●竜の見る夢
──銀河の滴、降る降るまわりに。
マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は竜である。
ドラゴニアンである彼がグリモア猟兵となったのはごく最近のことであり、その初めての予知には色はあれど音もなく匂いもなく、ただただ美しく遠く、儚く消えていく淡くうつろうものであったと言う。
彼は夢の中で宙から降ってくる星の欠片を捕まえようと必至に手を伸ばしていた。けれどそれを捕らえた思った瞬間、白い手袋の中であえなく幻となって消えていった。
夢であるならば当然のことも夢だからこそ気づかずに、掴んでは消えるそれに手を伸ばしては、二度とは戻らぬ砕け散った夢を、恋い焦がれても叶うことなき愛を、必至で藻掻き追い求め続ける。
マレークも、そして男も女も、また老いも若きも、その場にいた誰も彼もが。
無残に散った数多の夢の残滓、奥底に残った希望の欠片に全てを賭けて。
けれど一縷の望みに縋る者達を、喰らうように青い蝶は群がり、嘲笑うかのように赤い女は焼き尽くす。
後に残ったのは人の形ですらない黒い炭の塊と、宇宙へと還っていく白い灰となった命であった。
●グリモアベースにて
「照合の結果、俺が見たのはスペースシップワールドの宇宙船『ギャラクティカ・ロマンティカ』内のアトラクションの光景であると判明した。銀河帝国の残党の襲撃を受け、最終的にこの船は宇宙を漂う墓場船となるというのが俺の見た予知だ」
マレークは己が見たものと現実とを摺り合わせ、猟兵達に夢解きして見せる。
スターダスト・イリュージョンは宇宙船内部に設けられた展望室のアトラクションで、映像により宇宙にいるかのように見せかけ、幻影の星屑を無数に降らせるというものだ。
その中に毎回星の欠片に見立てた白いミュゲの花弁がほんの少しだけ混ぜてあり、「星屑を拾った者は夢が叶う」という触れ込みで人気を博していた。
安住の星を求めて宇宙船に乗り込む人々は果て無き旅に希望を求めて。
勿論幸運の印を共に得ようとする恋人達や、友人達と競って参加する若者達など、純粋に娯楽として楽しむ者もいたけれど。
「予知を得たのは幸いだった。敵はこのスターダスト・イリュージョンを真っ先に狙ってくる。俺が見た炎の女はどうやら他人の夢を挫くのが好きなようだからな。俺達も参加者として紛れ込んでおけばいずれ必ずここに現れる。後は宇宙船全体に被害が及ばないよう、この展望室で片を付けるだけだ」
マレークはその赤い髪、赤いドレスの美しい女こそが銀河帝国の残党、すなわちオブリビオンであると断言。
この女を惹き付けて仕留めるには、まずは猟兵が囮となり、敵の嗜虐心を煽って襲わせることが第一。その為にはスターダスト・イリュージョンの星屑拾いを真剣に取り組んで見せる必要があると言った。
「決して叶わぬもの、もう失われてしまったもの、触れれば消えてしまうもの、それでも手を伸ばさずにはいられないもの‥‥それが夢だ。ほんの一欠片でも掴もうと足掻く者を無様と嗤い踏み躙ることは容易いが、俺はそれを良しとはしない。『ギャラクティカ・ロマンティカ』への転移は俺が引き受ける。だが転移を維持する為に俺はアトラクションへは参加出来ない。お前達で参加、迎撃して欲しい。頼めるか?」
マレークは集まってくれた猟兵、一人一人の顔を見ながら意志を問う。
愚問、と誰かが言うとマレークは静かに頷き、穏やかに眼差しを眇めて猟兵達を送り出す。
「俺は掴むことが出来なかったが、お前達は掴めるといいな」
そう、願いが叶う星の欠片ではなく、手の平にグリモアを浮かべて。
八島礼
トミーウォーカーでは初となります。八島礼と申します。
皆様のPC生き様を心を込めて描いて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
●プレイングの受付とリプレイの公開について
1日に書けるのは1~2人分、休日は4~5人程度と、あまりキャパが大きくありません。
多数のお申し込みがあった場合はやむなく早めに受付を締め切ったり、星をお返しすることもあります。
何とぞ予めご了承下さいませ。
プレイングの受付開始は各章に追記が入ってからになります。
また受付・締切は随時マスターページでもお知らせしていきます。
期間外に送って下さっても大丈夫ですが、期間内の方が採用確率が高いです。
また都合により1章終了後、2章開始まで1~2週ほど間が開く予定です。
連続して参加をご希望される場合にはご注意ください。
●シナリオの概要
全章通じてのご参加も1つの章だけのご参加も歓迎致します。
このシナリオでは戦闘だけでなく心情描写に重きが置かれます。
リプレイは1人か2人ずつの場面として描写します。
1章は日常パートで敵が出現しません。
行動の選択肢はあくまで見本で、むしろPCの持っている夢や夢を巡る想いなど心情をしっかり書いてください。
星屑(花弁)を拾えるか否かはプレイング次第です。アイテムとしての配布はありませんが、拾えた方は思い出をお持ち帰りください。
2章の集団戦では青い蝶が、3章のボス戦では赤い髪とドレスの女が敵として登場します。
●その他
一緒に参加したい方がいる場合はなるべく同じ日にプレイングを送信し、私に分かるよう相手の方のお名前かタグ(チーム名を【】で括ったもの)を1行目に書いて下さい。
一緒に描けるのは2人単位までで、3人以上はバラすか一度星に変えてお戻し致します。
アドリブ入れるのがデフォルトなので、アドリブの苦手な方にはあまり向いていないかもしれません。
なにぶん初めてのシナリオで戸惑いもありますが、精一杯描写させていただきます。
それでは皆様のプレイングを心よりお待ちしております。
第1章 日常
『幸せの降る宇宙』
|
POW : 映像を見極め、正々堂々と本物のキャッチに挑む
SPD : 少しずる賢く、道具を使ったりして本物を見極める
WIZ : あたりに腰を落ち着かせ、この光景を楽しむ
|
●白い花弁
その星屑は、美しくも脆い、白くて甘い小さな花弁で出来ていた。
だがそのミュゲという花は口にすれば毒なのだという。
『夢とは毒のようなもの。夢があるから辛いことも忘れられる代わりに、夢など見なければ苦しむこともない。手に入れられない夢を見続けるのは、毒に犯されいつまでも毒気が抜けないのと同じだ』
猟兵達はマレークが見送る際にそう言っていたのを思い出した。
銀河を映し出したドームはまるで地上で天体観測でもしているかのようなノスタルジーに包まれており、チラチラと光りながら欠片が降ってくる。
猟兵達はわずかな本物、幸福へ希望を求めて偽りの夜空へと手を伸ばした。
ファレリア・リトヴァール
銀の滴、金の滴……♪
ふふ、美しいですわね。
夢を叶える煌めく滴、是非手に入れたいですわね。
夢を砕こうとする無粋な輩になど邪魔させませんわ。
私の夢は、曖昧かも知れませんわね。
私の一族は戦いを厭い隠れ住んだ者達。
けれど、何故か私は戦える力を持って生まれ付きましたわ。
ならば私が戦う事で、誰かを救おうと。
戦わずに済む人々を増やそうと。
例えば『お友達』に力を借りて、
例えば息を潜め気配を殺す事で、
例えば癒しの歌声をもって。
美しい夢を皆で見られる世界を守る事が、私の夢ですわ。
例えそれが毒であろうとも、
夢見る事も出来ないよりは幸せだと、私は思いますの。
●銀の滴、金の滴
金の滴は星の欠片。
銀の滴は星の涙。
エンジェルシリカのクリスタリアン、ファレリア・リトヴァール(白花を纏う紫輝石・f05766)はそんな歌を口ずさみながら、しなやかな白い腕を星が散りばむ夜空へと伸ばした。
ファレリアは歌巫女であり、彼女の謡う歌は人々を癒すと同時に異形さえも従わせる。そんな彼女が望んだのは、美しい夢を皆で見られる世界だった。
(私の夢は曖昧かもしれませんわね。だけど私が戦うことで誰かが救われるのなら、私は戦い続けます)
彼女の一族は戦いを厭い隠れ住んだけれど、特異な力をもってファレリアは外で戦うことを選んだ。
武器を持てぬなら『お友達』と呼ぶUDCの力を借りて。
自らを守れぬのなら息を潜めてじっと気配を殺すことで。
誰かを癒せるのなら歌声を世界の果てまで届けることで。
ファレリアは自分が戦うことで戦わずに済む人を増やそうとしているのだ。
(マレークさんは夢とは毒のようなものだと言っていましたが、例えそれが毒であろうとも、夢を見ることも出来ないよりは幸せだと、私は思いますの)
絶望は星を見上げることを忘れさせる。
死は夢見ることさえ奪い去ってしまう。
それが儚い幻で、溺れる毒なのだとしても、星の見えない空、夢を見ない夜よりずっといいはずだから。
金の滴、散る散るまわりに。
銀の滴、降る降るまわりに。
ファレリアは降り注ぐ美しい星の欠片、夢の幻に合わせて謡う。夢追う人の心にも、夢叶わず散った命にも、その癒やしの歌声が届くように。
舞い落ちる毒だというその花は、ドレスに描かれたファレリア・カピタータの白い花片にも似ていた。
成功
🔵🔵🔴
仁科・恭介
「お前達も見てみたいんだね」とこっそり出てきた影達を傍らに星屑を捜す。
影達は使わない。
夢が叶うと言うのなら自分の手で目で…捜すものだ。
七年片思いの猟兵がいる。同じ親方の元で修行した子だ。七回告白して七回振られた。好きな子がいるのも知っている。
それでも諦めきれないのは、相手が良すぎるのか、ただの【吸血】欲求なのか、はたまた、帰る場所がほしいのか。
「分かんないね」
ただ一つ言えるのはまたあいつに会ったら八回目をと。
「ダークセイヴァーより暗い空だからこんなに寂しくなるのかな。」
何だか星屑があいつの瞳に見えてきた。
むかつく。真剣に捜そう。
どっかでフラフラしているあいつに会えるなら易いものだ。
●7-STARS
ワンス・アポン・ア・タイム。
ダンピールの男は星空の下で女に告白しました。だけど女はその愛に応えることはありませんでした。
ワンス・アポン・イン・タイム。
振られた男は淋しくなって影達を呼び出しました。男は影を侍らせると星を見上げて女を想いました。
これが仁科・恭介(観察する人・f14065)に起こった出来事と現在である。
「お前達も見てみたいんだね。いいだろう、一緒に見よう。だけどお前達は手伝うなよ? こういうのは自分の手と目で探すものだ」
恭介がユーベルコードで呼び出した狼のようなそれは従順なる影の追跡者だったが、今はただ一人を紛らわす相手であることを望んだ。
何故なら夢は自分の手で掴むものだから。
何故なら愛は自分の目で探すものだから。
作り物の銀河と承知していても夢が叶うと言われれば手を伸ばさずにいられない。
例え一度は告げた想いを断られたとしても。
例え二度目に他に想う人がいると知っても。
例え三度目に相手があまりに良すぎたと言い聞かせても。
例え四度目にただの吸血欲かもしれないと思っても。
例え五度目に帰る場所が欲しいだけなのかと疑っても。
そして六度目にやはり諦められないと気づいても。
やっぱり七度目にもまた振られたけれど。
「分かんねぇな」
それでもきっとまたその女に会ったなら、きっと想いを告げるのだろう。戦場で拾われてからずっと、同じ親方の元で兄弟弟子として修行した彼女は、今どこの世界の星空の下にいるのやら。
独り言ちて握る星屑は手の中で消える。握っても握っても捕らえることの出来ない幸福の兆しは、憎たらしいほど愛した女の瞳に似ていた。
(作り物だと分かっちゃいるのにダークセイヴァーより暗い空だ。そのせいか‥‥こんなに寂しくなるのは)
恋い焦がれ、追い求め、七年目の星は巡る。
追い縋り、食らい付き、七度目の星は巡る。
(この捕らえ所の無さ、どっかでフラフラしているあいつみたいだな、ほんと。もし捕まえられたら──)
八度目の告白をするのだと、恭介は真剣に己を惑わす幻影の中に本物の愛の花片を探した。
成功
🔵🔵🔴
メテオリテ・クルスタ
※アドリブ、絡み:歓迎
囮が必要なら、年なのは気にせず参加したほうが良さそうですね。
それに、私は花も好きですし、今でも夢を持つ身です。
全く心惹かれぬわけではないのですよ。
私は、いつかどこかの星で、花を咲かせたい。
ここの花弁と同じ色の、白い花です。
……それを咲かせたところで、約束が果たされないことは、わかっています。
でも、彼女と私、二人で語った夢を、叶えることは出来ますから。
その為なら、十年でも百年でも、諦めず見続け、繰り返し手を伸ばしましょう。
掴んだその手に残るものが、望んだものでなかったとしても……きっとそれにも、意味はありますから。
【POW】
ここでもそんなふうに、花弁へ手を伸ばします。
●夢十夜
金属スコップを片手に星空を見上げるメテオリテ・クルスタ(この身は星片・f14154)の姿は、槍を持って佇む歴戦の機会兵そのものだった。
彼は平時は農業プラントで働き、有事には兵士となって戦った。
その記憶は再起動後から始まっており、それ以前に何時から存在していたのか何も知らない。帝国製と思わしきナンバーを見る限り、他にも兄弟姉妹と呼ぶべき機体があったかもしれない。
メテオリテが知るのはただ『彼女』と、彼女が愛した白い花だけだ。
(年なのは気にせず参加させて貰います。私は花も好きですし、今でも夢を持つ身です。夢の叶う星屑にも白い花片にも全く心惹かれぬ訳ではないのですよ)
メテオリテの赤いセンサーアイが動くと、その下のディスプレイには気合いの程を示して『Fight!』という電子文字が浮かんだ。
(私はいつかどこかで花を咲かせたい。ここの花片と同じ、白い花です)
機械のボディにしまい込んだ種は、いつかどこかの星に撒かれることを夢見て眠っている。
種を植えるための罅割れた円匙は、いつかどこかの地に彼女の──を埋めるために持っている。
(花を咲かせたところで約束が果たされないことは、分かっています。でも彼女と二人、語った夢を叶えることは出来ますから)
メテオリテは古びた機械の片手を夜空へと伸ばす。
一年でも二年でも。十年でも百年でも。
掴んだその手に残るものが、望んだものでなかったとしても。
ふと四輪の付いた足下を見下ろすと、白いミュゲの花が一輪、首を擡げている。
『花咲く星で待っていてと言ったでしょう?』
貴方に会いに来たのだと幻は告げ、星の瞬きと共に消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
ハンドレッド・コール
花弁採るぞー!(虫捕り網ブンブン)
『ハンドレッド 、網を振り回すなら周りをよくみて』
フローラは叶えたい夢ってある?
『ううん…ハンドレッドは?』
宇宙一綺麗な花畑とか、金銀財宝とか結婚成就とか…
『願い事、多すぎ』
多い方が楽しくなるだろ。あと、一番に叶えて欲しい夢ってのはあるぞ!
『それは?』
フローラを「本当の」女の子として存在してもらう!
『……わたしは、ハンドレッドの一部に過ぎないわ。あなたからもらった名前と、あなたを守りたいという思い…わたしが「わたし」である証。これ以上、願うものなんてない』
健気だなオイ!
(フローラは痩せ我慢してるが…やっぱオレは、フローラが自由に振る舞えるようにさせたいぜ)
●花を抱きしめて
「花弁採るぞー!」
『ハンドレッド 、網を振り回すなら周りをよくみて』
ハンドレッド・コール(双縁銃士・f00371)が気合いも充分に虫取り網を振り回すと慌てて女が窘める。
だがその女の姿を見た者は誰もいなかった。この星空の下にも、この世のどこにも。
多重人格者であるハンドレットの中にはフローラという娘がいた。気立てのいいしっかり者で、気まぐれでアウトローなハンドレットのツッコミ役である。
「フローラは叶えたい夢ってあるか? ‥え、オレ? オレはあるぞ。宇宙一の花畑とか、金銀財宝に結婚成就とか。多い方が楽しくなるだろう?」
フローラに聞き返されるとハンドレットは楽しげに答えて網で星を捕まえる。だがその網のどこにも星の欠片はない。
「あと一番に叶えて欲しい夢ってのはあるぞ! フローラを本当の女の子にして貰う!」
降りしきる星屑の幻影の中に本物の花片が混じっているというのなら、心の中にしか存在しない彼女だって本当の女性になってもおかしくはない。
そう力説するハンドレットの『本当』という言葉に込められているのは、オブリビオンによって踏み躙られた故郷の花、その化身のような娘を生み出さねば一人生きてはいけなかった強い怒りと深い悲しみ、やり場のない愛──。
『‥‥わたしは、ハンドレッドの一部に過ぎないわ。あなたから貰った名前と、あなたを守りたいという思い…わたしが「わたし」である証よ』
それ以上望むものなどないと言う彼女の言葉にハンドレットは尚のこと奮い立つ。
(フローラは痩せ我慢してるが‥‥やっぱオレは、フローラが自由に振る舞えるようにさせたいぜ。そうしたら──)
白い花片に変わった幻影の星屑をこの手に握るように、本当の女性になったフローラを目一杯抱きしめるのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリヤ・カヤラ
いつか叶って欲しい夢なら、
父様と母様がまた出会えますようにかな。
病気で亡くなってしまった母様と、
健在のヴァンパイアの父様がまた出会える可能性は
あるのかすら分からないけど。
父様と母様は私から見ても羨むくらいに愛し合っていたし、
二人がまた出会えるなら、私は何をしてでも叶えたい。
そして、出来るならまた家族で過ごせたら…。
なんて、ヴァンパイア…オブリビオンを倒す
猟兵になった今の私には、
それこそ幻影を掴むくらいの不可能な夢でしかないけど。
私のは無理でも、
この中の誰かの夢が叶うと良いな。
アドリブ・絡み歓迎
●昼と夜の娘
私は夜の血を引き、夜を討ち尽くすために生きる者。
私は昼より生まれ、昼を取り戻すために生きる者。
ダンピールのヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)にとって夜とは父であり、昼とは母のこと。
人と人の宿敵であるヴァンパイアとが交わり生まれたのが彼女であり、真夜中の青の髪と太陽の金の瞳を持って生まれた。
(私が願うとすれば、父様と母様がまた出会えますように、かな。病気で亡くなった母様が生き返る可能性なんてあるのかすら分からないけれど)
ヴィリヤは己の髪と同じ色をした空から降り注ぐ小さな光へと手を伸ばす。
禁忌の婚姻はヴィリヤを生み出し、愛し合う二人の姿は子供心にも眩しかった。
けれど神様は非情で愛し合う二人を認めなかった。
そして運命は残酷で寄り添う二人を引き離した。
神には願えぬ祈りだからヴィリヤは星に願いを託す。
(出来るならまた家族で過ごせたら‥‥なんて、オブリビオンたるヴァンパイアを倒す猟兵になった私にはそれこそ幻影を掴むくらい不可能な夢でしかないけど)
ヴィリヤは降ってきた星の欠片を捕まえてみるけれど、捕まえたと思ったものは手の中にはない。
やはり幻は幻ではないのだと思いながら夜の涙のような星の滴を身に浴びる。
力を付けたら俺を殺しに来い──そう言って自分を新たな世界へと送り出してくれた父は、母に似た私に何を想っていたのだろう。
無残に砕け散った愛の欠片は戻らない。美しかった在りし日の姿を忍ぶだけだ
(母様の元に行きたかったのかな)
人は死んだら星になると言う。闇夜の王も死んだら輝く星になれるのだろうか。
昼と夜の娘は幻の星を見つめ続け、自分以外の誰かの夢が叶えばいいと祈った。
大成功
🔵🔵🔵
ロダ・アイアゲート
星屑を拾った者は願いが叶う…ですか
叶わない願いを持つ者としては、それがたとえアトラクションと分かっていてもすがりたくなってしまいますね
(夜空に手を伸ばす。星屑に触れようとするが直前で腕を降ろし)
でも…私が欲しいのは星屑ではない…
私が欲しいのは…マスター(製作者)…あなたが私を必要としてくれる、その現実だけでいい
それ以上は不完全な私には大きすぎる願いだから…
けれどそれも叶わない
そんなことは自分が一番よく分かってる
きっとこの星を掴んでしまったら…
もっともっとと欲してしまうから…
だから…
(腰を下ろして星の降る夜空を見上げる)
アドリブ歓迎
●未完成な星
ロダ・アイアゲート(天眼石・f00643)には願いがあった。叶わない願いが。
だけど夢見ることは許されるだろうか。叶わぬ夢だとしても。
(星屑を拾った者は願いが叶う‥‥ですか。叶わない願いを持つ者としては、それがたとえアトラクションと分かっていても縋りたくなってしまいますね)
ロダは星屑拾いに夢中になる人の群れに交じり、夜空に手を伸ばすけれど金属の指先が光に触れる直前、その腕を下ろした。
たくさんの幻の中にほんのわずかだけ混じるという白い花。それを探すことすら諦めたのは、星屑が欲しい訳ではないから。
(私が欲しいのはマスター‥‥あなただけ。あなたが私を必要としてくれる、その現実だけでいい)
未完成なまま目覚めてしまった自分にどんな価値があるのだろう。
人に似せながら人ではない自分にどんな意味があるのだろう。
自分というミレナリィドールを作ったその人が、何を想い、何を願って自分を生み出したのか。答えをくれるのも求めてくれるのも、ただその人だけだから。
(それ以上は私には大きすぎる願いだから‥‥きっとこの星を掴んでしまったらもっともっとと欲してしまう‥‥)
もっと側にいさせて欲しい。
もっと私を欲して欲しい。
もしも私が『人間』になれたなら、もっとあなたと──。
(あなたも私と同じ、不完全なものなのですね)
腰を下ろして見上げる星空からは幾つも幾つも星屑が降ってくる。
星にはなりきれずに零れた屑は、未完成なままの自分に似ていた。
大成功
🔵🔵🔵
カチュア・バグースノウ
ミュ…口にしちゃいけなかったわね
…宇宙に咲く花ってとこかしら。すごく綺麗
夢は毒、ね
眠る間に見ることを言うのか
それとも現実で追いかけるのを言うのかしら?
あたしは眠る夢はあまり見ないけど、たしかに毒よね。見たくないものも強制的にみせられるから
甘い夢なのも確かね
現実で追いかける夢を毒と言われたら…しんどい
あたしには叶えたい夢がある
猟兵はそのついで
それは、毒とは言わないと思う
だっていつか捕まえるし
だれがなんと言おうとも
…やっぱり眠る夢が毒なのかしら
難しいわねー(ムフー)
でも人によっては追いかける夢も毒なのかもね
石油王と結婚したいー、とか
こういう風に景色を見ながら物思いに耽るのもいいわね
アドリブ歓迎
●夢と毒
「夢は毒、ね。確かにミュ‥‥口にしちゃいけなかったわね。宇宙に咲く花ってとこかしら。すごく綺麗」
カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)は夢を掴もうとする者ではなく、夢見る者を見つめる者としてそこにいた。
宇宙船という閉鎖空間で見た目だけ銀河を模倣し、地上に咲く花を星の欠片に見立ててわずかに降らせる‥‥。ホンモノを求める人を踊らせ、手にしたそれは毒だという皮肉を、ここで口にするのは野暮というものだろう。
例えそれが実体のない星の欠片、毒を孕んだ白い花片あっても、夜の帷に穿たれた無数の煌めく点から降っては消え、消えてはまた降ってくる様は間違いなく美しい。
そして手を差し伸べもせずにただ見上げるエルフの姿は、銀河の花畑からはぐれて打ち捨てられた一輪の花のようでもあったのだが。
(あたしは眠る夢はあまり見ないけど、たしかに毒よね。見たくないものも強制的に見せられるから。甘い夢なのも確かね)
眠って見る夢と醒めて見る夢。
カチュアが眠るとき夢は見ないけれど、起きているときに見ている夢はある。だから現実に追いかける夢を毒と言われればしんどいけれど、毒だなんて思わない。
だっていつか必ず捕まえてみせるから。
誰が何と言おうが叶えてみせるから。
猟兵をやっているのも夢のついでだ。
(‥‥やっぱり眠るときに見る夢が毒なのかしら。難しいわねー。人にもよるけど石油王と結婚したいーとか、そういうのなら毒なのかもね)
カチュアは夢と毒について考えながら、青い瞳を輝かせて星を見る。
だが見た目に反して豪放磊落な彼女は気づかなかった。星光を浴びて輝く自分の白い髪に、毒だというその小さな鈴の花がそっと絡まっているということに。
大成功
🔵🔵🔵
桜雨・カイ
夢…叶えたいもの…やっぱり主に再び会うことでしょうか
人の身を得た自分を見て、驚くでしょうか?…それとも。
おいていかれた事より、あの人を独りにさせてしまった事が辛いです。
あの時は二人(妻と息子)の亡骸を抱いて泣き続けるあの人に何もできない人形でした…
でも今なら少しはあの人の苦しみを癒やせるでしょうか。
主が幼い頃、一緒に色々な所へ行こうと言ってくれました
子供の元に現れるサンタという優しい存在とか、
私の他にも物から人の身を得た人達に出会えたとか、
あなたの知らない世界の話を少しだけできるようになりました
人形の私に「話したい事」ができたんです
あなたに会って話したいんです
そしてそばにいたいです
●星は巡る
東から西へ、夜から朝へ。
星は巡り、月日が巡る。
桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は満天星を見上げながら、この虚ろな星達もまた巡ったりするのだろうかと考えた。
操り人形のヤドリガミであるカイは、主の幼い頃から共に年月を過ごし、どこに行くにもいつも一緒で成長してからも増えた家族を見守ってきた。
だけど慕った主はもういない。
この無数の星の中にもいない。
(主‥‥主もどこかで見ていますか? 私は人の身を得て、同じヤドリガミとなった仲間と出会い、主の知らない世界にもたくさん行きました。それから子供に玩具を配るサンタにも会いましたよ)
カイが夜空に向かって話しかけると、頷くように星は瞬き、彼の元に光る欠片を降らせる。
だけどその星の滴は涙にも似て、絡繰りの身体に染みこむように触れた途端消えていくのだ。
(あなたに会いたいです。会ってもっと話したいんです。そして側にいたいです)
消える前、主は妻と子の亡骸を抱いて泣き続けていた。
あの時もし自分が喋れたのなら、慰めることくらい出来ただろう。
あの時もし自分が動けたのなら、独りになどさせなかっただろう。
(人の身を得た自分を見たら驚くでしょうか。今なら少しはあの人の苦しみを癒やせるでしょうか。だから──)
カイは降り注ぐ星の涙雨を浴びながらドームいっぱいに広がる星空に願いをかける。
星が再び巡るように、もう一度あの人に巡り会いたいと。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフ・ヴュンシェン
腰を下ろして景色を楽しもう
「夜空の中にいるかのようだな」
星屑が降ってくるというのも夜空の中にいなければできないこと
俺の世界ではそういうの、なかったからな
手を差し伸べてみて、幻の星屑の雨を楽しむ
(あいつにも見せたかったな)
亡くなったあいつが頭によぎる
俺達の世界にない文明がある、凄いよなって話したかった
…猟兵になって友達と呼べる人は何人かできた
今楽しいと思う
けれど、今が充実してる分、自分だけ生き残ったのが、あいつに少しだけ申し訳なくて
(あいつは要らない気遣いと怒るだろう)
星屑を見る
(なら、オブリビオンは骸の海に沈めるさ)
それが決めた道
誰かに幸せが宿るよう願った道だ
ここを狩場にしてる奴も必ず仕留める
●星の海
「夜空の中にいるかのようだな。いや、海か‥‥」
見上げる星空は腰を下ろした分だけ高く見えて、差し伸べた手が泡のように消えゆくのをヴォルフ・ヴュンシェン(願う者・f13504)は楽しんだ。
星屑が降りしきるという光景を夜空のない彼の世界では見ることが出来なかったから。
(あいつにも見せたかったな‥‥俺達の世界にない文明があるのを凄いよなって語りたかった)
ヴォルフは星が降らす幻の雨に打たれながら、亡くした親友を思い出す。
もし友がここにいたなら、星空を見上げて美しいと言っただろう。
もし友が生きていたなら、星屑を求めて我先に争ったことだろう。
だけど無二の友、心の半身はもういない。
裂かれた腹には傷が与えられ、一緒にいた友は奪われた。
(今確かに俺は充実した日々を過ごしている。猟兵になって友達と呼べる人は何人かできた。でもな‥‥いらぬ気遣いと怒るだろうが、俺だけが生き残ったことが、申し訳無いと思ってしまうんだ)
楽しければ楽しいだけ、幸せなら幸せなだけ、後悔が心を責め苛む。
星の瞬く空はどこか夜の海に似ている。
魂が星としてあるのなら、手向けの花代わりにオブリビオンの骸を捧げよう。
(オブリビオンは全て骸の海に沈めるさ。それが俺の決めた道、俺達の分も誰か幸せが宿るようにと願った道だ)
ヴォルフは誓い、触れた幻の光を握り込む。
この場を狩り場にしている奴も必ず仕留めるのだと。
大成功
🔵🔵🔵
渡辺・紅牙
暗い星の海
その幻想の中降り注ぐ星の雨
小さい頃から夜に見上げ眺めてた場所がこんな近くに
話には聞いていたけれど、世界が違うと文字通りに目に映る世界が変わるモノだね
【WIZ】
師匠とも一緒に見たかったな
でもあの人豪快かつ巫山戯る時も全力だったから
本物があると知ったら全力虱潰しで探し回ってたかもしれない
だけどあの人はもう居ない
星の雨に伸ばしかけた手をゆっくりと引っ込め……
『蘇った過去は「厄災」だ。相手が誰だろうと倒せ
それがあたしだったとしてもだ』
頭では判ってはいる
これは叶ってはいけない願い事だ
だけど願わずにはいられない
もう一度師匠との……あなたとの邂逅を
師匠の言葉を思い出し
中途半端に伸びた手を簪へ
●星の雨
模倣の銀河から星が降る様は夜の霧雨にも似て、こんな世界もあるのだと渡辺・紅牙(求道の風来者・f06086)は眩しく見上げた。
幼き頃から一人見上げていた夜空は、師匠と呼んだ女と出会うと全く違ったものに見えた。彼女は悪童の妖狐に新しい技を教え、知らぬ世界を見せてくれた人だった。
そして今また一人見上げる夜空に、あの人ならばきっと本物の星屑を探すだろうと思う。彼女は何事にも豪快で巫山戯るときも全力で取り組む人だったから。
(話には聞いていたけど凄いモノだね。師匠とも一緒に見たかったな。あの人がここにいたらきっと虱潰しで探し回っただろうな)
だけど共に見たいと願うあの人はもういない。
この星の下のどこにも、この世界のどこにも。
夢を叶えるという星の雨に伸ばしかけた手は何も掴めぬまま力なく下ろされ、師匠が残した言葉を思い出しては禁忌の願いを噛み殺す。
『蘇った過去は「厄災」だ。相手が誰だろうと倒せ。それがあたしだったとしてもだ』
過去から甦るのは倒すべき敵だということは理解している。
たが師匠を恋い慕う情が心の奥底で復活を、邂逅を願わせる。
(もう一度だけ‥‥もう一度あなたと巡り逢いたい)
諦めきれぬ想いが指先を動かし星屑に触れようとするけれど。
紅牙はぎゅっと拳を握って耐え、星屑を掴む代わりに鉄の簪に触れた。
蝶の簪に彩られたあの人はもういない。
だけど魂が天に上るならこの星空のどこかに。
紅牙は空から師匠が見守っているのだと言い聞かせ、星が降らす涙雨を見つめ続けた。
大成功
🔵🔵🔵
ユーノ・ディエール
※他PC様との連携アドリブ歓迎
POW
一般人に変装して
アトラクションを楽しめばいいのですね
イベント事は余り馴染みが無いのですが
星屑に見立てた花弁を拾う……頑張ります!
決して叶わぬ、失ったもの
私の故郷、仲間達、滅ぼされたコロニー
クルセイダーを奪って、遠くまで逃げて来た
そして銀河帝国と戦って、ずっと戦って
ついこの間、あの戦いに一応の決着がついた
それでも……もう、誰も帰って来ない
願いが叶うなら私は、皆に会いたい
夢とか幻でも、少しだけでもいい
私は生きて、ここにいると伝えたいです
……それじゃあ本気で花弁を探しましょう
情報収集で事前にこれまでの獲得情報を手に入れ
それを基に念動力と早業で効率良く花弁を探します
●宝石の墓場
イミテーションですらないホログラムの星は肉体を失った魂のようで、生きた証を主張するようにドームの天井で煌めいていた。
銀河を構成する一粒一粒にもかつて名があったことをユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)は知っている。
ユーノは銀河帝国から高エネルギー結晶体として搾取されていた民族の末裔であり、故郷であった船団は滅ぼされたから。
一人宇宙挺で逃げ出した後は銀河帝国の支配に抗って戦い続け、多くの戦友達が宇宙に命を散らしていったから。
(星屑に見立てた花片を拾う……まずはアトラクションを楽しめばいいのですね。頑張ります!)
いつもの宇宙戦用の旧式ユニットから一般人らしい細いベルトの付いた白いワンピースに着替えたユーノは、サイキックコアで念動力を増幅すると選別を始めた。
(事前に得た情報では本物が混じる確率は1万分の1‥‥しかも数分に一度。だから誰かが取った直後には降らない)
星屑吹雪を意図的に動かせるかどうかを試みれば花弁か映像か見極められるだろう。
(願いが叶うのなら皆に会いたい。夢でも幻でもいい。長い戦いは終わったのだと、私は生きてここにいると、皆に伝えたい)
ユーノは星となった誰かが自分の元に来てくれることを願って一心に花片を探す。けれど見つけたそれは遠く、遠く、彼女の手には届かず、別の誰かの手に落ちた。
夢を手に入れた者を羨みながらユーノが仮想の宇宙を見上げると、星屑は瞬きをもってユーノに語りかける。
地上でどれだけ手を伸ばしても星に届かないように、失われてしまった命は戻らない。
だけど触れられずとも確かにそこにいて、いつまでもお前を見ているのだと。
ナノスキンジェルでクリスタリアンの輝く肌を隠した手を宝石の墓場‥‥銀河へ翳すと、幻の星達が優しく撫でるように触れては消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
カーティス・コールリッジ
【POW】
はじめておれがみたもの
それは、水槽越しのせかい
それから、ひかりのない星の海
ラボで生まれたおれは『つくりもの』で
戦うためだけに存在するものなのだと
育成プログラムが描出する『おとうさん』と『おかあさん』が言っていた
だからこそ、おそろしくなった
平和が齎されたこの星海に、おれはいていいのかなって
でも
おれを『カーティス』と名付けた船のみんなは
おれを『なかま』だって認めてくれたから
舞い散る花弁、幾つも瞬いては消えるひかり
映し出される『地上から見た星々』のうつくしさに息を飲んだ
手を伸ばす
それが、おれの『みらい』へのしるべになると信じて
だいすきなこのせかいへ
もっと、もっと、恩返しができますようにって
●水槽の宇宙
生まれたときは水槽にいて、まるで宇宙に浮かんでいるかのようだった。
それが今は宇宙にいて、まるで海原を泳いでいるかのよう。
ラボ生まれのカーティス・コールリッジ(CC・f00455)にとって宇宙は、命を育む容れ物であると同時、存在を証明するための戦場である。
だから地に足を付けてただ星を仰ぐという行為は、ひどく彼を不安にさせた。
(『おとうさん』)
カーティスはドームに映し出された偽りの宇宙を見上げた。
(『おかあさん』)
そして人口羊水の泡のような星屑達が降るのに手を伸ばした。
彼に知識を与えた両親プログラムは彼に愛情とぬくもりを与えはせず、彼に感情と信頼を与えてくれたのは『カーティス』と名付けてくれた船のみんなだった。
降り注ぐ星屑は宇宙に散った命のようで、触れただけで儚く消える。
それでも自分と同じ『つくりもの』でも、仰ぎ見る星達は小さくとも精一杯光を放ち、息を飲むほど美しかった。
(みんな‥‥俺は今もここにいていいんだよな? ‥‥って、『ほんもの』?)
銀河帝国との戦争が終わり平和が齎されたこの星海に、自分が生きる意味はあるのか‥‥問いかけるカーティスに夢幻の星達が優しく答えて肩に停まる。
(夢は本当にあるんだ。掴めるものなんだ。いつか大地に足を付けて星を仰ぐ未来へと続いているんだ。なあ、みんな!)
カーティスは草原に見せた展望室の床にしっかり足を付け、そしてもう一度天に手を伸ばす。
大好きなこの世界に御返しが出来ますようにと願って。
今度は自分が未来への『しるべ』となるのだと信じて。
大成功
🔵🔵🔵
マリス・ステラ
【WIZ】ゆったりとした時間を過ごします
「星には誰しも一度は手を伸ばす……」
虚空に向けて手を伸ばしても、もちろん星を掴むことはできません
それでも手を伸ばさずにはいられない……それを夢という、マレークは詩人のようです
彼の言葉を思い出して頬がほころぶ
夢の、運命の欠片を、星屑を私は掴むことができるでしょうか?
もし夢を叶えたとしても、それは次の夢の始まりです
果てない願いこそが、私たちの真実だから……
そっと星を見つめながら『祈り』を捧げます
「主よ、憐みたまえ」
世界が終わるその前に、星に手を差し出しましょう
尽きない愛の雫が響き渡るように
手のひらに乗せたら羽ばたくでしょう
●夢の終わり、そして始まり
「星には誰しも一度は手を伸ばす‥‥」
この場所へ自分を導いたマレークを、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は詩人のようだと頬を綻ばせた。
どんなに手を伸ばしても天のいと高きところにある星には届かないし、自分だけのものにすることも出来ない。
けれどそうと知りながらそれでも手を伸ばさずにはいられないものだと言われれば、確かにその星が偽りでも手を伸ばしてみたくなる。
(夢が叶うという星の欠片、運命の一片を私は掴むことが出来るでしょうか? でももし夢を叶えたとしても、それは次の夢の始まりです)
瞬く星が朝に消えても、また次の晩には星が輝くように、果てない願いこそが真実。だからマリスは降り注ぐ星屑に手を差し出しながら、天の器に散りばめられた星を見つめ、祈りを捧げた。
「主よ、憐れみたまえ。この星の欠片が愛の滴となって人々の心に染みこみますように」
曜変天目の器の星海から溢れるように輝きは放たれ、祝福が人知れずかりそめの銀河に集う人々を包み込む。
夢を追うことに疲れても、夢が潰えたのだとしても、夢はまた見ることが出来るから。
星屑を掴むのを諦めかけた人達が再び天に手を伸ばすのを見つめながら、マリスは手の平に落ちた星屑を見る。
光の悉くは瞬く間に儚く消えていったけれど。白い花片がひとひら、花を生けた水盆に浮かんでいるかのようにマリスの手の中に揺らいでいた。
大成功
🔵🔵🔵
マリアドール・シュシュ
リュカ◆f02586と
アドリブ◎
幻影の星屑に交じる甘い毒(ゆめ)の花弁を拾いに
「リュカ!偶然ね!(嬉々)
やっぱりマリア達を繋ぐのは星だったのよ。リュカも星屑を求めて此処に?」
果て無き願い
思い描く夢
幸せに満ち溢れる楽しくて平和な世界を、守っていけますように
猟兵は光
光は決して消えることはないから
この希望(ゆめ)は叶えられると(貪欲に二つの星屑を掴む
マリアの世界に悲しみや憎しみは存在しないのよ(全て星芒の眸に隠蔽
「まぁ、そうだったの。
…バレンタインの時にリュカに渡したルーペがきっと助けになってくれるのよ。なんて。
絶対見つかるわ。あなただけの夢が。もし見つかったら教えて頂戴?(そっと一握の星滴を渡す」
リュカ・エンキアンサス
マリアドール(f03102)お姉さんの声が聞えてそっちのほうを向く
偶然だね、って軽く片手をあげて
……んー。そうだねえ
星屑を拾えたらいいな、とは思ったんだけれど
俺は夢とかそういうものとは無縁で生きてきたから
そんな俺が、星屑なんて拾えるわけがないなって漠然と思ってたとこ
お姉さんは?何か夢なんてあるの?
…そう。なんだか力強くて、素敵な夢だね
そう、言い切れるところが、俺はすごいと思う。
んー…。そうだね。俺はそこまで強くはないから
もう少しスケール小さくてもいいから、何か夢が持てるといいな
はは、ありがとう。…ん、もらっていいの?
なんだか貰ってばっかりだな。お返しが出来ない
でも、ありがとう
※アドリブ歓迎
●夢の標
少年の首に巻かれたマフラーは夜更けの星座を描き、天を見上げる青い瞳には空想銀河が映る。
星から星へ、世界を渡り歩くリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は、はらはらと降ってくる星屑を掬おうと両手を皿にするけれど、己の名を呼ぶ声に振り返って片手を挙げた。
「リュカ! 偶然ね! あなたも星屑を拾いに?」
「うん、まあ‥‥。マリアドールお姉さんも?」
喜々として駆け寄ってくる華水晶のクリスタリアンの少女が、自分の元に下りて来た星の精霊に見えたなどとは口にしないけれど。
リュカは自分と同じ歳の、だけどお姉さんと呼ぶ人の姿にほんの少しだけ頬を緩めた。
「やっぱりマリア達を繋ぐのは星だったのよ。それはそうとリュカにも叶えたいものがあったのね」
マリアドールは星光を凝縮して嵌め込んだ金色に輝く瞳を瞬かせ、夜空色のドレスの裾を翻してリュカの隣へと腰を下ろした。
「‥‥んー‥そうだねえ、星屑を拾えたらいいなとは思ったんだけど。俺は夢とかそう言うものと無縁で生きているからさ‥‥星屑なんて拾える訳がないって漠然と思っていたとこ」
戦場育ちの少年兵が歯切れ悪く答えると、マリアドールは花を閉じ込めた玻璃のランタンを傍らに置き、白い手に星硝子の破片を受け止めた。
「私は『幸せに満ち溢れる楽しくて平和な世界を、守っていけますように』、かしら。猟兵は光だもの。光は決して消えることはないから、夢は必ず叶うわ」
消えゆく手の平の中の幻さえも愛しげに見つめる彼女の言葉は強く眩しい。
だけど少年は知っているだろうか。
彼女に世界を教えてくれた人の名も姿も、瞼の帷の下に淋しさごと覆い隠されていることを。
だけど少年は気づくのだろうか。
過去にあった全ての悲しみ苦しみが、星芒の瞳の中に想い出ごと封じられているということを。
「なんだか力強くて、素敵な夢だね。そう、言い切れるところが俺はすごいと思う。俺はそこまで強くはないし、もう少しスケール小さくてもいいから、俺も何か夢が持てるといいな」
「まあ、そうなの。リュカはこれから夢を見つけるのね。それなら私がバレンタインにあげたルーペが助けになってくれるはず。絶対見つかるわ。あなただけの夢が」
マリアドールがそう言って手の平の中から白い星屑の一片を軽く指に摘まんでリュカの手の平に落とす。
「何だか貰ってばっかりだな。それに何もお返し出来てない」
「いいのよ。何も返さなくても。でも、そうね‥‥もし夢が見つかったら教えて頂戴?」
マリアドールの言葉にリュカは頷くと、彼女に譲り渡された幸運の印、夢の兆しを大切に旅行鞄にしまい込んだ。
夢を見つけるその旅路の、大切な道標として。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クラリス・ノワール
故郷の近くにこんな綺麗な世界があったなんて…驚きなのです。
幸せはこんなに近くにあったんだ…なんて、まだ旅立ってもいないのに終わっちゃダメなのですっ。
こんな綺麗な世界、絵に描いてみたいけど、
クラリスの腕ではまだ足りないから、せめてその綺麗さを手の中に。
ちょっとずるいですけど、UCで腕や体を伸ばし見極めて本物を手に入れます。
全力でないと本当に欲しい夢は手に入らないですから!
でも他の人の邪魔にはならない様には十分気を付けるのですよ。
幸せは、独り占めできるものじゃないですものね。
綺麗な世界を楽しむ幸せが絶望に変わるなんて、悲しい事はダメなのです。
星を手にして、星降る場所も守らないとですよね!
絡み歓迎
●黒い流星
夜よりも昏く、宇宙よりも黒い。
それがブラックタールの少女・クラリス・ノワール(ブラックタールのゴッドペインター・f07934)で、夜空を映したドームの中では闇に紛れてしまっていた。
けれどクラリスの心は今、喜びに打ち震えている。
(故郷の近くにこんな綺麗な世界があったなんて‥‥驚きなのです。幸せはこんな近くにあったなんて)
クラリスが故郷を出たのはまだ見ぬ美しいものと出会うためだ。
黒色以外の様々な色、液状以外の様々な形。絵を描き続けることでそれをいつか自分のものに出来ることを願っていた。
(クラリスの腕ではまだ足りないから、せめてその綺麗さを手の中に入れてみたい。手に取ってもっとよく見てみたいです。だからちょっとずるいけど、全力でないと本当に欲しい夢は手に入らないですから!)
クラリスはユーベルコードで自身の身体を伸ばすと、ドームの天井を飛び、星屑に触れて本物か否かを見極めようとする。他の人達の邪魔にならないよう少しばかり気を配って。
だって幸せは独り占めできるものじゃないから。
(こんな綺麗な世界を楽しむ幸せが絶望に変わるなんて‥‥悲しい事はダメなのです。星を手にして、星が降るこの場所も守らないとですよね!)
クラリスの手に、顔に、体に星屑は光のシャワーとなって降り注ぎ、星空を横切る彼女を見た人々が流星だと叫ぶ。
いつしかブラックタールの少女は星の映像をその身に映し、願いを叶える流れ星となっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・アルゲン
星屑に願いか……
私は流星剣として人の願いを、主の願いを叶えてきたことがある
――願われる星の願いは誰に願えばよかったんだろう
過去に幾度と願ったことがある。でもそれは叶うことがなかった
だから今更願っても叶うはずもない
それに。もし、それらの願いが叶ったとしても今はそれを望まない
叶うことを望んではダメなんだ。そうしないと過去が変わってしまう
だから、けして叶わない願いは諦めるしかないんだ
でも、今から願うことが叶うことを望んでもいいのだろうか……
思わず、飛んでいる星屑に手を伸ばしてしまうくらいには
●流星の願い
ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は誰かが「流星」と叫ぶのを聞くと、ドームいっぱいに映し出された星空の中を流れゆく星の姿を探した。
ステラの身は流星の欠片で出来ている。
地上に落ちた星の名残り、隕鉄で出来た流星剣のヤドリガミたる彼女は、願いを叶えるという流星の伝説そのままに主の願いを叶えてきた。
時に戦場を切り拓く武力として。
時に運命を呼び寄せる媒介として。
(だけど願われる星の願いは誰に願えば良かったのだろう。何に願えば叶うというのだろう)
幾度となく願ったものは叶うはずもなく、願った気持ちの分だけ叶わぬ夢の空しさだけが増していく。
叶うはずもないものを今さら願えるはずもなく、もしも叶うのだとしても願っては駄目だと思う自分がいた。
過去は──変えられないもの。
受け止めなくてはならない現実。
だから諦めなくてはならないのだとしても。
未来は──変えられるものだから。
受け止めてくれる人がいるのなら。
諦めずに願うことを望んでもいいだろうか。
ステラは天に広がる銀河から滴るように降ってくるものを、星の涙のようだと想いながら手を伸ばす。
儚きものは手に落ちた瞬間に幻と消えたけれど、流星という言葉を聞いたとき、それを探すことを止めることが出来なかった。
(流星‥‥! 私は願ってもいいのか? また願うことを許されるのか? 私の願いは──)
流れ星と思ったものは夜空を過ぎる星を映した仲間の影。
だけど星屑を降り撒くように飛び去ったそれが、ステラには確かに流星に思えた。
大成功
🔵🔵🔵
逢坂・宵
なんとも風雅な催しですね
宇宙船内では星はそれこそ無数にあるというのに
はらりひらりと舞い散るミュゲの花を掴めば幸せが訪れるとは
とは言え僕は今でも充分幸せですから
これ以上を望んでしまうと、怖い気もするんですよね
じっくりと腰を落ち着けて、この光景を楽しむとしましょう
他の方々の邪魔にならないところに陣取りつつ
ひらひら舞うその眺めをじっくり鑑賞することにしましょう
……彼を連れて来ればよかったかもしれませんね
脳裏に思い浮かぶのは、藍色の髪の背の高い同族
こういうところも、一緒に楽しんでくれるでしょう
毎日振り回されて大変ですが
不思議と、彼といる時間は充実しているんですよね
●舞い踊る星を君と
はらりはらりと零れては光放ちて舞い落ちる。
ひらりひらりと翻りては風を孕みて舞い踊る。
逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が玻璃のような星片に手を伸ばしたのは夢を掴みたかったからではなく、花片に手に受け止めたのも幸福を得たかった訳ではなかった。
天の理を計る天図盤のヤドリガミは、星を懲らした真鍮色の魔杖を抱きながらこの風雅な推しを愛でていた。
彼の藍色の髪は闇を落とし込んで深いけれど、その同じ色した瞳は星を灯して少しだけ淡い。
星を愛し、星を計り、星を読んで告げる者──それがアストロラーベたる宵だ。
(なんとも美しい光景ですね。やはり彼を連れて来ればよかったかもしれません)
宵は同じ藍色の髪の同族を思い浮かべる。背の高い彼ならばもっと星を近くで見るのだろうかと。
彼と共に過ごす時の流れはめまぐるしくも穏やかで、不思議と振り回されることさえ楽しい。
(僕は今でも十分幸せですから、これ以上を望んでしまうと怖い気もするんですよね。でもそうですね、もし望めるのなら──)
宵は偶々手に入れてしまった白い花片を見つめながら願いを考える。
瞬き輝く星を君と眺めよう。
舞い踊る星を君と愛しもう。
砕け散る星さえも君と見送り、消え果てた星が甦りを君と祈ろう。
(せっかくですから土産にしましょうか。ミュゲには確か毒があるのでしたね。毒を喰らわば諸共‥‥なんて)
星の欠片に見立てた鈴蘭の花言葉は『幸福の再来』。花片が朽ち、夢が潰えても幸福はまた訪れる。
物に命宿らせし者達は美しき毒の花片、果てし星の残骸にも幸福の印を見るのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
白藤・今鶴羽
・降りしきる欠片へ手を伸ばす。掴むよりも差し伸べるように。
・望むものは。手を伸ばしても届かないけれど、手を伸ばさなければ掴めない。なのに、求めれば求めるほどその指先を弾いて、どこかへ逃げてしまうもの。
(物欲センサー…は、ちょっと違うような気がします、ね…?)
・或いは。見る夢など無いから掴めない…なんてことも、あるのでしょうか?
・(記憶が欠落していても)特に困らないのですが。
あえて望み、描くなら…未来、でしょうか、今日から明日、来年、さらにその先へと、途切れずに流れゆく先に存在し続けること。
●未来の花片
白藤・今鶴羽(ヤドリガミのゴッドペインター・f10403)は宇宙船の展望室に銀河が広がると、映し出された星々から降ってくる星屑に腕を差し出した。
手を伸ばし星の欠片を捕まえるのではなく、散りゆく夢の破片に手を差し伸べるように。
夢は手を伸ばしても届かないもの。だけど手を伸ばさないと掴めないもの。
掴んだと思っても指先から逃げるもの。だけど逃げてもまた追いかけてしまうもの。
(物欲センサー…は、ちょっと違うような気がします、ね…?)
人が望んだ数多の夢を描き出してきたペンタブのヤドリガミは、誰よりも人の夢を知っていそうで実はまるで分かっていない。
彼の感情は電算処理で、人の心の不可解さを処理するには未だ情報が足りていないのかもしれなかった。
(或いは。見る夢など無いから掴めない‥‥なんてことも、あるのでしょうか? 使い手の夢想を実現‥‥するのを助けますが。別に自分が望んだもの、ではありませんし)
星屑は今鶴羽の上に降るのに、何一つ掴むことの出来ぬまま幻の如く消えていく。
それは映像だからではなく、自分に夢がないせいではないかとふと考えた。
(別に記憶が無くても特に困らないのですが。あえて望み、描くなら…未来、でしょうか)
デリートされたメモリは復元することが出来ない。
だけど今日のこと、明日のこと、それからさらにその先のこと。途切れずに流れゆく時の先に存在し続けること。
(おや? これは、ミュゲ‥‥じゃありませんね)
古風な名前のヤドリガミは、足下の花片に気づいて指に摘まみ上げる。
それは鈴蘭ではなく、白い藤の花片であった。
大成功
🔵🔵🔵
ファン・ティンタン
【WIZ】星に願いを
銀河大戦から時も経って、現地も落ち着いただろうから、観光がてら行ってみようか
星の欠片、ね…
そう言えば、流れ星に願い事をって風習、何が起源だったかな…
願いという願いは少ない
亡き主の死の手掛かり、『古王』なる者に関わった者を探して、辿り、復讐する
人様に誇れる願望ではないけれど、唯一人の主を失った刀が永らえるには、このくらいしか執着出来る事柄がないのだ
意思なんてなければ、こんな面倒な感情を抱くこともないのだろうけれど…
骸の隣で幾年も泣き、枯れ果て、涙が干上がって生まれたモノが、私
一矢報いる、強固な意志は白の一振りの魂に絡み、侵蝕し、不可分となった
星に、手を伸ばす
願いを、聞いて頂戴
●右目の願い
「願いを、聞いて頂戴」
ファン・ティンタン(天津華・f07547)は銀河大戦以来の宇宙で流れ星に出会った。
それは身体を伸ばして天を駆け回る星を映したブラックタールの少女で、それを見つめる星の名を持つ同じヤドリガミの女剣士がいて、ファンはそんな二人を遠巻きに眺めなから、流れ星に願いを掛けるという風習がどこから来たのだろうと考えた。
だけどいざ自分が願うとなると、それは慟哭と怨念が渦巻く激情のなれの果て。
真白き護刀をこの世に繫ぎ止め、意志を持たせながらも支配するのは渇いた執着だ。
今は亡き主だった少女を死に至らしめた『古王』なる者は未だファンの前に姿を見せない。彼の者の行方を辿り、探し出して一矢報いる‥‥それだけがファンの全てなのに。
(この星達はあの日の私に似ているのね)
流れ星が去った後の銀河には星の骸が転がり、宙に留まれも出来ずに次から次へと零れ落ちる。
ファンは為す術もなく泣きじゃくるだけの星を見つめて手を伸ばした。
(この星屑はあの日の涙に似ているわ)
それはまるで主の骸の隣で幾年も星が巡るまで泣き続けた月日の、止め処なく流れる涙のようで。
ファンの指先に星屑が触れると、干上がるように瞬く間に消えていった。
涙は涸れ果て夢幻の星屑もやがて尽きる。復讐の刃に希望を見出すことは許されないけれど──。
「聞いて頂戴。叶えてくれとは言わないから。ただ聞いてくれるだけでいい。私の願いは──」
願いは未だ開かれぬままの右目の中。
赤い左目は未だ主の血の色をしていた。
大成功
🔵🔵🔵
鶴澤・白雪
どうせ囮にされるなら掴めるかどうか運試しでもしてみようかしら
あたしの『夢』が花になれるかどうか…
あたしはあたしが嫌い
本当は誰かに助けて欲しいのに人を信じられなくて距離を置いてしまう自分が滑稽
いつも強がって伝えたい気持ちもろくに伝えられない自分が大嫌い
だけど、それじゃダメだって気づいたの
ちゃんと気持ちを込めて素直な想いを伝えられるようになりたい
あたしに親切にしてくれる人たちにちゃんとありがとうって伝えたいの
すぐには難しくても変わっていけると信じたい、頑張りたいの
だからあたしの花は毒花じゃないんだって信じさせて
貴方も『冬を乗り越え春を告げる花』だから、掴めたらそんな夢も叶えられると思えるわ
●春告げの星
赤い瞳が銀河から振ってくる白く淡い光を見つめている。
クリスタリアンである鶴澤・白雪(春秋パラドックス・f09233)のレッドスピネルの瞳に、銀光纏って舞い落ちる星屑は降り積む白い雪にも見えた。
(どうせ囮にされるなら運試しでもしてみようかしら。あたしの『夢』が花になれるかどうか‥‥)
白雪はその名の如く真白く穢れなき雪そのままの美しさを湛えていたが、反面態度も冷たい雪のようで、人々からは白蛇か雪女のように怯えられてもいた。
だけどそれもまた雪積もる大地の上のこと。芳しく人を魅了する花は未だ種のまま大地に眠っている。
(あたしはあたしが大嫌い。本当は誰かに助けて欲しいのに信じられなくて距離を取ってしまう。いつも強がって気持ちもろくに伝えられない自分が大嫌い)
白雪は掴んでは消える星屑に、そして人と素直に接しられない自分に苛立つ。だけど今のままじゃこれまでと同じ。掴めないからと諦めたら終わり。
(ちゃんと気持ちを込めて想いを伝えられるようになりたい。あたしに親切にしてくれた人にちゃんとありがとうって伝えたいの)
すぐは無理でも変わっていけると信じたい。頑張れば夢はいつか叶うのだと思いたい。毒の花ではないのだと──
何十回目かの挑戦が空振りに終わったとき、横から白い花片を乗せた緑の手の平が伸びた。それは冬を乗り越え春を告げる花。無表情な星がくれた星屑に白雪が赤い目を瞬かせる。
「あ、‥‥」
赤い花が一輪、銀河の下で綻び始めた。
大成功
🔵🔵🔵
プラシオライト・エターナルバド
夢の花見に参りました
適当な場所に座って、道具も力も使わずに
ずうっと星屑を見上げているでしょう
ミュゲの花は探しません
私よりも他のお方の手に渡った方が良いと思うのです
私ではきっと、幸せを持て余してしまいますから
そもそも私に夢などあるのでしょうか
作られて、使われて、逃げてきて
宝石人形はどこへ向かうのでしょうか
ああ、なるほど
私はもう求められたくないのでしょう
だから何も求めたくないのでしょう
今はただ、この幻の星屑に、静かに包まれていたい
いつか
毒と分かっていてもそれでも欲しいと想えるものに
出逢えるのでしょうか
そんなものがあるならば、見つけたならば、
それこそ本当に、私の夢が叶ったことになるのかもしれません
●夢の種
(ミュゲの花は探しません。わずかしか混じらない希少なものならば私よりも他のお方の手に渡った方が良いと思うのです。私ではきっと、幸せを持て余してしまいますから)
プラシオライト・エターナルバド(かわらないもの・f15252)は宇宙に穿たれた星を、銀河が振りまく星屑を、ただじっと座って見つめていた。
彼女にはそれで良かったのだ。そもそも叶えたい夢などないし、手にしたころで過ぎる幸福。
宝石人形として作られたプラシオライトは、自分と同じ人工物である星屑に、我が身を重ね、想いを寄せた。
(ああ、なるほど。私はもう求められたくないのでしょう。だから何も求めたくないのでしょう)
ドームに集った人々は夢を掴もうと必死に星屑に手を伸ばしている。それは美しく淡く翠に輝く我が身に伸びる手と同じに。
作られた幻を追い求めて踊らされる者は滑稽だけど、それが毒と知り毒に犯されても欲しいと願える夢を得た人を羨ましくも思いもする。
作られ、使われ、求められ、追われて。宝石人形はどこへ向かえばいいのだろう。
答えの出ない問いならば、ずうっとこのまま星屑を浴び静かに包まれていたい。
いつか毒と分かっていても欲しいと思えるものに出会う日まで
夢という追い求めるもの得る、夢が叶ったと言えるその日が来るまで。
抱えた膝の上、光孕む水晶のドレスに落ちた消えぬ星屑は不完全な夢の欠片。
十字に輝く星を額に刻んだプラシオライトは、花片を手の平に掬い上げて同じクリスタリアンの少女にそっと差し出す。
今はまだ持て余す、夢が叶う夢の種を。
大成功
🔵🔵🔵
クロム・ハクト
叶えたい夢はないがオブリビオンを惹きつけるため、幻影と花弁で動きに僅かでも差異がないか見極めつつ星屑を拾う。(仕事・競技感覚)
夢…、俺の知らない「過去の俺」ならそんな物もあったのかもな。
でもオブリビオンを倒すために必要なんだろ?それならしっかりやるだけだ。
最初は動きを見極める様に眺める事を重視して、その後はそれを活かして。
花弁でもオブリビオンでも、目の前にあるものを見過ごしたり取りこぼすわけにはいかない、それは同じだからな。
●夢を喰らう蝶
人狼の少年はじっと夜空に降る星屑を睨んでいた。
だけどそれは夢を叶えたいからではない。夢を求める人に群がり夢ごと喰らう蝶を誘き寄せるためだ。
(星に見立てた花に引き寄せられるってところか。叶えたい夢はないが‥‥オブリビオンを惹き付けるために真剣に本物を探すさ)
幻影と実体とで何が違うのか、クロム・ハクト(人狼の人形遣い・f16294)は観察するが、星の夢も花の現も美しくて、つい惑いそうになる。
(夢‥‥俺の知らない「過去の俺」ならそんな物もあったかもな)
クロムには過去がない。教会に拾われる以前の記憶が。
教会では毎日誰かが神に祈りを捧げていたけれど、自分は祈るふりして願うことをしなかった。だけど過去の自分にはあったかもしれない。
あの人とずっと一緒にいたいと願うこと。
あの人にもう一度会いたいと願うこと。
愛した人の花の種を植えること。
今は隠れた夢の種が芽吹くこと。
夢想に現身を与えて愛し合うこと。
機械が生身となって愛し合うこと
愛を奪った者達を殺して捧げること。
主を殺した敵を見つけて仇討つこと。
輝かしい未来の夢を描き出すこと。
秘めた願いを口に出して叶えること。
そして新しい自分の夢を見つけ出すこと──。
クロムに未だ願いはないけれど、花片が夢そのもののように思えた。
(オブリビオンを倒すのも花片を探すのも同じだ。目の前にあるものを見過ごしたり取り零す訳にはいかない)
幸せが小さすぎて見つけづらくとも。
忍び寄る不幸が気づきにくかろうとも。
必ず見つけるのだと使命に燃える少年は、夜空に混じり始めた青く光る何かをいち早く見つけた。
それは夢を喰らう絶望色をした電幻の蝶。
それは悲しみの鱗粉を撒き散らす青い蝶。
何処からか湧きだした青い蝶の群れが星屑を凌駕し、人々を覆い尽くさんと襲い掛かる。
「蝶が来たぞ!」
クロムは叫ぶ。
夢の時間は終わりだ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『電幻の蝶』
|
POW : オプティカル・カモフラージュ
自身と自身の装備、【電幻の蝶が群れで覆っている】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD : サブリミナル・パーセプション
【翅の光を激しく点滅させること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【幻覚を見せる催眠】で攻撃する。
WIZ : バタフライ・エフェクト
見えない【クラッキングウイルスの鱗粉】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●青い蝶
青い蝶が群がる。
夢が叶うという本物の星屑に見立てた白い花片を求める者達を喰らい、屍を葬むるように。
『ギャラクティカ・ロマンティカ』内の別区画で転移維持のため待機していたマレークは、スターダスト・イリュージョンの様子を映し出したモニターを見つめていたが、青い蝶の出現に眉を顰めた。
青い蝶は悪夢の始まりを告げる凶兆である。
青い蝶に襲われた者は夢を見たまま炎に巻かれて焼け死ぬ。赤い髪、赤いドレスの女が出てくる前に青い蝶の攻撃から一般人を守り避難させなければ悪夢が現実となってしまう。
また無限の夜空も現実にはあくまでも展望室内、広さは十分あるにせよ大破すれば宇宙船の航行に影響が出る。戦闘の際には注意が必要だ。
マレークは非常脱出口の電灯を点灯させると再びモニターを見つめ、猟兵達の活躍と無事を心に祈った。
リュカ・エンキアンサス
マリアドール(f03102)お姉さんと
色はきれいなんだけどね…この蝶
勿論、一緒に頑張ろう
こんなところに敵だなんて、野暮にもほどがある
基本マリアドールお姉さんと背中合わせで行動
後ろは任せた
ひとまずは蝶を牽制し援護射撃に徹しながら一般人の保護を手伝う
後はその辺大丈夫になったら殲滅に移る
マリアドールお姉さんが敵をひきつけてくれるなら助かる
お姉さんが攻撃を受けないように、攻撃準備に入った敵から
的確に狙い定めて、一斉射撃でけりをつけたい
お姉さんが撃ちもらしたものや死角で気づいてなさそうなものも気をつけて対処する
攻撃時はなるべく距離を取るように心がけるけれど、やむなく接近された場合はナイフを抜いて応戦する
マリアドール・シュシュ
リュカ◆f02586と
アドリブ◎
…(美麗な青に一瞬目奪われ
一般人を巻き込む訳には行かないのだわ
悪夢の兆しはマリア達が摘むの
全員、護るわ
絶対よ
リュカ…あなたの力も必要なの
どうか協力して頂戴(星屑を懐に忍ばせ、手を差し出す
蝶を牽制し一般人を保護するわ
非常口まで避難させるのよ(ケープのオーラ防御で庇う
展望室内なので攻撃も必要最小限に
リュカと背中合わせで連係取れば蝶に囲まれても怖くないのよ!(絶対の信頼と安心感
マリアがおびき寄せ・マヒ攻撃を付与した竪琴の楽器演奏で敵の動きを鈍らせるわ
リュカ、今なのよ!
高速詠唱で【透白色の奏】使い攻撃手は休めず一体ずつ確実に
敵の攻撃は音の誘導弾でカウンターして相殺するわ
●銀河旋律 リュカ・マリアドール
──宙が墜ちる。
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は軍勝色の宇宙が欠けるかのように、空から次々と、次々と舞い下りてくる青いものに目を見開いた。
リュカの瞳も和らぐ夜空の青だったが、今疑似宇宙から降り来たるそれは命を喰らう死神の色──蒼。
「色はきれいなんだけどね‥‥この蝶」
「そうね、綺麗‥‥。でも『ギャラクティカ・ロマンティカ』の人達を巻き込む訳には行かないのだわ。悪夢の兆しはマリア達が摘むの」
リュカの隣で呟くマリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)の瞳は淡く輝きを放ち、軽やかな声には力があった。大量の蝶が埋め尽くす空に星は見えない。だが地に星が瞬いている。
「全員護るわ、絶対よ。リュカ‥‥あなたの力も必要なの。どうか力を貸して頂戴」
「勿論。一緒に頑張ろう。こんなところに現れるなんて野暮にも程があるからな」
マリアドールが差し出す手を取る代わりに、リュカは背に背負っていた「灯り木」と名付けたアサルトライフルを取って構えた。何度も直して古びた青い上着のポケットにマリアドールから貰った夢が叶う切符をしまい込んで。
マリアドールもまた懐に小さな希望という名の星屑を忍ばせ、白い茉莉花のイヤリングに触れた。
「皆さん、夢の時間は終わりました! 誘導灯のある方向へ逃げてください!」
拡声器・茉莉花の歌環を通じマリアドールの声がスターダスト・イリュージョンの終了を展望室内に響かせる。襲い来る蝶を牽制しつつ一般人避難をさせるために。
そのマリアドールの背を護るべくリュカは背中合わせとなって立ち、引き金を引いた。大量の蝶を一匹ずつ仕留めていたらキリがない。加えて射撃の正確さを追求出来るほど暗視に優れている訳でもない。
だがリュカには自信があった。第六感、もしくは戦闘経験と呼ぶべき勘が。群がる蝶を打ち払えればそれでいいと、リュカは援護射撃に徹する。
「マリアドールお姉さんが敵を引き付けてくれるなら、俺はお姉さんを護る!」
灯り木が唸り銃弾が放たれるたびに群がる青が散る。
マリアドールは蝶が避難の遅れている人に集まらないよう盾になった。彼女の纏うドレス・夜空色の花弁は敵の攻撃を誘導するのと同時に、敵の攻撃を跳ね返す力がある。
加えてホワイトデーのお返しに贈られたサフィアのブローチの付いた可憐な青いケープに至っては三倍返しだ。カウンターを喰らった蝶達は自信の幻に酔い、明滅したまま彷徨う。
「マリアドールお姉さん、一気に片を付けよう」
「ええ、リュカ。迎撃はお任せするわ」
マリアドールはそう信じて敵より先にユーベルコード『透白色の奏』を成就し黄金律の竪琴を爪弾く。
それは昼に姿を消していた星達が集い始める黄昏時の歌だった。
それは目に止まらぬ小さな星達が身を寄せ合い銀河を描く曲だった。
(夜は不思議ね、泣きたくなることも淋しさを感じることもあるわ。だけど忘れないで。暗い夜、空に星が見えなくても消えた訳じゃない‥‥どんなにその星が小さくても、希望は確かにそこにあるものだわ)
マリアドールの星芒の視線は力強く、白い指先から奏でられる旋律は希望に満ちて絶望の蒼を退ける。
リュカはそれを銀河の旋律だと思った。透白色とは一つ一つは小さすぎて輝きすら気づけぬ星屑達のことなのではないかとさえ。
「マリアドールお姉さんの邪魔はさせない!」
リュカは蝶が操り投げてくる器物を散梅と名付けた短剣を咄嗟に抜いて弾き、マリアドールはリュカが護ってくれると信じて歌い続ける。
展望室の非常口へと導く道標、銀河の旋律を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファン・ティンタン
【WIZ】誘蛾の火
【ヤド箱】で参戦
戦いの場が制限される状況か、ちょっと厄介だね
それでもこなさなきゃならないのが猟兵業の辛いトコ
さ、仕事を始めようか
自身は戦況を広く確認できる位置取りで【情報収集】しつつ、味方の支援を主軸に活動
【哀怨鬼焔】で生じた【呪詛】の鬼火を全数展開
鬼火で自身と仲間を守るように覆い、人【物を隠す】ことで、鱗粉からの保護や透過した敵の接近時に防御線として役立てる
余裕があれば、鬼火で敵に攻撃を与えることで【呪詛】の痕跡から位置をおおよそ把握し、味方に随時動向を伝える
鬼火でみんなを焼かないように操作するのに集中するから、物理的な守りは任せるよ
そっち、蝶が行ったよ、気を付けておいてね
桜雨・カイ
【ヤド箱】アドリブ連携歓迎
まずは一般の人に逃げてもらわないと。
【錬成カミヤドリ】発動。錬成した数体を人の様に動かし、
蝶の意識をこちらへ引きつける間に逃げてもらいます、さあこちらですよ
蝶が近づいてきたところで【なぎ払い】【2回攻撃】で攻撃
翅の光は直視し続けないよう注意。
目をそらしても【第六感】と、かけられる声を頼りに蝶の位置を把握して
他の人や壁を巻き込まない場所で攻撃を行う
残りの錬成体は盾代わりとして、【盾受け】で敵の攻撃を受ける(味方の危険時にも使用)
幻覚を見ている人は軽く叩いて正気に戻す
ここに来ている人達は、誰もが大切な夢や思いがあります
大切なものを奪うような事はさせません
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】で参加
室内での戦闘、一般人を守りながらですか
力をあまり出せない環境とはいえ、今できる精一杯の力で対処しましょう
氷【属性攻撃】を【高速詠唱】、【オーラ防御】の波に乗せて周囲に展開
姿を消す蝶に霜が付く程度の威力でいい
そうすれば存在は露わになるから他人も視認できるし、他人を氷漬けにすることもない
もし敵の攻撃に晒される者がいるなら我が剣にて【武器受け】し、【かばう】
自身への攻撃に対してもそのように対処
霜の付いた蝶、もしくは存在を教えられた蝶を対象に【願い星の守護剣】を発動
ここには人の願いがたくさんある
その願いの力を借り受けて、皆の願いを守る
私は流星剣……人の願いを叶え、守護する剣だから
●白の守護者
その時、白い仮面は白い星屑がはらはらと宙から舞い落ちるのを見上げていた。
それは桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)の本体である絡繰り人形に被せたもので、夢は叶いもせずに瞬く間に触れて消えたけれど。
行方知れずの主を探すカイは、そうやって残滓を浴び続ければいつか本物のミュゲの花片に行き当たるのではないか、幻も降り積もれば本物になるのではないか、そんな風に思えて仰ぎ見続けていたと言うのに──。
それは夢を見ることさえも許さぬと言うように、これが現実だと叩き付けるように、宇宙は何処からか侵入した青い蝶に覆われ、星は喰われるように消え失せた。
「分かってはいましたが‥‥無粋に過ぎます」
「ああ、全くです。もう少しくらい物思いに浸らせてくれてもいいものを」
カイの呟きに乗った女は白い騎士の礼服に身を包み、迫り来る電幻の蝶を視線で射貫き落とさんとするほど睨み据える。
ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)もまたカイと同じくヤドリガミだが、人としての現し身を得た彼女の瞳は今、命を宿して青く燃えていた。
「室内戦で一般人を守りながらですか。これは力をあまり出せない環境ですが‥‥今できる精一杯で対処しましょう」
「なに、心配には及ばない。さ、仕事を始めようか」
いつの間にか流星剣のヤドリガミの隣に白い護刀のヤドリガミの女がいた。
ファン・ティンタン(天津華・f07547)とてこの状況が如何に厄介かは理解している。遠慮無く大技を振るおうものなら人にも船にもダメージを与えかねない。ならばせめて赤い女が出てくる前に一般の者だけでも逃がしてしまいたいところ。
ファンは腹を括ると自縛鎖を手に取った。『付喪神ねっとわーく』と名付けたそれは、物品に宿る神や土着の神と意思疎通を図るためのものであり、その土地を戦場とするのに必要な情報をもたらすもの。そしてそれは宇宙船であっても有効なものらしい。
「ここは端過ぎるな。ステラが存分に剣を振るうにはもう少し真ん中に行った方がいいだろう」
「そうして下さい。こちらもその方が都合がいい」
カイはそう言ってユーベルコードを発動、34人の『自分』を出現させる。錬成ヤドリガミによって複製されたのはカイの本体、絡繰り人形だ。
「人の形をしたものに反応しますね。熱や生命力の類いを感知している訳じゃなそうです。さあ、こちらです。こちらにいますよ」
カイは複製を操り蝶に追わせる。青い蝶が一部列を成し、まんまと囮に導かれて非常口とは反対方向へ。喰らいつかれそうになると薙刀で払い落とした。
(あの青は美しい‥‥でも魔性の光です)
カイの直感は告げている。あの光を見続けてはいけないと。目を逸らしても人に当てずに払えているのは糸編符のおかげだろう。既に周囲には蝶の見せる幻覚によって戦闘が始まってもなおも逃げようとしない者さえいた。
「ここに来ている人達は誰もが大切な夢や想いがあります。大切なものを奪うような事はさせません」
自分にも──大切な願いはあるのだとカイは心に叫ぶ。主に会いたいと願うその想いを何者にも踏み躙らせはしないと。
絡繰り人形に攻撃を受けさると蝶はやがて見えなくなり、人さえも覆い消した。
「姿を消しても無駄です。見えないのなら見え目ようにするまでです。凍り付け!」
凜とした声を響かせステラが流星剣を掲げる。
ステラの本体である流星剣は、人々の願いを叶えるという流星が地上に落としていった隕鉄より作られている。願い星の残滓は今、ステラの呼び声に応じて青白い波動を放った。
星の刻印は蝶が群がるより早く願いを成就させ、何もないはずの空間に白い転々としたものと、人の形をした塊を露わにした。空気中の水分の結晶──霜である。
「さあ、しゃんとして。自分で歩けるかい? 出口は向こうだ。あの仮面の者に付いて行け。外に出たら暖かくするんだよ?」
ファンは霜を払い、一般人に避難を促す。カイもまた正気を失った人を軽く叩いて意識を戻させた。絡繰り人形に誘導され、危機を逃れた数人が非常脱出口の灯りを目指して歩き出す。
ファンはその様に安堵しながら、紅い一眼を霜まみれの蝶へと向けたまま同じ旅団の仲間に一声かける。
「そっち、蝶が行ったよ。気を付けておいてね。ところでステラ、そろそろ私達も本気で行こうじゃないか。何しろイミナが不機嫌だ、責任とって楽しませて貰わないとね」
イミナとはファンがたった一人の為に作り上げた呪いの鏡だ。主であった少女を殺した『古王』なる者への恨み辛み、願いと誓いを込めた──。
呪詛の鏡は今、ユーベルコード『哀怨鬼焔』によって生み出された怨念の紫炎を一層燃え上がらせ、自身と仲間とを護るように展開されていく。
護ること‥‥それがファンの本来の使命。『古王』への執念がファンを突き動かしていても、誰かを護ることを忘れはしない。今ファンは蝶を払い退けようとするステラの護身となり、懐にある翡翠輝石の欠片『翠夢想』は彼女の信念を示すように二人の身を隠した。
欺かれた蝶の撒く鱗粉は凌がれ、霜を帯びた蝶が接近すると悪しき存在を焼く。呪詛の鬼火は一度触れた物を逃さず、姿を消した蝶さえも執拗に逃さなかった。
(逃がさないよ。蝶も、それから『古王』、お前も)
聞いて貰えればそれでいいと星屑に手を伸ばしはしなかったファンだったが、この執念は決して手放しはとない。
そして剣で攻撃を受け流し一般人の庇ってきたステラもまた流星剣を掲げて祈る。
「我は願い叶える星、祈りを守護する剣。夢持たぬ命なきものから夢持つ命ある者を護りたまえ!」
青味を帯びた白銀の刃から放たれた軌跡は願いと祈りを集めた光だ。
ステラは知っている。自分に切なる願いを傾け、真摯な祈りを捧げた者達がいたことを。例えそれが叶わぬ願い、届かぬ祈りであったとしても、人は命ある限り夢を見続けるのだと。そしてステラ自身も今、願いを持とうとしている。
だが、彼女はやはり祈りを聞き、願いを叶える存在であった。それは人の身を得ようが、幾年経ようが変わらぬ、ステラの存在意義。
(ここには人の願いがたくさんある。その力を借り受けて皆の願いを守る。私は流星剣‥‥人の願いを叶え、守護する剣だから)
ステラの周辺に舞う霜と呪詛とに示された蝶が、正義と信念の光線に当てられ次々と墜とされる。
「やりましたね。ヤド箱の意地を示せたでしょうか?」
カイは白い仮面を被せた操り人形を手繰り寄せて呟く。
ヤドリガミの箱庭、略してヤド箱。同じ旅団に属した白の守護者達の足下には、遺骸とすら呼べぬ機械の残骸、ヤドリガミになれずに終わったものの末路が幾つも転がっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メテオリテ・クルスタ
※アドリブ、絡み:歓迎
ここで咲く願いの花々を、踏み荒らさせはしません。
【SPD】
弾の類は控え、円匙《Vanitas》を主力武器に。
UC【包囲『Obsessio』】のユニットに協力してもらいます。
数字1のユニット十体を、一般の方々を守るように配置、身を挺してでも敵の妨害を。
残り数字のユニットを一体、自分と共に蝶の排除に。
最優先は、皆様の無事。
一般の方を狙う蝶、避難の邪魔になる蝶から優先して対応を。
自走装備《Spes》を【ダッシュ】【騎乗】で飛ばし、その勢いで攻撃や【踏みつけ】を。
回避された際は、ユニットにフォローしてもらいます。
協力も、私を囮や盾にする手も、挟み撃ちなど卑怯な手も、厭いません。
ロダ・アイアゲート
現れましたね、青い蝶…
ただ漂うように舞うだけなら、きっとこの星屑たちと相まって綺麗だったでしょうに…
ですが相手は蝶といえど敵…倒すべき相手ですから油断は禁物ですね…
一般人もいますから、彼らの盾になって避難する時間を稼ぎつつ、狙われたら【かばう】【武器受け】
UCで銃を強化して攻撃【2回攻撃】【零距離射撃】【早業】使用
宇宙船の壁を出来る限り傷つけないように、蝶に近付いて撃つ
こちらにとっても間合いがないのはリスクがありますが、敵の懐に入りこめれば遠距離攻撃の範囲からも外れると思いますし
出来ればこの部屋は蝶の翅ではなく、星屑だけが舞い散る場所であって欲しかったのですがね
●夢の切符
『いつか目覚めるかも知れない君へ』
ロダ・アイアゲート(天眼石・f00643)は夢が叶うと言われる星屑を模した白い花片を求める代わりに、白く小さな紙片を取り出した。
それは彼女を作ったマスターが自分へかけた最初の言葉が短く綴られている。まだ見ぬうちに去った人の謝罪の言葉が。
想像物であるはずのロダに呼びかけるのにも愛情を滲ませるのに、一方的に理由も言わずに謝るその人はどこにもいない。
ロダが紙片から顔を上げたその時、天空に星はなかった。否、青い蝶に覆われ星は見えない。まるで蝶が星を喰らってしまったかのように。
ロダに人のような感情豊かな顔面があれば、きっと眉を顰めたところだろう。それほどこの夢の空間を踏み躙られたことが不快であった。
「現れましたね、青い蝶‥‥ただ漂うように舞うだけならきっとこの星屑達と相まって美しかったでしょうに」
「ええ。でもあれは花が種を生む前に食い荒らしているかのように見えます。ここで咲く願いの花々を踏み荒らさせはしません」
メテオリテ・クルスタ(この身は星片・f14154)は赤いセンサーアイを光らせる。白兵戦対応円匙《Vanitas》を手に天を睨むその姿は、さしずめ鋭い一刺しで勇者をも殺す蠍座の、その赤い一等星のようだった。
穏やかで美しい星を見つけて預かった花の種を撒く‥‥それを夢見る機械兵にこの所行が許せるはずもない。畑というものは大切に手を掛けて耕されたもの。それを誰かが勝手に踏み込んだり、ましてや実らせたものをもぎ取って良い訳はないのだ。
今メテオリテの心は農業プラントで働いていた頃の畑を守る機械兵に戻っていた。畑を荒らす害虫を駆逐することに使命を燃やして。感情を言葉で示す交流補助映像機器《Natura》は「Destroy」と表示されていた。
「しかしここは宇宙船の中、皆様の生活を脅かしてはなりません」
メテオリテは背のミサイルの不使用を決め、ロダもまた愛銃を無闇に振るえぬことを悟った。
「ならば近づいて確実に当てましょう」
ロダはMeteor‥‥流星と名付けた宇宙バイクに跨がると、青に飲まれた宙へと飛び上がる。そして避難を開始した人々を庇うべく、人の流れとは別の軌跡を描く。‥‥と、無限に見えた宇宙には果てがあった。ロダは中空で停まると己に群がってくる青い捕食者達を素早く攻撃する。
携帯型蒸気ガトリングガンAiming at a shotの接射2回攻撃は青い蝶達を射貫く。ユーベルコード『Do not provide, such as escape』で強化された射撃に蝶の屍が地に降り注ぐ。
それをメテオリテが弾丸の雨のようだと思ったのは、その蝶が金属の塊と化した命無き機械だったからだ。
(心のない機械はただの機械。でも私どもは違います)
メテオリテが成就したユーベルコード‥‥包囲『Obsessio』によって作り出された24体の随伴ユニットは、メテオリテの意志を受け継ぎ半数は群がる蝶を阻む盾となり、あるいは蝶を駆除する。
そしてメテオリテもまた近接戦を取らざるを得ないロダが、遠距離からものを投げつけられているのを見ると、宇宙空間対応装着型自走装備《Spes》に飛び乗り青い蝶を蹴らした。
「助かりました。やはり宇宙船も一般人も守りつつ戦うにはリスクがありますね」
「でもロダ様の奮闘、確かに拝見しましたよ。ほら」
宇宙バイクから降りた二人の足下に散乱するものに輝きはない。
「出来ればこの部屋は蝶の羽ではなく星屑だけが舞い落ちる場所であって欲しかったですね。叶わない夢でも見ることを許される場所ですから」
「おや、何をおっしゃいます。先ほど手紙を見ていらっしゃったじゃないですか。大切な御方からのものなのでは? もしかしたら夢の切符なのかもしれませんよ?」
旅路の果てに辿り着いた星に種を植えるのが夢だとメテオリテは言う。
ロダが大切にしまうその紙片も星の欠片と同じ白。夢追う旅路を示す切符なのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キティ・エウアンゲリオン
わ
転送前、マレークさまに見惚れてしまった
はわわ、こんなに綺麗な人がいるんだなあ…
そんな方に、憂いを帯びた表情をさせる敵なんて、許さない
POWを使用
前衛で黒剣を駆使して攻撃
一般人が攻撃されそうなら庇い、戦闘しつつも避難を呼びかける、この戦闘区域から離脱するように
くそっ、力が足りない
己の非力さが憎い!!
もっと強くならなきゃ
愛を忘れ、凍りついた私の心をときめきかせてくれた彼をーーこの戦闘中継の画面を見つめているであろう彼が少しでも安心して笑ってくれたらそれで
それだけで、いい
それだけあれば
どんな闇の深い先にだって喜んで落ちていこう
「我が名はキティ・エウアンゲリオン!!疾く滅ぼしてやる、地獄で詫びろ!!
ヴィリヤ・カヤラ
一般人の避難が最優先だね。
青い蝶の攻撃から守りながら脱出口に
行けるように誘導するね。
転けて怪我する人もでるかもしれないから、
そういう人は出来るなら周りの人にも
手伝って貰いながら優先的に助けにいくね。
敵は姿が消えたりもするのかな?
見えないうちに近寄られても困るから、
『第六感』に頼りつつ【ジャッジメント・クルセイド】で
倒せたら良いな。
あとは鋼糸の刻旋を敵に絡めて盾代わりや、
他の個体にぶつけて隙を作ったりしてみるね。
宇宙船へのダメージも少なめに頑張らないとね!
全員の避難が終わるまでは気は抜かないからね。
もし避難が終わったら「避難終わったよ!」
って声掛けしたら後の戦闘も楽になるかな?
アドリブ・連携歓迎
●娘達は青を討つ
それはダークセイヴァーの空のようだとヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は思った。
だが凶兆の先駆けたる蝶に覆われた空は故郷よりも、彼女の髪よりもなお青ざめている。星は喰い尽くされて一欠片の夢さえ降らぬ程に。
「慌てないで。慌てて転んだら余計に危ないからね」
ヴィリヤは非常口のある方へと一般人を促し避難を進めていた。
だが肝心の青い蝶の姿は間近に見えず、蝶に幻惑された人々は襲撃にも気づかずに立ちすくみ、あるいは突然の襲撃にパニックを起こしている。
「姿を消しても私には分かるよ。ジャッジメント・クルセイド! 天の裁きを受けて!」
ヴィリヤはマントを翻らせ、虚空に向けて黒い手袋を嵌めた指先を向けた。
聖なる光が天から迸り、透明化して風景と化していた蝶を捕らえて撃ち落とす。居所さえ当てが付けばヴィリヤの光矢に射抜けぬものはない。第六感の成せる技だ。
しかしそれは諸刃の剣でもあろう。撃ち落とされた蝶の残骸は遠隔操作能力により投げつけるための礫となって襲い来る。
「ヴィリヤ様、加勢します! 一緒に一般の方々を逃がしましょう! 遠慮せずどんどん撃ち落としてください!」
ヴィリヤの背後に迫った機械片を叩き落としたのは同じダンピールのキティ・エウアンゲリオン(戦花・f16319)の黒く呪われた剣。
グリモア猟兵でもあるキティは事件を予知したマレークを見たとき、綺麗だと一瞬で心を奪われた。モニターを見つめる彼の赤にも青にも見える紫の目が憂いに眇むのを見たとき、居ても立ってもいられなかった。
「我が名はキティ・エウアンゲリオン! マレーク様にあんな顔をさせるなんて許さない。疾く滅ぼしてやる、地獄で詫びろ!」
キティが白い髪を振り乱して気を吐く。
それは罪滅ぼしに誰かの為に戦うことを課した娘の恋、凍り付いた心を溶かす春のときめきだった。
それは誰も悲しませぬよう孤独でいると決めた娘の愛、どんな深い闇の先をも怖れぬ献身だった。
(くそっ、力が足りない、非力な己が憎い! もっと強くならなくちゃ、もっともっと──!)
疲労と傷を貯めながら蝶の攻撃から一般人庇い、キティは黒剣を振るい続ける。
ヴィリヤもまたカーボン製の鋼糸・刻旋へと持ち替えて蝶を絡め取ると、そのまま他の個体へとぶつけて転んだ者を支え起こした。
「しっかり! 出口はもうすぐだよ。青い蝶を見ては駄目、まっすぐにあの光へと向かって!」
ヴィリヤの指先が指し示す先に非常口を示す警告灯が黄色く輝いている。
そしてヴィリヤの瞳もまた旅人を導く北極星のように黄金に輝いていた。
天から星が消えても地上の星がここにあった。
「青は私の髪の色、故郷の空の色、そして夜の主である父様の色‥‥だから許さない。偽物の青は私が撃ち落とす!」
ヴィリヤは青い蝶を許さない。青はかけがえのないもの、家族と自分とを繋ぐ絆、優しく包み込む愛の色だから。
二人の娘は青を討つ。
それぞれの胸に男の面影を抱きながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マリス・ステラ
【WIZ】他の猟兵と協力して戦います
「主よ、憐みたまえ」
『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光の『存在感』で蝶を『おびき寄せ』る
光は『オーラ防御』の星の輝きと、星が煌めく『カウンター』
手の中の白い花びらをそっと懐に仕舞うと前を見据えます
「あなたたちは私たちの後ろへ」
一般客たちに避難を促しながら前に出て青い蝶を牽制します
味方の猟兵には弓で『援護射撃』
重傷者に限定して【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用
花霞に触れると桜の精がふわりと舞って、桜の花びらが青い蝶の行く手を阻む
星屑の弦音は『破魔』の力を宿して蝶の動きを鈍らせる
「叶わないから、夢を見るのか。叶わないから、夢なのか……」
逢坂・宵
……美しい蝶ですね
しかし、禍々しくもある
きれいなものには棘があるなどと、誰が申されたのでしょうか
此処を乗り越えて、最後へと至りましょう
『サブリミナル・パーセプション』が少々厄介ですね……
まともに喰らえばただの置物に等しい美術品として扱われていたころの
幻覚を見るかもしれません
あのような時間は、もう二度と過ごしたくはありません……
ですから、僕はいまこの時と未来を見据えて、生きるのです
幻覚などに負けてはいられないのです……!
『オプティカル・カモフラージュ』に対しては【第六感】に頼りましょう
【高速詠唱】【2回攻撃】【属性攻撃】【全力魔法】【範囲攻撃】を乗せた
『天撃アストロフィジックス』で掃討しましょう
白藤・今鶴羽
・共闘&アドリブ歓迎
・青い蝶、見た目だけなら幻想的で、儚く美しいのでしょうが。
美しいものが優しいものだとは限らない、のですね
・非常脱出等の灯り
一般人の方が避難する出口は、あそこなのですね。
そこを確保しつつ、青い蝶を排する…?
・操る武器は、未だイメージの定まらないものなれど。
それは無力な道具ではなく、現実に力ある武器である、はず。
・グラフィティスプラッシュで攻撃と、地形の確保を
●地上の星達
星を散りばめた宇宙は青ざめ、宙から電幻の蝶が舞い降りる。
天図盤のヤドリガミは夢想を風流さの欠片もない機械を破られたことを無粋だと思い、花器のヤドリガミは蝶に夢を喰らわれてなるものかと手にした花片を握り、ペンタブのヤドリガミは美しいものが優しいものだと限らないと思った。
それほどまでに青い蝶は人工的で、なおかつ壊滅的で無情だった。
「見た目だけなら幻想的で、儚く美しいのですけど、ね」
「でもどこか禍々しくもある‥‥綺麗な物には棘があるなど、誰が申されたのでしょうか」
今鶴羽の言葉は柔和な彼の見た目通り穏やかにぼかされていたが、一瞬途切れた語尾にありありと反論が浮かぶ。その続きは宵が微笑みに不快感を滲ませて述べた。
「あれは偽りの光、作り物の美しさです。私達が言うことではありませんが」
マリス達はヤドリガミ‥‥つまりは「物」である。「物」であったと言うべきか。彼らは物として生まれ、命を得て本物になった者達だ。彼らは自分達が人工のものだということを熟知している。だからこそ本物に、自然に生み出されたものに対する憧れも強い。命を得たならなおのこと。
「一般の方が避難する出口はあそこ、なのですね。広いように思っていましたが、案外、そうでもないような。とりあえず場所は把握、しました」
「此処を乗り越えて最後へと至りましょう。赤い女に出会うのは僕達だけでいいですから。避難誘導は任せましたよ」
今鶴羽はライトペンタブの穂先を非常灯と同じ黄色に光らせた。非常口から遠い者にも目印となるように。
宵もまた宵と星とを象った宵帝の杖を掲げる。蝶に覆い尽くされ星が消えた今、このウィザードロッドこそが星である。
「さあ、こちら‥‥おや、非常灯が見えません、ね?」
先ほどまで見えていた光は今は見えない。今鶴羽は首をかしげるも、それが蝶の仕業と言うことだけは察し取った。ならば、と今鶴羽は今一度ライトペンタブを手に取ると、『グラフィティスプラッシュ』を非常口があったと記憶する方角めがけて放った。
(自分の操る武器は、未だイメージの定まらないものなれど。それは無力な道具、ではなく。現実に力のある武器である、はず。例えばこんなことも出来たり、しますし?)
今鶴羽の得物はペンタブ。それは剣や槍のように直接的なダメージを与えるものではない。そして今も透明化した蝶を塗り潰すことも叶わずかけた塗料は瞬時に消えたが、今鶴羽の目的はそれじゃない。
今鶴羽が狙ったものは床への蛍光塗料の散布‥‥目印となる地形の確保。ライトペンに照らされた塗料が一筋の道を作った。
「マリスさんと宵さんが敵を惹き付けている間に、早
‥‥、‥‥」
そう避難を勧めて振り返った視線の先では、宵が何もせず立ち尽くしていた。宵は青い蝶の点滅がもたらす幻覚を見せられていたのである。
(ああ、僕はまたただ美しいと眺められるだけの「物」に戻ったのですね。天図盤たる役割さえ果たさせても貰えずに、ただ姿形の美しさだけを愛でられ、人から人へ、飽きたら次の人へと「物」として人の手に渡り)
それは宵が人の姿と命を得る前の、旧く美しい天図盤であった頃の記憶だ。星を読み解く優れた器物として期待され生み出されながら鑑賞物としてただ保有され、力を発揮することもなく飼い殺しにされていた頃の。
それは宵にとって死人も同然の忌まわしい記憶であり、その夜の神秘をそのままに映し取った姿を褒められることさえも辱めを受けているようだった。
「宵!」
僕はただ姿を愛でられるだけの籠の鳥じゃない──そう思ったとき、宵の耳に女の声が届いた。マリスの、同じく籠の鳥として大切に囲われていたヤドリカミの声が。
「‥‥思い出したくないことを思い出させてくれましたね。せっかくいい気分で彼の面影と過ごしていたのに。隠れてないで出てきなさい。本気で行きます」
過去ではなく未来を見据えて今を生きる。そう、今この場にはいない愛しく敬い心を預ける青く美しい彼と共に。
腹立たしさも二乗ともなれば幻覚になど負けてはいられない。宵刻の書が、宵天の印が、宵髪の飾が、宵彩の扇が、宵天の印の効果による高速詠唱に応えてユーベルコードを強化する。『天撃アストロフィジックス』の流星の矢は星の力を全力で引き出し、広範囲に複数回繰り出された。
(綺麗です、ね。これが宵さんの本気、覚えました)
今鶴羽は周辺の蝶を星光の矢で掃射する宵の姿を心に描き映す。残念ながら今メモ帳を取り出している暇はない。学習能力が備わっているのだろうか、蝶は近づくと反撃してくる者を避け、幻覚により抵抗すら奪われたものにたかり始める。
「青い光を見ては駄目、金色の光だけを見て追いかけてください。あなたたちは私の後ろへ。動けない人は今助けに行きます。主よ、憐みたまえ」
宵の目を醒めたのに安堵したのも束の間、星導の指輪に祈りを捧げると、マリスの片眼に金色の星が宿る。
それは星から祝福された物の印、星辰の聖痕。煌びやかな蒼天の白いコートは慈愛に満ちて纏う九星の衣の抗い難き存在感を際立たせる。
青い蝶達は白く美しき祈りの星の化身におびき寄せられるけれど、マリスに触れることも、魅せることも出来ない。黄金色の長い髪に挿された花霞の髪飾りは桜の精の加護によりマリスの身をオーラで護り、地縛鎖・星枢が飛ばされた破片を跳ね返した。
周りの蝶を払ってマリスが負傷者へと駆け寄る。幻惑を見せられた者は己が死にかけていることすら分からず未だ甘美な夢の中。マリスの星の輝きがユーベルコード『不思議な星』を発動させて瞬く間に人を癒すと、同じく救護活動に当たっていた今鶴羽が駆け寄る。
「姿が見えなければ安全かも、です?」
「どうやら多少は効果があるみたいですね。援護しますから連れて行ってください」
今鶴羽がライトペンの迷彩効果を発してマリスに救われた人を誘導する。夢を描くペンによって引かれた現実への道標、地上に描かれた銀河を辿って。
今鶴羽に宵やマリスのような星を力はないけれど、確かに彼は星を描いていたのだ。
(叶わないから夢を見るのか、叶わないから夢なのか‥‥でも今は夢から醒めて。これは悪夢、目覚めぬ夢へと入り込んでしまわないように)
花と大地にも希われた星の化身、マリスその煌めきを誰が消すことが出来るだろう。大弓・星屑を番えて味方を援護する姿は神事を行う巫女そのもの。
(見たくもない夢を見せられるのは夢でも何でもありませんよね)
宵もまたもう一度宵帝の杖を掲げて流星の矢を喚ぶ。
星を読む者、星を宿す者、そして星を描く者──地上の星達は夢の終わりへ導いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
「見つからなかったか。だけど次があるだろ?」
蝶が現れたと聞き一瞬で素から仕事モードに。
展望室内を【影達】の眼も使い乗客、猟兵、脱出口の位置を把握する。【学習力】
その上でマフラーを巻き直して目立つようにし、迅速な避難行動ができるよう乗客を誘導する。
「非常灯が点灯しましたが慌てずに。いつもの訓練を思い出してください。焦らずゆっくり。こらそこ、彼女が不安がってる。手を握って絶対離すなよ」
誘導しつつ乗客に蝶が迫る場合は【学習力】で確認した最短ルートを【ダッシュ】で駆け抜け斬る。影を含めて8つの眼で逃さない。
「前を見て迅速に。背中は私達が…って今誰か似あわないって笑ったか?(笑)」
渡辺・紅牙
もう暫く師匠との思い出に浸っていたかったけど
そうはいかないみたいだね
一部では蝶は仏の使いや魂の象徴と言われているが
この蝶から感じるのは濃厚な死の気配だ
ここでこの死神を抑えなくてはね
【鉄流呪術・土符【土蜘蛛】】展開
蝶を捕らえるは蜘蛛の領分
<動物使い>さあシカメ、その糸で……
え、そりゃあれは食べられないだろうけど
あとで餌あげるからさ、とりあえずお願いするよ
<呪詛><毒使い><属性攻撃><地形の利用>
呪毒の込められた毒糸の巣
絡め取られ動きが制限されれば
その鱗粉もばら撒けないだろう
<オーラ防御>他の蝶が割り込んで攻撃する可能性も考えて
私とシカメに呪力の結界を
あとは毒で滅ぶか味方の攻撃で滅ぶか、だね
●狼と蜘蛛の未練
夢の時間は終わった。
それは生きている限りいつか必ず訪れる終焉。だがグリモア猟兵が見た夢には続きがある。そう、悪夢という続きが──。
「結局見つからなかったな。紅牙は見つけたか?」
「いえ、私も見つけられませんでした。それならばもうしばらく夢に浸っていたかったけど、そうは行かないみたいだね」
「ああ、仕事の時間だ」
仁科・恭介(観察する人・f14065)は上空を青く染める蝶を見上げたままマフラーを巻き直し、隣の少年に尋ねる。その顔からいつもの柔らかく穏やかな色を消して。
渡辺・紅牙(求道の風来者・f06086)も星を喰い尽くした凶兆を睨み据え、懐から白い紙片を取り出す。その指に挟まれていたのは夢が叶うという星屑でも、それを模したという花片でもなく、人を形取った霊府‥‥陰陽師である想いを呪力に変えた武器。
「さあ、シカメ。その蜘蛛の糸で蝶を捕らえて。そりゃあ機械の蝶は食べられないだろうけど、後で餌をあげるからさ、とりあえずお願いするよ」
『鉄流呪術・土符【土蜘蛛】』。紅牙がシカメと呼ぶのは陰陽師が使役する妖、巨大で禍々しい存在感を放つ土蜘蛛だ。
粘着質の糸で巣を作り虫を補食する蜘蛛は蝶にとっての天敵。仏の遣い、魂の象徴とも言われる蝶ではあるが、黄泉の国の遣いならばその死の気配ごと絡め取らせるまで。
同時に恭介も侍らせていた狼に似た影達を放ち、展望室内を駆け巡らせる。
「見えなくなってるやつ、それから脱出口を見極めてくれ」
透明化する青い蝶は仲間や一般人、非常出口を覆って掻き消し、避難・救出を困難にさせる。だがそれは見えなくなっているだけ、存在そのものが消えた訳では無い。だから影達に展望室を駆け巡らせ居所を掴めれば目眩ましに騙されることはないはずだと。
蜘蛛は蝶を捕らえて始末するため。狼は人々を安全な場所へと逃がすため。この銀河を模した疑似宇宙に顕現したこの世ならざるもの達は今、二人の手足となり人々を悲劇から救う手立てとして主と共にここにいる。
「非常灯が点灯しましたが慌てずに。避難訓練はしたことがありますよね? それを思い出して冷静に。あ、そこの! 彼女を不安がらせないで、ほら、しっかり繋いで。絶対に離すなよ?」
避難誘導する恭介は恋人同士らしき者達がはぐれそうになるのを見ると、声をかけずにはいられなかった。
自分が手を繋ぎたいと願う相手は恭介の側にはいない。何度愛を告げようが想いに答えてはくれない。だけど恭介に彼女を諦める気はなかった。
諦めることは死と一緒。愛を葬るにはまだ早すぎる。何故なら恭介はまだ生きている。彼女もまだ数多の世界のどこかにいる。生きている限り望みはあるのだと──そう信じているから。
恭介は恋人達が手を取って逃げるのを見送り、蝶の群れと向き合う。青い蝶が死の使いならば、夢を潰えさせないために抗うだけ。
「こっちだ! 俺に続け!」
恭介は声を張り上げると影の知らせる非常出口へ向けて近づく蝶を蹴散らし駆け抜ける。恭介は影を使ううちに蝶が動くものに反応すること、動きが活発なものにより集中することを学習していた。ならば先頭の己が囮になれば他の危険度が減ると。
「どこへも行かせないよ。お前達はここで錆び落ちるんだ」
紅牙が子供の頃から様々に愛用してきた霊斬の短刀。それはこの映像空間の特性さえも地形として把握させ、仲間を阻害せず捕らえるのに適した位置を見極めさせる。恭介を追いかけようとした蝶が土蜘蛛の毒糸の巣に絡むと、身動き取れぬまま朽ちていく。
(逃がさないよ。蝶は師匠の想い出、お前達ごときに蝶であって欲しくはないよね)
紅牙の髪にも蝶が停まっている。蝶を象った鉄の蝶が。それは青い蝶と同じ命なきものだが、師匠として慕った女への想いが込められたものだ。
紅牙にとって蝶は師匠そのもの。だからこそその存在を許してはおけない。追憶さえも穢され、もう一度会いたいと願う夢さえ殺されゆくことに。
思慕、憧憬、そして一人残して逝かれたことへの恨みと辛みまでもが執念となり、呪いの力が蝶を滅していく。
「前を見て迅速に。背中は私達が‥‥って今誰か似合わないって笑ったか?」
「笑ってないよ。それよりもう一息だね」
紅牙が囮となって敵の攻撃に傷ついた恭介と背中合い、オーラの力で幻惑から守る。会いたいと願う女の面影、滅びぬ愛を胸に秘めたまま──。
二人は戦う。死蝶から夢を守るために。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シェーラリト・ローズ
「蝶はキレーでかわいーのにそーいう風にあくよーするの良くないねぇ」
皆で幻覚なんかに負けないってお祈り
がんばろー
「君たちにはこのお花をあげよー」
【空に星を、地に花を】を【2回攻撃】でいっくよー
【鎧無視攻撃】のおんけーでそこそこいけるかもしれないけど、本命はマヒのほう!
マヒさせることで味方の被害減らせればその分一般の人が逃げるよゆーができるし、避難が十分できればこちらも全力で戦いやすくなるからねー
敵のこーげきもちゅーいしないとね
燐粉は【空に星を、地に花を】の風でどうにかなんないかやってみるー
透明化されたら聴覚、六感を頼りに大まかな空間を特定、その空間ごと【全力魔法】で【空に星を、地に花を】で攻撃
クラリス・ノワール
SPD対応
絡み、連携歓迎
【】は技能です
蝶、青くて綺麗ですね…見た目だけなら
でもみんなに綺麗に見てもらえないなら、それは偽の綺麗なのです
星を見て、願いをかけた本物の綺麗さを、幸せな思い出を汚させない
みんなを助けて、炎に焼かれる未来を変えてみせるのです!
新米のクラリスにできること
思い出したのはさっき星を体に映せたこと
今度は蝶の幻覚から守る壁として、広く伸ばして【かばう】のです
我に返らせ【鼓舞】し逃がせたら、守り抜けたなら
クラリスが小さくないのも意味あることかもです
クラリスは幻覚にやられても、みんなを逃がす時間は稼いでみせるのです!
後はみんなにお任せ
幻覚が切れた時はきっとみんなが勝った時、ですよね?
ファレリア・リトヴァール
星に蝶……幻想的にも見えますけれど、
見せるのは美しい夢ではなく醒めない悪夢ですのね。
その様な無体、決して許せませんわ。
一般人に避難を呼びかけながら前に出ますわ。
人々に被害を出さない事が先決ですもの。
一般人も仲間も巻き込まない様注意しつつ、
瓊嵐で蝶も鱗粉もまとめて吹き飛ばしますわ!
見えない鱗粉は厄介かも知れませんけれど
宝石の嵐の前には無力と知りなさい!
蝶は夢を喰らって自らの糧にしていましたのかしら。
でも駄目ですわ。夢は見るものであり喰らうものではない。
掴み取るものではあっても奪うものではありませんもの。
(絡み・アドリブ歓迎)
●夜空に輝く宝石、夜空から降る花片
蝶は綺麗で可愛いのに人を苦しめるために悪用するのは良くないと、オラトリアの少女は思った。
蝶は幻想的にも見えるのに醒めない悪夢を見せることは許せないと、クリスタリアンの少女は思った。
蝶は綺麗だけど皆に綺麗に見て貰えないならそれは偽の綺麗さだと、ブラックタールの少女は思った。
「このような無体、決して許せませんわ」
エンジェルシリカのクリスタリアン、ファレリア・リトヴァール(白花を纏う紫輝石・f05766)は神秘を秘めた声音に怒りの色を仄かに滲ませた。
『奇跡の子』として人を癒す力を持ち人々の心を潤す彼女だが、決して心の中は見た目ほど大人しくはない。宝石がどれほど美しくとも硬い鉱物であるように、彼女の意志や信念の内側から強い輝きを放っている。何故なら彼女は巫女──人々を正しき道、明るい未来へと導くのが使命なのだから。
「星を見て願いをかけた本物の綺麗さを、幸せな想い出を汚させない。みんな助けて未来を変えて見せるのです!」
ブラックタールとして流動的な液体の身を持つクラリスの心もまた強き心の持ち主であり、迸らせる想いは眩しい程だ。
クラリスはユーベルコードで身体を長く伸ばして夜空を駆け巡った時、夢を求める人々の真摯な祈りや切なる願いの発露を見た。例えそれがほんのわずかの可能性、あるいは叶わぬ夢であったとしても手を伸ばそうとする者達を。それが容赦なく青で塗り潰され、残酷に赤く焼き滅ぼされるのを黙って見ていることなど出来ない。
「皆で幻覚なんかに負けないってお祈り、がんばろー」
シェーラリト・ローズ(ほんわりマイペースガール・f05381)はダークセイヴァー生まれで理不尽に蹂躙されるのを見るのには慣れていたし、本人も至ってマイペースに振る舞っていたけれど。
その心の中までも平穏暢気とは限らない。それに許すか許せないではなく、好きじゃないという理由で暴力を嫌うこともあるのだ。そう、こんな風に人々が惑わされ、傷つく様を見せられるのに心を痛めない訳ではないのだ。ただ態度が変わらぬというだけで。
シェーラリトが迫り来る蝶の群れへと一歩進み出て立ちはだかる。
「行こう、ファレリア。まずは数を減らさないことにはねー」
「ええ、非常口までの道を切り開かないといけませんわね」
ファレリアはシェーラリトと背中合わせとなると、深く息を吸い込んだ。天井に満ちた蝶は映像の星さえも消した。星屑の代わりに死の御遣いとして降臨する青きものを撃ち落とすため、少女達は戦う。
「煌めく玉よ、我が意のままに! 青き蝶もその禍つ鱗粉もまとめて吹き飛ばしますわ。宝石の嵐の前には無力と知りなさい!」
ファレリアの透き通った声が蒸気拡声器・鳴り渡る玉響によって響き渡ると、煌めく色取り取りの宝石片が花片を象り吹き荒れる。蝶の羽に当たると金属が当たる音はさんざめく驟雨のようだ。
(思った通りこの蝶には心がないのですね。だから夢を食らって自らの糧にしていましたのかしら。でも駄目ですわ。夢は見るものであって喰らうものではないし、汲み取るものではあっても人から奪うものではありませんもの)
風に飛ばされ花片に砕かれ、青い蝶が落ちる。恐らくは動く人型のものを攻撃するようプログラムされているのだろう‥‥まるで自ら炎に飛び込む蛾のようにファレリア達を目指して飛んでくる。次から次へとたかっては落ちる蝶の群れは一体何に飢えていたのだろう。
シェーラリトもまた一般人を守るべく、ユーベルコードに全力を傾ける。大ダメージを与えるよりも広範囲に、そして確実に避難する時間を稼げるように。
「星も花も望むは平穏の世界。星よ、花を導いて。花よ、星となり、平穏の世界の道を拓いて!」
シェーラトリの手の甲に刻まれた聖痕に刻まれているのは風と花‥‥ダークセイヴァーでは見ることの出来ぬ日を浴びて輝く花と、花を優しく撫でるそよ風だ。ヴァンパイアによる圧政から逃れ、夜の世界から抜け出した先にその風景はあるのだと、信じ、願い、求め、そして切り拓く力だ。
「さぁ、わたしと往こう! 悪い蝶は私が払うから!」
憧憬は機械さえも砕く力となり、背に取り付けた薄翠の翼は白い花の花片を一層舞い踊らせる。
シェーラリトは己のユーベルコードが舞い踊らせる花の名を知らない。それはきっと故郷の世界にはない花なのだろう。遅れて展望室に入ったシェーラリトは星屑に見立てたミュゲの花片を拾う時間がなかったし、そもそもミュゲの花がどんな花なのか知らない。だけど今青い蝶を巻き込み自由を奪う花は、確かにミュゲの花びらにも似ていた。
花片は蝶を麻痺させ、姿を消した敵をも勘が捕らえて攻撃が来ると攻撃の手番を増やして迎撃する。
「二人とも、凄い‥‥」
クラリスは花と宝石の乱舞に思わず溜息を吐いた。
自身を新米と自覚しているクラリスにとって、彼女達は憧れを抱く対象でもあった。強さはもちろん、彼女達自身の美しさも。
ファレリアは長い時をかけて凝縮された美の結晶であり、その声もまた心を震わすほどだった。
シェーラリトは小鳥が囀るように朗らかで、野薔薇のような愛らしさは見る者を微笑ませる。
だけどクラリスは違った。何かを塗り潰したかのように黒く、彼女達のような戦闘経験もない。せめてもう少し小さければとも思う。だけどそれでも身体に星を映すことは出来たのだ。その身が黒く、伸ばせることが出来たからこそ。
「今度は蝶の幻覚から守る壁となるのです。身体を広く伸ばせば皆さんを覆う天井になってあの幻の粉から守れるかも」
クラリスはユーベルコードで伸ばした身体を幾重にも折り畳み、人々を覆う傘のようになるとナノマシンアーマーを纏ったその身に蝶の鱗粉を振りかぶった。
「みんな逃げて‥‥! 夢を諦めない‥で‥‥」
クラリスは色とりどりの絵の具を握って避難する人達に呼びかける。黒しか色を持たぬ自分の代わりに、この人達が色取り取りの夢を描いてくれるように、そう願いながら。
鱗粉はクラリスの意識を朦朧とさせ、クラリスはやがて夢の中に入る。
夢の中で彼女はファレリアの宝石の肌、シェーラリトのような花と羽根を持つ美しく小柄な娘だった。その身に美しく軽やかな衣服を纏い、軽々とステップを踏んで歩く。それはクラリスの理想‥‥夢だったかもしれない。もし自分が彼女たちと同じであったなら、せめてもう少し女の子らしく小さければという──。
「クラリスさん、クラリスさん、しっかり‥‥!」
「もう終わったよー。クラリスのおかげでみんな無事に逃げたからねー」
クラリスが気づいたとき、心配そうに己を見下ろすファレリアと、安堵させようと微笑むシェーラリトがいる。そしてクラリスの黒い手を二人はしっかりと握っていた。
(クラリスが小さくないのも、意味あることなのかもって思いました)
クラリスは意識を取り戻すと二人の手を握り返した。
蝶を退け人を逃がした少女達は微笑み合う。夜空は暗く真っ黒でも、宝石のような星を抱いて輝いているし、星屑は花片のように夜空から舞い降りるのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロム・ハクト
「好きにさせるかよ!」
蝶の群れに飛び込み、極力他者や施設を巻き込まないようにUC人狼咆哮。
一般人の避難誘導は基本的には他任せ。
但し、避難の動きが鈍いようならUCの妨げになると判断し、誘導。
襲われそうになっている所に、からくり人形のフェイント込みで攻撃して隙を作る。
UCはなるべく蝶が群れ固まっている、猟兵などを巻き込まない所で使用。
巻き込まないつもりだが、完璧にってわけにはいかないかもな。
そん時は、少しは堪えてくれよ。あんたら(猟兵達)なら大丈夫だろ。
蝶が残った場合囲まれる形になるが、気にしない。
負傷は厭わない&他の猟兵が上手くやるだろうという判断から。
カーティス・コールリッジ
てのひらのねがいのかけらを胸に
なくしたくないもの
まもりたいもの
おれにも、できたから
……だから
だから、おれは俯かない
コール!CC、出ます!
ゴッドスピードライドで機動力を底上げして蝶を撹乱し乍ら
序盤は一般人の避難誘導にあたる
歩けない子どもやお年寄りがいたらStingrayに乗せて運ぶ
蝶の矛先が一般人に向いているときは全力で庇う
おちついて!
だいじょうぶ、おれたち解放軍がみんなをまもります!
戦線に復帰したら残HPの低い個体を狙ってクイックドロウ
個体数を減らすことに重きを置いて立ち回る
"Ready, aim… fire!"
早撃ちなら、おれ、まけないよ
まぼろしごと撃ち抜いてみせる
後ろは任せて!援護します!
ユーノ・ディエール
アドリブ連携歓迎
人の夢を砕く事を好むとは――悪趣味にも程があります
私達が命懸けで手に入れたこの世界の平穏を
二度と失うわけにはいきません!
先ずは尖兵、青き蝶の群……。見覚えはありますが、同じ個体でしょうか?
幻惑してくるならば、その前に徹底して叩くのみです
姿を消してかく乱を狙うのであれば、それ自体を無力化する!
騎乗したクルセイダーで戦場全域を強行索敵
虹界曙勁で念動力を放ちながら最高速で飛び回り全域を走査します
更にレディエスコートを全機展開、隠蔽されている敵を発見しましょう
大体で構いません、見つけ次第全武装で先制の一斉攻撃
仲間が攻撃し易い様に徹底して砲撃支援を行います
あの船を絶対に、やらせはしない!
●流れ星に吠える
見上げる宇宙は美しかった。例えそれが宇宙船という箱庭の中の、銀河を映し出した偽物であっても。
「人の夢を砕く事を好むとは‥‥悪趣味にも程があります。銀河や星屑が偽物でも、それを楽しむことが許される私達が命駆けで手に入れたこの世界の平穏を二度と失う訳にはいきません!」
ユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)の青い瞳は氷の刃のように鋭く睨み据える。宇宙船で旅を続ける人達の心を慰めるために作られた幸せの降る宇宙を、愚かしいと笑いながら蹂躙する赤いドレスの女のその先兵──青い死蝶を。
スペースシップワールドを支配した銀河帝国が倒すのに多くの者達が死んでいった。クリスタリアンであるユーノの故郷もまたエネルギー供給のための結晶体の隠れ棲む場所として狙われ、船団ごと攻撃を受けて悉く狩り尽くされた。そして己一人を逃がす為にも──。
「みんな‥‥なくしたくないもの、まもりたいものがおれにも出来たから。だから‥‥!」
カーティス・コールリッジ(CC・f00455)もまた今は亡き自分に名前を与え、そして宇宙の藻屑と命を散らしていった船の仲間に向けて独り言ちた。夢が叶う白い花片を、決意を込めてぎゅっと宇宙服のグローブの上から握りしめる。
それは宇宙に散って星となった仲間達がカーティスに贈った夢の切符。カーティスはその切符を持って星々を旅し、いつか仲間が夢見た自然豊かな星を見つけ、大地にしっかり足を付けて星空を仰ぐつもりだったのに──。
だが青い蝶は夜空に星々が描く未来へと続く線路‥‥銀河さえも消してしまった。
「だから、俺は俯かない! 夢への道は俺が取り戻してみせる!」
「ああ、好きにさせるかよ!」
カーティスが睨み据える横でクロム・ハクト(人狼の人形遣い・f16294)もまた気を吐いた。
クロムには過去がない。叶えたい未来もない。だけど狼の少年はそれゆえに現在という時を侵してくる侵略者を憎んだ。
仄かな色を宿した星屑は青い電子の蝶に喰われ、夢を見るために集まった者さえも喰らおうと舞い降りてくる。クロムの目にはそれがまるで未来からの侵略者のように見えた。
「とにかくあの蝶を人に近づかせなければいいんだろう? 避難誘導は任せた。カーティス、俺の側からなるべく人を引き離してくれるか? 俺は逃げるための隙を作る」
「了解! コール! CC出ます!」
カーティスは宇宙バイクStingrayに乗り込むとユーベルコードを唱えた。『ゴッドスピードライド』は宇宙バイクを河を泳ぐ魚のように変形。アクセル吹かせて宙を走り出すと青い蝶がその後を追う。その姿は銀河をパイロット・フィッシュのように青い蝶を人の波に逆らい先導する。
「おちついて! だいじょうぶ、おれたち解放軍がみんなをまもります!‥‥っと、おじいさん、後ろに乗って!」
家族や若者連れで賑わう展望室内に老人が混じり、皆と同じようには走れないのを見つけると、カーティスは老人へと急行した。
老人の人生は子供よりも若者よりもカーティスよりも早く尽きるだろう。だが老人だって未来を夢見てもいいはずで、それを挫かれるのをカーティスは見過ごせなかった。
何故なら彼は未来の道標になると誓ったから。老人の見る夢が過去の追想だったとしても、それは老人が生きていくための糧、心の支えであるはずだと。
そしてユーノもまたその生物とは到底呼べぬ金属の飛来物を間近に見て確信すると、彼女の纏うドレスオブアウローラと同じ白い機体『ディアブロクルセイダー』へと乗り込んだ。
「皆さん、この蝶は幻惑を見せたり念動力で物を操ります。また透明化するので気を付けてください。蝶が触れているもの全てです!」
覚えもあるはず──そう、ユーノにはこの依頼を引き受ける前も青い蝶と戦った経験があった。それゆえに敵の能力の厄介さもよく知っている。
ユーノが知る限りこの青い蝶には高威力の攻撃力はない。だが幻惑と透明化、そして遠距離からの攻撃で被害者を増やし、広範囲に攻撃を仕掛けてくる。逃げ場のない閉鎖空間では被害が拡大する恐れがある。だから青い蝶が一般人に近づく前に上空でどれだけ払い落とせるか、それが最終的に勝敗を決する鍵となるだろう。
念動開放。
ユーノのユーベルコード『虹界曙勁』が放つ七色の光は、飛来する蝶をサファイヤの瞳に捕らえると、次々に念動力で操って払い退けると同時に壁にぶつける。そして映像によってカムフラージュされた壁がどこかを把握すると高速ターン、衝突を防いでいた。
魚のように流線を描くカーティスと、ユーノの虹色のジグザグな稲妻型の軌跡が、幾度も展望室内で交差する。
「Ready,aim‥‥ fire!」
クイックドロウ。カーティスの熱線銃が幻惑に囚われた人にたかろうとする蝶を撃ち落とした。
ただダメージを与えただけではすぐに復活しまた襲い来る。だからカーティスは確実に一匹一匹を撃ち取ることを心がけた。地上には下りる前に少しでも数を減らすのだと。
カーティスの早撃ちが次々と蝶にトドメを刺す中、クロムは絡繰り人形を取り出して動かす。指先から伸びた糸に操られたそれは巧みな操作で人間と見紛うような動きをして蝶を欺く。
だけど時折何かの壁に当たった。それこそが透明化した人の壁、蝶が作り上げた生きた障害物である。
「大きいものなら位置を掴めます。蝶を追い払えば透明化も解除されるはずです」
頭上からユーノの声が降る。
ユーノは自律型隠密斥候端末群・レディエスコートを放つ。それは蝶の群れに覆われた見えぬ人柱の位置を確実に捕らえた。クロムは蝶を引き剥がそうと絡繰り人形を操り、蝶をこちらへと誘う。
「高度なプログラミングが施されていても所詮機械は機械だな。人間と人形の見分けもつかないのかよ」
クロムが吐き捨てて言うように青い蝶は動く人型のものなら見境がない。夢を食らっても所詮は心を持たぬ機械。心ある機械で出来た仲間達とは違うのだとクロムは思った。そしてユーノが全武装一斉に砲撃で蝶の動きを阻害、自分の周辺から救出すべき人々が離れたのを知ると宙を見上げる。
白い宇宙用戦闘服に身を包んだユーノとカーティスが流れ星のように駆け巡っているのを見ると、クロムは二人に願を掛ける。
(そろそろ行くか。なるべく巻き込まないつもりだが‥‥完璧にって訳にはいかないかもな。そん時は、少しは堪えてくれよ。あんたらなら大丈夫だろ)
それは夢持たぬ少年が仲間へと託す想い。未来を切り拓くための祈願。
クロムはからくり人形の動きを止めると、流星に向けて激しい咆吼を放った。
叫びは震動となって展望室全体を揺るがす。群がろうと近づくものは全てに体当たりし、牙が噛み裂き、電子の翅を引き千切った。蝶が仲間の死骸を礫として操り投げつけるのを避けもせずにそのまま受け止め、増える傷をも厭わなかった。
(俺には他のやつみたいに叶えたい夢なんてない。カーティスやユーノのように縦横に宇宙を飛びかい戦う力も。だけど地上にいるしかない俺にも出来ることはある!)
それは少年の中に封じられた獣の雄叫び。地上から星を焦がれるしかない者の足掻き。年若くともクロムが血に飢えて貪欲な狼である、その証。
次々と蝶を鋭い牙の餌食としていくクロムの上空、白い流星が二つ、尾を引き流れる。流れ星に願うのはただ一つ。
狼は再び流れ星に向かい吠えた。この時を、続く未来を守り抜くのだと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『パイロフィリア』アドミラル・ガーネット』
|
POW : ―紅き爪―ガーネット・クロウ
【炎を指に宿し形成した、非常に長い炎の爪】が命中した対象を爆破し、更に互いを【焼き尽くそうとする業火で出来た首輪と鎖】で繋ぐ。
SPD : ―燃焼偏愛銃―パイロフィリア・バスター
【霊力消費で射撃を行う彼女のカスタム片手銃】から【凄まじき連射で放たれる無数の火炎の弾幕】を放ち、【被弾の衝撃や炎の苛み、着弾で発生した火種】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : ―煉獄庭園―フレイム・オブ・ザ・ゲヘナ
【着弾と共に広範囲を炎で包むナパーム手榴弾】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を広く猛々しく燃え盛る炎で染め上げる事で】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●赤いドレスの女
青い蝶は駆逐され、星々は再び天に灯るかと思われた。
だが──。
いつまでも展望室で佇んでいる女がいた。
青い蝶の催眠効果により立ち竦んでいるのかと思った黒いコートと帽子のその女は、猟兵が強い口調で避難を促すと猟兵の腹に赤く伸びた炎の爪を伸ばした。
間一髪。もし接近したその瞬間、黒いコートの裾から赤いスカートが覗かなければ猟兵の腹は鋭い爪に貫かれ、臓腑は炎で焼かれていたことだろう。
赤──それはグリモア猟兵が予知した血と炎の惨劇の色。
女は赤い口唇を微笑ませると、女はコートと目深に被った帽子を脱ぎ捨てた。
赤く長い炎の河のような髪が流れ落ちた。ドレスの裾が翻って波打つと同時、爆音は響き炎の海が現れる。
「馬鹿としか言いようがないわね。夢見たまま炎に抱かれて死んだ方が良かったんじゃないかしら? でも愚か者は嫌いじゃないわ。醜く足掻いて助けてと懇願しながら焼け爛れて死んでいくのを見るのはね。私はアドミラル・ガールット、炎を愛する女よ」
展望室の中の様子をモニターで観察していたマレークが眉を顰めた。
アドミラル・ガールット‥‥それは銀河帝国の敵将の一人であり、パイロフィリア(炎偏愛狂)とも呼ばれ一際残忍さで知られた女だった。
彼女が最初からこの展望室内に潜んでいたのなら、先の猟兵達の戦い振りは見ていたはずだ。それは一人対多数のハンデを跳ね返すのに十分なほど。ましてや銀河帝国で幹部となるだけの実力はある。
「この戦い、楽ではないぞ」
だがマレークは呟くのとは別に猟兵達を信じていた。
必ずや炎に打ち勝ち、この宇宙船に乗る人々の未来を奪い返してくれると。
クロム・ハクト
誰か他人の夢へ、俺に出来るのは夢を守ることくらいだ。
夢を描くことも、掴むのも、できるのは本人だけ。
それなら夢を砕くことはできないし、させない。
そういうあんたは(オブリビオンとして)何度終わった同じ夢を見てるんだ。
隙を見て咎力封じを仕掛ける。
人狼咆哮は仲間を巻き込む事、
からくり人形を使ったならオペラツィオン・マカブルも読まれてると考え、
咎力封じにUCを絞る。
戦闘中、武器はからくり人形をメインに。
予備動作(脱力しオペラ~の体勢を装う)か、仲間の攻撃などで
(【フェイント】も読まれているなら仲間の動きに期待する方がより確度が高いかもしれない)
こちらを攻撃・注意対象から外したタイミングで咎力封じを使用。
マリス・ステラ
【WIZ】真の姿を解放
「主よ、憐れみたまえ」
『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光は『オーラ防御』の星の輝きと星が煌めく『カウンター』
「灰は灰に、塵は塵に」
あなたを骸の海に還します
弓で『援護射撃』
重傷者には【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用
最終局面で真の姿を解放
「世界を革命します」
刹那、世界が花霞に染まる
頭に白桜の花冠
服は聖者の衣
背から聚楽第の翼がぎこちなく広がる
星枢で炎の領域より魔力を吸い上げ、聚楽第が星々の輝きを収束させる
「銀河の涯に」
手の中の願いを叶える白い花弁が星の滴に変わる
瞬いて疾る箒星のような光の『属性攻撃』
首輪と鎖で繋がれたのは彼女とて同じこと
あなたに魂の救済を
ユーノ・ディエール
アドリブ連携歓迎
同族――ですか?
それでも、人々の生命を脅かすオブリビオンならば倒すのみ!
私の思い、叶うならば亡くした人達へもう一度思いを伝えたい
たとえそれがどんなに愚かしい事であろうと……
分かっています、戦士として情けない願いかもしれません
それでも魂を賭して得たこの平穏を、皆の思いは無駄ではなかったと
それを私はこれからも――証明し続ける!
皇帝を屠るべく得たこの業
まさかこんな所で使うなんてね
やってみろ、私を幾ら封じても
その瞬間に貴女の敗北が確定する
動きを封じられたら発動する自動反撃の光で牽制し
衝動のままに最大出力の超念動衝撃波を浴びせ続けてやります
生ける者を冒涜する亡者よ、大人しく骸の海へ還れ!
ヴィリヤ・カヤラ
父様と母様がまた出会えますようにって
願いは叶わないのは分かってるし、
私の事は何を言われても否定されても構わないけど、
両親どちらかでも悪く言うのは許さない。
もし敵が馬鹿にするような事を言うなら絶対に許さないよ。
「消えて」
【瞬刻】で加速して斬りつけに行くね。
敵を前にしたら神経を逆撫でされても常に冷静にと
教えてくれた父様の言葉は忘れないように動かないとね。
炎は【四精儀】の氷の波で多少は抑えられるかな?
ダメージが大きそうなら、それを利用して
【黒霧】で自己強化を試みるね。
動ける間は全力で攻撃しにいくよ。
アドリブ・連携歓迎
リュカ・エンキアンサス
マリアドールお姉さん(f03102)と一緒にいく
アドリブ◎
ん。警戒されている……か。
じゃ、ひとまず銃からは手を離しておこう
マリアドールお姉さんの召喚してくれた一角獣が劣りになってくれてる間に近づく。
レプリカクラフトで閃光弾やめくらましになる罠を作って、
徒手で接近
そのまま殴りかかると見せかけて、クイックドロウで銃弾を打ち込む
タイミングは、お姉さんの攻撃に合わせてなるだけ同時になるようにする
撃ったら即座に下がる。その場にはとどまらない
一角獣の影に隠れるようにして死角に潜り込んでから、銃弾を撃ち込んでいこう
そうだね。最善を尽くそう
この世界が、少しでも平和になるように
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
夢:片思いの相手に想いを伝える
否定されても関係ない
想い続けるだけだ
その向き先が私ではないとしても、あいつが幸せならそれでよい
UC対象はアミドラル
「そっか、見ていたか…」
【携帯食料】を食み全身の細胞を活性化させ二っと笑う
活性化させた脳細胞で【学習力】を強化
狡猾には狡猾を
偏愛には偏愛を
短時間だが学習できた。それに炎偏愛に細胞達が反応している
「ならそれを超えれば良い」
SPD
室内の配置、敵の行動、猟兵の位置を把握
「見られている」【ダッシュ】を多用して攻撃し相手を油断させる
【目立たない】よう調度品を拾い隠し持つ
慣れた頃を見計らい調度品を投げ隙を作り【ダッシュ】に【残像】とUCを乗せる
ヴォルフ・ヴュンシェン
人々の避難を終えてきたらこれか
(馬鹿に馬鹿と言われるのも定番だな)
話は聞き流し、言葉も発しない
派手好き相手だからこそ敵の動きはしっかり見る、移動音動作音は聞き漏らさないといった地味な基本をしっかりやろう
味方と即興の連係を取る形で【忍び足】で不利な陣形にならないよう位置取り、味方の攻撃直後に【ゲベート・レークヴィエム】を【2回攻撃】【鎧無視攻撃】で撃ち、攻撃直後の味方が反撃されないようフォロー
撃ったら、【ダッシュ】でその場を離脱
自身に攻撃が向いたら【カウンター】で顔を狙って【衝撃波】を撃ち牽制
「炎はお前の欲<アイ>など迷惑だってさ。惨めでみっともないな。思い込みとは恐ろしい」(にっこり)
プラシオライト・エターナルバド
サポート・回復役
貴女の激情偏愛の炎、消しに参りました
念動力で浮かせたエレノアで
死角から毒弾、麻痺弾、衝撃波を撃ったり
トリックスターで武器を奪おうとしたり
敵を苛つかせる事をして、激昂させられないかと
戦いには冷静さも必要ですから
攻撃を受けた猟兵や自分には
即座に回復弾を撃つ
大型の攻撃には
UC「カラーチェンジ」で炎を撃ち消し
他の猟兵が突撃する道をお作りします
自分に関してはいくら否定されても構いません
ですが…同じクリスタリアンではございますが
私、ヒトを見下して嘲笑う輩は好まないのです
全員が全員、ではございませんが
手が届かないかもしれない夢に必死で手を伸ばす…
なかなかに面白く、美しい生き物だと思いますよ
カーティス・コールリッジ
初手バトル・インテリジェンス
後衛にてクイックドロウで応戦
長い爪を
仲間を繋がんとする炎の鎖を
宙を舞う手榴弾を
仲間達を阻まんとする相手の手数を着弾する前に撃ち落とせるように
ひとのすがたをした彼女を撃つことはこわい
でも、それでも
ゆずれないものの為に戦うことを、みんながおしえてくれたから
おれたちの戦いを見ていたのかもしれないけれど
奥の手は、かくすものでしょう
それはあなたにとっても――おれにとっても!
KOできそうな位相手が弱ってきたらSparklesで一気に削る
炎を押し消す程の一撃を叩きつける!
星の民は、あたらしい一歩を踏み出したばかりなんだ
だから、おれはまよわない!
みんなのゆめを、あきらめたりしない!
クラリス・ノワール
WIZに対応
絡み、連携歓迎
【】は技能です
綺麗なものを見たい
綺麗を知る…綺麗な女の子に、なりたい
無自覚だった夢を嘲られたら挫けそうになるけれど
新米でも自分の言葉は裏切れない
夢を諦めないで
今度は自分を【鼓舞】するのです!
弱くても、負けない為に
今は無理でも、いつか辿り着く自信にする為に
今の力と想いの力
バウントボディと輝く流星を組み合わせ
【激痛耐性】と【勇気】を力に
伸ばした腕で炎を貫いて死角から閉じ込めるのです!
侮っていた相手に不意を突かれ
炎も消され夢の象徴の星を見せられたら
怒って惹きつけられると思うから!
ずっと幸せな星を掴む場所のまま
クラリスもいつか描きに来る為に
この場所の未来、返してもらうのです!
ファン・ティンタン
【WIZ】炎VS冷気
【ヤド箱】で参戦
帝国残党の人?
余生くらい静かにすればいいのに
まぁ…炎はいつか火種を失って消える
終わりが早いか遅いか、違いはそれだけだよ
【精霊使役術】で氷精フラウを呼び出し、魔力を供給し能力を底上げ
攻撃は氷精に任せ、自身は再び戦況把握に努め【情報収集】を継続
自身は氷精への指示や、仲間の行動支援に徹する
敵をナパーム弾ごと極低温の気流渦に閉じ込める冷気【属性攻撃】を放つ
燃焼阻害により敵に有利となる陣形成を妨げる
必要に応じて、仲間の攻撃や防御行動に冷気を付与する事で【パフォーマンス】を向上させる
悲願:元主の仇を討つ
否定されようと、自らが生み出された意義を掲げて、命がけで遂行するだけ
桜雨・カイ
【ヤド箱】で参加
【火炎耐性】【オーラ防御】で炎をこらえながら
延焼しないように、まずは【念動力】で施設内の消火器で消火
敵に対しては、ファンさんの冷気の力を借りて【属性攻撃】で攻撃
あえて考えないようにしていたけれど。
主が戻ってこないのは…自分はもう必要とされていない、のかもしれない。
確かに愚か者かもしれないですね
でも……否定されても、それでも私は諦められないんです
そして他の人の夢も叶えて欲しいんです
敵の強力なUCが来たら【かばう】【柳桜】発動。UC相殺と周囲の人達を回復
ありがとうございます。これで皆さんを回復できます
ステラさんのUC発動時に邪魔されないよう【なぎ払い】【範囲攻撃】で敵の攻撃を払う
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】ファン、カイ殿と参加
夢を見たまま死ぬなど誰が望むか
少なくとも、すでに過去たるお前に殺されるなど望まないだろうな
ファンの冷気とカイ殿の回復がある
私は仲間を信じ恐れず【勇気】を持って敵の目前へ
紅き爪の攻撃を誘うように【存在感】を出す
攻撃を【激痛耐性】で耐えわざと首輪と鎖で繋がれる
仮初の体だ。剣を振るえれば構わない
叶わぬ願いを抱き続け諦めた星が
人の願いを叶え守ろうとするのは滑稽かもしれない
いや、叶えられなかったからこそ私は守りたいんだ
尊き人の願いを
儚き人の夢を
そのためにお前の願いは斬り捨てる!
鎖で動きを制御し本体たる【流星剣】を【投擲】し【凶つ星】
願い星であるがお前にとっては凶星だ
ファレリア・リトヴァール
あら、貴女も炎を使いますのね。
けれど焼くだけなら子供でも出来ましてよ?
誰かを救うのは無意味と仰います?
私が救った『誰か』は、いずれ何かを生み出しますわ。
子を産むかも知れないし、芸術品を生み出すかも知れない。
技術、縁、笑顔、そして夢。
炎で全てを焼き尽くし、後に何が残りまして?
私の夢に貴女は邪魔でしかありませんからご退場願いますわ。
私の頼もしい『お友達』を召喚。(サモニング・ガイスト)
さあ行きますわよ、お友達!
穢れた炎を浄化して差し上げましょう!
(炎に炎では相性が悪いかも知れませんけれど
攻撃を仕掛け隙を作る事で仲間が攻撃しやすくなる様努めますわ。
お友達の槍で地形上の炎を振り払う事も試しますわね)
マリアドール・シュシュ
リュカ◆f02586
アドリブ◎
…マリアの音が警戒、されている気がするわ(紅炎の女を前に星眸が曇る
敵の動きが一枚上手なのよ(マヒ攻撃を付与した竪琴の楽器演奏が上手く通らず
ならば
マリアのおともだちの力を借りるのだわ
高速詠唱で【華水晶の宴】使用
30体の一角獣召喚
10体で挟撃し派手に動き撹乱(囮兼用
14体合体させ角で強烈な攻撃
各3体ずつマリアとリュカを護衛
盾となり障害物にもなる
一角獣で翻弄しリュカの目晦ましで隙が出来た所をリュカと同時に叩く
一点集中で音のナイフの様に竪琴で奏でる
黄昏の光の言の葉(こえ)も音に乗せて紡ぐ
星に願ったように
マリアはマリアの願いの為に今出来る最善を掴むわ
リュカ、あなたと一緒に
渡辺・紅牙
夢想に身を委ねて、か
確かに私の師匠へはそうでもしないと会えないだろうね
だけどその師に拾われ、救われたこの命
そんな理由で手放す事を、あの人は望まない
というよりそんなことしたら、冥府でも殺されかねないね
まあそういう訳で
【鉄流呪術・水符【水龍】】展開
その炎からは『温もり』が感じられない。ただ暴力的な熱だけだ
<オーラ防御><破魔>
ならこの護りで相殺してみせる
<第六感><ダッシュ>勿論当たらない事に越した事はない
熱いのも好きではないしね
弾幕を避けつつ接近
<フェイント><鎧無視攻撃><属性攻撃><グラップル>
そして水の呪力を載せた私の間合い、騙しを交えた格闘戦へ
人の夢を愚弄したんだ
これ位の罰は受けてもらう
白藤・今鶴羽
・夢
ある意味、夢より生まれ出でしこの身には。
それは親であり、故郷であり、郷愁であり、想い出であり、そして自分自身でもありましょう。
そして思う通りに往かぬからこそ夢は輝き、曇るのもまた自分の想いの故でしかない、かと。
・踊り手は、青から赤へ。
舞台もまた、星降る暗闇から、煌々と燃ゆる炎獄へ。
ならばさらに移ろうのもまたむべなるかな。
如何なる色にうつろうのかは、定かではありませんが…
・スプラッシュをメインとします。
ダメージを与える事よりむしろ、地形を塗り替える事が主目的です。
芸のないこと、と無視すれば地形は染まり続け、薙ぎ払おうとするならこちらに注意が向いて、他の方へ隙を晒すでしょう。
キティ・エウアンゲリオン
赤は私にとって特別な色。
情熱的な薔薇や、恋する乙女の頬の色、ダンピール相手に慈悲で分け与えられた血液の色とか、愛し合う女の純情な真っ赤なルージュとかね
ここに愚か者なんて一人もいないわ
戦う理由はなんであれ、悪たる貴様をここで倒す
いるのは、ただ、貴方を排除しに来た勇気ある猟兵ばかりよ!!
シンフォニックキュアで歌う
元騎士だったけど、お母さまが歌ってくれたあの歌を
強く、そして優しい炎の精霊の歌。アドミラル、貴方にはわからないでしょうけれど、炎だって誰かの手先を温める、そんな優しいものなのよ!!
この戦場、彼女の炎に苛まれるのならば、その傷、自分が癒します!!
後衛に立ち歌う、ひたすらに猟兵のために。
ロダ・アイアゲート
青い蝶の次は、赤い女ですか…
これではせっかく降った星屑も燃えてしまいますね…
UCで相手のUCの相殺を狙う
炎の反対は水ですね…
銃のバレットを予め魔法弾に変えておきましょう
仲間が襲われていたら【武器受け】で【かばい】、射撃による攻撃を
演算デバイスで相手の行動を分析しつつ、状況に応じてビームキャノンに切り替えて撃つ
夢…かつて夢見たもの
マスター(製作者)に必要とされる夢
叶わないと分かっている
でも追い求めてしまうもの
…貴女が何と言おうと私はマスターを探します
聞かなければならない事がありますから
星屑を取ることは諦めてしまったけれど、それでも明日へ進む為に貴女に負けるわけにはいかないのです
アドリブ・共闘歓迎
●星と影 恭介・マリス
『いつまでも想い続けるなんてバカじゃないの? フラレても構わないってそれってただの自己満足、想われてる側にしてみれば脅迫めいて気持ちの悪い話。はっきり断ってもまだ見込みがあるんじゃないかって、それってストーカーの発想じゃない』
赤いドレスの女は片思いを嘲笑う。まるで7回同じ相手に告白した仁科・恭介(観察する人・f14065)の心を見透かしたように。
恭介には長年想いを寄せる相手がいた。同じ親方の元で修行した兄弟弟子だ。猟兵となったその人とは昔のように毎日顔を合わせることはなくなったけれど、慕う心は離れず募るばかり。
再び会ったらまた告白するのだと、大切に気持ちを温めているけれど‥‥それすら迷惑だと赤いドレスの女は言うのだ。
(本人に言われるなら考えもするさ。だがオブリビオンに言われたくはないな)
断られても諦めきれぬ想いを執念と呼ぶのなら、確かにこの気持ちはそうなのだろう。
いつかは振り向いて貰えるかもしれないという期待がないと言えば嘘になる。相手が自分を選ばずとも想っていられればそれで良いと言いながら、秘めてはおけずに想いを告げずにいられないから。
それが相手を精神的に追い詰める迷惑行為だと言われれば否定は出来ない。
だが‥‥相手から気持ちを否定されたことはただの一度もない。ただ想いに応えられないと、そう言われただけだ。
恭介は携帯した干し魚を取り出し食い千切った。活性化した脳細胞は女の裏を搔くべく学習能力を強化する。
「そっか、『見て』いたか。ならそれを越えればいいよな?」
「ええ、それほど見たいのなら見せてあげましょう。目を逸らすことも叶わないくらいに」
マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は星の力を宿した指輪を嵌めた手をもう片方の手で握り込み、祈りを捧げる。
「主よ、憐れみたまえ」
伏せた長い黄金の睫を擡げた時、彼女の目には再び星が灯っていた。星辰という名の星形の聖痕が放つ光は、炎広がる空間にあっても赤を凌駕する。
聖なる光の波動がその場にいた猟兵達の傷を瞬時に回復させる。まるで慈愛深き女神の白き御手が優しく撫でて慰めるように。
(あなたが猟兵を手に掛けるというのなら、私はその上を行って癒せばいい。あなたの長い爪が胸を貫くのなら、瞬く間にその穴を塞ぎましょう。あなたの炎が身を焼き焦がすならば、爛れた肌を滑らかに戻して見せましょう)
マリスのユーベルコード『不思議な星』は正に軌跡の力だ。まるで猟兵の身に起きた傷も痛みもなかったかのように打ち消し、癒された者の心には勇気が残る。マリスがいれば怖れることは何もない、決してこの星の輝きは潰えることがないと猟兵達が奮う。
「世界を革命します。あなたを骸の海に還しましょう」
マリスが宣言すると同時、その身からも光が放たれた。
否、それは物理的なものばかりではなく、見に見えぬ存在感、光輝とも呼ぶべきものだろう。桜の精に愛された印である簪が揺れると、花片がマリスを守るように舞って見えた。
神事に用いられる衣装は頭に白い桜の冠を乗せ、腕が白い袖を、足が緋袴を翻すごとに星屑が瞬く。
赤いドレスの女は舌打ちしてマリスにナパーム手榴弾を投げた。マリスの身を、そしてその周辺一帯も炎に巻かれるがマリスの身はおろか火はすぐにも消えて焼くことも出来ない。
マリスの自縛鎖・星棺が炎の力を星の力に変えていることを女は知らなかった。それは燃えさかれば燃えさかるだけマリスの力となり、背にした偽翼・聚楽第がぎこちなく羽ばたくと星の光が矢のごとく降り注ぐ。
「銀河の涯に!」
マリスの手の中に願いを叶える白い花片があった。それは人々の願いの残骸のようにも見えた。
それが今、夢を撃ち砕こうとする女の身を襲っている。
そしてその星達の怒りの滴の中、流星が走った。否、それは流星ではなく──
「油断したな。狡猾には狡猾を。偏愛には偏愛を。俺の特技は『目立たないこと』なんだ」
赤いマフラーを靡かせてダッシュした恭介のサムライブレイトが赤い女の腹を切り裂く。ユーベルコード『共鳴』を成就したその攻撃は深く肉に食い込んだ。
恭介は学習していた。
敵は自分を攻撃対象から外して第三者として身を置くことで展望室全体を見回し把握していた。しかし一対多の状態ではそれが出来ないはず。すなわち誰かに目を強く奪われれば全体に注意が向かず、その分の死角も出来るはずだと。
だから恭介は利用した。マリスのその希有なる存在感を。
女が反撃しようとしてもそれは既に残像、恭介は落ちた蝶の破片を投げると同時にどこへ身を隠したのか姿か見えない。
(これが貴方に照明する私の回答だ。私は彼女の心の向き先が私でなくても構わない。望むのは相手の幸せ、それでいいんだ)
恭介はハンチング帽を目深に被りまた存在を消すと、女の身を切り刻むべくまた走り出した。
●星はまた上る 紅牙・ヴォルフ
『星に願いを欠けても死んだ人は戻ってこない。そんなの分かりきったことじゃない。そうと知りながらわざわざ願を掛けるの、バカ以外にないったら。夢想? 浪漫? 自己満足も大概にして。死んだら終わり。死んだ人が生きることを望むって、それこそ幻覚なんじゃないの?』
「ああ、そうだよ。夢想に身を委ねてしか師匠には会えない。だけどそれすら自己満足の妄想だって知っている。死んだ者が願うこともないってこともね」
赤いドレスの女の暴言を渡辺・紅牙(求道の風来者・f06086)は冷静に受け止めた。
物事には全て裏と表があり、彼女の言うことは夢を見ることの裏の意味、現実的な側面である。だから紅牙はその言葉を否定はしなかった。
けれどその赤い瞳は燃えさかる周囲の炎にではなく、内より出づる怒りの業火の揺らめきに染まっている。
「だけど師に拾われ、救われたこの命を、手放す事をあの人は望まない。私にはそう確信できる。と言うよりそんなことしたら冥府でも殺されかねないよ」
紅牙はまるで心の内を読んだかのように挑発して痛いところを抉ってくる女に向かって己の解を述べた。
女の片手にある銃が紅牙を狙い撃っても紅牙は一歩も怯まない。手にした霊斬の短刀は霊だけではなく、凄まじき連射による炎の攻撃をも斬り捨てる。それはまるで紅牙の怒りの炎が女の怨念の炎を上回ったかのようにさえ見えた
そんな紅牙と女の一部始終を見ている男がいた。ヴォルフ・ヴュンシェン(願う者・f13504)である。
一般人の避難誘導を終えて展望室に戻ってきたヴォルフは、赤いドレスの女が紅牙を侮辱するのを聞いた。それは紅牙だけではなく、慕う相手を失い、それでもなお生き続けようとする全ての者の心に突き刺さるものだった。
アルダワの迷宮で親友を失ったヴォルフとて同じだ。どんなに星に願を掛けたって死んだ親友が戻らないことなど解っている。死んだらそれで終わり。生き残った者を思い続けているなんてあり得ない。だけどそれに反論する気にもなれない。
(避難を終えて戻ってみればこれかよ。馬鹿に馬鹿と言われるのは定番だな。ついでに馬鹿に正論を返すことほど馬鹿らしいことはない。聞くだけ無駄、相手にするのもな)
ヴォルフが一言も言葉を発しないのは怒りのあまりではなく、怒りが頂点を達し呆れの境地に至ったからだ。
そも挑発というものは相手の冷静を掻き乱すことで優位に立とうとする戦法。実際にこちらの事情を知っている訳ではないのだ。そんな作戦に引っかかってやるほど暇ではない。
ヴォルフは女の一挙手一投足を注視した。一般客のふりして現場に居続け、猟兵達の戦闘方法を観察した女に同じ攻撃方法は通用しない。だがヴォルフとて今は観察者。女の行動パターンを読んだ。
(派手好きな女だ。だがその派手は目眩ましか)
炎の爪は己と相手を縛るための目眩ましだ。片手銃の炎は相手の能力を封じるための。そして腰のベルトからぶら下げたナパーム手榴弾は己の戦闘力を高めるための。
「紅牙、初手に騙されるな」
「分かってる。そろそろこちらが仕掛ける番だ。『ミナヅキ』よ、この躰に宿りて、悪しきモノより護る加護を貸し賜へ!」
紅牙がユーベルコード『鉄流呪術・水符【水龍】』を唱える。
紅牙が呪符師であることは知られていても、持ち技全てを知られた訳じゃない。知られたなら知らない技を、火には水を当て対抗するまでだ。
指に挟んだ呪符が水を司る水龍へと姿を変えると、紅牙の身をぐるりと巡り大渦となる。水のヴェールを纏った紅牙が一歩踏み出せば、炎は水に消されて白い蒸気が上がる。
「祈り歌うは生の歌。祈り願うは還の歌。祈り誓うは滅の歌。夢を見る者には生を、夢を撃ち砕く者には滅を!」
ヴォルフもまたユーベルコートを唱えた。その呪文にはヴォルフの切なる願いか込められている。
願うこと、祈ること、夢見ること。その曖昧で不確かなものにも確かな力があることを示すように、稲妻を纏った水晶の槍が降る。それは炎で防ぎようもなく、女ただ一人をめがけて降り注ぐ雨だ。
一度目の攻撃で態勢を立て直そうとする女をそこに繫ぎ止めるように二度目が放たれる。そして自身に銃口が向けられると、青い鱗に覆われた小竜がすかさずドラゴンランスへと変わり、夜明け色のマントを翻してダッシュする。
そして紅牙も水龍を頼みに炎の海を突っ切り女へと迫った。
「炎はお前の欲など迷惑だってさ。思い込みとは恐ろしいね。炎とは焼き尽くし滅するだけのものにあらず。心に宿る情熱だ。炎を操っているつもりで炎の何たるかを知らないお前は惨めでみっともないだけだ」
ヴォルフの余裕の笑みが女を挑発する。そう、正に女が使った手口で。
紅牙は女の爪を躱すと水の力を纏わせた呪甲を嵌めた拳を繰り出す。だがその攻撃はフェイント。来ると思った攻撃が来ないのに女が怯んだその隙をヴォルフが突き、すかさず自身も本撃へと転じて赤いドレスを纏った腹へと拳を叩き込む。
「人の夢を愚弄したんだ。これくらいの罰は受けて貰うよ」
自分の力手倒すことがならずとも一矢は報いる。
その拳は夢を嘲笑われたもの全ての心を代弁していた。
●敵と友 ユーノ・ファレリア
『夢を見たところで何になるの? 叶わないものなら余計に無意味。そもそも死んでしまったら終わりじゃない。不平等な生より平等な死の方がいいとは思わない? 炎は全てを焼き尽くすわ。生きている時の想いも、その人が築き上げた人生も』
赤いドレスの美しい女は見た目こそ人間のように装っていたが、ユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)には分かる。その肌を覆うのはクリスタリアンの宝石の肌を傷つけぬための擬装された皮膜であることを。
「同族‥‥ですか?」
「そのようですわね。何と奇遇なことでしょう」
同族と知って嫌悪するユーノの横でファレリア・リトヴァール(白花を纏う紫輝石・f05766)も穏やかな口調の中に怒りを一匙滲ませた。
ユーノにしろファレリアにしろ、クリスタリアンはその身の美しさや鉱物としての希少性から生きた宝石として付け狙われる運命にある。その為クリスタリアン達は結束して集落を作り、クリスタリアンであることを秘めて隠れ住む者も少なくない。二人ともそういった集落の出であり、彼女達の認識ではクリスタリアンは搾取される側であった。
だが今退治する赤いドレスの女はクリスタリアンでありながら搾取する側に回ろうとしている。夢という、人々の想い、そして希望を。
「ユーノさん、あの人の言葉に耳を傾けては駄目。あの人の過去に何があり、何故銀河帝国に組みしたかは分かりません。でもあの人は今、心から焼くことを‥‥焼き捨てることを楽しんでいるようですわ」
アドミラル・ガーネットと呼ばれる彼女の過去は誰も知らない。虐げられる身の上が虐げる側に回ってやろうとしたり、炎に巻かれた記憶から炎に固執したり。悲哀や憎悪が愛好に転じたということも考えられる。人にはそう言うことも稀にあるのだ。
だが──だからと言って簒奪者に共感する気など二人には毛頭ない。
「人を脅かすオブリビオンならば倒すのみ! 私の想いを亡くした者達へもう一度伝えるために!」
ユーノは女の言い分にこれ以上耳を貸すつもりはないと、言葉を遮るように吠えた。その叫びは己の心を叱咤激励する鞭でもあった。
女の言い分は真理である。ユーノとて死者に想いが届くなどというのは生者の妄想に過ぎないことを分かっている。
死者がどこかで己の成すことを見ていると考えるのは愚か者の現実逃避で、今は亡き者を心の支えにして戦う理由を得ようとするのは崇高な大義名分が欲しいだけだということも。全ては己の心の弱さ、過去を振り切れないだけなのだと。
だがユーノは同時に知っている。人は一人では生きられないことを、例え今側にいなくても追憶は孤独を埋め不安な道程の道標となり得ることも。
今、青い蝶が消えた後の空には再び銀河が映し出されている。まるでユーノが惑わされぬよう死者の魂の一粒一粒が寄り添い合い、銀河となって無限の宇宙に迷わず真っ直ぐに生きよと道筋を描いているように。
だから女の言葉をユーノは否定する。
「魂を賭して得たこの平穏を、皆の思いは無駄ではなかったと、私は証明し続ける! これまでも、これからも!」
女が放った炎の弾丸がユーノの光輝に弾かれ、続くサイキックコアにより増幅・制御された念動の衝撃波が女の身ごと吹き飛ばす。そのまま高速接近して迫ろうとするユーノに続いたのは見たこともない戦士だった。
宇宙戦闘を想定した武装ではなく、むしろアックス&ウィザーズ辺りにいそうな皮鎧に槍を持った古代の戦士──ファレリアのサモニング・ガイストが召喚した故郷を守り死んでいった勇敢なる戦士の霊である。
「ユーノさん、貴方は一人で戦っている訳じゃありません。私も、私の『お友達』も付いていますわ。さあ、行きますわよ、『お友達』! 戦士の意地と誇りに賭けて穢れた炎を浄化して差し上げましょう!」
ファレリアの合図と供に戦士の亡霊は手にした槍に炎を纏わせて赤いドレスの女に突進する。
「誰かを救うのは無意味と仰いましたわね。でも私が救った誰かはいずれ子を、芸術を、技術を、学問を生み出しますわ。でも貴方が炎で焼き尽くした後に何が残りまして? 何も残らない‥‥貴方は平等だの救済だのを謳いながら自分が見たくないものを破壊しているだけですわ」
ファレリアは女の言い分に騙されなかった。一見正論に聞こえるそれに、主張するものの隠れた願望が覗いて見える。
焼却は暴力的で安易なリセットの方法だ。やり直したい、消したい、そういう気持ちが女の中にありはしないかと。都合良く消しても痕跡は残るし、それを繰り返しては何も残らない。炎が好き、炎に焼かれて泣き叫ぶ者を見るのが好きと言いながら、その実見え隠れするのはリセット願望と他人を嘲笑うことで自分が叶えられずに諦めた夢を追い続ける者への羨望だ。
「貴方が何を愛し何を求めようが勝手ですが、私の夢には貴方は邪魔でしかありません。ご退場願いますわ」
ファレリアが命じると戦士の霊が槍を振るい炎が巻き取られる。槍は巨大な火の玉のように膨らんだ。ユーノは己を阻む炎が鎮まり道が開けると、全ての武装、全ての念を解き放つ。
「やれるならやってみろ、私を幾ら封じてもその瞬間に貴方の敗北が決定する。生ける者を冒涜する者よ、大人しく骸の海へ還れ!」
銀河皇帝を屠る最後の技として身につけたそれはユーノの命を削り力へと変換し、衝撃派が嵐の海に逆巻く波のように幾度となく女の身を浴びせる。
女はナパーム手榴弾を放ろうとするが高速移動するユーノに到達することも出来ない。撒いた炎さえも戦士の霊により減らされる。
気づけば女は今や劣勢へと追いやられていた。
●一角獣と乙女と少年 リュカ・マリアドール
『夢はこれから見つけるとか、馬鹿じゃないの? それって「自分探し」じゃない。どこをどう探したって夢なんてものは、理想の自分なんてものはないの。あると思い込んでいるのも馬鹿だけど、これから探すとか、大馬鹿者のすることじゃない』
赤いドレスの女は夢を持つ者だけではなく、夢をこれから探そうとする者さえ嘲笑う。
マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)がリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)を伺って見れば、少年のあまり笑わない顔が険しくなるのを見た。
だが実のところリュカの曇り顔は夢を探すことを馬鹿にされたからではなかった。そう‥‥彼の最も得意とする射撃を見られていたせいである。つまりは実に戦場で作戦の変更を余儀なくされた兵士の顔をしていたのだ。
兵士としては年齢にそぐわぬ熟練振りを見せるリュカは、敵に手の内を読まれたまま攻撃を続けることの危険を熟知していた。どんな優れた技にもそれを実行するに辺り隙が出来、実行したことでデメリットも生じるものだから。
リュカは銃から手を離し、女が他の猟兵と交戦している間にマリアドールに告げる。
「マリアドールお姉さん、少しの間、敵の目を惹き付けておくことは出来るかい?」
「ええ、リュカ。喜んでお友達を呼ぶわ。だからリュカはリュカの思う道を進んでね?」
マリアドールは夢を探すことを諦めないでと、暗に想いを込めて囮となって時間を稼ぐことを引き受けた。
マリアドールが星に願ったのは「幸せに満ち溢れる楽しくて平和な世界」だった。それは誰もが夢を見ることが出来、誰もが夢を追うことが出来る世界だった。
その夢が叶わぬものであったとしても、想いを抱くこと、夢を求めることを否定されぬ優しい世界。それは弱き者も、傷ついた者も、孤独な者も、全てを包んで広がる広大な宇宙の如きものであるはず。天に散りばめられた星はたくさんの人のたくさんの夢を灯すキャンバスなのだと。
赤いドレスの女は猟兵達の心を折るべく挑発的な言葉を繰り返したが、マリアドールの星にかける願いを否定した訳では無い。だが夜空に描かれた夢という名の音符達を否定し、星々が歌い奏でる暖かな世界の音楽を否定されることを許せるはずもない。
少女の愛らしい容は今、クリスタリアンの硬質な冷たさへと変わっていた。
夜空色のフリルを配したドレスの裾を翻して一歩進み出たマリアドールが宣言する。
「可愛い可愛い一角獣さん。さぁ、いらっしゃい。その力を今こそマリアに見せて頂戴」
水晶の一角獣を呼ぶマリアドールの声は乙女らしい鈴が転がるようなものだったが、耳を飾る茉莉花の花環を通した響きは、凜とした戦乙女の正義の怒りに燃えていた。
ユーベルコード『華水晶の宴』により呼び出された30頭の一角獣の群れは赤いドレスの女へと角を向けて突進する。
乙女以外には触れさせないという誇り高い獣は、乙女の要請に応え炎の中を駆け回る。その鉱石の身は煙に煤けても、焼け爛れることもなく、リュカへ視線を向けぬよう立ち回る。
マリアドールは10頭を誘導に使うと、残りを合体させた。14体を合身させたものには角での攻撃を、3体を合身させたものにはそれぞれリュカとマリアドールの護身に残した。盾としてあるいは壁として。
(さすがはマリアドールお姉さんだ。おかげで仕掛けを作ることが出来た。そろそろ行くか)
リュカはユニコーンに守られていた。否、守られているふりをしてユーベルコード『レプレカクラフト』で罠を作成していた。材料はこの場にふんだんにある青い蝶の残骸。青い点滅が数匹、赤の女王に引き寄せられるようにひらひらと舞い寄っていくが‥‥それもまたフェイク。赤いドレスの女の元まで近づくと強い光を放つ。
リュカは蝶に仕込んだ閃光弾が爆ぜるとそのまま女に駆け寄る。マリアドールのユニコーンが、そしてマリアドールの黄金律の竪琴の音の刃に動きを鈍らされている今が好機だ。
繰り出した拳は接近するものに気づいた女の指先から伸びた爪によって阻まれたが、その爪から逃れて飛び退くその際こそリュカの本領。
リュカが背負ったアサルトライフルの銃口が女へと向き、零距離から弾丸が放たれる。
『灯り木』と名付けた愛銃は元々狙撃用だが連続した速射や近射に使えるように改良を加えてある。星を撃ち落とすのではなく、星をばら播くようにライフルは火を噴き、女めがけて一斉に撃ち込まれる。
(狙撃手としては数打ちゃ当たるって言うのはどうかと思うが、このくらいやらないと勝てない。戦場では定説も常識も通じない。ハングリーに、クレーバーに立ち回ったヤツだけか勝ち残る)
リュカの銃撃は確かに女に命中したが、リュカはそれで女を倒したとも、大きなダメージを与えたとも考えず、むしろ当たったに見えて何ら戦闘力が落ちていないことを見越して次の行動に移る。
女の元から素早く離脱すると、マリアドールの命で割って入ったユニコーンの死角に潜り込み、定位置から女の手にした片手銃を狙う。
リュカの弾丸が女の手の甲に命中する。他の猟兵を撃とうとした銃は手から零れ落ちた。
(諦めずに最善を尽くそう。この世界が、少しでも平和になるように)
(星に願ったようにマリアはマリアの願いのために今できる最善を掴むわ。リュカ、あなたと一緒に)
少年は戦場を駆け回る。
星空を模したマフラーを巻いて。少女の願いと、夢が叶う花弁と同じ純白の一角獣に守られながら。
●流星少女 クラリス・キティ・ヴィリヤ
『美しい世界? はっ、何を言ってるのかしら。この世に溢れる雑多で統一性のない色を赤く赤く燃やし尽くして全てを飲み込む黒へと変える。それが炎の力。その力の前にひれ伏しなさい。そうすれば少しは楽に逝かせてあげる』
赤いドレスの女はそう言って黒い少女・クラリス・ノワール(ブラックタールの新米絵描き・f07934)を見て嘲笑った。
クラリスは手の中にかつては菓子が入っていた袋を握りしめた。サムライエンパイアの食べ物だというそれは色とりどりの小さな星の欠片のようで、食べ終えた後も忘れられない外の世界の記憶としてクラリスの心の中で輝いている。
その群れる小さな色彩の美しさを否定されると悲しくなる。全ての色を飲み込み台無しにするのが黒だと言われればさらに。
クラリスは綺麗なものが見たかった。綺麗なものを知る、綺麗な女の子に。
自分のこの黒い身は変えることが出来なくても、鮮やかな色を描き出す絵描きになりたいと。
「クラリス様、オブリビオンの言うことなんて信じないで!」
キティ・エウアンゲリオン(戦花・f16319)は白く長い髪を靡かせてクラリスの隣へと立つ。
キティにとって赤は情熱を示す薔薇の色。慈悲として与えられた血液の色。愛に生きる女の口紅の色。
いずれも情と命を示すものだ。
「ここに愚か者なんて一人もいないわ。戦う理由はなんであれ、悪たる貴様をここで倒す! いるのは貴方を排除しに来た勇気ある猟兵ばかりよ!!」
キティは剣先を向けて赤いドレスの女に戦線布告する。既に一般人の避難は終え、退室した猟兵が傷ついた者の対処に当たっているはず。怖れるものは何もない。
だがその手にした異端の血を啜る呪われた黒剣は既に敵に見られている。さあ、どうするか──と思ったとき、キティと同じダンピールの女が並んでルーンソードを敵に向ける。
「ヴィリヤさん」
「他人に否定されたり馬鹿にされたりするのは構わないけど、そんな事で捨てられる願いじゃないからね。でも否定するのは勝手だけど、親を悪く言われるのは許せない」
ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)の夜空の如き深い青色の髪は親から受け継がれたものだ。それはヴィリヤにとってかけがえのない絆を示すものでもあり、受け継いだという誇りもある。
だが赤いドレスの女はヴィリヤの踏み込んではならぬ領域をその言葉で穢した。
死んだ者を甦らない、非現実的だと嘲笑うのはいい。死んだ母は決して生き返らず、両親が再び見えることがないことはヴィリヤとて理解している。だが禁断の恋の成就を愚かと蔑まれ、あまつさえその例として人間を愛したヴァンパイアを詰られたとき、ヴィリヤの中で何かが弾けた。
ヴィリヤにとって父親はヴァンパイアでありながら母親を、そして自分をこよなく愛してくれた慈愛深き者だった。父と母が結ばれるまで互いに葛藤はあっただろうし、結ばれてからも同族からの非難を受けてきただろう。だが二人は他者からどう思われようが、如何なる苦難が立ちはだかろうが、互いを信じ合い共に歩む道を選んだ。
ダンピールとして生まれた娘に許せるはずもない。
「他人の夢を否定するのもどうかと思うよ。早々に退場願おうかな。行くよ、キティさん! クラリスさんも! 援護をお願い!」
「分かりました、クラリスが宇宙を描きます。存分に戦ってください!」
ヴィリヤの黄金の瞳が煌々と輝いたと同時、クラリスが発動中のバウンドボディで展望室一杯に身体を伸ばす。
(夢をあきらめないで。今は弱くても、今は無理でも、いつかは辿り着く自身にするために、負けてはいけないのです!)
クラリスは己を叱咤し、両の手の指の間に挟んだ太さの違う5本の筆で宇宙を描く。それはユーベルコード『輝く流星』により切り取られた異空間であり、筆が描く流れ星から放たれた光が赤い女と共にクラリスとヴィリヤ、そしてキティを閉じ込める。
クラリスにヴィリヤやキティのような剣は無くともこの筆がある。太さ違いの筆と色違いの絵の具は、多様性を表すアイコンであり、無限の可能性を描くためのものだ。
クラリスの身体は炎に焼かれて焦げようが、その身の焦げは誰の目にも映らない。映るのはただクラリスが描いた星降る空だけだ。
「クラリスさん、負けないで!」
キティはシンフォニックデバイスに持ち返るとユーベルコード『シンフォニック・キュア』で応援歌を歌う。
それは騎士だった母親がキティに歌って聞かせた、強く優しい炎の精霊の歌で、不屈の闘志を持つ騎士達に愛されたものだ。子守歌代わりにそんな歌をキティに歌って聞かせた母親は強い女性だった。しかしその歌を歌うことで愛する人や領地を守る為に勇気を奮い立たせていたのだと、今ならよく分かる。
「アドミラル、貴方には分からないでしょうけれど、炎は他人を焼き殺す為のものじゃない。誰かの手先を温めて励ます優しいものなのよ!」
寒い夜を暖炉の前で暖まるとき、凍った指がほぐれると同時に心も温められた。
キティの心は今、心強く優しき炎の精霊と同化し、歌を通じてクラリスを癒し、そして励ます。
(この戦場、彼女の炎に苛まれるのなら受けた傷は自分が癒します! 声が枯れてもやめない! みんなのために私は歌い続ける!)
キティの歌が『輝く流星』の閉鎖空間の中で響き渡り、クラリスは炎の中を飛び交っても痛みを感じることはなくなった。
そして赤いドレスの女が動き止めると、機を逃さずに加速して接近したヴィリヤが斬り付ける。
「‥‥‥‥‥消えて」
その声音はダークセイヴァーの夜より冷たい。
動揺させて相手のペースを乱すのも手の内、神経を逆なでされても冷静さは失わず‥‥ヴィリヤはそう父から習ったのを思い出した。
愛しい一人娘が敵の策に嵌まらぬようにと、教え与えられたものの一つだ。
「この世界は炎だけで出来ている訳じゃ無い。炎が全てでも、黒が終わりでもない。この地を構成するモノよ、その力の一端を示せ」
ヴィリヤの詠唱が呼ぶ青く清らかな水の竜巻はヴィリヤを守る壁となり、女の爪を、ナパーム手榴弾の爆発による炎の大地を相殺、水流が女を巻き込んで吹き飛ばす。
だがここはクラリスの宇宙の中。どんなに女が炎を撒き散らそうと、とんなに竜巻が荒れ狂おうと、船にはダメージ一つない。
「ずっと幸せな星を掴む場所のまま、クラリスもいつか描きに来るために、この場所の未来、返して貰うのです!」
クラリスが反撃を宣言する。
白はキティの髪の色。未来を見据えて真っ直ぐに立ち向かう希望の色。
青はヴィリヤの髪の色。過去を受け継ぎ静かに今へと続いていく慈愛の色。
黒はクラリスの身体の色。全ての色を映し出して輝いているこの世界の色だ。
●流星少年 カーティス・クロム・今鶴羽
『夢の道案内になるなんて、おこがましいにも程があるわ。夢なんて見えないものをどうやって他人を案内すると言うのよ』
赤いドレスの女の嘲笑にカーティス・コールリッジ(CC・f00455)の宙色の瞳が瞬く。それは希望に満ち溢れた星の光ではなく、怒りに燃える意志の力だ。
唸りを上げるStingerと名付けた熱戦銃はその名の通り、穿つもの、刺し貫くもの、そして夜の帷に開けた穴から漏れる星の光のように鋭い。
だがその早撃ちは赤いドレスの女の炎に阻まれ、接近することも、遠距離から攻撃を加えることも出来ずにいる。
何しろ敵は既にこちらの戦法を熟知している。カーティスの得意とする技は既に敵に見切られているのだ。
しかしこちらもそれは承知の上。AI搭載戦術型ドローンを駆使して敵の動きを把握し、早撃ちをしてみせるのは敵を欺くための擬態。
そして同じくクロム・ハクト(黒と白・f16294)もまた敵を欺く手立てを取っていた。
「俺に出来るのは他人の夢を守ることくらいだ。夢を描くことも、掴むのも本人だけ。夢を諦めるのも砕くのもだ」
クロムにはカーティスや他の猟兵のように叶えたいと願う夢がなかった。
だがクロムは女が毒づくのを聞いた時に見たのだ。カーティスの未来を見つめる瞳に怒りが灯るのを。そしてそれが彼にとって言われたくないことだったのだと察した。
夢は姿なく見えない。
夢は形なく掴めない。
たからといって「無い」と言い切れるのか、決めるのは夢を見る本人だけ。外野である女の他人の心に踏み込んでは躙る勝手な言い分を看過するつもりはない。
「奇遇ですね、自分も夢を何色に描くかは描き手が決めることだと、思っていました」
そして白藤・今鶴羽(ヤドリガミのゴッドペインター・f10403)もまた自身の夢など持たなかったが、女の言い分を正しいものとは思わなかった。
何故なら彼には哲学があったから。
踊り手が青から赤へと代わり、舞台が星降る暗闇から煌々と燃ゆる炎獄へと変わりゆくのなら、さらに移ろうのもまたむべなるかな。
赤いドレスの女は炎を至高の色と言い、赤に支配されたものは死の黒と化すと言ったが、赤の後が黒だと誰が決めたのだろう。
赤の次は薔薇色かも知れない。それとも虹の色かもしれない。
何色にするのかは描き手の自由であり、何色と思うかは鑑賞者の自由であるはずなのだと。
「見られている、は必ずしもアドバンテージではありません、よ? 攻撃法についてのイメージの刷り込みが、妨げとなることも、ありますから」
「見られているならそれを利用する。夢を砕くことは出来ない。俺がさせない。人狼咆吼もオペラツィオン・マカブルも見られているのなら別の手を使えばいい」
今鶴羽が同意を求める代わりに小首を傾げると、クロムは青い蝶を始末するときに使った絡繰り人形を手繰り寄せた。
少年達の思いが今ここに重なり合う。
カーティスの早撃ちが飛んでくるナパーム手榴弾を撃ち落とし、仲間を繋がんとする炎の鎖を阻むと、クロムも絡繰りの糸を手繰り包帯をした凶暴そうなパンダの人形を操る。
(『人狼咆吼』だけじゃなく、絡繰り人形を使うからには『オペラツィオン・マカブル』も読まれていると考えた方がいい。ならば使う手はただ一つだ)
クロムが芝居を続け機を窺う一方、今鶴羽はマイペースにユーベルコード『グラフィティスプラッシュ』による塗料の噴射を続けていた。女に浴びせようとするものの、女の炎の一部を掻き消すことで精一杯。赤い女に白い絵の具を浴びせることは叶わない。
だけど延々、延々と、今鶴羽は『グラフィティスプラッシュ』を諦めずに続ける。
(あの火勢にこの量では心許ないかもしれません。ですが注ぎ続けていれば、あるいは)
今鶴羽は諦めなかった。「継続は力なり」という言葉さえ脳裏に浮かんでいる。
そもそも夢などというものは妄想で、妄想するからこそ人は生き生きと暮らすことが出来るのだ。別にそれが叶うとか叶わないとか、そんなのはどうでもいいのだ。夢を見続けるそのことこそが人間の証明であり、夢を見るなと言われても人間である限り「無理です」としか言えない。
だから今鶴羽は女の言い分など全く聞いていなかった。
「炎が至高とか、炎が全てを浄化するとか言われましても。はい、そうですか、としか言えない気が、しますよ?」
今鶴羽が撒き散らす絵の具はいつしか女の足下を塗り潰していた。
(スプラッシュで道を作るのは見られていましたが。塗りつぶしの効果自体は、見ていませんよ?)
いつしかその足場は女にとって有利なものではなく、今鶴羽の勢力下となっていた。
今だ!‥‥とばかりにクロムが解き放つユーベルコード『咎力封じ』の手枷が銃を持った女の手首を捕らえると、猿轡と拘束ロープが次々と女をめがけて飛んだ。
白く塗られた足場は今鶴羽に有利な陣形に変わっていた。と、同時に女に有利な地形ではなくなっていた。知らず戦力を削がれていることにも気がつかずにクロムから戒めを受けると、クロムが吠えるように叫んだ。
「今だ、カーティス。撃て!」
カーティスはユーベルコード『Sparkles』を発動し、引き金を引いた。
人の姿をしたものを撃つのは怖い。だが男なら譲れないもの、大切な人を守るために撃たねばならぬ時もある。
それは弱き者から強き者へと成長するため、少年が大人へと脱皮するために必要な訣別で、勇気を持たねば進めぬ道、掴めぬ未来なのだ。
加粒子波動砲の強烈な白く塗られた床を一撃で破壊する。宇宙船内で使うにはあまりにも危険な諸刃の剣だが、ドローンによる調査でダメージを与えてもすぐには航行不能とならない場所が選ばれている。
カーティスは賭けに勝った。
爆風が炎を消し去る。
「奥の手は隠すものでしょう? 星の民はあたらしい一歩を踏み出したばかりなんだ。だから俺はもう迷わない! みんなが教えてくれたこの夢を諦めたりしない!」
「それでいいと思います、よ?」
「お前の夢はそいつには砕けないし、俺達が砕かせはしない」
いつしか知らず、カーティスを後押しする「みんな」に、今鶴羽とクロムという二人が加わっていた。
●人になれなかったものと変わらないもの ロダ・プラシオライト
『追いかけて言ってどうなると言うの。別れの言葉を聞いてなお追いすがるなんてみっともない。諦め悪い女は嫌われるわよ。それとも本人から直接言われないと解らないのかしら。さよならだって』
「青い蝶の次は赤い女ですか‥‥。これではせっかく降った星屑も燃えてしまいますね」
ロダ・アイアゲート(ヒトになれなかったモノ・f00643)はグリモア猟兵によって予言された赤いドレスの女の登場にそんな感慨を抱いた。
ロダは偽物の銀河の下で偽物の星屑に手を伸ばす人達を見ながら、自分は決して夢の兆しに手を伸ばそうとはしなかった。自分には過ぎた願いだと諦めてしまった。
だけどそれならばどうしてこの女の言葉がこんなに痛いのだろう。どうして星屑に混じったガラス片のように胸に突き刺さるのだろう。
自分という機械を作ったマスターが唯一自分に与えたもの。それが「いつか目覚めるかも知れない君へ」と題された紙片だった。
同じく機械の農耕兵はそれを夢の切符だと言ってくれた。だがそうと信じたい自分がいる反面、信じても良いのだろうかと疑う自分もいる。
何故ならそれは、別れの手紙として自分と共に置き去りにされた謝罪を書いたものだったから。どうしてロダの元を去らなければならなかったかは書いておらず、いつ書かれたかも解らない。
解るのは明確に、自分の意志で手紙を書き、自分の意志で去っていったということだけ。
その理由を聞きたくてロダはマスターを探し求めるけれど、探し当てたところで歓迎されるという保障はない。むしろそう‥‥女の言うように、改めて面と向かってさよならを言われ、捨てられたことが決定的になるのではないか。
夢の切符は引導にもなり得るものなのだと。
「ロダさん、延焼が広がっています。これ以上は極力ナパーム手榴弾や弾丸は撃たせない方がいいでしょう」
現れたのは記録係を自称するプラシオライト・エターナルバド(かわらないもの・f15252)だった。
一般人を安全な場所まで誘導し終えた彼女は、この依頼の顛末を見届けるため、そして手にする白頁の書物に書き綴るため、この赤き戦場へと舞い戻ってきた。
彼女もまたロダと同様、人によって作られたものである。
宝石人形として作られたプラシオライトは長年貴族の所有物として屋敷の中に閉じ込められてきた。彼女にとってマスターと呼べる人は作り手ではなく持ち主だ。ロダと違うのは向けられた愛が人としてのそれではなく、物としてのそれだったというだけで。
だからこそ彼女はロダのような人らしい感情の起伏に乏しく、仄かに淡く輝く翠色の容の無表情なままなのだが、心に触れた出来事を記録する彼女が、赤いドレスの女の意図や、強ばるロダの様子に気がつかない訳ではないのだ。
「同じクリスタリアンではありますが、私、ヒトを見下して嘲笑う輩は好まないのです。ある者は幸せを享受して星屑を受け止め、ある者は届かないと知りながらも必死で夢の欠片へと手を伸ばす‥‥なかなかに面白く、そして美しい生き物だと思いますよ」
ヒトは──、とプラシオライトが続ける。
人は届かないと知りながらそれでもなお手を伸ばすもの。
人は愚かだと気づきながらそれでもなお求め続けるもの。
人は終わりなき旅だとしてもそれでもなお探し求めるもの。
人はなんと挑戦的で、なんと気高く、なんと飽くなきものだろう。
それを嘲笑い否定する赤いドレスの女をプラシオライトは良しとしない。この展望室に映し出された宇宙は、儚くも美しい人の夢の箱庭なのだ。
「貴方の激情偏愛の炎、消しにまいりました」
「貴方の炎と私の鋼鉄の肉体‥‥どちらが強いか勝負です」
プラシオライトの隣へロダが並ぶ。
二人とも人によって作られたものだが、片や己を作りし人を求め人になることを焦がれるもの、片や人の代わりに人の作りし物語を集め続けるもの。
だが気持ちは同じ。例えそれが偽物であってもこの夢降る宇宙空間を守るのだと。
プラシオライトは光の精霊銃・Eleanorを抜くがすぐに彼女の翠の指先から離れる。念動力によって浮かされた銃は女の背後へと周り死角から狙い撃つ。毒弾、麻酔弾、そして衝撃波。さらには取り外しフックを付けたワイヤー・Tricksterが女の手から片手銃を奪おうと狙い、付きまとう。
(さんざん罵って煽ってきたのですから。自分も苛ついて激高すればいいのです。戦いには冷静さも必要。炎は確かに情熱に例えられて人の心を奮い立たせますが、時に燃え上がり過ぎて見境を無くしますから)
念動力を操るプラシオライトは戦場にあっても動じない。飛び跳ねたり走り回るだけが戦闘ではない。冷静に機を見てサポートに立ち回り、時として敵の心理に揺さぶりをかける。
それは赤いドレスの女自身が猟兵達にやった手管だ。それをプラシオライトは熱戦銃とワイヤーを駆使し、小賢しいと苛つかせる攻撃を繰り返すことで徐々に冷静さを奪っていく。
苛つく赤いドレスの女がプラシオライトへと伸ばした炎の爪を蒸気ガトリングガンで受け取め庇ったロダは、高度演算デバイスを搭載したサイバーアイ・Arithmetic deviceで敵の行動を分散する。
プラシオライトの薬弾がすかさずロダへと飛び、炎の傷痕を瞬く間に癒す。
プラシオライトが狙ったように女は言葉で挑発して他人を揺さぶるのは得意でも、自分が同じようなことをされると冷静さを欠き、見境無く攻撃するだけの炎と化している。
プラシオライトのユーベルコード『Color Change』はアメグリーンの薬を放ち、攻撃を阻止したロダを狙い撃とうする片手銃を使ったユーベルコードを相殺する。
最早彼女らにユーベルコードによる攻撃は通用しない。爪を受けられ銃撃を封じられた女はなおも諦めず、否、ムキになってナパーム手榴弾を使おうとしている。周囲が見えなくなっている証拠だ。
「星屑を取ることは諦めてしまったけれど、それでも明日へ進むために貴方に負ける訳にはいかないのです。水は炎を打ち消します。大好きな炎ではなく、我々の力で散りなさい」
ロダもまたユーベルコード『Ubelcode03:Reflection』で水の弾幕を放って炎を打ち消した。
人によって作られた美を持つ変わらないものと、人によって作られた人になれなかったもの。
二人はそれぞれの想いを胸に守るのだ。
人の作りし物語と、人の歩む明日とを。
●そして白へ還る カイ・ファン・ステラ
『去った人が戻ってくるなんて、そんな虫のいい話がある訳ないじゃない。どうして分からないのかしらね? 捨てられたんだってこと。それなのに待ち続けるとか、探し出すとか、相手にとって迷惑だと考えない、その図々しさが嫌がられたんじゃないの?』
赤いドレスの女はそう炎の中で嘲笑うのに、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)の人形を操る指が強ばる。
その指は人である者の証として肉と骨に似たもので出来ている。だがカイはヤドリガミ、その指先は仮初めのもの。本体は彼が操る糸の先に繋がれた白い狐面の人形であった。
自分を残し消えた主の生死は知れない。主を慕う心が、居なくなったのなら探しに行きたいと願う心がカイに仮初めにも血と肉と骨とを与え、人の現し身を与えはしたが。
もし必要がないから置いて行かれたのだとしたら、捨てられたのだと認められたくないだけなのだとしたら、この身の意味はどこにあるというのだろう。
「カイ、あの女の言うことに耳を傾けてはいけないよ? あれはありがちな人の夢を否定してみせることでさも心を覗いているように見せる詐欺師の手管だ。情を揺さぶれば冷静な判断が削がれることもあるからね。ステラもだ」
ファン・ティンタン(天津華・f07547)は白い睫に覆われた紅い眼を旅団を同じくする友へと向けた。その眼はまるで炎のようなのに、ファンの声は澄み渡り、その響きは誰も踏みしめたことの無い雪原のように穏やかであった。
ファンとて炎狂いの女の言葉に引っかかりを覚えなかった訳ではない。そう、復讐に生きるのは夢でもなんでもないとあの女は言ったのだ。
「全く‥‥当てずっぽうにしろ、ドキッとすることを言ってくれる。さすが帝国の残党と言っておくよ。だけどこちらはヤドリガミ、自らが生み出された意義を掲げて命がけで遂行するだけ。そして亡き主の意志を継ぐだけ。そうだろう?」
だから痛くも痒くもないのだと、見開かぬ片眼に一筋の黒い前髪を垂らしながらファンは言った。
ヤドリガミだからこそ迷わない。ヤドリガミだから主亡き後も護刀として主の名誉を守るため復讐を果たすために生きることを躊躇しない。
真っ直ぐだ。あまりにも真っ直ぐなのだ。ヤドリガミとなり、仲間と呼べる者を得たとしても、復讐の先に生きる意味を見出せない程に。
「ええ、夢を見たまま誰が死ぬなど誰が望むか。お前は過去の亡霊‥‥既に過去たるお前に殺されるなど誰も望まないだろう」
主を失ったという点ではステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)も同じだ。希望の象徴・流星剣を携え民衆を導く英雄として名を馳せた騎士はもういない。だがステラはその意志を、生き様を剣の身でありながら引き継いだ。
戦場に在っては武勇に優れて勇敢に。
平時に在っては忠義を貫いて高潔に。
それは騎士としての理想の姿。
ステラが愛してやまなかった主への憧憬。
(お前は地上に下りた希望の星、人々の願いを叶えるのだと主に言われ続けていた。だから私は自分には人々の夢を叶える力があると思い込んで‥‥。だけど本当の私はただ一振りの剣にしか過ぎず、私の願いは叶うことがなかった)
主と共に過ごした眩しい日々は遠い風景となって二度と甦ることはなかった。
人々の願いを叶えてきたのに、自分の願い一つ叶えられずに。
流星の落とし物だという隕鉄は出来損ないゆえに捨てられた星の欠片かと、疑い、諦め、それでもなお騎士の矜持だけを胸に人々の尊き願いを、儚き夢を叶えようとする──。
「アドミラル・ガーネット、お前の目には流星の化身として人々の願いを叶えるなぞ、さぞ滑稽に聞こえただろう。だが自分の願いが叶えられなかったからこそ私は守りたい。お前に貶される筋合いはない!」
ステラは星を象った勲章を握り、勇気を持って炎の前へと進み出る。
騎士としての品行方正な言葉遣いをかなぐり捨てて。
叶おうが叶うまいが、願いを持つのは、夢を見るのは自由、自分は主亡き今もそれを護り抜くのだと。
「カイ、ファン、力を貸してくれ」
「もちろんさ。散々人の命を奪って暴れたんだ。亡霊は亡霊らしく余生くらいは静かにしていて貰わないとね。守りは任せておくれ。サポートするよ」
ステラの呼びかけにファンが応え、カイは美しい和紙の貼られた扇で火の粉を祓った。
「敢えて考えないようにしていましたけれど。他人から言われるとつくづく腹が立つものですね。確かに私達は愚か者かもしれませんが‥‥否定されても私は諦められないんです。この想いが私をヤドリガミにしたのですから。そして他人の夢も叶えて欲しいんです。諦めないで欲しいと思うんです!」
カイの古の陰陽師が戯れに作ったという巡り扇は、試作品とはいえ森羅万象の精霊が封じられているという品だ。火の精霊がカイを脅かす炎の群れをいなすように炎を絡め取ると道が開けた。
(床に散らばっている蝶の残骸が燃えしろとなって延焼が広がって‥‥。これが狙いですか)
カイは炎を避けながら室内設備を探すうちに、スプリンクラーらしきものが既に破壊されていることに気づいた。
人の夢を嘲笑うのは過程に過ぎない。本来の目的は船の爆破で、その手始めがこの部屋なのだ。赤いドレスの女は猟兵への攻撃を繰り返す度、弾丸で天井を、炎の爪で壁を、ナパーム手榴弾で床を燃やしていたのだ。
今、炎は室内全体に燃え広がり、徐々に炎の海へと化している。女への攻撃とは別に、消火を急く必要があるだろう。
「ステラさん、攻撃は任せましたよ。私は消化器を探します」
カイはスプリンクラーを探し当てたときと同様、念糸を宇宙空間に見立てた室内に巡らすと、どこかに必ず設置されているであろう消火器を探す。
「カイ、精霊達によれば排煙窓があるようだ。煙を逃がそう。それとこれ以上燃え広がらないようにもしないとね」
ファンは地縛鎖『付喪神ねっとわーく』を再び駆使し、宇宙船に住み着いた精霊から消火活動の助けとなりそうなものを聞き出していた。ユーベルコード『精霊使役術』を発動すると氷の精霊フラウを呼び出しステラの援護に向かわせる。
飛んでくるナパーム手榴弾を防いだのは翠夢想と名付けた翡翠輝石の欠片の持つ冷気の力。手榴弾に詰められた充填物は人体や木材に付着した場合に水を掛けても消化できない。ならば高温燃焼するそれを極低温の気流渦に閉じ込め相殺するのが手。
ワイヤレスマイク・名も無き歌人の残響を通して出される指示は水野精霊のパフォーマンスを底上げしている。
カイもナパーム手榴弾に有効な消化器を発見するとノズルを炎へと向け、惜しみなく消化剤を噴射し続けた。
二人の活動で炎上するフィールドは徐々に白くなり、女に有利に働いていた地形が雪と消化剤の白、希望の白へと塗り替えられていく。
その最中。ステラは仲間の活動を助けて敵の目を惹き付けていたが、業火の首輪に囚われていた。
炎の爪で深々と貫かれた腹は傷口が焼け爛れ焦げが煙を棚引かせてさえいる。首輪は戒めとなってステラの細い首を絞め、白い肌を焼き、肉の焼ける匂いが鼻腔を突く。
痛まぬはずはない。苦しまぬはずはないのだが。
(この身はヤドリガミ、仮初めの身だ。剣を振るえればそれで構わない。剣を──)
ステラは我が身を苛む激痛の中にあっても、その鋼の如き意志を、氷の如き冷静さを失うことはなかった。
否、存在感を強めて自分を標的とさせ、炎の首輪に戒められるこの状態こそ我が身を犠牲として勝機を得るための策。
そしてもう一人、カイもまた一芝居を売った。
ステラを助けようと絡繰り人形を操るふりをして、敵が向けた銃をわざと避けず、本体を操作し無防備に見せると弾丸を喰らってみせた。
その弾丸による炎がカイを焼き、動きを封じるはすだったが──。
「みんなを癒させて貰いますよ」
口唇が動く。カイの仮初めの身が、そして狐の仮面のその下で。
カイはユーベルコード・『柳桜』を先に発動、敵のユーベルコードを無効化し、周囲への回復力へと変換するカウンターを仕込んでいたのだ。
カイはステラの身を癒すと同時、ユーベルコードに戒められて動けぬふりを続け、敵を欺く。
女がトドメを刺そうとステラへと歩み寄ったその時、苦しげに呻いていたい口唇が勝利を確信して口角を上げる。
ファンの呼び出した水の精霊と塗り替えられたフィールドは最早ステラの行く道を阻めない。
「私は願い星として人の夢を叶えてきたが、お前にとっては凶星だ。お前の野望は私が斬り捨てる!」
叫びと同時に放ったのは自らの本体、流星剣だ。
「お前にとってもこれは鎖だ! 彗星の一撃を食らえ!」
ステラの首に嵌まる首輪は自分に繋ぎ止めるための枷でもある。
ステラはそれを利用した。投げた流星剣の刃が女を仕留められるとは思っていない。剣は形状から空気抵抗が大きく、飛距離も威力も投擲用の武器には及ばないから。だがそれを初撃とし、自分を本体で或る流星剣の元まで転移させることが出来たなら、後は持てる全ての力をこのユーベルコード『凶つ星』の真の攻撃に注ぐだけ。
放った剣は転移して剣を握ったときにすぐに追撃が加えられるよう、巧みな計算と技術をもって投げられたものであった。
「砕けろ!」
流星が女を深く貫く。銀河帝国の赤き残照は白い灰となって消えていった。
●銀河の滴
「やれやれ、しぶとい熾火だったね。でも炎はいつか火種を失って消える。終わりが遅いか早いか、それだけだよ」
ファンが女の消えた後で舞う灰を見ながら呟いた
それは銀河から降り注ぐ星の欠片にも、ミュゲの花弁にも似て、白く、儚く、触れるとたちまち砕けて散った。
「マリアドールお姉さん、服が‥‥」
リュカはマリアドールの美しい衣装が煤けているのに気づくと申し訳なさそうな顔をしたが、マリアドールは微笑んで首を振った。
「リュカの夢を、進む道を守れたらそれでいいの」
星雲が描かれたマフラーを巻く少年の目の前、少女の瞳の中に星は一際まばゆく瞬いている。
希望の星はいつでも手に届くところにあるのかもしれない。
「無事に守りきれましたわね。この宇宙もまた人が生み出したものですから」
「私も綴りましょう。ここで見たこと、感じたこと、白から青、青から赤、赤から黒を経て白へと還る物語を」
例えそれが偽物の宇宙だとしてもファレリアにとってはここは愛しき人の生み出した創造物であり、そこで起きた一連の事件はプラシオライトが記録するに値する印象的な出来事だった。
勿論記録はプラシオライトの手にする書物の中だけではなく、猟兵達の胸にそれぞれ刻まれるだろう。
「すっかり煤けてしまいましたね。でもまたすぐに修復されて様々な夢の色に溢れます、よね?」
「クラリスもいつかまたここに来て夢の色を絵描きに来るのです!」
絵描きのクラリスと今鶴羽はやがて修復されるであろう夢幻の宇宙へと想いを馳せた。
そこにある色は喜びの色ばかりではなく、淋しさや切なさ、悲しみや痛みさえもあったが、どれも切なる人の願い、純粋で美しい色であった。
「灰は掴んだら崩れてしまいますが、一応花弁ではありませんが幻ではないものを掴んではいますよね? 今のうちに祈っておきましょうか」
「そう、ですね」
カイは心の中で主を思い舞い飛ぶ灰を受け止める。
ロダは否定でも肯定でもなく曖昧に返事をしたが、その心にはカイと同じく主と呼ぶ人への想いと、白きものへと託したい願いがあった。
「想い人はまだ生きているんだろ? 夢を叶えろよ。たっぷり星屑を浴びたんだから」
「応援はありがたく受け止めるけど、花弁以外も『あり』なのか?」
ヴォルフはグリモアベースに戻ったら告白するという恭介を激励するが、恭介も笑いながらツッコミを入れた。
男同士気安く語り合うものの、その胸の中にいる相手は死者と生者。
ヴォルフは己の夢が叶わぬ代わりに恭介の夢の成就を祈った。
「みんなが迎えにきてくれているみたいだ」
「私には迎えというより護摩の灰のように見えます」
カーティスには白い灰は天に上った死者の魂だという星が振りまくものに見えたが、紅牙には祈祷の後に出る灰、祈りの残滓のように見えた。
二人は舞い散る白い灰を手の平で受け止める。
「黒から白へか。願いが叶うといいよな」
クロムは一緒になって白い灰を被りながら、二人の幸福を祈ってやった。
「祈りを叶えたまえ」
マリスは袖を翻し白い灰の降る中を舞った。
それは星屑を撒き散らすようでも、星の輝きを放つようでもあった。
「一緒に踊りましょうか。さあ、お手を」
騎士としての礼節を取り戻し、ステラがマリスへと手を差し伸べダンスへと誘う。
星の名を持つ二人が踊る宇宙は華々しく夢に溢れている。
「倒しましたけれど、またどこかの宇宙でしつこく復活するのかな」
「その時はまた倒すまでです。何度でも諦めずに」
ヴィリヤの呟きに答えたのはユーノだ。
ヴィリヤの胸には故郷のダークセイヴァーの星も見えない夜空が、ユーノの胸にはかつて故郷の船団があった頃の宇宙が思い浮かんでいる。
それはとても懐かしく、とても大切な、想い出の景色だ。
キティはファンが歌い出すのを聞き、己もまた歌い出した。
それは力強く人を勇気づける希望の歌。
それは心優しく人を慰め癒す慈愛の歌。
「そろそろ戻りましょう。皆さんが待っていますから」
歌い終えるとキティは真っ直ぐに出口を向いて皆を促した。
展望室の外では先に一般人を連れて離脱した猟兵達と、この宇宙船『ギャラクティカ・ロマンティカ』へと導いたグリモア猟兵が、モニター越しに戦況を見守り戻るのを待っている。
かくして銀河帝国の残党による奇襲は猟兵達の活躍で大事に至らずに終わった。
宇宙船はこれからも安寧の地を求めて旅をするのだろう。
いつか幸福の星に辿り着けると信じて夢を見続けるのだ。
星屑は銀河が流す涙の滴のようで、時に切なく身を震わせる。
ミュゲの花弁は毒を孕み、甘い夢は時に狂おしく悶えさせる。
だけどそれでも人は夢を求め、夢を探し、夢を追いかけ、夢に手を伸ばすのだ。
例えそれが掴めぬまま消えようとも。
星が宇宙に瞬く限り。
人が地上に在る限り。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年05月13日
宿敵
『『パイロフィリア』アドミラル・ガーネット』
を撃破!
|