最前線のウシの街にて
●戦場と日常は近しいまま
グリモアベース。
「獣人戦線の『ウシ』にまつわる予知を得た。手を貸してくれぬか」
龍の悪霊であるグリモア猟兵、水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は集まった猟兵たちを前に静かに告げる。
「『【Q】覚醒する獣人達』の儀式魔術の結果、昨年の獣人世界大戦以降に猟兵に未だ覚醒していない種族に対して幻朧帝国による大規模な破壊工作が予知されるようになっておる。この破壊工作が行われるのは未覚醒の種族が多く住まう地であり、万一成功させてしまえばその地はオブリビオン蠢く異形の都へと変えられてしまう。故に破壊工作が実行される前に、逢魔弾道弾を持ち込んできたエージェントを発見し撃破する必要がある。……既に耳にタコができるほど聞いておるかもしれぬが、繰り返させて貰う」
龍神によると、今回事件が予知されたのはヨーロッパ東部、ゾルダートグラードとワルシャワ条約機構の二つの超大国の勢力に挟まれた地にある街とのこと。
「標的にされた街には現在多くの負傷兵が病院に運び込まれておる。つい最近、街にほど近い位置にあった超大国の基地に攻撃を仕掛けその地を奪還したようじゃが……代償は大きかった。幸い現時点では死者は出ておらぬがこのままでは時間の問題かもしれぬ。皆にはその病院に向かい一人でも多く生き残れるように手を貸してほしい」
そう説明した多摘は、次に幻朧帝国のエージェントについて語り始める。
「この負傷者だらけの病院を狙ってやってくるのは『内治・三六』……悪しきトラの科学者。獣人の死、或いは弱った臭いを嗅ぎつけているのかここに逢魔弾道弾を設置して起爆しようとしておる。病院裏口から潜入しようとしておるから、負傷者に被害を出さぬよう病院に忍び込まれる前に叩いて撃破してほしい」
そう龍神は説明を終えて、宝珠形のグリモアを転送のために取り出す。
「獣人戦線では未だ猟兵に覚醒しておらぬ種族が数多くおるが、どの種族にも猟兵に覚醒する可能性はある……当然ウシもじゃ。しかしその覚醒までには多くの事件を解決して狙われた種族の命を守っていく必要があるじゃろう。覚醒するにせよしないにせよ、獣人達の命を無惨に散らさせるわけにはいかぬ。どうか皆、頼んだぞ」
そう多摘は話を締め括るとグリモアを輝かせると、猟兵たちを戦場近くのウシ獣人達の街へと転送したのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
トリアージも必要でしょうが。
第一章はウシが多く住む戦場に近い街で救護活動を行ってください。
ごく最近、近くで大きな戦いがあり、多数の負傷者が病院に運び込まれているようで人手が足りていないようです。
第二章は逢魔弾道弾を仕掛けにやってきたエージェント『内治・三六』との戦いになります。
こちらは断章で冒頭に状況説明を追加致しますのでそちらもご確認下さい。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 日常
『今にも消えそうな命』
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POW : 必死で救命活動を行う
SPD : 迅速に必要な物資を使う
WIZ : 傷による対処法を見極める
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「オー! ワタシはバルタン・ノーヴェ、デース!」
日常を満喫しマショー! アドリブ連携歓迎デース!
普段の口調:片言口調(ワタシor我輩、アナタ&~殿、デス、マス、デショーカ? デース!)
得意な技能:【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】デスネ!
たぶん戦闘はないと思いマスガ、バトルの時は元気に暴れマスネー!
料理が得意ですが、奉仕や救助活動(介護や子守り含む)といったメイド・アクションも可能デース!
にぎやかしとしてワイワイはしゃいでもOK!
こっそり裏方で労働に勤しんでもOKデース!
他の猟兵の方々と楽しめるように努めてマース!
公開UCやバルタンズ、アイテムの使用も問題なくOKデスヨ!
よろしくデース!
●傷ついたウシ達に救援を
病院のあちこちからうめき声が聞こえる。
戦いの結果、土地を奪還することが出来た。しかしその代償として多くの命は傷つき、そして消えかけているものもいる。
普段なら十分足りる量の医薬品もこれだけ一度に負傷者が出てしまっていては適切な投与も追いつかない。
「オゥ……コレは大変な仕事になりそうデスネ」
いつもはハイテンションなバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)であるが、病院の重々しい空気と負傷兵達の苦痛の声に少々声を抑えつつ、医者のウシ獣人に声をかけた。
『ああ、今はとにかく人手が足りない。猟兵さんの力を貸してもらえるなら有り難いです』
声に疲れが見えるのは、手が回らない程の忙しさだけでなく、救いきれない命があると認識しているからなのかもしれない――そうバルタンは読み取りつつ、まずは出来ることから行動を開始する。
すぐに生命に直結するような重傷ではなく、けれども人数の多い怪我人が運び込まれた病室へとユーベルコードにより召喚した163体のミニバルタン達と共に向かい、
「もう大丈夫デース! ワタシ達猟兵が来まシタ!」
明るく告げれば呻いていた兵士たちの表情がパッと明るくなる。猟兵が来たならこの状況も何とかなるかもしれない――そんな希望を抱いたウシの兵士たちに、薬品投与や包帯の交換等の治療、掃除や移動などの仕事をテキパキとこなしていくバルタン達。
大柄で筋肉で重い者が多いウシたちだがサイボークの怪力を発揮しているバルタンにはさしたる問題にはならない。救護や奉仕を得意とする彼女達の人海戦術により、病院の空気がやや明るくなって医者や看護師達の顔にも希望が見え始めたのだった。
成功
🔵🔵🔴
賤木・下臈
私に医療知識はありませんが、清浄な水を用意してみましょう。「和歌集」を開き古の歌人の力を借りて水を具現化します。
「道の辺に 清水流るる 柳陰 しばしとてこそ 立ちどまりつれ」(新古今和歌集 西行)
最終手段として、私は人々を完全に治療することも可能です。しかし代償として、治療された人々は理性なきゲロイストになる……要は不条理でナンセンスであほな言動に走り始めます。それだけならいいですが、最悪の場合、彼らは自爆を試みるでしょう。ゲロイズムを遵守する限り人に危害を加えることはありませんが、それでも彼らを監視、必要ならば拘束し、爆発物には決して近づけてはいけません。しばらくすれば元に戻ります。
●一時の不条理、一生の救い
武闘派バトルメイドがその腕を振るい負傷者治療の手伝いを全力で行い、数多く居た比較的軽傷なウシ獣人は十分な処置が行われた。
されどここにいるのは軽傷の者のみではなく、もうすぐ命の灯が消えようとしているような重傷者も少なくない数がいる。
重傷者が集められているのは病院の中でも一番広い部屋。空きのあるベッドすべてをこの部屋に運び込んで、容体の急変に即座に対応できるようにしているようだが、状況は依然悪いようだ。
そんな彼らを治療できるような医術知識を賤木・下臈(おいしいクッキーです・f45205)は持ち合わせていない。されど自分にできる事として文庫本サイズの『和歌集』を開いて、
「道の辺に 清水流るる 柳陰 しばしとてこそ 立ちどまりつれ」
長居したくなる清水流れる木陰の居心地の良さ――季節としては少々早いが、詠んだその古の平安歌人の和歌によって新鮮で清らかな水が大量に具現化される。
『これは有難い……!』
ウシの医者が下臈に心からの感謝を述べ、水を汲み上げ治療に使い始めた。
傷病の手当てにおいて清潔な水は重要だ。傷口の洗浄や水分補給など様々な用途に必須であるがここは戦場に近く、水道の水もそのまま使うには少々不安があったらしい。
けれど下臈により具現化されたばかりの水はそのまま治療に使用可能なうえ、好きなだけ汲めるのはこの一刻を争う状況では大助かり、惜しみなく水を使える事で幾らかの命は救われるだろう。
だが、それでも傷が深く血の気が薄れてきている重傷の兵もいる。ウシの生命力で何とか踏みとどまってはいるが、通常の治療では最早手の施しようもなく川を渡る時を待つばかりであろう。
「……最終手段として、私は人々を完全に治療することも可能です」
不意に下臈がそんな事を言い出す。
「しかし代償として……」
『なんでもいい! 救えるなら今すぐ頼む!』
最早いつ命の灯が消えてもおかしくない今、医者は迷う暇もなくその蜘蛛の糸に縋るしかない。
「それでは手の施しようのない重傷の方々を、|私《下臈》が一望できるようにベッドを移動し、そしてこの部屋から爆発物を外に出して扉等を封鎖してください」
『爆発物……? ともかくわかった、少し待ってください』
そして数分と経たぬ内にウシの医者や看護師達が全力で配置を整え、下臈がユーベルコード【下臈天国】を起動する。
「|Welcome to the Underlings' Ground《ようこそ、下臈の世界へ》」
完璧な英語の発音で詠唱すれば、彼の視界内にいた重傷患者たちの傷はみるみる塞がり、完全に治療された。
しかしウシの顔なのになぜか表情がどことなく真面目そうでいて何か意味も脈絡もない事を言い出しそうな――言ってしまえば下臈のような雰囲気になっているように見える。
「治療された人々は理性なきゲロイストになる……要は不条理でナンセンスであほな言動に走り始めます」
『そんな副作用が……でも命が救われるならその位は』
「最悪の場合、彼らは自爆を試みるでしょう」
『えっ』
言動はともかく自爆はまずい。事前準備はそれか、と医者は思い至る。
「ゲロイズムを遵守する限り人に危害を加えることはありませんが……爆発物に近づけてはいけませんし、必要ならこの部屋の外に爆発物を探しに行かないように監視や拘束も必要でしょう」
『ええ……それって治るんです?』
医者の隣にいた看護師のウシ女性が不安そうに言う。
「ええ、しばらくすれば元に戻りますよ」
具体的には154分、3時間足らずのゲロイズム汚染で重傷患者の命が救われるならばお釣りがくるだろう。
『ゴリラ! ゴリラが!』
『モッツァレラ』
「もんにょふ」
ゲロイスト達が脈絡もない言葉を呟き唐突に叫び、ベッドから飛び起きて唐突に組体操を始めたりしている姿に、少々医者は不安げだが何とかすると決意を固めて。
――その後たっぷり時間いっぱい、医者たちは不条理でナンセンスであほになってしまった理性なき患者の突拍子もない言動と行動に精神をすり減らされる事になったのだが。
「奇跡だ……皆助かったなんて……!」
ゲロイスト化が解除されて穏やかな寝息を立てる患者たちの姿に、監視と拘束を無事やり遂げた医者と看護師は希望に満ちた表情で救命の喜びを分かち合い、下臈に心底感謝したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『内治・三六』
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POW : 気にする事ありませんよ。あれらはただの材料です。
【小銃や間に合わせの武器など 】で武装した【兵士もしくは捕虜】の幽霊をレベル×5体乗せた【軍用トラック】を召喚する。
SPD : せっかくなので、これより臨床実験を開始します。
【試験管から飛び出た液体 】からレベル×1個の【蟲の群れめいた粒子】を召喚する。[蟲の群れめいた粒子]に触れた対象は【一時的発狂もしくは幻聴など】の状態異常を受ける。
WIZ : 何と、素晴らしい技! 忘れない様に記録しますね。
敵のユーベルコードを【実験記録用ノート 】に呪文として記録し、戦闘終了まで詠唱で使用可能。敵を倒せば戦闘後も永続。
イラスト:樹華チョコ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠羆嵐・来海」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●トラの狂科学者を叩き返せ
『さてさて、実験体に丁度いいウシが都合よくこの病院に集まっているんですね』
幻朧帝国のエージェントである白衣のトラ『内治・三六』が呟きながら、病院の裏手にある広場へとやってくる。
逢魔弾道弾での逢魔が辻化を狙う彼であるが、どうせ滅ぼすなら実験体を確保してもいい――そんなふざけた事を考えているようだ。
『あまりに傷が深いと実験データにも影響しそうですから軽傷のモルモットを……誰です?』
裏口目指し上機嫌に歩いていた足を止める三六、すると病院の中から猟兵、そして体の一部に包帯を巻いた軽傷のウシ獣人たちが現れ銃を向ける。
手早く献身的な看護により動けるようになった彼らは、敵がやってくると聞き先の戦いの残りの武器を準備して、猟兵達を支援するために出てきてくれたのだ。
『折角助けてもらったのにてめえなんぞにやられてたまるか!』
『無理はするなよ! またここの医者に迷惑かけるわけにはいかないからな!』
そんなことを言い合いながら応戦準備を整えているウシ獣人達を見やり三六は、はぁ、とため息をついて。
『いいでしょう、多少の損耗は仕方ないとしてここで臨床実験を始めましょうか』
実験記録用ノートと試験管をエージェントは取り出してユーベルコードの力を解放、それとほぼ同時に猟兵とウシの兵士達も戦闘行動を開始するのだった。
飯綱・杏子(サポート)
狩った獲物は持ち帰ってもいいっすか?
ジビエ|食材《オブリビオン》がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが|マナー《マイルール》っす
リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす
どんなに癖のある|肉《ジビエ》でも濃い味付けにすれば食えない肉はないっす
悪魔だから|毒は利かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす
あと|八つ裂きにされても死なない《【切断部位の接続】持ち》っす
シナリオや同行者の都合で、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす
カグヤ・モンデンキント(サポート)
モンデンキント級植民艦3番艦カグヤに宿ったヤドリガミですわ。
女性に年齢を聞くものではなくてよ。
まずは地球型惑星を破壊できる規模の主砲であるユーベルコード「ジャッジメント・クルセイド」を放ちますわ。
あるいは周囲から慌てて止められ、仕方なしに別のユーベルコードを使いますわね。
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は致しませんわ。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします。
●邪悪な探究心を阻め
白衣纏うトラ獣人は猟兵達を値踏みするように、或いは好奇心を満たせる喜びに満ちた眼で一挙一動をじっと見つめている。
彼『内治・三六』の研究はオブリビオンと猟兵に拘るもの、故に猟兵達を見る目は研究のサンプルに対するものに等しく、豪奢な十二単を纏うカグヤ・モンデンキント(天体娘・f31348)というヤドリガミは嫌悪感も顕に指先を向ける。
「その視線……汚らわしいですわね。焼き尽くしますわよ」
「ちょっと待つっす。病院すぐそこっすから威力は程々に抑えないとまずいっす」
いきなり全力の主砲を放たんとするカグヤを、食道楽の悪魔の飯綱・杏子(悪食の飯テロリスト・f32261)が制止する。
カグヤが放とうとしたのは|ヤドリガミの本体《モンデンキント級要塞艦3番艦カグヤ》の主砲型神器、この獣人戦線の普通の人型サイズのオブリビオンに対してどう考えても過剰出力である。
ついでに言うならある程度治療を終えて加勢に来てくれたウシの兵士達もいる。巻き添えにしては大変だろう。
「仕方ありませんわね。それでは出力を下げて……」
そしてカグヤがユーベルコード【ジャッジメント・クルセイド】を起動、指先を向けられた三六に|天《亜空間》から凄まじき光が降り注いだ。
出力を抑えたといえどもその破壊力は凄まじく、普通ならば直撃を受けたオブリビオンは消滅してもおかしく程の破壊力だ。
しかし、
『何と、素晴らしい技! 忘れない様に記録しますね』
全身の毛を焼き焦がされながらもトラのオブリビオンは生きていて、何とか守り切ったらしいノートに何やら熱心に書き込んでいく。
呪文として記録されたユーベルコードを詠唱で使用可能になるという三六の力、しかしノートへの記録で生じた隙を超一流のフードファイターである杏子は見逃さない。
彼女は|万能《エクストリーム》|猟理器具《クックウェア》を手に一気に距離を詰めると、
「いただきっす」
起動するユーベルコードは【フードファイト・狩猟モード】。ヒト型であるため流石に喰らうつもりはないが、適切に変形させた巨大肉叩きで下処理する要領で、他の部位に比べればおいしそうにも見える部位――比較的可食部の多そうな腿に一撃を叩き込んだ。
痛打を受けたトラのオブリビオンは僅かに顔を顰めながらも
『こちらも素晴らしいですね、私には扱いきれそうにないですが』
|食道楽の悪魔《グラトニー》の類稀なる食欲により命中率を左右されるそのユーベルコードは、仮に三六が使用されたとしても十分な効果は得られないだろう。
『ですのでこちらを。【ジャッジメント・クルセイド】』
故にカウンターとしてカグヤの使った力を詠唱で行使、指先を向けられた杏子に天から光が降り注がせるが、その威力は杏子を仕留めるには至らない。
それに対してエージェントは悔しがる様子もなく、観察の視線を向けつつ何やら熱心にノートに書きこんでいく。
実戦データの記録に夢中になってしまうのは研究者としての性質なのだろう。その実験を打ち切りにさせんとカグヤと杏子は次の攻撃を仕掛けていくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鳶沢・成美(サポート)
『え、これが魔導書? まあどうしよう?』
『まあどうでもいいや、オブリビオンなら倒すだけですよ』
故郷UDCアースの下町の古書店でたまたま見つけた魔導書を読んで覚醒した自称なんちゃって陰陽師
昨今でいう陽キャラ? みたいな行動は正直よくわからないのでマイペースに行動
でも集団での行動も嫌いじゃないですよ
元ボランティア同好会でつい気合い入れて掃除しちゃったりしなかったり
一応木工好きでゲートボール好きキャラのはず……たぶん
例え好みの容姿だろうと、事情があろうと敵ならスパッと倒すだけですよ
実はシルバーレイン世界の同位体である自分と融合していたことが判明
三角定規型詠唱定規の二刀流で戦う様に
アドリブ・絡み・可
ミルディア・ディスティン(サポート)
「サポート?請われれば頑張るのにゃ!」
UDCでメカニックして生計を立ててるのにゃ。
『俺が傭兵で出撃して少し足しにしてるがな?』
※自己催眠でお人好しで好戦的な男性人格に切り替わりますがデータは変わりません。
ユーベルコードはシナリオで必要としたものをどれでも使用します。
痛いことに対する忌避感はかなり低く、また痛みに性的興奮を覚えるタイプなので、命に関わらなければ積極的に行動します。
公序良俗は理解しており、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。むしろ積極的に助ける方です。
記載の無い箇所はお任せします。よろしくおねがいします。
●亡霊を突破して一矢報いよ
向かってくる猟兵にトラのエージェントである『内治・三六』の背後から軍用トラックが召喚され、中から武装した兵士の幽霊が飛び出してくる。
『気にする事ありませんよ。あれらはただの材料です』
死してなおこの狂気の科学者に囚われ利用される亡霊たちを前に、鳶沢・成美(三角定規の除霊建築士・f03142)は静かに詠唱三角定規を二本、二刀流のように構える。
除霊建築学を応用した除霊もできるかもしれないが、先程の猟兵の攻撃で更地同然になったこの広場では成美の持つ技術を活用するには少々難しそうだ。
「なんだかやばそうなヤツにゃ……」
焦茶色の髪をセットした猫耳ヘアが特徴的なミルディア・ディスティン(UDCの不可思議メカニック・f04581)は研究対象に対する好奇心の視線を向けてくるオブリビオンに対しやや引き気味であるが、力を請われたのなら眼前の敵を全力で打ち倒すまでだ。
幽霊の兵士達が向かってくる。間に合わせの武器を手に向かってくる獣人の幽霊たちは数の暴力で猟兵達を圧殺戦とし、それを真っ向から突破せねばと成美は【獣神来我】のユーベルコードを起動、
「獣の神、来たれっ!」
詠唱定規二刀流で構える彼の身に野獣の神が降りてくる。その身に宿した野獣の力は代償として理性を失わせるが、代わりに超攻撃力と耐久力を成美の身に与える。
間に合わせの武器で応戦する幽霊たちも除霊の力を宿した|詠唱兵器《大型三角定規》による攻撃に消え去っていく。
小銃の弾丸も増した耐久力で耐えつつ距離を詰めて定規で薙ぎ払う――幽霊相手にそんな風に立ち回り、詠唱定規で片っ端から除霊していく成美。
更に離れた場所から銃弾が飛んで幽霊たちを撃ち抜く。病院の近くからのウシ達の援護射撃が成美を援護しているのだ。
成美とウシの兵士達が幽霊と派手に立ち回るのと逆方向、三六の後方から騒ぎに紛れ回り込んできたミルディアがクランケヴァッフェを手に奇襲を仕掛ける。
しかしそれは読まれていたようで、くるりと科学者は白衣の内側から試験管を取り出して、
『成程、奇襲ですか。せっかくなので、これより臨床実験を開始しますね』
淡々と呟きながら試験管の中身をミルディアに向けてぶちまければ、液体から蟲の群れめいた粒子が揮発するようにすて召喚されてそれをミルディアは躱す事ができない。
精神に作用し一時的な発狂、或いは幻聴を齎す粒子だ。当然攻撃どころではなくなる筈だ。
しかしミルディアの動きは全く止まらず、そのまま粒子を突っ切って三六へと距離を詰め超高速の連撃を叩き込む。
そのタネは先に起動していた【プログラムド・ジェノサイド】、予め脳にプログラムしていた連続攻撃はミルディアの精神が多少不調になろうと中断されずに完遂まで実行されるのだから。
連撃の最後に重ねるように幽霊を突破してきた成美が詠唱定規を叩きつけ吹き飛ばす。
強烈な打撃を受けながらも白衣のトラはむしろ楽しむように笑みを浮かべ、新たに試験管を取り出し除霊されずに残っていた幽霊たちを周囲に呼び寄せ守らせる。
このエージェントを完全に仕留める為、成美とミルディアは次の行動を開始するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
賤木・下臈
幻朧帝国。この世界における我が国、否、我が国を乗っ取った勢力。必ず潰します。
敵のエージェントおよび呼び出されるものを対象に、ユーベルコードによる月光の矢の嵐を浴びせます。歌は「白真弓 はるの月影 くまもなく 繁き|得物矢《さつや》の さし渡りけり」。月光の矢は敵に幻惑をもたらすでしょう。
虎には月が似合います。存分に月光を浴びるがよろしい。
●月の矢は虎を射抜く
向かってくる猟兵達、そして病院から銃撃で援護するウシの兵士達を相手に、『内治・三六』は徐々に追い込まれていた。
『このままでは任務も失敗ですね。どう逢魔弾道弾を起爆させましょう?』
声色だけなら温厚そうにも聞こえるが、為そうとしている事は邪悪極まりないトラの研究者。幽霊やトラックを盾にして時間を稼ぎながら状況打開の手段を考案しようとするが、
「……歌を毎度作るのは大変なので使い回しも検討する私は下臈です」
自虐しつつ、病院の中から和歌集を手に賤木・下臈(おいしいクッキーです・f45205)が現れる。
――幻朧帝国。
(「この世界における我が国……否、我が国を乗っ取った勢力」)
獣人世界大戦で悪魔召喚を用いた儀式を行おうとしたり、現在も世界各地で破壊工作を行っている謎多き超大国。
他の五つの超大国が侵略している地域とは異なり、未だこの世界の日本列島の詳細な状況は明らかになっていないが、いずれにしても下臈がよい印象を抱く筈もない。
「必ず潰します」
いつも以上に丁寧に――決して揺るがぬ意志を込めて下臈が【矢嵐下臈】のユーベルコードを起動して、
「――白真弓 はるの月影 くまもなく 繁き|得物矢《さつや》の さし渡りけり」
詠まれる風流な和歌、同時に空から矢の嵐が降り注いだ。
月光のような輝きを帯びた矢の豪雨はトラのオブリビオン、そして彼により召喚された幽霊たちのみを狙い降り注ぎ、貫いてその身に状態異常を齎していく。
『これは……幻惑の力でしょうか』
困惑しながら矢で射抜かれた三六が呟き周囲を焦点定まらぬ目で見遣り、ペンを取り落とした。
幻惑に落ちたオブリビオンの視界には、恐らくは最早正しい風景は映っていないのだろう。
「虎には月が似合います。存分に月光を浴びるがよろしい」
その言葉と共に月光矢の雨は更に激しさを増して、防御すらできぬ幻朧帝国のエージェントを針鼠の様相へと変えた。
『ははは、素晴らしい研究成果が……』
無数の月光の幻惑に最早正しく状況を認識する事すらできていないのか、穏やかに笑いながら三六は倒れ消滅した。
この街を狙うエージェントの撃破に病院の方から兵士達――その中にはつい先程までゲロイストとなっていた元重傷患者も含まれる、ウシ達の歓声が沸き起こった。
多くのウシ獣人の命を救い、そしてエージェントからも無事守り切ることができた。
ウシ獣人達と別れを告げた猟兵達は、勝利の報告をグリモアベースへと持ち帰ったのだった。
大成功
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