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甘やかディスタービング・デイズ

#アイドル☆フロンティア #ノベル

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池神・聖愛



織部・藍紫




●デート
 一口にデートと言っても様々な形態があるだろう。
 おでかけデート。
 おうちデート。
 アウトドアデート。
 美術館デート。
 後はまあ、星の数ほどあると言っていい。
 どんなデートが良いかなんて、それこそ言い出せばカップリングの数だけ正解があると言っても差し支えないのである。
 なら、織部・藍紫(シアン・f45212)の悩みは、些細なことであったし、考えるだけ無駄でもあった。
「いや、デートって何すればええねん!?」
 しかも、今日がデートの当日である。
 プランはまったく決まっていない。
 調べれば調べるほどに、ドツボにはまったようにあれやこれやとデートプランがでてくるのだ。

 やれ、オススメデートスポットだの、三大デートNG行為だの。
 まあ、人間というのは恋するために生まれてきたようなものであるから、こうしたことに最大の関心を抱くのは何も間違っていない。 
 間違っていないのだが。
「人間初心者にはハードルが高すぎるねん!」
 情けないことであるが、当日になっても決めきれていないのだ。
 とは言え、待ち合わせ時間に遅れるわけにもいかない。
 いや、デートに共に向かう池神・聖愛(デリシャス☆マリア・f45161)の住居と居候先が同じなので、待ち合わせも何もあったものではない。
 むしろ、そういうところに思考が及ばないところが、藍紫の限界でもあった。
 そんな彼の限界具合とは裏腹に聖愛は、なんとも場慣れしている様子であった。
「どうしたんですか? もうお出かけしませんか?」
「するっ! するけど! ちょい待って!」
「はい……?」
 どうしたんだろうと聖愛は首を傾げている。
 所作一つ一つが可愛らしくて仕方がない。今の自分は、ハッキリ言って気持ち悪いのではないかと思う。

 けれど、どうにか格好つけたいと思うのもまた人間初心者らしいミスでもあった。
「いや、うん。大丈夫。行こか」
「はい、ふふ」
 そう言って二人が向かった先は、ある喫茶店だった。
 外観からして男一人で入るにはちょっとためらうようなファンシーな外観。
 加えて客層である。
 何処を見ても女性ばかり。 
 いや、年若い女性ばかりなのだ。わざわざいい直したのは、その客層が如何にも聖愛の年代の娘子らだったからだ。
 いわゆる、SNS映え、というやつである。
 藍紫にとっては、特別珍しいものではない。
 なにせ、インターネットの海というものには、このような光景がそこかしこに広がっているのだ。

 それも無作為に。
「は~……えっ!? なんでここ!?」
 そんなことより、と藍紫は頭を振って店を指差す。
 デートプランをどうしようかと悩んでいる内にあれよあれよと聖愛につれてこられていたのだ。
「え、だって、その……藍紫さんが行ってみたいお店にしたんですよ。ここ、そうでしょう?」
「う」
 図星であった。
 そう、甘味が好きだ。紅茶も好きだ。
 なら、当然こうしたお店は敷居が高くても行ってみたいと思ってしまう。
 本当によく見られている。
「それは……そうやけど」
「ふふ、でしょう? ここのケーキ、美味しんですよ。オススメの紅茶と合わせると、さらに美味しいんです。藍紫さん、紅茶のほうがお好きですよね?」
「う」
 あ、とか。
 う、とか。
 彼女を前にしたら何も言えなくなってしまう。
 不甲斐ないやら情けないやらなんやら。
 これはもう会計時には自分が払わねば男が廃るというものである。
 藍紫はそう決心したが、その決意はあえなく会計時に玉砕することになる。

「あ、だめですよ。こういう時、割り勘じゃないと。私だってバイト代出たんですから!」
「いや、だってこういうんは男が……」
「いーえ、ちゃんと割り勘です。ふふ、それに私、チョコレートケーキも頼んじゃったんです。割り勘だと、ちょっと私のほうがお得なんです」
 それでだめですか? と言われてダメと言えるほど藍紫は彼女の押しに強くはなかった。
 ほとほと弱い男である、と自分を不甲斐なく思う藍紫。
 けれど、それは仲睦まじい様子にも見えたことだろう――。

●嫉妬
 ――だが、ただ一人を除いては。
 その光景を微笑ましく見ることのできぬ者は、必ず存在している。
 真面目に生きていれば生きているほどに、敵が少なくなっていくのではない。真面目に生きているのならば、なおのこと敵は必ず生まれるものである。
 何故ならば、これは恋物語だから。
 恋物語には、結ばれるべき二人がいる。
 恋仲の人がいれば、当然恋敵だっているのだ。

 藍紫がわからなかったのは、己がその立場に立っているということ。
 そして、それは悪意に変わることもできぬ悶々たる思いでもって、これから日々ストレスを溜め込んでいくだろう。
 もしかしたら、それが嘗てあり得たかもしれない己の姿と重なるか、重ならないかは、彼自身の問題になるだろう。
 けれど、今はまだ気が付かない。
 その鬱屈たる視線に気がつけても――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年04月30日


挿絵イラスト