠い
なら

少し「アンタ」が見えた!

狙撃用に圧縮された粒子が闇を貫く
当たっても当たらずとも限界まで撃ち続ける

操縦空中戦でミドル・イン戦闘
第六感を常に開いて感じ取ろうと
限定解除された機体はいつもよりいい子で
いつもより着いていけるのかも知れない

何処にも熱はないのに欲だけは突っ張って!
殺したい奪いたい戦いたい
昔の繰り返ししかできないアンタにはやらせない!




 スターダストを守るように布陣する猟兵たち。その視線の先には、青い残光を引っ提げて迫るブラウエルフォーゲルがいた。
『敵機接近! 凄まじい速度です!』
『慌てるな! 対空防御! 副砲全門開け!』
 防御姿勢を取る艦を背後に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は迅雷の如き敵機に戦慄していた。
「蒼い稲妻……あの騎士と、再び相見えることになろうとは!」
「この気配、単機で戦況を左右するエースね。まずい、悪党退治に耽って緩んでいるというのに」
 この状況下でも軽口を叩くだけの余裕を見せるエーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は、敵がまだこちらの出方を窺っていることに気づいた。
「護りを固めるなら今のうちね。来なさい、エレクトロレギオン!」
 手を合わせ、直後にスターダストを囲むように、小型の機械兵器が出現する。その数、百三十。艦の対空砲や主砲を守るように位置取り、機銃やミサイルで迎撃を開始する。
 無数の射撃や砲撃を見事な機動で掻い潜り、ついにアオが接近する。一機で何隻もの戦闘艦を落とした敵だ。たかが軽巡洋艦一隻の対空防御では、とても抑えられない。
 見る間に近づく青い機体を見ながら、エーカが言った。
「敵は艦砲を潰しにくるでしょうから、護衛は私が」
「了解しました。なんとか抑えてみましょう」
 トリテレイアが頷く。巨大なロボットであるブローディアが使えればよかったが、それは先の戦いで大破していた。
 ないものは仕方がない。騎士たるもの、ここで退くわけにはいかない。
「トリテレイア、前進します。各砲撃手は、援護願います」
『了解!』
 艦からの応答を受けて、トリテレイアが前に出る。アオはすぐにこちらに気づき、ビームライフルを向けてきた。
 無慈悲な程正確な狙いだが、盾を貫通する威力はない。防ぎながら機械馬にドッキングして、アオに接敵する。
 ブラウエルフォーゲルが脚部ミサイルを放った。狙いはスターダストだ。エーカの機械兵器によって大多数が撃ち落とされ、撃ち漏らしはトリテレイアが割り込んで防ぐ。
 爆炎が去った直後、トリテレイアのすぐ真下を青い物体が通り過ぎた。
「ッ!?」
「遅いな」
 通常回線から聞こえたアオの声は、淡々としていた。冷たくほくそ笑んでいることが伝わってくる。
 振り返った時には、もう艦の眼前まで来ていた。砲台を守る小型兵器を機械鎧用の大型フォースセイバーで切り払う。
「あっけないものだな。しかし、世は無常なのだ」
 ビームライフルが、主砲の砲塔を狙う。しかし、放たれるより速く、漆黒の金属によって機体の腕が弾き飛ばされた。上方からの攻撃だ。
「同意っぽい」
 射撃を妨害した黒い連結剣を大剣に変形させ、露木・鬼燈(竜喰・f01316)がアオに迫る。
 振り下ろされた魔剣を浅葱色のフォースセイバーで受け止められ、即座に機械鎧が後退した。
 剣を構えなおし、鬼燈は息を吐き出す。
「伝説のエースとはね」
 呟いて、魔剣に込められた力を限定解放する。黒い刃から浮かび上がるは、戦乙女の影だ。
 鬼燈は宇宙にあってなお濃い闇色の戦乙女に、力を請うた。ルーン魔術による加護を受け、鬼燈の生命力が高まる。
 その命を、燃やす。赤黒い呪炎が鬼燈を包み込む。
「出し惜しみできる相手じゃないっぽい。いくですよ……!」
 体を包む熱波をそのままに、鬼燈は急加速した。余裕を見せていたアオが迎撃に移る。
 その機動力はわずかに及ばないものの、宇宙に名を知られたエースに食らいついて離さない。赤と青がぶつかる軌跡が、宇宙を走り抜ける。
 愛機への補給を急いでいたエルト・ドーントレス(灰色猟兵・f14009)が、鬼燈とアオの戦いにトリテレイアが飛び込んでいくのを見ながら呟いた。
「蒼い稲妻かぁ……。また面倒なのが潜んでたな」
「戦ったこと、ある?」
 隣で補給を受けているJ-SAA-601「ゼファー」の中から、ネヴィス・マキヤーベイ(刃金の箒星・f12565)が似たように宇宙を見上げて言った。
「いやぁ、ないけどさ。まぁこの宇宙に住んでたら、知らないわけないよね」
「確かに」
 水分を補給していたカップをそこらに放って、ネヴィスは愛機の装備を確認した。オールグリーン。いつでも行ける。
「でも、勝てるよ。私たちは何度も勝ってきたんだから」
「クルーたちの前で情けないところは見せられない、か」
 こちらも発進準備は完了している。エルトはPSX-03R「レッキス」のコンソールを叩いて、起動承認をした。
 補給をしてくれていたスターダストのクルーが離れるのを確認し、二機は同時に艦から離脱する。
「んじゃ、死なない程度に頑張りますかぁ。エルト・ドーントレス、レッキス、出るよ」
「絶対捉えてみせるわ。ネヴィス・マキヤーベイ、ゼファーいきます!」
 艦の下部から飛び立ち、艦と機械兵器の援護を背中に感じながら、敵を目指す。
 急激に接近する二機の機影に反応し、アオが鬼燈とトリテレイアから距離を取った。トリテレイアの機銃をビームシールドで防ぎ、エルトが放ったビームライフルを躱す。
「まだ来るか。……むっ」
 アオがビームシールドを真下に向ける。飛び込んできた細いビームが、衝突してはじけ飛ぶ。
 狙撃だ。あえて距離を取ったネヴィスの機体が、精密狙撃携帯の荷電粒子砲を構えている。
「防がれた……でも。だんだん解ってきたわ」
 次弾を装填、さらに射出。素早い連続した狙撃は、アオの動きを予測するように放たれる。
 狙撃を避ける一瞬の隙を逃さず、トリテレイアと鬼燈が接近戦を仕掛ける。その死角を取るように動いたエルトがビームライフルを撃つ。
 機械馬の上から繰り出される槍を蹴りでいなし、魔剣の横薙ぎをフォースセイバーで受け止め、空いた左手でライフルを撃ち、エルトのビームを相殺する。
 一瞬の早業だが、それだけで恐ろしいほどの技量が伝わる。これがエース。三人は驚愕した。
「相も変わらず、凄まじい機動性ですね」
「これは予想以上っぽい」
「モヒカンとの戦いで、俺たちの実力は見切られてるだろうしなぁ」
 口々に言って、一斉にアオから距離を取る。そこに、ネヴィスの狙撃が飛び込んだ。
 先ほどよりも火力が上がった一撃を、輝くフォースセイバーが斬り払う。スコープ越しにその光景を見て、ネヴィスは苦笑した。
「そうそう、こんな感じよね」
 前に交戦した時と、その強さは変わらない。倒したアオとは別の存在かもしれないが、同一人物でもある。それがオブリビオンだ。
 しかし、操縦の癖はもう二度も見た。見えてきたのだ。
「少しだけど、『アンタ』が見えた!」
 ネヴィスは引き金を引き続ける。何度防がれ避けられようとも、その目が徐々に蒼い稲妻を捉えてきているのだ。
 砲撃と機銃の援護に狙撃が加わり、鬼燈とトリテレイア、エルトの接近戦は苛烈を極めていく。
 鬼燈が魔剣を戦槌に変えて振りかぶり、アオが反応した瞬間をエルトのビームライフルが狙う。
 やはりフォースセイバーで掻き消され、即座にエルトへと牽制のライフルが放たれる。群青のビームは難なく避けることができたが、敵にも当てるつもりがないことが伺えた。
 ブラウエルフォーゲルの腕部グレネードを盾で受け止め、爆炎の中でトリテレイアは考える。このままではジリ貧だ。手を打たねばならない。
 その時だった。彼方の宇宙から飛来する、無数の光が見えた。その先頭に立つ、眩い光の翼を背負う巨大な人影が、宙域全体に通信を発する。
『遍く星々に光あれ。私達は其を注ぐもの、今は亡き惑星を護る機構。愛しき故郷の記憶の欠片。δ-61、軌道上に唄いましょう』
 その声は、パル・オールドシェル(古き戦友・f10995)のものだった。かつて輝ける惑星の最期を見送った悲しみを背負い、彼女は今、そこにある。
『ヒューマンブライド・δ-61α。スターダストへ、私はこれより、銀河帝国軍製人型起動兵器を迎撃します』
『……了解。その、艦隊は』
 パルに従うように現れた二十三隻の戦艦は、レーダーを見るすべての者が認識している。
『我が方の無人艦隊です。大丈夫、貴方たちは、私が守ります』
 例え敵が強大であっても、そこに護りたいヒトがいれば――。
 パルの覚悟は、一層増した翼の輝きが表していた。
 揺らめく光の翼に応えて、引き連れる無人戦艦から、アオに向けての一斉砲撃が開始される。
「えぇぃッ!」
 ビームシールドを展開しながら、アオが砲撃を回避する。エルトとトリテレイア、鬼燈も、一旦後退した。
 スターダストと機械兵器、そしてパルの艦隊による十字砲火に合いながらもアオは稲光のような機動でそれらを回避している。当たる気配がない。
「嘘だろ……速すぎる……!」
 宇宙バイクを繰りながら仕掛けるタイミングを窺っていたアルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)が、息を呑む。
 青い機体が、こちらを向いた。
「気づかれたか! メリュジーヌ!」
 仲間にしか見えない半人半蛇の精霊が、バイクの横に現れる。砲撃を潜り抜けて迫るアオに、驚いた様子を見せた。
「あら、速いわね」
「メリュジーヌ、君、レーダーに映る?」
「え、れーだー? ……さぁ、よく分からないけれど、人の知覚で作ったものなら、映らないわね」
「よしきた!」
 アルトは手短に作戦を説明した。メリュジーヌはイマイチ乗り気ではなかったが、それでも頷いてくれた。
「ホント、精霊使いが荒い子ねぇ」
「ごめん。頼りにしてる!」
 メリュジーヌが消える。アルトはバイクを全速力で走らせた。スターダストの方向へ。
 後を追うアオが、通常回線で冷たく笑う。
「逃げるか。君は猟兵にしては臆病のようだ」
「……そうかもね」
 確かに、勇なる者の打つ手ではないかもしれない。しかしそれでも、勝つためには必要なのだ。
 スターダストとエーカの機械兵器、パルの艦隊による援護射撃に飛び込んで、その隙間を縫うように駆け抜ける。
 少しは躊躇ってくれるかと思ったが、アオは後ろにしっかりついて、ビームライフルを撃ってきた。
「くそっ……!」
「味方の艦砲を頼るか。悪くはない。だが、私相手に通じるとなぜ思う?」
「早く、お願い!」
 叫んだアルトの祈りを踏みにじるように、アオが無慈悲に加速した。しかし、直後にスラスターの光が弱まる。
 ブラウエルフォーゲルの機動性が、突然低下した。アオの手元のコンソールが、赤く光る。
「エラーだと? これは……」
 画面に映し出された、「YOU ARE FOOL」の文字。機動力はさらに弱まっていく。
「ウイルスか!? ええい、厄介な真似を!」
 即座にコンソールを叩いて修正するも、それは精霊の不可視な力が働いた結果である。機械的な故障とは違う。
 宇宙バイクを反転させたアルトの横で、再び現れたメリュジーヌが微笑む。
「どうかしら?」
「最高の悪戯だよ!」
 思わず笑ってしまうほどに、予想以上の結果を得られた。しかし、一瞬の油断をついて放たれたビームライフルが、アルトのバイクをかすめる。
 慌てて発進させて、距離を取る。見れば、アオの機体は再び機動性を取り戻しつつあった。
 一度船へと撤退しつつ、アルトは機械鎧を振り返った。
「あいつ、なんで動けるんだ……?」
『フォースと呼ばれる感応力よ。機体に施されている機構によって、精神エネルギーで操作を制御できると聞いたことがあるわ』
 専用回線で答えたのは、今も機械兵器を統率するエーカだ。彼女も宇宙バイクに跨ってはいるが、艦の守りに徹してくれているため、動けない。戦況を一番客観視できる立場にもある。
「精神エネルギー……メリュジーヌの影響を緩和してるのか」
『そういうことね。長くは持たないけど、今がチャンスよ』
 対空砲の火線が、動きの鈍ったブラウエルフォーゲルに集中する。が、わずかな動作でそのすべてを避けられてしまう。 
 だが、機体の不調は間違いなくあるのだ。このタイミングで仕掛けないなどということはあり得ない。トリテレイアが機械白馬ロシナンテⅡに乗って、迫る。
「この機は逃せません! 蒼い稲妻、覚悟ッ!」
 アオが動き出すより速く、大槍を振り上げ、突き出す。しかし、まるで人の体のように俊敏な動きで、その先端を掴まれた。
「ッ……!」
 一瞬の空白。まるで悪魔に睨まれたかのように、トリテレイアは動けない。その様子を眼前で見ながら、アオは淡々と言った。
「確かに好機だった。あと数秒早ければ、危なかったと認めよう。しかし、先にも言ったが――」
 槍を離し、一度体勢を整えるべきだった。それが、遅れた。
 アオのビームライフルが、トリテレイアの胸部に突きつけられる。
「君は、遅すぎる」
 撃たれた蒼い閃光が、爆発する。機械馬から転落し、トリテレイアは爆炎と煙に包まれた。
 白煙の中で、ブラウエルフォーゲルの青いアイカメラが輝く。
「この程度とはな。手応えがない」
「……ロシナンテⅡ、ドッキングモード」
 通信を介さない声は、アオには届かない。トリテレイアは白煙に紛れて全鎧をパージ、ダメージを受けた部位も即座に切り離し、機械馬と合体した。
 文字通りの人馬一体、己をハッキングして全エネルギーを推進力に回し、槍を握る手に力を籠める。
「なんだと、チィッ!」
 異変に気付いたアオが白煙から飛び出す。
 まだ完全に速度の戻っていない機体へ、一機の巨大機械騎士となったトリテレイアが、槍を振り上げる。
「もらいますッ!」
 力任せに振り抜いた槍は、胴体をかすめた。捉えるには至らない。しかし、それでも体勢を無理矢理に変え、力任せに大槍を振り回す。
「ハァッ!」
 大質量の槍が、ブラウエルフォーゲルの右脚部、その膝から下を根こそぎ破壊する。小規模の爆発が起こり、二人は一度距離を取る。
「まだッ!」
「終わりです!」
 さらに接近、槍を振るおうとした直後、トリテレイアは機械鎧に蹴り飛ばされた。
「まだだと言った!」
 二射のビームライフルが、機械馬と彼の体を貫く。火薬などへの被弾は避けたが、体が動かない。青い機械鎧が、こちらを見降ろしている。
「くっ……」
 レッドアラートが点滅する。戦闘の継続は不可能と、機械としてのトリテレイアが宣告していた。
「及びませんでしたか」
 悔し気な声は、独白だった。しかし、通信を切り忘れていたらしい。止めを刺すべくビームライフルの銃口をこちらに向け、アオが言った。
「よく戦った、と言っておこう。君のような男は、嫌いではない」
「……」
 銃口が、碧色に輝く。
 その時だった。パルの艦隊から無数の援護砲撃が降り注ぎ、アオは後退を余儀なくされた。
 トリテレイアとアオの間に割って入り、小さな妖精がパルへと手を振る姿が見えた。
「パルありがとー! トリテレイア、今助けるぞぉー!」
 ニィ・ハンブルビー(怪力フェアリー・f04621)だ。真正面から殴りかかり、トリテレイアの撤退を援護する。
 小さな拳が空を切る。ブラウエルフォーゲルはニィに比べて遥かに大きいというのに、その速さは、彼女の羽ではとても追いつけそうになかった。
「速いっ……!」
「その身で私に挑んだことは評価しよう。だが、その拳は私には届かんよ」
「なんだとー!」
 まるでニィをあざ笑うかのようにビームを乱射して威嚇し、アオはスターダストへと転身した。
 追いかけようにも、近くで仲間が倒れているのだ。ニィはすぐにトリテレイアへと近づいた。
「トリテレイア! 大丈夫?」
 フェアリーの背丈からすれば山のように巨大な機械の体を掴み、割と余裕を持って引っ張る。
 ブレインが生きていることに感謝しつつ、トリテレイアは運ばれながらため息をついた。
「すみません、ニィ様。無様な姿を」
「何言ってんの! かっこよかったよ。やっぱり騎士ってすごいね!」
「……そうですか」
 零すように答えて、トリテレイアは宇宙を見上げた。例え卑怯と罵られるような戦い方であっても、ニィは騎士と言ってくれる。それが嬉しくないわけがなかった。
 スターダストの方向へ鋼鉄の騎士を引っ張りながら、砲撃と射撃の援護を掻い潜るアオを見て、ニィが眉を寄せた。
「それにしても、すごい威圧感! ただ突っ込んでも軽く殺されちゃいそう……!」
『そうね。おすすめしないわ』
 通信越しにエーカが言った。彼女はただ事実だけを告げているような口ぶりだった。
『あそこまで速いと、並の機動性では一対一を強要されてしまう。あなたじゃ不利ね』
「むー、改めて言われると悔しいなぁ……。トリテレイアは一人でがんばったのにさ」
『それも作戦のうちよ。まずは消耗をさせるの。敵の機体も精神もね』
「頭を使って戦うってやつかぁ。んー、ここは鬼燈を見習って、ボクも頭脳戦でいこう!」
 何やら元気に頷いて、ニィはトリテレイアを引きずりながら、あれこれうんうんと考え始めた。
 最初は何を考えても敵を殴るところしか想像できなかったが、自分の手札を指折り数えるうちに、あることに気が付く。
 ここは宇宙だ。周りは真っ暗。闇に紛れて、敵に気取られずにいられれば――。
「どんな獣も、獲物を攻撃する一瞬は隙を見せるはず!」
「確かに、アオに攻撃を当てるにはその瞬間がベストでしょうね」
 トリテレイアも同意した。むしろ、それ以外にこちらが付け入る隙を見せないのだ。
「あいつが全力の攻撃を仕掛けたときが、ボクのチャンスだね! よし、それまでは我慢我慢……!」



 軌道防衛艦隊の援護し射撃を踊るように回避しながら、アオがスターダストに急接近する。
 突然本丸を狙ってきた。敵機の稼働時間にも限界があり、それが近づいているのかもしれない。エーカは宇宙バイクの上でライダーグローブをはめなおし、そんなことを考えた。
『敵接近! 来る……アオが、来ます!」
「対空防御を厳に。ここが正念場ね、私も出るわ。レギオン、四十から七十は定点へ」
 三十機の小型兵器が動いたのを横目に、エーカはバイクを走らせる。
 あまりに長期戦となれば、あちらが不利になる。その焦りに漬け込みたいが、引き延ばしすぎればスターダストが危うい。
 結果的に、味方の包囲網を突破されてしまった。しかし、まだ打つ手はある。機械兵器は、すでに迎撃用の布陣を敷いている。
 アオは恐らく、小型機械兵器如きに、ライフルの残弾は割かない。飛び込んできた時が勝負時だ。
 そのはずだった。サファイアに煌めくビームがエーカの横をすり抜けて、配置した機械兵器を破壊するまでは、そう思っていた。
「なっ……!」
 爆発した機械兵器から、スパークが飛び散る。敵機の動きを奪うために仕込んだ、雷の属性魔法だ。
 読まれていたのか。接近するブラウエルフォーゲルの奥で、アオがこちらを見据えているのが分かる。
「この……プレッシャーは……!」
 心臓を鷲掴みにされたようだ。電脳魔術師としての感応能力が、アオのフォースと強く共鳴してしまった。
 額に汗が浮かぶ。硬直したままバイクを走らせるエーカの前で、アオが機体を左に転進した。
 その方向は、スターダストの、真下だ。 
「死角に回り込まれたっ!? くっ……」
 ブリッジから、悲鳴にも近い通信が飛び込む。直後、覇気の籠った声が耳に響いた。
「エーカさん! 走るです!」
 全身から赤黒い呪炎を噴き出す、鬼燈だ。ロボットの機動戦にも追い付く速度でアオを追うが、間に合わない。
 直進ならば、エーカのバイクが遥かに速い。歯噛みして、エーカはアクセルを全力で踏み込んだ。
「舐めるなぁッ!」
 急加速に体が悲鳴を上げるが、一切を無視する。艦を防衛していた機械兵器のすべてをスターダストの下に移動させ、自身もそこへ、飛び込む。
 鬼燈の横を通り抜け、さらに直進、アオの背後に辿り着いた。機械兵器が射撃で迎え撃つのを悠々と回避し、罠を仕込んだ機械兵器には目も向けず、ビームライフルを艦の底に向ける。
「終わりだ。さようなら、スターダスト」
「させないッ!」
 エーカは掌を突き出し、雷の魔法を放出した。そのすべては、機械兵器に向けられている。
 雷撃を受けた機械兵器は、次々と爆発し、スパークを飛び散らせた。スターダストの船底が雷の光に照らされる。
「チィィッ!」
 強烈な電撃を受け、青い機体の節々から煙が上がる。攻撃を中断せざるを得なくなったアオは、その場から離脱した。
 敵を追うためにスパークのど真ん中に飛び込んだエーカも、ただでは済まない。自身の魔術を全身に受け、その激痛に顔をしかめた。
「アオはっ……?」
「スパーク帯を出たっぽい。速度は落ちてるから、僕たちが追うです!」
 すでに、暗い炎を推進力とした鬼燈が、アオを追いかける。
 何とか窮地は逃れたが、エーカの宇宙バイクも、ボロボロになってしまった。アクセルを踏んでも、うんともすんとも言わない。
 だが、確実に敵を消耗させたことを思えば、上出来かもしれない。
 アオと戦う鬼燈に、他のエルトとネヴィスも参戦するのが見えた。パルの艦隊とスターダストからの援護射撃も相まって、戦いは決して不利ではない。
 宇宙を漂ってそれを眺めていると、アルトが駆け付けてくれた。
「エーカ、大丈夫?」
「えぇ。彼らならきっと」
「……僕は、エーカのことを心配してるんだけどな」
 苦笑されてしまったが、エーカは肩をすくめて答えとし、アルトバイクと自身の愛機をワイヤーでつないだ。
 戦いは終わっていない。まだやるべきことはある。状況を把握し伝える務めならば、できる。
「アルトさん、あなた、艦の防衛できる?」
「それなら、やってみたいことがあるんだ。任せてよ」
 そう言って振り返ったアルトは、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。



 宇宙空間に木霊する――としか表現できないような声音で、パルの優しい声が、小川のせせらぎのように流れる。
『私は祈ります。星無き宇宙に再びヒトの命の光が満ちますよう』
 鬼燈とエルト、ネヴィスに再び攻撃を仕掛けられていたアオのもとに、通常回線から声が響く。それは猟兵たちにも、スターダストにも届いていた。
 不思議な声だった。戦いの佳境にありながら、心が穏やかに、癒されていくようだ。それは、惑星の花嫁たる彼女の、なにがしかの感応だったのかもしれない。
 艦隊を従え砲撃を続けていたパルが、両手を広げた。同時に、艦隊から人型自立兵器が飛び立つ。ブラウエルフォーゲルと同程度の大きさの、無人機だ。
 無数の艦載機を捉えたレーダーが、喧しく鳴り響く。アオは三人の猟兵を迎撃しながら、舌打ちした。
「チィッ!」
『私は祈ります。機械仕掛けの守り手として、帝国の残滓に安らかな眠りを』
「安らかな眠りだと? ええい、戯れるなッ!」
 猟兵たちに比べれば遥かに遅い艦載機が、ビームマシンガンを乱射する。
「数があっても、所詮無人機。私は落とせん!」
 光のマシンガンをビームシールドで消滅させ、アオは射撃に転じた。碧色のビームに穿たれ、無人機は次々と撃ち落とされていく。
 ほんのわずかな攻撃の隙を、鬼燈が捉えた。
「取ったッ!」
 鬼燈の魔剣が、袈裟斬りに振り下ろされる。戦乙女からもたらされるルーンの援護が、鬼燈とアオの差を埋めていく。
 振り返りざまにビームシールドで受け止められたが、重い一撃に青い機体が傾ぐ。その背後でネヴィスが銃を構えた。スナイパーライフル形態の荷電粒子砲が、火を噴く。
「当たって!」
「どうということはない!」
 力任せに鬼燈を押しのけ、フォースセイバーで粒子砲を斬り払い、ビームライフルをエルトに向けた。
 ライフルを構えるその腕を、パワードスーツが掴む。仕掛けるなら今だ。エルトはレッキスのコンソールを素早く叩く。
「リミッター解放、出力最大、臨海稼働を開始……」
 エンジンが過熱する。レッキスの加速とエルトの高速思考が相まって、その動きが極端なほど加速する。
「見える……」
 エルトがとうとう、蒼い稲妻を捉えた。鮮烈な蒼の稲光を、徹底的に追う。
「ええい、新たなる人類の可能性とでもいうのか!」
「私も追い付いてみせる……!」
 ネヴィスも安全装置を外すコマンドを入力した。本来なら赤く危険信号が出るはずのコックピットは、静かだった。機体が彼女の感応能力に応えているのだ。
「いい子ね、ゼファー。……さぁ、一曲踊ってくださるかしら、ロメオ?」
「いいだろう。私についてこれたらだがな」
 アオから迸るプレッシャーに、三人が吹き飛ばされる。一番に体勢を整えた鬼燈が、乾いた唇を舐めた。
「そういうことなら、僕もやるです」
 全身を包む赤黒い炎がさらに勢いを増し、魔剣にまで伝わり、その目が赤く充血していく。
 体から大切なものが吸われていく感覚。それこそが、鬼燈が力のために差し出す対価だ。
 命をくべて闘志を燃やす。それが彼の戦いだった。
「さぁ、いくですよ!」
 超高速となった三人に、一転、アオが防戦に入る。パルが操る艦載機も加わって、スターダスト艦から見える光景は、もはや帝国軍との決戦に匹敵する激戦となっていた。
「チィッ! 猟兵の戦闘力は化け物かッ!?」
「気に入らないのよ!」
 もはや戦う理由もないのに、未だに弱者をいたぶることに固執する、アオのやり方が。
 知らず、ネヴィスは通常回線で叫んでいた。
「どこにも熱はないのに、欲だけは突っ張って……! 殺したい、奪いたい戦いたい、昔の繰り返ししかできないアンタに、スターダストはやらせない!」
「欲ではない。これは生存本能だ。生きるためには奪わねばならない」
 粒子砲を余裕で回避し、ビームライフルを放つアオ。その射線から退避しながら、ネヴィスは額の汗をそのままに、呟いた。
「本能……?」
「私には帰る場所がない。君たちが殺したバイク乗りもそうだ。君たちが奪った。我らが暴徒と化した責任は、猟兵にあると言っていい」
「耳ぃ貸すなよ、ネヴィス」
 瞬時に下を取ったエルトが、ライフルを突きつける。その瞬間に、アオも消えた。
 後ろだ。浅葱色のフォースセイバーを振りかぶった機械鎧へ、鬼燈の戦槌が叩きつけられる。
「なにっ!?」
「だんだん見えてきたっぽい!」
「冗談ではないッ!」
 振り返りざまにライフルで鬼燈の顔面を殴りとばし、一度退避、その最中に艦載機を片っ端から撃ち落とす。
 無残に破壊されていく艦載機の奥に、アオはパルを見た。まるで星を見守る女神が如く、優しく戦いを見守っていた。
『私は祈ります。愛しいヒトたちに、怯えることなき明日が来ますように』
 歌うようなその声に、思わず動きを止める。地母神の如きその姿に、見入っていた。
「これは……プレッシャー、いや……フォースの共振とでもいうのか。恐怖は感じない。むしろ、安心を感じるとは」
「止まった! これでっ!」
 パルを見上げた姿勢のアオに、ネヴィスが荷電粒子砲を放つ。直後、ブラウエルフォーゲルが、こちらを見ずに動いた。
「避けられた、あのタイミングで!?」
 正確には、荷電粒子砲は青い機体の肩をかすめていた。シールドの出力を下げられたが、損傷には、届かない。ネヴィスはそれを悔しいと思えなかった。
 その余裕がなかったのだ。一瞬でこちらに狙いを定められたビームライフルの射線から逃げることに、必死だった。
「避けられっ――ない!」
 放たれたビームが、ゼファーの左腕を直撃する。破損を知らせるアラートが響いた。
「くぅッ! エルトさん、鬼燈さん!」
「任された」
「ぽい!」
 退避するネヴィスの前で、エルトと鬼燈が同時にインファイトを仕掛けた。戦槌がフォースセイバーに、ライフルの射撃がシールドに、それぞれ防がれる。
 エルトはおもむろにライフルを捨てた。残弾はあるが、もはや見切られている。
「ここまでやったからには、四肢の一本くらいは意地でも持ってくぞ」
「いいね。乗ったです!」
 鬼燈の斬撃がアオの機体の頭部を狙う。それは彼の戦士としての本能が、敵を殺すことに傾注していることを顕していた。
 だが、身を捻って躱される。まるで生きた武人のような動きの中で、鬼燈はまたしても足の直撃を受けた。
「ぐッ……」
 何とか剣で防いだが、無理な体勢だった。鎖骨が折れたらしく、激痛に脂汗が浮かぶ。
 だが、極端な姿勢はアオも同じだった。足を振り回したことで、その脚部が隙だらけだ。
「もらうぜ」
 敵機の脚部スラスターにアンカーを打ち込み、エルトはゼロ距離にも関わらず、ビームライフルやグレネードランチャーなどの、持てるすべての火力を叩きこんだ。
 爆炎が上がる。エルトの機体も相当なダメージを受け、眼前に危険を知らせる文字が浮かんだ。
 しかし、黒い煙が去った先に鬼燈とエルトが見たのは、トリテレイアの一撃も合わさり、両足を失った蒼い稲妻の姿だった。
 あの至近弾であっても、防がれ、避けられたものが多かったのだろう。落とすには至らなかったが、それでもエルトは笑った。
「へへっ、いい恰好だぜ」
「脚部をやられたか。だが、足など飾りだ。君たちにはそれが分からないかもしれないがな」
「どうかな。足にもスラスターがあるの、僕らはしっかり見てたですよ」
「ならば、再び自分の目で確かめてみるといい」
 ブラウエルフォーゲルが、青い光となってスターダストへ飛ぶ。その速度は、確かにこれまでとそん色ない。
「やばいっぽい」
 鎖骨を抑えて鬼燈が言うが、エルトは落ち着いた様子で機体のレッドアラートを切った。
「いや。足の推進力はなくなったんだ。背部スラスターだけ噴かしてりゃ、限界はくるよ」
 ともかく、三人はこれ以上戦えない。スターダストは危機的状況と言えるかもしれないが、誰もがそれを大きな問題とは思っていなかった。
 まだ、あそこには仲間がいるのだ。猟兵たちの力は、まだ残されている。



 パルの艦隊から現れる艦載機が、スターダストを護る。アオに比べればいかにも遅いが、それでも数で押し込むビームマシンガンは、十分な脅威と言えた。
「だが、心ない兵器に私は斃せん」
 フォースセイバーで次々に薙ぎ払い、艦との距離を確実に縮めてくる。もうあと数秒で、再び銃を突きつけられてしまうだろう。
 その時、軌道防衛艦隊艦載機の残骸から、ドリルランスが飛び出した。強烈な回転を持って、青い機体を穿たんと迫る。
「罠だと!?」
 咄嗟に身を捻って回避し、ビームライフルをドリルランスへ向ける。槍は即座に反転し、またアオに迫っていた。
 まるで人に操られているかのようだ。回転する穂先をシールドで受け止め、アオは舌打ちをした。
「チィッ! サイキックか!」
 アオには見えていなかったのだ。ドリルを構えている、半人半蛇の精霊――美しきメリュジーヌの姿が。
 スターダストのすぐそばで見守るアルトは、小さく呟いた。
「ごめんね、メリュジーヌ。無理ばかりさせて」
「精霊は不死だものね。つい酷使してしまう気持ちは分かるわ」
 隣で言ったエーカは、手に持ったコンソールを叩いていた。猟兵たちの行動が、緑の光点で現れている。
 ドリルランスがビームで破壊された。メリュジーヌが消え、アルトの真横に現れる。
「だめね。時間稼ぎにもならないわ」
「いや、ありがとう。丁度、間に合ったみたいだ」
 アルトが笑った視線の先、スターダストの遥か下方から、それは現れた。
 真の姿となったパルに匹敵するほどの、巨大ロボだ。ブルーを基調としたボディ、女性の長髪を模した海色の頭部の上には、本物の布でできた巨大フリルがある。
 まるで壁のように、艦とアオの前に立ちふさがる。その異様に、猟兵もアオも、スターダストのクルーすらも絶句した。
『かじできないロボ、出撃!』
 高らかな宣言は、先程まで芋煮を啜って舌を火傷していたエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)のものだ。
 急ブレーキをかけたブラウエルフォーゲルを、遥か情報から睨みつける。無駄にエコーのかかった通常回線で、エミリィは尊大に言った。
『この宇宙に、蒼は一人でいい! そしてそれは、私だ!』
「巨大兵器か。だが、蒼い稲妻の呼び名は私がつけたものではない。あえて言うなれば、それは人々の感情の結晶――」
『うるせー! キャラが被ってるって言ってるんですよ!』
 メイドロボの胸部装甲が展開され、中に仕込まれたおびただしい数のミサイル群が、一斉発射される。
 広範囲に展開されたマルチミサイルを前に、アオはもてる感応力を全開にした。
 紙一重で回避し、ミサイルの海を渡っていく。しかし、敵が不可思議な力で回避してくるであろうことを、エミリィは読んでいた。
『胸囲的な感応能力になんて絶対に負けない!』
 巨大メイドロボが、指をパチリと鳴らす。その音については、考えてはいけない。
 その仕草を合図に、アオを包む無数のミサイルが、一斉に自爆した。凄まじい閃光と衝撃波が、宙域を覆う。
「クッ! やる!」
 視界を焼く白い光に、アオがその動きを止める。視界が戻りかけ、振り向いたその先に、巨大メイドロボが、いた。
「この一瞬で、背中を取られただと!?」
「ふふふふ」
 何やら怪しく笑うエミリィ。彼女は敵が動きを止めた一瞬をしっかりと掴み取り、積みゲーを消化するために編み出された時止めの術により、背後に回っていたのだ。
 何度も申し上げる。深く考えてはいけない。
「死ねー!」
 零距離から放たれるロケットパンチ。背部スラスターが直撃を受け、ブラウエルフォーゲルが宇宙空間をきりもみしながら吹き飛ばされる。
 体勢を整えた機体の推力が激減している。スラスターが、完全にいかれていた。
「パワーダウンだとッ!? えぇい、まだだ! まだ終わらんよ!」
 吹き飛ばされたことで、スターダストのエンジンが積まれているだろう艦尾は、アオのすぐ目の前にあった。
 エンジンにありったけの弾丸を打ち込めれば、エンジンに点火し大爆発を起こすだろう。そうなれば、猟兵もただでは済まない。
 ブラウエルフォーゲルが、その武装のすべてを展開する。警報が響くコックピットの中で。
「さらばだ、猟兵諸君!」
 全エネルギーをビームライフルに集中させる。ただの一射だ。ライフルが自壊しようとも、それで全てが決まる。
 超高濃度に圧縮されたサファイアの巨大ビームが放たれた瞬間、アオは黒い物体を認めた。あまりにも、あまりにも小さい。
 宇宙の闇に溶け込む黒いマントに包まれた、ニィがいた。青いビームに照らされた顔は、ようやくできたチャンスに、嬉々としていた。
「呑み込めーっ!」
 突き出した手の先に現れた漆黒の空間に、ビームが呑み込まれる。まるで異次元にでも繋がっているかの如く、影も形もなくなった。
「馬鹿な……!」
「まだだよ! 闇の精霊、宇宙と言う名の闇の中において、一番恐ろしい精霊の力を見せてやれッ!」
 闇の魔法が蒼く輝く。吸い込まれたはずのビームが、今度はアオに向けて、威力はそのままに放たれる。
 これぞ闇の精霊の秘術。黒き制裁、報いと贖いの魔法。人々を殺戮せんと放たれた光は、咄嗟に回避行動を取ったブラウエルフォーゲルの顔面を貫いた。
 カメラがやられたことで、コックピット内部のディスプレイは次々に消えていく。腰部にあったサブカメラは、失われた足の影響で、起動しない。
「モニターが、死ぬ!?」
「くっそー倒せなかった! エミリィ!」
 悔し気に手足をバタバタさせて、ニィが仲間の名を呼んだ。巨大メイドロボが、サムズアップでそれに応える。
 いつの間にか戻っていたロケットパンチを、再びアオへと向ける。
『伝説のエースがたかがメインカメラをやられただけで、わめくんじゃありません!』
 放たれたロケットパンチが、ブラウエルフォーゲルのコックピットを直撃する。エアーバッグに包まれ、アオはそれでも操縦桿を離さない。
 ロケットパンチを受けた衝撃で跳ね飛ばされ、腰部のサブスラスターで停止できた時には、スターダストから相当離されていた。
「……ここまでか」
 見えなくとも、アオは嫌でも感応で分かってしまった。スターダストの主砲が、こちらを捉えていることに。
 それだけではない。パルの視線がブラウエルフォーゲルに向けられている。引き連れる艦隊がの主砲や副砲も、全てこちらを狙っていた。
「再起すらもままならんとは……!」
 思わず漏れた心の声は、虚しく宇宙に吸い込まれていく。降伏を知らせる信号を送る気には、なれなかった。
 もはや抵抗はすまい。驚くほど穏やかな気持ちでいられるのは、覚悟が決まったからか、それとも。
『主砲、照準合わせ! 目標、蒼い稲妻! てぇッ!』
 スターダスト艦長の声を合図に、パルの艦隊も火を噴いた。粒子砲の嵐が、アオを襲う。
 巨大なビームが幾重にもなって、伝説のエースを撃ち貫く。小規模な爆発は、やがて巨大な火の玉となって、宇宙を染める。
 火球の輝きが去ったあと、スターダストのレーダーから、赤い光点が消える。
 そこには、ビームライフルを握ったままの青い機械鎧の腕だけが、無言で漂っていた。



「これより当艦は、修理ドックに入ります。ビーコン点灯、ドッキングベイへの進路よし……」
 通信兵の声を聞きながら、猟兵たちはブリッジから修理ドックの輝きを見ていた。
 ここに入れれば、細かな修理と共に、当面生活できるだけの物資も購入できる。新たな仕事も見つかるかもしれない。
 軽巡洋艦スターダストが、本当に新たな人生を始めるスタート地点へと、辿り着いたのだ。
「猟兵の諸君。本当に感謝する。私たちは、君たちと共に戦えたことで、真の強さを知ることができたように思う」
 スターダストのクルーは晴れ晴れとした顔をしていた。もはや、ロートルの集まりと卑下することもない。
 英雄と力を合わせて、あの蒼い稲妻を打ち破ったのだ。伝説のエースを倒した艦として、堂々と名乗ることができる。
「これからも、私たちは誇りを胸に宇宙を航海し続ける」
 信念に満ち溢れた言葉に、猟兵たちが頷く。その体を、眩い光が包み始めた。
 別れの時だ。ブリッジのクルーが全員立ち上がり、猟兵たちへと振り向いた。
 姿勢を正した艦長が、低く張りのある声で叫ぶ。
「敬礼ッ!」
 一斉に敬意を表するスターダストクルー。それを真似て返す者や、照れて頬を掻く者など、猟兵の反応は様々だった。
 敬礼の姿勢は崩さずに、艦長が微笑を浮かべた。
「またいつでも、遊びに来てくれたまえ。本艦は貴殿らを、歓迎する」
 猟兵たちがグリモアの光に運ばれていく、転送が終わるその瞬間まで、星屑を名乗る船乗りたちの敬礼は続いた。

 fin

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月28日


挿絵イラスト