ケルベロス・ウォー⑨〜八空覇王
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戦火が絶えず渦巻いている。
驟雨の如く注ぐユーベルコードという名の殺意を切り裂いて、ケルベロス達がひた走る。
戦える者たちが先陣切るその影で、民間人たちもまた、命を賭して超常なる者たちに立ち向かっていた。
本来ならば傷一つつけること叶わぬ存在へ一矢報いる唯一の希望、|永遠回廊《グラビティ・ゲート》を破る|決戦配備《ポジション》を築きあげるために。
時に命を狙われようと、必ずやケルベロスが駆けつけてくれると信じて。
だが、その絶大な信頼の中にも、時として小さな陰りが生まれる事がある。
――本当にあんな存在に、人間は勝てるのか?
宇宙の神経が束なった巨木が如き存在。星々を司る連合軍最強の指揮官。
そして――ああ、見よ。今まさに暗雲立ち込める空を満たすのは、コードネーム「デウスエクス・ドラゴニア」。誇り高く悍ましき戦闘種族たちではないか。一体でも絶望の象徴たる彼らが、黒鱗に青白い輝きを奔らせながら無数に蠢いている。
希望を築き上げてきた腕が震える。勝てるわけがない。あんなものに。
おそれ。それこそがあのドラゴンたちを呼び寄せる存在の糧である。そして、おそれを感じるためにこそ遥か太古の人類は知恵を与えられた。
だがそれを人々が知っていたとして、あれほどまでに圧倒的な存在を前に湧き上がる恐怖を、誰が止めることができようか。
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「猟兵の皆さんが“ドラゴンテイマー”と呼ばれる存在と相まみえたのは、キマイラフューチャーでの戦が最初でしたでしょうか」
佐東・充(オルタナティブ・f21611)は招集に応じた猟兵達への礼もそこそこに、そう切り出した。
「未だ謎多き彼の姿が、このケルベロスディバイドでも確認されました。現在は十二剣神が一柱、原罪蛇メデューサと同盟を結び、かの者を支配下に置いているようです」
原罪蛇メデューサについて、充は説明する。
太古の昔、ケルベロスディバイドの人類に「知恵」を与え、いずれ自分が喰らうべく慈しみ育ててきた十二剣神。
人の抱く「おそれ」を介した超召喚能力により、|小剣《グラディウス》がなくとも配下を地球上に送り込むことができた為、十二剣神の中でも随一の侵略・制圧能力を誇る。
そんなメデューサがドラゴンテイマーと手を組んだ今、地上は彼の操る帝竜ダイウルゴスが無尽蔵に召喚される地獄と化した。
「召喚主たる原罪蛇メデューサの姿は確認できませんでしたが、ダイウルゴスを操るドラゴンテイマーは戦場のどこかに居る筈です。皆さんには空を覆い尽くすダイウルゴスの群れを往なしながら、ドラゴンテイマーと戦って頂く事となります。元々彼はダイウルゴスを召喚し操る力を有していましたが、原罪蛇メデューサの|剣《ディバイド》を掌握した今、その力は以前とは比べ物にならない程に高まっている事でしょう。
間違いなく強敵ではありますが、皆さんは何度もかれと刃を交え、そして勝利を収めてきた筈。此度もきっと、活路を見出してくださると信じております」
猟兵達を送り出すネオンブルーには、この星に生きる人々と同じ、戦う者たちへの賞賛と信頼が満ちていた。
ion
●お世話になっております。ionです。
原罪蛇メデューサの戦場でありますが、実際に戦う事になるのはドラゴンテイマーと、彼の操るダイウルゴスの群れとなります。
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プレイングボーナス:空を覆い尽くす無数のダイウルゴスに対処する/飛び交うダイウルゴスを足場にして戦う
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敵は一体一体が強力なドラゴンです。しかし巨大であるからこそ、やりようがあるでしょう。
飛翔能力を持たずともダイウルゴスを足場に空中戦を仕掛けたり、彼らを隠れ蓑にしてドラゴンテイマーを奇襲したり。
敢えて真正面から正攻法で打ち勝つのも格好いいですね。
皆様らしいプレイングをお待ちしております。
●採用について
なるべく全採用といきたいですが、こちらの時間が許す限りとなってしまう事をお許しください。
オーバーロードはよほど戦場にふさわしくないものでない限り採用できる可能性が高いです。
追加オープニングなどはなく、オープニング公開直後からプレイング送信OKです。
物理的に締め切られるまではプレイングを送って頂いて大丈夫です。締め切るタイミングはタグなどで告知予定です。
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【大型ダイウルゴス】に1と刻印された戦闘用【ゲームキャラクター】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : |文明侵略《フロンティア・ライン》
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ハルヨリ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メリーナ・バクラヴァ
まずは地上で一手、攻撃を受けましょう♪
群れを引き付け誘導して撒いて、撒ききれない分は両手の短剣で切り払って防御します。
防御しながらきっとあなたと目が合うでしょうね! ニッコリ♪ 私、あなたを見ています!
そして次の瞬間――相手の台詞一字一句動作の印象も感情も違わず模倣し演じてみせます。(【模倣・言の刃返し】)
元役者として衰えはしましたが、こうもわかりやすい敵意を感じ演じて写しきれないほど萎びてはおりませんよ♪
こうして写した【文明侵略】にて、召喚したダイウルゴスを足場に敵さんの所へ!
直接短剣で斬り伏せに参りましょーうっ!
――さあさ地上の一般人の皆さんっ、見えますか♪ 私、ここですよーっ!!
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地球を巡り、仲間と接し、宇宙を翔んで――。
気が付けばこの身は故郷とよく似た星にあった。役者として駆け抜けた日々は終わりを迎え、ただのメリーナ・バクラヴァ(リスタートマイロード・f41008)の足元は綿菓子みたいに頼りなくふわふわしている。
それでも彼女は他ならぬ自分の脚でこの地に立つことを選んだ。眼前に広がるのは天変地異が如きドラゴンの群れと、それを使役する未だ得体の知れない男。音が緩やかに手を翳せば、人類たちが築き上げてきた建物や車や電柱といったものたちが輪郭を失い、竜の姿となって群れに加わる。
空気が震える。人々の絶望のように。そのさなかで、メリーナは笑ってみせた。無邪気に、大胆に。
「ドラゴンさん、こっちですよ♪」
竜が咆哮し、青白く輝くブレスを放つ。小さなメリーナを容易く踏み潰せるほどの巨大な後肢が振り下ろされる。ひとたび気を抜けば一瞬で命が刈り取られる猛襲を、メリーナは軽やかに躱し続けた。舞台照明の色番号で呼ばれる二振りの短剣が攻撃を弾く。
まるで舞うようにしなやかな動きを披露するメリーナの全身は、しかしずっと悲鳴を上げ続けていた。猛獣の群れに迷い込んだ鼠のようなものだ。いくら俊敏だといっても長くもつわけがない。それなのに彼女の瞳はずっと希望だけを映し続けていた。
「何故だ?」
男の口から疑問が漏れる。その瞬間、彼女がこちらを視た。
――聞こえた? まさか。だが彼女は男と目を合わせ、はっきりと告げた。
「私、あなたを見ています!」
自信満々に云ってみせたかと思えば、メリーナは戸惑うように目を瞠る。それからそれを訝しがるように眉を顰めてみせた。男はそれを疑問に思い、そして理解した。
「そうです。これは、|あなた《・・・》」
少女のようにあどけない風貌が映し出すのは、確かにドラゴンテイマーその人。
「元役者として衰えはしましたが、こうもわかりやすい敵意を感じ演じて写しきれないほど萎びてはおりませんよ♪」
そして彼女が男のように手を翳せば、今まさにドラゴンたちが地上のあちこちから芽吹き、宙へと飛び立つ。その背を軽やかに渡り、メリーナは一気にドラゴンテイマーへと肉薄する。
「――さあさ地上の一般人の皆さんっ、見えますか♪ 私、ここですよーっ!!」
おそれを弾き飛ばすほどの、希望たる象徴。かの地でもこのディバイドでも、ケルベロスというのはそういうものだ。
ダイウルゴスたちが男を守ろうとするが、間に合わない。深紅と、空に憧れた青から引き抜かれた短剣が、男の身体を切り裂いた。
大成功
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空桐・清導
POW
アドリブ・連携歓迎
勝てるわけがない?
いいや否!必ず勝てる!なぜなら!
「待たせたな、みんな!ブレイザインが助けに来たぜ!」
最高のヒーローが此処にいるのだから!
「まずはダイウルゴス共をぶっ飛ばす!決着変身!」
UC発動と同時に超極大砲撃が空そのものを焼き尽くし、
ダイウルゴスの群れを一撃で消し飛ばす
まあ、すぐ補填されるだろうが、火焔の熱によって拘束される
この隙にドラゴンテイマーを討つぜ!
ブースターで超高速移動してドラゴンテイマーめがけて突進
そのまま拳を握りしめてぶん殴る
クリムゾンキャリバーの攻撃を手元で弾くことで隙を作って掴みかかる
そして、再度胸部から超極大砲撃でドラゴンテイマーを消し飛ばす!
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どんなに希望を掲げても。
どんなに未来を信じても。
度重なる異星人からの侵略を前に、心が折れる事もある。宙を埋め尽くすほどの「絶望の象徴」を前に、人々はあまりに無力だ。
避難誘導。ポジション建設。各々の出来る事を懸命に担ってきた人々の口から、本能的な恐怖が言葉となって溢れ出た。
――あんなの、勝てるわけない。
「勝てるわけがない? いいや否! 必ず勝てる!」
不意に聞こえた声に、人々は弾かれたように顔を上げた。ドラゴンを操る男も同じように目線を向けた先、黒で覆われた空に立ちはだかるのは竜と比べてあまりに小さい、赤いマントの青年だった。
「なぜなら!」
青年――空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が右手を高く掲げる。決意の証明かのようにピンと逆立てた髪がなびいて、真紅の兜がそれを覆っていく。それに合わせ全身も鎧を纏っていき、輝く超鋼真紅に包まれた清導は声高らかに宣言する。
「待たせたな、みんな! ブレイザインが助けに来たぜ!」
親友との絆を身に纏い、人々を助けるためにどこまでも奔走する、超弩級の最強ヒーロー、ブレイザインが此処にいるのだから!
見よ。今まさに決着変身を遂げたヒーローの胸部に光が集約していく。それは超特大の光焔砲となって炸裂し、射線上のダイウルゴスを瞬く間に焼き払っていった。
絶大なる威力。それを目の当たりにしてもドラゴンテイマーは動じず、新たなるダイウルゴスを呼び寄せた。だが砲撃が消えても尚残る火焔の熱が、その群れを縛り付ける。
「ふむ、確かに強力だ……だがその力、何のリスクも伴わず放てるものではあるまい」
男がゆらりと動き出した。血色の剣と化した右腕が、ヒーローの頸をつけ狙う。
ドラゴンテイマーの推測通りファイナル・ブレイザインの反動はすさまじく、超強化された今のブレイザインでも全身が悲鳴を上げるほどだった。だがブースターが唸り、軋む肉体を覚醒させる。
「――何?」
「動けないと思ったか? いいや、俺は止まらない! 諦めない!」
彗星の如き勢いでブレイザインは駆けだした。今まさに振り下ろされたクリムゾンキャリバーを弾き、男を殴りつける。
体勢を崩した男を掴み、再び煌いた胸部装甲から、ゼロ距離での超極大砲撃が爆ぜた。
ブレイザインの強さは、その名を冠した鎧だけにあらず。
鍛え上げられた無双の肉体と、どんな境地にも諦めない精神力こそが彼の強さ。
空桐清導が、ブレイザインがいる限り、希望の焔は消えないのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
このやろー!
あん時追い返してやったのにまたぞろ来やがったんですか!
まぁ子分を大勢引き連れてきたのは褒めてやるです、これならちったぁいい勝負できるでしょーよ!
纏めて相手してやるです!
啖呵を切ったは良いですけど、敵はデカくて多いですね。
でも勝てるかな、なんて思ったらそこで負けみてーなもんです。
ここは思い切って真正面から空中戦を仕掛けるです。
全速力で特攻ですよ!
バリアを機首に集中させて、でかトカゲ共に貫通攻撃を仕掛けるです!
こっちが小さい分、小回りは効くです。
ブチ抜きながら親玉を探して、見つけ次第そのまま体当たりをかましてやるですよ!
その右腕でボクを捉えられるか、やってみろです!
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空を飛べるだけのレプリカントになんの意味がある?
戦乱とキャバリアの世界で、かつてファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)はそんなふうに揶揄されていたのかもしれない。役立たず、と。
だが今、ドラゴンの軍勢にも怯まず果敢に空を駆ける彼女を見て、同じ事を云えるだろうか。
「このやろー! あん時追い返してやったのにまたぞろ来やがったんですか!」
もう何度目にもなる対峙に、ファルコは眉を吊り上げる。ラプターウィングで空を駆る彼女の身体が変形し、小型の戦闘機の形をとった。光り輝くバリアを纏いながら、ファルコはダイウルゴスの群れへと果敢に突っ込んでいく。
「まぁ子分を大勢引き連れてきたのは褒めてやるです、これならちったぁいい勝負できるでしょーよ! 纏めて相手してやるです!」
人間形態が持つ数々の武装は格納され、今のファルコは強度や機動力を増したボディと、眩いばかりに煌めくバリアしか持たない。そのバリアすらも機首に集中させ、自分自身をミサイルと化したかのような体当たりを仕掛け続ける。
重力から解き放たれたかの如き速度での“体当たり”がダイウルゴスの巨体に穴を開け、耳を劈くほどの悲鳴が空気を震わせる。別の個体が鎌首をもたげ蒼白いブレスを放ったが、その射線上にファルコはいない。バレルロールからの加速で軽やかに避け、そのまま二体目を葬り去った。
「ほら、見やがったですか! どんなにデカくて多かろうがボクの敵ではねーのですよ!」
人の姿だったのならふふんと鼻を鳴らしていたのだろう自信満々のファルコだが、これは生来の性格が半分、自己暗示が半分といったところだった。あの軍勢を目の前に、本当に勝てるのかなどといった疑問が脳裡を掠めなかったといえば嘘になる。
だがそれを口にしてしまえば勝てるものも勝てなくなる。それを知っているからこそ、戦闘機の奥の眼差しは未来だけを見据え続けていた。
「超高性能な戦闘機」はその機動力で、今まさに三体目の巨体を貫いた。そしてファルコは確かに見た。ドラゴンに穿った穴の先、男の昏い双眸がこちらをねめつけるのを。
緋色の刀身が翻った。この速度のまま男へと突っ込んであれを受けてしまえば、いかに強力なバリアと丈夫なボディであろうと無事ではすむまい。それでもファルコは勢いを殺さず、それどころか機体が軋むほどに速度を上げてドラゴンテイマーへと突貫していった。
(「その右腕でボクを捉えられるか、やってみろです!」)
超高速の中で、死を告げる赤が閃くさまがただの光線のようにファルコの視覚に映る。
それを掻い潜り、絶大な威力の体当たりが炸裂した。
大成功
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ミルナ・シャイン
ドラゴンテイマーと戦うのは初めて、なのですけれど。何故かしら、ずっと昔から知っているような…
お母様からドラゴンとの戦いのお話聞かせてもらったからかしら…
絶望的な状況でも決して諦めなかった冒険者達のお話を。
わたくしも、お母様のように…!
『ライトニングキャバリア』発動、召喚したグランスティードに【騎乗】、【武器に乗って飛ぶ】。
ドラゴンの群れの攻撃も、クリムゾンキャリバーの初撃も人馬一体となり大幅に増した移動力で躱し、【武器巨大化】で巨大化した盾で防ぎましょう。
UCで得た雷光属性で【属性攻撃】、雷を纏った細身剣で斬り【電撃】による【追撃】を食らわせますわ。
わたくしはお母様に似て諦めが悪いんですの!
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斯く求め、斯く争い――。
かつてどこかの世界で起きた戦いと希望の物語を、ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)は子守歌代わりに聞かされて育った。他ならぬ彼女の母が世界を救った英雄だったからだ。
「だからなのかしら。ドラゴンテイマーと戦うのは初めてなのに、ずっと昔から知っているような……」
冒険譚の中でもひときわ心躍る物語。戦略や戦術が通用しない圧倒的な力量差を前に、それでも決して諦めずに戦い抜いた人々。
お母様のように立派な騎士となるために。
ミルナもまた、海色の鰭を翻して身を投じていく。絶望の中にある、希望の光を掴むために。
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ミルナの体がふわりと宙に浮いた。彼女を背に乗せるは星霊グランスティードのパライバだ。その名の通り海を映したかのような鮮やかな色彩の馬が高らかに嘶き、地面を蹴り上げる。跳躍ののち、パライバはまるで天馬の如くダイウルゴスの群れへと飛翔した。
竜がこちらを見据え、巨大な爪を閃かせる。飛び退いてそれを避けようと、風圧がミルナとパライバを容易く吹き飛ばした。体勢を崩す彼女達へと青白きブレスが襲い掛かる。ミルナがぐっと手綱を引き、間一髪で体勢を整えたパライバがそれを躱す。
息をつく暇さえも与えぬドラゴンたちの猛襲。水と宝石のきらめきを讃えた盾が、パライバの軽やかな身のこなしが、瞬間的に活路を見出しては新たな壁がミルナの前に立ちはだかる。
だがきっと。
お母様も、仲間達も諦めなかった。鎖されたとしか思えない未来を、彼女たちは手繰り寄せた。
ミルナには未来が視えている。正確には、未来を掴むためにどうするべきか。
熾烈なるドラゴンの攻撃はあくまで障害物に過ぎない。狙いを定めるべきはあの男。ミルナに流れる血が、魂が、打ち勝たねばならないと告げている。
「……無駄だ」
男が呟き、竜が一斉にブレスを放った。空間中を覆い尽くすかのような熱の中を、ミルナは男目掛けて飛び込んでいく。巨大化した盾がブレスを弾き軌道を逸らすが限界はある。白い膚が焼けただれるのも厭わず、ミルナは細身剣を振り抜いた。間合いへと飛び込んできたミルナに男が瞠目する。血色の刃が閃くが――間に合わない。
「わたくしはお母様に似て諦めが悪いんですの!」
雷光が迸る。輝く金剛石の刃が、男を穿った。世界に、希望をもたらすために。
大成功
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早門瀬・リカ
確かに圧倒的な戦力差のようだ。
でもその戦力差を逆に利用させてもらうとしよう。
無数のダイウルゴスの襲来に紛れ込むようにして
彼等に気付かれないように取り付くよ。
空で陣取っているドラゴンテイマーに
近づくための足場とさせてもらう。
状況に応じて別の個体に飛び移らせようか。
その際にワイヤーを括り付けた風魔幻舞刃も
移動手段として活用させてもらおうか。
ドラゴンテイマーに辿り着けたら
UCによる螺旋忍術・最終零式を叩き込むよ。
猟兵達と連携できるなら仕掛けるタイミングは合わせよう。
一撃で倒せなくても可能な限り攻撃し続け、後に繋げようか。
その後は再びダイウルゴスを足場するか、救助を受けるとしようか。
アドリブ、連携歓迎
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空気がひりつく。
ドラゴンたちの巨体が風を切り裂いて走る音が、ひゅう、ひゅうと啜り泣きのように早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・f40842)には感じられた。
侵略を受け続けるこの星が泣いているのだというのは、あまりに人類側に都合のいい解釈だろうか。息を殺し、少女のようにしなやかな身体を竜の背に這いつくばらせながら、リカは辺りを油断なく伺った。
ダイウルゴスの群れは確かに脅威であるが、そのあまりの巨大さゆえに気配を消したリカの存在を感知出来ていないようだ。彼らの額に刻まれた刻印が縦一文字のまま変化していない事からもそれが伺える。
(「圧倒的な戦力差というものは、時に油断に繋がるものだからね」)
黒く澄んだ眼差しが動く。リカが騎乗しているダイウルゴスへと、別の竜が近づいてくるのが見えた。あちらの方がドラゴンテイマーへの距離が近い――殊更に気配を悟られぬように留意しながらリカはワイヤーに括り付けた風魔幻舞刃を投擲した。鱗の隙間に螺旋手裏剣がしっかりと突き刺さったのを確認し、リカはその身を宙へと躍らせた。
新たなドラゴンへと飛び移り、手裏剣を引き抜く。慎重に、大胆に。その一連の動作に竜たちは全く気づいていないようだった。
(「まるで蚊にでもなった気分だ。気づかれたら終わりという点では、彼らも忍びの素質があるのかもしれないな」)
慎重に竜の背を渡り、着々とドラゴンテイマーへの距離を詰めていく。そしてとうとう男を射程範囲に捉えた瞬間、昏い眼差しがリカを見つめ返してきた。
気づかれたと同時、足場が消えた。静かな追跡者が辿ってきた竜の群れは消え、その分だけ大きな数字を宿した強力な個体が顕現する。自由落下するリカへと竜のブレスが迫り、その身を跡形もなく燃やし尽くした――ように見えた。
栗色のポニーテールが翻る。|ほんものの《・・・・・》リカが、全く別の方角にいた竜から飛び降り、美しき斬霊刀を振るう。
瞠目する男を、清浄なる霊力が引き裂いた。
「古典的な云い方をするのであれば、空蝉の術というやつだよ」
螺旋術式帝。忍びの神の術を駆使すれば、この程度の離れ業は容易いというわけだ。
強力な個体が放ったブレスが、未だ周辺に硝煙を撒き散らしている。再び竜を隠れ蓑にする手は通じないかもしれないが、撤退の手段には困らなそうだとリカは推測した。
ドラゴンを率いる男に一矢報いた後につまむ大好物のチョコレートは、さぞ美味しい事だろうと思いを馳せながら。
大成功
🔵🔵🔵
エミリィ・ジゼル
空を覆い尽くす無数のダイウルゴスですか。いいですね。好都合です
今回は市外戦ですので隠れる場所には事欠きません
ビルや瓦礫に身を隠し、定期的に位置を変えて居場所を伏せつつ、鮫魔術を発動します
降り注げ!サメテオ!
発動するのはサメ属性の流星群
無数のサメ隕石をドラゴンテイマーとダイウルゴスに落として一網打尽を狙います
この術は制御が難しく暴走しやすいですが、今回は空を覆うぐらい大量のダイウルゴスを相手なので的を絞る必要がありません
遠慮なく全力でぶっぱしましょう
この世で一番強い生物はドラゴンではありません
サメです
それを思い知らせてやりましょう
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空を覆い尽くす絶望と暴虐の象徴。
それを目の当たりにしても尚、エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は微笑みを絶やさなかった。
(「空を覆い尽くす無数のダイウルゴスですか。いいですね。好都合です」)
むしろほくそ笑んでいた。本当は声高らかに笑い飛ばしてやりたいところだったが、それは堪えていた。
何故か。今の彼女は潜伏中だからである。潜伏はメイドのたしなみのひとつである。ゆえに彼女は物音ひとつ立てず、地上からドラゴンの群れを注視し続けていた。
(「確か、ドラゴンテイマーは無機物をダイウルゴスに変える術を持っていましたね」)
それを行使してこないという事は、エミリィの存在を勘付かれていないという何よりの証拠だ。市街地はエミリィが身を隠すのに適していると同時に、ドラゴンテイマーの|文明侵略《フロンティア・ライン》の触媒が無数に存在しているという事なのだから。
居場所が敵に知れたが最後、この瓦礫もあのビル群も、全てがエミリィに牙を剥く。だからこそ魔術が届く範囲にドラゴンたちが近づいてくるまで、エミリィは息を殺し、時に素早く潜伏場所を変え、身を隠し続けた。
そして時が熟したその時、エミリィは声高らかに宣言する。
「降り注げ! サメテオ!!」
ん? 聞き違いか?
そうではなかった。天を劈き降り注ぐのは無数のサメ隕石だった。確かにサメテオですね。サメ隕石って何?
出オチのような技名であるが、その威力は本物だった。天変地異が如き流星群は、かのダイウルゴスさえも一網打尽にする。
驚愕と混乱が瞬く間に群れ全体へと伝搬していった。それは彼らを率いるドラゴンテイマーにしても同様だった。すぐさま地上の瓦礫や家屋といったものをダイウルゴスに変化させるが、仕留めるべき“敵”がどこにいるのかさえわからない。声の主は、恐るべき俊敏さで潜伏場所を変えていた。
(「完全に強大さが仇となりましたね。この術は制御が難しく暴走しやすいですが、今回は的がいくらでもいるのですから。つまり――遠慮なく全力でぶっ放せるというわけです」)
尚も隕石は降り注ぎ、ドラゴンの鱗を砕いては血飛沫を噴出させる。悲鳴が鼓膜を震わせるのすらエミリィにとっては心地よかった。
(「これで彼らは思い知る事になるでしょう。この世で一番強い生物はドラゴンではありません」)
なんだか嫌な予感がしてきたな。
(「サメです」)
でしょうね。しかし圧倒的圧勝なので突っ込みようがないのであった。
シリアス? やっこさん死んだよ。いやかろうじて今回は生きているかな。どうだろう。どう思いますか?
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
はっはっは、いい加減付き合いも長いのう、ヒゲよ!
最初に妾のキマフュに手を出してしまったのが運の尽きだ
お主には今後も粘着して、徹底的にブッ飛ばす!
墜とせるダイウルゴスは他の皆が墜としておるだろうから、回復しても構わんだろう
それじゃ、空舞う者どもは全員元気になってくれ!(ヒゲは見ないようにして!)
で、妾が配信用に常時展開させてる数多のカメラドローン類をフル稼働! さあカメラを追っかけていけ!
さて、妾自身は適当な暴走させたダイウルゴスの背にこっそり乗っかり、飛び移っていってヒゲに接近だ
はーはっはっは! 余計なものは何もなくなったな
後は一対一でどこまでも、ド派手にカッコ良くボコり合おうではないか!
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かつて、平和で愉快な楽園を侵略した者達がいた。猿とうさぎと聖女と全裸とヒゲである。
前半のほうはそれぞれにそれぞれの結末を迎えたが、あの髭に関しては二番目の猟兵『アーカイブ』と呼ばれている事くらいしか明らかになっておらず、未だ多くの謎に包まれたままである。
――という、長ったらしい前置きはさておいて。
「はっはっは、いい加減付き合いも長いのう、ヒゲよ!」
今重要なのは、その“ヒゲ”ことドラゴンテイマーの前に、また一人の猟兵が立ちはだかったという事、そして彼女が御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)だという事である。
「最初に妾のキマフュに手を出してしまったのが運の尽きだ。お主には今後も粘着して、徹底的にブッ飛ばす!」
配信で培った明瞭な声が戦場に響く。金の眼差しに射止められたダイウルゴス達の傷がみるみると塞がっていった。敵を癒す行為にドラゴンテイマーが訝しがる気配がしたが、菘はそちらには目もくれず配信用のカメラドローンをフル稼働させる。
「常時展開させているものではあるが、ここまで稼働させるのは久々だな! 大盤振る舞いというやつだ、さあカメラを追っかけていけ! お主ららしく格好良く! 思う存分に魅力を発揮するがよい!」
菘の言葉を受けたダイウルゴス達は、彼女を攻撃する事もせずカメラに夢中になった。物珍しそうに眺め、それが多くの人々に映像を届けるものだと理解すると、勇ましく吼えてみたり虚空へブレスを放ったりと意味の無い行動を繰り返す。
「どうなっているのだ……?」
統率者たる男が命令を下しても、誰よりも目立ちたいという精神に汚染されたダイウルゴス達の耳には届かない。そして適当なダイウルゴスを一体選び取った菘はその背に飛び乗り、ドローンで惹きつけ誘導する事によって一気にドラゴンテイマーへと距離を詰めた。
竜の背から飛び降り、勢いをそのままに巨大な左腕を振り翳す。男の剣と化した右腕ががしりと受け止め、火花と鱗を散らす。
「はーはっはっは! 余計なものは何もなくなったな」
高らかに笑いながら、菘は左手に力を込める。ぎりぎりと鍔迫り合う中、男がほんの微かに目を細めた。
「あの酔狂な配信者か……」
花弁舞うシステムの中核で相まみえた存在。
「憶えていたとはな。結構結構!」
巨腕を薙ぎ払う。男はすぐさま体勢を立て直し、赤褐色の刃を閃かせた。上体を逸らして躱し、蛇の下半身で男の脚元を払う。
「後は一対一でどこまでも、ド派手にカッコ良くボコり合おうではないか!」
邪魔するものは何もない。二人のぶつかり合いと、カメラの向こうの熱狂だけが真実だった。
大成功
🔵🔵🔵
御魂・神治
またアンタかいな、ホンマ懲りへんやっちゃな
眷属同然のダイウルゴスはこの際どうでもええ!本丸はあのオッサンや!
『貴方もそろそろおじさんと言われる年齢ですが』
やかましいわ天将
武神を天人形態にして【空中戦】や
三神は散弾銃形態にして【破魔】の【エネルギー充填】して待機状態、今はまだ使うんやない
その辺うろついとるダイウルゴスは爆龍符の【破邪】の【爆破】と、紫電符の【範囲攻撃】で【切断】して空間を確保せえ
相手は特大級の一撃放ってくるやろ、初撃打ってきたらタイミング合わせて【ハッキング】仕掛けて僅かな隙作れ
そこに三神で『深淵』を打ち込んでおかわりのダイウルゴスもおっさんもまとめて吸い込んで圧殺や
●
昏い眼差しの男が腕を振り翳せば、新たなる竜が虚空から現れて空を満たしていく。
「またアンタかいな、ホンマ懲りへんやっちゃな」
若干うんざりした様子で細い目を更に細める御魂・神治(|除霊師《ドケチ宮司(仮)》・f28925)だった。伝統的で格式ばった除霊方法を疎い、「元から爆破すれば二度と出て来やんやろ」を信条に掲げる神治にしてみれば、叩こうが斬ろうが骸の海に還そうがいつの間にか蘇って来る存在など文字通り「めんどくさい」事この上ないわけである。
しかも相手は文字通り無尽蔵に近い程の竜を呼び寄せるという。やはり統率者がしつこいと使役される存在もしつこいのだろうか。
「眷属同然のダイウルゴスはこの際どうでもええ! 本丸はあのオッサンや!」
『貴方もそろそろおじさんと言われる年齢ですが』
付き添う人工式神の辛辣な意見に神治はむっとした。
「やかましいわ天将。それにオッサンがオッサンをオッサンって云うて何が悪いんや」
繊細なアラサー心はさておき。神治は天将の強化外骨格『武神』を天人形態に変化させる。
「とっておきはまだ使うんやない」
『了解』
散弾銃に破魔の力を集約させながら、武神は宙へと身を躍らせドラゴンテイマーを追う。
「その辺うろついとる奴はワイに任せとき」
爆龍符に刻まれた字が鮮やかなブルーに輝いて、あちこちで破邪の爆風が爆ぜる。濛々と硝煙が上がる中、未だ息のあるダイウルゴスを先祖伝来の紫電符によるプラズマ刃が真っ二つに斬り伏せた。
“帝竜”相手に快進撃を繰り広げる二人をドラゴンテイマーがねめつける。来た、と神治は確信し武神へと目配せする。神治への返事の代わりに散弾銃がドラゴンテイマーを睨み返した。
ドラゴンテイマーが跳躍して一気に距離を詰め、緋色の刃を振り翳した。神治の外套が破れ血を噴出させる。それを合図に無数のダイウルゴスが新たに召喚される――筈だった。
だがそれが僅かに遅れる。神治のハッキングが功を成したのだ。男のユーベルコードを無力化するほどのものではないが、エネルギー充填までの時間稼ぎには十分だ。
「どうや天将」
『エネルギー充填率、100パーセント。撃てます』
天将が宣言した直後、ジャミングを掻い潜ってダイウルゴス達が虚空から召喚される。
「おっしゃあ! まとめてぶちかましたれ!!」
防御不可能の圧殺暗黒球が、ドラゴンテイマーも新たなダイウルゴス達も、全てまとめて吸収し、圧縮していった。
大成功
🔵🔵🔵
陽環・柳火
「おー、たくさん群がってやがるな。だが、ぶった斬るのはあいつだけでいいんだよな」
ドラゴンの群れの奥のドラゴンテイマーを見据える
「雑魚どもはこれでも喰らってやがれ」
ケルビンカードの【弾幕】『烈火乱れ咲き』による火【属性攻撃】で向かってくるドラゴンは自動迎撃で対処
「んで、そこにいたか」
【気配察知】【悪を嗅ぎつける】でドラゴンテイマーの位置を補足。後は斬るだけだ
「広大無辺に比べりゃすぐそこなんだ。てめぇをぶった斬るなんて訳ねぇぜ」
【居合】にユーベルコード【無辺斬り】を乗せ、離れた場所のドラゴンテイマーをぶった斬るぜ
向こうの攻撃をしに近づいてくるなら丁度いい。その剣ごとぶった斬ってやるよ
●
侵略者が空を漆黒に染め上げている。
「おー、たくさん群がってやがるな」
その光景を仰いで、陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)は金色の目を細めた。
随分と仰々しい連中だ。ドラゴンテイマーも眷属たるダイウルゴスもこの世界に連なるオブリビオンではないが、圧倒的な力で脆弱な地球人たちを捻じ伏せようとしている点において、かのデウスエクス達と大差がないように思える。
だがどんなに敵が強大だろうと、あるいはどんなに状況が複雑だろうと、本質というのは変わらない。
「ぶった切るのは一人だけでいいんだよな。なら――雑魚はこれでも喰らってやがれ!」
爆薬の類を司る『|烈火乱れ咲き《ケルビンカード》』を柳火はダイウルゴスの群れめがけて投げつける。竜が空気を劈くかのような咆哮と共に爆符を踏み潰した。雑魚と呼ばれた事にプライドを傷つけられたのだろう。しかし爆符が鋭い火花と共に爆ぜ、竜は驚いて後ろに退きさがる。
別の竜が翼を翻して急降下し、鋭い爪を振り翳してきた。猫のようにしなやかな動きで躱した柳火が新たな爆符を投げつける。入れ替わるように飛来した竜がブレスを吐くために開けた口にも爆符を放り込んでやりながら、柳火は首魁の存在を探り続けた。
爆符はある程度自動で対象を攻撃してくれる。数を撒いておけば時間稼ぎにはうってつけだが、それだけで天下のドラゴンを相手しきれるものではない。あの男が気配を隠していたら厄介だったが――幸いにも柳火はすぐにその姿を察知する事が出来た。
「見つけたぜ」
男の昏い視線が柳火を刺してくる。強烈なまでの殺意がぞわりと柳火の膚を撫でる。どんなに距離があろうが隠しきれる類のものではない。
男がゆらりと身を動かし、柳火へと迫る。凄まじいまでの速度だが、柳火の悪を嗅ぎ分ける嗅覚は正確にそれを追っていた。そして感知できる場所ならば、柳火の刃はどこにだって届く。
「広大無辺に比べりゃすぐそこなんだ。てめぇをぶった斬るなんて訳ねぇぜ」
振り抜いた刀は、修学旅行先の木刀くらいの感覚で気軽に買える量産品だ。だが柳火の無限の想像力を乗せたマタタビ丸は、完全無敵だろうが広大無辺だろうが斬り捨てる無敵の刃となる。
居合の剣圧が空間さえも切り裂いて、迫るドラゴンテイマーへと強烈なカウンターをお見舞いした。
大成功
🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
【🐙🐰】
タイセツな弟のラビオと参戦するよ!
愛機Glanzでタンデムしながら戦場を疾走。
持前の【運転】テクを駆使して
数多の竜の背をジャンプで飛び移りながら【悪路走破】を。
ラビオっ、振り落とされないようにしーっかり捕まっててね!!
ドラゴンテイマーをKrakeの射程内に捉え次第
UCを発動―思いっ切り中指を立てちゃうゾ☆
テイマーの弱体化&周辺の黒竜の低速化を行いつつ
赤き右腕を躱すべく思いっ切り【スライディング】。
【カウンター】の要領で反撃するね!
合わせて行くよ!全砲【一斉発射】ァァァ!!
戦場から離脱中も
背中越しに感じる弟の体温と心音にほっと安堵。
…オレにプレゼント?
なんだろ、でも楽しみにしてるね♪
ラビオ・ブラフマン
【🐙🐰】
クソ兄貴(パウル)と参加。
単騎で出撃するつもりだったのに、待ち伏せされちゃァ仕方ないよねェ。
バイクの後部座席に乗って、兄貴の腹部にそっと腕を回す。
UC発動ォ。
兄貴が運転に専念できるよう
俺達を狙ってくるダイゴウルス達にカウンター狙撃。
戦場の爆風をものともしない走りに
改めてうっとり…まァやるじゃんと感心しちゃいそ。
本丸が見えたら
兄貴の掛け声に合わせて砲塔を総てテイマーに向けるねェ。
せーのォ。一斉発射ァ。
俺、充の役に立てたかなァ。
今回の戦争でずっと頑張ってたの、よく知ってるもの。
兄貴、今日手伝ってくれてありがとォ。
…新手のロボットのフィギュアとかいるゥ?
べ、別にお揃いとかじゃないしィ!?
●
「ラビオっ、振り落とされないようにしーっかり捕まっててね!!」
「ハイハイ。全く、なんでクソ兄貴と一緒に参戦する事になってんだか」
竜の群れを駆け抜けていくのは箒星の如き白銀。
どんな悪路もものともしない宇宙バイクGlanzが竜の背から背へと飛び移り、ひたすらドラゴンテイマーへの最短距離を疾駆し続けている。
「んー、オレがラビオを助けたかったから、かな?」
ラビオ・ブラフマン(Abyssal fish・f36870)グリモアの転送ゲートをくぐった先、まるで最初から待ち合わせていたような気楽さで兄のパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)が出迎えてくれたわけである。
「まァ、待ち伏せされちゃァ仕方ないよねェ。別に断る理由もないしィ」
いいわけを並べ立てながらもラビオの声音は楽しそうに弾んでいて、その心地よいリズムがパウルの鼓動までも軽快に引っ張り上げてくれているようだった。
「えへへ、タイセツな弟と一緒に戦えるなんて嬉しすぎるっしょ」
きっと今の自分はみっともないくらい締まりのない顔をしているのだろう。
同乗者にそれを隠しておけるのは、長年バイクを駆り続けてもなお気づかずにいた利点かもしれない。
「……恥ずかしーヤツ」
ぼそっと呟いたラビオが、パウルの胴体に回した手に力を込めた。
●
数え切れぬほどの巨竜たちを屠るのは、同じく数え切れぬほどの銃口。
ラビオの触手がゆらりと形を変えて、銃列が一斉に火を吹いた。
竜の鱗一枚よりも小さな銃弾が、その身体に届いた瞬間炸裂し、あちこちで爆風を巻き上げさせる。
ぴょんぴょんと跳ね回る小さな獲物に焦れ、竜が首を大きくもたげ蒼白いブレスを放った。Glanzが猛然と唸り宙へと身を躍らせる。竜のブレスはつい先程までパウル達のいた場所、つまり竜の表皮を焼き焦がすに留まる。そしてその時には既に、Glanzはひらりと姿を消し、他の個体の背に飛び乗っているのだ。
そのテクニックにラビオは改めて舌を巻く。ささくれだった“悪路”を走り抜けるだけでもひとたび判断を見誤ればタイヤのバーストに繋がりかねない上、至る所で発生する爆発や振動に車体を煽られ、更に後部座席ではラビオが絶えず機銃掃射を続けている。まともに走るだけでもかなり高度なテクニックと的確な状況把握が必要なはずだ。その上でこの鮮やかかつ効率的なトリックは見事としかいいようがなく、やっぱりおにいちゃんはすごいなァ、とラビオが惚れ惚れするには十分すぎるほどだった。
無論素直になりきれないラビオの口から出たのは「まァやるじゃん」とそっけない一言だったわけだが、パウルは嬉しそうに肩を揺らすのだった。
バイクをひた走らせているうち、ドラゴンテイマーの姿がパウルの隻眼で目視できるまで近づいてきた。男もまた鉄馬に乗った二人を見据え、ゆらりと右腕を翳した。
「ちょっとォ、オレら相手に図が高いんじゃない?」
茶目っ気たっぷりに笑いながらも、アーマーリングの光る中指は天を差している。男の右腕に生えた刃がパウルの言霊に捉われ鋭さを奪われていく中、Glanzはより研ぎ澄まされた動きで漆黒の大地を滑る。
「ラビオ! 合わせて行くよ!」
「わーかってるって。せーのォ、」
鮮やかな水色に括りつけられた砲台が、ラビオの銃口が、ぞろりと男へと向けられる。
「全砲、一斉発射ァァァ!!」「一斉発射ァ」
轟音が轟き、あかあかと燃え上がる。
凄まじいまでの戦火が、やがて希望の炬火に変わっていく――。
●
竜から飛び降りたGlanzが慣れ親しんだコンクリートの地面を奔る。
「俺、充の役に立てたかなァ」
「モチロンだよ、タイセツな人が想いを汲んで戦ってくれるって嬉しくないわけがないよ」
確信に満ちた兄の言葉にラビオは片眉を持ち上げた。
これは一種の惚気なんだろうか、それとも――、
「ま、どっちでもいいかァ。兄貴、今日手伝ってくれてありがとォ」
素直にそんな言葉が漏れる。パウルが振り返ってへにゃりと笑顔を向けた。
「……お礼ってほどでもないんだけどさ、新手のロボットのフィギュアとかいるゥ?」
「えっ、プレゼントってコト?」
パウルがあんまりに嬉しそうな声を出すので、ラビオは虚をつかれてしまい、
「べ、別にお揃いとかじゃないしィ!?」
ついついそんな事を口走ってしまった。しまったと思うがもう遅い。
「ありがとう、楽しみにしてるね♪」
今さら引っ込みのつかなくなったラビオは、真っ赤になって「帰ったら期待しててねェ」と云う他ないのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルナ・シュテル
上空に大型敵性存在多数。
とはいえ、指揮個体を排除により連動しての無力化は可能と推測。
目標、敵指揮個体の排除。
LNA-1120、任務遂行します。
Porarisの【推力移動】で空を飛びダイウルゴス群へ突入。
敵は巨大なれど、それ故に小回りは利かないと推定。
敵の身体付近ギリギリを通過するよう飛行することで、他個体からの攻撃の盾とできるでしょう。
但し、敵の性質上同士討ちを躊躇はしないと思われます故、其に対する期待はせず。
重力下における長時間の飛行はエネルギーの消費が激しくなります。
時には敵の背に乗り其処を駆けつつ、ドラゴンテイマーを目指しましょう。
一連の動きはBloodyTearsとDoubleOrbitを介し【実況】。
ドラゴンテイマーを捕捉した処にて視聴者様方に呼び掛けを。
敵は確かに強大。
なれどご覧の通り、打倒は未だ不可能に非ず。
希望は、未だ我らの、皆様の手に。
お心あらば、共に戦い、希望を此処に示しましょう。
UC発動、同意下さった視聴者様方をドラゴンテイマー周囲に召喚。
共に包囲攻撃を仕掛けます。
●
絶望と漆黒が支配する大空に、流星の如き紫銀が飛来する。
空中でぴたりと静止したその女性型バイオロイド、ルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)が静かに空を見上げた。
「上空に大型敵性存在多数。とはいえ、指揮個体を排除により連動しての無力化は可能と推測」
目的は殲滅ではない。この星に住まう人々の未来を繋ぐこと。
不死たるデウスエクスを、その力を掌握する男を、打ち倒すこと。
「目標、敵指揮個体の排除。LNA-1120、任務遂行します」
北極星の名を冠する脚部機構が圧縮プラズマを噴出させ、その推進力でルナはダイウルゴスの群れへと突っ込んでいく。
“猟兵の力に目覚めたルナ・シュテル”――個体番号LNA-1120は、猟兵という力に目覚めても与えられた人格を大きく逸脱しないまま今に至る。つまりその戦闘能力は、歓楽艦で製造された本来の目的——すなわち“人類への奉仕”のためにもっぱら使用される。
人々が安心してルナ達の奉仕を受けられるように。彼女にとってはそれが家事給仕だろうが戦闘任務だろうが大差はない。
Porarisが唸りをあげ、ルナが加速する。額に一文字が刻まれたダイウルゴスが首をもたげブレスを放とうとしているのを横目で確認したルナは軌道を変え、別の個体へと接近した。まるで体表を滑るかのようにすれすれを飛翔すれば、直後に放たれた蒼白い閃光が竜の体を灼き焦がす。
(「推測通りですね」)
敵は強大だが、だからこそ小回りが利かない。ゆえに小さいうえ素早く動き回るルナを捉えるのは難しいようだ。
負傷した竜が高らかに吼えたかと思えば、その身が光に包まれていく。巨大な光球となった“竜だったもの”が別の竜の身体に吸い込まれていった。その額に浮かぶ数字が「2」と変化する。
合体し強くなる性質を持つ彼らは、同士討ちを躊躇しない。空気を震わせる咆哮と共に「2」の個体がルナへと迫り爪を振り翳してきた。間一髪、Porarisの推進力で身体を押し上げ躱したが、速さも正確さも先程とは比べ物にならなかった。
(「真正面から相手をしていては推測以上にエネルギーの消費が激しそうですね」)
ただでさえ重力下の長時間飛行は負荷がかかる。竜の死角に滑り込み、ひらりとその背に飛び乗ったりもしながら、ルナは着実にドラゴンテイマーへの距離を近づけていった。
さて、人類のために単身戦うバイオロイドを、静かに見守り続けていた人々がいる。
二機一組のドローンと、紅く輝く電脳ゴーグルたるルナの瞳が、彼女の雄姿を臨場感たっぷりに配信し続けていたのだ。
そしてルナの視線がドラゴンテイマーを捉えた時、彼女の目を通して戦場を見ている視聴者たちのボルテージが最高潮に高まったその時、ルナは声を張って呼び掛ける。
「敵は確かに強大。なれどご覧の通り、打倒は未だ不可能に非ず。希望は、未だ我らの、皆様の手に」
ルナの接近にもドラゴンテイマーは退かず、新たな竜を差し向ける。その群れをルナが掻い潜る。距離が狭まっていく。
「お心あらば、共に戦い、希望を此処に示しましょう」
彼女に共感し、同意した人々の魂が“ルナ”の姿となって召喚される。召喚できる数には限りがあるが、もっと多くの人々が同調を示してくれたことをルナは感じ取った。
圧倒的な絶望を前に、ルナを信じ、未来を諦めずにいてくれた人々が。
「皆様のご助力に感謝いたします。共に、参りましょう」
彼女の身体に搭載された武装群の数々がドラゴンテイマーへと襲い掛かる。ルナもまたLethebolgを輝かせ、男へと振り翳すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
ええ、確かに。
湧き上がる恐怖を止めることはとてもとても難しいのでっす。
でも。
湧き上がるのは恐怖だけではないのでっす。
圧倒的な存在を前に恐怖を感じることもあれば。
ただただ優しいだけの歌に、恐れも忘れて涙することだってあるのでっす。
それが歌。それが芸術。それが藍!
藍ちゃんくんでっすよー!
歌うのでっす。
恐怖を癒やす歌を。
響かせるのでっす。
百竜の天に!
どれだけ圧倒的な存在を前にしようとも。
どれほどの数が立ち塞がろうとも。
この歌は、この声は、途切れないのでっす。
恐怖を、絶望を、眼にした時。皆様は、気付くのです。
それでも。歌は、響き続けているのだと!
藍ちゃんくんが歌い続けているのだと!
おそれを用いた召喚能力だというのなら!
おそれが癒やされたなら、召喚は途切れるはず!
なんなら召喚体が維持できなくなたり、恐れと結びつきすぎて一緒に消えたりしませんかー!
居残りしてらっしゃったとしても、テイマーのおじ様達には歌が響きまくりまっすけどねー!
直接原因を攻撃しまっすので。
ドラゴンさん達を盾にしても無駄なのでっす!
●
恐怖。おそれ。
それはかつて原罪蛇メデューサが人々に与えた知恵こそが生み出すものだという。
人々はその感情を元に危機を察知し、無数の脅威を潜り抜けてきたに違いない。
だが、強すぎるおそれは逃げる意志さえも奪ってしまう。それもまたメデューサの狙いどおりなのだろうか。
人類は、やがて彼女が喰らうために愛情を注がれ、育まれて来た贄なのだから。
空を覆い尽くすのは、かの十二剣神が持つ力によって召喚されしドラゴンたち。
理屈ではどうにもならない本能的な恐怖を人々が感じるのも無理はないと紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は考える。生まれた世界は違えども自分の中にも人間の血が流れていて、人間を喰らうために育んできた上位存在への恐怖は心のどこかに存在しているような気がした。押し込めても、また別の場所から湧き上がってくるようだった。
「でも。湧き上がるのは恐怖だけではないのでっす」
数多くの戦場に立ち続けてきた藍はそれを知っている。
「圧倒的な存在を前に恐怖を感じることもあれば。ただただ優しいだけの歌に、恐れも忘れて涙することだってあるのでっす」
それが歌。それが芸術。それが――
「藍! つまりー……藍ちゃんくんでっすよー!」
歌が、ギザギザ歯の間から零れ始める。心のままを乗せた穏やかで優しい歌。己の中の恐怖さえも消し飛ばすような。
死と恐怖に満ちた戦場にはあまりにも不釣り合いな歌声を、世界中に鳴り響きそうな大音量で超巨大スピーカーが拡散していく。
(「歌うのでっす。恐怖を癒やす歌を。響かせるのでっす。百竜の天に!」)
戦場で歌い続ける異分子を、かのドラゴンテイマーは昏い眼差しでじっと見据えた。
そして赤褐色の刃を振り翳し、新たなダイウルゴスを召喚する。
ちっぽけな歌声を踏み潰そうと、竜はその巨大な脚を振り上げた。だが、その姿勢のままぴたりと制止する。
「何だ……?」
訝しがる男は、このあとさらに瞠目する事となった。ダイウルゴス達の輪郭が光の粒子となってぼやけていき、そして消えていくではないか。
「何が起こっている? まさか」
そう、そのまさかだ。
ダイウルゴス達はメデューサの力、つまりおそれを介した超召喚能力によって呼び出されている。
心のままに歌い上げる藍音Cryねは、理屈も常識も飛び越え、人々の心に沁み込んでいき、そこに潜む恐怖や悲しみを優しく取り除いていくのだ。
(「どれだけ圧倒的な存在を前にしようとも。どれほどの数が立ち塞がろうとも。この歌は、この声は、途切れないのでっす。恐怖を、絶望を、眼にした時。皆様は、気付くのです」)
絶望は、きっと消えない。人々がおそれを感じるようにしたメデューサが消滅したとしても。
されどもたらされた知恵は、それを乗り越えるための力さえも生み出していく。そうして人々は時代を、未来を紡いできたのだ。
「それでも。歌は、響き続けているのだと! ――藍ちゃんくんが歌い続けているのだと!」
歌が響き渡る。戦乱耐えないディバイドの世界を生き延びた人々の心に染み渡っていく。
おそれがまたひとつ消えて、ダイウルゴスは虚空へと消えていく。
ならば、と男は血色の剣を振り翳した。あの少年を斬り伏せてしまえば、人々の希望は消える。おそれがまた生まれる。
だが一歩踏み出そうとした男の膝がくずおれた。
「なん……だ」
目を血走らせ、頭を抱える。穏やかなあの歌が頭の中を駆け巡っている。それが男に耐えがたいほどの頭痛をもたらし始めていた。
「この歌は、恐怖の“原因”を直接取り除くのでっす。つまり皆さんのおそれを祓うためにダイウルゴスさんはいなくなりますしー……それはテイマーのおじ様ももちろん! なのでっす!」
馬鹿な、と男は呻いた。こんな歌ひとつで。だが実際に指一本動かす事すら出来ぬほどの痛みが男を苛み続けている。
あの神は。人々の快進撃を目の当たりにしてすら笑っていたメデューサは。
ちっぽけな人間たちの生み出すものの強さを、知っていたのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
エリザベス・ナイツ
ハル(f40781)と一緒に――。
◆心情:
日に日に力は薄れていっているのが分かる
きっと、これが私にとって最後の戦いになる気がする
――だから、最後の最後に私だってあなたとカッコつけさせて?
あなたにね、守られてあげるのは……全部が終わってから
「一緒に……大好きな地球のために戦いましょう、ハル」
◆敵UC対策:
ハルとはお互いに目合図しながら、別々に敵に対処を
相手が大きすぎるのが弱点かしら?
なるべく機敏な動きを意識して行動しつつ、折をみて範囲攻撃などで対策します
重要なのは解除まで時間を稼ぐこと――。無理はしすぎずに回避に専念しつつ、要所要所で攻撃を
◆UC発動後:
上空へと舞い上がり、敵の目を惹きます
また、上空から敵を伺いつつ、ドラゴンテイマーの居場所を索敵。ダイゴウルスは、剣戟で一体また一体と切り裂きつつ、少しでも視野を広げられように。敵を見つけ次第、ハルへと伝えます
「ほめてくれたのにごめんね、ハル。今、私には敵が見えていない……。だって、青空とあなただけ。それが今の私にとってのすべてだから――」
ハル・エーヴィヒカイト
エリザ(f40801)と参加
普段は一人称が私だが彼女に対しては俺
デウスエクス・ドラゴニア。なるほど、懐かしい響きだ。
確かに強大な種族だが斬れない相手ではない。
まして、彼女と共にここに立つ以上、俺が膝をつく道理はない。
こことは違う世界で虚無王を屠りし竜殺しの刃、存分に披露しよう。
「行こうエリザ。共に戦おう」
まずは彼女と手分けすることになる。
UCによる超高速飛行で戦場を飛び回る[空中戦]
[気配感知]で敵の群れの全体像を把握、[心眼]でその動きを[見切り]
合体しようとする個体を優先して剣翼ですれ違いざまに斬り裂いていく。
優先すべき対象が片付き、エリザの声を聞いてドラゴンテイマーまでの道筋が見えたなら、
「さすがエリザ、よく見えている」
と応じながら、エリザの周囲に敵が残っていたらそちらも片付けつつ残ったダイウルゴスを踏み台にして加速、全ての剣翼を使ってドラゴンテイマーを斬り裂こう。
「それじゃあ終わらせよう竜使い。これでさよならだ」
●
この身に宿っていたはずの力が、日に日に薄れていっているのを感じる。
竜の群れと対峙するエリザベス・ナイツ(もう一つの月・f40801)は、これが自分にとって最後の戦いになるのだろうと察していた。
「デウスエクス・ドラゴニア。なるほど、懐かしい響きだ」
隣で呟くハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)。平行世界の記憶を引き継いだ彼の言葉に、エリザベスもゆっくりと頷いた。
こうして共に戦えるのも、きっと今日まで。
「一緒に……大好きな地球のために戦いましょう、ハル」
「ああ。行こうエリザ。共に戦おう」
静かな、頼もしい答え。肩を並べて対等にそれを受け取れるのも最後。やがて自分は、あなたに守られるだけの存在になってしまう。
(「――だから、最後の最後に私だってあなたとカッコつけさせて?」)
まだ、守らせてなんてあげない。
様々な想いが浮かび上がる胸の裡、エリザベスをひときわ鮮やかに染め上げるのは決意。
二人は静かに視線を交わし合い、そして飛び立っていった。
●
ハロウィンの仮装めいた姿に変身したエリザベスが、魔女さながらに空を駆ける。
星剣"ノーザンクロス"を振るえば、星屑のように光る刀身が竜の身体になめらかな線を刻んでいった。
(「相手が大きすぎるのが弱点かしら?」)
小さな獲物を狙い続けるのはいくら強大な竜といえど難しいだろう。一撃一撃が命取りになるといえど、その攻撃を躱すこと自体は困難ではない。僅かな力を振り絞って、エリザベスは絶えず振り翳される爪や牙を躱し、ブレスを掻い潜り続けた。
しかしハルの内なる世界で鍛え上げられた星剣ですら、竜を一撃で仕留める事は難しいようだ。
(「私の力が弱まっているから? それともそれほどまでに敵が強大ということ?」)
どちらにせよ、それもエリザベスにとって重要ではない。大事なのは時間稼ぎであり、そしてドラゴンテイマーを見つけ出すことなのだから。
傷口を開くように同じ場所へと刀身を滑り込ませれば、さすがの竜も苦悶の呻きと共にくずおれた。まだ自分はケルベロスで――猟兵でいられる。
索敵のために高度を上げるエリザベスを、竜たちが追いかける。ちらりと目を遣れば、ダイウルゴス達の額に刻まれた数字が増えているのが見て取れた。素早く動き回る標的に焦れ、合体し少数精鋭で仕留める方針を取って来たらしい。
ノーザンクロスが閃いて広範囲に衝撃波を飛ばすが、竜たちは僅かにのけぞっただけだ。黒鱗はびくともせず、かえって竜たちの追跡は熾烈さを増していく。
ならばと彼女は逆に竜の一体に狙いを定め、そいつ目掛けて突っ込んでいった。
振り翳した星剣が竜の飛膜を破り、その穴を掻い潜る。竜たちを振り切ったエリザベスが魔術光子をきらめかせ、速度を上げる。
竜が空気を劈くほどの咆哮と共に、更なる合体を企てようとした。その瞬間、キンッ――と甲高い音が竜の鼓膜を打つ。
違和に制止する竜の前肢が切断され、ごとりと落ちた。
瞠目する竜を更なる刃が刻みつける。
すれ違いざまに竜を屠ってみせたハルは、後方で竜が墜落していくのだけを目線だけで確認し、すぐさま次の竜目掛けて飛び込んでいった。
内なる世界から具現化した六枚の剣翼は、機動力であり武器だ。
竜は確かに強大な種族だが、斬れない相手ではない。それをハルは“知って”いた。
別の世界を戦い抜いてきたハルは、竜業竜十字島での戦いで虚無王の名を冠す巨竜を屠ったのだ。あの時の感覚は、確かな記憶としてディバイドを生きるハルにも受け継がれている。
(「まして、彼女と共にここに立つ以上、俺が膝をつく道理はない」)
視線を上げれば、漆黒の空に魔術光子のきらめきを纏って舞い上がる彼女の姿が見える。
静謐なる輝きは、まるで昏い夜道を照らす月のよう。
その光に吸い寄せられていく竜を、ハルの熾烈な刃が刻み続ける。彼女という輝きを目に焼き付けながら。
●
「ハル!」
戦場のさなかでも、エリザベスのその声ははっきりとハルの耳に届いた。
彼女の示す方向に、目指すべき目標が――ドラゴンテイマーが存在している。
「さすがエリザ、よく見えている」
斬り伏せたダイウルゴスの身体が墜落する前にその背を力強く踏みしめ、ハルは加速する。
破壊と絶望に塗り込められた空の、その先へ。
竜が翼をはためかせハルを追う。
戦禍の瓦礫にドラゴンテイマーが目を向けると、そこから新たなダイウルゴスが生み出され追従する。
「行かせない」
流星のごとく疾駆するエリザベスが彼らの道を阻んだ。万事の力があったとて真っ向から対峙して敵う相手ではないが、エリザベスの心に彼らの贄たる“おそれ”は存在しない。
剣翼が切り拓く未来を、ハルを信じているから。
ドラゴンテイマーが血色の剣を振り翳す。
だがそれすらも凌駕する速度で、ハルは男の懐へと突っ込んでいった。
「何っ――」
「それじゃあ終わらせよう竜使い。これでさよならだ」
未だ底知れぬ男の顔に驚愕が浮かぶのを、はっきりとハルは見て取った。
嵐のような刃羽の弾幕が畳みかけ、男を骸の海へといざなう。男だったものは断末魔の一片さえも残らず消えていく。
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる竜の輪郭もまた、粒子となってほどけ、霧散する。青白い光が火の粉のように舞い、ハルの白い膚を一瞬照らしては消えていった。
その後ろ姿を、エリザベスは万感の想いで見つめ続けていた。
「ほめてくれたのにごめんね、ハル。私、敵なんて見えていなかった……」
絶望に塗りこめられていた空が日常を取り戻していく。
初夏の空はどこまでも青く澄み渡っている。
悠然と佇むハルの姿は、どんな竜よりも勇ましく、そして美しかった。
「だって、青空とあなただけ。それが今の私にとってのすべてだから――」
同じように空を翔け、共に在った日々は終わりを告げる。それでもきっと、今日という日を二人が忘れることはないだろう。
ハルが振り返り、ふわりとこちらに向かって飛んできた。
その雄姿を、エリザベスは晴れやかな笑顔で迎え入れるのだった。
大成功
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