ケルベロス・ウォー⑤〜大忍者ちくわ大明神屋敷
●
「我らが最強の戦力がなんということ」
「あの敵がナルトでさえなければ」
強大なデウスエクスの軍勢を前に、零式忍者達はサツバツとしていた。
「こうしていても仕方在るまい。早急に手を打たねば」
「だがどうする? 彼奴らの戦力は強大かつ無尽蔵」
「もはや我らに残された手段は敵に飛び込んで自爆でもするしか」
「ちくわ大明神」
「やめておけ。そんなことをしてもあの軍勢にさしたる傷も与えられまい」
「しかしこのままでは……」
「誰だ今の?」
一斉に振り返った忍者達の前にいたのは、白い髭を蓄えた忍者の頭領の姿。
「頭領っ!? 頭領ではありませぬか!」
「ちくわ大明神!? まさかあの封印を解くというのですか」
「然り。このために我らは先祖代々このからくりを守り抜いてきたのだ」
俄然騒がしくなる忍者達の前にして、頭領は威厳を持って宣言する。
「全軍屋敷へ退け。これよりちくわ大明神を発動する!」
●グリモアベース
「も~も~きゅ、きゅぴぴぴ、もきゅきゅぴきゅ~♪」
真っ白ふわふわなモーラットが、尻尾で三拍子のリズムを取りながら、ビゼー作曲の『アルルの女』より『メヌエット』を口ずさんでいる。作者が亡くなってから50年以上経っているので、この曲は著作権を気にせず歌えるのだ。
「もきゅ! 今のは依頼とは何も関係ないのですが……大変なのです!」
ぴょんとモーラット――高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)が跳ね回る。
「ケルベロスディバイド世界に、恐ろしいデウスエクスの軍勢が攻めてきたのです!」
デウスエクスの統括者『十二剣神』達の目的は、特務機関DIVIDE本部『東京タワー』の地下に渦巻く『地球の精髄』だ。これを奪われれば、地球は遠からず崩壊を迎えることになるだろう。
「ですが、それを防ぐ為、この世界の人達が頑張っているのです。皆さんにも協力してほしいのです!」
十二剣神に立ち向かうため、この世界の人々は『|決戦配備《ポジション》』を建造しているという。
「今回、皆さんに行ってほしいのは、忍者屋敷なのです。ここでは零式忍者さん達が籠城してデウスエクスを迎え撃っているのです」
そう言うと、カントは猟兵達の前に小さな箱を置いた。中に入っているのは――。
「ちくわなのです!」
カントが誇らしげに目を輝かせて、ちくわを頬張る。
ぱくっと一口、「おいしいのですー」と尻尾をふりふり、耳をぴこぴこさせる。
「これはおいしいちくわなのです。でも忍者屋敷にあるのはとっても恐ろしい罠なのです」
ちくわを一本食べ終えたカントが、ぺろりと口の周りを舐めて「もきゅっ」と鳴く。
カントの話では、この忍者屋敷には彼らが先祖代々守り抜いてきた『ちくわ大明神』という名の恐るべき罠が仕掛けられているという。
まず普通に『おいしいちくわ』。これは食べるとおいしい。
そしてここからが本番、おいしいちくわに紛れて、『食べると爆発するちくわ』、『喉に詰まらせて死ぬちくわ』、『ちくわ大明神』、『鉄アレイ』の罠が侵入者に襲い掛かってくる。
まず『食べると爆発するちくわ』、これはその名の通り食べると爆発する。
続いて『喉に詰まらせて死ぬちくわ』、これは非常に喉に詰まりやすい形状をしている。
そして『鉄アレイ』、これはちくわに紛れて飛んでくるのだ。
「しかもちくわは侵入者の存在を感知すると、ひとりでに動いてお口に飛び込んでくるのです」
ふるふるとカントが身を震わせた。
「でも今回の罠は敵を撃退するもの。皆さんにはおいしいちくわしか飛んでこないので安心なのです」
この罠を活かして敵を迎え撃てば、比較的楽にデウスエクスの軍勢を殲滅することができるだろう。零式忍者と連携して戦い、この戦闘に勝利を収めるのだ。
「それではよろしくお願いするのです!」
ぴこっと手を振りながら、元気よくカントが飛び跳ねた。
「もっきゅきゅっぴっ、きゅっぴ、もきゅぴぴぴ~♪」
いつの間にかテンポの速い四拍子にリズムを変えたメヌエットを口ずさむカント。その手の中でグリモアが光を放ち、猟兵達をちくわだらけの過酷な戦場へと送り出していくのだった。
本緒登里
● MSより
忍者、ちくわ、鉄アレイ。
零式忍者の絡繰屋敷でデウスエクスの軍勢を迎え撃ちます。
●シナリオについて
こちらは1章構成の戦争シナリオになります。
OP公開直後よりプレイングを募集いたします。
プレイングをいただければ、順次リプレイをお返しする予定です。
完結優先のため、プレイングに問題がなくてもお返しする可能性があります。
●プレイングボーナス
このシナリオフレームにはプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……零式忍者と協力して戦う/大忍者屋敷の仕掛けを利用して戦う。
第1章 集団戦
『ナルト衆』
|
POW : ナルト忍法『ナルト嵐』
【ナルト型手裏剣】を最大レベル秒間連射し続け、攻撃範囲にダメージと制圧効果(脱出・侵入を困難にする)を与える。
SPD : ナルト忍法『巻尺縛り』
【巻尺型拘束具】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : ナルト忍法『ナルト変化』
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【ナルトのお面を被せる事で簡易ナルト衆】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:渡辺純子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
他里の忍びと共闘するのは、わりと得難い機会ですしねー。
なるほどー。また変わった絡繰もあったものですねー。
ですが…ええ、それを最大限に活かしましょう。よろしくお願いしますねー。
では…先制攻撃でUCを使用。さらに、私は漆黒風を投擲しますねー。
ええ、その漆黒風は、お面ズラシを目的としてましてー。ふふ、必ず口を露出するようにしますー。
その巻尺には拘束されぬよう、内部三人が四天霊障での結界で弾きますよー。
ところで、飛んでくる方の『ちくわ大明神』の効果とは…いったい…?
ええまあ、ちくわが美味しいのでいいのですがー。
「ちっ、敵も中々やりおる」
「くいとめよ! 我らの敗北は地球の敗北と心得るのだ!」
「わきまえよ小童共! 大義なき忍術は無力と知れ!」
「大門は放棄せよ。ここは下がり、奥で敵を迎え撃つ」
「明かりを消すのだ。忍法闇隠れの術を使う!」
「神出鬼没の手裏剣術! 避けられると思うな」
からくり忍者ちくわ大明神屋敷のあちこちから零式忍者達がデウスエクスの軍勢と戦う声が響いてくる。
そんな中、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、忍者屋敷の古式ゆかしい板張りの廊下をゆるゆると歩む。
「おっと、そちらにおられましたか」
板張りの廊下に据えられた丸い柱に向けて声をかければ、どろんと柱が消え、中から忍び装束を纏った零式忍者の頭領が現れる。
「この変化を見破るとはただ者ではない……ご助力感謝いたしますぞ」
「他里の忍びと共闘するのは、わりと得難い機会ですしねー」
のほほんとした口調でありながら、その身のこなしは油断なく周囲の状況を見据える。
それは、馬県義透となるものの内の第一『疾き者』であった。
のんびり小走りでいるように見えて、その実、足音一つ立てず軽やかに駆けていく。
「……なるほどー。また変わった絡繰もあったものですねー」
頭領より屋敷の絡繰りについて説明を受け、疾き者は「ですが……ええ」と頷く。
頭領より差し出された『おいしいちくわ』は懐にしまいつつ、残りの罠、『爆発』『窒息』『ちくわ大明神』『鉄アレイ』の三つの罠の特性を頭に入れる。
「罠を最大限に活かしましょう。よろしくお願いしますねー」
頭領と分かれ、疾き者は更に速度を上げて戦場へと向かう。
真っ直ぐに続く長い廊下。突き当たりに静かに佇む疾き者を強敵とみたナルト忍者の集団がまっしぐらに向かってくる。
「……悪霊なり」
疾き者が自らの内に封じる呪詛を解放すれば、全ての敵を祟る瘴気が廊下ごとナルト忍者達を呑み込んでいく。
「な、なんだこいつは……力が、抜けて行く」
「手裏剣がすり抜けるだと!? おのれ、物の怪の類いか」
「ええい、畏れるでない、本体を狙え!」
「ちくわ大明神」
「ナルト忍法『巻尺縛り』を喰らえ!」
慌てふためくナルト忍者の幾人かは呪詛に身体を蝕まれて倒れるが、それでも仲間を盾にして呪詛を逃れた者達が巻尺型拘束具を伸ばして疾き者を捕えようとする。
呪詛が薄れた切れ目を縫って飛んでくる拘束具の数本。
それはどこからともなく飛んできた鉄アレイによって撃ち落とされる。そして悪霊達の不幸をもたらす呪詛が敵の頭を鉄アレイへと導き、打ち倒していく。
「これが絡繰りですかねー?」
尚も無数の本が飛んでくるが、疾き者は動かず静観する。なぜなら――。
「私達四人を相手にするには足りませんね」
疾き者の目の前。拘束具はその一本たりとも届くことはなく。弾かれたように落ちていく。
「ではこちらも――」
疾き者が翻した手の先。廊下の格子窓の光を受けて、緑色に煌めく疾風が駆け抜けていく。
疾き者が得手とする棒手裏剣『漆黒風』が、キンと高い音を立ててナルト忍者達の面を弾き飛ばす。
「くっ……我らが面がむぐっ!?」
咄嗟に面を直そうとするナルト忍者達。だがその隙が命取りだった。
「ええ、その漆黒風は、お面ズラシを目的としてましてー。ふふ、口を露出させるのですよー」
疾き者の狙い通り、面を弾き飛ばしてしまえば、あとはちくわの餌食となるのみだった。
「むむむっぐ……」
「うわー!?」
「こんなこと……ぐわーっ!?」
「ちくわ大明神」
「我らが精鋭部隊が……なんとむぐぐっ!?」
ちくわの爆発に巻き込まれ、喉に飛び込んだちくわに気道を塞がれ、ちくわ大明神、鉄アレイの一撃を食らい、ナルト忍者達はバタバタと面白いように倒れていった。
「ところで……」
動く者のいなくなった廊下で、疾き者が一人、首を傾げていた。
「飛んでくる方の『ちくわ大明神』の効果とは……いったい……?」
確かに気配はあったのだ。
だがその効果が何だったのか。それは熟練の忍びたる疾き者にも掴めなかったのだ。
「ええまあ、ちくわが美味しいのでいいのですがー」
先程貰ったちくわをむしゃりと頬張って、疾き者はまたゆるゆると呟くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
強調したい時は「★」を、それ以外の時は「♪」を語尾につけるよ♪
なんか罠の説明の時に罠の種類が一つ多かった気がするんだけど気のせい???
屋敷内の仕掛けを利用して戦うよ♪
仕掛けの場所は【コミュ力/言いくるめ】で零式忍者さんから教えてもらうね♪
UCと【存在感/おびき寄せ/大声/声を届かせる】技能で敵を仕掛けのところまで誘導して、仕掛けにかかって動きが止まったところをネクロオーブから放つ【エネルギー弾】で攻撃するね★
UCは『クローネちゃんの高速移動術★』
これで屋敷内を素早く動き回りながら敵を誘導するよ♪
敵の攻撃は【第六感/見切り/身かわし】で避けるよ♪
「ちからを尽くせ、敵の撃破を優先するのだ!」
「とくと味わえ我らが奥義、火炎輪の術!」
「良いわね。かかってらっしゃい、くノ一の技を見せてあげる」
「ここで大手柄を立てれば中忍への昇格の道が開けるのだ」
「戦争にて明るみに出るのは日々の鍛錬の成果よ!」
「とりあえず神頼みでもしちゃいますかね?」
屋敷の八方を取り囲むナルト忍軍の刺客達が、次々と屋敷へなだれ込んでくる。それを防ぐ零式忍者達も必死の抗戦を挑み、戦いは更に激しくなっていく。
「なんか罠の説明の時に罠の種類が一つ多かった気がするんだけど気のせい???」
顔に思いっきり疑問符を浮かべてきょとん。クローネ・マックローネ(|闇《ダークネス》と|神《デウスエクス》を従える者・f05148)は、からくり忍者ちくわ大明神屋敷の庭で首を傾げていた。
「よくぞ見破ったでござる」
「うわ、何、何……え、でっかいちくわだぁ★」
クローネの視線の先、見事な日本庭園の木に紛れていたのは、人間大のちくわであった。
「わしじゃ、ちくわ大明神じゃ」
「ちくわ大明神?」
本当に何なのだろうと思いながらも、持ち前の享楽故にそれ以上気にしないことにしたクローネは、にっこり笑顔でうねうね左右に揺れる巨大ちくわに話しかける。
「ねえねえ、それって本物のちくわ?」
「いかにも……と言いたいところじゃが、これは屋敷の絡繰。屋敷全体に張り巡らせた忍術によって全ての者の認識を惑わす、我ら一族の秘伝なのじゃよ」
予知すらも惑わす、ちくわ大明神の忍術。結局それが何の役に立ってるのかは分からなかったが、今は一応世界の危機なのだからと、クローネはとりあえず頷くことにした。
「じゃ、クローネちゃんも協力してあげるね★ だ・か・ら……仕掛けの場所、教えてほしいな♪」
つつつ……と指先でちくわの腹(?)から胸元(?)までをなぞり上げてから、クローネはその指先を自分の口元に当ててあどけなく微笑む。
「う、うむ。実はだな……」
クローネの小悪魔的仕草に、ちくわ大明神は若干顔(?)を赤らめながら屋敷の秘密を明かす。
「ええー★ ここの仕掛けって安地があるのぉ? 画面端……そこにいたら罠に当たらないんだね★」
ちくわ大明神から聞くところによると、鳥居の下の画面端が安全地帯。とはいえ、ここはスクロールではなくオープンワールド。画面端と言うのは言葉の上のことだ。
「ニンニン★ クローネちゃんだよー★」
庭中に響き渡るクローネの声に、にわかに辺りが騒がしくなる。屋敷の塀を鉤縄で乗り越えて侵入してきたナルト衆達が集まってきたのだ。
「忍法、影走りの術★ なんてね♪」
いつものけしからん服をミニスカ網タイツのくノ一仕様にしたクローネちゃんが、ちくわを巻物代わりに咥えて印を結ぶ。
ナルト衆が投げつけてきた巻尺をジグザグに走り抜けて躱し、クローネは庭中を飛び回る。
「いたぞ! あっちだ!」
「くそ、なんてすばしっこいヤツだ」
「囲め囲め! 相手はたかがくノ一だ、捕まえて吊し上げてやる」
「ちくわ大明神」
「たかが網タイツごときに何てザマだ」
「それがいいんだろ!」
クローネは転々と設えられた庭石の上をぴょんぴょんと跳ぶと、くるりと宙返りをして見得を切ってから、片手片膝を地面についた忍者ポーズを決める。
振り切るだけなら簡単だけれど、今のクローネの目的は敵を罠へ誘うこと。
大量の敵をその身に引きつけたクローネは、先程ちくわ大明神から教えられたポイントを目指す。
庭の中央。どこからでも見える目立つ大鳥居。
そこに滑り込んだクローネは、トレードマークのポニーテールをかき上げて、ナルト衆を迎え撃つ。
「はぁはぁ……とうとう観念したか」
「あちこち逃げ回りやがって」
「ちくわ大明神」
「俺はスパッツ派だからなあ」
「てめえぶっ殺してやる……って、あれ?」
口々に喚くナルト衆だったが、クローネが指差す先を見上げれば、そこには屋敷の罠が迫っていた。
足元で爆発するちくわに脚を取られてすっころぶ者、鉄アレイの一撃で脳震盪を起こす者、ちくわ大明神、ちくわを喉に詰まらせる者。
阿鼻叫喚の罠地獄の中、更にクローネが掲げるネクロオーブから放たれたエネルギー弾がナルト衆に襲いかかる。
「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ」
動きが止まったところをクローネに撃ち抜かれ、ナルト衆達は次々に倒されていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エインセル・ティアシュピス
●アドリブ連携歓迎
にゃーん、ちくわたべながらデウスエクスとたたかえばいいの?
たべものはそまつにしちゃめーだから、
もしおなかがいっぱいになってたべきれなくなったらもってかえってもいいかにゃ?
(事前に確認を取っておく)
ちくわがいっぱいとんでデウスエクスをよわらせるんだね!
じゃあ、ぼくは【指定UC】でにんじゃさんたちをパワーアップさせるね!
【多重詠唱】で【結界術】もいっしょにかけてあげるからこうげきされてもいたくないよ!
ぬのやりさん(『生命を守護せし霊布の聖槍』)に【式神使い】でおねがいして、うしろから【不意打ち】してこけさせるようにするね!
そしたらわなにもかかりやすくなるはずにゃーん!
「神々何するものぞ!」
「明日の地球は我らの手で守り抜くぞ」
「大戦じゃ! 一花上げようぞ」
「わ、わたしもがんばりますよ~」
「くらいつけ雷よ! 奥義、怒號雷撃!」
「ちゃっちゃっと片付けちまいましょう」
猟兵達の活躍で勢いづいた零式忍者達が、からくり忍者ちくわ大明神屋敷に侵入したナルト衆らに怒濤の追撃を仕掛ける。激しい剣戟の音と、彼らの忍術が閃き、屋敷のあちらこちらを彩っていた。
「にゃーん!」
そんな中、エインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)は、おいしいちくわが目の前をひゅんひゅん飛び回るのを、キラキラお目々で見つめていた。
右に左に。ちくわが動く度にエインセルの翠の瞳も揺れる。
一本一本職人さんが手作業ですりおろした魚肉をじっくりと焼き上げた自慢の逸品。
真っ白な身に映る狐色の焦げ目は美しく、そのまま食べても料理に使ってもおいしそう。
「ちくわたべながらデウスエクスとたたかえばいいの?」
エインセルが、隣にいた零式忍者のおじさんの袖を引っ張って問いかければ、その無邪気さにメロメロになったおじさんが「いくらでも食べていいんだよ」と笑みを浮かべる。
早速一つ貰って、ぱくぱく囓って……ふと気付く。
おいしいけど、一杯ありすぎて食べきれないかも!
「たべものはそまつにしちゃめーだから、もしおなかがいっぱいになってたべきれなくなったらもってかえってもいいかにゃ?」
もったいないという気持ちと、持って帰って大好きな飼い主にもちくわを食べてもらいたいという気持ちの二つで、エインセルは小首を傾げて確認する。エインセルの礼儀正しさにきゅんとなって、おじさんは「後で箱と保冷剤を用意するね」と二つ返事で頷く。
エインセルの猫尻尾が喜びにぴこりと撥ねて、「やったぁ」と翼もはためく。
「それじゃあ、ぼくもがんばるね!」
そう言って、エインセルは皆を守るため、てってってと走っていくのだった。
「わわ、こっちでもちくわがいっぱいとんでるね!」
戦場に向かったエインセルの前で、無数のちくわがミサイルのように飛び交っていた。
敵の前で爆発するちくわ、口の中に飛び込んで喉を詰まらせるちくわ、ちくわ大明神、そしてなぜか鉄アレイも飛んでいた。
「あれでデウスエクスをよわらせるんだね!」
みためはおなじだけど、あれはたべられないちくわ。
先程貰ったちくわと見比べて、食べて良いものといけないものを見分ける。
そんなエインセルの額に刻まれた聖痕、ベオクのルーンが暖かな輝きを放つ。
「ぼくがついてるからね! にんじゃさんたち、がんばれにゃーん!」
竜の翼で羽ばたいて飛翔するエインセル。その聖痕から暖かな光が溢れ、零式忍者達へ注がれていく 春の森の中をそよ吹く風のように爽やかな香りと共に、辺りのちくわも温められて、よりおいしく香ばしい匂いを放つ。
ベオクが示すのは春に生まれ育つ白樺。
柔らかく真っ直ぐに伸び、美しい白肌が解けて剥がれる白樺の様子は、まさに上質なちくわの皮の如く。
「この光は、あの子からか?」
「暖かいな……癒やされる……」
「猟兵殿。援護、感謝する」
「よし! 皆、ちくわに力を!」
「ちくわ大明神」
「今だ、突撃ー!」
エインセルの力で生命力と身体能力を活性化された零式忍者達はにわかに勢いづき、怯んだナルト衆へ向かって一斉攻撃を行っていく。
飛び交うちくわと鉄アレイ、ついでに零式忍者の棒手裏剣も混ざって、辺りはもう足の踏み場もないくらいの丸く細長いもので埋め尽くされていく。
「クソッ! おいしそうな匂いをさせやがって」
「思わず食べたくなるじゃないか」
「ちくわ大明神」
「まて、これはちくわの罠だ。食べると爆発す……うわああっ!?」
ナルト衆ももちろん反撃を試みるが、投げつけた巻尺型高速具は、エインセルが作った結界に阻まれて零式忍者達に届かない。
飛び交うちくわに紛れ、エインセルはナルト衆らの背後に回り込む。
「ぬのやりさん、おねがい! てきをころばせちゃって!」
その声に万物の生命の源たる『精気』で編まれた布槍が翻る。生命を脅かすものから世界を守るため、その神霊たるエインセルの呼びかけに答えた不可視の布が、背後よりナルト衆の足を掠って転倒させる。
何が起こったのかも分からないナルト衆の頭上より、無数のちくわが襲来する。
「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」
爆発、炎上、ちくわ大明神――。
炙られるちくわの匂いをさせ、この辺りのデウスエクスは撃破されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
賤木・下臈
『ナルト衆』の方々。ちくわとナルトは同じ魚肉のすり身から出来ますが、やはりちくわの方が美味でございますな。……何、ナルトの方がうまいとおっしゃるか。ならばナルトはどのように料理すれば、おいしくいただけますかな?
こうして問答をしているうちに、どこからともなく、私でもなく、ナルト衆でもない第三者が「ちくわ大明神」と割り込んでくるでしょう。すると敵はこう言わずにはいられないでしょう。「誰だ今の」と。
この隙を利用して攻撃します。鳴門の渦潮のごとき旋風を放ちます。歌は「阿波淡路 狭間の海の 大鳴門 流れて巻きて 潮煙立つ」。
あなた方のナルト料理のレシピ、今後の参考にさせてもらいましょう。
ちぎれながれて くものさき
わかれたのちに 大河とならん
明らかなりし 神代より
誰がためにある 今生の道
「ナルト衆の方々」
侵攻を続けるナルト衆の前、粗末な直垂を纏った庶民――賤木・下臈(おいしいクッキーです・f45205)が、すすっと進み出た。
その身なりに、取るに足らん下臈と無視を決め込んだナルト衆だったが、次に下臈が言い放った一言は聞き逃せなかった。
「ちくわとナルトは同じ魚肉のすり身から出来ますが、やはりちくわの方が美味でございますな」
この言葉はナルト衆を激怒させた。
「貴様! ナルトの方が美味いに決まっている。ちくわなど過去の忍者の食い物。今時の忍者と言えばナルトの方がワールドワイドでメジャーなのだ」
下臈の周りにダダダと集まったナルト衆らがギャンギャンとわめき立てる。
「おや、そこまでおっしゃるか。ならばナルトはどのように料理すればおいしくいただけますかな?」
そこで更に下臈が煽り立ててやると、カッとなったナルト衆らは下臈の話術にすっかり嵌まってしまう。
「ナルトはラーメンに欠かせないだろ!」
「入ってないものも多くござります」
「八宝菜を見ろ。ちくわでは彩りが足らん」
「それはあくまで添え物。メインではありませぬな」
「じゃあこれはどうだ。ナルトを贅沢に使ったカナッペだ!」
「ほう、それはどのような料理です?」
「いいかよく聞け、まず出汁と醤油、みりんを鍋で煮立たせ、そこにナルトを加えて弱火で五分ほど煮る」
「和食ですかな?」
「馬鹿め、冷まして味を馴染ませたら、薄くスライスしたフランスパンの上に太めに切ったナルトを乗せるんだ」
「ほう、良いですな」
「好みでチーズやキュウリを乗せても美味い!」
「ちくわ大明神」
「これでSNS映えもする簡単お洒落なおつまみの完成だ!」
「ふははは、ナルトの偉大さが分かったか? 今日の晩酌のつまみに作……」
「誰だ今の」
自分達でも下臈でもない第三者の介入。ナルト衆は突っ込まずにはいられなかった。
ナルト衆の注意が完全に逸れた隙に、下臈は短冊を取り出し、和歌をしたためる。
『阿波淡路 狭間の海の 大鳴門 流れて巻きて 潮煙立つ』
これは大鳴門という景色と、その中から突き上がるように立ちのぼる巨大な波飛沫を読んだ歌である。鳴門海峡という限られた空間は『ナルト衆』のことであり、それを穿ち、限りのない天へと昇る潮煙はまさに『ちくわ』を表していると言えよう。
下臈の歌の力が、まあなんかそんな感じのすごい力とかに変わって、歌の通り巨大な竹輪の如き旋風が辺りの物を巻き上げていく。
吹き飛ばされたちくわ達が上下左右からナルト衆に襲い掛かる。
しかし、ナルト衆もさすがは忍者。巻尺でちくわを絡め取って撃ち落としたり、ぬるぬるとした身のこなしで鉄アレイを避けたり、分身の術や変わり身の術など使って、襲い来るちくわを次々避けていく。
「はぁはぁ……何やら面妖な術を使うようだが、忍者にはその程度通じぬわ」
幾つかは当たっていたようだが、それでも残るナルト衆の数は多い。今度は此方の番だと、ナルト衆は巻尺とナルトのお面を掲げて、下臈に躙り寄ってきた。
「おや、油断大敵でございますよ?」
そこで下臈が上空を指差した。そこには一本のちくわが舞っていた。
「はっ! 愚弄されたものだ、あんなの容易く躱せるわ」
「いえいえ、愚弄など。間違いは簡単なときこそ起こるものです」
「ちくわ大明神」
「負け惜しみか。その口、今すぐ綴じさせてやる」
あのちくわの旋風を抜けた自分達に躱せぬちくわなどないと、ナルト衆達は下臈の言葉を鼻で笑ってやりすごす。
しかし、驕れるもの久しからず。
降ってきたちくわは、風に煽られて空中でころんと軌道を変えた。
そして――。
「誰だ今の」
油断していたナルト忍者は割り込んできた何者かに、またもや誰何の問いを口にする。
ナルト衆のど真ん中、そこにちくわがぽろりと落ち、爆発が巻き起こる
爆風が収まった後、そこに無事なナルト衆はおらず、割れたナルトの面が転がるのみ。
あやしき下臈なれども、聖人の戒めにかなへり。
竹輪も、難き所を脱出して後、安く思へば必ずと当たると侍るやらん――。
「あなた方のナルト料理のレシピ、今後の参考にさせてもらいましょう……ラーメン」
ヒラヒラと花が散るように降ってきた薄桃色のナルトの一片、それを下臈はつまみ上げる。滅びしデウスエクスらへの祈りを言葉の結びにしながら、下臈は今晩のおつまみのことを考えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リリエッタ・スノウ
んっ、こっちも苦戦しているみたいだからリリがお手伝いするよ。
忍者屋敷の罠を使って戦えばいいんだね。
それで、飛んでくる『ちくわ大明神』はどんな罠なんだろ?
『ちくわ大明神』にハテナマークを浮かべながらも仕事はきっちりするよ。
二丁拳銃を構えてて両手は使えないからおいしいちくわは口だけでもぐもぐと食べちゃうね。もぐもぐ、んっ、おいしい。
襲い掛かってくるナルトには鉄アレイの罠と【ストーム・バレット】で迎撃するよ。
「もぐ…リリの攻撃は…もぐもぐ…簡単には止まらないよ!」
※アドリブ連携大歓迎
「全軍一斉攻撃! ここをしのげば我らの勝ち」
「了解。拙者はちくわで行く」
「そうね、屋敷の絡繰り達が味方してくれるわ」
「猟兵殿の力も借り、こちらの戦力は強大」
「劣勢なれど背後は見せぬか。敵なれど中々賢明」
「こんなに強いなんて、猟兵さん達マジ神」
あちこちでの猟兵の活躍および絡繰『ちくわ大明神』の発動により、戦いは零式忍者達が圧倒的な優勢となっていた。
しかし、ナルト衆も只ではやられない。戦力を集中させ、絡繰の制御を司っているだろう大忍者ちくわ大明神屋敷の中枢を狙って突撃を仕掛けていた。
デウスエクス迎撃のため屋敷のあちこちに展開していたため、中枢を守る零式忍者の数は少ない。ここを落とされれば逆転もあり得るが……。
「んっ、そうはいかないんだよ」
零式忍者、何するものぞと廊下を走っていたナルト衆。その集団目掛けて、パンと乾いた音と共に一筋――閃光が煌めいた。
パタパタと倒れるナルト衆の前、廊下の角に小さな銀の人影が見えた。
「こっちも苦戦しているみたいだからリリがお手伝いするよ」
リリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)の小さな両の掌には、薄く白煙を上げる拳銃が握られていた。
表情を変えずにリリエッタは静かに拳銃を構え、もう一射。
リリエッタの小柄な体格にに合わせてカスタマイズされた拳銃から放たれた弾丸は、真っ直ぐにナルト衆の額に突き刺さり、ぐらりと地面へ打ち倒す。
「グワーッ!」
「なんの! 相手は拳銃、近寄ってしまえばこちらのもの」
「全員怯むな! 誰かがたどり着けば勝ちだ!」
「了解! 巻尺で援護する。その隙に進め!」
「ちくわ大明神」
「小娘め、ナルト衆の恐ろしさを味わわせてやるぞ」
しかしナルト集は倒れた味方の身体を盾にし、リリエッタへと迫っていた。
「ちょっと数が多いね。忍者屋敷の罠も使って戦えばいいのかな?」
丁度なにやら不可思議な声もしたことだしと、リリエッタは罠の存在を思い出す。
遅いかかかってくる全員を一気に倒すには、拳銃だけではやや難しい。
ならば罠を活用すべし。
一瞬でそう判断したリリエッタは、一歩後退――その足元でカチリと小さな音が鳴る。
瞬間、屋敷の至るところから大量のちくわが飛び出してきた。
ちくわはナルト衆の目の前で爆発し、驚いて口を開けたところで喉に飛び込んで詰まらせ、ちくわ大明神、さらにちくわに紛れて飛んできた鉄アレイが敵の脳天にぶち当たる。
「それで、飛んでくる『ちくわ大明神』はどんな罠なんだろ?」
飛んでくる爆発ちくわを拳銃で撃って誘爆させたり、ちくわは穴が空いているからそれで気道を確保しようと姑息な手を考えた敵に鉛玉を叩き込んだりしながら、リリエッタはきょとんと首を傾げた。
多種多様なちくわ、しかし見た目は全ておいしそうなちくわなのだ。
たまにリリエッタの方にも飛んでくるのだが、そちらは普通においしいちくわ。
二丁拳銃で手が塞がっているため、よいしょっと背伸びしてちくわをお口でキャッチ。
ちょっとお行儀が悪いかもしれないが、これはお仕事。拳銃を連射する手を止める訳にもいかないのだ。そう考えながら、リリエッタはもぐもぐと口だけでちくわを食べていく。
「もぐもぐ、もぐもぐ……んっ、おいしい」
爆風で軽く炙られているからか、それとも飛び立てほやほやだからだろうか、ちくわはほんのり温かく、そして香ばしい。
もちもち食感に加えて、上質な魚のすり身のしっとり滑らかな口当たり。
ちくわを一本食べ終えて、ふっと表情を緩めるリリエッタ。
そんなリリエッタに向かって、もう二本ちくわが飛んできた。一本はリリエッタの口の前に、もう一本は銃弾の雨を掻い潜ってきたナルト衆にぶつかって爆発する。
「もしかして……?」
意思を持つかのようなちくわ達の動きにハテナマークを浮かべながらも、リリエッタは一つの仮説を立てる。
この『ちくわ大明神』というのは、大量のちくわを管理する装置のことで、飛んでくる物は敵と味方を識別するビーコンのような役割をもつのかもしれない。
たまに聞こえる『ちくわ大明神』という声は、その識別信号だったり……?
ともあれ、今は戦闘中。
「もぐ…リリの攻撃は…もぐもぐ…簡単には止まらないよ!」
せっかく飛んできたちくわはおいしくいただきながら、リリエッタは二丁拳銃を連射する。無限に供給される魔力の弾丸が屋敷の罠と共鳴し、ちくわや鉄アレイを加熱させながらナルト衆に襲い掛かる。
「グワーッ!」「グワーッ!」「ちくわ大明神」「グワーッ!」
やっぱり何か聞こえてきたような……。
そんなことを思いながら、リリエッタはちくわをおいしくいただくのだった。
ナルト衆を全滅させた後、大忍者屋敷では零式忍者達が勝利を祝う歓声が響き上がった。
「やったぞ! ついにデウスエクスの軍勢を追い払った!」
「うおおお、これが我らが守り抜いてきた絡繰の力!」
「いや、それだけではない。猟兵殿のご活躍のおかげぞ」
「猟兵殿。ご助力、誠に感謝するでござる」
「ちくわ大明神」
「此度の戦争、今後も激しさを増すであろう」
「我ら零式忍者、戦場にて力を尽くさん……」
「誰だ今の?」
猟兵、そして零式忍者が振り返った先――。
そこにはすっくと伸びたちくわが陽光を浴びて輝き、皆を見守っていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵