ケルベロス・ウォー⑦〜花のゆりかごに眠れ
ケルベロス・ディバイドの空高く、ユーベルコードは煌々と輝く。黄道神ゾディアックは天体の魔力を操り、眩い極彩に染め上げてゆく。
「私達は死ぬ訳にはいかない」
自らが抱える球を撫でながら、ゾディアックは囁きを零す。デウスエクスは、死ぬ訳には──全滅する訳にはいかない。
そしてデウスエクスがいかに永遠不滅であろうとも、この短時間でここまで見事な決戦配備を組み上げた、地球人類と猟兵たちの事を侮ることもできなかった。
ならば、デウスエクス連合軍最強の指揮官として、自分達が全滅する可能性も考慮して。生き残る術を残さなければならない。
「全力を尽くして尚、万一にも敗北、あるいは死を喫した時の為に……」
ゾディアックが球体をひと撫ですると、それは繭を吐き出し撒いてゆく。
それは──ゾディアック・ドームの中で育んだ子供達のための『ゆりかご』。
色とりどりの浮遊繭はユーベルコードの極彩色を迷彩に、ひとつふたつと決戦都市へ舞い降りる。
落ちたゆりかごは鮮やかな大輪を開くと、夢のように芳醇な甘い香りを放つ。ひと嗅ぎすれば人々は眠りへ崩れ落ち──決戦都市は、静寂に包まれる。
浮遊繭の中で、蔦のようなものに覆われた小さな手は、ただ無力に宙を掻いていた。
●
「ヤアヤア、猟兵の皆々サマご機嫌よう!
戦争もいよいよ後半だけど、なかなか予断を許さない状況になってるねェ!
現れたるはデウスエクス連合軍最強の指揮官にして、十二剣神のリーダー格のゾディアック!
天体の魔力を操る麗人のようだけど、夢のように穏やかで恐ろしい『ゆりかご』を決戦都市に送り込んできたよ!」
バロン・ドロッセルは靴底を鳴らしながら猟兵たちの前へ姿を見せると、芝居ぶった口調で語りながら大仰に両手を開いてみせる。
「ゆりかご…と呼ぶだけあって、全滅の危機を逃れる為に育んだ特殊なデウスエクス新種族の子供達が抱かれているようだね。
それだけならどの様にも受け止めやすかったんだろうけどねェ…ゆりかごには、環境変異兵器が搭載されていたんだよ」
決戦都市に舞い降りた『ゆりかご』はその名の通り、デウスエクスの新種族の子供達を育むものであり、子供達を害する者を阻む機能を有するものでもあり。決戦都市な内部でありながら、そこは既に危険な状態となっていた。
「決戦都市に踏み込めば、花のような環境変異兵器の香りによって、異様な眠気に襲われるよ。
それは命が尽きるまで覚めることのない深い、深ァい眠りへの誘いだ。
ゆりかごの子供達を妨げるなかれ…といった所なのかな」
ひと呼吸でも香りを吸い込めば眠りに落ちてしまうだろう──だが、猟兵であれば対抗することもできるだろう。
「眠りの花を突破し破壊して、ゆりかごを確保するのが今回の目的だよ。
…その上で、皆々サマには『ゆりかご』の処遇を決めて欲しいんだ」
笑顔を潜め声を落として言葉を切ったバロンは、一度猟兵たちの顔を見渡してから、再び言葉を続ける。
「その場で壊しても良し、人間のいない地中深くに埋めても良しだ。あるいは…違う選択もあるだろう。
ゾディアックや、ゆりかごの子供達へ向う思いは様々あるだからね、皆々サマへ委ねるよ」
予兆として垣間見えたものは、猟兵たちの判断を鈍らせることもあるだろう。だがこのケルベロス・ディバイドの地球が、デウスエクスからの侵略という非道と暴虐に晒されていた事もまた事実。
静寂を割くようにバロンは両手を打ち鳴らす。迷いや躊躇いがあるとしても、猶予はそう多くあるわけではない。今は、戦争の最中なのだから。
「何をどう選んでも構わないよ。ただ、後悔の無いように、ね」
バロンが指を鳴らし、グリモアが輝き扉を開く。
猟兵たちが踏み入れるのは──花の香りの立ち込める、静寂の決戦都市。
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
一章完結の戦争シナリオとなります。ゆりかごに対処する、戦闘のない冒険の章です。
オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
プレイングボーナス:変異した環境を乗り越える/『ゆりかご』に対する処遇を決める。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 冒険
『『ゆりかご』を確保せよ』
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POW : 環境変異兵器の破壊を試みる
SPD : 決戦都市の地形を利用し、迅速に移動する
WIZ : 何らかの手段で環境変異に耐える
イラスト:yakiNAShU
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
|体外離脱《封印を解く、肉体を脱衣、魔力具現化》して霊体になれば香りによる眠気は防げるでしょう。赤の女王仮説、適者生存、私は|いかなる環境にも即座に適応できるわ《高速詠唱、早業、化術肉体変異、継戦能力》。
ゆりかごは当然お持ち帰りするわ。魂の契約を結んで安全性を確保。空亡であれば教育する環境は十全に整えられるわ。決戦都市との名付けでケルベロスディバイドの地球と紐づけてあるからグラビティチェインの供給も可能だしね。
この子達は生き残るために調整された、ならば赤の女王仮説に基づいて地球との共存する方向へ適応することも可能でしょう。
我が幸運を授ける。
ハル・エーヴィヒカイト
[結界術]によって環境変異兵器の香りを遮断
[念動力]により無数の刀剣を操作して気流を作る[範囲攻撃]で香りを散らしながら
[心眼]によって[見切]ったゆりかごのある場所へと至る
環境変異兵器は止める
これは我らの生存のために残してはおけない
けれどその上でゆりかごの子供たちに生存の可能性があるのなら
私は彼らを保護しよう
彼らの消費するグラビティチェインが我らの生存を脅かさないか
環境変異兵器がなくても生き延びることが出来るのか
わからないことだらけだがそれでも最初から諦めることはしない
過去の俺のような存在を増やしたくはない、今の私のただの我儘だとは思うが
エリー・マイヤー
もし、侵攻を焦る理由がなかったら。
考える時間があったなら。
別の道もあったかもしれないと、思わずにはいられないですね。
まったく無駄な感傷です。
さて、お仕事の時間です。
|アレクサンドラ《サイキックキャバリア》を呼び出して搭乗。
密閉して外気を遮断します。
ついでに念動力で装甲版の隙間を塞ぎましょう。
香気が入り込む余地は、徹底的になくします。
で、【念動ソナー】で周辺を走査。
ゆりかごを探し出し、最短距離を突っ切ります。
環境変異兵器を見つけたら、念動力で破壊です。
少ないグラビティ・チェインで生きられる。
なら、共に生きることも可能でしょう。
私はそう信じます。
レプリカントのような例も、あるわけですしね。
もし、侵攻を焦る理由がなかったら。考える時間があったなら。エリー・マイヤーは予兆に見えたゾディアックの言葉に、何かが違えば別の道もあったかもしれないと、そう思わずにはいられない。
それはきっと、隣に並ぶ猟兵たちも同じ。静寂の決戦都市を目の前にする猟兵たちは、言葉数も少なく表情も重く沈んでいる。エリーの感傷と似たものを感じているのは、疑いようもないだろう。
だがゾディアックを取り巻くすべては、そうはならなかった。だから今が、この戦争がある。
「まったく無駄な感傷です」
ならば、それらの感傷を仕事に持ち出すのは論外だった。エリーは囁くように言葉を吐き捨てると、|アレクサンドラ《サイキックキャバリア》を呼び出し機械的に搭乗する。すぐさま密閉すると、念動力で装甲の隙間も防いだ。香気が入り込む余地を徹底的になくしてしまえば活動時間は制限されようが、リミットまでに仕事を終えれば良いだけだ。
エリーは念動ソナーを放ち静寂に包まれた決戦都市を走査する──導き出すのはゆりかごへの最短距離。
「見つけました。先行します」
「ああ、ありがとう」
エリーと共にこの決戦都市へと降り立った猟兵のひとりである、ハル・エーヴィヒカイトはエリーに感謝を返すと、もう一人の猟兵へと振り返る。
「私は香りを散らせるが、君は?」
「心配は無用よ。私は|いかなる環境にも即座に適応できるわ《高速詠唱、早業、化術肉体変異、継戦能力》」
そう言ってアリス・セカンドカラーは魔力を具現化し、透けた虚影の化身を作り出す。兵器の花がもたらす眠りの香りなど、肉体の封を解いて離脱し霊体となった|虚影《アリス》には子守歌にもならないものだ。
アリスの虚影にハルは納得すると静かに頷き、大きく一歩距離を取る。刀剣を抜き払い、己の周囲に眠りの香を遮断する結界を描くと、さらに念動力で無数の刀剣を宙へ浮かび上げる。刃の斬撃は吹き荒び、たちどころに巻き上がる気流は空気を散らしてゆく。
それぞれ環境変異兵器への対処は十二分──猟兵たちはそれ以上の言葉を交わすことなく、静寂の中へと進んでゆく。
眠りに落ちた静寂の中で、鮮やかに広がり咲き誇るのは大輪の花々。これが環境変異兵器のもたらす変異でなければ、人々を魅入らせるものあったに違いない。けれど人がこの花が吐き出す香りを吸い込めば、その美しさを目にする事もできずに眠りに落ちてゆくだけだった。
未だ広がり続ける花を次々に刈り散らしながら、猟兵たちはいよいよ花畑の中心地、ゆりかごの所在へと辿り着く。
ハルの心眼が見極めるのは、大輪の袂に潜むゆりかごと──環境変異兵器。それは決戦都市を眠りに閉したその元凶。
「…これは、我らの生存のために残してはおけない」
ほんの一瞬目を伏せたハルは、つとめて穏やかに言葉を溢すと刀剣を広げる。種の生存をかけたゆりかごに、環境変異兵器を与えた事が…どのような意味があろうとも。最も優先する種を違えることはできない。
「斬り伏せろ、祓魔の徒花。耐え抜いて見せろ、|桜花百景《おうかひゃっけい》」
ひと声で広がる領域に、真紅の刃の斬撃が無数に瞬く。真紅の桜花は周囲の花を諸共に巻き込みながら環境変異兵器を砕き、花弁のほんの一欠片も残さず跡形もなく散らしてゆく。
そうして花畑の中心に描かれた新円の上で、『それ』はようやく猟兵たちの目の前に姿を現した。
「これが…ゆりかご」
誰ともなしに猟兵たちは呟く。地には付かず、僅かにフワリと浮かぶ鮮やかな色の繭。仄かに薄透けた中には、蔦に覆われた小さな身体が眠っている。これがゆりかごの子供たち…特殊なデウスエクスの新種族。
「当然お持ち帰りするわ」
沈鬱な静寂を引き裂くように、アリスは躊躇なく断言する。
「決戦都市との名付けでケルベロスディバイドの地球と紐づけてあるからグラビティチェインの供給も可能だしね」
言葉を続けながらゆりかごを抱き上げると、アリスが即座に結ぶのは魂の契約だ。ゆりかごの子供たちがどのような存在であろうとも、契約があれば…少なくとも、アリスとゆりかごに相互の安全は確保されるだろう。
アリスはそれ以上なにも語ることなく、猟兵たちを振り向く事もない。ゆりかごの子供たちの存在は、地球人類にとって未知に溢れている。危険を了承しているからこそ、アリスは魂の契約をかけて手を伸ばした。──危険の上に立つことを強要するなど誰にもできない。
だが短い逡巡の中で、ハルもまたゆりかごへと歩み寄ると片膝をついた。
「ゆりかごの子供たちに、生存の可能性があるのなら…私は彼らを保護しよう」
──このデウスエクスたちは、生き残る事を望まれた子供たちなのだから。
「…少ないグラビティ・チェインで生きられる。ゾディアックはそう言っていましたね」
エリーは予兆に見えたゾディアックの言葉を反芻する。ゾディアックの言葉が真実ならば、生存は望めるだろう。それでも、彼らの消費するグラビティチェインが我らの生存を脅かさないのか、環境変異兵器を破壊した上で、子供たちは生き延びることが叶うのか。
「わからないことだらけだが…それでも、最初から諦めることはしない」
ハルは呟くようにそう語り、ゆりかごへと手を伸ばす。過去の自分自身のような存在を増やしたくはない──それが、ただの我儘だとしても。そんなハルの『我儘』を一蹴する者はここには居なかった。
「わからずとも、共に生きることも可能でしょう。…私はそう信じます」
「空亡であれば教育する環境は十全に整えられるわ」
「レプリカントのような例も、あるわけですしね」
エリーの言葉にアリスは頷くと、微笑みの中でゆりかごを極彩色に染まる空へ掲げる。
「この子達は生き残るために調整された、ならば赤の女王仮説に基づいて地球との共存する方向へ適応することも可能でしょう」
生き残ることを望まれ与えられた存在ならば、より良い方向へと進化し続けることもできる。より良い進化は、適応は、何よりも生存の近道となるのだから。この場に並ぶ猟兵たちが願うのは、たった一つ。
「我が幸運を授ける」
未来へと進む為に、生き延びてほしいと望み与えられた子供たちへ…幸いあれと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
♪
歯向かう者共蹴散らして
遥か越え征けジョージア!
呼吸でやられるなら無くせばいいんでござる!という訳で拙者の身体に流体金属君をIN!ウッオウガメタルキマルッ!
鋼の肉体に酸素や呼吸は不要ですぞ!ゆりかごまでいざ征こう!
ほなサクッとゆりかごぶっ壊して帰るでござるよ!ぶっちゃけこいつらの生死はどっちでも良いんだけどさぁ拙者はたまたま猟兵で、ケルベロス側だからネ!
もしデウスエクス側だったら?そら遠慮なく人類滅ぼしてたでござろうね!生存競争ってそういうもんジャン
まあ保険賭けてる暇あるならもっと死ぬ気で攻めて来た方が良いと思うがネ!
|Any war hell!《ホント戦争は地獄だぜ!》フゥハハハーハァー!
「歯向かう者〜共〜蹴散らして〜」
エドゥアルト・ルーデルは高らかに歌いながら、静まり返る決戦都市へと足を向ける。
「遥か越え征けジョージア!」
歌に加え踊るように大仰な行進は、静寂が待ち受ける場所へは相応しくはないだろう。だが他には誰もいないのだ──エドゥアルトは気にしないし、誰が居ても多分気にしない。
そうして眠りへ誘う花の香りが漂う都市へと踏み入るその前に、対策はただシンプルに。呼吸でやられるならば呼吸を捨て去ってしまえば良いだけのことだ。
「という訳で拙者の身体に流体金属君をIN!ウッ、オウ、ガ、メタルキマルッ!」
懐から取り出した流体金属の瓶をひと息にあおり飲み込めば、エドゥアルトの肉体は一瞬にして鈍く輝く鋼に染まり、人間を辞めた人の形を作り出す。呼吸不要なメタルの身となれば、環境変異兵器はもはやただの花畑製造機だ。
エドゥアルトは引き続きサクサク進んで、花を踏み荒らし散らしながら、ゆりかご探してズンズン突き進む。いよいよ花畑の中心で巡り合う事になるのは、もちろんデウスエクスの新種族が抱かれたゆりかごのひとつだ。
「ほなサクッとぶっ壊して帰るでござるよ!」
そうして、エドゥアルトは軽快な言葉と共に、鋼の拳をゆりかごへ容赦なくぶち込む。情け?躊躇?そんなものはない。何故なら、エドゥアルトは猟兵なのだから。
「ぶっちゃけこいつらの生死はどっちでも良いんだけどさぁ拙者はたまたま猟兵で、ケルベロス側だからネ!」
もしもエドゥアルト自身がデウスエクスであれば?彼は当然のように、そして遠慮なく人類を滅ぼすべく動いただろう。エドゥアルトは|たまたま《・・・・》猟兵として、地球を守る者としてここに存在している。ならば立ち位置を理解し責務を全うするだけだ。
生存競争とは時に残酷で非道であり、暴力のやり取りであることは、戦争を仕掛けてきたデウスエクスこそが認識している事だろう。
「まあ保険賭けてる暇あるならもっと死ぬ気で攻めて来た方が良いと思うがネー!」
ゾディアックへは聞こえる筈もないが、エドゥアルトは極彩色に染まる空へと大声で語りかける。それは──滅びを厭い死力を尽くすのは地球人類とて同じなのだから、本当に死ぬ気で来いという|ダメ出し《アドバイス》。
「|Any war hell!《ホント戦争は地獄だぜ!》フゥハハハーハァー!」
エドゥアルトは高らかに歌いながら、軽快に決戦都市を去っていった。
大成功
🔵🔵🔵
上野・イオナ
UC【極彩色の花束】使用
強化触手がどこから出てくるかだって? (今回は)鼻の中からだよ!
【浄化】で眠りの香り対策とします。
ゆりかごの子は保護したい。地球人にあまり迷惑をかけられないので個人で連れて帰る事も視野に。ちょうど今この世界で住む土地を探してますので。
とはいえ一応DIVIDEに保護と監視が出来ないか相談はしておく。
ぬるい奴のワガママに見られる思うけど、助けられそうなら地球人・デウスエスク問わず助けないとこの世界には関われないと思ったから。
ソニア・コーンフィールド
うーんゆりかご…こっちに押し付けようとしてない?
酷いなー、でも見捨てる訳にもいかないし街を眠りから起こす為にも対処しないとね!
熾天怪獣王に騎乗して息止めつつ環境変異兵器目指すね!
全速力で移動しつつ兵器見つけたらUC起動、召喚したガジェット…多分怪獣王サイズの遠距離狙撃用の銃とかで兵器だけを撃ち抜いてこの香りを止めるよ。
兵器だけ撃って壊すの無理そうなら全速力で近づいて毟るとかで対応!
それでゆりかご自体の処遇だけど…壊さずに一先ず人気のないとこに運んで保管、確保かな。
少量で生きられるとはいえデウスエクス、不滅だからいずれ復活するんじゃない?
なら仲良くなれるようにした方がねー。
※アドリブ絡み等お任せ
「ふがっ!」
「うわー…鼻、痛くない?」
「…なんとか」
静寂に包まれる決戦都市の目前で、|極彩色《ゲーミングカラー》の触手を鼻の穴から生やした上野・イオナの姿を、ソニア・コーンフィールドは緊張の面持ちで見守る。見た目はちょっとショッキングなところがあるが、これも眠りの香りの対策のひとつだという。ならば気にしすぎるのは野暮なもの…ソニアはちょっぴりハラハラする気持ちを切り替える。まずは、突入前の作戦会議だ。
「それでゆりかご自体の処遇だけど…見捨てる訳にもいかないよね」
「んごっ…ああ、ゆりかごの子は保護したい」
ソニアの言葉に、イオナは触手を鼻の穴に引っ込ませると、真剣な顔で思案を巡らせる。
「でも、地球人にはあまり迷惑をかけられない。個人で連れて帰る事も視野に入れていこう」
「じゃあ、壊さずに一先ず人気のないとこに運んで保管、確保かな」
こちらの思惑がどうあれ、ゆりかごの存在がどう転ぶのかがまだ分からない以上、地球人類の安全確保も必須となるだろう。イオナは今ちょうど、この世界で住む土地を探しているところでもある。多少辺鄙な場所で保護することになっても、保護者として振る舞えるつもりだった。
「一応DIVIDEに保護と監視が出来ないか相談はしておこう」
だがやはり義理は通すべきでもあるだろう。少量のグラビティチェインで生きられる特殊な新種族とはいえ、ゆりかごの子供たちは間違いなくデウスエクス。ゆりかごの子供たちについて、地球人類はあまりに無知なのだから。
「ゆりかご…こっちに押し付けようとしてるみたいで、なんか酷いね」
「なりふり構っていられないんだろうな」
「それなら、やっぱり仲良くなれるようにした方がねー」
ソニアは大きく口を開けて笑顔を見せる。猟兵がいるからこそ予兆で事情を察し対処できる状態にはあるが、だからこそゾディアックの行動は…どうしても身勝手に見える部分もある。けれどイオナもソニアも、共存を視野にいれることのできないデウスエクスとは違う。
望むならばデウスエクスともきっと仲良くなれる──小さな希望まで捨てる必要などない。ソニアの笑顔にイオナは表情を和らげた。相手を問わず手を伸ばし、共存を望まなければ、イオナはこの世界には関われないと思った。伸ばせる手は、ここにあるのだから。
「ぬるい奴のワガママにも見られると思うけど…助けられそうなら助けないと」
「うん!それじゃ、街を眠りから起こしてあげよっか!」
ソニアが熾天怪獣王に騎乗し、鼻から触手を伸ばしたイオナも翼を広げる。
ソニアが操縦桿であるプラクト用模型を両手で抱えると、大きく息を吸い込み全速力で移動する。花の香を吸い込まぬよう息を止めたソニアの活動限界は短くも、環境変異兵器の広げる花を目印に進めば、そこへは自ずと辿り着く。
鮮やかに咲き誇り、眠りの香りを揺らす花畑。イオナはすぐさま花を掻き分け中心へ進み、いよいよそれを見つけ出す──大輪の元で、色鮮やかな繭に包まれ眠るのは蔦に覆われた小さな身体。
イオナは環境変異兵器を引き剥がしゆりかごだけを抱えると、空へ飛び立ちながらソニアへ大声で呼び掛ける。
「ゆりかごは確保した。後は頼む!」
ソニアは怪獣王の小さな腕を大きく振ると、召喚するのは怪獣王サイズの銃型ガジェット。イオナとゆりかごが離れた今、遠慮する必要はない。魔竜の力を込めた一射が花を巻き込みながら兵器を破壊すれば、ソニアの息もそろそろ限界だ。ソニアは片手で口を塞ぎながら、大急ぎで決戦都市を離脱するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
ーー生きることが罪だとは、言わせない
絶滅戦争を仕掛けてきたからといって、同じ事を返せば…そこに正義は無いでしょう
キャバリアに乗り込み、状態異常への耐性を10倍にして眠りに誘われないようにしてゆりかごへと辿り着く
…ゆりかごは、守りますわ
わたくしは、出来ませんわ
どれだけの恨みを買おうとも…一つの幼き命を奪う事など
それを是としたなら、地球を見放すのも是非もなし…故、この手を伸ばしましょう
研究管理施設の手筈を整え、彼らとゆりかごの研究データが取れる体制を確立しましょう
ケルベロスやDIVIDEも、デウスエクスとの協力データやゆりかごの分析データは欲しいはずですからね
カタリナ・エスペランサ
UC【架空神権】、事象改変に特化した《ハッキング+属性攻撃》の黒風は
《環境耐性》のフィルターと《情報収集》のセンサーを兼ねる
兵器も発見次第分解してしまおう
ゆりかごの子供達は保護するよ
安全な場所に保護する流れなら倣うし、そうでなければ自分で引き取って育てる
もし仮に殺害組と出くわす事になれば……
《幻影使い》《催眠術》で欺くか、最悪排除するか。見過ごせはしない
アタシが地球側に付いてるのはこの星を護ろうとしていた何処ぞの禁獣を斃したから。
それなら、ゾディアック達を滅ぼす分の義理も果たさないと不公平だろう。
彼女達が略奪以外の道を求めた証だしね
……本当に神様なんてものが居たら、なんて。
嫌な事考えちゃったな
眠りに閉ざされた静寂の決戦都市。鮮やかに咲き誇る花畑に、一機の天使──慈悲天機『ザドキエル』が舞い降りる。
「このポイントに他の猟兵は来ておりませんのね」
ザドキエルの中から聞こえてくる声の主はアンジェリカ・ディマンシュ。万物を癒し護るザドキエルの権能は、眠りの香から彼女の意識を守護している。けれどそれでいて、アンジェリカの澄んだ声はどこかか細く響いていた。
「うん。もし殺害組と出くわすなら……欺くか、最悪排除するかと思っていたけど、杞憂だったね」
カタリナ・エスペランサはザドキエルの肩から降りながら、緊張を解いて吐息混じりに言葉を吐き出す。カタリナを取り巻く黒風は、事象改変に特化し環境への耐性と共にセンサーの役割を兼ねるもの。アンジェリカとカタリナの他に猟兵はなく、周囲を満たすのは『ゆりかご』のもたらす花と静寂だけだ。
カタリナは迷いのない足取りで花畑の中心へと進み、片手を振って大輪に黒風をくぐらせる。ひと撫での風に環境変異兵器は眠りの花と共にその機能を解かれ自壊し、後に残るのは極彩色の浮遊繭…ゆりかごの子供たちだ。
ザドキエルの手が、そっとゆりかごを掬い上げる。薄透けた繭の中に見えるのは、蔦に覆われた小さな身体。…それは、あまりにも小さな命。
「…ゆりかごは、守りますわ」
アンジェリカの透き通った声に躊躇いはなくも、それでいて苦悩が滲んでいた。侵略者であるデウスエクスへ手を差し伸べること。それがどれだけの恨みを買おうとも…一つの幼き命を奪う事など、アンジェリカに選べはしない。もしも、この命を奪うことを是としたならば。この世界の地球を見放すのも是非もない。それ故、アンジェリカには手を伸ばす事の躊躇いなどありはしなかった。
「安全な場所にアテはある?なければアタシが引き取って育てるけど」
「ケルベロスやDIVIDEの研究管理施設の手筈を整え、彼らとゆりかごの研究データが取れる体制を確立しましょう」
カタリナの問いにアンジェリカの返す言葉は滑らかだ。ケルベロスやDIVIDEも、デウスエクスとの協力データやゆりかごの分析データは欲しいはずだった。この先何か──リスクがあったとしても、ゆりかごの子供たちは何らかの情報を握っているだろう。交渉を行う余地はきっと、充分にある。
カタリナはアンジェリカの言葉に頷くと、ザドキエルの手の中にあるゆりかごの子供たちを覗き込む。
「…アタシが地球側に付いてるのはこの星を護ろうとしていた何処ぞの禁獣を斃したから」
それならば、ゾディアック達を滅ぼす分の義理も果たさないのは不公平だろう。
「彼女達が略奪以外の道を求めた証だしね」
「ええ。…生きることが罪だとは、言わせない」
強い決意を込めて囁きを溢すと、アンジェリカは前を向く。地球を、人類を絶滅させる為に戦争を仕掛けてきたからといって、同じ事を返せば…そこに正義は無いのだから。
ゆりかごを抱えたザドキエルが飛び立つ。力を失った鮮やかな花畑が、舞い上がる風に崩れて儚く散ってゆく。カタリナは極彩色の空を見上げ、瞬く間に小さくなってゆく天使を見送り、ただ大きく息を吐いた。
「嫌な事考えちゃったな」
──……本当に神様なんてものが居たら、なんて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヒカル・チャランコフ
|相棒《エルンスト》(f42026)と!
アレンジ、他の人らとご一緒おーるおっけー♪
「おまえたちー!かもんぬ」
海月ちゃんずを呼ぶぜ、環境浄化には定評ありますから!
…まぁ、『ヒカルあれみて』『ヒカルこっちいこう』ひっきりなし好き勝手喋って煩せぇのが玉に瑕なんスけど、こいつら
だから、こいつらの相手もあるし、大元の花の処理は…喧しさにスゲー顔になってる相棒に頼むわ
「どんだけ眉しかめんのよ、オメェ。ぎゃはは!
うるせぇのは分かるけど、あんま離れるなよ?」
浄化範囲もフヨフヨしてっからな!
「みつけた!」
ゆりかご見つけたら駆け寄ってしゃがんで観察
「なーんじゃ、こりゃ。ちっちゃい手ェ、|ゾディアック《母ちゃん》に似てねぇな、コイツ」
かわよー♪よし、抱きあ…相棒の提案にはブチ切れ
「やだ!鬼かよ、テメェ!母ちゃんは兎も角こいつらはまだ何もしてねぇじゃん、だって!
連れて帰るし!飯もあんまいらねぇっていってた!」
相棒の続けての説得。でも!でも…
「…わかった」
オレまた会いにくるから死んでたらユルさねぇっていうわ
エルンスト・ノルテ
ヒカル(f41938)と共に
諸々はご自由に
煩い…ヒカルが何十人と増えたよう
眠たくならぬのは、浄化のお陰か喧しさからか分らんな、もう
ともあれ、リーダーの指示通りに
己の血を吸わせた斧槍で見つけた花は|消失《け》していく
「埋めるか」
この戦場へ共に行こうと請われた時から、ヒカルは生かすつもりだろうと思っていた
掴みかかる彼の好きなように言いたいだけ言わせたら説得する
「|君の家《キマイラフューチャー》にはそも、連れていけないだろ。
それに…母親はあれだけ強大で、言っていたのはエネルギーの余りいらぬ子を作ったというだけだ」
まだ何もしていない、は彼の言う通り。けれど
「|赤子《それ》が心通わぬ、或いは…親の敵をという化け物に育ちあがったら、君、責任取れるのか?」
赤子抱き上げ俯いて、返事がないから
「…DIVIDEの方に預けようか」
嘆息と共にヒカルの頭を撫で精一杯の譲歩
「エネルギーのいらぬ性質は、この世界の役に立つかもしれん、から…」
交われば得るものもあるか。生かしてくれるか、分らんが…
ヒカルの言葉に頷いて
ゆりかごの落ちた決戦都市は、ただ静かに穏やかに、眠りに沈む──それはゾディアックにとっても、ゆりかごの子供達にとっても、そうなる筈であっただろう。
この決戦都市へと馳せ参じた猟兵たちの一人…ヒカル・チャランコフが幾分か騒がしすぎることは、きっと想定外に違いない。
静まり返った都市を目前に、エルンスト・ノルテは足を止めた。ここから先では、ゆりかごに搭載された環境変異兵器がもたらす花の香り満ちている。こうした対処はヒカルの出番だ。
エルンストがリーダーを振り返れば、ヒカルは得意げな顔で片足を軸にくるりと一回転。
「おまえたちー!かもんぬ」
そうして軽快な呼び声と共に召喚するのは、海月のような妖精たち。ヒカルの髪色と同じく、深海の青にその身を染めた海月の数は、容易く百を超える大群。口腕と触手を揺らす海月たちで視界は真っ青に染まり、エルンストは素早く己の耳を塞ぐ。
『ヒ・カ・ルー!』
「ぎゃはは!一斉に喋んな、うるせぇー!」
途端に広がる海月たちの声の海に、エルンストは溜息を溢した。一匹一匹は囁きほどのものでも、こうも大群となれば煩いもの。ヒカルは慣れた調子で笑いながら海月たちを宥めて静めるが──とはいえ、まだまだ充分すぎる程に騒がしい。
エルンストはようやく耳を覆っていた手を離し、眉間に深々と皺を寄せる。控えめとなってもこの煩さ。まるでヒカルが何十人と増えたようだった。
「どんだけ眉しかめんのよ、オメェ。ぎゃはは!
うるせぇのは分かるけど、あんま離れるなよ?」
爆笑するヒカルにエルンストはますます、眉間の皺を深く刻み顔をしかめる。なにせ、この海月たちは浄化能力に長けている。ヒカルの忠告の通り、煩いからといって離れるわけにはいかない。
『ヒカルあれみて』
『ヒカルこっちいこう』
「わかったわかった!あっちこっち行くなって!オレは一人なーのー」
ふわふわ、フヨフヨと好き勝手に広がる海月たちはヒカルを振り回しながら周囲を取り巻き、目視もできぬ花の香りを片端から浄化する。浄化している…筈だが。
「…眠たくならぬのは、浄化のお陰か喧しさからか分らんな、もう」
「ちげーねー!」
眠りに誘う香りが間違いなく浄化されていようとも、ひっきりなしに好き勝手喋っている海月たちの声は、死者すら蘇りそうなほど賑やかだろう。
ヒカルは好き勝手にどこか行こうとする海月たちの触手を引っ掴み、ポイッとエルンストへと放り投げながら快活な声を相棒へと向ける。
「そんじゃ、処理は頼むわ相棒」
「ああ。リーダーの指示通りに」
エルンストは手のひらを引き裂くと、斧槍に己の血を吸わせる。これより、この斧槍は消失を招くもの。刃のひと薙ぎで眠りの花を容易く処理できるだろう。
そうして海月たちを伴い二人は決戦都市を進みながら、エルンストは見つけた花に斧槍を振るってゆく。蛇が獲物を丸呑みするよりも早く次々に|消失《け》してゆけば、いよいよ辿り着いた大輪の花畑の前で足を止めた。
鮮やかに咲き誇る花々は、変異と知らねばただ美しいだけのものだろう。だがこれは、害をもたらすものであり──『ゆりかご』を抱く花だ。
「みつけた!」
ヒカルが花畑に駆け寄ると掻き分けると、見つけ出すのは薄透けた極彩色の繭。しゃがみこんでゆりかごを覗き込めば、蔦に覆われた小さな手がどこか嬉しそうに手を振っている。
「ヒカル、待て」
繭へ手を伸ばすヒカルを呼び止め引き寄せると、エルンストは大きく踏み込み斧槍を振った。消失すのはゆりかごではなく、備え付けられた環境変異兵器のみ…ほんのひと薙ぎで兵器は消えゆき、ゆりかごだけがその場に残った。
「なーんじゃ、こりゃ。ちっちゃい手ェ、|ゾディアック《母ちゃん》に似てねぇな、コイツ」
ヒカルは嬉しそうにゆりかごを覗き込んで、再び手を伸ばす──その時、エルンストはほんの一瞬だけ目を伏せ、つとめて冷ややかな言葉を向けた。
「埋めるか」
「ハァ!?」
ヒカルは勢い良く振り向くと、そのままエルンストの胸倉に掴みかかる。だがエルンストは表情を変えぬままに、鋭く睨むヒカルの眼差しを受け止める。
──この戦場へ共に行こうと請われた時から、ヒカルはゆりかごの子供達を生かすつもりだろうと、エルンストはそう思っていた。だがそれを手放しで許容することはできない。子供がいくら特別な存在といえど…この地球に仇を成したデウスエクスである事に、間違いはないのだから。
「やだ!鬼かよ、テメェ!母ちゃんは兎も角こいつらはまだ何もしてねぇじゃん、だって!」
ヒカルの口から堰を切って飛び出す言葉は予想通り。だからこそ、エルンストは静かに首を振る。
何もしていない、生まれたばかりの無力な赤子。そう見えるのはヒカルの目にも、エルンストの目にも明らかだ。まだ何もしていない、とは言う通り。けれど──。
「連れて帰るし!飯もあんまいらねぇっていってた!!」
「|君の家《キマイラフューチャー》にはそも、連れていけないだろ。
それに…|母親《ゾディアック》が言っていたのは、|グラビティ・チェイン《エネルギー》の余りいらぬ子を作ったというだけだ」
この先でゆりかごの子供達が何を成すのか、成せるのか。それは誰の目にも、まだ見通せないこと。わかっているのは、あれほど強大な存在であるゾディアック自らが育んだ、デウスエクスという種族の存命を託した存在であるということだけだった。
「|赤子《それ》が心通わぬ、或いは…親の敵をという化け物に育ちあがったら、君、責任取れるのか?」
「敵なんかにしねえ!化け物になんかに育たねえよう、俺が育てたら良いだろ!」
「過程の話じゃない。結果として、化け物になってしまった時、人類に仇をなすその時に。
君は、決断できるのか?」
「でも!でも…っ!」
ヒカルの声が徐々に地面に落ちてゆき、エルンストへ掴みかかった手も、力なく解かれる。
返す言葉を失ったヒカルは花畑へ膝へ付くと、ゆりかごをそっと抱き上げた。
『ヒカルだいじょうぶ?』
『ヒカルいじめられた』
心配そうに揺れる海月たちはヒカルへ集まるも、ヒカルからの返事はなく、ただ海月たちの狼狽える囁きが無力にこだまする。
「…ヒカル」
エルンストの呼びかけにもヒカルは俯き、赤子を見つめるばかりで返事はない。
…もしも、最悪の結果が訪れた時。残酷な選択を、決断をヒカルへ強いる事なく、他者が『片付ける事』はいくらでもできよう──そんな無責任は、いつかヒカルを深く傷付ける。だがそれは、己の手で育て上げても同じことだろう。
エルンストは目を伏せ瞼を開くと、力なく丸まるヒカルの背中を見つめる。纏わり付く海月たちを払いながら近付くと、息を吸い込み手を伸ばした。
「…DIVIDEの方に預けようか」
エルンストは大きな嘆息と共に、ヒカルの頭を撫でて精一杯の譲歩を口にする。それは、ゆりかごを見捨てられないヒカルと、ゆりかごの子供達の未来への──精一杯の、ささやかな譲歩。
「ゆりかごの子供達の性質は、この世界に害を及ぼさないかもしれん、から…」
エルンストはそう口にするも、並べる言葉は歯切れ悪く、尻窄みとなっていく。交われば得るものもあるか。生かしてくれるか。何一つとわからないまま、並べる言葉は「そうであれば良い」という希望に過ぎない。
けれど──ゆりかごの子供達は確かに、デウスエクスという存在の『希望』を託されているのだから。
「…わかった」
エルンストの譲歩に、ヒカルは低く囁きようやく立ち上がる。エルンストへ振り向き見上げると、睨みつけながら慎重にゆりかごを差し出した。
「オレまた会いにくるから。何かあったら…死んでたら、ユルさねぇ」
この先にどんな結果が待っているのか。ゆりかごの子供達が、この地球にどんな未来をもたらすのか。今は分からないことだらけでも。──産まれたばかりの子供達なのだから。
エルンストはゆりかごを抱き、ただ静かに頷いた。
大成功
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