1
桜香る、甘い刻

#サクラミラージュ #ノベル #猟兵達のバレンタイン2025

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サクラミラージュ
🔒
#ノベル
🔒
#猟兵達のバレンタイン2025


0



エアン・エルフォード



モモカ・エルフォード




●桜爛漫、お花見バレンタイン
 ひらり、ひらりら、まるで小さなハートがいっぱい空から舞い降っているようで。
 降り積もったハートのかたちの花びらたちが、街を甘く淡い色に染め上げている。
 でもこれは、この常桜の世界だけの特別な景色。
 だって、何せ今日は。
「バレンタインの日に、こんな満開の桜を見られるなんて最高に贅沢よね」
「うん、この季節に咲く桜は不思議な感じがするけど、いいね」
 そう――再び巡ってきた、バレンタインの日なのだから。
 他の世界では勿論、この季節に桜が咲くことなんてないのだけれど。
 でも今日は、淡く満開に咲き誇る不思議な桜に合わせて、しっとり和装デート。
 ゆらり、ゆらりら、桜色の景色を泳ぐように揺れるのは、弾む心を隠せない薄紅色の着物の袖。
 けれど刹那、モモカ・エルフォード(お昼ね羽根まくら・f34544)は、ハッとする。
 ついつい、旦那さまとの特別な日のデートが嬉しくて、はしゃいじゃうけれど。
(「おしとやかに、おしとやかに……」)
 折角、落ち着いた薄紅色のシックな小紋に、変わり帯は前で可愛くひらりと蝶結びにして。
 髪は緩めのアップに結い上げた、おしとやかなお洒落を頑張ったのだから。
 そんな装いに相応しいように、何より隣を歩く素敵な旦那さまと一緒なのだから、しずしずと頑張って歩いてみるモモカ。
 そして無邪気にはしゃいだり、慌ててお澄まししてみたり……そんな今日もくるくると変わる姿を見れば。
 エアン・エルフォード(Windermere・f34543)にもふわり、思わず微笑みが咲いてしまう。
 だってそんな妻は見ていて面白いし、何より微笑ましくて、愛しいって思うから。
 そんなエアンも勿論、今日の装いは夫婦で合わせた着物姿。
 おしとやかを意識しながらも、モモカは腕を組んで一緒に歩く旦那さまをちらり。
(「和服も似合っちゃってて、カッコイイの」)
 素敵に紫紺の着物を着こなした姿に、思わず見惚れちゃう。
 だから、大切な家族の姉弟猫をそれぞれ抱っこして歩きながら。
 綺麗に咲き誇っている桜を見上げる……フリをしつつも、ちらちら。
 モモカがじっくりこっそり鑑賞するのは、今日もカッコイイ隣の旦那さまの姿。
 そんな桜舞う風景を歩く、和装の旦那さまを眺めていれば、胸がドキドキ。
 きゃっと、思わずときめきいてしまうのは、こう思うから。
「……なんだかいつもより、ちょびっと……せくしぃっ」
「……もも?」
 そうふと小首を傾げつつも、自分へと彼の視線が向けられれば、ちょっぴりモモカは慌てちゃう。
(「思わず心の声が漏れちゃった!」)
 それから、再びちらりとエアンを見てみれば、つい漏れた心の声はどうやら聞こえてないみたいだから。
 なんでもないのっ、なんて誤魔化しつつも、桜の景色を歩いて。
 ひらりくるりと舞う桜花弁たちを見れば、姉弟猫も楽しそうでご機嫌。
 そして、満開の桜をたっぷりと一緒に堪能していれば。
 モモカの甘いローズブラウンの髪に、ひらりと舞い降ってきたひとひら。
 それに気づいたエアンはそっと手を伸ばして。
「もも、髪に花弁が」
「あ、取ってくれてありがとう、えあんさん」
 小さな薄紅のハートのひとひらを摘まんでから、自分に礼を告げる妻へと囁くように告げる。
「今日のももも、可愛いし……せくしぃだよ」
 そんな不意打ちに聞こえた、擽るような甘い声と言葉に、モモカは一瞬ぱちりと瞳を瞬かせてから。
「! もう、えあんさんっ。さっきの……聞こえてたのね」
 満開に咲く桜たちに負けないくらい、一気に頬が色づいてしまう。
 そして恥ずかしそうにあわあわしつつ、薄紅色に染まったその顔を見つめれば、やはりエアンは思うのだった。
 妻は面白いし、可愛いしせくしぃだし――何より、こうやって過ごす今が、とても愛しくて幸せだと。
 それに……あはは、ごめんもも、なんて笑うのは、実は照れ隠しで。
 勿論、心の声は漏らさないように、気をつけながら。

●大切な家族と過ごす、甘い刻
 それから、満開の桜をたっぷり堪能して。
 お花見バレンタインを存分に満喫した後、おうちに帰ってきたけれど。
 まだまだ勿論続く、バレンタインの甘い時間。
 モモカが満を持してエアンへと差し出すのは、そう。
「はっぴー・ばれんたいん、えあんさん」
 愛しの旦那さまへの、バレンタインプレゼント!
 それは、昨日がんばって作った、手作りチョコレート。
 去年は、彼の好きなラム酒とコニャックをたっぷり使ったトリュフを串団子風にしてみたけれど。
「えあんさんの好きなラム酒の他に、桜のリキュール入りも用意したの♪」
 今年は、やっぱり彼の好きなラム酒のものと、お花見デートの時に一緒に眺めた桜が香るものも作ってみて。
 ふたりの装いに合わせた、お手製和風チョコレートに。
「今年もありがとう、もも。毎年貰ってるけど、やっぱり嬉しいな」
 そう喜んでくれれば、モモカも同じく嬉しくなる。
 いや、バレンタインプレゼントをあげるのは何も、モモカだけではなくて。
 ピンクのリボンをゆらり、とことこと。
 歩み寄るお姉さんがくわえて差し出す弟猫へのプレゼントは、自分が大好きなおやつ。
 それは猫の心を掴むおやつだから、にゃーと弟猫も鳴いて、とても嬉しそうで。
 嬉々とおやつを食べる弟猫を優しくグルーミングしてあげるお姉さん猫。 
 そんな様子をほのぼのと見つめながらモモカも、エアンにお手製チョコレートを食べて貰いたいのだけれど。
 ただ普通に食べさせてあげるんじゃなくて――バレンタインだもん、って。
「もも、おいで」
 うーんとらぶらぶしたくて、招かれるままにちょこん。
 お膝に乗せてもらえば――あーん。
 旦那さまの口元へと、彼の大好きなラム酒が入ったチョコレートを差し出して、食べさせてあげた後。
「えあんさん、こっちも食べてみて?」
 今度は、桜のリキュール入りの方を、あーん。
 そして――はむりと、それを口にすれば。
 こくりと頷きながら味わうエアンにも、再び咲き開く。
「うん、美味しい。桜の香りがするのがまた、いいね」
 柔らかで淡い、桜のような微笑みが。
 そんな彼の笑みにやっぱり見惚れてしまいつつ、姉弟猫の仲睦まじさを見ては和んで。
 モモカが咲かせる笑顔も勿論、旦那さまとお揃いの満開。
 ふわりと咲く桜の香りに、この甘い刻に――今年のバレンタインも一緒に過ごせる、そんな幸せを噛み締めながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年04月13日


挿絵イラスト