|H/W《ホーリーライト・ウェアウルフ》
●サイバーザナドゥ
|汚染物《骸の海》が雨として降る。
人は生身では生きていけない。
どうあっても滅びは迫っているが、緩やかな速度であるがゆえに人は愚かにも何一つ汚染に対策を講じてこなかった。
汚染物を取り除くことも、無効化することも。
何一つ、だ。
できたのは対処療法の如き|機械化義体《サイバーザナドゥ》のみ。
その技術によって人は肉の器を捨て、機械化義体によって汚染物の影響を極力排除してきたのだ。
だが、この汚染物に塗れ破滅に緩やかに進む世界になった元凶は一体なんなのか。
人は知らない。
繁栄と衰退は一括りであることを。
そして、今まさにサイバーザナドゥ世界において栄華繁栄を誇っているのは、一体誰なのか。
摩天楼のごとく聳える巨大ビル群。
そのうちには|『巨大企業群』《メガコーポ》がひしめいている。
地球環境が壊滅的な打撃を受けていようとも、有害物質の雨が降り注ぐのだとしても、『巨大企業群』は企業という体をナシながら、世界中の政府機関をも傘下に加え、社会モラルをも破壊して腐敗と退廃を撒き散らし続けている。
正義はどこにもない。
警察機構は巨大企業群の私設組織へと堕落し、正義など何処にもなかった。
だが、盛者必衰の理があるように、悪の栄えた例もなし。
悪が蔓延るのならば、正義の芽もまた生まれ出るもの。
巨大企業群と戦うレジスタンスは、今日も摩天楼が落とす影を往く。
その影は二つ。
高層ビルの光が照らす中、その二つの影は巧みにビルの壁面に張り付いて互いを見やる。
「……」
言葉はない。
必要なかったのだろうし、こと、ここに至る前に入念な打ち合わせを行っていたことは言うまでもない。
高層ビルの灯火のような光を受けてゴーグルが煌めく。
紫の髪は闇に紛れるようであったが、光を受けてキラキラと輝くようであった。
ニンジャスーツの胸元は大胆に開かれており、その肌には汗一つ浮かんでいなかった。
まだまだ序盤、と言うかのように息も乱さず手際よく張り付いた壁面……強化ガラスに何かしらの細工を行っていた。
「セキュリティ無効が検知されるまでの5秒間が勝負なの」
「わかってるってば。こんなの簡単、朝飯前ってやつ」
ニンジャスーツに身を包んだチェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)は壁面に共に取りついているロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)がバングルのように装着したタブレットでもってセキュリティを無効化してからカウントされるデジタル表示を見ることなく、即座に壁面にコンパスのように円を描く。
音もなく壁面に穴が空き、彼女の腕に装備されたガジェットがワイヤーを放ち、次々と内部の監視システムを無効化していく。
「はい、おしまい」
「いつもながらお見事なの。鮮やかなお手並みなの」
「ありがと。じゃ、やるね?」
チェリカは、即座に忍者刀を振るって、壁面を人が通れるほどの大きさに切り刻む。
高層ビル故に、ビル風が切り裂かれた壁面から入り込み音を立てている。
だが、このフロアのセキュリティはすでに彼女のガジェットで無効化されている。
「5秒もいらなかったね」
「うん。でも、ここからなの。行こう」
ロランはバングルをタップして、マップを立体表示させる。
この高層ビルの構造データをすでに得ているのだ。それは彼の卓越したハッキング能力があればこそである。
此処は『巨大企業群』が一つ、『安心安全を売る巨大企業群』、『ティタニウム・マキア』が所持する高層ビルである。
此処で一体何が行われているのか。
ロランたちは知っている。
ここはある新興宗教団体に検体としてスラムの孤児たちを送り込むための下部組織なのだ。
そう、人身売買。
モラルなき世界でもあるサイバーザナドゥにおいて、こんなことは日常茶飯事だ。
いつでもどこでも人権は簡単に無視されてしまう。
「まったく人身売買なんて簡単にやっちゃってさ。その証拠が此処にあるってことだけど……」
ロランたちは、その情報を得て、この高層ビルに侵入を果たしていた。
「チェリカちゃん、今、ぼくたちがいるのはこのフロアなの。問題の証拠データがあるのが……」
ここ、と立体表示のマップの最上階を示す。
恐らく、この下部組織を取り仕切っているトップが君臨するかのように居座っている場所であるのだろう。
やれやれ、とチェリカは肩を竦める。
「なんとかは高いところが好きっていうけど、わかりやすいわね。最上階だなんて」
だったら、屋上から侵入した方がよかったのではないか、と思うのだ。
何もこんな中層から侵入を試みなくても、と。
だが、ロランは頭を振る。
「ううん。屋上はヘリポートになっているけど、一番侵入しやすいってことは、一番セキュリティが固いってことなの。多分、ハッキングだけじゃすぐに対応されちゃうの」
「ああ、そういうこと。面倒だけど中層までショートカットできたってことを喜んだほうがいいってわけね」
なるほどねーとチェリカはまた肩をすくめた。
どっちみち、簡単に巨大企業群を出し抜けるわけがないのだ。
「なら、いきましょ。長居は無用ってね」
「うん」
二人はフロアから出て、即座に別れる。
共に行動するわけではないのだ。
ロランは既に用意していた社員証を首から掲げ、下手のよいスーツを身にまとう。
あっという間の早着替えであった。
これくらいは造作もない。
柔らかい雰囲気を変えるためにメタルフレームのメガネをかけて、何食わぬ顔で社員として高層ビルに入り込む。
チェリカが荒事担当であるのならば、彼の担当はハッキングとサポート。
電脳空間からのハッキングでは情報に制限があるがゆえに、こうして現地に潜入し、直接情報を得なければ詳しいことは何もわからない。
事前に調べたサーバースペースまでロランは迷うことなく歩んでいく。
時折、社員らしきものとすれ違う。
だが、ロランを社員は気にも止めてない。
この『巨大企業群ティタニウム・マキア』が売るのは『安心安全』だ。
であれば、セキュリティは万全。
社内にいるのであれば、見覚えのないものであっても、疑う理由などないのだ。
その信用を担保にしているのが、今まさにロランが首から下げている社員証なのだ。これが一つのIDだけではなく身柄の保証になっているのだ。
それによって社内の異常検知システムを欺くことができているのだから、本末転倒と言わざるを得ない。
だが、この偽造の社員証の精度があまりにも高いということは語るまでもないだろう。
これを用意したロランの手際が凄まじい証明でもある。
「さて、と。サーバースペース……此処なの」
巨大なコンピューターが居並ぶ部署。
そのフロアは冷却のためだろう、ひんやりとした空気が立ち込めている。
ぶる、と少しだけ身震いをしてロランはサーバースペースに設置された一つの機械に己のバングルから取り出したケーブルを接続する。
「これでよし、と」
有線であれば、タイムラグなくサーバースペースから社内のシステムを掌握することができる。
監視カメラの映像を全て差し替え、リアルタイムで補正していく。
別れたチェリカの姿を追う。
そこにはフロアを堂々と歩くチェリカの姿があった――。
●スニーキング
巨大企業群というのは、もれなくオブリビオンに支配されている。
未だ、そのトップの存在は判然としていないが、下部組織に至るまでオブリビオンで構成されている以上、片時も油断できない。
ロランのサポートは万全であるが、しかし、社内ですれ違うオブリビオンは即座に此方を異物として認識するだろう。
「ひと目見ただけで猟兵って解っちゃうのも考えものね」
逆に此方も見ただけで相手がオブリビオンだと理解できてしまうのだから、どっちもどっちだと言うべきだろうか。
だが、ここで無用の騒ぎを起こすわけにはいかない。
「チェリカさん、次のフロアにオブリビオン反応。社員が残っているみたい」
「りょーかい」
気が抜けないミッションである。
だが、何の心配もない。ロランのバックアップがあるからだ。
チェリカは迅速にフロアに踏み込むと、一瞬でオブリビオン社員たちの背後を取る。
「ガッ!?」
「グエッ!?」
「ゴッ!?」
鮮やかな手並みでチェリカはオブリビオン社員たちを無力化し、デスクの下に放り込む。
ロランのサポートで不意打ちができるのならば、ざっとこんなものだ。
汗一つかかず、チェリカはフロアを見回すことなく進んでいく。
「それにしてもこんな時間まで社員が残っているなんて、随分と熱心ね。全く感心しないけれど」
軽口を叩きつつチェリカは最上階を目指してフロアを駆け上がっていく。
息を乱さず彼女は順調に階上へと進む。
全ては順調だった。
だが。
「いたぞ! 侵入者だ!」
オブリビオン社員たちが一斉に待ち構えていたのだ。
「え、なんでなんで!?」
「セキュリティは無効化していたのに!」
ロランの声が耳元から響く。
確かにロランのハッキングで社内のセキュリティは無効化されていた。
気が付かれるはずもない。
だが、どうしてかチェリカの行動は把握されていたように階上へと上がった瞬間、オブリビオンたちが待ち構えていたのだ。
「殺しても構わない! 撃て!」
「ちょ、わ!!」
放たれる弾丸。
雨のように注ぐ弾丸を前にチェリカは堪らず身を翻してデスクを盾にして這うようにフロアを走る。
「そっちに行ったぞ! 回り込め!」
「そうはいかないのよね……!」
軽やかな動きでチェリカは弾丸の雨をかいくぐりながら、さらに階上を目指す。
銃撃の音が背中から迫ってくる。
けれど、それより速くチェリカはフロアを駆け上がる。
並み居るオブリビオンが彼女を捕らえんと迫ってくるも、背に負った忍者刀の一閃が彼らを一刀両断するのだ。
「こいつ……! 強い! 手練れだ!」
「囲め! 一斉にかかれば!」
チェリカを取り囲むようにして屈強なるオブリビオンたちがにじり寄る。
一人が切りつけられても、その隙にチェリカを捕らえられると踏んでのことなのだろう。
「甘いよね、考えが」
瞬間、凄まじい速度で、それこそ閃光のようにチェリカはむくつけきオブリビオンたちを忍者刀で一閃していた。
取り囲んだ程度でどうにかできるチェリカではないのだ。
紫の髪をたなびかせるように鮮やかに包囲網を突破し、チェリカは最上階へと踏み込む。
そこはこれまでのフロアとは一線を画すような豪奢な空間だった。
赤い絨毯がひかれ、装飾品がそこかしこに散りばめられるように飾られている。
「はっきり言って悪趣味だと思うんだけど?」
「これは手厳しいな」
チェリカの眼前には恐らく『巨大企業群ティタニウム・マキア』のカンパニーマン……つまりは、下部組織に派遣されてきた特級社員の男がいた。
拍手すらして見せる余裕さを見せているのは、チェリカを追い込んだからだ。
勿論、事実である。
チェリカはフロアを駆け上がっているように見えて追い込まれていた。
背後からは騒々しい音を立てて、オブリビオン社員たちが迫っている。
眼前には、恐らく彼らオブリビオン社員の中でもとりわけ有能なカンパニーマン。
「前門の虎、後門の狼ってところね。で、私を追い詰めた、と」
「そういうことだ」
「どうしたの、さっさとやらないの?」
「勿論、そのつもりだった。だが、ここまで我が社に潜入した手並みを拝見してね。気が変わったよ」
「へえ?」
チェリカは首を傾げる。
別段褒められているという気持ちにはならなかった。
これくらい、とも思っていたからだ。
「有能な君を我が社に迎え入れたいと思ってね」
「はい、じゃあよろしくお願いします、なんていうと思う?」
「だろうね。だが、君はもう袋の鼠だ。どこにも逃げ場なんてない。捕らえた後、洗脳改造なりなんなりすれば、君の有能さはそのままに従順なサイバークノイチの出来上がりだ。なにせ、我が社は『安心安全』を謳っているのでね。君の肉体には傷一つ付けはしないよ」
代わりに、と下劣な笑みがカンパニーマンに浮かぶ。
「君の意識はなくなるがね。我が下僕として隷属する喜びというものを教えてあげようというのだよ」
「サイッテーね。考えることが品性下劣すぎ。なんでもかんでも思い通りに行くと思ってるの?」
「思うさ。どうせ、君には何もできない。『単身たった一人』で乗り込んできた君は、孤軍奮闘したところで……」
「あっそ」
チェリカは、この状況にあって笑った。
お笑い草であった。
ここまで自分を追い詰めておいて、なんて詰めの甘さなのだろう。
そうだ。
目の前のカンパニーマンは、チェリカを追い込んだと思っている。
実際、この状況だけ見ていればその通りだろう。申し開きんもない。
だが、カンパニーマンは思い違いをしている。
そう、彼はチェリカ『単身たった一人』で乗り込んできた、と言っているのだ。
であれば。
「さあ、その小生意気な顔がいつまで続くかな。洗脳改造に咽び泣く君は観物だろうね――」
瞬間、最上階フロアの天井が崩落する。
明滅するフロアの灯り。
立ち上るは粉塵。
盛大な音を立ててフロアに降り立ったのは、鋼鉄の巨人だった。
体高5mはあろうかという巨人。
それは。
「ロラン!」
「おまたせ、チェリカちゃん!」
明滅していたフロアを照らす灯りが暗転し、そこには緑色の燐光走る装甲を持った、ロランが操るキャバリア『アルター・ギア』の姿があった。
魔術の運用に特化した空専用外骨格とも言われる『アルターギア』。
そのコクピットハッチが開き、ロランがチェリカに手を伸ばしていた。
そう、カンパニーマンはチェリカがペアで社内に潜入していたことに気がついていなかったのだ。
それもそのはずだ。
チェリカが派手に陽動していたからだ。
それによって、人身売買の情報、その証拠をサーバースペースからロランが手に入れる時間を稼いでいたからだ。
後は簡単だ。
屋上からの侵入は難しいが、しかし、突破することは容易い。
とりわけ、体高5m級の戦術兵器であれば尚更のこと。
チェリカの危機にロランは乗り込んだ『アルター・ギア』と共に天井をぶち抜いてきたのだ。
「ナイスタイミング! データは?」
「バッチリなの」
「じゃあ、こんな所にいる理由なんてないよね」
コクピットに飛び込んだチェリカがロランの膝上に乗る。
ちょっと距離が近い、とロランはこんな状況でも頬を赤らめてしまう。
「馬鹿な……もう一人いた、だと……!」
あまりにも事がタイミングよく運んでいる。
もう一人いたことが見抜けなかったにしても、これが偶発的な状況ではないことをカンパニーマンは即座に理解していた。
つまり、チェリカは追い込まれたように見せかけていたのだ。
あえて己たちの興味を引くように。
まんまと彼女たちに嵌められたのだと理解し、カンパニーマンは顔を赤らめて激昂する。
「馬鹿にしてくれたものだな! だが、逃すものか!」
瞬間、ユーベルコードと共に周囲にあった残骸がカンパニーマンに吸着するようにして集まっていく。
それは瓦礫だけではなく、周囲にあったオブリビオン社員たちをも吸引していくように集まっていく。
「う、うわあああっ!」
「ま、待ってくれ! まだ俺達だけでもやれ……!」
「がああああっ!」
悲鳴が上がる。
まるで磁石に引き寄せられる砂鉄のように瓦礫とオブリビオン社員たちがカンパニーマンを中心にして集められ、一つの塊になっていく。
混ぜ合わされ、肉団子をこねるようにしてオブリビオン社員たちごと一つの人型へと変貌していくのだ。
「クハハハハッ! この私を虚仮にしてくれた罰だ。楽には殺さんぞ!」
振るわれる肉塊の巨人の一撃。
その強烈な一撃は『アルター・ギア』を高層ビルのフロアから外へと吹き飛ばす。
瓦礫の破片が夜の空に舞い、粉塵が膨れ上がる。
そのさなかを『アルター・ギア』は飛翔し、隣り合った高層ビルの屋上へと降り立つ。
だが、次の瞬間『アルター・ギア』の頭上に肉塊巨人が砲弾のように飛び込み、その駆体を強かに打ち据えるのだ。
吹き飛ばされた駆体が屋上に吹き飛ばされ、縁に僅かにとどまる。
「他愛ないな! この程度ならば、もとより必要なかったか!」
哄笑が響く。
だが、肉塊巨人と成り果てたカンパニーマンは見ただろう。
己が打倒した『アルター・ギア』のコクピットハッチが開いている。
つまり。
「分け身の狼、我が身を獣とし疾く駆ける脚を与え給え」
背後に光が走る。
それは、駆け抜ける竜胆の狼騎(ウォルフナーフォーム・ライトニングラン)へと変貌したロランのユーベルコードの光だった。
大型狼へと変貌したロランが屋上を疾駆し、一気に肉塊巨人の背後を取っていた。
「甘い! その程度の不意打ちでこの私がやれるとでも思ったか!!」
振り返りざまに振りかぶられる巨大な腕。
だが、その背にはチェリカがまたがっていた。
「何!?」
「フラァァァァァッシュ!!」
炸裂するのは、全身から迸る生まれながらの光フルバースト(スッゴイヒカルヨ)。聖なる光は、邪悪なる肉塊巨人の視界を塗りつぶし、振り抜かれた拳の目標を多く逸らすことになるだろう。
地面を砕く拳。
その破片が散る様さえ、肉塊巨人は見ることはできなかった。
大地を蹴る音がする。
ロランの変じた大型狼は、加速し砲弾のように肉塊巨人へと体当たりを敢行する。
「チェリカちゃん、今だよ!」
「おまかせってね!」
閃光のようにチェリカの忍者刀が翻る。走る剣閃は肉塊巨人の頭部……即ち、カンパニーマンの首を過たず寸断する。
宙を舞うようにくるり、くるりと首がまわり、地面に落ちる。
重たい音を立てたのは、胴体部分が倒れ伏したからだ。
「どれだけおっきくなっても、ね?」
「ばか、な……この私が、負けた、だと……?」
「そうなの。いくら多くの社員がいても、道具としてしか扱えないのなら、負けて当然なの」
ロランは大型狼の姿のまま鼻を鳴らす。
自分たちのように違いを信頼しあっていないのだ。なら、敵うわけがない。
「……クッ、そんな、そんな……!」
ばかな、と叫ぶ瞬間肉塊巨人は爆散する。
爆炎が立ち上る中、二人は顔を見合わせる。
「追手が来る前に逃げちゃおうか」
「それがいいの」
二人は笑って頷き、摩天楼から飛び出す。
証拠も掴んだ。追手も振り切る。
これで次の依頼に飛び出せる。
「ね、次はどんな依頼?」
「今度は薬物取引の現場を抑えろっていう囮捜査なの」
「わ、それってとってもクールなクノイチのお仕事って感じ!」
「危ないことしないでほしいの」
二人は摩天楼を駆けるようにして眼下の闇に紛れて走る。
次なる任務が二人をもう待っているのだ――。
●次回予告!
「迫るはドラッグ売人の甘い罠!」
「クノイチチェリカ、大失敗! いや失敗なんてしないけどね!? 大丈夫だからね!?」
「やっぱりチェリカちゃん一人じゃ心配なの!」
「いやいや、絶対一人でできるって。なにせ、私はクールなクノイチだからね!」
「それにしては元気良すぎなの」
「次回、クノイチ危機百連発! また見てね!」
そんな声と映像が画面に流れる。
それはサイバーザナドゥで放送されているスパイペアのアニメ番組だった。
コアなファンの多いアニメ番組にシーズン2。
バリバリなアクションシーンの連続で好評を博しているのだ。
そう、これはあくまで架空の物語。
猟兵とオブリビオンの戦いの物語ではあるけれど……。
『この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません』
そういうことなのだ。
例え、猟兵も『巨大企業群ティタニウム・マキア』も実在するのだとしても、だ――。
成功
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