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ケルベロス・ウォー⑤〜まぁ忍者だし

作者：久澄零太

「皆様お集まりいただきありがとうございます」
　一礼する人首・椿（傷と記憶は刻むモノ・f06124）は電子巻物を広げると、ホラゲとかの舞台になってそうなどこか古臭い屋敷的なサムシングを示す。
「既にご存じの通り、ケルベロス・ウォーが開戦しました。皆様に向かって頂きたい戦場はこちらのお屋敷になります。これはただの建造物ではなく、『零式忍者』の一族が、先祖代々伝えられてきた『大忍者屋敷』となっています。中は無数のカラクリがひしめくカラクリ屋敷となっていて、これをどう使うかが重要ですよ」
　って言うと、ギミックを利用して敵と戦う楽しそうな依頼（？）にも見えてくるが。
「そしてこちらにおびき寄せたデウスエクスは皆さんの感情に働きかけたり、装備を破壊したりと、一発でも食らってしまうと厄介なUCを持っています。からくり屋敷の罠を使って攻撃したり、仕掛けを使って別部屋に逃げ込んだりして、完全回避を目標にしてください」
　そんなこったろうと思ったよ！！ざっくりまとめると、全裸になったりメンタル病んだりしたくなかったら、タイミングよく隠し扉に飛び込むとか、槍衾をぶつけて敵のUCを封じたりとかして、からくり屋敷も武器の一つとして活用しろって事らしい。
「それでは皆様、ご武運を。もしも無気力状態にされたりしてしまったら……フフフ」
　ニッコリ微笑みながら、『禁』の札が張られたツボを取り出す椿。どっからどう見てもヤベーモンが入ってそうな代物を前に、猟兵達は急いで転移していくのだった。

第1章 集団戦 『デザイア・ドラゴン』

POW   :    エンタングル・ゴールド 【身体の各所に存在する金色の棘状部位】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【精神を蝕む濃厚な快楽物質】による汚染を与え続ける。 SPD   :    デザイア・アサルト 【硬質化させた棘状部位や溶解液のブレス】で対象の【衣服や装備品】を攻撃する。自身が対象に抱く【欲望】の感情が強い程、［衣服や装備品］への命中率が上昇する。 WIZ   :    メロウ・ブレス レベルm半径内に【濃縮した興奮物質の霧状ブレス】を放出し、味方に治癒を、敵に【戦闘力低下・思考力低下】の状態異常、全員に興奮作用を与える。 イラスト：塚原脱兎 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「まさか初陣がケルベロス・ウォーになるなんてね……出来る限り頑張りますか」
　初仕事で戦争ってのはまぁ、珍しい話でもないようなそうでもないようなだから置いといて、何故初手で俺の所に来ちゃったの……？桃華・京（コアゲーマー『M.K』・f45232）よ、記念すべき初仕事はもっとまともな人の所に行くべきだったんじゃないか……？
「それで、今回のキーワードは……忍者？」
　依頼の資料を見直す京の脳裏に過るのは、扇子と炎で奇襲を仕掛けるくのいちや、馬鹿でかい釘でパイルバンカーしてくるNINJA。
「ダメだ、どれもこれも参考にならない！」
　安心したまえ、ほら、見てごらん……。
「皆さん、ここはあたしに任せて先に行ってください！」
「敵に遭遇する前から罠にかかってる人がいるー！？」
　京が目撃したのはカラクリ屋敷に踏み込んだ第一歩から吊り天井の罠に引っかかった熊ヶ谷・咲幸（チアフル☆クレッシェンド・f45195）。落下してきた天井を両手で支える彼女は京と目が合うとハッとして。
「あ、ニンニン！」
「ちょ、印なんて結んだら……！」
　ズドーン！とってつけたように忍者っぽく両手を重ねたせいで、天井から手を放してしまった咲幸は天井に潰されて消えた。ついでに退路が断たれてしまったため、前に進むしかなくなった京が次に遭遇したものがこちら。
「お任せプレ、汝が為したいように為すがよい」
「変態だぁああああ！？」
　全裸に謎の光的なサムシングが局部を隠すアリス・セカンドカラー（不可思議な腐敗の混沌魔術師艶魔少女・f05202）。
「あれどの辺りが忍者なの！？」
「大丈夫大丈夫」
　困惑する京に、アリスはニコッ。
「隠すべきところは纏った生命エネルギーが隠してるから」
「私が気にしてるのは倫理的な方じゃなくて……！」
「え、そっちじゃない？」
　何をどう説明すればいいものかと京が頭を抱えている間に、ドタドタドタ！今回の敵さんことデザイア・ドラゴンが集まって来てしまった。高温で白く染まる吐息を溢す敵さんの群れを前にアリスは首をひねって。
「まぁ、正直、精神を蝕む濃厚な快楽物質とか私にとってドーピング剤でしかないのだけど……椿ちゃんがああ案内したなら、喰らうとアカンことになるやつよね、これ。具体的には暴走して味方ごとえっちなのうみそにしちゃうやつ。というわけでお嬢様じゃなかった完全回避を目指しましょう」
　よく分かってるじゃないか。もしそのまま食らってバフかけようとしてたら、UC直撃扱いで大惨事になってたぞ。
「中身じゃなくて判定にメタ殺しされるやーつ」
　ギャグ依頼ならさておき、これ戦争依頼だからね。仕方ないね。
「ネタ依頼ってタグ付いてるじゃない！ネタ依頼ってタグ付いてるじゃない！！」
　うるせー！文句言ってねぇでとっとと突っ込んでこい！！
「そこだァ！！」バキャァ！！
　アリスが抗議している間に、ここまでずっと床下でスタンバってたグラン・ボーン（巨人の巨人拳伝承者・f34134）、参戦。廊下の床板には仕掛けがあり、上で誰かが歩くと小さく音がする。見えておらずとも何者かが通った事が分かる……んだけど、これ味方にやっちゃってたらどうすんだよ……。
「その時はその時だ！！」
　キャバリアサイズの巨人が放つ手刀が床を貫通。問題はアレかな、足音だけで判断して突き出したから、急所（意味深）を直撃しており。
「ハッハァ！まさか足元に猟兵が隠れているとは思うまい！！……ん？」
　体がデカすぎて、床下から出て来れないグランがぶち抜いた床板から見たモノは、全身真っ青になって蹲る敵さんだった。
「お前、そんな色だったか……？」
　事前情報と異なる敵さんの姿にグランも困惑。内臓を直接ぶん殴られる痛みとも苦しみともつかぬ名状しがたい不快感が己が内から溢れ出す敵さんはおろろろろ……ブレスっていうか嘔吐してしまい。
「ぐぁーっ！？」
　床下のグランは直撃。悲鳴と白煙を上げる。噴き出す煙はやたら量が多く、廊下をあっという間に真っ白に染め上げて、ポン、ポポポポポポポポ、ポン。なんか急に小鼓の音が響き始めたかと思えば拍子木が鳴り、段々戦場全体が暗くなっていくと、ベベン。
「忍者とは何か？」
　三味線と共にスポットライトに照らされて、藍色の着物姿でメリーナ・バクラヴァ（リスタートマイロード・f41008）が登場。
「物語の中におけるそれは、闇に咲く花のようなものと言えましょう♪」
両手を広げ、開花を表現しながらクルリ、クルリ、ゆるりと回って敵も味方も視線を独り占めに……。
「いや目立っちゃダメでしょ！？」
　京が段々ツッコミキャラになりつつあるな……でもほら、公演中は静かにしないと。
「これ私が悪いの？忍者なのに忍んでないあっちじゃなくて、私が悪いの！？」
「姿を見せれば消え、声をかければ煙となり、印を結べば火が走り、影の中から敵を討つ！」
　納得いかない京を置き去りに舞台は進み、メリーナは帯を解いて着物を脱ぎ捨てれば。
「でもね、それは『物語の忍者』」
　暗い紺色の忍び装束に姿を変えて、メリーナは人差し指を口元に当てて声のトーンを落とす。
「……本当の忍者は『花』なんて目立つものではないかもしれませんね？」
　徐々に、徐々に光が絞られて、メリーナの姿が闇に溶けていくと。
「本当の忍者とは、誰の目にも映らない、語られない仕事人。それは芝居を黙って支える黒子の如き存在で……もしくは全裸で首はねてくる奴？」
　おいコイツ真っ暗になった途端にギャグに走りやがったぞ！？そのネタどこまで通じるんだ！？
「よし、真っ暗で何も見えないなら全裸でも暴れられるな！」
　ドガシャァ！！床をぶち壊してグランが体を起こし、ダブルラリアット！回転アームハンマーが敵さんを襲う！ていうか全裸なの！？あ、さっきの白煙は服が溶けた煙！？
「とはいえ真っ暗闇じゃわけわかんないわよね……そーれパッと」
　謎の光を纏っていたアリスが光量を上げれば、辺りが照らされ姿が見えるようになった猟兵目掛けて敵が溶解ブレスを噴きつけてくるが。
「「我々は既に全裸だ」」キリッ
　上半身だけ床から生えたグランと、謎の光で局部を隠したアリスは仁王立ちで受け、その後ろでメリーナは天井からぶら下がった謎の紐を引き。
「はい、失礼しましたぁーーー♪」
　カパッ。足元が開いて地下深くへ消えていった。すると入れ替わりに咲幸が出て来て。
「やっと出られたー！うぅ、吊り天井の下が落とし穴になってて、地下迷宮に落っこちた時はどうなる事かと……」
　などと涙する彼女だが、咲幸が出てきた途端にゴゴゴゴゴ……なんか、屋敷が揺れてない？
「あ、ここに来るための縄梯子を見つけるまで、壁を壊して回ってたのが良くなかったんですかね？」
　良くないねぇ！？地下設備が破壊された事でカラクリ屋敷全体が落下。地下の階層分、下に参りまーす。フリーフォール中にアリスは空中を泳いで壁に到達するとそこを蹴って床に跳ね、狭い廊下の中でスーパーボール状態になると。
「そこら中に罠があるというのなら、明らかにガタイのデカいあちらが先に食らうのは必至。ガンガン罠にかかってやりま」スポッ
　セリフの途中で隠し扉の壁に当たり、アリス退場。そして回転した壁の向こうからリリエッタ・スノウ（ちっちゃい暗殺者・f40953）が強制召喚（？）された。
「んっ、今回もこっちのお仕事を手伝ってこいって命令されたよ。むぅ、なんだか楽しそうなアトラクションだね。遊園地？」
　音が鳴る床とか槍が飛び出して来る壁に、ついには絶叫マシンみたいな状況まで重なったらそう思わなくもないかもしれないが、遊び場ではない事はご理解いただきたい。
「とりあえず不意打ち」
　戦場全体が落下中という隙を突いてアサルトライフルを発砲。眉間に一発叩き込んだらクルっと回転。退場したアリスと交代。そしてアリスを見た敵さん、致命傷を叩き込まれてめっちゃ怒ってますね。
「ちょちょちょ！？私は何もしてないんだけど！？」
　アリスが濡れ衣ヘイトを稼いでいる隙に、咲幸は穴が開いた廊下の床板を掴み。
「せーのっ！」
　バキィ！！廊下そのものを引っぺがして天井にドーン！敵さんがまとめて頭を打ち付けてクラクラしている間に今度は天井の板をずらしてリリエッタがニュッと顔を出し。
「ん、今のうち」
　足元に弾丸を撃ち込んで、ビックリした相手がよろめいたタイミングに合わせてアリスが微妙に色の違う壁に触れて。
「そーれポチッとな☆」
　ザザシュッ！飛び出して来た槍が敵さんを襲う！！敵が串刺しにされて動きを止めたタイミングで今度は床下から飛び出して来たリリエッタが銃を構え、喉笛を撃ち抜き一体ずつ仕留めていくも。
「んんっ、なんだか一匹、リリの事を鼻息荒くして見てるのがいるね？」
　そこはかとないビルシャナ【変態】臭を感じ、ブルッと身震いしたリリエッタは床下に避難。隠し通路を通って回り込む。
「んっ、ヘッドショットは気づかれているとほとんど決まらない……死角から狙わないと……」
　バレないように敵の背後に回り込もうとしていたリリエッタだが、廊下では敵さんが棘っぽいものを伸ばして攻撃を仕掛けており。
「なんのこれしきです！」
「カラクリ屋敷ならこれはあるはずだよな！！」
　グランが隣の部屋の畳をぶっ叩いて跳ね起こし、それを掴んで手裏剣よろしく投擲。軌道が逸れたところで咲幸が床板を引き千切って突き刺させて受け止め、伸ばされた棘を束ねて掴み、ブンブンブン！敵の体をぶん回し、柱やら壁やらドカバキ壊し始めたモノだから……。
「あっ」
　壁が突然破壊され、敵と見つめ合うリリエッタ。まさか味方によって姿をさらされようとは誰が思うだろうか……まぁギャグ依頼では日常茶飯事なんだが。
　何はともあれ想定外の事態に一瞬固まった彼女へ溶解液のブレスが吹きかけられて、リリエッタの服は溶け落ち色白の肌を晒して……『りりえった』のゼッケンが付いたスク水が露わに！……いやなんでそんなの着てたの！？
「DIVIDE職員のお姉さんが服の中に着てなさいといってた。セーフ？」
　倫理的なサムシングに引っかかんないって意味ならセーフ。UC食らったって意味ならアウト。後はアレかな。
「アレって？」
　幼女のスク水という一部界隈に需要がありそうなワンシーンに、敵さんがめっちゃ興奮してるのが一番ヤベーかなって。
「ん、アレはビルシャナと同じ感じがする。変態は敵、撃ち抜く」
　鼻息荒く振り下ろされた前脚に飛び乗って、打撃を躱したリリエッタはそのまま肩まで駆け上がり、至近距離で眼球を撃ち抜く。片側の視界を奪うと頭上へ跳び、真上から脳天へ弾丸を叩き込んで敵を撃破。直後にペタンと床に体を張りつかせて伏せると。
「あ、無差別攻撃にしたら三回攻撃になりそうな技とかを閃きそうです」
「いざとなったら柱を引っこ抜けば全部壊れて証拠隠滅できるようになっているのがカラクリ屋敷ってもんよ！」
　攻撃してきた敵さんを鷲掴みにした咲幸と、一際太い柱をぶっこ抜いたグラン。二人が背中合わせてそれぞれの得物をブゥン！床にペタッと伏せたリリエッタの頭上を通過する大黒柱と敵さんは周辺を破壊しつつ。
「ちょ、待ってせめて避けるチャンスを……ニンッ！？」
「せっかくだから私はこのカラクリ屋敷を選ぶよ！とりあえずこういうのはどんでん返しが……ギャッ！」
　跳ね回ってたアリスを巻き込んで光り輝く鈍器と化した建材とか、このままでは味方に殺されると判断して逃げようとしたら隠し扉じゃない壁にぶつかって、ぶん回される敵さんに巻き込まれた京とか、色んな物の蹂躙に家屋が耐えられるわけもなく……ドガシャァン！カラクリ屋敷の一部は完全に崩落し、壊れた傍からまだまだ使う為、零式忍者達が大急ぎで再建を進める一方で。
「この野郎！やりやがったね！」
　頭にたんこぶ作った京が瓦礫を巻き上げて飛び出してくると、生き残ってた敵さんに向けてそれはもう凄い眼光を向けて。
「この程度、死ななきゃ安いのよ！」
　両手を胸元に揃え、何かを支える様な構えを取る。ゲームコントローラーを疑似的に再現しているのだが、そんな事より完全に八つ当たりされている敵さんは「番犬さん、あいつです」と言わんばかりに両手を重ねて人差し指と中指を立て、ニンニン言ってるグランと咲幸を示すが。
「くらえ！236P！！」
　素早く打ち込む事が要求される基礎必殺技コマンドにより、謎の青い闘気弾が放たれ、デザイア・ドラゴンは涙目になりながら吹き飛んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2025年05月08日