ケルベロス・ウォー③投げるなら返るもの
●思いの深ければ愛の言葉すらもひとつ『呪い』となるのだから。
「《殴っていいのは殴られる覚悟があるヤツだけ》ってフレーズ、先輩達も好きっショ?」
ヒカル・チャランコフ(巡ル光リ・f41938)が、眼鏡の奥、目を細めてにやりと笑う。
「エネルギー問題? オレ詳しくないけどぉ。分けわかんねぇ妬みつらみで殴りかかってきて?
ンじゃ恨まれても文句いうなよって。ごもっとも!
ケルベロスディバイドにもそーいう人らがいるらしいんス、『妖剣士』って人たち」
そういうヒカルは自身の手に浮かぶグリモアをお握りでも形作るように握りこむ真似事を始める――やつらの妬みつらみを練り上げて、そう言ったかと思えば両の手で抱えるように。
上がる左足。振り下ろす右手。
「お返しに『永遠回廊』にドーン!!」
中々綺麗な投球フォームだ。
あ、|気持ち《キモティ》いい! ――架空のボールを当てた気分のヒカルの左手の上には変わらずグリモアが漂っているのだけれど。
「そーんな訳でね。チキュウの海、なんだっけ? そう! 太平洋の如き広いお心持つ|猟兵《センパイ》方にね。奴らの妬みつらみ受け止めて頂いてっ、ソイツをぶん投げ返しましょうって話っス!」
●さぁ、この|呪い《文字》をなんと読もうか。
「難しいことなくってー。
先輩方が奴らをシャキシャキーン! ぶっ飛ばしてくれりゃ、妖剣士の人たちがそこに残る何か? ソレ練り上げてうまいことしてくれるんス、け、ど!」
物事はぁ、安全性とか効率ってあるじゃないっスか――ヒカルは続ける。
「妖剣士さんもバリバリ戦えるだけど。
基本、特大の|ノロイ《・・・》ぶん投げ用に『妖剣神社』ってのを建ててるらしくて。
まぁ、妖剣士さんらを護るって意味でも【一緒に戦う】っつーのもいいんじゃねーかなって思うンす」
もう一つ。そう言い、人差し指で1と示しながら、続ける。
「最近、呪物って流行ってるじゃないスか。特級呪物! カッケェ響き~♪
この人らの武器が、まさに! ノロイ吸収特化の呪物らしくて! 【武器を借りる】っつーのも効率爆増かなって」
普段使いの武器と同種を借りてもいいしぃ? 自分の武器に|オマジナイ《・・・・・》的な? してもらうことも出来るかもしれないっスね、と。
何にせよ、妖剣士たちと多少の交流、話を通し協力を得て物事を進めるのが良いだろうというヒカルは、自身の周りに遊ぶ海月の妖精の笠を撫でたあと猟兵に向き直り、にこりと笑う。
そうして、グリモアと海月が、遊ぶように、円を描くように――開くゲート。
「オレ信じてますから! センパイたちの華麗なる勝利ってヤツ!!」
投げかける言葉も、思いの深ければ深いだけ――彼らを護るマジナイになれと、精一杯の声援が、今ゲートを潜らんとする猟兵たちの背中へ。
紫践
呪という字のそれ自体ではなく、
読みを心が選び、喉から口、音に具現するという行為を以ってして――。
……何かそれっぽいことを述べたかったが纏まらなかった紫践と申します!
●戦場について。
妖剣士が『妖剣神社』を建設中、支援を願います。
純戦です、難しいことは一切抜き。倒せば倒すだけ、妖剣士への支援となります。
●プレイングボーナスについて。
プレイングボーナス……妖剣士と協力して戦う/呪いの武器を借り受け、敵の魂を蒐集する。
求められているのは敵を倒すという《行動》なのですけども。
人と人の間に、《言葉》はあります。
皆さんと妖剣士の間に、皆さんと敵の間に、それから――あなたと私の間にも。
以上です、ヨロシクお願い致します。
第1章 集団戦
『異星人類の傷痕』
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POW : 地球こそ我が母星
【裏切者ではないという確信を抱く者】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[裏切者ではないという確信を抱く者]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 鏖殺された記憶
自身の【傷だらけの身体】から、戦場の仲間が受けた【あらぬ罪による拷問の重さ】に比例した威力と攻撃範囲の【因果応報の呪詛】を放つ。
WIZ : 決して消えぬ憎悪
戦場内で「【裏切者!】」と叫んだ対象全員の位置を把握し、任意の対象の元へ出現(テレポート)できる。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
山岡・朱鳥
傾国参戦
ふふ、呪物とは呪われたこの身体に相応しい物ね?私は普段から妖刀を愛用しているから妖剣士の使う妖刀も手にしっくり来るものね
ルイナ、先ずは水蒸気を噴出してヤツ等の視界を封じなさい
濃い蒸気で一寸先も見えない状態では相手も迂闊に行動出来ない、その上でテレポート持ちならばまずは仲間の下に飛んで集結し守りを固めようとするはず
【裏切り者】ねぇ?既に聞き飽きたわよそんな言葉、私の一族はサムライエンパイアで忌み嫌われているのよ!
此処は禁忌の恐処、禁足地に足を踏み入れた罰をその身に受けなさい
これぞ鬼の天変地異、灼熱の竜巻と氷結の大津波で集結した敵を一掃するわ
後は残党狩り、私はオニ、鬼の山岡よ!
ルイナ・ラヴ
傾国参戦
人にも他種族にも過去があり過ちの歴史もまたある、しかしだからと言って今の文明を踏み躙る免罪符には決してならないものです!
蒸気機構解放
高熱の水蒸気は濃霧のように視界を遮りその高熱は火傷を広範囲に撒き散らす
視界不良と火傷の痛みで気が動転しているようですね、朱鳥さんの言う通り敵は水蒸気の霧が晴れるまで結集して守りを固めている様子
本来ならばそれが上策、しかし今回はそのUCが裏目に出ましたね?
尤もこの規模の天変地異の前では散開したとて無意味だったかもしれませんが…
さあ妖剣士の皆さん、敵の残党は先の攻撃に巻き込まれボロボロ状態です、今こそ共に残敵を殲滅致しましょう!
●
刀の柄をしっかと掴む――は、という小さくも鋭い息。踏み込みと共に描かれる縦の半月。流れるように舞うようにそこから確認する幾つかの型。
山岡・朱鳥(呪われた鬼の血・f41465)は、妖剣士から借り受けた妖刀を具合を確認すると薄く微笑み頷いた。刀身を鞘へ治める。
「しっくり来るものね」
血に秘めた|呪い《チカラ》に驕ることなく積み重ねられた山岡の研鑽の所作の美しさに、知らずうっとりと見惚れていたルイナ・ラヴ(戦う魔術研究者・f38750)も、その声にはい、と常の生真面目な表情へと顔を戻して頷いた。
(――ああ、なりたい)
自分もまた借り受けた妖刀の鞘をぐっと握り締め。
突如と表れた少女達に、妖剣士たちは息を飲んだものだけど。それは彼女達が学生に見えるとかそういうことでなく、身の裡に抱える呪いや魔力を彼らが感じ取れるが故にだ。だからこそ、山岡とルイナの申し出に表情も綻んだ。扱うものの性質ゆえに、伝えられた妖剣神社の要件全てを寸分の狂いなくこの地に再現せねばならない。集中と繊細の要求される作業、襲い繰るもの共を払う部分も欠かせないけども、これ程のチカラをもつ方々がそれを引き受けてくださるならば、と。
「あちらの方ね」
戦いの高揚に素直に、美しく口の端をあげる山岡の示す先。怪我をした妖剣士が離脱してきた方向だ。
「えぇ、いきましょう!」
駆け出す二人の無事と戦勝を願う妖剣士たちの手が、見送るその一瞬だけは作業止め、祈りの形を刻む。
●疑心と不安で紡ぐもの。
不定形で不安定、交じり合う数多の無念が質量をもって、いま、そこいら中に立っている。
「持ち帰らなければ」
「あの子の明日の糧の為に」
「持ち帰るんだ」
――何を?
傷だらけのカラダから漏れ出るものをかき集めるようにしていた、亡者たちの手が、手が、手が。
山岡とルイスへ向かう瞬間の、奇妙な一致。名状しがたいその挙動のおぞましさ。
「ルイナ、先ずは水蒸気を噴出してヤツ等の視界を封じなさい!」
その様に一切の動揺を見せぬ山岡の冷徹な指示が、ルイナに飛ぶ。
従い一歩前へ出る、ルイナの掲げる盾の表面。歯車の大小が激しく回り始め、カチリ、プシュと巡る魔力の流れに沿って、やがて現れる幾本ものパイプが立ち上がる。見る間、その速度から円にしか見えなくなる歯車たち、激しく前後運動を繰り返し力蓄えるパイプが伝える振動――スタンバイ。
「……蒸気機構解放」
使用者本人をして、足裏が地に線を引き、後ろにずり下がるほどの衝撃。シュウともジュウともつかぬ轟音が、盾の前面に立ち上がるパイプたちの唸り吹き上げる|水蒸気《スチーム》が、ルイナのチカラある言葉も、亡者の胡乱な言葉も全て内包する|瞬間《インパクト》。
ルイナもこれ以上は下がらない、下がれない。己が盾の齎す衝撃に踏み堪え、足を前へ。先までの亡者の言葉が、一歩ごとに過る。具体的なことは窺い知れなかった。ただ、ただ、切実な響きだけ。
――何かを求めて彷徨って、傷つき斃れたその無念は、だけど。
「人にも他種族にも過去があり過ちの歴史もまたある、しかしだからと言って今の文明を踏み躙る免罪符には決してならないものです!」
熱く厚い白霧が齎したもの。奪われる視界、ぶつかるナニモノか、地球人共が切り込んできたのか? 誰のものと分らぬ苦悶の声が響く。同じ音を漏らす己の喉を焼くもの。ああ、見通せぬのはこの先の展望――亡者たちを|過去《フラッシュバック》が襲う。
「上出来よ」
そう呟いた山岡の言葉は果たしてルイナに届いただろうか。
混乱の渦中に、光源もないのに山岡の足下からするすると、地を這う|領域《ナニカ》が延びていく。広がっていく。人と鬼との交じり合う彼女のチカラの不安定さに似て、その縁は赤黒く揺らめき彼女の意志を受ける前から、ちろりと亡者の足を撫で、焼き、登っていく。地上から雷の上がるようにして。
|頂点《ピーク》を迎えた亡者の疑心に刺さる、災いの予兆。
「裏切り者!」
「裏切り者!」
「裏切り者!」
仲間の安否を気遣う為の言葉ではない、薄れゆく白霧の中で不安が亡者を一塊へとかえていく。
「裏切り者、……聞き飽いたわよ、そんな言葉」
瞼の裏に今よりもずっと幼くてずっと弱かった少女が映る。いつか郷里にいた頃の。
――幼き日の幻影を割るように瞼を開くのと、その抜刀は同時。
疑心と不安で裏切り者を探して探して排除して、寄り合うその一塊を結束などと言わせない。一歩先いたルイナに並ぶ山岡は、いつもの好戦的な色を湛えた瞳で。そして二人うなづきあう。絆とは、信頼で結ぶものだ。
「此処は禁忌の恐処、禁足地に足を踏み入れた罰をその身に受けなさい!」
これぞ、鬼の天変地異。
山岡の振る刀に応え、先行する火炎旋風と氷の大波という並び立つ筈のない未曾有。
しかしてそれすら斬り割られ、火を、氷すらも纏わせるようにして。
――駆ける少女達の刀が、いま、煌く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大豪傑・麗刃(サポート)
一人称は『わたし』『麗ちゃん』
どんなシリアスでも一度はネタをやりたい。一応敵を倒す意思はあるので状況が悪化する行為はさすがにやらない。一見悪化するけどネタとして許されるならむしろやりたい。
超どシリアスのためギャグ絶対不可ならシリアスオンリーも一応できなくはないがその時は頭痛が痛くなるのだ(強調表現としての二重表現肯定派)
大軍に無策で挑むのは無謀といろいろ策を考えるが結論は「正面から突っ込んで全員やっつければ(斬れば)いいのだ!」
ユーベルコードが
近接系:何も考えずに突っ込んでって無双狙い
集団系:なるべく多数引き付けて一網打尽狙い
ギャグ系:お手数かけますがなんとかお願いします!
それ以外:まー適当に
サエ・キルフィバオム(サポート)
アドリブ歓迎
基本的には情報収集が得意かな
相手が何かの組織だったら、その組織の一員になり切って潜入して、内側から根こそぎ情報を頂いちゃうよ
そうじゃなければ、無害で魅力的な少女を演じて、上手く油断させて情報を引き出したいね
効きそうな相手なら煽てて誘惑するのも手段かな♪
戦いになったら、直接力比べの類は苦手だから、口先で丸め込んだりして相手を妨害したり、糸を利用した罠を張ったり、誘惑してだまし討ちしちゃうかな
上手く相手の技を逆に利用して、手痛いしっぺ返しが出来ると最高♪
敢えて相手の術中に陥ったふりをして、大逆転とかも良く狙うよ
ミルディア・ディスティン(サポート)
「サポート?請われれば頑張るのにゃ!」
UDCでメカニックして生計を立ててるのにゃ。
『俺が傭兵で出撃して少し足しにしてるがな?』
※自己催眠でお人好しで好戦的な男性人格に切り替わりますがデータは変わりません。
ユーベルコードはシナリオで必要としたものをどれでも使用します。
痛いことに対する忌避感はかなり低く、また痛みに性的興奮を覚えるタイプなので、命に関わらなければ積極的に行動します。
公序良俗は理解しており、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。むしろ積極的に助ける方です。
記載の無い箇所はお任せします。よろしくおねがいします。
エミリィ・ジゼル
戦闘支援が必要と伺ってやってきました
お任せください、家事はできませんが【暴力】には自信があります!
折角なので我々の武器にまじないをしてもらいましょう
そう、我々です。
UCによって増えた我らかじできないさんズのチェーンソー剣やエクスカリバールや爆破スイッチにまじないを掛けてもらい、それを持ってオークの群れをフルボッコにしてやります
よっしゃー、オーク狩りだー!
敵の群れを逆に我々の集団で囲い込み、得意の【集団戦術】でもって一網打尽にしてやります
数に物を言わせたケルベロスの伝統戦法を思い知るがいい!
豚は死ねぇい!
●場の全てを凌駕する、その圧倒的な。
「戦闘支援が必要と伺ってやってきました」
深々と、メイドさんは頭を下げる。あ、ご丁寧にどうも。思わず応じる妖剣士だが、その顔に、周囲に大量の疑問符を浮かべて。顔を上げた彼は、メイドさんことエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)にしかしだね、と声をかけ、続けて――。
「わたしは怒ったのだーーー!!!!!」
「まだ何も言ってないだろっ!?」
メイドの隣の男が両腕を脇に、拳を固め、オーラ纏って髪を逆立てるものだから飛び上がって。
「回数制限ないんだし逆立て得だと思ったのだ」
大豪傑・麗刃(27歳児・f01156)が胸を張る。
「んー♪ 三つ編みが効いてる!」
逆立ったのはいいけれど、前髪サイドはともかく、三つ編みがふよふよ中空で遊ぶ迫力ゼロの様に、人の機微には聡いサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)が、口元に人差し指をあてふふと笑う。
「目の付け所がシャー……鋭いのだ」
案の定ご機嫌に、両の拳をゆびでっぽうの形に変えて。そういう抜け感みたいなのをー、滔滔語り始める大豪傑の向こうでは、別な作業中の妖剣士の横でふんふんと頷くミルディア・ディスティン(UDCの不可思議メカニック・f04581)の姿。
作業台に並べられた、本来なら清浄な聖域を示すための紙垂に魂を束ねることで変質させる様子にこちらも怪奇と神秘の世界たるUDC住人の彼女の興味は尽きない。自身は機械工学を得意とすれど、だ。
「興味深いにゃん! 妖剣士さん、凄い」とマイペースにはしゃぎながら大豪傑のトークをぶった切り、皆の元へ戻ってくる。
……なんなんだこの一団は。
両手で顔を覆う壮年妖剣士の肩を、いつの間にやら横へきたサエは、わかるよ、といいたげに優しく叩く。壮年は、それに励まされ思い出したか、がばりと顔を覆う手を外し。
「いない、いない、ばぁ」
見逃さない大豪傑のフレーズ。
「だから! 進まんだろ! 話が!
……ん、んん! とにかくその、飯の支援みたいなものはここにはいらないのだが……」
最初に声を掛けてきたエミリィを一団の代表と判断したか、少し申し訳なさそうに。彼女の風貌――主に手に持つフライパン――に、自分達への直接の支援と勘違いしたままの男が声を掛けるなら、ここまでの一連を出過ぎず、静かに見守ってきた一流のメイド、エミリィは笑顔で答える。
「お任せください、家事はできませんが【暴力】には自信があります!」
告げるその微笑みは控えめで。そう、一流のメイドは出過ぎないものだ。一人ひとりは。
……ただ数が。告げたエミリィの後ろにエミリィ。増殖する彼女のその数が勝手に場を凌駕し、圧倒する――家事は出来ないが、『かじできないさんず』を生やす事は出来るものだから。
かくて、4+たくさんの一団は、最初の口上の通り、|戦闘《・・》の支援に来たのだということがようやっと伝わった。猟兵、ケルベロス――その豊富な経験に裏打ちされた自信、そこに、差し出した武器へのマジナイを上乗せして。
「……や、やっと行ってくれた」
(どうか、ご武運を――)
とんでもない数のマジナイの付与に疲れ果て座り込む妖剣士たちが、見送る科白の選択を間違えても……仕方ないよね?
●戦争は物量、戦略は二の次。
一閃。
「どぉ……りゃっ!!」
纏うオーラ、その加護を受け、大豪傑が袈裟斬りに振り下ろすサムライブレイドが豪快に地面を割る。……つまるところ、亡者たちを斬らんとするその大振りな剣先は外れてしまったわけだが、しかしながら、挨拶からここまで、髪を逆立て続け、三つ編みを遊ばせ続けて蓄えた力によって行われたその威力たるや。飛び散る石の土くれのが、銃弾のようなスピードと、刃物のような切れ味を以って、逃げる亡者たちの皮膚を裂いていく。
「外したわけじゃないし。最初からこれが狙いだったし」
「そーいうことにしといてあげるわ♪」
くすくすと笑うサエの声。本当なのだ! と食い下がる傷から盛れ出るものを必死と留めようとしていた亡者どもが一斉に振り向く。目が、ぎらつくのはサエが丸腰だからだ。一方のサエは、亡者たちの漏れ出るを恐れるような奇妙な拘りに引っかかりを覚えて。けれど今、すべきことは。
「欠いたとて……」
ブツブツと呟きながら駆けくる一団、伸ばされる手。
「あら、情熱的じゃない♪ あたしが欲しいなら、あげてもいいわよ? |捉まえられたら《・・・・・・・》ね?」
腰を少し折り、豊かな胸を隠し切るなど不可能なのに両の腕で隠すようにして、扇情的な上目遣い。
漏らす以上に得れば良いと追う亡者たちと、しなやかに背を反らし、中空に何重と円を描いて宙返り、音もないように着地し距離を量ると笑うサエ。
「「「ア、アアアアアアア!!!!」」」
その両者の間――先陣切った大豪傑の大立ち回りの間巡らせた、糸。亡者たちを受け止めるなら、サエの干渉もないのに、勝手に亡者に食い込み、拘束する。
鬼ごっこ。|上目遣いと共に提示された簡単なルール《・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。守れなかった|咎《ダメージ》が、発動したのだ。
拘束。
痛み。
――違う。違う違う。オレは違う!
「「「裏切り者はオレじゃない」」」
それに屈したいつかの日を、掻き消してなかったことにしたいから、亡者たちは何処にもいけない。思いがけず、裏切り者ではないと宣言し、己に、周囲に言い聞かせることが、彼らに仮初のチカラを与える。
「パンプアップ!?」
別な一団を前に、工具たちで奮戦していたミルディアが叫びあげる。工具といっても、アノマリーなどと言われるもの。UDCを素体としたそのバールのようなもので受け止めていた亡者の腕の質量の増したような圧に、彼女の裡の《傭兵》が、顔出さぬままバールごと横に受け流すことで、なんとかその場を離脱させる。
慌ててネイルガンを工具ベルトから取り外すミルディアは、追い縋る次の腕、その手の平を連続で撃ちぬくものの。なにせ縫いとめるべき後ろがないものだから、釘バット成らぬ釘腕の様相の亡者。
そのビジュアルに、攻勢から後退へと反転していた状況も相まって、縺れる足。おもわず尻もちをついたミルディアの二回目の叫び。
「にゃぁぁぁ!助けてご主人さまー!」
座り込む彼女の前に、翻るは臙脂のマント。彫金も素晴らしい鎧を纏った騎士が、彼女を庇いそこに立つ。
立って、押し留める亡者の釘腕――バールで。
切り捨てることまでは出来ず、だが、亡者の腕を持ち上げるなら、亡者の腹を横薙ぐのは――大豪傑の刀である。
「ほぉ、そのビジュアルでバール使いとは! 中々の手練とみえるのだ!」
仲間の窮地に駆けつけた自身の格好良い場面はこの際置いといて。目の前の『どうしてそうなった?』に食いつかずにはいられない大豪傑は新たな仲間を歓迎する。だって、騎士はミルディアと同じ攻撃手段を使うことになりますのでと答えるものはこの場にいないのだけれども。
はしゃぐ大豪傑と無言の守護騎士を前衛に、ネイルガンでミルディアが支援し、到達するサエのもと。
「これ以上抑えるのは、きっついかも~……」
力増した亡者達に幾重も追加の糸を施して、サエが多くを押し留めたから、為せた救出劇でもある。
――これで合流したのは、敵も此方も同じとなる。
敵の数に展開するのは仕方なかった。そうして、この合流も。だが、それによって更にいや増す敵のチカラ。さぁ、どうする?
「おくすまポジクラ!!」
ですよね、とミルディアがいう。
いいたかっただけじゃん、とサエが。
「こんな暴挙が許されていいんですか!?」
自分だってそちら側に回りたかった麗ちゃんは地団太で。
「何を仰いますか。
皆で紡ぐ物語り。そう……悲哀と歓喜を、遺した無念と今を生きる意志を、生と死を――シリアスとギャグを!!
|繋い《チェイン》でケルベロスとは今ここに立つのですっ」
いけぇっ!
振り下ろされるエミリィのフライパンに答えて、エミ……かじできないさんズが一斉に飛び出す。
「「「数でボコるのがケルベロスの流儀よ!」」」
魅せつけろ、数に物を言わせたケルベロスの伝統戦法を。掲げられるチェーンソーが、エクスカリバールが群れとなって。
「オーク狩りの時間だァあああ!「」豚は死ねぇい!」
エミリィの見た目でトンでもないこといいながら、そうして始まる――全面戦争。
戦場の仕上がり具合を離れた場所で見守るかじできないさんズが1人。敵味方入り混じるその様に微笑む彼女は、家事を知らないたおやかな手に爆破スイッチを抱えて。
「オマジナイをしてもらって、本当によかったです」
釦にかかる、白魚のような細く美しい指。
――最高効率で、今、この戦場は幕を下ろす。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴