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花畑のウシの街を守ろう

作者：寅杜柳

●花を散らさぬように
　グリモアベース。
「獣人戦線のヨーロッパ、ウシ獣人に関わる予知が見えた。ちょっと力を貸してくれないかい」
　そう円谷・澄江（血華咲かせて・f38642）という時計ウサギのグリモア猟兵は、彼女が得た予知について説明を始める。

「今回向かって貰うのはウシ達が多く住む街で、どうもそこに幻朧帝国が逢魔弾道弾で破壊工作を仕掛けようとしているみたいだ。逢魔弾道弾を起爆されたら街が丸ごとオブリビオン蔓延る魔の都……逢魔が辻に変えられてしまうから、どうにか皆にはそれを阻止して欲しい」
　そう澄江は語り、街とその住民についての説明に移る。

「場所は内陸部にあって周囲一帯……というか街の中に点々とある空き地にも色とりどりの花が咲き乱れている綺麗な街だ。住民は温和で花を大切にしてる。けど臆病とかいう訳じゃなくて戦いになったら勇敢に前に出て戦うタイプのひと達が多い。とりあえずは街に行って住民が丹精込めて手入れしている花を楽しみながらエージェントを待てばいいと思うよ」
　そう澄江は語ると、予知で見えたオブリビオンについての説明へと移る。

「狙ってくるのは『骨牙陸将』サウラス』って恐竜の骸骨っぽいオブリビオンだ。原始的な大剣で戦い近接距離の相手を咆哮で化石化させつつ自身は身を隠す、その上気絶した者が近くにいれば骨牙兵に変えて操ってくる厄介な相手だよ。できればウシ達は巻き込まないように戦ったほうがいいだろうが……まあ状況次第だろうね」
　黒兎のグリモア猟兵はそう言って、木製の懐中時計のグリモアを取り出した。

「いまだ猟兵には覚醒してないウシ獣人だけど、頻繁に幻朧帝国に狙われてるからには覚醒する可能性もあるとアタシは思う。……少数種族のサメだって去年覚醒したし、もしかしたら幻朧帝国の破壊工作を阻止し続ければ、同じように覚醒する日が来るかもしれないね。何にせよ今命を狙われてる彼らを守れるのはアタシら猟兵だけだ。頑張ろうじゃないか！」
　そう澄江は締め括り懐中時計の蓋を開くと、時計の文字盤から溢れ出した光が猟兵達をヨーロッパのウシの花の街へと転送したのだった。

第1章 日常 『戦禍の地にも花は咲く』

POW   :    花の香りに包まれ、昼寝を楽しむ SPD   :    花を摘み、花束や花冠を作る WIZ   :    平和な光景を絵や写真に残す 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●花のウシの街の外で
　そのウシの街は花畑の中に作られたように、種々の花々に周囲を埋め尽くされていた。
　花畑を割るように幾つかの綺麗に舗装された道路があり、花を傷めないように街へと向かう事ができる。
（「花畑に隠れてエージェントが接近してくることもできそうだな」）
　宇宙バイクを走らせ街へと向かうのは諏訪野・啓太郎（さすらいのライダー・f20403）。
　物心ついたころから世界中を放浪する生活を行っていた彼は猟兵としての仕事の為にこの地へと転移してきていた。
　逢魔弾道弾による街の破壊、逢魔が辻に変えられてしまえばこの綺麗な花畑もきっと踏み躙られ吹き飛ばされる戦火の只中の光景に塗り替えられてしまう事だろう。
　それを阻止するために啓太郎は適当な所でバイクを停め、街を取り囲む花畑でエージェントが隠れて接近してきそうな場所に目星を付けつつ地図に書き込んでいく。
　鼻をくすぐる柔らかい花の香――戦いが終わった後なら昼寝を楽しむのもいいかもしれないが、それはまた後でいいだろう。
　注意深く確認した後はまた宇宙バイクに乗って、別の場所へと走らせていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●のんびりウシ達の生活
　そして街の中も当然のように花畑に満たされていた。
　あちこちにある空き地は所狭しと花が植えられており、住人のウシ達もその香りを楽しんでいる。
「……のんびりした場所ですね」
　同じくやってきた鳶沢・成美（三角定規の除霊建築士・f03142）、獣人戦線にある街にしては酷く長閑な雰囲気が漂っている。
　通りかかったウシに話をきけば、この街は内陸にあるけれどもあまり戦略的に重要な場所にある訳じゃないため超大国の侵略も然程ないとの事だ。
（「これまでそうだったから、逆に幻朧帝国の標的になったのでしょうか」）
　そんな事を考えながらふと視線を移ろわせてみると、珍しくも綺麗に整えられた運動場が目に留まる。
　そこでウシ達がやっているのはゲートボール。大きな体で小さな玉を上手く叩こうとしている姿は中々アンバランスにも見える。
　ゲートボール好きの成美、やっているところを見かけたなら自分もやってみたいとウシ達に声をかけ、花の香りに包まれながらゲートボールを共に楽しむのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●花の香りに包まれて
「ん－……平和だね！」
　バーチャルキャラクターの赤星・緋色（サンプルキャラクター・f03675）は伸びをしつつ、花畑の中に造られた芝生の広場でゆっくりと時間を過ごしていた。
　街の中の地形も既に確認、一応一番高い建物の時計塔の上にスカイダンサーの身軽さで飛び乗って周囲一帯を確認してみたけれども、まだオブリビオンがやってくる気配はない。
　街の周囲の花畑の花の背丈もそこまでではなく、エージェントが近づいてくるなら隠れて近づこうとしてもよほどの事がない限りは見落とす事はないだろう。
　故に緋色は小休憩、丁度いい場所をウシ達に確認して、昼寝に丁度いい場所として案内されたこの場所でゆっくり時間を過ごしていた。
　この穏やかな時間、街を守る為の戦いはもう少しだけ先。それまでゆっくりしても罰は当たらないだろう。
　と、そこで街の外へと目をやると、奇妙に花畑が大きく揺れる風景が見えた。
　猫や兎等の小さな野生動物ではない、シカなどの大型ならその姿は見えるだろう。そして住人であるなら隠れる必要もないし、花畑の中で無思慮に歩き回る事もない。
　――つまり、こちらに気付かれないようにしている何者か。
（「当たりかな」）
　よっと体を起こして仕事モードへと切り替える緋色。街を幻朧帝国のエージェントから守る為の戦いが、始まろうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 ボス戦 『『骨牙陸将』サウラス』

POW   :    原始の武装 敵より【装備品が原始的な】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。 SPD   :    原始の咆哮 近接範囲内の全員を【化石】にする【原始の咆哮】を放ち、命中した敵にダメージと麻痺、味方に隠密効果を与える。 WIZ   :    原始の軍勢 戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【骨牙兵】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。 イラスト：塚原脱兎 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●やってくるは化石の陸将
　花畑を掻き分けながら、幻朧帝国のエージェント『『骨牙陸将』サウラス』は標的であるウシの街に静かに忍び寄ろうとしていた。
　平和ボケしたウシ達――戦いになれば勇敢になるのだろうが、その勇敢さを発揮する前に致命傷を叩き込まれればどうしようもない。
　骸骨の身体を隠しながら雑に花畑を踏み荒らし進んでいくサウラスは、丁度季節の変わり目で花が枯れてしまっている場所へと差し掛かる。
　そこに待ち構えていたのは猟兵、街への接近を先に発見し、準備していた地図でこの花畑には比較的影響の出ないだろう場所で待ち伏せていたのだ。
　思わぬ妨害に一瞬狼狽えるサウラス、だがすぐ気を取り直して大剣を抜いて猟兵達に構える。
　サウラスが駆け出し、応戦する猟兵がユーベルコードを起動して、そして花畑のウシの街を守る戦いは始まったのだった。


●戦いは一気呵成に
　幻朧帝国のエージェント『『骨牙陸将』サウラス』の構えた武器は原始的な大剣だ。
　この獣人戦線の銃火器や戦闘機飛び交う戦場で前時代的な戦い方ではあるが、サウラスのユーベルコードには相手より装備が原始的な場合に能力を跳ね上げる事ができるというものがある。
　つまりこの世界では大抵の敵には通常以上の能力を発揮し戦えるということでもあるが、それに構う事なくバルタン・ノーヴェ（雇われバトルサイボーグメイド・f30809）はサイボーグの身体に内蔵された数多の火器を一斉に展開し照準を定めて。
「HAHAHA！　ドントウォーリー！　ワタシが手伝いマスヨー！」
　メイド服を破らぬように展開されたそれらはいずれも強力な力を持つ銃火器、それらを一斉に発射する【フルバースト・マキシマム】のユーベルコードをバルタンは起動してサウラスへと攻撃を叩き込む。
　轟音響かせる重機関銃の銃弾を大剣を盾にしてサウラスは射線から逃れながら突っ込んでくるが、次いで放たれた六連グレネードの爆風で体勢を崩して突進の勢いが鈍ってしまう。
　それを見逃さずバルタンは腕部にパイルバンカーを装着して切り込み、一気にサウラスの懐へと飛び込みその胸部に杭と強烈な衝撃を撃ち込んだ。
『ぐぬっ……』
　クリーンヒットした一撃に怯むサウラス、しかしバルタンの攻撃はまだ終わっていない。
　もう片方の腕に装着していたチェインハンマー――パイルバンカーもであるがキャバリア用のものを改造した破壊力の高いそれをバルタンは振り回し、横殴りの衝撃を叩き込んだ。
　咄嗟に大剣を縦に構え受け流そうとするがそれも間に合わず、サウラスの骨の身体は大きく吹き飛ばされた。
　ファーストアタックを見事叩き込んだバルタン、彼女に続き他の猟兵達が次なる攻撃を仕掛けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●花畑に踊る機械兵器と青白の刃
　サイボーグメイドの一斉射撃に続いて骨牙陸将へと襲いかかるのは無数の小型戦闘用機械兵器の群れ。
　具体的には805機、それらを操るのは上手く花畑を荒らさぬよう、宇宙バイクでこの戦場へと駆けつけた諏訪野・啓太郎（さすらいのライダー・f20403）だ。
　ユーベルコード【エレクトロレギオン】、その力で召喚された機械達は攻撃を受ければ一撃で消滅する為、原始の軍勢という気絶したものや使者を骨牙兵に変えて操る力で利用される事さえない。
『なんのこれしき……！』
　空から地面から群がり武器で襲い掛かってくる小型戦闘用機械兵器の群れに、幻朧帝国のエージェントは必死に大剣で抵抗しダメージを受けながらも切り捨てていく。
　そして戦闘機械の群れの迎撃に手一杯のサウラスに、遠間で銀髪のサイボーグがアス・ブリューゲルト（蒼銀の騎士・f13168）が青白の光刃を構えていた。
「隙を見せたな……」
　このオブリビオンの攻撃には原始の咆哮で近接距離の敵を化石化させるものがある。
　それを警戒して遠くから仕掛けるにしても、エージェントの技量で凌がれて有効打には本来ならならないだろうが、構わずアスはユーベルコード【コード：ドライブ・ザ・ヒドゥンパワー】を起動する。
「力というものは、こういうときに使うんだろう？」
　その力は彼の｜二丁の光線銃《ブルーブラスター》、そしてフォースセイバーの効果、威力と射程を三倍に増幅するもの、フォースセイバーの光刃が三倍の長さまで一気に伸長していく。
　即座にアスはそれを振るい、青白の軌跡が骸骨を深々と切り裂く。苛立たし気にエージェントは吼えるがその射程の外にいるアスや啓太郎にはその化石化の効果は及ばない。
　接近していた小型戦闘機械兵器群が消滅し、その隙に隠密効果を纏い花畑に身を隠そうとするサウラスだが、咆哮を免れた戦闘機械達が包囲してその行動を阻んで。
　重ねてアスのブルーブラスターの二筋の蒼の光線、そして啓太郎が腕に装着したスーパークラッシャーのサイキックエネルギーの奔流がサウラスを撃ち抜き大ダメージを刻み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●竜巻と光線、化石の陸将の最期
　三つの光線を受けたサウラスは満身創痍となり、剣を杖代わりにどうにか立っている、という状態だ。
　しかしまだ任務達成を諦めていないのか、猟兵達を睨みつける髑髏の眼窩には闘志が宿っているように見える。
　それを断ち切るべく最後の攻撃を仕掛けるのはイネス・オルティス（隠れ里の女戦士・f06902）、そして印旛院・ラビニア（エタらない人（仮）・f42058）の二人だ。
『……なんだその格好は！？』
「なんだって……前からよく使ってた防具だけど？」
「この鎧は一族伝統のものよ、それがどうかしたの？」
　サウラスの怒鳴るような問いにラビニアとイネスはさらりと返答する。
　ラビニアの方もウサギさんスーツと中々に際どい衣装ではあるけれども、イネスのそれはラビニアを上回る所謂ビキニアーマー。体型もナイススタイルであるが故にエージェントは目のやりどころに困っている様子だ。
　だがイネスはあくまで堂々と、一族伝統の鎧であるそれを纏い巨獣槍を構えサウラスに相対する。
『こんな場所で最期を迎えるなど……！』
　サウラスは破れかぶれで二人に向かって突撃する。化石化させる原始の咆哮の効果を届かせるにはもっと近づかねばならないからだ。
　だが近づく前にイネスがユーベルコード【風車縛陣】を先に起動する。
「そこに止まってなさいっ！」
　むかってくる相手に巨獣槍を向けて回転、竜巻を放ちサウラスへと叩きつける。
　その風圧にサウラスは踏み止まる事ができず空に打ち上げられ、そしてそれを好機と見たラビニアはデッキから一枚のカードを引き抜いて、
「召喚！　神滅の戦乙女・ジークヒルデ！」
　叫び起動するのは【神滅の戦乙女・ジークヒルデ】のユーベルコード、デュエル遺跡で手に入れた『人』のカードから召喚されるのは麗しき一人の魔剣の戦乙女。
　ジークヒルデは竜巻に捕らわれた上空のサウラスへと魔剣の切っ先を向けて、
「行け、ヴァルグラム・ノヴァ！！」
　ラビニアの号令と共に神殺しの光線を放つ。特殊効果を受けない特性は仮に原始の武装による能力強化があったとしてもそれごと貫通し、そして原始の咆哮による化石化も起こりえない。
　つまり空のサウラスに待ち受けているのは骸の海へと還る未来――直後、それは現実となり空のサウラスは跡形もなく光線に呑み込まれ消滅したのだった。

　かくして花畑のウシの街を襲おうとしていた幻朧帝国のエージェントは無事討たれ、穏やかな街は守られた。
　また一つ幻朧帝国の破壊工作を阻止した猟兵達は、グリモアベースへと勝利の報告と共に帰還したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2025年05月28日