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空に舞うカラスと化石の翼竜

作者：寅杜柳

●空舞う黒翼と骨翼
　グリモアベース。
「獣人戦線で新たな事件の予知が得られた。どうか手を貸してほしい」
　猛禽類の鳥人のようなセレス・ホークウィンド（白楽天・f44144）という人造灼滅者は猟兵達にそう切り出した。

「今回事件が予知されたのは北欧のカラスが多く住む町だ。最近は超大国の侵略の頻度も減っているようで、腕を錆びつかせないように戦闘機を使ったショーをやっているようだ。それを狙って幻朧帝国のエージェント『『骨牙空将』プテラル』が逢魔弾道弾を設置して町を逢魔が辻に変えようとする……そんな破壊工作を試みているので止めてほしい」
　そうセレスは概要を説明し、詳細な内容を説明する。

「破壊工作を仕掛けてくるオブリビオンは翼竜の化石を青くしたような姿の骨牙兵というやつだ。ショーの最中に乱入して混乱させて、逢魔弾道弾を起爆しようとしている。向こうは空中戦を得意とするようだが、この町は幸いカラスの町、彼らの助けを借りるか戦闘機を借りれば互角以上に有利に戦うこともできるだろう」
　そう説明したセレスはグリモアを取り出し、転送の準備を開始する。

「ちなみに町で行われているフライトショーは単座複座どちらもあって、パイロットの飛入り参加なども申請すれば大丈夫なようだ。場合によってはベテランパイロットが付いてくれるかもしれないが、うまく彼らと交流できればその力を借りたり連携をあわせたりする事もできるだろう。ともあれ、カラス達を守るために頑張ってほしい」
　そうセレスは静かに締め括り、ばさりと銀翼を羽ばたかせ、猟兵達をカラスが多く住まう町のショーの会場へと転送したのだった。

第1章 日常 『フライトショータイム！』

POW   :    スリル満点の飛行で魅せる！　スリル満点の飛行を体験する！ SPD   :    超高速の飛行で魅せる！　超高速の飛行を体験する！ WIZ   :    曲芸飛行で魅せる！　曲芸飛行を体験する！ 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●カラスの街にて
『さあ今日は目一杯空を楽しんでください！』
　そんなカラスの開始の言葉と歓声と共に始まるカラスの街のフライトショー、戦闘機の数々が並ぶ広場でカラス、そして他の街から来たらしい他の種族の獣人達が賑やかに話しながら、試乗を楽しみ始めている。
「皆楽しそうだね♪」
　ブラックタールのクローネ・マックローネ（｜闇《ダークネス》と｜神《デウスエクス》を従える者・f05148）はこの広場の楽し気な様子を見ながら、広場をぐるりと巡っていた。
　戦争に使われる物騒な兵器ではあるけれども、今日ばかりは楽しい催しの主役として人々を楽しませている。
　青く晴れた空を見上げれば、鳥のように自在にとはいかないまでも自由に飛び回っているように見える戦闘機。その近くでバサバサと翼羽ばたかせ飛んでいるのはこのフライトショーの協力者なのだろう。
（「このカラスの街を狙うエージェントも既に近くにいるのかな♪」）
　一応周囲を確認するクローネだが、感知できる範囲には怪しい存在は見当たらない。
　とはいえ警戒しておくことは重要、何かあったらすぐに一般人である獣人達を守るべく、笑顔でフライトショーを楽しみつつ、冷静に周囲を警戒しているクローネちゃんであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●スリルフライトタイム！
　戦闘機並ぶ地上の会場でブラックタールの猟兵が周囲を警戒している頃、上空では数機の戦闘機がその飛行性能を披露していた。
　限界速度まで加速してのドッグファイトーー当然弾丸の撃ち合いとかはなく、あくまで操縦技術だけで競うスリル満点の飛行だ。
「こんなふうに　とべるんだね」
　このイベント会場へとやってきて、カラスのパイロットに戦闘機に同乗させて貰ったネッド・アロナックス（ガムゴム人の冒険商人・f41694）はいつもと違う空の感覚を楽しんでいる。
　くらげほうきやゆきソリと御伽話寄りな飛行方法で普段から空を飛んだり泳いだりしているネッドだが、エンジン唸らせ飛び回る戦闘機の感覚はまた違ったものがあるようだ。
　一方、
「あわわわ！　上下が反転して目が回ります〜！」
『あーちょっと嬢ちゃんには激しすぎたか？』
　熊ヶ谷・咲幸（チアフル☆クレッシェンド・f45195）というアイドルは戦闘機での曲芸飛行に思いっきり目を回していた。
　我武者羅体当たりで事に当たる元野生児の彼女、鋼のドラゴン相手に空中戦を繰り広げることはできても、乗り物に乗って振り回される感覚はまた別物のようだ。
　とはいえ同情しているのはベテランパイロットのカラス、段々とこのスリルと浮遊感を楽しめるようになってきて、周囲に広がる青空を楽しめるようになってくる。
「風も気持ちいいですねー」
（『んー……このまま操縦桿は渡さない方がよさそうだな？』）
　景色や風の感覚を楽しんでいる咲幸をちらりと見つつ、ベテランカラスは何故か第六感的な危険を感じて操縦桿を握る力を強めた。
　恐らく彼の判断は正しい。彼は知らないが咲幸の尋常ならざる剛力と類まれなるドジにより戦闘機墜落の印が一つ増えてしまうことだろうから。
　そしてネッドの方もアクロバットな飛行を楽しみつつ、周囲の景色へと視線を向けていた。
　空にはがらくたは無いけれども、視界を遮る障害物もない。抜け目ない老練なガムゴム人のネッドはスリルを味わいながらも、このイベントに襲撃を仕掛けてくるオブリビオンを警戒していて、そして、
「あっち　あおいの　みえない？」
　戦闘機を操縦するカラス達より早くオブリビオンの接近にネッドが気づいたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

第2章 ボス戦 『『骨牙空将』プテラル』

POW   :    原始の突撃 【自身の形態】を【貫通モードに変形し高速飛行の勢い】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。 SPD   :    原始の加速 自身の【速度】を、最も近接する対象と同値にする。対象が変わらない限り、自身の［速度］のみ徐々に上昇する。 WIZ   :    原始の疾風 装備武器から【衝撃波】を発射する。自身の【肉の】削減量に応じ、威力・速度・発射数が増加する。 イラスト：塚原脱兎 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●青の骨翼を撃墜せよ
『敵襲だ！　急いで着陸しろ！』
　通信機越しに戦闘機のカラス獣人が地上、そして他の戦闘機に乗っている同胞へオブリビオン襲撃の報を伝える。
　そして戦闘機が全て降下し終えたタイミングで青き骨の翼――幻朧帝国のエージェントが会場へと到着する。
『くっ……飛んでいたなら奇襲で壊滅させられたのに……』
　悔しがるプテラル、しかし彼の有する逢魔弾道弾は起爆さえすればこの街を十分に滅ぼしうる危険な兵器、この状況でも油断はできないだろう。
　幸い地上にいた猟兵により避難は速やかに完了、カラス獣人達もこのオブリビオンを迎撃する準備をなんとか整えられている。必要であれば彼らの支援を受けることも可能だろう。
　ばさりと青の翼を広げるオブリビオン、そして迎撃するためユーベルコードを起動する猟兵達。
　この街を守るための戦いが、始まろうとしていた。




●青翼を落とし削れ
　フライトショーの会場へと高速で飛来した青き骨翼は、奇襲失敗を悟ってすぐに滞空しながら翼を羽ばたかせて衝撃波を巻き起こす。
　オブリビオン『骨牙空将』プテラルの体は青き骨、本来あるだろう肉は全て削ぎ落とされており、故に翼から放たれる衝撃波の破壊力や速度、発射数は相当に増加している。一般人を巻き込むことはないのは幸いだろう。
　空から襲い掛かる衝撃波に対し、諏訪野・啓太郎（さすらいのライダー・f20403）というスターライダーの男は、騎乗した大型宇宙バイクを巧みに操り衝撃波を躱していく。
　戦闘機が発着陸できるだけの広さのある会場、その地形を利用し衝撃波を躱しながら腕に装着した『スーパークラッシャー』からサイキックエネルギーを利用した砲撃を放ち空のプテラルを牽制する啓太郎。
　そしてもう一人、このイベント会場へと転移してきた真っ白なローブを纏うロビン・バイゼ（芸術と鮮血・f35123）というオラトリオは無表情に、されどこの街の困難に晒されている人達を助けたいという強い思いを胸に宿し、空のプテラルへと指先を向ける。
　ロビンが起動するユーベルコードは【ジャッジメント・クルセイド】、指先を向けられた青き悪しき骨牙兵に天の光が降り注ぎ、地へと墜とす。
　それはまるで天の裁きのよう、幻朧帝国のエージェントが高度を落とし落下してきたタイミングを見逃さず、啓太郎もユーベルコード【エレクトロレギオン】を起動。
　召喚された810体もの小型戦闘機械の群れは叩き落され空へと再び飛び立とうとするプテラルへと殺到、その飛翔を妨害する。
　当然オブリビオンは衝撃波を放ち戦闘機械を散らそうとするが、元より召喚された小型戦闘機械は一撃受ければ消滅する――その上で機械的に自身の消滅を恐れず群がってくる戦闘機械の群れは衝撃波でも完全に蹴散らす事はできない。
　衝撃波を掻い潜ってきた機械群が、内蔵する兵器の数々でプテラルの骨の体を削り砕いていく。
　それでもどうにか衝撃波で吹き飛ばし、小型戦闘機械の密度が減ったタイミングでプテラルは再び空へと飛翔する。
『くそ……ダメージが……』
　それでも十分なダメージを受けたことは間違いなく、動きは先程より遅くなっているように見える。
「……少しは、役に……立てた、かな」
　ロビンはそう呟きつつ再び指先を空のプテラルへと向けて、宇宙バイク駆る啓太郎と共に次なる攻撃を仕掛けていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●星の光とやり込みゲーマー
『思ったよりも被害は大きいが……これなら！』
　幻朧帝国のエージェント『骨牙空将』プテラルはそう呟くと同時、形態を貫通モードへと変形させ高速飛行を開始する。
　その速度は先程とは比にならず、そしてその突進は防御すら拒み攻撃を継続する非常にしつこい突進である。
　標的となったのはウサギの意匠のバトルスーツ纏う印旛院・ラビニア（エタらない人（仮）・f42058）、そして漂う海月のような印象のガムゴム人、ネッド・アロナックス（ガムゴム人の冒険商人・f41694）であった。
「わっと！　危ない！」
　凄まじい速度で突撃してくるプテラルの一撃をやり込みゲーマーとしての動体視力で見切ったラビニアはダッシュで、ネッドもその声に合わせて逆方向に飛びのいて直撃を回避した。
　されどプテラルは旋回し、再びラビニア目掛け突撃してくる。何度もしつこく突進をさせてしまえば運悪く当たってしまう可能性もあるかもしれない。
　手にしたアサルトライフル『｜USG《汎用体系的小銃》』で銃弾をばら撒き撃墜しようとするラビニアだったが、くるくる回転しながら突撃してくるプテラルは銃弾を弾き貫きながら接近してくる。
　根性で見切るか――そう決めて回避行動を取ろうとしたその瞬間、
「うごかないで　とまって」
　剣を加工したような形状の『サソリザのつるはし』を地面に振り下ろしたネッドが【ゾディアックサンクチュアリ】のユーベルコードを起動し、星座の重力を解き放つ。
『なんだこれは……重い！？』
　プテラルに襲い掛かるのはさそり座の重力、ネッドを中心とした163メートル内にいる敵に対しかかる重力は足止めの力を発揮する。
　例え空を翔ける翼竜であろうと、その高速移動は減速して突進の勢いは半減してしまう――丁度、ラビニアが狙い易い程度の速度だ。
「有難う！　これで一気に仕掛けられるよ！」
　さそり座の光を浴びつつ礼を言ったラビニアもユーベルコード【瞬装】を起動、
「さあ、どの武器で仕留められたい？」
　言いながら返される答えを待たずにラビニアはストレージに収納していた竜騎兵サーベルを瞬時に装着、速度の鈍ったプテラルへと飛び込み高速の斬撃を連続で叩き込みつつ斬り抜けていく。
「瞬時に適切な装備を選択できる僕って最強過ぎるよね」
　距離を取りながらラビニアは再びアサルトライフルを瞬時に装着、置き土産とばかりにプテラルの背に弾丸を叩き込んだのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●妖しき骨竜を討伐せよ
　貫通モードの突撃を躱され連続の斬撃、そして背に銃撃を受けた幻朧帝国のエージェントはそのまま地面へと墜落する。
　空を見上げれば銃器を構えたカラス達が飛び回り、飛び立とうとした瞬間に蜂の巣にするだろう体勢を整えている。
　ならば低空を飛んでどうにか活路を見出すか――プテラルの視線の先にいるのは、アラタマ・ミコト（極楽浄土にて俗世に塗れし即身仏・f42935）という｜少々顔色の悪い《即身仏》少女。
「｜荒魂鎮神命《あらたましずむるのかみのみこと》が命じるのでございます。神器よ施されし封印を解きその力を示すべし！」
　そう叫び起動するユーベルコードは【神器解放】、三種の神器の一つである神剣型神器『天叢雲剣』を構えたアラタマは、どうにか活路を見出そうと翼広げるプテラルへと斬りかかっていく。
　対するプテラルもユーベルコードを起動、彼に一番近い――距離を詰めてきているアラタマと速度を同値にする。
　その速度は時間経過と共に上がっていく。今さえどうにか乗り切れば猟兵の速度から更に加速してこのイベント会場から離脱する事もできるかもしれない。
　だが、そんな時間をアラタマが与える筈もない。
　彼女の振るう神剣に施された無限複製の封印が一部解除され、神剣の刀身が増殖してプテラルの退路すら覆い尽くす刃の壁を形成する。
　その力は寿命を削るが故に強力、速度が多少増加しようがそれすらも量で圧し潰し叩き切る勢いで、抵抗すら許さずアラタマは天叢雲剣を振るい、骨牙空将の頑丈な骨の体を軽々と豆腐を切るかの如く切り裂いていく。
「……あらたまちゃんのらいふを削っているのです！　高れああいてむや素材をどろっぷするのです！！」
　煩悩塗れの叫びはともかくとして、カラスの街へ破壊工作を仕掛けに来た幻朧帝国のエージェントは神剣振るう即身仏にバラバラにされ、そして消滅したのだった。

　幻朧帝国のエージェントとの戦い、そして猟兵達の勝利を目撃したカラス達の間から歓声が沸き起こり、避難していた一般人のカラス達へと広がっていく。
　何はともあれ被害者を出すことなく無事戦いは終わり、フライトショーは再開され空を再び戦闘機とカラス達が飛び回り始める。
　その光景を見届けつつ、猟兵達はグリモアベースへと帰還するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2025年06月19日