ケルベロス・ウォー②〜輝いて!トキメキ・パレード
「ああ〜…」
ブカブカのバケットハットを目深に被った女性が、ストリートをトボトボと歩いていた。
足取りは重く、視線は下へ。丸めた背中は不安げであまりにも頼りない姿であったが、彼女は『究極のグラフィティ』を生み出す事を期待された、ゴッドペインターの一人であった。
「はあ〜…」
しかし彼女の今の姿は、ただ深く溜め息を吐いて歩くばかり。かけられた期待の大きさは、彼女の肩にはただ重く。逃げ出してしまいたい…でも、どこに?
本当に逃げ出すつもりであれば、アートフェス会場から抜け出す事もできるだろう。それをしないのは、期待に応えたい気持ちはもちろん、期待に応えうる能力が自分にはあるという、自負の気持ちからであった。
けれど『究極のグラフィティ』を生み出す取っ掛かりは、彼女の中には無く。
「はああ〜…」
苦悩に満ちた溜め息を吐きながら、彼女はトボトボ歩いていく。こんなんじゃ駄目だ、何か、何かきっかけがあれば…描ける、気がする…。そんな気がする…気がするだけ…。気分が晴れればもうちょっと、頑張れる…気がするのに…。
そんな当て所ない気持ちの中で、ふと思い出すのはアートフェスのひとつの催し。
「パレード、かあ〜…」
ポツリと呟いたその足はトボトボと、ストリートエリアへと向かっていった。
●
「いよいよ、戦争も後半戦ね!このまま頑張っていきましょう!」
グリモアベースに集った猟兵たちに向かって、玻瑠璃子・セーラは微笑みと声援を送る。こちらの刃は十二剣神へと届きつつあるが、この戦争に勝利する為、敵に完全なとどめを刺す為に、|決戦配備《ポジション》と猟兵たちの助力はまだまだ必要だった。
「今回は、気落ちしてしまったゴッドペインターさんに、ときめきと閃きを魅せてあげてほしいの」
永遠回廊を塗り替えようとしていた『ゴッドペインター』だが…この戦争の最中に、ひどく落ち込んでしまっているという。ゴッドペインター自身も、沈んだ気持ちを持ち直そうと奮闘しているのであろうが、どうしても気持ちが傾いてしまっていた。
「大変な時だもの。ゴッドペインターさんだって、色々あるわよね。
でも、落ち込んでいては、現実は塗り替えられないわ!」
眉を下げて同情していたセーラはしかし、両手を強く握りしめる。ゴッドペインターの気持ちはどのように察せようとも、予断を許さない状況ではそうも言っていられない。
「ゴッドペインターさんは今、アートフェスのストリートエリアに居るみたいなの。
それでこのストリートでは、パレードが行われるのですって!
とっても素敵なパレードを、皆さんでもっともっと素敵に魅せれば…!
ゴッドペインターさんの沈んだ気持ちを、きっと塗り替えることができるわ!」
セーラは満開の笑顔を見せながら、熱を込めて息を巻く。
気落ちしたゴッドペインターに必要なものは激しくキラめく、ときめきと閃きだ。元々その才能を見込まれているのだから、パッション溢れるパレードに心を刺激されれば、きっと圧倒的な「究極のグラフィティ」を生み出すことができるだろう。
微笑むセーラが指先でくるりと円を描くと、グリモアが輝き集まる水泡がアートフェス会場への道を開く。賑やかなストリートエリアには、既にパレードの見物客が集まってきているようだった。その中にはゴッドペインターも紛れている筈だ。
「とっても、とーっても素敵なパレード魅せてあげてね」
セーラの微笑みに見送られて、猟兵たちはパレードの列へ向かってゆく。
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
一章完結の戦争シナリオとなります。アートフェスに参加する、戦闘のない冒険の章です。
オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
プレイングボーナス……ゴッドペインターに新たなときめきと閃きを与える。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 冒険
『ハイパー・アート・フェス!』
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POW : 最高の情熱を込めて作品を作る
SPD : 極めつくした技術で作品を作る
WIZ : 異世界の知識や思い出を込めて作品を作る
イラスト:del
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アメリア・イアハッター
わぁ、素敵なパレード!
彼女を元気づけるのは勿論だけど、私もパレードめっちゃ楽しんじゃお!
さぁ、踊るぞー!
パレードの列のなるべく目立つところに空から降り立つ
にっこりと笑顔になって見せたら、その場に流れるパレードミュージックに合わせてレッツダンス!
色んな物を足場に空へ舞い上がり、空中パフォーマンスを披露
観客の前にも降り立ち、手を取り少しだけ一緒に踊ってみたり
しばらくしたら彼女の前にも降り立って、同じようにダンスに誘ってみよう
その帽子、素敵だね! 笑顔で被るともっと素敵だよ!
最後は目の前でUCを発動
手元から優しくカラフルに光るランタンを空に放ち、その隙に自分は退散
少しでも彼女の心に残ったら嬉しいな
栗花落・澪
【天使組】
なるほど、パレードかぁ…
それなら盛り上げ演出優先で動いてみようか
既に音楽がかかっているなら
合わせるように慧華ちゃんと即興でハモリながら歌唱を
更に指定UCで空から降り注ぐ破魔の光と花弁で
パレードを明るく、そして幻想的に彩るよ
慧華ちゃんともそういう方向性の方が合わせやすいしね
あとは慧華ちゃんの出してくれた氷属性の泡に狙いを定めて
高速詠唱で指先から水魔法を銃弾のように飛ばす連射
的確に打ち抜く事で割れた泡の細かい粒子が空気中で凍結
破魔の輝きに照らされてダイヤモンドダストのようにキラキラと煌めく演出
ちょっとはお役に立てたかな
がんばれー
(気づかれても気づかれなくても笑顔でそっと手を振って応援)
朱雀・慧華
【天使組】
演出なら任せて!
澪と一緒に即興で歌唱を合わせつつ指定UC発動
七色空絵筆で空中に自在にアートを描くよ
空飛ぶ動物に美味しそうなお菓子
ハートや星の記号だって可愛い飾りになるよね
絵の具の色は夜明けの赤!
がんばれって文字もゴッドペインターさんに飛ばしてみたり
更に翼で飛びながら宙をローラースケートで滑る事で
パレードの上空にアーチのように虹をかけながら
ステッキで氷の魔力を少しだけ混ぜた泡を量産
今は見た目ただのシャボン玉だけど触ると冷たいし
割れると同時に氷魔法の効果発動
瞬時に凍結させて粒子状の氷の粒に変化させるよ
※慧華の絵の具は初3点の全身絵背景のように
空の風景をそのまま映し出す魔法の絵の具です
リリエッタ・スノウ
んっ、ゴッドペインターの人を元気つけるためにぱれーどに参加すればいいんだね。
……むぅ、ぱれーどってなんだろう?
有名なパレードを見せてもらって用意してもらったのは巨大ナノナノの着ぐるみ。
かわいいナノナノを見たらみんなすぐに元気になっちゃうよ。
んんっ、周りの人はバク宙とかしているね。それじゃあ、リリもやっちゃうよ。
ナノナノの姿のままやたらと機敏に動いたせいでちょっと有名になっちゃうリリナノナノでした。
※アドリブ連携大歓迎
雨河・知香
まあこんな大変な時だし気が沈んでる人もいるだろうね。
あんまり芸術には造詣は深くないけども、できるなら落ち込んだ人も元気になるようなパレードを魅せたいねえ。
歌唱とアートを組み合わせてパレードを盛り上げる。
使うのはペンキ、グラフィティ・アートっぽい感じのラフな絵を巨大キャンバスとかパレードの車に描いていこう。
歌いリズムに乗ってハケを豪快に、静かに描いていても得られない刺激を魅せる事が…できる筈!
絵が仕上がったらちょっとした隠し味的にUC起動、重力の方は影響ないけど星の光は中々綺麗だろう?
この星の光に創作意欲とか式が高まったならそれをそのままぶつけてみるのもいいんじゃないかい。
※アドリブ絡み等お任せ
鮮やかに賑わうアートフェス。そのストリートエリアでは、カラフルな衣装で着飾った演者たちがフロートを牽引しパレードの行進を始めていた。
「なるほど、パレードかぁ…」
栗花落・澪は朱雀・慧華と共に、少し離れた場所からゆっくりと進んでゆくパレードを眺めながら、思案を巡らせる。色とりどりの音楽を奏で、鮮やかな踊りを披露するその姿はアートフェスの催しらしく色鮮やか。それなら、いっそう楽しく盛り上げる演出を膨らませてみたいもの。
「僕たちは盛り上げの演出優先で動いてみようか」
「演出なら任せて!」
澪が言い切らないうちに、瞳をキラキラと輝かせた彗華が言葉を返して、二人は顔を見合わせて笑顔を綻ばせる。楽しいパレードを前に意気込みはバッチリだ。二人は流れる音楽を聴き覚え、指を揺らしてリズムを合わせる。
「せーの…」
そうして息を合わせて、声を揃えて。高らかに伸びゆき広がるコーラスは彗華のソプラノと澪のアルト。即興で重ねるメロディはパレードの奏でる音楽に寄り添いながら、パレードを美しく引き立てる。
澪は歌いながら、ちらりと彗華にアイコンタクト。両手を広げてストリートエリア全体に、この世のものとは思えぬ程に美しい花と破魔の光を柔らかく降り注ぐ。
花々と輝きで幻想的に彩られるパレードのハーモニーは、煌めきながらストリートエリアを美しい天上世界へと観客を導いてゆく。──その様子を、高く上空から眺めていたのはアメリア・イアハッターだ。
「わぁ、素敵なパレード!」
アメリアの表情はすぐさま笑顔に綻び、歓声が溢れ出す。ゴッドペインターを励まし元気付けるのが今回の目的…猟兵として役目は勿論忘れてはいないが、それはそれ。こんなに綺麗に演出されているパレードを目の前に、楽しまないのはもったいない!
アメリアはカラフルなフリルスカートをふわりと揺らし、パレードへ向かって滑空する。フロートの周囲から旋回するように跳ねながらアピールすると、そのままダンサーたちの中へと飛び込むように降り立ち、驚く観客へとびっきりの笑顔を見せる。
そうして、即興のアレンジを加えながらダンサーたちと一緒にレッツダンス!
即興でも、アメリアはもちろんダンサーたちだって、パフォーマンスのプロフェッショナル。響き渡るコーラスと音楽のリズムに合わせて、とびっきりのパレードを演出してゆく。
「はわあ〜…」
色鮮やかに美しく、幻想的に楽しませるパレードの光景に、ゴッドペインターは大きなため息を溢れさせる。こんな豪華なパレードだったっけ?全然違う衣装の人がいるし、演者も驚いてたように見えたんだけど?──それなのに、この完成度。
人は感動したって、ため息が溢れるもの。早鐘を打つ心臓を胸の上で押さえて、ゴッドペインターはパレードに魅入られる。…何で、悩んでたんだっけ?
そうして絶え間なく煌めくパレードはどんな観客も、ゴッドペインターも…そしてやっぱり勿論、猟兵だって魅了する。
「おぉー…これが、ぱれーど」
ナノナノ型ケースに収まるスマートフォンを片手に、リリエッタ・スノウは初めて直に目にしたパレードに釘付けだった。マシンナノナノが予習として流してくれた動画は、なんだか淋しげにリリエッタの手の中で流れてゆく。
有名なパレードの動画だって、見た事もないくらいキラキラで楽しそうだったけれど…今ここで目にするパレードは、それ以上。ドキドキ高鳴る心臓にリリエッタは少しだけ戸惑うが、そんな彼女にマシンナノナノはそっとナノナノのきぐるみを差し出した。手元で流れる動画には、きぐるみのダンサーが宙返りしているところだ。
「んっ。リリも、みんなを元気にしてあげるよ」
彗華は幻想的な煌めきの中で澪とハーモニーを重ね続けながら、大きな絵筆を手に翼を広げ空へと向かう。空の色を映し出す七色空絵筆で、夜明けの赤色を絵の具にして、空中に自在に描き始めるのは、楽しくて可愛くてとびっきりのアートたちだ。
空飛ぶ動物に美味しそうなお菓子、ハートや星の記号。生きるアートは朝焼けの体で動き出して飛び回り、まるで夢の中に居るかのように、それでいて眩しい目覚めのように、観客の誰も彼もを魅了してゆく。
それから彗華はゴッドペインターに届くように、メッセージも綴って送り出す。だって夜明けは、新しい始まりの兆しなのだから。
「…がんばれ、か」
目の前に躍り出るメッセージに、ゴッドペインターは息を吹き出した。一言だけのメッセージは、誰に向けたものなのか。個人か、世界か。けれどその一言だけでも、今のゴッドペインターの胸には強く響くもの。
そうして、いよいよパレードの行進は折り返し、一つ目の山場に向かいゆく。
彗華はさらに盛り上げるべく、アーチを描くように空へと羽ばたく。ローラースケートを滑らせ虹を描きながら、今度はステッキを振って溢れんばかりのシャボン玉をあちこちに散らしてゆく。
雨もなく現れた虹とシャボン玉の演出に歓声があがるが、これはまだまだ序の口だ。
シャボン玉が風に揺られて落ちるその前に、澪の指先から連射される水魔法の銃弾が、泡を弾けさせて──彗華のシャボン玉に潜ませた氷魔法は、一瞬で花開く。
弾けた泡は昇華し氷の結晶となり、破魔の輝きに照らされ煌めく。それはまるで、ダイヤモンドダストのよう。
よりいっそう儚くも美しい幻想的な演出に歓声が湧き上がり、そうしてパレードはいよいよ最高潮。
ストリートを一周したフロートは広場に止まり、パフォーマンスはクライマックスへと向かってゆく。
「あらま、盛り上がってるねえ」
猟兵たちの演出によって格別な鮮やかさを描くパレードに、雨河・知香は快活な笑顔を向ける。大変な時だからこそ、気が沈んでしまう人もいるだろう…と、知香は納得していたものだが、周囲を見渡せば気持ちの良い笑顔ばかりが並んでいるのだから。
だがそれも当然だろう。知香自身はあまり芸術への造詣は深くはないが、こんなにも幻想的な美しいパレードにはいくらでも心が踊り出すもの。ゴッドペインターの落ち込んだ心にもきっと、この輝きはもう届いているだろう。ならば、知香の役目はあともう一歩のお手伝い。
「それじゃアタシも、落ち込んだ人も元気になるようなものを魅せてあげようね」
弾む気持ちをいっぱいに抱えて、知香はペンキのバケツを掴む。別に芸術家じゃなくたって、とびっきりの元気は分けてあげられる。そんな気持ちをリズムに乗せて、パレードの歌にのせて。知香はフロートが止まった広場の壁へと、刷毛を豪快に走らせ踊らせる。
イメージは、ライブアートとグラフィティアートをリスペクト。ちょっとの失敗も歪さも、真っ白な毛並みにペンキが跳ねたって、そのままスタンプしてしまうのだって、勢いで乗り切ってしまうのもきっと刺激的!
そうしてアートフェスのパレードのクライマックスに向けて華を添える飛び入りライブアートに、意外なもので何より浮かれるのは生きるアートたち。しっちゃかめっちゃか飛び跳ね踊るその愉快な様に、観客の目が奪われればダンサーたちも猟兵たちも、ライブアートを背景に踊り出す。
「さぁ、まだまだ踊るよー!」
アメリアは笑顔で声を上げると、不規則に動くアートたちを足場に失礼して空へと舞い上がる。そのままアートたちとコラボレーションをしながら、アメリアは空中で次々に鮮やかなパフォーマンスを決めていく。
「かわいいナノナノを見たらみんなすぐに元気になっちゃうよ」
そしてその下で広場に飛び込んできたのは、ナノナノのきぐるみを着たリリエッタ。リズムに合わせて懸命に動くリリナノナノは、驚きと愛らしさで観客の微笑みをくすぐって、あっという間にダンサーたちに囲まれて楽しいパフォーマンスに巻き込まれる。
「リリもやっちゃうよ!」
けれどダンサーたちのバク転宙返りに合わせてリリナノナノもバク宙を決めれば、あまりのギャップにどよめきが広がった。可愛いナノナノのきぐるみなのに、リリナノナノはやけに機敏でやたらと俊敏。…妙にコミカルなその様子はこっそり観客のスマホに収められていて、有名になっていたのは今よりちょっと後のお話だ。
そうして知香のライブアートもそろそろ仕上げ。空中でのパフォーマンスをたっぷりと披露したアメリアは、今度は観客の前にも降り立ち手を取り一緒に踊ってみせる。代わる代わる次から次へ。だってこんなに素敵で楽しいパレードなのだから、参加しないのはもったいない!
ダンサーたちもリリナノナナもアメリアに倣って、代わる代わる観客と一緒に踊り出す。観客も演者も一緒に盛り上げるパレードの中で、アメリアがようやく見つけたのはバケットハット。
「その帽子、素敵だね! 笑顔で被るともっと素敵だよ!」
「ひえっ!」
ふわりと飛び上がり目の前へと降り立って、同じようにダンスに誘えば、ゴッドペインターは肩を飛び上がらせて──けれど彼女は、アメリアの手に自分の手をおずおずと重ねた。
「あ、あの…お手柔らかに…」
「うん、任せて!」
「ひえぇーっ!?」
アメリアは彼女の両手を取って、ほんの一瞬だけの空中散歩。だってその方が、知香の描くアートがよく見えるのだから。
「さあ、仕上げに隠し味だよ。星よ煌めけ!アタシ達に加護を頼む!」
「…!!」
星の輝きが大きく瞬き、煌めく星座はおおぐま座。一面に広がる星座の加護は心身へ輝きをもたらして、モチベーションを与えてくれる。…おおぐま座の熊には見えぬその長い尾は、神様が慌てて掴んで空へ引っ張ったせいだともいう。神様だってそんなことがあるけれど、星々はそんなのちっとも気にせずに、夜空でキラキラと輝きを放つものだ。だったら、人なんてちっぽけな存在は思う存分ぶつかって行けばいい。
アメリアはゴッドペインターを優しく地面に下ろして手を離すと、手元に優しいランタンの光を灯す。少しでも彼女の心に残って、心の糧になりますように。カラフルに灯るランタンのように色鮮やかにと願いを込めて、無数の魔法のランタンを虹の空へと放つ。
ランタンにつられて空を見上げたゴッドペインターがふと視線を下ろしてみれば、そこにはもう猟兵たちの姿はない。
花と、光と、輝きと、星々と。昼夜を惑わす夢のような煌めきはただ美しく。余韻だけを残してパレードフロートが去ってゆく。
嘘のような時間だった。残されたのは強く胸を打つ心臓と、壁に描かれたおおぐま座のアートと、疑ってしまうほどに魅力的で鮮やかな記憶──。
「…ちょっとはお役に立てたかな」
「大丈夫だよ!ほら!」
ストリートエリアの空高く。澪の言葉に彗華が指差すその先では、バケットハットのゴッドペインターが走り出していた。溢れんばかりの輝きを受け止めた彼女は、もう立ち止まることはない。激しくキラめく、ときめきと閃きが彼女の手足を動かしているのだから。
「がんばれー」
二人は笑顔で両手を振りながら声を揃えて応援すると、顔を見合わせ笑顔を綻ばせた。
ゴッドペインターが究極のグラフィティへと辿り着くのは──もう間もなく。
大成功
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