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ケルベロス・ウォー⑫〜過ぎ去りし者よ

#ケルベロスディバイド #ケルベロス・ウォー #神経樹グラビティピラー

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 東京の一角に顕現した、輝く大樹の如き異形。
 それこそが十二剣神の一柱。
 グラビティ・チェインを吸い上げ、星界にばら撒く宇宙の血管そのもの。
 ――“神経樹グラビティピラー”。

 決戦都市のビル街も霞むほどの巨躯は、矮小な地球人類が認識できる、ほんの一部に過ぎない。
 その真の姿は、星はおろか、如何なる銀河や星団よりも大きい。
 まさしく規格外の“神”。そんな神が、あらゆる猟兵、あらゆるケルベロスへと語り掛けてくる。
「吾が求むるは強者のみ。そして強者とは、不滅のデウスエクスに他ならぬ」
 それ以外の醜く不完全な知的生命体は、全て、悉く、塵一つ残さずに滅ぼされるべし。
 神経樹の枝が伸びる。それが放つのは無敵のユーベルコード“グラビティ・ダウン”。
 猟兵たちの神経・精神を完全掌握するグラビティピラーの魔手から逃れる術は無い。
 囚われた者は指先一つ動かす事さえ出来ず、訪れる死を受け入れるしかない。

 そうして、終焉を待つ最中、ふと過るのは導き手たる従者の声。

●従者の語るところによれば
「――御主人様は絶体絶命に陥りますが、座して死を待つばかり、という訳でもありません」
 ルーリィ・アルバローズ(従者・f35033)は彼方を見据える。
 過ぎ去りし日々へと思いを馳せるような眼差し。
 それこそが、グラビティ・ダウンに抗う唯一の手段。
「御主人様の前には『かつて相対した“|過去の強敵《オブリビオン》”』が現れるはずです」
 神経樹に精神の奥底まで絡め取られる影響か、猟兵の記憶の奥底から蘇ってきたそのオブリビオンは、|猟兵《あなた》の声を聞き、|猟兵《あなた》に言葉を返し、|猟兵《あなた》の指示通りにグラビティピラーへと挑みかかるだろう。
「刃を交えたからこそ、解ることもありましょう。その強敵が、何故、強敵であったのか。何を強みとしていたのか。グラビティピラーに一矢報いる術を持っているのではないか」
 今一度、過ぎ去りし激闘を思い起こすのだ。

 その時、|猟兵《あなた》の前に現れるそれは、何であるのか――。


天枷由良
 あまかせです。よろしくお願いします。
 このシナリオは一章で完結する戦争シナリオです。
 難易度:やや難のボス戦です。

●プレイングボーナス(下記に基づく行動で判定が有利になります)
 ……「過去の強敵(任意)」を召喚し、操作して戦う。

 プレイングはいつでも受け付けております。
 ご参加、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『十二剣神『神経樹グラビティピラー』』

POW   :    受容せよ。グラビティ・チェインは吾が力でもある
【濃密なグラビティ・チェインの霧】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【重グラビティ起因型神性不全症(寿命削減)】による汚染を与え続ける。
SPD   :    受容せよ。神経樹は宇宙を覆い尽くしている
【天空から降り注ぐ神経樹の槍】【建造物から生える神経樹の槍】【大地から生える神経樹の槍】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ   :    受容せよ。デウスエクスこそが到達点である
視界内の任意の全対象を完全治療する。ただし対象は【神経侵食】に汚染され、レベル分間、理性無き【暴走デウスエクス】と化す。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

久遠寺・遥翔
お前が諸悪の根源か
俺達はその寄り添い合う在り方こそ美しいと感じる。根本からして相容れないみたいだな。なら言葉は不要、はじめるとしようぜ!

こっちが動けなくなるのは知ってるさ
けどその代わりに戦ってくれる奴がいる

出てきな、禁獣『ケルベロス・フェノメノン』!
「我らが惑星には何人たりとも近づかせない」んだろう?
目の前にいるのはまさに悪となりて邪となりて今この惑星を侵す者だぜ!
刺さってる小剣でUCを増幅できたはず、一気にけりをつけるぜ

薙ぎ払えケロちゃん!
増幅インフェルノファクター・フェノメノン!
燃え盛る地獄で降り注ぐ神経樹の槍を焼き尽くせ!



 星を貫く巨木の如き異形。
 ビル群の谷間から覗いた神経樹グラビティピラーは、十二剣神に相応しい威容で戦場を支配し、全宇宙の血管と呼ぶべき権能で以て、東京という舞台を終焉の箱庭に変えようとしている。
「お前が……諸悪の根源か」
 辛うじて声を絞り出すも、久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)は一歩踏み出すことさえ出来なかった。
 |焔黒騎士《フレアライザー》たる彼の神経と精神は、既にグラビティピラーのユーベルコード『グラビティ・ダウン』によって九分九厘、掌握されている。
 それでも赤い瞳に宿る闘志は、消えぬ焔の如く揺らめいて。
「寄り添い合う在り方こそ美しいと感じる俺達とは、根本からして相容れないみたいだな」
 吐き捨てるように言って唇を噛む。
 共存共栄の成り立たない相手に、もはや言葉は不要。
 ただ互いの存亡を賭けて争うのみ――となれば、遥翔の“記憶の奥底”から喚び起こされるのは。

「出てきな、禁獣『ケルベロス・フェノメノン』!」
 不屈の咆哮が生む黒焔の嵐の中、現れたそれは三つ首の獣。
 数百mの強靭な巨躯に、無尽蔵の魔力と呪詛、超技術の機械兵器などを有する究極禁獣。
 かつての遥翔が機兵を駆り、神をも断つ剣を携えて挑んだ、無敵の怪物。
「“我らが|惑星《ほし》には、何人たりとも近づかせない”んだろう?」
「然り――!!」
 雷鳴の如き雄叫びを響かせて、地鳴りと共にケルベロス・フェノメノンが跳躍する。
 その眼に映るのは、まさに悪となりて邪となりて、今この惑星を侵す者。
「……愚かな。猟犬に身を窶したか」
 グラビティピラーの言葉が直接、頭へと響いてくる。
 同時に天地から、そしてあらゆる建物から伸びゆくのは、神経樹の槍――。

「薙ぎ払えケロちゃん!」 
 遥翔が放つ最後の叫びに呼応して、ケルベロス・フェノメノンの体躯に光が煌めく。
 刹那、現れた機械兵器が火を噴けば、雨あられと降り注ぐ弾丸は空を裂き、槍を焼き払い、神経樹を“炎の如く燃え盛る『地獄』”で侵していく。
(「そのまま焼き尽くせ!」)
 声にならぬ声で遥翔が吼えれば、ケルベロス・フェノメノンに宿る輝きはさらに眩さを増して。
 吹き荒れる砲火と『地獄』が、人智を超越した神を強く、深く、焦がしていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルト・ラムバルド
アドリブ上等

うぉ…でっか…いやでっか!?
敵はでっかいパイプラインかよ!?
だがあんなのと戦わねばならんのが騎士の定めよ!ベルト・ラムバルドが行くぞ!

キャバリ…うぅん(卒倒)
畜生ここまでかい…嗚呼走馬灯が見える…
いろいろあったなぁ…初めてトップ画面に立てたのはアスリートアースのエル・ディグレ戦だったか…ん?
あー!エルちゃんじゃないの!世界の危機だからエル助けて!略してエルけて!

UCでエルちゃんにカリスマオーラ纏わせて超銀河級のサッカーで
張り巡らされた神経樹と槍をすり抜けて宇宙まで駆け抜けろ!
そしてあのパイプライン目掛け超新星爆発級のシュートでゴールだ!

凄いぞエルちゃん!アスリートアースつええ~!!



「うぉ……」
 ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)は息を呑んだ。
 でかい……でっか……いやでっか!?
「でっかいパイプラインかよ!?」
 全宇宙へとグラビティ・チェインをばら撒く敵の、あまりの規格外っぷりにベルトは宣う。
 聳え立つ神経樹グラビティピラー。十二剣神の一柱。
「だが、あんなのと戦わねばならんのが騎士の定めよ!」
 ただ|騎士たれと《それだけを》己に誓って。
「ベルト・ラムバルドが行くぞ!」
 乗機たるキャバリアを――動かす間もなく倒れゆく身体。
「うーん……」
 大の字で卒倒するベルトは、既に彼の神の権能たるユーベルコード『グラビティ・ダウン』に支配されていた。
(「嗚呼……畜生……ここまでかい……」)
 見上げた空を埋め尽くす敵の巨躯。それは知覚できる一部に過ぎないと言う。
(「さすがに――さすがに、今回ばかりは相手が悪かった。終わった。キャバリア起動も間に合わず野垂れ死ぬしかないのだ。もはや指の一本も動かせない。さようなら人生。さようなら愛しのマドンナ。嗚呼、駆け抜けた道程が蘇る。これが走馬灯か、色々あったなぁ……初めて私が|世に名を知らしめた《TOP画面に立った》のは、エル・ティグレ戦だったか……ん? エルちゃん……?」)

 ――その時、ベルトの記憶から一人のオブリビオンが蘇った。
「あー! エルちゃんじゃないの!」
「アハハッ! 世界の危機だからってアタシを呼ぶとか、いい根性してんじゃん!」
 現れたのは、宇宙最強のギャラクシィリーガー『エル・ティグレ』。
 燃える彗星じみたサッカーボールを蹴り上げながら、戦場に笑い声を轟かせるその姿の――どれほど頼もしいことか。
「エルちゃん助けて! 略してエルけて!」
「エルけて……?」
 ダメだ、ふざけている場合ではない。 
 俄かに己の調子に乗りやすい気質を後悔するベルトだったが、銀河に轟くアスリートは快活に笑い飛ばして。
「オッケー! この|惑星《チーム》を救う|超新星爆発級《スーパーノヴァ》ゴラッソ、決めてやるよッ!」
 言うが早いか、神経樹グラビティピラーというゴール目掛けて走り出す。
 その背にベルトが出来るのは、ただ一人のサポーターとして願うことだけ。
「宇宙まで駆け抜けろ、エルちゃん!」
「うおおおおおおお!!」
 託された想いはエル・ティグレの身体を包む光となって。
 カリスマギャラクシィリーガーが、東京というフィールドを|疾走《はし》る。
 その行く手を阻むのは、天地のあらゆるところから伸びる神経樹の槍――。

「こんなもので止められるものか! アタシはエル・ティグレだ!!」
 大地が弾ける。ボールは燃える。
 疾走するエル・ティグレは、あらゆる障壁をドリブルで強引に突破していく。
 あまりにも巨大な敵。どれだけ近づけたかも定かでないが、しかしアスリートの本能が告げるだろう。幾重もの妨害を越えて侵入した、其処がゴールを狙う絶好のニアゾーン。
「いっくぜ~!!」
 踏み付け、跳ねたボールが獣の如く吼え猛り、眩い光を放つ。
「これがアタシの、全力シュートだぁぁぁあああ!!」
 空を裂く流星のような一撃。星を割る火球の如き一発は、神経樹へと突き刺さる。
 刹那、目も眩むほどの真白い輝きが天を埋め尽くして。
「凄いぞエルちゃん! アスリートアースつええ~!!」
 神経樹の支配から逃れたベルトの歓喜が、戦場に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POW
過去の強敵:別の未来の自分
シナリオ:第二次聖杯戦争㉑〜君に何かがあった未来

『…よもや、殺し尽くした貴様とまた会うとはな、グラビティピラー。
ならば、この世界でも宇宙から消滅するまで殺すまでだ。
手を貸す。指示をよこせ、オレ。』
頭の中でもう一人の自分に感謝を伝え、心強く応!と答える

グラビティピラーの放つ霧を光焔の一撃で粉砕し、
オレ達が受ける苦痛などがそのまま英雄の戦闘力を
天井知らずに上昇させる
仮に不全症を患っても[気合い]と[根性]でねじ伏せる
悪を滅ぼす
それこそ絶対と英雄の魂は雄々しく燃えていた
前に進んできた今の清導の戦術と最強戦力の英雄
無敵のコンビがグラビティピラーを無数の連撃で粉砕した



 神経樹の『グラビティ・ダウン』に囚われ、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は心の内で叫ぶ。
 その魂の咆哮に答えるように、記憶の奥底から現れたのは――。
「……よもや、殺し尽くした貴様とまた会うとはな、グラビティピラー。ならば、この世界でも宇宙から消滅するまで殺すまでだ」
 忌々しげに呟く『英雄』が、そこに居た。
 それは、かつて見た“未来の自分”。清導が行き着く可能性だったもの。
 なればこそ、よく理解る。己以上に己を良く知るものなどないのだから。
「手を貸す。指示をよこせ、オレ」
「応!」
 強く答え、願うは|グラビティピラー《悪》の打倒。
 清導の神経と精神は殆ど掌握されてしまったが、その痛みや苦しみ、悪の暴虐に対する怒りは『英雄』の力を高める源となる。
「行け――!!」
 全てを託された『英雄』が大地を蹴る。
 紅の軌跡を残していくそれは、程なく神経樹が放つ濃密なグラビティ・チェインの霧に包まれた。
 身体は瞬く間に汚染され、命を擦り減らしていくだろう。
 しかし『英雄』は、元より清導の記憶から蘇った残影でしかない存在。
 明日を見ることなど叶わない。
 故に、全てを気合と根性で捻じ伏せ、無窮不滅の光焔で打ち破って進む。
 ただ、悪を滅ぼすために。
「オマエはオレを――オレ達を本気で怒らせた!!!」
 曰く、醜く不完全な知的生命体。
 全て、悉く、塵一つ残さずに滅ぼされるべしと、神経樹は宣うけれども。
 思い知るがいい。今と、かつて見た“いつか”が織り成す無敵のコンビ。
 その力を。
「――――!!」
 義憤の咆哮と共に『英雄』が繰り出す連撃。
 清導の意志そのものと呼ぶべきそれは、傲慢な“神”の巨躯に、確かな爪痕を残した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皇・絶華
神機の主発動中
おお…なんと言う事だ…!(何故か感動している

つまりお前は…36世界の人々を強者へと導くためにぜっちゃんチョコの材料になりに来たのだな!?
「わ、わぁ…!」(怯える黒髪少女

だが即座にグラビティダウンで捕らえられ

過去の強敵
貴様…マーディロード!?

http://tw5.jp/adventure/replay/?scenario_id=24916

「…この我を倒した貴様がこのような様とはな…だが善い。世界を蹂躙するというならば…叛逆を開始する!」

ML
グラビティの影響で全盛期の力を取り戻している
「十二創神と並ぶ神か…その不条理…粉砕せん!」
魔剣デュランダルによる絶空斬で切り刻み粉砕する!
「?…ふむ…こいつの血肉を切り裂き採集しろと?まぁ良い。我も過去にダモクレスを鹵獲した事はあったからな。それが叛逆に繋がるのであれば…」
「…(や、やべぇよ…!)」
という訳で存分に神経樹を切り裂き採集を行
対Wiz
「元より我はエインヘリヤルである!」
暴走すれば絶対者に対する叛逆猛攻で最後まで暴れ続ける!



「おお……なんという事だ……!」
 グラビティピラーの姿を見上げ、皇・絶華(影月・f40792)は何故か感動を覚えていた。
 全宇宙を巡るグラビティ・チェインの血管――その異形を、彼は独特な感性で理解した。
「つまりお前は……36世界の人々を強者へと導くために、ぜっちゃんチョコの材料になりに来たのだな!?」
「わ、わぁ……」
 怯える謎の黒髪少女・さっちゃんの声が届いたのもそこまで。
 グラビティピラーのユーベルコード『グラビティ・ダウン』に囚われ、絶華は地に伏す――が。

「貴様……マーディロード!?」
 呼び声と共に揺らぐ影。
 其処に現れたのは、かつて絶華が打ち倒したという叛逆の騎士、マーディロード。
「……この我を倒した貴様が、このような様とはな」
 侮蔑とも落胆とも知れぬ呟きを零した後、騎士は彼方を見上げた。
「だが善い。世界を蹂躙するというならば――叛逆を開始する!」
 剛毅の宣言と共に駆けだす騎士。
 絶華は、それを見送るしかない。他に出来ることがあるとすれば……祈るか、願うか。
 そんな背に刺さる視線も意に介さず、騎士の振るう魔剣デュランダルは空の霊力を帯びて神をも断つ。
 神経樹の枝が無数に唸りを上げる中、それをものともせず、マーディロードは吼える。
「十二創神と並ぶ神か……その不条理、粉砕せん!」

 かくして、ケルベロスディバイドの東京を舞台に、神と騎士との応酬が繰り広げられる。
 飫肥城の激闘も霞むほどの戦い。
 グラビティ・ダウンに掌握された絶華は、もはや言葉で割り入ることも出来ないが。
「……ふむ。血肉の採取だと?」
 全盛期の力を取り戻した騎士は、激しい叛逆の最中にも関わらず首を傾げ、後に頷く。
「良い。過去にも我はダモクレスを鹵獲した。それが叛逆に繋がるのであれば、神をも喰らってやろう」
(「や、やべぇよ……」)
 マーディロードを呼び起こした当事者たる絶華は、思わず心の中で漏らす。
 人智を超越した存在の切れ端の採集。それを叛逆と呼ばずして何と呼ぶか。

 そして絶華の焦燥じみた感覚は、ピラーのさらなるユーベルコードによって増幅の一途を辿る。
「元より我はエインヘリアルである!」
 侵食する神経樹に汚染されたマーディロードの目に狂気の輝きが宿る。
 暴走。その二文字で表すべき状況に陥った騎士は、もはや誰にも制御できない|狂戦士《バーサーカー》。
 |絶対者《神》をも畏れぬ猛攻は、叛逆を成し遂げるまで終わらないのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
…この世界…ケルベロス…不思議と懐かしさを感じもする
この星を蹂躙し…滅びを齎し糧とするのであれば
善い…それが貴様らの在り方であるならば認めよう
そして悪を名乗る事も祝福しよう
だが…我もまた|悪《ヴィラン》なり
その惨劇に叛逆せん

過去の強敵
それはバーンも忘却の彼方…何度も転生を繰り返した神の…原初の死を齎した者と己の組織を粉砕した者達
皇・絶華
そして数多のケルベロス達
http://tw5.jp/adventure/replay/?scenario_id=24916

「おお?私は冥界にいた筈だが…何故かあの男を助けねばならないのか。これは…ケルベロスウォーか!それなら…全霊を以て挑むのみだ!」
グラビティ四門『窮奇』発動
他のケルベロス達も数多のグラビティを発動させ挑みかかる!
「…(そう…我は見た…数多のケルベロス達が絶対者たるデウスエクスに挑み…最後に打ち破ったのを…この世界とよく似た世界で…その中で…目覚めた我は…あの絶華という男に…。)」
(だが…その記憶はこの戦いの後再び奥へと沈んでいく…)



 バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)を襲う奔流。
 |ケルベロスディバイド《この世界》の不思議な懐かしさ。
 奇妙な既視感。溢れ出す“いつか”の光景。
 それらはやがて、グラビティピラーのユーベルコード『グラビティ・ダウン』によって圧し潰される。
 神経と精神を掌握され、身動き一つ取れなくなったバーンは――しかし、彼方に聳える大樹の如き異形を、じっと見据えて。
(「この星を蹂躙し……滅びを齎し糧とするのであれば……善い…それが貴様らの在り方であるならば認めよう。そして悪を名乗る事も祝福しよう。だが……」)
 我もまた|悪《ヴィラン》なり。その惨劇に叛逆せん。
 神経樹すらも支配できぬ、バーンの根源たる意志が――遥か忘却の彼方から呼び起こす。

「おお? 私は冥界にいた筈だが……何故かあの男を助けねばならないのか」
 バーン自身と、|彼の組織《デュランダル》。二つに原初の死を齎した者。
 その名は皇・絶華。六人の輩を引き連れ、現れたそれは周囲を眺め、目を見張る。
「これは……ケルベロスウォーか! それなら……全霊を以て挑むのみだ!」
 一瞬にして覚悟を定めた絶華は、家伝の奥義“|四門「窮奇」《シモンキュウキ》”を発動。
 古代の魔獣の力を身に宿し、霊剣一振りを携える狂戦士と化して、敢然と神経樹に向かっていく。
 後に続く六人は、ある者は絶華を守るようにして先を行き、ある者は雷鳴の如き剣技で切り込み、ある者は力高める光球を放ち――各々が為すべきを為して、絶華を支え、導く。
 その有り様を眺めていれば、バーンの既視感はさらに鮮明さを増して。
 神経樹に汚染された精神の、残り僅かな部分で、想う。
(「……そう……我は見た……数多のケルベロス達が絶対者たるデウスエクスに挑み……最後に打ち破ったのを……この世界とよく似た世界で……その中で……目覚めた我は……あの絶華という男に……」)
 沸々と湧き上がる光景にノイズが走る。
 遥か彼方へと通じるそれが行き着く先は、終焉と等しい。
 なればこそ、か。
 絶華一党と神経樹の戦いが激しくなるにつれて、バーンの脳裏に過ったものは、再び深く深く、記憶の奥底、闇の奥深くへと沈んでいく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・絶奈
◆心情
嗚呼…
此れは此れで面白いですね

◆行動
私は相対した事は無い筈ですが…
きっと『ケルベロスブレイド』と呼ばれた世界の『私』が力を貸してくれたのでしょう

其の強さを認識し、激戦を自分の事の様に憶えています

即ち八竜が一柱、『砲竜』ヴァイスカノーネを…

重装長距離砲撃型のデウスエクス・ドラゴニア
背なのカノン砲だけでなく、全身の副砲群と口腔砲より放たれる攻撃…
貴方とて易々とは受け切れないでしょう
それに…
貴方がデウスエクスたるヴァイスカノーネを下したなら、貴方の主張は無意味と化します

ではヴァイスカノーネ
嘗ての敗北を覆す様な活躍と勝利を期待しますよ
貴方の能力はこうした拠点迎撃でこそ最も活かされる筈なのですから



 一柱の神たる霧島・絶奈(暗き獣・f20096)でさえも、神経樹には抗えない。
 初めからそうであったものと、後からその座に至ったものの違いだろうか。
 何にせよ、珍しいことに絶奈は蹂躙する側でなく、される側に回っていた。
 ただ――。
(「……嗚呼……此れは此れで、面白いですね」)
 人ならざるものと、人でなくなったもの。
 人智を超越する存在同士の精神的邂逅は、もはや凡百の人類になど想像も及ばない高みに在る。

 その遥か“彼方”において。
 絶奈は視た。大洋を望む白亜の灯台。其処に降り注ぐ死と破滅。
 理不尽と言う他にない圧倒的な暴力。其れを、ただ一匹で為す。
 ――竜を、視た。

(「……ええ、|きっと《・・・》、|そうだったのでしょう《・・・・・・・・・》」)
 神たる絶奈は知らない。だが、覚えている。其の強さ。激しさ。恐ろしさ。
 勇猛果敢な猟犬の群れを以てしても、息の根を止めるのに大きな犠牲を払った怪物。
 彼の竜の名は――。

(「八竜が一柱、『砲竜』ヴァイスカノーネ」)

 その名の通り、背に備えた強力無比なカノン砲を始めとする大火力で、かつてのケルベロスたちを蹂躙した重装長距離砲撃型の|デウスエクス・ドラゴニア《ドラゴン》。
 絶奈の前に現れたそれは、あの時と変わらぬ威容で天を仰ぐ。
 全長にして――僅か30mほど。
 そう、天覆う神経樹などよりも遥かに小さく。
 けれども、その力は彼の神が宣う“不滅のデウスエクス”にて、最強種と恐れられたもの。
(「貴方とて易々とは受けきれないでしょう。それに……」)
 神経樹グラビティピラーがデウスエクスたる砲竜を屠れば、彼の神の主張は意味を成さなくなる。

(「では……期待していますよ、ヴァイスカノーネ」)
 嘗ての敗北、受けた恥辱を雪ぐのだ。
 侵攻でなく防衛にこそ活きる、その真価を発揮して。

『滅せよ!!』

 迸る光。天を薙ぐ灼熱。
 知的生命体が僅かに認識できる神の影、星に聳える大樹が揺らぎ、燃える。
 それは在ってはならない事象。在り得ざる愚行。
 グラビティピラーは時を巻き戻すように自らを癒して、己自身を掌握するという矛盾に狂う。
 そうして暴走を始めた神経樹を貫くのは、ヴァイスカノーネの象徴。
 戦場と化した東京全てに、己が存在を高らかに知らしめるようにして。

 今、再び――白砲、轟く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
まるで動けねぇでござる、もう駄目だせめて首は残してくれるとありがたいなーと思いつつ、黒髭は倒れるのであった…まる
等と思いつつ見える影あり…あれは!震えるミント氏!強敵?
拙者にわかる強みはぷるぷる震えるミントちゃん可愛いという事だけ!

見てミント氏がぷるぷるすると魔狼フェンリルが大量に出てくるぞ!なるほど群狼でござるな
この能力は使えるぞ!敵が霧で一体を縛るだけ!縛れるのは一体…つまり群れで狩りをする狼であれば一体が止められても他が襲い掛かればいいという事!
一体一体の生命力も旺盛でござるからな!囲んで四方から襲い掛かるだけでも止められねぇ!

そしてこんな奴らを従えるとは…やっぱつえぇぜ…ミント氏!



「まるで動けねぇでござる」
 エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は道端に立ち尽くしていた。
 彼の名誉の為に言っておくが、動かないのではない。ましてや働かねぇでもない。
 動けないのだ。その精神と神経は既に神経樹グラビティピラーに掌握されている。
 獲物は選べと言いたいが、あちらも神なので懐が広いのだろう。黒髭のおじさんの神経も美少女の精神も分け隔てなく侵す。さすが神。身体も心も守備範囲もクソデカい。あとは拗れた趣味の持ち主でなければ良いのだが。
(「せめて首は残してくれるとありがたいなーああもう駄目だ声も出ねぇ」)
 おじさんはおじさんなので無駄な足掻きも出来ない。地球から溢れるのがグラビティ・チェインなら、若さから漲るのが気力と体力なのだ。そしておじさんの若さは疾うの昔に骸の海に沈んだ。
 エドゥアルトはそのまま倒れ、大の字で転がる。
 終わりだ。ジ・エンド。完。黒髭先生の次回作にご期待ください。
 せめて来世は髭のように逞しく生え散らかす雑草ではなく、可憐な一輪の花にでも生まれ変わることを願おう。
 たとえばタンポポ。そうだ、タンポポが良い。
 タンポポは可愛いし獣なんかにも好かれる。餌として。
 ふわっと綿毛が飛んだ先で、咲き誇ったかと思えば喰われちまうんだ。そう、そこにいる青い犬みたいなのに――ってあれは震えるミント氏! ミント氏ではないか! こいつぁ神様もひっくり返る程の強敵だぜ……強敵? 強敵とは一体……?
(「ミント氏! ミント氏!」)
「くぅ〜ん、きゃんきゃん! ぷるぷる……」
 うーん相変わらずの|可愛さ《か弱さ》。
 けれども、エドゥアルトは理解している。あの可愛さこそが唯一無二の強さなのだ。ミントちゃんかわいい! ぷるぷる震えるミントちゃんかわいい!!
「くぅ〜ん……」
 倒れて動かないおじさんとは絶対に視線を合わせようとしないミント氏。
 それは弱そうなゴーストウルフで、実際弱い。すこぶる弱い。
 しかし、そんな弱者の狼に世界は滅びを許さなかった。ミントは『銀色の雨の時代』において数々の戦いを偶然とはいえ生き延びた事で、オブリビオンと化した後も何だか妙に慕われており、そのカリスマ性(?)を以下略(ここまでテンプレ)
(「要するにミント氏がぷるぷるすると“魔狼フェンリル”が大量に出てくるんでござる……来た! ほら来た!」)
 一匹出てきたら百匹は居るとまことしやかに囁かれてはいないが、しかしミントが震える度に巨体かつ強大なフェンリルが姿を現す。
 さながら打ち出の小槌。そんなミントの為であれば、群れ成すフェンリルは何者にでも牙を剥く。
(「なるほど群狼でござるな……これは使えるでござるよ!」)
 狼は群れで狩りをする獣。つまりは一匹止めたくらいじゃどうにもならない。
 ましてや、それは只の狼でなく魔狼。生命力も旺盛。
 濃密なグラビティ・チェインの霧が一匹を捉えたのを横目に、四方八方から牙を剥いて神経樹へと襲い掛かる。
(「止められるものなら止めてみやがれ!」)
 我が事のように昂ぶり、喜び、しかし表情筋が微動だにしないが故に真顔のままで横たわるおじさんは、辛うじて残された自由をミント氏へと向ける。
(「あんな奴らを従えるとは……やっぱつえぇぜ……ミント氏!」)
「くぅ〜ん……」
 一方的な想いをどうにもできないまま、ミントはひたすらに震え続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
あー……成程
えぇ、確かに強敵であり強く心に残った存在です
オウガ・オリジン……またあなたの姿を見るとは
しかしあなたの力は多岐に渡る筈
どの力を使えば――

え、“現実改変UCを使って美食嫌い厨房を周辺に作ってかまどを出せばよかろう”?
あー、アリか……?
(迷宮災厄戦18−8〜『オウガ・オリジン』と美食嫌い厨房』)
(WIZ【炎なくして食事なし】参照)

あなた、例え敵のUCで理性が無くなっても問題なさそうですもんね……
とにかく炎は複数合体を出来るだけ繰り返して大きくしてください
後はぶっ放せば奴に届くでしょう

……腹が減った?
うーん、あの樹は美味いんですかね……
いや、あなたは不味い食べ物の方が良いんでしたっけ?



「あー……成程」
 黒包帯の男が呻く。
 神経樹グラビティピラーのユーベルコード『グラビティ・ダウン』に囚われた男――スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の前に現れた“記憶の奥底”より蘇りしもの。
 それは『オウガ・オリジン』と呼ばれた少女の如き姿。
「またあなたの姿を見るとは……」
 遥か遠く遠くと言いたくなるほど昔の、それとの邂逅を思い起こすスキアファール。
 確かに、オウガ・オリジンは強敵であった。そしてまた、心に強く残る存在であった。
 彼女のようなものが味方として振る舞ってくれるなら、それほど頼もしいこともないが――。
(「しかし、あなたの力は多岐に渡る筈。どの力を使えば――」)
 逡巡するスキアファールに、オウガ・オリジンは早速、その権能を示してみせた。
 即ち“現実改変ユーベルコード”による再構築。
 スキアファールの前に、さらに懐かしい光景が広がっていく。東京の町並みを塗り潰して広がるそれは、“美食嫌い厨房”と呼ばれた一つの国。
 オウガ・オリジンの空腹を満たす為、ただそれだけの為に料理を作り続ける厨房には、絶えることなく炎燃ゆるかまどが在った。
(「あー……」)
 あの無数のかまどの炎を束ね、巨大な焔の塊とすれば神経樹すら燃やせるだろう。
 じわじわと声すらも出せなくなりながら、スキアファールは思案を続け、判断を下す。
 アリか、ナシかといえば――アリか……?
「何をそこまで悩むことがあるのだッ!?」
 微妙に煮え切らない様子に、悶えるオウガ・オリジン。
 それを余所にして、スキアファールは暫し懐旧に浸る。協力して作り上げた七色のホットケーキ。その鮮やかな色合いと、香しい匂い――。

 ――ぐぅぅぅぅぅ~と、大きな腹の虫の音が響いた。
「嗚呼、嗚呼……腹が、腹が減ってきた!!」
 苛立つオウガ・オリジン。それはスキアファールが思い描いた通り、かまどの炎を次々に合体させていく。
 程なく放った一撃は神をも焼き始めたが――それよりも。
「腹を減らしているのだ! このわたしが!!」
 果たして素で怒っているのか、グラビティピラーに侵されて理性を失い始めているのか。
 どちらともつかぬ雰囲気でオウガ・オリジンは繰り返し吼える。
 だが、スキアファールにはどうにもすることができない。その身体は未だ片腕すら動かせない。
 在り合わせで何とかしてもらうしかないのだ――と、思えば目に映るのは一つだけ。
(「うーん、あの樹は美味いんですかね……」)
 まさか美味いはずがない、と断言したくなる見た目だが、しかし確かめてみないことには真実など分からない。
 スキアファールはオウガ・オリジンを唆す。
 かつては『安全でおいしい料理』を食わせる以外になかったが、今はむしろ、その真逆。
 オウガ・オリジンにさらなる力を与えんとすれば、『美しくとも有害な食事』を食わせる方が良いはずだ。あれが美しいかはさておき、有害なのは間違いないだろう。

 かくして、オウガ・オリジンは枝の如き一片を漆黒の穴の如き顔面へと放り込む。
 途端にかまどの火が激しく燃え盛ったのは、当然の帰結と言えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
あらかじめ目隠しを。敵やこれから来るであろう味方の行動くらいは第六感と心眼で見切れますし。

醜く不完全な知的生命体は全員滅べ、ですか。
何様なのでしょうね。たかだか神というだけで宇宙の意思気取りですか。不愉快ですね。

来ましたか、セイクリッド・ダークネス。
どうせ狂っていてまともに会話もできないのでしょう。簡潔に命じます。
プリミティブ・ホワイトでアレを滅ぼして、掌握されたわたしを癒してみせなさい。

プリミティブ・ホワイトは全方位へと放たれる敵のみを焼き尽くす燦然たる光。
なら理性が無くても庇護対象のわたしには害はなく神経樹のみを焼き尽くすはず。
眩しさは目隠しで気にならないし敵の視界も潰せて一石二鳥です。



 七那原・望(比翼の果実・f04836)は、自ずから目を封じて戦場に立った。
 長く暗闇の中で生きてきた時間は只の過去ではない。
 今でも“見えすぎる”ことは、時に余計な情報となる。
 故に、己が視界を闇で縛って、望はその“声”に耳を傾ける。
(「醜く不完全な知的生命体は全員滅べ、ですか……」)
 十二剣神が一柱、神経樹グラビティピラーは語った。
 吾が求むるは強者のみ。そして強者とは、不滅のデウスエクスに他ならぬ、と。
(「何様なのでしょうね。たかだか神というだけで、宇宙の意思気取りとは。不愉快ですね」)
 憤る望だが、その神経と精神の殆どは、既に彼の神が放つ無敵のユーベルコード『グラビティ・ダウン』に掌握されている。
 反抗するどころか、指一つまともに動かすことさえ叶わない。

 しかし、望も甘んじて死を受け入れる為に来たのではない。
 僅かに残された己の自由な意志で以て、過去へと羽搏く。
 その先に見つけた光は――かつて敵対した、狂気と聖性の狭間で輝く存在。
「来ましたか、セイクリッド・ダークネス」

『ジャンヌ・ダルクよ。わたしを解放せよ。わたしは全てを滅ぼすであろう』
「嫌です、セイクリッド・ダークネス」

 ……ああ、と。概ね想像通りの展開に心の中で頷く。
 今の受け答えに望は関わっていない。
 第二次聖杯戦争の折、現れたそれはひとつの体にふたつの人格を宿す怪物だった。
 望の記憶の奥底から蘇ったそれもまた、かつてを一言一句なぞるように争い始めた。
 けれど、飛び交う言葉は噛み合っているようでいて、噛み合っていない。
 狂っているのだ。故にただ一言、望は簡潔な命令を下す。
 |神《アレ》を滅ぼしなさい、と。

 刹那、放たれた“燦然たる光の力”は、神経樹をも焼き焦がす。
 あまりにも眩い白。世界を真昼より明るく染めるそれは、全てを滅ぼすような鮮烈さでありながら、しかし器用に敵だけを襲う。
 神経樹とて世界を認識する“目”くらいはあるはずだ。
 それも当面、使い物にならないであろう。
(「一石二鳥ですね」)
 目隠しの向こうにある景色を心の眼で見やる望。
 その身体が再び自由を取り戻すまで、世界は真白以外に染まることを許されない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
【SPD】
敵は巨大とは言え、それを稼働させている「意識」には他の知性体と大きい差異はないようです。
……ならば、確かに「貴女」の力は有効かもしれません。

再現されるのは第二次聖杯戦争で交戦したフォーミュラ、「聖杯剣揺り籠の君」。
相手の攻撃は「神の左手」での引き寄せで彼我の距離を変え回避し、「リリスの槍」「聖杯剣」による攻撃をわずかでも「神経樹」へと当てる事を優先させます。
知性体を侵し、意識そのものを蕩かし呑み込んでゆくあの「いんよくのかぜ」は無くとも、
【せいはいうぇぽんず】の毒とUCを奪う力も決して侮れるものではありません

知性体である以上、彼女の「毒」から完全に逃れるのはほぼ不可能でしょうから。



 根を張るように全てを支配する、神経樹グラビティピラーのユーベルコード。
 不可避の精神汚染『グラビティ・ダウン』に蝕まれながら、しかしミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は恐ろしいまでに冷静に、身動き一つ取れない自分自身を俯瞰していた。
 それは彼女が“ミレア”という軍団を構成する一つでしかないからか。
 さりとて、記憶は全てのミレアと同期するもの。数多の戦いを辿りつつ、ミレアは分析の対象を己から敵へと移す。
(「規格外に巨大な敵とはいえ、それを稼働させている“意識”は、他の知性体と大きな差異はないようですね」)
 ……ならば、と。
 ミレアの記憶の奥底から蘇る者は――第二次聖杯戦争で交戦したオブリビオン・フォーミュラ。
 即ち、『聖杯剣揺籠の君』。

「……あれ? わたしは……ゆりゆりは……」
 何故、此処に居るのか。
 それすらも理解出来ぬまま、しかし言い知れぬ昂ぶりに突き動かされて、聖杯剣揺籠の君は左手を伸ばす。
 あらゆる物質を引き寄せる“神の左手”。知的生命体が完全に認識できない相手だろうと、銀河に存在しているのであれば、それは物理的に質量を有するもの。
 神経樹は聖杯剣揺籠の君へと近づき、その僅かなズレが天地から生えた“槍”の狙いを乱す。
「…………」
 当たりはしなかった。けれども、それは確実に敵意だった。
 抗う理由としては充分だ。しんぷるに。
 聖杯剣揺籠の君が振るうのは癒える事なき毒を注ぐ“リリスの槍”と、ユーベルコード全てを奪う“聖杯剣”の二つ。
 彼女を彼女たらしめていたと言っても過言ではない、あの“いんよくのかぜ”は吹く気配もないが。
(「それが無くとも、彼女は決して侮れるものではありません」)
 自ら相対した記録があればこそ、ミレアは断言する。
 そして彼女の確信を真実とするべく、聖杯剣揺籠の君の|武器《うぇぽんず》たちが神経樹に牙を剥く。
 一撃一撃はさほど重くはない。だが途切れる気配の無い連続攻撃は、神経樹に“毒”を注ぎ、彼の神が操る樹槍の制御権を奪い取る。
(「知性体である以上、彼女の“毒”から完全に逃れるのはほぼ不可能でしょう」)
 その毒性から唯一逃れる術があるとすれば――|宇宙の終焉《死》を迎えるか。
 或いは、完全に滅ぼされるか。
 どちらも神経樹には選べまい。しかし選ばなくとも結末は迫る。
 それを見届けるべく、ミレアは観測機の一つとなって、神と聖杯との争いを眺めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
命を蔑み甘く見てるのは
気に入らないぜ
吠え面をかかせてやる

記憶の欠片とは言え
オブリビオンに力を借りるってのは面白いぜ
これも猟兵の力の一つ、なのかもな

戦闘
俺の奥底から蘇ってきたのはクラーケン
かつてアリスラビリンスで戦った奴だ

https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=27325

名のある強敵ってわけじゃないけど
こんな奴にピラーがやられるってのは痛快だろ

無数のシャボン玉が
ふわふわと周囲へと広がって行けば
伸ばされている神経樹が次々と幻となって
その力を失っていく
神経侵食という現実も幻となり
消えてなくなる

クラーケンが泳ぎ回るにつれ
幻の侵食が広がる
無数の神経樹は消えていき
やがてはピラーの存在という現実そのものを
溶かして幻としていくだろう

サンキュ>クラーケン

もしダウンに絡め取られたという現実が
幻と化して動けた場合は
地獄の炎を纏って突撃し焼却



 重力に魂ごと縛り付けられるような感覚。
 神経と精神が引き裂かれ、絡み取られ、飲み込まれていく。
 十二剣神が一柱、神経樹グラビティピラー。
 その権能は威容に相応しき力。地球人類など歯牙にもかけないもの。
 彼の神の傲岸不遜も、当然の姿勢だろう。
 だが――。

「命を蔑む奴が、俺たちに勝てると思うなよ!」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は、己に残された自由を振り絞って叫ぶ。
 咆哮は時空を超え、記憶の彼方へと至り、其処に眠っていた|過去《オブリビオン》を呼び覚ます。
 その者の名は――クラーケン。
 夢と現実の狭間を泳ぐ亜空間の|魔魚《サメ》。
 アリスラビリンスを舞台とする大戦“迷宮災厄戦”の最中、鏡だらけの戦場でウタが出会った敵。

 もっとも、クラーケンは強敵でこそあれ、神や魔王の類ではない。
 アリスラビリンスにて自らの領域を持つほどの、名のある存在でもない。
 ――なればこそ、だ。
(「こんな奴にピラーがやられるってのは痛快だろ?」)
 ちらりと横目で見やれば、クラーケンの目が訴える。
 ……おまえ、今「こんな奴」とか思っただろう、と。

 言葉もなく通じたそれに、音もなく笑いを零して。
 ウタは命じる。猟兵とは相容れぬはずのオブリビオンに託す。
(「|神経樹《あいつ》に吠え面かかせてやろうぜ!」)
 成し遂げろ、ジャイアントキリング。
 その大口で神をも呑み込み、擦り潰すのだ。

 かくして、クラーケンは宙を泳ぐ。
 くすんだ尾びれが一薙ぎするたび、魔魚の周囲にある命なきものは泡沫と化す。
 ふわふわと漂うそれが映すのは、幻。
 泡を流れる七色に現実が溶けていく。
 それはある種の優しさで、神経樹を傷つけるわけではない。
 だから彼の神にはどうしようもない。存在しない傷を癒すことは出来ない。
 全ては夢。幻。
 しかし、彼の神が侵す神経や精神は全て現実に根ざすもの。
 如何に銀河や星団を超えるほどの巨大な神でも、夢の世界までは届かない。
 泡を割ろうと伸びる枝も、其処に映れば、只の幻となって溶ける。
 そして、夢はいつか覚める。

「――サンキュ、クラーケン!」
 精神を絡め取る枝すらも幻になった時、ウタは不死鳥の如く炎の中から飛び立つ。
 記憶の奥底から蘇ったオブリビオンに力を借りる。
 興味深く面白い“夢”だったが、やはり幕引きは目覚めた猟兵の手で行わなければ。
「これがあんたの言う、醜く不完全な生命体の力だ!」
 空に灼焔の軌跡が伸びる。
 数多の幻が弾け飛び、再び神経樹がその権能を行使しようとする刹那。
 ウタが振るう断罪の炎は、傲慢な神に確かな傷を刻み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐東・充
全く、忌まわしい事この上ない
記憶を辿り眼前に蘇ったのは
故郷を奪い、妻を奪い、娘の姿を掠め取っていった
あの邪神の姿だった

「パパ、助けに来たよ」
娘そっくりの姿で、娘そっくりの声で、不自然な発音で笑う
触手を生やした悍ましい化物

こんなものに縋らなければならないとは――
偽物とわかりきった笑顔に心を動かされる自分にも心底呆れかえる
だが今はこれしか方法がない

おまえの触手はあらゆる者の精神を狂わせる
おまえの身体は劫火を纏い、文字通り歩く災厄となる
無数の命を奪ったあの時のように

燃やし尽くしてやれ、あの時のように
全てを奪い尽くせ
加護を施すために呟いた言葉は
【慈愛】とは程遠いものだった



 それは世界を静かに支配する。
 摩天楼すらも睥睨する神経樹から溢れ出た枝は、根を張るように精神を侵し尽くしていく。
 何者も逃れることは出来ない、ひれ伏すしかない、傲慢なる神の御業。
 佐東・充(オルタナティブ・f21611)も例外でなく、膝を折り、灰のような声を漏らす。
 機械の腕は軋んでも“ヨマンダ”は吼えない。
 無力。そう、神の前で、それ以外の存在は只々、無力。
 彼の者の矛先が己に向かぬようにと、怯えながら頭を垂れて、希うしかないのだ。
 救いを。

(「……ああ」)
 |やはり《・・・》、と充は思った。
 俯いたまま微動だに出来ない視線の先、ひらりと翻った白い裾。
「パパ、|助けに来たよ《タスケニキタヨ》」
 不自然な発音。お気に入りだったワンピースの内側から、ぼとりと落ちる臓腑の如き触手。
 其処に現れたモノは、娘と瓜二つの姿で立ち、よく似た声で語り、生き写しのように笑う。

 ――邪神。
 充の故郷を奪い、妻を奪い、愛しき子の姿をも掠め取っていった、忌まわしきもの。

 記憶というフィルターをかけて抽出された過去は、想像以上に鮮烈で。
 少女と触手、眩暈がするほどのコントラストに、思考は“偽物”だと理解して。
 けれども、心は――。

 ……我ながら、呆れて言葉も出ない。
 此方を窺うように覗き込む、その|笑顔《ニセモノ》に己が揺れ動くのを、|神経樹《かみ》に支配されているからだ、とは言えない。
 こんなものに縋らなければならない事実も含めて、つくづく度し難いとも思う。
 だが、今はこれしか方法がないのだ。
 あらゆる者を狂わせる触手。何もかもを燃やし尽くす劫火。
 悍ましきその力に、充は願うのではなく、命じる。

「――行け」
 おまえが得意とする、そのやり方で。
 呟きに|機械腕《ヨマンダ》が震えた。
 少女の姿をしたものが軽やかに跳ねる。地面が泡立ち、触手が膨れ、弾ける。
 やがて人影は劫火に包まれ、文字通りの災厄として神経樹に襲い掛かる。
(「そうだ……」)
 無数の命を奪った、あの時のように。
 燃やし尽くしてやれ、あの時のように。
 閉ざした口の隙間から漏れ出る呟きは、かつて愛娘に贈った“慈愛”などではなく。
 仇なすものから全てを奪い尽くせと命じるだけの――云わば、呪い。

 焼け焦げた枝が悲鳴にも似た音を上げて裂ける。
 ねじ切れた触手と神経樹の末端が塵となって消えていく。
 やがて、充が己を取り戻した時、其処は一瞬の静寂に満ちた。

 全ては神経樹に侵された精神が生んだ幻影。
 ただ、それだけのことだった。
 ただ、それだけでしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年05月16日


挿絵イラスト