暇を持て余した異端の神々の遊び
●地獄門
発端は半ば気まぐれで受けた依頼だった。
依頼の内容は、ダークセイヴァーの辺境の地に出現した、獰猛な魔獣のオブリビオンの始末。
猟兵にとってはありふれた依頼だ。
前衛を担当する錫華と、後衛を担当する理緒が揃っていれば、よほど油断でもしない限りまず敗北する理由もない。
目標の魔獣は、探索から小一時間もかからない間に理緒が発見した。
決着を付けたのは、錫華が突き立てた致命の一撃。魔獣は鮮血を噴出させながら地に伏した。
「大きくてちょっとびっくりしたけど、なんともなかった、ねー」
「返り血で凄い汚れたけどね」
死後痙攣を繰り返す魔獣の骸を見下ろし、二人は他愛もない会話を交わす。
錫華が刃を突き立てた傷跡から湧き出た血は、荒れた大地に徐々に拡大してゆく。
やがて錫華と理緒の足下に、大きな血の池を作った。
「じゃあ帰ろっか?」
「うん。早く戻ってシャワー浴びたい」
魔獣の骸は完全に動きを止めた。その事を確認した二人は、背中を向けて帰路に就く。あとは転送門を潜ってグリモアベースに戻るだけ。
それで依頼は無事に完遂された。
だが――。
「え?」
「あっ」
突然、理緒と錫華は階段を踏み外したかのような感覚を味わった。
視界ががくんと下がる。すぐにそれが錯覚などではない事に気が付いた。
身体が一瞬で血の池に吸い込まれた。
互いに手を伸ばす瞬間もなかった。
視界は暗い赤一色に染まる。まるで水中にいるかのように声が出せない。身体は急速に落下してゆく。
着地の姿勢を取りながら理緒を探す錫華。錫華を探して手足をばたつかせる理緒。
何秒か、あるいは何分か、落下を続けた二人の視界が急に晴れた。
生物の内臓――? 理緒が朱色の肉々しい光景を目の当たりにした途端、弾性に富んだゴム状の床に背中を強く打ち付けた。
「かはっ!?」
肺の中の酸素が全て押し出される。世界が黒く収束する。
「理緒さん!」
意識が途切れる直前、遠くで錫華の声が聞こえた。
●孤軍奮闘
生物の内臓。
五点接地法で着地した錫華にとって、それが真っ先に浮かんだ印象だった。
ドーム状の空間は全面が生々しい朱色に染まっている。
床に触れた感触はまさに肉そのもの。
しかも表面がぬめぬめとした粘膜に覆われている。
足の裏には血管の脈動を感じる。
「理緒さん!」
理緒はすぐそばで仰向けに倒れていた。苦悶の表情で目を閉ざす彼女の元へ駆け寄る。跪いて外傷と脈拍を確認した。気絶しているだけで命に別状はないらしい。この肉の床と気色の悪い粘膜がクッション材となったようだ。
だが安堵する暇もない。
視界の隅で何かが蠢いた。
咄嗟に立ち上がって小太刀『神成翁』と『鬼怒婆』を逆手に構える。
「ああ……そういうことね」
あんとなく予想していた状況に溜息が漏れる。
錫華と理緒を取り囲んで蠢くそれは、軟体生物の如き触手だった。
大きさも形状も多種多様。表面を覆う粘液が滴り落ちる様は、獲物を前にして垂らした涎としか思えない。
壁や床、天井にできたフジツボのようなイボから伸びてくる触手もあれば、裂け目から生えてくる触手もある。
四面楚歌どころではない。完全包囲されている。
生理的な嫌悪感に錫華は顎を引いた。
理緒がまだ目を覚まさない以上、逃げるわけにもいかない。
逃げ場があるとも思えなかった。ここは恐らく異端の神々の腹の中――。
ミミズのような形状の触手が、肉の床面を這いずって近寄ってくる。
狙われているのは自分ではなく理緒の方だ。錫華は駆け出して力任せに蹴り上げる。
ぬめる粘膜の感触と、肉とゴムの中間の弾性に身の毛がよだつ。
触手は一本ばかりではない。錫華は走る。蹴飛ばす。走る。蹴飛ばす。
未だ目を覚まさない理緒を中心に、ミミズ状の触手はどんどん迫ってくる。きりがない。
次第に蹴飛ばすのも間に合わなくなってきた。息も上がってきている。
ついに一本の触手が理緒の足に絡みついた。
「だめ」
錫華が即座に二振りの小太刀を閃かせた。容易く切断された触手は緑色の体液を撒き散らしてのたうつ。
顔面にかかった体液を拭う。生暖かい。硫黄の臭いがする。粘り気があって気味が悪い。
一本の触手の接触を許してしまったのを皮切りに、理緒の四肢に次々に触手が絡みつく。
それらを切り払うたびに錫華は返り血を浴びていった。
「間に合わない……!」
一本の触手を切っている間に二本の触手が理緒の足に伸びる。
それでも錫華は諦めなかった。だが運は味方してくれないかった。
「あ……」
床を蹴った足があらぬ方向へと滑った。床を覆う粘液の仕業だ。身体を強く打ち付けた錫華は、刃を二本とも手放してしまった。
「理緒さん!」
転倒した一瞬が致命的だった。手足を捕らえた無数の触手によって理緒の身体が宙に浮く。服の下で何かが蠢くのも見えた。それは理緒の肢体をまさぐる触手に他ならない。
すぐに助けに行かないと。錫華は腕に力を入れて立ち上がろうとする。
「あ、あれ……?」
肘ががくんと折れ曲がった。力が入らない。思うように動かない。無理矢理立ち上がろうとするも、ぬめる床に震える手足が滑るだけだった。
「返り血の中に、毒が……?」
気付くのが遅すぎた。ナメクジを伸長したような触手が手足を螺旋状に這い上がってくる。振り払おうとしても、蹴り払おうとしても、足が無様に動くだけだ。
それもよりも――肌に触れる触手の感触を鮮明に感じる。微細なブラシでなぞられている感触。
「んあ……!」
おぞましいはずなのに、声帯が勝手に甘い声を震わせた。
背筋がざわつく。触手の体液に含まれていたのは麻痺毒だけではない。
頭の奥から、下腹部の奥から、じわじわと熱が滲み出てくる。
手足を拘束された錫華の身体は、大きく広げられる格好で宙に磔とされた。
噴き出す羞恥心と怒りに抵抗を試みる。だが腰がくねるばかりで拘束が緩む気配はない。
「異端の神々のくせに、こういう戦い方しかできないの?」
理緒の姿が見えない事に焦りを感じたが、それを悟られまいと挑発を込めて侮蔑を吐き捨てる。
すると何本ものミミズ型の触手が眼の前で鎌首をもたげた。
触手は身を素早くしならせて錫華の身を打つ。
「んっ……!」
鞭打の張り裂けるような痛みに、錫華は閉ざした口の中で歯を食いしばる。
決して奴の思惑通りに悲鳴などあげてやらない。
けれど硬い覚悟は、纏う装いのように次第に引き裂かれていった。
触手の鞭打ちが何度も繰り返される。
敗れた服の下から赤くなった肌が垣間見える。
「つ……! く……!」
痛みが錫華の身体をなぶり続ける。
だが屈辱だったのは、痛みに甘さを感じてしまうことだった。
あり得ないはずなのに……鞭打の一撃ごとに痛みと甘い快楽が刻み込まれてしまう。
下腹部で脈動する熱が雫となって滴る。ショーツが水気を含み始めた事を意識しないよう、触手を睨みつける。
けれども甘い痛みは着実に錫華の心身を蝕んでいった。
たっぷり浴びた返り血と、鞭打されるたびに刻み込まれる体液は、既に肌を浸透して神経にまで直接到達している。
脳の中枢にまで作用する恐るべき毒が、女性としての器官を切なげに疼かせる。
脚を閉じたいのに拘束されているが故にそれも叶わない。
羞恥と屈辱に下腹部がなおさら疼いてしまう。
このまま責め苦を受け続けていれば、ほどなく上り詰めてしまう――脳裏のどこかでそれを期待している自分を否定した途端、いつまで続くとも分からない鞭打が止まった。
「え?」
錫華は思わず口を手で覆いたくなった。なんて声を出してしまったのだと。甘い痛みを寸前で取り上げられた事に困惑した声。
ミミズ型の触手が視界の左右に引いていく。これで終わりかと思いきや、今度は天井から同型の触手が伸びてきた。
形状こそはミミズ型に似ているが、太さがまるで違う。直径は丸太のようであった。先端部分はつるりとした球状で、どこに源があるのかも分からない光を反射して、ぬらぬらとした光沢を放っている。
触手に意思と呼べるものがあるのかは定かではない。けれどこれから何をしようとしているのかは予想が付く。生命の危機を悟った錫華を他所に、その極大の触手はゆっくりと身を引く。
「そんなの入らな――」
極大の触手の動きは、錫華の予想を完全に裏切るものだった。
勢いを付けて突進した先。それは、錫華の下腹部だった。
「お゙ぅ゙っ!?」
下腹部を打ち据える重い衝撃。内蔵を、子宮を骨盤ごと激しく揺さぶるそれが、背中まで突き抜ける。
なんの受け身も取れなかった錫華は、腰を引いて下を突き出し、両目を見開いた。
肺の中の空気を胃の内容物ごと押し出されそうな打撃。
無防備な下腹部に叩き込まれたそれは、堪えがたき痛みを錫華に打ち据えた。
それと同時に、視界に火花が散るほどの快感も。
「ぅ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙っ!」
骨盤が急激に収縮し、気合いで堰き止めていた快感が決壊した。
錫華のショーツに包まれたそこから、透明な液体が割れたパイプから漏れ出る水のように噴出した。
嬌声と、液体が床を叩く音が、肉々しい空間一帯に反響する。
錫華の頭は自分の身体に起こった事態を正しく認識できなかった。
無防備な身体を打った痛みが、衝撃が、快感に変換されてしまう。
「や、やめ……」
極太の触手が身を引く。そして勢いを付けて再び下腹部に突進した。
鐘を打つかのような強烈な打撃。
「お゙っ……おぉっ!?」
呼吸ができない。身体の中身を揺さぶる振動にまたしても秘裂が体液を噴き出した。
自分の意思とは関係なしに、身体が感じてしまう。
触手による責め苦は腹への殴打だけではない。
どこからか伸びてきた新たな触手が口に迫る。
錫華は顔を背けて抵抗するも、閉ざした口にも力が入らない。
触手は唇をこじ開けて口腔内へ押し入ってくる。
「んんんぅ!? んむぐぅ!」
噛み千切ろうにも弾力に富む肉にはまるで歯が立たない。
粘液は吐き気をもよおす生臭さだった。
口腔内に入り込んだ触手が喉の奥へとさらに侵入してくる。
「ごほっ! おえぇ……!」
えづく錫華に構わず触手は食道にまで達する。
どこまで侵入してくるのか……錫華が悪寒を覚えた時、生暖かくてどろりとした液体が、喉奥に直接注入される感触を味わった。
「んんんぅぅっ!?」
頭を振って吐き出そうとするも、喉を塞ぐ触手は液体の注入を止めない。
やがて粘質な液体は胃の中にまで降りてくる。腹を中心にして身体に熱が広がってゆく。
頭に霞がかかったように思考が鈍る。
「……かはっ! うぇっ……!」
急に触手が喉から引き抜かれた。激しく咽る。
肩を上下させて荒く呼吸するたびに身体が火照り、下腹部が切なくなる。
「なにを……飲ませ……!?」
宙に磔にされたまま、両脚を持ち上げられて仰向けの格好にされる。
股を見せつけるような無様な体勢にされた錫華は、心底殺意が湧き上がった。
けれどそれ以上に――これから待ち受けている行為に肉体の方が期待してしまう。
疼き続ける女としてのそこが、涎を垂れ流す。
腹を殴りつけていた丸太のような触手はいつの間にか姿を消していた。
代わりに現れたのは、男性の生殖器を模したと思われる形状の触手。
しかし細部は似ても似つかない。表面は不気味なイボで覆われており、そのイボの一つ一つが微細に蠢いている。太さ自体は錫華の腕ほどもある。
これは生殖器などではない。
女を壊すための器官。
そう理解した錫華は頭から血が遠のいてゆくのを感じた。
けれどおぞましい触手を前にして肉体の疼きは一層強くなる。
したくもないのに腰を浮かせてしまう。
イボまみれの触手がゆっくりと近付いてくる。そしてショーツ越しに秘裂へと先端をねじ込ませ始めた。
「あっ……! あっ♡ ぐりぐりしないで……♡」
自分でもぞっとするほどに切ない声が出る。
口では拒絶しているのに、腰は自ら擦り付けるように動いてしまう。
分泌された汁をたっぷりと吸ったショーツが、淫靡な水音を立てる。
錫華は強引に入り込もうとして立ち往生している触手から目が離せない。
いますぐショーツを脱いで迎え入れてしまいたい。
隙間からねじ込まれたい。
あのイボで内壁を抉られたらどんなに……思考が回らない頭は、既に目先の肉欲に支配されていた。
うねる触手に合わせて腰をくねらせる。
触手と錫華の分泌液まみれになったショーツは薄く透けており、その奥に秘匿された肉の裂け目をくっきりと浮き立たせてた。
物欲しげにヒクヒクと動くそこは既に触手を受け入れる準備が整ってしまっている。
そして、遂に、触手の先端がショーツと肌の狭間に潜り込んだ。
「ぉあっ!? やめっ♡」
こぶし大ほどもある先端が、秘裂を力任せに押し広げ、中へと押し進んでゆく。
「かっは……! おぅっ♡ イボ、がぁ……♡」
異物を押し出そうとして内壁が窄まる。すると余計に触手の形状が体内で感じ取れてしまう。
少し進んでは止まるたびに、無数のイボが壁にひっかかる。
「いひっ♡ まって♡ 止まって♡」
蠢動し続ける触手に腰が戦慄く。
やはりこれは生殖行為を目的としたものではなく、女を壊す事が目的の器官――確信したのと同時に、腹を深く押し上げられた。
「奥うぅぅぅっ♡」
行き止まりまで達した瞬間、錫華は喉を反らせて甲高い嬌声を上げた。
触手は前進を止めず、さらに奥へと押し入ろうとする。
「もうやめ……っ! そこまでしか入らな……いひいぃっ♡」
小さく窄まった最奥の穴に、先端部がぐりぐりと擦り付けられる。
無理矢理にこじ開けて侵入しようとしているのだ。
「抉れてるうぅ♡ 中もぉっ♡ 奥もっ♡」
これ以上の侵入は絶対に許してはいけない……なのに、錫華の身体は頭と相反して腰を突き出す。
触手の執拗な掘削攻撃に、子を宿す宮殿に通じる穴が次第に緩み始めた。
もうちょっとで……錫華は短く息を切らせながらその瞬間を待ち構える。
だが、触手の我慢の糸が切れる方が早かった。
頑なに開かない門を前にして業を煮やした触手は、より強引で力任せな掘削作業に方針を転換した。
「おごぉっ!? あおっ♡ あっが♡ ぎひっ♡」
一瞬後退したかと思いきや、貫かんばかりの勢いで突進。それを短い間隔で繰り返す。
しかも螺旋状の動きまで加えられたそれは、まさに掘削であった。
最奥に繰り出される高速の打ち込み。無数のイボで抉られる内壁。脳髄まで響く一撃ごとに、錫華の脚が跳ね、声帯は濁った喘ぎを発する。
「もう、やめっ♡ 入って……! 奥まで入っていいか、からぁっ♡」
絶え絶えの息で辛うじて懇願するも、触手の容赦のない掘削攻撃は止まる気配がない。
「許してぇっ♡ 許してええぇっ♡」
逃れようもない快感に秘裂が決壊し、触手との結合部分から透明な汁を激しく噴霧した。
そこにはもはや普段の凛然たる錫華の顔は無い。
涙と鼻水と触手の粘液まみれになった顔は、ただ咽び泣き続け、前後に揺れる度に悲鳴とも嬌声とも付かない叫びをあげるだけだった。
●屈服
暗闇の中で女性の悲鳴が遠くに聞こえる。
悲鳴は次第に近付いてくるにつれ、どこか耳に馴染みのある声に変わり始めた。
朦朧とする意識に薄い光が差し込む。
何が起こったのかよく思い出せない。
ダークセイヴァーで魔獣を狩って、穴に落ちて、それから――。
頭がのぼせたようにぼんやりとする。身体が火照っている。
靄のかかった視界の中で誰かが揺れ動いている。
目を凝らして焦点を合わせると、それは紛れもなく見慣れた友人の姿だった。
「錫華さん……!?」
我が目と我が耳を疑う。
「はひっ♡ だめっ♡ お願いもう許してぇっ♡」
媚びるような甘い悲鳴。もしくは嬌声が響く。
生物の臓腑の中を想起させる肉の間で、触手に四肢を絡め取られた錫華が宙吊りにされている。身体を大きく広げた無様な格好で。
理緒がよく知る錫華は、研ぎ澄まされた刃のような冷たい麗しさを漂わせていた。
それが今、体液まみれとなった顔で泣き叫び、イボだらけの触手によって身体を貫かれている。触手が突き込まれるたびに、しなやかな腰が跳ね、結合部分から鯨の潮吹きのように液体が噴出した。
助けにいかなきゃ。
理緒は衝動的に身体を起こそうとした。
だが手足が全く動かない。まるで泥沼にはまってしまったかのように。
「え……?」
そこで理緒はようやく自分の置かれている状況に気が付いた。
手も脚も、肉々しいホースのような触手に呑み込まれていたのだ。
錫華と同じく、自分自身も半ば仰向けにされて無様をさらしている。
膨れ上がる羞恥心に頬が熱くなった。
熱くなったのは頬だけではない。下腹部の奥底も――。
首を横に振ってその熱を気のせいだと否定する。
「やだ、離して……! 離してってば!」
腕を引っ張り、脚をばたつかせようとするも、ぴったりと肌に吸い付くそれから逃れられる気配は微塵にも感じられない。
指先は自由に動く。けれど内部はヌメヌメとした粘膜に覆われており、爪で引っ掻いて抵抗する事すらできなかった。むしろ内部が空洞になっている事が恐怖心を煽った。
最後はこのまま手足ごと身体も呑み込まれてしまうのでは?
あるいは錫華がされているように、もっと凄惨な行為が待ち受けているのでは?
肉の空間に反響する錫華の嬌声が、耳朶の奥底から離れない。
目を背けたいはずなのに、いつしか理緒は錫華の恥態に食い入っていた。
「だめ……だめだよ錫華さん……! そんな……!」
明らかに自ら進んで腰を浮かせ、突き出している。触手の出入りに合わせて。より深く打ち込まれるように。
理緒は絶望に全身から血の気が引いてゆく感覚を味わった。
こうも錫華を狂わせる触手が、もし自分に襲いかかったら――。
恐怖とも期待とも付かない怖気に背筋が冷たくなる。
「ずるいよ……錫華さんばっかり……」
その呟きは完全に無意識だった。頭の中に生まれた嫉妬が口から勝手に出てしまう。
「わたし今なんて……!?」
理緒は自分に嫌悪と恐れを抱いた。
違う。こんなのは絶対に違う。でも身体が熱く疼いてしまって仕方ない。
女性としての肉体を蹂躙されて泣き叫ぶ錫華を、羨ましいと思ってしまった。
身体がおかしくなっている。絶対にそう。
錫華の嬌声を聞いているほどに、恥態を凝視するほどに、呼吸が次第に短くなってくる。ショーツがじゅくじゅくとした汁を含み始める。
「んっ……んん……」
堪らなく切ない。いっそ錫華に代わって自分が――その願いは、唐突に叶えられることとなった。
「ひやっ!?」
背後から伸びてきた二本の細い触手。それが口を開き。理緒の薄い胸の頂点に吸い付く。
「んあっ! やめ……てっ!」
触手の口腔内は無数の歯で埋め尽くされているらしく、甘く噛みついたそれが突起に痺れる刺激をもらたらす。
「いっ! だめ! 噛まないでよぅ♡ 取れちゃうぅ♡」
ほんの少しの痛みが甘い快感に変換され、電流となって走る。
自分を慰める際に摘み上げるのとは全然違う。
「あっ♡ だからだめだって、ばぁ♡」
理緒は首を左右に振って媚びた声で鳴く。
胸に噛み付く触手は身を捩ってさらに突起を責め立てる。
「待ってぇ♡ それやばい♡」
いつしか戦慄く腰を前へと突き出していた。
下腹部に溜まる疼きがますます熱くなってゆく。
早く欲しい。錫華のようにされたい。
理緒の頭の中を肉欲が塗り潰す。
そして、新たな細い触手が目の前に降りてきた。
今度はどこで何をするつもり? 理緒は期待に吐息を切らせてそれの動きを凝視する。
人差し指一本分ほどの径しかない触手は、理緒の太ももを這い上がる。
「あう……♡」
ナメクジを思わせるおぞましい感触のはずなのに、嫌悪が湧くどころかこの後を考えるだけで期待が膨らんでしまう。
理緒の予想通り、触手は脚と脚の付け根まで到達し、たっぷりと水気を含んだショーツの隙間から内部へ入り込んだ。そして――。
「んひぃぃぃっ♡」
最も敏感な肉の芽に吸い付いた瞬間、理緒は脳髄を貫く快感の電流に背中を逸らした。秘裂の隙間から夥しい量の雌汁が、まるで割れた水道管のように噴出する。
「それやめっ♡ やめてぇぇぇっ♡」
視界の中で火花が散る。脳が受容できる快感の限界を越え、自分の身体に何が起こっているのか分からなくなった。
「止まってっ♡ またイくっ♡ イくうぅぅぅっ♡」
理緒が絶叫するも触手による三点責めは止まらない。
達するを強いられた理緒は、喉を逸らして両目を剥いた。
故に、新たな触手の接近に気付けなかった。
先ほどよりも細い触手が……医療用のカテーテルを想起させる程度の径の触手が、理緒のショーツを器用に下ろしてゆく。
秘匿されるべきそこが完全に露わとなると、細い触手は肉の芽の下の小さな穴へと侵入を開始した。
「そこちが……ぅあぁぁああぁっ♡」
痛みとむず痒さが性感に転換されて理緒の脳を灼く。
一切の侵入を許したことのないそこへと至った触手は、より奥へと進んでゆく。かと思えば引き返し、また奥へと進む。前後する動きに、理緒は食い縛った歯の隙間から悲鳴を漏らした。
「ひいぃぃぃぃっ♡」
堪らず噴出させてしまった雌汁が放物線を描く。
「こんなの知らないっ♡ わたしじゃないっ♡」
自我から離れた腰が浮き上がる。
そこへまたしても新たな触手が鎌首をもたげた。
これまでの触手とは対照的に太さが段違いである。
理緒の腕よりも一回りほど太い。
しかも肉のブラシのような繊毛が表面をびっしりと覆っている。
無数の毛細をよく見れば、一本一本が小刻みに揺れ蠢いていた。
イソギンチャクを思わせる不気味な姿に、理緒の目は釘付けになった。
「ま……待って……」
掠れた声が震える。あんなのを入れられたら絶対に壊される。繊毛だらけの極太触手がにじり寄ってくる度に、恐怖と期待に心臓が脈を打つ。理緒の心とは裏腹に、秘裂は早く早くと物欲しげに涎を垂らしてヒクついていた。
「お願い、それだけは……♡」
入口に押し当てられた繊毛が、雌の蜜を滴らせ続ける割れ目をくすぐる。
それだけで達してしまいそうなのに、このまま押し入られたら……逃げたいのに、腰は勝手にくねって蕩けきった入口を擦り付けてしまう。
「やめて……! そんなの絶対むり! 死んじゃ……うぐぅ゙ぅ゙ぅ゙ー!」
繊毛触手が一気に入り込んできた。すっかりほぐされた肉の洞窟は、悍ましい侵入者を子を宿す宮殿にまで迎え入れてしまう。重い打撃が内臓を押し上げた。
「深いぃっ♡ やだぁ♡ ザラザラがぁ♡ いいとこ抉ってるっ♡」
縦軸の回転を加えた動きが、弱点を雑に繊毛で刺激する。撫でるというより抉られているのに近い快感。理緒は少しでもそれから逃れようと身体を右に左によじる。
「むりむりっ♡ これほんと無理だからっ♡」
だが、繊毛触手の掘削は無慈悲だった。
子を宿す宮殿の最奥に続く門を執拗に抉り、殴り、僅かな隙間から入り込もうとする。
無数の繊毛が内壁を雑に擦るたび、理緒の身体は快感の電流に震えた。
「お゙ぐぅっ! 奥ばっかり……! やだぁ♡」
秘裂から雌汁が噴出し、結合部が奏でる淫靡な水音が肉のドームに響く。
「お゙っ……!? ふぉ……!」
これまでになく重い最奥に打撃が打ち込まれた。
身体が弓なりに反る。白いスパークが瞬く。触手が胎内で震え始める。
「あ゙ぇ!? うそ……!? やめて! それだけはだめ!」
雌の本能が全力で警鐘を鳴らす。触手の脈動は、胎内に遺伝子を放出しようとする雄の生殖器官のそれであった。
「だめだめだめ! ほんとにだめっ! なんでもするから! やめてよぉっ!」
理緒が泣き叫んで懇願する。しかし醜悪な触手状の怪物は、最奥の宮殿の入口に先端をめり込ませたまま離れない。抵抗しようにも呑まれた四肢は殆ど動かず、引きたいはずの腰はむしろ勝手に浮き上がってしまう。
最悪だったのは胎内が降ってゆく感覚だった。この先は絶対に許してはいけないはずなのに、肉体が理緒の意思を無視して受け入れの準備に入っている。
「やめ……て……許し……てぇぇぇっ!」
消え入りそうな命乞いも虚しく、身震いする触手が遂に液体の注入を開始した。
子を宿すための宮殿に直接注ぎ込まれる熱。ボンドのように粘性の濃いそれが、胎内に充填されてゆく。
「ああぁあぁぁあぁっ! 熱いっ! 焼けちゃう♡ 中焼けちゃうっ♡」
繊毛触手は注入口にぴったりと蓋をする。理緒の胎は、注入される悍ましい液体を排出しようとするどころか、自ら触手に吸い付いてしまう。しかも液体を一滴も零すまいと蠢動している。
「もうだめぇぇぇっ♡ 出さないでぇ♡ お腹裂けちゃうぅぅぅっ♡」
触手の体液注入作業はまだ終わらない。
下腹部を内側から押し広げる圧迫感。腹が重い。一体どれほどの量を注入されているのか……本当に裂けてしまいそうなほどに苦しい。中が熱い。だが、液体が焼いたのは、理緒の胎内だけではなかった。
「イくぅっ♡ 中にいっぱい出されてイくうぅぅぅー♡」
腰が痙攣した数だけ結合部から雌汁が噴き出す。
宮殿どころか、さらに奥底の左右に別れた聖域まで充填された液体。
理緒の思考は、呼吸が詰まる圧迫感以上に快楽と幸福感に塗り潰された。
注入された体液が急速に体内へと浸透してゆくのが分かる。
「あぅ……♡ ぅぁ……♡ もう……出さないで……♡」
全身が茹で上がったかのように熱い。
理緒は触手に注入された液体の正体に勘付いた。
しかし性感を高ぶらせ、雌の心身を屈服させるための猛毒だったとしても、ぐちゃぐちゃに蕩けた頭の中では、もうどうでもよい事だった。
「はひぃー……♡ はひぃー……♡ んおぅっ♡」
繊毛の触手が急に引き抜かれた。結合部分から緑色のどろりとした液体が溢れ出る。粘度の高いそれは、理緒の腰を伝って床に落ち、水たまりを作っていた。
「また、イっく……うぅぅん♡」
垂れ流される雌汁が水たまりを叩く。
「や……♡ 抜いちゃ……♡ 切ないよぉ♡」
胎内に穴が空いたかのような虚無感に、理緒は腰をくねらせて媚びた声を出す。
けれど執拗なまでに掘削していた先ほどとは打って変わって、急に興味をなくしたと言わんばかりに動きを止める。
「なんで……?」
突然胸に鋭い痛みが走る。
「つぅっ!?」
そこで理緒はやっと思い出した。
まだ四本もの細い触手に性感を刺激され続けていたのだと。
その内の胸の先端を甘噛する触手が、針と思われる何かを突き刺した。
「痛っ!? やだ……!?」
鋭い痛みさえも快楽に変わってしまう。充血して硬くなった二つの頂点は、より深く突き刺さってゆく針の先端を敏感に感じ取っていた。
どこまで突き刺すつもりなのか……このまま心臓に届いて殺されてしまうのでは……肩が震え始めた時、緩急に乏しい形状の胸の奥底で、熱が広がりはじめた。
これは胎内に注入されたのと同じ熱――。
「なにを入れて……!?」
引き抜かれる針。離れる触手。
「ひんっ♡」
自分でも寒気がするほど甘い嬌声。
注射された劇毒が胸を焼けるほどの劣情で焦がす。
胸の突起をいますぐ摘み上げたい。千切れてしまうほどに。
それが叶わないなら齧りついてほしい。
「く……あぁ……!」
だが触手は目尻に涙を溜める理緒を前に、ただ揺れているだけだった。
さっきまではあんなに激しい凌辱を加えていたのにどうして……身体が跳ねる。
「んうぃっ!?」
理緒は歯を食い縛って背中を反らせた。
秘裂の上――敏感な肉の芽に鋭い痛みが走ったからだ。
痛みの正体がさきほど胸に突き立てられた針と同じだという事に、理緒はすぐに気付いた。
そして注入されたのが、同じ劇毒という事にも。
「やめ……! 注射いやぁ……♡」
肉の芽の奥、神経の根本に直接投与された劇毒に、理緒の身体は痙攣し始める。
針が抜かれた瞬間――。
「い゙っぐぅ♡」
もう何度目になるか分からない絶頂。
秘裂から雌汁が霧状になって噴き出す。
「お゙っ♡ うぁ゙♡ わたしおかしくされてるっ♡」
血管の脈動が、早鐘を打つ心拍が、耳元ではっきりと聞こえる。
その左右の耳に、何本もの細い管が侵入してくる感触があった。
「まっへ……♡ 頭の中入らないでっ♡ 死ぬ♡ ほんとに死んじゃうから♡」
脳が直接弄られる。恐ろしいはずなのに、殺されてもいいとすら思えてしまう。
だが理緒の期待はある意味で裏切られ、ある意味では叶えられた。
耳の中に侵入した無数の触手が内部に針を突き刺す。
「いたっ! 痛いっ! やめてっ♡ そんなとこだめっ♡」
より脳に近い部位から注射された劇毒。
頭部の左右から、理緒を理緒たらしめている中枢へと浸透する。
思考が茹だるような熱に侵されてゆく感覚を理緒は味わった。
「あたまがぁ♡ おかしくされてるよぉ♡ あたまのなか溶けるぅぅぅっ♡」
酩酊状態よりもさらに深い思考の鈍化。
視界が揺れる。宙吊りになった身体が、泥に浸されたかのように重い。
「すず……錫華さ……たひゅけ……たひゅけてよぉ♡」
意識の隅に微かに残った誰かの名前を叫ぶ。
「あ……れ? 錫華さんって……だれだっけ……?」
刃の如き冷たく麗しい横顔。それが瞬く星のような火花の連鎖に掻き消されてしまう。
「お゙ぁ゙ぁ゙っ♡ かひっ♡ 理緒さん……負け、ないでぇっ♡」
誰かが自分の名前を呼んでいる。
声がした方にぼやけた頭を向けた。
大きく開いた両脚の中央に、イボだらけの太い触手を突き込まれている錫華がいた。
錫華の苦しげな表情からは、性感に思考を焼き尽くされる最後の瀬戸際で、必死に堪え続けている様子が窺える。
思い出した。錫華は――。
「あ゙ぁ゙ー……♡ 錫華……ひゃん……♡」
自分でも分かるほど緩みきった表情。だらりと垂らした舌から涎が滴る。
「理緒さんしっかりし……おぐぅっ♡」
どすんと音がしそうなほど強烈な打ち込み。錫華の秘裂が鯨の潮吹きのように雌汁を噴霧する。
「ずるいよ……♡ 錫華さんばっかり……♡ わたしも、欲しいのにぃ♡」
錫華のようにぐちゃぐちゃにされたい。
こちらの事などお構いなしに独りよがりに使われたい。
また胎内をいっぱいにして欲しい
抉って貫いて壊されたい。
腰をうねらせて触手を誘う。しかしやり場のない熱と焦燥、切なさと疼きが心臓の鼓動に合わせて脈を打つばかりで、物欲しげに雄を待つ秘裂が満たされることはない。
「あぁ……理緒……さん……!」
錫華の顔がみるみる内に青ざめてゆく。
どうして? 何が不満なの?
そんなに気持ちのよさそうな事をされて。
「錫華ひゃん……お願い……♡ わたしにも、それ……使わせてぇ♡」
「理緒さん正気にもど……お゙ほぉっ!」
錫華はイボだらけの触手に最奥を殴られて喉を逸らす。
錫華の中でますます羨望と嫉妬が湧き上がった。
「錫華さんっ♡ ずるいっ♡ それ絶対きもちいいのにっ♡」
短く息を切らす。
視線を交わらせた錫華の表情は、絶望に染まりきっていた。
「どう、して……? 理緒さんのために……耐えてたのに……」
「えー……♡ なんでぇ?」
その一言が、錫華の最後の糸を切ってしまったなどと、脳を毒で侵されきった理緒には察せるはずもなかった。
錫華は絶望に堕ちた。
●調伏
理緒の肉体は、触手の劇毒に焼かれていた。
胎内にたっぷりと注ぎ込まれた緑色の粘液が秘裂から溢れ、雌汁と混ざり合い、床に水たまりを作る。
四肢を捕らわれて宙吊りとなった理緒の股に、触手が密着した。
その触手の表面は、ブラシのような肉の毛でびっしりと覆われている。
「や……! そんなので擦られたら……♡」
逃げ場のない腰をくねらせ、蕩けた割れ目を擦り付ける。
シリコン質の肉のブラシが淫核に触れ合うだけで身震いしてしまう。
もしこれが上下に動き始めたら――理緒の恐ろしい期待はすぐに実現した。
「んひいぃぃいぃっ♡」
前に動いた肉ブラシの触手が、秘裂を削ぎ落とす。
理緒は悲鳴と共に身体を弓なりに逸らした。
接触部から雌汁がスプリンクラーのように噴き出す。
「ふっおぉぉぉおぉっ♡」
触手が後ろに動く。理緒の身体も合わせて前かがみに曲がる。
口からは舌が垂れ下がり、濁った喘ぎが漏れた。
人外の性感になぶられた脆弱な秘裂が耐えられるはずもない。
またしても呆気なく雌汁を噴射してしまう。
「はひ♡ わたしこれむりっ♡ 錫華さんっ♡ これすごいぃ♡ いひぃいぃぃぃっ♡」
触手が股下で前後する度に、理緒は歓喜の絶叫をあげる。
「理緒……さん……!」
錫華にとって、その光景は絶望以外の何ものでもなかった。
怪物どもの手から絶対に助け出さなければならない友が、自ら進んで怪物に身を捧げている。
あろうことか嬌声を上げて快感を貪っているなどと。
触手の動きに合わせて腰を前後させる理緒の行為は、錫華の目には裏切りと映った。
だが、もうどうでもいい。
自分も堕ちてしまったのだから。
この得体の知れない怪物どもが、無限に与える快楽に。
「はぎいいいぃぃいぃぃぃぃぃっ♡」
錫華は全身を痙攣させて断末魔を響かせる。
肉洞を貫く触手が電流を発したからだ。
身体を内側から痺れさせる激痛すらも性感に変えられてしまう。
神経を焦がす電撃に心臓が早鐘を打つ。
「やめっ♡ やめでぇぇぇぇー♡」
電流の責め苦は止まらない。
視界で火花が散るたびに身体が跳ね、結合部が淫らな汁を間欠泉のように噴き出す。
息ができない。酸素を求めた口が限界まで開く。
「いっひ……! ふぅー……♡ ふぅー……♡」
触手の放電が終わり、深く項垂れた錫華は肩で荒く呼吸する。
「おぁ……♡ ふあっ♡」
休む間など与えられるはずもない。
腰から這い上がってきた複数本の触手が、胸の双丘に絡みつく。
男なら誰しも振り返ってしまうほどに端正なバランスを持ったそれを、形が変わるほどに締め上げる。
「ぎっ♡ 痛い……♡ 苦しっ♡」
柔らかい肉に触手が沈み込む。
肋骨ごと肺を圧迫する息苦しさに喉が掠れ、甘い声が滲む。
触手の先端部が口を開いた。吸盤状の口腔内には無数の小さな歯が生えている。まるでヤツメウナギのようだ。
「ひぎ♡ 痛いっ♡ やめて♡ 離れて♡ 噛まないでっ♡」
双丘の頂点に、二本の触手が吸い付いた。
充血して硬くなったそこを、吸引しながらも歯でこりこりと齧る。
すっかり毒に浸された錫華の身体は過剰に反応してしまう。
「あっひ♡」
背中がぶるりと震え上がる。
拘束された身体の中でまともに動かせる腰と頭を必死に振るも、触手はぴったりと吸い付いたまま離れない。
「これやばいっ♡ 理緒さん♡ これやばいって♡」
逃れられない快楽と絶望は、理緒を助けるという使命感を完全に塗り潰してしまった。
「だめ♡ 理緒さんわたしもう無理♡ 胸でイく♡ わたしいっちゃう♡ いっぐぅぅぅうぅうぅ♡」
顎をガクガクと揺らして絶頂に達する。
追撃を掛けているつもりなのか、胸に吸い付く触手の噛む力が増した。
「あぐぁぁあぁぁっ♡」
ほんの些細な力加減だった。けれど錫華の神経は過敏に反応してしまう。殆ど絶叫に近い嬌声を上げて絶頂に酔いしれる。触手に貫かれた淫靡な割れ目は、雌の汁を垂れ流し続けていた。
「あは♡ 錫華さんすごいっ♡」
乱れ狂う錫華の姿に劣情を煽られ、理緒の性感もますます昂ってゆく。
「わたしも、また……いっ……くうぅぅっ♡」
もう異端の神々に抗うという発想も、身体は屈しても心は折らせないというプライドも、全部溶かされてしまった。
無償で与えられる性感を受け入れ続け、或いは弄ばれるがままに、理緒も絶頂を貪る。
一度開いてしまった抵抗の意思という水門はもう閉じない。
濁流のような快楽をひたすら流し込まれて溺れるだけだ。
「あっ♡ やっ♡ はやい♡ うごき速いっ♡ 取れちゃう♡ ほんと取れちゃうから♡」
股下を前後するブラシ状の触手が動作を加速する。
触手の表面を覆うブラシの一本一本が、淫核を削ぎ落とすかのように撫で、弾き、擦る。
「すごいのくるっ♡ 錫華さん♡ わたしとんじゃう♡」
「理緒……さん……♡ 見てるから、イって? 理緒さんのイくとこみてるから……♡」
舌を垂らして痴態をさらす理緒を、錫華は今にも霧散しそうな意識を繋ぎ止めて凝視する。
「もうだめ♡ イくイくイくぅ♡ いっっっぐぅうぅぅぅううぅー♡」
理緒は耳をつんざくほどの絶叫と共に果てた。
全身が激しく痙攣する。
秘裂より噴き出した透明な汁が、夥しい量の飛沫となって飛び散った。
「すご……♡」
それに煽られた錫華も急速に絶頂へと上り詰める。
「わたしも、イく……うぅぁああぁああぁっ♡」
胎内を前後する触手がとどめとばかりに宮殿の入口に食い込み、電流を発した。
下腹部を震わせる電流は青白い光が見えるほどだった。
命の危機を感じるほどの激痛を、狂った脳は快楽に転換する。
「あ゙……ぁ゙……ぐぁ゙……は……!」
錫華は呼吸もまともに出来ないまま、突如として触手の拘束から解放された。
自分と触手の体液で出来た水たまりに落ちると、焦点が定まらない瞳を見開き、全身を痙攣させ続ける。
「ひんっ♡」
秘裂に入り込んでいた触手が引き抜かれる。
どれほどの量を注ぎ込まれていたのか、効果も正体も知れない緑色の粘液が排出され、水たまりをさらに広げた。
「錫華さん……♡ 錫華さん……♡」
理緒も同じく触手から解放されていた。
脚と腰は震えが止まらず、まるで言う事を聞かない。
肉の床を這いつくばって錫華の元へと向かう。
「理緒……さ……ん……」
ぼやける視界の中、錫華は理緒の輪郭に手を伸ばす。
理緒の伸ばした手と手が触れ合う。
こうして体温を感じあったのはいつ振りだろうか?
異端の神々の罠に捕らわれて、とてつもなく長い時間が経過しているような気がする。
時間の感覚はとっくに無くなっていた。
●楽園
「んぅ……♡ ふぁ、んんっ♡ 理緒さん……♡ キス好き……♡」
「錫華さん……♡ わたしも♡ んちゅぅ♡ はぁぅ……♡」
錫華と理緒は両手を互いに握り合いながら、舌を貪る。
粘液まみれになった身体を擦り合わせていると、自分と相手の身体の境目が曖昧になってしまう。
それが堪らなく背徳的で、愛おしかった。
「理緒さん、ひどいよ……♡ わたし、理緒さんを……助けなきゃって……♡ ずっと耐えてたのに……♡」
「ごめんね錫華さん……でもね? きもちよかったでしょ?」
「うん……♡」
「わたしも……我慢できなくって♡ 錫華さんには悪いって思ったけど、おなかの中……ごりごりぐりぐりされるの……すっごくきもちよくて……♡」
「すごかったね……♡ 見てたよ、理緒さんが……触手にずりずり擦られて……酷い声出してるとこ……♡」
「あは♡ わたしのイくとこ見られちゃったんだぁ……♡」
「理緒さんが言ったんだよ? わたしのイくとこ見ててって♡」
「錫華さんに見られながらイくの、すっごいよかった……♡ 死んじゃいそうになるくらい……♡」
「理緒さんは見てたの? わたしのイくとこ……」
「うん♡ ちゃんと見てたよ? お腹のなかバチバチってされて……すごい顔してた……♡」
「そんなに?」
「あんな錫華さん、わたし初めて見たよ? ものすごかった……♡ 声だって……♡」
「うそ……♡ どんな声してたの……?」
「ぎゃあぁ……って♡ 死にそうな声……♡」
「や、だぁ……♡ 忘れて♡ 恥ずかしいから……♡」
「んんぅ……だーめ♡ 忘れないもん♡ 錫華さんの、えぐい声……また聞きたいなぁ?」
「ふあ……♡ じゃあ、理緒さんのも……また聞かせて……んっ♡」
二人は互いに貪り合っていた口を離す。唾液が作った銀色の糸が途切れ、結んでいた手と手が解かれる。
示し合わせるでもなく揃って床に仰向けになり、両脚を開いた。
周囲には多種多様かつ無数の触手が蠢いている。
拘束などもう必要なかった。
抵抗する意思もなければ、ここから逃げ出そうという発想も浮かばない。
自分が何者であったのかとか、何をしにきたのかとか、後先なんてどうでもいい。
狂い死ぬまで気持ちよくなりたい。
脳から湧き出る快楽物質のままに、本能が命じるままに、錫華と理緒は怪物どもを誘う。
「はやく……来て♡」
錫華は自ら肉の割れ目を広げる。
「切ないよぉ♡」
理緒は腰を浮かせて媚びた声を出す。言葉に意味はなく、ただ雄を誘惑するためだけの鳴き声だった。
「あっ……♡ こっち来る……♡」
錫華を貫いていたイボ付きの極太触手が理緒に這い寄る。
改めて目の前にすると凶悪な外見をしていて、太い。
これで錫華は壊されたのだ。そう思うと背筋に怖気を覚えずにはいられない。
イボの一つ一つで内壁を抉られたらどんなに――理緒はより腰を高く突き出して、受け入れる準備が出来ている事をアピールする。
「あっ♡」
入口に先端部が触れた。
早く欲しいとせがむように、割れ目がぱくぱくと口を開け閉めする。
「理緒さん、それ、凄いよ? 大丈夫?」
錫華は理緒が貫かれる瞬間を絶対に見逃すまいと、割れ目にキスする触手の先端を凝視していた。
「どうかな? なんかもう既にヤバい予感……がぁ♡」
触手は前触れも躊躇もなく押し入ってきた。
「あ゙っ!? お゙ぉ゙ぉ゙っ♡ これ、やっばいっ♡」
理緒の肉洞は散々に解きほぐされていたが、未だ狭い。
許容量を越えた太さの異物を、肉洞が媚びるようにしてきゅうきゅうと締め上げる。
触手は縦に回転しながら内部を掘削し、強引に奥へと進んでゆく。
理緒は少しでも触手が侵入しやすくなるように、限界まで脚を広げた。
「いっぎっ♡ くるしっ……♡ なか、ごりゅごりゅって……♡ 削られちゃう♡ おぐぅ♡」
下腹部が押し上げられる。子を宿す宮殿の入口まで到達したのだ。
「い……ひ……♡ おくまで、入っちゃった……♡」
「凄いのはこの後だよ?」
「え……?」
薄笑いを作る錫華に理緒は一瞬だけきょとんとするも、さらに加わった衝撃に悲鳴をあげる事となった。
「あ゙ぐぅあ゙ぁぁっ!?」
内臓を揺さぶる強烈な打撃。微かに口を開けた最奥への入口を、触手が怒り狂ったかのように激しく殴りつける。そればかりではない。
「ぎひぃいぃぃっ♡ ぐりゅぐりゅしないでぇぇぇ♡ なかほんとに抉れるっ♡ 抉れちゃうからぁっ♡」
まるでドリルのような高速回転で内壁を抉りつつ、子を宿す宮殿の門を掘削する。
さらにアスファルトの粉砕機さながらの殴打が加わるのだから耐えられるはずもない。
「やめへっ♡ こわれるっ♡ しきゅーの入口壊れちゃうからっ♡ 入っていいからもうやめてぇっ♡」
理緒の悲鳴とも付かない懇願が届くはずもない。触手による激しい掘削作業はなお続く……かと思いきや、突如として動きが止まった。
「んうぃっ!?」
腹を内側から強く持ち上げられ、理緒は両目を見開く。
錫華はその様子から、触手の先端部が最奥の入口にめり込んだのだと察した。
「この後だよ?」
「このあと……どうなる、の……?」
「出される」
簡単に言ってのけた錫華に、理緒は悪寒と期待で身を戦慄させた。
「ほんと?」
「すごく気持ちよくなるから、頑張って」
「え……♡ あ……♡ これくるかも♡」
胎内で触手が身震いする。
理緒は吐き出される劣情に身構え、全て受け止めるべく自ら腰を押し付け、入口と触手をより密着させた。
触手が大きく脈動すると、遂にその瞬間が来た。
「あっ♡ くる♡ くる♡ きちゃう♡」
だが、理緒の予想は完全に裏切られた。
触手の先端から放出されたのは液体ではなかった。
毛先のように細い無数の触手。
それが最奥の入口から宮殿の中へと侵入を果たしたのだ。
「んい゙い゙ぃ゙ぃ゙っ!? 錫華さんこれちが……ひっ!? あっ!? あぁあぁあああぁっ♡」
今まで味わったことのない感覚だった。
宮殿の内部で無数の触手が暴れまわり、壁を好き勝手に小突き回す。
「理緒さん? どうされてるの?」
断末魔をあげる理緒に錫華も焦燥する。
「一番おくぅ♡ モサモサしたので、いじられてっ♡ あっ♡ だめだめだめ♡ そこ赤ちゃん作るとこだから♡ おねがい弄らないでっ♡ ちくちくしないでぇぇぇっ♡」
宮殿のさらに奥――左右に別れた聖域にまで極細の触手の侵入を許してしまった。
胎内にはこれに対抗する術はなく、ただ未知の快感に胎内を窄まらせるばかりで、不躾な侵入者に蹂躙されるがままであった。
「い゙ぐっ♡ 一番奥ぐちゃぐちゃにされてい゙ぐぅぅ♡」
身体を小刻みに痙攣させて喉を逸らす理緒。
「大丈夫だよ理緒さん、ちゃんと見てるからね?」
錫華は理緒に羨望と嫉妬の眼差しを注ぎつつ、手をしっかりと握り合わせる。
「わたしの時は違ったのに……理緒さんばっかりズルいよ? だから思いっきりイっちゃえ」
錫華が発した言葉をきっかけに、理緒の限界は呆気なく訪れた。
「い゙くい゙くい゙くっ♡ もうだめっ♡ い゙っぐぅうぅぅぅぅぅうぅぅぅうぅっ!」
鼓膜をつんざくほどの大絶叫。
秘裂は壊れた水道管のように雌汁を噴き出し続ける。ビチビチと水が跳ねる音が止まらない。
「ねぇ、理緒さんばっかズルいって。わたしにも……」
錫華はいまだに掘削作業を続けるイボ付き触手を掴んで引き抜こうとする。
けれども触手は理緒の胎内がよほど気に入ったらしく。びくともしない。
表面を覆う粘液で手が滑るのももどかしい。錫華はますます理緒が羨ましくなった。
しかし無数の触手は錫華をいつまでも放ってはおかなかった。
「あ……こいつ、さっき理緒さんを擦ってた……」
ナメクジの裏面にびっしりと肉のブラシを生やしたかのような触手が忍び寄ってきた。
「いいよ、きて」
錫華は仰向けとなって脚と両手を広げて触手を身体へいざなう。
すると触手はゆっくりとした動きで錫華の身体を這い上がり始めた。
「ん……♡ あ……♡」
ブラシが身体を撫でるだけで甘い吐息が漏れてしまう。
抱き枕ほどの大きさと太さはあろうかと思われるその触手は、表面がシリコンのような弾力を持っていた。粘膜のぬめりが気色悪いはずなのに、手足で抱きつくと安心感で満たされてしまう。裏面を覆うブラシは少し硬い。
おぞましさはもう微塵も感じなかった。
早く擦り上げて欲しい。肉欲に頭の中を支配されていた。
覆いかぶさる格好で這い上ってきた触手を抱き寄せる。
「はやく、動いて……んふ、ちゅ……んむぅ……♡」
表面で蠢くブラシに錫華は舌を絡ませ、しゃぶりついた。ブラシ状の器官から分泌される液体を啜り、喉を鳴らして飲み込む。啜るほどに脳が快楽物質を生成し、頭の中をどうしようもなく蕩けさせる。
そして遂にブラシ状の触手が動き出す。粘液に塗れた毛細が、肌を硬く擦り、甘い痺れを引き出す。
「んひっ♡ ザラザラして……! 気持ち……! いいぃ♡」
錫華の腰が踊る。触手により強くしがみ付いて秘裂を押し付ける。
「あっ♡ ひっ♡ おっ♡ これすごっ♡」
触手が前後の動きのスピードを早めるつれ、錫華の嬌声の間隔も短くなってゆく。
全身を擦るブラシは特に秘裂と肉の芽を集中的に攻め立てた。粘液が混じり合う淫靡な水音が次第に加速する。
「もうむりぃっ♡ イくぅ♡ イかされるぅっ♡」
触手の動きに合わせて錫華も必死に身体を前後させた。
粘り気の強い液体が潤滑剤となって性感をさらに高める。
まるで触れ合う肌の全面を淫核とされているかのように。
「理緒さんっ♡ これむりっ♡ わたし勝てない♡ 絶対イかされるっ♡ ああぁぁっ♡」
絶頂が迫るにつれて全身が戦慄きだす。
頭の中で火花が爆ぜた。
「い゙っ!? ぐうぅううぅうぅぅっ♡」
擦り上げられながらの絶頂。
一瞬の間も開けずに繰り返される追撃に、錫華の身体が陸に上がった魚のように連続して跳ねる。
ブラシが擦り続ける秘裂から雌汁が止めどなく溢れ出す。
「ゔぁ゙っ♡ かはっ♡ いひぃっ♡ イってりゅっ♡ ずっとイってるっ♡ 飛んじゃうっ♡ たしゅけ……♡」
仰け反った喉。開きっぱなしの口。突き出した舌。見開いた目。窄まる瞳孔。
「うわ、錫華さんすごい顔してるよ? これヤバいでしょ? んあぅっ♡」
理緒は錫華の顔を覗き込む。
錫華の呼吸は浅く短く、飛んでいってしまった先から戻ってこれていない。
「こっちもヤバい、よぉっ♡ 錫華さんも、して……みて♡」
理緒も理緒で息が絶え絶えだった。
子を宿す宮殿を弄くり回す極細の触手の攻めは未だに続いている。
「ふぅ……♡ 錫華さん、キスしよ……♡」
「理緒さ……むぅ……♡ んん……♡ ぞりぞりされるの、きもち、いいのぉ♡」
「わたしも、おぉ♡ しきゅーのなか、くすぐられて♡ すごいよこれ♡」
「ズルい……♡ 理緒さんばっか、りぃ♡ わたしも、それ欲しいっ♡」
「いいの? こんなの知ったら……♡ ぜったい戻れなくなっ……はうぅぅうぅっ♡」
「またイった? そんな、きもちいい……のおぉっ♡」
「すごいから♡ これほんとはんそくぅぅうぅ♡」
「ほしいぃっ♡ ぞりぞりもっ……♡ しきゅ、うもぉっ♡ こわされたいっ♡」
二人は舌を貪り合い、互いの唾液を啜り合う。
暇を持て余した異端の神々が飽きるまで、あるいは錫華と理緒が壊れるまで、狂宴は終わらない。
誰も知らない血の池の深淵。
そこは二人にとって、楽園のような地獄であった。
成功
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