ケルベロス・ウォー⑦〜天の光は審査員
●天空の星々
|永遠回廊《グラビティ・ゲート》を打ち破られた『黄道神ゾディアック』の見下ろす先に、地球人類の英知の結晶が存在していた。
『|決戦配備《ポジション》』。
「あれこそが私達デウスエクスに仇為す力、心の力というわけか」
地球人類侮りがたし。だが、ゾディアックは、この不測の事態をも想定内としていた。
「『ゆりかご』の用意は既にできている。後は、地球人類の目から『ゆりかご』を覆い隠すだけ……」
そのための手段として、ゾディアックは、自身のユーベルコードを囮とすることとした。
「天空の星々よ、その輝きにて私達デウスエクスの行く末を照らすのだ」
ゾディアックの独白にも似た呟きに、天に座す星々が、瞬きを返す。
『よかろう……』
『汝のユーベルコードが美しき限りは……』
虚空より聞こえた声は、夢か、幻か。
●美を競う者達
タビタビ・マタタビ(猫勇者一歩手前・f10770)は、ケルベロス・ウォーの進展を、猟兵達と共有していた。
「遂に出てきたね、『黄道神ゾディアック』! 十二剣神のリーダーっていうから相当強いと思うけど……戦いに勝つためにも、ここは何とかしていかないと!」
実際、ゾディアックは、デウスエクスによる地球侵略作戦の約半分を指揮していた、デウスエクス連合軍最強の指揮官。
天体の魔力を得て、星界の魔術を操る、強大なユーベルコードの使い手である。
「そんなに強いのに、自分達が全滅するかもしれないって心配して、『ゆりかご』っていう保険をかけておいたみたい。少ないグラビティ・チェインの中でも生きていけるタイプのデウスエクスってことかな」
ゾディアックは、地球各地にばら撒いたこの『ゆりかご』の存在を隠蔽する為に、自らが囮となって、『最も美しいユーベルコード』で攻撃を仕掛けてくるという。
「ゾディアックのユーベルコードは、天空の美しき星々が発する『ガンマ・レイ・バースト』を浴びて強化されてて、生命体も無機物も関係なく全部魅了しちゃうんだって!」
地球人類はもちろん、虫も石も、その影響から逃れる事はできない、ということだ。
圧倒的な力により、通常の手段でゾディアックを傷付けることは不可能だが、手段は残されている。
「『ゾディアックの攻撃よりも美しいユーベルコード』だよ! 美しさでゾディアックより上回れば、相手のユーベルコードを押しのけてゾディアックにダメージを与えられるみたい」
しかし、美の基準というものに、絶対的な尺度は存在しない。だとすれば、一体どうやって判断されるのか?
「猟兵とゾディアック、どっちのユーベルコードが美しかったかは、『天空の星々』が判定してくれるんだって」
先ほどタビタビの説明に出てきた、ゾディアックに加護を与えている存在だ。
「あれ、それって、星が審査員……ってコト?」
なんとも不思議な話ではある。
「でもここは公正に判断してくれるみたいだから、自慢のユーベルコードをみせつけちゃおう!」
おー! と拳を天高く突き上げるタビタビなのであった。
七尾マサムネ
こちらは『ケルベロス・ウォー』における『黄道神ゾディアック』のシナリオです。
一章で完結します。
ちなみに、シナリオ難易度は「やや難」です。
●プレイングボーナス
ゾディアックよりも美しいユーベルコードを使って戦う。
それでは、皆さまのご参加、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『十二剣神『黄道神ゾディアック』』
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POW : |三裂せし射手座の矢《サジタリウス・トリフィド》
【分裂を繰り返す星光】で射抜いた対象を【天より降り注ぐ射手座の光矢】で攻撃し、着弾点からレベルm半径内の仲間を【ピンクと青の星光】で回復する。
SPD : |牡牛座の超新星《クラブ・パルサー》
【頭上全てを覆い尽くす超新星の煌めき】を披露する事で【白き光を纏う星神】に変身し、戦場内の敵全てを攻撃する【中性子線】を降らせる能力を得る。
WIZ : |地を睨む水瓶座の神瞳《ヘリックス・ネビュラ》
偽物の【「神の目」とも呼ばれるヘリックス星雲】を創造し、戦場上空に浮かべることで、【滅びをもたらす銀河光】による連続攻撃能力と超再生能力を得る。
イラスト:稲咲
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ハル・エーヴィヒカイト
始めようゾディアック。これは互いに生存をかけた戦いだ。
あなたの思いは正しくともその手段は受け入れられない。
だからせめて敬意をもって迎撃させてもらう。
刮目せよ星々よ。降り注ぐガンマ・レイ・バーストよ。
我が手に星の聖剣。
全ての光をその身に集め、究極の光として輝かせるもの。
UC発動。射手座の光矢も天空の星々の輝きも、この場にある全ての光をその美しさごと取り込んでなによりも眩しい極光として放つ。
戦場に味方がいる場合は事前に[集団戦術]によって私の視界に入らないようさがってもらおう。
空桐・清導
POW
アドリブ・連携歓迎
「アンタの事情や心の内は問わねえ。
この戦いは生存競争ってやつなのかもしれない。
オレはヒーローとして!デウスエクスから世界を護る!
ソレがオレのやるべきことだから!
だから力を貸してくれブレイザイン!
お前の輝きで宇宙を照らすんだ!」
UC発動
宇宙を、世界を必ず護るのだという無窮の誓いが煌めき出す
ただ己が真の姿を解放するUCは無謬の美しさと輝きを放っている
「勝負だゾディアック!」
地面を踏みしめ、ゾディアックへと飛翔する
全身全霊の[希望の力]を宿した煌拳を何度も叩き込み、
放たれる光矢を逆に光でかき消して攻撃の手を止めない
「ちきしょう!こんなことでしかお前らと向き合えないのかよ!」
黄道神ゾディアック。
地球侵略を無慈悲に遂行する十二剣神が一柱に、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は訴えかけていた。
「アンタの事情や心の内は問わねえ。この戦いは生存競争ってやつなのかもしれない」
清導の言葉を、沈黙を以て受け止めるゾディアック。
「だとしてもオレはヒーローとして! デウスエクスから世界を護る! ソレがオレのやるべきことだから! だから力を貸してくれブレイザイン! お前の輝きで宇宙を照らすんだ!」
宇宙を、世界を必ず護るのだという無窮の誓い。その思いが心の内より溢れ、煌めき出す。
そして『超鋼真紅』は、清導の決意に、誓いに応えた。
「見ててくれ、天空の星々! これが、オレの、オレ達の変身!」
シン・超変身!
機械鎧と青年と。二つの力が重なり、現れたその勇姿は、まさに超英雄。
己が真の姿を解放した今の姿は、無謬の美しさと輝きを放つ。
決意を力、姿として体現する清導。
そして、ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)もまた、星空を背にしたゾディアックへと、決戦の意志を告げた。
「始めようゾディアック。これは互いに生存をかけた戦いだ」
清導も言っていたように、事情はある。デウスエクスと猟兵、どちらも譲れぬ類のものだ。
だからこそ、全力を振り絞る。勝者となるものの礼儀として。
ゾディアックは、まっすぐに、ハルの意志と視線を受け止める。
「あなたの思いは正しくともその手段は受け入れられない。だからせめて敬意をもって迎撃させてもらう」
「君達もわかっているのなら、何も言う事はない。遺恨なく禍根なく。雌雄を決しよう」
ハルへと頷くゾディアック。その何気なくも優雅な動作が、戦いの始まりの合図となった。
「勝負だゾディアック!」
地面を踏みしめ、ゾディアックへと飛翔する清導=シン・ブレイザイン。
天を翔け抜ける、真紅の閃光。撃ち出す拳にこめるは、全身全霊の希望の力。
煌拳を、ゾディアックへと叩き込んでいく清導。幾度も、幾度も。勇気の奏でる美を、誇示するように。
「確かに、君の勇気と決意は美しい。けれど、決意と覚悟ならば私にも備わっているとも」
ゾディアックの言葉に応えたのは、星の輝きだった。
虚空に浮かんだ黄道十二宮が一、射手座の文様が、光を放つ。
ほとばしる星光は、分裂を繰り返し、清導を全方位から狙う。
安全地帯を掌握した星の矢を、しかし、清導は、臆することなく迎え撃った。
迫りくる光矢を、逆に光でかき消し、同時に進撃も止めぬ。
「ちきしょう! こんなことでしかお前らと向き合えないのかよ!」
思いの丈をぶつけながら、清導の拳は、一層苛烈さを増していく。
止むことなきその光に、天空の星々は、判定を下した。
『まことに美しい……』
『その歪みなきまっすぐさ、認めよう』
清導の直撃コースを描いていた光の矢の群れが、突如掻き消えた。
星々に認められた清導のユーベルコードが、ゾディアックのそれを凌駕したのだ。
想いの力が、限界の壁をぶち破る。ブレイザインの拳が、ゾディアック本体に届き、星の鎧を打ち砕く!
「あとは頼んだぜ!」
拳を振り切った直後、清導が退き、ハルが前に出た。その鮮やかなスイッチのタイミングは、並みのデウスエクスには捉えられなかっただろう。
意を汲んでくれたヒーローに感謝を示すと、ハルは、天空を仰ぎ見た。
「刮目せよ星々よ。降り注ぐガンマ・レイ・バーストよ」
「君の美しさ、如何なるものか。見せてもらうとしよう」
ゾディアックは、再び射手の力を発現する。
新たな流星雨。降り注ぐ射手座の光矢をかわしながら、ハルは自らのユーベルコードを解き放った。
「顕現せよ星の聖剣。全ての光をその身に集め、究極の光として輝かせるもの」
唄うように言葉を紡ぐハル。その手に、剣が具現化していく。
射手座の光矢も、天空の星々の輝きも、そして、ブレイザインの煌めきも。
戦場を作り出している全ての光を、その美しさごと取り込み、星剣は成立した。その刀身が放つのは、この場のなによりも眩しい極光。
戦場は、闇に包まれた。この場の光は、今や星剣の元に。
「その、輝きは……!」
あまりの眩さに、ゾディアックさえも目を細める。
ハルの齎す輝きを、天空の星々だけが正しく把握していた。
『真に美しい』
『銀河を彩るに相応しい輝き』
ハルは確かに聞いた。ゾディアックではないものの声を。
黄道の神に匹敵する威厳を讃えたそれは、ハルの美を認めた。
ガンマ・レイ・バーストの消失とともに、射手座の文様が掻き消え、この場はハルの輝きの独壇場となった。
そして繰り出されるは、最大光輝の星剣による斬撃。
圧倒的なる美が、ゾディアックの体を染め上げ、七星の極光で薙ぎ払ったのだった。
大成功
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ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
まぶし~!
なんだかピカピカ目に悪い神様だこと!
だがな!黄金に輝く騎士道の権化たるベルト・ラムバルドが煌かねばならんのよ!行くぞ!
キャバリア操縦しカリスマオーラ纏い発進!
…くそー!眩しいし綺麗~!宇宙レベルの美しさかよ!?
こちとら銀河を越えた超☆銀河!こんな時の為に作ったUC発動よ!
キラキラに輝く超銀河級☆暗黒騎士形態に変身!カリスマと存在感で自己主張して注目集めちゃおう☆
見たか!これが宇宙の暗黒でも煌き輝く綺羅星の如き騎士道精神の魂よッ!!!
そして星降る無数のカリスマオーラを空に浮かぶ星雲目掛けて目潰し攻撃だ!
わはは!どうだ!?我が威光、さぞかし眩しいだろうよ!目ぇ御大事に~!
「まぶし~!」
それが、ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)の第一声。
黄道神ゾディアックと対面を果たしたベルトの感想は、簡潔にして真理を突いたものだった。
「なんだかピカピカ目に悪い神様だこと! だがな! 黄金に輝く騎士道の権化たるこのベルト・ラムバルドが煌かねばならんのよ! 行くぞ!」
ちらりと空を見上げれば、そこには、確かに瞬く天空の星々。
「よし、見ているな!」
キャバリア『パロメデス』のエンジン全開、スラスター点火。
カリスマオーラを纏い、発進の時!
「君の力、とくと見せてもらおう。だがその前に、私の力をお見せせねば」
ゾディアックが、ベルトを歓迎するように、光を放った。
天に瞬く牡牛座。
生じた超新星の煌めきがおさまった後、ゾディアックは、白き星神の姿となっていた。
「……くそー! 眩しいし綺麗~! 宇宙レベルの美しさかよ!?」
ベルトの賞賛とともに降り注ぐ美の化身は、中性子線。
ガンマ・レイ・バーストの加護を受けた絶対的美が、ベルトを圧倒する。
「だがこちとら銀河を越えた超☆銀河! こんな時の為に作ったユーベルコード発動よ!」
カッ!
ゾディアックの輝きを押し返す、機神の光輝。
光の内より現れし、キラキラに輝く超銀河級☆暗黒騎士形態!
闇と光輝が合わさりし奇跡の姿。カリスマと存在感による自己主張は激しく、ゾディアックの視線を釘付けにした。
「なんという眩さ、美しさ」
「見たか! これが宇宙の暗黒でも煌き輝く綺羅星の如き騎士道精神の魂よッ!!!」
ゾディアックの注目を一身に浴びた事に満足を覚えながら、高らかに告げるベルト。
ぶつかり合う、2つのユーベルコード。競うそれらを、天空の星々が睥睨した。果たして、その判定は。
『うむ』
『なるほど』
『わかった』
ベルトの聴覚に、謎の声が届いた。気がした。
ゾディアックに力を与えるような星々が、どのような人格(星格?)を持っているのかどうかはさておいて。
ゾディアックから輝きが失われるのと反対に、ベルトのカリスマオーラは、一層存在を誇示した。
星降る無数のカリスマオーラを、空に浮かぶ敵へと目掛け、目潰し攻撃!
出番を待っていた星雲さえも、その巨大な瞳を閉じざるを得なかった。
「わはは! どうだ!? 我が威光、さぞかし眩しいだろうよ! 目ぇ御大事に~!」
ベルトの高笑いに、ゾディアックはなすすべもなく。
ただ甘んじて、カリスマの輝きを受け入れるしかなかったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
新山・陽
コード(暗号)は美しいもの
魅了されて口走るつもりはありませんが、暗号作成に一家言ある私にとっては、その構造を美しいものと捉えています
UC『真価の片鱗』を発動して、敵の行動に制限がかかるよう試みます
敵から、何らか直接的な攻撃があれば【咄嗟の一撃】や【見切り】を駆使して戦いに応じます
星雲も銀河も壮大で結構なことです
在り様の美しさは認めております
しかし、今を戦う者たちは、様々な意味を持ってコードの色合いを変えてみせるでしょう
私のこれも、無能力者の技術【暗号作成】の到達点のひとつ
一代限りの純度の高さが、綺羅星にように映ればいいのですが
黄道神ゾディアック。
十二剣神のリーダーを務めるそのデウスエクスは、絶対の美を従えて、新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)の前に立ちはだかる。
「こうして私と相対するからには、生き延びる勝算があるとみえる」
ゾディアックの言う通り。この戦いを制するのは、より美しきユーベルコード。
何を以て美とするか。その判断は、天空の星々によって為されるもの。その審美眼にかなうものを披露できるか否かは、陽の双肩にかかっている。
ゾディアックの佇まいに魅了されんとする心を引き締め、陽は告げた。
「|コード《暗号》は美しいもの。暗号作成に一家言ある私にとっては、その構造こそが美しいもの」
そして陽は、コードを発動した。
「ユーベルコード|真価の片鱗《インテリジェンスフィクサーカウンター》」
世界が書き換わる。
猟兵の唱えるコードは、現実に超常を現出させる。
陽の、そしてゾディアックの周囲の空間が歪曲したかと思うと、ゾディアックへと暗号が注ぎ込まれた。
「これは……」
巧妙に組み上げられた幻覚により、思考を、自由を奪われるゾディアック。
見た目や現象に、派手さはないかもしれぬ。だが、そこに秘められた美を、天空の星々が見逃すことはなかった。
『|文字列《コード》が織り成すもまた美』
『なんと美しい事か』
『宇宙の真理を思わせる』
しかし、対するゾディアックもまた、頭上に超常を呼び寄せていた。
開きゆく、巨大なる瞳。ヘリックス星雲。光という現象となって降り注ぐ滅びが、陽へと襲い掛かる。
それを、己が|技能《スキル》を駆使しながら、抗っていく陽。
「星雲も銀河も壮大で結構なことです。在り様の美しさは認めております」
宇宙的脅威をかわしながら、相手のユーベルコードを評する陽。
「しかし、今を戦う者たちは、様々な意味を持ってコードの色合いを変えてみせるでしょう。私のこれも、無能力者の技術【暗号作成】の到達点のひとつ」
一代限りの純度の高さが、綺羅星にように映ればいいのですが。
果たして、天空の星々が下した評決は。
「星雲の光が掻き消されていく……」
ゾディアックの言葉通り。
天に浮かびし偽星雲が、静かに動きを停止していく。
ゾディアックの思考とそこから生み出される現象のことごとくは、陽のコードによって、凍結へと導かれた。
「人類の英知が、大宇宙の神秘を凌駕するとは……」
ゾディアックが、陽が信じ、示した美に、白旗を上げたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
最も美しい。
その形容に相応しい、目の眩むようなユーベルコードですね。
時間が許せば、ずっと眺めていたいところですが…
まぁ、そういうわけにもいきませんね。
お仕事お仕事。
私のユーベルコードは、どれも美しく研ぎ澄まされています。
ただひたすらに【磨き抜かれた念動力の技能】の結実。
それこそが、私のユーベルコードの本質です。
…「純粋に顔が良いだけ」みたいのもありますが、それはさておき。
極限まで研ぎ澄まされた、念動力の技巧。
その業が、美しさで劣ることなど考えられません。
私のこの念動力が、アナタに通用しないことなどありえないのです。
見せてあげましょう。
この私の、洗練され尽くした|念動力《ユーベルコード》を。
エリー・マイヤー(被造物・f29376)を迎えた戦場は、既に美に満ちていた。
黄道神ゾディアックの齎す、美の極致たるユーベルコード。そして、猟兵達の披露した美の名残。
そしてゾディアックは、エリーの来訪をみてとると、新たな美を披露した。
天に浮かぶは星雲。地上を睥睨する巨大なる神瞳が、現れる。
まがい物とは思えぬその威容を見上げ、エリーは、ほう、とため息を吐いた。
「最も美しい。その形容に相応しい、目の眩むようなユーベルコードですね。時間が許せば、ずっと眺めていたいところですが……まぁ、そういうわけにもいきませんね」
お仕事お仕事。
天空の星々が、エリーを待っている。今度の猟兵は、如何なる|美《ユーベルコード》を示してくれるのか? そしてそれは、黄道神に比肩しうるものなのか?
その大宇宙の意志といえるものの中には、ほのかな期待にも似たものが混じっているように感じられた。
「私のユーベルコードは、どれも美しく研ぎ澄まされています。ただひたすらに【磨き抜かれた念動力の技能】の結実。それこそが、私のユーベルコードの本質です」
そう。
エリーの研鑽によって高められた、高練度の念動力。銀河からすれば僅かな雫であろうと、届く事はあるはず。水滴がやがて岩を穿つように。
「……『純粋に顔が良いだけ』みたいのもありますが、それはさておき」
「…………」
ゾディアックは、エリーの呟きを無言で受け流してくれた。
「極限まで研ぎ澄まされた、念動力の技巧。その業が、美しさで劣ることなど考えられません。つまり、私のこの念動力が、アナタに通用しないことなどありえないのです」
断じたエリーは、天空を仰ぎ見る。
「見せてあげましょう。この私の、洗練され尽くした|念動力《ユーベルコード》を」
エリーは、念動力で自身をつかみ、空へと体を投じた。
そして、同時にユーベルコードを発現。
「ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……」
渦巻。
螺旋状の念動力が、ゾディアックを狙う。
『螺旋。宇宙を構成する概念の1つ』
天空の星々の声が、エリーの脳裏に直接届く。
『一回転ごとに前に、外へと進む力』
『拡大し続ける宇宙そのもの。それは真理』
星々の裁きは、厳正に行われた。
そして渦巻は、中性子光を押しのけ、星雲とゾディアックを打ち抜き、破壊を成し遂げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
幸・鳳琴
不死たる自分らを過信せず、
私達を侮らず――備えまでしておく
良い指導者ですね
けれど打ち勝たなければ平和は訪れないというなら
――勝負ですっ
ゾディアックを傷つけることが出来るのは
美しいユーベルコードを叩き込むその時だけ。
であれば万全に「その時」の布石を打っていく
残像や、功夫でのフェイント攻撃を仕掛け
少しでもゾディアックの注意をそらすよう試み
勇気を心に燃やし間合いを詰めていきますね
シャウトで気合いを入れ、オーラ防御で攻撃を凌ぎ
閃光の仙術を込めた《幸家・鳳龍》を叩き込みます!
鳳凰の如き炎翼を広げた闘気の龍は多くの属性攻撃を纏い
生命の美しさと共に輝きて、穿ちましょう
これが絆攻撃――私達の、「輝き」ですっ!
その美と輝きは全て、グラビティチェインの枯渇を防ぐために。
幸・鳳琴(精霊翼の龍拳士・f44998)は、その身を投げうち、心を殺して猟兵達と相まみえることを選んだ黄道神ゾディアックを、見つめた。
「不死たる自分らを過信せず、私達を侮らず――備えまでしておく。良い指導者ですね」
鳳琴のまなざしに、憎しみの色はない。けれど。
「打ち勝たなければ平和は訪れないというなら――勝負ですっ」
「望むところ。もがきあがく事こそ生命の本質なれば」
ゾディアックは、鳳琴を正しく『敵』と認めたようだった。それは、力の差、存在の差を越えて対等と認めたという証でもある。
ゾディアックを傷つけることが出来るのは、美しいユーベルコードを叩き込むその時だけ。
鳳琴も、確と承知している。ならば、『その時』に至るため、万全に布石を打っていくのみ。
果敢に挑みかかる鳳琴。残像や、功夫でのフェイント攻撃を仕掛け、少しでもゾディアックの注意をそらすよう注力していく。
勇気を心に燃やし、敵との間合いを確実に詰めていく。
「このような力で私に抗しえぬことは、君もわかっているはず」
ゾディアックの眼前、鳳琴の進撃を遮るように、虚空へと星座が描き出された。
それは射手座。放たれる絶対美の光矢が、無数となって、鳳琴へと降り注ぐ。地球生命根絶の意志を込めたそれは、まさに苛烈。
気合の声とともに、光の中を掻い潜る鳳琴。星をも殲滅せんとする怒涛の中を、オーラを纏って、ただ前へと突き進んだ。
そして遂に、美は神へと届く。
「今こそ!」
拳を起点に発現するは、閃光の仙術を込めた、《幸家・鳳龍》!
鳳凰の如き炎翼を広げた闘気の龍。その身に宿すは、森羅万象。
火や風、水……それらが織り成すのは、まさに星の在り様そのもの。生命の美しさと共に輝きて、穿つ。目の前の敵を。
「これが絆攻撃――私達の、『輝き』ですっ!」
ぶつかり合う、二者のユーベルコード。共に美しく、戦いを彩っていく。
それを見守るのは、天空の星々。ゾディアックにガンマ・レイ・バーストという加護をもたらしていたそれは、しかし一方で、美の前では平等の顔を見せた。
『共に美しい』
『その存在を賭けて同胞を守ろうという決意』
『優劣を決めるのはまことに心苦しいが……』
打ち消されたのは、射手座の矢の方だった。
龍が咆哮する。
次の瞬間。鳳琴の一撃は、確かに黄道神を討ち貫いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
儀水・芽亜
美しきユーベルコード、ですか。私も昔は「自分可愛い」な性格だったものです。
今は少しは客観的に見られるようになったと思いたいですね。
さて、「全力魔法」「範囲攻撃」の蝶霊跋扈を「アート」でアレンジします。呼び出す蝶の種類を黒揚羽から金属光沢の青いモルフォ蝶に変更。
そして私も、薄藤色の甘ロリを来た十五歳当時の姿に変身して、可愛さを振りまきます。
ただ戦うだけならいいですが、この姿も評価されるとなると辛いですね。
ともあれ、攻防一体のこのユーベルコードで“黄道神”ゾディアックの攻撃を防ぎ、生命力を吸い取って、勝利へと近づきましょう。
天に星の輝きあれば、地には蝶の舞う幻想郷がある。それを証明して見せます!
地球上で繰り広げられる、宇宙的の美の宴。
天空の星々見守る中、黄道神と猟兵が織り成すユーベルコード戦に、儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)も加わっていた。
「美しきユーベルコード、ですか。私も昔は『自分可愛い』な性格だったものです」
今は少しは客観的に見られるようになったと思いたいですね。芽亜は、自分の成長を、希望を込めてそう評した。
天空の星々は、今は沈黙している。『彼ら』が反応を示すのは、芽亜がその眼鏡にかなう美を示した時のみというわけか。
ならば、その興味を惹くことへと注力こそが、黄道神に打ち克つ近道となろう。
「……!」
ゾディアックが、刮目した。
芽亜が、変わっていく。
限界までその魔力レベルと影響範囲を引き出したユーベルコード。そこに、アートでアレンジを加える。
呼び出す蝶は、黒揚羽ではなく、金属の光沢を湛えた青いモルフォ蝶。
舞う蝶に包まれる芽亜自身も、薄藤色の甘ロリをまとった十五歳当時の姿に変身を遂げる。
抑えようとも溢れ出す可愛さを、存分に振りまく。
「ただ戦うだけならいいですが、この姿も評価されるとなると辛いですね」
芽亜は、若干複雑な思いを抱いた。ゾディアックの注目はもちろん、天空の星々の採点対象となっているかと思うと。
「猟兵の力はあなどれない。私のユーベルコードで以て、ねじ伏せさせてもらう……!」
ゾディアックが、虚空に描くは射手座の星図。
閃く星光は、無数へと分裂して、芽亜を射抜かんと軌跡を描く。それ自体が、既に矢の如し。
しかし、芽亜の姿は攻防一体。
ゾディアックの星光を跳ねのけ、その内に秘めたる活力をも、自らの『美』へと変換していく。
芽亜の飛翔は止まらない。近づくのは黄道神、そして勝利の二文字だ。
「天に星の輝きあれば、地には蝶の舞う幻想郷がある。それを証明して見せます!」
果たして、芽亜の決意……とわずかながら確かに存在する羞恥心……は、天空の星々の見届けるところとなった。
『片や、勝利の為に輝く天の光』
『片や、勝利の為に舞う地の命』
夢幻の如く響く、天の声。
果たして、星々の選択は。
「ガンマ・レイ・バーストの加護が……?」
不意に、星の光が途絶えた。これが、星々の裁定か。
次の瞬間、芽亜とモルフォ蝶の群れが、ゾディアックに届いた。
星々をも魅了する、偽りなく美しき、芽亜のユーベルコードが。
大成功
🔵🔵🔵
バズ・ロンドビート
私にとって美しいものといえば、虫ですが
星々に審査していただくわけですから、一般的に理解される美しさが良いですね
それなら、あのユーベルコードにしましょう
【舞い踊る黄金の蝶】
小さな金の延べ棒を取り出し、賢者の石を介した錬金術によって、人造生命の創造を行います
黄金色に輝く無数の光の蝶が生まれ、舞い踊りながらゾディアックに向かいます
渦を巻くような蝶の群れの動きは、さながら黄金の竜巻
一匹一匹がきらきらと輝いて
まるで、カッティングされたイエローダイヤモンドが回転しているかのようです
星雲も美しいですが、ダイナミックな動きという点では蝶の方が勝つはずです
星の皆さん、いかがでしょう?
勝てたら、超猛毒で攻撃します
地球に、そして銀河に輝く美の光。
黄道神ゾディアックと競うように、天空の星々の審査ステージへと上がったのは、バズ・ロンドビート(虫好きの錬金術士・f38977)である。
「私にとって美しいものといえば、虫ですが、星々に審査していただくわけですから、一般的に理解される美しさが良いですね」
これまでの猟兵達のユーベルコードのチョイスからしても、星々の美的センスは、地球人類からそう超越したものではなく、バズ達の基準に近しいものだという事は推測出来た。
「それなら、あのユーベルコードにしましょう」
「決まったようだね。ならば、私も全力の美を以て、君達のあがきを潰滅させるだけ」
意気込むゾディアックに対し、バズが懐から取り出したのは、小さな金の延べ棒。
それ自体もまた、ある種の美を備えた物質である。だが、そこにバズのユーベルコードが干渉した。
賢者の石を介した、バズの錬金術。錬成されるは、命。人造生命の創造。
「舞い踊れ、黄金蝶々」
延べ棒の分解と再構築により、黄金色に輝く無数の光の蝶を生誕させた。輝きの群れは、舞い踊りながらゾディアックへと飛翔する。
渦を巻くような蝶の群れの動きは、さながら黄金の竜巻。星や、ゾディアックの放つ輝きを反射して、一匹一匹がきらきらと輝くさまは、
「まるで、カッティングされたイエローダイヤモンドが回転しているかのようです」
思わず見とれ、目を細めるバズ。
蝶の織り成す美と競うように、ゾディアックも奇跡を具現化させた。天空に出現する星雲が、神の眼を顕す。
地球上に出現した星雲は、地球人類やバズを感動させるに足る絶景だ。降り注ぐ滅びの銀河光さえも美しいと見惚れてしまうほどに、
だが、バズには、勝算があった。ダイナミックな動きという点では、蝶の方に軍配が上がるはず、と。
「さあ、星の皆さん、いかがでしょう?」
バズが、伺いを立てるように空を見上げる。
遠く遥かなる星々は、返答として、瞬きを返した。
『よき』
『命の織り成す輝き、実に好ましい』
天の声は確かにバズに届き、1つの現象を起こした。
ゾディアックに注ぐガンマ・レイ・バーストが、減衰していく。
その機に乗じて、蝶の群れは、ゾディアックを取り囲み、その姿を黄金に塗り替えていく。
「私の美を、上回るとは……!」
そして、羽ばたきから零れ落ちた超猛毒が、黄道神の体を美しく蝕んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ロイド・サングルガット
極まった美しさは暴力だというのは、大いに同意するところだ。
フィン(不死鳥)、君もそう思うだろう?
しかし、|此方《これ》は強敵だ。さすがは神を名乗るだけある。
だが、フィン。彼女の美しさは視覚のみに頼ったもの。
ならば、私達なら一筋の勝ち筋が見えるね。
周囲一帯を夜に。星雲がより美しく見えるね。
だが、星空が目立つのは周囲が暗いからだ。
フィン、君の炎を大きく広げてくれ。夜を焼く不死鳥、真夜中の太陽よ。
私は黒白刃鍵を弾いて美しいBGMをつけよう。
天候操作でオーロラを起こし、風を操り揺らめかせる。
舞う火の鳥、煌めく火の粉、オーロラカーテン、魔曲。
視覚と聴覚から支配する。見るべきは遠い星ではないと知り給え。
ロイド・サングルガット(真夜中の太陽・f45226)の紅瞳に映るは、超常の美。
黄道神ゾディアックの威容、そして披露するユーベルコードは、確かに美そのもの。それも、絵画や音楽とは、また別種の次元のものだと思われた。
そして、空に座するは、星雲。ゾディアックが創出した、ヘリックス星雲。
それは、ユーベルコードで模された偽物に過ぎない。だとしても、それは絶世、と呼ぶに相応しい。
「極まった美しさは暴力だというのは、大いに同意するところだ。フィン、君もそう思うだろう?」
不死鳥が同意を示すのを確かめながら、ロイドは改めて黄道神を見据えた。
「しかし、|此方《これ》は強敵だ。さすがは神を名乗るだけある。だが、フィン。彼女の美しさは視覚のみに頼ったもの。ならば、私達なら一筋の勝ち筋が見えるね」
フィンは、頼もしく頷いた。
「君達のユーベルコードが如何なるものか、示してみるといい」
星雲を背にしたゾディアックが、ロイド達を促す。
天空の星々も、発現の瞬間、そして描き出される美をを心待ちにしているようだ。
「では」
ロイドは、周囲一帯を、夜へと書き換えた。現世より隔絶されし、闇の世界へ。
「星雲がより美しく見えるね。だが、星空が目立つのは周囲が暗いからだ」
そこでロイドは、不死鳥に1つ頼みごとをした。
「フィン、君の炎を大きく広げてくれ。夜を焼く不死鳥、真夜中の太陽よ」
ばさあっ、と、フィンが翼を広げる。それと同時に、蓄えられた炎もまた燃え上がり、拡大する。
そしてロイド自身は、手元に、鍵盤を呼び寄せた。
浮かぶ黒白刃鍵を弾き、美しきBGMを紡ぎ出す。されど、ロイドの創り出す美は、まだまだ序の口。
「空が、ゆらめいている」
ゾディアックの指摘通り、闇空にはオーロラが出現していた。これも、ロイドの天候操作によって引き起こされたものだ。
更に、招いた風が、オーロラを優雅に揺らめかせる。
この場を彩る、舞う火の鳥、煌めく火の粉、オーロラカーテン、魔曲。まさに、ロイドとフィンの協奏曲。
「視覚と聴覚から支配する。見るべきは遠い星ではないと知り給え」
1つのユーベルコードから生み出された美は、もはや一幅の絵画。否、それを超越していた。
天空の星々は、リズミカルに瞬き、ロイドの美を賞賛した。
『良きかな』
『協同にて呼び起こされし美。これは1人である黄道神には為し得ぬか』
虚空から響いた声は、ロイドにも届いた。
そして、絶景は星雲の力を退け、ロイドのユーベルコードが、ゾディアックを美で包み込んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
どんな奴が相手だろうと
俺たちの決意は変わらない
地球を守り抜くぜ
戦闘
予兆で
強さの所以が『心』って言ってたけど
美も心から生まれるものって俺は思う
音楽もそうだけど
ただ機械的な正確さだけでは
それは綺麗なメロディにはなるけど
決して心に響くものにはならない
想いを込めて弾くことで初めて
本物になる
そこに真の美しさが宿るはずだ
だから俺がやることは
ただただ思いをのせて焔摩天を振ることだけだ
世界と命と
命が紡ぐ未来を守ってみせるという決意
命を蔑ろにして滅ぼそうとする身勝手な奴らへの
どうしようもない怒り
もちろん強大な敵に立ち向かう恐怖も
正直あるな
ま、そんなこんな想いを受けて
地獄の炎が更に熱く熱く燃え上がる
爆炎の勢いで突撃
超新星の煌めきも白い光も紅蓮に染めて打ち消し
中性子線そのものを獄炎が焼却しながら
紅蓮の光刃を一閃
黄道神を灰に帰す
また蘇っても…
俺たちの心にあんた達は勝てないぜ
黄道神ゾディアック。
自身の在り方はもちろん、奏でるユーベルコードもまた、美しい。
だが、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は、その隔絶した美を前にしても臆することはなかった。
「どんな奴が相手だろうと俺たちの決意は変わらない。地球を守り抜くぜ」
「それは私も同じ。グラビティチェインの枯渇から星々を守ることこそ使命」
ウタは、かつてゾディアックが語っていた言葉を思い出す。
「強さの所以が『心』って言ってたけど、美も心から生まれるものって俺は思う」
ウタの言葉に、ゾディアックは、ただ耳を傾けた。
「音楽もそうだけど、ただ機械的な正確さだけでは、綺麗なメロディにはなっても、決して心に響くものにはならない」
「美にもまた『心』が必要だと?」
「ああ。想いを込めて弾くことで初めて本物になる。そこに真の美しさが宿るはずだ」
それは、ユーベルコードも同じ。
何の思いもなく発動したユーベルコードは、単なる『力』。
星々を救うため、心を殺して侵略するゾディアックの美もまた、今は単なる暴虐でしかない。
「だから俺がやることは」
ただただ思いをのせて、焔摩天を振ることだけ。
巨大剣を掲げるウタに、ゾディアックもまた応じた。
頭上に煌めく牡牛座、生まれ出る超新星の輝き。白光に包まれたその姿は、まさに星の神と呼ぶにふさわしい。
その美に抗うウタの原動力こそ、心の力。
世界と命と。
命が紡ぐ未来を守ってみせるという決意。
命を蔑ろにして滅ぼそうとする身勝手な奴らへの、どうしようもない怒り。
「もちろん強大な敵に立ち向かう恐怖も……正直あるな」
しかし、恐れさえも、ウタの力となる。
そんなこんなの想いを受けて、地獄の炎は、更に熱く熱く燃え上がる。
心の力が、ユーベルコードを点火した。
爆炎の勢いで、ウタは突撃を敢行した。
「私とて譲れぬものがある」
襲い来るのは、宇宙光、中性子線の裁き。
ゾディアックの目的、ウタの想い。それらがこもったユーベルコードがぶつかり合う遥か上方で、天空の星々が瞬いていた。2者の美を見極めようとするように。
『黄道神が星々を守らんとする目的は純粋なり』
『それに対し、猟兵の想いは、雑多で混沌』
『しかし……』
星々の逡巡が、ウタにも伝わってきた。
「たとえ星々が認めなくても、俺は止まったりはしない。勝利をつかむまで!」
ウタが、剣を振るった。
超新星の煌めきも、白い光も、全て、紅蓮に染めて打ち消す。
果たして、その決意は、現実をも書き換えた。中性子線そのものを、獄炎が焼却し始めたのだ。
「これは、ガンマ・レイ・バーストが失われて……」
それはつまり、ウタのユーベルコードがより美しいと、星々が認めたという事。
そしてウタは、全身全霊を込めて、紅蓮の光刃を一閃する!
「この私が美しさで、君達猟兵に敗れようとは」
力を失った黄道神が、灰燼に帰してゆく。天空の星々の加護も、もはや届かない。
「……しかし私の目的は、束の間果たすことが出来た。何より、私は不滅。再び君達の前に現れよう」
ゾディアックが、無感情な声で告げたのに対し、ウタは首を振った。
「もしまた蘇っても……俺たちの心にあんた達は勝てないぜ」
それが、君達の強さか。
最後に呟きを残し、黄道神ゾディアックは、消滅したのだった。
大成功
🔵🔵🔵