ケルベロス・ウォー②〜鉄壁のグランドロン
●全世界決戦体制
如何なる思惑か。
デウスエクスの統括者たる『十二剣神』、その六柱は地球に対して総力戦を仕掛ける。
彼らの最大の目的は、特務機関DIVIDE本部『東京タワー』の地下に渦巻く『地球の精髄』である。
これを奪われれば、地球は遠からず崩壊を迎える。
無論、これを阻止せねばならない。
だが、十二剣神は無敵の|『永遠回廊』《グラビティ・ゲート》で防護し、如何なるユーベルコードをも阻む。
「そこで、|『決戦配備』《ポジション》というわけさ!」
湾岸の決戦都市の責任者である亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、金属の肉体を持つ妖精種族『グランドロン』たちと共に、拠点防衛機構『グランドロンロボ』の建造に乗り出す。
彼女にとって、これは得難い経験であった。
「ふ、ふふふふ! これが鋼鉄の妖精『グランドロン』の技術……この機会にて学ばせてもらおう!」
「急ゲ、ボヤボヤシテイル暇ハナイ」
「わかっているとも!」
「『グランドロンロボ』ハ防戦ニ特化シテイル。複数機完成サセルコトガデキレバ、『特務機関DIVIDE』以外ノ場所ニ、戦力ヲ注ギ込ムコトガデキル」
そうなれば、全世界の資源を集約させて十二剣神との戦いにも突破口を開くことができるかもしれないのだ。
急ピッチで始まる『グランドロンロボ』の建造。
『エイル』博士の指示の元に湾岸の決戦都市の『決戦配備』である人型戦術兵器『セラフィム』も忙しなく資材をピストン運行のように運び込んでいる。
それは時間との勝負だった。
悠長に構えている暇などない。
最強の防衛ロボを完成させるために、人類のみならず猟兵たちの力も必要なのだ――。
●ケルベロス・ウォー
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ケルベロスディバイド世界にてケルベロス・ウォーが勃発いたしました。ですが、すぐさまデウスエクスの首魁たる『十二剣神』に戦いを挑むことはできません」
そう、『永遠回廊』によって阻まれているからだ。
如何なるユーベルコードによっても、これを破壊することができない。
「ですが、これに立ち向かうためには世界の人々が建造する『決戦配備』が必要なのです! 無論、敵はオブリビオンではありません。フォーミュラ撃破のような明確な勝利を得ることはできません……ですが、地球の崩壊を防ぐために、生命をとして戦う民間人の皆さんをお守りするためにどうかお力をお貸しください!」
そして今、金属の肉体を持つ妖精種族『グランドロン』によって、拠点防衛機構『グランドロンロボ』が建造されんとしている。
これは防戦に特化した『決戦配備』である。
この『グランドロンロボ』が複数完成させることができれば、それだけ『特務機関DIVIDE』の防衛以外にも戦力を注ぐことができるようになるだろう。
「そのため、『グランドロン』の皆さんと協力し、最強の防衛ロボを完成させましょう!」
ロボ建造なんてワクワクしますね、とナイアルテはなんだか乗り気であった。
アセンブルゲームか何かと勘違いしていないか?
今回猟兵達に求められているのは、『グランドロンロボ』の建造の助力と防衛ロボにふさわしい武装の考案と提案なのだ。
「どちらだって構いません。皆さんのアイデアと助力が最強の防衛ロボを完成さえるのですから!」
そう言ってナイアルテは急がれる『決戦配備』建造に向かう猟兵たちを送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『ケルベロス・ウォー』の戦争シナリオとなります。
『十二剣神』を守る『永遠回廊』を破るためには『決戦配備』が必要になります。
今回は金属の体を持つ妖精種族『グランドロン』と協力して、拠点防衛機構『グランドロンロボ』を建造します。
※プレイングボーナス……グランドロン達のロボ建造に協力する/防衛ロボにふさわしい武装を考案し、提案する。
それでは、狙われた地球を守るために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『建造、グランドロンロボ!』
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POW : 堅固な装甲やシールドを張り固める
SPD : デウスエクスの攻撃を受け流し可能な構造を考える
WIZ : 今まで見てきたデウスエクスの戦い方をヒントにする
イラスト:del
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アンジェリカ・ディマンシュ
フフ、万能戦艦ケルベロスブレイドを思い出しますわね
(かの万能戦艦の名づけ親と言って良いケルベロスなので、認知している認識)
さて、やはり防衛ロボと言ったら防御フィールドの展開ですわね
念じるだけで、其れこそ地球生命の生と正の思念の総量に応じて出力と強度が上昇する防御フィールド、攻撃にもシールドバッシュの如く応用できると良いですわね
そう言って強固に敵対者の行動や攻撃を阻むプロテクションフィールド展開装置をUCを用いて開発して良き、攻防一体の力場なる盾をグランドロンロボに搭載していきますわね
これがわたくし達の紡ぐ未来……それを守る拠点防衛機構ですわ
全世界決戦体制。
それは文字通りケルベロスディバイド世界の全戦力を戦いに投じる体制である。
人類は汎ゆる生産体制を決戦のために注ぐ。
そうして初めて地球が護られるからだ。
覚悟しかない。
覚悟だけが人類の歩みを支えるものであると彼らは知っていたからだ。
地球の精髄を狙う十二剣神に対抗するためには決戦配備が必要不可欠。
故に金属の体を持つ妖精族『グランドロン』は防戦機構である『グランドロンロボ』の建造に取り掛かっていた。
誰もが最前線。
その中で、アンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)は決して緩むことのない緊張感漂う中にあって、頬を緩めた。
「フフ、思い出しますわね」
彼女の記憶の中にある光景と、今の光景は重なって見えるようだった。
誰もが懸命であった。
誰もが生存を願っていた。
だからこそ紡がれたものは、多くを救う力になるだろという確信が彼女にはあったのだ。
「さて、やはり防衛ロボと言ったら防御フィールドの展開ですわね」
「シカシ、簡単ニハ言ウガ」
『グランドロン』の技術者ノ言葉にアンジェリカは頷く。
確かに防御フィールドが展開できれば、『グランドロンロボ』が長く戦場にとどまることができるのは馬でもないことだ。
だが、その出力を担保にするものがなければならない。
つまり、エネルギー源だ。
それをパスできないことには、堅牢な防御フィールドとて張り子の虎だろう。
「念じるだけでいいのです」
「念ジル?」
「ええ、生きたいと願うこと。それ自体が強い願い、念でありましょう。その念をエネルギーに変える機構を。それこそ地球生命の生と正の思念の総量が大きければ大きいほどに強度も上昇するでしょう」
そうすれば、とアンジェリカは頷く。
堅い守りは、そのまま攻めに転じることができる。
「例えば、シールドバッシュなど応用もできることでしょう。プロテックションフィールド展開装置……疑似ヘリオンデバイスで代用できないでしょうか」
アンジェリカは己のユーベルコードで生み出した機構を携え『グランドロン』の技術者と調整を重ねていく。
彼女が望んだのは攻防一体の盾。
力場の盾は、多くを守ることができるだろうし、フィールドさえ張り巡らせることができれば、最前線で戦うケルベロスや猟兵たちをも守ることに繋がるだろう。
「これがわたくしたちの紡ぐ未来……それを守る拠点防衛機構ですわ」
そう告げ、アンジェリカはさらに作業を進めていく。
作業はまだまだ続くだろう。
だが、それでも一歩一歩なのだ。
何事も一足飛びにはできない。
これまで人類が歩んできた弛みない道のりがあったからこそ、アンジェリカはここにいる。
自らが道行きの先を歩むという自覚があるのならば、その道程がどれだけ険しくとも諦めてはならない。
「さあ、もう少しがんばりましょう」
そう言ってアンジェリカは、さらなる『グランドロンロボ』の建造の作業に没頭するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリス・ホワイトラトリア
ええっと、わたしはロボットを作ったりすることはできませんけど…
アイディアには心当たりが…
防衛兵器は敵の攻撃を防げればいいんですよね?
ならベヒーモス様のデストロイヤー・オブ・ガーディアンのような装備はどうでしょう?
あちらのギガンティックガーディアンシールドの説明を…
円盤みたいな形をしてますけど、これは物凄く大きくて強力なバリアを発生させる装置なんです
その代わり、とてつもなく重くて、エネルギーもたくさん使っちゃいますけど…
重さは動かなければ平気ですよね?
エネルギーは…発電所から直接もらうとか…
このままの大きさで作るのはとっても大変だと思うので、グランドロンロボに合わせたサイズで作れば大丈夫かと…
『グランドロンロボ』、それは決戦配備である。
十二剣神の永遠回廊をユーベルコードでは破れない。
唯一、永遠回廊を破る事ができる可能性が、決戦配備なのだ。そのために人類は皆、一丸となって最前線となった東京にて作業を進めている。
生命の危険がないわけではない。
最前線故に、いつ不測の事態が起こるかもしれない。
それでも人々は全世界から集ってきているのだ。
そこには覚悟があった。
誰もが瞳に覚悟の光を宿していた。
その光景を目の当たりにしてイリス・ホワイトラトリア(白き祈りの治癒神官・f42563)は、その決意の重さに息を呑んだだろう。
「……あの、一つ、アイデアに心あたりがあります」
イリスは作業を進める金属の体を持つ妖精種族『グランドロン』の技術者にそう告げた。
「ドウイウコトダ?」
「ええっと、わたしはロボットを作ったりすることはできませんけど……棒兵兵器とは、敵の攻撃を防げればいいんですよね?」
「無論ダ」
「な、なら……『ベヒーモス』様の『デストロイヤー・オブ・ガーディアン』のような装備はどうでしょう?」
「ソレハ一体ドンナ武装ナノダ?」
「はい、あちらの『ベヒーモス』様を御覧ください」
イリスが示した先にそびえるようにして鎮座していたのは、巨大キャバリア『ベヒーモス』であった。
その装備は戦略砲撃戦仕様と呼ばれる『ベヒーモス』の装備バリエーションの一つであった。
戦略超大型電磁投射砲と対戦略兵器用超大型電磁障壁発生装置。
その二つが要となった『ベヒーモス』の形態は、まさしく巨大な城門の如き様相を呈するものであっただろう。
「あちらのギガンティックガーディアンシールドは、巨大パルスシールド発生装置になっています。ええと、ものすごく大きくて強力なバリアを発生させる装置なんです」
イリスの説明は専門的なものではなかった。
どちらかと言うと、フィーリングを持って説明するようなものであった。
だがしかし、鋼の妖精種族は腐っても技術者である。
彼らは即座にイリスが抽象的に説明した巨大パルシールド発生装置の難点を見抜いたようだった。
「確カニ、強力ナ兵器ノヨウダ。ダガ」
「はい、とてつもなく重たくて……」
「ソレバカリデハナイナ、エネルギーモ大量消費スルナ?」
「そ、そうなんです。でも、重さは防衛するためですから、動かなければ平気ですよね?」
「ソウトモ言エルナ。シカシ、ソウナルト、エネルギー問題ダ」
その言葉にイリスは頷く。
「発電所から直にケーブルを引く、というのはどうでしょうか。動かないことを前提としているのならば、期待に直接ケーブルが接続されていても問題はないのでは?」
「ソレハソウダガ……ケーブル自体ガ弱点ニナラナイカ」
「それは機体背面にケーブル接合部を持ってくれば、そもそもパルスシールドで守ることができます」
確かに防衛のみに専念するのならば、弱点も気にならないだろう。
「『ベヒーモス』様の装備そのままに建造するのはとっても大変だと思います……ですが『グランドロンロボ』に合わせたサイズであれば」
建造も十分に可能であろう。
イリスの言葉に『グランドロン』たちは頷く。
「守ル手段ハ多ケレバ、多イ方ガイイ。『ベヒーモス』ノスペック開示、可能ナ範囲デ頼メルカ」
「はい! パルスシールド発生装置はこちらです!」
イリスはそう告げ、『グランドロン』たちと共に彼女の持ち込んだアイデアでもって『グランドロンロボ』用の円盤型のパルスシールド発生装置の建造に取り掛かるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リリエッタ・スノウ
んっ、今回はロボットを作るお手伝いの任務だね。
リリ、機械はすぐに壊れるから苦手だけど……グランドロンのロボットなら大丈夫かな?
リリは防衛に役立ちそうな武装を考えたらいいんだね。
ドラゴンとか上空から襲い掛かってくることが多いからお空を攻撃できる武器があった方がいいと思う。
肩にとっても大きな大砲とか乗せてみる?
むぅ、実弾以外にケルベロスを直接飛ばせるような大砲だったらもっといいかも?
んっ、こんな感じでいっぱいロボット完成するといいね。
※アドリブ連携大歓迎
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
エイル博士は、相変わらずですねー。
で、今回…提案するのは陰海月なんですよー。私は通訳ですー。
※
陰海月「ぷきゅ!」
カッコいいよね、ロボ!グランドロンさんもカッコいい!
ぼくが提案するのは、『守るための攻撃装備』!
ほら、攻撃は最大の防御って!あってもいいと思ったから!
で、提案するのは円盾だよ。これね、投げてもいいやつ!
投げても戻って来るようにして、ね!
そうしたら、防御にも使えるよ!カッコいいし!
「ロボットを作るお手伝いの任務だね」
リリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)は急ピッチで建造が進む決戦配備たる『グランドロンロボ』を見上げた。
何故、この『グランドロンロボ』が必要かと言えば、十二剣神を守る永遠回廊を突破するためだ。
ユーベルコードでは破壊することのできない永遠回廊に護られた十二剣神たち。
これを撃破しなければ、地球の精髄を奪われ、遠からず地球は崩壊してしまうだろう。そうなれば、地球に住まう人々は死に絶える。
そんなことはさせぬと全世界決戦体制が発動しているのだ。
この『グランドロンロボ』もまた、その一つである。
「リリ、機械はすぐ壊れるから苦手だけど……」
「ケルベロスガ扱ッテモ、大丈夫ナハズダ」
金属の体を持つ妖精『グランドロン』の技術者が力強く頷く。
多少無茶をしても壊れないくらいの耐久力がなければ、防戦機構としてやってはいけないだろう。
その点においては彼らなりの自負があるようだった。
「そっか、『グランドロンロボ』なら大丈夫かな? うん」
リリエッタは頷いて自分は何をすればいいのだろうかと首を傾げる。
建造の手助けと言っても、体力や技術力といったものはリリエッタよりも『グランドロン』のほうがあるだろう。
自分が役立つところはあるのだろうかとリリエッタは疑問に思っていた。
「アイディアヲ欲シテイル」
「アイディア……?」
「ソウダ」
「つまり、防衛に役立ちそうな武装を考えたらいいってことなんだね。それなら、うーん……ドラゴンとか上空から襲いかかってくることが多いから、お空を攻撃できる武器が会ったほうがいいと思う」
つまりは、対空防御だ。
なるほど確かに守る、という点に置いてシールドなどは有用である。
だが、迫る敵を排除できなければ防戦一方でしかない。
「武装ノ配置場所ニモ気ヲ使ワナケレバナ」
「そうだね。なら、肩ってスペース空いているよね。防戦のためのロボットなら腕をブンブン振るう必要がないから、肩の可動域を制限されても構わないと思うんだよね」
そう言ってリリエッタは己の肩を示す。
そして腕をぐるんぐるんと動かす。
ロボットである以上人型であることが多いだろう。
であれば、その腕は多くの武装を扱うためにある。しかし、防戦機構であるというのなら、接近戦を行う必要はない。
肩に大型の砲を設置しても腕部の可動域が狭まるデメリットはあまりないと言えた。
「あとは……うーん、実弾以外にケルベロスを直接飛ばせるような……ええと、つまり」
「カタパルト」
「そう、それ。そんな副次的な機能も持たせたら、ケルベロスをすぐさま敵陣に送り出すこともできるかもしれないよね?」
「面白イ試ミダ。取リ入レテオコウ」
リリエッタの言葉に『グランドロン』の技術者は頷く。
思いがけないアイディアというものは、いつだって思いがけない方向から現れるものである。
リリエッタは専門ではない。
だからこそ、凝り固まった頭では出せない奇抜なアイディアによって、さらに技術の幅を広げていくのだ。
「んっ、いっぱいロボット完成するといいね。さあ、リリもがんばろう」
自分にできることを。
リリエッタは決戦配備建造に勤しむ人々をさらに手助けするために走り出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
――――
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)さんのリプレイです。
――――――
全世界決戦体制。
それは文字通り、世界の総力戦である。
猟兵、ケルベロスのみならず一般人たちもまた戦いに寄与するため、己の力を注ぎ込むのだ。汎ゆる生産体制や生活の基盤、汎ゆるものが戦いのためにリソースへと変わる。
経済活動は滞るであろう。
普段の暮らしもままならなくなるだろう。
それでも人々は不退転の決意を持って、この戦いに身を投じているのだ。
「忙しくなるな。しかし、退路などなき戦い。『グランドロンロボ』……大変なことだが、やらねばならない」
亜麻色の髪が揺れて『エイル』博士は決意を新たにしていた。
「ぷきゅ!」
そんな彼女の背後に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と共に顕れたのは巨大なクラゲである『陰海月』であった。
「おや、君たちは」
「相変わらずですねー。今回は私は通訳でまいりましたー」
『疾き者』の言葉に『エイル』博士は首を傾げた。
当然である。
通訳? 何のために? と思ったのだろう。
「いえ、『陰海月』が巨大ロボ……ええと」
「『グランドロンロボ』、かい? それがどうしたんだい。ああ、そうか、武装のアイディアを思いついたのかい?」
『エイル』博士は察しが良いようだった。
すぐに気がついて聞く体勢になっていた。こういうところは貪欲というか柔軟というか、見習うべき所だな、と『疾き者』は思ったかも知れない。
「ぷきゅ!」
「ええとですね、カッコイイよね、ロボ! と申しておりましてー」
『陰海月』が踊るように触腕を揺らしている。
鳴き声と身振り手振り。
それによって何かを伝えようとしているのだ。
「ふむ……」
「グランドロンさんもカッコイイ……と、これは余計でしたねー。ええと」
「つまり、キミが提案するのは『守るための攻撃装備』ということでいいのかな?」
わかるのか、と『疾き者』は驚いたようだった。
『エイル』博士は苦笑いしていた。身振り手振りでおおよそのあたりをつけただけだ、と。
「攻撃は最大の防御と申しまして、と」
「まあ、その通りだね。だが『グランドロンロボ』は座して動くことのできない機体だ。防戦機構だからね。格闘戦なんて恐らく無理だ。その場合はどうする?」
「ぷっきゅ!」
これ、と『陰海月』示してみせたのは、円形の模型であった。
ラウンドシールドと言われるたぐいの盾。
それを示して、触腕がフリスビーの要領で模型を投げるのだ。
「なるほど。投擲武器に転じることのできる防御兵装、というわけかい」
「ぷっきゅ!」
その通り、と『陰海月』が頷く。
さらに、と『陰海月』が触腕をくい、と引くと円形の盾に繋げられていたワイヤーが引かれ、まるでヨーヨーのように手元に戻ってくるのだ。
「投擲しても戻って来る、と。ふむ、なかなかおもしろいな。それに」
「ぷきゅ!」
カッコイイしね! と二人は頷く。
「……と、こんな具合で翻訳はあっているかい?」
「え、ええ……」
通訳必要なかなった、と『疾き者』はロボ開発者とロボ好きの合い通じるものを様々とみえつけられて、頷くしかなかった――。
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
グランドロン!?金属の肉体を持つ妖精…妖精さん?!
…まぁ私の世界にもロボットヘッドという種族がいるからな~そういうもんか…
彼等と協力しかっちょいいキャバリアを作ろうじゃないの!
え…キャバリアじゃない?ロボ?細かいことはいいんだよ!
ベルト・ラムバルドは行くぞ!
つー訳でだ!参考に我が愛機パロメデスを用意した!
こいつを参考にリバースエンジニアリングしてくれ!
まさに我が騎士道精神がまるで形になったような…
…だぁー!?勝手に女体化するな!
…え?違う違う!巨女じゃなくてだな~!いや存在感じゃなくて~…
お嬢様でもなくて~騎士道だから!剣とか盾とか~そ~いうので~
ねぇ~聞いてる~?もし~?んも~…
『グランドロン』。
それは妖精種族である。
だが、一般的に妖精と言えば儚げなイメージを持つ事が多いだろう。
ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)もまた、そんなイメージを妖精に持つ猟兵の一人だった。
だがしかし、全世界決戦体制によって決戦配備の建造に勤しむ人々……とりわけ、防戦機構である『グランドロンロボ』を建造する妖精種族『グランドロン』たちの姿を見て、目を見開いた。
「『グランドロン』!? 金属の肉体を持つ妖精……妖精さん?!」
「ソウダガ」
『グランドロン』の技術者の言葉にベルトは、口を開けっ放しであった。
驚愕していると言って良い。
いや、と頭を振る。
「すまない。あまりのことに驚いてしまった……まぁ私の世界にもロボットヘッドという種族がいるからな~そういうもんか……」
思い返してみれば、金属の肉体を持つ種族というものに、それほど偏見を持つ必要もないのだとベルトは思い直す。
「よし、君等と共にかっちょいいキャバリアを作ろうじゃないの!」
「キャバリア? コレハ『グランドロンロボ』ダガ」
「細かいことはいいんだよ!」
本当にいいのか?
だいぶ毛色が違うような気がしないでもない。
「ベルト・ラムバルドは行くぞ! つーわけでだ! 参考に我が愛機を見てくれたまえ!」
「コレハ?」
ベルトが示すのは、彼の愛機である『パロメデス』である。
騎士の甲冑のような機体。
その異様を見上げて『グランドロン』の技術者は首を傾げた。
確かに人型であるが、『グランドロンロボ』とは技術体系が異なるように思えたのだ。
「こいつを参考にリバースエンジニアリングしてくれ!」
「簡単ニ言ウガ……図面ハナイノカ?」
「ないな! だからこそ、リバースエンジニアリングだ!」
「分解シテイイノカ? ソウデナケレバ、仕組ミヤ仕様、構成部品ナド明ラカニデキナイガ……」
「そういうものか!」
『グランドロン』の技術者は難しい顔をしているようだった。
今からキャバリアを分解して、その仕組や技術を取り込もうとすれば、時間がかかるだろう。
スキャニングしたとしても、異なる技術系である。
「参考ニスル程度ナラバ間ニ合ウカモシレナイ……」
「わかるぞ、我が騎士道精神が形になったような機体であるからな! 難しいのは重々承知の上だ!」
ベルトは大仰に頷いて、『グランドロン』の背中を叩く。
「シカシ、ドウイウ理屈ナノダ?」
示す先にあったのは、『パロメデス』が人型キャバリアお嬢様に変身した姿だった。
「だぁー!? 勝手に女体化するな!」
ユーベルコードの輝きによって勝手に変身した『パロメデス』に『グランドロン』は困惑していたし、ベルトは大慌てである。
違う、そういうことをやりたかったわけじゃあないのだ。
「違う違う、これは違うぞ!? 騎士道をだね、剣と盾をこう~そういうので~」
『おーほっほ!ご機嫌よう~!ワタクシ、キャバリアお嬢様ことパロミ・デス代でしてよー!』
「勝手に喋るんじゃないよー!」
ベルトは暴走する『パロメデス』を抑えるのに必死で、結局リバースエンジニアリングは有耶無耶の内に、なんとなくベルトの言うところの騎士道精神だけは『グランドロン』たちに理解されるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
コラボ先のアートのプロなデザイナーの皆様と建造、特にデザインをお手伝いするのでっす!
性能だけでなくデザインも大事でっすよー?
防衛ロボでっすからねー!
安心感を与えるデザインは護られる側の皆様を落ち着かせ、心理的にだけでなく行動面の力にもなるのでっす!
それにデザイン次第では知恵あるデウスエクスを撹乱したり、本能的なデウスエクスを威嚇もできるのでっす!
実のところ無敵ロボというのは難しいかと。
デウスエクスの皆様も個性豊かで手数多いでっすので。
だからこそ容姿と武装にギャップのあるロボで敵の予測を外し、一回でも読み違いにより致命的な技を空振りさせる、というのは重要だと思うのでっす!
決戦配備は、十二剣神を守る永遠回廊を突破するために必要なものである。
ユーベルコードで破壊できぬ永遠回廊は、決戦配備でなければ突破できないのだ。だからこそ、全世界決戦体制なのだ。
世界の汎ゆる人々へと協力を求める、文字通り全世界の総力戦。
それが決戦体制。
退路はない。
あるのは決死の覚悟のみ。
故に全世界の人々は、己の持てる全ての力を使ってでも、この戦いに勝利すべく、懸命に働いていたのだ。
「藍ちゃんくんでっすよー!」
そんな防戦機構『グランドロンロボ』が建造されている現場に響くは元気な声であった。
紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は、元気よく駆けつけていた。
藍ができることは多くない。
けれど、縁・逢い(アイチャンクン・コラボステージ)と言うではないか。
これまでコラボレーションしてきたアートのプロデザイナーを引き連れて、『グランドロンロボ』の建造現場へとやってきたのだ。
「コノ方タチハ?」
『グランドロンロボ』の技術者の訝しむような様子も尤もであろう。
藍は、力強く頷く。
「はい、彼らはコラボ先のプロなデザイナーさんたちなのでっす! ロボットには性能ももちろん大切でっすがー、デザインも大事でっすよー?」
「デザイン」
「はいなのでっす。だって防衛ロボなのですから」
どういうことなのだと『グランドロン』の技術者は首を傾げている。
性能を優先すべきではないのかと言わんばかりであった。
藍は頭を振る。
「安心感を与えるデザインは護られる側の皆さまを落ち着かせ、心理的にだけでなく小王道面の力にもなるのでっす!」
「ソウイウモノカ」
「そうでっす! それにデザイン次第では知恵あるデウスエクスを撹乱したり、本能的なデウスエクスを威嚇もできるのでっす!」
それは確かに頷けるところであった。
デザインが心理的な圧力になることは、戦いの歴史が証明している。
であればこそ、デウスエクスにもこうした心理的な圧力が働かない、という理由もないだろう。
故に藍の語る言葉には説得力があったのだ。
「実のところ、無敵ロボというのは難しいかと。デウスエクスの皆様も個性豊かで手数も多いのでっす。だからこそ、容姿と武装にギャップのあるロボで敵の予測を外し、一回でも読み違いにより致命的な技を空振りさせる、というのは重要だと思うのでっす!」
つまり、と藍は拳を握りしめる。
「ギャップこそが最大の可愛い、なのでっす!」
「……ナルホド」
なるほど?
『グランドロン』は藍の言葉に頷いていた。
本当にわかったのだろうか?
藍は、コラボ先のデザイナーから上がってきたデザイン画を『グランドロン』に示し、ギャップ可愛いデザインの『グランドロンロボ』を仕上げるために奔走するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・ラーズグリーズ
なんだろう、出そうと思ってた『スプリガン』が盛大にキャラ被りしているような気がする……!ってそうじゃないそうじゃない。
…えーと、問題として「守ってるだけじゃ状況は好転しない」んだよね、基本的に。
なら必要そうなのは「耐えている間に敵を撃退できるだけの火力」もしくは、「援軍が来るまで耐える時間を引き延ばす足止め策」だと思う
という訳で、大規模火砲や火炎放射を装備した砲撃・爆撃仕様の『イフリート』と、凍結の魔力を帯びた機銃掃射での制圧が可能な航空機型の『ヴェーラ』、二種の機械妖精を補助兵装の参考に出します
折角エイル博士も居るんだし、その…なんというか……本体の支援を行う|子機《ビット》的な感じのやつ!
「『グランドロンロボ』……なんだろ、出そうと思っていた『スプリガン』が盛大にキャラ被りしているような気がする……!」
ノエル・ラーズグリーズ(楽園の追放者・f40853)は、次々と建造されていく防戦機構『グランドロンロボ』を見上げて、自分の鋼鉄の巨人、機械妖精の出番が奪われたような気持ちになった。
なったが、である。
今はそんなことを言っている場合ではない。
地球の危機なのだ。
十二剣神は、永遠回廊によって護られている。
未だ猟兵たちは十二剣神へと至れない。永遠回廊はユーベルコードで破壊することができないからだ。
地球の精髄を奪われれば、地球は崩壊する。
そうなっては、生きる人々は皆死滅してしまうだろう。
これを阻むための全世界決戦体制なのだ。
「今はそんなことを言っている場合じゃあないんだよね」
「そうだね」
「あなたは……『エイル』博士」
ノエルは振り返ると、そこに亜麻色の髪の女性が立っているのを認めて目を見開いた。
彼女もまた湾岸の決戦都市の責任者であり、決戦配備の開発も行っていた。
そんな彼女もまた『グランドロンロボ』の建造に協力しているのだろう。
「防戦機構としての機能は『グランドロンロボ』のほうが性能が高い。ここからはやはり君たちのアイディアというものが必要になってくるんだが、何かあるかい?」
つまりは、要望だ。
ノエルは少し考える。
「問題として、『守っているだけじゃ状況は好転しない』んだよね、基本的に」
「そうだね。敵が迫る以上、これを打倒しなければならないからね」
「そう。だっから、必要なのは『耐えている間に敵を撃退できるだけの火力』もしくは、『援軍が来るまで耐える時間を引き伸ばす足止め策』だと思う」
ノエルはタブレットを操作して、自分の操る機械妖精のデータを示す。
「つまり、『グランドロンロボ』に子機を用意しろ、と?」
「そうなります、ね。艦コピは無理でも、似たような特性を保たせられる子機がいれば、防戦機構としてそれなりの敵の撃退能力をもたせることもできるはず」
「しかし、今から子機を建造するのは……」
「そうだから、『エイル』博士、あなたがいる」
「……『セラフィム』を子機として扱う、か」
「そうです。本体である『グランドロンロボ』を支援するための子機として遊撃させることができれば、防衛して、敵の猛攻を防ぐ間に敵事態を子機で押しのけることができる」
そのためにノエルは己の機械妖精のデータを開示したのだ。
『エイル』博士であれば、それらのデータから『セラフィム』に似たような武装を開発して装備させることができるだろう。
「なるほど、面白い試みではある」
「そうでしょう。これなら既存の『セラフィム』に装備させるだけでいいから、建造コストも抑えられて一から子機を開発しなくて済みます」
「いいね。乗った」
二人はガシッと手を繋ぐ。
子機としての『セラフィム』。防衛機構としての本体『グランドロンロボ』。
この二つによって、さらなる防衛能力を向上させるべく、ノエルと『エイル』博士は兵装の建造に勤しむのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
天ヶ崎・聖羅
おっきなロボット、みんな好きだよねえ。
わたしも相棒がそうだから分からなくはないけど♪
(「機界姫神アルティナ」のカード見つつ)
ともあれロボ作りのお手伝いだね。
やっぱりもっと可愛いデザインに…ってのは今は関係ないか。
防衛用のロボだったら、どんな風に敵が襲ってきても対応できる能力があった方が良いよね。
例えばこのカードみたいにさ。
(妨害魔法カード『女王の威光』を見せ)
これはターンが終わるまで相手の動きを封じるカードでね。動けない間に体勢を整えたり、一気に攻め込むために使うんだよ。
これみたいに、一時的にでも相手の動きを封じられる武装を付けるのも、良いんじゃないかな?
巨大ロボット。
それは人のロマンであるとも言えただろう。
巨大であれば巨大であるほどに強大な力の象徴のように思えたことだろう。
「おっきなロボット、みんな好きだよねえ」
天ヶ崎・聖羅(メスガキデュエリスト・f41704)は建造されつつある『グランドロンロボ』を見上げて、息を吐き出した。
大きなお友達は、みんなロボットが好きだ。
でかければでかいほどいい。
そういうものなのである。
手にした『機界姫神アルティナ』のカードを見やる。
彼女の相棒とも言えるカード。
「ま、わからなくはないけど♪」
アスリートアースで育ち、カードデュエリストである彼女にも、巨大ロボットの才覚というものは確かに芽生えていたのである。
「ともあれ、ロボ作りのお手伝いだね」
「キミハ、協力者ノケルベロスカ?」
「ケルベロスっていうか、猟兵だけど、そうだよ♪」
聖羅が『グランドロンロボ』を見上げていると、『グランドロン』の技術者が声を掛けてくる。
忙しなく動いているのは、時間が足りないからだ。
一人でも多くの協力者が欲しいと思うのは、いつの時代も変わらぬことであった。
「アイディアヲ我々ハ求メテイル」
「う~ん、やっぱりもっと可愛いデザインに……」
聖羅は『グランドロンロボ』の造形がどうにも無骨に思えてならなかったのだ。
けれど、今はそういうことではないのかもしれないと思い直して頭を振る。
「あのね、防衛用のロボだったら、どんなふうに敵が襲ってきても対応できる能力があったほうが良いよね?」
「ソレハソノトオリダ」
頷く『グランドロン』。
しかし、その方策というものは限られている。
防衛機構であるがゆえに、防戦一方になってしまうことは多く想定されるだろう。
「うん、だからね。例えばこのカードみたいにさ」
聖羅が見せたのは、妨害魔法カード『女王の威光』(クイーンズ・マジェスティ)。
相手の動きをターンが終わるまで封じるカード効果を持っている。
使い方は様々であろうが、代表的な使い方は、敵の動きを封じている間に此方の体勢を整えたり、一気に攻め込むものである。
「これみたいに、一時的にでも相手の動きを封じられる武装を付けるのも、良いんじゃないかな?」
「フム、一理アル」
「例えば、電磁ネットを投射して敵の動きを麻痺させたり」
「ネット、カ」
「そうそう。網が絡みつけば、物理的にも動きにくいでしょ。その間に袋たたきでボコボコにしたりもできるし~」
聖羅はカードデュエリストらしい妨害の一手を次々と提案していく。
それは相手の行動をコントロールするデッキを好む彼女らしいアイディアであったし、それを受けて『グランドロン』たちは『グランドロンロボ』に搭載する武装を妨害兵装に一極化することでデウスエクスの動きを阻害するのも手であると理解を深めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
うーん。世界の危機を救う決戦ロボとか、どっかのアニメみてーだなぁ。
……いやまあ、今までもそういう危機を幾つも見てきてるから、これくらいじゃ全然驚かないってのは我ながら数奇な人生送ってるなとは思うけどさ。
ともかく、その決戦兵器の建造に手を貸せばいいわけだな。
武装は色々考えられるけど、おれはやっぱり守りの武装の方を優先させてーな。
エネルギーバリアとかシールドとか、自分も味方も守れる系のヤツ。
どういうのかイマイチピンと来ねぇかもだから、おれが普段使ってるUCや〈オーラ防御〉でお手本を見せたり。
搭載部位はどこがいいかな。やっぱセオリー(?)に則って腕とかかな。
構想が固まったら、おれも建造を手伝うぞ。
まるでアニメ作品の世界だ、と鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は防戦機構『グランドロンロボ』を見上げてそう思った。
未だ建造途中である巨大ロボット。
これがケルベロス・ウォーの要なのだ。
地球の精髄を狙う十二剣神。
これを守るのは永遠回廊である。悪いことにユーベルコードで破壊できないと来ている。
猟兵やケルベロスだけでは、十二剣神に勝利することはできないという証明であった。
故に全世界決戦体制である。
全てのリソースを決戦に注ぐ。
それによって決戦配備を建造し、永遠回廊を突破する要石にしているのだ。
まさしく世界を救う決戦ロボ。
アニメで見た光景が現実として嵐の目の前にあるのだ。
「……いやまあ、今までもそういう危機を幾つも見てきているから、これくらいじゃ全然驚かないってのは」
我ながら数奇、奇想天外な運命を送っているな、とは思う。
だが、思うだけだ。
やらねばならないことは山積している。
立ち止まっている暇なんて僅かたりとてないのだ。
「ともかく、『グランドロンロボ』の建造に手を貸さなくちゃあな。とは言え、何ができるかな……」
「キミハ、猟兵カ?」
嵐が『グランドロンロボ』の前で難しい顔をしていると『グランドロン』の技術者が声をかけてくる。
彼らは忙しなく動き回っている。
建造には多くの手が必要なのだ。
「うん、ああ、そうだ。なあ、あの『グランドロンロボ』に武装はないのか?」
「アア、マダ未実装ダ。コレカラ、武装ノアイディアヲ集ウツモリダガ」
「へぇ、そうなのか。あのさ、やっぱり守りの武装を優先したほうが良いと思うんだ。エネルギーバリアとかシールドとか、自分も味方も守れるような」
「フウム……」
『グランドロン』の技術者は嵐の言葉に頷くが、一つ疑問があると言う。
「バリア、デアレバ、敵ノ攻撃ヲ防グバカリダ」
「だよな、だからさ鏡みたいに反射できたらいいと思うんだよ。攻防一体っていうの?」
嵐は己のユーベルコードが参考になるかもしれないと実際にやって見せる。
「理屈ハ一体ドウナッテイルンダ?」
「あ、これはさ、鏡合わせに敵の攻撃の周波数を合わせるっていうか……」
「問題ハ、ソレバカリデハナナイ。設置場所モ重要ダ」
「あ、そっか。やっぱりセオリーに則って腕とかかな。掌なら、掲げるだけでいいだろ?」
「ナルホド、ソレナラバ、全面ニ張リ巡ラセル必要ハナイナ。良イ着眼点ダ」
嵐はそう言って新たなバリアシステムを『グランドロン』の技術者と共に構想を練り、それを建造されつつある『グランドロンロボ』に搭載するために実際にシュミレーションを交えながら、検討を重ねていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
幸・鳳琴
おそらく、
防衛に関しては皆さんで素敵なプランを出していると思うのです
既に出ているかもしれませんが、
単純に装甲を厚くするのもいいのですが、空間転移等を利用して
攻撃を受けても即座に補充される装甲とかあるといいなぁとか…
「流石防衛ロボ、なんともないぜ」
なーんてですね。
防衛も大事ですが心を震わせてくれるのは、
ロボの「顔」ではないでしょうか!
ただ無骨なだけではなく
戦意を鼓舞し、見る者に安心感を与えてくれる…
「かっこよさ」ポイントこそ大事なのでは!
拳を握って力説したいところです
バリっとしたというかきりっとしたというか、
見る者に勇気を与える面構えとフォルム
私は拳士ですので、構えについての意見なら出せるかと!
幸・鳳琴(精霊翼の龍拳士・f44998)は他の猟兵やケルベロスたちが防戦機構『グランドロンロボ』の武装案を数多く提案していることを知っていた。
どれもが彼女にとっても新鮮なものであったかもしれない。
だからこそ、彼女は『グランドロン』の技術者を前にして既出かもしれないが、と己のアイディアを提案する。
「単純に装甲を厚くするのもいいのですが、空間転移などを利用して、攻撃を受けても即座に補充される装甲があるといいなぁ、と思うのですが……」
「ドウイウコトダ?」
彼女の言葉に『グランドロン』の技術者は首を傾げる。
空間転移。
一言に言っても簡単なものではないだろう。
防戦機構である『グランドロンロボ』にとって肝要なのは、敵の攻撃に対する対抗策である。
そこに空間転移を用いる。
単純に考えるのならば回避のために用いる方策であろう。
しかし、彼女は防衛のために用いるといったのだ。であれば、躱してしまえば防衛すべき箇所に攻撃が向かってしまう。
それでは意味がない。
「どんなに装甲を分厚くしたとて、デウスエクスの攻撃は苛烈です。どうあっても攻撃を受けて損傷をしてしまうでしょうし、免れません」
「ソレハソノ通リダ」
「ですから、破損した装甲を空間転移で転移させ、即座に補充されるようにしてしまえばいいのです」
つまり、それは全世界決戦体制という全てのリソースを決戦に費やす、この状況であればこそ許された戦法でもあるとも言える。
攻撃を受けた場所をそのままにしておけば、そこが狙い目になる。
それを防ぐために即座に空間転移で新造されたパーツを補充すれば、隙なく新たな装甲で攻撃を受け止めることができる、と鳳琴は言うのだ。
「ナカナカ面白イ発想ダ。思イツクコトナドナカッタ……ナルホド、空間転移デ装甲ヲ補充、カ」
「そうです。流石防衛ロボ、なんともないぜ、なーんてですね」
彼女は微笑む。
それに、と付け加える。
「防衛性能も大事ですが、心を震わせてくれるのは、ロボの『顔』だと私は思うんです」
「顔?」
「ええ、顔です。。ただ無骨なだけではなく、戦意を鼓舞し、見るものに安心感を与えてくれる……『かっこよさ』ポイントこそ大事なのでは!」
彼女の拳が力強く握りしめられていた。
確かに、それは重要なポイントである。
「ダガ、ドノヨウナ……」
「バリっとしたというか、キリっとしたというか、見る者に勇気を与える面構えとフォルムです!」
「ナ、ナルホド……?」
「いいですか、やはり構えというのも大切ですよ!」
鳳琴は、自ら演武をもって『グランドロン』達に力説していく。
そのさまは、まさしく他者を鼓舞する力強さを示すものであった。そのモーションが『グランドロンロボ』に採用されれば、きっと所作一つだけでも守るべき者たちの心に力強さを感じさせ、安心感を与えるはずだ――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
大丈夫、きっと間に合うわ
だって、皆が頑張っているもの
私も、あなたたちの背中を押したい
運搬中の資材が少しでも早く届くように、
作業が少しでも効率的になるように、応援を送るわ
その背中に、光の翼を添えましょう
『勝利への意志』が重なり合えば、その速さもきっと高まるはずよ
……ふふ
こうして誰かの力になれることが、こんなに嬉しいなんて、前は気づかなかったわ
でも、今は分かるの。『きっとできる』って信じられるの
だから、みんなのために、そしてこの星の未来のために
がんばりましょうね
忙しなく『グランドロン』たちが防戦機構『グランドロンロボ』建造の現場にて入り乱れている。
誰もが余裕がなかった。
当然であろう。
なにせ、地球の危機。
時間は限られている。だが、それでも決戦配備を完成させねば十二剣神を守る永遠回廊を破ることはできない。
ユーベルコードで破壊することのできぬ永遠回廊を如何にかするためには決戦配備にかかっているのだ。
「急ゲ、急ゲ」
時間の少なさは焦りに繋がる。
けれど、誰もがこの決戦の勝利を望んでいた。
その背中に光の翼が生み出され、『グランドロン』の技術者たちの動きが格段に向上する。
「ナ、ナンダコレハ……? 我々ノ知ラヌ新機能ダトデモイウノカ?」
困惑する『グランドロン』たち。
否、それは新機能ではない。
それは、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)のユーベルコードであった。
「大丈夫、きっと間に合うわ。だって、皆がんばっているもの」
静漓は『グランドロンロボ』建造現場に降り立ち、その瞳をユーベルコード、勝利への意思に輝かせていた。
彼女の瞳に捉えた『グランドロン』たちは一様に光の翼を生やし、さらなる作業効率を向上させていた。
資材を運び込む速度が格段に上がり、作業の進捗状況は見る見る間に進んでいくのだ。
「私も、あなたたちの背中を押したい」
フレー、フレーと静漓は軽く身振りをして、微笑んだ。
「……ふふ」
思わず笑みが溢れてしまう。
誰かの力になれることが、こんなにうれしいものなのだといううことを、静漓は気が付かなかった。
だが、今ならわかる。
誰かを応援することは、いつだって誰かを思うことだ。
それは言ってしまえば、愛とも言い換えることのできるものだった。
隣人愛、自愛、慈愛、家族愛。
様々な言葉で表現できる一様ではない感情。
これが無いと思っていた自らの胸の内側から溢れ出すのを静漓は自覚していたのだ。
「でも、今はわかるの。『きっとできる』って信じられるの」
「助力感謝スル!」
「ええ。みんなのために、そしてこの星の未来のためにがんばりましょうね」
静漓は微笑む。
それが己の感情を表現する手段の一つだと知っている。
誰だって明日を望んでいる。
明日に希望があってほしいと願っている。
それは差し迫った脅威があるからではない。ただ何気ない明日であってもほしいと願う心があるからこそ、懸命に生きることができる。
それが生命だということを彼女は知ったのだ。
多くをこれから知っていくだろう。
だから、静漓は応援する。
がんばれ、がんばって、がんばろう。
たった、それだけの言葉でも己の胸には力強さが湧き出しているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!!
香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!!
お呼びですかお呼びですね
はい、メイド参上しました、エイル博士!!
ルクス様の視線が生暖かくなってきましたところで
ちゃんと戦争やります!!
後が無いデウスエクスは最後は数で押してくるはず
数の暴力に対抗するには
守るだけではなく倒す力も必要です
つまり、ルクス様の|奏魔法《広域破壊音波》と
あと一手
エイル博士、胸にプロメテウスバーンつけましょうプロメテウスバーン(わくわく
ええ、大好きですけど何か!?
でも守る戦いに|戦いの熾火《プロメテウス》は、ねー
名前変えましょう名前
イーリスピアース――空を貫く虹の女神
勝利を得る為の戦いの嚆矢
いかがですか?
ルクス・アルブス
【ステルク】
『エイル』さん、いいんですよ。
遠慮なさらず「呼んでねーよ」って言っていいですからね。
たぶんそれすら喜びますから。
ま、ステラさんがやべーことの解決にはならないんですけど!
ってなんですか!?
またなんか失礼なこと言ってますよね!?
たしかに攻撃も必要ですけど、基本は癒やしの奏魔法だと何回言えば……。
いっしょにプロメテウスがバーンするんですか?
自爆兵器?
あっ。いえ。冗談ですよ。解ってますよ。ばーん、とかしないですよね!
で、イー……なんですか?
空を貫く虹の女神さんって…・・まさかフォルさんで飛んでるステラさんのことですか!?
またツッコむんですか!?
紐なしバンジーはもーいやなんですがー!
「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!! お呼びですかお呼びですね。はい、メイド参上しました、『エイル』博士!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、防戦機構『グランドロンロボ』建造のクソ忙しい現場にて亜麻色の髪の女性、『エイル』博士へと飛びついていた。
それはノータイム、シームレスな動きであり、誰かが制止するよりも早く『エイル』博士の背後を取っていた。
あまりにも速いハグ。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)でなきゃ、見逃しちゃうね。
「はい、いいですから。『エイル』さん、遠慮なさらず『呼んでねーよ』って言っていいですからね。多分、それすら喜びますから」
ルクスはステラと『エイル』博士を引き剥がしながら、淡々とそう言い放った。
「何をしますか、ルクス様!」
「いや、この際だ。猫の手ならぬメイドの手だって借りたいところだったんだ。構わないよ。むしろ、私のハグ一つで有能な働き手の性能が向上するというのならばやすいものじゃあ無いかい?」
「それはあんまりにも身を削ってませんか!?」
「それくらいしなければ、急ピッチの建造に間に合わないってことでもあるがね」
そういうものなのかなぁ、とルクスは思ったが、下手なこと言うとステラがやべー調子の乗り方をするんだよな、とジトッとした視線を向ける。
「なんだか生暖かい視線ですね! ちゃんと戦争やりますとも!」
「いや、まずは『グランドロンロボ』建造が急務なんだよ。君たち、何か武装にアイディアというものはないかね?」
『エイル』博士の言葉にステラは、はい! と元気よく手を挙げる。
「はい、ステラくん」
「デウスエクスに後が無いのは、今回のなりふり構わない侵攻を見れば明らか! であれば、最後は数で押してくるはずです。であれば、数の暴力に対抗するには、守るだけではなく倒す力も必要です」
「確かにその通りだね。しかし、数で圧倒する相手にどうするべきか」
「はい、そこでルクス様の|奏魔法《広域破壊音波》と」
「ってなんですか!? また失礼なことを! 確かに攻撃も必要ですけど、基本、奏魔法は癒やしの魔法なんですよ! 何回言えば……」
「それだけではなく、あと一手。『エイル』博士、胸に『プロメテウスバーン』つけましょう『プロメテウスバーン』」
ステラが言うのは、胸部砲口から放たれる熱線砲のことである。
ステラお気に入りの武装である。
そう、大好物である。
「あれかい? あれはエネルギー消費が非効率なんだが……」
「え、一緒にプロメテウスがバーンするんですか? 自爆兵器じゃないですよね?」
「ルクス様」
「あっ。いえ、冗談ですよ。解ってますよ。ばーん、とかしないんですよね!」
じとっとした視線をルクスに向けてステラは頷く。
「ですが、守る戦いに|戦いの熾火《プロメテウス》は、ねー……名前変えましょう名前」
「名前の問題かい?」
「こういう時に名前は重要です。馬鹿にできない要因です。ですので、イーリスピアース――空を貫く虹の女神、勝利を得るための戦いの嚆矢、など如何でしょう?」
「イー……なんですか? まさか、フォルさんで飛んでるステラさんのことですか? またツッコむんですか!?」
「……また咥えてもらいます?」
「ひっ、いや、いやですー! 紐なしバンジーはもーいやなんですがー!」
「でしたら、ちょっとおだまりいただいて」
で、どうでしょう? とステラは『エイル』博士に詰め寄る。
彼女はうーん、と少し考えるようだった。
「名前を変えるのは構わないんだがね、しかし、エネルギー問題が解決できなければ、無用の長物だろう?」
そう、問題なのは出力。
『グランドロンロボ』が巨大であり、防戦機構である以上、強力な熱線兵器は出力が捻出できない可能性がある。
そうした意味でも……。
「悪くないと思うんです、イーリスピアース! ぜひ! ご一考を!!」
メイドの圧が強いんだよなぁ、と『エイル』博士は苦笑いするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紅葉・紅葉
諸々歓迎
かしこまりました!
グランドロンロボを造るために、この紅葉も協力させていただきます!
最強で無敵の防衛ロボを完成させましょう!
武装の考案や提案は知性に秀でる他の方に任せて、私は雑用に回ります!
この身を活かして資財や道具を運搬いたしましょう!
大きいものも重量物もお任せください、日々8時間以上運搬を行う宅配便のこの私(ミミック)!
常に並の段ボール箱の三倍の性能を発揮できるのです!
おや、装甲が不安ですか?
ふむ。材料という意味ではなく、多様性。もう少し種類が欲しいと。
なるほど。……それでしたら、段ボールを活用してみては如何でしょう!
(結局提案している)
昔の有名な兵士も愛用していたという噂ですよ!
「目指すは最強で無敵の防衛ロボの完成ですね!」
かしこまりました! と紅葉・紅葉(歩く宅配便・f40976)は車輪のついた駆体、ミミックたる体躯をぎゅるんぎゅるんと回転させてテンション高めに宣言していた。
彼がいるのは防戦機構『グランドロンロボ』の建造現場である。
今、急ピッチで建造が進められている『グランドロンロボ』は、未だ搭載される武装や防御能力などを組み込んでいる最中である。
様々な猟兵やケルベロスのアイディアを盛り込みつつある『グランドロンロボ』は、きっと人類防衛の要になることは見て取れるものであった。
紅葉は己の駆体の内側から湧き上がる感情の勢いのままに現場を走り抜ける。
「資材の搬入は、この紅葉にお任せを! この身は大きいものから小さなものまで何でも運んで見せましょう! 日々八時間以上運搬を行う宅配便のこの|私《ミミック》! 常に並の段ボール箱のさん倍以上の性能を発揮できるのです!」
びか、と光る段ボール。
ユーベルコードの輝きに満ちた歩く宅配便(アイ・アム)とも言うべき紅葉の建造現場での働きぶりは、八面六臂の大活躍である。いや、腕も足もないが。
車輪がぎゅるんぎゅるんと回転し、彼の体を駆動させる。
疾駆する速度は凄まじい上に、コーナーリングや狭い現場の入り組んだ道なども難なく踏破し、高所であろうと容易く駆け上がっていくのだ。
まさしく通常の三倍。
色が赤くなったりはしないが、それでも並の段ボールにできることではない。いや、そもそも段ボールには無茶な芸当をなんなく紅葉はこなしていたのだ。
「おや、装甲が不安ですか?」
そんなお届け物をならぬ運搬を一手にになった紅葉は『グランドロン』の技術者が図面を見て唸っている場所に遭遇する。
「アア、コノ強度デハ、攻撃ヲ受ケタ際ニ負荷ガ非常ニ高クナル。装甲材カラ見直スベキカ、ト思ッテイルガ、多様性カラ複合素材ヲ検討シタイ」
「なるほど。それでしたら、段ボールを活用してみては如何でしょう!」
「ナニ?」
「ダンボールです! 昔の有名な兵士も愛用していたという噂ですよ!」
その言葉に『グランドロン』の技術者は興味が惹かれるようだった。
歴戦の兵。
それが利用していたという段ボールの活用法。
興味がないわけがない。
「ソレハ一体ドウイウ……」
「ならばご説明しましょう! 段ボールは軽い、丈夫、低コスト! さらには衝撃吸収能力も備えた素材なのです!」
結局、運搬だけではなく提案もすることになったが、紅葉は構わない。
段ボールがどれだけ有用化は判然としないが、そこから得られた着想でもってさらなる技術力の躍進が見られるかもしれない。
それは可能性としてあり得ることである。
なら、何一つ無駄なことなどないのだ。
「段ボールの可能性、それをどうか私の駆体でもって存分に……おっと、あちらへとお届け物をしなければならないのでした! それではまた!」
紅葉は車輪を回転させ、斬りつけるように凄まじい速度で持って、資材の運搬に勤しむのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
日下部・香
拠点を守る手段が多いに越したことはない。
私も『グランドロンロボ』の建造に協力しよう。
防衛機構がちゃんと働くかどうかのテストとか必要じゃないか? ロボにどんな機構を組み込むにしても、動かして初めてわかることもあるだろうし。
私が仮想敵として攻撃してみることでテストする、というのはどうかな? 対デウスエクス用の防衛機構のテストには、ある程度の威力の攻撃が必要だろう。
どんな攻撃をするかは、グランドロンの方々の要望にお応えしよう。得意なのは刀や弓だけど、他の武器もある程度は扱える。魔法は苦手だけど……。
必要ならユーベルコードも使うが……こちらは螺旋の組紐で出力調整をしよう(【封印術】【封印を解く】)
決戦配備は十二剣神を守る永遠回廊を突破するために必要な要である。
これを建造することは急務である。
だが、猟兵やケルベロスだけでは決戦配備を十全に用意することはできない。
だからこその全世界決戦体制。
全世界のリソースを全て決戦に費やす。
物流や経済のみならず、人的なリソースすらも決戦配備の建造に注力することで、漸く猟兵やケルベロスは永遠回廊を突破することができるのだ。
「拠点を守る手段が大いに越したことはない」
確かにそのとおりだ、と日下部・香(断裂の番犬・f40865)は建造途中の防戦機構『グランドロンロボ』を見上げる。
未だ実戦に組み込むには心もとない完成度。
武装に関してもそうだし、動作チェックもまた同様であった。
いずれもがぶっつけ本番、というわけにはいかないだろう。
「動作テストは行っているのか?」
香は『グランドロン』の技術者を一人捕まえて、そう尋ねた。
「イヤ、マダダ。コレカラ、ソノ動作テストヲ行ワナケレバ」
だが、人手が足りないのだ。
『グランドロンロボ』の建造は急務であるし、また数も一体でも多く必要なのだ。
「なら、それは私が受け持とう」
どんな機構や装備を盛り込むにしても、動かして初めて不具合というものがみえてくることもある。
だが、その動作テストは如何にして行うのか。
「私が仮想敵として攻撃してみる。構わないな?」
「アア、バリアシステムガ作動スルコトニナッテイル。ユーベルコードニヨル攻撃を行えるか?」
「了解した。対デウスエクス用の防衛機構のテストには威力が必要だが……想定以している威力の数値はあるだろうか?」
「コチラニ数値化シテアルガ、問題ハナイカ?」
「……わかった。であれば、螺旋爆散掌でいかせてもらおう」
香は、その数値データを認めて出力を調整するために螺旋の組紐を手に取る。
「準備はいいか?」
香はユーベルコードの光を瞳に灯し、『グランドロンロボ』へと飛ぶ。
距離が近ければ近いほどに威力が増大する螺旋爆散掌。
瞬間、己の掌に呼応して『グランドロンロボ』のバリアシステムが作動する。
まずは、初段階は突破した。
敵の攻撃に対して自動的にバリアが作動している。
次にバリアの出力だ。
己がユーベルコードの一撃は、想定された範囲に数値が収まっている。
これを防げなければ、デウスエクスの攻撃に耐えられるはずもない。香は己が一撃を叩き込み、バリアがエネルギーの奔流でもってこれを防ぐ光景を目の当たりにした。
迸る力の激突。
弾かれるように香は地面に着地し、『グランドロンロボ』を見上げる。
「目立った外傷はなし、か。なるほど、これくらいの攻撃じゃビクともしない、か……他に問題はおきていないか!」
香はモニタリングしていた『グランドロン』の技術者に問いかける。
「問題ナシ。バリアシステムハ正常ニ作動シテイル」
「わかった。次のシステムがあるのならば動作テストを続けて行おう」
香は、自らを持って動作テストを買って出る。
疲弊もするだろう。だが、それでも人々が決戦配備のためにリソースを注いでいるのだ。なら、自分もできる限りをしよう。
そんな思いと共に香は防衛の要をさらなる強固なものにするために奔走するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・フォーサイス
やっほーエイル博士、久しぶりぃ♪
何時もは決戦都市のラボに引きこもってばかりなのに珍しいって思ったけど、この設備を見たら気持ちが分かっちゃうなぁ
で、そうなるとあたしのメカニック魂も蒸気機関さながら興奮しちゃうから、設計図見せて見せて
へぇ、ふぅん、なるほどね…
見れば見るほど|あっち側《ケルベロスブレイド》のグラビティが使えればまるっと解決しちゃう感じかな?
けど、こっち側では無いんだよねー
ま、仕方ないか
じゃあ、さ
決戦都市との連携機能の強化をより図ってみたらどうかな?
時間はそれほど無いし、無理な設計変更を重ね続けての事故もね?
この場合だと、技術提供のお礼にエイル博士のセラフィムを貸し出すとかさ
「やっほー『エイル』博士、久しぶりぃ♪」
気安い声に亜麻色の髪の女性『エイル』博士は振り返った。
今、ここは最前線。
決戦配備の建造に忙しない『グランドロンロボ』建造現場の一つである。
そこに彼女は協力者としてやってきていた。
そんな折に声を掛けられたのだから、何事かと思っただろう。
振り返った先にいたのは、ステラ・フォーサイス(帰ってきた嵐を呼ぶ風雲ガール・f40844)だった。
「何時もは決戦都市のラボに引きこもってばっかりなのに珍しいなって思ってたんだけど」
「いつもではないよ。いつもでは。研究しているだけさ。引きこもりとは心外なんだが」
「はは、ごめんごめん。でも、わかるよ。この設備見たら気持わかるもん」
「そうだろう。『グランドロン』たちの技術の粋を集めた設備だ。急増に関わらず、『グランドロンロボ』がすでに建造されつつある。素晴らしいことだよ」
そう言って二人が見ているのは、『グランドロンロボ』の建造ドッグである。
様々なロボットアームが忙しなく動き、『グランドロン』の技術者たちも忙しそうに奔走している。
「あたしのメカニック魂も蒸気機関さながら興奮しちゃうよ! ねえ、設計書あるんでしょ? データでいいからさ、こっちに送ってよ」
「構わないが、これから建造かね」
「そう……へぇ、ふぅん、なるほどね……」
なるほど、とステラは『グランドロンロボ』の仕様書と設計図のデータに目を走らせる。
見れば見るほどに『あっち側』とグラビティの関係性が見て取れる。
諸問題はグラビティが使えれば解決してしまうものであるように彼女には思えてならなかったのだ。
「でも、こっち側にないんだよねー。ないものねだりしたって仕方ないか」
ステラは少し考えた。
確かに『グランドロンロボ』は機動さえしてしまえば、防戦機構として破格である。
永遠回廊を破ることにも繋がることは頷ける。
これを更に強化するためには、とステラは瞬時に考えていた。
「あのさ、これって決戦都市との連携機能の強化ってできるのかな? 時間はそれほどないけど」
「まあ、それも可能だろうな。我が決戦都市の『セラフィム』を子機にして扱う、という案も出ているし……」
「それなら話早いじゃん! 無理な設計変更を重ねて事故が起こるのも怖いし、後付でも連携機能ができるんなら、そっちのほうが良いよ」
それに、とステラは笑む。
「技術提供のお礼に『エイル』博士の『セラフィム』を貸し出すついでにもなるじゃん」
「キミ、開発者、研究者というより、商売人のほうが向いているんじゃあないのかい?」
「やだなぁ、ただの持ちつ持たれつってやつじゃん。じゃあ、早速さ、子機にする『セラフィム』との連携パターン考えようよ」
ステラは『エイル』博士と共に『グランドロンロボ』の子機として活躍を期待されている人型戦術兵器『セラフィム』の連携パターンを考案し、システムを構築していく。
システムの構築は難しくはないが、簡単でもない。
けれど、ステラのメカニック魂の燃え上がりは、そんなものを障害とすら呼ばないだろう。
粉骨砕身する人類たちの生き様を見せられているのだ。
ならば、それに応えるのがケルベロスであり猟兵であるというようにステラは、キーボードを叩き更に『セラフィム』の子機としての連携を高めるルーチンを構築していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
獅子戸・馗鍾
ふぅむ、これがぐらんどろんろぼなる鉄巨人でございまするか
わしは新しい物好き過ぎる若とは異なりからくりにはとんと疎いでござりまするが、兵法とは何時の世となっても変わらぬもの
永きに渡り八秦家へ仕えし家人式神の知恵でございまするが、お役立て出来れば幸いでござりまする
まずは防戦ありきの戦
都を背に護る姿は四面楚歌の故事か武蔵坊弁慶さながらですな
武蔵坊と言えば立ち往生
この場合は自己犠牲を厭わず最終防衛線を維持し、例え破壊される寸前とも最低限の武装で戦い続ける継戦能力でありましょうか
さすれば、提案するは弁慶の七つ道具
熊手、薙鎌、鉄の棒、木槌、鋸、鉞、刺股でありまするが、この場合ですと状況に応じた武装ですかな
見上げるは鋼鉄の巨人。
凄まじき威容であるところは、人の身程度の体躯しか保たぬ獅子戸・馗鍾(御獅式神爺・f43003)にとっては、あまりにも強大であるように思えた。
「ふぅむ、これが『ぐらんどろんろぼ』なる鉄巨人でございまするか」
ははぁ、と彼は蓄えられた白髭を撫でながら、これでは物見遊山だな、と独りごちる。
新しいもの好きな主君とは違い、どうにもこうした絡繰り仕掛けのものには疎いところがあると自覚していた。
だが、それでも此処にやってきたのは、少しでも助けになればと思ったからである。
「門外漢ではございますが、しかして兵法とは何時の世となっても変わらぬもの」
「確カニソノ通リダ」
『グランドロン』の技術者が彼の言葉に頷く。
建造された『グランドロンロボ』はたしかに十二剣神を守る永遠回廊を突破するために必要不可欠なものだ。
要と言っても良い。
これを数多く建造する事によって、ケルベロス・ウォーを戦い抜くための力となることは明白であった。
「わしは、永きにわたり八秦家へ仕えし家人式神の知恵でございまするが、お役立て出来れば幸いでござりまする」
「コチラコソヨロシク頼ム」
「しかれば、まずは防戦ありきの戦と存じ上げます」
馗鍾はまずは護らねばならぬものと立地を確認する。
「都を背に護る姿は四面楚歌の故事か武蔵坊弁慶さながらですな。武蔵坊弁慶と言えば、立ち往生」
ふむ、とまた一つ馗鍾は頷く。
この場合『グランドロンロボ』が武蔵坊弁慶である。
迫る矢はデウスエクスの攻勢。
「やはり求められる性能は、最終防衛線を維持し、例え破壊される寸前であっても最低限のブスで戦い続ける継続戦闘能力でありましょうか」
「ソレモ勿論ノコトダ。ダガ、武装ニモ搭載デキル限リガアル」
「そうでございましょうな。弁慶になぞらえて提案させていただくのは、七つ道具。即ち、熊手、薙鎌、鉄の棒、木槌、鋸、鉞、刺股でありまするが、この場合ですと状況に応じた武装ですかな」
とは言え、その全てを再現させて武装させるには時間も資材も心もとないと言わざるを得ないだろう。
であれば、どうするか。
「一つの武装を分解し、さながら別の武装としての機能をもたせる複合兵装などは可能でありましょうか」
「単一ノ機能デハナイ、ト?」
「左様、破壊されてもその断片でも機能させることができれば、自ずと継続的に戦闘を行うことができましょう」
長くたち続けること。
それが『グランドロンロボ』に求められることであると馗鍾は示したいのだろう。
「フム、デアレバ、コノヨウナ武装プランガアルガ、意見ヲ求メタイ」
「ほほう、これは珍妙な……」
馗鍾は提示される複合武装の設計図を見やり唸る。
これはなかなかに考えられた武装である。
弁慶の七つ道具ほどではないが、しかし多岐にわたる目的をもった武装へと変形合体できるものである。
「これでゆきましょう」
うん、と頷いて馗鍾は、『グランドロンロボ』の兵装に太鼓判を押すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
わーいロボットだ!
決戦都市も変型させちゃおうよー!
やっぱり時代は人型機動決戦都市だってー!
●ロボといえば
そう自爆装置!
敵に突っ込んでー…ドッカーーンッ!!
ロボじゃなくていいって?いいえ
ロボだから敵のど真ん中まで突撃できるんだよ!
そして敵のなんちゃら回廊に大穴を開けるんだよー!
えー?防衛用だからダメ?
そっかー
●レアもの
じゃあ巨大な[ドリルボール]くんたちに惑星を穴だらけにして【素材採取】してもらった金属や非金属やレアモノを山と積んでたくさん提供しよう!
これなんかすごく不安定でちょっとの刺激ですごい爆はt…パワーが出るよ!エネルギー源に最適!とボクの【第六感】が言ってる!
その巨大さは心を少年にするには十分な魅力を持っていた。
常々思うのだ。
巨大ロボットというのは、巨大なるものへ憧れとロマンが詰まっているのではないか、と。
「わーい、ロボットだ! 決戦都市も変形させちゃおうよー! やっぱり時代は人型機動決戦都市だってー!」
『グランドロンロボ』の建造現場にてロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、そう訴えたが、『グランドロン』の技術者たちは、そんなこと無理だと断っていた。
まあ、確かに現実的ではない。
デウスエクスが以下に強大な存在とは言えど、だ。
人型に決戦都市を変形させるメリットがデメリットより小さいのだ。
何故なら、決戦都市そのものが傷ついてしまうし、変形時による各部の接合具合や摩擦、そうした強度などの問題をクリアする必要がある。
現実的ではない。
「んもー、ならロボと言えば自爆装置でしょ! 敵に突っ込んでー……ドッカーンッ!! そういうの!」
「ソレナラバ、ロボデナクテモイイノデハナイカ」
『グランドロン』の技術者の言葉に、ロニは頭を振った。
「のんのん、ロボだから敵のど真ん中まで突撃できるんだよ! そしたら敵のなんちゃら回廊に大穴を開けるんだよー!」
「シカシ、『グランドロンロボ』ハ防戦機構ダ。突撃用デハナイ」
「えー、そっかー。うーんじゃあ、どうしよっか」
まず自爆から離れてみたら?
『グランドロン』の技術者たちは言葉にしなかったが、そう思った。
だが、ロニは自爆にこだわっていた。
そこはかとないこだわり具合であった。
その目には決して諦めぬという意思の顕れがあった。
「んーじゃー、しかたないなー」
うん、とロニは頷く。
あ、わかってくれたのか、と『グランドロン』たちは胸をなでおろす。
だが、そうじゃあなかった。
「あのね、これ!」
そう言って大量に資材置き場にロニが持ち込んだ様々な鉱石めいたものに『グランドロン』たちは訝しむ。
なんだそれ。
「あこれはね、いろんな惑星を穴だらけにして採取してきた金属やら非金属やらのレアモノ! これなんかすごく不安定でちょっとの刺激ですごい爆……パワー出るよ!」
今、爆発って言わなかった?
「気の所為! エネルギー源に最適だと思うんだよね! ボクの第六感が言ってる!」
それは当てになるのか。
絶対当てならない。
というか、ろくなことにならないと『グランドロン』たちは直感的に理解していた。
確かに出力の問題はクリアされるが、安定性が欠けるのであれば、結局爆発オチは免れないからだ。
「気持チダケモラッテオク……」
「えー! なんでー!?」
ロニは資材置き場から、ちょっと不安定な素材を引き取ることを命じられ、なんでー? と首を傾げまくることになるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・ヴィッカース
【GGO】
まるでイベントを運営する側から見ましたレイド戦ですね
もしくはタワーディフェンス要素もあります戦略SLG要素も考えますと…どうしましたかシデンさん?
物珍しそうにエイル博士をじっと見つめてしまって…エイルさんを思い出してしまったのですか?
なーんて、よく分かる反応で色々捗ります
では、シデンさん
ご質問です
イベントでこれと同じガーディアンが護っている拠点があれば、どう攻略しますか?
御名答
敵も馬鹿でないとライブラリーで確認済みですので、進入路となりそうな場所に私のパワードローンのような警備装置を増やすことでしょうか
お礼は入りません
ただ…グランドロンロボに黒教布教のスポンサー広告を貼って頂ければ!
明和・那樹
【GGO】
カタリナから面白いものが見れると引っ張られて来てしまったけど…ロボットの工場だ
工場見学なんて|統制機構《現実の世界》にはないから思わず地が出かかってしまったけど、それより驚いたのが似ている顔で同じ名前の…うわ!?
ち、違うったら
ただ、綺麗だなって…
そ、そうだな…正面から戦わないで迂回や地下道を遠たりして、護ってる拠点を制圧したりそれを盾にして攻略を…あっ!
そうか
わざわざグランドロンロボを相手にしないで東京タワーまで侵入すれば良いんだ
陽動目的に戦う戦略もあるから…いや待て
この|女《AI》が見返りを求めないはずはない…
この後に続くのは…やっぱり!
すみません、うちの知り合いが…ほら、帰るぞ!
ケルベロス・ウォーを戦い抜くために必要不可欠なものが決戦配備である。
十二剣神は地球の精髄を狙うため、永遠回廊でもって猟兵やケルベロスを遠ざけた。
ユーベルコードで破壊できぬ永遠回廊を如何にかするためには、決戦配備が必要不可欠。だが、ただ一つではダメなのだ。
数多くの決戦配備が必要になる。
故に全世界決戦体制。
全てのリソースを決戦に注ぐ事によって可能となる、不退転の戦い。
その覚悟を持った人々が最前線に次々と集まってきていた。
その様子を見て、カタリナ・ヴィッカース(新人PL狩り黒教ダンジョンマスター・f42043)はこれがまるでイベントを運営する側から見たレイド戦であり、タワーディフェンスのごとき戦略シュミレーションゲームにも思えてならなかった。
そんなカタリナに引っ張られてやってきていた明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は、確かに面白いものだと思っただろう。
彼らがやってきていたのは、防戦機構『グランドロンロボ』建造現場である。
言ってしまえば。
「まるでロボットの工場だ」
工場見学など|統制機構《現実世界》で経験などしたことがない。
思わず地がでてしまったのは、それなりに彼の年齢を考えたのならば自然なことだっただおる。
そんな様子にカタリナはニマニマしてしまう。
もっと欲望を開放するのだ、とカタリナは那樹の視線が、『グランドロンロボ』建造現場のみならず、一点を捉えていたのを知る。
「あらあら、どうしましたかシデンさん?」
「え、いや……」
なんでもない、と言いかけて、那樹は己の視線が一人の女性を見つめていたことを自覚させられる。
亜麻色の髪。
黒い瞳。
周囲の『グランドロン』の技術者からは『エイル』博士と呼ばれていた。
名前まで己の知るノンプレイヤーキャラクターと同じなのだ。
年の頃だけが違う。
那樹が知るノンプレイヤーキャラクターが成長すれば、あんな女性になるのではないかと想像させられる容姿をしていたのだ。
「あらあら、もしかして『エイル』さんを思い出してしまったのですか?」
「うわっ!? ち、違うったら……ただ、綺麗だなって……」
「あらあらまあまあ」
カタリナの笑みがますます色濃いものになっていく。
諸々捗っている様子に那樹は、これは絶対からかわれると思って身を離すが、カタリナは逃さなかった。
ぐい、と腕を組むように引き寄せて耳元に囁く。
「では、シデンさん。ご質問です。イベントでこれと同じガーディアンが護っている拠点があれば、どう攻略しますか?」
「え? そ、そだな……正面から戦わないで迂回や地下道を探したりして、護っている拠点を制圧したり、それを盾にして攻略を……あっ!」
そうか、と那樹は頷く。
「わざわざ敵は『グランドロンロボ』を相手にしないで東京タワーまで侵入すればいいんだ。陽動目的に戦う戦りゃっくもあるから……」
「ご名答。敵も馬鹿ではないとライブラリーで確認済みですので、親友ろとなりそうな場所に私のパワードローンのような警備装置を増やすことをご提案してまりましょう」
その言葉に那樹は違和感を覚える。
この|女《AI》が見返りを求めずに、無償で行動するだろうか。
いや、しない。
このカタリナは絶対にただでは転ばない。
何かしら己に利するところを見つけ出すはずだ。
であれば。
「お礼はいりません」
嘘だ。絶対嘘だ、と那樹は思った。
「なかなか面白い着眼点だね」
うん、とカタリナの言葉に『エイル』博士はいつのまにか興味深げに頷いていた。
那樹は思わず近くにいた『エイル』博士になんだかドギマギしてしまって言葉がでない。駄目だ、絶対カタリナは、と言おうとするが彼女はニッコリと笑む。
「ただ……『グランドロンロボ』に黒教布教のスポンサー広告をペイントしていただきたいのです!」
「ほらやっぱり!」
「スポンサードマーキング、というわけかい。ふむ、別にそれは構わないんじゃあないいかい?」
「え!?」
いいの?! と那樹は『エイル』博士を見やる。
いや、いいはずがない。
どう考えても黒教の布教広告なんてろくなもんじゃあない。カタリナの普段の素行を見ていたらわかる。
「いや、いやいや! いいです! すみません、うちの知り合いが……ほら、帰るぞ!」
「えー!? すんなり即落ち……じゃない、了承いただけましたのに!?」
「いいから! これ以上恥さらしなことをするな!」
「恥さらしとは心外です! 黒教は決して恥ずかしいものではありませんよ!」
「わかった、わかったから! 迷惑になるから!」
那樹はカタリナを引きずって『グランドロンロボ』建造現場から離れていく。
その背中を見送り、『エイル』博士は、一体なんだったんだろうな、と思いつつ、カタリナの提案した進入路などの見直しと警備装置の増設の指示を出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵